小町「ぬくもり」 続 (19)

小町「ぬくもり」 の続きです。

拙い文章ですが、暇つぶしがてら読んでやってください。

俺ガイル 小町主体のお話
地の文あり おかしなところ多々あるかも
深夜のノリと勢いで書いたのでクオリティはお察し


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お兄ちゃんとのお出かけの翌日。
心機一転し、勉強に精が出るであろう今日。私は布団にもぐっています。何故なら――――

「ぅえっきし!!!」

――――――風邪を引きました。




――朝――

いつもと同じ時刻に目覚ましが鳴る。
今日はやけに音が頭に響く。一刻も早くそれを止めようとするが体がだるくて腕に力が入らない。
悪戦苦闘し、やっとの思いで目覚ましを黙らせて起き上がる。

布団を捲ると溜まっていた熱気が外に逃げて行った。そのせいか冬なのに涼しく感じる。
違和感を感じパジャマに視線を落とすとパジャマが汗で濡れてしまっていた。ベタベタして気持ち悪い。

「シャワー浴びよ……」

重い体を引きずるようにして1階へ向かった。

1階に下りると朝からマッ缶を飲んでいるお兄ちゃんがいた。

「おはよお兄ちゃん……」

「おお、おh……。おいどうした小町、顔真っ赤だぞ!?」

お兄ちゃんが缶を置いて慌ててこっちに寄ってきた。自分のおでこと小町のおでこに手を合わせ体温を比べる。
手が冷たくて気持ちいい。あとこの温度の測り方も小町的にはポイント高い。

「お兄ちゃん、今小町汗凄いからシャワー浴びたいんだけど…」

「馬っ鹿お前、こりゃ風邪ひいてるぞ。シャワーなんて浴びてる場合じゃない」

「マジ!?だから体だるかったり汗凄かったんだ…」

「風邪の症状出てるじゃねえか…。タオルとか持ってくるからそこの椅子座って体温はかってろ」

「うん、有難うお兄ちゃん」






体温計を脇に挟んで椅子に座る。

お兄ちゃんがタオルや氷枕などを用意するため走り回っている。その慌てっぷりから本当にシスコンだなと改めて思う。
小町のためにお兄ちゃんがあんなに慌てて、一生懸命動いてくれてるってだけで嬉しくなる。
小町も大概ブラコンだなぁ…。お兄ちゃん離れはまだまだ先になりそう。

そんなことを考えているうちに体温計が鳴る。

「小町、何℃だった?」

「37.6℃」

「じゃあそこまで酷くはないか…。今日はもうゆっくりしとけ。寝ろ。階段上れるか?」

足元が少しふらつくが上れない事はない。でもここは妹として甘える権利を行使する!

「ちょっとしんどいかも…。お兄ちゃん、おんぶして」

「任せろ。気分悪くなったら遠慮せず言うんだぞ」

おんぶなんて小さいころにしてもらったっきりだ。あの時より小町も大きくなったのにお兄ちゃんの背中は大きく見えた。
首に抱き着きゆっくりと体重をかけていく。すると太腿を持たれ、ひょいと背負われてしまった。
何だかいつもよりお兄ちゃんぽいっていうか、男らしいっていうか。変な気分。

「ほい、座れ」

お兄ちゃんが優しくベッドに座らせてくれる。

「下から色々取ってくるから、横になっとけ」

そう言って部屋を出ていく。扉はゆっくり閉めたものの、勢いよく階段を下りる音が聞こえてくる。やっぱりちょっと抜けてるんだよね。
ゆっくり寝転び布団をかけるがすぐに暑くなり剥がしてしまった。
左右に寝返りを打ち、暑さに悶えているとお兄ちゃんが戻ってきた。

「こら小町、ちゃんと布団きとけ」

「あづい~……」

「ほら。タオル持ってきてやったから汗拭け。外で待ってるから拭けたら呼んでくれ」

「ん、分かった」


体を拭いた後、待っている間にお兄ちゃんが冷えぴたを持ってきた。

「ほれ、貼ってやるからじっとしてろ」

お兄ちゃんが小町の前髪の根元を抑えて上に上げる。お兄ちゃんの冷たくて大きい手が気持ちいい。
貼りやすいようにと目を閉じる。すると急な冷たさに「ひゃっ」と声が出てしまった。

