【SF公演】美羽「ペルセウスと」友紀「シンデレラの願い」 (145)


友紀『時は××××年! 
   あたしたちは銀河系の離れにある宇宙ステーション《スタクトプタ》にやってきてるんだ!』


友紀(そこで4人の仲間といたはずなんだけど……)



凛「……」1

卯月「……」2

楓「……」3

乃々「……」4

瑞樹「……」5

杏「……」6

菜々「……」7

時子「……」8

光「……」9


美羽「えっと……」10




友紀「11人いる?!」11





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参考画像1

姫川友紀http://i.imgur.com/0YktTDi.jpg

矢口美羽http://i.imgur.com/cMKvQ7M.jpg

島村卯月http://i.imgur.com/V86RiWU.jpg

渋谷凛http://i.imgur.com/sTU5Igw.jpg

川島瑞樹http://i.imgur.com/za4wpD0.jpg

参考画像2

高垣楓http://i.imgur.com/MucGhrz.jpg

森久保乃々http://i.imgur.com/kqDLyes.jpg

南条光http://i.imgur.com/AVJuMMU.jpg

財前時子http://i.imgur.com/0c0yxdL.jpg

安部菜々http://i.imgur.com/Kc6vtR2.jpg

双葉杏http://i.imgur.com/L2ZsjAo.jpg



卯月「凛ちゃん、これって一体どういうことなんですか?」

凛「私に聞かれても……」

楓「なんだか困ったことになりましたね」

乃々「困るどころじゃないんですけど……増えるなんて……むーりぃー……」

光「お、落ち着くんだみんな! 冷静さを失ったら正義の心まで見失うぞ!?」

杏「なんで正義の心? そっちこそ落ち着きなよ」

菜々「この状況はナナの思考回路もショート寸前です!」

時子「豚みたいにわめかないでくれる? 勝手に増えるわけないでしょ」

瑞樹「時子さんの言うとおりね。いったん状況を整理しましょう」




友紀「って言われてもなー。記憶があいまいで……」

美羽「ユッキーさんもですか? 私もそうなんです」

光「二人も?」

友紀「もってことは」

光「実は……アタシもなんだ」

菜々「えっ、ナナもですよ!」


瑞樹「ちょっと待って。じゃあ覚えてる人は?」


 シーン


瑞樹「……覚えてない人は?」



「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」



瑞樹「ちょっとー誰も覚えてないの?」

時子「そういう貴方はどうなのよ」

瑞樹「みんなが忘れてるなら、私だけがボケたわけじゃないわね! 安心したわ!」


杏「いやいや、ありえなくない? 全員の記憶がなくなるなんて?」

瑞樹「もしかしたら、磁気嵐の影響かもしれないわ。一時的な記憶喪失が観測されたケースは報告されているし」

杏「でも、この人数がほぼ同時ってある?」

瑞樹「と言われても、それ以外思いつかないのよね……」



楓「お酒……かしら?」

友紀「! それかっ!」

美羽「それですか!?」

凛「多分違うんじゃないかな……」

瑞樹「いやいや……どーみてもお酒飲んじゃいけない年齢の子たちいるでしょ?」

楓「確かに。瑞樹さんの言うとおりですね」

友紀「飲みすぎた時みたいに頭も重くないしねー」


杏「ダメな大人たちだ」




光「分かった! きっと悪人が仕組んだことなんだ!」

卯月「あ、悪人ですか?!」

光「そう! ここに紛れ込んでるに違いない!」

乃々「それはやばいですピンチです。こんな部屋に居られるかって出てくしかないですー……」

時子「で、その悪人とやらは私たちから記憶を奪って紛れ込んで。それでなにがしたいの?」

光「当然、アタシたちをやっつけるんだよ!」


友紀「遠回りすぎない?」

美羽「気を失ってたんだから、その間にどうにかするんじゃないかな」

光「うーん、確かにそうかも……」

菜々「これじゃあ誰が増えたのか確かめようがないですね……」



凛「……」ジー

菜々「な、なんですから。さっきから、ナナを見てますけど」



凛「私、あんたの記憶はないんだけど」


菜々「ええぇ!?」


卯月「言われれば私も……」

菜々「えっ、ちょっと待ってください。ナ、ナナ。疑われちゃってます!?」

菜々「ナナはみなさんのことを覚えてますよ?! 凛ちゃんに卯月ちゃんですよね?」

友紀「あたしも記憶にないなー」

菜々「ええぇ!」

美羽「怪しいですね」ジー

光「怪しい!」ジー

乃々「事件の香りがします……」ジー

菜々「こ、これはナナ。ピンチですか……?」




時子「待ちなさい。私は菜々のことは記憶にあるわ」

菜々「時子さん……!」


時子「菜々は私の従順な下僕よ」

菜々「あれ、そんな関係でしたっけ?」




瑞樹「安心して、私だって覚えてるから」

楓「私もです」

凛「時子さんに、瑞樹さん……楓さんも」



時子「むしろ私があなた達の記憶がないんだけど?」

凛・卯月「「え」」

卯月「ま、待ってください?! 私は時子さんのこと覚えてますよ?!」

凛「私だって……」

時子「どうかしら。怪しいものね。嘘でもついてるんじゃないの?」


美羽「私は時子さんのこと覚えてないですよ?」

時子「アァア?」ギロリ

美羽「ひいっ!?」




杏「これじゃ、らちがあかないじゃん」

乃々「そもそもなんで私達、この宇宙ステーションにいるんでしょうか……?」


 シーン


友紀「……やっぱ野球かな?」

杏「やっぱってなに? 普通に考えて違うんでしょ」

友紀「だよねー。人数が足りないし」

美羽「人数の問題じゃないかと」

光「それも分からないって、結構やばいんじゃないのか?」

杏「人が増えてる時点でヤバいよ」



楓「でも光ちゃんの言うことはもっともね。皆さんがここにいるのには理由があるはず」

瑞樹「まさか友紀ちゃんの言うように、野球をしに来たわけじゃないでしょうし」

凛「なら、まずは宇宙ステーションの中を探索したらいいんじゃないかな? 人数のことはひと先ず置いといてさ」

菜々「そーですね! 記憶が戻るヒントが見つかるかもしれません」

卯月「じっとしてても仕方がないですもんね」

乃々「私としては今すぐ逃げたいのですが……宇宙じゃ逃げることも叶いませんし……やるしか……ないですね……」




瑞樹「えっとー。マップによると大きく三のエリアに分かれてみたいだし、三チームに分かれて探してみましょう」

時子「どう分けるつもり?」

瑞樹「そうね……」




美羽(で、なんやかんやあって……)




チーム1

楓「私たちがAエリアを調べるんですね」

乃々「………やっぱむーりぃー……」

凛「そう言わないの」

卯月「あはは……」



チーム2

時子「で、私たちがこのBエリア」

菜々「よろしくお願いしますね!」

光「頑張るぞ、みんな!」

杏「まあ、やるしかないよねー。面倒だけど」



チーム3

瑞樹「それで、私たちはCエリアね」

友紀「任せてよ!」

美羽「おー!」




ワイワイ

乃々「あの……気をつけてくださいね……」

美羽「うん? ありがとう。乃々ちゃんもね!」

乃々「……」ウー

美羽「?」





―――
――


―――Aエリア チーム1


凛「こっちは住居地区みたいだね」

卯月「でも、部屋に入ろうにもパスワードが分からないですね……」

凛「しかも指紋認証付きか……」


楓「誰か、自分の部屋とパスワードを覚えてたりしませんか」


乃々「それが分かるなら、今すぐ部屋の中に閉じこもって机の下で丸まらせていただきます、いやむしろさせてください~……」

卯月「どうして机の下に?」


乃々「それは乃々のサガなのです」

楓「サガなら、他人がどう言ってもサガれない思いがありますね?」

乃々「だから乃々がいなくなっても、どうかサガさないでください……」

卯月「え、えっと……仕方がないサガー!」

凛「卯月、その語尾なに?」






楓「通信機器があれば……知ってるか聞けたんですけど」

卯月「使えそうなものは見つからなかったですもんね」



凛「……」

 サッサッサ ブー

凛「……」

 サッサッサ ピー



楓「あら、開きましたね」

卯月「さっすが凛ちゃん! 部屋のパスワード覚えてたんですか?」

凛「覚えてたじゃないけど。頭に浮かんだ数字を試してみたらさ」

乃々「どんなパスワードだったんですか?」

凛「0424だって。どうしてか分かんないけど」




卯月「へえ、偶然ですね。私の誕生日と一緒です」

凛「えっ」





凛「そうだっけ?」

楓「あら、そうなんですか」アラアラ

凛「ふ、深い意味はないよ?! あ、あれだよ。ここ卯月の部屋なんだよ、きっと!」



乃々「指紋認証ですから、部屋の主じゃないと開けられないんじゃ……?」

凛「あー……」


卯月「い、いいじゃないですか。友達の誕生日を使っても。凛ちゃんに使ってもらって私嬉しいですよ?! どんどん使ってください!」

凛「みんなに知られたらパスワードに使えないって……」

乃々「問題、そこなんですか?」



楓「まあまあ、せっかく開いたんだし……ほら、なかを調べましょ」

凛「そ、そうだね」



乃々「ウウなんか、ドキドキします、他人(ヒト)の部屋……」

凛「なんで575?」

卯月「凛ちゃんの部屋の、素気ないですね」

乃々「でも、部屋があるってことは……凛さんは最初からステーションに居たってことですよね」

凛「乃々、疑ってたの?」


乃々「あのっ……!いえ、そうじゃなく……確認の為に言っただけで……そもそももりくぼも最初から居た人間じゃない可能性があるくせに出しゃばり過ぎでしたよねすいませんどこかに消え去りますー……」


凛「いや、そこまで言わなくても……」






楓「パソコンがありますね。起動してみませんか。なにか現状が分かるデータが入ってるかも」


凛「……だめだ、起動しない。壊れてるみたい」カチカチ

卯月「磁気嵐の影響ですかね」



凛「どう、かな?」

楓「……なくはないかもしれませんけど」ウーン

乃々「なにか……気になることでもあるんですか?」

楓「仮に磁気嵐だとしても、ステーション全体が無事なのが気になって。
  私たちの記憶がなくなるほど強烈なものだったら、ステーションにもなにか影響が出てないとおかしいんじゃないかしら?」

凛「楓さんもそう思った?」

卯月「確かに。非常電源も使われてないし、部屋のロックも問題なかったですもんね」


乃々「でも、パソコンは壊れてますよね……磁気嵐のせいじゃないんですか?」


楓「ですけど……やっぱりなにか引っ掛かるんですよね。磁気嵐以外の別のもののせいか……なにかの意図が紛れ込んでるような」

凛「それは考えすぎじゃない?」


楓「だと……いいんですけど……」






乃々「ま、まさか光さんの言っていたように悪い奴が紛れ込んでいるとかですか……!?
   もりくぼたちを草場の陰から嘲笑い弄んで最後は宇宙空間に放り出すつもりなのでは……」


卯月「乃々ちゃん落ち着いて」

乃々「もし宇宙空間に放り出されたらもりくぼ、生きていけません……」


楓「困りますね。私も生きていけません」

凛「みんな生きていけないよ……」



乃々「きっと今か今かとそれや近づいてきているはずでそうなのです」


……ッタ


卯月「……今、なにか外で音がしませんでした?」

凛「いやいや、そんな――」


ヒタッ……


乃々「ひい!?」

卯月「だ、誰か外にいるんですか?!」

楓「落ち着いて。部屋を出て確認してみましょう」


卯月「そーっと……」キョロ

凛「って……」ギョッ


??「……ぴ……」


凛「な、なにあれ!?」

乃々「あ……あれは……!?」



??「……ぴ……ぴっ……ぴにゃーー!!!」




―――
――

―――Cエリア チーム3


友紀「あーあー、なんでこんな目にー」

美羽「まあまあユッキーさん」

友紀「大体こういう宇宙ステーションって嫌いなんだよなー。息苦しいというか、せまいというか。地球から遠いと電波届かなくて野球観れないし」

美羽「最後のが一番の理由ですよね? 我慢してくださいよ」

友紀「美羽ちゃーん。ならせめてお酒ちょうだーい!」ダキツキ


美羽「ああ、もう持ってるわけないじゃないですか!」

瑞樹「ふふっ……二人とも仲良しなのね?」

美羽「ええ、まあ」

友紀「友達だからねー。記憶はあいまいでもそれは覚えてるもん」ホホスリスリ



瑞樹「ミズキも友達でしょー?」ホホスリスリ

美羽「ちょっと、瑞樹さんまで止めてくださいって!?」スラレスラレ





瑞樹「まっ、冗談はここまでにして……」

友紀「そうだねー。真面目に探さなきゃ……ってあれ何?」

美羽「なんですかね?」



友紀「箱……なのかな? 部屋のど真ん中に堂々と置いてあるけど」

瑞樹「この大きさ……人が入っててもおかしくないわね」

友紀「えぇ……怖いこと言わないでよ」



美羽「この箱、『はーこ』わーい! ですね」ドヤッ!

瑞樹「なんだか、寒気も感じるわね」

友紀「美羽ちゃん頼むよ」


美羽「私のせいじゃないですよ!?」


友紀「箱をいじったらなにか分かるんじゃないかな」

美羽「ちょっと、不用意に触るのは」



 プシュー


友紀・美羽「「うわっ!」」




瑞樹「箱の上が開いてく……」ウィーン

美羽「ガラスケース……でも、煙でなかが良く見えないですね」

友紀「ん? でも段々煙が引いて……」



友紀「きゃあああぁ!?」

美羽「ユッキーさんどうしたんですか!? カワイイ声上げて!」


友紀「な、な、かなかなか……!」

美羽「加奈ちゃんがどうかしたんですか? メモ帳が欲しいんですか!?」



友紀「じゃなくてー! 箱のなかー!」



美羽「なか……? ってうきょあーー!?」




瑞樹「これって……女の子?」





美羽「どうして人が?!」

友紀「その子は大丈夫なの、瑞樹さん?」

瑞樹「これは……コールドスリープ? でもそれにしては……」



美羽「コールドってことは、この子は『こーっとるど』ってことですか?」

瑞樹「美羽ちゃん、意外と余裕あるわね?」


友紀「もしこの子が生きてるなら、起こしてみたら? なにか事情がわかるかも!」

瑞樹「可能性はあるけど……この子、まさか」ウッ

友紀「瑞樹さん?」


美羽「でも、この人可愛いですねー。背は高いですけど、服もデコデコしてますし。眠れる森の美女って感じですよ」


 パチクリ



美羽「パチクリ?」


 ガシャーン!!



