【安価】貴方の読みたい物語・2 (33)
安価のお題でのんびり綴るスレ。
3~5本ほどお付き合い下さい。
【前回】
【安価】貴方の読みたい物語 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469687744/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1477838564
【ジャンル】
>>4
【季節】
【主人公名】
推理もの
感動ポルノ
変身ヒーロー
ダークヒーロー悪役シリアス大スペクタル
【ジャンル】
感動ポルノ
【季節】
>>10
【主人公名】
冬
春
秋
【ジャンル】
感動ポルノ
【季節】
秋
【主人公名】
>>14
植田紅葉
秋田 モミジ
「僕」
【ジャンル】
感動ポルノ
【季節】
秋
【主人公名】
「僕」
街路樹が緩やかに紅黄に色づき、吹く風に金木犀の香りが纏い始めた頃。
足元には夏に芽吹いた新芽に押し出されて散ったかのような枯葉が敷かれつつある。
視線を上げると、段々畑のような巻積雲が済んだ群青の空に模様を描いていた。
一般的にいわし雲と呼ばれるそれは、天候が崩れる兆候。帰路を急ぐために歩む速度を少し上げた。
天気予報では午後から雨との事だったので念のために傘を携帯してはいるが、使わないに越した事は無い。
せっかく街に出向いて買ってきた商品が濡れると、濡れそぼるよりもげんなりしてしまうだろう。
歩きながらも鞄に手を入れ、黒いビニールに包まれたそれを触覚で確認する。
早く帰って開封する楽しみが更に増し、歩幅も上げてまた一段と家路に向かう足は加速した。
歩くこと更に数分。僕は狭い路地に入り見通しが悪くなった道を歩いていた。
ここは事故が多発する場所で、よく人を撥ねた車の目撃者情報を求める看板が立てかけられている。
明日は我が身という事もあり、特に人一倍気を付けなければならない身だから、こういった道での曲がり角では左右確認を怠らない。
首を左右にゆっくり振って確認し、いざ足を上げようしたその時。
先ほどまで嗅いでいた金木犀の香りを打ち消すような排気ガスの臭いが鼻に飛び込む。
その直後に自分の背中を掠めるようにトラックが通り過ぎ、それが巻き起こした風が髪をバサバサと乱していく。
果たしてクラクションを鳴らしたのかどうか分からないが、何にせよ肌が泡立つような錯覚を覚えてゾッとした。
住まいのアパートまで近道という事もあり久々に通った道だったが、今後はここを控え、大通りから遠回りして帰るのを改めて心に決めた。
「ただいま」とぼそりと呟いて、自分の家の玄関を開けた。
一人暮らしだから別に言う必要もないが、なんとなく続けている習慣だ。
当然、返事は聞こえない。
そのまま履いた靴を脱ぎ散らかしてキッチンを抜けて居住空間に向かう。
やや狭い部屋ではあるが、一人で暮らすには不自由ないほどの広さではあるだろう。
そもそも実家にいたら、僕が蒐集しているものをゆっくり眺めることすら出来ないだろう。
ラフな格好に着替えて鞄の中を焦るような手つきでまさぐる。
黒いビニールに包まれたそれを机の上に置き、いざ中身を確認した。
うん、これだ。
僕が今日買ってきたアダルトビデオのパッケージに映る、卑猥な恰好をした女性と目が合ったような気がした。
騒音で近隣住民とのトラブルが巻き起こる。
そう聞いてから、テレビの音量は常時ミュートの状態だ。
アダルトビデオを開封し、再生用のプレーヤーに挿入。慣れ親しんだ音の無いテレビを注視する。
眉目麗しい女性が男性とデートをして、その最後にほんの少しだけ性行為をするという内容のもの。
僕はそういったジャンルの成人向け映像、すなわちAVというものを集めている。
一人暮らしの際に本棚のために買ったインテリアは、今やそういったものの背表紙で埋め尽くされてしまった。
ただ、たぶん僕は人と違う点が一つある。
アダルトビデオを本来の用途として使用していないところだ。
普通の人なれば、自慰に耽るためにこういうものを借出や購入するのが常識と言われるもの。
僕は違う。成人向けの映像は擬似デートを題材とした内容しか見ないし、自慰の用途で使わない。
鑑賞するのだ、文字通りの意味合いで。
人は愛を囁く映画や恋を謳う音楽で甘い気持ちなるかも知れないが、僕にはそれが感じられないのだ。
ただ、今見ているアダルトビデオのような、この手の様式で展開される流れに、何故だか心がくすぐられる。
女優と男優が張りぼてのような空虚な掛け合いをきっと画面の中では楽しんでいるのだろうか。
台本もあり、性行為を前提とした何ともいえない虚無の中に、感情を鷲掴みにされたように惹かれてしまう。
自分でも何故だかは分からない。
それでも、何故だか、どうしようもなく。
ポルノを見ると感動するのだ。
いま画面の中では事後の映像が映っている。
男優は先ほどまで組み敷いていた相手の髪を優しく撫で、甘えるように胸の中で恍惚の表情を浮かべる女優の姿がそこにはあった。
相手の耳に口を添えて、何かを囁いているような女優。それを聞いた相方はくすぐったそうな、だが心満たされたような笑顔を見せる。
大好きだよ、とか。愛している、とか。
きっとそういう蕩けるような言葉を呟いたのだろうか。
無音の画面では何も伝わらない。もし音を上げても、耳の聞こえない僕には届かない。
虚しさしかない擬似体験でもこうして十分に満足しているのだが、いつか聞いてみたいのだ。
大好きだよ、とか。愛しているよ、とか。
そういった、当たり前の愛言葉を。
そんな日が来ないことを知りつつ、それを夢見て、僕は購入した二本目のアダルトビデオに手を伸ばした。
―― END ――
面白い
【ジャンル】
>>26
【季節】
【主人公名】
1本目乙です
安価下
kskst
スーパーロボット
シュールギャグ
【ジャンル】
スーパーロボット
【季節】
>>30
【主人公名】
冬の星
春
【ジャンル】
スーパーロボット
【季節】
春
【タイトル】
>>33
戦車合体!!フォーティー2
鉄錆と桜吹雪
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません