千早「アイドルはトイレに行かない」 (51)


春香「この事務所にみんなで入って、はや二ヶ月かー」

千早「早いものね。だけど最近忙しくなってきたわね」

伊織「いい事じゃない。頑張った成果が出てるのよ」

春香「けど仕事の空き時間にこうやってまったりするのって最高だね」

千早「まあ、確かに落ち着くわね」

伊織「合間におしゃべりする時間って本当にいいわよね」


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春香「事務所って、何か落ち着くよね」

千早「そうね。お茶菓子でも何でもあるし」

伊織「誰かいる事も多いからおしゃべりの相手にも困らないしね」


春香「…けどさ。事務所で1つだけ不思議な事があるんだけど」

千早「ん?」

伊織「何よ?」


春香「なんでうちの事務所って、女子トイレがあるのかな?」

千早「あ、え、ええ…」

伊織「ああそうよね。確かに」


春香「私達アイドルって、トイレに行かないから必要ないのにねー」

千早「え、ええ…」

伊織「本当よね」


二人とも、事務所のトイレに行ったのを見た事がない。

なぜって、アイドルはトイレに行かないから…。


春香「トイレ行くなら、その人はアイドルじゃないからねー」

千早「そ、そうね…」

伊織「ええ、その通りよ」


私もみんなに合わせ事務所のトイレは使わない。

どうしてもしたくなった時には、近くのコンビニに買い物に行くふりをして

こっそりそこのトイレを利用させてもらっている。


伊織「まあきっと、お客さん用じゃない?」

春香「あ、そうかもね。アイドルじゃない人はトイレ行くもんね」

千早「…」


生きている以上、排泄は避けて通れない。

それは当たり前の事。

けれど二人とも本当にトイレに行かないのだ。

私のようにこっそりコンビニのトイレを使ってる様子もない。


二人は、私と違う生き物なの…?

アイドルって、人間と何か根本的に違うの…?

私はもしかして、間違って居てはいけない場所に紛れ込んでしまったのかしら?


今の仕事は楽しい。

歌うのは好きだし、観客を沸かせるのもやりがいがある。

けれど私が普通にトイレを利用する普通の女の子だと周りにバレたら

一体どうなってしまうのだろう。

もしかしたら、アイドルを辞めさせられてしまうのかしら?


今はまだ駆け出しだからいい。

けれど、これから長時間拘束される仕事が増えたら…。

そして、その間にもよおしてしまったら…。

そんな事を考えると、不安で眠れなくなる事もあった。


春香「…あ、私ちょっと行って来るね」

千早「ん?どこに?」

春香「ちょっとあそこにね…。じゃあ、行ってくるねー」

千早「ちょっと春香、どこに…」

伊織「ええ、行ってらっしゃい」


私は最近気付いた。

みんなが時々席を外してどこかに行く事に。

そう、まるでトイレに行くような頻度で。

トイレのある方へ行く様子はなかったので、

今まで気にしてなかったんだけれど…。


千早「私も、ちょっと…」

伊織「千早も?」

千早「え、ええ…」

伊織「私一人になっちゃうじゃない。早く帰ってきなさいよ」

千早「え、ええ、わかったわ」


事務所を抜け、こっそり春香のあとをつける。

どうやらトイレに向かうようではないけれど…。

春香はビルの裏口から外へ出て行った。


春香「さーてと…」ゴソゴソ

千早「…?」


狭いビルとビルの隙間。

物陰から様子を伺っていると、春香は履いていたズボンをずり下げ

やがて、おもむろに…。


春香「…」シャァァァ…

千早(えっ、ええー!?)


私は思わず物陰から飛び出した。


千早「はっ、春香!」

春香「ん…?きゃあ、な、何!?千早ちゃん!?」

千早「春香、一体これはどういう事!?」

春香「ど、どういう事って…。とりあえず見ないで!」


春香が慌てて手でお尻を隠す。

私は同じく慌てて後ろを振り向く。


やがて、春香がズボンを履き終えて…。


春香「ち、千早ちゃん何!?千早ちゃんって変態なの?」

千早「それはこっちのセリフよ!」


千早「それより春香、これは何?アイドルはオシッコしないんじゃないの?」

春香「え?そんな訳ないよ。千早ちゃんってバカなの?」

千早「くっ…。こんな所でオシッコする人にだけは言われたくないわ…」


千早「大体、どうしてこんな所でオシッコなんかしてるのよ?」

千早「トイレですればいいじゃない」

春香「え?だってアイドルはトイレに行かないんだよ?大丈夫?」

千早「くっ…。じゃあ、家にいる時はどうしてるのよ」

春香「お風呂とか庭の隅っこでしてるよ?」

千早「春香の頭こそ大丈夫!?」


千早「ちょっと待って、混乱する…。そもそも、何でこんな所でするようになったのよ?」

春香「えっ、それは事務所に初めて入った時にプロデューサーさんが…」




(回想)

P「アイドルの心得?」

春香「ええ、何か気をつける事はないですか?」

P「そうだな、いつも笑顔を絶やさない事」

P「それと、ファンを大切にする事」

P「あと、そうだな…。トイレに行かない事かな」

春香「え?と、トイレに…?」


P「そうだ。アイドルはトイレになんて行かないからな、ハッハッハ」

春香「へぇー、そうなんですかー」(←冗談が古くて通じてない)




春香「って、言ってたからここのビルの隙間で…」

千早「…春香。プロデューサーはどこに居るの?」

春香「え?たぶん、会議室だと思うけど…」

千早「…」ダッ


(会議室)

ガチャ

千早「…」

P「ん?なんだ千早か。どうしたそんな血相変えて」


千早「…」ツカツカ

P「ん?何だ何だ?」


千早「死ね!」パァーン!

P「ぶべらっ!?」


おわり


「アイドルはトイレに行かない・雪歩編」


P「合格おめでとう。歓迎するよ、雪歩」

雪歩「ええ、ありがとうございます」


P「というわけで、これから大変な事も色々あるだろうけど」

P「僕と、そして皆で一緒にアイドルのトップを目指していこう」

雪歩「ええ、宜しくお願いしますねプロデューサー」

P「何か聞きたい事はないか?」

雪歩「あ、この事務所っておトイレはどこにあるんですか…?」


P「トイレ…か…」

雪歩「え…?どうしたんですかプロデューサー…?」


P「アイドルになった以上、トイレに行くことはできない」

雪歩「えっ?」


P「アイドルは、トイレなんて行かないんだから」

雪歩「え、ええっ!?」

雪歩「じゃ、じゃあもししたくなったら…?」


P「その時は…」

P「プロデューサーである僕が、全部飲む事になっている…」

雪歩「えっ、えー!?」


P「…正直、これはものすごく辛い」

P「けれどこれも、プロデューサーという道を選んだ以上仕方のない事だと諦めている…」

雪歩「の、飲むってお、オシッコをですか…?」


P「ああそうだ。アイドルはトイレに行かないんだから代わりに…ん?今したいのか?」

雪歩「い、いえ今は別に…」

P「遠慮するな。ほら練習だと思ってやって見ろ」ゴロン

雪歩「そ、そんな…」


P「あー、辛い」

P「アイドルのオシッコ飲まなきゃいけないからプロデューサーってマジ辛い」

P「けれど雪歩。君を一人前のアイドルにするためなら僕はどんなに辛くても耐える自信がある!」

P「さあ、遠慮するな!パンツを下ろして僕の口めがけて思いっきりするんだ!」

雪歩「えっ、えっ…」


ガチャ

律子「プロデューサー、今度入った新人…」


P「行き詰まったら、こうやって空を見上げるんだぞ。わかったな、雪歩」

律子「…床に寝っころがって何をしてるんですか」

雪歩「え、えっとあの…」


雪歩「お、お家でしたくなったらどうしたらいいんですか…?」

律子「ん?何の話をしてたんですか?」

P「ハッハッハ。さーて、ちょっくら挨拶回りにでも行って来るかなー」スタスタ


雪歩「アイドルはトイレに行かないから、そ、そのプロデューサーのお口に…って」

律子「…ちょっと詳しく聞かせてもらえるかしら」ガシッ

P「いやー、離してもらわないと遅刻しちゃうな、ハッハッハ」








雪歩「あの、プロデューサー辞めちゃったんですか?」

律子「ええ、逮捕されてね」


律子「好みのタイプでついムラムラしてやった」

律子「せめてパンツ下ろした所だけでも見たかった…、だそうよ」

雪歩「へ、変態…」


おわり

お食事中の方失礼しました
依頼出してきます

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