千歌「もしも!私と曜ちゃんの幼馴染設定がなかったら!」シャキン! (55)

千歌「学校面倒だなぁ......」

志満「ほらっ、そんなこと言ってないで!早く行かないとバス遅れちゃうよ」

千歌「......志満姉、やっぱり今日学校休んじゃダメ?」

志満「ダメです」ムッ!

千歌「は~い......」ズルズル

美渡「新学期早々テンション低いな~。学校楽しくないの?」

千歌「......別に。クラスの子とはうまいことやってるし」

美渡「そうだ!せっかくの新学期なんだしさ。あんたも髪飾りでもつけてイメチェンしていけば?私が学生のとき使ってたのあげるから」

千歌「私は髪飾りなんかしなくてもいいの!そんなのつけても悪目立ちするだけだし」

美渡「悪目立ちって......あんたも華の高校生なんだからさ~」

千歌「とにかく!私はそういうのいいから!じゃ、行ってきます」

ガララ

美渡「行っちゃった......」

美渡「『うまいことやってる』、かぁ。やっぱ楽しくないのかな、高校」

志満「昔はもっと元気で、学校も楽しそうだったのにねぇ......」



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千歌「はぁ......」トボトボ

千歌(ついに今日から新学期。憂鬱だなぁ......)

千歌(毎日朝早くに起こされて、つまらない授業を受けて、昼休みにはクラスで浮かないように、ジャニーズの誰がカッコいいとかそんな全く興味ない話を延々として......そんなの何が楽しいっていうんだろう)

千歌(一回だけの青春なんだからありがたく謳歌しろ!なんて美渡姉は言うけど、人には向き不向きってものがあると思う)

千歌(私みたいな地味人間には、青春の輝きは体の毒にしかならないんだ)

千歌(幸い、浦女みたいな辺境の女子校には人の迷惑も顧みず輝きをまきちらす、いわゆる“リア充”はほとんどいないから助かったけど)

千歌(あ、でも一人だけ......)

プップー

千歌「うわっ!もうバス来てる!乗りまーす!」

千歌(ふーっ、なんとか間に合った)

千歌(今日結構混んでるなぁ。いつもなら確実に座れるのに)

千歌(えーっと、空いてる席は......あっ!一番後ろの席が空いてる!)

千歌(ラッキー!窓側は誰か座ってるけど、まぁいいや!)

千歌「あの、隣いいです......」

曜「?」

千歌「か......」

千歌(うげぇ......やってしまった......)

千歌(よりにもよってあのスーパーリア充の渡辺さんが隣に座ってるなんて......)

千歌(すっごい明るくて、クラス一番のムードメーカー、典型的リア充......)

千歌(私、この人苦手なんだよなぁ。誰彼構わず仲良くしようとするし......)

曜「......」マジマジ

千歌(どうしよ、こっちガン見してるよ......)

千歌(一応クラスメイトだし、ここまできて座らなかったら流石に感じ悪いよね。背に腹は変えられない!)

千歌「あの......」

曜「千歌......ちゃん?」

千歌「え」

千歌(名前呼び!?)


千歌(えぇ!?私と渡辺さんって名前で呼び合う間柄じゃないよね!?そんなこと口が裂けても言えないけど)

千歌(何か意図がある?リア充にとってはこれが普通なの?私も名前で呼んだ方がいいの?曜ちゃんって......
)

千歌(いやいやいや!ないないっ!そんなことして渡辺さんの機嫌を損ねでもしたらマズイ!)

千歌(うん。ここはできるだけ失礼のないように......)

千歌「おはよう、渡辺さん。そこ、座ってもいいかな?」

曜「......」

千歌「あ、あの......」

曜「......」

千歌(え!?何、なんで無言なの!?私なんかやらかした!?)

曜「......うん、どうぞ。高海......さん」

千歌(あ、呼び方戻った。でも変だなぁ。この人、普段はもっとテンション高いのに。朝弱いのかな)

千歌「あ、ありがとう」

曜「......」

千歌「......」

千歌(気まずい......)

曜「......」

曜「うぐっ......」グスッ

千歌(泣いた!?)

