俺「気がつくと、俺は記憶を失くしてしまっていた」 (9)




ふと気がつくと、俺は記憶を失くしてしまっていた――




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一体俺に何があったのか。

今まで俺は何をしてきたのか。

必死に思い出そうとするが、さっぱり思い出せない。もどかしい。



おそらくもう、思い出すことはないだろう。


俺の近くに、一人の男がいる。


泣いている。


どうやら俺に起こった事態をとても悲しんでいるようだ。


俺は推測する――俺とこの男はきっと強い絆で結ばれていたのだろう。


俺とこの男はさまざまな冒険を重ね、困難苦難を乗り越え、
俺はこの男の喜怒哀楽を全て受け止めてきたのだろう。

ついさっきまでの俺はそれらを全部覚えていた……はず。


なのに、今の俺は全く思い出せない。本当に申し訳ない限りだ。


男が泣き叫ぶ。


「頼むぅっ……頼むよぉっ……!」


思い出してくれ、ということなのだろう。

だが、どんなに懇願されても、無理なものは無理なのだ。

俺にはどうすることもできない。


泣きわめく男を尻目に、俺はあらためて自分に残る記憶を整理することにした。

俺とて、全てを忘れ去ってしまったわけではない。


こんな俺にも覚えていることが、たった一つだけあった。

自分が何者か、ということについてだ。


俺はゲームソフト――

近くで泣きわめいている、俺で遊んでいたであろう男よ。



どうか最初からやり直して下さい。









―終―

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