未央「シンデレラプロジェクトが無くなっちゃうの...?」前編 (36)


本作は下記の前作の続編ないし、補完となっております。
物語全体の流れを掴むためにも前作の一読をお薦めします。
(本作を読むだけではわけがわからないと思われます。)

↓前作
卯月「シンデレラプロジェクトが無くなっちゃうんですか...?」
卯月「シンデレラプロジェクトが無くなっちゃうんですか...?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474117123/)
上記作品は文字が詰まっており、読み辛くなっていることをお詫びします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479458684


その日は雪だった。


もしこの雪がいつものようにただ街を白く染め上げ、ホワイトクリスマスを演出する、といった私たちの生活を彩るだけのものであったら──


いつもより早い時間にシンデレラプロジェクト(以下CP)のルームに着いた未央はリュックをいつもの場所に下ろすと他のみんなを待った。


未央「少し早く来すぎちゃったかな?」

 
年が明けて少しした頃、未央たちは年末年始の忙しさから解放されつつあった。


年末と違って穏やかな冬空が続いていた。


この日は特に仕事も無く、レッスンがあるだけだった。


暇を持て余した未央は、ルームの扉を開けた。


未央「みんな来るまで暇だし、プロダクション内をお散歩してこようかな。」




未央は交友関係が広い。


アイドルになったのも色々な人と友達になりたいから、と本人が言うように普段から多くの人との出会いを作るように心掛けている。


未央「おはようございます!」


すれ違った人にはあいさつをする。それがアイドルでも他の部署のプロデューサーでも事務員でも美城に出入りしている業者でも、面識のない人でも関係ない。


それが未央の交友関係の広さと誰からも愛されることに繋がっている。


未央にあいさつされるとその日はいいことがある。これは未央の知らない彼女の評判だ。


そしてそのあいさつを受けて笑顔で応対してくれる。


そんな美城の人達も未央がこのプロダクションを気に入ってる一つの理由だ。




しかし、今日は違和感があった。他のアイドル達はいつも通りだが、美城の人間、特にプロデューサー達からは、少し異様な反応を返された。


彼らは未央から目を逸らすのだ。


未央「私、なんかしたかなぁ…」


首を傾げていると、よく知った顔を見かけた。


未央はもちろんいつものようにあいさつをする。


未央「おはようございます!お疲れさまです!」


武内P「…!本田さん…」



顔が怖いのはいつものことだが、この日の武内Pは妙にやつれた顔をしていた。


それは肉体的な疲労ではなく、精神的な疲労から来るものに見て取れた。


未央「プロデューサー?何かあったの?」


武内P「い、いえ!特には…」


何か隠し事をしている。


未央ちゃん相手に秘密を隠し通せるとでも?


未央「プロデューサー?この未央ちゃんに隠し事をするなんて、ずいぶん挑戦的だね?」


武内P「!!い、いえ!隠し事など…」


図星か。


未央「ん〜?一体なにを隠してるのかな〜?ほら、言ってごらんよ〜」


ニヤニヤと武内Pに詰め寄る。



武内P「…そうですね…このことは今、本田さんに...いえ、CPの皆さんへ事前に知らせてもらうべきですね…」


未央「え?」


意外と早く折れたな…それにCPのみんなにも知らせるって…?


