女「未来兎?なにそれ」 (72)

女「あー仕事疲れた」

女「あ、カレからメール来てる」

女「『今日家に来ないか?』って…ありえない…今日平日だよ?がっつきすぎでしょ。さすがに引くな~」

女「この人とももう終わりにしよっかな。今回は長続きしそうだったんだけどな~」

女「『ごめんなさい。もう別れましょう』…送信っと」

女「はぁ…」

これでもう何人目だろう。そろそろ片手じゃ収まりきらないくらいにはなってきたな。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1464356330

どうしてもコレっていう男性に出会えない。
付き合い始めはめちゃくちゃ好きなんだけど、どうもすぐ冷めちゃうっていうか…

女(話してて楽しくないんだよね〜)

女「よし。次は話してて楽しい男を選ぼう」

女「どっかにいないのかな〜すっごく私と気があうイケメン」

女(仕事場にいたら楽なんだけどな〜)

女(ん〜)

そのとき、仕事場でよく話す異性の同僚の顔が浮かんだ。しかし…

女(顔がね…フツメンすぎかな…)

自分でいうのもなんだが私は自身のルックスには自信がある。
だから少しくらい高望みしてもいいんじゃないかなとも思っている。現に今まで付き合ってきた元カレはみんな世間でいうイケメンの部類だった…と思う。

女「また出会い系で探せばいっか…」

女(明日はまた同僚に愚痴でも聞いてもらおっと)

その日の私は彼氏と別れたはずなのに何故か落胆することもなく、むしろ同僚との会話の種ができて明日の楽しみが一つ増えたというワクワク感を胸に眠った。

女「ちょっと同僚くん聞いてよぉ〜」

同僚「んあ?どうしたんだ?」

女「昨日彼氏と別ちゃった…」

同僚「ふーん。で、どっちから振ったんだ?」

女(『ふーん』って…そんな興味なさげに…)

女「そりゃあまぁ…私からだけどさ」

女「だってさ〜彼、仕事上がりの平日の夜に普通に『今日家に来ないか?』とかメール飛ばしてくるんだよ?マジありえなくない?」

同僚「……」

女「ねぇ?聞いてんの?」

同僚はじっと私を見つめて黙っていた。

ん?

女(これはもしかして)

女「あっ、同僚くん今なら自分にもチャンスがあるとか考えてるでしょ?」

同僚「はぁ?考えてねーよそんなこと」

入社したときからずっと話し相手になってくれてる同僚の言葉だから、本当に考えてなかったんだなと直ぐに分かってしまった。

こんな美人がチャンスを作ってあげてるのに…釣れないなあ…

って、なんで私はこんなフツメン相手にちょっと残念がってるんだ。

女(っ…!)

なんかムカつくから、次の男は同僚にすることにした。
絶対私にメロメロにしてやるんだから。

どうせ彼女いないだろうし。

…次は話してて楽しい男にしようって決めてたし。
もうこの際顔はフツメンでもいいや。ブサイクではないし…。
そう、これはムカつくから。決して同僚のことを異性として好きだからとかではない。

好きになるのは…付き合い始めてからでも遅くないでしょ?

女「素直じゃないな〜…いいよ。今私フリーだし、今度一緒に飲みにでも行こうよ」

同僚「まぁ、それくらいなら付き合うけど…」

女(そうこなくっちゃ)

女「今のうちに私の機嫌とっとけば、飲みに行った後もしかするともしかしちゃうかも?なんてね…私そろそろ持ち場戻るね。じゃあね〜」

女(何度も年上のイケメンを落としたことがあるんだ。だから…)

『あんなフツメン一人落とすのなんて楽勝』

このときはそう思ってたんだ…

次の日、真面目な同僚が遅刻ギリギリに来た。
何があったんだろう。

女「同僚くんなんだか元気ないね〜。もしかしてまた先輩にいろいろ言われちゃった?まぁ今日同僚くん朝礼ギリギリだったもんね〜」

こういうときは優しく励ましつつ話を聞いてあげる。

数多のイケメンを落としてきたテクの一つだ。

同僚「ん、ああ…ちょっといろいろあってな…」

なっ…軽く流されてる気がする。

いや、くじけちゃダメだ。もっと押すのよ私!

