[不定期]須賀京太郎SS短編集[基本非安価] (70)

以下の事にご注意ください

・京太郎スレです、京ちゃんが女の子となんやかんやします
・シリーズものもあれば一話で完結もあり
・別スレあるんでこちらはネタに困ったときの息抜きゆえに不定期
・直接なエロ描写はない、はず。でも基準がよくわからんので一応こっち
・思いつくままに書くので文体不一致やてきとーなことがよくあります
・気に入る話もあれば気に入らない話もあると思いますがその時はそっとじ推奨

注)オカルトスレ書けよって言葉はやめよう。エロばっか書いてると息抜きしないとやってられんのです、飽きっぽいんです
でもあっちもちゃんと作るから。時間はかかるけど

ではでは始まります。
とりあえず、大学生編とホスト京ちゃんシリーズの転載かな
コピペコピペ

ホスト、それは女性に夢を見させるといえば聞こえがいいが、実際のところ疑似恋愛と時間を売っているに過ぎない。
同時にパフォーマンスとドリンクの値段で競ってどれだけ自分がホストにとって大事か誇示する女の戦場でもある。

そんな場所に彼女は訪れていた。噂に縋って旧知の男性を求めて。

京太郎「ご指名ありがとうございます、お姫様」

スーツにリングタイをつけてブラウスの上ボタンを2つ開けた金髪の男性が慣れた礼をして顔を上げ、一瞬目を見張る

咲「京ちゃん、本当だったんだここで働いてるって」

京太郎「お姫様、お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」

咲「京ちゃん……やめてよ、それ」

京太郎「仕事中はプライベート禁止なんだよ」(ボソ

咲「……分かった。これ連絡先。それと、クリュッグ・ロゼを」

京太郎「ふぁっ?」

世間ではホスト業界やシャンパンと言えばドンペリとのイメージが強いが、クリュッグの方が断然希少生産である。
簡単に言えばドンペリはメジャーブランド、クリュッグは通用のシャンパンと考えればいい

咲「どうかした?」

京太郎「いえ、お姫様、中々お目が高いのですね」

咲「私、こっちの方が京ちゃんにふさわしいと思って」

クリュッグは基本ヨーロッパ圏では来賓用、すなわち特別な相手のためのシャンパンである。
なお原価、1本につき3万5千程度。ホストクラブでは約3倍から4倍なのでお値段10万円強。

京太郎「クリュッグ・ロゼ、入りましたー!」

このクラスになると、当然のようにシャンパンタワーである。
店員全員に持ち上げられ、酒も入った咲は甘えるように俺の肩に頭を傾ける。

咲「ふふ、今は京ちゃんは私だけのもの、王子様でいてくれるんだよね?」

京太郎「もちろんです、お姫様」

騎士のように貸しづいて手の甲、指先へと口づける。
周囲の客席から送られる嫉妬と羨望の視線に咲は物怖じするどころか、微笑んで返す。
人見知りはどこへ行った?

結局、咲は追加でもう一本注文し、俺の歓待にご満悦で帰って行った。
いやけどこれ、知り合いから20万以上ぼったくってるってどうなんだ? 他の客の手前も俺の給金的にも、咲だけ特別扱いとか無理だし。

そして翌日、また別のお姫様が訪れる。彼女は弁護士資格を取った才媛の、ぶっちゃけると和であった。


『ホストKYO』 初めてのお姫様編  カン

カツカツと革靴の音を鳴らし、ビシッとスーツに身をまとった彼女は厳しい表情で間合いを詰め、冷たい目で俺を見て告げる

和「この人でお願いします」

その一声で、俺は2日続けて高校時代の友人に指名されることが決まってしまったのである。

和の容姿は目を引く。スタイルも抜群であってない数年で急激に大人びて、スーツという戦闘服をまとったその姿はできる女にしか見えない。

和「いかがわしい店に勤めているというのは本当だったんですね、すがく……」
京太郎「ご指名いただきましたKYOでございます、お姫様。どうぞおかけください」

本名を口にしようとした彼女の唇に指先を当て、手を取って微笑みかけてエスコートする。
言いたいことを察したのか、彼女はため息をついて俺に勧められるがままにソファに座った。
そのままメニュー表を見ることもなく、彼女は口にする。

和「ドンペリで」

ダメだ、これ和絶対分かってない! クラブでは「とりあえずドンペリ」とかいう話を真に受けてきちゃった初心者だよ。
注文を取り消すことはできない。特に相応の値段のものの提案を取り下げて安いコースを進めるのは客の顔に泥を塗るのと同じ。
俺がこの注文を取り消すのはご法度であり、そんなことをすれば俺はホストとして完全に信用を失うこと間違いなし。
な、ならばせめて、被害を最小限に抑えるために……

京太郎「ドンペリ白2004、入ります!」

ドンペリとしか指定されていないので一番安い白で押し通す!
と言っても顔を潰さないため直近の当たり年の2004年、これなら原価は1万5千をどうにか切る。

年代指定で分かっているお客を無理やりに演出する、ホストとして慣れてしまった自分が悲しい。
なお、このコースでもシャンパンタワーである。流石にスタッフ全員でのスタンディングオベーションこそないが、乾杯とお礼が飛び交うのは変わらない。

目の前で繰り広げられるショーに、未体験の和は目をぱちくりする。そして勧められるままお酒を口にし……10数分後

和「私、頑張ってるのに、全然認めてくれなくて……お父さんは早く結婚しろってお見合い写真を持ってくるばかり。
  私はせっかく資格を取ったのに、そのことを褒めてくれたりなんか、全然……」

和は泣き上戸でした。

京太郎「お前が頑張ってるのは俺が一番わかってるよ。いつも努力家だもんな、和ってお姫様は。
    努力してるのにそれを他人に見せたりしない。だから誤解されやすいけど、そういうお前が好きなんだ」

和「わ、分かってくれるんですか? す、すがく……」

また不用意に本名を漏らそうとしたので、唇に指を添わせて顔を間近で覗き込み

京太郎「KYOだよ。名前で呼んでくれないか、俺だけのお姫様」
和「~~っ! は、はい、京さん……」(ポワーン

ふー、セーフ、セーフ。プライベートバレはマジでまずいからな。どうにかして和を無事返さないと……
30分後

和「ま、また来ますね、そ、その、京さんっ」(カアッ

いや来ちゃダメだろ和! 最初いかがわしいとかすごく否定的だったじゃないか、何がどうなってるんだよ!?
内心では激しく動揺しつつ、指先に口づけをして「また貴女に会えるのを楽しみにしてます」と反射的に帰してしまう俺、ホストに染まっちゃったなあ。


『ホストKYO』 陥落の女弁護士編  カン
あれー、和がすごくチョロインと化したぞー(棒

竹井久、彼女は雑誌社に勤める記者の一人である。
曰く「事実を脚色した記事に踊らされるのって見てて楽しいわよね」
彼女のどうしようもない性格の一片を表した文言であるといえよう。
そんな彼女はとある一軒のホストバーに入ろうとしていた。潜入取材である。

少し悩むようにパネルを眺め、初恋の相手の面影を残す相手を無意識に選んでいた。

久「この子にしてちょうだい」

スタッフ「申し訳ありませんが、ただいま他のお客様に指名されておりまして」

久「そう、じゃあ誰でもいいわ」

どうせただの取材、ほんの少しだけ残念に思う言葉をそのいいわけで誤魔化した。
そして彼女は店内に入り、すぐさま衝撃に足を止める。

久「え? 美穂子?」

高校時代からの親友と言っていい存在が、恥じらうようにポッキーの端を咥えている姿を見てしまった。

久「え? え? え?」

彼女の困惑の元はそれだけではない。指名しようとしていた男性が、親友の肩に手を回している。
明らかに酒の入った親友は、むしろ嬉しそうにそれを受け入れていた。
聞こえるはずのないポッキーが折れる音と、残念そうな美穂子の顔が久の心に刺さった。

久「……そこの席にして頂戴」

自然と低い声が出た。親友の横顔を見れて、それでいて自分は見つからない場所へと位置どる。

久(なんでこんなところにいるのよ、美穂子)

自分の知る親友はこんなところに通う女ではなかった。きっと騙されているのだ、あの男に――
何としてもあの男に近づき情報を得なければならない。今日は観察、後日必ず――そう久は決意した。

そしてその日から1ヶ月後

久「ねえ、私のプレゼント受け取ってくれる? 京くん」
美穂子「お願い、何でもあげるから一緒にいてください、京さん」

京太郎「あ、あの、俺は店以外でそういうことはちょっと……」

久「いいじゃない、私の愛情よ。あの頃構ってあげられなかったお詫びも兼ねて、ね」
美穂子「あの時と同じように彼を独占するつもり? 私の方がいろいろできるから、ね」

親友と一緒に、元後輩に完全に入れ込んで引くに引けない状況になっていた。
一歩でも引けば親友が彼を取っていく、そう信じて疑わない二人は1人のホストに競って己の持つものを捧げている真っ最中。

争われる一人の男性は思っていた。

京太郎(なんで部長も福路さんも貢ごうとするの!? そんな高いもの知り合いから受け取れるわけないだろ!?)


『ホストKYO』 争う親友たち編  カン
誰かが久や美穂子が身持ち崩すっていうからこうなったじゃないか(責任転嫁

ホストのスタンスというのは様々である。相手をいい気分にさせるといっても持っている武器はそれぞれ違う。
俺の場合は学生の頃に慣れたお姫様扱いが基本となる。逆に俺様キャラの人もいるのがこの業界だ。

これはホステスも同じだが、店での時間以外にも様々な武器がある。
同伴出勤やアフター、それにメールや電話での営業。これらに対する接し方もそのホストの裁量である。
人によっては性的な関係を結ぶ、枕営業をしている奴だって普通にいる。

肝心の俺のスタンスはというと、枕はおろか、同伴やアフターすら皆無である。
『お姫様になれるのは店の中だけ』、そういうポジションを維持してる。

そりゃあ、金を稼ぐにはした方がいいのは分かっている。しかし俺には無理だ。
なぜって、線引きをちゃんとしないと俺自身が相手に肩入れしてしまうからだ。
自分が人に甘いのを自覚しているのだ。だからこそ、こういうお客さんが一番困る。

憧「ね、店終わったら二人で飲みに来ましょ? こんなこと貴方にしか言わないのよ」

さわさわとこちらの太ももの付け根を撫でながら、今日の彼女はぐいぐいと攻めてくる。
彼女はOLで、大金を持っていて頻繁に来れる裕福な姫ではない。だから、こんな搦め手を使おうとしてくるのだ。

憧「マージンとられない分弾むし、京にもいい話だと思うんだけどな」

正直、彼女はモデルに出ても違和感のない美少女だ。それが密着して、酒はおろかその先をにおわせてくる。
一晩を過ごせばあるいは、と思っているのだろう。普段会社で大モテだろうになぜそこまで俺に執着するのかちょっとわからない。

京太郎「憧、俺はお金でお前を抱きたいんじゃないんだ。ホストだけど、ホストだからこそその一線は守る。
    抱くのは本当に大事になったお姫様だけだよ。だから、その物憂げな顔はお前には似合わない、笑顔でいてくれ」

憧「うん、わかった、ごめん、無理言ってるの分ってるんだけど」

ホストは多くが太客というお金を多く落とす客に優先してあてがわれる。元の資金の少ない憧にとってはこのクラブに来るだけでもかなりの負担なのだ。

京太郎「会いたいのも、寂しいのもわかる、だからできるだけメールと電話するよ。お前は俺の大事なお姫様なんだから」

ホストで困る客、上位は「店での関係を本物と信じ込み過ぎた女」「太客だからと横暴を押し通す客」「そして望まぬ関係を結ぼうとする客」だ。

ぶっちゃけ憧は超絶美人で、須賀京太郎として誘われたらついて行ってしまうだろう。
だが今の俺はホストKYOなのだ。守るべき矜持がある。まあ、もったいなかったとは思うんだけどな。


『ホストKYO』 魔性の誘い新子憧編  カン
アコチャーに不穏の影が近づいているような?

ホストの客層と言えばどんな人間を想像するだろうか?
普段寂しいセレブの奥様? それともバリバリのキャリアウーマン? 確かにそういった人間は一定の数いる。
普通のOLや人妻、悪い遊びに憧れる若い子、そういった人間もまあ、そんなに多くはないがいる。

だが最も多くそして太客になりやすい客層、それはキャバ嬢である。
似たような仕事をしているということで話は合うし、普段お客さんの相手をしているストレスの発散も兼ねる。
だが一番の原因は、「自分も同じことをしているから自分は騙されない」と思ってしまうことだ。
普段ちやほやされるからと特別扱いを当然のように受け入れ、金銭感覚が麻痺しているから気が付いたら深みにはまっている。
そしてお金で相手の関心を買えるのだと自分の稼いでいるお金をつぎ込み始める。

淡「どんどん持ってきて、どんどん!」

大星淡、とある店でNo.1を維持している彼女もその一人だ。
その振る舞いはわがままであるにも拘らず、それが許されむしろ可愛いとまで思わせてしまう美貌と子供っぽい性格。
お客さんはそんな彼女を娘のように思い投資していく。自然、相手の年齢が高めになり彼女は枕すら必要としない。

淡「ドンペリゴールド3本一気に行っちゃおう! 1本はスタッフさん用、1本はキャスト用、最後は私と京の!
  あ、スタッフさんはちゃんとお仕事終わりに飲むんだよ、酔っちゃってタワー倒すと大変だからね。この前もうちの黒服が……」

そして金遣いは剛毅でありながら、ちゃんと店の全員に対する配慮も忘れない。普段No.1を張っているだけのことはある。
結果、うちの店でも優遇され、人気も高い。本気で狙っているスタッフやホストまでいるのだ。

淡「今日しつれーなお客さんがいてさー、この淡ちゃんの許可もなくお尻を撫でるんだよ。
  その場では穏便に済ませたけど、瓶から直接頭に注いでやろうかと思ったよ!
  ね、しょーどくして、消毒」

同じ金髪の誼だとかでなぜか気に入れられた俺に甘えて、自分のお尻へと俺の手を導く。

淡「そ、こんな風に上下に撫でられて、無遠慮にもみもみってされて、んう……」

俺の手の上に掌を重ねて、淡自身のお尻の上で俺の意志に関わらず再現させる。

淡「んは……んっ。はい、しゅーりょー! ここから先は京でもダメー。
  そ・の・か・わ・り、特別な関係になってくれるっていうなら、話は別なんだけど、なー?」

顔を赤らめているのは照れか酒のせいか、小悪魔のようにこちらの顔を覗き込み上目遣いになった後、俺の首に手を回して顔を近づけて目を閉じる。

淡「契約するなら唇に、ね」

ふんわりといい匂いが間近から漂う。その色香に周囲からは嫉妬と感嘆のこもった視線が店中から注がれる。

京太郎「可愛いお姫様、あんまり誘惑すると男は狼さんになっちゃうんだから、そういうのは俺だけに、な」

淡のおでこに口づけて、そっと金糸の髪を優しく撫でる。

淡「むー、これでも落ちないかー。私のきょーじが傷つくなあ。仕方ない、今日は出直し!
  あ、最後に見せつけたお詫びにお客さん全員にドンペリゴールド1本振る舞ってね!
  じゃーね、京。ぜーったい、淡ちゃんは狙った獲物は落とすんだから!」

そして最後の最後まで自分勝手なお姫様は、嵐のように立ち去る。しかし、その通り過ぎた後には爽やかさしか残らないのが淡の凄いところだ。
俺は苦笑しながらも、店の中に残ったお姫様方にお詫びのシャンパンを一人一人に注いでいく。


『ホストKYO』 嵐の小悪魔、淡編  カン

どういった業界でも問題児とされる客というものはいるものだ。
単にごねてお金を払わない、とかはこの業界では問題にすらならない。
水商売の世界で問題児とされるのはまた別の方向。

ネリー「何が不満なの!? これだけ払うから今日一日独占させろって言ってるだけなのに!」

こういう、金に物を言わせてルール破りを要求してくるタイプである。
ホストというものはただ一人の太客を確保すればいいというものではない。
当然、馴染みの客が来たら顔出しをしなければならない。それは信用の維持に必須だ。

ネリー「分かったよ、じゃあこの1.5倍、ううん、2倍払う! それでいいでしょ!?」

しかも、こういうタイプは信用や信頼が金で補えると信じて疑わない。
しかも無茶を通すだけの金が潤沢にあるから追い出す訳にもいかない、まさに問題児である。

結局、店長の交渉術により最初の提示額の3倍で、個室への案内となった。
おそらく、今日来た俺の客に対しては『体調がどうの~』とかで休みだということにされるのだろう
後でちゃんと内容を確認してフォローを入れ無ければならない。

ネリー「ふふーん♪」

一方で独占を許された彼女は非常にご機嫌である。
救いといえば、彼女は普段は海外によく出ていて店に来ることはまれだということだ。
その代わり毎回のようにわがままを言い、平気で数千万から億単位の金を落とす。

京太郎「ネリー、こういうのはやめてくれっていつも言ってるだろ」

ネリー「京は何が嫌なの? あ、分かった、お店には内緒ね」

勝手に得心したようにポンポンと帯のついた札束を積む。
こんなものどこにも隠せないだろ、頭が痛い。

ネリー「ね、ね、口移しで飲ませて。京とできるならいくらでもいいよ」

ダメだ、全く理解していない。流石の俺もキレそうだ。

京太郎「……分かったよ、しっかり味わえ」

シャンパンを口に含み、そのまま唇を合わせて液体ごと舌を入れて……

ネリー「ん、んんっ!? んんんっ、んはっ、~~~んんっ! はあ、はあ、はあっ」

体を震わせて、体から力が抜けて俺にもたれ掛かってくる。

京太郎「もう二度とするな、じゃないと嫌いになるぞ」

ネリー「は、はひ。もうしにゃい、だっから捨てないれぇ。お金全部らします」

根本的にわかってない。
お金で人は買えないのだと説明したところで、ホストの言に何の説得力があるのか?
そして俺は自分の流儀ではないやり方で彼女に言うことをきかせてしまった。
ああ、自己嫌悪だ……こういうやり口で人を支配したりするのは嫌いだ。
俺は皆にお姫様みたいに気分良く夢を見てほしいのに、どうしてこうなった。

最終的に問題児はさらに上乗せして支払いを終え、顔を赤くしながら胸の前で小さく手を振って帰った
表面上は和やかに見送ったが、正直俺の思いは忸怩たるものがあった。


『ホストKYO』 超絶問題児、ネリー編  カン

彼女に声をかけたのは全くの親切心からだった。地図を手に目をぐるぐるさせている彼女を放っておけなくて、それで案内を買って出た。

穏乃「ありがとうございます!」
京太郎「いや気にしなくていいよ。っと、もうすぐ仕事の時間だ」
穏乃「お仕事? 何をされているんですか?」
京太郎「ええっと……飲み屋?」

嘘は言っていない。ここでホストクラブとか言ったらなんだか下心があったみたいじゃないか

穏乃「じゃあ、売り上げに貢献しますよ!」
京太郎「え?」

そんな感じで、キャッチまがいのやり取りの末に彼女は結局来てしまった。

穏乃「あわ、あわわ……」

そして、煌びやかな店内の様子に彼女は狼狽していた。無理もない、どう見ても健康的なアウトドア派だ。ホストクラブなんかに縁はないだろう。
ここで大金を通りすがりの女性に払わせるわけにもいかない。カクテル一杯で帰る分には問題ないだろう。
そういう気持ちで、シェイカーを手にした。作るのは運動派が飲みなれているだろう味に近いコレ。

京太郎「テキーラ・サンストロークでございます、お姫様」

すっと膝をついて、恭しく彼女にグラスに入ったカクテルを差し出す。すると、なぜか目を丸くしていた。

穏乃「か、格好いい……い、いやその、カクテル作るしぐさが、なんというか」
京太郎「お褒めにあずかり恐悦至極。どうぞ、お飲み物を」

無駄に手を折って礼をする。カクテル作りは新人の頃に学ばされたけど、意外となまらないものだな。

穏乃「うま、これうまっ!」
京太郎「気に入っていただけましたか? 飲み慣れているものに合わせてみましたが、どうでしょうお姫様」
穏乃「あー、言われれば清涼飲料水に似てるかも……」

京太郎「お好みのものがあれば他にもお作りできますよ」
穏乃「じゃあその、山っぽいもので!」
京太郎「ではストレートにマウンテンを」

飲みやすくアルコールも低めだし、問題ないだろう。そうやって差し出した2杯目も平らげ、彼女は少しもじもじとして

穏乃「あの、店員さんは彼女とかは……」
京太郎「そうですね、ここにいる間は貴方の恋人のようなものです。
    お姫様には不足かもしれませんが」

穏乃「いやいや、そんなこと、全然!」

反応が素直で可愛らしいな。なんだかこっちもやる気になってしまう。そのままいつもより少しばかり丁寧にお姫様を歓待した結果……

穏乃「あ、あの、また来ていいですか? 京さん」
京太郎「もちろん。貴女のような可愛らしい方に会えるのは楽しみです。
    おっと失礼、プリンセスに相応しいのは『美しい』でした」

わざと気取って、傅いて指の爪先にキスをする。彼女は酔いに少しだけ顔を赤くして。

穏乃「あ、ああ、あの、ま、また絶対来ます!」

どぴゅんと、走り去ってしまった。お酒の後に走ると酔いが回りやすいけど、大丈夫か少し心配な俺だった。


『ホスト京』 迷子の初体験、穏乃編  カン

ホストにとって客同士の鉢合わせというものはできるだけ避けたいものだ。
まあ基本は、でしかないが。やり手ともなればむしろわざとブッキングさせ競わせることもある。

これは一月に数度しか来れない憧の卓に俺がついていた時だった。扉をおずおずと開けて、一人の女性が現れた。
ポニーテールを解き、少し大人びたワンピースを着て落ち着かなさそうにスタッフに聞く

穏乃「あの、京さん今日いますか?」

緊張をはらんだその声は本人が意図したものより大きく、触れていた憧の方がピクリと跳ねた

憧「……シズ、何であんたがここにいるの?」

少し不機嫌な声色に気が付かず、訪れた女はむしろ嬉しそうに駆け寄る。

穏乃「憧、久しぶり! あれ? 憧も京さんと一緒なの?」
憧「私は京の姫だけど、ていうか質問に答えてよ」

穏乃「ごめんごめん。支店の進出しようかって話があってさ、こっちにちょっと出てるんだ。それで、えーっと、姫って何?」

お気楽で楽しさしか含んでいない言葉に、憧はため息を一つつき、座るように促した。

憧「あんた何も知らないのね、姫ってのは客のこと。この場合は本指名した相手ってこと。
  私は京に専属でついてもらってる、ここまではOK?」
穏乃「専属とかあるんだ、私も京さんがいい」
憧「あんた最初の時説明されなかったの? まあ、指名する姫が多いだけ京は給料上がるから好きにしたら
  で、基本はあんたみたいに突然来るんじゃなくて予約しとくの。じゃないとその時ちゃんと空いてるかわかんないでしょ」

ふんふん、と頷く穏乃。俺も思ったように喧嘩にはならずに、むしろ丁寧に教えていく憧の姿に感心する。
部下とかに対してもこんな感じで面倒見いいのだろう、憧は。

憧「ホスト側も時間調整とかあるしね。その辺金に物言わせてぶっちぎってくる奴もいるけど、私のような細客はそういうの無理」
穏乃「ほそきゃく? 憧は確かに痩せてるけど」

憧「うっさい。細客ってのは金をあんまり還元できない姫のことよ。逆にたくさん落とす客は太客」
穏乃「つまり高いものを頼めばいいんだね。うわ、すっごい高! これ100万とかするのあるじゃん!」

憧「それぐらい平気で払うやつもいるのよ。人によっては1000万近くとかね。京は私みたいな細客相手でも大事にしてくれるけど、そういうのは珍しいの」

何というか、意外だ。憧はよく外で会おう的なことを言ってくるから、あんまり考えてないのかと思っていたが。

憧「まあ、簡単に説明するとこんなとこ……って、あんた何取り出してんのよ!?」
穏乃「え? 支店のために用意してたお金だけど」

京太郎「待て待て穏乃、それはまずい、今すぐしまえ」

俺も流石に隣で聞いておられず、鞄の中に戻すように言う。

憧「あんた何考えてるの!? それ横領よ。京じゃなきゃ普通に使わせてあんた破滅してたわよっ」
穏乃「え、でも京さんのためになるなら……」

なんてこった、穏乃のやつこういう世界に慣れてないせいでブレーキのかけ所が分からなくて完全にぶっ飛んでやがる。
これ、他のホストにつかまってたらマジで風呂行きコースだぞ、絶対連れて来ちゃいけない客筆頭じゃないか。

憧「……いい、分かった。シズ、あんたには細客なりの立ち回り方をしっかり教え込むわ。覚悟しなさい」
京太郎「穏乃、悪いことは言わないから憧の言うことを聞いとけ。俺はお前を破滅させたいわけじゃないからな」

そうして、憧の少ない楽しみの時間は俺と憧によるホスト講座へとなぜか形を変えた。


『ホスト京』 初心者の陥る罠、穏乃&憧編  カン

同じ相手を指名しあう姫同士の仲がいいことはとても少ない。まあ当たり前だろう、相手の一番になりたい人間が二人いれば一人は二番目になるのだから
そして、力を持つ人間ほど行動は大胆なものになりやすい。

和「京さん、そのチェリーあーんしてください。ふふ、やっぱりこの時間が一番自分に素直でいられます」
京太郎「和が俺に甘えてくれるのは嬉しいよ。和は無理しがちだから心配になる」

和「京さん、好きです……」

和の甘やかな時間は、一人の訪問者によって断ち切られた。

咲「京ちゃん、こんばんは。サプライズだよー……なんだ和ちゃん、こんなところに出入りしてたんだ?」
和「私は京さんがいるから来ているだけです。咲さんとは違います」

高校時代は親友だったはずなのに、冷たい空気が押し寄せる。

咲「ふうん、呼び方変えたんだ? それにドンペリの白ねえ。まあ、和ちゃんの選択じゃね。
  あ、京ちゃん、私は『いつもの』で」

心の中でため息をつきながら、咲が頻繁に頼むクリュッグのロゼを注文する。ところでこいつら、何で俺をはさんで隣り合うのかな?

和「『いつも』ですか、ずいぶん頻繁に来てらっしゃるんですね。暇なんですか、プロは?」

咲「あーうん、結構暇かな。淡ちゃんも穏乃ちゃんも結局プロには来なかったし。楽だよ稼ぐの。弁護士先生は大変そうだね」

和の嫌味にも咲はさらりと毒を返す。どうしてこうなってしまったんだ、この二人は。高校時代の面影もない。

和「ええ、好きでもない人との縁談ばかり勧められるもので。私の好きな相手は決まってるのに。あ、ドンペリ追加で」
咲「ふーん、心変わり早いねー。前は見向きもしてなかったのに。私もいつもの2本プラスね」

注文が銃弾のように飛び交う。そんな中でもスタッフも他のホストも涼しい顔。
こんなことは日常茶飯事なのだ。俺もそれが旧友でなければ多少は気が楽なんだが。

咲「あ、これ京ちゃんにプレゼント。そのカフスちょっと趣味に合わないよ。トラディショナルすぎ」
和「伝統の何が悪いんです?」

和は自分が贈ったものにケチをつけられおこである。まあ、そうなるよな普通。

咲「いや別に伝統が悪いなんて言ってないよ。ただこういう場では堅物過ぎってだけ。堅物は裏道に入らずに正義の道でも歩んでたら?」
和「プロにはいろいろと黒いうわさもありますからね、咲さんは慣れているんですね。サヨリの様と最近よく言われません?」

火花が散り、また注文が飛ぶ。

和「ドンペリのピンクを!」
咲「クリュッグ・クロ・デュ・メニル。まあ、弁護士にしては頑張ったんじゃない?」

和の方は約3万、咲の方は10万以上がボトル一本の原価だ。
大概にして姫同士の争いなんてこういうものだ。値段で決まる、友情も愛もないむなしい世界。

咲「じゃ、京ちゃん、そろそろいこっか? 和ちゃんといるのも疲れちゃったでしょ」
和「っ!」

和は鞄をひったくるように持って、そのまま扉へと向かう。後のフォローは俺の仕事である。

咲「京ちゃん、私のことも楽しませてね」

そして当然、このお姫様に対する奉仕も俺の仕事である。


『ホスト京』  仁義なき元親友の争い、和&咲編  カン

WARNINNG! 咲ちゃんにおかしいところしかありません。それでも良い方のみお読みください。


私と京ちゃんの関係はちょっと普通の幼馴染の関係とは違うらしい。
伝聞系なのは私には異性の幼馴染なんて他にいないし、今だって別に変だとは思ってないからだ。

私にとって京ちゃんはいて当たり前の存在だし、それは向こうだって同じ。

だからそういうことに興味を持ち始めた頃に一番近い京ちゃんを選んだのだって当たり前。
お姉ちゃんはなぜか私と京ちゃんがキスもその先も済ませたことにショックを受けてたっぽいけど。
お姉ちゃんがどうして東京に行ったのか、いまだによく分からない。

ちなみに私が京ちゃんに恋愛感情があるかっていうと、それはないと思う。
だって、いて当たり前の存在をわざわざ求めようとする意味が分からない。胸だって別にドキドキしない。

きっとお互いに別の人と恋愛して、破局したころにまたお互い一緒にいて、それが何度も続くんだと思う。
誰かと結婚することがあっても、私と京ちゃんは変わらない。同じ距離で、ずっと一緒にいるに決まってる。
だから、結婚相手にはその辺を理解してくれる人がいいな。いないなら、独り身でもいいや。
別に京ちゃんがいるから私は寂しくないし。

だから優希ちゃん、別に私にわざわざ『京ちゃんに告白していいか』なんて聞く必要はないんだよ。
それは本人に直接言ってあげるべきじゃないかな。
ああただ、私と京ちゃんを離そうとするなら、優希ちゃんがどうなっても知らないけどね。

あれ? どうして青い顔になるの? 私何か変なこと言ったかな?
だからね優希ちゃん、『私と京ちゃんの邪魔をしないなら』きっと幸せな恋愛ができるよ。

……なんで優希ちゃんは変な顔をして走って行ったんだろう? まるでお姉ちゃんみたい。
まあ、いいや。私は何にも変わらないし、京ちゃんとも変わらないんだから関係ないよね。


カン
ヤンデレよりも恐ろしい咲さんを一回書きたかった

咲(お姉ちゃんと京ちゃんが仲良く喋ってる。それは別に構わないんだけどもう止めてぇ……)

京太郎「へえ、昔から咲ってやっぱりポンコツだったんですね」

照「うん、あの子は残念な子だった、変わりがないようで安心した」

京太郎「はは、あいつの面白いエピソードはいっぱいありますけど、初めて家に来たときなんてね」

照「何があったの?」

京太郎「家でカピバラを飼っているんですけど、ちょっと目を放したら咲の奴カピのプールに入って一緒に遊んでたんですよね……」

照「それの何が問題なの?」

京太郎「カピバラは基本的に水の中でトイレをする習性があるんですよ」

照「ぶふぉっ、ちょ、じゃあ咲ってば……」

京太郎「ええ」

咲(知らなかったから仕方ないでしょ、暑い日だったんだから涼みたかったし、私悪くないよ)

照「ふふ、私もとっておきの話を教えてあげるね」

京太郎「ほう、期待しますよ」

照「私と咲が不仲になっていたのは知ってるよね」

京太郎「ええ、まあ」

照「あの子、私と仲直りするために東京にまで一人で来たことがあったんだけどね」

京太郎「奇跡ですね、あいつが迷子にならなかったなんて」

照「うん、そう思う。咲は自宅に備え付けられた呼び鈴を連打して、お姉ちゃんって私のことを家の外から呼んでたの」

京太郎「ん? どこにもポンコツ臭がないような?」

照「うんん、あの子が押し掛けていた家は真向かいのお宅だったんだよ」

京太郎「ほわぁ!? ば、バカじゃないの?」

照「私は二階にある自室からその光景を見てたよ。あのポンコツが私の妹なのかと思うと恥ずかしくて、恥ずかしくて会う気になれなかった」

咲(えっ? 嘘、じゃあ、お姉ちゃんが会ってもくれなかったのってそのせいだったの!? 冗談だよね? 嘘だって言ってよ!!)

照「はい、これが証拠の映像」

京太郎「うわぁ、マジじゃないですか……ポンコツ過ぎだろう」

咲「ううぅぅ……」

京太郎「そう言えば--」

照「こんな話もね--」

咲「うわぁぁああああ、もうやめてぇ! 私のライフはゼロだよぉ!!」

ポンコツを仲介して異様に仲良くなっていく京太郎と照
カンッ!