曜「うっ......ごめ......ぐすっ......」ポロポロ

千歌(しかもボロ泣き!?今までのやりとりのどこに泣く要素があったの!?)

千歌(と、とりあえず周りの目が痛いから助けてあげないと......)

曜「うぐっ......えっぐ......」ポロポロ

千歌「あの......ハンカチ使う?」

曜「あ、ありがと......」

曜「っ!」

千歌「こんなダサいみかんの柄のしかないんだけど......」

曜「高海さん、みかん好きなの?」

千歌「えっと、まぁ......」

曜「......」プルプル

千歌「?」

曜「よかったぁ......」ボソッ

千歌(え?何が?)

プップー

千歌(あっ!なんやかんやでもうバス停だ!さっさとこの場から逃げよう!)

千歌「そ、それじゃ、渡辺さん!私急いでるから先行くね!」ダッ!

曜「あっ......」

曜「......」シュン

善子「......」

善子(後ろで泣いてた人、うちの高校の先輩よね......)

善子(雰囲気から察するに、さっきのは世界線を超え、自分の記憶を失ったヒロインに出逢ってしまった、という設定かしら)

善子(何それ!最高じゃない!ありがたく頂戴するわ!)

学校

ガヤガヤ

千歌(なんだったんだろう、さっきの......)

千歌(もしかして、渡辺さんって意外と情緒不安定なのかな?)

千歌(巻き込まれるこっちはたまったもんじゃないよ......)

千歌(あ、ハンカチ......まぁ、いいや)

千歌(そういえば、クラスは全く同じだけど新学年だから一応席替えあるんだよね)

千歌(私の席は......よしっ!窓際最後尾確保!)

千歌「......」チラッ

千歌(桜、満開だ......)

千歌(綺麗だなぁ。窓際の席でこんな景色を眺められるなんて、やっぱり今日学校きてよかったかも)

千歌(......あれ?私ってこんな桜見るの好きだったっけ?)

千歌(花見なんて、酔った大人のご機嫌とりしなきゃいけなくて苦痛なだけなのに......)

千歌(なんでだろう。今は、すごく懐かしくて、心地いい感じがする......)

「ホームルーム始めまーす。席についてください」

「まず始めに、今日は転校生を紹介します」

千歌(転校生?高校で、しかもこんな田舎に?)

千歌(どんな子なんだろ......)

千歌(!?)

梨子「あの......東京の音乃木坂という高校からきました、桜内梨子です」

梨子「ここに引っ越して来たのはお父さんの仕事の都合が理由です」

ガヤガヤ

千歌(うわっ、すっごい美人!名前も超可愛い!)

千歌(あんな可愛い子、生まれて初めて見たよ......)

梨子「えっと、よろしくお願いします」

千歌(それにしても綺麗だなぁ。髪サラサラで、ほっそりしててまるでお姫様みたいで......)

千歌(それでいてどこか落ち着いた雰囲気で、ちょっと大人っぽくて......)

梨子「......」ニコッ

千歌「!?」ドキッ



千歌(今私と目あったよね!?)

千歌(ど、どうしよ。話しかけて、みようかな)ドキドキ

千歌(って!何ドキドキしてんだ、私!)

千歌(うん!ちょっと自己紹介するだけ......)

千歌(あっ......)

千歌(早速クラスの子に囲まれてる......)

千歌(性格も良さそうだし、あの子もきっとクラスの人気者になるんだろうな)

千歌(あの子と私じゃ、月とスッポン。最初からわかってるじゃん)

千歌(友達になんて、なれるわけ......ない)

千歌「はぁ......」

千歌(でも、なんで私はあの子と友達になりたいなんて思ったんだろう)

千歌(もう何年も一人ぼっちなのに)

千歌(実は前世で親友だったとか......そんなわけないか)

曜「......」

千歌(あれ?そういえば渡辺さんは行かないのかな?普段なら真っ先に話しかけに行きそうだけど......)

