博士「お前は今日から旅に出るのじゃ」(94)

男「何で急に!」

博士「理由は無い」

男「俺、行かないよ?めんどくさいし」

博士「文句言うな。お前はもっと強くなるべきだ。旅に出るんだ」

男「初めからそれを言えってんだ。でも俺はもう十分強いよ」

博士「それなら尚良かった。実はワシの発明した道具があってな、それが正常に動くかどうか、君に実験台になってもらいたいんじゃよ」

男「道具?」

博士「新発明のハンマーじゃ」

男「ハンマーの使い心地ぐらい釘を打って確かめればいいだろ」

博士「ただのハンマーじゃないぞ!」

男「大きさだけはな」

博士「大きさだけじゃない、機能も優れたものじゃぞ。何と、電撃。ビームが出せる」

男「ハンマーにそんな機能必要か?」

博士「だ・か・らただのハンマーじゃないと言っておるじゃろう」

男「なるほど、使い方がただのハンマーじゃないのか」

博士「ようやく理解したか」

男「つまりそれを武器として使えということだな?」

博士「そうじゃ。では男よ、早速旅に出るのじゃ!」

男「出ねーよ」

博士「じゃあワシが出よう」

男「行ってらっしゃい」

博士「ウム、長旅になるかもしれんが元気でな。・・・・・・ってワシが出てどうする!」

男「俺、全然行く気ない」

博士「行かないとキスするぞ!」

男「そ、それなら行ってやってもいいよ」

博士「よし、最初はこの研究所の隣にあるお前の友の家に行け」

男「近っ!」

博士「いきなり長旅に出るのは危険だからな」

男「それで、何をしてくればいいんだ?」

博士「決まっているじゃろう。その友を殺し、いや・・・殺さない程度にボコしてこい」

男「できるか、そんな事!」

博士「ワシに逆らうつもりか!お前が出ると決めた旅じゃろう!」

男「そうだけど・・・」

博士「だから、奴を殴り倒してくるのじゃ。男よ、勇気を出せ!」

男「しょうがないなあ、じゃあ俺行ってくるよ」

博士「遺影は昨日撮ってあるし安心して行ってこい」

男「昨日の写真は遺影だったの!?」

男はどんよりと重い気分で、

研究所からわずか5mしか離れていない友の家まで、

トボトボと1分半ほどかけて歩いていった。

しかしその手には、

しっかりとハンマーが握りしめられていたのだった。

まあ、緩く握っていたら落として足を怪我するかもしれないから、

当然といえば当然なのだが。

男「果たして俺が友を殴る必要性などあるのだろうか・・・」

男「別に逃げてもいいんだよな。だけど博士にキスをされるのは死んでも嫌だ」

男「そうだ!別に本当にボコボコにしなくてもいいんだ」

男「脅迫して黙らせるだけでもいいんじゃないか」

男「友も人間なんだから恐怖心ぐらいあるだろう」

男は手の平に汗の滝を流しながら、

友の家のインターホンを鳴らした。

友「はーい」ガチャ

友「えっ男?何か顔色悪いぞ」

男「ゴメン・・・友、君を殴らせてもらう」

友「殴るってどういうことだよ!落ち着け!」

男「俺は博士から命令されているんだ!」ガンッ

友「やめろ!」

男「黙れ黙れえええええ!」ガンガンガンッ

男は友を数十回殴ったところで、

彼の息がなくなったことに気付き、

号泣した。

男は号泣しながら研究所に戻り、

博士に友を殺してしまったことを告げた。

博士「それは不幸だったな」

男「博士・・・俺はこれからどうやって生きていけばいいんでしょうか・・・」

博士「大丈夫だ。友がいないからといってお前が死ぬわけではない」

男「うう・・・どうか友を生き返らせてくれ・・・」

博士「それならワシが発明した生き返りの毒薬を使うといい」

男が薬を友に飲ませると友は起き上がり、

何やらもごもごと英語のような言葉をしゃべり始めた。

男「友!俺だよ。分かる?」

友「ああ、男か・・・一体何があったんだい?」

男「」

男は友が記憶喪失したのかと思い、

また号泣しかけたが、一連の出来事を話すと、

友もようやく今までのことを思い出したのだった。

博士「とにかく、生きていてよかった。お前に死なれると男だけでなくワシも犯罪者になってしまうからな」

男「俺は犯罪者でもいいのかよ」

博士「うん、まあそうだな。ところで、旅をしてみた感想はどうだね」

男「正直言って楽勝だったな」

博士「そうか。では次はワシの研究を手伝ってほしい」

友「俺も手伝うよ」

博士「いや、手伝うのは男だけでいいんだ。友くんは帰ってくれたまえ」

友「でも・・・」

男「友、こんな馬鹿な博士のために人生を狂わされる必要はないぞ」

友「そうか。それなら俺はかえるよ。じゃあな」

男「で、博士は一体何を研究してるんだ?」

博士「研究というか、まあ、調査といったところだ」

男「どっちでもいいから、何を調査しているのかを言え」

博士「実はな、この町の歴史を調査しているんじゃよ」

男「こんな小さい町に大した歴史はないと思うんだが」

博士「ところが調べてみると面白いことがわかってきたんじゃ」

博士「この町には古代の財宝が隠されているのじゃ!」

男「あ、博士はその財宝を狙ってるのか」

博士「違う!」

男「その財宝の存在を知られたくないから友を追い出したんだな!」

博士「ワシはそんなセコいことはしない!」

男「でもどうして俺には話したんだ?」

博士「それは男くんに、財宝の謎を解く上で必要なものを集めてきてほしいからなんじゃ」

男「それは?」

博士「石版じゃ。そこには財宝のありかについて何か書かれているはず」

男「勝手な憶測だな」

博士「じゃが、可能性はゼロとも言えんじゃろ」

男「まあな」

博士「それに石版のカケラが一つ見つかっているんじゃぞ。これじゃ」

男「カケラって、石版はバラバラになってるのかよ・・・」

博士「他にはカケラは見つからんかった。恐らく、バラバラに壊してあちこちに隠したんじゃろう」

男「じゃあ長旅になるな。でも財宝は気になるし・・・分かった、俺、探してみるよ」

博士「何度も旅をさせてすまない。じゃが、もし財宝が見つかったらワシと半分こしようじゃないか」

男「ケチな博士が珍しいな」

男「じゃあ、行ってくるよ」

男「・・・とは言ったものの何を手がかりに探せばいいのやら」

友「男!」

男「どうした?」

友「博士と話してるのを聞いたんだ。俺も一緒に探そう」

男「お前も旅に出たいのか?」

友「いや、俺は仕事があるし町に残るよ」

友「ただ、何か役に立つ情報が入ったら連絡する」

男「俺が帰るのをただ黙って待つだけか。でもまあいいや」

友「じゃあ気をつけて行けよ。犬のフン踏むなよ!」

男「お前だって車で踏んだことあるだろ。しかも4輪とも」

男は町を歩いていった。

すると、博士と普段から仲の良い老人と出合った。

男「お!爺さんじゃん」

老人「ワシはまだお爺さんなんてエッフォッ!爺なんて歳じゃないわいウェッヘヘィ!」

男「だいぶやつれてるじゃん」

老人「うるさい!これは歳のせいだからしょうがないだろ!」

男「はいはい。で、爺さんはこんな所で何をしてるのかな」

老人「フガッ実はこのまんじゅうを博士に渡そうと思ったんじゃが・・・」

男「じゃあ渡せば?」

老人「しかしワシは昨日、博士と殴り合ってしまってな」

老人「博士もかなりお怒りのようで、今会いに行くのはまずいんじゃないかとウォッフェッ!思っての」

男「そこで俺に代わりに渡してこいと?」

老人「そうそれ!お願いできるかの」

男「俺は今博士の探し物を見つけるために旅をしているんだ。そんな暇はない」

老人「お金をやってもダメかのう」

男「それならいいかな」

老人「よっしゃ!じゃあワシはこれで帰るが、しっかり博士に渡してくれよ」

男「任せとけ!・・・・・・・・・って」

男「最初から渡す気が無いのになんでここまで来たわけ!?」

男「誰かにやらせる気マンマンだってってことか!」

老人「フガッフガァ!」

男は、別に今日渡す必要はないだろうと思い、

まんじゅうをバッグに入れて、

歩き続けました。

すると、通りすがりの勇者が声をかけてきました。

勇者「そこのお前・・・ちょっとこっち来い」

男「いきなりエラそうな話し方しないでください」

勇者「ごめんなさ・・・俺の剣が盗まれてしまった」

男「しゃべり方とか・・・大丈夫かお前」

勇者「剣を取り返してほしいです」

男「剣なんてまた買えばいいだろ」

勇者「あの剣じゃなきゃダメなんだ!勇者の底力が出せないんだ!俺は死んじゃうんだ!」

男「えー弱。勇者とかまぢ向いてなくね。みたいな」

勇者「とにかく、剣を取り返し(ry

男「誰に取られたんだ?」

勇者「博士」

勇者「町の広場で人を3人ほど切ったんだ」

勇者「その後、剣を洗って干していたら博士が来て奪って行った」

男「剣って洗ってるのか」

勇者「血が付いたままほっとくと錆びるからな」

男「包丁と同じか」

勇者「そうだな。お前は包丁で人を刺したことがあるのか?」

男「人を殺そうとしたことは無いけど、魚は殺したよ」

勇者「お前、魚をさばけるのか」

男「ああ。今度刺身を食わせてやろう」

男「話を元に戻そうか。博士が剣を奪ったと言っていたが、追いかけようとは思わなかったのか?」

勇者「それが・・・返り血を浴びた服をついでに洗っていて全裸だったから・・・」

男「勇者なんだからフルチンで走ることぐらい容易なことだろう」

勇者「うっ・・・そうかも知れん」

男「とにかく博士の所に行って剣を返してもらおうか」

男と勇者は研究所に向かって歩き出した。

剣を持っていない勇者の歩く姿は、

町民の目にどこか情けなく映ったのだった。

町民「おい、勇者が手ぶらで歩いてるぞ!」

町民「それに町民と二人きりだ!まさかデートでもしてるのか!?」

勇者「クソッ!町中の噂になっている!」

男「勇者はいつも剣を振り回しながら歩いてるからみんなおかしいと思うだろうな」

勇者「どうすれば噂されない?」

男「勇者服を着てるから余計目立つんだよ。俺の上着を上に着ろ」

勇者「おお!これなら誰も勇者だとは気付かないな!」

二人は博士の研究所の前までやってきた。

博士はちょうどその時、

勇者から奪った剣で庭木の手入れをしていた。

博士「よく切れる刃物じゃのう」

勇者「あの野郎!俺の剣をあんなことに使うなんて!」

男「勇者、行くぞ」

勇者「ああ」

二人が博士に近付くと、

博士は剣を服の中に隠して、

研究所の中に入り、

ドアに鍵をかけてしまった。

勇者「こら!出てこい!」ドンドン

博士「・・・」

男「こういう時は仕方が無い。研究所に放火するぞ」

勇者「放火!?」

男「建物に火がつけば博士は出てくるだろう」

その会話を聞いていた博士が、

研究所の窓から飛び出してきました。

勇者「おっ博士。ちゃんと玄関から出ろよ」

博士「黙れ!早くここから出て行け!」

勇者「俺の剣を返せ!」

博士「剣なら返さないぞ。これはこの町の歴史を語るうえで重要なものなのじゃ」

博士「この写真を見ろ。約200年前に撮られたものじゃ」

博士「どうじゃ。お前の持っていた剣と似てるじゃろ?」

勇者「確かに似てるけど・・・」

博士「だからあの剣は絶対に返さないぞ」

勇者「でも俺の剣は2年前に作ったものだ」

博士「嘘をつくな!」

勇者「嘘じゃない!男、博士から剣を取り返せ!」

男「よし!」

男は相手が博士なだけに、

多少手加減しながら戦った。

博士の髪をレーザーで焼き、

博士が熱がっている隙に、

靴をローラースケートに履き替えさせ、

体当たりをして転ばせ、足を捻挫させた。

博士「ぐわぁっ!」ベキィ

男「よし!取り返したぞ!」

博士「ああーワシの剣!」

勇者「男ありがとう!何か礼をしなくては・・・」ゴソゴソ

男「早く礼をよこせよ」

勇者「ちょっと待て・・・」ガサゴソ

勇者「あった!」つサイフ

勇者「俺の金をやる!」

男「チッ、たった5000円かよ」

勇者「すまない・・・勇者というのは収入が少ない職業でな・・・」

男「これじゃ全然足りねえよ」

勇者「で、では俺がお前の味方となろう」

男「味方になるだと?」

勇者「そうだ。これからお前になにかあったら助けに行く」

男「うーん・・・あんまり頼りにならなさそうだけど・・・」

勇者「そういう事で、俺は帰るぞ」

男「おう、帰れ帰れ」

男「さて、仕事も終わったことだし散歩でもするか」

男「ん?あんな所にトンネルがあるぞ」

男「立て札が立ってる・・・」

男「"このトンネルの先には何もありません"?」

男「こういうことをわざわざ書くということは何かあるんだな」

男「行ってみるか」

男は薄暗いトンネルの中を歩いていった。

トンネルを抜けると、そこには廃病院があった。

男「面白そうだし入ってみよう」

男は、コンドームに滑り入っていくチンコの如く、

異様なオーラを放つその病院の中へと吸い込まれていった。

男「おーい。誰かいるか?っているわけないか」

少女「はい」

男「いた!」

少女「何か用ですか?」

男「あ、いや特に用は無いんだが・・・」

少女「用が無いのに人の家に入り込んだんですか!」

男「ちょっと肝試ししに入ったんだ」

少女「言っとくけどこれ、建造物侵入ですよ!」

男「廃病院を自分の家だと主張するお前のほうが犯罪者だよ」

少女「まあ、別にそんなことはどうでもいいんです」

少女「これから夕食なんですが一緒にどうですか」

男「名前も知らない奴と食事とか嫌だ」

少女「ああ、失礼しました。私は少女といいます」

男「俺は男だ。よろしくな!」

男(よく見るとこの子可愛いな・・・)

少女「よろしくお願いします」

少女「実はもう食事の用意はできてるんです。屋上に案内しますね」

男「屋上で物を食べるなんて何年ぶりだろう」

少女「ここが屋上です」ガチャ

男「おっ、旨そうな匂いが・・・」

少女「炒り豆腐としょうが焼きです。私が作ったんですよ」

男「いただきます」

少女「待て」ガシ

男「ふぇ?」

少女「一緒にいただきます言いましょう」

男「そ、そうだな」

少女「せーの、」

いただきます!

男「うん、旨いな」

少女「私も男さんと食事できて嬉しいです」

男「おれもこんな可愛い子と食事できて幸せだ」

少女「男さん、まだごはんのお代わりたくさんありますからね」

男「ああ」モグモグ

少女「・・・」

男「食べないのか?」ガツガツ

少女「あの、ちょっと話してもいいですか」

男「ああ、こりゃ失礼。何だ?」

少女「男さんは職業は何をしてるんですか」

男「俺は無職」

少女「じゃあ何か趣味はありますか?例えば旅行とか」

男「旅行か・・・いや、特に趣味ではないな」

男「ただ、今は旅をしているんだ」

男「博士から石版を探せと言われているんだ」

少女「石版・・・ちょっと、ここで待っていてください」

少女「お探しの石版はこれじゃないですか」

男「お、これかもしれない」

少女「トンネルで拾ったものです」

男「本物の石版かは分からないが、とりあえず貰っておくよ」

少女「本物だといいですね」

男「そうなんだけどな。あっ、もうこんな時間か」

少女「ああ、本当ですね。じゃあそろそろ・・・」

男「今日は楽しかったよ。また来るからな」

少女「お待ちしています」

男「お前ももう帰ったほうがいいぞ」

男「そうだ、家まで送ってやろうか」

少女「いえ、私はいいんです。私が帰る場所は家ではありませんし」

男「家じゃないって・・・」

少女「私はもう2年前に死んでいるんです」

男「幽霊だったのか」

少女「だから私はここに留まります。家に帰ったら皆心配するでしょうから」

男「分かった、じゃあまた今度な」

少女「今日はありがとうございました」

翌日、男に友から一本の電話が入った。

内容は、友の女が行方不明になったとのこと。

友「俺の大事な大事な女をよくも!」

男「さらって行った奴の顔は見たのか?」

友「俺はまだ寝てたし見てるはずないだろ!」

男「寝てたなんて知らねえよ」

友「男!今日中に女を取り戻してくれ!」

友「もし女が戻ってこなかったらお前を殺す!」

男「だったら探さねえよ。他の奴に頼め」

友「他に頼れる奴なんているか!」

男「博士がいるじゃん」

友「あんなバカ役に立たねえよ!」

男「どういうところがバカだと思うんだ?」

友「男がバカだって言ってたからだよ!」

男「お前酷いな!」

友「それにあまり老人を乱雑に扱うのはよくないかと・・・」

男「お前、さっきから言ってることがメチャクチャだぞ」

男「で、俺に何をしてほしいんだ?誘拐犯をボコボコにして女を取り返せってか?」

友「そうなんだ。俺の大事な女を・・・」

男「ハイハイ。何とかやってみるよ」

男「とは言ったものの」

男「一体何を手がかりに探せばいいんだ」

男「通行人に聞いてみるか。おい、そこの爺さん!」

老人「だからゴホゴホッワシはまだお爺ヒッさんとかいう歳ではないのよぅ」

男「爺さん、友は知ってるか?」

老人「おお、知っとる。先日女といるのを見たぞ」

男「その女がさらわれたらしいんだ」

老人「触られた?それはイカンな」

男「誘拐されたって言ってんだ」

老人「融解じゃと!こ、怖っ」

男「女が誰かに連れ去られたみたいだっての」

老人「そうだったか。最初からそう言えばよかったんじゃ」

老人「しかしワシはその事は知らんぞ。さいなら」

男「おい。もう少し協力してくれてもいいだろ」

老人「うっ・・・メンドクサイ・・・」

男「メンドクサくても協力しろ」

男「まず聞くが、今朝、不審な男(?)を見かけなかったか?」

老人「不審な男、つまり魔王のことじゃな。見たぞ」

男「魔王だと?」

老人「魔王が車に人を乗せているのを見たんじゃ」

男「あー、多分そいつだ」

老人「じゃあさいなら」

男「だからいきなり帰ろうとするなよ」ガシ

老人「だってお前のバッグから異臭が・・・」

男「俺のバッグ?」

老人「お前ひょっとして、まだ渡してないのか?」

男「何を?・・・あっ」

男「まんじゅうだったっけ?忘れてt」

老人「ホァァッ!ワワシに近付くんじゃない!」

男「平気平気!あの博士なら腐ってても気が付かないから!」

老人「そういう問題じゃない!汚いじゃろ!」

老人は逃げた。

男がさらに聞き込みを続けていると、

刃物屋で枝切りばさみを買おうとしている、

博士を発見した。

男「博士!」

博士「お呼びかね?」

男「何してんだ」

博士「あの剣は切れ味が良かったんじゃがの・・・」

博士「男くんのおかげで庭木の手入れができなくなってしまったんじゃよ」

男「剣を盗まれて枝切りに使われる奴の気持ちを考えろよ」

男「例えば博士がヅラを盗まれて・・・」

博士「ワシはこの年で髪がフサフサだがヅラではないぞ」

男「例えだからいいんだよ」

男「ヅラがあるとして、それを盗まれて雑巾がわりにされたらどうする?」

博士「また買う!雑巾に使われたヅラをわざわざ取り戻してまでまた頭に乗せるなんてワシゃそんな貧乏じゃない!」

男「自作爆弾の威力を試すために研究所を爆破されたらどうする?」

博士「あの研究所はパネルを組み合わせてできている。吹き飛ばされたらまた組み直せばいい」

男「そうなのか?今度やってみよう」

博士「やるな!」

博士「ところで男くんはこれとこれ、どっちのはさみがいいと思う?」

博士「左が持ち手が短い物、右が持ち手が短いものじゃ」

男「短いのがいいと思うぞ」

男「高い所の枝を切ろうとしてはしごから落ちて死ね」

博士「ヒドイよー!」

男「それかいっそのこと庭木を燃やしてやろうか」

博士「よせ!もうお前は口を出さなくていい!」

博士「それにワシが居るからってわざわざ声をかけなくてもいいのじゃぞ!」

男「いや、別に博士に挨拶しに来たわけぢゃなくて」

博士「え、そ、そうなの!?」

男「友は知ってるよな。そいつの女が魔王にさらわれたんだ」

博士「魔王なら今朝うちに来たぞ」

博士「そしてこの手紙を渡して来たんじゃ」

男「見せろ」

博士「ほれ」

男「"女は頂いた。返してほしいだろう。では、この手紙を持って俺の家に来い。切妻屋根の家だ。魔王より"」

博士「男よ、そこへは行かないほうがいいぞ」

男「でも、ここに来いって書いてあるし」

博士「魔王はきっとデタラメを書いているのじゃ」

男「そう思うなら博士も行ってみたらどうなんだ」

博士「ワシは研究があるから、暇なお前が行け」

男「いくら暇だからって俺をコキ使いすぎだろ」

博士「いや、男くんはどんどん旅に出るべきだ」

博士「家に篭っていても何も得られるものはないぞ」

男「いい言葉風に言ってんなよ」

博士「男くん、君なら大丈夫だ。運はいいほうじゃろう」

博士「死にはしない、きっと生きて帰ってこられるぞ」

男「でも今回はちょっと長旅になるかもしれない」

博士「それならワシが開発したお守りを持っていくといい」

男「お守り?」

博士「ジャーン、ワシの人形」

男「いらん!」ポイ

博士「待てぃ!」

博士「これはタダの人形ではないぞ」

男「顔だけはな。すごいリアルなシワシワ感が出てる」

博士「この人形はトーキング、しゃべる機能が付いているのじゃ」

男「お守りにそんな機能いらない」

博士「ワシが何か言いたいときに、一方的に言わせるために作ったものなんじゃよ」

博士「また、人形にはGPS機能が搭載されていて、男の居場所がわかる」

男「あ、博士は旅をする上での指示を俺に出すつもりだな」

博士「その通りじゃ。これからはいつもワシがそばにいるぞ」

男「少々ウザイが一応持っていくよ」

博士「気をつけて言ってらっしゃい」

男は、魔王の家がある方向に歩いていった。

魔王は、最近では一般人と何ら変わらない生活を送っていた。

つい先週も廃品回収に軽トラで町に訪れている。

男「あれ」

300歩ほど進んだところで、男は立ち止まった。

男「この分かれ道をどっち方向に行くんだったっけ」

男「思い出せない・・・」

人形「ワシ、知ってるよ」

男「うう・・・あんまり頼りたくなかったけど仕方が無い・・・」

男「道を教えてくれ」

人形「ちょっと待ってな、今調べてるから」

男「人形、捨ててなくて良かった・・・」

人形「よし分かったぞ!右の道を進めば魔王の家に着く!」

男「おおっ!ありがとう!」

人形「まあ、こんな感じでワシは男くんをサポートしていく」

人形「また何かあったらいつでもワシを頼りにしてくれ

男は人形に言われた通り、その道を進んで行った。

そして、谷間に架かる橋の前までやってきた。

男「やっと着いたぜ」

人形「男くん、喉が渇いただろう」

男「そういえばそうだな」

人形「それならワシの首を3回回してみろ」

男「こうか?」バキバキバキ

人形「博士呼び出し中。しばらくお待ちください」

その頃、博士は人間の精子を増殖させる研究の最中だった。

博士「これが成功すれば大儲けできるな」

声「男くんがお茶を求めています!」

博士「何!」

博士「だからあれほど水筒を持って行けと言ったのに!」

博士「確か冷蔵庫にお茶があったはず・・・」

博士「あれ、どこに・・・あっ!」

博士「たった今、ワシが口を付けてしまったんじゃ!」

博士「ではしょうがない、ワシの飲みかけを持っていくしかない!」

博士は飲みかけのお茶を持って、

とにかく走った。

途中、階段で転倒し、

ドブに落ち、

鳥のフンの爆撃を受け、

それでもかなり老化した脚で、

走り続けた。

男「遅いなー」

人形「現在、博士は300mの場所まで接近」

男「お?あそこにトボトボ歩いてるのは・・・」

博士「お・・・男くん。茶を持ってきたぞ・・・」ヨロッ

男「おっと」ヨケル

博士「ぎゃああ!」ビタン

男「サンキュー」ゴクゴク

男「何か変な味のするお茶だな」ゴクゴク

男は茶を飲み終えると、橋を渡り始めた。

しかし、

男「ん」バキ

バキヘキバキィッ!

男「」

橋は、崩れた。

男「何でだよおおおお!」ヒュウウウ

男はそのまま、谷間に落ちていった。

ゴンッ

「痛っ!」

男「いてて・・・クソ!博士のやつ、わざとやったな!」

男「ところで今、何かに当たった気がしたんだが・・・」

魔王「気のせい、気のせい♪」

男「そうか、気のせいか・・・っておい」

魔王「俺はどこの女もさらってないぞ!」

男「まだ何も聞いてないのに答えるってことは・・・」

魔王「い、いや・・・」

男「おい!女はどこにいるんだ?」ガッ

魔王「逃げていった」

男「本当か?」

魔王「本当d

女「ここにいるよ」

男「いるじゃねえか!」

魔王「あー、しゃべっちゃダメだって言ったのに!」

男「さあ、女、行こうか」

魔王「待て!」

男「?」

魔王「流れからして、ここは俺を倒して女を取り返すべきでは・・・」

男「だって、檻にも入れられずにすぐそこにいるぜ?」

魔王「でも・・・」

男「お前、そんなに攻撃されたいのか?」

魔王「できれば攻撃はされたくないけど・・・」

男「それなら無理して戦わなくてもいいだろ」

魔王「そ、そうだな」

こうして男は、無事女を救出した。

しかし、帰る前にまずこの谷間から這い上がらなくてはならない。

男「魔王、タケコプターとか持ってないか?」

魔王「そんな物持ってたらとっくにここから抜け出してるっつーの」

男「どこでもドアでもいいんだ」

魔王「秘密道具系の物は一切持ち合わせていない」

男「そうか。じゃあ・・・」

魔王「何してるんだ」

男「あのね、トンネル掘ってるの」

魔王「アホか!何年もかかるだろ!」

男「上に傾斜したトンネルを掘ればここから出られると思うの」

魔王「それなら階段を作ったほうが早いだろ」

魔王「こんな風に削って段にすれば・・・」

男「なるほど!」

友の家

友「ああ、神よ・・・どうか女を助けてください・・・」

ガチャ

男「今帰ったぞ」

女「・・・」

友「おお!無事だったか女!」

友「って、あれ?」

ギュー

友「男!お前何で手繋いでんだよ!」バシッ

男「え?」

友「俺の女に気安く手を触れるな!」

男「いや、怒られる筋合いないんだけど」

友「俺は女を病院に連れて行く。男はさっさと帰れ!」

男「助けてやらなきゃよかった・・・」

人形「男さん」

男「何だ?」

人形「博士が研究所で待っています。帰りましょう」

男「ああ、また下らない頼みごとかな」

人形「とても重要な話があるそうです」

男「博士が重要だと言っていることは基本、重要度の低いものだが・・・」

人形「本当マジで重要だから!すぐに研究所に戻って!」

男「・・・まだ昼間だし戻ってやるか」

研究所

博士「うっひょおおお!メチャメチャよく切れーる!」チョキンチョキン

ザクッ!

