美優「三角関係……」 (639)

※※スレの諸注意※※

・モバマスアイドルでやるオリジナルのSFネタSSです。これが最初です。
>>1はデレステをプレイしながら進行するので途中進行が止まる場合があります。モバマスもやります。
・というかデレステの手が空いているときしか投下しません。なので投下ペースは非常に遅いです。
・稀に他作品のネタが入るかもしれません。
・作業量的にデレステに支障が出ることになったらエタらせます。
※※※このスレでは他板や他スレの会話はしないでください。その場合はスレを終了します※※※


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1480340698

――外宇宙、アウズブラ級大型宇宙航行艦『アウズブラ』(ブリッジ)


「レーダーでの環境測定、一覧の出力と再展開の準備はどうなっている?」

「解析中です、6分後に展開できます。一次計測後に再度レーダーを展開、索敵班には作業通達を展開済みです」

「よし、ではレーダー再展開可能後、目標惑星の調査を行う。降下部隊は格納庫で待機だ」

「環境測定が完了次第、スーツの環境設定を合わせて目標惑星に向けて降下を開始する」

ピピピッ! ピピピッ!

「艦長、通常レーダーに反応があります」

「む、どうした?」

「これは……何かが高速で艦に接近しています! レーダー反応は3!」

「速度的には小惑星でもないのか? モニターに映せ」

「了解、モニター出します……ヒッ!?」

「なっ!? なんだコイツは――」


――
――――



――星間航行技術が発達してから数十年、人類が外宇宙での惑星探査中に初めて宇宙生命体と遭遇した映像記録は、ここで途切れていた。



――極僅かの映像記録から該当する生命体の外見を知った国際連合軍は、人類にとっては未知となる宇宙生命体を『キラー・ビー』と呼称した。



――だが、映像記録に残っていた外見的特長以外、彼等のことは何も分からないままだった。調査隊は全滅し、遺族へは無念の感情を伝えることしかできなかった。

――数年後、木星圏、巡航行船『エイル』(客席)

「あらお嬢さん、もしかして今日は1人で船に乗ったのかしら?」

「はい。地球で働いている父と母に会いに行くので」

「そうなの……1人だと色々大変でしょう? 私も夫と一緒に地球にいる息子に会いに行くところなの。ご両親は、どんなお仕事をしているのかしら?」

「どちらも軍で働いています。ここから火星圏のギチトーに着いた後は、父の友人が迎えに来てくれるみたいなので……」

「それなら火星圏から地球までは安心ね。ここから地球までは距離もあるから、お嬢さん1人っていうのは難しいものね」

「そうですね。あまり、他の方のご迷惑にはなりたくはありませんが……」

「偉いのね。それなら、ギチトーに着くまでは――」

ガコンッ!!

ビビビビビッ! ビビビビビッ!

「わぁっ!?」

「な、何!?」

「なんだ、どうした!!」

「あ、あああ……アレ、そ、外!!」

「外……」

「ヒィッ!?」


ズドォォォンッ!!!!


――数年後、キラー・ビーは人類が住む宙域で目撃された。木星圏宙域を航行していた巡航行船、エイルは大破。記録上、乗員乗客は全員死亡とされている。




キラー・ビーによる攻撃から、国連本部はキラー・ビーを敵対因子と判断。軍事産業複合企業「オート・クレール社」に宇宙用戦闘機の開発を発注した。
その後、初の宇宙用戦闘機「グレイプニール」が完成。プロトタイプ1号機は発注を受けてから4ヶ月という短い期間で生産された。

人類はグレイプニールを用いて木星軌道を航行中の巡航行船「エイル」を再度襲撃したキラー・ビーに対して応戦、これを退けることに成功。
戦闘結果によりグレイプニールの実用性が認められ量産される。以降、人類と外宇宙からの侵略者であるキラー・ビーとの長い争いが始まった。


――――
――

――数年後、土星圏宙域、アウズブラ級大型宇宙航行艦『ユミルS-01』(メインブリッジ)

黒井「馬鹿か貴様は」

大佐『馬鹿なことを言っているつもりはないんだがねぇ、黒井大佐……だが、どうだ? 悪い話じゃないだろう?』

黒井「ナンセンス、私の艦に貴様のところにいる糞ガキを置く趣味など無い」

大佐『そうか……仕方が無い』

黒井「ふんっ! 分かったのなら通信は……」

大佐『これなーんだ?』

ガタッ!!

黒井「き、き、き……貴様!! な、何だそれは!?」

大佐『うーん、何時の飲み会の記録画像だったな……麗奈君から転送されてきたものなんだが』

黒井「きっ、き……くっ、う、お……」プルプル

大佐『それにしてもお前がなぁ……いくら酔っ払ってしまったとはいえ、飲み屋の若い娘の尻に頬ずりするとはねぇ……セレブなお前が、ねぇ』

黒井「……貴様――」

大佐『さて、珍しいものだし広報に配布紙面のネタにでも使ってもらおうかね』

黒井「貴様ぁぁあああああああ!!!!」ガタガタガタガタッ!!!!

大佐『まぁ、交渉成立ということでどうだね。人事には私のほうから話しておこう』

大佐『なあに、私も彼には期待していてね。土星圏でのキラー・ビーたちとの戦闘も激しいし、経験を積ませておこうかと思っているだけだよ』

黒井「んんっ! んっ! っと……だが私はやはり気に食わん」

大佐『どうしてだい?』

黒井「お前は新人と言うが、偶然私が木星圏に立ち寄った際に奴の初出撃を見たが……何が新人だ」

大佐『新人だよ、間違いない。そういえば、臨時でナシヤマの迎撃隊の指揮をしていたね。彼の初出撃だったか……』

黒井「ふん、新人だろうがなんだろうが、とにかく生意気な奴だ。私は気に入らん」

大佐『初出撃からすまし顔で戻ってくる新人なら、確かにお前は気に食わなく思うだろうな。ただ、彼は素直でいい子だよ』

大佐『まあ、しばらくの経歴はデータベースのほうを見てくれ。面倒かもしれんが、これも仕事だと思って頼む』

黒井「……さっきの記録画像は消去しておけよ、必ずだ!」

大佐『分かったわかった。それじゃ、私は失礼するよ』

ピッ!

黒井「……ふん、気に入らん」

黒井「何が新人の教育だ……こちらの事情が分からん貴様でもないだろう」


……
…………

――木星圏宙域コロニー『ナシヤマ』、強襲戦闘艦『ヴェールJN-06』(格納庫)

少佐「貴様等ぁー!! 何をモタモタしている!」


ピピッ! ピピッ!


「……」ピッ……ピッ……

「……っ!」ピッ……ピピッ……


少佐「3次元飛行を行うキラー・ビーに対抗するには、グレイプニール各所に搭載された大小のスラスターを用いての立体機動戦闘が必要不可欠だ!」

少佐「立体機動からの直線加速への切り替え、背面取り、すべてを無駄なく行わねば奴等の粒子砲の的になるだけだ!!」


P「……」ピッ、ピッ……ピピッ! ピピッ! ピピッ! ピピッ!


少佐「死にたくなければ次の出撃までにマニューバを身体に叩き込んでおけ!!」

JN-06艦長「まったく少佐、あまりそう部下を苛めるなよ」

少佐「艦長……いえ、これくらいは当然です。後方の私たちもこれくらいせねば、土星圏で戦っている者たちに申し訳ない」

JN-06艦長「とはいえ、私たちもこちらの宙域に出没している蜂との戦闘はある。今月の出撃は3回、多い月だと5回はあるだろう」

少佐「……出撃数の話しをしてしまえば、尚更です。土星圏のユミルは随時、宙域を哨戒しています……戦闘も、我々とは比べるまでもなく」

JN-06艦長「そうだな……まあ、この話はやめにしよう。P少尉を借りてもいいか?」

少佐「奴をですか? 構いませんが……ああ、あの件ですか。正式通達が?」

JN-06艦長「うむ、私としても彼を指名されたのは惜しいのだがな……ともあれ、これも軍の決定だ」

少佐「……はっ、了解です。稼働中のシミュレーターが完了次第向かわせますので」


……
…………

――数十分後、ヴェールJN-06(艦長室)

パシュンッ!

P「失礼します」


JN-06艦長「来たかね。どうだい、訓練のほうは?」

P「特に問題はありません。スコアも下がらなかったので」

フォン……

JN-06艦長「ふむ、キミのスコアは……確かこの記録シートだったか。なるほど、第1世代……G1のシミュレーターでここまでのスコアを出すのか」ピッ、ピッ……

P「はっ……いえ、表示上されているスコアは更新できていませんので……」

JN-06艦長「このシミュレーターに記録されている上位スコアは、全宙域にいるパイロットが出しているオンラインスコアだよ」

JN-06艦長「まったく、訓練を終えて配属されてから2年目のキミが、スコアボードに名前を載せているのは驚きだよ……もっとも」ピピッ!

JN-06艦長「最上位のスコアを更新できないのは、仕方が無いがね。ここまで行くと本当の化け物揃いの領域だよ」

P「精進します」

JN-06艦長「さて、そんな話をするために来てもらったわけではない。以前、少し話したとは思うが……土星圏の異動の件だ」

P「土星圏……ユミルへの異動ですか?」

JN-06艦長「CSL-654、アウズブラ級大型宇宙航行艦ユミル……そのS-01への異動が決まった。何か質問はあるかね?」

P「グレイプニールはS-01にある物を使用することになるのでしょうか?」

JN-06艦長「いや、キミが使っているG1を持っていく。シャトルに乗せて運ぶ予定だ。他には?」

P「それ以外は特に……まあ、行ってみないと分からないことのほうが多いでしょうし」

JN-06艦長「若いね。土星圏はここよりもキラー・ビーたちとの戦闘が激しい。普通なら行きたくはないと思うだろうが」

P「まあ……そうですね。どうせ宇宙に出るなら蜂と戦うよりは、ゆっくりとグレイプニールに乗って遊覧飛行でもしたいですが」

JN-06艦長「ははは。とはいえ、時期的には少し残念ではあるがな」

P「残念?」

JN-06艦長「つい先日、共有データベースのアルヴィスが更新されていた。土星圏で展開している広域光学レーダーが蜂の巣を観測している」

P「わざわざそうおっしゃるということは……中規模以上の蜂の巣ですか」

JN-06艦長「ちらほら見かけるようになったらしい。中規模以上の巣となれば一仕事だ。キミも、異動直後から前線任務に充てられるだろう」

P「前線か……とはいえ、仕方がありません。私の仕事は前線任務ですし」

JN-06艦長「そうだな……まあ、頑張ってほしい。私も大佐も、キミには期待しているからね」

P「大佐ですか。しばらくは直接会っていませんが……了解です。こちらでの担当の引継ぎは済ませておきます」

JN-06艦長「頼むよ。詳細については通達を転送しておく」

P「はい。では失礼します」


……
…………

――土星圏宙域、ユミルS-01(艦長室)

麗奈「で、アンタ、あの大佐から押し付けられた新人どうする気?」

黒井「知らん」

麗奈「適当ねぇ……ま、アタシほとじゃないけど。誰か適当につけてやりなさいよ」

黒井「っとに、私は忙しいんだ。適当な奴に任せてしまうか……」

ピピッ!

『黒井大佐、哨戒任務時の定期集計データの件でお話しが……』

黒井「ん? 入れ」ピッ!

『失礼します』


パシュンッ!

黒井「どうした、高垣中尉」

楓「はい……ええと、S-02からの連絡もあったんですが……前回の戦闘で逃したキラー・ビーの群れが、あちらで対処していた蜂の巣と合流したようで……」

黒井「ふんっ、それくらい向こうで対処しろと伝えておけ」

楓「ですが……その、今回の集計データ、そのときのキラー・ビーとの戦闘データを入れていますので、対応数が合わなくなるので……」

黒井「全く面倒な……であれば向こうの艦長とは話しておく。データは送っておけ、承認しておく」

楓「分かりました、では……」

黒井「待て高垣中尉、この前話したものとは別にもう1つ仕事をくれてやる」

楓「お仕事……ですか?」ピクッ

黒井「近々ウチに新入りが1人来る。適当に物を教えてやれ」

楓「はあ……分かりました。では」フワッ

パシュンッ!


麗奈「……アンタさぁ」

黒井「なんだ」カタカタカタッ

麗奈「よりにもよってアイツに頼むの……」

黒井「何の問題がある。中尉は能力もあるし仕事については問題ない」

麗奈「そういう話しじゃないけど……新入りって男?」

黒井「ああそうだ。アイツのところにいた気に食わん奴だ」

麗奈「ウチの艦の男たちにシメられなきゃいいけど……」


……
…………

――ナシヤマ、ヴェールJN-06(Pの部屋)

大佐『どうだね? 木星圏から土星圏の異動については』

P「まあ願ったり叶ったりというか……ありがとうございます」ピッ、ピッ……

大佐『キミの評価は艦長からも聞いているよ。まぁとんでもない新人が来たってねぇ』

P「大げさですよ。昔から散々シミュレーターで乗り回していただけで、実戦はこうして軍に入隊してからなんですから」カタカタカタッ

大佐『大げさじゃなかったら私もわざわざこんな人事回さないんだがね……』

P「ん、なんですか?」

大佐『ああいや、何でもないよ。ところで、さっきから手元で何をやっているんだね?』

P「G1の調整データの作成ですよ。あとで整備班に渡そうと思って……最近、もう少し速度が出ないかと悩んでいるんですけどね」

大佐『G2かOPF……はいまのキミに支給するのはちょっと難しいねぇ。いや、実力が伴っているなら私はいいと思ってるんだがね』

P「どうせならOPFがいいです。G2は鈍足過ぎてダメです。あれじゃG1をバージョンアップしてOPFを作り直すのも仕方がありません」

大佐『第2世代は不評だから仕方が無いか……まあ、何はともあれ向こうでも頑張りたまえ』

P「了解です」

……
…………

――2週間後、土星圏宙域コロニー『ホクドウ』、ユミルS-01(メインブリッジ)

黒井「まったく、S-03の出航が遅れたせいでこちらの作業も……」ブツブツ

「はぁ~い黒井大佐、そんなときはスッキリ爽快フルーティーな味わいのスペシャルウサミンドリンクは如何でしょうか?」スッ

黒井「むっ」ピクッ

「ほらほらぁ、ホクドウに戻ってきて食堂も一般食が食べれるようになったんですから、もうちょっと気楽にいきませんと、ね?」

黒井「……ふんっ、中尉の言うことも一理あるか。たまには庶民の考えに倣ってみるのも悪くない」

パシュンッ!

麗奈「ほらちょっとアンタ、艦長席でニヤニヤしてんじゃないわよ」

黒井「ぶぅっ!? だ、誰がニヤニヤしているというのだ! 誰が!」

麗奈「アンタよアンタ。んで、これ編成どうすんのよ。グレイプニールの編成もそうだけど、ヴェールも、中破した2番は入れ替えなんでしょ?」

黒井「現在哨戒任務に当たっているヴェールを積む予定だ。グレイプニールの編成は駒が揃ってからだ」

麗奈「あ、そう。それじゃアタシはもうちょっとシミュレーターで遊んでるわ」

パシュンッ!

「……入れ替えで新しいヴェールが入るんですか?」

黒井「今回の長期哨戒任務での戦闘で、それなりに修理しなければならなくなったから仕方が無い。中規模以上の蜂の巣との戦闘が増えてきている現状もある」

黒井(まったく……この忙しいときにアイツは……)


……
…………

――土星圏宙域、ヴェールSN-05(ブリッジ)

「艦長、間もなく艦が安全航路にはいります。短距離索敵用レドームを解除します」

SN-05艦長「これでホクドウに戻るまでは安全か……皆、よくやった」

「でも戻ったらS-01に配備だもんねー」

「ホント、いつ休暇取れっていうんだか」

SN-05艦長「まあ、貧乏くじを引かされてしまったというところか。すまんがもうしばらくは頑張ってくれよ」

「人使い荒いもんねー」

美優「そ、そうですね……」

ピピッ! ピピッ!

美優「レーダーが……?」ピクッ

ピピッ! ピピッ!

「ちょっと三船少尉、見せて……艦長、蜂です!」

SN-05艦長「何ぃ? このタイミングでか!」

「数は……F型が7、ホーネットはいません。蜂の巣は無し!」

SN-05艦長「ようやく一息つけるところで7匹か……コンディションレッド! 総員戦闘態勢!」

「グレイプニール小隊の出撃準備を行います。パイロットは発進準備願います」

「オートメーション機能により戦闘信号を自動発信します。現宙域を安全航路圏から除外、周囲を航行中の民間船に警報を出します」

美優「レ、レーダーは……せ、先頭のF型と、艦との距離は4100……元々、宙域にいたキラー・ビーのようです」カタカタカタッ

SN-05艦長「蜂共め……!」ギリッ!


……
…………

――同時刻、土星圏戦闘宙域後方

P「……暇」

整備士「暇って……そんなこと言わないでくださいよ。こっちだって暇なんですから」

P「いや、だってさ……どこのコロニーにも寄らないで真っ直ぐホクドウ向かってるし……整備士、何か面白い話しない?」

整備士「突然言われても……それよりちゃんと運転してくださいよ」

P「助手席に座ってる奴は、運転手が退屈しないように盛り上げる仕事があるんだぞ」

整備士「いやいや――」


ピーッ!

P「ん、どうした整備士?」ピクッ

整備士「ちょっと待ってください……どうやら自動発信されている信号を受信したみたいです。安全航路圏でキラー・ビーとの戦闘が開始されているようです」

P「何? てことはここら辺での戦闘か?」

整備士「そうみたいです。前方のほうでヴェール艦がキラー・ビーと交戦、周囲の民間船は速やかに退避せよとのことです」カタカタカタッ!

P「俺たちには関係ないな。よし整備士、運転代われ」

整備士「えっ、もしかして出撃するんですか?」

P「当たり前だろ。安全航路付近で戦闘なんて、逃げ遅れた民間船がいたら大変なことになる。戦闘宙域の状況は確認できるか?」フワッ

整備士「ちょっと待ってください。レーダー情報……キラー・ビーが7匹、グレイプニール小隊が3です」

P「12機での戦闘か……土星圏は精鋭揃いとはいえ蜂1匹に対して2、3機で当たるとすれば少し数が足りんな……」

整備士「恐らく哨戒任務の帰還途中での戦闘だと思います。出撃できるグレイプニールに余裕がなかったんでしょうね」

P「急いだほうがいいな。このままG1に乗る。後部ハッチを開いてくれ」

整備士「えええっ!? パイロットスーツは?」

P「急いでると言っただろ。ほら、早くしてくれよ」パシュンッ!


……
…………

――戦闘宙域

蜂「……!」ズドォォンッ!!

『ぐおおおおおおっ!?』

ドガアアアアアアンッ!!

『ヨコヤマー!』

『ちくしょう! よくもヨコヤマを!』

『落ち着け! コンビネーションマニューバを組みなおす。プランはY03だ!』

『了解!』


蜂「……!」ギュンッ!


『ちぃっ! 立体機動なんぞに!』

『お前たち、ヴェールから援護射撃がくるぞ、散開!』

……
…………

――ヴェールSN-05(ブリッジ)

SN-05艦長「主砲フォトンメーザー砲ティルウィングを装填、グレイプニールと小隊と距離が離れすぎている。艦を少し前進させろ」

「迎撃用ミサイル、アルヴァルディ全弾発射しました……着弾確認、ですがF型残り7匹です」

SN-05艦長「くぅっ……出せるグレイプニールは無いのか!」

美優「せ、整備班からも……いますぐ出せる機体はないと……」

ピーッ! ピーッ!

「F型の1匹がグレイプニール小隊を抜けてこちらに接近!」

SN-05艦長「オートメーション機能で対空近接機関砲ブリンガーを自動掃射させろ! 取り付かせてはいかん!」

「ブリンガー1番と4番自動掃射!」

ドガガガガガガガッ!!

蜂「!」ヒュカカカッ!

「ダメです! 避けられました!」

蜂「……!」ギュオオオオオオッ……

「F型、粒子砲の発射態勢を取っています!」

SN-05艦長「艦の向きを変えろ! 右に回れ!」

美優「ひっ……!」

ズドォォォォンッ!!!!


蜂「……」ブ……ブブ……

ドガアアアアアンッ!!


SN-05艦長「なに……?」

「え……F型撃破……後方から第1世代グレイプニールが1機……」

SN-05艦長「み、味方か?」

ピッ、ピッ、ピッ……

美優「そ、そのまま艦を通り過ぎて……戦闘宙域に行きました……」

SN-05艦長「どこの部隊の者だ? 誰か通信を出せっ」

……
…………

――戦闘宙域

P「くそっ、こっちに来る前に貰ったリニアカノン、さっきの1発でエネルギー切れかよ……試作品なんて使うもんじゃねえな……」

ピピピッ! ピピピッ!

P「なんだ整備士か? いま戦闘中だから少し待ってくれ」ピッ!

プツッ……

P「っと……そうはいっても前線の味方には通信しておかなきゃな。どこかチャンネルが拾えるか……」カタカタカタッ!

『……から来るぞ、気をつけろ!』

P「繋がった! そこで戦闘しているグレイプニール小隊、聞こえるか!」

『何だ!?』

P「通りすがりだが援軍に来た。そちらはもう3小隊編成でマニューバを取っているようだから、こちらは単独で戦闘を行う」

『待て貴様、どこの所属だ! 部隊は!』

P「ああいや、実は異動のためにこっちに来たばかりで……まあいいや、とりあえず終わったらまた通信します」

『おい待て! 1人でのマニューバは……』ピッ!

P「さて……」ガシャンッ!


蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P「宙域の蜂は6匹、2匹は手前の2小隊が潰そうとしているか……奥の4匹は残りの1小隊が引きつけている」カタカタカタッ!

P「軌道予測ルート算出、3小隊のマニューバプランのデータ入力完了。よし……!」ギュオオオオオオッ!!!!

P「そこで追い掛け回されているGN小隊! 誰でもいいから蜂1匹にミョルニルを撃ってくれ!」ピピピッ!

『何だと!? こっちはいまそれどころじゃ……!』

P「このまま引きつけ役をやるよりは早く終わるぞ」

『くっ……ターゲット、3連装ミサイルランチャー、ミョルニル発射!』

ボシュシュシュッ!!

蜂「!?」ギュンッ!

P「1匹足並みが崩れた! そこだ!」ギュオオオオオオッ!!

ガションッ!

P「高プラズマ粒子砲グラム……発射!」ズドォンッ!!

蜂「!」ドガアアアアアンッ!!

P「1匹!」

『あの機体、そのままこっちに突っ込んで……』

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P「今更気付いたか! だがもう遅いぞ!」ヒュカカカッ!

蜂「!」ブブゥゥゥンッ!!

P「その立体機動は想定している! ドラウプニル!」ガションッ!

ドガガガガガガガッ!!

蜂「……」ブブ……

ドガアアアアアンッ!!

P「2匹……!」ギュンッ!

……
…………

――ヴェールSN-05(ブリッジ)

SN-05艦長「なんだあのG1は……小関大尉が乗っているのか?」

「いえ、小関大尉は現在はホクドウにいるはずなので……」

SN-05艦長「通信はどうなった?」

美優「それが……向こうから切ってしまったようで……」

SN-05艦長「だ……誰が乗っているんだ……?」

「艦長、GNS-001と002小隊がF型2匹を撃破しました! あと……援護にきたG1のほうでもF型4匹、撃破しています。コンディショングリーンです」

SN-05艦長「そうなれば5匹……この短時間で、たった1機で5匹のF型を撃破したのか、あの機体は……!」

美優「通信、通信……繋がらないかしら……」ピピピッ、ピピピッ……

ピッ!

……
…………

――戦闘宙域

P「終わった、か」ピピッ!

P(蜂が7匹……土星圏ではこれくらいの戦闘は日常茶飯事ってことか……)

ピピピッ!

『お前凄いな! 突然出てきて何しに来たと思ったら……!』

P「いえ、緊急時でしたから……」

『礼もしたいし、うちの艦に寄ってってくれないか? こっちは仲間を回収してからになってしまうが……』

P「それなら、こちらにはシャトルが1隻あります。一緒でも大丈夫ですか?」

『構わんよ。後で艦で会おうか』

ピッ!

P「ホクドウに着く前に土星圏のヴェールに拾ってもらったか。まあ、それはそれでいいか……」

ピピピッ!

P「ん、ヴェールからの映像通信……?」

ピッ!

フォンッ……

美優『あの……』

P「はい」

美優『……』

P「……はい?」

美優『あ……あっ、すみません……その、艦を助けて頂いて、その……』

P「安全航路圏での戦闘ですし、民間船が巻き込まれる前にと思ったので援護にきました」

美優『……えっと、所属……は、どちらの……?』

P「私ですか? 私は……」

P(所属、か……さっきも聞かれたけど一応通知で来ていた配属先でいいか……)


P「……国際連合防衛本部宇宙軌道防衛軍所属、第6防衛隊のP少尉です」



……
…………

――ヴェールSN-05(格納庫)

パシュンッ!

P「ふぅ……しっかしパイロットスーツ無しで戦闘ってのも怖いもんだな……」バサッ!

「おう兄ちゃん! モニター見てたぞ、お前よくやるなぁ!」フワッ

P「いえ、合流のときに射撃支援も頂いたので……すみませんが機体はどこに移動させればいいでしょうか?」フワッ

「置いといていいぞ。こっちで移動させとくから艦長のとこ行ってくれ」

P「そうですか。あと、連れのシャトルもあるんですが……」

「搬入口から入れる準備をしている。後でそっちも面倒見てやるよ」

P「ありがとうございます。お願いします」フワッ


……
…………

――ヴェールSN-05(ブリッジ)

SN-05艦長「いやあ、助かった! S-01配属予定のパイロットとは、あれほどの操縦技術を持つ者はそうは見ないぞ」

P「いえ、私はずっと木星圏での防衛に当たっていたので……こちらでの戦闘は初めてだったのででどうなるかと」

SN-05艦長「謙遜しなくてもいい。こちらも助けてもらったのは事実だ……と、あまり無駄話をしても仕方が無いな」

P「安全航路圏での戦闘後ですし、宙域索敵後の再指定は?」

SN-05艦長「手配はさせておく。こちらも哨戒任務の帰還途中でな、巣との戦闘も2、3終わらせた後だ」

P「蜂の巣……!」

SN-05艦長「そうか、土星圏以外ではまだ蜂の巣は観測されていなかったな。うむ……まあ、こちらに来るということはそういうことだ」

P「いえ、資料であればアルヴィスの更新履歴から映像記録で何度か」

SN-05艦長「まあ気負う必要は無い。キミなら対蜂の巣との戦闘も十分行える」

P「ありがとうございます」

SN-05艦長「さて……すぐホクドウに戻りたいところだが、ここからでもまだ3日は掛かる。すまんがそれまでは待機してもらえるか?」

P「了解です」

SN-05艦長「それじゃあ部屋を用意させる……三船少尉、彼の案内を」

美優「は、はいっ……」


……
…………

――ヴェールSN-05(通路)

シュッ

美優「……」チラッ

P「……」

美優「……」チラッ

P「……」

美優「……」チラッ

P「……あの、何か?」

美優「あ……い、いえ」

P「ちゃんと付いてきていますよ。艦内移動用のガイドコンベアは木星圏のヴェールにもありましたから」

美優「そ、そうですよね……すみません……」

P「……」

美優「……」チラッ

……
…………

――数分後、ヴェールSN-05(Pの借部屋)

パシュンッ!

美優「あの……こちらで、お願いします」

P「うちの整備士と共用でいいんですよね? 俺は手前のベッドにしようかなぁ……」フワッ

美優「……」

P「あっと、すみません……案内してくださってありがとうございます。えっと……」

美優「……あ、その、三船……美優、少尉です」

P「三船少尉、ありがとうございます。P少尉です、ホクドウに着くまでの間はよろしくお願いします」

美優「は、はい……えっと、何かあれば、いつでもご連絡して頂いて、構いませんので……」

P「ありがとうございます。他所の艦にお邪魔することはあまりなかったので助かります」

美優「……ずっと、木星圏に?」

P「たまに流れ着いてきていた蜂の対処に……っと、部屋の場所は覚えたので、そろそろ格納庫に戻ります。連れと荷物を持ってこないと」

美優「あっ……す、すみません、お邪魔してしまって……」

P「いえ、そんなことは……それでは、失礼します」フワッ

シュッ!


美優「……P、少尉」

……
…………

――数時間後、ヴェールSN-05(格納庫)

整備士「それにしても、ほら、部屋に来てくれてた三船少尉、可愛いですよねぇ」

P「ん? ああ……」カタカタカタッ!

整備士「ちょっと、聞いてます?」

P「聞いてる聞いてる」カタカタカタッ!

整備士「絶対聞いてないでしょ……何やってるんです?」

P「G1のバランサー調整だよ。主翼の裏側についてるスラスターの吹かし具合が左右でイマイチなんだ」

整備士「イマイチって……さっきの戦闘だって上手くやれてたじゃないですか」

P「立体機動に切り替えてドラウプニルを展開するときに少しもたついたんだ」

整備士「まあ……どうせホクドウに着くまでの間、僕も整備班に混じって作業することになりましたし、スラスターのほうもフィードバックしておきますよ」

P「頼むよ。さて……俺も仕事しなきゃ」カチャッ、カチャッ

整備士「どこ行くんですか?」

P「G1は整備してもらうとして、それまでやることないからってことで清掃班の仕事手伝うことになったんだ」

整備士「ずいぶんな雑用押し付けられましたね」

P「乗せてもらってる身だしそれくらいやるさ。それじゃ整備士、こっち頼むよ」フワッ

整備士「はいはーい」

……
…………

――1時間後、ヴェールSN-05(休憩所)

パシュンッ!

P「えっと、倉庫ブロック終わったら休憩所の清掃、あと浴場の清掃と消耗品交換と……」

「おっ、少尉じゃないか」

P「お疲れ様です。清掃にきました」

「おいおい、パイロットが掃除かよ? 俺たちの援護に来てくれたときの勇ましさはどこに行ったんだか」

P「タダ飯食らいよりは気楽ですから。それに、こっちの環境にも慣れておきたいですし」

「時間あるなら後でシミュレーターに付き合ってくれよ。少尉の機体の動かし方、参考にさせてくれ」

P「俺のでよければ。っとと、清掃のスケジュールも決まってるみたいだから急がないと……」

「悪い悪い。後で声掛けるよ」

……
…………

――更に1時間後、ヴェールSN-05(通路)



P「ちょっと遅れたな……浴場の清掃時間、ギリギリか?」フワッ

P「浴場……こっちか」シュッ



……
…………

――ヴェールSN-05(浴場)

パシュンッ!

P「ここか。さて、消耗品の交換から――」


パシュンッ!

美優「ふぅ……」

ピチャッ……




P「……」

美優「……」

P「……」

美優「……」

P「……失礼、また来ます」

美優「……ひっ――」

パシュンッ!


……
…………

――ヴェールSN-05(通路)


P「やべぇ……」シュッ

P「作業時間も押してるし……てか女性クルーの全裸見たとか下手すりゃ懲罰もんだぞ……」

P「とりあえず先に展望室の清掃に行くか……にしても」


P(ありゃ相当デカイな……)


……
…………

――数時間後、ヴェールSN-05(食堂)

P「……」モグモグ

美優「……」プルプル……

P(なんで飯のタイミングが被るんだよ……)

P「……」モグモグ

美優「……」プルプル……

P(しかもずっとこっち見てるし……てか身体震わせすぎだろ……いや、さすがにこっちから謝っておくか……)

美優「……」プルプル……

P「……すみません、先ほどは、その……清掃班の作業を手伝っていたので」

美優「……」プルプル……

P「あの、そんなプルプルされても……」

美優「……たか」

P「はい?」

美優「み……見ました……か……?」

P「……一瞬」

美優「っ!?」バッ!

P「いや、あの……一瞬過ぎてあまり記憶に残ってないし……まあ、残っている記憶も早めに消しておきます」

美優「……」

P「……それにしても、話し逸らしてしまうんですが、ヴェールでペースト食を食べたのは初めてです。味気ないけど、意外と食べれるもんですね」

美優「……土星圏では任務中は、いつキラー・ビーと戦闘になってもいいようにと……大量に所持できて、保存が効くペースト食が提供されているので……」

P「それじゃコロニーに寄らないと普通のご飯はないんですか。慣れるまではちょっと口が寂しくなりそうだなぁ……」

美優「お食事が……好き、なんですか?」

P「まあ人並みには。自分で作ったりもしますし……三船少尉は?」

美優「わ、私は……その……あまり、難しいものは作れませんけど……」

P「へぇ、でもこの仕事やってると自分で作る機会も減って物足りないですよね」

美優「そっ、そ……そうですよね。はい……」

P「ふぅ……ごちそうさま。それじゃあ三船少尉、これから格納庫に行く用事があるので失礼します」ガタッ

美優「あ……はい……」

P(色々言いたそうな顔していたけど、特に誰にも言わないでくれるって感じか……一応は謝ったけど、感謝しておかんと)


……
…………

――翌日、ヴェールSN-05(通路)

美優「あの……大丈夫ですか……?」フワッ

P「これくらいなら別に……使い古した配線や媒体も溜め続ければ箱2つ分にはなるか」ガサゴソ

美優「すみません、ブリッジの不用品の廃棄は私のお仕事ですけど……」

P「大丈夫ですよ。俺のほうが暇しているんで、雑用くらいはやります」

美優「……あの」

P「はい?」

美優「……」モゾモゾ

P「……」

美優「……」

P「……そういえば、三船少尉はずっと土星圏で任務を?」

美優「えっ……あ、はい。今年で3年目で……」

P「そうでしたか。俺はまだ2年目なので、何かあったら色々教えてください」

美優「はっ、は……はい……」

P(ちょっと不安だな……まあ悪い人じゃなさそうだし)


……
…………

――数分後、ヴェールSN-05(倉庫)

美優「えっと、ボックスへの廃棄は……えっと……」

P「こいつはこっちか。この配線は素材が……」ポイポイポイポイッ

美優「あっ、あの……分別……」

P「ああ、整備班の作業も少し手伝ったことありますし、知らない物じゃなかったら大丈夫です。っと……この媒体は?」

美優「あ、これは……上のボックスで……」

P「ほいっと、ありがとうございます」ポイッ

P「これで全部かな? それじゃあ戻りましょうか」フワッ

パシュンッ!


美優「……」


……
…………

――数時間後、ヴェールSN-05(Pの借部屋)

整備士「Pさーん」ゴロゴロ

P「んー?」ペラッ、ペラッ……

整備士「三船さん可愛くないですか?」

P「お前昨日もそんなこと言ってたな」

整備士「だってぇ……Pさんよく三船さんと仕事してるじゃないですか」

P「雑用だよ。なんだ、三船少尉と話したいなら呼べばいいじゃん。連絡したら来てくれるみたいだぞ」

整備士「え、ホントですか?」

P「ホクドウに着くまでの間に面倒見てくれるらしい。今日聞いたら経歴も俺の1個上だし……まあ、ちょっと頼りない感じだけど」

整備士「いやぁどうしようかなぁ……声掛けてみよっかなぁ」

P「何でもいいけど、仕事の邪魔にはなるなよ……」ゴロッ……


……
…………

――数時間後、ヴェールSN-05(格納庫)

パシュンッ!

P「ふぅ……こっちのシミュレーター、新しい筐体で動かしやすいですね」

「木星圏だとそうでもないのかい? こっちは任務中も時間があれば訓練だからな」

P「大変ですね……まあ、こっちだとそれくらいやら無いとダメってことですか……」

「そうそう。それより少尉の立体機動、あれどうやってんだ? OPFでもないのにあれだけ蜂の立体機動についていけるなんて、先読みでもしてるのか?」

P「いえ、戦闘中に予測軌道ルートを算出して機体の回避運動パターンを少し弄っています。あとは見たまま動けばなんとか」

「ってことは飛行中にコンソール叩いてるってことだろ? 腕2本しか無いのにどうやってんだか……」

「まあでもそこら辺は才能か。小関大尉も目で見て動けっつうし」

P「小関大尉?」

「土星圏きっての化け物パイロットだよ。単純に蜂との戦闘だったら、大尉がいてくれれば何とでもなるくらいだ」

P「へぇ……凄い人なんですね」

「凄いも何も、ありゃマジで化け物って言葉がしっくりくる人だ。S-01に所属しているから、機会があれば少尉も一緒にシミュレーター飛ばしてもらえばいい」

P「小関大尉か……そうですね。機会があればお願いしてみます」

……
…………

今日はこれで終了します

まさか過去編を見ることができるとは

>>50
何の話ですか。このスレは今回初めて立てたスレです。
>>1に書いてあるので読んで頂きたいのですが、他所のスレの話はここでは控えて頂きますようお願いします。

――ヴェールSN-05(通路)

P(さすがにここの人たちの操縦技術は高いな……コンビネーションマニューバも組んでもらってシミュレーターも動かせるし)フワッ

P「ん……」ピクッ

P(なんだ、俺の部屋の前に……)ササッ


美優「……」フワフワ

美優「……」チラッ

美優「……」フワフワ

美優「……」ハァ……


P(何やってんだあの人……ガイドコンベア掴んだまま部屋の前を右往左往して……)

P「あ、そうだ」


……
…………

――数十分後、ヴェールSN-05(食堂)

整備士「いやーすみません、S-01への僕たちの分の荷物も一緒に持ち出し申請出してもらっちゃって」モグモグ

美優「……いえ」

P「……」モグモグ

整備士「三船さん、ブリッジのオペレーターなんですよね? こっちでの任務はやっぱり大変ですよね?」

P「……」モグモグ

美優「まあ……」チラッ

P(意外とペースト食もいいな……次は器で渡されるものじゃなくて、チューブのやつも食べてみるか……)モグモグ

美優「……」ハァ……

整備士「それで僕たちが木星圏から来たときに……」


……
…………

――ヴェールSN-05(美優の部屋)

美優「……」



美優『あの……』

P『はい』

美優『……』

P『……はい?』

美優『あ……あっ、すみません……その、艦を助けて頂いて、その……』

P『安全航路圏での戦闘ですし、民間船が巻き込まれる前にと思ったので援護にきました』



美優「……はぁ」

美優「また言えなかった……」


……
…………

――翌日、ヴェールSN-05(艦長室)

SN-05艦長「S-01の黒井大佐には連絡している。SN-05もホクドウ帰還後はS-01へ異動する予定だっただから、キミたちの分の手続きも処理しておこう」

P「ありがとうございます」

SN-05艦長「大体はこちらに来る前に済ませているとは思うが、まあついでだよ」

P「……ヴェールの入れ替えをするということは」

SN-05艦長「前回のS-01の長期哨戒任務が厳しかったらしくてな、随伴機のヴェールが1隻中破してしまったらしい」

P「ヴェールが……」

SN-05艦長「よくあることだよ。それに、長距離レーダーによって中規模の巣がいくつか観測されている。ユミル艦隊も戦力補充が必要だろう」

SN-05艦長「キミなら上手くやれるだろう。S-01への正式配属後も頑張ってくれたまえ」

P「ありがとうございます」

SN-05艦長「私たちの艦の者も、一部はS-01配属に移る。三船少尉も異動予定だから、向こうでも何かあったら彼女を頼ってくれて構わんよ」

P「そ、そうですか……」


……
…………

――ヴェールSN-05(展望室)

P「……」


SN-05艦長『前回のS-01の長期哨戒任務が厳しかったらしくてな、随伴機のヴェールが1隻中破してしまったらしい』


P(……そうだよな、戦艦でも落ちるんだよな)

P「……」



『彼の両親は?』

『残念ながら……』

『……』

『そうか……いや、まったく残念だよ』

『中佐、ここからはオフレコでお願いしますが……1名……少佐のお子さんが奇跡的に……ですが、容態もよろしくないようで、いま研究中の……』

『何? 分かった、後でそちらさんとは話しておく……P君、非常に残念だが……どうだね? もしよければだが……』



P「……今度は俺が、ここまで来る番になったか」



パシュンッ!

美優「あ……」

P「ん……お疲れ様です」

美優「お、お疲れ様です……」

美優「あの、P……少尉、ここに……」

P「え、ああ、手が空いて時間を持て余していたので休憩をしていて……何かありましたか?」

美優「い、いえっ、そういうわけでは……」フワッ

美優「……あ、あの」

P「はい」

美優「あ……すぅ、す、好きな……こと……」

P「は?」

美優「……ち、違った……」

P「……最近はそうですね、ナシヤマ勤務だった頃は、休暇中は町をぶらついているのが好きでしたね」

P「あとは……G1に乗っているときかな」

美優「……グレイプニールに、ですか?」

P「別に、蜂と戦うのが好きってわけじゃないんですけどね。ただ、G1に乗って飛行していると……ああ、うちの親もここで仕事してたんだなぁって思って」

美優「ご両親も、軍に……?」

P「まあ、もう2人とも死んでしまったので」

美優「あっ、す、すみません……私……」

P「もう随分前のことだから別にいいですよ。俺も本当に小さかった頃ですから」

美優「……あの」

P「はい?」

美優「……あ、あの……たす、助けて、くださって……あ、ありがとうございます」

P「……」

美優「その……言おう言おうって……思って、いたんですけど……」

P「……」

美優「……」

P「……いえ、俺も間に合ってよかった。あのときはF型が1匹抜けてきたところでしたからね」

美優「わ、私も……ダメかなって、思っていたので……」

美優「だから……P少尉が、来てくださって……嬉しくて……」

P「……」

美優「あっ、やっ……その……あ、あぅ……」

P「ありがとうございます。次の戦闘でもなるべく上手くやれるよう頑張ります」

美優「……」モジモジ


……
…………

――翌日、ヴェールSN-05(Pの借部屋)

整備士「ホクドウに着きましたね」

P「何だかんだここで世話になったな」

整備士「入港手続きも一緒にやってくれたのは楽ですけどね。艦長には上手くやってくれって言われてるだけでしたし」

P「しかしあれだな、最初のとき以外は戦闘もなかったなぁ」カタカタカタッ!

整備士「まぁ、安全航路圏ですしね。でも他所だと戦闘はあるんじゃないですか?」

P「三船少尉から聞いたけど、さすがに哨戒宙域だと戦闘はあったらしい。所属艦じゃないしミーミル使えないのは不便だよな」

整備士「へー……そういえば三船少尉もS-01に異動って聞きましたよ」

P「あー、こっちの艦長さんがそんなこと言ってたなぁ。何かあったら少尉を頼れって」

整備士「お、ホントですか? ラッキー」

P「よかったじゃん」

整備士「やっぱいいじゃないですか。三船さん可愛いし」

P「華があるのも大事だな」カタカタカタッ

整備士「面倒見てくれる人が可愛いと嬉しいじゃないですか……って何やってるんですか?」

P「G1のバランサー設定の見直し」

整備士「またやってるんですか? いつも調整してますよね」

P「そりゃ自分が乗る機体だからだろ。俺にとっちゃコイツのほうが大事だよ」

整備士「そんな頻繁に調整する人なんてあんまり見ませんよ」

P「そうか?」

整備士「装備だって変わらないし、そんなに調子変わるもんなんですか?」

P「好きな奴ならこれくらいやるよ。データ後で反映させに行かないと」カタカタカタッ!

……
…………

――数時間後、ホクドウ、ヴェールSN-05(ブリッジ)

黒井『ようやく来たな、歓迎してやる』

SN-05艦長「相変わらず手厳しいな大佐は。哨戒任務での戦闘記録はアルヴィスで見させてもらった。中々大変だったそうじゃないか」

黒井『フンッ、小規模の巣が1つに極小規模の巣が3つだ。あとは雑魚の群れと、これくらいわけはない』

黒井『それに次は中規模の巣との戦闘だ。これくらいでもたついてはおれん』

SN-05艦長「まあそうだな……しばらくは世話になるぞ」

黒井『せいぜい落ちないようにな』

SN-05艦長「お互いにな」

「艦長、S-01にヴェールを収容しました。アーム固定完了しました」

SN-05艦長「うむ、艦制御はS-01に譲渡しておいてくれ。黒井大佐、あとで直接会おうか。そちらに行くウチの艦の者たちのことは頼むぞ」

美優「……」

……
…………

――ホクドウ、港(通路)

整備士「それじゃPさん、僕は整備班のほうに招集掛かってますから」

P「ああ、俺は部隊のほうに行かなきゃならん。時間が合えばどこかで顔合わせるか」

整備士「そうですね。それじゃ、先行きます」フワッ


P「……さて、俺はヴェールのメンバーとは別口で艦長室に行くんだったか」

美優「P……少尉」フワッ

P「ん、三船少尉。お疲れ様です」

美優「お、お疲れ様です……あの、いまからS-01に移動ですよね?」

P「はい。三船少尉はブリッジに向かうんですよね」

美優「ええ……あの、場所、分かりますか……?」

P「え? まあユミルに乗ったことはありませんけど、場所くらいなら……」

美優「あっ、案内……案内します」

P「いや、別に艦構造なら……」

美優「あ、案内……! Pさん、迷ってしまったら困りますし……」

P「……それじゃあ、お願いします」

美優「は、はいっ!」

……
…………

――数分後、ユミルS-01(通路)

P「それじゃ俺は艦長室に行くので、ここで大丈夫です」

美優「そ、そうですか……それじゃあ、私はブリッジに行くので……」

P「……」

美優「では、失礼します……」フワッ

P「……三船少尉」

美優「はっ、はいっ!」ビクッ!

P「俺は……こっちの事情はあまり詳しくないので、何かあったらまたよろしくお願いします」

美優「……はい、こ、こちらこそ……お願いします」

P「それじゃあ、失礼します」シュッ


美優「……よろしく……よろ、しく……」ボソッ


……
…………

――数分後、ユミルS-01(艦長室)

黒井「……」

P「……」

黒井「ヤツのところのガキか……」

P「P少尉です。よろしくお願いします」

黒井「せいぜい死ぬ気で任務に当たることだ。貴様が思っているほど土星圏での戦闘は甘くはない」

P「了解です」

黒井「あと貴様の配属する部隊は新設されたばかりのところだ。不本意だが、ここに来たからには成果は出せ」

P「分かりました。あの、黒井大佐」

黒井「なんだ」

P「ここに来る前に、大佐から言伝を預かっていましたので」

黒井「ヤツから? なんだ、わざわざ貴様を使って」

P「えっと……しり、だったかな。その二文字で分かると言われたんですが」

黒井「きっ、き、き……貴様ああああああ!!」ガタッ!!

P「な、なんですか!?」ビクッ!

黒井「何を知っている……何を知っているうううう!!!!」

P「いえ、何も! それ以上何も聞かされていませんから!!」

黒井「あの男がああああああ!!!!」ガタガタガタッ!!!!

P(な、なんだよ……)

ピピッ!

黒井「ああああああ!!」ブンブンブン!!

P「黒井大佐、コールが鳴っています」

黒井「なんだ」ピッ!

P(この人切り替え早いな……)

『艦長、高垣です』

黒井「来たか。入れ」

『失礼します』

パシュンッ!

「……」フワッ

P「……」

「……」チラッ

黒井「この前話した件だ。そこにいるガキがラピッドストライカー隊に配属される。艦周りと雑務については適当に面倒を見てやれ」

「この前の……分かりました」

黒井「高垣中尉だ。貴様がここにいる間、色々教わっておけ」



楓「高垣楓……中尉です」

P「P少尉です。よろしくお願いします」

楓「はい……こちらこそよろしくお願いします」


……
…………

――ユミルS-01(通路)

楓「……」フワッ

P「……」フワッ

楓「……」

P「これからどこに?」

楓「あっ……えっと、まずは住居ブロックへ……」

P「分かりました」

楓「……」

P「……」


……
…………

――ユミルS-01、住居ブロック(Pの部屋)

P「1人1部屋なのか……」

楓「パイロットとブリッジ要員は……他班は相部屋だったりしていますけど……」

P「そういえば、中尉もラピッドストライカー隊なんですか?」

楓「そう……ですね。えっと……なんでしたっけ……」



ピピッ! パシュンッ!

「オート・クレール社と黒川重工で作った試作兵装のテスト運用をする部隊ですっ!」


P「ん?」クルッ


菜々「ハートウェーブピリピリーンッ! っと、そのラピッドストライカー隊の隊長がこの私!」

菜々「ウサミン星から地球を守るためにやってきたウサミン星人!」

菜々「ナナでーすっ☆」ビシッ!