放課後

千歌(んぐぐぐ!やっと授業全部終わった~!あの生徒会長、話が硬すぎるんだよね)

千歌(家帰っても特にやることないけど......またダラダラしよっと)

千歌(あ、桜内さんは......もう帰っちゃったみたい。何か用事でもあったのかも)

千歌(挨拶だけでも、しとけばよかったかな......)

千歌(桜内さん、どこに住んでるんだろう......)

千歌(桜内さん、部活とかはいるのかな......)

千歌(桜内さん......)

千歌(って!私また桜内さんのことばっかり考えてる!まだ喋ったこともないのに!)

千歌(ダメだダメだ!!考えるな!私!)

千歌(深呼吸、深呼吸)

千歌「スーハー、スーハー」

曜「......高海さん?」

千歌「ひぃっ!?」ビクッ!

曜「うわっ!?」ビクッ!

千歌「ご、ごめんなさい!ちょっと考えごとしてて......」

曜「ううん、こっちこそ急に話しかけてごめんね!」

千歌「あはは......」

曜「......」

千歌(また気まずい......)

千歌「あの......私に何か用?」

曜「......うん。高海さん、もう帰りでしょ?」

千歌「そうだけど?」

曜「私も今日部活休みなんだ。だから......」

千歌「へ?」

曜「よかったら、一緒に帰らない?」

曜「......」

千歌「......」

千歌(なんでこんなことに......)

千歌(バスが来てうちに着くまで30分、渡辺さんと二人きりでお喋りしなきゃいけないなんて......)

千歌(渡辺さん、1年の時はここまでは絡んでこなかったのになぁ......)

曜「......高海さん、さっきはごめんね」

千歌「え、何が?」

曜「ほらっ、私急に泣き始めちゃったでしょ?高海さんのこと困らせちゃった」

千歌「あぁ......」

曜「うち、みかんって名前のインコ飼ってたんだけどさ。実は今朝死んじゃって......その子の色がみかん色だったから、つい高海さんと重ねちゃったんだ」

千歌(そうだったんだ......)

千歌(てっきりちょっと頭がおかしいのかと思っちゃったよ。そんなわけないよね、渡辺さんリア充だし)

千歌「全然気にしてないよ。大事なペットが死んじゃったら誰だって悲しいよ」

曜「......ありがと。高海さんはペットとか飼ってるの?」

千歌「ううん。うち、旅館やってるからペットとか絶対ダメなんだ」

曜「旅館?」

千歌「うん。十千万って旅館なんだけど......」

曜「十千万って、もしかして水戸シーの近くの?」

千歌「え?もしかして知ってるの?」

曜「あの古風な旅館だよね!すっごく高級そうな!」

千歌「いやいや、そんなことないよ!古風っていうか古いだけだし、たまに私もお手伝いさせられたりするし......」

千歌(うちって高級そう、なのかな?)

千歌「渡辺さんの家は何やってるの?」

曜「うち?うちはお父さんが定期船の船長をやってるんだ~」

千歌「船長さん?カッコいいね~」

曜「でしょでしょ!あっ、お父さんの写真もあるよ!」

千歌(え?お父さんの写真私に見せるの?)

曜「ちょっと待ってね......みて!私の隣の人!」

千歌「どれどれ......うわっ、超マッチョ!」

曜「海の男って感じでカッコいいでしょ~」ニコニコ

千歌「確かにカッコいいけど......渡辺さんってもしかしてファザコン?」

曜「ちょ!違うよ!」

千歌「もしかしてまだお父さんと一緒にお風呂入ってたり......」

曜「そ、それは......」メソラシ

千歌「え」

曜「お願い!誰にも言わないで!」

千歌「うそ......」ドンビキ



曜「......な~んて冗談!流石にそれはないよ!」

千歌「ほっ......びっくりさせないでよぉ......」

曜「あはは!高海さん本気でひっかかってた!」

千歌「だって迫真の演技だったもん!」

曜「ふふっ!お父さんとお風呂なんて、高校に入って卒業したよ」

千歌「ん?高校に入って......」

千歌「」

千歌「へ、へぇ......」ドンビキ

曜「ぷふっ......あはははは!」

千歌「え?」

曜「冗談だよ!冗談w」

千歌「渡辺さん!!」

曜「高海さん、すぐひっかかっておもしろい!」

千歌「もうっ!............ふふっ!」

千歌(なんでだろう、さっきまであんなに気まずかったのに)

千歌(いざ話してみると、渡辺さんってすごく話してて楽しい!)

