勇者「女神の加護を受けるとくだらない呪いにかかる、ってなんですか」 (31)

王様「女神様の御加護を受けるとな、その反動としてくだらない呪いにかかってしまうんじゃ」

勇者「つまり」

王様「強くなる代わりにちょっと悲しい感じになるんじゃ」

勇者「そうじゃなくて、具体的に」

王様「そうじゃな…例えば、御加護によって強力な炎の魔法が使えるようになるとする」

勇者「はい」

王様「その代わりに性格がすごく暑苦しくなる」

勇者「どのくらい」

王様「松岡修造くらい」

勇者「くだらな…」

王様「くだらないんじゃ」

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王様「だがな、これが結構効くんじゃ」

勇者「というと」

王様「その古き勇者はな、元々控えめな性格だったのじゃ」

勇者「ふむ」

王様「消極的で、大人しい、しかしながら優しい心の持ち主だった」

勇者「なるほど」

王様「しかし呪いによって変わった自身にその心が付いていかなかったのじゃよ」

勇者「つまるところ」

王様「鬱になって身投げしおった。しかもその時まで暑苦しかったらしい」

勇者「よくわからない」

王様「わしもよくわからんが、まあ精神的にキたんじゃろ」

勇者「他に事例はないのですか」

王様「あるぞい」

勇者「どのくらい」

王様「ざっと30行くくらいは」

勇者「今までどれだけの勇者が死んでいったの?」

王様「全員じゃな」

勇者「……え、それ全部呪いで?」

王様「全員じゃな」

勇者「わーお……」

王様「一番ヤバかったのがな、『あらゆる物事が都合の良い方に転がる』という御加護じゃ」

勇者「してその呪いは」

王様「『初見の人に仲間が勇者だと勘違いされる』じゃな」

勇者「くだらな…これはあんまりくだらなくはない」

王様「くだらなさとヤバさは御加護の力に比例するっぽいんじゃ」

王様「これはヤバいぞ。何せ自身が勇者だというアイデンティティが奪われるわけじゃ」

勇者「つらそう」

王様「そのうち仲間がめんどくさくなって間違われることを訂正しなくなった」

勇者「嫌な予感がする」

王様「そうこうするうち本当に勇者でなくなってしまったのじゃからな。これは本当にやばい」

勇者「その末路は」

王様「普通に死んだのじゃ。魔物との戦いで」

勇者「普通に」

王様「普通に」

勇者「どれくらい」

王様「いやそりゃもう普通に力負けして」

勇者「ええ…加護は一体」

王様「勇者が勇者でなくなるじゃろ?すると御加護もなくなってしまう」

勇者「はい」

王様「勇者になってしまった仲間の方は、そもそも御加護はないんじゃ」

勇者「はい」

王様「今までご都合主義で何とかなってきた奴らじゃ。突然環境が変わればあっさり死ぬもんじゃ」

勇者「なんか釈然としない」

王様「まあそういうものなんじゃ」

勇者「これ加護ってこっちが決められるんですか」

王様「大凡は決められるぞい」

勇者「マジで」

王様「マジで」

勇者「女の子にモテモテになるとかも?」

王様「実際にいたぞい」

勇者「いたの」

王様「いたよ」

勇者「いたんだ」

王様「まあ、そいつは元から剣が強かった。で、旅のモチベの為にそういう加護を受けたんじゃ」

勇者「モチベの為…あっ(察し」

王様「しかしあやつの受けた呪いは『寄ってくる女が皆特殊性癖持ち』だったのじゃよ」

勇者「えっなにそれは」

王様「旅の記録が送られてくる度にわしらもなんか、こう、キュッ…となる感じじゃった」

勇者「えぇ……まあ詳しくは聞かないでおきます」

王様「その方が良い…」

勇者「あー…ちなみに末路は」

王様「ネクロフィリアの女性に殺され、死んでなお愛され続けとるそうな」

勇者「ヒェッ」

王様「ちなみに同じような奴が2人くらいおってな」

勇者「マジか」

王様「そのうち1人は『2日目には飽きられる』呪いでな」

勇者「それはそれでしんどい」