P「……」

菜々「キャハッ☆」

P「…………」

菜々「……」

P「………………」

菜々「……あの、顔が徐々に作画崩壊したみたいに崩れていくのやめてくれませんか?」

P「……はっ、し、失礼しました」

菜々「えーっと……安部菜々中尉です」

P「……P少尉です。隊長、これからよろしくお願いします」

菜々「隊長……」

P「はい。木星圏から来たばかりですが……」

菜々「隊長……隊長……たいちょう……」ジーン……

P(何だこの人……)

楓「あの……菜々ちゃん……?」

菜々「ハッ!? そ、そうでした……ええっと、P少尉、部隊のお話しは後でナナのほうからしますので……」

P「はぁ……そうですか」

菜々「ちょっとナナはこれから急いで黒川重工のところに行かなきゃならないので、それではウサミンは失礼しまーす☆」フワッ

パシュンッ!



P「……」

楓「……」

P「あの、あの人なんで制服の上からエプロン掛けてるんですか?」

楓「そういう人ですから」

P(いいのか……?)

……
…………

――ユミルS-01(休憩所)

楓「報告書のフォーマットは転送したもので……必要ならある程度、崩して大丈夫ですので……」

P「ミーミルの利用申請はどうすればいいですか?」

楓「えっと……艦の共有ローカルに申請台帳があるので、それで……場所は、ブリッジか資料室で……」

P「そうか、ユミルだから資料室があるのか……了解です」

「高垣中尉!」

P「ん?」ピクッ

楓「あ……はい」

「休憩中ですか? こっちに来るなんて珍しいですね」

楓「あ……そうですね」

P「……」

「ん? 中尉、こいつは……?」

楓「あ……P少尉です。本日付で配属されましたので、色々艦のことを教えているところで……」

「へえ……」

P「P少尉です。よろしくお願いします」

「パイロットか。あまり中尉に迷惑掛けるんじゃねえぞ」

P「了解です」

「それじゃ中尉、失礼します」フワッ

P「中尉、いまの方は?」

楓「さあ……」

P「えっ」

楓「たまに話しかけてくる人なんですけど、私もどなたかは……」

P「……」

楓「えっと……あとは、提出書類は、私のほうに回して頂ければチェックしますので……」

P「そうですか……ん、中尉が?」

楓「はい」

P「あれ、ラピッドストライカー隊の部隊長は安部中尉じゃあ」

楓「試作兵装のテストで……稼動データ収集のためのオペレーター業務も、私がやることになっちゃったので……そのついでみたいです」

P「そ、そうですか」

楓「……私のほうからは、以上ですが……何も、ありませんよね?」

P「とりあえずは……大丈夫です。何かあったらまた聞きます」

楓「そうですか。それじゃあ、今日はこれでおしまいで……」ガタッ

P「はい。ありがとうございました」

楓「……」フワッ

P(……物静かな人だな)


……
…………

――ユミルS-01(格納庫)

菜々「というわけでぇ、部隊運用の内容について説明しちゃいまぁす☆」

P「はぁ……」

菜々「だから顔面作画崩壊気味に反応しないでくださいって」

菜々(この人ふざてもノッてくれないタイプですね……)

菜々「えっとですねー……ちょっとお話しはしましたけど、ラピッドストライカー隊は新兵装のテスト運用をする部隊になります」

菜々「これはオート・クレール社がグレイプニールの開発ノウハウをある程度蓄えることが出来て、兵器開発のほうに手を出せる余裕が出てきたからです」

菜々「いまは次世代型のグレイプニールの開発が進行しているようですけど……まあそれに合わせた新兵装が色々考案されているみたいで」

菜々「ナナたちのほうでテストした兵装の評価により、今後のグレイプニールに搭載される武器の仕様がある程度変わるというわけです」

P「……思ったより重要ですね」

菜々「はい! 特に次のグレイプニールは黒川重工とある程度連携して開発している部分があるようです」

菜々「それにあわせて兵装のテストをするわけなので……まあまあ色んなものが送られてくるらしいです」

菜々「とはいえ、現行の部隊や小隊でテストすると他との連携が取り難くなって戦術プランを変えざるを得なくなるのも事実!」

菜々「そこで菜々が部隊長のラピッドストライカー隊を新設して、そこでテストしようって話しなんですよぉ!」

P「なるほど。分かりました」

菜々「で、で、で! 黒井大佐から聞いてたんですけどぉー」ススススッ

菜々「P少尉って新人の中でも結構デキるって評判らしいので、ナナとしても色々期待しちゃうんですけどぉ~?」

P「ま、まあ……期待に応えられるよう頑張りますので……」

菜々「まぁー、ナナもOPFでの戦闘はそこそこ覚えがありますので、まぁまぁいざとなったら隊長を頼りにしちゃってください♪」

P「OPFに乗っているんですか? それは……凄いですね」

菜々「1.5世代はまだちゃんと配備されきってないですからね。実はナナもテスト部隊に選ばれたっていうことで、今回新しく貰っちゃったんですけど……」

菜々「まあまあ、とりあえずお話しすることはしたので……せっかく格納庫に来たのでちょっとシミュレーター動かしましょうか」

P「シミュレーターですか!」

菜々「う、嬉しそうに言いますね……」

P「いえ、こっちに来るまでの間にG1の設定を色々弄っていたので、具合を見ておきたいと思っていたんですよ」

菜々「それじゃあシミュレーターの準備しましょうか」イソイソ


……
…………

――仮想戦闘空間

菜々「それじゃあ、最初はキラー・ビーの出現設定は1匹にしているので、コンビネーションマニューバはI02で行きましょう」

蜂「……」ギュンッ!

P『了解です。軌道ルートを予測します。予測後弾幕を展開し、グラムで牽制します』カタカタカタッ!

P『ミョルニル発射……!』ボシュシュシュッ!

蜂「……!」ギュンッ!

菜々「それじゃあナナはこのタイミングで前に出て……」

P『そこだっ、グラム!』ズドォッ!!

蜂「……」ブブ、ブ……

ドガアアアアアアンッ!!

菜々「えー……」

P『前回の戦闘データのおかげでルート計算が早くなったな……やっぱり7匹纏めて戦闘すると向こうの飛行パターンも色々出てくるか』

菜々「あのー……P少尉?」

P『はい』

菜々「えーっと……ま、まぁ、1匹ですし開幕射撃で撃破することもありますよね! F型とS型1匹ずつ出しましょうか」カタカタカタッ

P『マニューバはどうしましょうか』

菜々「I05でいきましょう。ナナが1匹落としますので、P少尉はその間はもう1匹をひきつけておいてください」

ピッ!

蜂「……」ギュンッ!

蜂「……」ギュンッ!

P『了解です。先頭のS型を引き離します』ギュンッ!!

蜂「!!」ギュンッ!

P『グラム発射! S型はさすがに早いか……ミサイル相手に遊んでもらう……!』ボシュシュシュッ!

蜂「……!」ブブブゥゥゥンッ!

菜々「P少尉がS型を引き離してくれたうちにF型を撃破しますよ! それまで持たせてくださいね!」ギュンッ!

P『了解です』

菜々(高機動のS型との戦闘で1対1はグレイプニールだと逃げ回るしかないから……ここでナナがF型をさくっと落として!)

ギュオオオオオオッ!!

蜂「!」ギュンッ!

菜々「F型ならナナでも!」ズドォンッ! ズドォンッ!

蜂「……!」ブブゥゥンッ!

菜々「立体機動の距離に入られる前にぃ!」ギュンッ!

ズドォンッ!

蜂「……!?」ギュンッ!

ドガアアアアアンッ!!

菜々「よぉーし、P少尉! こっちは片付きましたのでいまからそっちいきますね!」

P『了解です。だが……これで終わりだ!』ドガガガガガッ!

ドガアアアアンッ!!

菜々「ってええええええっ!?」ギュンッ……


……
…………

――1時間後、ユミルS-01(格納庫)

菜々「……」ズーン……

P「S型とは2、3回しか戦闘経験が無かったけど、これまでの戦闘データが使えてよかったな……」カタカタカタッ

P「足が速いだけでやってくることはF型とは一緒だし、あとは機体のレスポンスが……」

菜々「ナナでもF型1匹なら1人で倒せるのに……麗奈ちゃんもスゴイって褒めてくれたのに……」ブツブツブツ……

P「中尉、4回目のシミュレーター起動で動いたS型ですけど……」クルッ

菜々「P少尉はまだ2年目なのに……ナナは隊長なのに……隊長……隊長……」ブツブツブツ……

P「中尉?」

菜々「なんですか」グルンッ!

P「いや、あの4回目のS型の……」

菜々「あっ……すみません、えっと……なんでしたっけ?」


麗奈「ん、菜々アンタ何やってんの?」


菜々「あっ、麗奈ちゃん」

麗奈「シミュレーターやってんの。まあ次の作戦もあるしね……ってコイツ誰?」チラッ

菜々「P少尉ですよ。今日からラピッドストライカー隊に来てもらいました」

P「P少尉です。よろしくお願いします」

菜々「この人は小関麗奈大尉ですよ。すっごいパイロットなので少尉も色々教えてもったらいいと思いますよ」

P(小関大尉か……SN-05で話に聞いた人か)

麗奈「アンタが大佐の……まあいいわ、アタシこれから本部行かなきゃダメだからまた今度ね」

菜々「あれ、そうなんですか?」

麗奈「客が来てんのよ。作戦前だからアタシも遊びたかったけど、まー黒井に言われたから行かなきゃなんないのよ」

菜々「大変ですねえ」

麗奈「んっとに……菜々あとでシミュレーターに付き合いなさいよ」

菜々「ナナは大丈夫ですけど……」

麗奈「それじゃアタシ行くわ。またね」フワッ

P「お疲れ様です」

……
…………

今日はこれで終了します

――数時間後、ユミルS-01(Pの部屋)

P「最初から手こずると困るし、週報は少しずつ書いていくか……面倒だな」カタカタカタッ

P「それにしても新しい小隊か。新兵装のテスト運用とか……というか、だから俺に来るときリニアカノン持たせたのか」

ピピッ!

P「ん? メールか」カタカタッ

P「三船少尉からか……」

『P少尉、新しい配属先はどうですか? 私のほうは早速オペレーター用のマニュアルを渡されて机上シミュレーターを実施しました』

『明後日からは観測されていた蜂の巣の攻略が始まるようなので……P少尉も今日から訓練でしょうか? 頑張ってくださいね』

P「律儀な人だな。返信しておくか……何書こうか」

P「……」カタカタカタッ


……
…………

――ユミルS-01(美優の部屋)

ピピッ!

美優「あっ……P少尉からメール……」カタカタカタッ

美優「……メール、この時間に返してもらえたなら……もう、グレイプニールの訓練も終わっているのかしら」

美優「……」カタカタカタッ

美優「……」カタカタカタ……

美優「すぐメール返すの、悪いかしら……P少尉も、疲れていたら……やめておこう、かな……」

美優「……ふふっ」


……
…………

――ユミルS-01(美優の部屋)

ピピッ!

美優「あっ……P少尉からメール……」カタカタカタッ

美優「……メール、この時間に返してもらえたなら……もう、グレイプニールの訓練も終わっているのかしら」

美優「……」カタカタカタッ

美優「……」カタカタカタ……

美優「すぐメール返すの、悪いかしら……P少尉も、疲れていたら……やめておこう、かな……」

美優「……ふふっ」


……
…………

――ユミルS-01(楓の部屋)

楓「はぁ、新しい人のお世話なんて……すぐ覚えてくれる人ならいいけれど……」

楓「はぁ……知らない人と話すなんて……」

楓「はぁ……」

楓「菜々ちゃん、通常業務の分も私の代わりに教えてあげてくれないかしら……」ハァ……

楓「はぁ……」

カシュッ!

楓「はぁ……」ゴクゴクゴク

楓「はあああああ……」


……
…………

――翌日、ユミルS-01(格納庫)

パシュンッ!

菜々「いやー、P少尉の援護がイイ感じなのでナナも動きやすくて助かりますねー♪」

P「安部中尉のマニューバがとても良いのでこちらも合わせやすくて助かりました。それにしてもこの誘導ミサイルも中々便利ですね」

菜々「外付けですからミョルニルと一緒に弾幕にも使えますからねー」

P「機体バランスが調整し直しなのがちょっと面倒なんですけどね……まあでも、選択肢が増えるからこっちのほうがいいか……」

菜々「次のグレイプニールは場面や用途に合わせて、今よりも色んな武装選択をできるようにする話もあるみたいですね」

P「基本性能もうちょっと上げてくれると嬉しいんだけどな……立体機動はまだリスクも高いし」

菜々「そこは仕方が無いですよねー。麗奈ちゃんも立体機動はやりやすくしろーって文句言ってますけど」

P「まあないものねだりをしても……っと、そういえば今日はホクドウの町に行くんでしたよね?」

菜々「あー、P少尉はこっちに来たのも初めてってことですからね。午後の半休時間にでもと……だけどナナ、この後ちょーっと別件がありまして……」

菜々「前までいた小隊の引継ぎが全部終わってないのでそれの消化が……上からも早くやっとけって言われちゃって」

P「それなら1人で行ってきますよ。まあ、本部の場所くらいは覚えておきたいですし」

菜々「ああっ、そんなことはさせませんよ! 一応楓さんに連れてってもらうようお願いしているので、一緒に言ってきてください」

P「高垣中尉か……」

菜々「ありゃ? 楓さんとじゃ嫌ですか?」

P「いや、そういうわけじゃないんですが」

菜々「あー……楓さん、ちょっと人見知りしちゃう人ですからね」

P「まあ、いまのうちにある程度話してもらえるようにはしておきたいので……」

菜々「それなら良い方法がありますよ!」

P「え?」

菜々「うーん、うーん……それじゃあ本部の場所の確認が終わったらナナに連絡ください。そのときにナナのほうからちょーっと話してあげますから」

P「はぁ……?」

……
…………

――数時間後、ホクドウ、軍管区(車内)

楓「そこの道に入ってください」

P「こっちですね」

楓「……あの、車」

P「え? ああ、一応自分で動かして道覚えておきたかったので、大丈夫ですよ。それにレンタカー代は安部中尉が出してくれましたし」

楓「……」

P「あぁ、この直線に入ったら本部まで1本道か……なるほど、分かりました」

楓「大丈夫……ですか?」

P「大丈夫です。ありがとうございます」

楓「いえ……」

P「っと、そうだ安部中尉に連絡しないと」ピピピッ!

菜々『はーい、ナナでーす☆』

P「Pです。安部中尉、いま本部前に着きました。この後はホクドウにある町の専用区画に行こうかとは思っていますが……」

菜々『あーそうですか。そこ立ち寄るならもう夕方頃になりますよね? ついでにP少尉の歓迎会しましょうか』

楓「え……」

P「歓迎会? いえ、あの、作戦前なのですが……」

菜々『作戦前だからですよぉ。明日からまたペースト食しか食べれませんし、パーッとやりましょうよパーッと!』

楓「あの……菜々ちゃん……」

菜々『てわけで楓さん、やることやったらP少尉をオススメの居酒屋に連れてってあげてください。ナナも後で行きますから』

楓「でも、その……」

P(めっちゃ面倒臭そうな顔しとる……)

菜々『ほらほらぁ、ラピッドストライカー隊の新設祝いも兼ねて飲みましょうよ。ナナが全部おごっちゃいますから』

楓「おごりですか」ガバッ!!

P「うおっ」

菜々『せっかくですし、ドーンとナナに任せちゃってください! あ、でもあまり高いお酒は……』

ガシッ! ピッ!

楓「P少尉、行きましょう」

P「えっ」

楓「早く、用事を終わらせて……飲み……歓迎会をしましょう」

P「いやあなた飲みたいだけじゃ……」

楓「さあ、ほら、早く……」グイッ!

P「は、はぁ……」


……
…………

――ホクドウ(工業ブロック)

P「ここは……区分けされている場所じゃないんですね」

楓「元々は他のコロニーとシティの作りは一緒だったみたいですけど……土星圏で軍の関係者も多いので、一部区画が居住ブロックと工業ブロックに分かれたみたいです」

P「まあ確かに、奥に見える施設はナシヤマでもあったな……」

楓「あとは工業ブロックの先にはオート・クレール社と黒川重工があります。もしかしたら……部隊の都合で行くことがあるかもしれませんけど」

P「新兵装のテスト関係であれば機会があるかもしれないですね。了解です」

楓「さて……もういいですよね? こっちのコロニーにある専用施設の場所とかは分かりましたよね?」

P「まあ、大体は……」

楓「それじゃあ行きましょう。ほら、今すぐに」

P「え、どこに?」

楓「飲み屋です。私の行きつけの場所がありますので」

P「あ、ああ、その話し……分かりました。場所教えてください」


……
…………

――夕方、ホクドウ、居住ブロック、居酒屋『世紀末歌姫』

楓「ビールでいいですか?」

P「あ、大丈夫です」

楓「それじゃあおじさん、生中2つに焼き鳥の盛り合わせと、枝豆、土星揚げ、あとトマト」

P「……随分テンション高いですね」

楓「……」ハッ!

「はいよ生中2つ」ゴトッ、ゴトッ!

楓「……」ゴクゴクッ

楓「……そうでしょうか」

P(戻った……)

P「いやぁ……飲むの、好きなんですか?」

楓「……それなり、です」ゴクゴクッ

P「そうですか。この土星揚げってどんな料理なんですか?」

楓「えっと……なんて言えばいいんでしょう……火星丼の親戚みたいな……ご飯の無い火星丼というか……」

P「へぇ……中尉は好きなんですか?」

楓「ここに来たらよく頼みます。あとは……やっぱり焼き鳥と……」

P「居酒屋来たら焼き鳥は結構頼みますよね」

楓「そ、そうですよね。あとは……」


……
…………

――数十分後

楓「3軒先にあるお店は、ここと同じ値段なのに付いてくるフライが2枚も少ないんですよ。ヒドイと思いませんか?」ゴクゴクッ

P「そ、そうですね……近場でそれだけ違うと行きにくいお店になりますよね……」

楓「そうなんです。お酒の種類もここと変わらないし……悪いお店なんです、あっちは」ゴクゴクッ

P(この人よくもまぁ居酒屋の話しだけでこうぺちゃくちゃ喋り続けられるな……)

楓「ホント、料理も出てくるのが遅くて冷めちゃっているものもあって……きっとお店の懐も冷え冷えなんですよ」ゴクゴクッ

P(うわぁ……)

楓「P少尉もそう思いますよね?」ズイッ!

P「は、はい……まあ酷い店ですね……」

楓「本当にそうなんです。あ、すみません生おかわり」

P「すみません、つくねも」

「へい」

楓「P少尉、飲んでますか? せっかく菜々ちゃんがご馳走してくれるんですから、たくさん飲まないと失礼ですよ」

P「は、はい。そうですね、いまのグラス空にしたらもう1杯頂きますので」

P(安部中尉、早く来てくれ……!)

……
…………

――ユミルS-01(格納庫)

菜々「あのー……まだ上手くいきませんかね?」

「すみません中尉、中尉が担当していたマニューバの部分がどうも……もう1回お願いします」

菜々「い、いえいえ! 戦闘で手間取ったら大変ですもんね! ナナもバッチリ教えちゃいますよ!」

菜々(P少尉、今頃楓さんと2人で大丈夫でしょうか……)

「よーしお前ら、菜々さんが付き合ってくれるそうだぞ。もう1回だ!」

「うーっす!」

菜々(ああ……居酒屋の楓さん……ダメですよね、P少尉……すみません)


……
…………

――数時間後、ホクドウ、居住ブロック、居酒屋『世紀末歌姫』

ピピピッ!

P「メール……安部中尉からか」ピッ!

『すみませえええええん!! いま引継ぎ終わったんですけどもう遅くなっちゃったので歓迎会はまた今度にしましょう……』

P「ええええ……ここの支払いどうすんだ……」チラッ

楓「……ねぎま……追加……あと、生も」ゴクゴクッ

P(ありゃダメだわ……)

P「まあそろそろ引き上げるか……高垣中尉、安部中尉が来れないそうなのでそろそろ帰りましょう」

楓「んー……ぅ」ブツブツ

P「飲みすぎなんだよ……すみませんおじさん、お会計お願いします」

「おうよ」

P「……俺払うか」

……
…………

――ホクドウ(ショッピングモール)

P「くそー……レンタカーは返しちまったし、こんなときにタクシーも見かけないし……」

楓「P少尉、もう1軒……もう1軒行きましょう……」グイッ!

P「ちょ、ちょっと肩貸してるのに引っ張らないでください」

楓「いえいえぇ、私は肩は借りていないです。返すときに痛そうなので……」フラフラ

P「どんだけ飲む気だよ……ほらほら、碌に歩けてない状態でこれ以上飲むと明日に響きますよ。二日酔いなんて嫌でしょう?」

楓「飲みすぎて二日酔いから酒っと立ち直れなくなる……なんて」フヒッ

P「んな下らないこと言わなくてもいいですから。ほら、ちゃんと歩いて……」

楓「……」ピタッ

P「中尉?」

楓「……ぷっ、う……っぷっ、うっ……」ガク、ガクガク……

P「ん? お、おい……まさか……」ビクッ!


楓「うぼぉろろろろろげええええええ!!!!」ビチャビチャビチャビチャッ!!


P「うぐおおおおおおおっ!?」


……
…………

――数十分後、ホクドウ(広場)

楓「……」ズーン……

P「あの、これどうぞ、水……」

楓「……」ズーン……

P「……大丈夫ですか?」

楓「……すみません、その、服……汚して」

P「いや、まあ半休で私服だったから別に……」

楓「そ、そうだ……あの、の、飲み代のお金……」ゴソゴソ

P「いや、あの、ゲロ触りまくった後の手でお金渡されても……」

楓「そっ、そうですよね……」ガーンッ!

P「あ、しまった……」

楓「そうですよね……タダ飲みだからって調子に乗って飲みすぎて吐いちゃうような人のお金なんてもらいたくないですよね……」

P「いや、あの……」

楓「……」グスッ、グスッ……

P「……その、高垣中尉がすごく楽しそうに飲んでるから、まあ俺もいいかなと思ったので」

楓「でも……P少尉の、歓迎会で……」

P「いやぁ、俺の歓迎会でそんなにたくさん飲んで色んな話しをしてくれたじゃないですか! ほら、高垣中尉、昨日はまだどんな人なのかなーと思っていたんですけど」

P「今日の中尉を見て、中尉となら楽しく仕事やれるかなって思いましたよ」

楓「……調子に乗ってゲロを吐いちゃうような女もでも、ですか?」

P(あ、ああ言えばこう言う……)

P「ま、まあほら、今日1日でゲロをかけても気にならないくらい親睦を深めたということで俺は全然……」

P(俺は半休潰してゲロを掛けられた上に一体何を言っているんだ……)

楓「……」ピタッ……

P「だからまあ、私服1着くらいは……どうせ普段は制服ですし」

楓「……そ、それじゃあ……許して、くれますか……?」

P「まあまあ、これくらいは気にしませんよ」

P「それに困ったときは俺のほうが頼らせてもらいますから、これくらいはもう……むしろどんどん吐いちゃっても構いませんので」

楓「いえ……あの、それはさすがに……」

P「は……はは……」

P(まあ……とりあえず昨日の感じから更にテンション低くされても困るし……まあいいか……)

……
…………

――ユミルS-01(通路)

P(臭いはだいぶ消してから戻ってきたけど大丈夫だよな……まあ後でちゃんとやるか)

P「あ、お疲れ様です」

楓「お疲れ様……です」


「お疲れ……ってお前、何か少し臭うぞ……」


楓「あ、あの……それは私……」

P「いやすみません、実は隊の歓迎会をやってもらったんですけど、飲みすぎてやらかしちゃって……」スッ

「っとに……大丈夫ですか中尉」

楓「は、はい……」

「お前、あまり高垣中尉に迷惑を掛けるなよ」

P「はい。気をつけます」

「まったく……」

――数十分後、ユミルS-01(Pの部屋)

パシュンッ!

P「はぁ……まさか異動早々にゲロの洗礼を浴びせられるとは……まあ、中尉は取っ付き難かったし、これでちょっとは話せるようになればいいか」

バサッ!

P「くせぇ……さすがに服は捨てるか……後はシャワーでも浴びておくか……」ピッ、ピッ

カタカタカタッ!

P「安部中尉は何やってたんだろうか……」

ピピッ!

P「ん、メール着てたのか……安部中尉のメールしか見てなかったけど、誰からだ?」カタカタッ

P「三船少尉からか……」

『あの……今日は、午後は半休ですよね。その、P少尉はホクドウに来たのは初めてだと思いますから、施設の案内をしようと思っているんですけど、午後は大丈夫ですか?』

『規模が違うので軍管区の場所も他とは違いますし、こっちのコロニーにしかない施設もありますから、それも一通り場所を教えますので……終わったとは食事をしませんか?』

P「しまった、せっかく誘ってくれたのに悪いことしたな……隊のほうで施設の案内はあったけど、謝っておくか」カタカタカタッ

ピピッ!

P「はぁ……疲れた。シャワー行くか……」

パシュンッ!

……
…………

――ユミルS-01(美優の部屋)

ピピッ!

『すみません、隊のほうで本部や施設の案内があって……歓迎会のほうもして頂いていました。連絡が遅くなってすみません』

『明日辺り、時間が合ったら食堂で一緒に食べましょうか。俺のほうは午後一は休み時間みたいなので、その時間は食堂に行ってます』


美優「P少尉……部隊のほうで、先約……あったのね……」

美優「でも……明日の午後は、私もお昼休みだから……」

美優「食堂……明日、お昼はすぐ行かないと……」

……
…………

――ユミルS-01(楓の部屋)

ボフッ!

楓「……」

楓「……」ゴロゴロ


P『ま、まあほら、今日1日でゲロをかけても気にならないくらい親睦を深めたということで俺は全然……』


楓「……P少尉……怖い人じゃなさそう、ね」

楓「……」ゴロゴロ


楓『……そ、それじゃあ……許して、くれますか……?』

P『まあまあ、これくらいは気にしませんよ』


楓(怒鳴られたらどうしようかと思ったけど……良い人そう、かも……)

楓「……」スンスン

楓「……とりあえず、シャワー浴びないとダメね」スンスン


……
…………

――翌日、ユミルS-01(格納庫)

P「旋回砲塔機銃か……」

菜々「試作品の1つですけど、近中距離用の装備ですねぇ……どうせなら接近戦に合わせてスラスターも増設してくれればいいんですけどね」

P「まあドラウプニルと併用して近接戦闘時に上手く立ち回るしか……」

菜々「まだ他にも装備あるんですけどね。ちょっと一気に積むと機体バランスの調整も大変ですから少しずつやりましょう」ピッ、ピッ、ピッ


黒井『これより艦は中規模蜂の巣攻略作戦を開始する。各自巣との遭遇予定ポイント到達までに作戦概要を叩き込んでおけ』


菜々「あら、艦内放送」

P「出航か……ていうかこんな適当でいいのか……」

菜々「まあ黒井大佐ですからね。作戦内容覚えておかないと困るのは自分たちですし、みんなやることはやりますよ」

P「まぁ……指定宙域ポイントまでの移動中はどうしているんですか?」

菜々「移動中に何度かは蜂との戦闘も起きるでしょうし、主力の隊は温存しつつ進行ですね」

P「俺たちの出番ってあるんですか?」

菜々「一応移動中の戦闘にはなるべく出撃するように編成してもらっているので、ナナたちは本番までの間頑張りましょう!」

P「移動中の戦闘か……まあ試作兵装担いだまま本作戦に参加するのも難しいか……?」

菜々「そんなものですよ。まあラピッドストライカー隊の初めての作戦ですから、頑張りましょうね!」

P「了解です」


……
…………

――数時間後、ユミルS-01(食堂)

P(ホクドウを出てしばらく経ったか。資料室っでミーミルを触ったが、別宙域では今日も戦闘があったみたいだが……)

「ちょっと、食券は?」

P「あ、すみません。お願いします」

「はいよ。B食ね」

P(ペースト食……SN-05でも食べたが、しばらくはこれか……)

楓「あら、P少尉?」

P「高垣中尉……お疲れ様です」

楓「お昼ご飯ですか?」

P「はい。安部中尉と交代で……ブリッジのほうはどうですか?」

楓「いまは交代で休憩時間を取ってて……あの、昨日は……」

P「あ、いえいえ。昨日のことは別に……っと、後ろの邪魔になるか。それじゃあ失礼します」

楓「あ……はい」


……
…………

――ユミルS-01(食堂)

美優「……」キョロキョロキョロ

美優「あ……」



P「……」モグモグ


美優(P少尉、別の配給場所にいたのね……急いで行けば間に合うかも……)

「食券出してください」

美優「あっ、す、すみません……これで……」


……
…………

――ユミルS-01(食堂)

楓「……」ボー……

「食券出してね」

楓「あ、はい」

楓「……」

楓(一緒に食べる人いない……)ボー……


楓(そうだ……P少尉のところに行けば……)


楓「どこの席に座ってるのかしら……」



……
…………

――数分後


美優「……」

楓「……」



P「……お疲れ様です」

美優「は、はい……あ、えっと……お疲れ様です、高垣中尉……」

楓「お疲れ様です」

P(ん?)

P「お2人とも顔見知りですか?」

楓「お互い作業場はブリッジですから……挨拶もしましたし……」

美優「そ、そうですね……あの、P少尉は、高垣中尉とは……」

P「同じ隊なんです。ラピッドストライカー隊ってところで」

美優「お、同じ部隊……ですか……」

楓「あの……P少尉」

P「はい?」

楓「ご飯……一緒に食べても、いいですか?」

P「え?」

楓「その……一緒に食べる人が、いなくて……」

P「そ、そうなんですか……」

楓「たまに、知らない人から声を掛けてもらえることもあるんですけど……知らない人は怖くて……」

P「は、はぁ……まあ、それなら……三船少尉も一緒に食べますか?」

美優「ぅぇえっ、わ、私……」チラッ

楓「……」ボケー……

美優「は、はいっ、それでは……し、失礼します……」


……
…………

――数分後

美優「……」チラッ

楓「……」モグモグ

美優「……」モグモグ

楓「……」チラッ

P(この2人お互いのトレーの中を覗き見してやがる……なんなんだ……)

P「……た、高垣中尉は何を頼んだんですか?」

楓「ゼリー食です。お味噌汁味の」

美優「へぇ……」

楓「……」モグモグ

美優「……」

P「……三船少尉は?」

美優「わ、私は……フルーツのペースト食、です……」

楓「……」ジーッ……

美優「……」モグモグ

P(め……面倒くせぇ……)

楓「あの……P少尉」

P「はい」

楓「何度も言ってしますんですけど、昨日は、その……すみませんでした」

P「いえ、別に……」

美優「何か……あったんですか……?」

楓「それが、昨日は私……P少尉に、恥ずかしいところをたくさん見られてしまって……」

美優「えっ!?」ガタッ!

P「もういいじゃないですか。昨日の話しですし……」

楓「ですけど……その、ほら……やっぱり、お詫びとか……」

美優(恥ずかしいところ……恥ずかしいところ……昨日、P少尉……隊で歓迎会が……まさか……)

ポワポワポワポワ……




楓『P少尉……その、あまり見ないでください……私の恥ずかしいところ……』

楓「あっ、そんな……ダメですよ。そんなところまで見ちゃうなんて……あっ……』


ポワポワポワポワ……

美優「……!」ブンブンブンブン!!

P「いや、別にあれくらいは……ほら、よくあることですし……」

楓「でもせっかくの歓迎会で……」

美優「わっ……!」

楓「わ?」クルッ

美優「わっ、わたっ、しも……P少尉に……恥ずかしいところ……見られ、て……」プルプルプルプル……

楓「えっ?」

P「うっ……」

P(清掃のときのことか……なんでこんなタイミングで……)

楓「恥ずかしいところ……」

ポワポワポワポワ……




美優『うっ……おっ、おえっ……おえええええ……』

美優『はぁっ、はぁっ……す、すみません……こんな恥ずかしいところ、見ないで……』


ポワポワポワポワ……


楓「……三船さん、もしかして……お酒、好きですか?」

美優「えっ?」

P「えっ、何故突然……」

楓「ほら、つい飲みすぎちゃうと……色々やらかしちゃうところとか……」

美優「ええ……わ、私は別に――」


ビーッ! ビーッ!

P「……!」ピクッ!

楓「……」ピクッ


美優「警報……」ビクッ!

『コンディションレッド、コンディションレッド。前方距離4000、キラー・ビー出現』

P「蜂か……安部中尉」ピピピッ!

菜々『出撃しますよ! 許可も出ています!』

P「了解です。パイロットスーツに着替えて向かいます」フワッ

菜々『ナナのほうも準備してカタパルトに向かってますね!』ピッ!


楓「三船少尉……私たちもブリッジに」

美優「は、はいっ……あ、P少尉……!」

P「はい?」

美優「その、き、き……気をつけて……」

P「了解です。行ってきます」

美優「……」ホッ……

楓「……」


……
…………

――数分後、ユミルS-01(カタパルト)

P「安部中尉、今回の出撃小隊のリストは分かりますか?」カタカタカタッ!

ピピピッ!

菜々『データ回ってますから転送しますね。S-01とSN-03、SN-05からそれぞれ2、3小隊ほど出るみたいです』

P「蜂の数は12か……俺たちはどうすればいいですか? 後ろで援護ですか?」ピッ、ピッ、ピッ!

菜々『それじゃ部隊運用になりませんよぉー! ウチはGRS-1で別途小隊コードが振られています。こちらでも通常マニューバで戦闘しますからね!』

P「了解です。機体装備は?」

菜々『ナナのOPFは旋回砲塔機銃を装備しています。P少尉のは別口で来ていた単装ビーム砲塔を積んじゃってます!』

P「機体設定間に合うかぁ……? 了解です、マニューバはI02ですね」カタカタカタッ!

菜々『それでオッケーです!』

ピピピッ!

楓『ハッチ開放しました。各小隊出撃してください』

菜々『楓さん、ナナたちもいきますね!』

楓『はい。稼動データの収集はこちらでやっておきます』

P「よろしくお願いします」カタカタカタッ!

ピッ!

ピピピッ!

P「ん? なんだまた通信なんて……」ピッ!

楓『あの、P少尉……』

P「高垣中尉? どうしましたか?」

楓『えっと……頑張ってください』

P「……了解です」

P(変なところは律儀だなこの人……)

菜々『よーし、それじゃいきますよ! GRS-1小隊からRS-01、安部菜々出撃しまーすっ!』

P「……RS-02、G1で出撃します」ギュンッ!!

……
…………

――戦闘宙域

P「識別コード登録。中尉、先頭キラー・ビーとの距離3100です」

菜々『はっ、はっ……はいいいいいい……!!』

P「ちょっ、出撃前と違ってめっちゃ上がってませんか?」

菜々『えっ? いやっ、そっ、その……初めてのナナの隊の戦闘なので……いや、全然大丈夫……ううっ!? な、何だかお腹が……』

P「おいおい……」

ピピピッ!

楓『各機、支援のためSN-03が出撃しました。転送したポイントに対してアルヴァルディで弾幕展開します』

P「ヴェールからの弾幕支援か……安部中尉、こちらの初動は……」

菜々『はっ、はひっ……!』

P「……」ハァ……

P「中尉、アルヴァルディ着弾後の蜂の挙動から予測飛行ルートを算出します。データ算出後は転送しますのでマニューバの参考にしてください」

菜々『ええっ……い、いやぁ……でも戦闘中に……』

P「装備の都合上、立体機動戦闘に入った場合は中尉のOPFのほうが上手く立ち回れます。俺のほうは援護射撃を行います」

P「敵とかち合うまでは他小隊と一緒に射撃戦で数を減らしていきましょう」

菜々『はっ、はいいいいいい!!』

ズドドドドドドドドドッ!!!!

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P「アルヴァルディが来たか……! 蜂が散ったこのタイミングで」カタカタカタッ!!

ピッ、ピピッ!

P「安部中尉、予測飛行ルート算出しました。転送します」

ピピッ!

菜々『りっ、了解でぇすっ!』ギュンッ!

P「おいおい突っ込むなよ……他の小隊も一部前に出てるか……!」ギュンッ!

P「こっちに流れてきた蜂は……F型3匹か。接触する前に減らしておかんと……!」ガションッ!

P「このビーム砲塔はスコープ付きかよ……こんなもんで照準合わせするくらいなら!」ガコンッ!

ギュオオオオッ!

蜂「……!」ギュンッ!

P「単装ビーム砲塔……発射!」ズドォンッ!

蜂「……」ギュンッ!

P「避けるか……照準補正、いまの軌道なら……ミョルニルで飛行ルートを制限する!」ボシュシュシュ!!

蜂「!?」ギュンッ!

P「そこだ!」ズドォンッ!

蜂「……」ブ、ブブ……

ドガアアアアアアンッ!!

菜々『ゲェッ!? 近距離戦に……ええいっ!』ギュンッ!!

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P「安部中尉……結局2匹とも引っ張ってきたのかよ! もう1匹はこっちでやっておかんと……!」カタカタカタッ!

ピピッ!

菜々『えっ、P少尉? この射線……』

P「旋回してください。ミサイルを撒いた後にこちらで1匹受け持ちます」

菜々『お、お願いしますっ!』ギュオオオオオッ!!

P「ここだ……!」ボシュシュシュッ!!

蜂「!?」ギュンッ!

菜々『バラけた! 1対1なら!』ギュンッ!!

P「いまのうちに……!」ズドォンッ! ズドォンズドォンッ!

蜂「!」ギュンッ!

ドガアアアアアアンッ!!

P「よし、このまま……!」


……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

「GRS-1小隊、F型撃破しました。GNS-004小隊と合流します」

麗奈「へぇ……」ピクッ

黒井「……」

麗奈「ねえちょっと、アンタ」

黒井「なんだ、戦闘中だぞ」

麗奈「アイツ、菜々のとこに行った大佐んとこのガキ、ちょっと面白いんじゃない?」

黒井「そんなことは知らん。成果さえ出れば何でも構わん」

麗奈「へぇー……いいじゃん、あのオヤジよくあんなモン用意したわね」

麗奈「マニューバは……戦闘中に軌道計算してるわけか。マルチタスクができるなら大したもんじゃない」

麗奈「目も良さそうね。蜂も単機で捌いているし……あーあ、菜々もぺーぺーにフォローされちゃって……いいじゃないの、アイツ」ニヤニヤ


美優(P少尉……よかった、大丈夫そう……)ホッ……

楓「P少尉、ビーム砲のエネルギー残量がありません、通常兵装に切り替えて対応してください」カタカタカタッ!

楓「菜々さん、機銃も弾切れになります。P少尉と合流して戦闘を……」

楓(……問題なさそう)カタカタカタッ!

……
…………

今日はこれで終了します

ところでみなさん、今日はデレステの月末限定に奈緒とフレデリカが、モバマスのほうには楓さんとイヴと加奈ちゃんが来ていますね。
特に奈緒はプールでの尻からの可愛さ路線で攻めてきてダメージを与えてくるので是非お迎えしましょう。>>1は全力を尽くしたのですがダメでした。

――数十分後、ユミルS-01(カタパルト)

パシュンッ!

P「ふぅ……」フワッ

菜々「Pーしょーさー!」フワッ

P「安部中尉、お疲れ様です」

菜々「やっ、やりましたぁっ! やりましたよ! ラピッドストライカー隊の初出撃、大成功ですっ!!」フワフワ

P「ええ、他の小隊は一部被弾もあったみたいですけど、無事に終わってよかったです」

菜々「イェーイ!」ブンッ!

P「……?」

菜々「い、イェーイ!」ブンッ!

P「……ああ」スッ

菜々「わーい♪」パァンッ!

P「出撃から戻ってハイタッチなんて中々やらないので……」

菜々「いいんですよぉ、こういうのはノリよくやりましょうよ!」

P(ま……こういうのもいいか)

P「でも出撃してテンパらないでくださいよ」

菜々「あっ、あれは部隊の初出撃だったからで……ふ、普段はちゃんとやってますからぁー!」

P「まあいっか……それじゃ戻りますか」

菜々「そうですね。機体も整備班に渡さなきゃいけませんし」

……
…………

――1時間後、ユミルS-01(格納庫)

楓「リニアカノンの使い勝手はどうでしたか?」

P「総発射数が少ないから使い勝手が悪いですね。すぐエネルギー切れになるのがダメですね」

P「慣れるとグラムよりは当てやすくなるとは思いますし、狙いは付けれるからスコープはいらないかなぁ……」

菜々「2門で射撃できるのは便利そうですけどね」

楓「スコープはいらないっと……」カタカタカタッ!

P「安部中尉、機銃のほうは?」

菜々「あれは使いやすかったですねー。混戦だと立体機動戦闘をする機会も増えますし、ただ射角がもうちょっと欲しいなと……」

楓「射角がほしいっと……」カタカタカタッ!

菜々「次の出撃はどうしますか?」

菜々「次も是非! と言いたいところですけど、機体整備もありますからね。1回お休みです」

P「それじゃあいまのうちに機体の調整でもしておくか……」

菜々「あ、でも機体調整の前に試作兵装の稼動評価上げておきましょう。どこかで場所取ってやりたいですけど……」

P「さすがにこのタイミングで格納庫に居座るのはダメか……会議室使いますか?」

楓「3人で会議室を使うのも……あ、そうだ」

楓「P少尉の部屋に行きませんか?」

P「え」

菜々「あ、いいですね。そうしましょうか」

P「いや……俺の部屋ですか?」

楓「はい……ダメですか?」

P「別に、構いませんけど……俺の部屋ですか」

菜々「ナ、ナナのお部屋はちょっと……お、乙女の秘密といいますか……」

P「はぁ……そうですか」

楓「私もちょっと……お部屋に誰かに見られるのはちょっと恥ずかしくて……」

P「あー、酒瓶が転がっているとか?」

楓「……」

P「あっ、す、すみません」

楓「ちゃんと……片付けてる、はず……です」

P(転がってるのか……)

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(メインブリッジ)

黒井「サブブリッジでの監視は続けさせろ。レーダーの採取パターンは随時変更しておけ」

「了解です。サブブリッジに通知出します」

美優「えっと……SN-03からの報告を受信……現在はこちらの整備班と合わせて艦チェック作業を行っています」

楓「さて、と……黒井大佐」ガタッ

黒井「なんだ」

楓「隊のブリーフィングがあるので少し席を外します」

黒井「そうか」

美優「高垣中尉、どちらに……?」

楓「ちょっとPさんのお部屋に行ってきます」フワッ

美優「そうですか……」

楓「戻ってくるまでの間、お願いします。それじゃあ」

パシュンッ!


美優「……え?」ガタッ!


……
…………

――ユミルS-01(通路)

「中尉、お疲れ様です」

楓「あ、どうも……お疲れ様です」フワッ

「これから休憩ですか? 俺のほうも休憩なんで、もしよければ一緒に食堂でもいきませんか?」

楓「すみません……これから、P少尉のお部屋に行くので……」

「は?」

楓「それじゃあ、失礼します……」フワッ

楓(誰かしら、あの人……?)


……
…………

――1時間後、ユミルS-01(Pの部屋)

P「評価報告、こんな感じでいいですか?」カタカタカタッ!

菜々「まーそうですね。とりあえずこれでオート・クレールに渡しましょうか」

楓「……」キョロキョロ

P「これ出撃したら毎回書かなきゃダメなんですか?」

菜々「これがお仕事ですしねぇ……」

P「面倒くさ……」

楓「……」カパッ、カパッ

菜々「というわけでP少尉、出撃後は忘れずに評価報告書を書いてくださいね! 隊長からの命令ですよ!」

P「あ、それずるくないですか? せめて交代で書きましょうよ」

菜々「いえいえ、これも若いうちのお仕事だと思って……」

楓「……」ゴソゴソ

P「……あの、高垣中尉」

楓「はい?」

P「人の部屋の冷蔵庫漁らないでくれませんかね。部屋の冷蔵庫なんて小さいから物もあまり入ってないはずなんですけど」

楓「え……」

P「何でそんな意外そうな顔されなきゃならないんですか」

楓「その……すみません、私……もうP少尉とは冷蔵庫の中を見ても何も問題ない間柄だと思っていたので……」

菜々「いまの発言どこまで本気で言いました?」

楓「えっと……どこかしら……」

P「……」

菜々「あーでも、ナナも男の子お部屋には入ることなんて無かったのでちょっと色々気になってたり……」キョロキョロ

P「こっち来たばかりですし、特に何もありませんよ」

楓「そうですね……あまり、面白くない冷蔵庫ですね」パタンッ、パタンッ

菜々「こう、枕元やベッドの傍にはお約束のものとか……」ゴソゴソ

P「こいつら……」

菜々「こらっ! 隊長に向かってなんて口の利き方ですか!」

P「す、すみません……って隊長って言葉を都合よく使いすぎだろ……」

楓「P少尉、エナドリもらってもいいですか?」カシュッ!

P「言いながら封開けないでくれませんかね!」

菜々「どうせ次の戦闘は出れませんしテレビでも見ますか?」ピッ!

P「いや待機を……」

ピピピッ!

菜々「あ、通信……はーい、ナナでーっす☆」ピッ!

麗奈『ちょっと菜々、アンタいま暇?』

菜々「あ、麗奈ちゃん。どうしたんですか?」

麗奈『アイツいる? ほら、大佐んとこから来たヤツ』

菜々「P少尉ですか? いま隣にいますよ」

麗奈『ちょっと代わって頂戴』

P「お疲れ様です。何かありましたか?」

麗奈『アンタ暇なら格納庫来なさい。遊んであげるから』

P「遊ぶ?」

菜々「ああ、麗奈ちゃんがシミュレーターやろうってお誘いに来てるんですよ」

P「シミュレーターか……行ってもいいですか?」

菜々「いいですよー。麗奈ちゃんに色々教えてもらったらいいですよ!」

楓「それじゃあ解散ですか?」

P「すみませんがそういうことで……小関大尉、すみませんがよろしくお願いします」

麗奈『それじゃ待ってるからさっさと来なさい』

P「了解です」

……
…………

――ユミルS-01(格納庫前)

P「小関大尉は……」フワッ

「おい」

P「はい?」

「お前、最近こっちに来た安部中尉の部下だよな?」

P「はい、ラピッドストライカー隊のP少尉です」

「楽しいか? 高垣中尉たちと一緒に仕事できてよ」

P「いや……」

「あぁ? 何だって?」

P「だって、報告書押し付けられたり部屋荒らされたりで……2人とも階級が上だからあまり止めてくれとは言い難いし……」

「お、おお……」

麗奈「ちょっとアンタたち、何やってんの」フワッ

「小関大尉……いや、ちょっと新入りに挨拶をと思っただけで……」

麗奈「んっとにアンタ、誰だっけ? えーっと……そうそうジョージ、何新入りにちょっかい出してんのよ」

「ジョージじゃねえ! 俺はジョシュアだ!」

P「ジョシュア……まさか、アメリカのジョシュア中尉ですか?」

「そうだよ……なんだ、お前も俺のこと知ってんのか」

P「木星圏にいた頃、アルヴィスの戦闘記録のログでいくつか中尉の戦闘記録がピックアップされていたものを仲間と見ていたので」

麗奈「はいはいそんなのいいから、ほら行くわよ」

「なんだ大尉、コイツに何か用でもあるんですか?」

麗奈「ちょっとこれから遊ぶのよ。ほらジョンソン、アンタもこんな所でサボってないでさっさと仕事に戻りなさい」

P「し、失礼します」

……
…………

――ユミルS-01(格納庫)

麗奈「アンタそっちのシミュレーターね」カタカタカタッ

P「あの、大尉……」

麗奈「何よ」

P「いや、シミュレーターといっても私と大尉は別小隊ですし、いまマニューバの訓練をしても……」

麗奈「細かいヤツねぇ。いいのよ、コンビでも単独でも好きなようにやっていいから」

P「そうですか」

麗奈「アンタさぁ」ピッ、ピッ、ピッ

P「はい」

麗奈「今日の戦闘、どうだった?」

P「問題なく対応できました。安部中尉にフォローが必要な場面がありましたが……」

麗奈「アンタ1人で動いたほうが楽でしょ?」

P「……いえ」

麗奈「まぁ、あのオヤジに仕込まれたらそうなるか……木星圏なんて練度の低い奴らしかいないし」

P「いまは、安部中尉が隊長です。隊長と共に戦闘に出るのが私の仕事です」

麗奈「あっそ。まあほら、シミュレーター動かすわよ」

P「了解です」

……
…………

――仮想戦闘空間

蜂「……!」ギュンッ!

蜂「……!」ギュンッ!

蜂「……!」ギュンッ!

P「距離2600でF型6、S型2……」カタカタカタッ!

ピピピッ!

麗奈『アンタちょっと1人でやりなさい』

P「待ってください。蜂10匹相手に1人は……」

麗奈『落とせるだけ落としなさい。アンタが落ちたらシミュレーター止めるから』

P「……了解」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P(先頭の4匹が分かれたか……左は粒子砲の発射体制に入っている。中央と右はそのまま来るか)カタカタカタッ!

P「砲撃はさせん。ミサイルで遊んでおけ」ボシュシュシュッ!

蜂「!?」ギュンッ!

P(どうせ距離は詰められる……なら奥にいる奴らと手前にいる奴らは分断させる……!)ギュンッ!

ズドォンッ! ズドォンッ!

蜂「……」ヒュカカカッ!

P(やはり足の速いS型が前に出てきたか……奥の奴らとは距離が空いた。1匹が射程に入ったこのタイミングで……!)ガションッ!

P「ドラウプニル……落ちろ!」ギュオオオオオオッ!!

ドガガガガガガッ!

蜂「!?」ドガアアアアアンッ!!

麗奈『おっ……S型相手でも立体機動勝負には勝てるのね』

P「もう1匹S型を落とせば後は……!」ギュンッ!

蜂「……!」ギュオオオオッ……ズドォンッ!

P「粒子砲……当たるか!」ギュンッ!

ボシュシュシュッ!

P「奥の奴らと合流される前に……!」ギュオオオオッ!!


……
…………

――十数分後、ユミルS-01(格納庫)

パシュンッ!

P「……」ハァ……ハァ……

麗奈「蜂8匹相手にしてG1の被弾判定は2ね。アンタ、面白いじゃない」

P「そりゃあ……どうも……」ハァ……

麗奈「こんなんで疲れてどうすんのよ」

P「単独戦闘で……8匹を同時に相手したことは、なかったので……」

麗奈「ま、こっちでも単独出撃で8匹相手にすることなんて普通は無いわよ」

麗奈「けどアンタ、レイナサマ程じゃないけどちょっと異常ね。菜々でもF型と1対1くらいが限界なのに……大佐から何教えられたの?」

P「……シミュレーターを多めに弄らせてもらったのと……まあ、それくらいです」

麗奈「まーたそういう無茶ばかりできるようなモンになったのね」

P「何の話ですか?」

麗奈「何でもないわよ。こっちの話しだから」

P「そうですか」

麗奈「まっ、でもアンタの戦闘、結構面白いしいいじゃないの! 次はアタシも混ざってあげるから、もう少し遊ぶわよ」バシバシッ!

P「痛っていって……ちょっ、叩かないでください」

麗奈「ほらほら、早く準備しないさい。レイナサマが遊んでやるんだから、アンタも真面目にやりなさいよ!」カタカタカタッ!

P「真面目にやってるっつうの……」ハァ……

麗奈「あぁ? 何か言った?」

P「いえ、何も」

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(Pの部屋前)

美優「……」フワフワ

美優(P少尉……楓さんと2人で何を……しているのかしら……)

美優「……」ウロウロ

美優「……」ウロウロ

美優「……」ハァー……

美優「……っ」ピッピッピッ

ピピッ!

楓『はい』

美優「たっ、高垣中尉の声……あ、あの、三船、です……」

パシュンッ!

楓「三船少尉、どうしたんですか?」

美優「」ピシッ!

美優(せ、制服を脱いで……)

美優「あっ、あ……あのっ、せ……せい、ふ……」

楓「え? ああ、これ……すみません、いま盛り上がっていたところで……」

美優「盛り上がっ……!? P、少……」

菜々「楓さーん、次の番回ってきましたよー」

楓「あ、はーい。すみません……いまちょっと余生ゲームをやってて……」

美優「え」

楓「知りませんか? 定年退職したキャラクターを、ルーレットで決められたマスの分だけ進めて第2の人生を過ごすゲーム……」

菜々「あ、お友達ですか?」

美優(エプロン……?)

菜々「一緒にゲームやりませんかー? ナナがゲーム機ごと持ってきちゃったんですけどぉー」

美優「え、ゲーム……? え……?」

楓「はい……打ち合わせに飽きたのでゲームを……」

美優「あの、P少尉は……?」

楓「P少尉なら格納庫に行ってますけど……」

美優「……どうして、P少尉のお部屋でゲームを?」

楓「……どうしてなんでしょうか」

……
…………

――数時間後、ユミルS-01(艦長室)

黒井「……」

P「……」

麗奈「……ふわぁ、眠い」ゴロゴロ

黒井「何故貴様がここにいる」

P「小関大尉に呼ばれました」

麗奈「シミュレーターも飽きたのよね」ゴロゴロ

黒井「帰れ。作戦行動中に用も無く艦長室に来る馬鹿がいるか」

P「了解です。では……」

麗奈「あ、ちょっと待った。アンタいいもの見せてあげるから」

P「はい?」

黒井「まったく、なんでこのガキが……」ガタッ

麗奈「これね、アタシもこの前……」ピッ、ピッ

黒井「チッ、また採掘場の方面で戦闘があったとは……直接被害は無いからいいが、こうも続くと……」ブツブツブツ


『んふぅ……あぁいいいぃぃぃ、この艶のある柔らかな肌触りこそがセレブである私の……』


黒井「ぶふぅぅぅ!?」ガタガタガタッ!!

P「……」

麗奈「ね? こいつ変態でしょ」

黒井「き、貴様……それは……」ガクガクガクガク

麗奈「え? アンタが前に飲み屋で女の尻に頬ずりして悦に浸ってたときの動画」

P「……」

黒井「な……なんだその目は……なんだその目は!!」

P「いえ、別に」

黒井「言いたいことがあるならはっきりと言え!」ガンッ!

P「いや……これはヤバイんじゃないかと」

黒井「貴様あああああああ!!!!」ガンガンガンガンガッ!!!!

P「何で俺が怒鳴られなきゃならないんだよ!!」

ピピピッ!

大佐『やあ……おや、楽しそうじゃないか』

黒井「貴様!! あの画像は消せと言ったはずだぞ!!」

大佐『画像? ああ……いや、アレ麗奈君の動画の切り抜きだし、私も貰った側だし……』

黒井「消せ! 今すぐ動画を消せええええええ!!」

麗奈「いやさすがにこれ消すのは勿体無いわよ」

P「これ完全にセクハラオヤジですよ」

黒井「上官に向かってなんだその口の利き方はぁ!!」

P「す、すみません。これは擁護が出来ないと思いまして……」

黒井「がああああああああ!!!!」ブンブンブンブン!!!!

大佐『……まあ楽しそうだしいいか。また後で通信するよ』

P「お疲れ様です。大佐」

麗奈「あ、ちょっとアンタ、次通信したときにちょっと話しあるから」

大佐『うむ、分かったよ』ピッ!

……
…………

今日はこれで終了します

――数分後、ユミルS-01(通路)

P「黒井大佐も意外だったな……」フワッ


美優「あっ……」ピクッ

P「お疲れ様です」

美優「あ……P少尉……あの……」

P「はい?」

美優「えっと……その、お部屋に……高垣中尉が……」

P「えっ、あの人たちまだいたのかよ……」

美優「……」ジーッ

P「どうかしましたか?」

美優「いえ……楽しそうにしていらしたので……」

P「俺は楽しく無いけど……しかしあそこに戻るのも面倒臭いな……」

P「少し休憩所で時間潰してるか……それじゃあ少尉、失礼します」

美優「あ、あの……」

……
…………

――数分後、ユミルS-01(休憩所)

ガコンッ!

P「はいどうぞ、エナドリ」

美優「あ、ありがとうございます」

P「ブリッジは交代時間ですか。巣の攻略前だし、あまり戦闘は起きて欲しくないですね」

美優「そうですね……ですけど、アルヴィスのほうから哨戒記録が更新されていて……まだ何度かは戦闘が起きると思いますね……」

P「まあ仕方が無いか……そういえば、少尉はサブブリッジのほうは担当しないんですか?」

美優「わ、私はメインブリッジの専任で来たので……人手が足りないとき以外は……」

P「へぇ……」

美優「……」

P「……」

美優「あの……P少尉」

P「はい?」

美優「……その、P少尉のお部屋、高垣中尉が……その、よくお部屋に来ているんですか?」

P「いや、初めてですけど……」

美優「は、初めてなんですか……よかった……」ホッ

P「いや、この艦に来たのもつい最近ですし」

美優「そっ、そうですよね、来たばかりですもんね。そんなすぐに……」

P「まあ中尉2人は揃って少し面白い人たちだから、上手くやっていけそうですけど」

美優「そうですか……」

P「まあ、いまの隊なら戦闘も結構出ることになりそうだし、こっちとしてはまあよかったというか」

美優「……P少尉は、戦闘に出るのは嫌じゃないんですか?」

P「……」

美優「キラー・ビーとの戦闘も、やっぱり前線のほうが大変ですし……」

P「……まあ、戦闘に出るのは嫌じゃありません」

美優「そうですか……そうですよね、パイロットですし」

P「……」


『彼の両親は?』

『残念ながら……』


P「そうですね。俺は、パイロットですから」

……
…………

――翌日、戦闘宙域

菜々『P少尉、コンビネーションマニューバはI03で行きましょう!』

P「了解です、6連装ミサイルコンテナで前線の弾幕支援ですね」

菜々『その通りです。GNS-007と008小隊の後方についていきましょう』

P「003と004とグループ回線を開きます。こちらRS-02、GRS-1が援護します」ピピピッ!

『こちら003、了解!』

『004だ頼むぞ』

蜂「……」ギュンッ!

蜂「……」ギュンッ!

蜂「……」ギュンッ!

P「宙域の蜂は8匹か……中尉、手前の2匹にミサイルを撒きます」カタカタカタッ!

ボボボボボボシュンッ!!

菜々『続いてこっちも次の2匹にミサイル撒きますよ! 003と004小隊は今のうちに残った4匹の対処を!』

ボボボボボボシュンッ!!

P「後は射撃支援か……」

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(格納庫)

菜々「今回のミサイルコンテナは使いやすいですねー」

P「ミョルニルだけだと援護も難しいですからね。単純に弾数が多くなるし、こっちのは有効範囲も広いですね」

菜々「ただ大きいコンテナを懸架してるから下に回りこまれたときの迎撃が難しいですね。ドラウプニルの稼動範囲が狭くなってますし」

P「配置が悪いですね。使い終わったコンテナをパージできれば身軽になりますけど……」

菜々「一応持ち帰らないと怒られますからね……まあコンテナを小型化してくれればある程度解消できそうですけど」

楓「……」フンフン……

P「まあそこら辺は評価報告に書いておきますか」

菜々「それじゃあP少尉、報告書のほうは……」

P「中尉、お願いします」

菜々「隊長命令ですよ!」

P「いやいや……」

楓(お腹すいた……)

……
…………

――数日後、ユミルS-01(メインブリッジ)

「艦長、レーダーで巣を捕捉しました。距離は4700」

「中規模級の巣が1つ、現在確認できるキラー・ビーはF型11、S型6です」

黒井「ようやくか。フンッ、手間を掛けさせおって……ホーネットはどうした」

「確認できません。まだ巣の中にいるかと」

ピピピッ!

SN-05艦長『大佐、こちらも出撃するぞ。出撃後はユミルの前に出る』

黒井「予定通りにな」

美優「ハッチ開放します……SN-03、SN-05から譲渡されていた艦システムを返却します」カタカタカタッ

楓「各グレイプニール小隊、出撃準備に入ります。ヴェール発進後に順次出撃します」

黒井「これより戦闘を開始する。ミサイル発射管1番から20番にアルヴァルディを装填、21番から30番には多目的粒子減衰ミサイルを装填しろ」

「ミサイル発射管準備します」

楓「SN-03、SN-05配置に付きました。グレイプニール小隊も出撃します」

……
…………

――ユミルS-01、カタパルト(G1機体内)

P「……」ピッピッピッ!

P(現在確認できている蜂の数は17……巣からの増援も勘定にいれれば30はいるか……)

『GNS-001小隊、出撃します』

P「ん、俺たちも出撃か……」

ピピピッ!

菜々『P少尉、聞こえますか?』

P「はい、大丈夫です。拡散ビーム砲塔の確認をしていました」

菜々『接近戦用の兵装ですから、使うときは蜂の動きに気をつけてください。巣との戦闘は初めてって聞いていますけど、大丈夫ですか?』

P「事前にアルヴィスの戦闘記録を見ました。赤いヤツについても確認済みです」

菜々『お勉強熱心ですね。赤い蜂、ホーネットは下部から針を飛ばしてくるので気をつけてくださいね』

P「了解です。中尉も気をつけて」

菜々『ナナはベテランですからね、なーんにも心配することありませんから!』

P「ベテランですか」

菜々『あ゛っ!? い、いえ! ナナはリアルJKなので蜂との戦闘もちょーっとかじったくらいで……』

P「JKなら軍に所属していないんだよなぁ」

菜々『も、もうっ! そんなこと言ってると素行不良で実績つけますよ!?』

P「ちょっ、やめてくださいよ」

ピピピッ!

楓『GRS-1、出撃お願いします』

菜々『あ、はーい。出撃しますね!』

P「了解です」カタカタカタッ!

楓『……あの、P少尉』

P「はい」

楓『頑張ってくださいね』

P「了解です。RS-02、出撃します」ギュンッ!

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)


楓「……あの、P少尉、頑張ってくださいね」

ピピピッ!

楓「……ふふっ」カタカタカタッ


美優「……」


……
…………

――戦闘宙域

P「レーダー情報をいまのうちに……」

ピピピッ!

P「はい、こちらRS-02」

『おいお前』

P「ジョシュア中尉?」

『本命との戦闘だから主要の小隊が出撃している。ちょっとは動けるらしいが、邪魔すんじゃねえぞ』

P「了解です」

『ふんっ』

ピッ!

ピピピッ!

菜々『あ、お話し終わりました?』

P「聞いてたんですか?」

菜々『男同士のお話しということで黙っていたので……ジョルジュ中尉と何かあったんですか?』

P「少し前に絡まれただけです」

菜々『そうですか。っと、それはいいとして……蜂が来ていますよ』

P「こちら側にはF型4、S型1が流れてきましたね。中尉、初動はどうしますか?」カタカタカタッ!

菜々『S-01とSN-05から弾幕支援が飛んできます。それに合わせて展開します。P少尉は蜂の軌道予測ルートを算出してください』

P「了解、弾幕支援に合わせてこちらもミサイルを撃ちます。算出したルートは転送しておきますので飛び出してきたやつらの狙撃は頼みます」

菜々『よーし、行きますよ!』

ギュンッ!

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

「多目的粒子減衰ミサイル、散布しました。粒子散布率は70%です」

「アルヴァルディ発射……着弾確認しました」

楓「ミサイルの着弾に合わせて前線のグレイプニール小隊が戦闘を開始しました。GNS-001からGNS-008小隊、展開しています」カタカタカタッ!

黒井「高エネルギー単装砲レーヴァテイン1番2番を装填! ミサイルの再装填を急げ!」

美優「蜂の巣、近付いています。距離4000……SN-03が前進します」

黒井「こちらは動くな。足を動かすのは強襲艦でいい」

楓「GN-005、F型を撃破しました。RS-01、F型を撃破……」

……
…………

――戦闘宙域

P「中尉!」ギュオオオオオッ!

蜂「!」ズドォンッ!

菜々『当たりませんよ! ドラウプニル!』ガションッ!!

ドガガガガガガガッ!!

蜂「……」ヒュカカッ!

菜々『ゲェーッ! 外したぁっ!?』

P「このっ!」ズドォンッ!!

蜂「……」ブ、ブブ……

ドガアアアアアンッ!!

菜々『うひゃぁっ!? ちょ、ちょっと立体機動しているところにグラムの射撃は怖いですって! 助かりましたけど!』

P「当たらなくてよかったです。こっちは後F型とS型が1匹ずつか……」

ピピッ!

菜々『巣からの増援も来ていますよ! F型もう4匹です!』

P「多いな……被弾して後退している機体もいるのか……」

ピピピッ!

『おいおいビビッてんのか!』ギュンッ!


P「ジョシュア中尉!」

『お前たちがちんたらやってる間にこっちの蜂共は片付けたんだよ! 後ろで援護でもしてな!』

ズドォンッ! ズドォンッ!


ピピピピピッ! ピピピピピッ!

菜々『P少尉!』

P「ん、レーダーが……! ジョシュア中尉!」

『あぁん? なん――』

ズドォンッ!!

ドガアアアアアアアアンッ!!!!


……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

「GN-004ロスト!」

黒井「何ぃ!?」

ピピピピピッ!

楓「……艦長、増援です。巣後方より蜂が出ました」

黒井「何だと!」

楓「恐らく、宙域をさ迷っていた蜂かと……数は9です」

黒井「ええい、蜂の分際で!」ガンッ!

美優「GNS-003、006小隊はGNS-002小隊のフォローをお願いします……前進を止めてください」

美優(P少尉……)

……
…………

――戦闘宙域

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P「ジョシュア中尉! くそっ……増援かよ!」ギュンッ!

菜々『距離を取りますよ! この数で混戦になるとこっちがもちません!』

P「ちぃっ!」ズドォンッ!

蜂「……!」ギュンッ!

P「こういうときにミサイルコンテナのほうを持ってきてたらよかったんだが……!」ガションッ!

ボシュシュシュッ!

菜々『無いものねだりはだめですよぉ! み、味方が浮き足だっててこのままじゃ前線が崩れちゃって――』

ドシュシュシュッ!!

『ぐああああああっ!?』

ドガアアアアンッ!!

ピピピッ!

P「何っ!? レーダー……こいつは、ホーネットか!」

赤蜂「!!」ギュオオオオッ!!

菜々『こんなときに……もうっ! ちょっとユミル、前線がキツイですよぉ!』

ピピピッ!

楓『巣からホーネットが出現したのは確認しています。ミサイルによる弾幕支援を行いますのでその間に距離をとってください』

菜々『P少尉、距離をとってください! G1の速度じゃ赤蜂にすぐ捕まっちゃいますよ!』

P「S型と同等の速度でこの大きさか……! このっ!」ヒュカカッ!

ボシュシュシュ!!

蜂「!?」ドガアアアアアンッ!!

ビビビッ!

P「ミョルニルを撃ち尽くしたか……チッ、周りのグレイプニールも立体機動戦闘から抜け出せていない……それなら!」カタカタカタッ!

ピピッ、ピピッ!

菜々『ちょっと少尉!?』

P「周りの戦闘状況を見てもユミルからの弾幕支援はあまり期待できません。いっそこっちから立体機動戦闘を仕掛けます」ギュンッ!

菜々『え゛え゛っ!? ちょ、ちょっとやめてくださいよ!』

P「中尉は射撃支援をお願いします。どうせなら拡散ビーム砲塔も使い潰しますよ……!」ピピピッ!

蜂「!!」ギュンッ!

蜂「!!」ギュンッ!

P「射程距離はこれが限度か……上は取らせん!!」ギュンッ!

ズバァンッ!! ズバァンッ!!

蜂「!?」ドガガガガガァンッ!

P「当たった……思った以上に範囲が広い。この状況なら味方を巻き込む可能性が……!」ギュンッ!!

ピピピッ!

麗奈『ちょっとアンタ!』

P「小関大尉!?」

麗奈『根性あるじゃないの! そのまま突っ込みなさい!』

P「は?」

麗奈『は? じゃないわよ! ほら、さっさとやる!』

菜々『え!? ちょっと麗奈ちゃん!』

麗奈『菜々! アンタはコイツの援護しなさい! レイナサマのことは気にしなくていいわよ!』

菜々『いやいやそういうお話じゃなくて!』

麗奈『アンタたちがしょーもないから手貸してやるのよ! ありがたく思いなさい!』

P「了解!」ギュンッ!

菜々『あーもう!! ナナはこんなところで落ちたくないんですけどぉ!』ギュンッ!

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

麗奈『ちょっとアンタ、これから菜々たちと遊びにいってくるから後よろしく!』

黒井「馬鹿者! 何を勝手なことを言っている!」ガンッ!

麗奈『アタシは指揮系統が違うからいいでしょ! ほら、アタシたちのほうでホーネットまで片付けとくから、さっさと他の蜂の相手しなさい!』

P『黒井大佐、増援にきた蜂にGNS-001と002、003小隊が足を止められています。こちらで先行してホーネットを抑えておきます』

黒井「勝手なことをするな!」

麗奈『よっし、それじゃ巣から出てきた蜂を落としながらホーネットのところ行くわよ、付いてきなさい!』

P『了解です』

ピッ!


ピピピッ!

菜々『す、すみませーん大佐……その、後でナナのほうからちゃんと言っておきますから……その、えっとぉ……』

黒井「な、菜々ちゃん……っと、チッ! 後であのガキには覚えておけと言っておけ!」

菜々『は、はーい……』

ピッ!

……
…………

――戦闘宙域

P「小関大尉、こちらの拡散ビーム砲塔の有効射程範囲は……」

麗奈『知ってるから気にしなくていいわよ。それよりアンタ、それ持ってるんだから雑魚の片付けはやっておきなさいよ!』

ギュンッ!

麗奈『あと、OPFにしっかり付いてきなさい!』ズドォンッ!

P「立体機動もしてF型の処理もしてで無茶を言う……やってやるよ!」ピピッ!

ズバァンッ!! ズバァンッ!!

麗奈『雑魚が調子に乗ってんじゃないわよ!』ギュオオオオオッ!

ドガガガガガッ!!

蜂「!?」ドガアアアアンッ!

菜々『ちょっと2人とも前に出過ぎですよー! ナナが追いつけないんですけどぉ!』

麗奈『しっかり付いてきなさい!』

P「中尉、左から1匹F型が来ています! 対処お願いします」カタカタカタッ!

菜々『もぉー! もおおおおおお!』

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

楓「小関大尉のOPF、GRS-1小隊、巣から出てきた蜂と交戦中、既存の蜂と増援に来た蜂の群れと距離が空きました」カタカタカタッ!

黒井「アルヴァルディ発射だ! 前線の足並みを揃えさせろ!」

楓「P少尉たちが奥の敵を引きつけているいまのうちなら……」

「了解しました。アルヴァルディ、発射します」

美優「P少尉……大丈夫かしら……」

「アルヴァルディ……着弾確認、各グレイプニール小隊、キラー・ビーの群れと距離をとります」

楓「艦長、GRS-1小隊が間もなくホーネットと戦闘を開始します。蜂の巣への対応はどうしますか?」

黒井「ヴェールに前進の指示を出せ。射線を確保した後、主砲で巣の破壊をさせろ」

「了解です」

……
…………

――戦闘宙域

P「グラム発射!」ズドォンッ!

蜂「!」ドガアアアンッ!!

P「S型は落とした! あとは……」

赤蜂「……!」ギュンッ!

麗奈『次はアンタの番よ赤いの! 菜々!』

菜々『はい! ミョルニル発射……これで最後ですよ!』ボシュシュシュッ!!

赤蜂「!」ギュンッ!

P「速い……!」

麗奈『止まるんじゃないわよ! あと、針には気をつけなさい!』

P「了解!」ギュオオオオッ!

赤蜂「!」ズドォンッ! ズドォンッ!

P「粒子砲……ぐおおおおお!!」ガガガガガガッ!!

菜々『少尉! 大丈夫ですか!?』

P「立体機動ではG1だと厳しいか……!? 外装一部破損、稼動には影響ありません!」カタカタカタッ!

麗奈『コイツ!』ギュンッ!

赤蜂「……!」ヒュカカカカッ!

麗奈『来る……!』

赤蜂「!!」ドシュシュシュッ!!

麗奈『レイナサマが針なんかに当たるわけないでしょ!』ギュオオオオオッ!!

P「あれが針か……しかし動きが速い……それなら!」ガションッ!

ギュオオオオオオッ!!

菜々『P少尉!』

P「安部中尉! 射撃で転送したポイントにホーネットを誘導してください!」カタカタカタッ!

ピピッ!

菜々『ええっ!? もうっ!』ズドォンッ! ズドォンッ!

赤蜂「……!」ギュンッ!

麗奈『アンタ、下に回りこまれてるわよ!』

P「問題ない!」カタカタカタッ!

赤蜂「……」ヒュカカカカカッ!

P「G1でも来るポイントが分かれば関係ない!」ガションッ!

赤蜂「!!」ドシュシュシュッ!!

P「ドラウプニル!」ドガガガガガガッ!!

ガキキキキィンッ!!

麗奈『コイツ……針を機関砲で撃ち落して!』

P「拡散ビーム砲……そのまま落ちろ!」

ズバァンッ!! ズバァンッ!!

赤蜂「!?」ドガアアアアアアンッ!!

菜々『ほ、ホーネットを撃破した……』

P「よし……!」ギュンッ!

麗奈『アンタよくやったわね! こっちの仕事は終わりよ、巣はヴェールとユミルに任せなさい!』

P「了解……戻りがてらに残りの蜂の対処をしましょう」

麗奈『バカ、ミサイルも使い切って拡散ビーム砲塔の使いすぎで機体のエネルギーもだいぶなくなってるでしょ。大人しく帰るわよ』

菜々『そっ、そうですよ! 後は他の小隊にお任せして帰艦しましょう、隊長命令です!』

P「……了解」

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(カタパルト)

パシュンッ!

P「……ふぅ」


菜々「P少尉!」フワッ

P「安部中尉……」

ギュウウウウウッ!!

P「いっ、いてててててて!?」

菜々「ダメじゃないですか! いくら前線が崩れそうだからって、無理して前に突っ込むなんて!」

P「す、すみません……とはいえ混戦状況だと艦砲射撃や援護も期待できなかったので、それならいっそと……」

菜々「でもも何もありませんっ! ナナは隊長で、P少尉には落ちてもらいたくないんですから、こういうときは隊長の言うことをしっかり聞いてください!」

P「り、了解です……」

麗奈「なーにアンタたちは乳繰り合ってんのよ」フワッ

菜々「どぅわっふ!? な、ナナは乳繰り合ってなんかいませんよぉ! そういうのは若い子たちがすることであってですね……!」

麗奈「はいはい分かった分かった。で、アンタ、結構やるじゃない。シミュレーターのときよりもいい動きしてたわよ」

P「ありがとうございます……ですが、増援の対処が遅れてジョシュア中尉が……」ググッ……

麗奈「……ま、アイツも腕は悪くなかったんだけどね。残念だわ」

ピピッ!

菜々「……ほ、ほらほらぁ、戦闘も終わったみたいですよ! コンディショングリーンで、巣も破壊できたみたいです! 作戦は成功しましたから」

P「……そうですね。成功して、よかった」

菜々「はいっ、ラピッドストライカー隊、色々あったけど今回も作戦成功です! お疲れ様でした」

P「はい、ありがとうございます」

菜々「というわけで、ナナたちは一足先に帰艦した身ですし、さっさとグレイプニールを整備班に引き渡しましょうか」

麗奈「そうね。戻ってくる奴らの邪魔になるし」

P「……」

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(艦長室)

黒井「馬鹿者!!」

P「……」

麗奈「アーッハッハッハ! 怒られてやんの!」

黒井「貴様は黙っていろ! 貴様如きが隊の動きを乱してどうする! 何か問題が起きて、他部隊に被害が出た場合は安部中尉の責任にもなるのを分かっているのか!」

菜々「ま、まあまあ大佐、何だかんだでナナも一緒にハッスルしちゃったので……」

麗奈「そーよ、別にいいでしょ。それに、レイナサマが連れ回したんだから菜々のせいでもないし」

P「……罰則は受けます」

菜々「黒井大佐……P少尉にはナナのほうからしっかり言っておきますから……その、許してあげてくれませんか……?」ウルウル

黒井「うっ……」

P「……」

黒井「……戦闘記録から、ラピッドストライカー隊で実施している試作兵装の検証も、今回は十分なデータが取れたと運用から速報で言われている」

黒井「罰としてホクドウに帰還するまでの間、清掃班の雑用をやっておけ!」

P「了解しました」

麗奈「ま、掃除くらいならいいんじゃないの?」

菜々「大佐ぁ! ありがとうございますっ!」

黒井「いいか貴様、決して安部中尉の頼みを聞いたわけではない! 私の艦にいる間は勝手な行動は許さんぞ!」

P「はい」

黒井「勘違いをするなよ、安部中尉の頼みだからではない!」

P「分かりました」

麗奈「はいはい、ほらもういいでしょ。Pも菜々も、もう帰っていいから評価報告も済ませちゃいなさい」

菜々「は、はーい。P少尉行きましょうか。黒井大佐、失礼しますっ」

P「失礼します」

黒井「フンッ!」

パシュンッ!

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(Pの部屋)

楓「えっ……清掃班のお仕事、ですか?」

P「まあ……」

楓「そんな……P少尉、頑張ったのに……」

菜々「ナナがしっかり麗奈ちゃんとP少尉を止めないで一緒になってハッスルしちゃったからなんですよぉ……」

P「とはいえ、仕方が無いです。報告書終わったら清掃班のほうに行ってきますので」カタカタカタッ!

楓「そうですか……せっかく作戦も成功したのに、何だか残念ですね」

P「無事に終わっただけで十分です。機体のほうも外装修理だけで済みそうですし」

楓「P少尉が被弾したとき……私、ちょっと焦っちゃいました」ガチャッ!

楓「スクリーンで状況を見たときは、蜂の群れの中にいましたし……」カシュッ! ゴクゴク

P「あの、勝手に冷蔵庫開けてエナドリ飲まないでくれませんかね」

楓「違いますよ、これはスタドリです」

P「どっちでもいいので飲まないでくれませんかね……」

菜々「まあまあ、スタドリでもエナドリでも、後でナナが買ってあげますよ!」

菜々「色々ありましたけど、蜂の撃破数もP少尉が凄く伸びていましたしね! ナナから頑張ったで賞をあげちゃいます!」

P「俺は子どもか……まあ、ありがとうございます」

楓「お掃除、頑張ってくださいね」ゴクゴク

P「はぁ……SN-05でも清掃班の仕事やったばかりだっていうのに……」

……
…………

今日はこれで終了します

――1時間後、ユミルS-01(通路)

P「……」ウィーン……



美優「……あら?」ピクッ



P「……」ウィーン……

美優「あの、P少尉……?」フワッ

P「あ、お疲れ様です」ウィーン

美優「……何を、やっているんですか?」

P「清掃です」シュゴー

美優「ど、どうして……ですか?」

P「まあ、戦闘行動のときの罰則で」シュゴー

美優「そんな、酷い……あの戦闘、P少尉と安部中尉が頑張ったから何とかなったのに……」

P「結果的に上手くいっただけで、仕方ないといえば仕方ないですよ」ウィーン

美優「でも……」

P「気にしてくれてありがとうございます。まあ……俺も気分転換のつもりでやっているから大丈夫ですよ」

美優「そ、それなら……あとで一緒に、し、しょく……」

P「はい?」

美優「食堂……行きませんか?」

P「……それじゃあ、終わったらメール送ります。時間が合ったら行きましょうか」

美優「は、はいっ」

P「じゃ、俺は次の場所に行きますから」

美優「が……頑張ってくださいね」

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(休憩所)

パシュンッ!

P「失礼しまーす」

「お、少尉何やってんだ?」

P「清掃です。黒井大佐から罰則もらっちゃって……」

「あー……俺たちは助かったっちゃ助かったんだけどな。でも艦長なら説教しちまうか」

P「そんな感じですよね。それに、ジョシュア中尉も……」

「中尉か……中尉は残念だったな。中尉の身辺整理は同じ隊のほうでやっているみたいだが」

P「……」

「ま、お前はあまり気にするなよ。お前はお前で十分やったよ」

P「ありがとうございます」

「というわけだ、掃除は頑張れよ」

P「了解です」

……
…………

――更に1時間後、ユミルS-01(艦長室前)

P「次は艦長室か。説教貰った後で行くのもな……仕方ないか」


黒井『貴様は黙っていろ! 貴様如きが隊の動きを乱してどうする! 何か問題が起きて、他部隊に被害が出た場合は安部中尉の責任にもなるのを分かっているのか!』


P「……ま、大丈夫か。黒井大佐、見た目通りしっかりしてるし」

P「失礼します。清掃にきました」ピピッ!

パシュンッ!


……
…………

――ユミルS-01(艦長室)

パシュンッ!

P「…………」


菜々「はぁーい♪ それじゃあこれから、このとーっても苦いコーヒーをナナの魔法であまーくしちゃいまーす☆」

黒井「やったぁ!」

菜々「黒井大佐も、ナナと一緒に魔法を掛けてくださいね♪ いきますよー……せぇのっ!」

菜々「あまーいシロップを混ぜてー……ミミミンミミミンウーサミーン☆」

黒井「ミミミンミミミンウーサミーン☆」

菜々「ミミミンミミミンウーサミーン☆」

黒井「ミミミンミミミンウーサミーン☆」

菜々「くるくるかき混ぜてー……ウサウサウーサ?」

黒井「ウーサミーン☆」


P「……」ゴトッ!


菜々「あ……」ピタッ

黒井「……」ピシィッ!


P「……」ガサゴソ

P「失礼します」

パシュンッ!

……
…………

――ユミルS-01(通路)

シュッ!!

P「ガイドコンベア早く動けよおおおお!!!!」


パシュンッ!

黒井「待て貴様あああああああ!!!!」シュバッ!!


P「ひぃっ!?」ビクゥッ!

ガシィッ!!

黒井「何を見た……何を見たああああああああ!!!!」ブンブンブンブンブン!!

P「俺は何も悪くないだろおおおおお!!!!」ガクガクガクガクガクッ!!



菜々「あちゃー……」


……
…………

――数分後、ユミルS-01(通路)


P「やべえよアレ……てか俺は被害者だろ……」ケホッ……

P「っとに、安部中尉も何やってんだか……まあいいや、次の場所は……」ピピッ!

P「浴場か……」

P「……」



P『ここか。さて、消耗品の交換から――』

美優『ふぅ……』



P「……まあ、気をつけるか」


……
…………

――ユミルS-01(浴場前)

P「よし」

ピピッ!

P「清掃でーす。失礼しまーす」



P「……反応が無い、つまり誰もいない。いたとしてもシャワー使っている最中のはずだ。よし」


……
…………

――ユミルS-01(浴場)

パシュンッ!

P「いまのうちにさっさと済ませて……」


パシュンッ!

楓「はぁ……」プルンッ

ピチャッ……


P「……」

楓「……あ」

P「失礼――」クルッ


<ソレデサー、ツギノコウタイノトキニ……

<ハヤクシャワーアビテゴハンニ……


楓「……」ピクッ

P(しまった、他の人間が……!?)

楓「こっち……」グイッ!

P「あっ……」

パシュンッ!

……
…………

――浴場(個室シャワー内)

ピッ!

シャー……

楓「一応シャワー出しますけど……濡れないように、気をつけて……あと静かに……」

P「……は、はい」


パシュンッ!

「レーダー記録もアルヴィスに無かったし、ようやく戦闘も休憩かぁ」

「早くホクドウ戻りたいねー。あたし休暇申請出してるんだけどさ」

「何か予定あるの?」

「ほら次のライブ、スクリーンのほうで見たいし」

「あー、あたし抽選漏れちゃったんだよね」



P(無駄話してないで早くシャワーでも入ってくれよ……!!)

楓「あの……あまり、動かないで……」モゾモゾ


P「す、すみません……」

楓「あっ、み、見ちゃダメ……」ギュウウウウッ……!!

P「な……なんで……だきつくんです……か……」ギギギギ……

楓「そ、その……こっちのほうが、見られないと思って……」ハァ、ハァ……



「あっ!? あたしブリッジに端末忘れてきちゃった」

「えー、持ってこないとダメじゃん」

「もうめんどくさ……取りにいかないと」

「はいはい、それじゃ早く行こっか」

「むー……」

パシュンッ!

P「……」

楓「……」ピッ!

パシュンッ!

楓「……誰もいなくなりましたね」キョロキョロ

P「そ、そうですか……」

楓「いまのうちに……どうぞ」

P「は……はい、失礼しました……」

楓「丁度、ブリッジの交代時間の直後なので……他の人もまだ来るでしょうし、少し待ってから来たほうがいいかもしれません」

P「そうでしたか。それじゃあ……そうします」

楓「はい……あの」

P「はい?」

楓「……あの、あまり見ないでもらえると……嬉しいといいますか」モジモジ

P「失礼しました」ダッ!

パシュンッ!


楓「……ゲロ吐いたときより、よっぽど恥ずかしい……わね」


……
…………

――ユミルS-01(通路)

P「やべえ……やべえよ……」

P「というか……制服少し濡れてしまった……」キョロキョロ

P「くそぉ、なんでこう……はぁ、いまのうちに倉庫のほう行くか……」フワッ

P「浴場は後でまた行くとして……にしても」


美優『ふぅ……』

楓『はぁ……』


P(小さかったな……)



……
…………

――数時間後、ユミルS-01(Pの部屋)

ドサッ!

P「ようやく終わった……SN-05より相当広いから余計しんどかった……」ハァ……

P「……」ゴロゴロ

P「疲れた……疲れた……」


P「……1日に2回、多くて4回。安全航路から外れたら、土星圏はこれだけ戦闘するのか」

P「そうだよな……アルヴィスの戦闘記録も頻繁に更新されているし、そういうもんなんだよな」

P「俺は……そういうところに来たかったんだよな」


『そうか……軍に入りたいかね。私は止めないよ。キミがそうしたいなら、やれるだけやってみるといい』

『少しくらいなら、背中を押してあげよう』


P「……」

ピピピッ!

P「ん……」ピクッ

P「……はい、Pです」ピッ!

美優『あの……P少尉、三船です』

P「少尉……お疲れ様です」

美優『あの、その……まだ、お掃除中ですか……?』

P「おっと……いえ、ついさっき終わって部屋に戻ったばかりです」

美優『そ、そうですか……それなら、あの……』

P(そういや食堂に行くって話しだったな……)

P「少尉、ブリッジの交代時間は大丈夫ですか?」

美優『は、はいっ』

P「それじゃあ食堂行きましょうか。もしかして、もう済ませましたか?」

美優『いえっ! ま、待ってた……ので、い、行きます』

P「分かりました。それなら食堂に行ってますから、後は席のほうで」

美優『は……はい……』

ピッ!

P「はぁー……よし、行くか」

……
…………

――数分後、ユミルS-01(食堂)

P「さて……三船少尉は……」


美優「P……P少尉」フワッ


P「お疲れ様です。次の交代時間、いつ頃ですか?」

美優「まだ……しばらくはお休みなので……」

P「それならゆっくりしましょうか。こっちも掃除で疲れて……」

美優「そ、そうですね。それなら、ゆっくりお休みしましょう」

P「さーてと、飯何にしようかな……」

美優「……」


……
…………

――数分後

P「え、次ホクドウに戻ったらしばらく出撃はないんですか?」

美優「はい……S-01も今回の作戦前に、長期哨戒任務を終わらせた後ですし……艦のメンテナンスもあるみたいですから」

P「へえ、その間俺たちはどうするんですか?」

美優「S-01が受け持っていた宙域は、次は今ホクドウの防衛任務についているS-04が哨戒するみたいなので……そこと交代になりますね」

P「こっちは艦の遣り繰りも大変だな……まあ、出ずっぱりも無理があるし、防衛任務なら仕方ないか」

美優「私も……しばらくSN-05は外に出ていたので、久しぶりに休暇が取れそうです……」

P「大変ですね。俺もこっちに来てからは他人事じゃないけど、休暇はしっかり休まないとな……」モグモグ

美優「……」

P「……」モグモグ

美優「そ、そういえば」

P「はい?」

美優「P少尉……あの、ホクドウは……町のほうには、行きましたか?」

P「え、まぁ、行ったには行きましたけど……夜にちょっと立ち寄ったくらいで、ほとんど工業ブロックと居住ブロックにしか行かなかったですね」

美優「そうですか……」

P「でもホクドウの町は他のコロニーと違って縮小しているんですよね? 町のほうって何があるんですか?」

美優「一応、他のコロニーと同じく必要な施設は大体ありますよ。軍用施設の割合が多いからその分、一般人用の市街地とかが減らされているだけなので」

P「んー……それじゃあ休暇取れたら町のほうに行ってみるか……」

美優「……そっ、それ、じゃあ」

P「ん」ピクッ

美優「わ……私と、町まで……行きませんか? 時間が、合えば……ですけど」

P「んー……まぁでも、ナシヤマと同じような町の配置なら困ることもないしな……」モグモグ

美優「……そ、そうですか……そう、ですよね」

美優「Pさんも……お休みの日は、ゆっくりしたい、ですよね……」

P「まぁ、一緒に町まで行く知り合いもこっちにいないし……それなら、一緒に町に繰り出しますか?」

美優「……」ピクッ!

P「防衛任務があるなら少尉は管制室の業務があるんでしょうけど――」

美優「い、行きましょう!」ガタッ!

P「……はい」


……
…………

――翌日、ユミルS-01(格納庫)

菜々「え、ホクドウに戻った後の休暇申請ですか?」

P「ええ、どうすればいいですか?」

菜々「部隊から申請出しますからね。どうしましょうか……あー、楓さんに出してもらった回してくれると思いますよ」

P「了解です。出しておくか……」

菜々「あら、お休み取るんですか」

P「はい」

菜々「何か予定でも?」

P「ホクドウに戻ったら町のほうにでも行こうかと」

菜々「非番のときに行っちゃえばいいんじゃないですか?」

P「まあ、ナシヤマにいたときから休暇申請も出してなかったし、丁度いいかなと」

菜々「あらら、お仕事熱心ですね……まあナナの部隊は出撃以外は暇してますからね。いいと思いますよ」

P「それじゃ休暇日決めたら連絡します」

菜々「はーい。よし、ちょっと休憩しましたしもう1回シミュレーター動かしましょうか」

……
…………

――数日後、戦闘宙域

菜々『P少尉、誘導弾残ってますか!』ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P「さっき1発打ち込んだのであと1発分なら!」カタカタカタッ!

ピピッ!

蜂「……」ブブゥゥゥンッ!

P「そこだ!」ズドォンッ!

ドガアアアアアアンッ!!

菜々『蜂が集まるポイントで打ち込みましょう! 巻き込んで一気にドカンの流れで!』

P「了解、残りの蜂は5匹か……飛行ルートを算出して発射ポイント割り出します。中尉は各小隊に通知を」

菜々『はーい!』

P「この戦闘が終われば安全航路圏だ、1匹も逃さんぞ……!」


……
…………

――数時間後、ユミルS-01(Pの部屋)

菜々「はー……ようやく安全航路に戻れましたねぇ……」ボフッ!

P「人の部屋のベッドに転がらないでくれませんかね」

菜々「まあまあ、そう言わずに……」ゴロゴロ

楓「P少尉、今回使った兵装の評価報告のほうを……あれ、エナドリ入ってませんよ?」ガチャッ!

P「ええ、また俺ですか? ていうかあなたたちが俺の部屋の冷蔵庫漁りまくるから全部なくなりましたよ」

楓「スタドリしかない……まあいいです」カシュッ! ゴクゴク

菜々「えーと、この前のセーブデータは……」ポチポチ

P「ゲームやるなよな……」

P「……あ、そうだ高垣中尉」

楓「はい?」

P「ホクドウに戻った後なんですけど、休暇申請出してもいいですか?」

楓「お休みですか?」

P「ええ、ちょっと町まで出かけようかと思って」

菜々「次のダンジョンは……」

楓「あらいいですね。それなら申請は承認しておきますから、ホクドウに戻ったら一緒にわた――」

P「お願いします。三船少尉と約束していたので」

楓「し……」

菜々「……!」ピクッ

P「特に目的はないんですけど、まあこっちのコロニーの町も見て歩こうかなと」

菜々(それは……もしかしなくてもデート……これが若さ……!)

楓「……?」

P「……」

楓「えっと、休暇申請ですか?」

P「はい」

楓「……ええと、私は……その申請、承認しなきゃダメなんですか?」

P「え、まあ、出来ればそうしてもらえると……」

楓「……」

菜々「……」ポチポチポチッ!

P「……ん? あれ、もしかして部隊のほうで何かありましたか?」

楓「いえ、何も……」

楓「……じゃあ、承認……しておきます」

P「すみません、お願いします」

楓「……」

菜々「あっやばっ! 全滅しそう……!」ポチポチッ!

……
…………

今日はこれで終了します

――数日後、ユミルS-01(Pの部屋)

菜々「P少尉ー、ナナのドリンク取ってくださーい」ポチポチ

P「はいはい……」ガチャッ

菜々「おおおっと……ここで必殺技出せないと……」

P「てか人の部屋でゲームやってないで自分の部屋に戻ればいいじゃないですか」ポイッ

菜々「どうせ部隊行動するときはここに集まったりしますしいいじゃないですか、楽ちんで」

P「俺の休憩時間を潰さないでくれませんかね」カタカタカタッ

菜々「まあまあ……ところでP少尉、何やってるんですか? 1つ前に出撃したときの評価報告って出してますよね?」

P「いや、週報書いてて」カタカタカタッ

菜々「あー、まだ提出してなかったんですか? いけませんねぇ、毎日ちゃんと書かないと」

P「いや……毎日書いてたんですけどね、一応。だけど……」




楓『ここの書き方がダメです。実稼動時間とローカルに溜まってる稼動履歴が合ってません』

楓『あっ、ここもダメです。部隊行動でシミュレーターやブリーフィングをやってるなら、短い時間の分も全部内容は書いてください』

楓『あとは……えっと……ここ、書き方が何となく好みじゃないので直してください』



P「ダメ出しされまくったんですよね」

菜々「楓さんなら書式くらい綺麗にしてくれますけどね、ナナのも手入れてもらってますし」

P「俺と中尉との差が激しい……まあ俺はこっち来たばかりのぺーぺーだし、思ったより厳しい人だったんだなぁ」ピッ、ピッ、ピッ……

菜々「ふーむ……楓さんにしては珍しい」

P「明日ホクドウに戻りますし、今日中には終わらせたいんですよね」

菜々「そうですよね。艦はメンテに出しますし、本部に移るときの個別認証手続きもさっさとやっておきたいですからね」

P「そうでなんですよね。それに作業残して三船少尉との約束も飛ばしたくないし」

菜々「あー、デートの話しですか。ホント若い子は見せ付けちゃって……」

P「デートじゃないです。一般施設の案内ついでに適当に町に繰り出すだけです」

菜々「人、それはデートといいます。楓さんに案内してもらったときは軍用施設と工場だけでしたっけ?」

P「なのでいい機会かと。利用する機会はあまり無いと思うんですけどね」

菜々「あーあ、ナナもP少尉みたいにデートとかしてみたいですねー。あ、でもやっぱりやめとこ」

P「どっちなんですか」

菜々「やっぱりナシ、ナシで! ほらぁ、やっぱりこういうのって色々やりつくした後でもいいかなとか……」

P「何の話ですか?」

菜々「あ、いや、こっちの話しです……」

P「はぁ……?」

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

「それじゃあ稼動データと測定ログはこっちで更新するから、引継ぎ事項は他にあるかしら?」

美優「えっと……あ、あとホクドウに戻った後の、各班の補給申請リストがまだ全部出ていないので……」

「そっちは後でフォロー出しておくわね。他には?」

楓「ローカルに明日からの各隊毎の一時異動先と活動スケジュールが入っているので、新しく来た分も一覧に追加しておいてください」

「了解、それじゃ交代ってことで」

楓「はい。よろしくお願いします」

パシュンッ!

……
…………

――ユミルS-01(通路)

美優「明日は入港だから……管制室の業務マニュアルを貰って覚えておかないと……その次の日が……」ブツブツ

美優「約束の日だから、休暇申請も出しているし……」ブツブツ


楓「三船少尉」フワッ

美優「あ……高垣中尉、お疲れ様です」ピクッ



楓「……」

美優「……あの?」


楓「三船少尉」ススススッ

美優「はい……」

楓「少し」ススススッ

楓「お聞きしたいことが」ススススッ

楓「あるんですけど」ズイッ!

美優「ちっ、近い……近いです、中尉……」

楓「あ……すみません」

美優「えっと……何のお話し、でしょうか……?」

楓「一時異動の時期に、どこかお休みの日や、非番で時間がある日とかありますか?」

美優「えっ……?」

楓「そうですね……例えば、2日後とか」

美優(2日後……Pさんに約束してもらった日……)

美優「えっと、その日は……」

楓「実は私……三船少尉と一緒に、どこかに、一緒にいきっ……行きたいなと思って……」

美優「えっ?」

美優(噛んだ……)

楓「その、私たち……一緒にホクドウの管制室の業務を振られたじゃないですか。2人だけですし……その、三船少尉と、もう少しお話ししておきたいなと思って」

美優「そ……そういえば、そうですよね……」

美優(確かに……高垣中尉とお話しする機会もそこまで多くないかも……この先のことも考えると、いまのうちに少しでも……でも、Pさんとの約束も……)

楓「私、ホクドウでお気に入りのお店とかあるんです。そういうところとか、一緒に行きたいなと思っているんですけど……ダメ、ですか?」

美優「う……うう……」


……
…………

――数時間後、ユミルS-01(Pの部屋)

P「よーし終わったぁ!」ボフッ!