女「ええ〜!反応薄っ!私これでも君の同僚だよ?もっと頼ってくれてもいいんだよ〜?」

同僚「お前そう言って退屈しのぎに人から話題引きずり出そうとしてるだけだろ」

『どうせどうせ』の決めつけ反応…イラつく。
しかしここは相手に乗って無理矢理にでも話を合わせないと会話が終わってしまう…

女「ふむ、ばれてしまってはしょうがないね。同僚くん、大人しく私に話題を提供しなさいな」

同僚「否定しないのな…なんて言ったらいいんだろうな。兎を飼うことになった」

へ〜、兎…これは意外な話題だ。
というかその話題のどこに疲れる要素があるの?むしろ癒してもらうために飼うことにしたんじゃないの?

…もしかして他人から押し付けられたとか?

女「へ〜、兎ねぇ?どうしたのいきなり」

同僚「そこ詳しく言えないからはぐらかしたんだろうが」

は?なにそれ。
ここまで人に気にならさせといて…

女「え〜!つまんな〜い!」

同僚「だったら聞くけど、俺が未来人を見たんだっつたらお前信じるか?」

未来人…?何それ
未来人に兎押し付けられたとか?
しかもなんか話し始めよりテンション上がってきてる?

話が全く見えてこない。

女「いきなり何の話?さすがにそれは信じられないけど」

同僚「じゃあいいや。それじゃあ俺はそろそろ持ち場戻るから」

女「あ!ちょっと待ってよ〜!」

何よそれ!ここは嘘でも『信じる』って言ってわざわざ馬鹿っぽさを晒すのが正解だったってことなの!?

はぁ…

女「あらら…疲れてるのは本当みたいだったけど話してるときは楽しそうだった…?ああ見えて実はおもしろいことがあったのかな?」

じゃあ未来人に会ったのは疲れる出来事だったけど兎を押し付けられたのは嬉しかったってこと?

勝手な上に謎の解釈だけど同僚はあまりジョークとか言わない性格だし。

女「…もしかして、本当に未来人にでも会ったのかね?」

謎だらけのままその日は終わった。

すごく気になるから次の日は真相を確かめることにした。

ってなにこれ。なんか私の方が振り回されてない?

女「同僚くんさ、なんか良いことあった?」

同僚「え?いや、別に何も無いけど」

女「うっそだ〜。昨日も疲れてるように見えて話してるときはどこか楽しそうだったし」

同僚「まぁ強いて言うなら、今日は朝礼ギリギリじゃなかったってことかな」

また…流すような発言…
もしかして今まで同僚と話してて楽しいと思ってたのは私の方だけで、同僚は私と話すの面倒くさかったのかな…

女「あっはは。何それ〜昨日ギリギリだったってだけでいつもは普通じゃん」

それとも……

女「ぶっちゃけさ、彼女でもできた?なんかそういう顔してる」

他の女と話すのが嫌とか?

同僚「か、彼女?それはないそれは絶対にない」

だ、だよねぇ

女「動揺し過ぎぃ〜!おもしろ〜。ま、男くんに彼女はまだ早いか」

同僚「……」

同僚「お、俺には可愛い兎ができたからそれでいいんだよ」

あ、やっぱ兎の件は悪くない出来事だったんだ。
これは便利かも、家に上がる口実に使わせてもらおうかな。
同僚はその気があっても度胸とかなさそうだからあらかじめ私からきっかけを作っといてやるか。


女「ふ〜んそんな可愛いんだ。今度見せてよ!」

同僚「え、何お前うち来るの?」



女「はぁ〜?今度一緒に飲みに行こうって言ったじゃん!そのついでに家に連れ込もうとか考えなかったの?」

同僚「…すまんまったく」

正直…かなりカチンときた。

この私!この私からこんなにもアプローチがあってこれ!?信じられない!!