「何?冷えぴた貼ったのに顔赤くなってるんだけど。どういう事?」

「お、お兄ちゃんは気にしなくていいの!!」

「お、おう…」

何かおかしな返答をしてしまった気が…。いやこれは風邪のせい、小町は悪くない。
さっきのと相まって何だか急激に恥ずかしくなってきた。顔に血が上るのが分かる。
そのせいか頭がふらふらし倒れるように寝転び目を閉じる。

「氷枕敷くから頭のけて欲しいんだが…。大丈夫か?」

「頭重いぃ……」

「大声出すからだ…。ちょっと持ち上げるぞ」

すっと頭が持ち上がる。
ふぇ?と変な声を出しながら目を開けると、お兄ちゃんの顔が目の前にあったので驚きのあまり思わず抱きついてしまった。

「ちょ、小町さん?敷きにくいんですけど…。てか本当熱いな。熱上がってるなこりゃ」

「う~……」

恥ずかしさと暑さで頭がボーっとしてくる。
手に力が入らなくなり倒れそうになったのを、お兄ちゃんが受け止めてゆっくりおろしてくれる。
氷枕のつめたさが肌に心地よい刺激となって染み渡る。

「小町、口開けろ。薬飲ますぞ」

薬特有の味の後に冷たい水が流れ込んできた。ゆっくりとそれをのみほす。

「これでちょっとしたらマシになるだろ。また時間おいて見に来るから寝とけ」

そういって頭をぽんぽん叩く。有難うお兄ちゃん。
心の中でお礼を言うと私は眠ってしまった。

それからちょっと寝て目を覚ましたところで今に至る。熱はだいぶ下がったみたいだ。

時間は11時半ばを少し回ったくらい。お腹もすいてきたし明日には良くなっているだろう。
寝返りをうち、温くなった氷枕に頬をくっつけると、中で水の動く音がした。
まだ熱を持った体にはそれは冷たく感じ、少しの間堪能する。眠気は冷めてしまった。


静まり返った部屋を見渡す。
勉強中は集中していて気にならなかったが今ではそれが寂しさとなって刺さるような感じがした。



「……………」


もし総武高に落ちたらどうしよう。


私以外にも総武高志望の子は何人かいるけど、全員私より成績がいい。
そんな子たちより勉強時間が少ないのに合格するのは相当厳しくなるだろう。


発表の日、掲示板の前で私はどうするだろう
悲しくて泣く?強がって笑う?驚いて表情も出ないかも
他の子たちは笑って喜びあっているのかな

そんなのは絶対嫌だ
お兄ちゃんと同じ学校に行きたい


「………嫌、…そんなの……絶対」


休んでいる暇はない


「……勉強しなきゃ…」

私は机に向かい、おびえるようにシャーペンを動かし始めた。

目を覚ますと見慣れた天井が見えた。


目を覚ますと?


勢いよく体を起こすと隣にお兄ちゃんがいた。

「起きたか、小町」

いつもより声が幾分か低い。怒っているのがすぐに分かった。
私が状況を飲み込めずキョロキョロしているとお兄ちゃんがゆっくり口を開いた。

「俺がお粥持って来たらお前が机に突っ伏してたんだよ。大方勉強して熱が上がったんだろ」

「ったく……、寝とけっていっただろ」

お兄ちゃんが頭に手を添える。何だか雪乃さんみたい。
俯き視線を下にする。モヤモヤした気持ちが胸につっかえていた。

「……で、何かあるんだろ?話してみろよ」

「…やっぱり分かっちゃうか」

「何年お兄ちゃんやってると思ってんだ。むしろかわいい妹の事なら全部わかるまである」

「それは流石にキモいよお兄ちゃん…」

「ほれ、いいから話せ」

私は頷き、ゆっくり話し始めた。





話し終わる頃には泣いてしまっていた。
嗚咽交じりで途切れ途切れだったが、お兄ちゃんは黙って頷いてくれた。

「………大丈夫か?」

頭を撫でてくれる。余計に涙が止まらなくなってしまった。
それでも撫でる手は止まることはなく、泣きやむまで優しい感触が私を包み込んでいた。

――――――――――――

――――――――――――

「落ち着いたか」

「はい」

数分してようやく落ち着いた。こんなに泣いたの何年振りだろう。

「ようするに総武高に受かるか不安になったと」

全部ではないがこれ以上は言えない。主に私が恥ずかしいから。

「病気の時は気が弱くなって余計なこと考えちまうからな。何なら黒歴史思い出して余計熱が上がるまである」

それはお兄ちゃんだけだよ。
口から息が漏れ軽く笑ってしまった。こんな時でもお兄ちゃんはぶれないなぁ。

「というか他の志望者が合格するかわからないしな。当日寝坊したりインフルエンザになったり
試験中急な腹痛になったり鉛筆の芯が全部折れたり可能性はいくらでもある」

「本当にぶれなさすぎだよ…」

「まあ聞け。そもそも人と比べるのが間違ってる。そいつらが全員落ちたからと言って
小町が受からないわけじゃない。トップ合格とギリギリ合格でも合格は合格で結果は一緒だ。
小町が合格ラインに入れればいいんだから他のやつらと比べる必要なんかねえよ」

でも、と言い返そうとするとお兄ちゃんは遮るように続けた。

「小町は頑張ってる。生まれてからずっと一緒にいる俺が言うんだから間違いない。
俺が見てきた中で一番頑張ってる。だから”大丈夫”だ。」

胸が熱くなり、目に涙が溜まっていく。すぐに頬をつたい、下にこぼれた。
私はお兄ちゃんに飛びついてまた声を上げて泣いた。

胸のモヤモヤはどこかへ行ってしまっていた。

―――――――――――――

時刻は夕方。あの後泣き疲れて寝てしまい、今は起きて熱を測っている。

「36.7℃。もう大丈夫そうだね」

「元から熱は低かったからな。でも今日はまだ安静だぞ」

「かしこまりっ」

「……ちょっと電話してくる」

「え!?お兄ちゃんが電話!!?」

「うるせえな、黙って寝転がってろ」

そういうと扉の外へ出てしまった。

ゆっくり目を瞑る。相も変わらず静かな部屋だけど今はそれが心地よかった。
腕を頭の上にして体を伸ばす。寝てばかりいた体が程よく伸び気持ちいい。
息を吐いて力を抜くと布団に体が埋まるような感じがした。

「……ああ、有難う。それじゃあ」

電話を切ると同時にお兄ちゃんが戻ってきた。
ポケットにしまうと同時にお兄ちゃんがにやけながら言う。

「よし小町、お腹減ってるか?」

「何々?お兄ちゃんが作ってくれるの?」

「八幡特製ホワイトシチューだ。味は保証するぞ」

「野菜炒めて水とルーで煮込むだけだからね」

「そこは突っ込むなよ…。ほら、行くぞ」

お兄ちゃんが手を差し出す。私は迷うことなくそれを掴んだ。
私の手を引いてお兄ちゃんが歩き出す。
私は声に出さず、心の中でありがとうを呟いた。

――――――――――――――

次の日、体調も回復し起きてリビングに行くと両親がいた。

「あれ、二人とも今日休みだったっけ?」

「無理言って有給変えてもらったの、冬休みももう終わりだし家族で出かけようって」

「寝なくて大丈夫?」

「夜に外食に行くつもりだから昼寝れば大丈夫よ」

「良かった。でもどうしていきなり?」

「どっかの誰かさんが珍しく真剣にお願いしてきたからね、しかも自分以外の事で」

「え、それって…」

「ちなみに、八幡は今コンビニ行ってるわよ」

お母さんがウインクをしている。つまりはそういうことだ。

「小町もコンビニ行ってくる!有難うお母さん!」

「行ってらっしゃい、温かくしていくのよ。」

それを聞いてすぐコートを羽織る。
お父さんが何か話してた気がするけど気にせず玄関に向かう。

お兄ちゃんに会ったら正面から思いっきり抱き着いてやる!

扉を開けると冷たい空気が頬を赤く染める。
だがそんなことは気にも止めず、白い息を吐きながら私はコンビニへ向かって走り出した。





お目汚し失礼しました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年07月15日 (金) 20:51:16   ID: nY4CQcGF

続編うれしいです!夜にゆっくり読みたくなりますね!無事合格してほしいです。

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