予想外の反応に未央が驚いていると、武内Pは彼女に告げた。


その言葉は、未央を現実に引き戻した。


彼女が知らず知らずの内に自身の中でうやむやにしていたことを、はっきりと思い出させた。


シンデレラプロジェクトはかぼちゃの馬車だった。


そして、魔法はすでに解けかけていた。



プロジェクトルームのソファに未央は身を委ねていた。


少し埃っぽい空気を吸い込む。


未央「しまむー…しぶりん…どうしよう…」


1人ではどうしようもなくなった時、その口からこぼれるのはニュージェネレーションズ(以下NGs)の仲間の名だ。


未央はそのリーダーとしてユニットを引っ張ってきた。


自分の夢で自分自身を押し潰してしまったこともあったが、彼女はこの半年でNGsのリーダーとして、また、1人の人間として精神的に大きく成長してきた。


彼女が悩んでいた時、2人は共に悩み、共に歩いてくれた。


それは未央も然りだった。



だが、今回の件については自分1人の問題ではなく、ましてやユニットの問題でもない。


CP全体の問題であった。


しかも、それはCPのアイドル全員の力を合わせても、どうすることもできない問題でもあった。


未央はそれをわかっていた。


だから座っていることしかできなかった。


先刻の武内Pの話を思い出す。


彼の話は簡潔だった。


ただ


武内P『本日の朝礼で昨年末に行われたシンデレラの舞踏会についてのお話をしますので、よろしくお願いします。』


とだけ言った。



そこから未央は、武内Pの言葉の意味を正確に読み取った。


《CPは解散します。そのことを朝礼でお話するので覚悟をしておいてください。》


こう解釈した。


そしてそれは当たっていた。


未央は知っていた。


シンデレラの舞踏会は成功しなかった。


もちろん、失敗したとは思ってない。


だが、成功ではないことは誰もが理解していた。


そして美城常務から言い渡されていたCP存続の条件はシンデレラの舞踏会の成功…


失敗ではないが、成功ではない。


この事実を認めてしまった時からこうなることは予想できていた。



それでもそのことを頭から消せていたのは、今日までシンデレラの舞踏会についての話が出ていなかったからだ。


このままうやむやになって欲しい…


未央はずっとそう思っていたのだ。


たが、未央の望みは叶わなかった。


現に今、それが現実のものとなったのだから。



CPが解散し、未央は新しい部署に配属された。


共に配属されたのは卯月だけであった。


本来はユニット毎の配属になるはずだったが、凛はトライアドプリムス(以下TP)の活動を優先するため別の部署に配属されていた。


しぶりんとは離れ離れになったけど、ここからまた頑張ればきっとCPは復活できる。


それにNGsだってまだ終わったわけじゃない。


未央はそう思っていた。


絶対に諦めない。


未央「よし!しまむー!しぶりんはいないけど、気持ちも新たに新生NGsの初レッスンをしようじゃないか!」


NGsの仲間、島村卯月に声を掛ける。


卯月「はい!新生島村卯月がんばります!ぶいっ!」


お決まりのピースサインを見届けた未央は、卯月と共にレッスンルームに足を踏み入れた。


大丈夫、絶対大丈夫。


想いを信じ抜く未央を取り巻く状況は、次第に好転していった。



1つに、先日受けた舞台のオーディションに合格した。


そしてもう1つ、新ユニットの結成の話が舞い込んできた。


この2つの朗報は未央を奮い立たせた。


CPを離れて、新たなステージに立つこと。


確かにCPが無くなった事は寂しいが、「本田未央」を見てくれる人がいるということは、とても嬉しかった。


そして、最も未央の気を引いたのは新ユニット結成の報である。


メンバーは未央に加え、高森藍子、日野茜の3人ユニットだ。


ユニット名は[ポジティブパッション]、未央と茜にはぴったりだ。


藍子のイメージとは少し違うだろうか。


ともあれこの3人での活動は未央にとって、とても喜ばしいものになるはずだった。



以前、舞台で共演したこともあり、3人で過ごす時間も未央にとってかけがえのないものになっていた。

 
未央はこのユニット結成について凛と卯月について相談することにした。


凛がTPを結成した時は時期が悪かったこともあり揉めに揉めた。

 
今回もCP解散直後と非常にタイミングが悪い。

 
それでも成長してきた自分達に、再びあの時のようなことが起こるとは思えなかった。 


それでもこれは3人にとって、とてもデリケートな問題であると思われたため、未央はNGsで集まる機会を作ろうとした。
 

ここ最近3人で集まることもなかったため丁度いいかもしれない。




未央はメールアプリのNGs専用のグループにお誘いの連絡を投稿した。


未央《みんな元気?NGsの元気印こと未央ちゃんだよ♪最近3人で遊んでないし、週末にどこか出掛けない?話したいこともあるんだ!》


凛の予定が不安だったが、とりあえず集まるきっかけを作った。

 
未央「みんなで遊ぶのも久しぶりだなぁ…なんか、楽しみでもううずうずしてきた。」

 
居てもたってもいられなくなった未央は2人からの返事も待たずにルームから飛び出して行った。
 



今日はどこに行こうかなー。

 
プロダクション内の散歩は未央の人脈の基盤だ。

 
このタイミングでいろいろな情報も仕入れる。

 
主にプロダクション内のいい噂や悪い噂、各アイドルの最新情報などであるが。

 
そしてこの日に限って悪い噂を仕入れてしまった。


それは「近ごろ、美城所属アイドルの引退が増えている」というものだった。

 
美城でアイドルをやっている未央にとってこれほど気味の悪い、しかも興味の引かれる噂はなかった。

 
未央「嫌な話だな…」

 
未央はこの噂の真偽を確かめるため様々な人の話を聞くことにした。
 

そして、その噂の真意を知ることになった。




週末、NGsの3人は久しぶりに顔を合わせた。

 
卯月は未央のお誘いを見た瞬間に遊ぶことを決めたらしい。


凛もこの週末はオフだったようだ。

 
いつもの駅前に集合して、いつもの店でショッピングをして、いつものファミレスでおしゃべりをする。

 
これが3人にとって何事にも変え難い時間であった。




食事を済ませてデザートを待つ間に、未央はポジパの話を持ち出した。

 
未央「あのさ、2人に相談があるんだけど…」

 
凛がやけに心配そうな顔をする。

 
1人だけ離れた場所で活動をしているため昔以上に過敏になっているのだろう。

 
卯月「相談ですか?私たちにできることならなんでもしますよ?」


卯月も心配そうな顔をした。

 
未央「いや、そんな切実な話じゃないんだけどさ。まぁ、大事な話ではあるんだけど…」

 
心の底から心配そうな顔をする2人に慌てながら話を続けた。


未央「あ、あのね!私に新ユニットの話が来てるんだ。前に舞台で一緒になったあーちゃんと茜ちんとなんだけど…」

 
2人は真面目な顔をしている。




未央「そ、それでね?私的にはいい話なんだけど2人はどう思うかなって…ほら、しぶりんのこともあったし…ね?」

 
表情を変えない2人に未央はしまったと思った。

 
CPが解散してから舞い込んだ話だ。

 
あの時もそうだったが時期が悪い。


2人が嫌な思いをしないわけがない。

 
凛「話ってそれだけ?」

 
未央は自分の浅はかさに後悔した。
 



凛「ふーん、その3人ってなかなかいいね。常務も目の付け所だけはいいよね。」

 
未央「ごめん!私だってNGsは大切だよ?でもとりあえず2人に話をしておかないとって思って…え?」

 
予想外の答えにびっくりしてしまった。


凛「は?何言ってるの未央?まさか私たちが反対すると思った?」

 
凛はきょとんとしている。

 
未央「え?いや…そう…だけど…」

 
凛「何言ってるの。そもそも反対するとか…それは私が言えることでもないし…卯月だって反対しないでしょ?」

 
卯月も続ける。

 
卯月「当たり前じゃないですか!私もその3人ならとっても楽しいユニットになると思いますよ!」

 
ふんふんと鼻を鳴らしながら話す卯月に未央は脱力してしまった。
 

未央「なーんだ、心配して損したよ~」


未央は椅子から滑り落ちそうになりながら大きく息を吐きだした。




凛「全く、未央は私たちをなんだと思ってるのさ。」

 
呆れたように話す凛に卯月が重ねる。

 
卯月「そうですよ!私だって毎日成長してるんですから!」

 
凄む卯月にほっとした未央は座り直した。


未央「そうだよね。みんなあの頃とは違うんだよね。」

 
2人の柔らかい表情に深い感慨と、懐かしい安心感を感じた未央はおしゃべりを再開させた。




未央「よし!私も頑張るね、しまむー。」

 
ケーキを頬張っていた卯月が慌てて答えた。

 
卯月「ふぁい!ふぁあしふぉ、ふぃおちゃんにふぁけていふぁえまふぇんえ!」

 
なんと言ったのだろうか。


凛「卯月、食べてから話そ?」

 
子供のようにケーキを咀嚼し、飲み込もうとしている卯月を見て未央は笑う。


未央「しまむーってほんと私たちより歳上だって信じられないよねー。昨日もなかなか寝付けなかったんでしょ?」

 
ケーキを飲み込みきった卯月の反論が飛んでくる。

 
卯月「だって楽しみだったんですよ~」
 

凛も便乗する。

 
凛「ほんとちっちゃい子みたいだよね卯月は。昨日は電話口で子守唄でも歌ってあげればよかったかな?」

 
未央「あっはは!しまむー私達よりお姉さんでしょ!」


未央がからかう。


卯月「だって本当に楽しみだったんですから~」




なんて楽しいのだろう。

 
CPに所属していた頃は毎日このような時間を過ごせていた。

 
大切なものは失ってから気付くとはこういうことなのか、と未央は考えていた。

 
CP解散後も楽しい時間がないわけではなかった。

 
確かにこの3人で過ごす時間には劣るが、それなりに楽しい時間を過ごせていた。


しかしそれは満足がいくようなものではなかった。

 
そして今のこの時間も例外ではなかった。

 



ひとしきり話が終わり、話題が尽きかけていると、凛が突然話し出した。 


凛「ところで2人はさ、こんな噂知ってる?」


しぶりんが噂話なんて珍しいな、と未央は思った。


そして、噂話と言えば先日変な話聞いたな、とも思っていた。


それは
 

『美城常務は気に入らないアイドルは切り捨てる』


というものである。
 

言い方は悪いがこう言われても仕方がなかった。

 
特定のアイドルの仕事が急激に減少し、スケジュールが組まれなくなる。

 
それでも解雇はされず、アイドルから自主退社の申し出があるまで放っておく。

 
冗談みたいな話だ。


信憑性も疑わしい。




美城常務に反感を持っている人物が流したデマだろう、と最初は思っていた。


美城プロダクションというブランドを考れば、あまりに現実とかけ離れた行為だ。

 
それでも未央は深く悩んでいた。

 
そもそもそのような噂が蔓延することが異様である。


さらに未央達アイドルにとってとても無視できない内容だからだった。

 
それにこの話はアイドル達には知らされてないようだ。

 
体裁を気にして、各プロデューサーは口止めをされているのだろうか。 


未央はブロデューサー同士の話からたまたまこの噂を知ってしまった。

 
そして予感をしてしまった。

 



卯月がピンクチェックスクールから外されたこと。


NGsの仕事が明らかに減ってきていること。


だが未央には新ユニットの話がきたこと。

 
そして、卯月だけには知られたくなかったこの噂が、今この瞬間に、美城常務に最も近いアイドルの1人である凛の口から知らされたこと。

 
それを聞いた卯月に一瞬よぎった不穏な表情。

 
未央の心にはこれまでにないほど巨大な、黒々とした不安が渦巻いていた。



後編へ続く


後編はおそらくきっとたぶん年内には投稿するつもりです。


あっそうだ、ほかにもこんなss投稿してるんでよろしくお願いします。(大胆な宣伝は筆者の特権)

茜「野球中継みましょう!」
茜「野球中継みましょう!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474627927/)

凛「乃々は私が引き取るから」
凛「乃々は私が引き取るから」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478404650/)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom