神谷奈緒「かわいいをもう一度」 (19)

アイドルマスターシンデレラガールズ 神谷奈緒のSSです

書き溜めありです

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【 事務所・Pのデスク 】


奈緒「Pさん、おはよ」

奈緒P(以下P)「おー、奈緒おはよう。今日もかわいいな」

奈緒「……ん」

P「……」

奈緒「な、なんだよ?」

P「照れを隠す奈緒はかわいいなぁ!」

奈緒「はあぁ!? 別に隠してないし! 照れてなんかないし!」

P「かわいいかわいい。よし!ここからは仕事の話だ。座って」

奈緒「はぁ……朝から疲れるよ、まったく」

P「まぁそう言うなよ。で、これが今度の仕事。旅行雑誌の表紙モデルだ」

奈緒「……"雪も溶かすアツいデートスポット大特集"!? なんだよコレ!」

P「今奈緒が言った通りだよ。表紙もかわいく撮るんだってさ。事務所の近くにファッション街があるだろ? そこで撮影だ」

奈緒「これはあたしには合わないだろぉ!? かわいくなんて無理だ!」

P「奈緒はかわいいよ」

奈緒「っ……! またかわいいかよ!? ……Pさんはあたしの事、本当にかわいいって思ってんのか?」


言い終わった後に気がつく

あー、これは聞いちゃダメな質問だ


P「本当に思ってるよ。奈緒はかわいい。俺がスカウトした女の子だ、かわいいに決まってる」


案の定……なんでこの人は恥じらいもなく、こんな台詞を言えるのだろう

そしてその言葉を聞いて嬉しくなるあたしもあたしだ……


奈緒「わかった! わかったからもう言うな! ばか! はぁ……やるよ、この仕事。Pさんがあたしの為に持ってきてくれた仕事だしな」

P「奈緒なら受けてくれると思っていたよ。すぐに先方に話しておく。俺も頑張るから一緒に頑張ろう、奈緒」

奈緒「う、うん!……へへ」

P「いい笑顔だ。かわいい」

奈緒「なっ! またかわいいって言いやがったなぁ~!ばかぁ!」

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【 休憩室 】

加蓮「ふーん、良かったじゃん、モデルの仕事。なんで悩んでるのさ」


アイドル仲間の北条加蓮は、お菓子をポリポリ食べながらそう答える


奈緒「だってよぉ……モデルなんて初めてで、どうやっていいか分かんなくてさ。かわいくしろって言われても……」

加蓮「(普通にかわいいんだけど……)そうだ! だったらさ、あの服着ればいいじゃん!」

奈緒「あの服?」

加蓮「ほら! クリスマスの時の! 奈緒Pさんに見せたいからって着てきたじゃん!」

奈緒「あ、あれか!? 無理無理無理無理! 」

加蓮「えー、超かわいかったのにー。残念だなー」


加蓮がソファの背もたれにワザとらしく体重を乗せる

また煽って着せる気だな……

でも、あたしは着ないぞ。あの服は……

奈緒「あの服は着ない! それに……あれはPさんの為に……」

加蓮「……」ニヤニヤ

奈緒「あ! 加蓮、今のは違う! そういう意味じゃなくて!」

加蓮「あーもう! 奈緒かわいい~~! 奈緒Pさんの事、そんなに好きなんだー」

奈緒「す、す、好きじゃない! 好きじゃないから~~~!」

加蓮「へ~~……ま、それでも気持ちは分かるよ」

奈緒「……え?」

加蓮「私もプロデューサーさんとデートする時の服、それ以外じゃ着ないもん」

奈緒「デ、デート……やっぱり加蓮Pさんと付き合ってるのか!?」

加蓮「ご想像にお任せしまーす。奈緒も奈緒Pさんと頑張ってね」


そう言うと加蓮は足早に去って行った

デート、か。

……ちょっと、ちょっとだけ、羨ましくなった


奈緒「そんな事より!……やるしかない、か」

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【 撮影当日・夜 】

結局、撮影用の服は事務所から借りた

Pさんからは何も言われず、一緒に撮影現場に向かった


P「奈緒、頼むな。かわいく行こう」

奈緒「かわいく……かわいく……」

P「そう緊張するなよ。いつも通りの奈緒でいい。大丈夫さ」

奈緒「なんだよその自信は」

P「奈緒を信じているから。出来るな?」

奈緒「……まぁ、やってみるよ」

スタッフ「こっちは準備オッケーです! 撮影いけますか?」

P「了解、いけます。……奈緒、行こう」


あたしはPさんに連れられて撮影場所に入る

階段を下った所から振り向いて上を見上げる構図だそうだ

……イメージは"彼氏が下りてくるのを待つ女の子"

……あたしに出来るだろうか……

ディレクター「それじゃあ始めますか。最初に何枚か撮るから慣れてちょーだい」

奈緒「あ、はい! お願いします」


あたしは階段を数段下り、立ち止まって振り向く


ディレクター「んー、笑顔が足りないなぁ。もっとニコっとして!」

奈緒「は、はい!」


笑顔、笑顔

あたしはもう一度振り向いて笑顔を見せる


ディレクター「固いなぁ……ま、最初はこんなもんかな。カメラさん撮って」

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ディレクター「うーん……P君どうだい? 固いよねぇ」

P「固いですね、いつも以上に表情がぎこちない」

ディレクター「先方さんの依頼は"自然な笑顔"だからねぇ。これじゃ作りものの笑顔だ」

P「……! でしたらディレクター、1ついいですか?」

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奈緒「はぁ……」


上手くいかないなぁ

……Pさんとディレクターさんはずっと話こんじゃってるし

なんとかしないと。Pさんの期待に応えなきゃ

あ、話終わったみたいだ。Pさんがこっちに来た

……まず謝らなきゃ


奈緒「あ、Pさん。あのさ……」

P「奈緒、ちょっといいか?」

奈緒「ん、うん?」


Pさんがあたしの隣に座る


P「率直に言うけど、さっきの奈緒の笑顔はダメだ」

奈緒「っ!……」

P「そんな顔するなよ。奈緒が緊張しているのは分かる。雑誌のモデルは初めてだしな」

奈緒「……うん、緊張してる。だってさ、あたし……笑顔ってどうやって出すか分からなくて。だからさっきみたいな、
    ぎこちない感じになっちゃって」

P「無理に笑顔を出さなくてもいい。俺に考えがあるんだ」

奈緒「なんだ?」

P「俺を見てくれ」

奈緒「……は、はぁぁ!?」

P「奈緒は気づいていないかもしれないけど、俺といる時の奈緒は良い笑顔が出ているんだ」

奈緒「……え?」

P「とても奇麗で、純粋な笑顔だ。あの笑顔が欲しい」

奈緒「な、な、な……」


何を言ってるんだ、この人は!

き、奇麗? あたしが!?

しかも、Pさんといる時だとーー!?

あ、あたしは知らないうちにPさんに笑顔を向けていたのか!?


P「落ち着いて。だからさ、俺が階段の上で立ってるから、奈緒は振り向いて俺を見てほしい」

奈緒「え……えぇ!? む、無理無理! は、恥ずかしすぎるってば!」

P「大丈夫、奈緒なら出来るさ。俺を信じて」


信じろ、なんて…………でも、そう言ってくれて気が楽になった


奈緒「……わかった。Pさんにそう言われたら、やるしかないよな」

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ディレクター「次で決めちゃおうか! じゃあP君頼むよー」

P「はい、お願いします」

奈緒「……」

P「奈緒、俺を見るんだ。いいかい?」

奈緒「うん。もう大丈夫。行くよ、Pさん」

P「いい返事だ。それじゃあ始めようか」


あたしは階段を下りる

半分ほど下ったところで後ろを振り向いて見上げる

……Pさんがいる

いつもあたしを助けてくれて、いつもあたしと一緒にいてくれて、一緒に悩んで、一緒に泣いて、一緒に笑ってくれる

あたしはそんなPさんが……

Pさん、いつもありがとう……


奈緒「……へへ」

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ディレクター「文句無し。最高の笑顔だ」

P「えぇ、最高です」

奈緒「あ、ありがとうございます!」

ディレクター「よくがんばったよ、神谷君。やはりP君が上にいたから……う~ん、これは青春だな」

奈緒「は?……え?」

ディレクター「いやいや、それより本当に良かったよ。これなら先方さんも大喜びだ」

P「そうですね。写真が出来次第、私が持っていきます」

ディレクター「頼んだよ。じゃあこっちは撤収作業があるから、ここで解散だ。お疲れ様」

奈緒「お、お疲れ様でした!」

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【 控室 】


P「よし!改めて、今日はお疲れ様。頑張ったね、奈緒」

奈緒「ん。Pさんの……おかげ、だから。その……ありがと」

P「おう」ニヤニヤ

奈緒「あぁぁ! もうニヤニヤすんな! ばか!」

P「ごめんごめん。ほら、着替えてくるといい。事務所の外で待ってるから」


はぁ……あたしが少し素直になったら、からかいやがって~~!

…………よーし、こうなったら……

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【 外・事務所駐車場 】


奈緒「あ、あの!……Pさん、お待たせ」

P「おー。それじゃあ帰……」

奈緒「……」

P「奈緒、その服……」

奈緒「……」


あたしは"あの服"を着た

クリスマスの日に着た、あの服を


P「……クリスマスの時の服か」

奈緒「さ、最初は……この服を着て、写ろうと思ってたんだ」

P「……」

奈緒「でも、これは……この服は特別だから……えと、その……」

P「奈緒」

奈緒「な、なんだ?」

P「実はね、今日の撮影、俺も最初はその服で写そうと考えていた。それでも俺はやめた。なんでか分かるかい?」

奈緒「……わかんない」

P「その服、俺のために着てくれたんだろ? 前に渋谷さん達から聞いたよ」

奈緒「!!!」

P「奈緒が俺のために一生懸命選んで着てくれた服。俺はね、それを他の人に見せたくなかった」

奈緒「Pさん……」

P「公私混同かな? でも、それでもいい」


Pさんの、まっすぐな気持ち

すごく暖かい

……あたしも、素直に……まっすぐに……


P「かわいいよ、奈緒」

奈緒「う、うん……あたし、……あたしも! 見せたいのはPさんだけ! クリスマスにPさんに見せたいから、
未央や凛達に手伝ってもらってこの服を買ったんだ!Pさんに喜んでほしいから!
いつもあたしの事を……か、かわいいって言ってくれるPさんに、もっとかわいいって言ってほしかったから!」

P「可愛いよ、奈緒」

奈緒「っ!!!」


Pさんに、抱きしめられた

え? え? どうしよ

あたし、どうすれば


P「可愛い」

奈緒「……あああああのあの、Pさん、あ、あたし、いま、Pさんに」

P「嬉しかったよ、また着てくれて。すごく可愛い」

奈緒「………………うん」


いつもの"かわいい"と違う"可愛い"

ずっとずっと、Pさんの気持ちが込められた"かわいい"だった

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P「おっ……と。いくら人がいなくても、外でこれはヤバいな。完全に甘い雰囲気に呑まれてた」

奈緒「あ、甘いって……は、恥ずかしい……」


あたし、Pさんと抱き合っちゃった……

抱き合っちゃった!

どうしよう、顔が熱い。心臓がすごくバクバクいってる

でも……すごく幸せな気分だ


P「奈緒、おーい」

奈緒「はっ……! な、なんだよPさん!?」

P「これから、ご飯でも食べに行かないか?」

奈緒「ご、ご飯……?」

P「この前さ、良さそうなレストランを見つけたんだ。車で少し走れば着くから、どうだ?」

奈緒「……うん、行くよ。行きたいな、Pさんと一緒に」

P「決まりだな。それじゃあ一緒に行こうか」


Pさんはあたしに手を伸ばす

あたしは少し恥ずかしがってその手を取る

Pさんはニコっと笑う

あたしも、笑う


P「いい笑顔だ、奈緒」

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【 数日後・事務所 】


奈緒「Pさん、おはよ!」

P「おはよう、奈緒。今日もかわいいな」

奈緒「……ん」

P「お、照れてるな。よしよし」

奈緒「そりゃ照れるに決まってるだろ! ばか!」

P「奈緒はかわいいなぁ! 頭なでなでしてやろうか」

奈緒「うわっ! おいPさん! やめろ! やめろって~~!」


あれから、あたしとPさんの関係は少し変わった

お互い、前よりスキンシップが増えた気がする


P「っと、じゃれ合うのはこれくらいにして、奈緒はレッスンを」

奈緒「あー、Pさん、あのさ」

P「どうした?」

奈緒「んーと、その……今日さ、仕事終わったら……遊びに行きたいなーって……思ったり」

P「……あぁ。行こうか、2人で」

奈緒「うん! ありがとな、Pさん」

P「素直になった奈緒もかわいいな。いつものツンデレ奈緒もかわいいけど」

奈緒「う、うるさいな! 茶化すなよ!」

P「悪い悪い。それで、今日はあの服、持ってきてるのか?」

奈緒「そうだけど……ほんとPさんはあの服好きだよなー」


Pさんが好きなのはあたしじゃ無くて服なのか?

ちょっとだけ服に嫉妬した


P「服も好きだけど、俺は奈緒が好きだよ」

奈緒「…………へ!?」

P「さて、仕事仕事! 資料はどこだったかな……」

奈緒「待て待て! Pさん、今のは!」

P「お仕事だぞー」

奈緒「逃げる気だな!? そうはいくか!」


どこかへ行こうとするPさんに、あたしは前から抱きついた

さっきの言葉がまた聞きたいから


P「おわっ!! 奈緒!? ここじゃマズイって!」

奈緒「は、離すもんか! もう一回言わないとダメだからな! ……ばか」

P「……可愛いな、奈緒は。それじゃあもう一回言うよ」

奈緒「うん」

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【 物陰 】


凛「奈緒、かわいい」

加蓮「かわいい」

終わりです

限定SSR奈緒の衣装は特訓前も後もどちらもかわいいですね

依頼出してきます

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