菜々「あーっ! ちょっとベッド揺らさないでくださいよぉ! 週報できたんですか?」

P「ここ俺の部屋ですからね? ようやく高垣中尉からオッケーもらったんですよ」

菜々「ずいぶん長かったですねー。P少尉、報告書とか書くの苦手ですか?」

P「いやいや、結局評価報告も書いてるの俺ですからね? 今日持っていったらすんなりオッケーもらいましたよ」

菜々「もしかしたら楓さんの機嫌がよかったんじゃないですかね?」

P「そうかもしれません。まあ、終わったし何でもいいか」ゴロゴロ

菜々「うーコイツ強い……ちょっとPさん、2P側やってくださいよぉ」ポチポチポチ

P「俺ゲームとか苦手なんですよ。そういうの動かすの難しいし」

菜々「いやいや、グレイプニールの操縦のほうが全然難しいと思いますけど? ほらほら早くコントローラー握ってくださいよ。隊長命令ですよ」

P「部隊行動外なので聞きませーん、聞こえませーん」ゴロゴロ

菜々「さて、後でP少の活動実績に命令無視、素行不良の実績を入れておかないと……」

P「あ、ちょっと! 卑怯ですよそれ!」

菜々「知りませーん、聞こえませーん。ナナも最近耳が遠くなってきちゃって……」ポチポチ

P「ちくしょう……」

菜々「あ、そうそう、明日はホクドウに戻りますし、ちゃんと準備しておいてくださいね?」

P「艦を降りたら部隊で本部まで移動ですか?」

菜々「楓さんは一緒の部隊ですけど、管制室業務になりますから明日はナナと2人で行きましょう。楓さんのこっちの手続きはナナのほうでやりますから」

P「了解です」


……
…………

――2日後、ホクドウ(ショッピングモール)

P「1つ聞いていいですか?」

美優「は……はい……」



楓「さあ、早く行きましょう。夕方にお店も予約しているんですから」



P「なんであの人がいるんですか?」

美優「それが、その……わ、私は、断ろうと思ったんですけど……」ボソボソ

楓「どうしたんですか?」スススッ

P「あ、いえ……えっと、中尉は今日は……」

楓「暇だったので」

P「え?」

楓「暇だったので」

P「はい」

楓「それじゃあ行きましょうか。あれ、どこに行くんですか?」

美優「……最初はカトーナノカドーに行こうかと思ってました」

楓「お買い物ですね。ふふっ、お酒コーナー行きたいですね、美優さん?」

美優「え? は、はぁ……」

美優(せっかくPさんと一緒に行く場所、決めてたのに……)

P「まぁ中尉、そんな急がなくても」

楓「ダメです」

P「ええええ? 何が……」

楓「今日は非番じゃなくてわざわざ休暇を取っているんですから、オフなんですよ。中尉はダメです」

P「あ、そっち。じゃあ……楓さん」

美優「!」

楓「はい」

P「さっさと行きますか……それじゃあ、三船少尉」クルッ

美優「……」ジー……

P「……」

美優「……」ジー……

P「……美優さん」

美優「は、はいっ、行きましょうか……」ビクッ!

……
…………

――ホクドウ、ショッピングモール(百貨店内)

楓「どうですか美優さん、こっちの服もいいと思いますけど……」

美優「わ、私は、色が派手ですし……こっちのほうが……」

楓「それならこの上着と合わせて……」


P「……」

P(まあ、女2人いればこうなるか……)


美優「それなら楓さんはこのほうが……」

楓「でもそれは……」



P(ま、いいか……あの2人話すのもぎこちなかったし、今日で仲良くなってくれればいいか)

ピピピッ!

P「ん……はい、Pです」ピッ!

大佐『やあ、いま大丈夫かね?』

P「お疲れ様です。今日は休暇なので問題ありませんが」

大佐『休暇中だったか。悪いね、また後で通信したほうがいいかね?』

P「いえ大丈夫です。何かありましたか?」

大佐『巣の攻略戦が無事終わったと報告があってね。どうだったかね?』

P「……そうですね。俺は、こういうところに戻って来たんだと思いました」

大佐『そうか。当時はキラー・ビーこそ観測されていなかったが、キミのご両親も同じように土星圏で任務にあたっていた』

大佐『あと、黒井はキミのことを散々に言っていたが、まあ褒めていたと思うよ。麗奈君は面白いヤツを寄越してきたと言ってきたよ』

P「お2人には同じようなことを言われました。部隊の力になれたのなら、私としてもよかったです」

大佐『更新されたアルヴィスの戦闘記録を見たが、ホーネットとも交戦したみたいだがどうだったかね?』

P「やはり聞いていたとおり、G1での戦闘は少々厳しかったです。速度が圧倒的に足りません」

大佐『ふむ……まあそうなるだろうね。G1か……私からはOPFを渡してやることはできないが……』

P「他部隊もG1で戦闘している者もいます。現状の運用で何とかしていこうかと思います」

大佐『まあ、そうなってしまうか……いや待てよ、そういえばキミはオート・クレールと黒川重工の共同で実施している試作兵装の運用テスト部隊に配属されたね』

P「はい。ラピッドストライカー隊です」

大佐『分かった。しばらく待ってもらうことになるかもしれんが、私のほうで少し手を回しておこう。それまでは頼んだよ』

P「わざわざありがとうございます。まあ、使いやすいモノが来るなら私だけではなく安部中尉も助かります」

大佐『分かった。それじゃあ失礼するよ』

P「お疲れ様です」

ピッ!

P「大佐のほうで何かやってくれるのか……まぁOPFが来るってことはないだろうが」


美優「Pさんっ……す、すみません、お待たせしてしまって」タタタッ

P「ん、ああいいですよ。終わりましたか?」

楓「色々見るだけ見て結局何も買いませんでした……誰かから通信ですか?」

P「いえ、前の部隊で一緒だったヤツからのメールです。特に何かあるわけでもなかったので」

楓「そうですか? それじゃあ、次はどこに行きましょうか」

美優「えっと……次は、シティホールの場所を……」

楓「あら、他の場所でお買い物しないんですか?」

美優「え、でも、元々はPさんの……」チラッ

P「……まあ、俺はいいですよ。店も何があるか分かりませんし、さすがに中に入ってる店はナシヤマにあった店と違いますからね」

美優「そ、それじゃあもう少しお店のほうを……歩きましょうか」

P「了解」

楓「ささっ、行きましょうか」

……
…………

――数十分後

美優「やっぱりぴにゃこら太がいいですよね」

楓「部屋着用のシャツ、これ買っちゃおうかしら……」

美優「Pさんはこの2着のシャツなら、どっちがいいと思いますか?」

P「いや、そのキャラ可愛くないし……俺こっちの猫のキャラクターのほうが……」

美優「……」

楓「……」

P「え」

楓「ダメですね。Pさん、失望しました」ハァ……

美優「残念です……」

P(なんでここまで言われなきゃならんのだ……)


……
…………

――更に数十分後

楓「試供品のお酒が……」タタタッ!

ガシッ!

P「楓さん! お酒はせめて夜にしましょう! ね! ね!?」

楓「Pさん……上官に向かってなんですかその態度は……!」グググッ……!

P「いや昼間からあんなことになるよりは……じゃなかった、ほら、楽しみは夜に取っておくということで……ほら、美優さんも」

美優「えっ? そ、そうですね……楓さん、お酒は……夜まで我慢しませんか?」

楓「美優さんがそう言うなら……ちょっと勿体無いですけど、我慢します」

P「……」ホッ

楓「Pさん? 何か言いたそうですけど……」

P「いえ、何も」

美優「?」

……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(菜々の部屋)

菜々「……」ソワソワ

菜々「……」ウロウロ


ピピッ!


菜々「きた!」ガバッ!

ピッ、ピッ……

菜々「……」


『I@LPの適性判定から、残念ながら――』


菜々「……はぁ」ピッ

ボフッ!

菜々「また適性判定、ダメだったなぁ……」ゴロゴロ

菜々「もう、年齢的にも適性判定受けれなくなる頃だし……」ゴロゴロ

菜々「黒井大佐には色々手伝ってもらってるのに……」

菜々「やっぱり、ダメなのかなぁ」

菜々「でも、まだ適性判定は出せるし……」

菜々「ナナも小隊長になれたし、もうそろそろ……」

菜々「でも、もう1回……受けれる間はせめて……」

菜々「……」

菜々「今頃P少尉、何やってるのかな……そういえば楓さん、今日はお仕事でしょうか……」


……
…………

――数時間後、夕方、ホクドウ、居住ブロック、居酒屋『世紀末歌姫』

「注文は?」

美優「え、えっと……」

P「適当に選びますか?」

楓「生中3つに焼き鳥の盛り合わせと、枝豆、土星揚げ、キャベツ、揚げ豆腐」

P「すみません、あとモツ鍋も」

「へい」

美優「……」

楓「今日1日たくさん歩いて疲れちゃいましたね」

美優「ほ、本当はPさんに町の案内を……」

P「まあ、ほとんどショッピングモールにいましたからね。今度適当に歩き回ってみますよ」

美優「す、すみません……」

「はいよ生中3つ」ゴトゴトゴトッ!

楓「それじゃあ……かんぱぁーい」ガチャッ!

P「乾杯」

美優「ど、どうも……」

楓「私、美優さんと一緒に飲むの楽しみにしてたんですよ」ゴクゴクゴクッ!

美優「そ、そうなんですか……?」

楓「ええ、私と同じみたいですし」

美優「え?」

P「何の話ですか?」

楓「ふふふっ……あ、生おかわり」ゴクゴクゴクッ!

P「ペース早すぎだろ……」

楓「さあさあ、美優さんもたくさん飲みましょう?」

美優「は、はい、いただきます……」ゴクッ

……
…………

――数十分後

美優「……」ヒック、ヒック……

楓「あ……あら……?」

P「美優さん、美優さん、大丈夫ですか?」

美優「う……んんん……」ヒックッ

P「ちょっと楓さん、美優さんに飲ませすぎですよこれ……」

楓「え、えええ……? でも、美優さん……」

P「これ大丈夫かな……まあ店出るときに起こすか……」

楓「美優さん、お酒大好きなんですよね?」

P「え、それどこからの情報ですか?」

楓「え? だって美優さん、私と同じでPさんに恥ずかしい姿を見られたって……ゲロを吐かれたって……」

P「え?」

楓「え?」

P「いや、俺、美優さんのそんな姿は見たことないんですが……」

楓「え、あら?」

美優「うー……」ヒック!

楓「……2人で飲みましょうか」

……
…………

――数時間後、夜、ホクドウ(住居ブロック)

P「……」ズルッ、ズルッ……

美優「……」ヒックッ

楓「P、さ……あまり、揺らさないで……」ヒックッ

P「飲みすぎです。起きた美優さんに追い討ちで飲ませるし……ほら、ちゃんと捕まって」ズルッ、ズルッ……

美優「……う、うっ……うっぷ……」ガクガクガク……

楓「っぷ……う、うううう……うっ……」ガクガクガクガクッ!

P「ま、まさか……」

楓「う、うぼぉろろろろろおおおお!!!!」ビチャビチャビチャビチャッ!!

美優「おっ、お……おえええええ……!!」ビチャビチャビチャッ!!

P「ああ……ああああああああ……なんで、またこんなことに……」

……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(菜々の部屋)

菜々「よし! 大体は反省したし、明日からまた次の適性判定までウサミン星人として頑張るぞー!」オーッ!

ピピピッ!

菜々「おっと通信……はい」ピッ!

P『……安部中尉』

菜々「あらP少尉、どうしたんですか? あっ! まさか三船少尉との惚気話ですかぁ? やめてくださいよもうっ!」

P『すみません、助けてください』

菜々「えっ」

……
…………

今日はこれで終了します

――1時間後、ホクドウ、ショッピングモール(広場)

菜々「クサッ!?」

P「直球ですね」

菜々「いや、だって……」チラッ



美優「……」ズーン……

楓「……」ズーン……


菜々「あの2人が灰色になっているんですけど」

P「まあ、美優さんは仕方が無いというか……あ、楓さんは自爆しただけですから」

菜々「大体分かります」ゴソゴソ

菜々「とりあえず……どうぞP少尉、着替えのシャツ」

P「すみません、ありがとうございます。こんな時間に来てもらって……」

菜々「いやまぁ、ナナはいいですけど。それにしても2方向からゲロの攻撃なんて散々ですね……」


美優「……」ドスッ!

楓「……」ドスッ!


P「ははは……まあ服は捨てますから」


菜々「まあいいです。とりあえずそこでグロッキーになっている2人とも、帰りますよ」

楓「はい……」

美優「す……すみません……私、まだ……」ウップ……

菜々「まさか次の波が……」サササッ

P「しゃあない……美優さんは落ち着いたら俺が送ります」ハァ……

菜々「そうですね。ほら楓さん、ナナたちは先に帰りますよ。レンタカーの中でぶちまけないでくださいね」

楓「だいじょうぶ……です……」フラフラ

菜々「P少尉、明日は総合訓練がありますから、ちゃんと来てくださいよ」

P「了解……」

……
…………

――数十分後

美優「……」ズーン……

P「……」

美優「……」

P「……」


美優「……すみませんでした」

P「いや、気にしていませんから。一応安部中尉に着替えも持ってきてもらえましたし」

美優「嘘、ですよね……だって、酔っ払いに吐き掛けられて、気にしない人なんて……いるとは思えません」

P「一応楓さん相手で経験済みなので、特別驚くことはなかったので……」

美優「え」

P「歓迎会のときに、盛大にゲロを吐き掛けられて……ははっ、あのときも散々でしたし、今日も楓さんが来たときに何となく覚悟してました」

美優「そんな……」

P「それに楓さんも多分、美優さんがお酒を飲める人だと勘違いしていたんですよ」

美優「そ、そうなんですか? どうして……」

P「美優さんがダウンしているときに2人で飲んでいたんですけど、そのとき……」


楓『美優さん、お酒大好きなんですよね?』

P『え、それどこからの情報ですか?』

楓『え? だって美優さん、私と同じでPさんに恥ずかしい姿を見られたって……ゲロを吐かれたって……』



美優「恥ずか、しい……?」



美優『わっ、わたっ、しも……P少尉に……恥ずかしいところ……見られ、て……』



美優「それ……楓さんが、勘違いしていると思います」

P「あ、やっぱり」

美優「私が恥ずかしいって言ったのは……Pさんに、その……は、はだっ、裸……見られたときで……」

P「ああ、そっち……」

P「ええと……それは、その……すみませんでした」

美優「い、いえ……Pさんも、お仕事の途中でしたし、私も……もう気にしていませんから……」

P「とはいえ、さすがに申し訳ないなとは思っていたので……何かお詫びでも出来ればと思っていましたけど」

美優「……」ピクッ

P「とはいえ、お詫びといっても裸見てしまったお詫びなんて何をどうすればいいのか……」

美優「そ、それなら……」

P「はい?」


美優「それなら……もう少し、このままで、いいですか……? もう少し、酔いが覚めるまで……Pさんの、膝……」

P「あぁ、横になるにしてもベンチは硬いから頭も痛いだろうし、いいですよ。男の膝でも枕にすれば、硬いベンチよりはマシでしょうし」

美優「はい……」


美優(Pさんの、膝……温かくて、とても……)

P(……何だか、緊張してきたな。安部中尉に煽られたからってわけじゃないが)


美優「……」


……
…………

――1時間後、ホクドウ(ショッピングモール)



美優「……」スヤスヤ

P「お、起きやしねえ……タクシーも捕まらねえし……結局担いで帰らなきゃならないのかよ……」ハァ、ハァ、ハァ……



……
…………

――翌日、ホクドウ、軍本部(休憩所)

P「……」ズーン……

菜々「あのー……ものすごく疲れきった顔してますけど、大丈夫ですか?」

P「……はい」

菜々「ダメそうですね。はいスタドリとエナドリ」

P「すみません」カシュッ! ゴクゴク

菜々「災難でしたね」

P「高垣中尉と酒飲むのはやめたほうがいいかなと」

菜々「あ、うー……でも楓さん、P少尉や三船少尉と一緒に飲めて凄く楽しかったって言ってましたよ」

P「本当ですか? あの人、ただひたすら飲み続けているだけでしたけど」

菜々「昨日、『美優さんにはとっても悪いことをしてしまいました。明日謝らないと……』と言っていたので、最低限の申し訳なさはあると思いますよ」

P「うーん……まあ、本人たち同士で上手くやってくれれば」

菜々「次もし悲惨な事故が起こる可能性があるときは、言ってくれればナナもついていきますから……」

P「是非お願いします」ゴクゴクゴクッ

菜々「さてと、それ飲んだらいきましょうか。もうそろそろで訓練始まりますよ」

P「了解」


……
…………

――数十分後、ホクドウ、軍本部(訓練場)

菜々「えっ、訓練プログラム変更ですか?」

「うむ、地球から来る予定だった教導員の到着が遅れている」

「そのため本日予定していた総合戦闘技術訓練の予定を変更し、小隊毎にグレイプニールによるコンビネーションマニューバプランのシミュレーター消化をしてもらう」

P「わざわざ地球から来るのか……まあ、随分遠いんだけどな」

菜々「あれ、もしかしてP少尉って地球出身ですか?」

P「ええ、一応」

菜々「地球出身ってことは、もしかして重力圏内での飛行経験ってあったりしますか?」

P「まあ……何度かは」

菜々「うわー、うわぁ……いいですねぇ、ナナは宇宙生まれ宇宙育ちのウサミン星人ですから羨ましいですよ」

P「一応訓練中ですからウサミン星人はやめてください」

菜々「まあまあ、地球から来るっていうお偉いさんも来ないみたいですし……」

菜々「そういえば、前の戦闘でお亡くなりなったジョシュア中尉も地球出身って聞きましたよ」

P「ジョシュア中尉もか……」

菜々「ええ、確かアラスカだかアメリカだかメキシコだとか……忘れちゃいました」

P「ジョシュア中尉は……残念です」

菜々「そうですね。中尉、口は悪い人でしたけど操縦技術はバッチリな人でしたからね。P少尉といいジョシュア中尉といい、地球出身の人って何か違うんですかね?」

P「さあ、あまり変わらないと思いますけど」

菜々「ナナはいつ隊長の地位を脅かされないかと冷や冷やものですよ……さて、訓練始めましょうか。小隊毎のマニューバですからこっちのタイミングでやりましょう」

P「迎撃隊の任務があるまでは訓練か……何だかなぁ」

……
…………

――ホクドウ、管制塔(管制室)

美優「……」カタカタカタッ……

楓「……」チラッ

美優「……」カタカタカタッ


ピピピッ!

楓「はい、こちら管制室です」ピッ!

美優「……」チラッ

楓「補給艦の入港ですね。入港手続き時に発行されたコードの転送をお願いします」カタカタカタッ

美優「……」



……
…………

――午後、ホクドウ、管制塔(食堂前)

美優「ええと、食券は……」


楓「今日は何を食べようかしら……」




美優「あっ……」ピタッ

楓「あっ……」ピタッ




楓「ど、どうぞお先に……」

美優「いえ、その……高垣中尉、お先に……」

楓「いえいえ、美優さんのほうが……」

美優「中尉が……」


「おーい何やってんだよ、列詰まってるんだから早くしてくれよ!」


楓「す、すみません……!」

美優「い、いま……どきますから……」


……
…………

――数分後

美優「すみません……食券、頂いてしまって」

楓「昨日、私のせいで迷惑を掛けてしまったので……お詫び、です」

美優「そ、そうですか……そうですね」

楓「はい……その、私が美優さんに無理やり飲ませちゃったせいで、Pさんにゲロを吐き掛けさせちゃって……」モグモグ

美優「カレー食べているときによくそんなお話しできますね……」

楓「カレーとゲロって違いますよ?」

美優「いえ、そうじゃなくて……見た目とか……」

楓「美味しそうに見えませんか? 食堂のカレーですけど、結構美味しいですよ?」

美優「いえ、あの……もういいです」

楓「……」モグモグ

美優「……」モグモグ

楓「……ぁ」ボソッ

ピピピッ!

楓「!?」ビクッ!

美優「あ、すみません……端末が……広報からの連絡でした」ピッ

楓「そ、そうですか」

美優「……」モグモグ

楓「……あ、あの」

美優「はっ、はい?」ビクッ!

楓「その……ま、また今度……一緒に、お買い物、行きませんか?」

美優「え?」

楓「あの、その……私、あまり一緒に、お出かけする人、いなくて……」

楓「美優さんと、Pさんと……1日外に遊びに行けて……楽しくて……」

美優(親近感を感じる……)

楓「だから、その……よ、よかったら、なんですけど……でも、私、お酒で酔うと調子に乗ってゲロ吐くまで飲んじゃう女で……」

美優「わ、私は……全然、その、私も……普段、一緒にお出かけする人も、いなくて……」

楓「……!」

美優「だから、その……また、町まで行きましょうか」

楓「は……はい……!」


……
…………

――ホクドウ、軍本部(訓練場)


ピピピッ! ピピピッ!


パシュンッ!

菜々「ふーっ、意外とI08のマニューバも形になってましたね」

P「いままではI02からI04までのプランしかやってませんでしたからね……もう少し詰めたほうがいいですけど」

菜々「まあそのうちに……一通りのマニューバはやっておきますか?」

P「時間はありますから無理しない程度に……安部中尉、端末鳴ってますよ」

菜々「あららホントだ……」ピッ!

菜々「……」ピッ、ピッ

P「せめて小隊が通常最低限の3人だったらY02からのマニューバの訓練もやれたけど……」ブツブツ

菜々「……へー」

P「ん、どうしました中尉?」

菜々「いえ、楓さんから連絡が来てました」

P「高垣中尉から? 何かあったんですか?」

菜々「『美優さんとお友達になりました! 次の非番にまた2人でお出かけします!』ですって」

P「えええええ……チャレンジャーだな三船少尉も……」

菜々「仲良くなれたようで何よりです。そういえば、P少尉はお2人とは仲良くなれましたか?」

P「まあ、容赦なくゲロを吐き掛けられるくらいの気心知れた仲にはなったと思いますよ」

菜々「それ、本人たちの前で言わないでくださいね。多分、結構ダメージあると思いますから」

P「……そうですね」

……
…………

――数時間後、ホクドウ、軍本部(資料室)

P「ようやくミーミルが空いたか……本部だから台数は多いがやっぱり混むか」カタカタカタッ

P(アルヴィスの更新履歴……リトット方面での戦闘記録が多いな……)カタカタカタッ

P(ホクドウからは宙域も離れているが……リトットのほうはレアメタルの採掘場もあるし、駐在している部隊も多いから何とかなっているのか)

ピッ!

P(ん、同じ宙域の戦闘記録で見れないものがある……なんだ、俺のIDについている権限レベルだと閲覧できないのか?)

P(であれば宙域で何かあったんだろうが……次の戦闘記録は参照できるし、リトットに特別被害が出ているという一般報道もないし、何があったんだろうか)

P「……」

P「……」ガタッ


……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(菜々の部屋)

ピピピッ!

麗奈「ちょっと菜々、端末鳴ってるわよ」ゴロゴロ

菜々「はいはーい。誰ですかっと……P少尉からだ」ピッ

麗奈「ん、アイツ?」ゴロゴロ

菜々「麗奈ちゃんいますかー? って来てますよ」

麗奈「何か用って聞いといて」ゴロゴロ

菜々「はーい。麗奈ちゃんならウサミン星のホクドウ拠点に遊びに来ていますっと」ピッ!

ピピピッ!

菜々「おや、もう返信が……え゛っ」

麗奈「ん?」

菜々「P……P少尉が……」

麗奈「あん? アイツがどうしたって?」

ピピッ!

菜々「ひぅっ!?」ビクゥッ!!

麗奈「誰か来たわね……はい、誰よ」

パシュンッ!

P「失礼します」

菜々「うぎゃー!?!?」

麗奈「アンタ何しにきたの?」

P「小関大尉、少しお時間よろしいですか?」

菜々「あーっ! あーっ! ダメですよP少尉! ウサミン星は不可侵の条約が……」

麗奈「んっとに仕方ないわね……まあ暇してたしいいわよ」

P「すみません、それじゃあ外に」

麗奈「まったく……」

パシュンッ!


菜々「……ナナは無視ですか、そうですか」


……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(通路)

麗奈「で、話しってなによ」

P「今日、アルヴィスの更新履歴からリトット方面の戦闘記録を参照していたんですが、一部閲覧できなかった記録がありました」

麗奈「ああ、それ」

P「私の権限レベルでは参照できなかったので、小関大尉なら――」

麗奈「その戦闘、蜂の新種が出たのよ」

P「……やはりそういった類の話か」

麗奈「何よ、気になるの?」

P「一部だけ高権限の情報でしたので、まあそれなりに」

麗奈「……1つ聞くけど」

P「はい?」

麗奈「アンタ、新種の蜂のことどう思う?」

P「どう思う、ですか」

麗奈「何でもいいわよ。思ったこと言いなさい」

P(……)

麗奈「ほら、どうなの」

P「……直接見てみないことには何とも」

麗奈「へー、つまり見てみたいってわけ」

P「まあ、出来ることなら」

麗奈「それじゃ任せなさい。レイナサマが何とかしてあげるから」

P「本当ですか? それなら……すみませんがよろしくお願いします」

麗奈「はいはいっと。それじゃアタシ戻るわ」

P「はい、お疲れ様です」

……
…………

――翌日、ホクドウ、軍本部(食堂)


P「……」

菜々「……」



『S-01所属ラピッドストライカー隊については、衛星調査隊への一時異動とする。下記期間中はリトット方面での――』


菜々「……何故? 異動? 迎撃隊のお仕事は?」

P「あの人上に何話したんだ……」

ピピピッ!

P「……はい」ピッ!

麗奈『あ、アンタの端末これで合ってる? 通知きてた? お望みどおり出向許可貰っておいたわよ。レイナサマも一緒だから感謝しなさいよ』

P「……さいですか」

……
…………

今日はこれで終了します

――夜、ホクドウ、軍本部(休憩所)

楓「あの……なんでそんなお話しになったのでしょう……?」

菜々「いや、ホントなんででしょうか」

P「……」

麗奈「そりゃコイツが新種見たいって言い出したからよ」

P「見たいとは言ってなかったはずですが」

麗奈「細かいこと言ってんじゃないわよ! 丁度レイナサマも見に行きたかったからアンタのことダシに使っただけよ!」

菜々「あのー麗奈ちゃん、ナナたち……オート・クレールと黒川重工が作った試作兵装のテストが……」

麗奈「ああ、それスタッフも連れていくわよ」

菜々「いやいや、それ契約どうするんですか」

麗奈「それに、どうせユミルはメンテ中だし、その間はアンタたちの仕事だって営業停止でしょ」

麗奈「今回の作戦で使った兵装の稼動データとグレイプニールの戦闘記録を解析するのと、向こうはやることも多いでしょ」

楓「ログのフィードバックと、オート・クレールの工場で今後テスト予定の兵装を組む作業もあるみたいですからね」カタカタカタッ!

菜々「でもぉ、リトットに行くっていつまでいるつもりなんですかぁ?」

麗奈「いつまで? んー……適当でいいでしょ。1ヶ月くらい」

P「1ヶ月後ならS-01のメンテはとっくに終わっていると思いますが……」

麗奈「いいのいいの、アンタたちがいなくても何とでもなるでしょ。調子に乗ってんじゃないわよ」

菜々「いやそういうわけじゃないんですけどね!?」

P「……まあ、気になってリトット側の民間船の運航状況を確認してみたら、出航スケジュールが減っていました」

P「細かい話しはアルヴィスのほうも公開されていませんが、何かしらあるのは確かだと思います」

楓「その新種? の対応が難しいんでしょうね。記録映像でももらえたらいいんですけど」

麗奈「ま、その辺は調査隊の異動もあるし、一部権限も開放されるでしょ」

菜々「あああぁぁ~……もう、わざわざ新種見つけて殴り込みに行くなんて……」ハァー……

P「仕事であれば仕方ないですよ」

美優「……それで、あの……どうして私も、ここにいるんでしょうか」

麗奈「アンタも行くからよ」

美優「あ、そうですか……」

P「どうして三船少尉にも声を掛けたんですか?」

麗奈「え? いや、ブリッジで楓と仕事してたし、丁度いいやと思って」

菜々「ずいぶん適当ですね……まあ、調査隊のヴェールに行くなら隊のオペレーターも2人くらいは欲しかったですけど」

楓「それじゃあ、まだ一緒にお仕事できますね、美優さん」

美優「そ、そうですね、高垣中尉」

P「で、こっちに来ている調査隊のヴェールはいつ出航なんですか?」

麗奈「2日後ね。黒井のほうも話しが通ってるから、アンタたちはさっさと異動準備しておきなさいよ」

菜々「急なお話ですねぇ……」


……
…………

――ホクドウ、軍本部前

P「……」


美優「あの、Pさん」

P「ん……三船少尉、どうしましたかこんなところで」

美優「いえ……異動になって、私も管制塔の業務から外れたから夜間外出の制限が無くなったので……」

P「そうですか」

美優「Pさんは、ここで何をしていたんですか?」

P「特には……少し外に出たいと思って」

美優「……少し、歩きませんか? 本部の周りは何もありませんけど」

P「まあ、いいですよ。行きましょうか」

……
…………

――数分後

美優「私たちがホクドウから出た後に、雨みたいですね。天候表を見ましたけど……雨の日に当たらくて、よかったですね」

P「ええ」

美優「Pさんは、雨は好きですか?」

P「……いまは、好きでも嫌いでもないですね」

美優「いまは?」

P「子供の頃は、地球に住んでいました。雨が降る日も、コロニーと違って決まっていなくて」

P「風が強い日もあれば、大雨の日もあって……その頃は、外に出て遊べなくなるから雨は嫌でしたね」

美優「そうですか……Pさん、地球から来たんですね」

P「三船少尉は、どうなんですか?」

美優「私ですか? 私は……好きなときも、嫌いなときもあります」

P「どっちも?」

美優「はい。嬉しいことがあれば……雨が降ってても、その雨すら嬉しく思っちゃいますし」

美優「代わりに、悲しいことがあれば……雨が降るほど、悲しくなってきます」

P「そうですか」

美優「……あの、聞いていいですか?」

P「はい」

美優「今日、小関大尉が……Pさんが、リトットに行きたいって言ったって……」

P「行きたいとは言ってませんけどね」

美優「でも……キラー・ビーとは、戦いたいって……思っていませんか?」

P「……」

美優「あ、いえっ……その、私ったら、変なこと……」

P「戦いたい、か……そうですね。戦いたいと、思っています」

美優「Pさん……?」

P「前に、俺の親の話をしましたよね」

美優「軍にいて、もうお亡くなりになったって……」

P「親は2人とも、蜂に殺されました。土製圏からエイルに乗って地球に戻ろうとしていたときに、襲われました」

美優「そんな……そう、だったんですか」

P「仇討ちってわけじゃないんですけどね。ただ……いま俺たち人間は、蜂と戦っていて」

P「襲われて助かった人もいれば、殺された人もいる」

P「俺と同じようなことになった人も、どこかにいるかもしれない……そう思うと、俺も出来るなら戦いたいと思った」

美優「それは……知らない人のために、ですか?」

P「さあ……軍にいるってことは、知らない人のために戦うってことでしょうけど、俺自身が本当は何がしたいのかは……よく分からないです」

P「だから小関大尉にも、聞きたいことだけ聞いて、俺自身は何がしたいのか言えなかったんだと思います」

美優「……」



美優「……Pさん、ちょっとそこのベンチに座りませんか?」

P「え? あ、しばらく歩いて疲れましたか?」

美優「いえ、そういうわけでは……どうですか?」

P「……まあ、それじゃあ少し休みましょうか」


……

>>295訂正

P「仇討ちってわけじゃないんですけどね。ただ……いま俺たち人間は、蜂と戦っていて」

P「襲われて助かった人もいれば、殺された人もいる」

P「俺と同じようなことになった人も、どこかにいるかもしれない……そう思うと、俺も出来るなら戦いたいと思った」

美優「それは……知らない人のために、ですか?」

P「さあ……軍にいるってことは、知らない人のために戦うってことでしょうけど、俺自身が本当は何がしたいのかは……よく分からないです」

P「だから小関大尉にも、聞きたいことだけ聞いて、俺自身は何がしたいのか言えなかったんだと思います」

美優「……」



美優「……Pさん、ちょっとそこのベンチに座りませんか?」

P「え? あ、しばらく歩いて疲れましたか?」

美優「いえ、そういうわけでは……どうですか?」

P「……まあ、それじゃあ少し休みましょうか」


……
…………

――ホクドウ(緑地公園)

P「ふう……」

美優「……あの、Pさん」

P「はい?」

美優「そ、その……1つ、お話しが……」

P「な、なんですか?」

美優「え……えっと……ま、前に……わ、私の、裸、見まし……」プルプル

P「あ、ああ……いえ、あのときは本当にすみませんでした」

美優「だ、だから……私の、言うこと、1つだけ聞いて、欲しいんですけど……」

P「え? ま、まあそれを引き合いに出されると、俺は嫌とは言えないのでいいですが……」

美優「そっ、それじゃあ、その、ここ……」ポンポン

美優「わ、私の、膝……頭、乗せて……」

P「いや、どもり過ぎでしょ……恥ずかしなら言わなきゃいいじゃないですか」

美優「いえっ、ぜ、是非……その……!」

P「はぁ……それじゃあ、失礼します」ボフッ

美優「ぴっ!?」ビクッ!

P「や、やっぱりやめますか?」

美優「い、いえ、このまま……」

P「そうですか……」

P(くっそ恥ずかしい……というか、目の前のモノに遮られて少尉の顔は見えないけど)

美優「……」

P「……」

美優「……」

P「……」

美優「さっきのお話し」

P「……」ピクッ

美優「お話ししているときの、Pさんのお顔……とても、疲れているようで」

P「……そうですか。そんなつもりはなかったんですけどね」

美優「私、上手く言えないんですけど……こうして、Pさんが少しでもお休みできたらって」

P「しっかり休んでいますよ。体調を整えておかないと、戦闘に響いてきますし」

美優「そ、そういうことじゃありませんっ……あ、いえ、そういうことなのかもしれませんけど、これは……私からのお礼です」

P「お礼?」

P「俺、何かしましたっけ」

美優「私は……あなたに助けてもらいました。あのとき……」



美優『あ……あっ、すみません……その、艦を助けて頂いて、その……』

P『安全航路圏での戦闘ですし、民間船が巻き込まれる前にと思ったので援護にきました』



美優「それがPさんのお仕事でも……私は嬉しかった……私以外のみなさんも、本当に嬉しかったと思います」

P「そう言ってくれるなら、俺も体を張っている甲斐があります」

美優「はい……だから、私は……こうしてあげたいって思ったんです」

P「そう……ですか……」

美優「はい」

P(休める、休む……これは、恥ずかしいが……でも、温かい……)

美優「どうしてなのかなって……でも、私は……Pさんに――」


P「……」スー、スー……


美優「Pさん……? 寝ちゃった……」

P「……」スー……

美優(……可愛い)

美優「ふふっ」

……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(麗奈の部屋)

大佐『ふむ、調査隊か……』

麗奈「何、なんかあんの?」

大佐『いやいや、リトット方面の宙域は明日頃にでも民間船は航行制限が敷かれる。少し、早計な判断かと思ってね』

麗奈「今更何言ってんのよ。アンタが黒井に言ってきたんでしょ、アイツのことを使ってやれって」

大佐『そうだがね、黒井は何て言ってた?』

麗奈「別に、死なない程度に使ってやれって」

大佐『そうか……』

麗奈「……いいんじゃないの。必要なんでしょ、アイツが」

大佐『ああ、正直に言ってしまいたいと思ってはいるんだがね』

麗奈「騙すなら最後まで騙しなさい。そして、騙した分だけアイツを助けてやりなさい」

大佐『分かっている。だから私は、麗奈君と黒井に任せたんだよ』

麗奈「アンタから預かった以上、黒井もアタシも、アイツだけは死なせないわよ。アイツが勝手に死ぬならどうしようもないけど」

大佐『何者にも打ち勝つ強さ、精神……パイロット適性が高く、もう何も無くなってしまった彼なら任せることが出来る』

麗奈「それも、アイツがそこまで行くならね」

大佐『麗奈君の見立てでは、どうだね?』

麗奈「面白い奴よ。戦闘時の判断、行動……まあ、アイツらしいと言えばらしい戦い方ね」

大佐『アイツらしい……前に、彼の戦闘を見たことがあるのかね?』

麗奈「……いや、そういうわけじゃないケド」

大佐『そうか……分かった。彼が早いうちに、そこまで到達すればいいのだがね。麗奈君と並ぶほどのパイロットに』

麗奈「プロジェクト・ヴァルキュリア……アタシは選択肢だけ与えたわ。後はアンタたちが決めること」

大佐『分かっている。第3世代……グレイプニールMkⅢの開発の裏でシステム構築の着手も始まっている』

大佐『あとはプロジェクト……システムに適性のある者を探す。1人は見つけているが……』

麗奈「アンタは、そいつらの分も命も背負うってことね」

大佐『元より大勢の部下がいる。何も、P君をはじめ、未来で見つける部下だけではないよ』

麗奈「それもそっか。まあ、そこまで覚悟があるならレイナサマは何でもいいわ。付き合ってあげる」

大佐『……麗奈君、何度も聞くが、キミは――』

麗奈「レイナサマはレイナサマよ。アタシが何であるのかは関係ない。アタシがこの世界で望んでいるのはただ1つだけ」

大佐『そうだったな……いや悪いねぇ、歳を取ると何度も同じことを聞いてしまう』

麗奈「アンタは死ぬまで働きなさいよ。これはアンタたちが何とかすることなだからね」

大佐『分かっているよ。おっと、もうこんな時間か……』

麗奈「ん、ホントね。ちょっと菜々のとこにでも行くから、切るわよ」

大佐『安部中尉かね? 彼女とはずいぶん仲が良いねぇ』

麗奈「まあね。それじゃ」

ピッ!

麗奈「……」




麗奈「長いのね……ホント、アタシはたった1つのことをやりきるだけなのに……」

麗奈「短い時間のはずなのに、ここにいると本当に長く感じる。でも、こういうもんなのよね」

麗奈「……ま、今更言っても仕方が無いってね。レイナサマも……やりきるだけよ」



……
…………

――2日後、ホクドウ、港、ヴェールSN-52(通路)

P「内部仕様は普通のヴェールと一緒なんですね」キョロキョロ

菜々「調査隊用に必要な装備を積み替えているだけで、運用自体は通常のヴェールと変わりませんからね」

P「グレイプニールの搭載数はどうなっているんですか?」

美優「ここはラピッドストライカー隊を入れて4小隊になりますね。哨戒任務にあたっていたSN-05では8小隊編成でしたけれど」

楓「安全航路圏を移動してからの任務になりますからね。必要であれば任務の前に随時、同宙域のヴェールから小隊を借りることになります」

P「調査隊は人員不足か……まあ、調査部隊も同伴することを考えれば、露払いにそこまで人数は割けないか」

菜々「そういうことです。なので、ナナたちはなるべく被弾せず、迅速に蜂の対処をする必要があります」

P「それに合わせて兵装の運用テストするのはちょっと面倒じゃないですかね」

菜々「お仕事ってそういうものですよ。P少尉なら余裕じゃないですか?」

P「いえいえ、戦闘では何が起こるかわかりませんし……」

美優「だっ、大丈夫です……Pさんなら、いつも上手く出来ているじゃないですか……」

P「……まあ、美優さんにそう言われると何とも言えませんね」

楓「……」ピクッ

菜々「というわけで艦長にご挨拶しましょうか。出航までまだ時間ありますけど、作業もありますし急いで済ませちゃいましょう」

……
…………

――ヴェールSN-52(ブリッジ)

麗奈「アンタたち遅かったじゃないの。まったく、艦長より早く来なさいっての」

菜々「ですよねー」

P「まあ、何となく分かっていました」

楓「あのー、艦長席に座っているってことは……小関大尉が艦長、なんですか?」

麗奈「このヴェールがホクドウに寄ったのも、前の艦長が別件があって木星圏に行くことになったからよ。レイナサマはその代わり」

美優「はぁ、そうですか……」

菜々「あのー、麗奈ちゃん、艦長ってやれるんですか……? 戦闘してないときは、いつも副長席に座って遊んでるだけですよね?」

麗奈「あのねえ……普段やらないだけで、レイナサマができないワケないでしょ。仕事ならアタシもやるわよ」

P「不安だ……」

麗奈「アンタ、後でシミュレーター動かすわよ。吐くまで付き合いなさい」

P「うげっ」

菜々「あーあ」

麗奈「ていうかね、アンタずっと気になってたんだけど、レイナサマと喋るときはタメ口にしなさい、タメ口に」

P「え、俺ですか?」

麗奈「アンタよアンタ! 気持ち悪いのよホント」

P「いやさすがに大尉相手にそれは……」

麗奈「アタシの個人的な理由でそうしろって言ってんの。はい命令、分かった?」

P「……了解」

楓「随分と、無茶苦茶ですね……」

菜々「お酒の席だと楓さんもあんな感じですよ」

楓「えっ」

美優(確かに……」

……
…………

――数十分後、ヴェールSN-52(通路)

パシュンッ!

P「さて……荷物は部屋に置いたし、後は一応艦の中を一通り見ておくか」

楓「Pさん」ヌッ!

P「うぉあぃっ!?」ビクゥッ!

楓「……」

P「な、なんですか突然……ていうか高垣中尉、いま下から出てきたように見えたんですけど……」ハァッ、ハァッ……

楓「その中尉というのは、なんですか」

P「は?」

楓「中尉です。私、中尉はダメって言いましたよね?」ズイッ!

P「え、あれオフのときはって話しだったような……」

楓「小関大尉の命令には従うのに、私の命令には従わないんですか? 反抗期ですね……どうしてこんな子に育ってしまったんでしょうか……」シクシク

P(何言ってんだこの人……)

楓「というわけで、中尉の命令もちゃんと聞いてください。どうぞ」

P「……」

楓「……どうぞ」

P「……楓さん」

楓「はい」

P「……」

楓「……」

P「あの、この後はどうすればいいんでしょうか」

楓「あ、満足したのでとりあえずもういいです」

P「何したいんですかアンタ……」

……
…………

――数時間後、ヴェールSN-52(ブリッジ)

「艦長、整備班から搬入作業完了の報告が来ています」

「搬入口の閉鎖完了、同伴するオート・クレール社の技術スタッフからも連絡が来ています」

美優「ヴェールに接続された港の固定アーム、解除します……発進準備できています」カタカタカタッ

楓「予定航路をスクリーンに出します。ホクドウを出発してから、安全航路圏を通ってリトットに向かうルートになります」

麗奈「それじゃヴェール、発進させなさい。速度2、予定航路まで艦制御はオートメーション機能に移行」

麗奈「道中、アルヴィスの更新を確認して必要であればアタシたちも戦闘を行うわよ。調査隊だからって蜂相手に手は抜かないわよ」

楓「了解です。ヴェール、発進させます」

麗奈「さーて……現地に着くまでは暇ねぇ」

「あの、戦闘があれば私たちも参加すると……」

麗奈「戦闘まだ起きてないでしょ……戦闘起きたって新種じゃないならつまんないし」

楓「私としてはあまり新種には会いたくないんですけど……」

麗奈「楓はともかく、調査するのがアンタたちの仕事でしょ。ほら、さっさと行くわよ」


……
…………

本日はこれで終わります。
全然関係ありませんが、年甲斐も無く魔法少女とかやって頑張っている美優さんとかもいるかもしれないのでそっちもよろしくお願いします。

――ヴェールSN-52(休憩所)

菜々「ナナたちがこれから向かうリトットは土星圏内で指定されている資源衛星宙域の1つになります」ピッ、ピッ

菜々「リトットは木星圏と土製圏の境目付近に置かれているコロニーで、元々は土星圏に進出する際に資源運搬用として建設してからは、一時中継地点として利用されていました」

菜々「で、ホクドウをはじめとする土星圏の居住用コロニーがある程度完成したタイミングで解体する予定でしたが……」

P「採掘場への移動拠点として再利用したってことですか」カタカタカタッ

菜々「そうです。当時から宇宙用航行船に使用されているレアメタルは黒川重工から提供されているものでしたが、宇宙での生活圏の拡大に伴って既存の採掘場じゃ軍の要求に追いつかなくなったんですよ」

菜々「あとはお偉いさん同士のお話なのでナナも詳しいことは知りませんけど、リトットの監視局を黒川重工のほうで買い取り、国連と共同してのコロニー運用に変わりました」

P「で、現在はキラー・ビーの出現に伴って運用体制は黒川重工と軍の2体制になったってことですね」

菜々「まあそういうことです。グレイプニールの装甲素材とかの大半も黒川重工から来ているものですからね」

菜々「ただ運用主体が黒川重工になっているので、軍本部は設置されていません。各採掘場を管理している監視局がその代わり担っています」

パシュンッ!

楓「……あら、お2人とも、何をしているんですか?」フワッ

菜々「おや、楓さん休憩ですか? いまP少尉とお勉強していたところですよ」

P「お疲れ様です」

楓「お勉強……」スススッ

P「なんで離れるんですかね」

楓「いえ、休憩のときまでお勉強はちょっと……」

菜々「いや別に楓さんにもお勉強してくださいなんて言いませんけど……P少尉はリトットに行くのがはじめてみたいなので、ちょっとその説明です」

楓「ああそうでしたか。リトットって色々面倒くさいですからね」

P「そこら辺も色々教えてもらいましたよ。マーケットや海賊の話とかも」

楓「私たちは海賊に触れないほうがいいですからね。海賊は海賊でお仕事でやってるみたいですけど」

菜々「デブリ荒らしや開拓中の進入禁止宙域にいるのを見かけたらこっちも動きますからね。でも必要ならコロニー側も利用していますし」

P「あれですか、金さえ出せばってヤツ」

菜々「その通りです。まあそこは大佐たちが裏でコッソリとやってることみたいなので……」

P「俺たちは必要なとき以外は考えなくてもいいか……分かりました」

菜々「お勉強はこれくらいですかね。少し休憩したら訓練にしましょうか」

……
…………

――数時間後、ヴェールSN-52(Pの部屋)

P「……」カタカタカタッ!

『7番街の当店で新しくホッパーが1台入荷しました! パーツ交換済、関節部は最新のXT-3004を――』

P「マーケットの宣伝とか、意外とやってんだな……デブリから漁った物とか、そこら辺を取り扱ってる店の宣伝はさすがにないか」

ピピピッ!

P「はい、Pです」ピッ!

大佐『やあ、調子はどうだね? もうホクドウから出ているんだろう?』

P「ええ、まだ安全航路圏内なので戦闘もありません。まあ、1ヶ月の短期任務ですよ」

大佐『気をつけてくれよ。あと、アルヴィスの更新も入るとは思うが新種との戦闘記録を転送しておくよ』

P「本当ですか! 丁度その記録が権限が低くて見れなかったところだったので助かります」

大佐『ただねえ……難しいのが、戦闘記録の中で新種との交戦データがあまり採取できてなかったんだよ。丁度、採掘場に向かう輸送艦の護衛任務もあってね』

大佐『輸送艦周辺の戦闘状況の記録は多いんだが、どうにも新種のほうが……ヴェールから撮影された映像記録もあまり良い物じゃないがね』

ピピッ!

P「映像が小さいな……高機動戦闘にはなっていないですね。F型と同じか……? いや、でも形状が違う」ピッ、ピッ……

P「拡大……背面がF型やS型よりも発達している。立体機動に特化している……いや、でもOPFのパイロットが誰かは分からんが問題なく戦闘できているように見えるが……」

大佐『それ以上の映像が無くてね。護衛任務中の映像ということもあって、後は黒川重工のほうから開示許可が出ないと権限レベルが下がらないんだ』

P「大佐でも見れませんか?」

大佐『いや私なら問題ないんだがね、ただ全データがアルヴィスのほうにも上がっていないからこれだけしかないんだよ』

P「あとは現地で直接聞いたほうが早いか……」

大佐『ま、そういうことだ。無いよりはマシだろうから、麗奈君にも渡しておいてくれ』

P「小関大尉に?」

大佐『ああ、いるんだろう?』

P「ええ、まあ……よく知ってましたね。黒井大佐から聞いたんですか?」

大佐『ん……んんっ! ま、まあそういうことだよ。それじゃ、私は別件があるからこれで失礼する』

P「了解です。ありがとうございました」ピッ!

