モバP「ありふれた恐怖」 (69)


これはモバマスssです
書き溜めはありませんが、1日以内に終わらせます
キャラ崩壊があるかもしれません



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繋がらない。
完全に途絶えてしまっている。
私が絶対の信頼を置いていたソレは、もはや何の役にも立たなくなっていた。


つい先程までは何ともなかった。
けれど、ふとした一瞬で。
なにも出来なくなってしまって。


心細さが胸を埋める。
頼れるモノが近くに無い。
それだけで、不安は何倍にも増した。





後どれくらい、このままでいなければならないのだろうか。
これでは私の論破率が下がってしまう。
一緒に鷺沢さんと読めなくなってしまう。
プロデューサーさんの質問に、すぐ答えられなくなってしまう。


一つだけ方法はあった。
この苦しみ・不安から抜け出す方法が。
今すぐにも可能な事だ。
そしてソレを行えば、瞬時に私は解放されるだろう。





けれど、それを行ってしまえば。
私は、きっと…


仕方が無い。
自分が依存しすぎてしまっていた。
諦めるしか、無い。


…然るべき罰として、受け入れる他無い様ですね。


そうポツリと呟き。
私は一人、その日を待ち望んだ。



橘ありす:通信制限編




目の前に、恐怖の具現化が存在している。


例え私が何をしようとも、どんな手を使おうとも。
正確に、無慈悲に。
全てを突き付けてくる、悪魔の機械。


目を逸らしても意味は無い。
どのみち逃げられぬ運命なのだから。
もし今私がここを逃げ出したところで。
明日には、逃げられぬ場所でまた待っているのだ。






知識とは常に人間にとってプラスになる物とは限らない。
ソレを知らなければ幸せに暮らせた人もいるだろう。
優しい嘘という言葉がある通り、常に正しい事だけを知ると言うのは。
おそらく人間にとっては、良い事だけでは無い筈だ。


だから私が今ここで。
ソレを知る必要は無い筈だ。
そう言い訳を羅列する。


泣きそうになりながらも、けれど心の何処かで分かっていた。
今さらそんな事を考えても、最早意味などないという事を。
遅かったのだ。
間に合わなかったのだ。
もう少し早くに、気付けていれば…





何が、美味しいから大丈夫なのだ。
今の私ならわかる。
全くもって大丈夫では無いと言う事を。


…逃げられないよね…


意を決して、私は乗り込む。
その先にあるものが希望が、あるいは絶望か。


神判は、下された。






三村かな子:体重測定



かさかさ、かさかさ
かちかち、かちかち


静かな部屋に、時計の音と足音だけが響き渡る。


あれからどれくらいの時間が経っているだろう。
一時間かもしれないし、五分かもしれない。
緊迫した空気は私の体感時間を狂わせている。


暗い部屋の中で、息を殺して耳を澄ませる。
それだけで段々と息が上がりそうになってきたけれど、ここで相手に私の位置を教える方が不味い。
必死になって、口を押さえた。





久しぶりに、部屋を掃除しようかな。
ママに怒られちゃうし。


きっかけは、そんな軽い気持ちだった。
普段からきちんと整理整頓していれば良かったのに。
今さらそんな後悔した所で、何かが変わる訳ては無いが。


ガサッ!


「きゃっ!」


足音が一気に大きくなる。
思わず私は悲鳴をあげた。





いや!いや!いや!!
早く出て行って!近付かないで!


私はアイドル。
誰かに付き纏われる事も、残念ながら慣れていた。
でも、いつもプロデューサーさんが守ってくれて。


けれど、今。
この場にプロデューサーさんは居ない。
私を守ってくれる者は、誰一人…





「助けて…助けて下さい!」


当然、何も起こらない。
現実は無慈悲にも、私一人で終わらせろと告げる。
…やるしか、ない。
やらなきゃ、やられちゃう。


すぅ…と大きく息を吸って、私は覚悟を決めた。
相手を殺す、と言う覚悟を。
私が殺す、と言う覚悟を。









島村卯月:G





つん、と鼻をつく様な臭いが部屋を埋める。
私は現実を受け入れられず、すぐさま扉を閉じた。


あまりの衝撃に、一瞬夢かと思ってしまう。
ベタだけどほっぺたを抓り、既に目は覚めている事を確認。
出来れば夢であってほしかったけど。
残念なことにコレは本当の事みたい。


直視するのが怖い。
触れるのが怖い。
現実を受け入れるのが、怖い。




それでもナナは、進まなきゃいけないんです。
全て、自分の責任だから。
私の不注意が引き起こしてしまった事だから。


最近は、お仕事がいそがしかったから。
飲みに誘われて家に帰れない事が多かったから。
色々な人がお裾分けをくれるくらい、仲良く慣れたから。


理由を並べるも、現状を打破してくれる訳ではない。
むしろ悲しみが大きくなってゆく。




なんだか涙が溢れそうになった。
でも、ナナは負けない。
今までも泣きそうになった事は何度もある。
けれど、その積み重ねで私は成長してきたんだ。


今回だって、やり直せばいい。
一から作り直せばいい。
大きく窓を開け、換気扇を付け。
ゴミ袋を大量に用意して。


腐臭を振り撒くその扉へと、手を伸ばした。






安部菜々:夏の冷蔵庫





…もう、引き返せませんね…


ザァザァと強い雨の中。
傘をさし本を片手に事務所へと向かう途中で。
私はふと、とある事に気付いてしまった。


…気付かなければ…良かったのに…


そんな事、考えさえしなければ良かった。
それなら今日も1日、何てことなく過ごせたのに。
けれど、気付いてしまった。
その時点でもう、逃れられない。





現時点で、若干遅刻気味だ。
今更引き返してしまえば、大目玉だろう。
そんな選択肢を取る訳にはいかない。


けれど、だとしたら。
私は1日。
この辛さを味合わなければならないのか。


…大丈夫な筈…でも、もしかしたら…




不安が渦を巻く。
一度気にしてしまうと、もう間に合わない。
大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせても。
心は全く落ち着いてくれなかった。


どうしましょうか…ええと…


悩み過ぎて、足を止めてしまう。
そんな事をするくらいなら走って戻ればいいのに。
そこまで踏み切れず、私は立ち竦んでしまった。






ええと…ええと………


パニックに陥ってしまった。
思考が落ち着かない。
どうしよう、どうしよう!


もう時間のことなんて忘れ。
私は走って、家まで戻った。
やらない後悔より、やって後悔。
私はアイドル活動を通して、そう学んだのだ。


きっとこれで間違いは無い。
これで、私は。
ちやんと、安心出来る。


結果、私は自分が思っているよりしっかり者だった様で。
きちんと、締めてあった。





鷺沢文香:家の鍵、締めたっけ…?





ひんやりと、私の足元から冷たい空気が伝ってきた。
まるでこの部屋だけが異世界へと移ってしまったかの様に。
一瞬にして、ただの汗が冷や汗へと変わる。


アタシが仕事に行く前は、こんな事にはなって無かった。
ほんの数時間。
それなのに、こんなに…


今朝、妹の莉嘉に起こされて。
眠い目を擦って支度を終え、一緒に家を出た。
その時はこんな事になるだなんて。
想像すら出来なかった。




今までに経験した事の無い震えが、体の芯から湧き上がる。
どうしよう、どうしよう。
どうすればいいのか分からず、アタシは鞄を落としてしまった。


自分の部屋なのに。
過ごし慣れた空間なのに。
それなのに、扉を開けるのが、怖い。


その先に待っているのは、きっと。
アタシにとって、恐怖以外の何でも無いから。






けれど、それは自分が招いてしまった事。
誰かの所為にするのは御門違い。
責任は自分で取らなければならない。
自分の口から、自分の手で。


一気に、扉を開ける。


部屋に充満した空気が、私を襲う。
夏とは思えないくらいの冷や汗を、けれどアタシは耐えて。


部屋へと、踏み込んだ。







城ヶ崎美嘉:冷房消し忘れ




あぁ…やっちまった


大きく息を吐き、スマホを投げ出す。
虚無感が今になって襲い掛かってきた。


あたしは、我慢出来なかったんだ。
自分が思っている以上に、あたしの心は弱かった。
何が大丈夫大丈夫ーだ。
結局、こうなっちゃったじゃないか。




どうしよう…


今更考えても仕方の無い事ではあるけれど。
考えずにはいられないんだ。
だって、もし…


いや、やめよう。
これ以上苦しむのは嫌だ。
全部自分が悪かった。
そうやって、納得するしかないんだ。





運が悪かった。
タイミングが悪かった。


そう自分に言い聞かせても、やっぱり。
心の何処かに、納得出来ていない自分が居た。


はー…


なんだか、何も考えたくないな。
色んな予定が入ってた気がするけど。
凛と加蓮との遊びも、暫くは断って。
このまま寝ちゃおうか。






うん、そうしよう。
失っちゃったモノも小さくないし、何より。


もう、あたしには。


限界が、来てるから…









神谷奈緒:月頭に課金上限





まずいまずいまずい


絶対に大丈夫だと思っていたのに。
バレるはずは無かったのに。
こんな事になるはずじゃなかったのに。


今まで築き上げてきたモノが、全て崩れ落ちる音がした。


確かに善悪で言えば悪だけれど。
セーフアウトで言えばアウトだけれど。
白か黒かと言われれば黒だけれど。






それでも、このまま誰もが幸せに終われる。
その予定だった。


プロデューサーさんが、倒れるまでは。








仕事自体は、大人組や他の部署の方々の協力で何とでもなった。
騒いだりお見舞いに行きたがる子達も、説得して止められた。
プロデューサーさん本人も、数日もすれば治る。


全てが丸く収まる、筈だった。
一部のアイドルが何もせずにいてくれれば。


過度の疲労、そんな事ならいくらでも対処できる。
悪いのは事務所側であって私個人では無いから。
有給を取らせるなり叱るべき金額を払うなり。
他のアイドル達もそれで納得してくれていた。


けれど、誰が言い出したのかは分からないけれど。
プロデューサーが常に飲んでいるドリンクに原因があるのではないか。
そんな噂が流れた時、全ては一変した。






まるでシーソーがいきなり傾く様に。
唐突に電柱が倒れてくる様に。
安全だと思っていたモノがいきなり爆発したかの様に。


私の立ち位置は、一気に揺らいだ。


ドリンクのストックは私しか分からない場所に隠してある。
けれど、プロデューサーさんの家の冷蔵庫にも数本残っていたなんて考えが及ばなかった。
持ち越しは厳禁と伝えておいたのに。
それもまた、疲労によって忘れていたのかもしれないけれど。






もう直ぐ、来てしまう。
けれど私は逃げるわけにはいかない。
何とかして、上手く落とし所を見つけなければ。


ツケが回ってきたなんて考えない。
これを糧として、またうまい方法を考えないと。


大きく息を吸い込み。
私は、覚悟を決めた。







千川ちひろ:虚偽表示・違法薬物・違法労働・etc


お付き合いありがとうございました
余裕で1日以上オーバーしてしまったので終わりにします

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