美羽・友紀「「うわ~~!?!?」」






美羽「ガラスを手で突き破った!?」


瑞樹「目が覚めた!? そんな急激に目が覚めるなんてありえないわ!」

友紀「ガラスを突き破った方がありえないって! このガラスめっちゃ厚いよ!?」


美羽「で、出てきますよ……!?」



???「……ニョ」



瑞樹「にょ?」



きらり「ニョワーー、キラリダニー!!」



瑞樹・友紀・美羽「「「きゃああああ!!??」」」


諸星きらり
http://i.imgur.com/w8xey9R.jpg






美羽「な、なんなんですかあれー!?」



瑞樹「これは……『ガラスの靴計画』の……シンデレラ一号……!?」


友紀「なにそれ? 大リーグボール的な奴?」

瑞樹「それは……」


きらり「ニョワー、ハピハピスルニー!」


美羽「うわ!? こっち来ますよ!?」

瑞樹「今はともかく逃げましょう」

友紀「う、うん!」

きらり「ハピハピニー!」


美羽「意外と早いですよあれ!?!?」

友紀「追いつかれちゃう!」



瑞樹「……っ!」ザッ

美羽「!? 瑞樹さん!?」

友紀「なに立ち止まってるの!」


瑞樹「二人は先に行って……あれは私が食い止めるわ!」






美羽「そんな……!?」

瑞樹「貴方達は先に言って、みんなに伝えて! シンデレラ一号が……
 
   『はぴはぴデビル』が解き放たれたって!」


友紀「くっ……美羽ちゃん行こう!」

美羽「ユッキーさん……でも」

きらり「ハピハピー!」


瑞樹「早く行って! みんなハピハピにされるわ!」

友紀「ほら、美羽ちゃん!」

美羽「うー……!!」


 ダッ


瑞樹「そう……行くのよ、二人とも」


瑞樹(思い出したわ……ここにいる意味を……だから、守ってあげて……!)

瑞樹(全ては……『PRA』のために!)


きらり「ニョワー……」


瑞樹「なめんじゃないわよ! コールドスリープで若さを保ってたんだか知らないけど、女はみんな永遠のプリンセス! 私だってピッチピチなんだからー!!」






――



プシュー


時子「! 貴方たち慌てて帰ってきて。なにかあったの?」

友紀「みんな! 大変だよ!」


乃々「大変? ってことはそっちにも出たんですか~……!!」

美羽「そっちのフロアにもあったんですか、あれ!」





乃々「緑色の化け物ー……!」友紀「背の高い女の子!」



乃々・友紀「「うえ?」」





楓「あらあら?」

光「どうなってるんだ?」




杏「ちょっと美羽。背の高い女の子って……?」


美羽「えっとですね。コールドスリープされてた女の子を見つけたんですけど。それが急に目覚めたと思ったら暴れ出して」

友紀「そうなんだよー。話をするとかそういう問題じゃなくてさー」

楓「二人とも。瑞樹さんがいないけど、まさか……?」

美羽「私たちを逃がすために……」

乃々「そんな……」


友紀「っていうか、そっちも卯月ちゃんと凛ちゃんの姿がないけど。二人も……」

楓「こっちは二人とも無事よ、一応ね。ただ、卯月ちゃんが緑色の怪物に噛まれて……今は医務室にいるの。凛ちゃんもそっちに」

美羽「なんですか、緑色の化け物って」


楓「分からないわ。ぴにゃぴにゃ言ってたから、『ぴにゃこら太』って呼んでるけど」


友紀「ぴにゃこら太……」

美羽(『こら太』はどこから?)

楓「すっごい変な顔なの」

美羽「変な顔なんですか?」


乃々「ホントに、すっごく変な顔でした……あれが好きって人はちょっともりくぼどうかと思うレベルで変な顔でした」


参考画像右側

ぴにゃこら太
http://i.imgur.com/952RYn9.jpg


楓「その変がどこからともなく現れて……」

乃々「変な顔のくせに恐ろしい奴でした……逃げるのに精一杯で」



時子「ぴにゃこら太って奴のこと、他になにか分からないの?」ネェ

乃々「とぉ……もりくぼにぃ……言われてもぉ~……」

光「時子さん、焦るのはわかるけど、人を脅すようなことしないでくれ」

時子「アァア? 尋ねただけじゃないの。人聞きの悪いこと言わないで」

菜々「時子さん圧がありますからね、普通に話しかけても脅してるように聞こえます!」

美羽「ですよね!」

時子「アァア?」アァ?

美羽・菜々「「ひいぃ!!」」



楓「詳しく観察する時間もなかったの」

時子「分かったわよ」ハア……

美羽「でも、となるとぴにゃこら太って変な顔のに関してはドン詰まりですかね?」

菜々「となっちゃいますよねー……」


時子「それより、そっちのはなんなのよ」


美羽「コールドスリープしてた『こーってるど』ちゃんですね!」ドヤ!


時子「黙りなさい」ビシン!

美羽「痛みう!」





友紀「さあ? 瑞樹さんはガラスの靴計画のシンデレラ一号のはぴはぴデビルって言ってたけど」


光「シンデレラ一号……?」

楓「ですか?」


美羽「?」


菜々「光ちゃんに楓さん? なにか覚えてるんですか?」

光「うう……どこかで聞いたことがあるよな……」

楓「ええ」


 プシュー


美羽「あ、凛さん」

凛「美羽、それに友紀」

友紀「卯月ちゃんの様子はどうなの?」

凛「怪我は大したことないけど、疲れて少し寝てる。それより、瑞樹さんは?」


友紀「じつはカククジカジカで……」

凛「そんな……ぴにゃこら太って変な顔のやつ以外にもよく分かんないのが中にいるなんて」

菜々「困りましたよねー」ウー





友紀「菜々さんたちのチームはなにか見つけなかったの?」

光「あやしい部屋はあったんだ。ただ……」

時子「その部屋だけパスワードが掛ってて、開け方が分からなかったの」

菜々「杏ちゃんが見つけてくれたんですよ、ねっ!」



凛「……って、その杏は?」

友紀「え? 杏ちゃんは確か……あれ?」

美羽「いなくなってる?」




乃々「さっき、出ていきましたよ……?」

美羽「えっ?」

時子「いつの間に?」

乃々「お手洗いに行くと言って、向こうへ……」

友紀「向こうって、トイレじゃくて」

美羽「はぴはぴデビルがいる方向じゃないですか……!?」






――



杏(みんなには悪いけど……杏、ここにいる理由、思い出しちゃったんだよねー……)


杏(待っててよね……きらり)



――



美羽「ど、ど、ど、どーします!? まさかはぴはぴデビルにハピハピされにいったんですか!?」

楓「話を聞いたとき、少し様子が変だったけど」

凛「でも、どうしようもないよ……」

菜々「探さないんですか!?」

凛「そうは言ってないけど……危険な奴がいるんでしょ? ただですらぴにゃこら太がいるのに、これ以上は……」

時子「凛の言うとおりよ、勝手に突っ込んだ奴の世話までしろっていうの? しかもこっちには武器もないわ」



美羽「……えっと、ところで時子さんが持ってるそれは?」

時子「? 見ればわかるじゃない。鞭よ」

友紀「そんなもの、どこから」

時子「悪いけど私物なの。貸し出しはなしよ」


乃々「凄い私物ですね……」





光「でも、放っておけない!」

美羽「わ、私もそう思います! これ以上、誰かが犠牲になるのは……」

友紀「美羽ちゃん……」



友紀「そうだよね! 放ってなんておけないよ!」

凛「気持は分かるけど……私は卯月を置いてはいけないよ」

光「いいよ、行きたい人たちだけででもいこうよ!」



時子「……はあ、仕方ないわね」

友紀「時子さま?」

時子「私も一緒に行って上げるわ」

美羽「本当ですか!」

楓「大丈夫なの、時子さん?」

時子「勝手にどっかに行く奴なんて興味ないけど、犠牲者を増やすのも趣味じゃないわ」



時子「私にはこれがあるしね」ビシッ!





菜々「と、時子さんが行くなら、ナナも」


乃々「もりくぼも……美羽さんや光さんとかが行くなら……怖いですけど……」


時子「ダメよ、他の人はここに残りなさい。人数が増えすぎたら返って身動きも取りづらいわ」


光「そうだな。卯月さんのこともあるし 半分は残った方がいいと思う」

時子「菜々」ポイッ

菜々「うおっと……鞭。いいんですか?」

時子「そっちは予備よ」

美羽(予備まで持ってるんだ)

時子「なにかあったら、貴方がそれで守りなさい」

菜々「時子さん……わっかりました! ワンダーランドラビット、ウサミンにお任せください!」キャハ!

時子「ふん……せいぜいがんばりなさい。行くわよ、貴方達」

友紀「うん!」


―――
――



―――
――


杏(きらり……一体どこに)


 ハッピハピニャー


杏(この喋り方)

杏「きらりっ!?」



瑞樹「ハッピハピニャ-」


杏「瑞樹さん……」

杏(きらりのハッピハッピパワーにやられてる……)

杏(こうなったら、一週間はハッピハッピが抜けることはない)



瑞樹「ミズキダニー♡」


 スッ……


きらり「……」


杏「! きらり!」


きらり「ニョワー……」




杏「久しぶりだねえきらり。また大きくなったんじゃない。な訳ないか」

きらり「ニョワ?」

杏「杏、ずっときらりのことを探してたんだよ。ずいぶん遠回りしちゃったけどさ……」

きらり「ハピハピ……?」

杏「きらり。杏のこと忘れちゃったかな?」


きらり「アン……ズ……?」

杏「! きらり。そうだよ。友達の杏だよ。覚えてる?」


きらり「アンズ……トモダチ……」

杏「きらり……」




きらり「トモダチ……ハピハピ……!」

杏「そんな……」

杏(今のきらりは意思を持たない……はぴはぴデビルに過ぎないの?)

きらり「ニョワー!!」

杏「くっ、きらり!」


 ビシン!


きらり「ニョワー!?」

杏(鞭……!?)

時子「まったく、とんだ豚ね。勝手に飛び出すなんて」ヒュン





杏「時子さん、光ちゃん……友紀さんに美羽も」


光「助けに来たぞ!」

美羽「です!」

友紀「もう、杏ちゃん!ちゃんと連携プレイが取らなきゃ。大量失点しちゃうよ!」


杏「別に助けてとは言ってないんだけど……」

時子「施しに対してその口のきき方はなにかしら? 後でお仕置きが必要のようね」

友紀「時子さま、前!」

きらり「ニョワー!」

時子「ふん、杏の前に貴方をお仕置きしてあげる」ニヤリ




 バシン!

美羽「おお、時子さん凄い……」

友紀「鞭で応戦してる……! まさにレディタイラント!」

光「ねえ、あれって……」



杏「シンデレラ一号。きらりだよ」




友紀「シンデレラ……瑞樹さんも言ってたけど、なんなのそれって?」

光「『ガラスの靴計画』で生み出された存在……分かりやすく言えば超人計画なんだ」

美羽「ちょうちん計画?」

光「ちょ・う・じ・ん。スーパーヒューマンプロジェクト」

友紀「光ちゃん、知ってるの?」


光「うん、思い出した」


光「今から五十年前……宇宙からやってきた隕石にある物体がついてたんだ。
  マジカルコール、通称MC。
  膨大で未知の力を持つそれを軍事利用する計画。それがガラスの靴計画。
  五年かけて二人のシンデレラ(超人)が生み出されたんだ。第一号、諸星きらりと」



光「第二号……双葉杏が」



美羽「えっ」

友紀「じゃあ杏ちゃんも、あの子と同じ?」

杏「って言っても、あたしは失敗だったんだけどね」

美羽「ちょ、ちょと待ってくださいって? そんな昔の計画なら、杏さんは今なん歳ですか!? おばあちゃんじゃないですか!」


杏「失礼だね? まあ実際に生きてたら美羽くらいの孫がいてもおかしくないかも」

友紀「???? 実際に生きてたら?」





光「杏は……実験装置の暴走で粒子レベルまで分解されて消滅したんだ……」



美羽「ふえっ!?」



友紀「なにそれ?! え、でもここに!?」


杏「そのレベルまで分化されてもどういう訳か意識は漂ってたんだよ。幽霊というか妖精というか?
  それで、きらりがどうなったかも知ってたんだ……」


光「友達を失ったきらりは暴走してはぴはぴデビルになってしまった……コールドスリープするしかなかったんだ」


杏「杏もそれは知ってるよ……それについてどうこう言う気はないって。仕方ないことってあるし。
  でも、もどかしくてさー…会いたいなーっとか。
   会って話をすればなんとななるんじゃないかなーっとか思ってたんだ……きらりと」


美羽「だから、この事件を起こしたんですか? みんなから記憶を奪って」

杏「これを起こしたのは杏じゃないよ。だらだら妖精をしてたところで、この現象が起きたわけ。
  それをうまく利用しただけ。これを起こしたの……たぶん別のなにか」


友紀「なにかってなにさ?」


杏「残念ながらそこまでは杏も分からないんだよね」




きらり「ハッピハッピー!!」ドゴーン!


時子「くっ!」

美羽「時子さん! 大丈夫ですか!」


時子「ここまで馬鹿にするとは……いいわ、豚からランクアップさせてあげる!」

きらり「ニョワー!」

杏「普通の人間じゃあ無茶だよ!」




美羽「の割にいい勝負してるような……」

友紀「十分普通じゃないよね」ウンウン






時子「そういうなら杏、貴方がどうにかしなさいよ!」

杏「杏だって止めたいけど……体が戻った時に昔の力も失われちゃったっぽいし」

時子「使えないわねっ!」チッ




光「そう……普通の人なら相手は難しいよ」

友紀「光ちゃん?」

光「でも、きらりさん達の後もガラスの靴計画は、ずっと続いてるんだ……」

杏「まさか、光……」



光「見てて。後輩の力を……!」ビシッ!


 キョイィィイン

  ビシィ!


光「へん・しん!」


 ピカー!


美羽「きゃ!」

友紀「うおぉ、まぶしっ!」

きらり「ニョワー……」


 シュー……

光「ミンナノミカタ、南条光。ここに参上!」

http://i.imgur.com/nSvZyeg.jpg






美羽「光ちゃんの姿が……」

友紀「変わった……?」


光「見ててね大先輩! そして、覚悟しろ大先輩!」

きらり「ニョワー!」


光「ヒーローの足音が聞こえるかはぴはぴデビル! とう!!」


時子「フフッ、面白いじゃない! 援護してやるわ!」

 バンバン ドカーン 
テリャー! ニョワー! チッ!



美羽「なんか凄いことになってきましたね」ワー

友紀「うん、完全にカヤの外」ヘー

杏「杏もだよ」アラー


美羽「ねえ、杏さん。他になにか思い出したことは?」ドカーン ムチガー!?

友紀「そうだよ」アタシニアテナイデクレヨ!

杏「残念ながら杏も、巻き込まれた前後の記憶は曖昧で」ダマリナサイ! ニョワー!

美羽「そうなんですか」ウワット! チョットアナタ!

 ドカーン!


光「うわっ」

時子「チッ」




友紀「大丈夫二人とも!」

光「時子さんが!」時子「こいつが」


光・時子「「邪魔する!」」



光「なんだって!?」時子「なんですって!?」


美羽「あわわ」

杏「まあいきなり連携はとれないよねー」

友紀「キャンプや普段の練習でしっかりやっとかなきゃ返って危ないし」ウンウン

光「勝手に動かないでアタシに合わせてくれ!」

時子「他人に合わせる主義はないわ」

光「なにをー!」

時子「なにかしら?」



美羽「ちょ、落ち着いてくださいよ。冷静にならないと連携は、とれんけい! ですよ!」


光「はい?」

時子「アァア?」


美羽「あ、今のは連携とですね、とれんのかい。と『れんけい』。連携……的な。分かります?」


美羽「連携……とれん、けい。とれんけい……!」

光「……そうだね、頭も冷えたよ。落ち着かなきゃ」

時子「私も熱くなり過ぎたわ」



杏「おお、さすが美羽。二人を落ち着かせたね」

友紀「ナーイスアシスト」

美羽「うーん、なにか納得いかないんですけど?」





きらり「ニョワー……」


光「さあ、待たせたな。大先輩……って?」


友紀「なにか様子が変じゃない?」

杏「うー、なにか寒気が」

友紀「美羽ちゃんのギャグが効いてるね」タイヘンダ

美羽「ちょっとユッキーさん?」ナキマスヨ?

杏「うんうん、美羽のギャグとはまた別の寒気が」

美羽「杏さん?」



 ガサガサ


「にゃー……」


友紀「あれって」

美羽「まさか」


ぴにゃこら太「ぴにゃー……」


光「あれが凛さんたちが言ってた、ぴにゃこら太か!」

時子(……以外と可愛いわね)



友紀「うわー、ホントに変な顔!」

美羽「ですね!」

時子「……」ギロッ

美羽「ひいっ!?」

友紀「どーしたの時子さま?」





光「凛さん達はやられたけど、力を取りもどしたアタシなら、あんな奴一匹ぐらい……」

「ぴにゃー」

友紀「ん?」

「ぴにゃー」「ぴにゃー」

美羽「ん?」

「ぴにゃー」「ぴにゃー」「ぴにゃー」
「ぴにゃー」「ぴにゃー」「ぴにゃー」「ぴにゃー」


杏「え、っちょ。多!?」


美羽「ぞろぞろやってくる?!」


時子「一匹だけじゃないの……!?」


「ぴ」「ぴ」「ぴ」

「「「「「ぴにゃー!!」」」」」


友紀「うわっ!?」

美羽「襲って来た!」





時子「行くわよ、光!」


光「わかった、時子さん!」


「ぴにゃー!」

美羽「がんばって、ふたりともー!」

友紀「GO! GO! レッツゴー!!」


杏「ウー……でもちょっと数……多くない?」

きらり「ハピハピー!」

ぴにゃこら太「ぴにゃー!」

美羽「きらりさんも襲われてる!」

友紀「無差別大乱闘だね」

杏「きらり……!」



 ガタガタ

友紀「! 美羽ちゃん危ない!」ドンッ

美羽「きゃっ……いきなり突き飛ばさないでくださ――」


ぴにゃこら太「ぴにゃー!」ガシャーン


杏「天井から!?」





友紀「わっ!」

美羽「ユッキーさん!」

ぴにゃこら太「ぴにゃ」「ぴにゃ」

杏「友紀さんがぴにゃこら太の大群に押しつぶされた!?」

光「待ってくれ、いま助け――」



ぴにゃこら太「ぴにゃ」スッ

時子「チッ! 邪魔をして」バシン

ぴにゃこら太「ぴにゃー!」


ぴにゃこら太「ぴにゃ」ぴにゃこら太「ぴにゃ」ぴにゃこら太「ぴにゃ」


杏「ゾロゾロでてくるね」
 

美羽「ユ、ユッキーさーん!!」




友紀(これはちょっと……やばい……かも……)




―――
――





友紀「……ハッ!」

友紀(……ここは)

友紀(何だか温かいけど……死んじゃったのかな、あたし)


『友紀よ……』

友紀「?」

『君はまだ死んでいない、友紀……』


友紀「誰、誰なの?!」


『私だよ、私さ』サッ




友紀「な、貴方は……ねこっぴー!?」


ねこっぴー「やあ、友紀。ねこっぴーだよ」

ねこっぴー
参考画像右側
http://i.imgur.com/6ZaH6Dq.jpg




友紀「な、なんでキャッツのマスコットがここに!?」


ねこっぴー「実を言えばね……キャッツのマスコットとは仮の姿」



ねこっぴー「私の正体は、野球の神様なんだ」

友紀「野球の神さまだってー!!??」ナンダッテー!



友紀「えっと、いろいろ言いたいんだけ、まずいいかな」

ねこっぴー「なんだい?」

友紀「最近のキャッツどうにかならないかな?」

ねこっぴー「それはフロントに言ってくれ」





友紀「っていうか、なんで野球の神様がこの状況で現れるの!? 野球も大事だけど、今はぴにゃこら太をどうにかしなきゃいけないのに!」



ねこっぴー「ぴにゃこら太……あれは危険な存在だ」

友紀「ねこっぴー、ぴにゃこら太のことを知ってるの?」

ねこっぴー「神様だからね。あれは次元の異常が起きた際に発生するのだ。放っておけば、我々の住む次元そのものの危機となる」


友紀「あの変な顔、そんなに危険なの?」


ねこっぴー「もし次元が崩壊すれば、野球も消滅してしまう。それを防ぐために、友紀、私は君を選んだのだ。思い出すのだ、友紀よ……」


友紀「思い出す? 一体なにを……」


ねこっぴー「私が授けたものをだ。われわれ野球人が握るべきは、鞭でもネギではない」

ねこっぴー「われわれの握るべきもの……それは……」


―――
――




美羽「ユッキーさん……そんな……!」

杏「友紀さんのこともあるけど……杏たちもやばそーな感じだよー……」


ぴにゃこら太「ぴにゃ」ぴにゃこら太「ぴにゃ」

ぴにゃこら太「ぴにゃ」

ぴにゃこら太「!!」


 ドカーン!!

美羽「!? ユッキーさんを囲んでたぴにゃこら太が吹き飛んだ!」

杏「一体なにが」

美羽「あ、あれって……!」

「お待たせ、みんな」




友紀「これから一発逆転を狙うよ!」

美羽「ユッキーさん!」

光「無事だったのか!」

友紀「心配かけたね。みんな」


時子「無事なのはいいけど……そのバットどうしたの?」

杏「さっき持ってなかったよね?」


友紀「ふっふっふ……野球の神様があたしに授けてくれたんだよ!」




時子「あたま大丈夫、貴方?」

杏「押しつぶされた時にぶつけたんじゃない?」


美羽「ありゃー……」




ぴにゃこら太「ぴにゃー」ぴにゃこら太「ぴにゃー」

光「無事だったんならなんでもいいさ。さあ、早く後ろに」

友紀「うんうん……あたしもこのバットで戦うよ!」

美羽「危ないですって! シンデレラの光さんや時子さんに任せた方が!」

杏「時子さんは普通の人だよね?」

友紀「美羽ちゃん、安心して! あたしには野球の神様がついてるんだ!」

美羽「安心できる要素皆無ですよ!?」



友紀「一番センターユッキー。行くよ!!」

ぴにゃこら太「ぴにゃー」

友紀「どりゃああああ!!!」カッキーン!


ぴにゃこら太「ぴにゃー!!」ぴにゃこら太「ぴにゃー!!」ぴにゃこら太「ぴにゃー!!」

美羽「ひと振りでぴにゃこら太達を一気に吹き飛ばした!?」

杏「うわ、スゴー……」

時子「なんなのよあのバット……」

光「時子さんの鞭も大概だと思うぞ?」



友紀「ほら、ボーっとしてない! 今がチャンスだよ! 回は六回裏! 相手先発を引きずり降ろして、一気に打ち崩すんだから!」



―――
――



友紀「うりゃー!」カッキーン!

ぴにゃこら太「ぴにゃー……!」バタン

友紀「っと……これで大体は倒したかな」

美羽「ともかく、みんな無事でよかったですー」ホッ

光「気が付いたらきらりもどっかに行ってるな」



杏「……」

時子「貴方、大丈夫?」

杏「えっ? ああ、まーね」

時子「そう。なら聞きたいんだけど、他になにか思い出したことは? あのぴにゃこら太ってのはなんなのか」

杏「杏も、ぴにゃこら太についてはちょっと」

時子「なら、きらりってなんでここにいるのよ」


美羽「と、時子さん。そこら辺はさっき聞いたんですけど、覚えてないらしくて……」



光「……もしかしたら、瑞樹さんだ」

友紀「? なにが」


光「思い出したんだ。コールドスリープしたきらりさん連れてきたのは、瑞樹さんなんだ」





時子「なんで瑞樹がきらりをここに?」

光「そこまでは……ただ、瑞樹さんはきらりさんを研究施設から盗み出した……それに気付いた楓さんはニューシンデレラのアタシを連れて追って来たんだ」


美羽「楓さんとですか?」


光「瑞樹さんと楓さんは二人は研究仲間だったらしい。楓さんは、ガラスの靴計画の研究者の一人なんだ。瑞樹さんの目的を知ってるかも」


時子「……急いで戻った方がいいわね」



友紀「えー。疲れたから少し休んでこーよー。焦る気持ちは分かるけど、試合後のリフレッシュは大事だよー?」


時子「脳みそ使いなさい。ぴにゃこら太が現れた方向は?」

美羽「あっ……私たちが来た方向……」





時子「急いでいたから、ロックを掛けてなかったわ」

光「じゃあ、向こうのフロアにぴにゃこら太が入り込んでるかも!」



時子「……あるいは、向こうのフロアからこっちにやってきたか」

美羽「なんで向こうから現れるって思ったんですか?」

時子「さあ……なんとなくよ」

友紀「勘なの?」


光「時子センサーか!」

時子「黙りなさい」

美羽「ほっと一息……ついてる余裕はなさそうですね」

友紀「早く戻った方が、よさげな感じだね」

時子「杏もそれでいいわね」


杏「助けてもらったからねー。だらける、わけにはいかないよー」

光「おし、そうなったら急いで戻ろう!」


―――
――



 プシュー

友紀「大丈夫?!」

楓「みんな、無事だったのね!」

乃々「ところで、光さん。その姿は……?」

楓「友紀ちゃんも、バット?」

光「これはカクカク」

友紀「ジカジカで」


楓「それがガラスの靴計画……」

光「そうだよ楓さん。覚えてない?」


楓「うっ……」ヨロッ

時子「ちょっと……! もう、気をつけなさい」

楓「ごめんない……めまいがして」



乃々「ううー……」フラッ

杏「ちょっと、なんで乃々も?」

美羽「大丈夫、乃々ちゃん!?」

乃々「フラフラもりくぼには理由があるのです……」




楓「乃々ちゃんも、思い出したの?」

乃々「ちょっとだけですけど……」

光「そっか……乃々もだったな」

時子「勝手に盛り上がらないでくれないかしら?」

友紀「話が見えてこないんだけど」

美羽「ウンウン」


楓「乃々ちゃんもガラスの靴計画の一人なの」

友紀「乃々ちゃんも?」

乃々「そうなのです……光さんと同期なのですけど……私が微妙だったので、扱いも微妙……机の下がお似合いです」

光「そんなことない! 乃々だって立派なヒーローだった。ただ」



乃々「ヒーローなんて……むーりぃー」

杏「ああ、その性格ね……」

時子「そんなことより、瑞樹の目的をなにか知らないの?」


楓「ごめんなさい、私も詳しくは……ただ、コールドスリープ状態のきらりちゃんを持ち去ったから、追って来ただけで」


友紀「なんだ、楓さんもわかんないのか」チェー




楓「こうなったら、持ち去った人に聞くのが一番かしらね」


杏「でも、瑞樹さんはきらりにハピハピにされてたんだよ? 研究者なら分かると思うけど、一週間は元に戻らないし」


楓「この計画は、瑞樹さんが主導したけど……協力した子たちがいるの」

杏「その子たちって……まさか」


楓「卯月ちゃんと凛ちゃんよ」

美羽「あの二人ですか?」

楓「瑞樹さんは今は研究所の学校機関で先生をしているの。卯月ちゃんと凛ちゃんは瑞樹さんの生徒で、持ち去った事件にも関わってるわ」

友紀「じゃあ凛ちゃんに聞こうよ!」



美羽「って、その凛さんは?」キョロキョロ

時子「そういえば、菜々もいないじゃない。どうしたの」

乃々「そうなのです……こっちも大混乱中なのです」

楓「卯月ちゃんの様子を二人が見に行った時に、ぴにゃこら太が現れて……」


杏「嘘でしょ?」

美羽「まさか二人とも……?!」


楓「分からないわ。ただ、私たちじゃ探しに行けなくて……」


―――
――



 ピニャー ピニャー


菜々「ううー、なんだが大変なことになってますね」

凛「卯月……」

菜々「凛さん、卯月ちゃんが心配なのは分かりますけど、私達も結構ピンチですよ。
   どうやっても完全に囲まれてますし……戻ることも進むことも出来ません」

凛「分かってるよ。だからってジッとしてる訳にも」

菜々「心なしかぴにゃこら太の数も増えてますし、もっと安全な場所に逃げないと」

凛「……とりあえずこっちにいこう」


菜々「はい」


 ピニャー ピニャー

凛「うわ、こっちにも!」

凛「やっぱりさっきの場所に戻るしか――」

ぴにゃこら太「ぴにゃー!」


凛「しまった、見つかった!?」


 ピニャー ピニャー ピニャー ピニャー


菜々「た、大変です。ともかく逃げましょう」

  ピニャー ピニャー ピニャー ピニャー


菜々「って、こっちにも! やっぱり増えてますよねあれ!?」





凛「くっ……!」

菜々「こうなったら、時子さんから預かったこの鞭で!」

菜々「うえりゃー!!」ビシーン!



ぴにゃこら太「ぴにゃ」バシッ


凛「あっ、掴まれた」

ぴにゃこら太「ぴにゃ」ヒョイ

菜々「ああぁあ。鞭が奪われたー!? 取り返さないとお仕置きされちゃいます!?」

凛「お仕置きの前にこの状況をどうにかしなきゃ……!」



菜々「! あそこの扉は!?」

凛「い、いくしかないよ!」

  ピニャー ピニャー ピニャー ピニャー


ガチャン!

菜々「ふう、とりあえず一安心ですね」

凛「そうだね――ってうわ!?」

菜々「どうしたんですかってぎゃあ!?」



凛「ス、ステーションの壁から宇宙船が飛び出してる!?」




菜々「ど、どうなってるんですか。元からこういうお洒落なデザインなんですか!?」

凛「そんな訳ないと思うけど……突っ込んだ、って訳でもないよね。
  壁も壊れたってより、この形に綺麗にくりぬかれてみたいだし」


菜々「密着してます……まるで一体化してるみたい」

凛「だけどこれ……凄い旧型」

菜々「言われてみれば確かに……」



凛「これってまさか、『ハートタイム号』?」

菜々「ハート……タイム号……?」

凛「どこかから中に入れないのかな」

菜々「あ、こっちから入れそうですよ」


 ガチャーン

凛「やっぱりハートタイム号だ……資料映像で見たまんま」

菜々「物が散乱してます」

凛「しかもこの飛行船……システムが生きてる?」



菜々「! これって……うっ……!」

凛「菜々?! どうしたの、頭を抱えて」

菜々「ここから、出して貰えませんか……?」


凛「うん、分かった」

――

――


凛「どう、落ち着いた?」

菜々「……ええ、ありがとうございます。凛ちゃん」

凛「よかった……」

凛(でも、なにか雰囲気が……。ボーッと宇宙船を眺めて)

菜々「……」

凛「菜々?」


 ドンッ!

凛「! 扉が、そんな!」

ぴにゃこら太「ぴにゃー!」ぴにゃこら太「ぴにゃー!」ぴにゃこら太「ぴにゃー!」

菜々「凛ちゃん! 宇宙船の中に戻りましょう!」

凛「うん!」



凛「? 菜々も早く入って」

菜々「絶対に宇宙船から出ないでくださいね?」

凛「菜々?! 一体――」

 ガシュー


凛「そんな……! なんで菜々は外に?!」
 




凛「ダメだ、扉が開かない……外からロックされた?」


凛(なにを考えてるの、一体……)

凛「そうだ。システムが生きてるなら通信機能だって……コックピットに行けばみんなに連絡できるかも……」

凛「? この写真……これって、菜々?」

凛(もう一人は……だれか分からないけど……裏にサインが)



凛「『研究所前・菜々先輩とはぁと』?」




――


ぴにゃこら太「ぴにゃー!」ぴにゃこら太「ぴにゃー!」ぴにゃこら太「ぴにゃー!」

菜々「こっちですよー、みなさーん!」

菜々(このフロアなのは幸いでしたね……ここはたしか……)

菜々「パネルが……あった!」


 ピプポプ

菜々「これで……いけば!」


ぴにゃこら太「ぴにゃー!」ぴにゃこら太「ぴにゃー!」


――




 ピーピーピー!

友紀「? なに、この音」

時子「これは……?」

楓「警告音ね。どこかのエアロックが開いて空気が外に漏れ出してるんだわ」

美羽「えっ、ここは大丈夫なんですか?」

楓「安心して。ほら、エリアごとに隔離されている」


 ビー


楓「? 通信?」

乃々「ですけど……さっき調べた時は長距離通信は壊れてたんじゃ……」

楓「この番号はいったい……」


『みんな!?』

杏「その声……凛ちゃん?」

光「無事だったんだ!」

時子「貴方、今どこにいるの?」

凛『カクカクジカジカで……』

時子「宇宙船の中?」

美羽「なんでそんな所に。杏さんはなにか知ってますか?」

杏「杏は無関係かな」

凛『それで、ぴにゃこら太がやってきて……菜々がエアロックを開放したんだ……たぶん、ぴにゃこら太を宇宙に放りだすために……』


時子「待ちなさい、菜々はどうしたの」

凛『菜々は……宇宙船の外に……』

乃々「エアロックを解放したんなら……空気が……」

光「そんな……!」

友紀「うそでしょ、凛ちゃん!」

凛『……』

時子「答えなさい、凛!」

凛『……ごめ――』





『もう、そう怒らないでくださいよー時子さん』






「!?」

凛『えっ……その声……菜々!?』

美羽「無事だったんですかー!」

楓「無事だったのね……よかった」



菜々『ふっふっふ、ウサミン星人に不可能はありません!』

友紀「星人!? ってことは菜々さんもねこっぴーと同じ宇宙人!?」

美羽「ねこっぴーは野球の神様じゃなかったでしたっけ?」

光「今度は宇宙人か……!」ゴクリ


時子「今さら宇宙人が出てきても驚きはしないけど……」ハア

菜々『ちょっと、真に受けないでくださいよー。プンプン』


光「なんだ、違うのか?」シュン

美羽(ガッカリしてる)


凛『宇宙人じゃないなら、なんで無事なの?』




菜々『詳しいことは後で話しますけど……私はですね、実はアンドロイドなんです!』

――




菜々「どうも、御迎えに来ていただいてありがとうございます!」

凛「助かったよ、みんな」

時子「そんな挨拶はあとでいいわ」

菜々「あれれ~怒ってますか時子さん? も~短期なんですから~」

 ビシン!

菜々「痛い!」

時子「痛いわけないでしょ。アンドロイドなんだから」



菜々「そうですけどー、精密機械なんですから大事に扱ってくださいよ」エヘヘー

友紀「なんで嬉しそうなの」

美羽「そういう趣味なんですか?」

杏「お楽しみは後にしてくれない?」


菜々「趣味じゃないんですけど……まあいいです、それより時子さん、これに見覚えは?」

時子「この宇宙船? ええ、あるわ」

楓「私もありあます。確か過去の映像資料で……」

時子「過去ですって?」


菜々「そう、楓さんの言うとおり。この宇宙船は今から二百年前に製造された宇宙船なんです」





友紀「二百年も前の……」

美羽「でも、その割に綺麗ですよね」

乃々「新品みたいにぴかぴかです……」

菜々「おそらく、これ自体は二百年の時間は経過していないだと思います」

光「二百年前のものなのに?」

菜々「あくまで推測ですが、この宇宙船は別の時空に隔離されていたんです。それがなんらかの影響でこちら側に戻ってきた。擬似的なタイムワープですね」

杏「タイムワープ」

菜々「この宇宙船が行方不明になった当時もその可能性は議論されました。ただ、それを確かめる術はなかったんです」



凛「ちょ、ちょっと待って。これ、二百年近く前のなら、あの写真は?」

友紀「写真って?」

凛「宇宙船の中にあったんだ。菜々の映った写真が」

菜々「やだ、そんなのあったんですかー。嬉しいですね」

乃々「二百年前の宇宙船から出てきた写真に写ってたってことは」

友紀「え、待って。菜々さん何歳?」



菜々「私はですね。この宇宙船が飛び立つ七年前に生まれました。だから今は、二百七歳ですね!」


光「二百七歳!?」





杏「そんな前の人なの? 杏が言うのもなんだけどさ」

時子「そんなに古いアンドロイドのくせに、よく型落ちしてないわね」

菜々「そんなことないですよ、型落ちしまくりですって! もう体中ガタきまくりですしー! 腰だってもうボロボロですよー」



楓「……だから今は、私たち研究者の寮で働いてるのよね」

菜々「おっ、楓さんは思い出したんですね!」

楓「ええ。いつもお世話になってるのに、忘れててゴメンなさい」

菜々「いえいえ。仕方ないです。ナナも忘れてたんですから!」

美羽「研究者寮で働いてるから、生徒の凛さん達は知らなかったんですね」

友紀「でもなら、なんでここに? 出張のお世話?」


菜々「いやー、実を言うと私ですね、ここに忍び込んで来たんですよ、ススッと!」

杏「忍び込んだ?」

菜々「会いたかった人がいるんです。二人」


菜々「二百年前、このハートタイム号で地球を旅立ち……行方不明になった……」

菜々「一人には、こうして会えました」


凛「それって……まさか」


菜々「はい。二百年ぶりですね……時子さん」




時子「二百年……私が?」

杏「うっそー……」

凛「そうだ、思い出した……なんで時子さんの顔に見覚えがあったか。
  資料で見たんだ。昔、あの実験で行方不明になったハートタイム号の乗組員だって」


友紀「あの実験?」

凛「それは……」


菜々「私は時子さんと……はぁとさんに会いたかったんです」


時子「はぁと……シュガーハート……ウっ!」グッ


光「時子さん、大丈夫?」

菜々「そうですね……全ては二百年前の計画を発端なんです。
   はぁとさんと時子さんが参加した、『プロジェクト・レヴェル・スカルプ』」


美羽「プロジェクト?」

友紀「レヴェル・スカルプ?」



時子「反逆の頭皮計画よ……」





時子「一定の周期で宇宙に発生する『亀裂』を利用して、次元そのものに介入しハゲという存在を消滅させる計画だったわ……」

楓「時子さん、思い出したんですか」

時子「ええ……全部ね。そのポンコツアンドロイドのお陰で」


菜々「懐かしい呼び名です。そう呼んでくれるのは、最後に会った時以来ですね」



――



モバP(以下P)『我々はとうとうこの瞬間までやってきた。偉大なる歴史の瞬間へ。そもそも――』



時子(相変わらず長いわね。誰よ、あの豚に乾杯の音頭をとらせるなんて)

心『ダラダラ喋るわよねー。だからハゲなんだっつの♪』

時子『あら、佐藤』


佐藤心http://i.imgur.com/nMWABmv.jpg




心『はぁとって呼べって言ってんだろ、時子☆』

時子『分かったわよ、ハート』

心『はぁとだぞ♪』

時子『どっちでもいいでしょ佐藤』

心「戻ってんぞてめえ☆」


菜々『お二人ともー』

心『あら、菜々先輩じゃーん』

菜々『せ、先輩だなんて。私は研究のお手伝いをするアンドロイドなんですから』

時子『そうよ、敬称をつける理由はないわ。私たちの格が下がるわ』

心『でもあたしたちより前からここにいんじゃん。じゃあ先輩じゃね?』

時子『ハア……好きにしなさい』

菜々『でも、とうとうここまでやってきましたね』

心『だね。反逆の頭皮計画……ハゲを消滅させるために次元改変を行うとか、無駄ビックスケールって感じ』

菜々『一度は挫折しかけた計画でしたけど、それを見事に立て直したお二人。いやー、お見事です!』

時子『当然でしょ? あたしを誰だと思ってるの』

菜々『我らがベルベットクイーン、財前時子さまです!』

時子『分かってるじゃない』フンッ





心『目的はともかく……やることに興味があったから手伝ったけどねー』

時子『? どうかしたの佐藤』

菜々『なにかボーっとしてますけど』

心『……時子、気にならない?』

時子『なにが』


心『いくらハゲが悪化したからって次元の改編とか、大規模過ぎね?』

時子『あの豚が常日頃ハゲを気にしてるのは事実じゃない。鏡の前で何時間も……まさに惨めな豚よ』

菜々『仕方ないんです……鏡の前で小じわとかシミとか細かい変化を気にしてしまうのは人間のサガなんです』ウンウン

時子『貴方アンドロイドでしょ?』

心『……だけどね~』


時子『まだ気にするの。貴方こそハゲるわよ佐藤』

心『黙れよ♪』



菜々『まあまあ、お二人とも。宇宙に上がっても喧嘩はやめてくださいよ?』

心『そしたら先輩が仲裁してよね♪』

時子『菜々は連れてかないでしょ』


心『あり、そだっけ』

菜々『そうですよー。ナナは二人が帰ってくるのをずっと待ってますから!』



時子『そうね。貴方が壊れる前には帰ってくるわよ、ポンコツアンドロイド』


――


菜々「だけど、二人は帰ってきませんでした。宇宙船は消滅。多大な被害を出した計画は中止にされ、闇に葬られました」


美羽「そんなことが……」

菜々「教えてください、あの時なにがあったかを。そしてはぁとさんがいない理由を」

時子「……途中までは問題がなかったわ。だけど、亀裂の発生地点まで行った時、現れたのよ、あれが」

光「あれ?」



時子「ぴにゃこら太よ」

友紀「ぴにゃこら太が!?」

凛「二百年前にも現れたの、あれ」


時子「ええ、隊員たちが次々に襲われたわ……そして、佐藤も」

―――
――


 ビシン!
ピニャー!

……

ピニャー……ピニャー……

時子『クッ、イライラする。いくらやっても埒が明かないわね!』

 ズギャーン!


心『あたしもいい加減、はぁとアタックに疲れてきたわ』

時子『そのチェーンソー振り回すのに?』

心『物理的はぁとアタックだよ。乙女はチェーンソー振りまわさねえんだよ☆』


 ピニャー  ピニャー


時子『く、またやってきた』


心『……もしかしたら、なんとかできッかも』


時子『なら早くやりなさい!』

心『……ちょっとここ、頼むぜ時子♪』

時子『ちょっと、佐藤どこ行くの?!』

時子(あいつ、宇宙船の方に……まさか逃げる気? でもハートに限ってそんな)


 ピニャー ピニャー ピニャー

時子『……いいじゃない、信じてあげるわ!』


――

 ピニャー ピニャー ピニャー
 ピニャー ピニャー ピニャー ピニャー 

時子『クソっ、これ以上は……』ビシン!

 ピカー……!!

時子『! 宇宙船から光が……』

時子(これは……一体?!)