咲「あー、今年も駄目だった……」

テレビの前に張り付き、その後に崩れ落ちる咲に向かって呆れの入った声をかける

京太郎「いや、無理だろ。むしろ何の根拠があってノミネートされると思ったんだよ」

咲「そんなことないよ京ちゃん、私の小説は売れてるんだよ!」

京太郎「いやいや、売れてるってお前、ごく一部層にだけじゃないか。
    しかもなんだよ『咲―saki―』って、主人公お前の本名だし、出てくる奴らも本名だし」

咲「それノンフィクションっていうの。京ちゃんはもの知らずなんだから」

京太郎「決勝で優勝した時に俺がプロポーズしたことになってるけど真っ赤な嘘じゃねえか。
    いつお前さんは俺に告白されたんですかねぇ?」

咲「それはその、物語の展開的に山場と言いますか……」

目が泳いでやがる。図星突かれてしどろもどろだ

京太郎「それに照さんいつも妹の自慢しかしないじゃないか、あの営業スマイルで。
    それが何で作中で『妹はいない』とか言ってるんですかね?」

咲「そ、それはほら、やっぱり目的もなしに全国行って優勝しましたー、とかだと盛り上がりが」

京太郎「しかもお前、大星の奴完全に被害者だろこれ。なんで姉妹喧嘩に巻き込まれて叩き潰されてるの?」

咲「うう、京ちゃんの意地悪……」

ねつ造した悪(作者)は倒れた。物語などと違って現実は平穏そのものである。

京太郎「さてと、そろそろ夕飯にするか。今日は唐揚げだぞ」

咲「京ちゃんが縁起を担いでカツにしてくれなかったから駄目だったんだ、そうに違いないよ」

京太郎「あほなこと言う子には唐揚げやらんぞ」

咲「あわわ、ごめんなさい、京ちゃんの作った唐揚げが食べたいです!」

今日も俺の嫁さんは俺の手料理を食べてご機嫌に戻る。何の変化もない、しかしかけがえのない日々。
それが幸せなんだと、気づいているんだかいないんだか。


カン

あれは忘れもしない第69回おもち会議の時だったよ。

急に彼がこんなことを言い出したんだ。

京太郎「……俺、究極のおもちって大きさでも柔らかさでもないことに気づいてしまったんです」

玄「何を言ってるの京太郎くん、目を覚まして!」

京太郎「聞いてください玄さん、確かにのどパイもかすみパイもすばらです。
    でも男にとって一番なのは、いつだって好きな人のおもちなんです!」

玄「ごくっ」

京太郎「お願いです玄さん、俺に玄さんのおもちを、究極のおもちを触らせてください!」

玄「きょ、京太郎くん、こんなおもちの出来損ないでよければ喜んで」

京太郎「出来損ないなんかじゃない! 俺にとっては、一番のおもちなんですから!」

玄「京太郎くんっ」

京太郎「玄さん……」

そうして私たちは付き合うようになり……憧「ちょっと待ちなさいよ!」

玄「どうしたの憧ちゃん、今とてもいいところだったのに」

憧「いやいやいや、おかしいでしょ、おかしいわよね!?
  なんでそのセクハラ発言を受け入れてるの!? なんでそんなセリフで付き合うの!?」

玄「何言ってるの憧ちゃん、おもちリストにとってこれ以上ない褒め言葉なんだよ。
  ああ、私のおもちが究極だなんて、京太郎くん……」

憧「なんで頬を染めてんのよっ!? あとシズも感慨深そうにうなずくな!」

玄「変な憧ちゃん」

憧「変なのは私じゃなくてあんたらだから! 断固として抗議するわよ!
  宥ねえこれでいいの!? 反対するなら今のうちよ?」

宥「うーん、私は玄ちゃんが幸せそうだし、あったかいからいいかなーって」

憧「誰か頼むから私の代わりに突っ込んでよ! あーもう、なんで今日に限って灼さんはいないの!?」

玄「全く憧ちゃんの言うことは訳が分からないよ」


カン

京咲過去話


あるところにとても仲の良い幼馴染の男女がいました。
しかし、彼女は最近不機嫌でした。
なぜなら、彼が毎日別の相手の話ばかりしていたからです。

最初は自分も会ってみたいなと思っていました。
次に『あれ、最近あの子の話しかしてなくない?』と思いました。
最後には彼の歓心を買うその相手への敵意を持ってしまいました。

そしてついに彼女は耐えかねて感情のままに叫んでしまったのです。

咲「京ちゃんは私とカピー、どっちが大切なの!?」

それは教室内での出来事だったのでとてもたくさんの人が聞いていました。
そして周囲の視線を集めたことに気づいた彼女は羞恥のあまり泣き出したのです。

~~

京太郎「ってことがあってな。いやーカピーが家に来て間もないころだったからつい可愛がりすぎて」

咲「なんでその話を皆にしちゃうの!? ああ、そんな目で見ないで!」

和「いえ、だってペットと張り合うって……」

優希「あれだじぇ、咲ちゃんは将来結婚したら旦那に『私と仕事どっちが大事なの!?』って聞くタイプだな」

久「咲は須賀くんの愛玩動物だったのね、なんだか納得したわ。それじゃ、お嫁さんとは呼べないわね」

まこ「おんしら、あんまり咲をいじめてやるな。大丈夫じゃ咲、失敗は繰り返さないことが大事なんじゃ」

咲「うわーん、京ちゃんの意地悪! いいもん、今日は飛ばしまくってあげる!」

京太郎「じゃあ、俺が飛ばされなかったろもう一つ過去話を……」

咲「絶対に阻止しなきゃ」(ゴッ

和「咲さん、まだ知られたくない過去が……」(ホロリ


カン
清澄の平和な日常

阿知賀――つまり奈良の吉野というのは田舎といっていい。
観光地としてはそこそこ有名だが、実際に定住している人間は少子化の一途をたどっている。
そして実家が何らかの家業を営んでいる一定の富裕層が阿知賀女学院には集まりがちだ。

つまり何が言いたいかというと、彼女らは跡継ぎを欲している。
この上なく真剣に、旦那さんをゲットして子供を産んで育てなければならないのである。

穏乃「というわけで、須賀くんをうちにください!」

玄「穏乃ちゃん、抜け駆けはいけないのです。
  松実旅館はどうかな? 温泉にセットでお姉ちゃんもついてくる豪華っぷりだよ!」

憧「あんたら無理な勧誘はやめなさいよ。それに女側の親と同居って結構大変よ。
  まあ私は次女だし、都会に出ようが他県に嫁ごうが自由なんだけどね」

灼「うちのボーリング場はおばあちゃんの趣味だから別に継がなくていいとおも」

宥「あわわ、あわわ、何かアピールポイントは、えっと、えっと」

久「いや、私たちに言われても困るんだけど」

和「穏乃、玄さん……私に会いに来たのかと思えば、男子狙いなんて」

玄「和ちゃん、それはそれ、これはこれなのです!
  和ちゃんに会えて旅館の宣伝を兼ねて一石二鳥だと思ってたら、まさかの旦那様候補なんだよ!
  この機会は逃せないのです、次期女将として、何より一人の女として!」

優希「京太郎は渡せないな! あいつには一生私のタコスを作るという崇高な使命があるんだじぇ!」

咲「いいよ、まとめて麻雀で相手してあげるよ。京ちゃんに近づかないように」(ゴォォォ

まこ「京太郎を仲間外れにするのは気が引けとったんじゃが、まさかの英断とはな。
   実家業を継ぐものとしては気持ちはわかるんじゃがなあ、こればっかりは本人次第じゃろ」


その頃
京太郎「なんでか部長ってかたくなに俺を他校の人間と会わせようとしないんですよね」

ハギヨシ「京太郎くん、それはおそらく独占欲かと」

京太郎「部長が? あはは、いくらなんでもありませんよ。だって俺ですよ?」

ハギヨシ(透華お嬢様も密かに狙っていることは内緒にしておきましょう)


さらにその頃
晴絵「……なんで私置いて行かれたんだろ。書置きの『カップラーメンでも食べてて』が心に刺さる」


カン
阿知賀勢ってアコチャー以外は未来の選択肢少なそう

16歳の誕生日。昨日までとは少しだけ世界が変わって見えた。

シーツのすぐ傍にある体温にほっとしながら、同時に恥ずかしくもなる。

日付の変わるその瞬間に祝ってくれて、そのままプレゼントをくれて、一夜を過ごした大切な相手。

大人の階段を上ったことでちょっと浮かれ気味に口元が緩んで、眠る彼の金髪を撫でる。
遅くまで起きていたせいで、私も彼もお寝坊さんだ。
でも、休日だしこんな日も悪くは――

ピンポーン♪

彼を思う時間を邪魔されたことにちょっと「むぅ」と思いながら、私はインターホンに向かう。
寝癖を手で押さえつけて、乱れたパジャマをちょこっと整えながら扉の向こうに誰何の声を上げる。

久『ハロー、咲、押しかけプレゼントの配達よ』
まこ『おまさんはなんで茶化さんと気が済まんのじゃ? 咲、誕生日おめっとさん』
優希『咲ちゃん、今日はパーッといこうじぇ!』
和『もう、優希ったら。すみません咲さん、約束もなしに来てしまって』

普段ならば嬉しい友達の訪問に、だらだらと汗が流れる。

咲「ちょ、ちょっと待ってね。わ、私寝起きで何の準備もできてないから」

優希『咲ちゃんは今日のメインなんだから何も気にせずに祝われればいいんだじぇ』
和『咲さんが寝起きが悪いのはインターハイでたくさん見ましたしね』

咲「いや、そういう問題じゃないんだよ、うん。5分、5分だけ待って、お願い!」

言い切ると慌てて自分の部屋へと走り枕で彼を叩く。

咲「京ちゃん、起きて、今すぐ起きて! そして隠れて、早く、お願いだから!」

京太郎「わぷ、何するんだいきなり!? 痛くないけど叩くな! なんだよ一体!?」

久『いやあの咲、外まで丸聞こえなんだけど?』
まこ『これはタイミングをしくったのお』
優希『犬ー! お前咲ちゃんに何をした!?』
和『』(絶句)

この後、誕生日会が赤裸々尋問トークに変わったのは、宮永咲末代までの恥の一つだったという。


カン

久「ねえ須賀くん、あなたお金ないって言ってたわよね。ちょっとお小遣い稼ぎしてみない?」
京太郎「優希がタコスタコスねだるから金欠ですよ」

久「練習や試合の分は部費で出せるけど、関係ない時でも奢っちゃってるものね。
  で、稼ぎ方なんだけど、このサイトに須賀くんの写真とプロフを入れて、『この男の子との一日を買いませんか』っと」

京太郎「完全に出会い系のノリですね。てか、この写真どうしたんです? なんか体育中のまでありますけど」
久「ちょっと盗さ、げふげふ、善意の第三者からの提供よ」

京太郎「……まあ、いいっすけど。これ一件も反応なかったら悲しいなあ」
久「まあ、その時は私が5千円くらいでデートしてあげるから。いつもの買い出しとかじゃない、ちゃんとしたやつを、ね」
京太郎「マジっすか!? 部長、どこまでもついていきます!」

久「……須賀くん、あなた将来女の子に騙されそうだから気をつけなさい」(呆れ

京太郎「お、アイコンが。……500円かあ」
久「お昼代にしかならないわね。釣り上げましょう、1500っと」
京太郎「一気に夕食レベルですね!」

久「あとは明日様子を見ましょう。じゃ須賀くん、ちょっとお勉強しましょうか」
京太郎「うへぇ」
~~
優希「ぐぬぬ、私のタコス代が、1600」
咲「うーん、新刊買えなくなっちゃうよぉ、1800で」
和「こんなことをするのは部長ですね。許せません、2500です」
まこ「まあバイト代でも出せばいいじゃろ、4時間として3200かの」

煌「なんとすばらな人が故郷に、よ、4000と交通費で」

玄「この人からは何かシンパシーを感じるのです、4500ですのだ!」

灼「ハルちゃんに春を、5000も出せばなんとか」

透華「ハギヨシ! あなたの友人が大変なことになっていますわ! こんな人身売買のような真似! 龍門渕家の名に懸けて保護なさい!」
萩原「はっ、では一気に上げて5万にしましょう。これで大抵の興味本位な人間は諦めるかと」
透華「もっとバーンと行きませんこと?」
萩原「いえ透華お嬢様、あまりに高額では京太郎くんも遠慮なさるかと思われます」

一「……透華が買うぐらいならボクが犠牲に、給料の範囲で」

咏「うわっは、おもしろそーなのやってんじゃん。15万でいいんじゃね?」
理沙「20っ!」
はやり「こ、これは好み☆ ばれるとまずいから家デートで口止め料も含めて、50枚出すぞ☆」
健夜「もう失敗できない、多少若くてもいいよね? ろ、60とか」

咏「むむ、なーんか競ってくんね。こうなったら本気で落としたくなってくんだよな72万」
理沙「80っ!」
健夜「100万なら流石に誰も、いいよね?」
はやり「アイドルの資金舐めないでほしいぞ☆」
~~
翌日
久「」絶句
京太郎「い、1800万? え、これ表示おかしくない?」

久「……須賀くん、一夜にして高値の花になったわね」
京太郎「うまいこと言ったつもりですか!? どど、どうしよう」


カン

いつぞやの『ホストKYO]』的な何かと思いなせえ。あえて流れを無視する

客商売、それには共通する業がある。お客様に満足していってもらう、それが一期一会であろうとも。
ここに一人、その極意を求めて上京した次期女将候補がいた。

玄「こ、ここが憧ちゃんや穏乃ちゃんが通い詰めているという……なるほどなるほど~。照明で落ち着いた雰囲気を出してる、これは中々
  しかし問題はやはりサービスなのです、人こそが客商売の肝、いくよ、おー!」

興奮を隠さず彼女は店内に入り、物怖じせずスタッフに声をかける

玄「本日初めて予約した松実玄ですが、KYOさんのお時間は空いておりますでしょうか?」

しかし、物腰は丁寧。しかも事前に予約済みな辺り用意も周到である。

京太郎「勿論貴女のために空けております。よろしければお手を、お姫様」

キラキラとシャンデリアの光に輝く金髪と微笑み、それに一瞬心を奪われそうになるも彼女は堪える

玄(今回は憧ちゃんに頼んでお勉強するために来たんだから、少しでも盗まないと!
  むむむ、これはエスコート慣れしているのです、心引き締めねば!)

数分後
玄「こんなに話が合う人初めてだよ! 憧ちゃんの言う通りとってもいい人」
京太郎「そう言ってくれるのは嬉しいですけど、ちょっと嫉妬しちゃうかな」

玄「え?」
京太郎「相手が女の子だってわかってるけど、玄さんの信頼を勝ち取ってる彼女に。
    おっと、こんなの言ってたなんて他には内緒にしてくださいね。玄にはなんだか口が軽くなるな」

玄(うわ、うわ、今人生で初めて男の人に名前を呼び捨てに! それに憧ちゃんが羨ましいなんて)

玄「私の方こそ憧ちゃんにちょっと嫉妬しちゃうかな。KYOさんは憧ちゃんと長いんでしょ?」
京太郎「大体1年と少し、かな。中々会えないのは寂しいですけどね。でもそれを言うなら、玄の方が皆と離れてて寂しいでしょう?」

そっと頬に手をかざして、ゆっくりと撫でて

京太郎「いつも頑張って笑顔で、すごいよ。でも疲れたら俺の前でくらいは強がらないで」
玄「……知ってるの? うちの旅館のこと」

京太郎「そりゃあ、大事なお姫様のことだから調べるくらいはね。
    松実旅館の両看板、でも看板っていつも見られてるから気を張り続けたら無理が来ちゃう
    だからその前に誰かに吐き出そう? 俺が信用できないなら、友達でも」

玄「信用できないなんてこと! そんな風に私のこと気遣ってもらったの、久しぶりで……ちょっとだけ、付き合ってくれるかな?」
京太郎「勿論です、お姫様」

数時間後
玄「えへへ、すっごく素敵だったのです。憧ちゃんはいいなあ、こっちに住んでるから気軽に会えて
  あれ? ポッケに何か入って……」

紙に書かれた文面を見て、見る見るうちに彼女の顔は赤くなる

『遠く離れてるから、頑張ってるお姫様だけに連絡先教えておきます。お店や憧たちには内緒ですよ。
 愚痴でも何でも、いつでも承りますからいつでもお声がけを、プリンセス玄 From京』

玄「え、ええ? こ、こんな特別扱いなんて、全然私お金落としたりできないのに。
  あ、憧ちゃんには悪いけど、内緒に、これは私の宝物に! あと、たまに憧ちゃんの顔見るためとかでこっちに来ても、いいよね?」


『老舗の看板娘、松実玄編』、カン

京ちゃん大学編@合コンにて

憧「ちっ」

京太郎「おいおい憧さんや、顔合わせるなり舌打ちってひどくないか?」

憧「うっさい、合コンの度に顔見るこっちの気持ちにもなりなさいよ
  てかあんた大学にシズやおな高や白糸台の金髪いるでしょうになんで出てくんのよ」

京太郎「貧乳はNO! 淡は見た目はいいんだけど何故か妹にしか見えんし」

憧「可哀想でしょうが。あともっとこっちに寄りなさいよ、壁になれ壁に」

京太郎「お前こそ男子苦手なのになんで出てくんの? お前のせいで俺が他と話できないんだけど」

憧「広告塔にされてんのよ。苦手だから男とくっつかないから安全って女の打算ってわけ」

京太郎「うわ、女怖え。つか俺は平気なのなんで?」

憧「あんたからは玄と同じ感じがするから他人な気がしないだけ。いざとなったらシズに守ってもらうし」

京太郎「玄さんいいよなあ。紹介してくれよ、穏乃のやつこれに関してだけ断固として断ってくるんだぞ」

憧「あんたらは混ぜると危険だから絶対会わせない。
  ほらもっと詰めてよ、男の品定めする視線嫌なのよ」

京太郎「へいへい。あー、今回も成果なしが決定かー。金が飛んでいく」

憧「合コンなんかに希望持つからそうなんのよ、さっさと近くで妥協しなさい」

京太郎「貧乳は断じてNO!」

周囲(合コンをデートに使いやがって、爆発しろ!)


カン
周りからするといちゃついているようにしか見えない模様。

大星淡という人間が須賀京太郎に近づいたのは元は意趣返しのつもりだった。

団体優勝をかっさらった宮永咲が胴上げされて幸せそうに金髪の男とくっついてる姿を見て思ったのだ。
『一人だけ全部持っててずるい』と。

宮永照の後継者という名は実の妹に負けたことで崩れた。照は妹と仲直りした。そして男までいる。
だから、せめて男を取り上げようなんて馬鹿げた復讐心。

なのに早々に見抜いたその男に発破をかけられた。
「正面からぶっ倒してやれ。俺なんか一度も勝ててないけど諦めるつもりなんてないぞ」なんて。

二年目に個人戦でまた負けた。なんでか傍にいた須賀京太郎に八つ当たりした。
頭をポンポンされて「悔しいのは勝てるって思ってるからだろ? まだチャンスはあるんだから馬鹿みたいに笑ってろ」なんて慰められた

三年目は同卓して一矢報いてやった。2位になってぐぬぐぬしてる咲の横で京太郎とハイタッチした。
「なんで京ちゃんは私じゃなくて淡ちゃんの応援するの!?」ってぷりぷりしてる姿を見て溜飲が下がった。

麻雀で勝てたことでいつの間にか自分の中で彼への思いが強くなってた自分に気づいた。
だからプロの話を蹴って京太郎と同じ大学に行った。
プロになってた咲が「まさかそんな手を」とか悔しがってたのでいい気味だ。

なんでか高鴨穏乃に片岡優希まで同じ大学に来て京太郎をめぐって争うのは予想外だったけど。
張り合ってくるけど私は負ける気なんてこれっぽっちもない。だって明らかに私の方が恵まれたボディだし。

ぜーったい、京太郎は私のものにする。これは人生をかけた勝負だ。
そのあとプロになって咲をまた負かすのだ。今度は私が全部持っていく。私は欲張りなのだ。

だから京太郎、この大学100年生の淡ちゃんと付き合え! だーい好きだから、他には譲らないもん!


『京ちゃん大学生編 淡の始まり』カン
京ちゃんが大学で憧と合コンしてる裏側みたいな感じ。未だに先輩枠は検討中である

高鴨穏乃という人間はいつだって思い込めば一直線、それが基本スタンスである。
高校1年生の時に宮永咲とすれ違った際は『私の倒すべき相手だ!』などと思ったものだが、今は少し違う。

今倒すべき相手とは片岡優希と大星淡である。
須賀京太郎に対するポジションが完全にかぶってしまっているのだ。
まとわりついて一緒に過ごして構ってもらって、好意を隠さない。あり方が似すぎている。

自分が一番関係が短く後れを取っている。
片岡優希は高校の最初から思いを寄せていた。大星淡は大学を完全に狙ってプロまで蹴った。

一方で穏乃は実家の跡を継ぐために経済学部を狙ったら一緒の大学だっただけの新参。
しかし新参でも武器はある。なんとアパートの部屋がお隣さんなのだ。これは運命と呼んでもいいのではないか?
引っ越し蕎麦を持って行った時に「あ、高鴨さんか、よかった。よろしくな!」と笑顔を向けられたのが印象だった。
なぜ名前を知られているのか、一昼夜唸っている間その笑顔が脳裏に張り付いていた。

なお理由は親友の「いや和と同じ高校で同じ部活じゃん、なんで覚えてないのよ?」と呆れられて氷解したのだが。
しかし疑問は解決しても脳裏の笑顔は消えなかった。
それどころか顔を見るたびにドキドキして真っ赤になる始末。
流石に気付くのに時間はいらなかった。あっけなく恋に落ちてしまったのだ。

時間も理由も完全に負けてのポジション争い、普通なら諦めてしまうかもしれない。
しかしそれで諦められるなら高鴨穏乃ではない。
いつでも『だからって諦めるわけがない!』を体現する人間、それが高鴨穏乃である。

大学は違うが近くに住む親友に相談して、慣れないお洒落まで始めてでも食らいついた。
今は女として意識されてなかろうが、初恋を失恋ですます気なんてこれっぽっちもない。

こないだなんて一緒に山に登って夜空を見上げて、一緒のテントでお泊りまでしたのだ。
ここまで進展して引くとかありえない。
憧は「一夜を共にすれば嫌でも意識させられるわよ」って言っていた。体を張る気で体当たりだってしてみせる。
お泊りの詳細を語ったら憧に「いや襲いなさいよ、そのムードで何考えてるの?」とか言われてしまったが。
チャンスを逃したらしいが、チャンスは作るもの、またお泊りすれば何の問題もない!

今日も起き抜けから全力、それが高鴨穏乃である。

穏乃「京太郎、一緒に大学いこっ!」


『京ちゃん大学生編、高鴨穏乃の場合』カン
この大学生編、誰が勝つのか書いてる本人すらわからぬ。片岡優希は語るまでもなく、高校の延長である

憧「うわっちゃー。やっちゃったわ、これ」

新子憧、全裸。隣の金髪男、全裸。
自分の大事なところもヒリヒリするし、うろ覚えではあるが経緯も何となく思い出せる。

憧「しかしこれ、シズには絶対話せないわ。親友の思い人と酒が入ってたとはいえ寝ちゃったとか」

それだけではない、事情を知れば三人娘が同時に食って掛かるだろう。

憧「そもそもあんたが悪いのよ、ナンパ男から私を体張って守ろうとするから」

最後にナイフまで取り出して目を血ばらせた形相に互いに恐怖を感じたのか
ことが終わればホテルで嫌な思い出を忘れるように求めあった。

生物的本能とはいえ、これは裏切り以外の何でもない。
なのに何故か、自己嫌悪よりも寝てる彼の頬を撫でる方が楽しいと感じ始めている。

憧「っと、ダメダメ、私はシズの応援するって決めたんだから。
  でも、こいつの好みはどっちかっていうと……」

たった一度で絆されてしまったというのか? そりゃ元から嫌いだったわけじゃない。
もしシズが先に惚れてなかったらもしかして、なんて益体もない考え。

憧「こいつの方から責任取るって言われたらどうしよ?」

もしもあの意外に厚い胸板と逞しい腕で抱き寄せられたら、私は……

憧の思案は男が起きるまで悶々と続く。彼が何も覚えてないと知ったときにに感じた思いは安堵かそれとも。

ただ新子憧が須賀京太郎に向ける目がこの日を境に変化してしまうのは、避けられないことだった。


『京ちゃん大学生編。飲み会後の過ち』カン

4月1日、お昼

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

京太郎「だあっ! 連打って何考えてんだ、どなたですか!?」

久「やっほー、須賀くん、お久」

京太郎「部長……もう大学生になるのに何してんすか」

久「いやー、どうしても今日言わなきゃいけないことがあってね。あともう部長じゃないわよ」

京太郎「はあ、もうあなたの無茶ぶりには慣れました。なんですか?」

久「須賀くん、いえ京太郎くん、私とお付き合いしてください。あ、もち恋人としてね」

京太郎(なん、だと? いや待て、なぜ今日じゃなきゃいけない? ――そうか、エイプリルフール!)

京太郎「勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです」

久「嬉しいわ。これからよろしくね。
  ところで知ってるかしら? エイプリルフールは午前中までだって。さて今は何時でしょう?」

京太郎(な、なにー!? 12時02分――つまりこれは)

久「恋愛ごとで嘘はいけないわよね、嘘は。そしてここにレコーダーがあります。
  『勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです』、んーこれは動かぬ証拠ね」

京太郎「あ、貴方って人は――あれ? そうすると部長の告白は?」

久「ふふ、12時ぴったりの言葉はどっちでしょうね?
  じゃあ京太郎くん、これからよろしく♪」


カン
久は結構ヘタレなのでこういう自分に逃げ道を残した告白じゃないと無理(確信)、そして周囲を振り回した風に見せかける

竹井久はごろごろと自分のベッドの上で枕を抱えて転がる。
その手には一つのレコーダー。

『勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです』
『勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです』

久「ん~、これいい、最高~。私グッジョブ、完璧すぎじゃない?」

にへらと人に見せられないほどに崩れた笑みを浮かべて顔を真っ赤にしながら再び再生ボタンを押す

『勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです』

久「くぅ~っ、はあ、はあ、あー、威力凄いわ。目覚ましの音声にできないかしら?
  いやでも目覚ましにしたらそのまま京太郎くんのとこ行っちゃうかも? それは危険ね、うん危険」

『勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです』

久「やった、やった、やった。不意打ちだったけどありよね。これあり。
  あの子『嘘だったの?』って目を潤ませれば突き放したりきっとできないし。
  後々離れられなくすればいいのよ、うんうん」

『勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです』

久「勝った、私大勝利! よし、京太郎くんにお弁当作っちゃお、男はまず胃袋から
  あ、でもその前にもう一回だけ」

『勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです』

久「くっ、すごく自慢したいわ。でも咲に和に優希はダメ、あの子たちちょいちょいアピールしてる気がするし
  そうだ、まこよ、まこ! お弁当の手ほどきしてもらいつつ自慢! まこならいける!」

こうして1学年下の親友の下で料理を勉強したものの、途中で何度も再生しようとしたため染谷まこにレコーダーは没収されてしまった

久「くっ、誤算だわ、なーんてあるわけないじゃない。ちゃんと保管用もあるもん、ぽちっと」

『勿論いいですよ。俺も部長、いや久のこと好きだったんです』

久「ずっと聞いておきたいわ、これ、えへへ」

竹井久は完全に色ボケして他人に見せられない状態であったという


カン!
うん、こういうまっとうな純愛ラブコメが正義

最近憧の調子がおかしい。前までは京太郎との進展を聞き出そうとしてきたものだがここのところそれがない。
それどころかこっちから相談すると反応がワンテンポ遅れるし、反応も良くない。

もしかして、そうなのだろうか? 憧にもついに好きな人ができたとか?
なら応援しないと。憧は男子に近づくの苦手だし、こっちが場を用意してあげないと。
ダブルデートとかどうだろう? 私も京太郎と遊べるしお得だよね!

問題はデートの場所を山しか知らないのだが、憧の相手は山登りできるだろうか?
思いたったら吉日と、いそいそと登山グッズをメンテナンス。
明日は土曜だし、夜景見ながらテントでおしゃべりすればきっと上手くいく。
だって憧も「一夜過ごせば~」って言ってたしね!

鼻歌交じりに高鴨穏乃はメールを送る。それが意味するところを考えることもせずに。

一夜明けて、残念ながら憧の相手は来れなかったらしい。でもそれなら三人で遊べばいい。
なんたって山は自分のフィールドだ。

穏乃「京太郎、憧、今日は天気いいから山日和だよ、張り切っていこー!」

憧「ああ、うん、えっと、うん」

京太郎「どうした、憧さんや、熱でもあんのか?」

憧「べ、別にないわよ! しれっと額に手を当てようとすんな!」

穏乃「憧ったら変なの、それより楽しもうよ!」

日常にひびが入る未来など高鴨穏乃は想像もしない。この夜に何が起こるかも――


『京ちゃん大学生編 山登り3人デート』、カン?
妄想を形にするのが一番健全。健全?

注)憧ちゃんやばいです

自分はずるい。つい最近まで親友を純粋に応援していたはずなのに、また裏切ろうとしている

自分は鈍い。つい最近まで好きだと気付かなかったのに、気づいたらもう手遅れになっていた

触れたい、触れられたい、ドキドキする。いけないはずなのにむしろそれが心地いい。

ずるい自分は心の中で言い訳する。シズがちゃんと捕まえておかないからこうなったんだと
「一夜を過ごせばどうにかなる」なんて知った口をきいた自分が実際にどうにかなった。

なってしまったんだから仕方がない、一度も二度も同じじゃないか、そんな考えまで。

穏乃「星きれいだね」

京太郎「やっぱ山は空気いいよなあ」

憧「そ、そうね、月きれいね」

自分の中の醜い考えを見透かされたわけでもないのに焦る。
こんなことを考えてるなんて知られたら絶交じゃすまない。
なのになぜ、やめようとは思えないのか?

京太郎「やっぱ憧変じゃね?」

穏乃「あー、それ私も思う」

憧「気のせい、でしょ」

こんな時だけ察しがいい。知られたら元には戻れない。それならいっそ。
ここなら人目につかない、シズさえ誤魔化せば、きっと、そう大丈夫。

憧「ねえ、シズ覚えてる? 私の助言」

穏乃「んー?」

純粋だから気づかないのか。足踏みするから私なんかに。

憧「襲いなさいって言ったわよね。こういう風にすればいいの」

空を見上げて無防備な姿をさらしている男に覆いかぶさり、唇を重ねる。
驚きにみはった目に動揺で開いた口の中に舌を入れる。

穏乃「あ、こ?」

憧「シズがしないなら、私だけでもいいのよ。でも親友だから、誘ってあげる。だから一緒に、ね」

そんなの嘘。京太郎に本気で抵抗されたら無理だから、体力お化けのシズを味方につけようとしてる。
なんて醜い自分。なのに、止められない。止められるわけない。だから親友も一緒に汚れてしまえば
純粋なあの子なら、きっと騙されるだろう。

憧「いいのよシズ、私が手伝ってあげる」

こうして私たちは道を外した。


『京ちゃん大学編、山の夜空の下で』、カン?
なぜこうなったのかなー(棒) まともな純愛書いてリセットしないとこのままではやばい未来しかなくね?

うん、息抜きしすぎだな自分! エロはかなり力はいらんと無理なんだもん。エロくするのって大変なのよ
というわけで向こうのスレも進めつつやっていくつもり

三人で山を登って以来、私はタガが外れていた。
今日だって京太郎の部屋に押しかけて押し倒し、欠片の時間も惜しむように盛っている。

あの日私は憧のおかげで京太郎に女として見てもらえた。
そして同時に自分の中にこんな獣のような衝動が眠っているのを知ったのだ。

京太郎が私で興奮してくれてる、それがこんなゾクゾクするほど気持ちがいいなんて。

穏乃「京太郎、京太郎……ん、んちゅ」

京太郎「穏乃、もうこんなのやめ、」

穏乃「なんで? こうなってたら苦しいでしょ。私がするから
   ……それとも、憧のところに行くの?」

憧には感謝している。でも同時に怖い。
憧も結局あの日京太郎と繋がっていた。見てるこっちが引き込まれるような魅力を放ちながら。

憧がいなければきっとこうなれなかった。感謝はしてるけど

穏乃「憧の方がいいなんて言わないよね? 私は京太郎が好きなんだよ、憧とは違う」

そう、憧は好きな人がいながら他の男としちゃう子なんだ。そんな人好きになったら京太郎は不幸になる

穏乃「だから私と、ね。ほらしたいよね? 私したい。京太郎だけだからね、私は」

純粋だったはずの高鴨穏乃はあの日以降静かに狂い始めていた
その行くつく先が何なのか、当人すらわからない、いや分かろうともしない


『京ちゃん大学生編、狂い始める日常・穏乃』、カン

京太郎がおかしい。高校からずっと見てきた相手なんだからわからないはずがない
咲ちゃんにはさすがに敵わないけど、それ以外では私が一番長い。

阿知賀のちんまいのが近づいた瞬間に距離を取ろうとしてるように見える
京太郎は普通人と距離を取ったりしない。
私たち三人みたいにぐいぐい詰めこそしないけど、気が付いたら傍にいることではたぶん誰よりも上手い

だからこそいなくなった時に違和感と喪失感を覚えるんだ。たぶん今咲ちゃんはそれをかみしめてる最中だと思う
まあここにはいない咲ちゃんのことは今は置いておく。来ようとしても迷子になるしな!

で、本題。

優希「で、京太郎、お前しずちゃんと何があった?」

京太郎「な、なにもないですよ?」

優希「嘘つけバカ犬! あれだけ分かりやすくて分かんないのは相当な鈍感だじぇ!」

まだるっこしいのは嫌いだし、私は直球でいく。というか変化球が効果ない、この男には

優希「さっさと吐け! 今なら今日と明日のタコス代だけで許してやる」

京太郎「いやさりげなくタコスを奢らせようとすんな」

優希「誤魔化そうったってダメだ、吐くまで張り付くからな」

授業をさぼろうがつきまとう宣言である。トイレにだってついて行ってやる

京太郎「……言えねえ」

優希「そうか、言えないことをしたかされたんだな、どっちだ?」

京太郎「言えな……」

優希「そうかされたんだな、分かった。はっ倒す」

京太郎「なんで決めつけんの!?」

優希「お前がそーいう時は大体相手かばってるからに決まってんだろ!
   もう3年だ、お前がそーいうやつなのはまるっとお見通しなんだじぇ!」

京太郎「ぐぬぬ。とにかくお前は手を出すな」

優希「自分で何とかできんのか?」

問いに対して返ってくるのは沈黙。つまりできないっと。ほんっとうにどうしようもないやつだ。
全く、なんで私はこんな面倒な奴に惚れてるんだかたまにわかんなくなる。渡す気はゼロだけどな!

優希「1週間だ、それで何とかしてみろ。じゃないと勝手に動く」

こっちの最終通告に、俯く京太郎の背を叩く。

優希「シャキッとしろ! 何とかなるまでタコス奢らせるぞ?」

京太郎「そいつは勘弁してくれ」

やーっと、苦笑だけど笑ったか。やれやれだじぇ

優希「私は味方してやるからな、いつでも頼れ」

京太郎「説教付きの味方はいらね。でもま、あんがとな」

優希「怒られるぐらい軽いもんだと思え、いいってことよ。
   んじゃタコス食いに行くじぇー! 今日は私のおごりだ!」

京太郎を悩ますんなら、誰が相手だろうが戦ってやる。まあ私の出番がないのが一番なのかもしれないけどな。


『京ちゃん大学生編、タコス娘はそれでも日常を愛する』、カン
高校3年間戦った乙女は強い(確信)

このタイミングで合コンとか空気読めてないにもほどがある。
1ヶ月前には決まってたことだからドタキャンもできるわけねーし。
しかも相手が

憧「なに立ってんの、早く隣にきなさいよ、こっち男来ちゃうでしょ」

あったはずのことがなかったかのような対応、ありえねー、いろんな意味で

和「須賀くん、憧と仲がいいんですね?」

憧「別に? 虫よけよ」

しかもなんでこの二人が揃うかなー。和お前普段合コンとか来ないだろとか、男の視線が集中して虫よけにならないとか突っ込みどころはいくらでもある

和「須賀くん、憧はこう言いますけどこういうのは気を許した相手にしかしないんですよ」

憧「和こそ楽しそうじゃない、久しぶりに会って浮かれてるの?」

和「そうですね、そうかもしれません。咲さんも優希もあまり会えないので」

憧「よかったわね京太郎、一応友人にはカウントされてるみたいよ」

和「一応ではなく、ちゃんとですよ」

憧「ふーん『ちゃんと』友人か、よかったわね。私は京太郎の友達にはなれないけど」

胃が痛いです。誰か助けて

和「? 仲良く見えますけど」

憧「無理無理、友達とか考えられないから」

ひらひらと憧は軽く手を振って断定する、とても軽い調子で

京太郎「憧、ちょっといいか?」

憧「はあ、仕方ないわね。ごめん和、外すわ」

和「?? え、ええ」

和をその場に残して手をひいて部屋から連れ出し、憧の顔の横に思わず手を突く

京太郎「憧お前、何考えてんだよ?」

憧「なにって、和に知られたら困るでしょ? 『あんなこと』。だからそれっぽく振舞ったつもりだったけど
  京太郎こそ何考えてるの? こんな形で目立ったら何かあったって言いふらすようなもんよ。私のこと恋人って紹介したい?」

京太郎「ちが、なんでお前はそんなに何でもなさそうなんだよ!?」

憧「なんでって、私は京太郎とするのあれが初めてじゃないし。あ、覚えてなかったっけ、ごめんごめん。
  あ、それともシズ巻き込んだこと? あれからシズ返事しないのよね、あの子今何してる? 彼女気取りとか?」

京太郎「は、なに、お前?」

憧「最初に私たちがエッチしたのは6月の飲み会の後だって言ったの。あの時は互いに合意だったわよ。おかげで私忘れられなくなったもの
  シズに教えちゃう? 浮気相手なのはシズの方だって。あー、ショック受けちゃうかなあの子」

京太郎「なに、言ってんだよ?」

憧「私がもう京太郎と友達なんかじゃ絶対いやだって話。それと黙ってればシズをキープにできて私のこといくらでも抱けるよって提案
  あ、嫌だって断るなら、シズに話しちゃうね」

理解できない、理解できない

京太郎「穏乃は、お前らは親友だろ?」

憧「そうよ。シズは私の大切な親友。ただ、私にはそれより京太郎が欲しくて止まらないの。シズだってきっと同じ。じゃなきゃメールぐらいよこすでしょ?
  ねえ京太郎、どうする? 人間関係めちゃくちゃにする? 私はどっちでも諦めないから」

京太郎「お前、狂ってるよ」

憧「知ってる。京太郎が狂わせたんだよ。
  ね、このままふけてホテルいこっか? 私の良さ、もう一度よく味わってから考えてみて」

俺はもう、考えるのもおっくうになった。オーバーヒートしていたといってもいい。もう何も考えられずに手を引かれるままに。

だからだろう、特徴的な金髪を見落としたのは。

淡「ん? あれ京太郎と阿知賀の、中堅だっけ? 何してんだろ、気になるし尾行しよっ」


『京ちゃん大学生編、そして役者がそろい始める』、カン?

先ほどの合コン中、新子憧という女は須賀京太郎から見て大胆不敵の悪女にしか見えなかった。
ではその実際の胸中はどうだったかと言えば

憧(あー、マジで危ない橋渡ったわ。いや私の自業自得よ、横恋慕よ?
  そりゃここで飛び入りしようなんて火傷覚悟しかないわ。
  でももし京太郎が一言でもNOって言ったら、私完全に破滅してたわね。
  親友には絶交どころか刃傷沙汰、残りの二人娘からも報復が確実。
  ぎりっぎりのギリギリよ実際。リスクが山積みの地雷原渡ってるだけで状態の改善なんて一切なし!
  『計算できる女』の名は返上しかないわねこれ。

  これでどうにかなんの?『元高校最強の悪女』さん。京太郎を諦められないからすがるしかないんだけど。
  悪女っぷりってこれでいいのかしら? 演技に漏れなかった? あー、これで京太郎に嫌われたらやだよう。

  信じるわよ、これ信じちゃうわよ、『彼は優柔不断直しに弱い典型的なタイプです。肉体関係で複数人で包囲しましょう』
  もう、一度やっっちゃったからにはこれしか私にはないのよ、うわーん、清い交際とか、初デートとか憧れあったのに、なんでこーなるの!?)

意外と内心は乱れまくっていた上に年相応の物であった。演技指導は某長野の元三年生なのだが、それを知る人間はおそらく出てくることはない。
あの女性は、表に出ようが出まいが人を振り回すことに関しては一級品だった。


『京ちゃん大学生編、再開の合コンでの耳年増少女の真実』、カン

いや、憧のフォローされても穏乃が狂った原因なのは変わらないから

>>42
いやしずもん、アコチャーの介入なくても淡や優希のアピールが度を越していったたら新参ゆえに体張るしかなかった
一度性に堕ちたら渇望の道へ踏み外すのは共通ですぜ、あの子獣欲強いんで。まあ結局ひと押しした憧が悪いのは実際そうだけど。
この話女性間のドロドロはあるけど完全なる悪女って(久以外)いない設定。個々人の視点描写なのでそうは見えにくいけどね

京太郎が阿知賀の中堅と建物に入っていった。
慌てて建物の看板を見直す。

えーっと、LOVE HOTEL ってどういう意味だっけ? なんてかまととぶることもできない。

流石に私だって知ってる。私は京太郎と行くなら高層階のホテルでシャンパンをぶつけ合う感じなのがしたいけど、それはそれとして知ってる。

つまりあの二人は、エッチなことをしてるんだ。
信じらんない、信じらんない、信じらんない。

どーして? どーいうこと? なんで私はダメであの阿知賀の中堅はいいの?
誘ったじゃん、明らかに私だって胸押し付けて「今夜はいいよ」的雰囲気出してたじゃん!

自分のスタイルを見直す、相手の女のスタイルを服の上から想像する。
結論、淡ちゃんは負けてない! バディで負けてない! むしろ私が勝ってるまである!

なのにどーして京太郎はあの女とホテルに行くのか?
阿知賀の中堅は高鴨穏乃と確か友達だったはず。
前から実は付き合ってた? なら高鴨穏乃が体当たりしてたのは友達から奪う気だった?

うん、そう考えると納得がいく、わけないじゃん!

高鴨穏乃が高校の友達裏切ろうが、それはど―だっていい、いや世間的には良くないだろうけど私には関係ない。
許せないのはただ1つ。この私が、大学100年生の大星淡が、京太郎を盗られるってこと!

ちょっと落ち着こう。このままだとあの女を目の前にした瞬間顔にグーパン入れてしまう。
やってやったら爽快だけど、それで京太郎から乱暴者に見られて『手を出す淡とは絶交だ!』ってなると困る。それは困る。

だから冷静になろう。うん、冷静に、そう麻雀やってる時みたいに。

……よく考えれば京太郎に彼女いようがいまいが、私が京太郎を自分のものにする未来って変わるっけ?
倍満直撃させられた気分だけど、点数は残ってる。ゲームオーバーじゃない。だって淡ちゃんは引く気ないから!
だったら三倍満か役満をとればいい。何なら倍満3回コースも可。

うん、私って冴えてるじゃん! そーだよ、何の問題もない。私のすることは依然変わりなし!
いや変わらないってのは変か、もっと過激に、ガンガン行くべきなんだ。
うんうん、完璧、流石私!

咲には2回負けたけど3年になって勝った。ならあの阿知賀の中堅に1回負けてもそれ以上に勝てばいい。

ライバルがちょっと増えて、思った以上にリードされてたのはショックだけど。
ほんっとうにショックだけど!
まずは並ばなきゃ。具体的には京太郎とキスしてエッチする! 何回もする!

それで私が選ばれるようにメロメロに……あれ、どうやればメロメロにできるんだろ?
べ、勉強しなきゃ! まずはテルーとスミレ先輩とたかみーと亦野先輩に聞いてみよ。誰か一人ぐらいは知ってるでしょ
あと『男をメロメロにするテク』で検索っと

ふんふん、ふんふん。返事まだかなー?
スミレはあてになんない、『知るか、色ボケ』だって。もうスミレには頼んない!
あとは……


京太郎「あ、あわ?」

あ、やば、見つかった!
いややばくない、これはむしろチャンス!

淡「やっほー京太郎、そっちのは彼女?」

京太郎「……」

憧「それ答える必要ある?」

肯定しないんだ。いやできないのかな? ってことは倍満じゃなくて跳満じゃん! よし、勝ち目アップ!

淡「京太郎は私と結婚するから。さっさと諦めたほーがいいよ。
  京太郎、行こっ! そんな顔してないで私と楽しもうよ!」

京太郎の手を引っ張って走り出そうとする。なんか女が文句言ってるけどしーらない! 私にとって大事なのは京太郎だもんね!


『京ちゃん大学生編、大星淡は良くも悪くも変わらない』、カン
何気にさらっと爆弾落とすあわあわであった

>>1、悪女の認識に住人さんと決定的なかい離があることに気が付く。
>>1の中では遊び心で男をもてあそぶ女=悪女の認識で、親友裏切ろうが自分の恋に本気なら悪女ではなかった。
そーいう意味ならタコス以外は今んとこ悪女だらけだわ、大学生編。タコスすら未来は分からん

ドロドロシリーズ多くなってきたしさらりとした短編ラブコメにでもするかね、次回の更新は。

咲「京ちゃんはさ、段ボールに入れられた子猫を拾っちゃうタイプだよね」

京太郎「なにその不良的扱い? 俺はまじめだぞ、勉強はできねーけど」

咲「知らない人から見ると、そう見えても仕方ないってことだよ。そしてギャップで落とすの、ずるい」

京太郎「勝手に勘違いされてもどうしようもないんだけどなー。で、誰が落ちてるの? 和?」

咲「あはは、和ちゃんはないない。もっと身近にいると思うよ」

京太郎「身近かあ。うーん、分かんね」

咲「てい」(ゲシ

京太郎「なんで蹴った!?」

咲「京ちゃんが悪いんですー、気づかないから」

京太郎「咲のくせに生意気な、こうしてやる」(ぐにぐにふにふに

咲「なにふるのきょうひゃん、えいえいっ」(むぎゅー

クラスメート(毎日見せられるこっちの身になれ! コーヒーよこせコーヒー!)


カン
何でもない日常イチャイチャは咲ちゃんの強み

昨日の俺は思い返すも最低すぎた。

思考が停止してたとはいえ和を放置して憧とラブホでして、そのあと淡に連れられてビジネスホテルに直行されて襲われた。
淡の「あの女がよくて淡ちゃんがダメな理由ないよね?」に返す言葉がなかった
そして家に帰ったら押しかけた穏乃から「……憧の匂いがする。消さなきゃ、私が上書きする」と宣言され……

拒否しようと思えばどれもできたはずだ、なのにできなかった、いやしなかったんだ、俺は。
その場で流されてやることをやってしまった時点で責任は生じる。

元は俺が酒におぼれて憧としてしまったことが原因だった、これが分かった時点で責任取るって言えてれば違ったはずなのに、俺のバカヤロー!
やってること3股じゃねーか、優希に顔向けできねー。こんなの話したら味方なんかしてくれるはずがない。

怜「ふんふん、京ちん、いや京やりちん、それはあかんな。この相談受けたの竜華ならプスッとされとるで。
  まあうちは理解ある女やから、こう言ってやるけどな。気にせんでええんちゃう?」

ズーンと沈んでる俺を労りポンポンとかなり適当な手つきで慰めてくれたのはサークルの先輩の怜さん。
なお竜華先輩は医学部である。「怜の世話をしつつ怜を治すのはうちしかできん!」とかいう理由で同じ大学の医学部に入った猛者である。

京太郎「いや気にしなきゃだめですよ。こんなの最低じゃないすか」

怜「京やりちん、言うたるで。ぶっちゃけ優希ちゃんに穏乃ちゃんに淡ちゃんの好意きづいとったやろ?
  その時点で個々に返事するべきやん。なのにスルーしてなあなあ選んだ時点で三股やってるんと実際変わらへんよ
  そら体の関係は増えたかもしれん。ついでに1人増えたんで四股やな。でも、どうせ早かれ遅かれこうなっとたわ。未来見えるうちが断言するで」

なん、だと?

怜「あんな、恋愛絡んで『みんな仲良く』とか無理やねん。それ優しさやなくてただの優柔不断な浮気男やからな。
  つーわけで京太郎争奪戦はうちから見たら次のステージに入っただけで大して変わらんな、だから言うで『気にせんでいいんちゃう』?
  こういうのは当人が納得せんと意味ない、そして全員諦め悪い。うん、うちが京ちんの立場でも解決無理やな!」

京太郎「いやあの、解決無理ってことはないんじゃ」

怜「いや無理や、断言できる。どうせ誰かが焦って手ぇだして、みんな負けずとエスカレートするわ。最初の時点で詰んでるねん
  今更振っても無駄やな、ヒートアップしとるから止められんよ。
  憧ちゃんやっけ? 今回はその子がきっかけになっとるけど、問題の本質は諦めん女が揃っとることや。誰も諦めんなら選んでも無駄やで」

京太郎「じゃ、じゃあどうすればいいんですか!?」

怜「だから何度も言うたやん。気にせんでええんやって。相手が愛想つかすまで付き合ったり。
  刺したり刺されたりだけ止めたらええわ。あとは楽しみ、こんなモテ期そんなにないで」

ダメだ、相談相手を間違えた。最後のセリフ以外は納得するところがあるのが救いがねえ!
和は……「須賀くん、サイテーです」と汚物を見る目で言われて終わるし、他の相談相手は……優希? 駄目だ、片端から殴るとこしか想像できねー

頭を抱えるしかない。優希から宣告された期限まであと5日、なのに状況は好転どころか悪化の一途。
……いっそ俺がいなくなれば

怜「なんか思いつめた顔しとるけど、京太郎が行方不明とか自殺したら間違いなく殺し殺されまで発展するで」

うがー! だれか俺に名案をくれ! こうスパッと解決するようなやつ!

怜「しゃあない後輩やな。うちが助けたろか?
  刃傷沙汰になりそうになったらうちが未来変えて穏便にすましたる。代わりに竜華から刺される可能性増えるけど
  代償は京太郎自身な。楽しそうやしうちも混ぜてくれたら手伝ったるで」

そっと差し伸べされた誘惑。

京太郎「って、乗りませんよ! 五股になるじゃないですか!」

怜「もう一人増えたくらいで大して変わらんと思うけどな。まあ気が変わったらいつでも言い? お買い得やで」

この人、俺からかって遊んでないか? もうどうしろってんだ!?

須賀京太郎の悩みは尽きない。


『京ちゃん大学生編、本気か冗談か?未来を見る女・園城寺怜』、カン
というわけで先輩枠一人目は怜、二人目は竜華に決定。他はまだ未定なんでよさそうなのがあったら採用するかも?

試しに脳内ですばら先輩を出してみた→なんと三人娘の諍いは解決! という恐ろしい流れが……流石聖人は違うわ、度量がちげえ
大学生シリーズ終わっちゃうがな!

……代わりに次のホスト編に出場決定(ポン

IFルート 花田煌が京太郎の大学の先輩だった場合

怜さんに相談したその当日、うちのサークルは活動日であった。まあだからこそ怜さんがいたんだけど。
そして、それは俺にとって予想外の事態の開幕を告げた日ともなった。

ちらほらと今日の参加者が集まったその場で、淡は一歩前に出て満面の笑みで言い放ったのだ。

淡「私、昨日から京太郎と男女の関係になったから」

衝撃が走った。怜さんは片手で顔を覆い、竜華さんは無言で俯いて拳を震わせ、そして当然――

穏乃「は? それなら私も京太郎とエッチしてるもん。私の方が早いから」

穏乃が暴露しながら淡に嚙みつき

優希「おい、京太郎、どーいうことだ? つまりアレか、こいつらが京太郎を襲って手籠めにしたってことでいいんだな」

完全にぶちぎれてる目をしている優希が拳を振り上げ――

パンッと、場を引き締める掌を打ち合わせる音が響いて、全員の目線が一人に集まる

煌「皆さん、落ち着いてください。その場の感情で行動すると後で後悔することもあります。逸らないように」

そうだ、ここには煌先輩がいた、長野の誇る聖人、花田煌。二年生でありながら誰もが一目を置く人物がっ!

煌「まず、私から一言。須賀くん、いえここは京太郎くんと呼びます」

ご、ごくり、分かってるけどこの人に叱られるとダメージが――

煌「すばらっ!」

はい? い、今完全にこの空間の空気が凍ったぞ

煌「私も前々から心を痛めていました。優希は中学からの付き合いですし、穏乃さんに淡さんも大学からとはいえ可愛い後輩。
  誰かが傷つく未来の先にしか選ばれた人間の幸せはないのかと――そう思っていました。
  しかし京太郎くん、あなたは決断したのですね。一人も不幸にしないと――その甲斐性、大変にすばらですっ!」

ええー?

怜「その通りや、京太郎は言うとった。『皆が争って可愛い顔が歪むのを見たくない』と、『だから俺が全員幸せにする!誰一人こぼさない!』。
  うちはその決意に胸を打たれたもんや、普通の男ができることとちゃう、あんたらが選んだ男はいい男やで」

ちょっと怜さん、何勝手にねつ造してるの!? あといい感じに言ってるけどそれただの浮気上等の開き直り野郎ですよねえっ!
あとやめてくれます? その『うちナイスアシストやろ?』みたいなどや顔。

優希「きょ、京太郎、そうなのか?」

淡「あわ!? きょ、京太郎がその気だったなんて……流石淡ちゃんが選んだだけあるね!」

穏乃「むー。んー、んー、不満だけど、京太郎がそう決めて私のことも捨てないでくれるなら、まあ……」

え、ちょっと、ナニコレ。言う人間が違うだけで説得力ってこんなに差があるもんなの?
優希なんか尊敬する先輩の言葉に影響されてるし、淡は俺を褒められてご満悦で深く考えちゃいないし、穏乃は不満を隠さないまでも妥協しようとしてる。
あれー? おかしくない? 俺が言ったら確実に袋叩きだよね?

竜華「そんなん、認められへん!」

あ、まともな感性の人がいた。なんかまとまりかけてたけど、自分に近い感性の人がいると何故か安心――

竜華「なら怜はどうなるん!? 大学になって恋愛できん怜は!?」

あ、うん違ったね、竜華さんも普通じゃありませんでした。そうだった、この人は怜さんありきだったね。通常運転だわー

怜「竜華、それは違うで。京太郎は『全員幸せにする』言うたって。もちろん、うちも竜華も含まれとるに決まっとる! 竜華やうちが仲間外れとかないんや、安心し。もちろんあんたもや、煌ちゃん。京太郎は煌ちゃんも幸せにする気やで」

ちょっとお! 面白いからって他人勝手に巻き込んでかき乱さないでくれます!? 怜さん、あんたって人は!

煌「なんと!? なんとも大胆な告白、不覚ながらこの花田煌、少しときめいてしまいました。分かりました、この不肖花田煌、力にならせていただきます!」

ちょっと、ちょっと煌先輩まで何言いだしてんです!?

竜華「そ、そうやったんか、うち須賀のこと、ううん京太郎のこと過小評価してたみたいや。こんな男らしいなんて知らんかった」

あのー、竜華さん、貴女の中の男らしさって何なんです? なんで顔赤らめてるの?

優希「はー、やれやれだじぇ。皆っていうなら咲ちゃんを仲間外れにするわけにもいかないし、呼ぶしかないじぇ」

優希ぃ! 咲までどうして巻き込むの!? ねえどうして!?


こうして、騒動は恐ろしい形で収束しようとしていた


『京ちゃん大学生編、全てをポジティブに考える女・花田煌』、そしてIF『京ちゃん大学生編』、これにて完結!
って、こんな感じになるんだが本当にこれでいいんですか住人さんや? おかしいとこしかなくね?

遅刻SS 『ポッキーの日』

照「京ちゃん、ポッキー」

京太郎「はい? くれるんですか?」(パクッ

照(カリカリカリカリカリカリカリ、ンチュ、チュブ、チュパ

照「ん、口の中まで甘かった」

京太郎「な、なんばすっとよ、あんたば!?」

照「それは九州の方言。使う言葉が違う」

京太郎「知ってますよ! あーもう、何してくれんの……」

照「京ちゃん」

京太郎「なんですか?」(ブスッ

照「初チューはレモンの味は嘘。チョコの味がする」(ニコッ

京太郎「」(真っ赤


このあと京ちゃんはなぜ赤くなってるのか白糸台の皆に問い詰められたそうな?

カンッ!
2日遅れですまんな、テルー

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