曜「私の拳は何の為に」 (82)

私の名前は渡辺 曜

浦の星女学院に通う高校生二年生!

スクールアイドルグループ『Aqours』の衣装担当とか高飛び込みの選手とか大変ながらも充実している学園生活を送っているのであります!

さて、この私がこの場をお借りして何を話したいかと言いますと……おっと、また来たか

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1487165549

クラスメート1「ぶっちゃけさ……俺、渡辺より高海のほうがタイプなんだよな」

クラスメート2「は?お前マジかよww───まあ、わかんなくもないけどよ……」

クラスメート1「だ、だろ!?」

クラスメート2「(こいつ、俺の高海狙ってたのかよ……)でもよ、あいつ普通すぎね?なんか物足りないっていうか……」

クラスメート1「馬鹿野郎が!そこがいいんだろうよ!」ダァン!

クラスメート2「!?」ビクッ

クラスメート1「自分を卑下していながらもスクールアイドルへの憧れは誰にも負けず、始めてみたものの周りとの劣等感で自分もまた負けじと可愛くなろうと努力する……そんなとこがいいんだろうが!」

クラスメート2「(こいつ、分かってやがる……)まあ、確かにな……」

クラスメート1「まあいいぜ、ライバルが少ないに越したことは無いからな。実はもう告ろうと思って呼び出してんだよ」

クラスメート2「んなぁ!?」

クラスメート1「あいつ裏で結構人気ありそうだし告るなら早めにやろうと思ったんだよ」

クラスメート2「(こいつに先を越されるなんて……)ちょ、まて!俺もついてく!」

クラスメート1「はぁ?何でだよ」

クラスメート2「うっ、……い、いいから俺もついて行ってやるよ!」

クラスメート1「別にいらねーよ、先帰っとけよ」

クラスメート2「行くっつーの!」グイグイ

クラスメート1「離せよ!やっぱお前高海に気があるんじゃ……」

ガヤガヤ


曜「───千歌ちゃんはこないよ」

クラスメート1、2「!?」

曜「私が千歌ちゃんの靴箱にあった手紙を捨てておいたからね」

クラスメート1「何……どういうことだ!?」

曜「詳しくは話せないけど私は千歌ちゃんを守らなきゃいけなくてね、その邪魔をするなら……」









曜「────潰すよ?」




クラスメート1、2「ッ!」ゾクッ

クラスメート2「……上等じゃねえか。なんだか知らねぇけどお前が高海を独り占めするってんなら女でも容赦しねぇ!」

クラスメート1「おう、行くぜ!」ダッ!

クラスメート1、2「うォォォ!!」

曜「はぁ、せっかく忠告してあげたっていうのにさ……」

曜「ちょっとお仕置きが必要なのかな?」

────────────
────────
────
千歌「曜ちゃーん、どこー?」ガラッ

千歌「あ、いたいた。何してたの……え!?その2人どうしたの!?倒れてるよ!」

曜「ちょっと教室の張り紙剥がすの手伝ってもらってたらこけちゃって……この2人を保健室に連れてくからもうちょっと待っててくれない?」

千歌「それじゃあ手伝うよ!」

曜「ううん、二人とも歩けるみたいだし付き添うだけだから」

千歌「そう……?それじゃあ校門前で待ってるね」ガラッ
タッタッタッタッタッ

曜「……さて、君達はクラスメートってことでとりあえず生かしておいてあげたけど……」

曜「次は無いからね」ボソッ

クラスメート1「はいっ!!もう高海さんには近づきません!!」

クラスメート2「僕達ごときが不遜なことをしてしまい誠に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!」

ガラッ
ダダダダダダダダダ…

曜「ふぅ……」

そう、これが私のもう一つの姿

学園生活をおくりながら千歌ちゃんも守るエージェントとして活動するのがこの渡辺 曜なのであります!

渡辺家は高海家を代々守る家系らしくてついに私がその代になっちゃったんだよね

まあ今日は楽な方でいつもはそりゃもう大変なんですよー

これはその活動の一端を記したものです。それではどうぞ!

───────
(練習中)

千歌「ひぃー、はぁー……」タッタッタッ

曜「ほら千歌ちゃん、頂上までもう少しだよ!」

千歌「も、もうダメ……」

曜「諦めちゃだめだよ!ほら、一緒に行こ?」

千歌「ありがと、曜ちゃん……」

果南「こーら、千歌を甘やかさないの!曜はもっとペース上げれるでしょ?」

千歌「げっ!果南ちゃん!」

果南「ほら千歌、こんなんじゃ曲の間全力で踊れないよ?」

千歌「うっ……分かった、もっと頑張る!」

果南「うん、その調子!曜は先行ってていいからね?」

曜「うん、分かった……(千歌ちゃんと一緒に走りたかったな……)」ダッ

………………
曜「ふー、やっと到着したぁ……」

果南「あ、お疲れ。やっぱ曜は速いね!」

曜「まだまだ果南ちゃんには追いつきそうにはないなー……あれ?」

曜(なんで果南ちゃんが私より先に……いや果南ちゃんはAqoursの中で一番足が速いんだから当たり前……だとするとさっきの果南ちゃんは……ハッ!)

果南「どうしたの?」

曜「ちょ、ちょっと先に降りてるね!」ダッ!

果南「あっ、少しは休憩していきなよ!」

………………
果南(?)「ほら、本当にもう少しだよ!」

千歌「本当だ……ありがとう果南ちゃん!お陰でがんばれたよ!」

果南(?)「ふふっ、それは良かった♪」

千歌「今度何かお礼したいなー」

果南(?)「そう?それじゃあ」

果南(?)「その命を───」ヒュッ

ガキン!

果南(?)「!?」

ドゴォォォォォォ

千歌「?、ごめん今なんて────」クルッ

千歌「あれ、果南ちゃんがどっか行っちゃった……」キョロキョロ

ズザアーー
果南(?)「いきなりふっとばすなんて酷いなぁ……どうしたの?曜」

曜「もう分かってるんだよ……誰だか知らないけどいい加減果南ちゃんの変装なんてやめたら?」

偽果南「そっかぁ、ばれちゃったか」

曜「千歌ちゃんの前では殴れないからね……離れた所でやらせてもらうよ」

偽果南「……それだと千歌がいなければ簡単に始末できるって言ってるように聞こえるんだけど」

曜「そういったつもりなんだけど?」

偽果南「そう簡単に行くかなっ!」ダッ!

曜「!?」ガキン!

偽果南「ははっ!まだまだ!」ドドッ

曜(くっ、結構速いな……)ガガッ

偽果南「もうお終い?それじゃあこれで終わり 曜「でもまだまだだ」

ドゴォォォォォォ!!!

偽果南「ぐ、ハァ……!?」

曜「貴方はスピードに自信があるみたいだけど、小さい頃から果南ちゃんと一緒に遊んできた私の目で見たら本物の足下にも及ばないよ」

偽果南(くっ、ダメージが大きすぎて動けない……)

曜「さて、何故千歌ちゃんを狙ったのかな?誰かの差し金だったら雇い主を教えてくれると嬉しいんだけど」

偽果南「そんなの、答えるわけないでしょ……」

曜「そっか……答えないならその命はいらないね」グワッ

偽果南「ちょ、待って!果南と同じ顔の私を、人を殺すことを躊躇わないの!?」

曜「……ちょっと問題を出そうか」

曜「私の両足は千歌ちゃんの元に駆けつけるためだけにある」

曜「それじゃあ私の両手は何の為にあると思う?」

偽果南「……」フルフル

曜「答えは、『千歌ちゃんの平穏を乱すものを潰すためにある』だよ」

曜「そのためなら誰かを殺すことも躊躇わない」

偽果南「ッ」ゾクッ

曜「じゃあね。来世があるなら千歌ちゃんを狙おうなんて思わない人に生まれてね?」

ドスッ

偽果南「」ドサッ

曜「討伐、完了」

曜(千歌ちゃんが狙われてる……?一体誰が……)

曜(……いや、関係ない。誰が敵だろうが私の成すことは変わらないのだから)

────────
────
???「ターゲットはあの娘ですか……」

???「ここからの距離は約三〇〇〇、射界は20cm、風はほぼ無風、他に邪魔になりそうなものはない……外す要素がありませんね」

???「フーッ……」スチャッ

???「ん?隣の娘……なるほど、あの子が守っているのですか」

???「……」

???「……一射絶命!!」ドシュッ!

………………
(昼食)

千歌「でさー、またしいたけが梨子ちゃんを追いかけてすっごいパニックになったんだよ!」ケラケラ

梨子「もう、笑わないでよ!本当に怖いんだからね!/////」

曜「あはは、梨子ちゃんももう少ししいたけに慣れた方がいいかもね」

梨子「うん、努力はしてるんだけどね……」

千歌「そしてゆくゆくはしいたけと一心同体に……」

梨子「そこまではならないから!」

曜「はは……」

ビュッ!

曜(殺気!?)

曜「ツッ!」ガキン!

曜(弓矢……?)

千歌「ん、どうかした?曜ちゃん」

梨子「ちょっと、箸折れてない!?」

曜「えーっと、なんか箸古くなってたみたいで壊しちゃった……」エヘヘ

曜「職員室から箸借りてくるから先食べてていいよ!」ガラッ
タッタッタッタッタッタッ

…………
???「外してしまいましたか……」

???「初撃を防がれたのは久しぶりですね……しかし、何度も逃れられるほど私の矢は甘くありませんよ」ヒュンヒュン!

…………
ダダダダダダダダダ
曜(的を絞らせない動きをしつつ、接近する。これが現状ベストなんだけど……ッ!)

ヒュン!

曜(くっ……一射一射が必殺だ。初撃で矢を射った場所が分かったから何とか躱せてるけど……また来た!)バシッバシッ

曜(おまけに全く殺気を感じられないなんて……これほどまでの一射にするために一体どれほど修練を積んできたんだろう)

曜(間違いなく格上……でもね、)

曜「この程度で負けてられない!」ダンッ!

…………
???「他を犠牲にしても急所だけはしっかり守るとは……手練ですね」

???「これほどまでの相手であるなら私も全力を出さなければいけませんね」

???「いくら躱そうが弾こうがここら一帯を焦土にすれば関係ないでしょう」ギギギ

???「さらば……名も知らぬ好敵手よ」ドシュッ!



???『ラブアローシュート!!』
ギュォォォォォ

…………

曜(あと三○○……ん?あれは!)

ギュォォォォォ!!

曜「しまっ……!」





ドッゴォォォォォォ……

…………
???「……ふう、これで依頼は果たしましたね」クルッ

???(しかし、私の矢をあれほど躱し続けるとは……)

「ちょっと、何終わった気でいるの?」

???「!?」

曜「あれは流石にやばかった……でも何とか辿り着けたね」ヨロ…

???「馬鹿な、あれを受けて生きているなんて……」

曜「危機一髪で避けたんだよ。ホームグラウンドなんだから身を守れる場所なんて知り尽くしててね」

???「くっ……」

曜「それより、貴方が何故刺客なんですか……園田海未さん」

(???改め)海未「私をご存知でしたか……なぜ分かったのですか?」

曜「あれほどの絶技、本物しかありえないっ思いましたよ」

海未「お褒めに預かり誠に恐縮です。お礼という訳ではありませんが、経緯を話しますと」

海未「依頼が来たのですよ……『高海千歌を始末して欲しい』というものが」

曜「何故受けたんですか!?」

海未「もちろん断ることもできました……しかし無闇に断ってはできないと思われてしまい、園田の名を落とすことになりかねません」

海未「よって、断る理由の方が無かったためここにいる次第であります」

曜「……でも、ここまで私が来たって事は勝負は着きましたよ」

曜「この距離なら貴方が矢を射るよりも先に私の拳が届く方が速い」

海未「……そうですね。この距離において弓では貴方を倒せないでしょう」ドサッ

海未「しかし、私の獲物は弓だけではないのです」シャリンッ

曜「日本刀……?」

海未「園田の武術は万物に通ず。弓を射るだけでは園田の名を継ぐことなどできないと言うことですよ」

曜「くっ……(構えに隙がない……)」

海未「先程までの威勢の良さはどうしました?」

曜(きっと剣術もかなりのものなのだろう……構えた姿だけで強者だと分かる。でも、)

曜「もちろん、倒しますよ。たかだか刀一本握っただけですからね」

海未「たかだか刀一本、と言いますか……面白いですね。ならば我が秘剣、その身で味わうがいい!」

海未「貴方に敬意を払い、名乗りを上げましょう。園田流剣術、園田 海未」

曜「……渡辺流格闘術、渡辺 曜」

海未「いざッ!」ダッ!

曜(来るッ!)

海未「ハアッ!」ズバァッ!

曜(ここだっ!)


バシイッ!

海未「な、白刃取り……?」

曜「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」ベキィッ

ズドォォォォォォン!!

………………
海未「ゴホッ、太刀筋が読まれるなんて……まだまだ鍛錬が足りないというわけですか」

曜「それは違いますよ」

海未「一体どういう……?」

曜「私の首元に殺気が集中してました。だから太刀筋が読めたんです」

海未「なるほど、殺気を読まれるとは……どちらにしろ修練が足りないのは同じですね」

曜「あの、1つ聞いてもいいですか?」

海未「……雇い主のことならば吐く気はありませんよ」

曜「そうじゃなくて……最初、どうして千歌ちゃんじゃなくて私を狙ったんですか?」

曜「最初に狙ったのが千歌ちゃんならきっと私は反応できなかったと思います」

曜「それなのに貴方は目標の千歌ちゃんを差し置いてまで私を狙ってきた」

曜「そしてその一撃は明確な殺意がありました。先程の太刀筋を除けばそれ以外の矢には全く感じられなかったというのに」

海未「ハァ…そこまで読まれているなんて、私は本当に未熟ですね」

海未「……羨ましかったんだと思います」

曜「羨ましかった?」

海未「私にもかつて守るべき人がいました」

海未「貴方と同じく、園田の家の者としてその人を守ることが私の使命でした」

海未「……しかしある日、私の至らなさでその人を死なせてしまった」

海未「私は恨みました。敵を、己の弱さを」

海未「それからというもの、ひたすら修練に明け暮れる日々を送りました。もう守るものもいないというのに……」フフッ

海未「だから貴方が羨ましかったんです。守るものがいることとそれを失う恐怖を知らないでいる貴方が」

曜「海未さん……」

海未「貴方は何の為に闘っているのですか?」

曜「え、それはもちろん千歌ちゃんを守るため……」

海未「それは貴方の家の理由でしょう?私が聞いているのは゛貴方゛の理由です」

曜「私の、理由……」

海未「私は知りました……彼女を失ってから、やっと」

海未「貴方も知る時がくるでしょう。それがいつになるか分かりませんが、闘っていればいずれ」

海未「ゴホッ、ガハッ……言い忘れてましたが、お相手ありがとうございました。貴方ほどの強者に敗れるならなんの未練もありません」

海未「今、そちらに行きますよ……穂乃果───」

曜「……対象、討伐完了」

曜「殺すだけの拳に意味は無い。殺せぬ拳に価値など無い」

曜「私の拳は何の為に……」

────────

(放課後)
曜「ひーっ、水泳部の練習が長引いて待ち合わせに遅れちゃったよー」タタタ

曜「千歌ちゃん怒ってるかなー……」シュン

曜(でも今練習してる技は完成してから見せてあげたいもんね♪)

曜「千歌ちゃん、喜んでくれるといいな……ん、下駄箱に手紙だ」

曜「……そういえば千歌ちゃんの姿が見えないな」

曜「まさか……」ペラッ




親愛なる曜へ

千歌っちは預かりました♪

返して欲しくばオハラホテルに来てください

時間は指定しないけど早く来た方がイイわよ♪


小原鞠莉より

曜「……」

曜「こんな手紙を書くって事は千歌ちゃんはとりあえず無事なはずだよね」

曜「ついに敵の大将が姿を見せたってわけか」

曜「生まれて初めてだよ……こんな気分は」ベリッベリッ

曜「こんなことをしてタダで済むと思ってないよね……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

……………………
(オハラホテル)
鞠莉「ふふっ、そろそろ読んだころかしら」

鞠莉「ついに決着が着くわ……貴方と私のね」

千歌「ムグムグ……」

鞠莉「そろそろ外してあげてもいいわよ」カチャッ

千歌「プハーッ……どうしてこんなことするの!?」

鞠莉「単純なことよ。この内浦で小原家がホテル展開するにあたって高海家と十千万が邪魔だっただけ」

鞠莉「千歌っちは気づいてないみたいだけど貴方には人を惹きつける力があるわ。人を動かす立場の者としてこれほど重要なものもないでしょう?」

鞠莉「だから将来の小原家にとって障壁となりえる貴方を消すの」

千歌「それじゃあなんで曜ちゃんを……」

鞠莉「そっか……それも知らなかったんだ♪」

鞠莉「古くから渡辺は高海を守ることが使命の家系。千歌っちを消してもその恨みを渡辺家から買ったらたまったもんじゃないわ」

鞠莉「だから、曜を消すことが高海家を潰すことにつながるの」

千歌「曜ちゃんが、私を……?」

鞠莉「そう♪曜はずぅっと貴方を守り続けてきたわ、その身を賭してね……」


ドゴォォォォォォ!!!


千歌「何!?」ビクッ

鞠莉「噂をすれば……来たみたいね」


…………………………
曜「千歌ちゃんは一体どこに……」キョロキョロ

チャキッ
黒服隊長「撃てーーー!!」

曜「ッ!」バッ

ズダダダダダダダダダダダダダ

黒服隊長「撃ち方止めーーー!!」

黒服's「はっ!」ピタッ

黒服隊長「これしきで倒したとは思わないが……全体、煙が晴れ次第第2射を「ザシュッ」」

ボトッ

黒服A「隊長!?」


曜「出迎えご苦労、消え失せろ」

黒服A「う、うわぁぁぁぁぁ!!」ジャキッ

曜「フンッ」ズバァッ!

黒服A「アガッ……」ガクッ

黒服B「こ、この悪魔がぁぁぁぁぁ!!」ズダダダダダダ

曜「真正面から撃たれて素直に当たるわけないでしょ」ヒュンヒュン

黒服B「くっ……」

曜「ハッ!」ドゴォ!

黒服B「がっ、はぁ……」ガクッ

黒服's「くっそぉぉぉぉお!!!」ズダダダダダダ

曜「……」ヒュンヒュン

………………

鞠莉「WOW♪まさか小原家の戦闘訓練を受けたボディーガード達があんな簡単に……」

鞠莉「全く、手刀で人の首を刎ねるとかか弱い女の子がするようなことじゃないでしょう」クスクス

千歌「あ、あれ、人を殺してるよね……?」ガクガク

鞠莉「見れば分かるでしょ?全員為す術もなく殺されてるわ」

千歌「そ、そんな、曜ちゃんがそんなこと……」ブルブル

鞠莉「『そんなこと』を彼女は16年も続けてきたのよ、貴方を守るためにね」

鞠莉「自分の知ってる曜じゃなくてどう思った?」

千歌「わ、私は……」

鞠莉「……何を思おうが彼女は歴代渡辺家の中でも最強と謳われるエージェントだって事実は変わらないのよ。親友の知らない側面を知れて良かったじゃない」

千歌「……」

鞠莉「まあいいわ……ん、終わったみたいね」

………………

曜(く、何発かもらったか……流石に出会い頭の全方位射撃を全部躱すの難しいな)

曜「殲滅完了、急がないと……」ダッ

鞠莉『ハァーイ、お疲れ曜♪』

曜「ホテル内放送……?」

鞠莉『やっぱり強いわね。実際に見たら想像以上だったわ』

鞠莉『これでこのホテル内にいる私のボディーガードは全員倒されちゃったけど実はここからが本番なのです!』

曜「本番……?」

ガチャッ
偽果南(?)「……」

曜「!あれはあの時の……いや、少し違う?」

鞠莉『そこにいる果南は小原家の技術で作り上げた人造人間』

鞠莉『本物には及ばないけど前回の戦闘データを活かして改良を重ねたのがそこのCananⅡよ』

鞠莉『さらに私と千歌っちがいる最上階までこのCananIIは150体配置してるわ』

鞠莉『無事にここまでこれるかしら……?健闘を祈ってるわ』ブツッ

曜「前回以上のが150体か……でも何体いようが関係ない。私は成すべきを成すだけだ」ダッ!

曜「そこをどけぇぇぇぇぇ!!」

ドゴォォォォォォ!!!

………………

千歌「……」

千歌(あれが、私の知らない曜ちゃん)

千歌(怖いとかそういうのより先に悔しいって気持ちが大きいや……)

千歌(私を守ってくれてたのに私、何にも曜ちゃんにしてあげられなかったな)

千歌(……思えば、昔から曜ちゃんには助けてもらってたなぁ)

千歌(いつだって、曜ちゃんがいたから頑張れた気がする)

千歌(どんなに私ができなくても、どんなに曜ちゃんと差が開いても、曜ちゃんは私に゛一緒に頑張ろう?゛って言ってくれたんだ)

千歌(私は、どんなに役に立てなくても曜ちゃんの気持ちには応えたい)

千歌(私が応援しなくちゃ誰が曜ちゃんを支えるんだ!……だから、)

千歌「死なないで、曜ちゃん……」ポロポロ

………………
曜「う、ぉぉぉぉぉぉぉ!!」ドゴォォォォォォ!!

CananⅡ100「ぐはぁぁぁ!!」ドサッ

曜「はぁ、はぁ……これで100人目か……」

CananⅡ101「まだ足を止めるには早いんじゃない?」ビュンッ

曜「くっ……」サッ

曜(体が重い……思うように動かない……)

曜(昔からそうだった……一体いつまでこんなことを繰り返すんだろう?)

曜(なんでこんなことをしてるんだっけ……?千歌ちゃんを守るため……?)

曜(なんで千歌ちゃんを守らなくちゃいけないんだっけ……?渡辺家の使命……?)


CananⅡ112「ッ!隙ありっ!」

曜「しまっ……」

メキイッ

CananⅡ112「ニヤッ」

曜「ぐふっ、……ぉぉぉぉぉぉお!!」

CananⅡ112「なっ!?」

ドグシャァ

CananⅡ112「ぁ、が……」ドサッ

曜「はぁ、はぁ、……」



曜(それじゃあ私の理由はどこにあるんだろ……?)

海未『貴方は何の為に闘っているのですか?』

曜(私の理由って、なんだっけ……?)

────────────
────────
────
鞠莉「まさかCananⅡまで撃破してくるなんて……流石に想定外ね」

鞠莉「でも……そろそろネ♪」クスッ

千歌(さっきからなんでこんなに余裕なんだろう……もうそこまで曜ちゃんは来てるっていうのに)

ドガァァァ!!

千歌「!!」

曜「助けに来たよ……千歌ちゃん」

千歌「曜ちゃん!」

鞠莉「本当にお疲れ様、曜♪流石に疲労困憊みたいね」

曜「偽物とはいえ果南ちゃんの相手だったからね……そりゃ疲れるよ。まあ本物が相手なら勝てる気はしないけどね」

鞠莉「私も本当は本物の果南に守ってほしいんだけど……果南ったら千歌も私も大事だって言ってこの件に干渉しないから」

曜「そうだね、これはこの中での話だからね……」

曜「だから、ここで決着をつけさせてもらうよ」ザッ

鞠莉「その体で私を殺せるかしら?」

曜「なんの、鞠莉ちゃん1人くらいなら余裕だよ」

鞠莉「ふふっ、本当に……゛その体゛でお疲れ様♪」

曜「?それはどういう……」ドサッ

千歌「曜ちゃん!」

曜「な、体が動かない……?」ググッ…

鞠莉「やーっと効きはじめたみたいね。効かないのかと思ってちょっとヒヤヒヤしてたわ」

曜「毒……?いや、私に毒は……」

鞠莉「そう、訓練を受けた貴方に普通の毒は効かないでしょう。だからそれは普通の毒じゃない」

曜「じゃあ一体……?」

鞠莉「小原家特製筋肉弛緩剤よ。内臓に関わるものは効かないだろうから筋肉の動きを弱めようと思ったの」

鞠莉「最初の黒服達の銃弾を何発か受けたでしょ?あの弾丸1発1発にそれは塗られてたわ」

鞠莉「CananⅡと戦ってる時に効くかと思ってたんだけど……まさか全員倒しきるとはね。それとも効いてあれだったのかしら?」

鞠莉「どちらにしろしばらく曜は動けないわ……ふふっ、そこで見てなさい。目の前で始末してあげるわ、貴方の守ってきたものを」チャキッ

千歌「っ!」ゴクッ

曜「や、め、……」

鞠莉「話すこともままならなくなってきたみたいね。どうせすぐ楽になるんだからそこで黙って見てなさい」

曜(千歌ちゃん……ごめん……)

千歌「……今までありがとうね、曜ちゃん」

曜「っ!」ハッ

千歌「今までずっと、私のこと守ってきてくれたんだよね」

千歌「それなのに今まで気づかないでいて本当にごめん……」

千歌「さっき初めて曜ちゃんの闘ってる姿を見た時、怖いとも思ったんだけど実はね」

千歌「曜ちゃんが私のためにあれだけ頑張ってくれてるって思って……嬉しかったんだ」

曜(千歌ちゃん……)

千歌「曜ちゃんは渡辺家の使命だからって理由で私のことを守ってきてくれたのかもしれないけど私は本当に嬉しかった」

千歌「誰でもなく、曜ちゃんに守って貰ったことが堪らなく嬉しかった……」

千歌「だから、今まで私のことを守っていてくれて本当にありがとう」ニコッ

千歌「で、でも……」

千歌「でもね、私も、曜ちゃんの傷つく所は見たくなかったなぁ……」グスッ

曜「あ、……」

曜(千歌ちゃんが、泣いてる……)

曜(久しぶりに見たな……千歌ちゃんが泣いてるの)

曜(いつ以来だったかな、千歌ちゃんが泣いてる所を見るのは)

曜(多分小さい頃……小学生くらいかな?)

曜(そういえば丁度その頃に高飛び込みを始めたんだっけ……)

曜(なんでだっけ……使命とは関係ないのに何で始めたんだっけ……?)

曜(……そうだ。私が高飛び込みを始めたのは千歌ちゃんに喜んで欲しかったから)

曜(笑った顔を見たかったから。私が頑張ればずっと笑顔になってくれると思ったからだ)

曜(そのために強くなった。そのために練習をしてきた。そのために生きてきた)

曜(私の全ては千歌ちゃんから始まった。千歌ちゃんがいたから今の私がいるんだ)

曜(……そっか。これが私の理由。近すぎて、当たり前すぎたから気づかなかったんだ)

曜(私は────)

鞠莉「さて、最後の会話は終わったかしら?それじゃあね、千歌っち。安心してね、すぐに曜も送ってあげるから───」

ガシッ

鞠莉「!?」

曜「させないよ……」ヨロ…

千歌「曜ちゃん!?」

鞠莉「な、どうして動けるの!?まだ動けるようにはならないはずじゃ……」

曜「知らないね。私の意思を止めるには量が足りなかったんじゃないの?」グググ…

鞠莉「私の意思、ですって……?どこにも自分の意思なんかないのに笑わせないで!」

曜「うん、私もずっとそうだと思ってた。でも違った」

曜「私は私自身の意思で千歌ちゃんを守りたいと思ってたんだ」

曜「誰に命令されたわけでも、頼まれたからでもない。私は千歌ちゃんを守る!この決意は誰のものでもなく私自身のものだ!!」

千歌「曜ちゃん……」ウルウル

鞠莉「……それで、どうやって私を倒すというの?押さえつけるので精一杯でしょう?」

曜「確かに今は拳一つ握れないや……でも私は千歌ちゃんを守るといったんだ。どんな手段を使ってもね」

鞠莉「ま、まさか……やめなさい!ここは最上階よ!?今の状態だったら貴方だって無事ではすまない────」

曜「何度も言わせないでよ。私の目的は千歌ちゃんを守ることなんだよ?それ以外は勘定に入れてない」

鞠莉「こ、この……」

千歌「やめて……死なないで、曜ちゃん!」

曜「ごめんね、今私ができるのはこれくらいしかないんだ」

曜(これは渡辺家の技じゃなくて、私が自分の意思で千歌ちゃんを喜ばせたいと思って練り上げてきた技……)

曜「出来れば、完成してから千歌ちゃんに見せたかったんだけどね」クスッ

鞠莉「は、離しなさい……離してぇぇぇぇ!」

曜「はぁぁぁぁぁぁ!!」グワッ






曜『変式・前逆さ宙返り3回半抱え型!』


ガシャーーーーン!!

千歌「曜ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」

────────





ヒューーーーー……

曜(終わった……)

曜(海未さん、最後の最後で私は私の理由を知りました)

曜(これで千歌ちゃんの泣いた顔を見なくて済む。これで千歌ちゃんのこれからを守れた)

曜(ああ、なんて幸せなんだろう───海未さんには申し訳ないくらいだな)

曜(……あ、でもこれで千歌ちゃんの笑った顔を見れなくなるのか)

曜(それはちょっと、寂しいな────)


────────────
────────
────

……べ、……なべ

曜「……ん?」

担任「起きろ渡辺!」

曜「は、はいぃぃぃぃ!!」ビクッ

曜「……あれ?」

クラスメート「クスクスクス」

担任「私の授業で寝るとはいい度胸だな……後で職員室に来い」

曜「はい……」ショボン…

…………………………
曜「失礼しました……」ガラッ

曜「はぁーっ……」

曜(あーもう、全部夢だったの!?冷静になったらめちゃくちゃ恥ずかしいよ/////)

曜(まさに妄想爆発って感じだったね!もう絶対思い出したくない……/////)トボトボ

千歌「あ、曜ちゃん終わった?一緒に帰ろ!」

曜「う、うん……(どうしよう、恥ずかしすぎて顔見れないよ/////)」


────────
(帰り道)
千歌「いやー、まさか曜ちゃんが授業中に居眠りなんてね。小学校以来じゃない?」プププ

曜「そうだね、恥ずかしいよ……(本当、色々と……)」

千歌「懐かしいなー……そうだ、久しぶりに手をつないで帰らない?昔みたいにさ!」

曜「え?」

千歌「やっぱり……恥ずかしいかな?/////」モジモジ

曜「いや、そ、そんなことないよ!全然!これっぽっちも恥ずかしくないから!」アタフタ

千歌「じゃあはい!」サッ

曜(私が大好きなこの手。きっと私の手は────)

曜「うん、帰ろっか!」ギユッ

千歌「うん!」ニコニコ

曜(この手をつなぐためにあるんだね)フフッ

これにて終わりです。

いつもと違う感じのものを書いてみたいなと思い、これを書きました。だいぶ不遇にしてしまったキャラファンの方は申し訳ありません。

よしルビのシリーズなども書いているので読んでいただければ幸いです。
前作→ルビィ「堕天使にラブソングを」

それではここまで読んで下さった方、ありがとうございました

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