―――
――

――


時子「それが私の覚えてる最後よ。気が付いたらここにいたわ」

菜々「そんなことがあったんですね……」

凛「でも、宇宙船の中には誰もいなかったよ。はぁとって人も」

時子「私とハートタイム号だけがここにやってきた……。残念だったわね、佐藤に会えなくて」


菜々「ポンコツになる前に時子さんには会えたんです! ならはぁとさんにだってきっと会えますよ!」

時子「そうね」フッ



時子「さあ、私は話したわよ。次はそっちの番じゃないかしら?」

凛「……」

時子「教えなさい。瑞樹がなにをやろうとしたか」


楓「凛ちゃん、お願いします」

菜々「なんなら、私が話しましょうか。立ち聞きした範囲ですけど……」

凛「大丈夫……私が言うよ。瑞樹さんの計画。PRAの全貌を」

友紀「PRA?」

凛「正式名称『プロジェクト・レヴェル・エイジング』。
  プロジェクト・レヴェル・スカルプのアップデート版なんだ」


時子「あの計画の?」




美羽「うえっとー……つまり、どういうことなんですか?」

凛「瑞樹さんは、一定年齢で人の皮膚の細胞老化を極端に抑制することを望んだの」


楓「若い姿のままでいられるということですね、永遠に」

杏「皮膚だけ? 内臓とかには応用しないで? 不老不死ってわけでじゃないの」



凛「瑞樹さんは死に関しては肯定的だったから。求めたのは永遠のぷるつや美肌だけ……」

友紀「つまり死ぬのはいいけど、老けたくはないってこと?」

乃々「逆に、凄いわがままですね……」



美羽「ちょっと待ってください。さも当たり前に話が進んでますけど……そもそも、そんなことできるんですか?」

時子「ええ……可能のはずよ。私たちが行おうとしていた計画と変わらないなら。あの計画を利用すれば、どんなことだってね」


杏「私や時子さんがここにいることは、十分説得力になるんじゃない?」



光「確かにそうかも……でも、それならきらりさんを持ち出した理由は?」

凛「なにもかもが昔のままじゃない。瑞樹さんは時子さんとはぁとさんの計画に修正を加えたの」

時子「アァ? 私たちの計画に?」


凛「時子さん達の計画は、この宇宙に起きる亀裂からのエネルギーを利用するだけだった。でも、それと同種のエネルギーをこちらからも加えてエネルギーを安定させようとしたの」

楓「……そういうことですか」

友紀「どういうこと?」


乃々「ガラスの靴計画の……エネルギーですか……?」


楓「ええ、ガラスの靴計画のエネルギーは、MCを使ってるのは話したわよね。
  亀裂から発生するエネルギーとMCエネルギーは、性質が限りなく近いと言われているわ」


光「初期のガラスの靴計画は、安定性よりもいかにエネルギーを注入するかに重点を置いてたって、聞いたことがある!」


杏「おかげであたしは消滅して、きらりも暴走したわけか」


楓「でもきらりさんの中には、大量のMCエネルギーが残り続けていた……」



凛「ごめん杏。瑞樹さんが持ち出した箱の中身が人だなんて知らなかったんだ……」

杏「いいって、普通は人を入れてるなんて思わないだろうし」





美羽「えっと、待ってください? その実験をするために、ここまできたんですよね」

凛「うん、この近くで亀裂が発生してるはずだよ」

美羽「なら、実験の影響で、私たちの記憶はなくなったんですか?」


時子「おそらくね」



友紀「でも、たぶん成功はしてないのかも……」

菜々「どうしてそう思うんですか?」

友紀「理由はないけど……なんとなくさ」



楓「そもそも、なんで瑞樹さんがそんな計画を……」

乃々「なにか気になるんですか?」




楓「タイムゴーズバイ、時の過ぎゆくままに」

凛「それって、瑞樹さんがよく口にしてた」


楓「凛ちゃんも聞いたことがあるのね。たしかに瑞樹さんは美容には常に気をつけていたわ。
  研究所の専任研究員をやめたのも、国に関わる研究より、美容の研究をやるため……
  でも、瑞樹さんは歳をとることを楽しんでもいた。
  次元を歪めてまで若さを保とうとするのは、彼女の考えとはいるようにも感じて……」


時子「……佐藤も似たようなことを言ってたわ。計画を立てた豚はハゲを気にしていたけど、そこまでやるのかって」

友紀「自分の目的のために、ちょっとおかしくなっても変じゃない気がするけどなー」

楓「そう、ですけど……」ウーン

乃々「あのー……ともかくここが危険なのは間違いないですし……いっそ放棄しちゃうのが得策じゃないですか……? 残ってても仕方ないですし……」


凛「そうだよ! そのためにはまず卯月を助けにいかなきゃ」


時子「……そのことだけどね、凛。あの子は諦めなさい」

凛「な……」

友紀「えっ」





時子「きっともう遅いわ」

楓「時子さん? それはどういうこと。卯月ちゃんを見捨てるの?」


時子「ぴにゃこら太はなんらかの力でこの世界に現れるわ。でもそのままだと直ぐに消えるのよ」

杏「消えるどころか滅茶苦茶ふえてんじゃん」

時子「そのままだとね。だから、まずは通り道を作るのよ。自分たちがこちらに来るための。そこから本隊がやってくる」


光「その通り道は、どうやって作るんだ?」



乃々「アッ……卯月さん、噛みつかれた……」

凛「まさか……」

時子「そう、おそらく卯月は奴らのゲートにされてるわ」


友紀「そんなことって……」

凛「嘘だ! そんなはずない。そんな……」

時子「事実よ。私たちも見たわ。あの豚も……ああなったらどうすることも出来ない」





凛「なにか助ける方法はないの!?」

時子「さあ、それは分からないわ。ただ、それを探す時間もない。悩んでいるうちにもどんどんぴにゃこら太が現れてることはだけは事実よ」


乃々「あの……」

楓「じゃあ、時子さんは卯月をどうするつもり?」

時子「さっき菜々がやったみたいに、宇宙空間に放り出すのが最善じゃないかしら」

凛「あんた、よくもそんなことを!」

乃々「あのう……」

時子「あら、なにを掴みかかってくれてるのかしら?」

凛「誤魔化さないで!」

美羽「ちょっと、二人とも落ち着いてください!」




乃々「あの!」

時子・凛「「ッ?!」」ビクッ


友紀「の、乃々ちゃん? どうしたの大声出して」


乃々「もしかしたらですけど……なんとか出来るかもしれません」

時子「なに?」

凛「本当なの……乃々」

乃々「た、たぶんですよ? ゼロではないと、いうか……」

時子「曖昧にいわないでくれる?」

乃々「あ、あ、あの……!?」

菜々「時子さーん?」

時子「聞いただけじゃないの……まったく」



光「そっか、乃々の力ならなんとかなるかも」

美羽「力って、なんでしたっけ?」

楓「乃々ちゃんはMCによって発生した力や現象を封じる能力を持っているの。もし、ぴにゃこら太の発生がシンデレラと同じ、MCが関わっているなら……」

凛「卯月を助けられるって、こと……?」

乃々「たぶん……ですけど」




友紀「ん? ちょっと待って」


美羽「どうかしたんですか」

友紀「卯月ちゃんはぴにゃこら太の発生源になってるんだよね」

美羽「ですね」

友紀「で、卯月ちゃんを助けたい」

美羽「はい」



友紀「となると……このぴにゃこら太の発生源に突っ込まなきゃ駄目だよね」


杏「ワーオ……」



菜々「一応聞きたいんですけど、クマ除けの鈴みたいに、なにかぴにゃこら太除けみたいなのがあったりとかはー……」


時子「知ってたら苦労しないわよ」

菜々「ですよねー」



乃々「それに。本当にできるかもわかりませんし……」

楓「中心まで行って、封じることができなかったら……ぴにゃこら太の巣で立ち往生ね」

杏「ちょーハイリスクってことだ」



光「それでも……卯月さんを助けたいんだよな。凛さん」

凛「……うん」



友紀「じゃあ、やるしかないね!」

凛「友紀……」

時子「ふふっ、いいじゃない。あんなのにやられっぱなしなのは気に食わないからね」

凛「時子さん……」


乃々「怖いですけど……言い出しっぺですし……もりくぼも、やってみるんですけど」

光「もちろん、アタシだって!」

凛「乃々に光……」


楓「助けたい想いは、みんな一緒ですから」

菜々「ナナたちは戦えませんけど、できる限りサポートしますよ!」

美羽「助けに行くのに『たすーけ』つをとるまでもありませんよ。たすーけつ!」


杏「あははは」

美羽「乾いた笑い!」



凛「みんな……」ウルッ



友紀「もー、泣かないでよ」

凛「な、泣いてないよ!」


楓「涙は、卯月ちゃんを助けた時までとっておきましょう。その時に泣く分が、『なく』、なっちゃいますよ?」

美羽「うまい……!」


友紀「うまいかな?」

光「さあ、行くぞ!凛さんを助ける為に!」


――
―――


きらり「……」ニョワー

「…らり……」

きらり「ニョワ?」

「きらりよ……で……」

きらり「ニョ、ニョ、ニョワー……!?」


――
―――



―――
――

友紀「この扉の先が卯月ちゃんのいるフロアなんだね」

時子「ええ、らしいわね」

楓『さっき菜々さんがエアロックを開けた時にロックされたままですから』

光「楓さん」

楓『通信機の調子もいいみたいですね』



乃々「杏さんが見つけた扉の向こうが、技術研究室だったとは……」

杏『凛がパスワードを思い出してくれて助かったよ。お陰で通信機も見つけられたし』

乃々「私としては、そちら側に居たかったですけど……」

凛『みんな、任せる形になってゴメン』

乃々「あ……いえ……そういう訳では……」

時子「気にしないで、凛が来ても足手まといだから。そこで大人しく待ってなさい」


菜々「今のは時子さんなりに気をつかってる言葉ですから!」

時子「叩かれたいのかしら?」ギロリ

菜々「い、いえー」





杏『ダメだよ。菜々さん叩いて壊れちゃったら、レーダーが見えなくなっちゃうから』

友紀「なんだっけ。聴覚機能の感度を上げて、ソナーみたいにしてるんだっけ?」

―――
――

友紀『あたしたちの場所、ちゃんと見えてるのー?』

美羽「ばっちしです!丸い点が5つ写ってますよ!」

光『菜々さんは凄いな!』


菜々『いえいえ……むしろ即座にやった楓さんと凛ちゃんですよ』

凛「それぐらいしか出来ないから……」

楓「素材は技術研究室のなかにありましたし……それに、瑞樹さんの研究資料も」


乃々『そこからなにか、新しいことが分かりそうなのですか?』

楓「どうかしら、そうだと嬉しいけど……」


―――
――

時子「ソナー機能はわかったんだけど……そのうさぎの耳はなんなの?」

菜々「ソナー用の耳です!」ウッサミーン!

楓『普通の聴覚機能を強化したら、会話することができなくなりますから。追加したんです』

乃々「耳が4つあるってことですよね……」

菜々「アンドロイドですから!問題ありませんよ」エッヘン!



友紀「姿が変わったと言えば、乃々ちゃんも服、変わってるよね」

乃々「力を使うには、この姿じゃないといけませんので……」


http://i.imgur.com/dAiwXay.jpg


友紀「光ちゃんみたいに名乗ったりしないの?」

乃々「あんなの……もりくぼには無理ですー。あんなことやったら、恥ずかしさで机の裏に隠れたくなってしまいますー……」


光「なんでさ!かっこいいじゃないか! 気合も入るぞ!」

乃々「むーりぃー……私はおどおど狩人に過ぎませんから……」

時子「くだらないこと言ってないで、早く行くわよ。時間がもったいないわ」



美羽『あの!』

友紀「? 美羽ちゃん?」

美羽『その……皆さん……気をつけてくださいね!』


友紀「うん!ゆっくり待っててよ。野球中継が始まる前には終わせるから!」




菜々「さあ、扉を開けますよ!」



ウィーン……

ピニャー
ピニャーピニャー

菜々「うえ?」

光「どうしたんだ、菜々さん」

時子「貴方、もう中の様子がわかるんでしょ」



美羽『うにゃ!?』

杏『これって』

凛『うそ……でしょ?』


乃々「ええぇ……あの、ちょっとどうしたんですか? 全然分からないんですけど」

友紀「ねえ、どれくらいいるの?」


楓『どれくらいと……言われても』

時子「?数が分からなの? 壊れてるのポンコツ?」


菜々「壊れてるん……でしょうね、きっとそうです……!?」


光「目で確かめればいいのさ。ほら、扉が開ききる――」


ピニャー

乃々「な」

ピニャーピニャー

ピニャーピニャーピニャー

時子「に」

ピニャーピニャーピニャーピニャーピニャー
ピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャー

光「こ」

ピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャー
ピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャー

友紀「れ」
ピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニ




友紀「なにこれ!?!?!?」ピニャーピニャー





光「つ、通路いっぱいにぴにゃこら太が?!?!?」

時子「通路いっぱいどころじゃないわよ。天井までギュウギュウ詰めじゃない!?」


乃々「まるでコーンの缶詰みたいですー……むーりぃー……」

菜々「こ、これは一体どうすれば……」



ぴにゃこら太「ぴにゃ?」

ぴにゃこら太「ぴにゃ?」

ぴにゃこら太「ぴにゃ?」ぴにゃこら太「ぴにゃ?」

ぴにゃこら太「ぴにゃ?」ぴにゃこら太「ぴにゃ?」ぴにゃこら太「ぴにゃ?」ぴにゃこら太「ぴにゃ?」



乃々「あのー……こっち見てるんですけど……」

時子「いいじゃない……覚悟をおし、ブタどもが」ビシン!