千歌(まるで幼馴染の親友相手みたいに素の自分がだせる。幼馴染なんて私にはいないけど)

千歌(流石渡辺さん。やっぱりリア充はすごい)

千歌(もっと、お話ししてたいな......)

曜「でも、確かにあの旅館じゃペット飼うのとか許可降りなさそうだね~」

千歌「そうなんだ~。本当は私も犬とか飼ってみたいんだけど」

曜「高海さんはどんなのが好き?やっぱりチワワみたいなちっちゃいの?」

千歌「う~ん......私は大型犬がいいかも。あと、目が隠れちゃうくらいモフモフの!」

曜「あ!私も大型犬好き!でもなんでモフモフ?」

千歌「モフモフしてたほうが可愛くて好きなんだ~。あと、冬は抱き枕になってもらったりして!」

曜「あはは!なにそれ!」ケラケラ

千歌「も~!なんで笑うの!」

曜「だって、飼いたい犬の基準が抱き枕になるかどうかって!ふふふっ!高海さんらしい!」ケラケラ

千歌「むっ!じゃあ曜ちゃんはどんなのがいいのさ!」

曜「私はねぇ......え?」

千歌「あ......」

千歌(しまった......話が盛り上がってつい名前で......)

曜「高海さん!」パアアァァァ!!

千歌「ご、ごめんね!私なんかがうっかり名前で呼んじゃったりして......」

曜「全然いいよ!私たち、クラスメイトなんだし!」

曜「あっ、そうだ!私もさ、高海さんのこと「本当にごめんなさいっ!!!」

曜「え......」

千歌「ごめんなさい......」プルプル

曜「そ、そんな謝らなくても......」

千歌「もう二度とこんな馴れ馴れしくしないから。本当にごめん!」

千歌「私ここで降りるね。それじゃ!」ダッ!

曜「あっ!高海さん!」

ヒソヒソ

曜「どうして......」

プップー ハッシャシマース

千歌「......」

千歌「はぁ......」

千歌(やっちゃった......)

千歌(家まで歩いて帰らなきゃ)

千歌「......」トボトボ

千歌(ごめんね、渡辺さん。せっかく私と仲良くしようとしてくれたのに......)

千歌(私が、臆病だから......)

千歌(絶対、変な子だと思われたよね)

千歌(また、嫌われちゃった......かな)

千歌(でも、またあんな思いをするくらいなら......)

~~数年前~~

千歌(ふんふんふ~ん? 来週からはついに中学初のゴールデンウィーク!)

千歌(中学に入ってからいっぱい友達できたし、遊びまくるぞ~!)

千歌「ねぇねぇ、みんな明日はどこで遊ぶ?久しぶりにカラオケ行こっか?」

モブA「......」

千歌「あっ!それともうちくる?こないだ知り合いにもらったみかんがいっぱいあるんだ!みんなにもお裾分けするよ~」

モブB「チッ......」

千歌「そのみかんがね!もうとっても美味しくて「ねぇ」

千歌「ん?どうしたの?」

モブC「前から思ってたけどさ。なんなの、そのキャラ」

千歌「え?キャラ?」

モブC「みかんみかんってさ。なに必死になって自分のことキャラ付けしようとしちゃってるわけ?」

モブB「あっ、それ私も前から思ってたわ~」

モブA「私も~。なんか無理して目立とうとしてるよね~」

千歌「べ、別に無理してるわけじゃないんだよ?私は本当にみかんが大好きだから......」

モブB「ってゆーかさ。いい年してその髪型、ありえなくない?」

千歌「っ......」

モブA「わかるわかる!いくらなんでもこれはないわ~!」

千歌「でも!みんな前は似合ってて可愛いって......」

モブC「何そんなの間に受けてんの?」

モブA「お前の家鏡ないのかよ」

モブB「鏡くらいあるでしょw」

千歌「え......え......?」オロオロ

千歌(なんで?みんな昨日まではすごく優しかったのに......)

千歌「......」プルプル

千歌「そ、そっか~!ドッキリだね?いや~、ちかち~見事に騙されちゃった!」

千歌「よおし!次は何して遊ぼっか?なんでも受けて立つよ~!」

モブA「は?」

モブB「なんか腐ったみかんが現実逃避してるよ」

千歌「腐った......みかん?」

モブA「自分のあだ名知らないの?」

モブB「ってゆーかさ、お前キモい」

千歌「っ!......」

モブA「直球すぎw」

モブC「あ、お前臭いからもう私らに近寄らないでね」

モブB「腐ったみかんだもんね~w あ~、くさっw」

モブA「ぶふっw」

千歌「......」

千歌「......」トボトボ

現在

千歌「......」トボトボ

千歌(みんな、最初は優しかった)

千歌(でも、ある日突然態度が変わった)

千歌(渡辺さんも、浦の星のみんなもそんなひどい人たちじゃないってことはわかってる)

千歌(でも、私は怖いんだ......)

千歌(友達だと思っていた人に、裏切られることが)

千歌(また、あんなつらい気持ちを味わうくらいなら、私は一生友達なんてできなくても構わない)

千歌(ううん、渡辺さんみたいなリア充と私なんて最初から不釣合いなんだよ)

千歌(次からはちゃんと距離を保ってお話しないと......)

十千万

ガララッ

千歌「ただいま......」

志満「お帰りなさい」

千歌「......」トボトボ

志満「千歌ちゃん、ちょっと待って」

千歌「......どうしたの?」

志満「さっき友達が来てたよ」

千歌「友達?」

千歌(誰?私に友達なんて......)

志満「これを返しといて欲しいって」

千歌「あ、私のハンカチ......」

千歌(そういえば渡辺さんに貸したままだったな。っていうことは渡辺さんがわざわざうちに?)

千歌(別に明日学校で返してくれたらよかったのに)

千歌(あれ、ハンカチに紙が包まれてる?何か書いて......)


「無理に話しかけちゃってごめんね。名前、呼んでくれて嬉しかったよ。」


千歌「これ......」

千歌(渡辺さん、私のこと友達だと思ってくれたのかな)

千歌(あれ?)

千歌(この紙、少し濡れてる?)

千歌(まさか!渡辺さん......)

志満「千歌ちゃん」

志満「これを渡しにきてくれた子、すごく辛そうだったよ」

千歌「......」

志満「千歌ちゃんとあの子の間に何があったかのか、私にはわからない」

志満「でも、千歌ちゃんはちゃんとあの子の気持ちを考えてあげた?」

千歌「っ!」

千歌(そうだ......)

千歌(私、なんて自分勝手なんだろう......)

千歌(自分が傷つかないために、逃げて、逃げて......)

千歌(リア充がどうとか言って言い訳して、渡辺さんがすごく傷ついてるのに見向きもしないで......)

千歌(友達だと思ってた人に裏切られることがどんなにつらいか、自分が一番よく知ってるのに......)

千歌「私、最低だ......」ポロポロ

志満「千歌ちゃん......」

千歌「渡辺さん......こんな......悲しんでるのに......」ポロポロ

志満「......」ギュー

千歌「うぐっ......志満姉っ......私、ひどいことして......どうしたら......」ポロポロ

志満「大丈夫、大丈夫だよ」ナデナデ

志満「千歌ちゃんは人の痛みがちゃんとわかる優しい子だから、あの子もきっと分かってくれる」

志満「でも、その前に言葉にして伝えなきゃね。ありのままの自分の気持ちを」

千歌「ありのままの、自分の気持ち......」

千歌(私は......渡辺さんと......)

千歌「志満姉!私ちょっと行ってくる!」ダッ!

志満「うん。いってらっしゃい」

美渡「ただいま~。今馬鹿が一人飛び出してったけど、どしたの?」

志満「ふふっ♪」

美渡「何、その不気味な笑み」

志満「美渡ちゃん、今日の晩御飯はすき焼きにしよっか」

美渡「すきやき!?おっしゃーっ!でもなんで?」

志満「ヒミツ!」

郵便局前

千歌「はぁはぁ!」タッタッタ

千歌(きっと、渡辺さんはまだバス停にいるはず!なんたって内浦は田舎だからバスの本数は限られてる!)

千歌(お願い、間に合って!)

千歌(今、伝えなきゃいけないんだ!)

千歌(渡辺さん!)

千歌「はぁはぁ!」タッタッタ

千歌(あっ!もうバスが!)

曜「......」

千歌(渡辺さんも乗ってる!)

プップー ハッシャシマース

千歌「待って!乗ります!乗りまーす!」

ガシャン

千歌(あぁ......)

千歌(そんな......)

ウィーン

千歌「!?」

善子「あー、危うく降りるの忘れるところだったわー(棒読み」

千歌「......」ポカーン

善子「......ほらっ、さっさと乗りなさい。せっかく世界線を超えて会いにきてくれたのだから」

千歌「セカイセン?よくわかんないけど、ありがと!」

プップー ハッシャシマース

善子「ふふっ、いい設定を頂いたお礼よ」

善子「えっと、次のバスは......」

善子「二時間後!?」

バス内

曜「......」ボー

曜(私、本当にどうしちゃったんだろ......)

曜(一日中、高海さんのことばっかり考えてる)

曜(朝起きたときから高海さんに会いたくて仕方なくて......)

曜(いざ高海さんに出会ったときには気持ちがすごく高翌揚して、逆に名前を呼ばれたとき突然悲しくなって、終いには泣いちゃって......)

曜(高海さんのみかん柄のハンカチを見たときは何故か安堵して......)

曜(これじゃ高海さんからみたら情緒不安定な危ない子だよ......)

曜(高海さんとお喋りするの、すごく楽しかったな......)

曜(まるで大昔からの親友と話すみたいで、笑いが止まらなくって、すごく幸せで)

曜(でも、そう思ってたのは私だけ......なんだよね)

曜(そりゃそうだ。たいして仲良くないクラスメイトにいきなり絡まれるのが楽しいわけない)

曜(高海さんからすれば、きっとすごく苦痛だったんだろうな......)

曜(私が勝手に友達になれたと勘違いして喜んでただけ......)

曜(高海さんとは......もう、関わらないようにしないと)

曜(高海さんは......私のことなんか......嫌い、だから......)

曜「っ......」プルプル

曜(なんで......なんでこんなに胸が苦しいの......)

曜(わけ、わかんないよ......)

曜「千歌ちゃんっ......」ボソッ

「渡辺さん!」

曜「え......」

千歌「隣、いいかな?」

曜「た、高海さん!?なんでバスに......」

千歌「細かいことは気にしないの!よいしょっと」

曜(どうして......高海さんは私のことが嫌いなはずじゃ......)

曜「ご、ごめんね!私席移るから......」

千歌「だーめ!渡辺さんに用があるの!」

曜「私に......用?」

千歌「あっ!今のは渡辺曜と渡辺さんに用をかけたわけじゃないからね!」

曜「......ぷふっ!なにそれ」

曜(高海さん、やっぱりおもしろいなぁ)

曜(でも、私に用っていったい......)

千歌「さっきはごめんなさい!!」

曜「え?さっきって?」

千歌「私、渡辺さんの気持ちを考えてなかった。だから、渡辺さんのことすごく傷つけちゃって......本当にごめんなさい!」

曜「もしかして、急にバスを降りたこと?全然気にしてないよ?」

千歌「渡辺さん、ダウト!」

曜「だ、だうと?」

千歌「渡辺さん、泣いてたでしょ!私の目はごまかせないよ!」

曜「うっ......なんでバレて......」

千歌「やっぱり泣いてたんじゃん」

曜「あ......は、計ったなぁ!」

千歌「最初からバレバレだよ!」

曜「で、でも!そもそも、私が突然高海さんに話しかけたのがいけないんだし......迷惑をかけたのは私の方だから......」

千歌「はい!またダウト!」

曜「今度は何!」

千歌「全然迷惑じゃない!」

曜「え......」

千歌「最初はびっくりしたけどね、私も渡辺さんとお喋りするの、すっごく楽しかった!」

千歌「あんなにお腹抱えて笑いながらお喋りしたのなんて本当にいつぶりかわかんないくらい!」

千歌「全然迷惑なんかじゃないんだよ。むしろ大歓迎!」

千歌「だから、ごめんなさい!」

曜「本当に?嫌じゃない?」

千歌「うん!私、渡辺さんともっとお話したい!」

曜「......ならなんで私が勘違いするようなことしたの?」

千歌「うぐっ!」

曜「だって変だよね。何か理由がなきゃおかしい」

千歌「それは......」

曜「攻守交代だよ、高海さん。ちゃんと教えて」

千歌「えっと......」

曜「た、か、み、さ、ん!」

千歌「は、はい。白状します......」

曜「......そんなことがあったんだ」

千歌「うん......だから、怖かったんだ」

千歌「渡辺さんとお喋りするのがすっごく楽しくて......でも、またあんなことになるかもしれないって思ったら逃げ出したくなって......」

千歌「あはは、わけわかんないよね......」

曜「高海さん......」

千歌「恥ずかしいから今のは全部忘れてね?あと......」

曜「高海さんっ!」ダキッ

千歌「わ、渡辺さん!?」

曜「辛いこと話させちゃってごめん」ギュー

千歌「ぜ、全然平気だよ?」

曜「ダウト」

千歌「むぅ......仕返しのつもりですか~」

曜「だってバレバレだもん」

千歌「......」

曜「ありがとう、私を信じてくれて」ギュー

千歌「渡辺さん......」ジーン

千歌「......ううん。お礼を言わなきゃいけないのはこっちだよ!」ギュー

千歌「渡辺さん、名前を呼ばれて嬉しいってわざわざ伝えにきてくれたよね」

千歌「私、すごく、すっごく嬉しかった!」

千歌「だから私は渡辺さんのことを信じられたんだよ!」

曜「えへへ、そっか///」

千歌「うん!本当にありがとう!」

千歌「その......曜ちゃん///」ニコッ

曜「っ!!?」ドキィッッ!!!

曜(え!?)

曜(な、なに!?今の!?)

曜(胸が締め付けられて......でも、さっきまでの嫌な感じとは全然違って......)

曜「///」ドクンドクン

千歌「あの......」

曜「ど、どうしたでありますか、高海航海士!」カアアアアア

千歌「なぁに、その口調」クスッ

曜「こ、これは///」

曜(本当にどうしちゃったんだ!私!?)

千歌「ふふっ。あのね、私も名前で呼んで欲しいなぁって思って///」

曜「な、名前で!!?」

千歌「むぅ......もとはといえば、曜ちゃんが最初に私を名前で呼び始めたんじゃん!」

曜(あぁ/// もうナチュラルに私のこと名前で呼んでる///)

千歌「ほらっ!早く早く!」

曜「えっと......///」

千歌「曜ちゃ~ん!」

曜「あの......千歌ちゃん///」カアアアアア!

千歌「えへへ、曜ちゃん///」ニコッ

曜「!?」ドキィッッ!!!

曜(この笑顔、反則だよ......///)


結局、この世界でも渡辺さんは高海さんに溺れていきましたとさ。おしまい。

オマケ

松月

善子「助かったわ、こんなところに喫茶店があるなんて。まさに砂漠の中のオアシスね」

善子「もうすぐ終バスの時間だし、そろそろ外に出とこうかしら」

店員「お客さ~ん、もう閉店の時間なんでそろそろ......」

善子「あら、ちょうどよかったわ。長居してごめんなさいね」

店員「いえいえ。ところで、お客さん、帰りは自転車ですか?」

善子「いいえ、バスよ。二時間に一本しかこないなんて、不便なもんよね」

店員「あらまぁ......」

善子「どうしたの?」

店員「あの......もう終バス終わってますよ?」

善子「え」

昨年度の時刻表と間違えた善子ちゃんが一苦労するのはまた別のお話。

見てくれた人いるかな?HTML化依頼行ってきます。

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