女「ええ〜!そんなんだからいつまでたっても童貞なんだよ!」

イラつき過ぎて大声ではしたない言葉を使ってしまった。

同僚「ばっ、馬鹿お前声デカ…ってか!ど、童貞じゃねーし!」

嘘ばっかり。

女「もういいよ。じゃっ、私はそろそろ…」

あ〜!!!!

イラつくイラつくイラつく!!!!

女「……」スタスタ

おかしくない?彼女もいない童貞のくせに。なんでそうやって私といるのを面倒くさそうにするわけ?

そんなの…私だって…

傷ついちゃうよ…

女「そんなに私って男くんから見て魅力ないかな〜?」ボソボソ

女「結構自信あるんだけどな〜」

次の日、同僚が機嫌良さそうだったのでさらに腹が立った。

私はこんなにもイラついてるのになんで…

その次の日も、幸せそうな顔をしていた。

その次の日もその次の日も…さすがに気になったので、というか目についたのでいろいろ質問してみた。

宝くじでも当たったの?とか新しい趣味でも始めたの?とか。
…果てには念を押すようにしつこく彼女ができたの?とも聞いた。

同僚は全部否定する。

しかし同僚もさすがに私がしつこ過ぎるので口を開いてくれた。

だがそれは更に私の苛立ちを加速させる。

同僚「いい話し相手ができたんだ」

しかも同性ならまだしも異性の話し相手だという。
もちろん肉親でもない。

女「……」

な、なによそれ…
話し相手なら私がいるじゃない。
なんで!?なんで!?なんで!?

それで彼女はいませんって…馬鹿にしてんの?

まぁ嘘なら話してたらそっこー分かるし本当のことなんだろうけど…

こうして大きなショックと苛立ちを背負ったまま2週間がたった。

そして私は新たな決意をした。

女(飲みに誘った日に絶対に落としてやる)

なんでこんな必死なの?
なんかモテない女みたいでいやだなぁ。
あの程度のスペックで私に落とせない男なんていないと思ってたからってのもあるけど…

何かが胸の奥に引っかかってる。
まぁいいよ。

どうせ相手は童貞だ。身体を使えばイチコロよ。

女(新しい勝負下着でも買いに行こうかな)

私は休日に一人、ショッピングに出かけた。

…………

「こっち来いや!」

「…や、離してくださいっ」


女「……」

ツイてない。嫌なもの見た。

まるでお人形さんみたいな茶髪の少女が、頭の悪そうな連中に路地裏に連れて行かれるのを見つけてしまった。

女(あー…ああいうのって人呼んだ方が良いのかね…)

女(でも面倒ごとには巻き込まれたくないし)

道行く人たちも同じだろう。
みんな見て見ぬフリして路地裏の前を普通に通過していった。


私もその場を離れて行く。

私には関係のないことだ。
それに所詮は私も女だ。私一人が動いたって私も危険な目に合うかもだし。

日本人ならどんなに正義感の強い熱血漢にだってそう言えば私の冷たい行動にも納得してくれるだろう。

女(ドンマイ茶髪美少女…強く生きろよ〜…)

とか考えてるときだった。

女「ん?あれは…」

私服の同僚が走り回っている。
まさかプライベートで会うとは…思いもしなかった。

何か探してるのかな?

でもこれはいい機会かもしれない。一緒に探し物を付き合うついでにショッピングにも付き合ってもらおう。

一回でもプライベートで会う機会があれば、普段とは違う私も見せられてもっと私に興味持ってくれるかもしれないし。

女「あっ!奇遇だね。同僚くんこんな所で何してんの〜?うわっすごい汗!」

同僚「女!ちょうど良かった!今人を…人?まぁいいやとにかく人を探していて」

女「え?どんな人?」

同僚「茶髪で中学生くらいの背丈の女の子だよ!あと頭にうさ耳みたいなリボンしてる!」

え、それって…さっきの子じゃ…
なんで同僚があの子を探してるの?

女「ああ。その子ならさっきコワそうな男の人たちとそっちの路地に入って行ったよ。私でも可愛いと思った子だったからすごく印象的だったけど…同僚くんの知り合い?」

同僚「それ本当か?情報ありがとな!」

同僚はそう言うと私には目もくれず走り去っていこうとした。

多分、あの少女のところへ…
私とは違う女のところへ…

あの少女は何者なの?
同僚のなんなのよ!!

もしかして話し相手って…

あんな可愛い子が…?
同僚の?

いや、落ち着いて私!人違いかもしれないじゃない。

女「ちょっと待ってよ!あの子本当に同僚くんの知り合いなの!?」

同僚「未来人!」

どこかで聞いた単語。

そう言えば詳細を聞いていなかった単語だった。

女「…走って行っちゃった」

『兎』と違って非現実的な単語だったから深く追求しなかったけど…

女「未来人…?結局未来人ってなんだったんだろ…」

女(じゃなくて!)

こんなんじゃ納得できない。
できるわけがないじゃない!

気がつけば身体は回れ右し、同僚の背中を追って走っていた。

…………

同僚「おいっ!お前ら何やってんだ!」

少女「同僚さん…?」

「チッ!誰か来やがったか!」

「つっても一人じゃん。一人で何が出来んの?」

同僚「今警察を…」

「させっかよ!」ゲシッ!

同僚「ぐぼぉ…」

少女「!!」

「はいスマホゲーッツ…」

同僚「くっそぉ…」

「あいつの彼氏かなんか知らねーがお前はそこでくたばってろ」ボゴッ

同僚「あがっ!」

「男はお呼びじゃねーんだよォ!」バキッ

同僚「かはっ…」

同僚「…ぐはっ」

少女「同僚さん…!いやだ…同僚さぁん!」グスッ

私は路地裏の入り口に隠れて同僚が殴られる様子を見ていた。

女(あ、あわわわわ…)

女(ど、どうしよ…早く人呼ばないと同僚が…)

で、でもさ…

「続きやるぞ」

「俺あいつのせいでちょい萎えたわ。しゃぶってもらうか」

同僚ももうあんま動けそうにないし…このままにしてたらあの子、酷いことされちゃうんだよね…

同僚「やめ…ろ…」

いい気味だわ…
同僚のなんなのかしらないけどさぁ…
人が目をつけてた男を知らないところから横取りしようとするからこんな目に合うんだよきっと…

「マジうぜぇんだよ!」ガン…!

同僚「ぐはっ!」

女(は!?今同僚ちょっと喋っただけじゃん!だ、だめ…それ以上やったら…同僚死んじゃうよ!)

「はいトドメ〜」

女(だめだって!!!だめぇぇぇぇぇ!!!)

女(は…)

女「はいはい」

思わず路地裏の中に飛び込んじゃった…

「ん?あぁ?」

女「そこのコワいお兄さん達?そこまでです。お姉さん警察呼んじゃいました」

本当は呼んでないけど…信じてくれないかな…

少女「……」

同僚「…女!?」

「は?」

「マジかよやべーじゃん!」

「逃げるぞ!」

「退けよ!クソ女!」ドンッ

女「んにゃっ!」

女(いったいなぁ〜もぅ)

「クソッ覚えとけよ?次会ったら犯してやる!」

女「うわっ…コワ〜イ…」

とりあえず、なんとかなったみたい。

女「同僚くん大丈夫?ボコボコじゃん…ひっどい顔。救急車呼ぼうか?」

同僚「いやいい…す、すまん…助かった」

女「まっ、本当は警察なんか呼んでないんだけどね。面倒なの嫌いだし」

少女「あなたが女さんですか…?同僚さんを助けてくださって本当にありがとうございました」

なんで名前知ってんのこの女…

女「あれ?そこの美少女、私のこと知ってんの〜?」

少女「はい。同僚さんから話は伺っていたので」

私にはこの子のことあまり詳しく教えてくれなかったくせに…この子には私のこと話してたんだ…へぇ…

まぁ重要なのはそこじゃなくって。本当にただの話し相手とか友人とかなのかってとこよね。

女「で、あなたと同僚くんはどんな関係なの?」


同僚「あ〜、そ、それはだな…」

少女「同僚さんは…」

ギュッ

同僚「んぁ?」

少女が同僚を抱きしめた。
ひ、人前でなにやってんのよこの子…

少女「私の大好きな人です…」

同僚「え!?」

女(えー)

聞いといてなんだけど、やっぱり聞くんじゃなかったなって思った。
カレカノだと思ってなかったのは同僚の方だけで、こっちの少女はバリバリその気だったってワケ。
なにそれあほらし…

女「ああ〜!やっぱり彼女できてたんだ。なーんだ。じゃっ、これ一つ貸しだからね。あとはごゆっくり〜」

走って路地裏を出た。
後ろから同僚が私に何か言ってたけど耳に入らなかった。

女「なによ!なによそれ!なによそれぇ!」

一人大声で街中を歩く。
すれ違う人は皆何事かとこちらを向いた。
私の背中を指差して何か言ってる人もいた。

でも気にならなかった。

そのまま真っ直ぐ家に帰った。

玄関で靴を脱ぐと家のベッドに着替えもせずうつ伏せで飛び込んだ。

枕の中に顔を埋めると、まるで顔が思い出したみたいに涙を出した。

なんでこんなに悔しいの?
なんでこんなに悲しいの?

答えはもう分かっていた。

女「すき…だったのにぃ…」

女「同僚の馬鹿!私の馬鹿!」

女「ばか…ばかぁ…」

多分、前から好きだったんだと思う。
でも勝手に思い込んでいた。
手を伸ばせば同僚はすぐにでも手に入る男だから、もうちょっと高望みしてもいいかなって。

同僚くらい気の合うイケメンがいればその人でいいじゃんって…

でもそんな人いるわけがなくて、同僚は結局同僚しかいなかったんだなって…
同僚の代わりなんていなくて、きっとこの先理想のイケメンが私の前に現れたってその人のことを同僚以上に好きになることはないんだって。

思い知らされた。

…………

女「同僚くん…その顔の傷本当に大丈夫なの?」

同僚「まぁな。それよりさ〜、へっへ〜俺彼女できたぜ!もう俺のこと馬鹿にすんなよぉ?」

女「ふ〜ん。あのぶんだとあの子、前から同僚くんのこと好きだったように見えたけど…まさか気づいてなかったの?」

同僚「いや逆だよ逆!俺の方が前から好きだったんだよ」

女「あ…」

そっか、そうだよね。
好きな人と話してたからあんなに毎日幸せそうな顔してたんだ。

女「まったくさ〜、いつの間に引っ掛けてたの〜?なかなかいないよあんな子」

同僚「う、うーん…それは…」

女「……」

また濁された。

女「もういいよ」

女「はぁ…」

同僚「あっ、おい!どうしたんだよ!」

同僚「お〜い…」

同僚「どうしたんだあいつ」

同僚「まぁまた新しい男作ったら元気になるだろ」

それからまた2週間くらいはやる気も元気もなかった。あと同僚がまた毎日にやけててイラついた。

そうこうしてる内に私は仕事でらしくない凡ミスをした。

先輩「おい女!もっとしっかりしろ!何があったかは知らんが職場に私情のネガティヴな空気を持ち込むな!」

女「…すみません」

結局その日は先輩に怒られっぱなしなまま昼休みを迎えてしまった。

だめだなぁ私。

同僚のこと、まだ諦めきれてないや…

このままじゃ駄目だって分かってるのに。
別に私から告ってフラれて気まずくなってるってわけじゃないんだからさ、また普通の友達として接したらいいじゃん。

普通の友達…そうだ!同僚を飲みに誘ってみよう!これでお互い愚痴とか言い合ったらまた前までの同僚として見れるようになるでしょ!

女「ねぇ同僚くぅ〜ん…」

同僚「なんだ、今日はどうした?」

女「先輩に怒られちゃった…。慰めて!」

同僚「慰めてって言われてもな〜」

女「今日さ、飲みに行かない?」

同僚「唐突だな」

女「唐突でもないよ。前一緒に行こうって言ったら、同僚くんもそれくらいなら付き合うっていってくれたじゃない」

女「いいでしょ?」

同僚は少し考える素振りをみせたけど承諾してくれた。

同僚「はぁ。分かったよ」

女(やった!)

多分あんま飲まないと意識しちゃって話しづらいから今日はたっくさん飲むぞ〜!

………………

女「……でさー、信じらんないよ!あれもうセクハラだよセクハラ!うぃっく…」

あまりの私の飲みっぷりに同僚も少し引いてたけどしょうがない。

女「ねー、同僚くんもそう思うでしょ?」

同僚「お、おう。それじゃあ俺はこれで……」

え、ちょっと待ってよ…
こんなんじゃ意味ないじゃん!

ガシッ

同僚「!?」

女「…もうちょっと一緒に居てくれてもいいんじゃない?」

同僚「俺早く帰らないと…」

あー…まぁ別にお酒が飲めて同僚と話せるならどこでもいいかな…

女「じゃあさ、男くんの家に泊まらせてよぉ」

同僚「えぇ…普通にやだよ」

『やだよ』って…。



そうやって私を拒絶しないでよ…。

女「そんなこと言っていいのかな〜?」

私、もう少しでいいから同僚のそばにいたいよ…。

同僚「なんでそんな上から目線なんだよ」

女「貸し…忘れたわけじゃないでしょ?」

同僚「なっ…!」

女「あの怖いお兄さんたちにも次会ったら犯すとか言われたりして今は一人になりたくないかなぁ…怖いよぉ〜。明日は休みだし…ね?」

一人にしないでよ…

同僚「分かったから…とりあえず手離せ」

………

同僚「ここなんだけどさ、少し外で待っててもらえるか?」

女「ありがとぉ…うぃっく…うん」

同僚「少し部屋の中片付けるから…」

女「わかった〜…」

そうして3分ほど外で待たされた後同僚はもう一度外に出てきた。

同僚「上がっていいぞ」

玄関で靴を脱いでいると足元に同僚のペットが寄ってきた。

女「ふぁ〜い…あ!この子もしかして言ってたうさちゃん?」

兎「…ぶー」

そういえば同僚相当可愛がってる様子だったなぁ。
まぁでもこれは確かに…

同僚「かわいい〜!」ギュ〜

兎「ぶー!ぶー!」ジタバタ

いきなり抱きしめちゃったからびっくりしたのかな?
兎は私の腕をすり抜けて奥へ逃げてしまった。

女(あらら…)

女(じゃあ飲み直しといきますか!)

女(と言いたいところだけど…)

女「あーもう眠たい…」

同僚「ああっ!お前!」

自分の部屋のベッドみたいなノリで同僚のベッドに倒れこんでしまった。

すると…

女(あっ…同僚の匂いだ…同僚の匂いがする…)

お酒の酔いと同僚の匂いであたまがふわふわしてきた。

同僚「何やってんだよ…ってか風呂とか入らなくていいのか?」

同僚が私の肩を掴んで身体を起こそうとした。
彼からのいきなりのボディタッチで少しドキドキしてしまう。

女「いや〜ん!男くんのえっち〜」

同僚「はいはい。じゃあ離しますよ〜」

冗談を言うと同僚は大人しく手をどけようとした。

女(あっ…やだ、そのままでいて…)