P「確かにデータが無いよりはマシか……小関大尉から安部中尉に回してもらって訓練に使うか」

……
…………

――数十分後、ヴェールSN-52(休憩所)

麗奈「へえ……F型に混じって1匹だけ新種がいたのね。極小規模の蜂の巣も見えるけど、ホーネットもいたのかしら」カタカタカタッ

P「添付されていたログを見た限りだと、ホーネットは撃破したそうです。新種のほうは――」

ドスッ!

麗奈「その口調やめなさいっての」

P「痛って……新種のほうは、ホーネットが輸送艦に接近していたからそっちに手が回っていたらしくて、いま映っているOPFと他3機のG1とで相手をしていたらしい」

麗奈「ふーん。単純に形状が違うだけなのか、でもグレイプニールのほうが手こずってるわね……何じゃれ合ってるのかしら。映像が小さくてこれじゃ見えないわよ」

P「より立体機動に特化した相手なのかもしれん」

麗奈「OPFが落としきれてないところを見ると、それもあるかもしれないわね。ま、出てきたら落とせばいいだけだけど」ピッ!

麗奈「ま、とりあえずソレ想定してまた訓練でもする? どうせアンタ暇でしょ?」

P「艦長の仕事はいいのかよ」

麗奈「あんなもん、戦闘になったら座って指示するだけでいいでしょ。まだ被害報告もらうような場面でもないんだし」

P「まあいいけど……それなら安部中尉にも声を掛けてくるから、格納庫に行っててくれ」

麗奈「さっさとしなさいよ」フワッ

P「へいへい……」

……
…………

――数時間後、ヴェールSN-52(格納庫)

パシュンッ!

菜々「こ、この訓練の……連続はっ……つ、疲れる……」ハァ、ハァ、ハァ……

P「どうだった?」

麗奈「さっきのココ、もうちょっと旋回速度出せたでしょ。ドラウプニルが間に合ったらこのタイミングで落とせたじゃないの」カタカタカタッ!

P「G1で無茶言うなよ……OPFより小回りが利かないんだからこれくらいで限界だ」

麗奈「そんなもん気合でなんとかしなさい」

P「気合もへったくれもないだろ……」

菜々「……むー……むー!」

麗奈「ん、どうしたの菜々?」

P[どうしました中尉?」

菜々「麗奈ちゃん! ナナがP少尉の上官なんですよー! 2人だけで盛り上がらないでくださいっ!」バタバタッ!

麗奈「はいはい分かった分かった。んでここの射撃だけど……」

P「ああ、そこは……」

菜々「ううう……2人の会話についていけない……というかナナは完全に無視されているというか……」

ピピピッ!

菜々「おっと、はーいナナでーっす☆」ピッ!

楓『あ、お疲れ様です。訓練中でしたか?』

菜々「はい、もう麗奈ちゃんとP少尉がハッスルしちゃってまして……」

楓『私が前に休憩に来たときも訓練に行ってましたよね? 大丈夫ですか?』

菜々「あの2人ちょっと元気すぎて……ナナは若者のパワーには付いていくのが大変なのでそろそろ腕が……」

楓『それなら一緒に休憩しませんか? 私、いまから食事にしようかと思っていたんですけど』

菜々「いいですねー、休む口実ができましたよ。ってわけでそこで盛り上がってるお2人! 休憩所行きますよ休憩所!」

麗奈「ん?」

P「ん?」

菜々「休憩です! 休憩! P少尉も少しは隊長を労わってください!」

P「労わるって……まあ、それじゃあ休憩しますか」

麗奈「休憩終わったらもう5セットね」

菜々「まだやる気ですか……」

……
…………

――ヴェールSN-52(食堂)

楓「艦長、もう少しお仕事して頂きたいんですけど……」

麗奈「ん? アタシはいいのよ。アンタが仕事覚えなさい、将来のためよ」モグモグ

P「艦長の仕事押し付けられてるんですか……」

楓「デスクワークだけですけどね。でもブリッジにいて、いきなり艦長席に座れって言ってくるんですよ」

菜々「それいいんですか?」

麗奈「いいのよ。レイナサマは前線に出るのが一番仕事になるんだし、それなら若いヤツに艦長の仕事なり、指揮官やらせたほうがいいでしょ」

P「大尉のくせに随分と適当だな」モグモグ

麗奈「やれって言われたら出来るから何でもいいのよ。てかちょっと前もペースト食で生活してたから飽きたわね……菜々、お菓子持ってきてないの?」

菜々「ええっ!? ああいや、お部屋のほうにこっそりポテチをいくつか……じゃなくて!」

楓「出航時に、各個人で許可されていない食品類の持ち込みは禁止されてますよ」

P「……」

P(酒さえ飲んでなかったら、仕事はできるし程々に真面目なんだよなこの人……)


楓「……」ピクッ


楓「……Pさん、どうかしました?」

P「ん? あ、いえ」

楓「本当ですか? いま私に何か言おうとしてませんでしたか?」ズイッ!

P「いえいえ、そんなことはないので」

楓「そうですか? でも私に何か言いたそうな顔をしてるように見えますけど」ズズイッ!

P「そんなことないですって、そして顔近づけないでください」

楓「例えば……この人お酒飲んでるときはゲロ吐き掛けるダメ上司とか」ズズズイッ!

P「エスパーかよ!」

楓「……」ストンッ

P「あっ……」

楓「そうですよね、飲みすぎて2回もゲロ吐き掛ける上司なんてどうしようもなくダメで嫌な人ですよね……」ズーン……

P「ああいや、別にそういうわけじゃないんですがね、いや……」



麗奈「何あれ?」

菜々「若者同士で乳繰り合ってるんですよ……ナナには無かった青春です」


……
…………

――食堂前


美優(休憩に入るの遅くなっちゃった……)フワッ

美優「あら?」ピクッ


楓「だって2回もゲロですよ、ゲロ……マーライオン楓ですよ」

P「そんなプロレスのリングネームみたいな名前つけなくていいですから……」


美優(Pさんと楓さん……)


楓「それじゃあ、今度Pさんのお部屋にお酒入れておいていいですか? 持ってきますから」

P「ちょっと待ってください、さっき安部中尉には菓子の持ち込みを指摘しておいて自分は酒持ち込んでるんですか?」

楓「……勘のいい部下はいけませんよ」

P「どういうことだよ……」


美優(お2人とも……あんなに楽しそうにお話して……)

美優(……ご飯、後で食べよう)フワッ


……
…………

――数日後、ヴェールSN-52(ブリッジ)

麗奈「リトットの入港許可は?」

美優「事前に送信していた許可申請、承認されています……コードも発行されています」カタカタカタッ!

麗奈「駐在している調査隊からの回答は? 新種の件、連絡してるんでしょ?」

「回答来ています。スクリーンに出します」

麗奈「輸送艦の護衛任務に行った艦が戻ってきてないから詳細がまだ分からず、か……ちんたらやってるわね……」

麗奈「楓、各班に通知出しておきなさい。SN-52はリトット入港後、補給を済ませたら同ルートを経由して採掘場に向かうわ」

麗奈「必要な補給品の申請を出させておきなさい。リトットに着いたら急いで補給作業させるから」

楓「この艦だけで採掘場に行くんですか? 艦の規模に対して、採掘場へ向かう場合の蜂との戦闘数を想定すると……」

麗奈「別に本当に行くわけじゃないわよ。その新種と遭遇したルートを通ればこっちも遭える可能性はあるでしょ」

麗奈「見つけたらそれでオッケーだし、見つからなくても輸送艦が戻ってくるときに蜂が減っていれば向こうも楽になるし」

楓「はあ……分かりました」カタカタカタッ

ピピピッ!

菜々『もしもし、麗奈ちゃ……じゃなかった小関大尉』

麗奈「ん、どうしたの菜々?」

菜々『リトットと採掘場の現場のお話し、ナナたちも回答は見させてもらったんですけどおかしくないですか?』

菜々『新種との戦闘があったのってしばらく前ですよね? 輸送艦のレアメタル移送作業って往復でこんなに日数掛かるものでしたっけ?』

麗奈「なんでも、帰還時に新種と遭遇した場合の対応策でもめてるらしいわよ。黒川重工側としては早く戻りたいんでしょうけど――」


ピピピピピッ! ピピピピピッ!

麗奈「ん! ちょっとレーダー見て!」ピクッ!

美優「は、はい……レーダー、前方距離4200、キラー・ビーです……!」カタカタカタッ!

菜々『うげっ!? ここまだ安全航路圏内ですよ!?』


麗奈「いい加減退屈だったしそろそろ出てきてもいいとは思ってたけど……数は!」

美優「レーダー確認……6匹です。警報出します」

麗奈「アンタたち、戦闘態勢よ! コンディションレッド! GNS-001、002小隊とGRS-1小隊は出撃準備!」

菜々『し、出撃ですか! 了解です、ラピッドストライカー隊出ます!』

ピッ!

楓「オートメーション機能で戦闘信号を自動発信します。現宙域を安全航路圏から除外、周囲を航行中の民間船に警報を出します」

麗奈「新種がいる可能性を考慮して除外範囲をもう1段階広げておきなさい。あと艦の戦闘記録をミーミルにリアルタイム転送できるようにしておきなさい」

「コンディションレッド、コンディションレッド。前方距離4200、キラー・ビー出現。グレイプニール小隊は発進してください」

麗奈「こっちも準備するわよ。複合ミサイル発射管にアルヴァルディを装填、レーヴァテイン1番2番装填よ」

美優「艦長、レーダー照合しました……6匹ともF型です」

麗奈「新種はいないか……とはいえ、新種は前回の戦闘では逃げられているからこの宙域で遭遇する可能性は十分にあるわ。気をつけなさい」

……
…………

――ヴェールSN-52、カタパルト(G1機体内)

P「安部中尉」

ピピピッ!

菜々『準備できていますよ。P少尉、そっちの装備は?』

P「増設用の試作ブースターユニット、機体認証問題ありません。F型相手であれば運動性能を確認するには問題ないと思います」ピッ、ピッ、ピッ!

菜々『ナナのほうは、この前P少尉が使っていた単装ビーム砲塔の改修版を積んでもらっています。仮コードも発行されています』

P「仮コード? てことは正式実装の検討対象ってことですか。スコープ外れてます?」

菜々『邪魔だったってことでバッチリ外されてますよ。仮コードはレギン、単装ビーム砲塔レギンです』

P「ようやく1個目が検討対象になったか……了解、そちらのテストはお願いします」

菜々『P少尉のほうもブースターユニットの性能テストお願いしますね。いつもと操縦の癖が変わって難しいと思いますけど』

P「一応シミュレーターは回したから何とかなるはず……何かあったらヘルプ出しますよ」

ピピピッ!

美優『は、ハッチ開放しました……出撃、お願いします』

P「りょうか……あれ、今回は三船少尉がオペレーターですか?」

美優『そっ、そうなんです……今回の任務中は、私が配置されたので……』

麗奈『アンタたちそんな無駄話してないでさっさと行きなさい!』

美優『ひっ!? す、すみません……』

P「すみません……それじゃ、出撃します」

美優『お、お願いします。あの、Pさん……気をつけてくださいね』

菜々『あのそれ、Pさんだけじゃなくてナナにも言って欲しいなー、なんて』

美優『えっ!? あっ……』

麗奈『アンタたちぃ!!!!』

P「……出撃する」

……
…………

――戦闘宙域

P「ブースターユニットの具合はイイ感じか……立体機動はこっちで何とかするしかないが……」

菜々『P少尉、蜂の距離1800ですよ!』

P「初動はどうしますか?」

菜々『他2小隊がヴェールのアルヴァルディに合わせて展開するみたいなのでこちらも合わせます。コンビネーションマニューバはI02で!』

菜々『あとは……こっちに蜂が流れてこなかったらとりあえずGNS-002小隊の援護で!』

P「了解……!」ギュンッ!


ズドドドドドドドドドッ!!!!


蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

菜々『ミサイル着弾……こっちに2匹です!』

P「了解、いまの蜂の飛行から軌道予測ルートを算出……前に出ます。安部中尉は射撃のほうを」カタカタカタッ!

菜々『任せてください!』

蜂「!!」ズドォンッ!

P「粒子砲か、当たるかよ!」ギュオオオオオッ!

蜂「……!」ブブゥゥゥンッ!!

蜂「……!」ブブゥゥゥンッ!!

P「2匹釣られたか……だがブースターユニットのおかげで速度勝負はいける……安部中尉!」

菜々『いきますよ……単装ビーム砲塔レギン、発射です!』ズドォンッ!

蜂「!?」ドガアアアアアアンッ!!

菜々『1匹目!』

蜂「!」ズドォンッ!

菜々『そっちの粒子砲は当たってあげませんよー!』ギュンッ!

P「中尉のほうに気はやらせん、ドラウプニル!」ガションッ!

ドガガガガガッ!!

蜂「!?」ギュンッ!

P「よし、そのまま――」

ピピピピピッ! ピピピピピッ!

P「何!?」

ピピピッ!

美優『レ、レーダー更新……キラー・ビーの増援が来ています。距離は前方4000……!』

菜々『ゲェッ! 増援!?』

P「こっちの分がまだ片付いていないときに……!」

……
…………

――ヴェールSN-52(ブリッジ)

楓「艦長、レーダー上に新しい蜂が出ました。数は5匹です」カタカタカタッ!

麗奈「追加発注なわけ……照合掛けて!」

楓「レーダー照合……! 1匹だけ該当データ無しの個体がいます。映像出します」

ピピッ!

麗奈「背面が発達している……こいつが新種ね! 各小隊、新種が出たわよ! 戦闘記録は取ってるからしっかりぶっ飛ばしなさい!」フワッ

楓「ちょ、ちょっと艦長、どこに行くんですか?」

麗奈「アタシも行くに決まってんでしょ!」

楓「指揮はどうするんですか?」

麗奈「今からブリッジの第2指揮官は高垣中尉よ! アンタに教本読ませてたのはこういうときのためだったんだから、ちゃんと仕事しなさい!」

パシュンッ!

楓「えっ、えええええ……?」

美優(かわいそう……)


……
…………

本日はこれで終了します。

みなさん、冬場の時期なのでノロウィルスや肺炎には気をつけたほうがいいですよ。いやマジでしんどい

――戦闘宙域

P「安部中尉!」

菜々『P少尉はルート計算お願いします! ナナたちのほうでひきつけますので!』ギュンッ!

ピピピッ!

楓『前線のグレイプニール各機、本艦は報告を受けている新種のキラー・ビーと遭遇しました。該当種を暫定D型とします』

ピピッ!

P「コードが来たか……安部中尉、無理に接近はしないでください。遠距離から他小隊と包囲しての射撃戦で」カタカタカタッ!

菜々『分かってますよ! GNS-002小隊、そっち合流しますね!』

D型「……!」ブブブゥゥゥンッ!!

P「足が遅い……いや、F型と同速か、S型とまではいかんが……!」ピピッ!

D型「!」ズドォンッ!!

P「粒子砲か! くっ……」ギュンッ!

菜々『P少尉! いまこっちも攻撃を……』ズドォンッ! ズドォンッ!

バシュゥンッ……! バシュゥンッ……!

D型「……」ギュンッ!

菜々『うええええっ!? ぐ、グラムじゃ抜けない!?』

『コイツはダメだ、G1やOPFの装備じゃ抜けんぞ!』

P「単純に硬いのかコイツは! くそっ、標準兵装のリストは……!」カタカタカタッ!

ピピッ!

P「G2に装備されている高出力版のグラム以上の兵装が無い……いま出ている部隊でG2を運用しているパイロットはいないぞ……!」

菜々『それなら!』ギュオオオオオッ!

D型「!」

菜々『こういうときの新兵装ですよ! レギンなら!』ガションッ!

ズドォンッ!

D型「……!?」ドガァンッ!

P「足が止まった……装甲は抜けなかったがダメージはあるのか」ピピッ!

菜々『それならもう1発ですよ!』ズドォンッ!

D型「……!」ギュンッ!

菜々『げげっ!? 避けられた……』

P「相手も馬鹿じゃあないか……あのビーム砲塔も射撃可能数は多くないが……」

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P「追加で来たコイツ等の相手もあるってのに! ヴェールのほうが……!」ギュオオオオオッ!!

……
…………

――ヴェールSN-52(ブリッジ)

楓「……」

「高垣中尉! 右舷前方よりF型2匹、戦闘宙域を抜けてきました!」

美優「前線、D型と交戦中……小関大尉のOPFはまだ出撃準備が完了していません……!」

楓(こんなタイミングで……通常戦闘ならまだマニュアルがあるのに、新種も出ているときに……)


蜂「!」ズドォンッ!


「蜂の砲撃……回避! うううっ!」

「もう1匹蜂が抜けてきます! 前線のグレイプニール、何機か戻ってきて!」

楓(こんなときに……)

ピピッ!

楓「っ!」ビクッ!

P『高垣中尉、いま送ったデータを使え! F型の予測飛行データだ!』

楓「P少尉……」

楓「で、でもっ……前線のほうは……」

P『安部中尉もいるから問題ない。俺が一時的に後退するがそれまで蜂を捌いておいてくれ!』

美優「Pさ……」

P『必ず戻る。頼りにしているぞ……高垣中尉』

ピッ!

美優「……」

楓「……」グッ!

楓「……艦を下げます。速度4、レーヴァテイン装填、右舷前方のF型2匹を牽制します」カタカタカタッ!

「F型、更に接近してきます!」

楓「オートメーション機能を使用して1番から3番のブリンガーを自動掃射」

楓「続いて複合ミサイル発射管の1番から10番に多目的粒子減衰ミサイルを、11番から20番には迎撃用のマグニを装填します」

美優「レーヴァテイン……装填準備完了しました」ピピッ!

楓「レーヴァテインは発射です。合わせてマグニも撃ってください」

「艦砲射撃はこっちでやるわ! レーヴァテイン……発射!」

ズドドドドドドッ!!

美優「レーヴァテイン回避されました。マグニ発射確認、F型2匹が後退します」

楓「いまのうちに艦前方に粒子減衰ミサイルを発射してください。散布率は45%、ギリギリでレーヴァテインが有効になるようにお願いします」

美優「了解です。ミサイル発射します……炸裂範囲、粒子減衰区域になります」ドシュシュシュシュシュッ!!

楓「発射管11番から20番にもう一度粒子減衰ミサイルを装填してください。装填後は散布率80%で艦後方に射出します」

楓「前線が後退する場合は、こちらも更に後方に下がって蜂の粒子砲をやり過ごして弾幕支援に切り替えます」

ピピピッ!

麗奈『いいじゃないの、そうやって仕事してなさい!』

楓「小関大尉……出撃ですか?」

麗奈『整備班がOPFを移動させるのに手間取ってたのよ! ほら、ハッチ開けなさい!』

美優「ハッチ開放します……OPF、発進お願いします」

麗奈『よっし、行くわよ!』

……
…………

――戦闘宙域後方

蜂「……!」ギュンッ!

P「ブースターユニットのおかげで間に合うか……追加の1匹、行かせんぞ! ドラウプニル!」ガションッ!

ドガガガガガガッ!!

蜂「!?」ドガアアアアンッ!!

P「後は先行して抜けた2匹か……!」

ピピピッ!

楓『P少尉、こちらは防衛のため粒子減衰ミサイルを発射しました。現在蜂が飛んでいる位置は粒子減衰区域になります』

P「それなら接近するまでだ!」ギュオオオオオッ!

麗奈『そりゃそうでしょ!』ギュンッ!

ドガガガガガガッ!

蜂「……」

蜂「……」ブブブ……

ドガアアアアアンッ!!!!

P「小関大尉……出撃したのか!」

麗奈『面白そうなイベントにレイナサマが行かないわけないでしょ! ヴェールはそこで待機してなさい、後はこっちでやるわ!』

P「よし、高垣中尉、艦を頼みます」ギュンッ!!

……
…………

――ヴェールSN-52(ブリッジ)

P『よし、高垣中尉、艦を頼みます』

ピッ!

楓「……了解です」

楓「……」

「オートメーション機能によるブリンガーの自動掃射……現状維持します。ミサイル発射管1番から20番にアルヴァルディを装填します」

美優「前線の各小隊……戦闘区域が流れています。安全航行圏に流れないよう気をつけてください」

楓「……」


P『必ず戻る。頼りにしているぞ……高垣中尉』


楓「……頼りにされちゃうなら、仕方が無いですよね」

美優「高垣中尉」

楓「……はい?」ピクッ

美優「もう少しだけ、頑張りましょう。前線のみなさんの援護をしませんと……」

楓「……お仕事中でも、中尉でなんて呼ばなくいいですよ。意外と……マニュアル見ながらでも何とかなるんですね」

……
…………

――戦闘宙域

ピピピッ!

P「安部中尉、大丈夫か!」

麗奈『アンタたちも、ちんたらやってんじゃないわよ!』ギュオオオオッ!

菜々『P少尉、麗奈ちゃん! 遅いですよぉ!』

麗奈『GNS-001と002小隊は他の蜂の相手でもしてなさい! D型はこっちで引き離しておくわ、ラピッドストライカー隊はついてきなさい!』

『了解! そちらはお願いします!』

菜々『了解です!』

D型「!」ズドォンッ!!

麗奈『粒子砲なんて当たるわけないでしょ! そらっ!』ズドォンッ!

バシュゥンッ……!

麗奈『チッ、グラムも役に立たないわね……!』

ピピッ!

P「小関大尉、安部中尉、D型の予測飛行ルートの算出は終わった。転送するから立体機動戦闘のときに対応してくれ」

菜々『で、でもぉ、グラムが通らないならドラウプニル撃っても仕方が無いですよぉ……』

麗奈『アンタまた……って、まあ仕事中なら仕方ないわね。それなら……』ギュンッ!

菜々『麗奈ちゃん!? いきなり接近して……』

麗奈『食らいなさい!』ガションッ!

ドガガガガガガガッ!

D型「!」ガキキキキキィンッ!!

麗奈『……』

菜々『だからダメですってばぁ!』

P「……安部中尉、そちらのOPFに溜めてる直前の戦闘記録データをください。D型が出現した後の物です」

菜々『えええ……ナナ、飛行しながらのマルチタスクって苦手なんですけど……えっと、これ、これと……』ピピッ!

ピピッ!

P「……」カタカタカタッ!

麗奈『……』

ドガガガガガガガッ!

D型「……!」ガキキキキキィンッ!!

菜々『あああ麗奈ちゃんっ! いまミョルニルで弾幕張りますから離れてください!』ボシュシュシュッ!!

D型「!」ギュンッ!

ピッ!

P「出た、大尉!」

麗奈『ドコよ!』

菜々『いきなり何の話しですか!?』

P「安部中尉がD型の装甲にレギンを当てた箇所をマークした。2人ともそのポイントに射撃だ!」

麗奈『装甲強度を見てもドラウプニルじゃどの道どうしようもないか……グラムでいいわね!』ギュンッ!

菜々『ナナは精密射撃も苦手なんですけど!』

P「中尉、レギンの残段数は!」

菜々『やっぱり消耗が激しくて……あと2発くらいでおしまいです』

P「1発はどこでもいいからD型に当ててください。足が止まったタイミングで俺と大尉のほうで射撃を行います」

菜々『それくらいなら……ターゲット、発射!』ガションッ!

ズドォンッ!

D型「……!?」ドガァンッ!

P「足が止まった!」

麗奈『今よ!』ズドォンッ!

ズドォンッ! ズドォンッ!

D型「!?」ドガアアンッ!!

麗奈『ホラホラ、早くその背中に穴開けなさい!』

P「コイツ、それでも硬いか……だが足は遅くなってるか!」ガションッ!

ズドォンッ!

D型「……!」ドガアアンッ!!

麗奈『菜々!』

菜々『これくらい動きが止まってるならナナでも当てれますよぉ!』ズドォンッ!

D型「……」ブブブ……ブ……

ドガアアアアアアンッ!!!!

菜々『や、やった……』ハァ、ハァ……

P「D型撃破確認……ヴェール、こちらの戦闘記録は届いているな? ミーミルに転送する分の他に、ローカルに貯めたデータは別出ししておいてくれ」

麗奈『こんなもんね……面倒くさいヤツ』ピッ、ピッ……

菜々『や……やりましたよー! ラピッドストライカー隊、新種と初遭遇で初戦闘で初撃破ですよぉ! 麗奈ちゃん、P少尉、やりましたねぇ!』

麗奈『はいはい、よかったよかった』

P「ははは……」

麗奈『ほら、そんなはしゃいでないで、まだ他の小隊がF型の相手してるでしょ。片付けに行くわよ』

菜々『分かりましたぁ! P少尉、行きますよ!』

P「へいへい、了解……ま、いいか」

……
…………

――数分後、ヴェールSN52(カタパルト)

パシュンッ!

P「ふいー……さすがに今回は疲れたな……新種の相手は巣との戦闘とはまた違うか……」フワッ

菜々「Pーしょーさー!」

P「ん、安部中尉……」

ボフッ!

P「うげっ!?」

菜々「やりましたよぉ! ナナたちラピッドストライカー、新種撃破で戦闘データもバッチリ取れるなんてバッチリな実績じゃないですか!」ググググッ!

P「うぐおおおお……く、首、首……」

麗奈「なーにアンタたちはまた乳繰り合ってんのよ」フワッ

菜々「あ、麗奈ちゃん! 今回はナナたち大活躍でしたね! これ、本部も良い評価出してくれますよね!?」

麗奈「まーそうね。黒川んトコがデータくれなかった分こっちが面倒なことやってるんだし……で、そろそろ肩車外してやんないとコイツの首絞まってるわよ」

P「……」ピクッ、ピクッ……

菜々「えっ……ああっ!?」バッ!

P「いや……別に、いいんですけどね……」ハァ、ハァ……

菜々「す、すみませんつい……」

麗奈「それにしても、アンタよくレイナサマと同じようなこと考えてたわねー。D型の装甲の抜き方、菜々のデータ見てから気付いたの?」

P「いや、大尉が立体機動しながらD型に機関砲で同ポイントに射撃しているのを見たときに」

P「まあ、実際にそれで精密射撃して抜けるかは分からなかったが……G2の装備も無いしやるしかないだろうと思ってな」

麗奈「ま、何だかんだ蜂って撃破するときは爆散するから死体検証も出来ないしね、構造分からないからとりあえずやってみたって感じだったけど」

P「それにしても、ここでG2が欲しくなるとは思わなかった……あんな鈍足でも使い道が出てきそうか」

麗奈「機体的にもG1やOPFじゃそれほど高火力な兵装も積めないし、今回のヤツが出てくるならG2の配備も一部見直しが入るわね」

菜々「はー……飛んでる相手に連続で精密射撃しようとする2人の神経がナナには理解できませんよ」

麗奈「何言ってんのよ、菜々もやれば出来るじゃないの!」バシバシッ!

菜々「おっふおっふっ!? ちょ、ちょっと背中叩かないで……」

P「まあいいや……とりあえず今回は戦闘時間は長くなかったが疲れた……早く戻りましょう」

麗奈「何よ、鍛え方が足りないわね」

P「大尉みたいな化け物と同じように戦えっていうのが無理あるんだよ……」

菜々(ナナから見ればP少尉も大概なんですけどね)

……
…………

――数分後、ヴェールSN52(通路)

麗奈「それじゃアンタたち、レイナサマはブリッジに戻るけど評価報告やっときなさいよ」フワッ

P「了解」

菜々「P少尉、後でお部屋行きますからね」

P「遅く来てくれていいですよ」

菜々「ちょっとシャワー浴びてからになるかもしれないんで、行く前には連絡しますよ」シュッ!

P「さてと……俺も部屋に戻るか」

ピッ!

……
…………

――ヴェールSN52(Pの部屋)

ドサッ!

P「……」

P(……疲れた)


P(何で俺は……大尉と同じように出来たんだろうか……安部中尉のフォローも、しなきゃならなかったが……)

P(高垣中尉も、大尉に無茶振りされてたが……そうだ、艦は、無事だったんだ……)

P(よかった……艦が無事なら、艦が……)



『彼の両親は?』

『残念ながら……』

『何? 分かった、後でそちらさんとは話しておく……P君、非常に残念だが……どうだね? もしよければだが……』



P(どうして俺は……昔から戦えなかったんだ。今回みたいに……俺が戦えたなら……)

P(死ぬことは無かった。親も……だけど、そんなのは無理な話だ。俺は、あのときは……)


……
…………



――――――――
――――――
――――
――

「お帰りなさい、母さん」

「ただいま。良い子にしていた? 母さんたち、コロニーのほうのお仕事も一段落したから、しばらくは地球で休暇を取れるようになったわ」

「来月にはまた土星圏に戻ることになっているけど……あ、お父さんは用事があって軍のほうに行っているわ。夜には戻ってくるみたいだから」


「……」


「……母さん、その子は?」

「ええ、たまたま帰りのシャトルで一緒になったんだけど、母さんたちの知り合いの方のお子さんよ」

「軍の人?」

「ええ、お父さんよりも偉い方よ。お迎えに来る予定だったみたいだけど、都合が付かなかったみたいで……今日はうちで預かることになったの」

「そっか」

「母さんもこれから少し軍のほうに行かなきゃならないから……この子のこと、お願いね」

「分かった……ねえ、名前は?」

「……す」

「ん?」

「たち………り…」

「……まあいいや、地球に来るのって初めて?」

「……はい」

「そっか、俺は宇宙には行ったことないんだけどな……俺はP、よろしく」

「よろしく……お願いします」

「丁度いいや。今日スタジアムのほうで野球の試合があるんだ!」

「野球……?」

「俺が応援してるプロのチームが出る試合で、チケットも取れてるんだ。一緒に行こう!」

「で、でも……」

「なんだ? 野球、嫌か?」

「……嫌じゃ、ないです。でも、野球……テレビでしか、見たことなくて」

「それじゃ本物も見よう。女の子に男のスポーツって難しいかもしれないけど、楽しいぞ」


ギュッ……


「あ……」

「母さん、スタジアム行ってくるよ。試合終わったら帰ってくるから、行ってきます!」

「……」

「ほら、行こう?」

「……はいっ」



「なあ、聞いていいか?」


「なんですか?」


「宇宙に住んでて、楽しいか? 宇宙って……どんな感じ?」


「どうなんでしょう……どこかに行くときは、いつも暗くて、少しだけ……怖くて……」

「だけど、とっても綺麗なんです。怖いと思うときもあるけど……綺麗で、私は嫌いじゃありません」



「そっか……俺も、父さんや母さんみたいに、宇宙に行ってみたいなぁ」



――違う。



――俺にはこんな記憶は無い。


――こんな景色は見ていない。


――こんな景色を見る前に……終わってしまったはずだから。


――見るはずだったのかもしれない。だけど、それはもう見ることは無い。


――だから、俺は……。


――――――――
――――――
――――
――

――ヴェールSN52(Pの部屋)

P「……」ピクッ

楓「……」

P「……」

楓「……」

P「……何してるんですか」

楓「いえ……よく、寝てるなぁって……」

P「まあ、自分の部屋ですから」

楓「でも、自分のお部屋でうんうん唸りながら寝る人は、あまりいませんよ?」

P「そうですか……」

楓「あ、動かなくていいですよ。私も、動くの面倒ですから。いま、報告書書いてますし」カタカタカタッ

P「……よくまあ、起さないように寝てる人間の頭を膝に乗せましたね」

楓「こういう器用なところもあるんです、私」

P「はぁ……」

楓「もう少し……寝ても大丈夫ですよ。菜々ちゃん、シャワー浴びてから来るそうですから」

P「そうですか……そう……」

P「……」

楓「……」スッ


P『必ず戻る。頼りにしているぞ……高垣中尉』


楓「あんなに格好良いのに……こういうところは、格好良くないんですね」

楓「でも……格好良くないほうがいいところも、あるかもしれませんね」


……
…………

――数十分後

ピッ!

パシュンッ!

菜々「お待たせしましたー……いやぁ、辛い戦闘の後のシャワーっていうのはやっぱりいいものですねぇ……」

菜々「あ……」


楓「お疲れ様です」カタカタカタッ

P「……」ギュウウウ……


菜々「……ナナはお邪魔だったでしょうか?」

楓「いえ、Pさん、疲れて寝ちゃったんですよ」

菜々「さいですか……いえ、そのPさんの体勢は……楓さんのお腹にしがみ付いてますけど」

楓「意外と甘えん坊さんなんです、Pさんって……ふふっ」

P「……」


……
…………

本日はこれで終了します。

今回のデレステのイベントは中々酷いものでしたね。このスレで出してる3人がたまたまセットで出てきたのでちょっと驚きましたが。

ところで明日の14時59分でデレステの正月限定ガチャが終了します。限定お紗枝はんを手に入れる最後のチャンスなので出るまで回したほうがいいと思いますよ。

>>354訂正

――数分後、ヴェールSN52(カタパルト)

パシュンッ!

P「ふいー……さすがに今回は疲れたな……新種の相手は巣との戦闘とはまた違うか……」フワッ

菜々「Pーしょーいー!」

P「ん、安部中尉……」

ボフッ!

P「うげっ!?」

菜々「やりましたよぉ! ナナたちラピッドストライカー、新種撃破で戦闘データもバッチリ取れるなんてバッチリな実績じゃないですか!」ググググッ!

P「うぐおおおお……く、首、首……」

麗奈「なーにアンタたちはまた乳繰り合ってんのよ」フワッ

菜々「あ、麗奈ちゃん! 今回はナナたち大活躍でしたね! これ、本部も良い評価出してくれますよね!?」

麗奈「まーそうね。黒川んトコがデータくれなかった分こっちが面倒なことやってるんだし……で、そろそろ肩車外してやんないとコイツの首絞まってるわよ」

P「……」ピクッ、ピクッ……

菜々「えっ……ああっ!?」バッ!

P「いや……別に、いいんですけどね……」ハァ、ハァ……

菜々「す、すみませんつい……」

――数日後、ヴェールSN52(格納庫)

「抽出した戦闘記録も見たんですけどね、やっぱり少尉の立体機動じゃいまのG1に高負荷が掛かってますね」

P「やっぱりか……」

菜々「Pさん操縦荒いですもんねぇ」

麗奈「んっとに、アンタはそういうところもう少し何とかしなさい」バシッ!

P「痛って……叩くなよ」

菜々「試作兵装のブースターユニットとG1の噛み合わせが悪かったのもあるんでしょうけど、そこにPさんの操縦ですからねー」カタカタカタッ!

ピピッ!

菜々「ほら、この前の戦闘のここ、蜂3匹が前線抜けてきたときのPさんの旋回、これちょっと無理ありますよ」

麗奈「ていうか飛行ルートが悪いのよ。敵のルート解析ばかりしてないで自分の操縦も気にしなさいよ」

P「そこは攻撃が当たらなきゃ問題ないし……」

「それはそれでこちらも困るんですが……」

菜々「結局ブースターユニットに負荷掛かって破損しましたからね。あんまり壊すようなことするのもダメですよ」

P「んんん……まあ、G1もオーバーホールする羽目になったし、そこは考えておきます」

麗奈「ま、そうしておきなさい」

菜々「被弾してないのに機体をオーバーホールまで持ってくって相当ですからね……」

麗奈「レイナサマみたいに、もっとこう……繊細で、ちゃんと操縦しなさい」

P「マルチタスクで解析作業と平行してるとそこまで気が回らないんだが……」

菜々「まあ……それじゃデータ確認はこれくらいで終わりましょっか。まだ何かあります?」

「いえ、特には。D型との戦闘記録もこちらに回してもらいましたから、ついでに参考にします」

菜々「了解ですっ。よろしくお願いしまーす」

……
…………

――ヴェールSN52(通路)

P「でも結局どうするんだ? リトットに行く前にD型は落としてしまったし……」フワッ

麗奈「とりあえずは向こうとは1度合流する話しになってるんだし、行くだけ行くでしょ」

菜々「現場にいる調査隊の状況次第ですね。何もなければホクドウに戻ればいいですし」

麗奈「ま、S-01のメンテも予定通りには終わるだろうし、用が無くなったならさっさと帰ればいいわよ」カタカタカタッ!

P「不満そうだな」

麗奈「思ったよりあっさり終わってつまんないのよね。もうちょっと遊べると思ったんだけど」

P「よくそんなこと言えるな……こっちは結構しんどかったのに」

菜々「いまの装備でアレとは戦いたくないですね……」

麗奈「もっと鍛えなさい。特にP、アンタはもう少しやれるでしょ」

P「無茶言うなよ……麗奈のマニューバについていくほうの身にもなってくれ」

麗奈「特に問題なくついてきてたでしょ。後は機体潰すような操縦だけは何とかしときなさい」

P「……了解」ハァ

……
…………

――数時間後、ヴェールSN52(ブリッジ)

美優「艦長、3番ゲートからの入港になります。ガイドラインが来ていますので艦を移動させます」カタカタカタッ

麗奈「一般船の出入りが多いわね……海賊もいるじゃないの」

楓「特に、黒川重工からの通達等は来ていませんが……」

麗奈「てことは、ゴミ漁りにでも行ったわけね。ま、アタシたちの仕事じゃないからどうでもいいけど」

美優「整備班……補給作業の準備は出来ているみたいです。搬入口の準備はできています」

麗奈「合流予定の調査隊は?」

美優「監視局のほうにいるみたいです……今回の件は、黒川重工にも被害がありましたし……」

麗奈「はーめんどくさ……楓、外出る準備しなさい」

楓「え?」

麗奈「他に行くメンバーいないでしょ……菜々連れてっても仕方ないし、Pは……アイツは気にしてたけど、どうしようかしらね」

美優「……」

楓「……」

麗奈「……まあ、菜々1人にしておくのもアレだし、今回は置いてくかしら」

楓「……」ハァ……

美優「……」ホッ

……
…………

――ヴェールSN52(Pの部屋)

P「え、俺たち待機なんですか?」

菜々「そうなんです。楓さんは麗奈ちゃんについていくみたいですけど……」カチカチカチッ!

P「不満そうですね」

菜々「だってだって! ラピッドストライカー隊はナナが隊長なんですよ! 隊長!」

P「適材適所って言葉知ってます?」

菜々「うぐぅ……あっ、死んだ!」ポチポチッ

P「いいじゃないですか。待機って言っても補給作業で艦は港に置きっぱなしだし、艦も直接戦闘したから外装メンテ入るじゃないですか」

菜々「まっ、前線部隊のナナたちは仕事もないからお休みですね。そうそう、一応外出許可も取ってますよ。艦のローカルにスケジュール突っ込んでおきましたから」

P「随分準備いいな……」

菜々「せっかく暇してるんですから、訓練もいいですけどたまには休みましょうよ。ナナもリトットは久しぶりだからちょっと遊びたいですし」

P「遊ぶってもなぁ、民間管理だから他のコロニーにない施設もあるんでしたっけ」

菜々「さすがにギャンブルとかは行きませんけどね。マーケットくらい行きませんか?」

P「行ったことないからな……まあ、そうですね」

菜々「それじゃ入港後落ち着いたら外行きますか。てことで……ちょっとPさん、2P持ってくれませんか?」カチカチッ!

P「ゲームばっかりやってんじゃないよ……」

……
…………

――ヴェールSN-52(休憩所)

楓「で」ジーッ

P「はい、外出許可も安部中尉が出たのでマーケットのほうまで行こうかと」

菜々「あ……あはは……」

楓「……」

菜々「いや、そんな睨まないでください……」

P「そんなに町行きたかったのか……」

パシュンッ!

美優「あっ、いた……か、楓さん……小関大尉が探してましたよ。外に車だしたから監視局に行くって……」

菜々「あら美優さん」

美優「ブ、ブリーフィング中……でしたか?」

P「ああいえ、別にそういうわけじゃ……あ、そうだ美優さん」

美優「は、はいっ……?」

P「美優さんは艦に残る予定ですか?」

美優「え? ええ……」

P「それじゃ俺と安部中尉がマーケットまで行くんですけど、一緒に行きますか? 艦のメンテがはいるからブリッジ作業もありませんよね?」

楓「!」

美優「え、一緒に? 一緒……」

楓「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

菜々「く、黒いオーラが……」

P「まあ他の作業が残ってるなら無理にとは言いませんけど」

美優「いえ、行きます……一緒、一緒に……」

パシュンッ!

麗奈「ちょっと楓! アンタどこほっつき歩いてるのよ! さっさと準備していくわよ!」

楓「……はい」シュン

菜々「す、すみません、ホント……あ、お、終わったら連絡くださいよぉ! 夜は飲み屋行きましょう☆」

楓「はいっ!」キリッ!

P「うーんこの……」

菜々「お酒があれば元気ですからね楓さんは……」

……
…………

――数時間後、資源衛星監視コロニー『リトット』、監視局

麗奈「はぁ? 戦闘記録の開示許可まだ降りてない?」

責任者「それがどうも我が社の本部のほうで止めているみたいで……開発部のほうから何か言われているようで」

麗奈「ったく何やってんだか……」ピクッ

麗奈(採掘場での戦闘記録、か……新種が来たってことなら、もしかしたら……)

楓「それなら私たちが戦闘したD型との戦闘記録で代替できませんか?」

局長「よろしいですかね? 申し訳ありませんが……対策方針としてはやはり、新種……暫定D型でしたか。D型の装甲を突破できる装備の配備ですか」

責任者「こちらで持っている分と頂いた戦闘記録を見ても、少なくとも第ニ世代グレイプニールに搭載されている大口径グラムがなければ……」

楓「それは……現在オート・クレール社と黒川重工で実施している共同プランの、試作兵装の開発のほうでは何とかなりませんか?」

責任者「あぁ……そうでしたね。そちらの部隊のほうで運用テストを実施して頂いておりましたか……ふむ」

麗奈「評価報告だと、単装ビーム砲塔だと若干の効果があったかしらね。それ以上の装備が必要ってことだろうけど」

楓「随伴しているのがオート・クレール社のスタッフですから、黒川重工のスタッフとはホクドウで合流してからの兵装検討になりますね」

局長「ひとまずはG2の配備を検討しましょうか。前線部隊からは不満の声は上がるでしょうが」

責任者「D型を撃破できなければどうにもなりませんからね。G2の兵装で対応してもらわねば」

麗奈「アタシたちのところも、G2用意するしかないかしらねぇ……」

……
…………

――リトット、マーケット(入口)

P「おおお……」

美優「……」

菜々「いやー、マーケットも久しぶりに来ましたねー」

P「思ったよりも随分大きいな……」

美優「ホクドウのショッピングモールと同じくらいの規模はあるんですね……」

菜々「あれ、美優さんも来たのははじめてでしたか?」

美優「え、ええ……その、哨戒任務の延長でリトットに立ち寄る機会はあったんですけど……」

菜々「ガラの悪い人とかもいるから、気をつけてくださいね」

P「まあ、7番街とかに行かなければ大丈夫なんですよね?」

菜々「ええ、1番から5番街までは一般企業がお店を展開していますからね。6番から7番街がジャンク屋とか海賊辺りが顔を利かせていますから」

美優「ちょ、ちょっと怖いですね、やっぱり……」

菜々「まあまあそんなところに行かなきゃいいんですよ! ささっ、早く行きましょう!」タタタッ!

P「あんまり走ると腰悪くしますよー」

菜々「そこまで衰えてませんからっ!」タタタタッ!

美優「……ふふっ」

……
…………

――リトット、監視局(通路)

「ああ、お前の言うとおり次元振動が確認されている。規模としては小さなものが計測されていただけだが……」

麗奈「やっぱりそっちの話しか……前回の計測期間からどれくらい経ったの?」

「同規模のものであれば、前回の計測から6ヶ月前だ。たまたまなのかは分からんが、その前と計測期間の感覚は若干狭くなっている」

麗奈「であれば、やっぱり奴らがこっちに直接移動してきている機会も多くなっているのね」

「断定はできんがな。土星圏の広域レーダーでは次元振動の有無に関わらず、蜂が観測されている」

「こちらに来る手段としては、次元振動も関係なく飛んできている蜂のほうが多いだろう」

麗奈「とはいえこのまま続くようで、感覚が短くなれば面倒臭いことになるわね……やっぱり、黒川重工の情報公開制限はこの件?」

「恐らくな。私はそっちの仕事についてはあまり詳しくない。志希が見つかれば話は聞けるんだろうが……連絡手段もないし、地球の何処をふらついているのか」

「……そうだ、麗奈が地球に行って志希を捕まえることはできないのか?」

麗奈「バーカ、いまのレイナサマはただの戦闘機乗りよ。そういう反則はやらないのよ」

「っと、すまんな。そういう話しだったか」

麗奈「まあ、あの入れ知恵もレイナサマがやったわけだけど……どう使うかはアンタたち次第ってことよ」

麗奈「とは言っても、アタシ自体は難しいことはわかんないし、何となく覚えてたこと話しただけだけど? もっと詳しい奴は他にいたんだけどね」

「そうだな……おかげで救える命も増えた」

麗奈「とりあえず話は分かったわ。黒川重工のほうがあの仕事の絡みで公開制限掛けてるなら特に言うことはないわ」

麗奈「それに、どうせプロジェクト・ヴァルキュリアの進捗が進んだらあっちの仕事とも合流するんでしょ?」

「合流というか、こちらに提供という形になるだろうな」

「アーキタイプは別にせよ、基幹システム本体は外部流出を考慮してブラックボックスのままだろうが」

麗奈「こういうときに人間同士で何揉めてるんだか……まあいっか。それじゃ切るわ」

「ああ、気をつけてな」





麗奈「レイナサマに向かって何言ってんのよ。それじゃあね、晶葉」ピッ!



……
…………

――リトット、マーケット2番街、喫茶店(店内)

菜々「はー……疲れた」

P「はしゃぎすぎですよ。買った物、どうするつもりなんですか」

菜々「ヴェールに持って帰るに決まってるじゃないですかー……麗奈ちゃんなら見逃してくれます」

美優「あ、新しい服でしたら……ホクドウに戻ってから買っても……」

菜々「いえいえ! ホクドウはこういう物の品揃えが悪いんですよ、メイド服と靴! そろそろ新しい組み合わせも試したかったので!」

P「……それ着て、黒井大佐とワイワイやるんですか?」

菜々「はぐっ!?」ビクッ!

美優「え?」

P「いや、何となく……」

菜々「……あれはですねぇ、黒井大佐には……お忙しいところナナに付き合って頂いているだけですから」

P「え、そうなんですか?」

P(どう見ても本人はノリノリだったんだが……)

菜々「そういうものなんです。それに、ナナもこの歳になると階級以上には忙しかったりしますから……暇を見つけてこういうことはやっておきたいですし」ハァ……

美優「……ところで、この後は私たち……どうするんでしょうか」

菜々「えーっとですねぇ……夕方頃には楓さんも来るだろうし……」

P「いやそういう話じゃないと思うんですけど。まあ、他にD型が出るって話しならそいつらの撃破任務でも来るとは思いますけど」

菜々「ああそっち……そうですねー、何も無しなら艦のメンテナンスと補給したらホクドウに帰りますね」

美優「そうですよね。やっぱり、こういう任務で少数体制なのは……」

菜々「ちょっと不安ですか? あ、すみませーん、コーヒー3つで」

P「SN-05より編成も少ないですしね。気持ちは分からなくもないですけど」

美優「で、でもっ……私、Pさんがいるなら……その、大丈夫……です……」

P「そ、そうですか……」

菜々「すみませーん! さっき頼んだコーヒー、砂糖いりませんから!」

美優「はい、その……やっぱり、Pさんなら……私たちが危ないときでも、必ず助けに来てくれますし……今回だって……」

P「……まあ、間に合ってよかったですよ。楓さんが艦を上手く下げてくれたのもありますし」

美優「はい……」

菜々「すみませんミルクもいらないんで!」

美優「ふふっ……」


「お待たせしました。コーヒーです」

P「どうもすみません」

菜々「……あのー、Pさん。聞いてもいいですか?」ズズーッ!

P「はい?」

菜々「あのですね、ナナあんまりそういう話には縁が無いんでよく分からないんですけどー」ズズーッ!

美優「……?」

菜々「Pさんっていまお付き合いしている女性の方っています?」

美優「っ!」ブッ!!

P「え? いや、いませんけど」

菜々「へー、そうですかー……ちなみに、いま気になってる女性の方っています?」ズズーッ! ズズッ……

P「珍しいこと聞いてきますね。普段ゲームの話しくらいしかしないのに……」

菜々「ナ、ナナだってこういうお話しは興味ありますからね!? で? どうなんですか?」


ガチャッ!

「いらっしゃいませ」

楓「あ、すみません……えっと、先に来ている人たちが……あっ」

P「おっ! 楓さん来ましたよ」

P(助かった……)

菜々「お疲れ様です楓さん。こっちですよー」

楓「すみません、お待たせしてしまって……」ガタッ

美優「お疲れ様です……」

P「丁度良かった。それじゃこれから――」

楓「いま何のお話をしていたんですか?」

菜々「Pさんがいま気になっている女性の方がいるんですかーってお話を少し」

楓「なるほど、どうなんですか?」グルンッ!

P「……男は俺1人なんですから、その話はやめましょうよ」

美優「いえ、こういうときくらいは……」

楓「……」ウンウン

菜々「まあ確かに不公平かもしれませんね。それじゃ少し変えて……好きな女性のタイプとかあります?」

P「まあ、それなら……」

菜々「それでそれで、どんな人がイイんですかぁ?」

P「木星圏にいた頃の上官の1人がそうだったっていうのもあるんですけど、酒癖の悪くない人がいいですね。酔い潰れて面倒なことにならないような人とか」

美優「」グサッ!

楓「」グサッ!

菜々(あ、やってしまった……)

P「しかもその上官なんですけどね、半日延々と訓練した後に飲みに連れて行かされるんですよ。ホントしんどいのなんのって」

菜々「あの、もうこのお話しやめませんか?」

P「え? 振ってきたのそっちじゃないですか……」

菜々「いえ、そのー……やっぱり男の人がPさん1人だと不公平かなーと思ったので」

P「まあそれならいいですけど……それじゃ店でますか?」

美優「そ、そうしましょう……楓さんも来ましたし……」

楓「はい……」

菜々「それじゃもう少し適当にぶらついて、夜になったらどこかでご飯食べて戻りましょうか!」

P「了解」

……
…………

――数時間後、夜、リトット、マーケット4番街(居酒屋)

菜々「えーと、フライの盛り合わせ、土星サラダ、砂肝、モツ鍋と」

P「生4つですか?」

菜々「あ、ナナは17歳ですからお酒は飲みませんからね? りんごジュースで」

P「ああそう……じゃあ生3つ」

楓「すみません、私ウーロン茶で」

美優「私も……」

P「えっ」

菜々「えっ」

楓「何か?」

P「いえ……じゃありんごジュース1つとウーロン茶2つ、生1つで」

「へいっ」

P「珍しいですね。美優さんはともかく、楓さんも酒頼まないなんて」

楓「私、真面目ですから。帰りのことも考えて、お酒飲んで体調を悪くしたらいけませんし」

P「お、おお……そんなこと言う人でしたっけ……」

楓「何か言いましたか?」

P「いえ……」

美優(今日は絶対に飲まないようにしないと……)

……
…………

――数十分後

楓「かんぱぁーい♪」ガチャッ!

美優「乾杯……」ウーン……

菜々「まあ20分くらいは持ちましたね」

P「最初の我慢はなんだったんだ一体……」

楓「ほらほらPさん、ビール来ましたからもう1回乾杯しますよ」

P「酒来るたびに乾杯するのかよ……乾杯」ガチャッ

美優(飲まないようにしないと……飲まないように……)

楓「あら、美優さん手が止まってますよ? もう飲まないんですか?」

美優「飲みます……飲みます……」ゴクゴクッ

菜々「ま、まあ限界来る前にはナナのほうでストップ掛けますから……」

P「もうゲロ吐かれるのは勘弁してほしいからな……頼みますよ」


ピピピッ! ピピピッ!

P「ん? 安部中尉、端末鳴ってませんか?」

菜々「あらら……はーい、ナナでーっす☆」

麗奈『はいはい。アンタたち何やってんの?』

菜々「いま飲んでたところですよ。どうかしましたか?」

麗奈『いや、アタシいま監視局から出たのよ。アンタたち、今日は外出るって申請出してたでしょ?』

菜々「まだ帰ってなかったんですか? 別件あったんですか?」

麗奈『ちょっと用事があったのよ。ドコ行ってんの? レイナサマもそっち行くから』

菜々「あーえっと、4番街の飲み屋に来てますよ。近くまで来たら連絡ください。迎えにきますから」

麗奈『4番街ね。了解』

ピッ!

P「麗奈が来るんですか?」

菜々「さっきまでお仕事してたみたいですね。まあ麗奈ちゃんもたまにはこういうお店行ったりしますから」

P「まあ、麗奈が来てあの飲んだくれも少しは大人しくなるといいんですけど……」

楓「すみませーん、生おかわりで」

……
…………

本日はこれで終了します。

年明けで副業の都合があって投下ペースが週1というか、これくらいのタイミングくらいになってますが
まあ年齢制限のキツイ魔法少女のほうはさっさと投下終わらせたので来週末頃からは少しペースが戻ると思います。

――数十分後、リトット(マーケット4番街)

P「んっとに、大尉はどこだよ……ここら辺だとは思うけど……」キョロキョロ

P「お、あそこに……大尉、じゃなかった麗奈!」タタタタッ!

麗奈「ん? ああアンタ、ようやく迎えに来たわね」

P「この人混みだと探すのも大変だよ……中尉たちは店で飲んでるから――」

麗奈「その前にちょっと付き合いなさい。どうせアイツらならまだ飲んでるでしょ」

P「ん?」

麗奈「いいから、付いてきなさい」

P「まあいいけど……」

……
…………

――リトット、マーケット2番街(広場)

麗奈「ほら、コレ飲んでいいわよ」ポイッ!

P「ありがとうございます」

麗奈「ふー……艦長の仕事もやるもんじゃないわね。たまにやると面倒ね、ホント」

P「S-01だと適当にしてたんだろ? むしろ普段がそれでよく艦長やれるな……」

麗奈「別に黒井がいるからレイナサマがやる必要ないでしょ。オモチャに乗って遊べればいいのよ」

P「遊ぶって……まあ、いいけど」

麗奈「……」

P「……」

麗奈「……ねえ」

P「ん?」

麗奈「アンタ、これから先……この世界のためにずっと戦っていける?」

P「なんだ突然」

麗奈「いいから答えなさい。どうなの」

P「……さあ、どうだろ」

麗奈「いつかは戦闘機から降りるってこと?」

P「そりゃ誰だっていつかは引退するだろ。俺だって……いまは蜂と戦っているけど、いつかは引退するだろうし」

麗奈「そう、いつか……いつかね」

P「どうした?」

麗奈「じゃあ、アンタはそのいつかの時まで……何があっても戦い続けることが出来る?」

P「どうだろうな。どうあれ、戦うのが仕事なら続けるだろうし、ただ……」

麗奈「ただ?」

P「……俺は、色んな物を無くしてしまったときの、あの感情を覚えている。俺が戦わないことで、誰かが俺と同じような思いをすることになるなら……」

グッ……!!

P「戦い続ける。それだけは、変わらない……俺がここまで来た理由。誰でもない、誰かのために……」

麗奈「……そう。やっぱそっか」

P「麗奈?」

麗奈「安心したようで安心できなかったっていうか……ま、アンタはアンタね」

麗奈「っと……アンタがこっちに来てからまだそんなに経ってないけど、何となく分かるってコトよ。そういうヤツかなって」

P「なんだよ、俺のことは分かりやすいヤツって言いたいのか?」

麗奈「別にそうは言わないわよ。ほら、それ飲んだらさっさと行くわよ」

P「んっとに……まあいいや。それじゃ行くか」

麗奈「……」


麗奈「ア……」


P「何か言ったか?」クルッ


麗奈「……何も言ってないわよ! ほら、さっさと案内しなさい!」バシッ!

P「痛って、叩くなよ……」

麗奈(正義のヒーロー、とまではいかないけど……それがアタシのやるべきことだから、これでいいのかしらね)

……
…………

――数十分後、マーケット4番街(居酒屋)

楓「ほらほら、大尉もぐいっとぐいっと♪」

麗奈「……あのね、レイナサマは酒はあまり――」

楓「はいはい飲みましょうねー。まさかあの大尉がもう飲めないなんて言わないですよねー?」グググッ!!

麗奈「ちょっ!? ぶっ……んぐぐぐ……!」

P「思いっきりビール流し込まれてるけど、アレ大丈夫なのか……?」

菜々「ああもう楓さん! そんな無理やりなんてダメですよぉ!」

美優「解放されてよかった……」

麗奈「ちょっ、ヤダ! 楓アンタ!! やめっ、飲ませんなっ! ちょっと! 燃やすわよ!!」

楓「ダメですー、ダメですー。燃やすのは焼き鳥だけで十分ですー。飲んでくださーい」グググッ!

P「燃やしたら炭になるだろ」

麗奈「菜々! コレ、コイツ! 早くどっかやって! 早く!」ググググッ!

菜々「あわわわわ……か、楓さん、少し飲むのやめましょう? ね?」

……
…………

――翌日、ヴェールSN-52(ブリッジ)

パシュンッ!

麗奈「……」


楓「あ、おはようございます大尉」

美優「おはようございます……」

麗奈「……」

楓「どうかしましたか?」

麗奈「アタシ、絶対アンタとはもう飲み屋行かないわ……」

楓「え?」

美優「うーん……」

麗奈「菜々もよく付き合うわねホント……まあいいわ、作業はどうなってんの」ガタッ

美優「整備班からは補給作業の完了連絡が来ています……艦のメンテナンスは後1時間程掛かるみたいです……」

麗奈「それじゃあ出航準備よ。メンテ終了後、ホクドウに向けて移動を開始、港を出た後、本部に一報入れておきなさい」

楓「了解です。それにしても、すぐ帰ることになって残念ですね」

麗奈「レイナサマは問題ないけど、現状のうちの装備じゃどの道あまり役に立てないでしょ」

麗奈「それにうちの調査隊……まあレイナサマはホクドウに戻ったら降りるけど、次の調査指示も来ているしね」

「デブリの索敵調査ですね。規模の大小に関わらず蜂の巣が紛れていないかって話しですけど」

美優「大丈夫なんですか……?」

「レドームで索敵調査するだけだからね。巣があったとしても極小規模程度だし、もしものときのために、別枠で前線部隊に随伴してもらうから大丈夫よ」

楓「調査隊もお忙しいんですね……」

麗奈「ほら、あまり喋ってないでさっさと出航準備済ませておきなさい。帰りは哨戒区域通るんだし、戦闘が発生する可能性はあるんだからね」

美優「り、了解です……」

……
…………

――数時間後、ヴェールSN-52(食堂)

菜々「へぇー、教導員の方、ようやく来たんですか」

黒井『どうやらギチトーのほうで別件が入ったらしい。全く、土星圏のほうが余程人員が必要だというのに、地球に引き篭もっている奴らは本当にどうしようもない』

菜々「まあまあそう言わずに。はむっ……そういえば黒井大佐、今期の実績どうすればいいですか? Pさんの分ですけど」モグモグ

黒井『ヤツからは色をつけておくように言われている。菜々ちゃんが書く分については思ったとおりに出してくれて構わん』

菜々「ヤツって、あっちにいる大佐のことですか? 別に、ナナはPさんなら普通に優良で付けていいと思いますけどね」

黒井『あの男の今後の仕事の為だ。ヤツとしては今後迎え入れる為の準備をしたいのだろう』

菜々「うげっ……てことはPさんはそのうち他所に行っちゃうってことですか……ううう、せっかく初めてのナナの部下でしたのに」

黒井『ま、まだしばらくはこちらで預かることになっているから、そ、そんな顔をする必要はない!』

菜々「でもぉ、Pさんがどこに異動することになるのかは知りませんけど、ナナはまだまだこっちでのお仕事だし……」

黒井『ん……ん、まあ、もし菜々ちゃんに適性があれば異動という可能性もある』

菜々「あ、それ前に聞きましたね。なんかそのうち、新規に立ち上げる別働部隊の適性試験をするって。全員対象なんですか?」

黒井『まあ……そうだな。大体の者は受けさせるみたいだ』

菜々「うー、それならその適性試験でいい結果が出せれば……! あわよくば次のI@LPの適性判定のネタにも……」

黒井『い、いやぁ……菜々ちゃん、そっち行きたいなら、ここで頑張ったほうがいいかもしれんが……』

菜々「とは言っても、結果がついてこないんですよねぇ……ナナなりには頑張ってるつもりなんですけど」


パシュンッ!

P「ん、安部中尉」フワッ

菜々「お疲れ様ですPさん。休憩ですか?」

P「ええ、グレイプニールの調整も終わったので今のうちに飯でも食おうかと……端末で誰と話してたんですか?」

菜々「ああ、それなら……」スッ


黒井『私だ』


P「黒井大佐……お疲れ様です」

菜々「いま丁度Pさんのお話してたんですよ。頑張ってるぞーって」

P「そ、そうですか」

黒井『勘違いをするな。私は安部中尉の評価を聞いていただけで、私自身は貴様を評価しているわけではない』

P「分かってますよ……」

菜々「あ、そうそうPさん、ホクドウにいたとき、地球からこっちに来る教導員のお話しがあったじゃないですか」

P「ありましたね。到着が遅れるとかでしたけど」

菜々「ホクドウに来たみたいで、ナナたちも戻ったら訓練はそっちに混ざるみたいですよ。どんな方なんでしょうかねー」

P「まあ……戻った後に何度訓練できるかは分かりませんけどね。俺も楽しみです……じゃ、食券買いますので」

菜々「あ、すみませんね呼び止めちゃって」

黒井『貴様、あまり安部中尉に迷惑を掛けるなよ』

P「了解です」

……
…………

――十数分後、ヴェールSN-52(食堂)

P「ふうん、土星圏の作業用コロニーが一部統合か……」カタカタカタッ

P「とはいえ、まあ軍が常駐する事を考えたら場所によってはそうなるか。部隊の運用も――」


美優「こんにちは」フワッ


P「ん……お疲れ様です。美優さんも休憩ですか?」ピクッ

美優「はい。楓さんがまだ空かないので、先にご飯をと思って……」

P「珍しいですね。あの人、仕事終わらせるの早いと思ってたけど」

美優「ほら……昨日の、小関大尉と飲んでいたときのことで……大尉に色々お仕事振られちゃっていましたから」

P「ああ……まあ、それならいいや」

美優「ふふっ。端末で何を見ていたんですか?」ガタッ

P「ニュースと、広報から来てる広告ですよ。あまりこっちの事情とかには触れてなかったので……ん?」ピピッ!

P「新しい広報か……なんだこんなのか」ピッ

美優「何が届いたんですか?」

P「I@LPってやつ、ほら……なんだっけ、広報のほうでやってるアイドルの」

美優「そういえばこの間、適性試験があったみたいですね。でも、このお仕事をやりながらアイドルなんて……難しいですよね」

P「まあ、土星圏に来たらそっちの仕事はないみたいですからね。木星圏だと、ヴェールにスペース作ってレッスン場とかありましたよ」

美優「そうなんですか……」

P「まあそれも土星圏だと無いみたいだし、こっちで適性試験に受かった人は木星圏か火星圏に戻されるみたいですけど」

美優「でも……やっぱりこっちでも人気ですよ。同僚とも、たまにI@LPのお話しもしますし……」

P「へえ、美優さんもこういう、興味あるんですね」

美優「わ、私がやりたいとか……そういう話じゃないんですよ? ただ、知り合いの誰が試験を受けたとか、そういうお話とかで……」

P「……」

美優「……え、あの……なんですか?」

P「いや、美優さんならイイとこ行けるんじゃないかと思って」

美優「え……えっ……?」

P「まあこっちの仕事ありますからね。I@LPと任務両方消化するなんて……広報のアイドルもよくやるよなぁ……」カタカタカタッ

美優「……」

P「休暇に利用する施設の広告とか……2泊3日の休みなんていつ取るんだよ……」ピピッ

美優「……あの」

P「はい?」

美優「わ、私が……アイドル、やったとしたら……どうですか?」

P「は?」

美優「あっ、えっ……いえ、な、何でもないです……」

P「……まあ、応援するだろうなあって。俺、アイドルはあんまり興味ないけど、美優さんがアイドルとかやり始めたら……うーん」

P「どうするのかなあ、応援とかって……安部中尉とか色々教えてくれたりするのかな」

美優「……そ、そうですか」

……
…………

――数日後、戦闘宙域

蜂「!!」ズドォンッ!

P「安部中尉!」ギュンッ!!

菜々『大丈夫ですよ! っていうかグレイプニールへの搭載用の粒子減衰膜とか使っちゃったせいでこっちもグラム使えませんから!』ギュオオオオッ!

P「これ機体周辺が減衰区域になるのってダメだろ……安部中尉が前に出れないならこっちで対処します。弾幕支援お願いしますよ」ギュンッ!

菜々『うううう……ミョルニルで奥で固まってる3匹を散らしますよ! 手前に来たヤツからお願いします!』ボシュシュシュッ!

蜂「……」ギュンッ!

蜂「……」ギュンッ!

蜂「……」ギュンッ!

P「中尉の機体周りにいるとこっちの手数が減るからマニューバも組めん……まあいい、ドラウプニル!」ギュオオオオオッ!

ドガガガガガガガッ!!

蜂「!?」ドガアアアアアンッ!!

P「単独のマニューバでも問題ない……!」ギュンッ!

ピピピッ!

麗奈『前線、弾幕支援するわよ。攻撃範囲には気をつけなさい』

ズドドドドドドドッ!!

P「アルヴァルディの援護か……これで後1匹……!」

ズドォンッ!

ドガアアアアアアアアンッ!!

P「他の小隊で片付けたか……」

ピピピッ!

『最後1匹、片付けといたぜ。そっちばかりにスコア取られ場仮だと、俺たちも困るからな』

P「すみません、ありがとうございます」

『気にすんなよ。そっちは運用テストで出ずっぱりなんだから、少しはこっちの部隊にも分けてくれよ』

P「了解。それじゃ……戻りますか」

菜々『そうですねー。はぁ、戦闘無く平和にホクドウに戻りたかった……』

P「んな無理なこと言わないで下さいよ。リトットで特に対応も無く戻るから哨戒区域取ってるんですから」

菜々『ですよねー……はぁ』

……
…………

――数時間後、ヴェールSN-52(格納庫)

菜々「いやいや、今回の兵装はダメですよ」

P「まあな……制限が掛かるってのはちょっと」

菜々「そもそもですよ? 機体粒子保護して被弾抑えるつもりがビーム出力も落ちるなんて、逆に動きにくかったですよ!」

P「まあ、立体機動で頑張ってくださいってことで」

菜々「ナナはか弱い隊長なので、Pさんや麗奈ちゃんみたいな危ないことはできないんです!」

「むう……こちらとしても、想定以上に機体側に影響が出てしまったので……」

P「コンセプトとしては悪くないと思うんだけどな。実際、F型やS型相手にして怖いのって粒子砲だし」

菜々「防御用の兵装だったら、別で検討してるサイドバインダーだけでいいんじゃないですか?」

「いくつか検討されているものがあるんですよ。今回の粒子保護膜が上手く行けば機体の拡張性も確保できると思ったんですが……」

P「難しいな。追加兵装で被弾を抑えるならその分、装備も制限されるだろうけど」

菜々「まー当たらないのが一番なんですけどね」


楓「粒子減衰ミサイルと同様の効果で補おうとしたからダメだったと思いますけど……専用の粒子保護膜を作る、とか……」

菜々「それ、コスト高そうですけどね」

P「いまの運用テストで使っている装備は量産前提だから高級生産品となるとダメですね」

「了解です。こちらも頭からやり直しですね。機体保護用の装備については詳しそうな方が別にいますし、そちらに一旦回してみます」

菜々「今回の運用テストの開発部ですか?」

「いえ、ナシヤマに勤めてる方で、別プロジェクトに参画されている方ですね。いまの仕事内容はちょっと聞いてませんが」

楓「こういうことに凄く詳しい人っていそうですよね」

P「まあ、そういう頭良さそうな研究者っていうのなら、いそうっちゃいそうですけど」

「凄い人ですよ。グレイプニールの基本設計にも関わっていますからね」

菜々「おおお、それは確かに凄そう……」

P「それが何でG2なんて足の遅いもん作ってしまったんだか……」

「ははは……とりあえず再検討ということで、こちらは戻しておきます。次のテストもお願いします」

菜々「はーい」

……
…………

――ヴェールSN-52(通路)

菜々「うーん……ようやく安全航路圏に戻れる……」フワフワ

P「まあ、艦の編成も少ないから長時間哨戒区域に滞在できませんからね。次の戦闘までは休みか……」

楓「お疲れ様です。少し、お休みになりますか?」

P「評価報告も書くし、それ終わってからにしますよ」

菜々「それじゃいつも通りPさんのお部屋でダラダラ過ごしましょうか!」


美優「あ……」フワッ


楓「お疲れ様です美優さん。交代ですか?」

美優「はい……哨戒区域に入ってからは、ずっとブリッジ担当になっていましたので……」

菜々「大変ですねー。ナナたちは戦闘になったら部屋からダッシュすればいいですけど」

美優「あの、みなさんもこれからお休みですか?」

菜々「運用テストの評価報告書くんですけどね。Pさんが」

楓「はい、Pさんが書きます」

P「結局俺ばっかり書いてるんですよ」

美優「そ、そうですか……」

菜々「なのでラピッドストライカー隊は、これからPさんの部屋でダラダラ過ごす時間なんです」

P「休むなら自分の部屋で休んでくれませんかね……」

楓「エナドリ、新しいの入れてくれましたか?」

P「この前入れたヤツ全部持ってったじゃないですか……そろそろ飲んだ分返してくださいよ」

楓「Pさん? それは上官に奢れって言ってますか?」

P「奢る奢らない以前の話で、他人の部屋の冷蔵庫の中身を勝手に持っていかないでください」

楓「お酒飲んだ後はエナドリが効くので……」

菜々「いまの聞かなかったことにしておきましょうか」

美優「……あ、あの」

菜々「はい?」

美優「み、みなさん、これからPさんのお部屋に行くなら……」

P「この人たちが勝手に言ってるだけなんですよ」

美優「わ、私も……その、お邪魔してもいいですか……?」

楓「……」

P「え、いいですけど……」

菜々「でもナナたち、一応お仕事やってますけどいいですか?」

美優「い、いえ、大丈夫です……大丈夫……」

P「そっちはゲームやってばかりだけどな……まあ、特に何も無くていいなら」

美優「そ、そうですか……ほっ、それじゃあ、失礼しますね」

菜々「美優さんもラピッドストライカー隊に臨時参戦ですね!」

楓「お酒、こっそり持ってきましょうか?」

美優「い、いえっ! だ、大丈夫ですから……」


P(というか隣の2人が完全に遊んでるだけだし断るに断れん……)


……
…………

本日はこれで終わります。

デレステは上位星15作れるようになってからボーダーが2倍とか3倍に伸びたからこっち来る時間がないんですよね
ルナショーも終わったからこっち戻れると思ったけど茄子フェスでこっちもボーダー伸びてる状態ですし

>>410訂正

ピピピッ!

麗奈『前線、弾幕支援するわよ。攻撃範囲には気をつけなさい』

ズドドドドドドドッ!!

P「アルヴァルディの援護か……これで後1匹……!」

ズドォンッ!

ドガアアアアアアアアンッ!!

P「他の小隊で片付けたか……」

ピピピッ!

『最後1匹、片付けといたぜ。そっちばかりにスコア取られてばかりだと、俺たちも困るからな』

P「すみません、ありがとうございます」

『気にすんなよ。そっちは運用テストで出ずっぱりなんだから、少しはこっちの部隊にも分けてくれよ』

P「了解。それじゃ……戻りますか」

菜々『そうですねー。はぁ、戦闘無く平和にホクドウに戻りたかった……』

P「んな無理なこと言わないで下さいよ。リトットで特に対応も無く戻るから哨戒区域を通っているんですから」

菜々『ですよねー……はぁ』

……
…………

――数十分後、ヴェールSN-05(Pの部屋)

菜々「ちょっと楓さん! そこ右! 右から来てますよ!」ポチポチッ!

楓「あっあっ……あ、死ぬ……」ポチポチ

菜々「ダミーバルーンで敵の視線を逸らしておくから回復しといてください!」

美優「……」


P「搭載兵装の変更等が発生せず、えーっと……現行運用と同等の戦闘を行えるため……」カタカタカタッ!


菜々「あああっ!? ナナ、ナナのほうにヤツが来ちゃいましたよ! あっ、死ぬっ! あっ、あ……」

<ドガーンッ!

楓「ああああ……リーダーがお亡くなりになってしまいました……」

菜々「ナナはもう亡霊になりました……あとは楓さんのほうで削りきってください……」

P「グレイプニール自体の耐久性については第二世代で大幅に改善されたが、機動性が低下しており採用率が低いこともあるので……」カタカタカタッ!

美優(本当にPさんがお仕事している横でゲームで遊んでる……)

P「んー……改善提案の部分どうするかな。運用は何となく書けそうだけどコスト面のところはよく分からんな……」

美優「あの、Pさん」フワッ

P「んー……ん、はい? どうしました?」ピクッ

美優「いえ、評価報告……どうですか?」

P「ちょっと書く内容が難しくて。今回中尉が使った粒子減衰膜が思った以上に使い物にならなくて、改善提案の部分をどう書こうかなって」

美優「スクリーンで戦闘を見ていましたけど……効果自体はあったんですよね?」

P「ええ、直撃コースじゃなかったみたいですけど、機体周辺の減衰区域になったところに飛んできた粒子砲の威力は下がっていたみたいですからね」カタカタカタッ!

ピピッ!

P「貰ってきた戦闘記録だとここかな……20の範囲を通過した辺りで粒子砲の減衰が確認できていますし」

美優(Pさんの背中……)

P「ただ結局、中尉のOPFからグラムを撃とうにも粒子減衰区域からの射撃で威力が出なくなったってところがあって……」

美優「すみません、後ろから失礼します……端末のキーボードを……えっと、計測範囲がこの位置からなので……」グイッ!

ムニュッ

P(おうふ……弾力のあるモノが……)

楓「……」ピクッ

美優「粒子減衰区域をこの範囲まで縮めることができれば……機体の耐久性も確保できますし、外付けの装備でなら戦闘に参加することも……」カタカタカタッ

ムニュッ、ムニュッ!

P「は、はい……そうですね。それなら評価報告もとりあえず形は作れそうだし、それで……」

P(やめろ、悪意無くそんなモノを押し付けるな……やめてくれ……!)

菜々「うーん、強化素材が足りない……楓さんもう1回行きます? 楓さん?」クルッ

楓「それじゃあダメです。Pさん、格納庫でお話ししたじゃないですか。専用の粒子保護膜を作ったほうが良さそうですって」ズイッ!

美優「楓さん……」ハッ!

P「えっ? あ、ああ……そ、そうでしたね。でもそれだとコストは高いだろうって話も……」

楓「とはいえ今回の試作兵装は現行で使用している機能の流用でしたし……グレイプニールの機体仕様を見ても、標準兵装として盛り込む形にしほうが……」カタカタカタッ!

フニッ、フニッ

P(こっちからも何か当たっとる……)

美優「いえ、ですけど楓さん、運用テストの観点としては……」

楓「だけど実際に導入する場合は機体仕様を変える方向でいかないと……」

ムニュッ! ムニュッ!

フニッ、フニッ!

P「すみません安部中尉、この2人を――」

菜々「あーはいはい。ナナは今から1回クエストへ行くのに忙しいのでそっちでよろしくやってくださいはいはい」シッシッ!

P「……」

……
…………

――数日後、ヴェールSN-05(ブリッジ)

麗奈「はぁ……わざわざ哨戒区域を通ってきたから、戻るのに時間掛かったわね」

楓「まあ、リトットでの調査も実質やりませんでしたから……」

麗奈「来る途中でD型を始末したのもねぇ……ま、たくさん来られたら面倒な奴らだろうけど」

美優「大尉、ホクドウからガイドラインが来ました。入港準備に入ります」カタカタカタッ!

麗奈「それじゃS-01から来たメンバーは1度本部に立ち寄ってから戻るわよ。調査隊メンバーは艦で待機、こっちの艦長からは連絡があって木星圏から帰ってきてるわ」

麗奈「再編成で艦長は戻るから、後はそっちの指示に従っておきなさい」

「いやー、新種は倒したけどあんまり成果無かったわねぇ」

美優「直近で最新の戦闘データを採取できただけでも……十分な成果だと思いますけど……」

麗奈「そこら辺は黒川重工に文句言っておきなさい。それじゃ、アンタたちもお疲れ様」

楓「私たちはS-01に戻った後のほうが大変ですけどね」

麗奈「土星圏にいるならドコも似たようなもんよ。ほら、さっさと艦は港に入れて、アタシたちは降りる準備するわよ」


……
…………

――数時間後、ホクドウ、軍本部(会議室)

黒井「で、成果はこれだけだというのか」バサッ!

麗奈「まあいいでしょ。レイナサマも暇潰し程度にはなったわよ」

菜々「ま、まあ調査隊の本作業には参加しないで帰ってきましたけど、その分戦闘データは結構揃いましたからね? ラピッドストライカー隊としての活動は大成功でしたけど」

P「ラピッドストライカー隊の運用テストについても、今回の調査活動で予定より早く項目を消化できましたので……」

黒井「フンッ! 黒川の馬鹿共が、これではリトットの運用管理を民間に渡している意味がない! これならばコロニーの管理を国連に戻したほうが余程マシだ!」

美優「ひっ……」ビクッ!

麗奈「……」

楓「まあまあ、そんなに怒らないでください。そういうお話は偉い人たちがすることですから……」

P「他に報告内容ありました?」

菜々「あとは……ないですね。とりあえずナナたちからはこれくらいですかね」

麗奈「それにしても、D型のことを考えるなら現行の対応としてはG2を引っ張り出すしかないってのがね」

P「非常に面倒だ……あんな物乗りたがるパイロットは中々いないぞ……」

菜々「でも少なくともG2で標準搭載している大口径のグラムくらいは無いと戦うのも大変ですよ。そりゃ麗奈ちゃんとPさんなら何とかしちゃうんでしょうけど……」

麗奈「他の奴らの鍛え方が足りないのよ」

P「麗奈の訓練に付き合って平然としていられる奴のほうが少ないと思うんだが」

楓「G2自体は工場のほうで大量に余してそうですし、すぐ持ってこれると思いますけどね」

菜々「運用手段ないんですけど」

麗奈「ふーん……よしP、アンタG2使いなさい」

菜々「えっ」

P「は?」

麗奈「アンタならいけるでしょ。楓、テストやったブースターユニットってどうなったの?」

楓「ええと……まだオート・クレールのほうでの採点は終わってないみたいですけど、恐らく実装対象になるかも……っていうお話なら……」

麗奈「じゃそれ貰っておきなさい。G2に括りつけて機動力確保すれば飛ばすくらいいけるでしょ」

P「操作性も分からんから出来るなんて言えないぞ」

麗奈「出来なくてもやるのよ。アンタはそれくらいやらないとダメよ」

P「……」チラッ

黒井「その目はなんだ。私に助けを求めるな」

菜々「ま、まあまあ、そのお話しはまた今度ってことで……」

P「もう嫌な予感しかしないんだが」

……
…………

――数時間後、ホクドウ、軍本部(資料室)

P「……」カタカタカタッ!

ピピッ!

P(アルヴィスの更新情報にリトットでの戦闘はないか……俺たちの戦闘記録は載せられているが)

P(黒川重工のほうで何かあるのは間違いないだろうが、そこら辺の情報はここに乗っかってこないだろうな)ピッ……


パシュンッ!


P「ん」ピクッ!

麗奈「……あれ、アンタ1人?」

P「たい……麗奈か。資料室に用事……あるのか?」

麗奈「何よその顔、レイナサマも仕事してるわよ。アンタより忙しいんだから」

P「まあ、そうだろうけど……」

麗奈「あれ、他のミーミルも点検中じゃないの……ちょっとアンタ、そこ除けなさい」

P「俺も調べ物があるんだが」

麗奈「レイナサマの命令に逆らうんじゃないわよ。それに何見てんのよ」

P「いや、結局黒川重工のほうでストップ掛けていたD型との戦闘記録は公開されなかったのかと思ってな」

麗奈「ああ、それならアンタは気にしなくていいわよ」ガタッ

麗奈「ほら、そんなことどうでもいいから、さっさとレイナサマに椅子渡しなさい!」バシッ!

P「痛って……わかったよ」ガタッ

麗奈「アンタ、明日休みでしょ? 休み明けたら訓練なんだから、しっかりやりなさいよ」

P「分かってるよ……あれ、麗奈は休みじゃないのか?」

麗奈「ちょっと工場に用があるのよねー。楓も菜々の代わりに評価報告の結果もらいに行くみたいだから一緒に連れてくけど」カタカタカタッ!

P「そういえば2人してそんな話はしてたな……了解」

パシュンッ!

……
…………

――ホクドウ、軍本部(通路)

P「んっとに麗奈は……S-01はまだ入れないんだったか。明日また資料室に行くか……?」

P「……ん」ピクッ


麗奈『ああ、それならアンタは気にしなくていいわよ』


P「あの言い方……麗奈、なんか知っていたのか?」

P「……」

P「いや……麗奈なら、必要なら俺たちには何かしら教えてくれているだろうし、気にすることでもないか」


……
…………

――夜、ホクドウ、軍本部、宿舎(Pの部屋)

ドサッ!

P「ふう……疲れた」

P「明日1日休み挟んでから訓練か……教導員の話でも誰か捕まえて聞いておくか」

P「明日、明日……そういえば、明日は……」

ピピピッ! ピピピッ!

P「ん、通信……しまった、履歴付いてる……本部にいたとき気付かなかったな」ピッ!

P「すみません、Pです」

美優『は、はい……お疲れ様です……』

P「すみません美優さん。ちょっと本部に残っていたんですけど、連絡に気付かなくて……」

美優『いえ、お忙しかったのなら……』

P「ミーミルを使ってただけですよ。それより、何かありましたか? 何回か連絡してくれたみたいですけど」

美優『え、えっと……その……』

P「……」

美優『あ、明日、お休みですよね、私たち……その、特に予定が無ければ、なんですけど……町に行きませんか……?』

P「分かりました」

美優『そ、そうですよね、Pさんも別件とか……え?』

P「朝に少し作業があるので、昼頃に広場前のステーションで合流ってことでいいですか?」

美優『えっ? あっ、あ……は、はい……』

P「それじゃ明日ステーションでってことで……今日はもう遅い時間ですし、失礼しますね」

美優『は、はい。し、失礼します……』

ピッ!

P「……」


P「……これはあれか、デートか」


……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(美優の部屋)

美優「明日、明日……えっと、お昼に駅前で待ち合わせならご飯を食べてってことになるし、近くのお店……」カタカタカタカタッ!!

美優「あ、あと、行く場所、行く場所……え、映画とか……あ、でも映像舞台もやってるはずだから」カチッ!

ピピッ!

美優「よ、予約で埋まりきってる……空いてる時間、内容は……レビューで評判が良さそうなモノで……」

美優「ああでも、Pさんはこういうことはよく知らないってお話ししてたから……ううう……さ、誘えたのは良かったけど、明日やることが……」

美優「……」チラッ

美優「お昼に待ち合わせだから、寝る前にもう少し色々調べておいて……」カタカタカタッ!

……
…………

――翌日

ピピピピピッ! ピピピピピッ! ピピピピピッ!

美優「……」

ピピピピピッ! ピピピピピッ! ピピピピピッ!

美優「ん……んぅ……」モゾッ

ピピピピピッ! ピピピピピッ! ピピピピピッ!

ピピピピピッ! ピピピピピッ! ピピピピピッ!

美優「目覚まし……朝……!?」ガバッ!!

ピピピピ……

美優「あ、あああ……! も、もうすぐで……お昼……」サーッ……

……
…………

――午後、ホクドウ、ショッピングモール(広場前)

P「……」カタカタカタッ

P「……これか、朝に教えてもらった教導員のデータ……財前時子……地球から来たってことはエリートってとこか」

P「財前中尉……この年齢で中尉か。エリートっつってもコレは中ないな……」

P「本人の宇宙での戦闘経験は無し、か……いや、ヴェールの運用経験が残ってるな。この年齢でどういうルートでそこまでやれてるんだ?」

P「まぁわざわざ地球から来たってことはそれなりってことなんだろうけど……教導を受けたパイロットや指揮官で実績をあげている奴もいるんだろうか」

P「この辺の事情はよく分からんな……」


美優「P……Pさん……!!」タタタタタッ!!


P「ん、美優さん……お疲れ様です」ピッ!

美優「すっ、すみま……すみません……お、遅れて……」ハッ、ハァッ、ハァッ……

P「わざわざ走ってきたんですか……いや、俺のほうも朝に貰ったデータの確認をしていたので別に……」

美優「で、でも、その……す、すみませんでした……」ハァ、ハァ……

P「ま、まあまあ……それじゃあ、これからどうしますか?」

美優「え? あ、そ、そうです……えっと、ま、まずは……えっと……」

P「……それじゃあ、どこか店に入ってもいいですか? 待ち合わせってお話しだったんですけど、朝から別件があってまだ飯食ってないんです」

美優「へ? あ、わ、わかりました……」

P「えーっと……俺はこっちの店はよく分からないんで、美優さんの知ってる店とかがあれば教えてくれませんか?」

美優「は、はい……」

……
…………

――数十分後、ホクドウ、ショッピングモール(喫茶店内)

P「スイーツの店か……」キョロキョロ

美優「い、一応軽食もありますから……あの、いまいち、でしたか?」

P「いや、1人だとこういう店に来る機会もないですし……すみません」

「はーい♪ ご注文どうぞっ」

美優「ええと……コーヒーとランチのAをお願いします」

P「ああ、コーヒー2つで。あとランチCと……ショートケーキ」

「かしこまりましたー♪」

美優「……甘い物、お好きなんですか?」

P「え? いや、むしろあまり食べませんよ」

美優「そ、そうなんですか?」

P「美優さんの知ってるお店ですし、普段は来る機会もないですからね。せっかくだし甘い物でも頼んでみるかなと思って」

美優「ほっ……それならよかったです。あまり食べないのに注文するのはどうしてなのかと思って……」

P「物は試しってヤツです。たまにはこういうのもいいかなって」

……
…………

――数分後

「お待たせしました、ショートケーキになりまーす♪ ごゆっくり☆」

P「さて……ケーキなんて随分と食べてなかったからな」

美優「私は、お昼ご飯があるから頼みませんでしたけど、ここのケーキは美味しいですよ」

P「どれどれ……」スッ……

美優「どうですか?」

P「……甘い。思ったより甘いな……うん、美味い。たまにはこういうのも、いいかな」

美優「そうですよね。私も、買い物の帰りに寄ったときには頼むんです。美味しいですよね」

P「うん……美味しいです。こういうのが流行りなのか」

P(ダメだ……甘すぎる。1つでも余るなこれは……)

美優「ふふっ、気に入ってくださったなら嬉しいです」

P(まあ……本当にたまになら、いいか……)モグモグ……

……
…………

――ホクドウ、ショッピングモール(百貨店内)

美優「これ、どうですか?」

P「麦わら帽子か……うーん、まだ夏の季節じゃありませんからねぇ……」

美優「……そ、それじゃあ、例えば……水着を着ていたら……」

P「……それは、まあ……似合うと思います、多分」

美優「……」

P「……」

美優「……え、えいっ!」

ポスッ

P「ん……なんですか」グイッ

美優「……Pさんは、あまり麦わら帽子は似合わないですね」

P「被せてきておいてそれを言うのか……」

美優「ふふっ……♪」


……
…………

あれ?
何か変なタイミングですけど今日はこれで終わります。

――ホクドウ、工業ブロック、オート・クレール社(オフィス)

楓「予定していた兵装分のテストも全部終わらることが出来たのでよかったです」

麗奈「採用予定のレギンと、後は検討対象になったのがテストした分の半分か……まっ、思ったよりは使えそうなもんあったんじゃないの?」

楓「あとはG2の手配も纏めて頼めたのはラッキーでしたね。ブースターユニットの調整と合わせて準備してもらえることになりましたし」

麗奈「軍の工場に置いてあるヤツ持ってくるのも面倒だったから丁度いいわ。調整はPが勝手にやるだろうから、とりあえず括りつけてもらえばいいし……っと、ちょっと待って」ピピピッ!

麗奈「誰よ」ピッ!

菜々『あ、もしもし麗奈ちゃんですか? いま連絡しても大丈夫でした?』

麗奈「楓のほうの評価報告結果も貰ったし手空いたところよ。なに?」

菜々『いえー、Pさんそっちに来てませんか?』

麗奈「P?」

楓「いえ……来ていませんけど」

菜々『あららそうですか……どこいったのかなぁ、連絡もつきませんし』

麗奈「何かあったの?」

菜々『あ、いえ、これからちょっと用事が出来て本部に行くんですけどね、丁度いいからついでに新しい教導員の方にご挨拶しに行こうかと思ってPさんを探してたんですけど……』

麗奈「アイツ今日はオフでしょ? どこか行ってんじゃないの?」

菜々『あっ、そういえば……Pさんから外出連絡が来てたような。ちょっと確認します』

ピッ!

楓「Pさん、どこ行ったんでしょうか?」

麗奈「さあね。ま、休みなんだし好きにさせればいいでしょ。それより楓、アンタお腹空いてない? 酒は飲まないけどちょっとアタシお腹空いたのよね」

楓「お酒……」

麗奈「何よその顔は」

楓「いえ、明るいうちに飲むのも、たまにはいいかと思って……」

麗奈「アンタ、部屋に隠しているもん没収してもいいのよ?」

楓「!?」

楓「な、なんのことでしょうか……」

麗奈「アタシの目を見て言いなさい」

麗奈「ま、飲みたいなら夜に菜々とでも行ってきなさいよ……ほら、行くわよ」

楓「はーい」

麗奈「……」

楓「大尉?」

麗奈「ん、何でもないわよ」

麗奈(そういえば、今日は……)

……
…………

――ホクドウ、ショッピングモール(シティホール)


『アタシは最後まで、一緒に行くことは出来ない……だから、アタシの願いを、連れて行ってくれ』

『……まっ、それくらいならいいケド』


美優「……」

P「……」


『それじゃアタシからアンタに餞別』

『これは……』

『アタシに見せた意志……貫いてみせなさい。アンタだけは、最後まで』

『……ああ』


美優「……」ウルウル

P「……」


……
…………

――数時間後、夕方、ホクドウ、ショッピングモール(広場)

美優「映像舞台、どうでしたか?」

P「面白かったですよ。はじめて見ましたね。あれ、全部役者の人たちは別々の場所で撮影しているんですか?」

美優「全員が全員じゃないみたいですけど、軍に所属している方もいるみたいで、そういう人たちは専用の艦内スペースで演技の撮影を別でやっているみたいですよ」

P「へぇ、随分と大変そうだな……」

美優「そうですよね。特に広報のアイドルだと宇宙に出ている場合は収録も大変みたいで……」

P「アイドルも楽じゃないな……まあ、俺には縁のない話だけど」

美優「ふふっ、Pさんも、もしかしたらある日突然、広報から適性があるってお話でアイドルのプロデューサーになったりするかもしれませんよ?」

P「ははっ、どういう状況ですかそれは……まあ、そんなことになったら俺も前線の仕事が無くなるだろうし引退しますよ」

美優「……あら、もうこんな時間ですね。Pさん、夕食はどうしましょうか?」

P「……」ピクッ

美優「この時間からで、入れそうなお店は……」

P「美優さん」

美優「はい?」

P「すみません、暗くなる前に別件で済ませたい用事があるんです。それなりに時間が掛かると思うので、夕食は……」

美優「あ……そ、そうでしたか。すみません、朝もお仕事みたいで、夕方も……私、タイミングの悪いときにお誘いしちゃいましたよね」

P「いえ、そういうわけじゃ……その」

美優「……」

P「楽しかったです。久しぶりに……だから、また誘ってください」

美優「……は、はい」

P「それじゃあ、今日はありがとうございます。お疲れ様でした」

タタタタタッ……

美優「あっ、Pさ……」

……
…………

――同時刻、ホクドウ、ショッピングモール(広場)

麗奈「はー、結局ご飯食べてから適当にぶら付いて、大分時間潰したわね。もう夕方か……」

楓「このまま飲みに行くのはどうですか?」

麗奈「ふざけんじゃないわよ。飲みたきゃ菜々を呼びなさい、菜々を」

楓「それじゃあ菜々ちゃんに通信して……」



「楽しかったです。久しぶりに……だから、また誘ってください」



楓「……」ピクッ

楓(いまの声……)キョロキョロ

P「それじゃあ、今日はありがとうございます。お疲れ様でした」

美優「あっ、Pさ……」


楓(あそこに、Pさんと……美優、さん……?)


美優「……」



楓(Pさん、どこに……)

麗奈「ま、レイナサマも暇じゃないしそろそろ帰るか……」

楓「すみません大尉……私、ちょっと用事があるので」

麗奈「ん? 一人で飲みに行くの? まあゲロ吐かない程度にしときなさいよ」

楓「はい」

タッタッタッタ……


……
…………

――ホクドウ、ショッピングモール(花屋前)



P「……」


P(花は……今回もいいか)


……
…………

――数十分後、ホクドウ(共同墓地)

P「……ここも、ナシヤマの墓地とは作りが一緒か」


楓(どうしてこんなところに……Pさん……)


P「父さん、母さん」スッ


楓(……!)

楓(Pさん、もしかしてご両親を……)


P「ナシヤマの墓じゃなくても、共同墓地ならどこでもいいよな。まあ、二人とも宇宙で死んじまったけど」

P「俺も、ようやくこんなところまで来たよ。ついこの前まで木星圏にいたけど、いまじゃ前線だ」

P「二人が生きていた頃はキラー・ビーもいなかったし、土星圏は今より安全だったんだろうけど」

P「今じゃ戦いばかりで、最近は俺も何がしたくて軍に入ったのか分かんなくなっていたよ。ホクドウに来たばかりの頃は、特に……」


『さあ……軍にいるってことは、知らない人のために戦うってことでしょうけど、俺自身が本当は何がしたいのかは……よく分からないです』


P「だけど、蜂と戦って、守れたものもあって、みんなと一緒にいることができて、嬉しかったこともあって……」

P「いまなら、もう少し違うのかなって思ってる」


『戦い続ける。それだけは、変わらない……俺がここまで来た理由。誰でもない、誰かのために……』


P「俺が戦うことで、俺のような思いをしなくて済む人が増えるなら、戦い続けるのもいいかもしれない」

P「だから、いまはそれでいいのかなって思う」

P「最後まで、俺がちゃんとやりきれるように……見ててくれ」

P「……共同墓石くらいは綺麗にしてから帰ろうと思ったけど、案外綺麗なもんなんだな」

P「それだけ、ここに来る人が多いってことか」

P「そうだよな、ここは……ナシヤマ以上に戦いが多くて、その分死ぬ人も多いんだよな。ジョシュア中尉も……」


スッ……

P「また来るよ。今度は……もう少し平和になってからとか、かな」


楓(……)


……
…………

――夜、ホクドウ(共同墓地前)

P「……帰るか」


楓「Pさん」


P「っ!? 高垣中尉……どうしてこんなところに」

楓「中尉はダメってお話したはずですよ。その……すみません、夕方に街でPさんを見かけて、それで……」

P「……まあ、野暮用です」

楓「ご両親……なんですよね。聞いちゃって……」

P「もう随分前です。土星圏で働いてた二人が、エイルに乗って地球にいた俺に会いに来る途中……木星圏辺りで蜂に遭ってそのまま……」

楓「そう、ですか……」

P「俺が小さい頃の話ですよ。だから、今は気にしているわけじゃないです。親の代わり、じゃないですけど……その分まで軍に入って戦うことができるならって――」


楓「ダメです」

P「楓さん……?」

楓「それじゃあ、ダメです。私は、ダメだって思うんです」

楓「Pさんは、ずっと戦い続けるんですか? 軍にいる間はお仕事だからって、ずっとずっと……誰かのために戦い続けるんですか?」

P「……まあ、それが出来るまでは」

楓「そんなの悲しいです」スッ

ギュッ!

P「かえ……」

楓「ずっと誰かのために戦い続けるなんて、おかしいです。私たちは、そのために軍にいるのかもしれませんけれど……」

楓「でも、Pさんは自分のために戦ってもいいと思うんです。誰かのために戦っても……最後は、自分のために」

P「俺が……俺のために戦う、か……でも、どうして?」

楓「分かりません。ただ私は……Pさんがそんなふうに戦い続けるのは、嫌だって思ったんです」

楓「それなら私は、私のために、Pさんをお助けしてあげようって、思って……」

P「……」

楓「……ご、ごめんなさい。私、いきなりこんなこと言うなんて」

P「いえ、ありがとうございます」

楓「Pさん……」

P「俺も、なんだか最近色々あってここに来て、おセンチな気分になってたかもしれません。楓さんにまで心配掛けさせてるようじゃダメですね」

楓「いえ、私には……心配掛けても……」

P「まあ麗奈に腑抜け扱いされて蹴られない程度には頑張りますよ。それに、楓さんに助けてもらうのも悪くはないと思いますけど……」

P「やっぱり、そういうのは前線に出ている俺の仕事です。任せてください」

楓「……」

P「さて……帰ろうかと思ったけど、晩飯代わりに少し飲みにでも行きますか?」

楓「!!」ビクッ!

P「明日から訓練だし、あまり遅い時間までは無理ですけど」

グイッ!

楓「行きましょう。今すぐ行きましょう、今日は大尉が付き合ってくれなかったのでどうしようかと思っていたところなんです。とことん飲みましょう」

P「えっ、麗奈が……いや、その、明日訓練があるから……」

楓「行きましょう。命令です」

P「……地雷踏んだかもしれん」

楓「何か言いましたか?」グルンッ!

P「いえ、何も」

……
…………

――翌日、朝、ホクドウ、軍本部、宿舎(Pの部屋)

ピピピピピッ! ピピピピピッ! ピピピピピッ!

P「……」


<サーン、Pサーン!! オキテクダサイー!! クンレンチコクシマスヨー!!


ピピピピピッ! ピピピピピッ! ピピピピピッ!

P「……」

<ショニチカラチコクハマズイデスヨー!! Pサーン!! Pサァーン!!


P「……はっ!?」ビクッ!

ピピピ……

P「やべっ……訓練遅れる……っていうか頭いてぇ……」

P(楓さんと酒飲むのはホントにだめだな……)

Pサァーン!! Pサァーン!! ナナノコエキコエテマスカー!?

……
…………

――数十分後、ホクドウ、軍本部(訓練場)

菜々「しっ、失礼しまぁす!!」

P「申し訳ありません、遅れました」


??「アァン?」


菜々「ざ、財前時子中尉ですか! すみません、ラピッドストライカー隊、本日より訓練に合流します。よ、よろしくお願いします!」

P「よろしくお願いします」


時子「フンッ!」ビュンッ!

スパアアアアンッ!

菜々「うっひぃぃぃ!?」ビクッ!

P(なんつー過激派……今時鞭振るようなヤツがいるのか)

時子「訓練に遅れてきた分際で、しかも酒臭い豚を連れてのこのこと私に顔を見せにくるとは……ラピッドストライカー隊とやらも、さぞ上等な豚の集まりのようね」

菜々「ぶっ、ぶひいいいいい!? な、ナナはウサギというかウサミンというか!? あ、あああああ……」ガクガクブルブル

P(頭いてぇ……恨むぞ楓さん……)

時子「そこの豚」

P「はい」

時子「貴方……よくもまあ私の訓練に酒の臭いを持ち込んできたわね。余程、酒を飲まなければ私の訓練がやってられない、ということかしら?」

P「いえ、申し訳ありません」

時子「誰が返事をしろと言ったかしら?」ブンッ!

パァァァァンッ!

時子「豚、まずはその臭いを落としてきなさい。その後で調教してあげるわ」

P(俺が悪いから何とも言えんが何なんだコイツ……まあ、追い出されないだけマシか)

菜々(じょ、女王様プレイ……)ガクガクブルブル

……
…………

――同時刻、ホクドウ、軍本部、宿舎(楓の部屋)


楓「Pさん……ふふっ、もっとたくさん飲んでください……」ムニャムニャ

楓「そうです、ビールをあびーるように飲んで、お酒のときくらいは、色んなことを忘れて……」ムニャムニャ


楓「……」スー、スー……


……
…………

今日はこれで終わります。

>>1のマスプラチケットの消費量が気になります

>>468
普通に使ってますよ

おっと

>>468>>467でした

――ホクドウ、軍本部(訓練場)

時子「……」


P「……」ピッ、ピッ……ピピッ! ピピッ! ピピッ! ピピッ!


時子「……」チッ

パシュンッ!

麗奈「はー……ってあれ、アンタたちまだこんなとこに残ってたの? 訓練の時間終わってるでしょ?」

時子「チッ……貴方には関係ないでしょう」

麗奈「最近の若い奴は上官に対する口の利き方がなってないわね……ん、シミュレーターに入ってるのPじゃないの」


P「……」ピピッ! ピピッ! ピピッ!


時子「そこに入っている豚が、私の訓練に遅れてきたのよ。丁度躾をしてやっていたところよ」

麗奈「躾ねえ……」チラッ

ピピピッ!

麗奈「コイツにシミュレーター乗せてもあんま効果ないわよ。そこら辺の奴よりはよっぽどマシな動きするし、それに……」

麗奈「連続稼動時間3時間、G1用のシミュレーターでここまでオンラインスコアが更新されてちゃ、世話ないわね」

時子「チッ……」


パシュンッ!

P「ふう……シミュレーター終わりました……ん、麗奈、来てたのか」

麗奈「アンタが居残りしてたから面白そうだと思ったんだけどね。乗り込む前に終わっちゃったわ」

P「まあ、俺もそろそろ疲れてきた頃だし。財前中尉、次はどうすればよろしいでしょうか」

時子「終わりよ。さっさと帰りなさい」

P「了解です。本日は申し訳ありませんでした」

時子「ハッ……使い物になる豚なら、私の訓練には時間通り来なさい。それができないなら……」

P「以後気をつけます。では、失礼します」

麗奈「あ、ちょっとアンタ」


……
…………

――ホクドウ、軍本部(通路)

麗奈「ちょっと」タタタッ

P「ん、どうした?」

麗奈「アンタが訓練やってるのはどうでもいいけど……アンタ、大佐から連絡来てる?」

P「しばらくは連絡も貰ってないけど……何かあったのか?」

麗奈「……オフレコよ。朝方ネシマの方面で大規模級の巣が観測されたらしいわ。ジジイ達にも連絡が回っているみたいよ」

P「大規模!?」

麗奈「声が大きい! ちょっと場所変えましょう。菜々のほうにも、そのうち黒井から連絡が回ってくるだろうし」


……
…………

――数十分後、ホクドウ、軍本部、宿舎(菜々の部屋)

菜々「まあ、ナナも聞いたのは本当にさっきのことなんですけどね。黒井大佐からメッセージが来てたので」

P「大規模級の蜂の巣との戦闘記録は……過去3回か。俺は直接参加したことはないが……」

菜々「ヒドイもんです。前回の戦闘は……そうですね、予備艦隊の戦力だけじゃなくて、埃被ってたアウズブラも引っ張り出したくらいですし……」

麗奈「3回目の戦闘ともなると、こっち側で消耗した全力を補うのも限度があるもの」

麗奈「それに、大規模戦闘の度に潰れたヴェールの再建造もあるし、アウズブラも結局全部なくなったものね」

P「まあ、いまはユミルが主流だからそこはいいが……正式な展開はいつなんだ?」

麗奈「オート・クレールと黒川、櫻井で進めてた長距離航行試験の最中に偶然観測されたらしいから詳細待ちね」

ピピッ!

麗奈「でも、映像データは送られてきているから間違いないわ。そんなに遅くならないうちに展開されるだろうけど」

菜々「S-01は旗艦ですけど、他ヴェールを収容して、陽電子砲を外付けして前線での戦闘になりますね」

P「陽電子砲……データで見たことはありますけど、ユミルに搭載する対大型の巣の攻略用装備か」

麗奈「まとめて落としてやらないとこっちがジリ貧だもの、それ用の装備で対応するわよ……とはいえ、今回はちょっと微妙ね」

P「D型も発見されているし、何より1つ前の大規模戦闘からの立て直しも済んでいない、か」

菜々「残念ですね。こういうタイミングでこっちに異動なんて……まあPさんがこっちに来たのも、元々は戦力補強の話があったからですけど」

P「そこは気にしてませんけど……」

麗奈「ま、アンタは対D型用にG2に乗るんだから、死なない程度に頑張りなさいよ」

P「それは言わないでくれよ……マニュアルは見直しているけどアレ乗るの本当に嫌なんだが……」

菜々「鈍足、小回りは利かない、大きくて的になりやすいと三重苦背負ってますからね……オート・クレールもどうしてあんなの作ったのか」

麗奈「現行機だとOPFでも火力が足りないんだから諦めなさい。新型のグレイプニールが完成するまでの辛抱なんだから」

菜々「ブースターユニットも増設してくれるみたいですからねぇ……はぁ、いつまで戦闘が続くんでしょうかねぇ」

P「……さあ、どうなんでしょうかね」

……
…………

――夜、ホクドウ、軍本部、宿舎(Pの部屋)

P「……」ピッ、ピッ……

『オート・クレール社から提供された記録映像からは、大規模級の蜂の巣であると判定。観測済みの移動ルートから想定される戦闘宙域は――』

P「……」ピッ!


『ブースターユニットも増設してくれるみたいですからねぇ……はぁ、いつまで戦闘が続くんでしょうかねぇ』


P「いつまで、か」ゴロッ


『俺が戦うことで、俺のような思いをしなくて済む人が増えるなら、戦い続けるのもいいかもしれない』

『でも、Pさんは自分のために戦ってもいいと思うんです。誰かのために戦っても……最後は、自分のために』


P「戦い続ける。それじゃあダメなのか」


『何? 分かった、後でそちらさんとは話しておく……P君、非常に残念だが……どうだね? もしよければだが……』


P「このまま戦い続けて、俺もいつかは……」

ピピピッ!

P「……はい」ピッ!

美優『あ……Pさん、今どちらにいらっしゃいますか?』

P「美優さん……いまは部屋にいますが」

美優『そうですか……あの、もしよろしければ……』


……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(通路)

楓(大規模戦闘……直近の戦闘から5ヶ月前、不足したヴェールの再建造も終わっていない状態なのに……)ピッ、ピッ……

楓(通知、きっとPさんも見て……昨日のこともあるし……)

楓「……あれは」ピクッ


美優「……」タッタッタッタッ……


楓(美優さん……もしかして、Pさんのところに……)


……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(Pの部屋)

美優「すみません、こんな時間に……」

P「いえ、俺は別に……どうしましたか?」

美優「黒井大佐からの通知、見ましたか? 大規模戦闘の……」

P「ええ、麗奈からはいつ展開されるかは分からないと言われていましたけど、黒井大佐のほうから内々で回ってくるとは思いませんでしたが……」

美優「はい。S-01は前回も前線任務だったので、恐らく今回も全然のはずだって楓さんが……」

P「美優さんも大規模戦闘は初めてなんですか?」

美優「いえ……前回戦闘のときは後方に……でも、今度は自分が前線だと思うと……」

P「……前に戦闘した中規模の巣は、蜂は30数匹……大規模の巣は3、4倍程度と聞いていますが」

美優「……」

P「まあ、どうなるか分からないし、俺も少しは不安ですよ。大規模戦闘にもなれば……」

美優「ちっ、違うんです……」

P「違う?」

美優「私……私は、怖いことなんて、ないんです……私は……ただ、Pさんが大丈夫かと思って……」

P「俺が? そんなまたどうして」

美優「前に、お話したと思いますが……私は、Pさんがいてくださるなら、怖くないんです」



美優『私は……あなたに助けてもらいました。あのとき……』

美優『それがPさんのお仕事でも……私は嬉しかった……私以外のみなさんも、本当に嬉しかったと思います』

美優『はい、その……やっぱり、Pさんなら……私たちが危ないときでも、必ず助けに来てくれますし……今回だって……』



美優「あのときから、私は……でも、Pさんは私たちの分まで戦うから……」

P「……そうですね。怖くないかといえば、嘘になります」

P「俺は、俺じゃない誰かの分まで戦い続ける。それでいいと思ってました」

P「だから……このまま戦い続けるなら、俺はいつか両親と同じところに行くんだろうなと思って」

P「だけどこっちにきて、それはダメだって言ってくれた人がいるんです。俺と一緒に戦ってくれる人たちがいるんです」

P「俺に付き合ってくれる人たちがいるなら、俺は死んだらダメなのかなって、そうやって戦い続けるのは、俺自身が色々なものを諦めているからなのかなって」

P「そう思うと……少し、怖いと思いました」

P「それでも一度決めたことなら、最後まで――」


美優「Pさんっ……!」ギュッ!

ドサッ!

P「美優……」

美優「私は……Pさんがいてくれて、嬉しい……私自身は守られてばかりで、何もお返しできていなくて……でも……」

美優「Pさんの楽しそうなお顔も、悲しそうなお顔も見て……私は、私から何かできないかって、ずっと思っていたんです」

美優「だけど、そう思って一緒にいればいるほど……私はただ、Pさんの傍にいたいんだって、自分で分かって……」

P「俺は……悲しいこと、楽しいこと……」


『本当に残念だ。キミのご両親は良い軍人だった……いつかキミがご両親のような立派な軍人になるのなら……』

『そうだな……まあ、頑張ってほしい。私も大佐も、キミには期待しているからね』

『やっ、やりましたぁっ! やりましたよ! ラピッドストライカー隊の初出撃、大成功ですっ!!』

『勘違いをするな。私は安部中尉の評価を聞いていただけで、私自身は貴様を評価しているわけではない』


P「……たくさんあった。たくさんあって……俺自身がどうしたいのか、分からなくなっていたときもあった」

美優「だから……私じゃあ、ダメですか?」

P「え……?」

美優「私が、Pさんの傍で……だから、Pさんも、私の傍に……」

P「……」

美優「だ、ダメ……でしょうか……」

P「……」

P「……前に、美優さんに似たようなことをしてもらったときに、思ったんです」スッ……

ギュッ……

美優「あ……」

P「温かい、温かい……それだけで、だけど……こうしていたい」

P「この温かさは、長いこと感じていなかった……だから、心地良かった」ギュッ……

美優「そう……ですか」

P「すみません、わざわざ俺のために、色々考えさせてしまって……」

美優「いいんです。私がそうしたいって思ったから……私が、Pさんのために何か出来ないかって、ずっと思っていて……」

P「美優」

美優「んっ……」

……
…………

――ホクドウ、軍本部、宿舎(Pの部屋前)



楓「……」



……
…………

短いですが今日はこれで終わります。
短いのはもうそろそろで終わるからだとかそんなんだったりするからです。

大長編かと思いきやここでか…これは寂しくなるな

>>485
大長編じゃなくてすみませんねホント。いや、デレステが去年の年末からボーダーが激しくなってきているのでまあ……

>>477訂正

――ホクドウ、軍本部、宿舎(Pの部屋)

美優「すみません、こんな時間に……」

P「いえ、俺は別に……どうしましたか?」

美優「黒井大佐からの通知、見ましたか? 大規模戦闘の……」

P「ええ、麗奈からはいつ展開されるかは分からないと言われていましたけど、黒井大佐のほうから内々で回ってくるとは思いませんでしたけど……」

美優「はい。S-01は前回も前線任務だったので、恐らく今回も前線のはずだって楓さんが……」

P「美優さんも大規模戦闘は初めてなんですか?」

美優「いえ……前回戦闘のときは後方に……でも、今度は自分が前線だと思うと……」

P「……前に戦闘した中規模の巣は、蜂は30数匹……大規模の巣は3、4倍程度と聞いていますが」

美優「……」

P「まあ、どうなるか分からないし、俺も少しは不安ですよ。大規模戦闘にもなれば……」

美優「ちっ、違うんです……」

P「違う?」

――翌日、ホクドウ、軍本部(訓練場)

P「ふう……」

麗奈「お疲れさん。これでシミュレーター10回目で今日の訓練ノルマは達成っと……どうする? もうちょっとやる?」

P「頼む。正直G2はいくらやってもまともに動かせる気がせん。こんな手間が掛かるならOPFをベースに作ってる新型を貰ったほうが早いと思うんだが……」

菜々「いやー、新型いきなり貰うのはちょっと……しかもまだ完成してないみたいですし。それに仕様も大幅変更が入るみたいですから、どうなるんでしょうかねぇ」

麗奈「ま、新型は開発中だし無い物ねだりしても仕方がないでしょ。アンタは鈍臭いG2で頑張りなさい」

P「はぁ……まあ、仕方がないか」

時子「ちょっと貴方たち、訓練中に無駄話をしているんじゃないわよ」

麗奈「ん? いいでしょ別に、レイナサマたちはアンタの訓練から外れてるんだから」

P「まあ、こっちは小関大尉が見てくれてるし……」

時子「チッ……それなら勝手にしなさい。とはいえ、教導隊主導の訓練の枠に収まっているのも事実……私の代わりに一人豚が来るわ」

菜々「豚?」

時子「別件で管制塔のほうに行ってた1人が今日からここに来るわ。私がいれば特にすることもないけれど……丁度良いから貴方たちの面倒を見させるわ」


パシュンッ!

???「えーっと、ここが訓練場ですね。うん、シミュレーターもあるし」

麗奈「ん、アイツ……」

???「あ、時子さーん。お待たせしましたー」

時子「ようやく来たわね。随分と遅かったじゃない」

???「すみません、ちょっと管制塔から出る前に本部に呼ばれちゃって……」

菜々「この方がもう1人の教導員ですか?」

???「あ、はい。本当は管制塔側のお仕事で来たんですけどね。こっち側にも呼ばれたので今日から来ることになりました」

P「そうですか。よろしくお願いします」

ちひろ「はい。あ、ご挨拶が遅れました。国際連合……は長いですね。教導員の千川ちひろ、階級は少尉です。よろしくお願いします」

菜々「ユミルS-01所属、ラピッドストライカー隊隊長の安部菜々中尉です。こっちは部下のP少尉です」

ちひろ「どうもよろしく……」ピクッ

麗奈「……」

ちひろ「……はい?」

麗奈「……」

菜々「どうしたんですか、麗奈ちゃん?」

麗奈「……いや、何でもないわよ。レイナよ、よろしく」

ちひろ「はい。よろしくお願いします……というわけで、教導隊側の監督としては時子ちゃんの代わりに私が皆さんを見ておきますので」

時子「……まあいいわ。せいぜいしっかりやりなさい」

……
…………

――数時間後、ホクドウ、軍本部(食堂)

ちひろ「あなたたち化け物ですか?」

麗奈「ん?」モグモグ

P「なんですか突然」ズズーッ!

菜々「あ、ナナは一般人ですからこの2人と一纏めにしないでください」

ちひろ「いやあ……だって、シミュレーターのオンラインスコアに載ってるような記録ばっかり出してましたから……」

P「あれ上位のほとんどがこの人のスコアだから気にしないほうがいいですよ」

麗奈「若い奴の訓練が足りないのよ」モグモグ

ちひろ「はあ、さいですか……それにしてもPさんもG2に乗ってよく小関大尉の立体起動に付いてこれてますね。あの機体って相当動かし難いって聞いてましたけど」

P「G1の弱点だった装甲強度を重点的に改善した結果の鉄屑みたいなもんですからね。まあ、外付けのブースターユニットをもらえるからそれで何とか……」

菜々「あんまり使い難いものですから、結局G1ベースでOPFが作られちゃいましたからね」

麗奈「早く第3世代に代わってほしいわ。今の機体も飽きてきたところだし」

ちひろ「……ところで、次の作戦のお話、聞いていますか?」

麗奈「ん? まだ正式展開されていないのにそっちから振ってくるってことは」ピクッ

ちひろ「ちょーっと本部に寄ったときに黒井大佐とお話しちゃったので」

P「作戦の開始日でも決まったんですか?」



黒井「14日後だ」

菜々「あっ、黒井大佐! お疲れ様でぇす!」ガタッ!

P「お疲れ様です」

麗奈「ん? アンタこっちに来たの? 珍しいわね」

黒井「別件で食事の時間が取れなかったから来たまでだ。まったく、なぜセレブな私がこんなところで……」

菜々「ささっ黒井大佐、どうぞお席に……」

黒井「……フンッ」ガタッ

P(安部中尉に言われりゃ座るのか……)

ちひろ「お疲れ様でーす……って、作戦開始日決まったんですか。これまたずいぶんとお早いスケジュールですね」

黒井「観測されている巣の移動ルートを見ても、ネシマは素通りされるがホクドウ付近を通過する可能性が非常に高い。ホクドウ宙域付近に来る前には片付ける」

P「こっちに来るのか……艦隊は揃っているんですか?」

黒井「哨戒任務に当たっている一部のヴェールにも帰還指示が出る。ユミルはS-01を含めて5隻を投入する」

菜々「5隻……前より更に減りましたね」

麗奈「防衛用にユミルの戦力もある程度残しておかなきゃダメでしょ。アウズブラは全部使い潰したんだし」

ちひろ「いやー、私も嫌なタイミングでこっちに来ちゃいましたね……時子ちゃんと一緒に編成に組み込まれるみたいですし」

黒井「ともかく、貴様等はS-01の前線部隊として成果を出せ。私の指揮下にいてつまらんことはするなよ」

麗奈「はいはい……っとに、面倒なことばかり起きるわね。暇よりはいいけど」

……
…………

――夕方、ホクドウ、軍本部(通路)

菜々「それじゃあPさん、明日の訓練もよろしくお願いしますねー」

P「残りのマニューバも全部合わせてしまいましょうか」

菜々「そうですそうです。ウサミンパワーでレッツゴーですっ」タタタタッ!

P「ふう……あの人も大概、訓練やり続けても元気だな。部屋に戻った後とかは死んでるけど」

P「さて、俺も早いとこ……ん?」ピピピッ!

P「端末にメールか……」ピッ!

美優『お疲れ様です。訓練、終わりましたか? 夕食がまだでしたら、一緒に少し町に行きませんか?』

P(美優さんからか……今日なら時間も空いているし)

ピピッ!

P『了解です。今日は管制塔での仕事ですよね? 行くまで少し時間が掛かるので広場で待ち合わせしましょうか』

P「さて、シャワー浴びてから……」



楓「Pさん」

P「楓さん、お疲れ様です。今日はこっちに来ていたんですか?」

楓「ええ、S-01内の定例会があったのでこっちに……Pさん、今あがりですか?」

P「はい、訓練も終わったので。ちょっとこれから町に出ようかと思っていましたけど」

楓「町……ですか?」

P「少し用事で……それじゃあ、一度宿舎に戻らなきゃなりませんからこれで――」

楓「ダメです」

P「はい?」

楓「Pさん、今週の週報まだ出してくれていませんよね? 明日は午前中までに出しておかなきゃダメですから、先に仕上げてください」

P「え? でも普段は日中までで……」

楓「ダメです」

P「……はあ、分かりました。それじゃあ急いで作るか……資料室で作ってくるんで、後でメール送ります」

楓「私も行きます。ダメなところがあったら書き直してもらわなきゃなりませんから」

P「そうですか……了解です」

……
…………

――ホクドウ、軍本部(資料室)

P「……」カタカタカタッ!

楓「ここの部分、稼動時間が合ってないです。移動時間が入っているので省いてください」

P「ここか……」カタカタッ

楓「……いまのところ、オペレーターとの合同訓練に時間を巻き込んでいるので消してください」

P「はい」カタカタッ

楓「……」

P「……」カタカタカタッ……

楓「Pさん」

P「なんですか?」

楓「この後、美優さんとお出かけですか?」

P「えっ……いや、え?」

楓「飲みにいくなら、私も誘ってほしかったんですけど」

P「いや……飲みに行くわけじゃあ」

楓「それじゃあ、朝までしっぽりしに行くんですか? 昨日みたいに」

P「は!?」

ギシッ……

楓「どうなんですか?」

P「いや、ちょっ、膝に乗られると椅子が折れる……いや、そうじゃなくて」

楓「私も、実はPさんのこと好きなんですよ。いまも好きなんで、自分でもちょっと困っているんですけど」

P「え、あ?」

楓「のんびりしていたら、美優さんに取られちゃいましたけどね」スッ……

楓「んっ……」

P「んんっ……!」

楓「ん……んふぅ……」チュッ、チュルッ……

P「ちょ、ちょっと!」バッ!

楓「……」ハァ、ハァ……

P「いや、いきなりこんなことされると……」ハァ……


楓「私、Pさんさえよければ、2番目でもいいんです。3番目でも、4番目でも……本当は、1番が良かったんですけど」

楓「でも、きっとPさんは嫌ですよね。そういう女……だから、私はこれっきりにします」スッ……

P「かえ……」

楓「明日からはいつも通りです。菜々ちゃんと一緒にPさんのお部屋でゲームをしたり、美優さんと一緒に飲みにいったり……私、美優さんのことも結構好きなんです」

楓「だから……美優さんのこと、大事にしてあげてくださいね」

楓「あと、週報は私のほうで直しておきますから」

パシュンッ!


P「楓……」


……
…………

――夜、ホクドウ、ショッピングモール(広場前)

美優「……あっ、Pさん」

P「……」

美優「お疲れ様です。もしかして……まだお仕事残っていましたか? 少し遅いなって思っていたんですけれど」

P「いえ……まあ、少しありまして。遅くなってすみません、行きましょうか」

美優「……」

P「美優さん?」

美優「え……えいっ」ギュッ!

P「な、なんですか突然腕にしがみ付いて……」

美優「その……き、昨日みたいに、言ってください。私のこと……美優って」

美優「嬉しくて、今日もPさんにそう言ってもらえたら、いいなって思って……」

P「……」


楓『だから……美優さんのこと、大事にしてあげてくださいね』


P「……ああ、行こうか、美優」

美優「はい」


……
…………

――――――――
――――――
――――
――

「母さんもこれから少し軍のほうに行かなきゃならないから……この子のこと、お願いね」

「分かった……ねえ、名前は?」

「……す」

「ん?」

「たち………り…」

「……まあいいや、地球に来るのって初めて?」

「……はい」

「そっか、俺は宇宙には行ったことないんだけどな……俺はP、よろしく」

「よろしく……お願いします」



――また、この夢か。


――知らない記憶、知らない景色。


――本当の俺は、この頃は何をしていたんだったか。


――少なくとも、こんな穏やかな景色を見ることは無くなっていた。


――今俺が見ているこの景色は、誰が見ているんだろうか。


――俺ではない、誰か……。

――――――――
――――――
――――
――

――――――――
――――――
――――
――

おっと……>>505は誤爆です。

――翌日、早朝、ホクドウ、軍本部、宿舎(Pの部屋)

P「……俺は」

美優「んっ……」

P「……」

P(夢に出る女の子……もし、俺が違う生き方をしていたら、美優には会うことはなかった……)

P「……美優」

美優「P、さん……P……」スー、スー……

P(今の俺には、美優がいてくれる……今は、それだけでいい)


……
…………

――2週間後、ホクドウ、ユミルS-01(メインブリッジ)

楓「黒井大佐、S-02以下の各ユミルから通信が来ています。出港準備が完了したみたいです」

麗奈「ようやく出航ね……」

黒井「こちらの準備はどうなっている」

美優「港の接続アームは解除済です……収容したヴェール各艦の艦システムも来ています」

ピピピッ!

「黒井大佐、通信が来ました。ナシヤマからです」

黒井「ナシヤマから? 映像をまわせ」

ピッ!

大佐『やあ黒井、出航前かね?』

黒井「何の用事だ。木星圏に引きこもってる貴様と違って私は忙しい身だ。下らん話なら切るぞ」

大佐『まあそう言わないでくれ。激励……というわけではないが、良い知らせを1つと思ってね』

黒井「なんだ」

大佐『例の件、どうやらオート・クレールと黒川重工のほうである程度目途が付いたらしい』

大佐『地球側のチームとも合意が取れたみたいでね、この作戦が終わった後には本格的にプランが進むことになりそうだ』

麗奈「……」

黒井「……そうか。であればあの糞ガキをさっさと引き取りに来い。私が必要なのは結果だけだ」

楓「……」ピクッ

大佐『おいおいそれはないだろう? たまに話すときは彼のことを褒めているくせに……素直じゃないなお前も』

黒井「知らん。貴様にそんなことを言った覚えもない」

大佐『まったく……まあ分かった。大規模の巣の攻略、頼んだぞ』

黒井「問題ない。貴様は今後のことだけ考えていればいい」

大佐『そうだな……それじゃあ邪魔をしたな。頑張れよ』

ピッ!


麗奈「……ま、今後に期待ってトコね。ある程度軌道に乗るまではそれなりに掛かるでしょうけど」

黒井「この作戦には関係のない話だ……では、これより本艦を含むユミル艦隊で大規模蜂の巣攻略作戦を開始する」

黒井「各自、巣との遭遇予定ポイント到達までに作戦概要を叩き込んでおけ。S-01を発進させろ」

楓「分かりました。各ユミル艦隊に展開、宙域に出た後は予定航路を進行して戦闘予定の指定宙域ポイントX17に向かいます」

「ユミルS-01、発進させます」

麗奈「……さて、アタシはちょっとグレイプニールのところにでも行ってくるかしらね」

黒井「好きにしろ。どうせ出撃以外ですることもないだろう」

麗奈「まっ、そうね」

……
…………

――ユミルS-01(格納庫)

菜々「……出撃しましたね」ピッピッ……

P「ええ、中尉は大丈夫ですか?」

菜々「これでも大規模戦闘の前線参加は経験してますからね。ナナは大丈夫ですよ」

P「そうですか」

菜々「ナナはいいとして……Pさんは大丈夫ですか?」

P「俺は……」


美優『私が、Pさんの傍で……だから、Pさんも、私の傍に……』


P「俺は、大丈夫ですよ。戦い抜いて……戻ってきます。今まで通り」

菜々「……そうですね、ラピッドストライカー隊、今回も頑張りましょう! Pさんも、もらったG2の調整はしっかりやってくださいね!」

P「了解」

……
…………

今日はこれで終了します。

――数時間後、ユミルS-01(Pの部屋)

P「……」

楓「巣の移動ルートについては、各宙域の中継点からホクドウの管制塔に伝送されている広域光学レーダーによる測定結果がS-01に転送されます」

楓「蜂の総数についての詳細は詳しくは分かりませんけれども、前回の大規模戦闘を想定した上での艦隊展開が行われます」

菜々「ラピッドストライカー隊は前線ですね。ナナと麗奈ちゃんとPさんの3人でコンビネーションマニューバで戦闘、D型の対応はPさんがメインになります」

P「……了解」

麗奈「めんどくさいわね。レイナサマなら1人のほうが楽なんだけど」

美優「……」

楓「予定ポイントのX17周辺にはデブリもありませんね。各グレイプニール小隊はヴェール及びユミルの移動ルートを確保を優先します。ここまでは大丈夫ですか、Pさん?」カタカタカタッ!

P「まあ……巣の破壊を優先して、ユミルに搭載されている陽電子砲の射程圏内まで各艦を連れて行くのが俺たちの仕事ってことで」

楓「そうです」

美優「……あの」

楓「はい? どうしました美優さん?」

美優「お2人は……どうして、そんなにくっ付いているんでしょうか……」

楓「?」ギュウウウウウウ……!

P「いや……」

美優「そ、その……Pさん……」

楓「あ、大丈夫ですよ。私、Pさんと美優さんがムフフな関係になっているのは知っていますから」

美優「えっ……」

菜々「ああっ!? リア充オーラがナナを焼いてくるぅっ!」

麗奈「……」ハァ……

美優「そ、それなら……もう少し、離れてもらえると……」

楓「私、一応階級的にはPさんの上官ですから。いいですよねPさん? それに、Pさんが空いているときは……ちょっとつまみ食いをしようと思っているので」

美優「ダ、ダメですっ……! Pさんも、楓さんに何か言ってください……!」

P「は、はあ……いや、楓さん、あなたこの前、これっきりだって言ってましたよね」

楓「何のことでしょうか?」

P「とぼけやがって……」

美優「これっきりって……な、何があったんですか……」

楓「まあ、色々と」


菜々「暑い! 焼ける! ナナにはこの空間は辛すぎて……!!」

麗奈「あーアホくさ……ちょっと菜々、どうせこいつらこの調子じゃ人の話も聞かないだろうし、食堂にでも行きましょ」ガタッ


……
…………

――ユミルS-01(食堂)

ちひろ「で、あの3人は置いてきたと」

麗奈「後でまた打ち合わせすりゃいいでしょ……このチューブ、前の味のほうが美味かったわね」チューッ……

時子「下らないわね……はっ、豚同士お似合いということかしら」

菜々「いやそんなことで豚扱いはちょっと……」

麗奈「いいじゃない。戦闘前だし、少しくらい好きにさせてやっても」

菜々「おや、麗奈ちゃんがそんなこと言うなんて珍しいですね」

麗奈「そう?」

ちひろ「私と時子ちゃんもヴェールで前線に出ますし、出来ればもう少しのんびりしたいんですけどね」

菜々「そういえばユミルの護衛で前に出るんですよね。どこのヴェールですか?」

時子「SN-05よ」

ちひろ「こっち来ていきなり前線部隊ってちょっと過酷じゃないですかね……」

麗奈「甘ったれたこと言ってんじゃないわよ。手間掛けてアンタたちをこっちに来させたんだから、仕事はしっかりやりなさい」

ちひろ「はぁ……最初は教導員のお話だけだったはずなのに」

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(格納庫)

P「ったくあの2人は……G2でも見ているか……」フワッ

ちひろ「あらPさん、もうお部屋にはいなくていいんですか?」

P「千川少尉……その話、安部中尉か麗奈から聞いたのか……」

ちひろ「色男が隊の風紀を乱しているって菜々さんが嘆いてましたよ。本気かは知りませんけど」

P「俺はそんなつもりじゃないんだけど」

ちひろ「まあまあ……で、こっちに逃げてきたんですか?」

P「2人でぎゃあぎゃあ騒いでいるからいなくてもいいかなって……少尉はどうしてここに?」

ちひろ「私と時子ちゃんはSN-05での打ち合わせです。時子ちゃんはその前に黒井大佐のところに行ってますけど」

P「教導員の2人も前線か……財前中尉はヴェールの運用経験だけはあるのは知っているが……やれるんですか?」

ちひろ「まあ第一指揮官はSN-05の艦長ですし、私たちはサブですよ。上手いことやれればいいなーって思ってます」

P「少尉は大規模戦闘の参加は初めてですか?」

ちひろ「初めてですよ。というか、木星圏に一時出向した時期にたまたま戦闘した以外に実績ないです」

P「大丈夫か……?」

ちひろ「大丈夫なんじゃないですか?」

P「随分適当だな……まあ、いいか」

ちひろ「適当でも最後は上手くやればいいんですよ。それじゃ、私はSN-05に行きますので」

P「了解。俺もG2のチェックするか……」

……
…………

――数日後、戦闘宙域

菜々『Pさん、残りのF型は他小隊と一緒にナナたちのほうで受け持ちますよ!』

麗奈『アンタは追加兵装の確認、さっさと済ませておきなさい!』

P「了解、D型は2匹……1匹は高出力グラムで……!」ギュンッ!

D型「!!」ブブゥゥゥンッ!

P「取り付けてもらったブースターユニットのおかげでOPFまでとはいかんが、G2でもG1程度の機動性は確保できている……そこだ!」ズドォンッ!

ドガアアアアアンッ!!

D型「……!?」ブブ……

P「ダメージはあるだろうが落としきれない……! レギンでも一撃で抜くことはできんが……!」

ピピピッ!

楓『Pさん、オート・クレールから提供されている試作型ポジトロンビームで対応してください』

P「試作兵装か……スペック表ではG2グラムを上回る性能だが……!」カタカタカタッ!!

ガションッ!

D型「……!」ギュンッ!

D型「……!」ギュンッ!

P「展開に手間が掛かる……ターゲットロック、ポジトロンビーム発射!」ズドォォンッ!!

D型「!?」

ドガアアアアアンッ!!

P「抜いた! さすがに戦艦用の陽電子砲のスケールダウン版だけはあるか……!」ギュンッ!

菜々『試作兵装のテストもいいですけど、早くそっち片付けちゃってくださぁい!』ピピピッ!

P「っとそうだった、了解!」ガションッ!!

麗奈『ったく、アンタたちに付き合ってると時間が掛かって仕方がないわね……』

……
…………

――数十分後、ユミルS-01(格納庫)

P「火力は十分だけど、どうしても展開に時間が掛かるな」

菜々「ま、このポジトロンビームもやたらと大型ですからね。大きいから射角も制限されていますし」

麗奈「コレ、もうちょっとサイズ小さくならないの?」

「いえ、いまの段階では難しいので……」

楓「展開に時間が掛かる……射角が狭いので取り回しに難がある……」カタカタカタッ!

P「まあD型を一撃で落とせるなら、現状は装備の選択余地もないか」

麗奈「手間掛ければ落とせるっちゃ落とせるものね」

菜々「装甲抜くためにあれだけ連続してピンポイントの精密射撃が出来るパイロットが何人いると思ってるんですか……」

「予備のもう1本はどうしますか?」

菜々「OPFじゃサイズ的に搭載できないので埃被ってもらうしかないですね」

P「あとはG2を使っている他の部隊に回すか? 試作兵装を他所に回すのって出来るのか?」

楓「大規模戦の前ですし、装備的に使える物ならいいと思いますけど……黒井大佐に話しておきましょうか?」

菜々「そうですね。お願いします」

麗奈「んじゃ、アタシたちも引き上げるわよ」

……
…………

――数時間後、ユミルS-01(展望室)

P「……」ピッ、ピッ……

P(この進行ペースだと、予定通りにポイントに到着するか。艦隊が展開するのに十分な時間があるならそれでいいが……)


パシュンッ!

美優「いた……Pさん」フワッ

P「美優さん、ブリッジは交代の時間ですか?」

美優「はい、次のポイントまでは……今日の戦闘、お疲れ様です」

P「それなら早めに休んでください。X17の到着まであまり日もありませんし」

美優「……」

P「美優さん?」

ギュッ……

美優「いまは、誰もいませんから……」

P「……まあ、別にいいが」

美優「戦闘、大丈夫ですか?」

P「特に問題ないよ。まあ、いつもどおりやれているし」


美優「……えいっ」フワッ

ギュッ!

P「な、なんだよ突然……」

美優「後ろから……抱きつくの、宇宙だとやりやすいですね」ギュッ……

P「やめてくれよ、恥ずかしい」

美優「いいじゃないですか。誰もいませんよ」

P「……」

美優「ふふっ……Pさん、可愛い」

P「くっ……」

美優「んっ……嫌ですか?」チュッ

P「別に、嫌じゃない。嬉しいけど……慣れない」

美優「慣れてください……私が、たくさんしてあげますから」

P「よくそんな恥ずかしいこと言えるな……普段の美優なら絶対にそんなこと言わないぞ……」

美優「えっ……あっ、いえ、その……」

P「……まあ、いっか」

美優「……少し前に、SN-05の展望室でもPさんと2人でお話したときがありましたよね」

P「ああ、あの頃か……そのときから美優は随分と大人しい人だと思っていたけど」

美優「どんなお話をすればいいのか分からなかったので……あのとき、言っていましたよね? Pさん、G1に乗るのが好きだって」

P「そんなことも言ったな……」

美優「いまでも、好きですか?」

P「まあ、乗ることが好きってわけじゃないけど……親や、昔のことを思い出して、懐かしい気分に浸れて……それがいいなって思っていただけだよ」

美優「……今度」

P「ん?」

美優「2人でお休みを取って……私を、連れて行ってくれますか?」

P「どこに?」

美優「地球……Pさんが小さい頃に住んでいた場所……」

P「……ああ、そうだな。落ち着いたら行こうか」

美優「はい」

P「親が死んで、もう俺の家は無くなったけど、美優と行くなら……久しぶりに帰る地球も楽しそうだ」

美優「私も、楽しみです……」


……
…………

――数日後、ポイントX17宙域、ユミルS-01(メインブリッジ)

黒井「光学レーダーの更新はどうなっている。サブブリッジの監視と」

美優「ホクドウからの更新データ、まだ来ていません……サブブリッジで採取しているレーダーでも巣を捕捉していません」ピッ、ピッ!

麗奈「最後の更新を見ても、予定よりも早くポイントに到着できたものね。各艦隊の展開はどうなってんの?」

楓「ユミルS-02からS-04、予定通り艦隊を展開、搭載しているヴェールも順次発進させています」カタカタカタッ!

黒井「こちらのヴェールも出せ。グレイプニールのパイロットはコンディションイエローで待機、蜂の巣を捕捉した時点で作戦開始だ」

楓「了解、各艦隊に展開します」

ピピピッ!

美優「SN-05から通信です……回線開きます」

ピッ!

SN-05艦長『こちらのほうが先手を取れるか……ユミル艦隊の移動は、S-01が先頭だったな』

黒井「それがどうした。貴様等はこちらの陽電子砲発射までの仕事だけを考えておけ」

SN-05艦長『そう言うなよ、こちらも体を張っているんだ。少しは作戦前のつまらない話に付き合ってくれてもいいだろう』

黒井「……大規模戦といえど、現在判明している戦闘規模は幸いなことに前回戦闘未満となっている。それでもこちらが苦しいことに変わりはないが、上手くやれ」

SN-05艦長『そうだな。上手くやるさ……お前から預かっている教導隊の者たちもいるからな』

黒井「フンッ……」

SN-05艦長『そういえば、彼はどうだ? そっちでは上手くやっているか?』

黒井「誰のことだ」

SN-05艦長『木星圏から来た彼だよ。アルヴィスに乗っている実績も見ているが、良いパイロットじゃないか』

黒井「パイロット適性が高いだけでは困る。奴は後々他の仕事があるし、まだまだ伸びてもらわなければならん」

SN-05艦長『珍しいな。お前がそんな評価をするなんて。気に入ったか?』

黒井「何を言っている。あの男の唾が付いたガキを私が気に入るはずがないだろう」

SN-05艦長『素直じゃないなお前も……まあ、分かった。そろそろホクドウからレーダーの更新データが転送される。こちらも待機しておく』

ピッ!

黒井(プロジェクト・ヴァルキュリアか……そんな物のために、奴は……)


ピピッ!

美優「黒井大佐……ホクドウからレーダーの更新情報が来ました。蜂の巣、ポイントX17に到達済……」カタカタカタッ!

ピピッ!

楓「こちらのレーダーも更新されました。距離8400……更新タイミング、被ってしまいましたね」

黒井「下らんことを言ってる暇は無い。各艦隊に通達、これより作戦を開始する」ガタッ!

黒井「コンディションレッド、これより蜂の巣攻略作戦を開始する。各グレイプニール小隊は順次出撃、蜂共の展開を確認後、移動ルートを算出してユミル艦隊を移動させる。それまでは弾幕支援を行う」

美優「了解です……コンディションレッド、警報出します」

楓「部隊展開、各グレイプニール小隊は出撃してください」カタカタカタッ!

麗奈「んじゃ、アタシも行ってくるわ」

黒井「しっかりやれよ」

麗奈「アンタに言われなくても分かってるわよ。レイナサマ舐めんじゃないわよ」フワッ

パシュンッ!

……
…………

――ユミルS-01、カタパルト(G2機体内)


『コンディションレッド、コンディションレッド。前方距離8400、蜂の巣の出現を確認。グレイプニール小隊は発進してください』


P「来たか……!」

菜々『大規模戦闘……よぉーし! ラピッドストライカー隊、行きますよ!』パンッ!

P「気合入れすぎて空回りしないでくださいよ。こっちもフォローするの大変なんですから」

菜々『大丈夫ですっ! Pさんも麗奈ちゃんもいるなら、ナナ的に困ることはありませんので!』

P「俺としては隊長を頼りにしたいんだが……D型が出たらなるべくはこっちで対応します。そのときの支援はお願いします」

菜々『そ、そうだった……最近そんな気がしなくなったけど、ナナが隊長……了解です! Pさんはナナがちゃんと守ってあげますからね!』

P「よし、それじゃ行きましょうか」

菜々『あ! ちょっと、それは隊長のセリフですからね!』

P「調子戻ったと思ったらこれだ……」

ピピピッ!

美優『Pさん、菜々さん……お気をつけて』

楓『私たちも結構大変なことになると思いますけど、お互い頑張りましょうね』

P「了解です」

菜々『あー、あなたたちイチャイチャするなら作戦終わってからにしてくださいね? いまそんなことされるとナナのモチベーションが下がりますから』

楓『私も下がります』

美優『いっ……!?』

P「別にイチャイチャなんてしないんだが……そんな茶化さないでくれ」

黒井『貴様等! 下らん話をしていないでさっさと出撃しろ!』

菜々『は、はいぃぃっ!』

P「んっとに……」カタカタカタッ!

楓『ハッチは開放しています。出撃、お願いしますね』

菜々『それじゃ、GRS-1小隊からRS-01、安部菜々出撃しまーすっ!』

P「RS-02、G2で出撃する!」ギュンッ!

……
…………

――同時刻、ユミルS-01(通路)

麗奈「っとに、ブリッジにいないで格納庫辺りでも行ってればよかったわね。出遅れたし……」

ピピピッ!

麗奈「ん? 誰よこんなときに」ピッ!

晶葉『おい麗奈、作戦中か?』

麗奈「ああアンタ? いま始まったところよ。レイナサマも出るけど……何かあった?」

晶葉『普段よりも大きい次元振動が計測された。巣の出現はどのタイミングで分かった?』

麗奈「ええ? んー……ホクドウの光学レーダーの更新データが来たときと、こっちで展開しているレーダーが巣を捉えたのはほとんど同じタイミングね」

晶葉『そうか……移動ルート自体は観測出来ている話だったか。偶然といえば偶然だが……』

麗奈「そっちで観測している次元振動、ホントにあってんの?」

晶葉『観測自体は間違っていない。とはいえ、そちらの戦闘とは関係ないか……』

麗奈「元から光学レーダーで観測されていた奴らだもの。そりゃそうでしょ」

晶葉『であれば、他の宙域で空間転移がされた可能性もある、か……』

麗奈「どうかしらね。あのジジイに話してみれば? 都合付けば適当な部隊で調査できるでしょ」

晶葉『……それもそうだな。いや、話に聞いていた大規模の巣の戦闘とこちらの計測タイミングが被っていたから、気になっただけだ。邪魔して悪かった』

麗奈「別にいいわよ。それじゃ切るけど」

晶葉『うむ、気をつけてな』

麗奈「人類最強のレイナサマに何言ってんのよ。アンタこそ、さっさと新しいオモチャ作るのと、やることやっちゃいなさい」

晶葉『分かっている。ではな』

ピッ!

麗奈(次元振動、まだ周期的にはマシなもんだろうけど……そのうち……)

麗奈「……まあ、いまはこっちね。アタシもさっさと行かないと」シュッ!


……
…………

今日はこれで終わります。

最近はボーダーも上がって走るのがダルくなっているとは思いますが、今回のデレステのイベントは個人的にかなりイイ内容だと思っているのでみなさん走りましょう(宣伝)

――戦闘宙域

菜々『Pさん、グレイプニール小隊は作戦全体を通して001から053まで出撃予定です。事前の編成リストは見ていますよね?』

P「確認しています。G2が俺を含めて23機、D型がこちらで優先して相手をします」カタカタカタッ!

ピピッ!

P「俺たちは宙域中だと中央での戦闘……高垣中尉、蜂の展開はどうなっていますか?」

ピピピッ!

楓『前方距離8200より大規模級蜂の巣、F型30、S型10、D型8、ホーネットが6です。多いですけど、巣の規模からまだまだ出てきていないと思います』

菜々『いま観測できている分のもう1、2セットは巣の中にいますね……近くの小隊とのグループ回線を回します。P少尉、ラピッドストライカー隊は麗奈ちゃんが編成に入るので高機動戦闘になります』

P「了解。G2だが麗奈のOPFにどこまでついていけるか……」

楓『お2人とも、ユミル各艦隊より弾幕支援が入ります。着弾ポイントを転送しますので衝突後はお願いします』

菜々『任せてください!』

P「巣はまだ遠いが、先頭の群れとの距離は4000……そろそろ当たるか」ギュンッ!

……
…………

――ヴェールSN-05(ブリッジ)

SN-05艦長「ミサイル発射管にアルヴァルディを装填。ティルウィング、レーヴァテイン照準、ユミル艦隊の前に出る」

ちひろ「ミサイル発射管1番から20番にアルヴァルディを装填します。ティルウィング準備、レーヴァテイン1番から2番、前方キラー・ビーの群れに照準合わせます」

時子「ちひろ、ユミルのほうで出している艦進行ルートを映しなさい。算出されたルートパターンから私たちの立ち回りを決めるわ」

ちひろ「はいはいっと……蜂も満遍なく左右に広がってますね。S-02以下や他の強襲艦隊の動向次第でしょうか」カタカタカタッ!

SN-05艦長「ともあれ、奴らの手薄になったポイントから進行するしかあるまい。陽動部隊と上手いこと連携を取らねば機会を逃す、気をつけろよ」

「S-01から砲撃指示がきました。先頭キラー・ビーとの距離3500です」

SN-05艦長「うむ、では戦闘開始だ」

……
…………

――戦闘宙域

ピピピピピッ!

P「艦隊からのミサイル……安部中尉!」ピッ!

菜々『戦闘開始です! コンビネーションマニューバはI02で行きますよ!』

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

赤蜂「!!」ブゥゥゥンッ!!

D型「……」ギュンッ!

P「中央だと数は多いか……中尉、ホーネット1匹です。D型を落としたらフォーメーションの交代頼みます」カタカタカタッ!

菜々『はい! ミョルニル発射!』ボシュシュシュッ!!

ドガガガガァンッ!!

蜂「……!」ギュンッ!

赤蜂「!」ギュンッ!

D型「……」ギュンッ!

P「1匹落ちたか、丁度良い! 先手は貰うぞ!」ギュオオオオッ!!

ピピピピッ!

P「ポジトロンビーム、ダインスレイヴ展開……ターゲットロック!」ピピッ!

ズドォォンッ!!

D型「!?」ドガアアアアアンッ!!

P「よしっ! 中尉、ミョルニルを撒きます。交代を!」ボシュシュシュッ!!

菜々『了解! ホーネットを落とすのは難しいけど、F型なら!』ギュオオオオッ!

蜂「!!」ズドォンッ!!

菜々『粒子砲なんかに! ドラウプニル……えええいっ!』ガションッ!

ドガガガガガガッ!!

蜂「……」ブブ……

ドガアアアアンッ!!

赤蜂「!!」ギュンッ!

菜々『後はホーネット! Pさん、マニューバプラン変更です! I04で挟みますよ!』

P「了解、初動で飛行ルートは割り出している……6連装ミサイルコンテナを射出。中尉、飛行ルート転送します」ピピッ!

菜々『Pさんに付き合ってたらナナもマルチタスクには慣れてきましたからね、隊長らしくやりますよ!』ギュンッ!

赤蜂「!」ドシュシュシュッ!!

菜々『立体機動勝負で針を飛ばしてくるなんて分かってますよ! そこです!』ギュンッ!

ドガガガガガッ!!

赤蜂「!?」ドガアアンッ!!

菜々『ホーネットが怯みましたよ、Pさん!』

P「落ちろ!」ズドォンッ!!

ドガアアアアアンッ!!

菜々『よーしっ、ラピッドストライカー隊、出だしは好調ですね!』

P「あまり油断しないでくださいよ……左のGNS-004小隊の方面が手こずっているか。中尉、援護のほうは……」

ピピピッ!

麗奈『ちょっとアンタたち! 2人で楽しんでるんじゃないわよ!』

菜々『あっ、麗奈ちゃん!』

P「遅いじゃないか。どこでサボってたんだ?」

麗奈『レイナサマも色々やることがあんのよ。こんな楽しそうなイベント、来ないわけないでしょ』

菜々『いや、いまのところ前回の大規模戦闘と同数の戦いですし、何も楽しくないんですけど……』

ズドドドドドドドッ!!!!

P「無駄話している場合じゃないぞ。麗奈、安部中尉、強襲艦隊からの砲撃が来ています」ピピッ!

麗奈『あ、そう。菜々、蜂の展開はどうなってんの?』

ナナ『えーっと、えーっと……S-03艦隊の陽動が上手くいっているみたいです。戦闘区域が徐々に左に流れていってます』

麗奈『予定通りね。アタシたちも少し突っつきにいくわよ』

P「高垣中尉、こちらは一旦S-03、S-05側に向かいます。ある程度蜂の数を減らしたらそっちに戻ります」

楓『了解です。気をつけてくださいね』

P「お互いにです。では」ピッ!

麗奈『メインで陽動しているS-03の支援はS-05が受け持つけど、こっちでも潰しておかないと向こうが持たないものね。無駄に蜂を連れてこない程度にはやるわよ』

菜々『それじゃあコンビネーションマニューバはY05で行きましょうか。Pさん、D型の潰しは優先してくださいね』

P「分かっています。急いで済ませてS-01に戻らないと……」

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

「サブブリッジより通信、光学レーダーの更新あります。巣との距離、6000です」

美優「GNS-008、後退します。GNS-022小隊がバックアップに入ります」

楓「艦隊の進行ルート、再度算出します。S-02、S-04、方面に4小隊分の蜂が来ています」カタカタカタッ!

黒井「アルヴァルディで援護。こちらに来てる奴らはヴェールに任せる。念のためにブリンガーは展開しておけ」

楓「了解です。陽電子砲の準備はどうしますか?」

黒井「フルングニルは距離3000の時点で展開準備だ。先にそれまではS-02、S-04と足並みを揃えて発射する」

黒井「S-03から出ているグレイプニール小隊が先行して巣へと向かっている。追加で巣から出てくる奴らも向こうが引き受けたのを確認するまで無理はせん」

ピピッ!

楓「GNS-011から016、GRS-1、それぞれS-05艦隊の援護に回ります。合流ポイントの座標転送します」カタカタカタッ

黒井「合流予定は巣との距離が4000の地点だ。奴らには遅れるなと伝えておけ」

楓「遅れるなと黒井大佐が言ってましたよ……っと」カタカタカタッ


……
…………

――戦闘宙域

麗奈『ホラホラ! ドン臭いことやってんじゃないわよ!』ギュオオオオッ!!

ズドォンッ! ズドォンッ!

P「安部中尉、こちらのミサイルコンテナは使い切りましたのでパージします。S-01と合流した後の弾幕支援は任せますよ」ガションッ!

菜々『巣から追加で来た分が全部で30ちょっと……うう、さすがに厳しいですね……』

麗奈『菜々、あっちはどこまで進行してんの?』

菜々『ちょっとお待ちを……距離4600、そろそろナナたちもここから引き上げて合流しませんと』

P「了解。高垣中尉から来ているポイントに向かいますか」

麗奈『部隊の数が揃わなかったとはいえ、あっち行ったりこっち行ったりと面倒臭いわね……まあいいわ、ほら行くわよ!』ギュンッ!!

P「前線部隊も消耗しているか……このまま巣のほうに――」

ピピピピピッ!

P「緊急通信……これは、麗奈、中尉!」

麗奈『わかってるわよ! チッ……先行部隊がしくじったわね』

菜々『あわわわ……巣から出てきている蜂のほとんどがS-01、S-02、S-04に流れていってますよ!』

P「こっちもこれまで引き付けていた数が多いとはいえ、本命が足止めを食らうわけには……!」ガションッ!

麗奈『アンタたち、さっさと戻るわよ!』

P「分かってる!」ギュオオオオオッ!!

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

黒井「前方に穴を開ける! ティルウィング発射!」

楓「ティルウィング発射します。強襲艦隊を抜けてS型が3匹接近しています」カタカタカタッ!

黒井「マグニで迎撃! ブリンガーも撒け!」

楓「ブリンガー、オートメーション機能による自動掃射を行います。マグニ発射……ああっ、回避されました」

美優「だ、大丈夫です……GNS-006と007小隊が援護に来ました。艦の進行は……」

「GNS-013小隊後退、巣よりキラー・ビー、更に8来ています。前線のグレイプニール各小隊では対応しきれていません!」

黒井「足を止めるな! ここで進行を止めれば陽動しているS-03艦隊が持たん!」

美優「り、了解です……」

ピピピッ!

麗奈『ちょっとそこのジジイ!』

黒井「ジジイとは何だ! 貴様、どこをほっつき歩いている!」

麗奈『歩いてるんじゃなくて飛んでんのよ! いまそっち行くから、もうちょっと待ってなさい!』

ピピピッ!

P『黒井大佐、美優、楓さん、大丈夫か!』

美優「Pさん……!」

黒井「貴様に言われんでも何ともない!」

楓「美優……美優……美優ですか……」ジーッ……

美優「えっ、いや、あの……」

菜々『あーもーこれですよ……っていうかそっちに結構蜂流れてきますよね!? ホントに大丈夫なんですか!?』

黒井「合流予定ポイントまでは進行できる。そちらも早く戻って来い」

麗奈『へいへい、ちょっと待ってなさいよ』

ピッ!

黒井「まったく……」

……
…………

――戦闘宙域

P「追いついた……だが、前線も相当押されているか!」ギュンッ!!

麗奈『先頭張ってんのはSN-02と05、あのままじゃ辛いわね』

楓『ラピッドストライカー隊はSN-05の援護を、他小隊はSN-02のほうに向かってください』

菜々『ちひろさんと時子さんがいますからね、了解です!』

蜂「!」ブゥゥゥンッ!!

蜂「!」ブゥゥゥンッ!!

蜂「!」ブゥゥゥンッ!!

P「奴らもこっちに気付いたか! 麗奈!」カタカタカタッ!

麗奈『レイナサマに命令すんじゃないわよ! 菜々、コンビネーションマニューバーY09、後方任せたわよ!』

菜々『2人で勝手に決めないでください! ああもうっ、6連装ミサイルコンテナ射出!』ボシュシュシュシュシュシュッ!!

ドガガガガガガガガァンッ!!

赤蜂「!!」ギュンッ!

赤蜂「!!」ギュンッ!

D型「……」ギュンッ!

P「弾幕を抜けてホーネットが2体……!」

麗奈『ハッ、雑魚が!』ガションッ!

麗奈『P! すごいレイナサマの天才的なマニューバ、見てなさい!』ギュオオオオオオッ!!

ヒュカカカカッ!!

赤蜂「!?」

赤蜂「!?」

麗奈『アンタたちとじゃれ合ってる暇なんてないのよ!』ドガガガガガガッ!!

ドガアアアアアアンッ!!

P「な、何だありゃ……高速接近してからの一撃離脱するマニューバか……? いや、さすがにあの速度を維持した立体機動からのドラウプニルは中々当てれんぞ……」

麗奈『アンタもこれくらいやらないとダメよ! ほら、さっさとそこのD型片付けておきなさい!』

P「分かってる! ダインスレイヴ発射!」ガションッ!

ズドォンッ!!

D型「……」ブブブ……ブ……

ドガアアアアアンッ!!

菜々『SN-05、聞こえますか? 陽動部隊の援護から戻ってきましたから、体勢を立て直してください!』

ピピピッ!

SN-05『すまん、助かった』

ちひろ『いやー、やっぱりあなたたちって化け物ですね』

時子『チッ……来るならさっさと来なさい』

菜々『だからナナをそこの化け物2人と一緒にしないでくださいって』

P「誰が化け物だ、誰が」

麗奈『化け物で結構じゃないの。この先、アンタたちはその化け物くらい戦えないとダメってことよ。菜々、P!』

菜々『あ、ナナはまだいけますよ!』

P「こっちはブースターユニットがそろそろ限界だ。あまり長くは麗奈のマニューバに付き合ってられん!」

麗奈『あっそ! 楓、巣との距離は!』

ピピピッ!

楓『距離3500です。3000の時点で陽電子砲の発射準備に入ります』

P「こっちにいるユミル3隻で確実に巣を破壊するならそれくらいの距離が必要か……!」

麗奈『いいじゃないの、それまで遊んでやるわよ!』

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

美優「S-05の援護に向かっていた各小隊の合流により……前線、蜂を押し返しています。SN-03、被弾箇所多数により後退です」

楓「巣との距離、3100です。まもなく陽電子砲の準備に入ります」

黒井「各艦に通信、フルングニルの発射準備だ!」

美優「各艦……間もなく陽電子砲の射程圏内に入ります。ユミル、ヴェールそれぞれ陽電子砲の準備をお願いします」ピピピッ!

美優「強襲艦隊の陽電子砲で……ユミルの陽電子砲の射線を確保し、距離2500でユミルの陽電子砲が発射されます」

楓「3050……3000、ポイント到達しました。陽電子砲発射準備に入ります」カタカタカタッ!


……
…………

――戦闘宙域

D型「!!」ズドォンッ!!

P「そんな砲撃は当たらん! 落ちろ!」ズドォォォンッ!!

ドガアアアアアンッ!!

P「奴らもこちらの動きに気付いたのか、蜂の数が減らん……!」ギュオオオオッ!!

菜々『宙域に残っている蜂、あと60……これでも全体で見れば半分は減ってるはずなんですけどねぇ!』ドガガガガガガッ!!

麗奈『後もうちょっとなんだから踏ん張りなさい!』

P「強襲艦の陽電子砲の発射まで持てば――」ガコンッ!!

P「っ!? ブースターユニットが……!」ビーッ! ビーッ!

赤蜂「……!」ズドォンッ!!

P「残りのホーネット……ぐうっ!?」ドガアアアンッ!!

菜々『Pさん!』

P「だ、大丈夫です! 腐っても装甲強度を改善しただけはあるか……掠ったとはいえ蜂の粒子砲を食らっても各部問題無しか……!」カタカタカタッ!

赤蜂「!」ギュンッ!

P「どうせ壊れたならブースターユニットはパージだ! この状態でも貴様に落とされるかよ!」ギュオオオオオッ!!

赤蜂「……!」ブゥゥゥゥンッ!!

P「針か!」ギュンッ!

赤蜂「!!」ドシュシュシュッ!!

P「当たらん! これで落ちろ!」ズドォンッ!!

赤蜂「……」ブブ……

ドガアアアアアアアンッ!!

P「これで……こっちに来ているホーネットは最後か……!」ハァ、ハァ……

麗奈『やるじゃないの! アンタ、そんな鉄屑でよく動けたわね……』

P「お前に褒められるのも……背中が痒くなるな……」

菜々『いやいや、G2でホーネット相手に立ち回るって相当しんどいと思うんですけど……』

ピピピッ!

楓『前線の各グレイプニール小隊、これより強襲艦隊の陽電子砲が発射されます。射線上より退避してください』

P「間に合ったか……!」

麗奈『さすがにちょっと面倒だったわね……ほら、さっさと離れるわよ』

菜々『ナナが後ろにつきます。Pさんは先に退避してください』

P「すみません、よろしくお願いします」ギュンッ!

P(これで、終わりか……今回の戦闘も……)


……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

楓「強襲艦隊の陽電子砲、発射されました。巣までの射線上に障害物はありません」カタカタカタッ!

美優「前線の各グレイプニール小隊の退避を確認しました……黒井大佐、大丈夫です」

黒井「これでチェックメイトだ……陽電子砲、フルングニル照準!」

楓「照準合わせます……フルングニル照準、S-02、S-04共に準備完了です」

黒井「フルングニル……撃て!!」


……
…………

――戦闘宙域

菜々『ユミル3隻の陽電子砲の発射を確認……巣の撃破、完了です。宙域に残っている蜂も逃げていってます』

P「……」

麗奈『ようやく終わったわね……』

菜々『はぁ、疲れた……』

P「……」

菜々『……Pさん? 大丈夫ですか?』

P「……ええ、大丈夫です」

麗奈『どうしたの、何かあった?』

P「いや……陽電子砲の光、これからも……何度も見続けることになるのかと思って」

麗奈『……さあ、どうかしらね。いつまで戦ってんのか知らないけど』

菜々『まあまあ、いいじゃないですか。あの光はナナたちの勝利の光なんですよ! 今回だって、ラピッドストライカー隊もちゃんと任務出来たじゃないですか!』

P「そうか……そう、ですね」

ピピッ!

麗奈『ん、コンディショングリーンの通達が来たわね。ホラ、帰るわよ』

菜々『そうですねー。あーあ、戻ったらPさんと美優さんが乳繰り合ってるところを見なきゃならないなんて……』

P「い、いや別に乳繰り合うわけじゃ……ていうか、嫌なら見なけりゃいいんじゃ……」

麗奈『羨ましがってんのよ、コイツ』

菜々『いぃっ!? いやいやいやいやいや!! ナナはまだまだそんな青春を送るわけにはいきませんから!? まだやることもありますから!?』

P「なんだよ……まあ、いいや。戻りましょうか」

菜々『もうっ!』

麗奈『んっとに……まあ、これからってことかしらね……』

……
…………

――数分後、ユミルS-01(通路)

菜々「被弾、大丈夫でしたか?」フワッ

P「硬さだけが取り得のG2ですからね。大丈夫でした」

麗奈「まあ、アンタならG1に乗ってたらそもそも被弾しなかったと思うけど」

パシュンッ!

美優「あっ……」

P「美優――」

美優「Pさん……!」フワッ

ギュッ!

美優「よかった……大丈夫そうで……」

P「美優……ああ、大丈夫だよ。ちゃんと戻ってこれたし」


菜々「おおうっ……また始まった」

楓「先越されました……」ヌッ

菜々「わざわざ見に来たんですか……」 

麗奈「……ホラ、アタシたちはさっさと行くわよ」グイッ!

楓「ああっ、引っ張らないでください……」

菜々「あー暑い暑い……今回の報告書は全部Pさんに書いてもらおう……」

パシュンッ!


P「美優のほうは、何ともなかったか?」

美優「はい……艦も、少し損傷した程度です。今回も……守ってもらいましたから」

P「そ、そうか? 俺は直接何かしたわけじゃなと思っているが……」

美優「ちゃんと来てくれたじゃないですか……それに、こうしてまた私の傍に……だから……」チュッ

P「よ、よしてくれ……さすがに、ここじゃあ恥ずかしくて無理だ……その、うん……」

美優「ふふっ……それなら、後で……ね?」

P「……ああ」


――
――――




――S-01以下5隻のユミル艦隊による大規模戦闘は無事に完了した。宙域より逃げた残りのキラー・ビーは、後日改めて部隊を編成、追撃作戦が行われることになった。





――ユミル艦隊の帰還後、程なくして国連本部から通知がS-01に届いた。これまで旗艦として運用していたアウズブラ級のユミルから、新型のノルン級大型宇宙戦艦の移行が決定された。





――それから数ヶ月後……。



――――
――

――ホクドウ、港前

楓「私は……そうですね、また土星圏に戻ってきたとき、Pさんと美優さんに何を聞かされるのかが心配ですね」

P「突然何言い出すんですかね」

楓「戻ってきたときに、もしかしたらお2人だけじゃなくて……3人目がいるんじゃないかと……いたっ」バシッ!

麗奈「昼間っから何言ってんのよ……」ハァ……

ちひろ「しばらくここの勤務でしたけど、ホント面白い人たちでしたね」

時子「ハッ……豚は豚らしく盛ってればいいじゃないの」

美優「そっ、そんな盛ってなんて……」

楓「1週間で4回は……盛ってると思いますけど……」

美優「よっ、4回って……!」

P「……」ハァ……

菜々「ううっ、ナナは心配です……ノルンの移行訓練だから仕方が無いとはいえ、しばらくPさんを1人にしてしまうなんて……」グスッ、グスッ

P「いや、そんな泣かなくても……」

菜々「だってぇ……部隊が分散するからラピッドストライカー隊も凍結になるんですよぉ……」

楓「訓練期間自体は3ヶ月ですし、合同演習とかも含めると……半年くらいは空けちゃいますね。そして戻ってきたら美優さんのお腹が……」

美優「そっ、そんなことにはなってませんから……!!」


黒井「……そろそろいいか?」

楓「あ、はい」



黒井「財前中尉、千川少尉、まずは部隊教導の件は礼を言う。大規模戦をはじめ、色々と別件にも関わってもらってしまったがな」

ちひろ「まあ、あとから教導隊に運用費が充てられたから大丈夫ですよ。大変でしたけどね」

時子「また機会があれば戻ってくるわ。新造艦の運用、こちらからも正式に数名は手配することになっているみたいだもの」

黒井「そうか。まあ、地球に戻ったらゆっくり休め」

時子「そうさせてもらうわ」

黒井「で……あとは貴様等か。木星圏でのノルンの運用訓練、しっかりとやってこい」

菜々「はいっ!」

麗奈「まあレイナサマは新しいオモチャ見に行くだけだけど」

楓「戻ってくるときは……えーっと、ノルンS-01、に乗って戻ってきますから。それまではお願いしますね」

P「はい。楓さんたちも気をつけてください」

楓「戻ってきたら……うふふっ」スススッ

P「な、なんですか、そんな擦り寄って……」

美優「だ、ダメですっ……! 楓さん……いつも私が見ていないところでPさんに……」

菜々「はぁ、最後までこんな光景を見ることになるなんて……」

麗奈「いいじゃない、しばらくこっちに戻ってこないんだし」

P「ま、まあいいや……そろそろシャトルが出る頃じゃないですか?」

菜々「あ、そうですね。もうこんな時間……」

P「まあ……安部中尉、俺たちは待ってますから」

菜々「……はいっ。行ってきます」


……
…………

――数十分後、ホクドウ、港前

美優「シャトル、出発しましたね」

P「ああ」

黒井「まったく、どうせ戻ってくるというのに見送りなぞ……貴様等、今日は休暇だったか」

P「はい。しばらくは運用の引継ぎで根詰めてましたから」

黒井「私は本部に戻る。ある程度はヴェールの部隊で賄うとはいえ、しばらく人員は不足した状態だ。休むときは休んで、しっかりと成果を出せ」

美優「は、はい……」

P「了解です」

黒井「フンッ。ではな、私は先に行くぞ」

P「さて……見送りも済んだし、俺たちも帰ろうか」

美優「はい」

P「皆がいなくなって、寂しいか?」

美優「いえ、私は大丈夫です……Pさんが傍にいてくれますから」

P「そうか……俺もだよ」

美優「ふふっ」ギュッ……



P「……行くか」

美優「はいっ」


……
…………
………………
……………………

――半年後、土星圏宙域、ユミルS-01(食堂)

美優「えっ、みなさん、ようやくこっちに戻ってくるんですか?」

P「そうらしい。総合艦隊演習も全部終わって、ひとまずこっちに引き上げるって菜々さんから連絡が来てた」

美優「そうですか……いつ頃に、なるんでしょうか?」

P「正式通達がまだ出回ってないけど、半月後にはホクドウに戻ってくるらしい。俺たちの哨戒任務が終わる頃には合流できるんじゃないか?」

美優「みなさんが……また、前みたいに一緒にお仕事できますね」

P「嬉しいか?」

美優「嬉しい……はい、嬉しい、ですね」

P「……なんだ? 何か言いたそうな顔してるけど」

美優「その……みなさんが戻ってきたら、Pさんと2人きりになれる時間……減ってしまうなって……」

P「なんだ、そんなことか……時間がないなら作ればいい。それに、合流した後はS-01を木星圏のオート・クレールに戻す作業もある」

P「そこら辺でしばらく休むことも出来るだろうし、一緒にゆっくりしよう」

美優「……そう、ですね」


ガチャンッ!!


美優「っ!?」ビクッ!


P「……く、黒井大佐……お疲れ様です」

黒井「悪かったな。時間が空いたから今のうちに食事を済ませようと思っていたが、どうやら貴様等の邪魔をしたようだ」ガタッ!

美優「い、いえそんな……邪魔だなんて……」

黒井「2人きりだか何だか知らんが、まったく、最近の若い奴らは……』

P「いや別に若い奴らとか言われても……そういえば、黒井大佐はS-01をオート・クレールに戻すときは一緒に行くんですよね?」

黒井「当然だ。ノルンS-01の艦長の移行もせねばならん。向こうにいる奴らがどれほどやれているのかは知らんが、部下に任せきりなのは性に合わん」

美優「菜々さんたちは、一度こちらに戻って、また木星圏に行って……大変ですね」

P「まあ、仕方がないさ。乗員もほとんど乗り換えになるし、少なくとも土星圏の旗艦は優先してノルンに移行しなきゃならないだろうからなぁ」

黒井「ユミルS-01は一時的に木星圏の防衛戦力に編成される予定だ。全宙域の旗艦の移行作業完了後、予備戦力として残すユミル以外は解体される」

黒井「全体の移行期間は約2年を想定しているが……所詮上手くいかんだろう、木星圏以下は予定は後ろ倒しになる」

美優「旗艦の入れ替えなんて、ほとんどありませんからね……」

P「ホントにな。移行作業だけで疲れそうだ……はぁ、たまには休んで美味いもんでも食いたいよ」

黒井「フン!! このセレブな私が、いつまでの戦艦のペースト食ばかりを食べていること自体がおかしいのだ!」

美優「ふふっ……Pさん、私……今回の任務が終わったら、木星圏のコロニーで美味しいもの、食べたいです」

P「そうか。それなら今度、補給で戻ったら何処か美味い物でも食べに行こうか」

黒井「まったく貴様等は、上官の前でイチャイチャしおって!」

美優「す、すみません……イ、イチャイチャなんて……」

P「勘弁してくれ大佐……そうだ、大佐も一緒に行くか?」

黒井「何故私が貴様等と一緒に外食をしなければならないのだ!」

美優「そ、そうですよね……すみません、大佐はいつもお忙しいのに……」

黒井「べ……別に行かないとは言ってないからな」

P「なんだそりゃ……どっちなんだよ」

黒井「……何でもない。腐っても貴様等は私の部下だ。ある程度は面倒くらい見ているだけだ」

P「まったく……」

美優「ふふっ……でも、今回の任務も後は帰還だけですからね。今回は少し遠くまで来ましたけれど……」

P「木星圏宙域との境目辺りだからな。前回の大規模戦で各艦の被害が大きくて、持ち回りが増えて随分と時間が掛かるようになったもんだ」

美優「そうですね……でも――」

ビーッ!! ビーッ!!

P「警報……!」ガタッ!

黒井「ブリッジ、レーダーはどうなっている」ピピピッ!

『はい、レーダーよりキラー・ビー捕捉しています。F型10、S型2です!』

P「宙域に彷徨っている奴らにしては多い……大佐、美優!」

美優「は、はいっ!」

黒井「機体整備が完了しているグレイプニールを順次出撃させろ! すぐにブリッジに向かう」ピッ!

美優「大佐……」

黒井「ブリッジに戻るぞ三船少尉。そして貴様はさっさと出撃しろ! ここまでの戦闘で出撃できる小隊も減っている状況だ、急げ!」

P「了解です」フワッ……

美優「Pさん……!」

ギュッ……!

P「美優……?」

美優「……気をつけてください」

P「ああ、行ってくる」ギュッ

パシュンッ!

……
…………

――ユミルS-01、カタパルト(G2機体内)

P「先に出ている前線部隊、戦闘状況はどうなっている?」カタカタカタッ!

ピピピッ!

『S-01の弾幕支援から戦闘は始まってる! 急いでくれよ!』

P「了解、ブースターユニットの接続作業が完了次第出撃する」パチッ、パチッ!

ピピピッ!

美優『Pさん……現在はGNS-004、007小隊が迎撃に出ています。戦闘中のグレイプニールは6機です……お願いします』

P「こっちの頭数のほうが少ないか。昨日の戦闘に続いて、今日の戦闘は2度目……このペースなら消耗も仕方がないか……」ガションッ!!

ピピッ!

P「ブースターユニットの接続が完了した。ハッチを開けてくれ」

美優『了解です。ハッチ開放……出撃お願いします』

P「GRS-1小隊からRS-02、G2で出撃する!」ギュンッ!


……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

黒井「問題はないだろうが少し先にデブリ帯がある。その方面には流れるなよ」

「了解です。アルヴァルディ装填準備完了、弾幕展開します」

黒井「前線の状況はどうなっている」

美優「前線……戦闘開始からF型を1匹撃破、拮抗状態です」カタカタカタッ!

黒井「拮抗状態だと?」

美優「は、はい……」

黒井(……これまでの戦闘実績であれば、キラー・ビー12匹に対してグレイプニール2小隊分では手に余る数だ)

美優「RS-02、前線と合流しました……単独マニューバで戦闘を開始するそうです」

黒井(戦闘開始からそれほど時間が経っていないとはいえ……何故だ、何かが――)

……
…………

――木星圏宙域、ナシヤマ、オート・クレール社(オフィス)

ピッ……ピピッ、ピピピピッ!!

晶葉「これは……!」ガタッ!

ピピピッ!

晶葉「おい麗奈、レイナ!」ピッ!

麗奈『はいはい。レイナサマよ、どうしたの?』

晶葉「早く出ろ! 次元振動が発生した。しかもこれまでの観測結果の中でも一際大きい。いまの時点では次元断層の測定も出来んくらいだ」

麗奈『なんですって……? わかった、いまそっち行くわ。外の守衛に話し通しておきなさい』

ピッ!

「博士! 次元断層のモニタリング記録です!」

晶葉「これは……なんだ、これは……いや、この断層状況、隣接しているデータは……予測されていた、別の――」


……
…………

――土星圏、戦闘宙域

ドガアアアアアアンッ!!

ピーッ!

P「なんだ!?」ビクッ!

『GN-011沈黙!』

『なんだと!? くそっ、いまどこから砲撃が……』

蜂「!?」ブゥゥゥンッ!

P「くっ、逃がすか!」ズドォンッ!

ドガアアアアアアンッ!!

P「あと7匹――」

『ぐおおおおおおっ!?』

ドガアアアアアンッ!!

ピーッ!

P「なっ……!?」

ピーッ! ピーッ!

『た、隊長!!』

『GN-019、021も沈黙!』

P「なんだ……なんだ、何がどうなっている……!?」

蜂「……!!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

蜂「!」ギュンッ!

P「しまった!? 抜けられ――」


ズドォォンッ!!

蜂「!?」

ドガアアアアアンッ!!


P「い、いまのは蜂の粒子砲……F型が1匹落ちた……どこから……!」カタカタカタッ!!

ピッ、ピッ、ピッ……

P(レーダーには何も映っていない……残りのグレイプニールと、6匹の蜂……)


美優『Pさん! 前線のグレイプニールが――』

ドガアアアアアアンッ!!!!


P「……ユミル!?」


……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

黒井「ぐうううううっ!」

美優「きゃあっ!?」

「か、艦右舷に粒子砲直撃……出力低下しています!」

黒井「なんだと……!? 索敵を急げ! ブリンガー1番から4番を右舷前方に掃射! アルヴァルディを発射後に艦を後退させる!」

ドガアアアアアンッ!!

黒井「がっ……!?」

美優「レ、レーダー上、艦周辺にキラー・ビーがいません……先ほどの砲撃と合わせて、予測砲撃ポイントには蜂の姿がありません……!」カタカタカタッ!

黒井「レーダーに映らん蜂だと……そんな馬鹿げた話があるか! ブリッジの有視界スクリーンを起動しろ!」

「は、はいっ!」

フォンッ……


ブブブゥゥゥゥンッ!!!!


美優「ひっ……!?」

黒井「な、なんだ、コイツは……白い……蜂……」


……
…………

――戦闘宙域

P「S-01が、くそっ、美優!!」ギュンッ!!

蜂「!!」ギュンッ!

蜂「!!」ギュンッ!

P「邪魔だ、どけ!!」ドガガガガガッ!!

ドガアアアアアアンッ!!

『P少尉! 先にS-01に戻れ! ここはこちらで……があっ!?』

ピーッ!

P「おい、おいっ! くそっ! 貴様等……!!」ガションッ!

蜂「……!」ブゥゥゥンッ!

P「貴様等……許さん!!」ギュオオオオオオッ!!!!

P(美優……美優……!)

……
…………

――ユミルS-01(メインブリッジ)

白蜂「!!」ドシュシュシュッ!!

ドガガガガァンッ!!

美優「きゃあっ!?」

黒井「くっ……被害状況はどうなっている!」

「ティルウィング1番2番使用不能! レーヴァテイン3機破損です!」

「先ほどの攻撃で艦の出力低下、後退するにしても蜂の足が速くて逃げ切れません!」

白蜂「……!」ズドォンッ!!

ドガアアアアアンッ!!

ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!

「左舷エンジン被弾! このままでは航行が……!」

黒井(……ここまでか)

黒井「……現状の被害状況ではこれ以上の戦闘は不可能だ。総員、サブブリッジを脱出艇にして避難しろ!」カタカタカタッ

美優「そんな……黒井大佐……!」

黒井「何をもたもたしている……命令だ! 全乗員、サブブリッジに集まり避難だ!」ピッ!

「……り、了解です」

黒井「避難までの時間は稼ぐ。メインブリッジの制御を全て私の端末に移す」

美優「そ、それじゃあ大佐は……」

黒井「何度も言わせるな! さっさと避難せんか!」

「そ、総員、スーツを着用しサブブリッジに集合! 5分後にサブブリッジの切り離し作業を行う!」フワッ

パシュンッ!

黒井「生きているのはレーヴァテイン1機とヨルズ2機、ミサイル発射管か……滞空迎撃ミサイルのマグニを撒く」カタカタカタッ

美優「く、黒井大佐……」

黒井「何度も言わせるな。貴様も早く避難しろ、間に合わなくなるぞ」

美優「ですが……」

黒井「……あの男を頼む」

美優「え……」


白蜂「!」ドシュシュシュッ!!

ドガガガガァンッ!!


黒井「ぐうっ……!」


黒井「……あの男はこの先、重荷を背負うことになる。私は軍のため、平和のためにそれを良しとした。所詮、奴も私にとっては赤の他人だ」

美優「黒井大佐……?」

黒井「あの男の見えないところで、動き始めているものがある。そう遠くない先、奴自身が巻き込まれることになる」

黒井「しかし……それなりの付き合いにはなった。奴にも思うところはある。三船少尉……貴様が奴を支えてやれ」

美優「私が、Pさんを……」


黒井「さあ行け! 脱出に遅れるな!」ピピッ!

美優「……は、はいっ!」フワッ

パシュンッ!!


黒井「……すまんな。最後に、貴様等のために置き土産くらいは残してやる」カタカタカタッ


……
…………

――ユミルS-01(下層)

シュッ!

美優(黒井大佐……Pさん、Pさん……!)ハァ、ハァ、ハァ……!

ピピピッ!

P『美優、美優か! 艦はまだ無事か!』

美優「は、はい……だけど、もう長くは……」ハァ……ハァ……

P『待ってろ、いますぐそっちに向かう!』

美優「はい……私も、いまサブブリッジに避難をして……」

「少尉で最後か!? もうブリッジを切り離すぞ!」 

美優「は、はい……」

美優(ようやく、サブブリッジの入り口――)


ドシュシュシュッ!!

ドガアアアアアアアンッ!!!!



美優「きゃああああっ!!」ドサッ!

ビーッ! ビーッ! ビーッ!

P『美優……美優! どうした、おい、返事をしろ!!』


美優「う、うう……」ハッ!


美優「あ……あ、あ……サブブリッジが、なくなっ……て……」

P『美優、大丈夫か! 美優!!』

美優(いや……私、は……でも……)



『三船少尉……そのとき、貴様が奴を支えてやれ』



美優「P……Pさん、逃げて……ああっ!!」


ドガアアアアアアンッ!!!!


……
…………

――戦闘宙域

ドガアアアアアンッ!!!!

P「ユミル!! どこだ、蜂はどこにいる……レーダーに映らないなら、有視界効果で……!」カタカタカタッ!!

ピピッ!

白蜂「……!」ギュオオオオオッ!!

P「いた……見えた……貴様、貴様か!!」ガションッ!

ドシュウウウウンッ!!!!

P「よくも皆を!!」ボシュシュシュッ!!

白蜂「!!」ヒュカカカカッ!!

P「何っ!?」ギュンッ!

ドガガガガガガガッ!!

P「奴のあの速度はなんだ……くっ! いまの装備じゃあ……!!」

ピピピッ!

黒井『……き、貴様……』

P「黒井大佐!? 無事ですか! 艦の状況は!!」

黒井『貴様に……とやかく言われる、筋合いはない……私も、まだ……衰えるには早い頃だと、思ったが……』

P「黒井大佐! 早く避難してくれ、大佐!!」

黒井『非常に、ナンセンスだ……だが、貴様は……生き、ろ……』

白蜂「!!」ズドォォンッ!!


ドガアアアアアアアンッ!!!!


ピーッ!

P「あ……あああ……たい、さ……美優……」

白蜂「……!」ブゥゥゥンッ!!

P「……う、う……うおおおおおおお!」ギュァンッ!!!!

ズドォンッ! ズドォンッ!!

白蜂「!!」ギュンッ!

P「貴様……貴様だけは許さん! よくも黒井大佐を……美優を!!」ボシュシュシュッ!

白蜂「!」ヒュカカカカッ!

ドシュシュシュッ!!

P「針が……!」

ドガガガガガガ……ドガアアアアンッ!!!!

P「がああああああっ!?」バチバチバチッ!!

ビビビビビッ! ビビビビビッ!

P「ぐっ……ま、まだ、まだああああああ!!」ビビーッ! ビビーッ! ビビーッ!

ズドォンッ!!

白蜂「……!」


ヒュカッ!

ドシュシュシュシュシュッ!!!!

P「っ!?」



P『……行くか』

美優『はいっ』




ドガアアアアアアアンッ!!!!!

P「ぐわあああああああ!!!!」バチバチバチッ!!



白蜂「……」ブブブブ……

ギュンッ!!


……
…………

――ナシヤマ、軍本部

ピピピッ!

大佐「これは……!」ガタッ!!


大佐「黒井から送られてきた映像データ……この蜂は……黒井、いや、彼は……!」

ピピピッ!

大佐「土星圏本部、聞こえるか! 哨戒任務に出ているはずのS-01の信号はどうなっている! すぐに確認しろ!!」

大佐(黒井……!)


……
…………

――土星圏、戦闘宙域跡


P「うっ……」ピクッ


P「俺は……一体……生きて……」ビクッ!

P「そうだ……美優は……黒井大佐は……艦の、皆は……」カタカタカタッ……

P「あ……ああああ……俺は、俺だけ、なのか……どうして、俺だけ、1人……こんなところに……!」

P「美優……黒井、大佐……美優……みゆ……み、ゆ……」

P「俺は、俺は……う、あ、ああああ……!!」


……
…………
………………




「おいこっちだ! このG2、まだ機体が生きているぞ!」


『俺は……』


「ワークローダー持ってこい! G2の中に生存者がいるぞ! ユミルのほうはどうなっている!」


『ああ……俺は、死んでいなかったのか……』


「待ってくれ、いまデブリのほうに海賊の奴らもいる。くそっ、禁止区画だってのに……!」

「そっちは放っておけ! 生存者の確認と回収を優先しろ!!」


『俺だけ、生きているのか……美優も、黒井大佐も、死ん……で……』



……
…………
………………
……………………

――1ヶ月後、ホクドウ、軍病院(待合室)

菜々「……」


パシュンッ!

麗奈「……菜々」

菜々「……」

麗奈「……少し寝なさい。アンタ、何日ここでそうしてる気なのよ」

菜々「……」

麗奈「アンタのせいじゃない、誰のせいでもない……アンタが潰れて、どうすんのよ」

菜々「……麗奈、ちゃん……ナナは、ナナは……」

菜々「ナナは……私、は……隊長なのに、Pさんのことも、黒井大佐のことも、美優さんのことも……守ってあげられなくて……」

菜々「私は……私……」

麗奈「……アンタのそんな顔、私はみたくないわ」スッ

ギュッ……

菜々「れい、な……ちゃ……う、うううう……あああああああ……!!」

麗奈「……」ギュッ!


……
…………

――ホクドウ、軍病院(病室)

ピッ、ピッ、ピッ……

P「……」

楓「……」

ピッ、ピッ、ピッ……

P「……」

楓「……Pさん、今日は……雨の日なんですよ。天候表には、夕方頃には雨もあがっているみたいですけれど」

P「……」

楓「目が覚めたら、お休み取りませんか? Pさん、半年はお休みもありませんでしたよね」

P「……」

楓「悲しいことや、苦しいことは、私が忘れさせてあげます。だから……色んなこと、一緒にやりませんか?」

P「……」

楓「Pさんの目が覚めたら……私と一緒に……」

P「……」

楓「私と……2人で……ね?」


……
…………
………………
……………………

遅くなったので今日はこれで終わります。
多分次辺りでエピローグが投下されると思うので、そこまでやったら終わりです。



――アウズブラ級大型宇宙航行艦ユミルS-01は、土星圏宙域の長期哨戒任務の最中でキラー・ビーの大隊と遭遇。戦闘の末に艦は大破、乗員は全員死亡と判定された。



――ホクドウの軍本部から駆けつけた救助隊の捜索により、前線任務に出ていた第2世代型グレイプニールに搭乗していたパイロット1名の生存が確認される。



――2ヵ月後、土星圏宙域では新造艦であるノルン級大型宇宙戦艦、ノルンS-01は実戦配備される。移行予定のユミルS-01の搭乗員の不足分、部隊が再編成されることとなった。



――その中に、生き残ったパイロットの姿もあった。


……
…………
………………
……………………

――5年後、土星圏宙域、ノルンS-01(メインブリッジ)

麗奈「ちょっとアンタたち、周辺宙域の索敵は済ませたの?」

「は、はい。小関中佐、いまスクリーンに索敵結果を表示させますので……」カタカタカタッ!

麗奈「前部隊が取り逃した蜂共、小惑星帯に隠れて……チッ、小賢しいわね」

パシュンッ!

楓「ブリッジ、索敵記録は確認しました。巣の情報は出ていますか?」フワッ

「お疲れ様です、高垣少佐……じゃなかった、艦長代理。まだレーダー上では巣を捉えていません。中規模サイズなので、見逃すことはないと思いますが……」

麗奈「どうすんの、艦長代理」

楓「そうですね……ノルンは小惑星帯には入れませんし、ヴェールを2隻出しましょう。光学レーダーで小惑星帯をスキャンして、巣を捉えたらプランAS-05から入ります」

麗奈「追い立てる作戦ならレイナサマの出番はないわね……つまんないわ。まあいいけど、それならこっちからヴェールに誰か寄越さないとダメじゃない」

楓「ヴェールSN-01へは指揮官役でP少佐に行ってもらいましょう。SN-02と連携して、巣を外に出したらこちらで対処します」

麗奈「んじゃ菜々も一緒に回してやればいいわね。2人はそっちに行かせて、アタシたちは先回りね。アンタも、ここでちゃんと作戦成功させて昇進基準取っておきなさいよ」

楓「そうしましょうか。それでは……作戦準備に入りましょう」

……
…………
………………
……………………

――半年後、火星圏宙域、ヴェールMN-13(格納庫)

パシュンッ!

夕美「ふう……」フワッ

「夕美、お疲れ様! 今回の護衛任務どうだった?」

夕美「うん、何ともなかったよ。予定してたポイントでエイルも木星圏の防衛部隊に引渡し出来たし、これで私の任務も終わりかな」

「あ、そっか……もう来週には異動だもんね。どんなところに行くんだっけ?」

夕美「うーん、私もよく知らないんだよね。ほら、この前みんなで新しい戦闘機の適性試験受けたでしょ? アレの基準になったから異動するって話しか聞いてないんだもん」

「何するんだろうねぇ……あ、でも異動した後で中尉に昇進するんでしょ? よかったじゃない」

夕美「えへへ。まあ、お給料増えてもあまり使う機会ないけどね……コロニーに寄ってもI@LPあるし」

「アイドルとの兼務って大変そうだよねー。ま、新しい職場でも頑張ってね」

夕美「うんっ♪」

……
…………

――火星圏宙域コロニー『ギチトー』、軍病院(受付)

藍子「はい。次はお怪我に気をつけくださいね」

「ははは、すみません少尉……次は上手くやります。ありがとうございました」

藍子「気をつけて帰ってくださいねー」


院長「高森少尉」

藍子「あ、院長先生、お疲れ様です」

院長「そう硬くならなくていい。今日が最後の勤務だったか」

藍子「そうですね……今日まで、お世話になりました」

院長「少尉がいなくなるのも、寂しいがな……医療部隊から前線部隊への転属は大変だろうに」

藍子「適性試験で、戦闘機に乗ることになったってお話までは聞いているんですけど……その……」

院長「不安かい?」

藍子「……ほんの、少しだけ」

院長「大丈夫、私は少尉ならどこに行っても上手くやれると思っている……転属先でも、元気でな」

藍子「はい」

……
…………

――木星圏宙域コロニー『ハマヨコ』、国際連合本部木星圏士官学校『ハマヨコ校』

パシュンッ!

「鷺沢少尉はいるか」

文香「はい……私、ですが……」

「勤務中だったか。昼休憩のはずだが……」

文香「次の講義の……準備が、まだ終わっていなかったので……」

「まあいい、先日適性試験を受けたのは覚えているな?」

文香「新機体の試験……ですか。それならば、参加だけはしましたが……スコアのほうは……」

「少尉は基準値を満たしたようだ。本部から発令通知が来ている。少尉は新部隊への転属となる」

文香「私が……ですか? なぜ……」

「何度も言わせるな。詳しい内容は別途、本部から展開される。転属の準備を済ませておけ」

文香「……わかり、ました」


……
…………

――土星圏、戦闘宙域

『2つ目の巣、こちらに接近しています! 巣から新しい蜂が……!』

美波「S-01、S-02とこちらが分断されています! 私たちもヴェールを連れてS-03に戻らないと!!」

『くっ、なんで大規模級の巣が2つも出やがる!! はやくヴェールに……』


ドガアアアアアアンッ!!!!

ピピピッ!!


『4番艦ヴェール撃沈!! S-04より距離1800にキラー・ビー7!!』


美波「そ、そんな……」ハッ、ハッ、ハッ……


『GNS-011だ! 中隊全員下がれ!! S-04を守れ!!』


美波「沈んだ……私の乗っていた艦が……こんなに、簡単に……」ハッ、ハッ、ハッ……


『S-03との展開が崩れます! 艦隊制御、維持できません!』


美波(もう、戻れない……帰る場所が無くなって……)


美波「このまま……私、も……」ハッ、ハッ、ハッ……


美波(死なない……死にたくない……)



美波「……生きる」ギュッ……!


ドシュウウウウウンッ!!!!

……
…………

――地球、???

ピッ、ピッ、ピッ……

「えーっと、バイタルチェック問題なし。培養液排出開始っと♪」カタカタカタッ!

ザアアアアアア……

ガチャンッ!

「……」ドサッ!

「およよ? あ、そっか。培養液に漬けっぱなしだったからいきなり歩くのも難しい? 立てる?」

「……問題、ありません」

「あ、喋れるんだ。よかったよかった。それにちゃんと立てるじゃん。ついでにプロジェクトのほうも上手くいってくれればいいんだけどねー」

「プロ……ジェクト……」

「にゃははは、それは置いといて……どうかな? アーキタイプ004……久しぶりの外の空気は気持ちいい? いい夢見てた?」

「夢……何度も、何度も見ていたような気がします……でも……」

「何度も見ていた、夢は……叶わないことだって、わかって……夢を見なくなって……もう、どんな夢を見たのかも、忘れて……しまいました」

「そっか、それは残念。まあこれからたくさんベッドで寝ていい夢見ればいいよ? アーキタイプ004も……あ、もうアーキタイプなんて言うのもめんどくさいや。それじゃあ……」





「細かい話は知らないだろうけど、これからバリバリ働いてもらうから。頑張ってね、えーっと……橘ありすちゃん!」


ありす「……はい、それが今、私が生きている理由なんですね」



……
…………
………………
……………………

――地球、国際連合本部

ピッ!

大佐「そうか……プロジェクト・ヴァルキュリアの動員人数が揃ったか」

大佐「専用となる新造艦と、新型戦闘機の運用テストから始まるか……ようやく、ここまで来たか。長かった……」


大佐「とはいえ、まだこれからか……折りを見て、彼を異動させるか。もう、十分に傷は癒えただろう」

大佐「P少佐……すまない。キミにはこれまで以上に、辛い思いをさせてしまうのかもしれない。だが、いまの私たちにはこれ以外の手段がない」



大佐「これから先、この手段以外の……生きるための道が……」



……
…………
………………
……………………

おわり

以上、おまけの話でした。
デレステにかまけてカットカットカットの連続になりましたが、細かい話はあっちでやるかもしれません。
やることやったからもうこっちでもいいんですけどね。

やる予定も無かった分も結局やって、何だかんだ1年近く続けてしまいましたが読んでくださった方々ありがとうございました。

このテキスト自体は全部まとめて1年前の3ヶ月くらい前には大体揃ってたんですけどね
やっぱりデレステのボーダー争いが激しくなったのと、そもそも投下場所を間違えて惰性でカットしながら続けたのが何かもうって感じで

というわけで終わります。先に完結した本編とかハハッのほうもよろしくお願いします。

HTML化依頼出して終了。

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