【艦これ】艦娘童話 みかずきんちゃん (46)

むかーしむかし

ってそんなに昔ではありませんが

ある鎮守府に駆逐艦三日月が配属されていました。

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三日月は、一見すると特徴のない女の子でした。そうかと思えば何かあるごとに「すげぇよミカは!」と言われることに戸惑っていました。

真面目で頑張り屋さんの三日月ですが、自分にも特徴があればなぁ、といつも思っていました。

そんなある日、三日月は鎮守府の倉庫から不思議な頭巾を見つけます。


三日月「これは? なんでしょうか?」

明石「あら?それは『防空頭巾』ね」

三日月「防空棲姫?」

明石「頭巾よ、頭巾。頭に被って空襲の火の粉や瓦礫から身を守るのに使っていたの」

三日月「へぇー」すぽっ

明石「あらあら、似合うじゃないの。良かったら持って行っていいわよ」

三日月「わぁ、本当ですか?ありがとうございますっ!」

こうして防空頭巾をもらった三日月は、遠征にも出撃にも頭巾をかぶって出かけるようになりました。
中にはせいぜい綿が入っている程度ですが、なぜか装甲が丈夫になった気がするのです。


睦月「にゃしい。三日月ちゃん、頭巾が似合ってるねっ」

如月「とっても可愛らしいわ。髪も潮風や爆風から守れそうね」


お友達にも褒めてもらって、三日月はすっかり頭巾が気に入りました。

可愛いだけでなく、戦闘でも役立ちました。
深海棲艦との一騎打ちの際、三日月は「防空頭巾が無ければ即死でした」という言葉を残しています。

そんなわけで防空頭巾は三日月のトレードマークになりました。

いつしか人は三日月のことをこう呼ぶようになりました。

ーー『みかずきん』と。

ある日、みかずきんは間宮さんにおつかいをたのまれました。


間宮「みかずきんちゃん、おつかいをたのんじゃって申し訳ないんだけど、鳳翔さんのところへ食材を届けてくれないかしら?」

みかずきん「はいっ、鳳翔さんの小料理屋さんですね!」

間宮「うん。お料理に使う大切な食材なの」

みかずきん「おまかせください!速度を生かした強行輸送は得意とするところです」フンス


三航戦のエスコートとしても、鼠輸送の経験者としても、みかずきんは大いに張り切りました。
大きなドラム缶…ではなく、大きなバスケットに食材を詰め込むと元気に出発しました。

間宮さんはその姿を微笑ましく眺めていましたが、ふと気になることを思い出してみかずきんを引き留めました。


間宮「あ、そうだ。みかずきんちゃん。最近は道中が物騒になったって聞くから、くれぐれも気をつけてね。いろんな怪しい人が出るって」

みかずきん「あ、あやしい人ですか…十分に警戒して進みます」

間宮「そうね。特に狼提督には気をつけるのよ」

みかずきん「お、おおかみていとく?」

間宮「えぇ、提督をしていた者の成れの果てと言われているの。可愛い駆逐艦を見つけると森の奥へ連れ去って食べてしまうそうよ」

みかずきん「あわわわ…食べられちゃうんですか」

間宮「みかずきんちゃんは可愛いから心配ね。怪しい人にはついて行っちゃダメよ」

みかずきん「はーい」


道中には危険がいっぱいのようです。はたしてみかずきんは鳳翔さんのもとへおつかいに行くことができるでしょうか?



みかずきん「つーきーの光にみーちびかれー♪」


バスケットを片手に歌を口ずさみながら歩くみかずきんちゃん。ごきげんです。
ここまで特に何事もなく歩いてきたみかずきんちゃんは、とある橋のたもとで足を止めました。
鳳翔さんのお店へ行くにはこの橋を渡らなければいけないのですが…?


みかずきん「あれ?橋が封鎖されています…」


なんと、橋には『このハシ渡るべからず』という看板があって通行止めになっています。
みかずきんは困った顔で立ち往生してしまいました。


みかずきん「ど、どうはさましょう…」


と、そこへ…


イッ級さん「ふふふ。ここを通す訳にはいかないよ」

みかずきん「イ級!? 深海棲艦がこんなところにまで現われるなんて!」


なんと艦娘がいつも戦っている深海棲艦と出会ってしまいました。みかずきんは身構えます。

イッ級さん「おっと、僕はキミと戦うつもりはないよ。僕はこの『ハシ』を誰かが渡らないように見張っているだけなんだから」

みかずきん「どうしても橋を渡ってはいけないんですか?」

イッ級さん「そうとも!真面目な艦娘さんが、この標識を違反するなんてことするわけないよね。きっと違反したら軍法会議ものだよ。同型の姉妹艦にも累が及ぶかもしれないね」

みかずきん「あぅ」


みかずきんは想像したら真っ青になってしまいました。自分だけならともかく皐月ちゃんやもっちにまで迷惑がかかってしまうのです。軍法会議になんてなってしまったら、如月ちゃんが色仕掛けでお偉いさんを籠絡しても助からないかもしれません。
それにしてもどうして、イッ級さんはみかずきんにこんな事をするのでしょうか?いつも艦娘とは戦っているから?


みかずきん「困りましたぁ…ここを越えないと鳳翔さんの所へは行けないのに…」

イッ級さん(ふふ、困ってる困ってる。みかずきんちゃんは困ってる顔も可愛いなぁ)


なんとこのイッ級さん、深海棲艦なのに艦娘のみかずきんにホの字のようです。好きな女の子をいじめちゃうなんて、とんだドS…いえ小学生男子みたいで初々しいですね。

さて、みかずきんはこの状況をどうするのでしょうか?

イッ級さん(よぉし。存分に困らせたところで僕がとんちの効いた解答を示してやろう。そうすればみかずきんちゃんのハートは掴んだも同然だ。わざわざみかずきんちゃんに先回りして立て看板で封鎖した甲斐があった)


イッ級さん、とんだ自作自演です。こんな事で女の子の関心をひけると思っているのでしょうか。


みかずきん「うーん、うーん… あっ、そうだ!」

イッ級さん「えっ?」(まさか?正解に気づいた!?)

みかずきん「『ハシ』を渡ってはいけないのなら…」

イッ級さん「う…っ」

みかずきん「橋ごとあのイ級を撃破しましょう!」

イッ級さん「」

イッ級さん「いやいやいや、橋がなくなったら君も困るでしょ」

みかずきん「致し方ありません。深海棲艦を見逃す方が後に禍根を残します。負けたくはありません、戦いなのですから」

みかずきん「それに私は艦娘の力で水の上を移動できますし、橋がなくてもなんとかなります」

イッ級さん「あっ、そっかぁ! いや、そうじゃなくって!僕は戦いに来たんじゃなくて君と、その…」

みかずきん「?」

イッ級さん「えっと…君の…こと…」

みかずきん「言い淀むなんて怪しいです!何か企んでいますねっ! 駆逐艦イ級、やはり見逃すわけにはいきません!覚悟しなさい!」

イッ級さん「へ?」

みかずきん「月に代わってぇ…お仕置きです!!」


致し方ない、と言いながらババンッ!と決めゼリフまで用意しているみかずきん。意外とノリノリです。
あわれイッ級さんはみかずきんの砲撃で橋ごと吹き飛んでしまいました。


イッ級さん「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! 面白かった?じゃあ〜ね〜」ヒューン キラーン


みかずきん「ふぅ、時間を取られてしまいました。はやく鳳翔さんの所へ食材を届けないと」


みかずきんのおつかいは続きます。

みかずきんは鳳翔さんのもとへ急ぎます。
速度を生かした素早い輸送がみかずきんの持ち味です。真面目なみかずきんには手を抜くことなんて考えられません。
一生懸命、おつかいの荷物を運びます。

ところが、そんなみかずきんの前にーーー


いたずらウサギ・卯月「あーっ!? みかずきんぴょん!!どこ行くの?」

みかずきん「あらっ? うーちゃん。 えっとね、今から鳳翔さんのとこに、お料理の食材を持っていくところなの」

卯月「ほほーぅ…むっ? うーちゃんの大好物のニンジンもあるぴょん!一本頂戴するぴょーん!」サッ

みかずきん「あぁ〜っ!? 勝手に持っていかないでくださいっ!それはお届けしなきゃいけないものなんですっ!」

卯月「少しくらいバレないって! そうだ、これから金剛さんと熊野さんのお茶会があるぴょん! みかずきんも招待客にしてあげるから、それで手を打つぴょん! 紅茶もお茶菓子も美味しいよ!」

みかずきん「何で金剛さん達のお茶会なのに、うーちゃんが参加権を管理してるんですか… いえ、そもそもお届け物を横流しした挙句、お使いの途中に寄り道なんてできませんよ!!」

卯月「むーっ!みかずきんは真面目すぎるぴょん。うーちゃんが適度な息抜きを教えてやるぴょん!えいっ!」バッ

みかずきん「あっ!?」


なんといたずらウサギの卯月によって、お届け物の食材がバスケットごと強奪されてしまいました。
これではおつかいを完遂できません。
みかずきんは、走って逃げ出すいたずらウサギを必死で追いかけました。


みかずきん「待ってぇ、待ちなさいぃっ」

卯月「ぷっぷくぷぅ、追いつけるものなら追いついてみるぴょん」

みかずきん「はぁ、はぁ、見失ってしまいました… どうしましょうか」

「ヘーイ、そこを行くのはクレセントガールではありませんカー」

「みかずきんさん? そんなに慌ててどうなされたんですの?」

みかずきん「あ…」


いたずらウサギを追ってきたみかずきんは突然声をかけられました。そこにいたのは戦艦の金剛さんと重巡洋艦の熊野さん。みかずきんも見知った人たちでした。
ところがところが、いつもと大きく違ったところがありました。


みかずきん「ええっと…おふたりともその格好は?」

熊野「よくぞ聞いてくれましたわ!」

金剛「これぞtea time用のnew costume! お姫様ドレスデース! 素敵デショ?」

熊野「古風でエレガントな衣装でしょう?髪飾りも電探でなくてティアラでしてよ!」


なんと金剛さんと熊野さん、お茶会の雰囲気を出すために服装まで変えてきたようです。デースデースですわ、と姦しくまくしたてなければ本当に物語の中のお姫様みたい。なんとも優雅にお茶会の準備を始めています。

プリンセス・コンゴウ「ン〜、良い香り。この茶葉はかなりの上物デスネ」

熊野姫「ごく限られた者にしか支給されない高級な紅茶。レディに、いえ、プリンセスにのみ許された特権でしてよ」

プリンセス・コンゴウ「ところでクレセントガールはどうしてこんなところまで?」

みかずきん「ええっと…実はうーちゃんに…」

熊野姫「まぁ、あのいたずらうさぎはまた人様に迷惑をかけて。みかずきんさんもお困りでしょう?」

プリンセス・コンゴウ「それならワタシたちにおまかせネ」

みかずきん「うーちゃんが何処に行ったかわかるんですか?」

プリンセス・コンゴウ「わが鎮守府が誇るトランプの兵隊に探させマース」

みかずきん「トランプ?」

プリンセス・コンゴウ「フュージョン・ジャァック!」

???「誰がトランプみたいに薄っぺらいっちゅーねん!」


プリンセス・コンゴウが妙にダンディな声で叫ぶと、どこからともなく龍驤さんが現れました。龍驤さん、今日はなぜか艦載機のお札ではなく、かわりにトランプのカードを持っています。

熊野姫「まぁまぁ、龍驤さん。今日は貴女の兵隊さんにご協力願いたいんですの」

プリンセス・コンゴウ「まーたいたずらウサギが暴れまわっているようデース。貴女の力で捕まえてあげてくだサーイ」

熊野姫「みかずきんさんがお困りなんです。お礼に鈴谷に神戸牛を買って来させますわ」

トランプ兵・龍驤「ほーぅ。しゃーない、いっちょウチの力みせたるわ」

みかずきん「あ、ありがとうございます。急なお願いなのにすみません」

熊野姫「ふふ。いつも頑張ってるみかずきんさんですもの。わたくしたちも力になりますわ」

プリンセス・コンゴウ「その通りネ。それにあのいたずらウサギにはワタシたちも困ってイマース。この前なんか、紅茶を緑茶にすりかえられたうえに、お茶菓子をつまみ食いされマシタ。カップに注いだら緑色で驚きマシタヨ、ハハハ」

みかずきん(途中で気づかなかったのかな…)

トランプ兵・龍驤「よーし、ほんならぁ…トランプ兵のみんな!お仕事お仕事ぉ!」


龍驤さんがトランプを投げるとあら不思議、トランプの札に手足が生えてまさしくトランプの兵隊になって散っていきました。


みかずきん「すごぉい!」


一方その頃いたずらウサギは…


いたずらウサギ・卯月「ぴょーん。次はどんなイタズラをしようかなぁ? 分の悪い賭けとか言ってイカサマダイスでしれーかんと賭け事してぼったくろうかなぁ?」

チョンチョン…

いたずらウサギ・卯月「それとも足柄さんのお見合い写真を画像の荒い物にすり替えるのも面白いかもしれないぴょん」

ツンツン…

いたずらウサギ・卯月「あ! 初霜にも防空頭巾をかぶせて「みかずきん2号」に仕立て上げたりして! 睦月型の1号、初春型の2号だぴょん! ぷぷぷっ」


ウサギさん、イタズラというには度が過ぎています。なんと恐ろしいことを考えるのでしょうか。三日月と初霜を一緒くたにするなど神をも、いえ天使をも恐れぬ所業です。
おや?ところで誰かがいたずらウサギさんを突っついていますよ。

チョイチョイ

いたずらウサギ・卯月「むーっ! さっきから誰だぴょん!! うーちゃん、今イタズラのアイデアを考えるのに忙しいぴょ…」

トランプの兵隊「エボリューションキング!」

いたずらウサギ・卯月「」

トランプの兵隊「ロイヤルストレートフラッシュ!!」

いたずらウサギ・卯月「ウゾダドンドコぴょぉぉぉぉぉぉぉん!?!?」

トランプ兵・龍驤「どやぁ!ウチの兵隊すごいやろ! 褒めて褒めて〜」

熊野姫「お手柄ですわ。さっそくメイド鈴谷に神戸牛を用意させますわ」

トランプ兵・龍驤「わぁい」

ーーー
その頃の鈴谷

メイド鈴谷「もーっ!なんで鈴谷がメイド役なの〜? 熊野人使い荒いよぉ!」

ーーー

みかずきん「本当にありがとうございました。バスケットも取り返したし、これで鳳翔さんのもとへお使いに行けます」

プリンセス・コンゴウ「お使い頑張ってクダサーイ。今度また一緒にお茶しまショ」

みかずきん「はいっ!その時はよろこんで!」

みかずきん「ところで、捕まったうーちゃんはどうなったんですか?」

プリンセス・コンゴウ「知りたい…デスカ?」

みかずきん「ゴクリ…」

プリンセス・コンゴウ「今はオシオキを兼ねて…」


いたずらウサギ・卯月『あ”あ”あ”あ”あ”ああああああぁぁぁぁっ』sound only


みかずきん「あ、あんまり酷いことは…」

プリンセス・コンゴウ「すり傷を負った所に辛子味の高速修復味噌を塗っているだけだからNo problemデース」

みかずきん「それなら大丈夫ですね!」


みかずきんのおつかいは続きます。

さて、いたずらウサギの妨害も切り抜けたみかずきんは鳳翔さんのお店へ急ぎます。


みかずきん「うーちゃんのイタズラにもこまったものです。はやく鳳翔さんの所へ行かないと」

「みかずきんちゃーん!」

みかずきん「はい?」

白雪「こんにちは。みかずきんちゃん」

みかずきん「白雪ちゃん! それに吹雪ちゃん達も!こんにちは」

吹雪「みかずきんちゃん、今日はお使い?」

みかずきん「ええ、間宮さんに頼まれて、鳳翔さんの所へ」

磯波「みかずきんちゃん、鳳翔さんのお店を手伝ったりしてるものね」

みかずきん「三航戦のエスコートですから」エッヘン

初雪「はっ!? もしかして従業員割引とかあったり! ずるい…」

深雪「いーなー!アタシも欲しいぜ」

叢雲「アンタたちはまず、みかずきんを見習って手伝いなさいよ!」

みかずきん「あの? 特型のみんなで集まって何してるの?」

綾波「実はね〜、白雪ちゃんが翔鶴さんから林檎をたくさんもらってね。今からみんなで頂こうかと」

敷波「空母寮に置いておくと赤城さんと加賀さんが食べ尽くしちゃうからおすそ分けだってさ」

ーーー

その頃の空母寮

赤城「加賀さん、加賀さん、加賀さんよ。ここにあった林檎を食べてしまったのはだあれ?」

加賀「さっき赤城さんが自分で食べたでしょう。私のは譲れません」

赤城「」

ーーー

みかずきん「あはは… あっ、それで皆で林檎を洗ってるんだね」

白雪「わたし、林檎は良く洗って皮を剥いてから食べる派なんです」

初雪「『白雪』ちゃんだけに毒林檎かもしれないし…」

吹雪「もーっ!初雪ちゃんてば、翔鶴さんがそんなことするはずないでしょ!」

初雪「冗談…」

綾波「あ、でも…あながち冗談でもないかも」

みかずきん「えっ?」

磯波「こ、怖いこと言わないでよぉ」

敷波「いや、別に翔鶴さんが悪いというわけじゃなくてさ」

深雪「なんかあったの?」

綾波「私達より前に第七駆逐隊にも林檎が届けられたんだけどねぇ」

敷波「潮が瑞鶴さんにもらった林檎は平気だったんだけど、曙が翔鶴さんにもらった林檎は何故か虫喰いだったり傷んでたり酸っぱかったりして、ね」

吹雪「あぁー…」

みかずきん「被害担当…」

白雪「ま、まぁ、翔鶴さんが悪いわけではないですし」

みかずきん「食べる前に傷んでないかチェックすれば大丈夫ですよ!」

磯波「たくさんありますし、余ったらジャムにでもしましょう」

深雪「いいねぇ!」

ワハハハッ



叢雲「アンタたち! 喋ってるヒマあったら手伝いなさいよ!」

吹雪「わーごめん!? 叢雲ちゃん、静かだと思ったら1人で作業してたの!?」

叢雲「アンタたちに任せてたらいつまでたっても進まないでしょっ!」

白雪「ごめんなさーい!」

みかずきん「ふふっ、吹雪型は皆さん仲良しですね!」


こうしてみかずきんは、白雪と7人の駆逐艦(吹雪、初雪、深雪、叢雲、磯波、綾波、敷波)から、お土産に林檎を一つ貰って先へ進みました。





ちなみに曙ちゃんは傷んだ林檎を丸かじりしてお腹を壊しちゃったとかナントカ。七駆の被害担当艦キタコレ。

みかずきん「鳳翔さんのお店までもう少しです。あら?」


眠り姫・望月「…zZZ」

みかずきん「……」

眠り姫・望月「…zZZ」

みかずきん「……」

眠り姫・望月「…zZZ」

みかずきん「……」


お使いの途中でみかずきんは立ち止まってしまいました。なんと、みかずきんのお友達の望月ちゃんが木陰で眠りこけています。
普段のみかずきんなら「もっち!こんな所で寝転んでいたら駄目ですよ!」と蹴っ飛ばすところですが、今日はそうもいきません。望月ちゃんはお昼寝の邪魔が入らないように自分の周りをイバラで囲んでいるのです。これでは蹴っ飛ばしたらみかずきんの足にトゲが刺さってしまいます。


みかずきん「………」


みかずきんはしばらく考えた後、『面倒だからブラはしていません』『男なら誰でもいい』という貼り紙をして先へ進みました。

みかずきんのお使いはあと少しです。

みかずきん「やっと鳳翔さんのお店へ到着!ですっ!」

みかずきん「途中で色々寄り道しちゃったけど…幸い怖い狼提督には会わなかったし」

コンコン

みかずきん「鳳翔さーん。こんにちはぁ! 三日月でーす!」

シーン

みかずきん「?」

みかずきん「あれ?返事が無い? 鳳翔さーん?」

みかずきん「お留守でしょうか? 今日もお店は開店するはずなのに…」

ガチャッ

みかずきん「あっ!? 鳳翔さ…」

鳳翔?「……」

みかずきん「鳳翔さん?」


みかずきんの呼びかけに応じて、お店から鳳翔さんが出てきました。けれどなんだか様子がおかしいです。鳳翔さんはいつもと違って頭に三角巾をつけ、マスクをかぶり、大きなエプロンで体を隠しているように見えます。まるで“鳳翔さんとは別人”みたいに思えます。
みかずきんは鳳翔さんに尋ねました。


みかずきん「あの? 鳳翔さん? 今日はどうして三角巾やマスクを?」

鳳翔?『お掃除をしていたんです…』

みかずきん「えっ?あの…声がおかしくないですか?」

鳳翔?『それは埃で喉を痛めてしまったのでしょう』

みかずきん「なんだか体が大きくなってませんか?」

鳳翔?『それは改修で飛行甲板を大型化したからよ』

みかずきん「そう…ですか」

鳳翔?『それより、よく来てくれたわね。みかずきん。お使いをわざわざありがとう』

みかずきん「いえ…」

鳳翔?『まぁ、あなたなら「こんな任務」簡単よね』

みかずきん「……あの、もうひとつ聞いていいですか」

鳳翔?『なにかしら?』



みかずきん「本物の鳳翔さんはどこです?」ガシャン



鳳翔?『…』


なんと!みかずきんは鳳翔さんに単装砲を突きつけました。それに本物の、とはどうしたことでしょう。鳳翔さんは目の前にいるのに…

まるでみかずきんは“別人が鳳翔さんになりかわっている”と言っているみたいです。

鳳翔?『…どうしたの?みかずきんちゃん? 本物は、だなんて。私が鳳翔よ』

みかずきん「鳳翔さんは「こんな任務」なんて言いませんよ」

鳳翔?『そ、そうね。お使いなんて任務のうちに入らないものね。子供扱いしちゃったかしら。ごめんなさい。貴女たちは小さくても立派に戦闘に耐えられる……』

みかずきん「鳳翔さんはお使いを「こんな任務」だなんて軽んじません!! 警備も輸送も等しく全力であたるように言っています!!」

鳳翔?『!』

みかずきん「あなた、誰ですか? 鳳翔さんをどうしたんです!?」

鳳翔?『ふっ…ふふふ…くっくっくっ。さすがだなぁ、みかずきんちゃん?』

奇妙、不審、危険信号…その人物が発する雰囲気だ…
それはみかずきんの肌をざわつかせるのに十分すぎるほどだった…



鳳翔の姿をした謎の人物は装束を脱ぎ捨てた。みかずきんが鳳翔の体型が大きくなったと感じたのも間違いではなかった。なぜなら現れたのは男だからだ。いったいどうやって声音まで真似してなりすましていたのか。

だが、みかずきんはその事には触れず、質問を繰り返す。

「貴方は誰?鳳翔さんをどうしたんですか?」

声に怒気がこもり、単装砲をさらに突き付ける。

「怒るなよ〜。可愛い顔が台無しだぁ……っと、危ねえから撃つなよ〜。 まずは安心しなよ。鳳翔さんは俺も会ってないからな。ここに来たときから留守だったんだ」

男は気さくに話しかけるが、みかずきんは警戒をとかない。彼女は黒髪美少女な外見だが、歴とした艦娘…軍人だ。知らない人にはついていかないように、知らない人の話に騙されないように訓練されている。

「それで?貴方は何者なんです?どうして鳳翔さんのお店にいるんです?」

「それはねぇ、みかずきんちゃん。キミがお使いにくるって情報を得たからさ。お使いにきたキミを…」

男はニンマリと嗤って大きな口を開けた。

「この狼提督が喰っちまうためさぁ!!」

さぁ大変!なんと狼提督が鳳翔さんに化けていたのです!

ダァン!

みかずきんは思わず単装砲を発砲しました。
砲弾は狼提督の大きく開けた口に飛んでいき、口で受け止める形になった狼提督は、立ったまま動かなくなりました。

みかずきん「はぁ、はぁ… 驚きました。まさか噂の狼提督が鳳翔さんのお店に侵入しているなんて…」

驚いたみかずきんでしたが、砲撃を口に受けては狼提督とはいえひとたまりもないはずです。深海棲艦だってやっつけてしまう単装砲なんです。

みかずきん「見た目は私たちの司令官とあまり変わらない男の人ですね。艦娘を食べてしまうなんていうからもっと恐ろしい姿かと思いましたが」

みかずきんは動かなくなった狼提督を覗きこみました。

その時です!

薄暗い室内に邪悪な声が木霊する…

「喰っちまうのは間違いないぜぇ!」

口に入った砲弾を噛み砕き、狼提督がギョロリと目を見開いた!

「っ!?」

倒したと思った狼提督が動き出し、あわてたみかずきんはもう一度単装砲を向けようとする。
が、発射態勢に入る前に狼提督の蹴りが炸裂し、みかずきんは武器をはじかれてしまう。

「しまっ…」

息つく暇なく、今度は狼提督の拳がうなった。
みかずきんの小さなボディにめり込み、鳳翔さんへのお使いの品を床にばら撒きながら、後方へ吹き飛ばされた。

あっという間の形勢逆転。
体を殴られた衝撃でゲホゲホと咳き込み、動けないでいるみかずきんを見下ろし、狼提督が笑う。
手馴れた手つきでみかずきんを縛り、猿轡を噛ませ、完全に身動きできなくさせる。

「くっくっくっ…喰っちまうのは森の奥のアジトに連れて行ってからだがな。じっくり調理して…出来上がった後は、海軍のお偉いさんに売りつける。たっぷり可愛がってもらいな」

狼提督の下卑た笑いをみて、みかずきんは縛られた体を震わせる。これから何をされるか、どんな運命を辿るか想像できないほど彼女も幼くはない。お使いに行った先で、敵機からの爆撃のごとく突如降りかかった災難に、猿轡を噛む歯がガチガチと震え、悔しさに涙が滲んだ。

「さて、誰かに見つかる前に連れていくか」

狼提督がその薄汚い手をみかずきんに伸ばす。
みかずきんはせめてもの抵抗のつもりか、涙の浮かんだ目をぎゅっと閉じた。

(ごめんなさい。司令官。もっと一緒に…戦いたかった…)




その時だった!




???「射撃は苦手なんだがな…四の五の言ってはいられんか」

狼提督とみかずきんの間に銃撃が走りました。
びっくりした狼提督とみかずきんは一緒になって銃弾の飛んできたほうに顔を向けます。

そうして二人とも驚きました。

なんとなんとそこにいたのは、みかずきんの司令官と、お店の主・鳳翔さんだったのです。

鳳翔「食材を届けてくれるみかずきんちゃんが遅いから外に様子を見にいったのですが、まさか入れ違いになった上にこんな事になっているなんて…心配だから提督にも来てもらって正解でしたね」

みかずきん「ほーひょーはん…モゴモゴ」

鳳翔「もう大丈夫ですよ。提督が来たからには…」

狼提督「ふん!貴様のような欠陥鎮守府の司令に何が出来る」

司令官「…」

鳳翔「何と言っても私達の提督も狼ですから」クスッ

みかずきん「?」




鋼鉄の孤狼司令官「貴様を撃ち貫くことはできる」

鋼鉄の孤狼司令官「いくぞ、鳳翔。奴の足を止めろ」

鳳翔「参りましょう」

鋼鉄の孤狼司令官は鳳翔さんに声をかけ、狼提督と戦いを始めました。

まず鳳翔さんが狼提督に向かって艦載機の矢を連続して放ちます。

鳳翔「いつまでも演習というわけにもいきません。それそれそれ〜っ」

艦載機からの機銃が狼提督に降り注ぎます。
これでは狼提督もたまりません。思わず足を止めてしまいます。
その隙に鋼鉄の孤狼司令官が飛び込み、眼と鼻の先から銃撃をお見舞いします。あまりの痛みに狼提督は叫びます。
しかし鋼鉄の孤狼司令官の攻撃は終わりません。今度は軍刀を抜くと一気に突き刺し、狼提督の体を持ち上げます。

鋼鉄の孤狼司令官「鳳翔! ここに撃ち込め!」

鳳翔「致し方ありませんね。 せぇ〜のっ!!」

ドゴォォン!!

二人の攻撃が交差し、狼提督は大爆発して吹っ飛んでしまいました。

鋼鉄の孤狼司令官「これが俺たちの…」

鳳翔「切り札よん! って、あらやだ、私ったら…」///

鋼鉄の孤狼司令官「無事だったようだな」

みかずきんは縄を解かれ、自由の身です。
間一髪のところで助けられ、大好きな司令官と鳳翔さんに抱きつきました。

みかずきん「ううっ、ありがとうございました、司令官、鳳翔さん」

鳳翔「みかずきんちゃんが無事で本当によかったわ。心配で気が気じゃなかったんですから」

みかずきん「ごめんなさい。私がまだまだ未熟でした。もっと強くなって…司令官や鳳翔さんに心配かけないように…します…から…」ガクッ

鳳翔「み、みかずきんちゃん?だいじょうぶ? って、寝ちゃってますね」

みかずきん「すぅ、すぅ…」

鋼鉄の孤狼司令官「緊張の糸が途切れたか…」

鳳翔「ふふ…今はゆっくりおやすみさない。三日月ちゃん」


こうして、みかずきんちゃんのおつかいは意外な終わり方を迎えました。
鋼鉄の孤狼司令官におんぶされて帰る途中、みかずきんは微睡みながら思いました。

みかずきん(司令官みたいに強くならないと。私も鋼鉄の孤狼を目指して、もっと頑張らないと、ですね!)







数日後、さしあたっては鋼鉄の孤狼を目指す前に餓えた孤狼を目指そうと、カツカレー作りに励むみかずきんの姿があったそうです。

めでたしめでたし

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