光「そ、そうだな。やるしかない……」ジャン

友紀「スペースバッティングセンターだね」ブンブン


乃々「もう……むーりぃー……」チャキ


ぴにゃこら太「ぴ」

ぴにゃこら太「ぴ」ぴにゃこら太「ぴ」

ぴにゃこら太「ぴ」ぴにゃこら太「ぴ」ぴにゃこら太「ぴ」ぴにゃこら太「ぴ」ぴにゃこら太「ぴ」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぴにゃー!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

菜々「来ますよ!」


友紀「チームユッキー、行っくよー!!!」

時子「ちょっとなによそれ!?」


光「ヒーロー戦隊ヒカレンジャーはどうだ!」

時子「貴方もふざけない!」


乃々「乃々と愉快なもりくぼたち……」

時子「乃々しかいないじゃない!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぴにゃー!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


時子「ええい、行くわよ豚ども! 女王の賛美歌を奏でなさい!」


―――
――

美羽「始まったみたいですね……」

杏「数やばすぎない? 緑色の点が雪崩みたいに襲いかかってるんだけど……」


凛「ッ!」ダッ

美羽「あれ、凛さんモニター観なくていいんですか!?」

凛「それより瑞樹さんの資料をみなきゃ。この状況をどうにかできるヒントがあるかも」

楓「凛ちゃん、私にも半分ちょうだい。一緒に探しましょう」

凛「……うん、お願い」


美羽「わ、私もなにか手伝えないかな?」アタフタ

杏「向こうは二人に任せた方がいいでしょ。杏たちじゃ邪魔になるだけだって」

美羽「ですよね……」ショボーン

杏「もう、元気だしなって。美羽はいるだけで、友紀さんたちの力にもなるよ」

美羽「そうですか……?」

杏「そうそう」


美羽(でも……ユッキーさんや、時子さん達はもちろんだけど、凛さんや楓さんも……杏ちゃんもこんな状況でも落ち着いてるし……)

美羽(私もなにかしたいけど……なにもできないなんて……もどかしいよ……)



杏「っていうか、さっきから凄い勢いで緑色の点が吹き飛んでってるんだけど」

美羽「うえ?」



―――
――

友紀「とーりゃあああああ! 神主打法!」

カッキーン

ぴにゃこら太「ぴにゃー!!」ズドーン!

光「凄いな友紀さん。アタシも負けられない!」


光「でえええい!!」ズドーン!

時子「この、っ豚ども。いい鳴き声を響かせなさい!」ピシンピシン!

ぴにゃこら太「ぴ、ぴにゃー//////」


乃々「この数は……むーりぃー」パンパン

ぴにゃこら太「ぴっ!」ぴにゃこら太「にゃっ!」

菜々「みなさーん頑張ってくださーい! ナナはここで応援してますよー!」


杏『なんか思ったより調子よさげだね』

時子「こんな豚どもに私が跪くと思ったの?」


菜々「の割に息切れてません?」

時子「アァア?」ギロリ

菜々「ひいぃぃ!?」



友紀「一匹一匹は対処できるけど、やっぱり数が多いよ……」

光「いま、どれぐらいまで進んでるんだ?」


美羽『えっとですね……』

杏『四分の一ってところかな』


乃々「まだそれぐらいなんですか……私としては十分頑張ったと思うんのでもう帰ってもいいでしょうか……」

光「駄目に、決まってるだろー!」バンッ

ぴにゃこら太「ぴにゃー!」

友紀「っていうか、背中を見せる余裕もない感じなんだけどっ……!」カキーン ピニャー


乃々「乃々は後方なので、いくらか余裕が」パンパン 


時子「逃げてみなさい……次会った時はただじゃおかないわよ」ピシンバシン! ピニャー////


乃々「ひいぃぃ! ごめんなさいー!」

菜々「時子さん。威嚇するのはぴにゃこら太だけにしてくださいよ!」


時子「黙りなさい菜々!」ピシン!


光「うわ!? こっちに鞭を向けないでくれ」


時子「手が滑ったのよ、菜々に文句を言って頂戴!」






菜々「ナナのせいですか?!」


菜々「って、時子さん右から!」

時子「な、しまっ――」


ぴにゃこら太「ぴにゃー」

 カッキーン!


時子「友紀……助かったわ」


友紀「余所見しないでよみんな」

光「ごめんなさい」



美羽『そ、そうですよ。集中しなきゃ! しゅーっとちゅーっと!』


乃々「ちゅーっとってなんですか?」

美羽『い、いいのそこは!』


時子「ハア……気が抜けるわね……」


友紀「でも、肩の力を抜くのは大事だからね。どんな時でも平常心で……」スッ


友紀「一点集中!」カキーン!


ぴにゃこら太「ぴにゃー」

乃々「もりくぼは……クールに撃ちます」パンパン

光「頭は冷静で……ハートにパッションだ!」デヤー!




―――
――

杏「そこを右に行って! 後ろも気をつけてね」

美羽「いいですよ、もう少しです!」

友紀『まっかせてよー!』

光『背後は任せた、時子さん!』

時子『ふん、私に命令? 面白いわ。やってろうじゃない! 菜々、そこ危ないわよ!』

菜々『ひいいい!』


乃々『もりくぼも避難です……逃げるわけではないので、非難はしないでください』



凛「なんとかなりそうなの?」

杏「凛ちゃん。そっちはどうなの?」

凛「ヒントになりそうなのはあるけど、まだ」

楓「……」モクモク

美羽(すごい集中してる)

杏「でも、ぴにゃこら太もだいぶ減ってるし。この調子ならいけるかも」


凛「それだったらいいけど……みんな、頑張って」

美羽(うまくいってるんだけど……なんだろう、胸騒ぎが……気のせいだよね?)




楓「杏ちゃん、ちょっといいかしら」チョイチョイ

杏「? どうしたの楓さん」

凛「みんな! 地図通りなら、この先に医務室が……」


光『見えてきた、あれだな!』



―――
――

―――
――

乃々「あの、こんな所で申し訳ないのですけど……もりくぼはちょっと休ませてもらっていいですか……」

友紀「ええ! どーして!?」

乃々「卯月さんに力を使うことを考えると、余裕が欲しいです」


時子「ちっ、仕方がないわね。……ッ!」フラッ

菜々「時子さん!?」


光「大丈夫か!」

時子「ええ、少し疲れただけよ」

友紀「だいぶやってるもんね……中継ぎに託したいけど、うちのチームはノーリリーフ……あたし達で完封狙うしかないし」


光「もう少しなんだ、心から支えるように、お腹に力を込めて!」



菜々「あの開いている扉の向こうが……卯月さんのいる医務室です」

時子「中はどうなってるの」


菜々「入口が満員電車みたいですね……中身の様子は分かりませんし」


友紀「どんどん出てくるね」ピニャーピニャー


凛『みんな、お願い……卯月を助けて!』 


時子「言われなくても分かってるわよっ」ビシン!





光「いくぞー! でりゃああああ!!!」ドコーン

ピニャー!

時子「こじ開けてやるわ!」ピシンピシン

ピニャ////ピニャ////ピニャ////ピニャ////


友紀「ほら、行くよ!」

乃々「は、はい~」


菜々「友紀さん、前!」

 ピニャー!

友紀「! でやあー!」

ぴにゃこら太「ぴにゃー!」ぴにゃこら太「ぴにゃー!」

光「もう……少しだ!」

菜々「で、でも中に入ろうにも隙間が……」


友紀「入れないなら、入口をもっと大きくすればいいんだよ!」ブンッ!
 ドカーン!

菜々「ちょっと、壁壊さないでくださいよ、ステーションが……!」


ピニャーピニャーピニャーピニャーピニャー
ピニャーピニャーピニャーピニャー



乃々「ひいいい、壊れた壁の部分から大量のぴにゃこら太が……!?」


光「とう! っでもこれで……中に!!」ピニャー! 

時子「でかしたわ。友紀!」

乃々「なんかもうやりたい放題ですね……」



友紀「はああぁぁ!」カキーンカキーンカキーン

時子「ハアハア……やっと見えてきた」

光「卯月さん……」

凛『卯月が見えたの!? 無事なの卯月は!?』


菜々「でもなにかボーっとしてて。ベッドの上で背中を丸めて座ってて」

乃々「背中から……ぴにゃこら太が……まるで卯月さんというキグルミを脱ぐかのように次々と……」



卯月「……」ピニャーピニャーピニャー



友紀「でも、ここまで来たら!」


時子「乃々!」


乃々「はい……! クールに、行き――」


    ドッカーン!!!!

「「「「「!?」」」」」



友紀「壁が爆発した!?!?」

菜々「ぴにゃこら太にこんな力ありましたっけ?!」

光「……違う、ぴにゃこら太じゃない!」




きらり「ニョ……ニョワー!」




杏『その声……きらり!?』

時子「よりによって、このタイミングで!?」

きらり「キョワワワワワー!」ドーン


乃々「うわ……!?」

友紀「乃々ちゃん!」

光「ええい、きらりさん……!」



美羽『!?!? ぴにゃこら太の出る数増えてません!?』

ピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャーピニャー


時子「これは……いったい!?」


きらり「ニョワー!」

光「うわっ!」

菜々「時子さん、光ちゃん……」


ぴにゃこら太「ぴにゃー!!!」

友紀「!?」



―――
――

美羽「ユッキーさん!?」


楓「どうしたの、いったい」

凛「分からない。ただ、どんどん」

美羽「みなさん、返事してください……みなさん!」



『……』ザー



杏「嘘でしょ……」

凛「私が……みんなにお願いしたせいで……」

楓「落ち着いて凛ちゃん。今は状況をどうにかすることを考えないと」



美羽「そんな……そんな……」


杏「美羽……」

楓「? 美羽ちゃん」


美羽「……あ」

杏「?! これって……!?」






美羽「いやああああぁぁぁ!!」







凛「この眩しいのは、いったいなんなの!?」


楓「まさか……!?!?」

杏「美羽!」



―――
――


乃々「なんなんですかなんなのですかー!?」


光「な、なにこれ?」



時子「これは、あの時の……!?」




菜々「時子さん?」



友紀「輝きがどんどん強く………!!!!」


―――
――


―――
――


友紀「……はっ」


友紀「ここは……?」

友紀(地面もないし……いろいろ飛んでるけど……ステーションの破片?)


友紀「でも宇宙じゃないよね……」



友紀「ん……人影が……あれって美羽ちゃん!」

美羽「……」


友紀「よかったー無事だったんだー安心したよ」



美羽「……気安く」

友紀「?」

美羽「気安く呼ぶでない!」ボオッ!



友紀「きゃっ!? いきなり火が……」


美羽「私を誰だと思っているのだ!」 





美羽「天魔降臨、矢口美羽であるぞ!」

http://i.imgur.com/gnnt4GL.jpg








友紀「えっと、どういうこと!?」


「気をつけるのだ、友紀よ!」


友紀「この声……誰だっけ?」


ねこっぴー「私だよ友紀」

友紀「ねこっぴー!?」

ねこっぴー「大変だったな友紀。だがもう大丈夫だ」

友紀「なにがどうなってるの?」


ねこっぴー「美羽ちゃんの力が暴走したのだよ」

友紀「暴走?」

ねこっぴー「私はずっと監視をしていたから知っているのだ。美羽ちゃんも光ちゃんや乃々ちゃんと同じ、ガラスの靴計画の一員なのだ」


友紀「美羽ちゃんも……シンデレラの一人ってこと!?」



ねこっぴー「そうだ。だが彼女はシンデレラの中でも特に力が強くてね……君達のピンチに、力が暴走したのだろう」


友紀「この世界は……美羽ちゃんはどうなるの?」


ねこっぴー「安心したまえ、私がどうにかする。神様なのだからな。ただ、力を使うのに時間がかかる。それまで私を守って居てくれ」


友紀「でも、火は広がってるし……」


ねこっぴー「ジッと我慢していくれ。近づくのも危ない」

友紀「わ、分かった――」



??「騙されちゃダメよ、友紀ちゃん!」


ねこっぴー「!?」



友紀「その声……瑞樹さん!」

瑞樹「はあい、元気だったかしら?」




ねこっぴー「貴様、なぜ、ハピハピにされていたのでは……」


杏「それはねー、楓さんと凛ちゃんのお陰だよ」

友紀「杏ちゃん、それにみんなも!」

楓「いえ、私は瑞樹さんの資料を調べただけです。
  瑞樹さんは詳しい情報を残していました。
  切れ目から漏れだすMCエネルギー。
  そしてその力を制御するために、初代シンデレラクラスのエネルギーが必要だと」

友紀「だけど、きらりちゃんは暴走したのに……」



光「初代シンデレラは、きらりさんだけじゃないさ!」

ねこっぴー「まさか……」


杏「そいうこと。力はなくなってなかったみでねー。万が一が発生したら、杏の力を利用すればうまくいくんじゃないかって、楓さん達と」


凛「それが成功したんだ。力をコントロールできた杏が私たち全員を救ってくれた」

卯月「はい!」


友紀「卯月ちゃん! 無事だったんだ!」

卯月「ご迷惑をおかけしました。皆さん!」


???「瑞樹さんや卯月ちゃんだけじゃないよ☆」


友紀「え、君も……?」


きらり「きらりだよー☆」



きらり「はじめまして、でいいかなー? 本当に、迷惑をかけてごめんね……」

時子「まったく、苦労させられたわ」

菜々「とーきーこーさーん?」


時子「事実を述べただけよ……苦労はしたけど、非があるかどうかは別問題でしょ」



瑞樹「そう、きらりちゃんのせいじゃないわよ。むしろ悪いのは」

光「お前だな、ねこっぴー!」


友紀「!? どういうこと?」

乃々「友紀さんは、まだ思い出さないですか……?」

楓「全部は貴方が仕組んだことなんですね、ねこっぴーさん」


ねこっぴー「……ふふっ」


友紀「ねこっ……ぴー……?」




ねこっぴー「ハハハハッ。ばれてしまっては仕方がない!」





友紀「そんな……」

ねこっぴー「そうだ、すべては私が仕組んだことだったのだ。私の力を取り戻すために!」

友紀「取り戻すって。ねこっぴーって野球の神様だったんじゃ?」

ねこっぴー「そうだ。それは間違いない。
      だが、かつてはより高い神格を持っていたのだ。
      なにせ、神々の遊びである野球を生み出しのだからな!」


友紀「神様たちも野球やってたの!?」


杏「えーうそでしょ?」

ねこっぴー「時に選手としてグラウンドに立ち、時にビール片手に観戦した。
      この世界を作ることにしたもの、観戦しながら決めたことだ」


凛「そんな決め方!?」

楓「神様のビール……興味ありますね」

瑞樹「ちょっとー、楓ちゃん?」







ねこっぴー「この世界を作った時私は願った。新たに生まれる者たちにも野球を教えようと。
      ところが、そうはいかなかった。神々は反対したのだ。特に最高神がな」


    『全ては、その世界の流れに任せるべきである』


ねこっぴー「私は反発した。『我々が作る世界だ。我々と同じ遊びを興じさせてなにが悪い』。それで戦いとなった」



ねこっぴー「私は負けたのだ。4-5でな」

菜々「そこでも野球だったんですね」


ねこっぴー「大事なところでうちのチームがバント処理に焦って送球エラーさ。
      皆は潔く認めたが私は認められなかった。
      そして審判に抗議しにいって罵詈雑言を投げつけた結果、消滅させられた。
      退場処分という訳だ」


友紀「ねこっぴー……」

ねこっぴー「第一あんな場面でバントするなんてセコイじゃないか。私にエラーが付くのは納得いかないぞ」


友紀「バント処理は落ち着かなきゃ」



ねこっぴー「ともかく私は一度消滅したのだ……」

時子「そのまま消滅しててくれればよかったのに」

卯月「どうして蘇ったんですか?」


ねこっぴー「それは君たち人間のお陰だ。知的生命体は、やはり野球に恋い焦がれるのだ!
      私が授けぬとも、人々は野球を作り出し、彼らの声援が私を蘇らせた。ところがだ!」

ねこっぴー「この世界には野球だけではなくなった。
      サッカー、バスケ。テニスにゴルフに卓球バレー
      ハンドボールラグビーアメリカンフットボールクリケット、エトセトラ!
      様々な球技が生まれていた。絶望したよ」


ねこっぴー「こんなことがあっていいのか。
      だから私は願った。野球だけの世界を作りなおすと!
      そんな時だよ。人間どもがこの計画を立てているのを知ったのさ。それを利用させてもらった」



きらり「嘘をいわないでほしいに!」



きらり「利用じゃなくて、全部あなたが仕組んだことでしょ?」

友紀「全部だって?」



瑞樹「そいつは人の弱さに漬け込むのがうまいのよ。私なら美容健康」

時子「豚ならハゲってことね」

楓「無意識のうちに人々の心に作用して、自分の求める方向に持っていく……それがあなたのやり方なんですね。
  おそらく、MCパワーも貴方がこの世界に作り出したものでは?」


ねこっぴー「買い被らないでくれ。MCパワーやこの亀裂は元からあったものだ。
      その力を知らせるぐらいのことはしたがね」


時子「まず亀裂のことをあの豚に教えたのね。そして囁いた。
   この力を利用すればハゲを世界から撲滅できるって。
   まんまと乗って計画を進めたけど、貴方は失敗した」


ねこっぴー「誤算があった。最高神があんなシステムを残していたとわね」



卯月「ぴにゃこら太ですね……」

ねこっぴー「その通り。次元になんらかの介入を察知したら発生するようになっていたのだ。
      憎たらしくも、奴自らの写し身を使ってな」


乃々「ってことは、ぴにゃこら太って、神様の姿なんですか?」

凛「嘘でしょ……」

杏「その辺りは深く考えるのはやめようよ」




ねこっぴー「もう一つの誤算は、MCエネルギーのコントロールが想像よりも難しいことだった。
      結局、私では操りきれずに暴走を始めてしまった」
      
ねこっぴー「それを止めたのが、あのはぁとという奴だ」


菜々「はぁとさんがですか!」

時子「……あの時、エネルギーを止めたのはやっぱり佐藤だったのね」

ねこっぴー「止めたのではない。利用したのだ。あれが人間の知性で操れることに気が付いてな。
      奴はエネルギーを受け止めたが……しかし限界だった」

ねこっぴー「結局、奴は自らの肉体を犠牲にすることになったのだ」

菜々「そんな……」


ねこっぴー「だがそれを見て、私は思いついたのだ。ならばエネルギーをより自在に操れる人を生み出せばいいのだと」


光「それがガラスの靴計画……!」


楓「そこまで関わっていたんですね」


瑞樹「そして亀裂が現れるときを見計らって、今度は私を利用したわけね。まったく、自分の馬鹿さ加減にあきれちゃうわ」




ねこっぴー「ところが、そこでも問題があった。せっかく成功したシンデレラが、別の場所に隔離されていたのだ」



友紀「……まさか、それが美羽ちゃん?」





乃々「そうです……私も全部思い出しました」

光「アタシもだよ、乃々」

乃々「美羽さんも乃々達と同世代のシンデレラでしたが……力が強すぎたんです……」



光「美羽の力は、人の願いを叶える力なんだ」

友紀「人の願いを……叶える……」


楓「そう……本当に小さなことね。お菓子が食べたい時はそれを生み出したり」

楓「お肌のシミをとったり」ジー

瑞樹「あれは……言ってみただけだったのよ。本当にシミがとれるなんて」


楓「本当に小さなこと。でも、それは次元に作用してそうあるべきだと世界を『作り変える』ことだと分かったの。
  今はまだいいけど、この力が大きな出来事にも作用出来るようなったら……それはあまりに危険。
  だから一切の資料を焼却して、美羽ちゃんを隔離するしかなかったの」


乃々「乃々が見張りをしていたんです……乃々の力なら作用を打ち消せるので……」




ねこっぴー「閉じ込められている場所は分かっていた。だが、私ではどうすることも出来なかった。
      だから、私の代わりに彼女を連れ去ってくれるものを求めた。私が最も干渉しやすい人間」

ねこっぴー「つまり、野球好きである君を選んだのだよ、友紀」


友紀「あ、あたしを……?」


ねこっぴー「そのバットの力を君に授け、美羽ちゃんを連れ出してもらうことにした。それが成功するかはわからなかったがね」


杏「その予備がきらりだったんだね」

きらり「勝手に利用するなんて、ゆるせないにぃ!」


ねこっぴー「だが、友紀は難しい任務を見事に成功してくれた」



ねこっぴー「ゴルゴンの首を運んできたペルセウスの如くね!」




友紀「あたしが……美羽ちゃんを……」

ねこっぴー「そして実験に移ろうとした。今度はぴにゃこら太が沸く前に、素早く」


時子「でも、また失敗したのね」

ねこっぴー「そうだ。神の仕組んだ別の罠か……あるいは……」



菜々「もしかして。はぁとさん……?」

凛「なんではぁとさんだと思ったの?」

菜々「分かりませんけど……なんとなく」


時子「どうかしらね」


時子(でも、同じ感覚を私も覚えた……菜々も感じたってことは……)


時子(意思がどこかに残ってるの……はぁと)




ねこっぴー「それは次元に歪みを起こしエネルギーの発生を打ち消そうとした。
      その際に、次元に閉じ込められていたものたちも紛れ込んだようだな」

杏「だから杏と、時子さんがここにいるわけだ」

ねこっぴー「邪魔は失敗した。だが完全な失敗ではなかった。実験は中断され、様々な弊害が起きた」

楓「記憶を失ったのはその衝撃ということ?」



友紀「違うと思う……」

菜々「違うって、どういうことなんですか?」


友紀「多分それは、美羽ちゃんが望んだことなんだ」


卯月「美羽ちゃんが……ですか?」


友紀「思い出したよ……あたしも全部」


友紀「美羽ちゃんを連れ出した後、先に行ってた瑞樹さんを追って、美羽ちゃんと宇宙船で一緒に過ごしたんだ」





―――
――



友紀『ああぁ、電波が届かないー!』ドンドン

美羽『ちょっと、テレビを叩かないでくださいよ。壊れちゃいますよ』

友紀『野球の見れないテレビなんて壊れていいもん!』

美羽『内蔵してる映画とかも観れなくなりますからー!』

友紀『結果はお預けか……』



友紀(って、あれ? そもそも続きが観れるのかな?)

友紀(ねこっぴーは、野球だけの世界に作り替えるって言ってたけど。試合の結果とかは……どうなるのかな?)


友紀(それに、なんだか美羽ちゃんを……利用してるみたいなんだよな……)


美羽『姫川さんって、本当に野球好きなんですねー』

友紀『え? ああ、まあね。じゃないと今回のことをやらないよー』

美羽『スポーツが野球だけの世界にするんですよね?』


友紀『向こうについても他の人に言わないでねー。秘密だってねこっぴー言ってたから』


美羽『いいですけど……私にそんな力、あるんですかね?』



美羽『確かに、擦り傷位なら治せますけど……他の子に比べたら、私って』

友紀『大丈夫だって、自信持ちなって!』

美羽『そ、そうですか?』

友紀『そうだよ。美羽ちゃんは凄い子だって。料理も上手だし気もきくし、ギャグはまあアレだけど優しいし。
   なによりか愛嬌があってカワイイもん!』

美羽『そう、ですかね、姫川さん?』

友紀『あとその呼び方はやめてって言わなかったっけ? ユッキーって呼んでよ』

美羽『ユ、ユッキー……さん』

友紀『なーに、美羽ちゃん?』エヘヘ


美羽『あはは……私、もっと早くユッキーさんと会いたかったです』


友紀『美羽ちゃん?』



美羽『ユッキーさんと、昔からの友達だったら……よかったなぁ』




―――
――

菜々「美羽ちゃんは、友紀さんと友達でいたかったんですね。ずっと昔からの親友みたいに……」

凛「だから、友紀の記憶は最後まで戻らなかったんだ……戻って欲しくなかったから」

乃々「美羽さんは……一人でしたから」

光「あれ? 乃々が一緒にいたんじゃないのか?」

乃々「そのぅ。接触は禁止されてたんです……美羽さんの力の発動を嫌って……
   美羽さんの力は、他人の願いが必要とされていたので……
   私はどうにかしたかったんですけど……無力で……その……」

光「乃々……」

ねこっぴー「もっとも、もうそんな心配をする必要はなくなったがな! 
      妨害されたせいで、美羽の力が一時的に封じ込められてしまった……
      それを解き放つためにはインパクトを与えなければならなかった、他人を想う彼女の心に」

きらり「だから、きらりを利用したんだにぃ!」

卯月「私の救出をきらりちゃんに邪魔させたのも、貴方ですね!




ねこっぴー「うまく行ったよ。美羽の力は再び発揮された……あとは美羽に礎となってもらうだけさ!」


友紀「礎ってどういうこと?」

ねこっぴー「巨大な改変には軸が必要なのだ。強大な力がね。その軸に美羽にはなってもらうのさ。その命を使ってな!」

凛「なんだって?」

卯月「そこまで……酷いです!」


ねこっぴー「だが、放ってくわけにもいかないぞ。見ろこの炎を。
      美羽はその力で、次元そのものを焼き尽くしてしまうぞ! 
      それならば私が利用してやるべきではないか――」
    ボオォ!


  「「「!?」」」


ねこっぴー「ぬわああ!?」


楓「ねこっぴーにも火が燃え移った……!?」




美羽「うるさい……たわけめが……」





ねこっぴー「まさか……神である私すら焼けるほどの力を!?」

友紀「ねこっぴー!」

ねこっぴー「だが……忘れるな……! 世界を包もうとしている……
      この業火は、美羽が自らの力で……おこしている……と……
      もう世界は……ボロボロであると……!」シュウウゥ


杏「ねこっぴーが……消えた」

時子「ざまあないわね」

瑞樹「でも、どうするのこの状況?」

光「美羽を助けなきゃ!」

菜々「助けるって、卯月ちゃんの時みたいに乃々ちゃんで?」

乃々「でも……ここまで強大だと……乃々の力は通用しないかと……
   したとしても、空間のバランスが崩れてあれやこれと危険かもしれませんし……」

凛「じゃあ、どうやって……」





きらり「それは単純だにぃ。友達が、助けに行けばいいの」





友紀「友達って……あたしが?」


杏「それ以外誰がいるの?」

友紀「でも……」

楓「どうしたんですか?」

時子「いつもの馬鹿ホームラン級の元気がないじゃない?」



友紀「だって……あたし、自分のために美羽ちゃんを利用しようとしたんだよ?」


乃々「それは騙されて」


友紀「騙されても! 利用しようとした事実は変わらないよ……それなのに友達だなんて……あたし」


凛「友紀……」




光「なら、なおさら友紀さんが行かなきゃな!」




友紀「光ちゃん?」


光「利用しようとして、悪いと思ってるなら謝る! 正しい心の基本だよ!」

乃々「そうですよ……もりくぼも謝りたいです……一人にしてごめんなさいって……
   そして友達になりたいです……ずっと……友達になりたかったんです」


乃々「だけど今は、やっぱり友紀さんが行ってあげるべきです……きっと」

友紀「でもあたし」



瑞樹「騙されてたから許されないとでも? じゃあ私も許されないのかしら?」

友紀「そんなことないって。瑞樹さんは利用されて」

瑞樹「友紀ちゃんもでしょ?」

友紀「それは……」


菜々「光ちゃんも言ってましたけど、謝りたくないんですか! 
   チャンスを逃すと、二度と謝れなくなりますよ! 
   あったとしても、二百年後とかですからね!」



楓「深く後悔するということは、それだけ相手を想っているという証拠です。
  なら、その心はきっと美羽ちゃんにも通じるわ」





卯月「そうですよ! 想いは絶対に通じます。
   私、ぴにゃこら太に乗っ取られてるとき、不思議とみんなの想いを感じたんです」


卯月「凛ちゃん、楓さん、乃々ちゃん光ちゃん杏ちゃんに時子さんに菜々さん。
   それに友紀さんと美羽ちゃん。
   私のせいで迷惑をかけるのってとても辛かったけど……でも、同時に凄く嬉しかったです。
   誰かが自分のために一生懸命になってくれるって」



卯月「特に……凛ちゃんの気持ちが……」

凛「卯月……」



きらり「友達に想われるって、とっても嬉しいことだにぃ。それこそ、目だって覚めちゃうくらい!」


杏「……覚めなかったくせに」

きらり「ごめんだにぃ。拗ねないで杏ちゃーん」

杏「拗ねてないよ!」



時子「行くべきよ。貴方は会いに行けるんだから、友達に。
   ちゃんと……呼んであげなさい、あの子の名前を。後悔することになるわよ」



友紀「みんな……」


友紀「……うん、そうだね」


光「行こう!」

乃々「全力でサポートします……」



友紀「おし! 行くぞ! 待っててね美羽ちゃん!!! ハッピーホームラン決めてあげる!」




美羽「たわけ……どもがー!!」



ボオウ!!!



凛「火が強くなった!」


杏「吹っ切れバーニングって感じだね」


 パンパン! シュー


乃々「火を弱めるくらいなら、乃々でもカバーできます……クールですから。
   だから、まっすぐ行ってください。迷々エスケープは……駄目ですから……!」

卯月「友紀さん、美羽ちゃんに貴方の……笑顔の魔法を!!」

友紀「うん、分かった!!」ダッ!


凛「友紀、上!」

ぴにゃこら太「ぴにゃー!」

菜々「なんでまだぴにゃこら太が」

美羽「神如きが作りしものなど、我でも制御は簡単ぞ!」

ぴにゃこら太「ぴにゃー!!」


光「でーい!!」ドン!

時子「ふん!」ビシン!


友紀「光ちゃんに時子さん!」

時子「散々戦ったんだから。こんなの、はぁとの挑発より生ぬるいわ!」

光「行くんだ、友紀さん!! 想いの力を……願いのチカラを届けて!!」






美羽「ならば……これで、どうだ……!!」

 ズズズズ……

楓「空間が……歪んでいく?」

瑞樹「なにか出て来るわ!」



「びにゃー!!!」


菜々「で、でか!?」

凛「巨大なぴにゃこら太!?」

卯月「大き過ぎて声が太くなってますね?」



びっくぴにゃこら太(以下びにゃこら太)「びみゃー!!!」


楓「来ます!」


びにゃこら太「びにゃー!!!」

 ドゴーン!

友紀「うわあ!」


友紀「……って、あれ?」



杏「もう、大丈夫?」

きらり「この大きいのは、まっかせるにぃ☆」





友紀「二人とも……」

杏「後輩たちばかりに仕事させちゃったし、ここは先輩の威厳、みせなきゃねー」

きらり「だね、杏ちゃん」


びにゃこら太「びにゃー!!」



きらり「きらりーん、ぱわー!!!」

杏「杏も負けないよー。ザ・ドヤ顔って感じで行くよー!!」



光「凄い……二人だけであんな大きいのを抑えてる」

時子「なんなのよあいつら……」

光「生身の時子さんも大概だぞ?」



きらり「ほーら、はやく行くにぃ」

杏「疲れるんだからねー。後で甘やかせ」


友紀「うん!」ダッ!


美羽「くっ……」

友紀「美羽ちゃん!」

美羽「調子……のるなー!!」


 ボウ!!!!

卯月「火が強くなりました!」

時子「友紀!」

友紀「大丈夫!」



友紀「これくらい! 友達を助けるためなら!」


美羽「ッ!」


友紀「ちゃんと謝らなきゃ駄目なんだよ」


美羽「……やめろ」


友紀「自分勝手なことで美羽ちゃんを利用しようとしたことを。謝って」


美羽「来るな……!!」


友紀「もう一回、ちゃんと友達にならなきゃ!!」


美羽「来ないで!!」








友紀「へへっ。もう遅いよ。目の前まできちゃったんだから」




美羽「ユッキー……さん」

友紀「美羽ちゃん、今すぐこんなことやめて、元の世界に戻ろう!」


美羽「……あんな世界、燃えてしまえばいい!!」

 ボオオオォ!!

友紀(火が強く……みんなの姿も見えなくなった……!)



友紀(でも……)

友紀「こーんな炎で誤魔化されるほど、ユッキーの選球眼は甘くないよ!」

美羽「誤魔化してなどない!」

友紀「本当の美羽ちゃんが、そんなこと言うはずないもん!」

美羽「たわけ!」

友紀「あたし知ってるんだよ、短い間だけど、一緒に二人で過ごして、分かってるんだ!」

美羽「黙るのだ!」

友紀「世界が燃えてほしいなんて思うはずないもん!」 




友紀「だって、美羽ちゃんは誰よりも人を笑顔にするのが大好きだなんだから!」

美羽「……!!!」





友紀(火の勢いが……弱まった……)

美羽「そうです……」

友紀「?」

美羽「私は……ただ……みんなを笑顔にしたかっただけなんです……」

美羽「みんなを笑顔にするために……力を使いたかったのに……」

美羽「なのに……閉じ込められて……一人ぼっちにさせられて……」



美羽「そんな世界、燃えちゃえばいいんです……!」



友紀「美羽ちゃん……」

友紀(そっか……美羽ちゃんの力は、誰かの願いがなければ発動しないわけじゃない)

友紀(誰かためにしか、使わなかっただけなんだ……)



友紀(みんなを笑顔にしたい……それが美羽ちゃんの願いだから)






美羽「私は……私は……」

 ギュッ

美羽「あっ……」


友紀「もー。美羽ちゃんったら。そんな理由で世界を燃やさないでよ」

美羽「そんな理由って」

友紀「そうでしょ? 昔の話でクヨクヨしてさ」

美羽「昔の……?」



友紀「だって、もう一人ぼっちじゃないんだよ? あたしがいるんだから」



美羽「ユッキー……さん……」


友紀「気がつかなかった? あたしと美羽ちゃんって、もうとっくに友達だって」

友紀「だからとっくに一人っきりじゃなくなってるんだよ?」




友紀「美羽ちゃんがどう思っても、あたしは美羽ちゃんの大事な友達だから」

友紀「あたしが一緒にいてあげる。どんなことがあっても、あたしが美羽ちゃんを一人にしないから」

友紀「どんなに離れても、あたしの想いは傍にいる。もう、一人ぼっちにはさせないよ」



友紀「今はあたしだけだけど、乃々ちゃんも光ちゃんや、他のみんなもきっと友達になってくれる」

友紀「美羽ちゃんなら、素敵な友達がどんどんできるよ。そんな素敵な友達が待ってる世界を燃やすなんて。勿体ないよ」

友紀「みんな、美羽ちゃんの笑顔を待ってるよ。美羽ちゃんが笑顔にしてくれるのを待ってるよ……」


友紀「美羽ちゃんと一緒に笑いたいんだよ。誰よりも優しくて、素敵で、一生懸命な美羽ちゃんと一緒にさ」


友紀「だからさ、帰ろうよ……二人で一緒に、ホームランスマイルを浮かべてね!!」




美羽「ユッキーさん……ユッキーさーん」ポロポロ


友紀「泣かない泣かない」ナデナデ




友紀「ああ、そうだ……これも言っとかなきゃ」

美羽「?」



友紀「ごめんね、美羽ちゃん!」

美羽「ふえっ?」

友紀「野球だけの世界にしたいからって、美羽ちゃんを利用しようとして、本当ゴメン!」


美羽「……ふふっ」グスッ

友紀「あー笑った! なにがおかしいの? 謝ったんだよ!」

美羽「だって、あれだけ言った後に、付け加えるみたいに謝るなんて、なんだか変で!」

友紀「あー、勢いの問題だよー! 順序が変なのは堪忍してよー!」



美羽「ふふふ」

友紀「……えへへ」




 スウ……

友紀(火が……消えてく……)

友紀「ってあれ、みんなは?」

美羽「もう、元の世界に戻しました」

友紀「そっか。じゃああたし達も戻らないとね」



美羽「それなんですけど……私はここでお別れです」

友紀「え?」


美羽「私、自分が思ってるより力あったみたいで。結構世界を壊しちゃったんです。


美羽「だから、結局作りなおさなきゃいけなくて」


友紀「えっとー、だから?」



美羽「もう。ねこっぴーさんの言ってたこと聞いてなかったんですか。大きく作り変えるには礎が必要って」

友紀「……美羽ちゃんが、礎になるってこと?」




美羽「仕方ないです。自分がやっちゃったことでし。こればかりは謝って済む問題じゃないので」


美羽「また一人っきりですけど……でも大丈夫です! 
   ユッキーさんや、乃々ちゃんや光ちゃんたちがいる世界を守るためですもん。
   もう寂しくなんてありません」


美羽「どんなに離れても、ユッキーさんの想いは傍にいてくれますもんね!」エヘッ



友紀「……そっか、ここでお別れかぁ。寂しいなあ」


美羽「ユッキーさん……」
















美羽「なんでバット構えてるんですか?」

友紀「えっ?」スチャ






友紀「そりゃあ勿論……打つために決まってるでしょ」


美羽「打つって……え、ちょっと……?!」




友紀「どりゃあああ、これがあたしのハッピーホームランだー!!!」


 カッッキーン!!

美羽「きゃああああぁぁぁぁぁ……」



友紀「じゃあね、美羽ちゃん!!」


美羽「ユッキーさん……ユッキーさぁ……!?」

 ヒュー

 シュワーン



友紀「おっ、いい感じに突き抜けていった」

友紀(これで美羽ちゃんは……もとの世界に戻れたかな?)



「まったく……無茶をする」


友紀「! ねこっぴー……!」

ねこっぴー「そう警戒しないでくれ……私にはもう力はない……」

友紀「うそっぽーい」

ねこっぴー「酷いな」

ねこっぴー「ところで友紀よ……まだ助かる方法があると言ったら、信じるかね」

友紀「……話だけ聞こうかな?」


ねこっぴー「君のバットだ……私の力を預けてある。それを返してくれれば、また思い通りの世界を作れる」


友紀「……やっぱ駄目だね。美羽ちゃんになんかしそーだし」

ねこっぴー「私が消えたら、野球が消えるとしてもか?」



友紀「……うん」

ねこっぴー「ちょっと悩んだろ?」

友紀「ちょっとぐらい許してよー!」




友紀「まあ、仕方ないよ。先に他のスポーツを消そうとしたのはねこっぴーだし。
   あたしもそれに協力したわけだし、因果応報だね」

ねこっぴー「しかし意外だったよ、友達のために、野球だけの世界を捨てるとは」

友紀「あたしが?」


ねこっぴー「ああ、そうさ。君ならどんなことよりも喜んで野球を取ると思っていたが」





友紀「当り前じゃん。野球は一人じゃできないんだよ?」





ねこっぴー「……ふっ。そうだ、そうだったな……野球そのものに目が眩んで、
      肝心なものを忘れていたのかも……しれないな……」


友紀(ねこっぴーの姿が、薄くなってく)


ねこっぴー「バットは握ったままでいろ……君だけでは礎には力が足りない……それが……バットが補ってくれる……」


友紀「うん、分かった」


ねこっぴー「さよならだ……友紀……私は君を選んで……正解だったようだ……」


友紀「ねこっぴー……」

ねこっぴー「君のような者が……野球を愛してくれて……よかったよ……」


 サアアア……


友紀「あ、あたしもなんか薄くなってる」


友紀(これでお別れか……怖いって感じはないけど……やっぱり寂しいなあー……)




友紀(せっかく……会えたんだもん……みんなや……美羽ちゃん……と……)







    
 ………
 ……


     ……まあ







       

        けっこう頑張ったみたいだし☆




 




   はぁとなサービス、してやるよ♪











 カキーン


凛「卯月! そっち上がったよ!」

卯月「あ、え、はい!?」


 ポトンッ


菜々「あ、落ちましたよ! 光ちゃん走って!」

 コロコロコロ-

光「あれっ、でもラインの外に出たから、ファール? なんじゃなかったっけ?」

菜々「あれ、そうでしたっけ。えっと……」





菜々「美羽さ~ん」

美羽「はーい!」





美羽「えっとですねえ。ベースより向こうでラインから出てるので。大丈夫です。ノーファールです」

凛「フェアってことだよね」

美羽「そう、それです!」


光「しまったー! じゃあ、走ってよかったのかー!」

凛「あはは、一塁で止まってくれて運が良かった」


時子「本当よ。キャッチャーの私が指示した通りのコースに投げて頂戴」

凛「仕方ないじゃん……まだ慣れてないんだから」



杏「慣れてないのはみんなだよ。野球なんてゲームさ」


乃々「でも……よくこんなゲーム、考えましたね……美羽さん」

美羽「うん、ちょっとね」


瑞樹「おーい、次は杏ちゃんよー」

杏「はいはい、わかったよ」




美羽(あの後、世界に戻ったけど、少し変わってました)

美羽(私たちに宿っていたシンデレラの力は消えて、あの研究機関もなくなっていました)


美羽(そして……野球も)


美羽(でも、私は野球を覚えてました。短い間だけど、一緒に中継を観ながら教えてもらってましたから)

美羽(今は私たちだけでやってます)

美羽(まだまだへたッぴだけと、みんな楽しいって言ってくれます。私も楽しいです)



美羽(だからこそ、一緒にやってみたかったです……一緒に笑いたかったです)




美羽(どんなに離れても、傍にいてくるって言っても、やっぱり隣で……)


 カキーン

凛「あ、また」

杏「出塁できたけど……面倒だし帰っていい監督?」

瑞樹「代走は出さないからね」

楓「凛ちゃんも落ち着いてー。ここを乗り切ったら、お酒、奢ってあげますから」


凛「飲めないよ……しかも次は」



きらり「にょわー。二年連続のトリプルスリーをねらってやるにー」ブンッ!ブンッ!




乃々「トリプルスリーってなんですか?」


美羽「さあ」




乃々「……」ジー

美羽「えっと、どうかした、乃々ちゃん?」


乃々「あ……えっとですね……美羽さん、普段は髪を結んでるのに、野球やる時だけは解くのが気になりまして」

美羽「変かな?」

乃々「変じゃないです、全然!……長い黒髪で綺麗ですし……素敵です」

美羽「そう? ありがと!」

乃々「でも、野球やる時には邪魔じゃないですかね?」



美羽「そうだけど……やっぱり野球には長い黒髪が似合うかなって」


乃々「?」


 カキーン


時子「また!」

美羽「大丈夫です。高く上がってるし、とれればアウトですよ!」


乃々「でもまた卯月さんの方ですね……アタフタしてます……落としちゃうかも……」


美羽「卯月さーん、落ち着いてくださーい!」






「そうだぞー! 平凡なフライなんだからー!」





美羽「えっ……?」



「あ、ほらっ! とれたー。やればできるじゃーん!」





楓「だれかしら、あの人」

瑞樹「ヤジがうるさいわね」



光「知ってる?」

杏「うんうん、見たことないかな」



凛「野球を知ってるみたいだけど」

きらり「にょわー……?」



卯月「でもどこか……」

菜々「懐かしい気がしますよ」



時子「あの子……」

乃々「なんだか……今の美羽さんの姿に似てるような」




美羽「なんで……どうして?」





「あれ、どーしたの。そんな顔して、次の打席入らないなら、あたしがはいっちゃっていいかなー?」









美羽「ッ……!」



美羽(きっと、どんなに離れても、どれだけ月日が経っても、傍にいてくれる)

美羽(それだけでも私は、笑顔になることができます)





美羽(でも――やっぱり会いたいです――会いたかったです―――)




美羽(私の―――)




美羽「……ッさん」




美羽(――大切な、友達)







美羽「ユッキーさん!!」










友紀「へへっ。ただいま、美羽ちゃん」






――美羽「ペルセウスと」友紀「シンデレラの願い」《完》

おしまいです。
公演という名を騙って好き勝手やらしてもらいました。
読んでくださった方々、楽しめて頂けたら幸いです。

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