王様「もう1人は『男にもモテる』呪いにかかったんじゃよ」

勇者「こっちはくだらねぇ」

王様「両方とも精神を病んで自殺してしもうたがな」

勇者「あんまり笑えない」

勇者「なんだかんだあんまりくだらなくなくないですか?」

王様「くだらない例を聴きたいんか?」

勇者「まあ、一応」

王様「そうじゃな…『剣の上達が早くなる』御加護を受けて『手に豆ができやすくなる』呪いにかかったとか」

勇者「すごくどうでもいい感じがくだらない」

王様「しかし肝心な時に豆に手元を狂わされてお陀仏らしい」

勇者「くだらないはずなのに末路がやるせなさすぎません?」

王様「腐っても呪いじゃからな。ああ、腐ってるといえばこんなものいたな」

勇者「とは」

王様「『魔力が高まる』代わりに『年中口から納豆の匂いがする』とか」

勇者「なっとう…とは?」

王様「知らんのか。東の一部地域で食べられる加工食品でな、発酵しとるから結構臭い」

勇者「臭い」

王様「独特な匂いでな、なんというか、吐き古した靴の中敷きみたいな匂い」

勇者「冒涜的な食べ物ですねそれ…」

王様「まあ発酵食品なんてものは色んな匂いがあるからの…」

王様「それとな、勇者以外にも加護を受けたものがおったりする。そいつらは結構生き残ってるぞ」

勇者「ほう。ちなみにどなたが」

王様「わしじゃ」

勇者「あんたかよ」

王様「ちなみにわしは『計算力が上がる』代わりに『誤字が多くなる』呪いにかかった」

勇者「くだらなさすぎる」

王様「側近の大臣も実は加護を受けておるぞ」

勇者「して、どのような」

王様「『頭の回転が速くなる』代わりに『必ず夜9時に寝て朝7時に起きる』呪いじゃな」

勇者「健康的」

王様「しかし夜更かしも早起きもできんからな、若い頃は結構キてたらしいぞ」

勇者「よく生きた。あんたはえらい」

王様「大臣に言ってやってくれ」

勇者「不謹慎かとは思いますがもっと聞きたい」

王様「良い性格をしとる」

勇者「それほどでも」

王様「褒めてはおらん」

勇者「はやく」

王様「人選間違えたかな…まあよい。『動体視力が良くなる』代わりに『まつ毛が長くなる』とか」

勇者「ほう」

王様「『策士になる』代わりに『料理が鋼の味になる』とか」

勇者「ふむ」

王様「『身体能力が向上する』代わりに『あらゆる攻撃を即死攻撃だと思い込む』とか」

勇者「なんだかなぁ」

王様「くだらないじゃろう」

勇者「いや、そうじゃなくてさ…」

王様「ん?」

勇者「なんかこう、くだらないのベクトルが違くない?」

王様「ベクトル」

勇者「ベクトル」

勇者「俺が求めてるのはですね、こう、『うっわくだらなッ!!』って感じのくだらなさなんですよ」

王様「お、おう」

勇者「なんというかコーラだと思って飲んだら重油だったみたいな」

王様「お前納豆は知らないくせにコーラは知ってるのか」

勇者「でもなんか、こう、コーラだと思ったらペプシドライでした!みたいな感じなんだよなぁ…」

王様「ペプシドライ」

勇者「なんかこう右下にガクッってくるんじゃなくてさ、左斜め下にゆる~っく戻っていくような」

王様「お前ペプシドライバカにしてんの?」

勇者「王様ペプシドライに何かこだわりあるの」

王様「昔毎日飲んでたのにもう売ってなくてかなしい」

勇者「はい」

王様「はやく再販してほしい。つらい」

勇者「まあともかく、なんかこう釈然としないんですよ」

王様「釈然としない」

勇者「伝わる?」

王様「あんまり」

勇者「そうですか」

勇者「なんかこう、副次的にくだらない呪いにかかるんじゃなくって仕組まれてる感がすごい」

王様「仕組まれてる感」

勇者「なんかこう、解せない感じ。何のための加護なの」

王様「あー、それは多分あれじゃ。別に勇者に世界を救うために加護を与えてるわけじゃないし」

勇者「そういうもんなの」

王様「そういうもんじゃな」

勇者「まあ王様も加護受けてるしそういうもんなのかな」

王様「加護っていうより取引に近いかもしれんな」