女「離しちゃうんだ…」

同僚「なんだ?支えてた方が良かったか?面倒くさいやつだな」

こんなつもりなかったのにさ…同僚が悪いんだよ?同僚がいきなり触ってくるから…

女「そうじゃなくてさ!」

同僚の背中に手を回して、彼の身体をぐぃっとこちらへ寄せた。

同僚「えっ?ってうわっ!」

同僚「なんだってんだよ…」

もういいや…どうにでもなっちゃえ…
案外このままヤっちゃえば同僚が私に振り向いてくれるかもしれないし…

女「男くんさ〜…察しが悪いよ…」

同僚「察するも何もお前だしな」

あっ、言ったな〜…

ひどいこと言うな〜。

女「それひどくない?」

女「もうあったまきた!そっちにその気がないならこっちから攻めてやる!」

まっ、関係ないよ。こっから私の虜にしちゃえばいいもんね。


同僚「やっ…やめ…」

少女「やめてくださいっ!」

後ろからどこかで聞いた声が聞こえた。

同僚「お、お前…」

う、嘘…

女「へ…彼女さん…?同僚くん同居してたの!?」

少女は私なんかお構いなしにそのままこちらへ歩いてきた。

少女「こんなの…駄目ですよ…」

少女「駄目ですよぉ!」

彼女は同僚のお腹に手を回して引っ張った。

離れていく…
私から同僚の温もりが…

そこで現実に戻された。

酔いが覚めてしまった。
もう、駄目かな…

女「あっはは…」

女「ごめんね…完全に酔いがさめたよ。もう私帰るね…」

同僚「さ、流石に送っていくぞ」

ばーか。

さっきまで冷たかったくせに…いきなり優しくしないでよ…

少女「むぅ」

女「いいよいいよ…なんかこのままだと彼女さんに殺されそうな勢いだし。おじゃましました〜」

…………

自宅

女「う、ぐっ、おぇぇ…」

女「はぁ、はぁ、はぁ」

女「なにやってんだろ私…」

女「はぁ〜、なんでフツメンなの〜!イケメンだったら絶対ほっといてないのにさ!」

だってさ、まだ告白すらしてないんだよ?

女「諦めたくないよ…」

なんとなく袖に鼻を当ててみる。

女「ん、すんすん…まだ同僚の匂いが少し残ってる気がする…」

女「……」




女「んっ…あっ…んん…」

どうしたらいいの?私……

………

女「同僚くん休日何してた?彼女さんとデート?」

同僚「寝てた」

女「寝てた?」

同僚「そう。ずっと寝てた」

女「えっ…もしかして寝てたってそういう…」

そりゃそうか…彼女さん同僚にベタ惚れだし。
いや、同僚の方もか。

同僚「そんなんじゃねーよアホ。マジでずっと寝てたんだよ」

!!

嫌な予感がする。

女「もしかして私のせいで振られちゃった?」

同僚「まぁ、物理的に別れはした」

そんな…

女「そ、そうなんだ。なんか本当にごめん…」

女(本当に悪いことしちゃったな…。どうしようこれ、責任取らなきゃ…だよね。)

心の表側ではそう思ったけどそんなのはただの言い訳で、私は気がついたときには最低な発言をしていた。

女「や、その…私で良かったら彼女さんの代わりになるよ?いつもみたいに飽きたら別れるとか絶対しないから、だから…」

この時、『好き』って言えてたら、もっと違った結末だったのかなって思ったけど。

同僚「お前には俺なんかよりもっといいイケメンの方が似合ってるって。気にすんな」

この返事なら、変わらないか…

女「でも…」

同僚「じゃあ今度飲みに付き合え。それで手打ちにしてやる」

この瞬間初めて気がついた。

ああ…私、とっくに振られてたんだなって。



女「ほ、本当?それなら喜んで付き合うよ!なんなら全部私の奢りでいいよ!」

同僚「本当かよ。酔ってそのこと忘れんなよ?」

女「へへ、気をつけまーす」







ねぇ、同僚。私上手に笑えてるかな?







