【勇者・魔王ss】「勇者」 (28)

側近「魔王様、万歳……!」ズシャァ


――――――――――

ズキッ

勇者「……」


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勇者「なかなかの強敵だった……。 もし、君の神聖魔法が間に合っていなかったら、きっと勝てなかっただろう」

僧侶「そんなことありませんわ、勇者様。 わたしだけでは、呪文を唱えきることができませんもの。 ですから、この勝利の立役者は――」

魔法使い「……アタシ、でしょ?  だって、アレに一番ダメージを与えたのってアタシなんだから。 勇者は、もっと感謝してくれてもいいと思うわ」

戦士「はっはっは。 それを言うなら、俺だって敵からの攻撃を庇いつつも華麗な攻めを行ったぞ。 どこぞの、火力が正義の脳筋とは違うのだ」

魔法使い「あ? 筋肉ダルマが華麗とかアホ抜かしてんじゃないわよ。 アタシはね、色々考えた結果、魔力をぶっ放すのが一番ってなったの。 傭兵上りが、学園一のエリート様をバカにしないでよね」

戦士「なんだと……!」

勇者「まぁまぁ……こんな所で喧嘩はよせ。 この城にはあと魔王しかいないといえども、そんなに気が緩んでいてはやられてしまうぞ……ほら、彼女を見てみろ。 二人と違って、とっても真剣な顔をしてるじゃないか」

勇者「なかなかの強敵だった……。 もし、君の神聖魔法が間に合っていなかったら、きっと勝てなかっただろう」

僧侶「そんなことありませんわ、勇者様。 わたしだけでは、呪文を唱えきることができませんもの。 ですから、この勝利の立役者は――」

魔法使い「……アタシ、でしょ?  だって、アレに一番ダメージを与えたのってアタシなんだから。 勇者は、もっと感謝してくれてもいいと思うわ」

戦士「はっはっは。 それを言うなら、俺だって敵からの攻撃を庇いつつも華麗な攻めを行ったぞ。 どこぞの、火力が正義の脳筋とは違うのだ」

魔法使い「あ? 筋肉ダルマが華麗とかアホ抜かしてんじゃないわよ。 アタシはね、色々考えた結果、魔力をぶっ放すのが一番ってなったの。 傭兵上りが、学園一のエリート様をバカにしないでよね」

戦士「なんだと……!」

勇者「まぁまぁ……こんな所で喧嘩はよせ。 この城にはあと魔王しかいないといえども、そんなに気が緩んでいてはやられてしまうぞ……ほら、彼女を見てみろ。 二人と違って、とっても真剣な顔をしてるじゃないか」

僧侶「……攻め………、絶対…受け………………」


魔法使い「……」

魔法使い「う、うん。 そうね……」

勇者「だろう? それに、今まで戦ってきた者は、ほとんどが魔王に心酔していた。 僕達に精神魔法は効きづらいとしても、油断ならない相手だ」

戦士「まぁな……。 だが、勇者は気を張り過ぎてるんじゃないか? それでは勝てるものも勝てなくなくなるぞ」

僧侶「……そうですよ、勇者様。 ここまで来れたわたし達なら大丈夫です。 わたしだって、凱旋や御馳走のことを考えていました」

魔法使い「アンタって意外と気が早……って、いつの間に妄想から帰ってきたの?」

僧侶「はい? ちょっと記憶にないですね……アナタの気のせいでは?」

魔法使い「あーそうですか。 まぁ、頭で考えるのは自由だから。 脳内ショッキングピンクでも好きにすればいいわ」

僧侶「……」

僧侶「ふん。 耳年増の癖してよく言う……」

魔法使い「なぁーー!? ち、ち、ちがうもん! アタシは別に普通だし!」

僧侶「うふふ。 そうですねー、アナタは知識と経験が釣り合ってますものねー。 わたしったら、勘違いしてたみたいですぅ」クスクス

魔法使い「うぅ……その勝ち誇った笑みが心底腹立つ……」

勇者「……何で、ああも喧嘩腰なのかな……」

戦士「それが、美点でもあり、短所でもある。 あの明るさがなければ、挫けてしまったことは何度だってあるのだろう」

勇者「へぇ……喧嘩ばかりだし、あの子のことを嫌いだと思っていたが……お前は、意外とそうでもなかったのか?」

戦士「仲間としては、嫌いではない。 だが、アイツとは馬が合わないな」

勇者「ふぅん。 じゃあ、鹿は誰なんだろうね」

戦士「そんなの、このパーティ全員だろ。 たった4人で魔王討伐なんて、大馬鹿でもなきゃやらないさ」

勇者「……違いない」

…………………………


勇者「ここに、魔王が居るんだな」

戦士「凄い圧だ……」

僧侶「……今度は、失敗しません……」ボソッ

魔法使い「あぁ……アンタ、初めの頃はよくコントロール間違えてこっち撃ってたもんね。 そりゃ、魔王戦の前は緊張しちゃうか」

僧侶「はぁ。 アナタは、よく突っかかってこれるものです。 もう撃つことはないのですから、わざわざ言ってこなくてもいいですわ」

魔法使い「はいはい。 まっ、アタシは天才だから、アンタみたいに練習しなくても、初めからきちんと的に当てられたのよねー」

戦士「……おい」

魔法使い「わ、分かったわよ……。 戦いに集中すりゃいいんでしょ。 何度やってきたと思ってるのよ、楽勝に決まってるじゃない」



勇者「……開けるぞ……」

ズキッ

――――――――――


ザー

「お前の、言った通りになったな」

「仲間は皆死んでしまった。 なのに、自分だけは……勇者だから、死ねなかった」

「もう、いいんだ……もう、疲れた……」

「だから……今なら、お前と世界征服するのも、面白そうだと思うんだ」


――――――――――

ガクン

勇者「ぐぅっ!?」

魔法使い「勇者!?」

戦士「くそっ、罠か!」

僧侶「待っててください。 今、回復魔法を唱えます!」


魔王「ふむ……敵の前で背中を向けるとはな……随分と嘗められたものだ」


勇者「魔王!」

戦士「……絶対、ここでぶっ殺してやる!」

魔法使い「アタシ達に敵うとでも思ってるのかしら……?」

僧侶「…………」ブツブツ

魔王「……」

魔王「そうだな……。 我とて、少しばかりこの相手は厳しい……」

魔王「……だから、手を打たせてもらおうか!」



ゴゴゴゴゴゴ

魔法使い「きゃぁぁぁ、何よこれぇ!?」

僧侶「……魔物です。 魔族とは違い、理性がなく目の前の敵を蹂躙することしか考えていない下賤な生物……!」

戦士「何だっていい! とにかく勇者を助けるためにも、この結界と化物共をぶち壊してやる!」


…………………………


勇者「(皆が、どこかに連れ去られてしまった)」

勇者「……魔王め、卑怯な手を……!」ギリッ

ズキッ

――――――――――


「……何で、こんなことをするのかだって?」

「決まってるだろ。 復讐だよ」

「大切な仲間を糞みたいな目に遭わせた奴らも。 気づかなかった馬鹿共も」

「オレが、死ぬより苦しませてやるんだ。 絶対に……簡単に死なせたりなんかするもんか」


――――――――――

勇者「くそっ! 何なんだよ、いったい……!」

魔王「……」

魔王「ふん……余所見をしてる場合か? 貴様の相手は我だぞ、勇者よ!」

ゴォォォォ

勇者「ぐっ」

勇者「(威力が、今までの敵とは桁違いだ! 一瞬でも気を抜けば、やられる……!)」



ズキッ

勇者「(……くっ、こんな時に……頭痛が……)」

――――――――――


「倒しに来た?」

「そんなことをしたって、意味なんてないよ」

「時間の無駄なだけ。 もし分からないなら、教えてあげようか?」



「……」

「……うん、そうだよね……きっと、信じてもらえないだろうって思ってた」

「仕方ない……いいよ、相手してあげる……。 あたしは、あたしを救ってくれた魔王様のために、全力を尽くすだけだから」


――――――――――

――――――――――


「ワタシの信じていた神様なんて居なかった……」

「そんなの、この身をもって感じたことですよ」

「どんなに苦しんだって! 救いを求めたって! 神は何もしてくれやしない!」

「だから、ワタシが新しい神になるのです。 衆愚を導いてやれるのは、ワタシだけ!」


――――――――――

勇者「はぁ……はぁ……」


魔王「顔色が悪いようだな。 我としても、万全ではない相手に本気を出すのは気が引ける……」

勇者「なに、を……! ならば、何故皆を……!」

魔王「古来より、魔王と勇者は一騎打ちをしてきた……我は、適さない役者を観客席に座らせたまで」

魔王「そして……その記憶も、貴様には必要のないものだ、勇者よ!」


パァァァァ

――――――――――


「……ん?」

「良かった、目が覚めたのですね。 ここは教会です……といっても、寂れて見る影もありませんが」

「貴方は、どうしてあんなに傷ついていたのですか?」



「……街に、新しい教会ができたのです。 それで……どうやら、その中に魔族が居るようですが、教会の者は街の人々にとても好かれていて……極端な思想を掲げていても、誰も反対しない……」


「……分からないです。 わたしは、まだまだ未熟ですし……でも、わたしの知る範囲では、精神魔法の類ではない、と」


「えっ!? いえ、わたしはそんなつもりで言った訳ではありません……! だけど、今の状況を好ましく思っていないのは事実ですし……もし、何か手伝えることがあるなら……わたしも、協力致しますわ」


――――――――――

――――――――――


「……こんなところに、お前達みたいな子ども2人だと危ないぞ。 俺が居たからいいものの……いったい、何のつもりでここ来たんだ? まさか、お嬢ちゃんとデートしてたら迷ったって訳じゃないだろう」


「は? それ、本気なのか……?」

「ぷっ、あはははは! おいおい、お前達馬鹿だろ! 現実見ろって!」



「……っ。 そうか……そういう訳が……」

「あぁ、いや……さっきは……その、笑って悪かったな。 そこまで言う奴に手を貸さないなんて漢じゃねぇ。 これからは、俺も手伝ってやるよ」


――――――――――

――――――――――


「あら、困ってるみたいね」

「……いやいやいや、アタシは怪しいものじゃないわ! 確かに、ちょっと普通じゃないけど、そんなの許容範囲内だから!」


「サラッとディスるのやめてくれる……? あと、コレが魔族の仕業というのは間違っていないけどね……その方法じゃ、絶対黒幕にたどり着けないわよ」


「……食いついてくれて嬉しいわ。 実は、この件とは無関係のはずだけど、少し気になることがあってね……」

「今回助けてあげる代わりに、そのことに協力してほしいのよ。 アタシ、謎を謎のままにしときたくない性質なの」


――――――――――

勇者「……っ!」

勇者「(これは……皆と出会った時の記憶……?)」


魔王「ふむ、これでいいか……」

勇者「……何をしたんだ、魔王!」

魔王「印象に残った記憶を、相手に呼び起こさせる魔法だ。 貴様が側近から受けた魔法と似たようなものだよ」

勇者「抜かせ! 僕が、魔王と世界征服なんてするはずがない……!」

魔王「似たようなもの、と言っただろう? 記憶魔法の一種というだけだ」

魔王「……そもそも、あれは本来頭痛など引き起こさないし……元々、我に向けてかける予定だった。 なのに、貴様にかけるとは……よっぽど、知らせたい事実があったのだろうよ」

魔王「……とはいえ、我は大切な配下の記憶をみすみす他の奴にあげる気はしなかったのでな。 少々強引な方法ではあるが……全て、打ち消させてもらった」

勇者「……」

魔王「まぁ、普通の人間には耐えられまいが……勇者ならば大丈夫であろう」



魔王「……さて、これからは本気でくるがいい、勇者よ!」

勇者「言われ、なくても……!」


キィィィィン!!

――――――――――







――――――――――

魔王「ぐっ……!」ガクッ

勇者「……」



魔王「どうやらここまで、か……」

勇者「ふん。 魔法で打ち消さなければ、僕に勝てただろうに……馬鹿な奴」

魔王「……そうだな……。 だが、自分の我儘を通せるほど、我が強くなかったのも事実。 この敗北は、甘んじて受け入れよう」

勇者「言いたいことは、それで終わりか?」

魔王「あぁ。 一思いに斬ってくれ……と言いたいところだが……」

勇者「?」

魔王「……最期に一つだけ。 勇者である貴様に、言っておかねばならないことがある……」

――――――――――



「魔族になれば、■■をやめられる」



――――――――――

ザシュッ

「」サラサラ…

勇者「(魔素となったか。 いったい、何故魔王は■■のことを……)」

勇者「(……それに、記憶魔法のことも気になる。 打ち消せたということは、魔力の波長が反対のものということ)」

勇者「(おそらく、その者の記憶に無いものを見せる……伝達魔法として、一般にも広まっているあの魔法のことだろう)」

勇者「(でも、魔族が記憶魔法を使ったという話は聞いたことがない)」

勇者「(あれは、魔族がよく使う魔法や魔術とは体系が異なりすぎていると研究されていたはず……。 とてもではないが、詠唱せずにできるものとは思えない)」

勇者「(……それに、あの雨の日の出来事……。 僕以外にも『勇者』が居たことは知っているが、『勇者』が死ねないなんて、そんなことあるはずがない)」

勇者「(だって、それじゃあ、『勇者』は……)」

「何の考え事をしているのか、わたしにも教えてください。 勇者様」

勇者「!」

僧侶「ふふっ。 魔王の気配が消えたので、勇者様が倒したのだろう……という話になったのですが、いつまで経っても勇者様がいらっしゃらないから、迎えに来たんです」

勇者「……君一人で、か?」

僧侶「えぇ。 お二方は、大量の魔物と戦ったために、大変お疲れのようでして。 わたし達以外に誰もいないのであれば、特に危険もないでしょう?」

勇者「そりゃ、そうかもしれないが……。 それでも、まだ罠が残っている可能性はあるだろう」

僧侶「そんなもの、ありませんよ。 魔物の罠だって、本意ではなかったでしょうし、ね……」ボソッ

勇者「?」

僧侶「……罠は、戦いの前にないか確認済みでしたから。 魔力も体力も残っていたわたしが探しに行きたいと言っただけですよ」

僧侶「それで、こんなところでぼーっとしているなんて……魔王に、何か言われたのですか?」

勇者「いや。 むしろ、大して言ってこなかったせいで謎が増えたというか……。 今になって、もう少し話しておけばよかった、と思っただけだ」

僧侶「……話す必要なんて、ありませんよ。 もし、話をしたせいで奴等を殺せなくなったらどうするのでしょう」

勇者「……」


僧侶「分かりますか、勇者様? 貴方は、ムシケラよりも劣る奴等を、攻めて、攻めて、攻めて、責めて、責めて……この世界の何処にも、受け入れてもらえる場所なんてないと……知らしめてあげなきゃ駄目なんです」


勇者「っ。 そんなの、分かってるさ……僕がやらなきゃ、皆が……」

僧侶「理解しているのなら、それでいいんですけれど」

僧侶「……あぁ、忘れるところでした。 勇者様……貴方にも、回復魔法をかけてあげます。 魔王との戦闘で、傷ついていますよね?」

勇者「……」

勇者「そうだな……君に回復魔法をかけてもらうと、妙に頭がすっきりするし……魔力に余裕があるようなら、お願いするよ」

僧侶「うふふ。 任せてください」ニッコリ

…………………………


勇者「」パチッ

僧侶「おはようございます、勇者様」

勇者「ふわぁ……おはよう……。 僕、いつの間に寝てたんだ……? 王都に着いたところまでは覚えてるんだけど、記憶が曖昧で……」

僧侶「……」

僧侶「ふふっ。 勇者様は、すっごく緊張してたんですよ。 国王との謁見なんて、そうそう出来ることじゃありませんから」

勇者「うーん……でも、なんかお上りさんみたいで恥ずかしいな。 こんなんじゃ、二人に笑われちゃうかも」

僧侶「否定はできませんね」

勇者「あはは……やっぱり、そう思う?」

僧侶「それなりに長い付き合いですし。 どういった対応をしてくるかは、ある程度分かりますわ」

勇者「……そういえば、彼らと一緒に居るようになって、もうどれくらいになるんだろう」

僧侶「さぁ? 数えていないので分かりません」

勇者「君って、意外とテキトーだよね……」

勇者「……そうだ。 さっきから気になってたんだけど、二人が今どこに居るか知ってる?」

僧侶「お二方なら、少し前に起きて食事をしているところです。 邪魔してはいけませんし、見ても面白くないかと……勇者様には、後でわたしが何か作りますね」

勇者「そっか……僕も何か手伝えたらよかったんだけど……あまり、料理は得意じゃないからなぁ」

僧侶「別にいいのですよ。 だって、勇者様にはやるべきことがあるのですから……わたしが言ったこと、ちゃんと覚えていらっしゃいますよね?」

勇者「えーっと……『勇者』は、魔の者を殲滅し続けなければいけない。 そうでなければ、英雄でなくなる……だったっけ」


僧侶「…………」

僧侶「その通りです。 貴方は■■としての役割を、最期まで果たしてくださることを祈っておりますわ」

この話はこれでおわりです。

>>3は恥ずかしいことに、ただの連投ミスです……。

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