勇者「取引」

王様「基本的に努力や時間を対価に何かしらを得るものじゃろう?」

勇者「ええ、まあ」

王様「それらの代わりに呪いで清算しておるんじゃろ、恐らく」

勇者「恐らく」

王様「恐らく」

勇者「……少し話を戻します。加護を受けずに旅立った勇者は」

王様「いたぞい」

勇者「いたのか」

王様「いたんじゃな、これが」

勇者「彼らもすでに亡くなって?」

王様「生きてたらお主はお呼びでないな」

勇者「そりゃそうか」

王様「まあ、その古き勇者たちは己の力のみで進む事を余儀なくされたからの、苦難の連続だったそうな」

勇者「なるほど」

王様「言うても元から努力を下積みしておったり才能を持ち合わせていた者もいたがのう」

勇者「でも彼らもお亡くなりになったのでしょう?」

王様「まあこればっかりは実力勝負じゃからな…しかもほぼ一度きりの」

勇者「まあ小説の物語みたく死んでも蘇生、とまではいかないですもんね」

王様「蘇生といえば『不老不死』の加護を受けた者もおったな」

勇者「ほう」

王様「しかしその呪いが『生き返る度に身体が少し黒くなる』じゃった」

勇者「黒くなる」

王様「黒くなったんじゃ」

勇者「このくだらなさを求めていた」

王様「お前のツボがよくわからん」

勇者「…しかしとなるとその勇者は今も生きておられるので?」

王様「……ああ、生きておる。この世のどこかでな」

勇者「…なんだか、不穏な感じですが」

王様「奴がな、松崎しげる程度まで黒くなったのはまだよかったんじゃ」

勇者「松崎しげる」

王様「その時点でもう50回は死んどったらしいが、そこは重要ではない」

勇者「と言いますと」

王様「古き勇者はな、こう言ったんじゃ『最近、死ぬ度に世界と溶け込んでいる気がする』と」

勇者「……」

王様「そうして死ぬ度に黒ずんでいき、ある日とうとうただの黒色となってしまった」

勇者「黒一色に…?」

王様「その場に居合わせた兵士がその黒から何を聴いたと思う…?」

勇者「なに、を…?」

王様「『ああ、私はこの世界そのものになったんだ』と」

勇者「世界そのもの…」

王様「しかしな、それは少し違うんじゃよ」

勇者「少し」

王様「足元を見てみい」

勇者「……?何もないですが」

王様「あるじゃろ」

勇者「え?」

王様「そこにあるじゃろ」

勇者「ええ…?」

王様「わからんか?世界の反対側、もう一つの姿。奴はそれになったんじゃ」

勇者「……まさか」

王様「『そう。光が照らせばそこにいる』

『常にあらゆるモノの付き纏い従う世界の、一部』

『常に共にあり、切り離せず、しかし個でも集でもない』」

勇者「……」

王様「『ある日どこからともなく挨拶されるだろう』

『 こ ん に ち わ 。 』

『彼は目の前にいて、その後ろにいて、そして自身の真下にいるのだから』

王様「おう、久しぶりじゃな?」


おひさしぶりです。おうさま。


勇者「王様…誰とお話に…まさか……」


……

 こ ん に ち わ 、 あ た ら し き ゆ う し ゃ よ 。

勇者「うわあああああああああーーーーー!!!!!!!???!?!?」

王様「っていうB級ホラーみたいなこと一回やってみたかったんじゃ」

勇者「やめませんこういうの?」

王様「お主もだいぶノリノリじゃったくせに」

勇者「まあ、嫌いじゃないですし」

王様「はっはっは、こやつめ」

勇者「ちなみにどこまで本当なんです?」

王様「全部じゃ」

勇者「全部」

王様「全部じゃ」

勇者「……えっ」

王様「最後にあったのは4年前じゃったかな…今頃何してるんじゃろうな」

勇者「ええぇ…」

王様「安心せい、もう御加護なんぞないからただの黒い人間じゃよ」

勇者「それはそれでホラーすぎません?」

王様「いや、さっきの話もあいつから聞かされてな、でも中々やる機会なくて」

勇者「あんまりリアリティないなぁとは思ってましたけど」

王様「実はわしも」

勇者「そうなの」

王様「そうなの」

勇者「でもその人生きてるんですよね」

王様「不老不死だったしカウントしても無駄だと思わんか」

勇者「釈然としない」

王様「お主さっきから釈然としなさすぎでないか?」

勇者「そうは言われても」

王様「そう言えば『話す内容が全部釈然としなくなる』呪いとかもあったな」

勇者「釈然としなくなる」

王様「なんかまぁ、こう、常にヤマなしオチなしみたいな」

勇者「釈然としない」

王様「あと『話し方が村上春樹っぽくなる』とか」

勇者「一体その呪いはどういった加護と引き換えに得たのか、ぼくにはとても検討が付かなかった」

王様「『攻撃を放つときスト2のボイスみたいな発音をしてしまう』とか」

勇者「アイグー アパカッ」

王様「『相手を撃墜した際衝動的にアピールをとってしまう』とか」

勇者「Show me your moves!」

王様「そこは醤油ムースじゃないんだ」

勇者「遅すぎだぜぇwwwwwww」

王様「ゴリアピして、どうぞ」

勇者「今思ったんですけど」

王様「うむ」

勇者「僕らの会話が適当すぎませんか」

王様「そういうもんじゃろ」

勇者「そういうもんですか」

王様「じゃあ聞くけどな、お主今何かしら考えて喋っておるか?」

勇者「あんまり」

王様「わしもじゃ」

勇者「それでいいのか王様」

王様「そっくりそのまま返すぞ勇者」

勇者「ひどい」

王様「そもそもお主呪いについて対策とか考えて聞いてたんじゃないのか」

勇者「半分忘れてた」

王様「半分」

勇者「嘘です完全に忘れてました」

王様「正直者でよろしい。よくないけど」

勇者「てへぺろ」

王様「かわいくないからやめて」

勇者「気を取り直して、どういった加護を受けたら精神的に病まずに魔王を倒せるか」

王様「真面目じゃな。えらいぞ。10王様ポイントを贈呈しよう」

勇者「なんすかそれ」

王様「1000ポイント貯めるとわしのお気に入りのソフトさきいかが貰える」

勇者「あんまりいらない」

王様「100円ローソンで売ってるのが割と味濃くてオススメじゃぞ」

勇者「どうでもいい」

王様「まあ、じっくり考えるがよい。どうせくだらない呪いじゃからな」

勇者「くだらないけど実際受けることを考えると割としんどい」

王様「まあ、慣れじゃ」

勇者「慣れ」

王様「うん。慣れ」

~次の日~

王様「さて、決まったかの」

勇者「ええ、一応」

王様「ほんじゃ儀式の間へレッツラゴーじゃな」

勇者「軽い」

王様「レッツラゴーじゃ」



~儀式の間~

『勇者よ、汝は如何なる加護を求めるか』

勇者「はい、僕は――」



「『雑に生きる』です」

『承知した』



王様「雑に生きるって何」

勇者「雑に生きるってことですね」

王様「雑」

勇者「ちなみに呪いっていつわかるの」

王様「ここんとこの石板に浮き出てくるんじゃよ」

勇者「どれ」


『呪い:雑になる』

勇者「雑」

王様「雑」

~後日談的な何か~

雑な勇者は雑に戦い雑に魔王に勝ち、なんか雑に生きて帰ってきましたとさ。
時折雑な自分に悩むことはあったけど雑になった勇者は雑に流して生き続けたらしいです。雑。

完。

くぅ疲もーん
呪いが伝染して作者も雑になってしまった(超常現象



雑なオチだった(誉め言葉)

一応完結ageしとくでござるよ(せこい

実は女神と魔王は同一人物で暇つぶしでこんなことしてたけど、雑な勇者の壮大な冒険の末に雑に倒される展開があったらしいんですが道半ばでお亡くなりになりました

補足も雑ゥ!

こういうのすきだ
おつ

雑に女神ざまあ
雑に乙

乙でございます

乙です
雑がゲシュタルト崩壊で雑

おつ
ギャグ漫画日和とピュージャガと銀魂を煮詰めた様なスレだったな

何というか、雑な理由で始めたことが雑な理由で終わったんやなって

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