…涙、出てないよね。

…………


女「ええええ!!よりを戻した上に子供できてたぁぁぁ!?」

同僚「しっ!声でかいって!」

女「あ、ああうんごめんね…でさぁ!赤ちゃん見せてよ!さすがに写真くらい撮ったんでしょ?」

同僚「あー…実はな、もう赤ちゃんじゃないんだ」

女「え、どういう意味?」

同僚「これ…」

同僚が携帯の画面を見せてくれた。
そこには…幼稚園児くらいの女の子が二人…

女「え、ごめんちょっと今私混乱してる…」

同僚「無理もねぇよ。俺だって混乱してるんだから…まぁなんだ。今からお前にだけは俺の身に何が起こったのか話してやるよ。絶対に他の誰にも言うなよ?」

女「う、うん。なんか大事な話っぽいけど私なんかが聞いていいの?」

同僚「うーん。やっぱりお前顔広いし、口滑りそうで心配だけど…まぁいいよ」

同僚「お前だし…」

前も聞いたけどその『お前だし』って何よ…。
まぁ、なぜか今はもう悪い気がしない響きだからいいんだけどさ。

同僚「今からするのは未来人…いや、未来兎の話だ」




女「未来兎…?なにそれ」



…………



女「おじゃましまーす」

同僚「ただいまー」

娘「ぱぱおかえりなさい!」

娘2「…おきゃくさん?」

少女「おかえなさ…む…」

少女「何の用ですか…」

女「あっはは…嫌われちゃってるな〜」

同僚「まぁそうカリカリすんなよ少女…今日はちょっと遊びに来ただけだから」

娘「ぱぱあそぼー!」

娘2「あそぼ?あそぼ?」

女「モテモテだねお父さん」

同僚「はは、しかし俺はちょっとシャワー浴びて着替えてくるから女はそこに座って娘たちの相手でもしてくれ」

同僚「お前は女にお茶でもいれてやってくれ」

少女「…はい」

少女「娘2、ちょっと手伝ってください」

娘2「はーい」

女「ふぅ…よいしょっと。相変わらずここは同僚くんの匂いがするなー」

娘「わたしぱぱのにおいすきー!」

娘「んー。すんすん…おきゃくさんもいいにおいする〜!」

女「そう?香水つけてるからかな…」

女「娘ちゃんはパパのことが大好きなんだね」

娘「だいすき〜!おきゃくさんは?」

女「私は…うーん、好き、だったかな…」

娘「いまはきらい?」

女「そ、そんなことないよ!もちろん今も好きだけど…同僚くんは私が同僚くんのこと好きなの知らないかもね…」

娘「なんで〜?」

女「『好き』って言ったことがないからだよ。でもね、今はそのことを少し後悔してるの」

娘「こーかい?」

女「あはは、難しいか。とにかくね、娘ちゃんはパパのこと好きなら、パパにちゃんと『好き』って言ってあげてね。真っ直ぐで元気な子になるんだよ!絶対に人生後悔しないためにね!」

女「と言っても『好き』の意味が違うか…」

娘「ん〜?よくわかんないけどわたしげんきなこになる!」

女「お〜!その調子だ!」

娘「うん!」

女「…あー、あとね?」

娘「?」

女「さっきの私があなたのパパのこと好きっていう話…」







「…パパには内緒にね?」








おわり

これにておしまいです

読んでくださった方ありがとうございます

(-ω-)

兎娘「私と子作りしてくれませんか?」
兎娘「私と子作りしてくれませんか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1463578733/)

マジで「未来兎?なにそれ」ってなった人向け

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom