右京「成しうる者が為すべきを為す……ですか」 (87)

相棒とPSYCHO-PASSのクロスです。

PSYCHO-PASSの世界観の日本で犯罪係数制度が導入される前の時代に、相棒の登場人物がいるという設定です。
そのためほぼ相棒の登場人物のみでPSYCHO-PASSのキャラは局長ぐらいしか出ません。PSYCHO-PASS要素はかなり薄いです。

PSYCHO-PASS GENESIS既読です。一部設定をお借りします。しかしSSの都合上他のGENESISの設定は無視します。

その他、両原作の設定との矛盾がでる可能性あります。

以上の点が許せるという方、駄文ですがお付き合いくださると幸いです。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1496583572

右京「成しうる者が為すべきを為す……ですか」

角田「そう。『それこそがシビュラが人類にもたらした恩寵である』ってね」

亀山「どうしたんすか、急に」

角田「いや最近ね、息子がこればっかいってんだよ。シビュラの就職判定がいいとこに出たみたいでさ」

亀山「就職もシビュラシステムで決定か……。なんか、凄い時代になったもんすね」

角田「本当だよなぁ。俺なんかが学生の時は、どんな職に就くかでさんざん迷ったもんだよ」

亀山「そうなんすか? 俺なんかは体動かす事だけが取り柄だったんで、結構すぐ決まりましたけどね」

右京「確か、亀山君は大学もスポーツ推薦でしたからねぇ」

亀山「そうそう。おかげさまで就職先は殆ど迷いませでした」

角田「しっかし、厚生省がこんな隠し玉持ってるとはね。国民ももうだいぶこのシビュラに頼りきりって感じだよ」

右京「システムのアドバイスは確かに役立つ物かもしれませんが、若者には自分の夢と意思も尊重して貰いたいものです」

亀山「やっぱり自分の意思で決めた仕事じゃなきゃ続けらんないっすよね」

右京の携帯電話 プルルルル……プルルルル……ピッ

右京「杉下です」

米沢『どうも、米沢です。すぐに出てくれて助かりました。 実は現在、杉下警部が恐らく非常に興味を持つであろう現場にいるのですが……』

右京「すぐに伺います。米沢さん、場所を教えて頂けますか」

米沢『もちろんです。現場は東京都……』

事件現場のアパート

伊丹「この暑い夏に殺しかよ……まったく嫌になる」

芹沢「ほんとですよ。犯人にも、頭ぐらいは冷やしていてもらいたんもんですね」

三浦「しっかし玄関でグサリか……」

右京「具体的には、どこを刺されたのでしょう?」ヒョイ

亀山「みたかんじ、胸みたいっすね」ヒョイ

伊丹「特命係の亀山! お前なんでここに!」

亀山「俺らが何処にいようと勝・手だろ!」

伊丹「なんだと!」

三浦「警部殿も……いつも困ります」

右京「すみませんねぇ」

芹沢「まあ、いいんじゃないですか? いつも事件解決してくれるし……」

伊丹「なんだと芹沢このやろう!」ガシッ

芹沢「ちょ、やめてください先輩、じょーだんですよ!じょーだん!」ジタバタ

右京「では亀山君、奥の部屋の方も拝見しましょう」

亀山「はい」

奥の部屋

米沢「これはこれは杉下警部、お待ちしていました。……どうです、この部屋?」

右京「そうですねぇ……」ヘヤミマワシ

亀山「え? 俺には小綺麗なアパートの部屋にしか見えないんすけど……なんか変わったところあります?」

右京「……被害者は、本当にここで日常生活を送っていたのでしょうか?」

亀山「は? いやここで殺されたってことは、ここで生活してたんじゃないですか?」

右京「それにしては、あまりにも生活感がなさすぎるような気が僕にはするんですよ!……かといって全くないかというとそうでもない……。おかしいと断言できるほどではありませんが、不自然な部屋に僕には思えます。米沢さん、被害者の身元と死亡推定時刻は?」

米沢「死亡推定時刻は今朝の9時から11時ですな。今が18時ですから、死後8時間前後といったところです。被害者の身元ですが……部屋のどこを探しても身分を証明するような物は何処にもありません。前科者のデータとも照合しましたがヒットしませんでした。携帯端末の類もありません。パソコンのデータは完全に消去。財布からカードも抜き取られています。しかし、現金は手付かずのままでした」

右京「今時、携帯端末を持っていないとは考え辛い。犯人に持ち去られたと見るべきでしょうね」

亀山「カードを持ってってるところを見ると、物盗りですかね」

右京「物盗りだとすると現金が残っている事に説明がつきません。被害者の身元を隠す為に犯人が持ち去ったと見るべきでしょう」

亀山「部屋は誰が住んでることになってるんですか?」

米沢「鈴木健一という人物になってますが、その人物の勤務先を調べたところ、いわゆるペーパーカンパニーでした」

右京「そうなれば、鈴木健一も恐らく偽名でしょう。」

亀山「手がかりは無しですか……」

米沢「代わりといってはなんですが……これが部屋に仕掛けられてました」

亀山「これは……盗聴器!」

米沢「ええ。それもかなり本格的な物です。さしずめプロ使用といったところでしょうか」

亀山「身分不明の遺体に、プロ仕様の盗聴器……。なんかいやな感じしますね」

右京「……」

翌日 警視庁・特命係

角田「よっ暇か? ……なにやってんの?」

亀山「課長も知ってるでしょ? アパートで男が殺されてた事件。その捜査資料ですよ。米沢さんからもらいました」

右京「もっとも、被害者の身元がまだわかっていないので捜査も膠着状態なのですが」

角田「へえ……。ってこの男!」

亀山「課長、この男知ってるんですか!?」

角田「知ってるもなにも、俺らが少し前からマークしてる、革龍会のメンバーの一人だよこいつは!」

右京「革龍会というと、反シビュラシステムを掲げていた龍頭会の残党ですか」

角田「さすが警部殿、よくご存じだね。龍頭会が壊滅してからはおとなしくしてたみたいだが、最近なにか怪しいブツを取引してるような不審な動きがあってね、うちでマークしてたんだ」

右京「被害者の男性は前科がなかったということですから、革龍会からのメンバーという事になりますね」

亀山「とにかく革龍会の奴らに話を聞ければ、いっきに事件解決に近づける!」

右京「しかし、反シビュラ団体の残党が簡単に警察に対して口を開いてくれるとは思えません……角田課長」

角田「な、なに?」

右京「彼らから是非、話を伺いたいのですが……ご助力お願いできないでしょうか」

亀山「お願いできないでしょうか!」

角田「……ったくしょうがねえなあもう! ……おいお前ら! 今日革龍会引っ張るぞ! すぐに準備しろ!」

革龍会・事務所

大木「警察だ! ちょっとお前らに話ききてぇことがあってきたんだが……机の上のそれ、麻薬だな?」

組員「はあ? なに言ってんだてめぇ」

角田「現行犯!全員逮捕!」

暫くして……

亀山「ふう……これで全員ですかね」

角田「多分全員だね。殺されてたって男を引けば、俺達がマークしてた人数とも一致してる」

右京「……おかしいですねぇ」

角田「ええ!? なにが?」

右京「そこの机に組員名簿……記載されているのはトランプを用いた暗号名ですが……この名簿によると組員の数は123……14人いるはずです。ですが今逮捕したのは12人だけです。人数が一致しません」

亀山「123……ほんとっすね。2人足りない。あっ! 殺された男が残りの一人なんじゃないすか?」

角田「ああ、それだな。こういう組織ではね、仲間割れなんかは結構あるもんなんだよ」

右京「それでも、一人足りません」

角田「一人捕まえ損ねたか……まあ後で捕まえるから心配すんな」

厚生省・公安局長室

禾生局長「まったく面倒なことになったものだな」

局員「申し訳ありません。例の件で尻尾を掴まれたようでして……早急に手を打つ必要があるかと」

禾生「警視庁には私から言っておく。君の方でも事が公にならないよう対処しろ。警視庁の捜査員は案外馬鹿にできない。適当な代役を立てておくのを忘れるな」

局員「了解しました」

禾生「自らの体を傷つけるのは辛いが、悪くなった部分は切り捨ててもいいだろう。そのあたりの見極めは君に任せよう」

局員「はっ……」

禾生「それで、シビュラシステムによるサイマティック・スキャン監視網関連法案の方はどうなっている」

局員「現在関係各所に根回しをしています。長崎の国境警備での運用データがありますから、概ねスムーズに進んでいます。ですが……」

禾生「警察庁の連中かね」

局員「はい。警察庁も必死なんでしょう。公安局が逮捕権を持つことに反対の立場を崩しません」

禾生「我々が逮捕権を持てば、警察庁が厚生省の傘下に収まるしかない事は明白だからな」

局員「どうしましょう」

禾生「まあ急いで事を仕損じることはない。我々には国内監視網運用のモデルケースとなる実績がすでにある。こちらに引き込める手札が揃うまでは言いなりになってやろう」

局員「了解しました。ではそのように」

禾生「例の件、対処は怠るな。……下がりたまえ」

局員「失礼します」スタスタ……ガチャン

警察庁・官房長官室

コンコン……ガチャリ

秘書「官房長、禾生局長がお見えになりました」

小野田「通してください」


禾生「久しぶりだな、小野田君。直接会うのは何年ぶりか」

小野田「そんなことより、本題に入られてはいかがでしょう。天下の厚生省・公安局長自ら僕を訪ねてくるなんて余程のことでしょうから」

禾生「……そうだな。では単刀直入に言おう。現在捜査中の殺人事件の捜査権を我々に譲ってもらいたい」

小野田「そういうことは承りかねます。厚生省公安局の捜査権が認められているのは反シビュラテロ活動のみのはず」

禾生「そんなことはわかっている。タダで譲れというわけではない。代わりと言っては何だが、君が必死に押しとどめようとしているサイマティック・スキャン関連法案の提出は当面見送る」

小野田「……わかりました。担当部署の人間にそう伝えておきます」

禾生「感謝するよ、小野田官房長。……では失礼」スタスタ……ガチャリ

秘書「よろしいのですか?」

小野田「向こうは僕らの手綱を握ったつもりでいるみたいだけど、こっちにもとっておきのカードが舞い込んできたからね。しかるべき時までおとなしくしようと、僕も思ってたところだから」

秘書「……まだカードを切る時ではないと」

小野田「そういうこと。今は向こうの思惑通り動いたほうが後々、色々と都合がいいでしょ」


小野田「……もしもし? 内村刑事部長に繋いでもらえる?」

今日はここまでです。

諸事情あって酉変わってますが1です。レスありがとうございます。

チェグソンについては特に考えてませんでした。もし原作と矛盾が出るようでしたらすいません。適当に脳内補完してください……。

警視庁・取り調べ室

大木「このヤク、どこから手に入れた?」

組員「……ジョーカーのやつが持ってきた」

シャシンスッ

大木「そいつはこの男か? アパートで死体で発見された。お前らが殺したんじゃないのか?」

組員「殺した? 知らねえよそんなのは。それにこいつはジョーカーじゃない」

大木「じゃあこいつは誰だ!!」ドン!!!

組員「そいつはジャックって呼ばれてた。本名は知らねえ」

大木「じゃあ、そのジョーカーがヤクを仕入れてんのはどっからだ」

組員「それはやつ以外だれもしらねえ。Kはヤクをどっかから仕入れて持ってくんだよ」

大木「そいつは今何処にいる?」

組員「だからしらねぇ

大木「とぼけんな!」ドン!!


コンコンガチャ

芹沢「失礼しまーす」

大木「なんだ?」

伊丹「こいつらは殺人事件の重要参考人だ。俺たちも、話を聞かせてもらおうとおもいましてね」

三浦「ま、そういうことなんで我々もご一緒します」

ガチャリ

内村「ダメだ。許さん!」

三浦「内村部長……! そりゃ一体どういうことです?」

内村「本事件の捜査権は、厚生省公安局に移譲されることになった」

伊丹「そんな…… こいつらは殺人事件の重要参考人ですよ! なんで公安局が!」

中園参事官「そいつらは龍頭会の残党らしいな?」

三浦「はい。そう聞いてますが……」

中園「龍頭会は反シビュラ組織だろう。公安局が捜査を担当しても問題はない」

伊丹「しかし

内村「しかしも案山子もない。捜査権は公安局に移譲する。これは決定事項だ」

三浦「ですが……」

内村「心配するな。被疑者逮捕及び送検は我々刑事部が行う。公安局に逮捕権は無いからな。手柄は我々の物だ」

中園「黙っていれば容疑者が勝手に手の中に転がりこんでくるんだ。こんなに楽な仕事もないだろう」

芹沢「はあ……」

内村「こいつらの身柄は全員、公安局にいったん預ける。お前らはこの事件の捜査から外れろ!いいな!」

マジックミラー越し

亀山「公安局がでしゃばってくるなんて……なんだかやばいことになってきましたね」

右京「公安局はここ最近出来たばかりの捜査機関です。捜査対象も反シビュラ組織に限られ、逮捕権はありません。重ねてシビュラ判定適正者しか採用しないという採用基準のせいで慢性的な人手不足です。それなのに何故、この事件の捜査をわざわざしたがるのでしょう」

亀山「さあ……反シビュラのやつらの事を調べておきたいんじゃないんすか? それが仕事なわけですし」

右京「それだけでしょうかねぇ……」


右京携帯 ブ-ン ブ-ン

右京「杉下です」

米沢『杉下警部。例の事件について新しいことがわかりました。ちょっと来てもらえますか』

右京「わかりました。すぐに伺います」ピッ

鑑識の部屋

右京「米沢さん」

米沢「杉下警部! どうやら大変なことになってるみたいですなあ、公安局に捜査権が移るなんて。前代未聞の事態にわたくし、驚きのあまり

右京「すいません米沢さん、新しく分かった事というのは?」

米沢「ああ、申し訳ない。こちらをご覧ください。現場付近の足跡から採取された物の成分表なのですが……これ」

右京「これは……薬剤でしょうか」

米沢「ええ。それもかなり特殊な薬剤です。自分も及ばずながらこの鑑識で長くやってきましたが、みたことがありません」

亀山「米沢さんが見たことがないなんてあり得るんすか?」

米沢「最近はシビュラによるストレスチェックなんかが普及して、そのストレス値を下げる薬剤なんかが急速に広まってるんです。出回ってる物の中にはかなり強力で危険な物もあるようです。どんどん新手の物が出てくるもんですから、法整備がおいつかないんですな」

右京「では、今回発見された薬剤は?」

米沢「相当強力と思われます。しかも先ほども申し上げた通り、そこらの闇市に出回ってるような物とは一線を画するかなり特殊な物です。相当の知識を持った人間が作ったものと考えてよいかと」

右京「ということは、かなり希少なもの?」

米沢「でしょうな。少なくとも欲しいからといって手軽に手に入るものではありません」

右京「そうですか……」

米沢「これ1つだけじゃありません。まるで薬品の博物館のごとく、かなりの物質が混在して見つかりました」

亀山「犯人はよっぽどのヤク中だったんですかね」

右京「……」

少ししか進めませんでしたが今日はここまでです。
次は週末になると思います。

レスありがとうございます!
続き投下していきます。

>>10の官房長官室は正しくは官房長室でした。ミスすいません。


2日後 特命係

角田「よっ暇か?」

亀山「あのね課長、俺たちだっていつも暇なわけじゃないんですよ? 今もこうして事件に関する情報を集めて

角田「情報集めてるって、テレビからか?」

亀山「そりゃまあ……あれですよ、ほら、テレビの情報にももしかしたら俺たちの知らない事件の情報が

角田「まあそんなことより、聞いてくれよ。俺たちに対する厚生省のひでぇ仕打ちをさ」

亀山「……どうかしたんすか?」

角田「今日、公安局から革龍会の奴らの身柄が刑事部に戻ってきたんだけどよ」

右京「確か、そういう話でしたね」

角田「殺しの被疑者一人だけ寄越してきやがって、他の薬物所持で引っ張った連中は全部麻取にとられちまったよ」

亀山「え!? マジすか!?」

右京「随分と強引ですねぇ」

角田「なんでも、殺しの被疑者が厚生省の麻取だったんだと」

亀山「被疑者が麻取!?」

角田「そうらしいよ。佐藤とか言ったかな。公安局から送られてきた捜査資料に証拠もばっちりだとさ」

右京「なるほど。それでですか」

角田「革龍会に潜入捜査中の麻取が殺し! それで落ちた株を少しでもあげたいんだろうね!全くまんまと騙されたよ」

亀山「まあそうでもしないと、麻取の面目は丸つぶれですからね」

角田「それでさ、刑事部長のとこに文句言いに行ったらね?」

角田(内村の真似)「誰が薬物容疑の送検をお前らに任せると言った? 文句があるなら、厚生省に直接言ってこい!」

角田「だとさ。そりゃ言えるもんならね、俺だって……

右京「亀山君、行きましょうか。米沢さんも捜査資料を入手しているはずです」スタスタ

亀山「はい!」タッタッタッ

角田「ちょっ……少しぐらい慰めてくれてもいいじゃないの……」

鑑識の部屋

右京「米沢さん、公安局からの捜査資料が届いていると思うのですが……」

米沢「杉下警部、いらっしゃると思ってお待ちしてました。これです」スッ

右京「拝見します」

亀山「なになに……被疑者の部屋から凶器と思われるナイフを押収、指紋は無し……」パラパラ

右京「……米沢さん、ここ、被疑者のゲソコンが佐藤さんの自宅にある靴と一致したとありますね」

米沢「そうですな」

右京「しかし、例の薬剤についての言及がありません。妙だとは思いませんか? 普通は記載があって然るべきだと、僕は思うのですが」

米沢「確かにそうですな……私だったら間違いなく記載します」

右京「亀山君、佐藤さんの自宅に向かいましょう」スタスタ……

亀山「え…ちょっ……待ってください右京さーん!」

被疑者・佐藤宅

グッチャア……

亀山「うわ、ぐっちゃぐちゃだ……」

右京「亀山君、佐藤さんの靴を探してください」

亀山「靴……ですか?」

右京「ええ。靴です」

亀山「……なんでまた? 」

右京「公安局の捜査資料に薬品についての記載はありませんでしたが、犯人の靴には大量の薬剤が付着していました。犯人は違法脱法薬剤の製造などに関わっていた可能性があります。佐藤さんが真犯人ならば、この家にある靴からは必ず薬剤反応が出てくるはずです」

亀山「どうして犯人が違法薬剤の製造に関わっていたってわかるんですか?」

右京「取引のための運び役だけなら靴に化学物質は付着しません。取引の時は通常、薬は袋に入って取引されますから。しかし現実には靴に大量の薬剤が付着している。それも何種類もですよ! 製造に関わっているとみるのが自然です。通常の薬剤製造ではまず靴に化学物質がつくことなどあり得ませんが、相手は違法組織ですからねぇ。違法薬物組織の中には、廃棄区画などの整備されていない環境・ずさんな管理で調合している組織が多い。そのような人物が身につける靴です。一足だけに化学物質がついているなんてことはないでしょう」

亀山「つまり、自宅にある靴から薬剤が検出されれば犯人で間違いなし、検出されなければ別の人物の犯行の可能性があるってことか!」

右京「彼は麻薬取締官ですから、通常の薬剤反応だけだと嫌疑をかけるのは難しいでしょう。捜査の課程でついた物かもしれませんからね。ですが今回の薬剤はかなり特殊な物の様ですからね」

亀山「えーとじゃあ……靴から現場に残された薬剤が検出されれば犯人でほぼ間違いなし、検出されなければ別の人物の犯行の可能性があるってことっすね?」

右京「そういうことです。では、探しましょう」

今日はここまでです。
そんなに更新できなくてすいません。ミステリー物って思ってたより大変で……。矛盾などあったらごめんなさい。
少しになってしまうかもしれませんが出来れば明日、無理でも次の週末には必ず更新します。

>>1が潰れない頻度で続けて欲しい
ssを早く書かなければならない規則など無いのだから

これは面白そうなクロス
神戸、カイト、冠城は出てきますか?

レスありがとうございます!
>>31
そう言って頂けると気が楽です。無理なく完結させるよう頑張ります。

>>32
神戸は犯罪係数制度導入後を書ければ登場させようと思ってます。カイト、冠城については今のところ考えてません。

その頃 刑事部長室

伊丹「奴らを取り調べるな!?」

中園「そうだ。形式上身柄はこちらにあるが、すでに本事件の捜査は終了している。早急に佐藤を殺人で、それ以外の奴は事務所から発見された拳銃の不法所持で送検する」

三浦「しかし上がってきた資料の裏もとらずに……」

内村「これは決定事項だ。組対部にも話は通してある。今後、何人たりとも取り調べをすることは許さん!」

伊丹「…それがシビュラを擁する天下の厚生省の意向ってやつですか……」

中園「言葉を慎め!」

芹沢「すいませんっ!」

内村「わかったなら、とっととこの部屋から出て行け」

三浦「分かりました。失礼します」

芹沢「失礼します!」

伊丹「……」

廊下

三浦「おい伊丹、気持ちは分かるがあれは……」

芹沢「最近上の連中、厚生省の話になるとなーんかピリピリしますよね」

伊丹「まあいいさ。俺たちが動かなくても奴らはもう動いてんだろ」

三浦「まあ特命の連中なら、もうなにか掴んでるんだろうが……」

伊丹「亀山に頼るのは癪だが、あとは奴らにまかせるしかねえか……」

しばらく後


鑑識の部屋

米沢「杉下警部が佐藤の自宅から押収した靴には、おかしな点は特にありませんな」

亀山「ということは、佐藤は犯人でない可能性がある! ……あ、でも公安局が部屋から凶器を発見してますよね」

右京「確かに公安局は佐藤さんの部屋から凶器であるナイフを押収しています。しかしそのナイフに指紋はついていなかった」

亀山「それが…なにか?」

右京「おかしいと思いませんか? ナイフから指紋を拭き取るぐらい慎重な犯人が、何時までも部屋にナイフを置いておきますかねぇ?」

亀山「まあ…捨てるの忘れちゃったんじゃないすか?」

右京「ナイフの指紋だけではありません。犯人は遺体から身元が分からないよう携帯端末やカードなどを持ち去っています」

亀山「あ、でも盗聴器が犯人によって仕掛けられた物だとしたら、犯人は案外抜けてるような気がしますけどね。なんたって自分が仕掛けたの忘れて回収し忘れてますから」

右京「そうなんですよ! 慎重かと思いきや注意力の欠けたミスを犯す。これらは本来相反する性質です」

亀山「じゃあ……犯人は二重人格とかですかね!?」

右京「もしかすると、犯人とは別に裏で動いている何者かがいるのかもしれません。それもおそらく、公安局の中に」

亀山「俺のアイデアはスルーかよ……って公安局!?」

右京「ええ。佐藤さんが犯人でないとすると、佐藤さんの自宅から凶器を発見できるのは……」

亀山「発見した公安局だけ!」

右京「そういうことです。しかも公安局は真犯人を庇っているということになります」

亀山「遺体の身分がわからないようにしたり、盗聴器を仕掛けたのも!」

右京「断定はできませんが、その可能性はあります。そして公安局の今回の強引なやり方から推測するに、彼らにとっても被害者の死は驚きの出来事だったはずです。本部の車を大急ぎで飛ばして来たことでしょう。米沢さん、 被害者が発見されたアパートの周辺のNシステムに公用車のナンバーが記録されていませんか?」

米沢「少々お待ちを…………あっ! ありました! 事件当日12時3分!」

右京「所属はどちらでしょう?」

米沢「法務省……公安調査庁……ですな」

亀山「公調!?」

右京「どうやらこの事件、我々の想像以上に入り組んでいるようですねぇ……」

亀山「とりあえず、公調にいって話ききますか」

右京「そうですね。すぐに向かいましょう」

今日はここまでです。
次の週末には必ず更新します。

公安調査庁へ向かう車内

亀山「でも、公調はなんで被害者の身元を隠蔽するような真似をしたんですかね」

右京「おそらく被害者の男性は公安調査庁の職員だったのでしょう。公安調査庁はその仕事の性質上、身元を隠して行動することが多いですからねぇ。あの部屋の生活感のなさも、何かしらの任務に使う部屋だったからと考えれば納得がいきます」

亀山「なるほどね……。それにしたって、死んでまで身分を隠さなきゃならないもんなんすかね?」

右京「何か只ならぬ事情があるのは確かでしょう」

亀山「公調が色々持ち去った時盗聴器が回収されてないって事は、盗聴器は公調じゃないだれかが仕掛けたって事ですよね」

右京「そうですねぇ。それも状況的にはおそらく犯人。そして公安局と犯人はどうやら『お仲間』のようです」

亀山「公調の職員が殺されて、その犯人を公安局が庇っている……なにが起こってるのやら」

右京「亀山君、そこ右です」

亀山「あ、はい」

公安調査庁

受付

亀山「あのーすみませーん」

受付「はい、なんでしょう」

シャシンスッ

亀山「この写真の方の所属、教えていただいてもいいですか?」

受付「あの……すいません、どなたですか?」ジロリ

杉下「申し遅れました。警視庁特命係の杉下と申します」

亀山「同じく、亀山です」

受付「ああ、警察の方だったんですね。その人は確か、調査第二部の磯村省吾課長です」

右京「そうでしたか。磯村課長にお会いしたいのですが、取り次いで頂けますか」

受付「少々お待ちください」

公安調査庁舎内

調査第二部

磯村課長「それで、警察が私に何のようかな?」

右京「ある殺人事件のことで、磯村課長からお話を伺いたいと思いまして」

磯村「……警視庁の刑事は思ったより優秀だな」

右京「恐縮です。ということはあなたがが被害者の持ち物を現場から?」

磯村課長「ああ」

右京「なぜ被害者が殺害されたとすぐに分かったのですか?」

磯村課長「メールが届いてね」

亀山「メール?」

磯村課長「ああ。殺された彼からメールが来たんだ。それが途中で途切れてたんで、どうも怪しいと思って彼が潜入捜査に使っていた部屋に行ってみたら……」

亀山「すでに殺されていた…」

右京「つまり、貴方は被害者の潜入捜査がばれてしまい、それが原因で被害者が殺害されたと考えた。だから犯人の仲間が後から現場に戻ってきて被害者の身辺を漁っても、公安調査庁の情報などが外部に漏れないように処理をしたというわけですか 」

磯村課長「その通りだ」

亀山「その時点で警察に通報してくれれば……」

磯村課長「もし犯人やその仲間がのこのこ部屋を訪れれば、なにか手掛かりを掴めるかもしれないだろう? もっともお節介な誰かが君たち警察を呼んでしまったみたいだが……」

亀山「はあ……」

右京「磯村課長、もしよろしければ被害者の携帯電話や手帳などをお借りできないでしょうか?」

磯村課長「いや、それはちょっと……我々の仕事が仕事なのでね。さあ、聞きたいことは聞けただろう。もう帰ってくれ。こう見えて私も忙しい身でね」

右京「では、もう一つだけ」

磯村課長「……なんだ」

右京「潜入捜査の標的は、どこだったのでしょう?」

磯村「残念だがそれも答えることはできん。さあ、はやく帰ってくれ」

公安調査庁 駐車場

亀山「磯村課長、なーんか隠してますね」

右京「僕もそう思います」

亀山「そういえばさっき、どこに潜入してたのか聞いてましたけど……革龍会じゃないんですか?」

右京「被害者と磯村課長の所属は調査第二部でした。調査第二部は国外の組織の監視が主な任務です。おそらく彼らは革龍会をメインにマークしていたのではなく、それを足ががりにして何か別の組織のことを探ろうとしていたのではないかと、僕は考えています」

亀山「まあそれが分かっても、被害者の持ち物隠されちゃあ俺らはお手上げですよ」

右京「それについてなのですが、一つ、僕に考えがあります」

亀山「考え?」

プルルル……プルルル…

右京「……もしもし? 米沢さんですか? 一つ調べてほしい事があるのですが」

米沢『何でしょう?』

右京「磯村省吾という人物が警察庁に在籍していませんか?」」

米沢『磯村省吾ですか……ありました。以前に公安外事三課の課長補佐を務めてます。現在は公安調査庁調査第二部で課長をやっとりますな』

右京「では彼の住所を教えていただけますか?…………はいわかりました、ありがとうございます」ピッ

右京「やはり磯村課長は警察庁からの出向だったようです」

亀山「よく分かりましたね」

右京「公安調査庁には警察庁からの出向組が多いですからね。もしやと思っただけです」

亀山「右京さんがカンでもの言うなんて珍しい」

右京「それより亀山君、ここに向かってください、東京都…………」

磯村省吾のマンション

管理人「この部屋です」ガチャ

右京「どうもすいません」

管理人「いーえ、終わったら声かけてくださいね」バタン

亀山「どうもでーす」

右京「さあ、被害者の持ち物を探しましょう」

亀山「本当にここにありますかねー……しかもこれ、明らかに違法捜査……」

右京「ここに無ければ他を当たるまでです。それに、僕に無理に付き合えともいいません」

亀山「いえ! こうなったら俺もとことん探しますよ!」

………………



亀山「右京さん! これじゃないっすか!?」

右京「破れた手帳、壊されたスマートフォン 、カードですか……」


右京の携帯電話 プルルル……プルルル……ピッ


右京「杉下です」

小野田『もしもし? 僕だけど』

右京「官房長でしたか。なんのご用でしょう?」

小野田『例の殺人事件、調べてるらしいね?』

右京「現在も捜査中です」

小野田『法務省の方から抗議がきました』

右京「抗議ですか……。僕としては礼儀正しくしていたつもりなんですがねぇ……」

小野田『まあお前の礼儀は置いておくとして……例の磯村課長、これから直接僕のところに来るみたい』

右京「直接抗議とは、だいぶお怒りなのでしょうか」

小野田『とにかくそういう事だから、お前も今から来て一緒に謝ってくれる? 僕一人だと、どうも具合が悪くなりそうだから』

右京「そういうことなら、伺います」

小野田『お前の事だからもう買ってあると思うけど、手土産もしっかり持ってきてね』

右京「わかりました。では後ほど」ピッ

亀山「官房長ですか?」

右京「ええ。官房長のところに磯村課長が来るようです。我々も向かいましょう」

今日はここまでです。
誤字脱字や矛盾等ありましたらごめんなさい。
次の週末には必ず更新します。

警察庁・官房長室

右京「失礼します」

亀山「失礼します」

磯村「……」

小野田「ああ、来たね。もう会ってると思うけど、こちらは公安調査庁調査第二部の磯村君。僕の後輩です」

右京「つまり、官房長の公安部長時代の部下ということですね」

小野田「まあそういうこと。磯村君、もう知ってると思うけど、こちら警視庁特命係の杉下と、亀山君です」

右京・亀山 ペコリ

磯村「官房長……私は、すでに解決済みの事件を掘り返す刑事について捜査を止めさ

小野田「杉下がどうしても君に謝りたいんだって」

右京「先ほどは、不快な思いをさせてもうしわけない。色々失礼なことをしてしまいました」ペコ

亀山「ほんとにすいません!」ペコ

磯村「いや……私は別に……」

小野田「で、それだけの失礼をした成果はあったのかな?」

右京「磯村さんの部屋で、これを見つけました」


スマートフォン・手帳・カード


磯村「!? 勝手に私の部屋に入ったのか!」

小野田「これはまずいね。令状なしの家宅捜索は違法捜査。お前の正義はいつも暴走する」

磯村「そうだ! ふざけるな!!」

右京「磯村さん、失礼を承知で、一つお聞きしたいことがあります。職務上の理由にもかかわらず、保管場所が自宅だったのはなぜでしょう? 普通業務上の理由なら、然るべきところに保管すると思うのですが……」

磯村「なんだと!? そんなことは私の勝手だろう!」

小野田「まあまあ落ち着いて。……それで磯村君には悪いんだけど、これ全部、うちで預からせてくれない?」

磯村「!? 官房長……いやしかし……」

小野田「事実関係を明らかにするのが我々警察の仕事ですから。こうなった以上、利用しない手はない」

磯村「私は彼の殺害に一切関与していない! 調べても何も出てきませんよ!」

右京「それは我々が判断します」

磯村「……もういいですよ!…… 失礼します」


バタン!


小野田「あーあ。怒らせちゃった。お前のせいだよ」

右京「それで、こんなことをなさった、官房長の目的はなんでしょう?」

官房長「ほんとに、お前に隠し事は出来ないね……最近大きな動きが厚生省にあるの、知ってるかな?」

亀山「大きな動き……ですか?」

官房長「国境警備にサイマティック・スキャンが使われてるのは知ってるよね」

右京「入国希望者の心理状態をシビュラシステムを使って解析し、入国に問題がないかどうかを調べるためのものですね」

官房長「そう。入国希望者といっても、大半が難民なんだけど。まあそれはともかく、あれを国内の治安維持に利用しようとする動きが厚生省にあるの」

右京「と、仰いますと?」

官房長「最近メンタルケア系の病院なんかで使われてる精神色相チェッカーを町中の防犯カメラに搭載して、色相が著しく濁っている人物、つまり犯罪をおかす一歩手前の人物を、事が起こる前に捕まえて施設送りにしようってとこかな」

亀山「え!? 犯罪を犯す前でも、捕まる可能性があるってことですか?」

官房長「そういうこと。色相の濁りがある人物が街頭カメラで認められたら、公安局が現場に急行。シビュラに直結の専用機器で再度調査後、結果次第で逮捕。場合によっては即時処刑って流れみたい」

亀山「即時処刑!?」

官房長「怖いよね。裁判すら無しで死刑にされちゃうんだから。もう警察も裁判所も必要ない」

亀山「そんなっ……第一、そんな法案通るわけが……」

右京「通らないとは言い切れないと思いますよ。最近の政治家のウリは専ら厚生省シビュラの公認ですからね。厚生省の意向に逆らって、公認を外されるのは面白く無いでしょう」

官房長「そんな訳で、我々警察庁としてはなんとしても阻止したいわけ」

右京「それで公安局が不自然に介入してきたこの事件を、表向きは厚生省の言うとおりにしておいて、裏で我々に調べさせたい、というわけですか」

官房長「さすが、よく分かってるね」

右京「しかし、事情を鑑みると腑に落ちないのが磯村課長のあの対応です。本籍は警察庁で現在は法務省に出向中という身分の彼が、なぜ捜査に非協力的なのか……」

官房長「警察庁はもちろん、法務省もこの法案は面白くないはずだからね。僕もてっきり協力を取り付けられると思ったんだけど」

亀山「まあ、この事件の真犯人をあげれば全部解決ですよ」

官房長「それが簡単に出来れば苦労しないんだけどね。……とりあえず、この件は君たちに任せます」

右京「分かりました。…では、我々はこれで。亀山君、行きましょう」

亀山「失礼します!」

今日はここまでです。
出来れば明日も更新します。

レスありがとうございます。
次に投降する1レスだけ地の文が入ります。ご了承ください。

その日の夜 磯村自宅近くの路地

磯村は自宅までのいつもの道のりを、少し疲れた様子で歩いていた。
警察に梅沢の持ち物が渡った事が気がかりだった。もちろん最低限の処理はしてあるが、自宅に保管することにしていた為、処理は甘い。データはいくらか復元されてしまうだろう。
だがあの計画が露見するまでの事態にはなるまい。いや、そうでなくては困る。なんとしても計画は完遂しなければ……。殺された梅沢の最期の悲願だったのだから。

ドン!

その時、突如胸に衝撃が走った。痛みで思わずその場にうずくまる。走り去る人影が右目の端に映った。
拳銃で撃たれたのだ。それもおそらくあいつらに。梅沢を殺した裏切り者め……!

おそらく折れているであろう肋骨をかばいながら、磯村は携帯電話を取りだした。

翌日 警視庁・特命係

亀山「右京さん、聞きました? 昨日磯村が撃たれたって話!」

右京「ええ、聞きました。自宅に帰るところを狙われたとか」

亀山「まあ幸いにも、磯村は防弾チョッキを着てて、骨折で済んだみたいですけどね」

右京「どうやら磯村課長は、自分が誰かに命を狙われていると知っていたようですねぇ」

亀山「一体誰が磯村を銃撃したんですかね? 普通に考えれば、例の事件の被害者を殺した犯人でしょうけど……」

右京「僕もそう思います。この二件が無関係だとは到底考えられません」

亀山「とにかく、磯村の家から手に入ったものから何かわかるといいっすね。とは言っても、手帳はほとんどのページが破かれてるし、スマホも壊されてるし……望みは薄そうですけど」

右京「米沢さんの力に期待するしかありませんね」

米沢「失礼します。諸々作業が終わりましたので報告に上がりました」

右京「いつもすみませんねぇ」

亀山「待ってました!」

米沢「いえいえ。スマートフォンのデータですが、損傷が激しくてほとんどデータが吹き飛んでいました。復元できたのは最後のメールと、通話履歴だけです」



最後のメール

無題

本文 彼らを頼みま



亀山「途中でとぎれてますね」

右京「彼らというのは誰を指しているのか……何を磯村課長に頼んだのか……これだけでは何もわかりませんね」

亀山「通話履歴のこのKとかQとかいうのは革龍会のやつですね。トランプをもじった暗号名!」

右京「やはり彼は革龍会を足がかりにしていたようですね」

亀山「じゃあこのIとAPってのはなんでしょう? Iって人とは、やたらやり取りしてますけど……」

右京「ならば、Iはおそらく上司の磯村でしょう」

亀山「APってのは?」

右京「それはまだこの段階ではわかりません。米沢さん、この番号の所有者はわかりませんか?」

米沢「残念ながら番号は改ざんされていました……。それとカードの利用者は梅沢秀一で登録されていました。これが利用記録です」



右京「……服を大量に購入していますねぇ」

亀山「こんなたくさんの服、一体どうするつもりだったんすかね?」

右京「現場となった梅沢さんの部屋に、服はあまり多くありませんでした。大量の服は果たして今どこにあるのでしょうねぇ……。手帳の方は?」

米沢「これと言って収穫はありません。ページがほとんど破られている上、指紋も梅沢と磯村のものだけでした。唯一残っていたのは、後ろのメモ…この部分だけです」

APに提供

・NIRV 済

・SH 済

・C 4 済

亀山「またAPか……。訳わかんないっすね」

右京「現時点では、足りないピースが多すぎるようです」


角田「おい! ビックニュースだぞ!」バッ!!

亀山「もーなんですか? いきなり」

角田「テレビつけてみろ!」

亀山「テレビですか?」ピッ



テレビ『……繰り返します。現在、何者かが子供たち四人を人質にとり、政府に対して、いわゆる『廃棄区画』に住んでいる人々の生活改善を要求している模様です……』

厚生省 公安局長室

禾生「磯村をしとめ損ねるとは……君には期待していたんだがね」

局員A「申し訳ございません……」

禾生「今のところ情報の漏洩は確認されていないのかね?」

局員A「はっ! 現在のところ、確認されておりません」

禾生「しかし梅沢と、例の電話の相手が公安調査庁の職員だったとはな。法務省に出向中の警察キャリアなら、情報が警察庁に漏れることも覚悟はしたが……」


ドアバーン!


局員B「き、局長! 大変です!」

禾生「なんだ? 今重要な……」

局員B ミミウチ

禾生「……!! なんだと……!」

レスありがとうございます!
少しですが更新します。

>>63の番号改ざんの下りは、相棒S15の元旦SPの犯人からの電話をイメージしてください。


廃棄区画人質篭城事件特別捜査本部

中園「えー現在、日本政府に対して、廃棄区画の住人の生活改善を、人質をとって要求するという卑劣な事件が発生している。
皆も知っていると思うが、廃棄区画は社会に適合出来ていないものが住みつき、犯罪の温床になっているとも言われている地域だ。到底、犯人側の要求をのむことは出来ない」

内村「この事件は我々刑事部だけではなく、厚生省公安局・警察庁警備局・公安部も別口で捜査に当たる。刑事部のメンツにかけて、奴らより早く事件を解決するんだ。いいな!」

捜査員一同「はい!」

中園「では今から、犯人グループの犯行声明を流す。現在報道がなされている犯行声明は規制がかけられたもので、これから流すものが犯人グループが流した完全なものだ。ニュースなどで目にしたという者も、しっかりとみておけ」

大画面モニター

刃物を持った覆面の人物と、荒廃した部屋に拘束され喉に刃を突きつけられた子供達

変声機音声「我々は日本という国に捨てられた人々全ての意見の代弁者だ。

今から述べる要求に日本政府が応じなかった場合は、ここにいる4人の穢れ無き子供達と、そしてここ日本で暮らす民の命が失われる事になるだろう。

我々の要求は、2020年以降の鎖国政策によって切り捨てられて言った人々、即ち棄民政策の対象となり海外に打ち捨てられた人々とその子孫の救済、

そして現代日本で生きる限り保障されているはずの生存権を無視され、ネズミのごとき生活を余儀なくされている廃棄区画住人の生活改善である。

日本政府の賢明な返答を期待する……」

捜査員「……」ザワザワ

中園「静粛に! ……犯行声明の発表からすでに約2時間が経過している。時間が長引けば長引くほど、人質の負担も増す。何としても迅速に犯行グループを確保・人質を救出しろ! 」

捜査員一同「はい!」

中園「ではまずこの人質になっている子供達の身元についてだが、なにか分かったことは?」

捜査員A「まだ何も分かっていません。現在、捜索願が出されている子供に該当する子はいません」

中園「親がニュースをみて気づく場合もある。捜索願が出されたらすぐに照合しろ」

捜査員A「了解しました」

中園「次! 犯人についてなにか判明したことはあるか?」

捜査員B「犯行声明から、犯人もしくは犯人グループは、棄民政……移民政策対象者もしくは廃棄区画出身者と思われます。現在移民政策対象者の中でかつてマークされていた人物及び前科者をあたっています。廃棄区画の方はデータがほとんどなく、照合は不可能です」

中園「人質が監禁されている場所について、何か分かっているか?」

捜査員B「映像を解析した限りでは、廃棄区画の何処かである可能性が高いかと」

内村「よし、まず廃棄区画一帯を捜索……」

右京「1つ、よろしいでしょうか」

中園「なんだ、お前たちは!」

右京「人質にされている子供達の……」

内村「特命係に用はない。 さっさと出て行け!」

中園「特命係に用はない。 さっさと出て行け!」

右京「では、これだけ。強行突入はあくまで最後の手段です。事件解決を急ぐあまり

内村「お前らに言われんでもそんな事は百も承知だ! 」

亀山「すいませんしたー! 失礼しまーす!」

警視庁・特命係

亀山「棄民政策……か。たぶん、報道規制されたのはこの部分でしょうね」

右京「世界各国の農耕可能地帯を政府が借り受け、移民として国に選ばれた日本人が現地に赴き、住み込みで農耕に従事し日本に作物を送ることで食料自給率をあげようとした政策です。しかしその移民の大半が戦争や内紛に巻き込まれ命を落とした……」

亀山「政府は借り受ける土地の下調べぐらいしなかったんですかね?」

右京「当時日本は急転換の鎖国政策で食料が不足していました。食は配給制となり、社会的な立ち位置によって食料の供給量が変わる傾斜配給方式を実施していたほどです。それによって餓死者も大量に出ていた。当時の政府にしてみたら、土地の安全などどうでもよかったと思いますよ。送りだした人々が食料を送ってくればそれでよし。命を落としたら落としたで国の負担は減るわけですからね」

亀山「嫌な時代ですね……」

右京「ええ。本当に……」

今日はここまでです。
同じこと二回かいてしまってすいませんでした。
週末にまた更新します。


棄民政策云々は公式設定?

>>76
PSYCHO-PASS GENESISの設定をお借りしました。

亀山「それはそうと、さっき捜査本部で何を言おうとしたんすか?」

右京「いえ、あの映像に違和感を覚えたものですから」

亀山「違和感……ですか」

右京「はい。僕があの映像をみて違和感を覚えたのは、人質の子供達の服装です。全員、長袖をきていました」

亀山「はあ……」

右京「この暑い夏に、普通長袖を着ますかねぇ」

亀山「まあ……冷房がよく効いてる部屋に閉じ込められてるとか?」

右京「廃棄区画に冷房がよく効く監禁場所があるとは、僕にはとても思えないのですが」

亀山「じゃあ……冷房が効いてる部屋から誘拐された……とか」

右京「可能性がないとは言えませんが、普通冷房が効いた部屋では半袖の上から何か羽織り物を着るのが普通ですよ。一歩外にでれば気温30度をゆうに超える暑さなのですから」

亀山「うーん……。ていうか右京さん、例の梅沢さん殺害事件のほうはどうします?」

右京「そちらも、もちろん重要ですが……この2つの事件、どうも僕には無関係に思えないんですよ」

亀山「その心は?」

右京「ありません」

亀山「え……根拠、ないんすか?」

右京「はい、ありません。強いて言うなら……勘……ですかねぇ。この人質事件は梅沢さん殺害とどこかで繋がっている。そんな気がしてならないんですよ」

亀山「右京さんがそんなこと言うの、珍しいっすね。でも、俺もなーんかそんな気がするんすよね……」

右京「それを抜きにしても、今は人質籠城事件の解決を優先しましょう。なにか捜査本部の方で新しい動きはあったのでしょうか」

亀山「さあ……内村部長の感じだと、廃棄区画にローラーかけるって感じでしたけど」

角田「おい! ビックニュースだ!」バッ!

亀山「ちょっ……! またですか?」

警察庁 官房長室


小野田「まあ、お掛けください」

片山雛子「ありがとうございます」

小野田「それで、本日はどんなご用件でしょうか?」

片山「今回の事件に対しての、政府の立場をお伝えしておこうと思いまして」

小野田「テロリストとは交

片山「テロリストとは交渉しない。テロとは断固戦う」

小野田「警察としても、それはもちろん心得ているつもりです」

片山「ええ。そうでなければ困ってしまいますわ」

小野田「では、どのような?」

片山「問題は、テロがおきた事ではなく、犯人の要求の内容です」

小野田「棄民政策対象者と、廃棄区画住人の救済……。棄民政策はたしかお父上が……」

片山「その通りです。政府として報道規制はかけましたが、この情報化社会ですもの。いつまでもつか……いつ国民の『良心』に火がつくか分かりません」

小野田「この国は、昔から朱に交われば赤くなる質ですから。ご懸念はよく分かります」

片山「私だって、父がしたことで出てしまった犠牲はもちろん助けたいんです。でも、今の日本にその余裕はない。そんなことをしたら、国の財政崩壊だけでは済まない事になってしまう……」

小野田「…………」

片山「政府としては、この事件を完全に犯人側……『国に捨てられた人々の代弁者』とやらを、極悪人として片付けたいんです」

小野田「……つまり、犯人に人質の子供を殺させたいと……」

片山「さすがは小野田官房長。理解が早くて助かりますわ」

小野田「しかし、警察にも立場というものがありますから」

片山「もちろん、捜査を中断しろなどという無茶を言うつもりはありません」

小野田「では、どうしろと?」

片山「刑事部は、廃棄区画にローラーをかけるおつもりだとか」

小野田「相変わらず、耳が早いですね……。そう聞いていますが」

片山「なら、私からお願いする事は一つです。何があっても、捜査を中断しないでください」

警視庁・特命係


亀山「で、ビックニュースってなんですか?」

角田「なんと、刑事部でいまから廃棄区画にローラーかけるんだとさ」

亀山「…………」

右京「…………」

角田「なんだか、反応悪いね……。まさか、もう知ってた?」

亀山「まあ、俺たちも捜査会議参加してましたから。……途中で追い出されましたけど」

角田「まーた勝手に捜査会議参加したの。懲りないねー」

大河内監察官「では、また勝手に捜査会議に参加していたんですね」

亀山「大河内さん!?」

大河内「特命係のお二人には、今から私と一緒に刑事部長室に来てもらいます」

亀山「はあ!? なんで俺たちがそんなとこに行かなきゃなんないんですか?」

大河内「特命係のお二人に、捜査情報漏洩の嫌疑がかかっています」

刑事部長室

中園「なんで呼び出されたか、わかっているな?」

亀山「いや、俺たちはなにも……」

中園「現場の捜査員から連絡があった。廃棄区画周辺にマスコミが張り込んでいるらしい」

大河内「ローラー作戦の情報がどこから漏れたのか、我々はそれを調べているんです」

亀山「知りませんよ俺たちは!」

内村「亀山……お前女房はなにをやってる?」

亀山「……帝都新聞…記者ですけど……」

大河内「情報は帝都新聞から広がったとの情報があります」

亀山「だからってそんな横暴な……俺は何も

内村「亀山!」

亀山「は、はい!」

内村「安心しろ。新しい就職先として、近所の居酒屋を紹介してやる……杉下!」

右京「はい?」

内村「お前にも


プルルル……プルルル……

ガチャ

中園「なんだ! 今取り込み中

片山『お久しぶりです、中園参事官』

中園「こ、これはこれは片山先生! ご無沙汰しております!」

片山『内村部長はいらっしゃいますか?』

中園「はっ! 少々お待ちください… 部長、片山議員です」


内村「お電話代わりました」

片山『お忙しいところすいません、内村部長』

内村「ご用件はなんでしょう?」

片山『捜査情報がマスコミにもれてしまったようですね』

内村「申し訳ございません。責任はすべて、うちの中園がとります」

中園「!?」

片山『過ぎてしまったことは仕方ないでしょう。それより、警察が廃棄区画の入り口で、墓石の様に動かないところを報道されるほうが問題です』

内村「では、すぐに撤収させて善後策を

片山『その必要はありません。そのまま作戦を実行してください』

内村「しかしそれでは……」

片山『いいから早くしてください。のろのろと捜査をして、人質になにかあったらどう責任をとるのかしら』

内村「……わかりました。では」


ガチャリ

ガチャリ


内村「捜査は継続だ。マスコミは気にせず、予定通り一斉捜索を行う」

亀山「え!?」

大河内「内村部長……それはあまりにも

内村「これは命令だ! 責任はすべて中園がとる!」

中園「……」

右京「待ってください、内村部長。犯人がニュースをチェックしている可能性もあります。軽率な

内村「特命の意見なんぞきいとらん! 中園!」

中園「…はっ!」

内村「現場の捜査員全員に、捜査を続行するように伝えろ!」

擬音かぶってしまって申し訳ない。
今日はここまでです。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年06月22日 (木) 15:59:32   ID: FmtDCCSX

面白い
期待して待ってます

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