未央「うおおおおお!!!」 (20)

モバマスSSです。

夕美「うおおおおお!!!」
夕美「うおおおおお!!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492222941/)
と若干の繋がりがありますが、未読でも問題ないです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1496141259

――346プロ内の一室



比奈「大変っス!!」バァン!



未央「うわあ! ……って比奈先生じゃん。どしたの、いきなり」

比奈「ハァハァ……未央ちゃん……だけっスか?」

未央「この部屋は私しかいないけど、なにかあったの?」

比奈「……芳乃ちゃんが悪霊に取り憑かれたっス」

未央「うん?」

比奈「トレーニングルームで、芳乃ちゃんが、悪霊に取り憑かれたっス」

未央「……聞き間違えじゃないかぁ。どのくらい徹夜してるの? あんまり無理しちゃダメだよ」

比奈「違うんス! 憑かれてるんスよ!」

未央「疲れてるのは比奈先生だと思うけど……」

比奈「信じられないのも無理はないけど本当っス。スタンドでもIBMでもなく、マジモンの悪霊がトレーニングルームにいたんス」

未央「えっと、そもそもよしのんも比奈先生も、普段トレーニングルームなんか使ってないよね? なんでまたそんなところに?」

比奈「アタシは今度ボクシングモノの漫画描こうとしてて、取材のために……」

未央「ジャンル幅広いね……」

比奈「芳乃ちゃんは、『あの部屋は悪い気が溜まっているのでー、祓っておきましょー』と」

未央「うん、まぁそういうこともある……かなぁ? それで?」

比奈「芳乃ちゃんが入室して瞬間を狙って、ドアの陰でスタンバってた悪霊がガバッと……」

未央「変質者みたいな悪霊だね。……ところで比奈先生、そういうの見えるの?」

比奈「アタシは見えないっスけど、同行してた小梅ちゃんが」

未央「小梅ちゃんもトレーニングしないよね? なんでいっしょに?」

比奈「生きてりゃそういうこともあるっス」

未央「説明が雑だよ」

比奈「細けえことはどうだっていいんス! 今問題なのは芳乃ちゃんっスよ!」

未央「まあいいけどさ、よしのん取り憑かれてどうなってるの? 暴れちゃったりしてんの?」

比奈「暴れるどころの騒ぎじゃないっス、半径2メートル以内に近づいただけでズタズタに引き裂かれる謎のフィールドが発生してるっス」

未央「ちょっとなに言ってるかわかんないな」

比奈「言葉通りの意味っス」

未央「ええ……? じゃあよしのんは今もトレーニングルームを壊し続けてるってこと?」

比奈「いや、今は夕美ちゃんが止めてくれたんで、気を失ってるっス」

未央「さっき半径2メートル以内に入ったら引き裂かれるとか言ってなかった?」

比奈「オーバーロード発動させてたんで、直接の被弾はないっス。ただ夕美ちゃんも自身の能力による消耗で、当分動けそうになく……」

未央「待って! なんか世界観おかしくない!? 能力ってなに!?」

比奈「説明してる時間がないっス」

未央「いや、重要なことだと思うんだけど……とりあえずよしのんが気を失ってるうちになんとかしようってことかな?」

比奈「そういうことっス。気絶してる今なら小梅ちゃんが芳乃ちゃんから悪霊を追い出すことができるらしいんスけど、そしたら飛び出した悪霊と戦う人が必要で……」チラッ

未央「そこで私を見ないでよ……ええと、たくみんとかは?」

比奈「拓海ちゃんはタイミングが悪いことに実家に帰省してるっス」

未央「呼び出そうよ、たくみんの実家なんて電車で1時間半かそこらでしょ。なんのための京急なのさ」

比奈「京急は拓海ちゃんだけのためにあるんじゃあないっス!!!」

未央「今のは私が悪かったから、ガチギレしないで!」

比奈「実際のところ、今から呼ぶんじゃ間に合わないっス。藍子ちゃんが『ゆるふわ』で引き延ばしてくれてるっスけど、それでも……」

未央「ゆるふわを能力っぽく言わないでよ。あーちゃんは巻き込まないでほしかったよ」

比奈「運が悪いことに、今日は事務所に残っていた武闘派パッションが夕美ちゃんひとりだけで」

未央「また聞き慣れない言葉が出てきたよ! 武闘派パッションってなに!? 初耳なんだけど!」

比奈「ああ……未央ちゃんは知らなかったっスか。武闘派パッションとは、拓海ちゃん・時子さん・早苗さん・夕美ちゃんの4人からなる、非常事態のために結成された戦闘ユニットっス」

未央「ゆーみんその枠に入っちゃっていいの!? 後悔しないの!?」

比奈「アタシに言われても……」

未央「まあそうだね。えーと、ようするに悪霊がよしのんに入ったまま目覚めたらまずいってことだね。で、いつ起きるかわからないから急いでると」

比奈「晶葉ちゃんの計算によると、あと15分くらいらしいっスけど」

未央「ちょっとその計算式見せてみなよ! 天才キャラだって言えばなんでも許されるって思ったら大間違いだよ!」

比奈「そんな時間はないっス」

未央「都合の悪いことはそれで押し切る気だね」

比奈「夕美ちゃんが倒れた今、残ったアタシや小梅ちゃんや晶葉ちゃんは非戦闘要員……ああ、どこかに運動神経抜群で15歳でバスト84センチぐらいの誰かが……」チラッ

未央「関係ないでしょ、おっぱいは。私も戦闘要員じゃないからね」

比奈「……どこかに身長161センチ、体重46キロで、射手座でB型の千葉県民は」チラッチラッ

未央「今まさに調べてきたみたいな情報羅列しないでよ、わざとらしい。…………あれ?」

比奈「どうしたっスか?」

未央「いや、ここ会社なんだから、いろんな部署に大人の男の人いくらでもいるよね? 女の子のアイドルなんかじゃなくて、荒事ならそっちに頼めば……」

比奈「それはダメっス」

未央「なんで?」

比奈「それはダメっス!!!」

未央「勢いだけで押し通さないでよ! わかったよ! 私がやるよもう!!」

比奈「わかってくれてなによりっス」

未央「トレーニングルームに行けばいいんだよね。……いまいち相手の想像ができてないんだけど、私は素手で戦わなきゃいけないの?」

比奈「む……流石に事務所っスから、武器になるようなものは鉄パイプぐらいしか……」

未央「誰か事務所に鉄パイプがあることを疑問に思わないのかな!?」

――トレーニングルーム



小梅「あ、比奈さん……誰かいた?」

比奈「イキのいいパッションを捕まえたっスよ!」

未央「なんて言い草だ」

小梅「おぉ……鉄パイプ、やる気まんまん……だね?」

未央「不本意極まりないよ。……それで、よしのんは?」

小梅「り、リングの上……」



芳乃「……すやすやでしてー」



未央「そんな寝言があってたまるか!!」

比奈「未央ちゃん! 大声出しちゃダメっス! 今起こしたら台無しっスよ!」

未央「悪かったよもう。……あれ? よしのんはなんで寝てるんだっけ?」

比奈「夕美ちゃんがボディブロー一発で眠らせてくれたっス。あれは正気に返っても晩ごはんは食べられないっスね」

未央「いろいろ言いたいけど、やめとこうかな……ゆーみんは?」

小梅「リングサイドに……」



夕美「……むにゃむにゃっ」



未央「無理がある!!」

比奈「極度に体力を消耗してるっス。今は寝かしておいてくださいっス」

未央「寝てるとか起きてるとかいう問題じゃないよ! 普段のゆーみんだって必ず語尾に『っ』付けてるわけじゃないからね!」

比奈「あれ? そういえば藍子ちゃんは?」

小梅「『ゆるふわ』を使いすぎたから、仮眠室で休んでる」

未央「だからさ!」

小梅「未央さん……準備するから、リングに上がって」

未央「わかったよもう……よいしょっと。さて、こっからどうするの?」

比奈「小梅ちゃんが悪霊を追い出したら、アタシと小梅ちゃんで芳乃ちゃんをリングの外に降ろすっス。また入られたらたまんないっスからね。そしたら未央ちゃんは芳乃ちゃんから分かれた悪霊をブッ倒してほしいっス」

未央「……そもそも霊に打撃は効くものなの?」

小梅「取り憑くタイプの霊は、直前に憑いてた対象に影響されるから、たぶん人型になるし物理攻撃も効くと思う。もちろん比奈さんや未央さんにも見えるはず」

未央「それはまたえらく都合がいいね。……どうぞ、やっていいよ」

小梅「……うん、じゃあいくね、えいっ!」ペシッ

芳乃「――――!」ビクンッ


『ブオオオオオ』



未央(口から、黒い……煙?)

比奈「全部出たっスね! 小梅ちゃん! 芳乃ちゃんをこっちに!」

小梅「う、うん……! よいしょ、よいしょ……」



未央(たしかに人型……だけど、これは――)



小梅「こ、これだけ離れれば、だいじょうぶ……」

比奈「芳乃ちゃんの避難は完了したっス! 未央ちゃん、やっちゃっていいっス!」



未央(簡単に言ってくれるけどさ……)



小梅「あ……あの……形は」

比奈「真っ黒い……鎧武者っスね。でっかいし、刀まで帯びてる。ハハッ」



未央「『ハハッ』じゃないよ! 私これと戦うの!?」



小梅「が、がんばって……」

比奈「よそ見してると危ないっスよ!」



未央「――っと!」

『ギィン!』

未央(あっちは殺る気満々だね!)



比奈「鉄パイプで止められた、ってことは完全に物質化してるってことっスかね?」

小梅「うん……あの刀も霊体だけど……本物と変わりないみたい」



『ギィン! ギィン! ギィン!』



小梅「ど、どう……? 勝てる?」

比奈「……見た感じ、背丈は180センチ台後半はあるっスね。見た目通りの腕力があるとすれば、パワーじゃ分が悪いっス」

小梅「まずい……かな?」

比奈「いや――力だけが戦闘の要じゃないっス。未央ちゃんなら……」


『ギィン! ギィン! ギィン!』



比奈「……うまく捌いてるっスね」

小梅「で、でも……未央さん自分から攻撃してないよ? どうして?」

比奈「武器の差っスね」

小梅「武器の……?」

比奈「そう、未央ちゃんの武器は鉄パイプ、ぶっちゃけ重いっス。あれで体重を乗せて殴ったら、どうしたって体勢が乱れる。だから、下手に攻撃して空振りするワケにはいかないんス。相手に隙ができて、狙いすました一撃を叩き込めるチャンスをうかがってるんだと思うっス」

小梅「な、なるほどー……」



未央(合ってるけど……気が散るなぁ……)

『ブォン!』

未央(くっ! 横薙ぎ――避けきれない、止めないと――)



『ギィン!!』



比奈「片手念仏鎬受け!!」

小梅「知ってるの? 比奈さん!」



未央「ちょっと黙っててくれないかな!!」


『ギィン! ギィン! ギィン!』



比奈「しかし、焚きつけたアタシが言うのもなんっスけど……よく戦えてるっスね」ボソボソ

小梅「み、未央さん、強いんだね?」ボソボソ

比奈「正直言って期待以上っス。まさかここまでとは」ボソボソ






未央(このトレーニングルームは、私も普段から使っている)



未央(ある時からここにはボクシング用のサンドバッグや、今私が立っているリングが搬入された)



未央(トレーニングの一環として、他のアイドルとグラブを交えることもある)



未央(だから怖くない)



『ブォン!!』



未央(時子様のジャブはもっと速い)



『ギィン!!』



未央(たくみんの拳はもっと重い)



比奈「大上段! 来るっス!」

小梅「よ、よけて……!」



未央「早苗姉さんはッ! もっと強いッ!!」



『パキィィン』



小梅「か、刀が……」

比奈「折れたっスね、まさか、最初からこれを狙って……?」



未央「もらったァ!! うおおおおお!!!」


『ガァン!!』

『ベキベキベキ――ボウッ』



比奈「やっ、やったッ!!」

小梅「…………あ」



未央「はあっ、なんとかなったね……」 



『ブオオオオオ』



小梅「だ、だめっ! 未央さん! とどめを刺して!」

未央「え? とどめって……もう……」



『オオオオオオ』



比奈「まさか、未央ちゃんに!?」

小梅「ち、違う! あそこには……!」



『オオオオオオ……』



夕美「…………」



未央「……ゆーみん?」



夕美「ミオ……チャン」



未央「ゆーみんだよね? なんか、声が変だよ。こんなとこで寝てたから、風邪ひいちゃったのかな?」



夕美「ミオチャン、オハナ……ハ、スキ?」



未央「ゆーみん……」



夕美「オハ……ナ……」



小梅「会話しちゃダメ! それはもう、夕美さんじゃないから!!」

比奈「なんって……禍々しいオーラ……」

未央「……わかってることがあるなら、全部教えて」

小梅「……悪霊の本体はさっきの黒い煙。未央さんの攻撃でほとんどは消えたけど、ほんの少しだけ倒しきれずに残った。その少量が今、夕美さんに取り憑いてる。量が減った分弱ってはいても、あれは人間に憑いて本領を発揮するから……むしろさっきのよりも厄介かも」

比奈「芳乃ちゃんに憑いてた時とは感じが違うっス。おそらく宿主となった人間の持つ力を使えるということだから、全てを切り刻む空間は芳乃ちゃんが元々備えていた能力で今は発生させられないと見ていいっス」

未央「でも、ゆーみんにもあるんだよね、なにか」

比奈「……発動条件は不明っスけど、防御の能力っス。憑かれていた芳乃ちゃんの目の前まで無傷で近づけるような。ただ、その代償として著しく体力を消耗するみたいっス。そして……」

小梅「比奈さん……それは……」

比奈「いや、いいんス。……そして、芳乃ちゃんを止めるために限界まで体力を消耗して昏倒した夕美さんは、本来ならとても立ってられる状態じゃないはずなんス。悪霊が憑いて、操ってるから動けている。その状態で、これ以上オーバーロードを使ったら、きっと死んでしまいまス」

未央「……だったら、私から攻撃するわけにはいかないね」ガラン

小梅「でも……それじゃ……」

未央「だいじょーぶ、この未央ちゃんに任せなさい」

比奈「なにか考えがあるっスか?」

未央「考えってわけじゃないけどね……たぶん、うめちゃんは間違ってる。あれはやっぱり、ゆーみんなんだよ。悪霊さんが弱ってるからかな、きっと意識の全部は渡してない」

小梅「そんなはずないけど……」

未央「よしのんは、取り憑かれてるとき喋ってた?」

比奈「え? いや、どうだったっスかね?」

小梅「そういえば……声は出してなかったような……」

未央「……だって、もし悪霊だかなんだかがゆーみんの体を完全に支配できてるってんなら、なんでゆーみんは今、泣いてるのさ」






夕美「オハ……ナ……」


未央「……だいじょうぶだよ、すぐに助けてあげるからね」



夕美「オハナ、ハ……スキ?」



未央「うーん、正直言うと、元々はあんまり興味なかったかな? 自分でも花より団子ってタイプだと思うし、ユニット組んでるしぶりんがお花屋さんだからさ、今更なにをどうしたって知識じゃ敵わないよなぁって思っちゃったりね」



夕美「…………」



未央「でもね、たまにゆーみんと遊ぶようになってから、少しは植物の名前覚えたりしたんだ。いっしょに歩いてるとき、ゆーみんが見かける草花とか街路樹の解説してくれるじゃん?『あれはツキミソウだねっ』とかさ」



夕美「……オハ……ナ」



未央「そんなこともあってさ、今まで気にしてなかったようなお花にも目を向けるようになったよ。こないだゆーみんに連れてってもらった、パンケーキの美味しいオープンテラスのカフェ、植え込みに薄紫色の小さい花が寄り集まって房になっているのがいっぱい咲いててキレイだよね」テクテク



夕美「……ライラック」



未央「うん、ライラックが英語で、リラがフランス語だっけ? これもゆーみんに教えてもらったんだよね」テクテク



夕美「オハナ……スキ……」



未央「そういえばね、前ゆーみんにミニサボテンあげたじゃん? あれ実は自分の分も買ってあってさ、家で育ててるんだ。どこかでお味噌にロックを聴かせると美味しくなるなんて話を聞いてね、じゃあサボテンにロック聴かせたら元気になるかなって思って、実験してるんだ。名前はサボリーナ」テクテク



夕美「サボ……テン……」



未央「つかまえたっ」ギュッ


夕美「…………」



未央「攻撃、してこなかったね、できたはずなのに。きっと、ゆーみんが抑えててくれたんだよね、ありがとね」



夕美「ミオチャン、オハナ……ハ、スキ?」



未央「うん、今はお花、好きかな。でも最初はね、私がお花の話題に乗っかったときに、ゆーみんが嬉しそうにする顔を見るのが好きだったんだ。なんだか見ているだけでこっちまで幸せな気分になってきて、この笑顔を見れただけでもあのお花に感謝しなきゃ、なんて思っちゃったりね」



夕美「オハナ……」



未央「だから、もう泣かないで。私は、いつも明るくキレイで、太陽みたいに笑ってるゆーみんが大好きだよ」






   ☆☆★



比奈「――というネタを考えたんスけど、どうっスかね?」

未央「細部が雑だよ!」



   ~Fin~

終わりッス。

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