のぞえり百合ss (435)

単発でスレ立てまくるのも悪いので書いたものをまとめてここに置いていきます。

作品内の時間で十分程度、百合な場面を書いています。

ほとんどが別の世界線です。

好きなシチュとか書いてくださると考慮します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492091341

一回だけの愛のキス。

つり革を掴む右手が痛む。でも、あなたがうとうとしていて危なっかしいから離せないのよね。

あと、三つか。我慢しましょ。

思わず頬がほころぶ。疲れからか、表情がうまくコントロールできない。

部活の後に生徒会を手伝ったから、疲れたんでしょうね。

紫の頭がフラフラしている。

こんな状態でよくバランスが取れるわね。

あっ。つむじ見えた。

人の群れの中にいるのに誰も私たちを気にしないっていうのは嬉しい。

きっと私が性的マイノリティーとわかったらこうはならないわ。

どうしようかしらね。

電車がカーブに差し掛かる。希の頭が倒れてくる。

とっさに右腕で希の頭をキャッチする。左手を上げて腰を支える。

「あっ。ごめんえりち。ちょっと寝ててな。」

驚いたような第一声。その割には続く言葉が舌足らずだ。

いい子ね。何も謝ることはないのに。

こんな姿のあなたが見られただけで、天にも昇る気持ちなのよ。

「そのまま寝ててもいいわよ。疲れたでしょう。体重かけてもいいから。」

悪いからそんなことできないと言いながら、次第に体がこっちに寄りかかる。

可愛い。あなたのためならどんな重荷も背負えるのよ。知ってた?

腰に回した手で彼女を引き寄せる。

ダンスをするように。恋人を優しく抱くように。

こくりこくりと揺れる彼女。今ならどさくさに紛れて何かしても気づかなさそう。

頭の位置が正面に来るように調節する。

興奮してきちゃった。期待と興味で。

唇をひたいに落とした。彼女の頭がふいと上がった時に。

私以外誰も知らない。一回だけの愛のキス。

あなたの唇が欲しかったけれど、それはできないわよね。

私は自惚れではなく、その気になればこの娘を落とせる自信がある。

でも、あなたの幸せを願うから、決して告白なんてしないわ。

ビアンの人が胸を張って歩くには、まだまだ時間がかかりそう。

たくさんの苦労をしてきたあなたには、明るい陽の下を歩いてほしい。

そこには私の居場所はない。外から友人として見守るだけ。

それでいいの。

だけど、それなのに、いいはずなのに、たまに自分が抑えられなくなる。

自分の弱さが嫌になる。結局私は、大人になったつもりの子供なのだ。

性別なんか関係ないって、大声で叫んで好きな子の手を取りたいのだ。

諦めたくて、諦めたくなくて、認めたくて、認めたくなくて、何が正解なのかわからない。

どうすればいいのよ。

今夜もきっとまくらを濡らすわ。

だから、これはただのわがまま、自己満足。

世界の何より美しくて、ヘドがでるほど憎んだ行為。

未熟な私の最後のあがき。

「希。次で降りるからそろそろ起きて。」

愛しい人へ、心のこもった優しい声をかける。

悲しみが混じっていることには誰も気づかない。

終わり

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