博士「あ、切りすぎたわい。ハハハ」

男「おいジジイ」

博士「でもそんなときはワシ特製の植物用接着剤がある」

男「おーい博士」

博士「はぁ~い」

男「おいクソジジイ、重要な話があるそうだな」

博士「ワシのメッセージ、届いた?」

博士「良かった~!人形のメール受信機能を試したくてメッセージ送ったんだけど~」

男「それはよかったな」

博士「で、早速お願いなんじゃが」

博士「ワシはこの町で約60年の人生を過ごしてきた」

博士「そして、ついさっき、町についての新たな情報を知ったんじゃ」

男「博士個人の話なんてどうでもいいから頼みごとだけを言え」

博士「実は・・・・・・・・・・・」

男「前置きもいらねえんだよ」

博士「心して聞くがいい・・・」

博士「実はこの町にはまだ誰も足を踏み入れたことのない森があるんじゃ!」

博士「そこでその森に石版を探しに行」

男「断る」

博士「待て。今回は一人じゃないぞ」

博士「その旅に同行する心強い助っ人がいる・・・ワシ」

男「絶対役に立たなさそう」

博士「待て。たとえワシが役に立たなくとも男君には2つの道具があるじゃろ」

博士「だからきっと大丈夫じゃ。男君、旅に出よう!」

男「・・・宝、半分こだったよな」

博士「まあ、そんなところかの」

男と博士は、なかなか歩幅が揃わないながらも、

2人で、森の入口を目指して歩いていく。

男「あ。ところで・・・」

男「さっき博士が教えた道、ハズレだったじゃねえか!」ガン

博士「フォアア!老人虐待!」

男「でもおかげで女を見つけられたよ。ありがとう」

博士「何があったかは知らんが、よかったな」

博士「ところでワシからも一つ咎めたいことがあるんじゃが」

博士「男君のバッグから漂ってくる悪臭は一体何じゃ」

男「忘れてた。これ、博士の親友から預かったお土産な」プーン

博士「これは馬糞か?」

二人は森の入口(のような場所)に着いた。

博士「男君、君が先頭だ」

男「博士から誘ってきたんだろ。先に行けよ」

博士「男君、今ワシは60歳だ。心臓も弱い」

博士「何か化け物に襲われたりしたら命が危ないんじゃ」

男「そんなに生きたならもうこれ以上生き続ける必要はないだろ」

男「博士、俺の盾になれ」

博士「人をこき使いおって・・・」

男「どっちがだよ」

森を歩いていくと、古い墓地のような場所があった。

しかし、墓石は倒れてしまっていたため、男も博士もそれだとは気付かない。

博士「ハァ・・・ハァ・・・男君・・・」

博士「疲れた。ここで座って休もう」ドカッ

男「そうだな。ほら、饅頭食えよ」

博士「腐ってるんじゃろ」

男「博士なら食っても大丈夫、というかむしろ食ったほうがいい」

博士「そんなにワシを早く死なせたいのか?」

男「博士、知らないんだな」

男「世の中には発酵食品という物がある」

男「納豆、パン、豆腐などがその例だ」

男「だから、食べ物は腐らせれば腐らせるほど旨みが増すのだ」

博士「聞いたことないぞ」

男「近年、新たに分かったことなんだよ」

博士「そうだったのか・・・では一口だけ」パクッ

博士「・・・」モグモグ

博士「ウッ・・・」

男「・・・」

博士「ゴベエエエエエアアアアアアアアッ!」トケツ

博士「ギャアアアアアアアーー!」バタリ

男「博士・・・」

博士は地面に倒れた後、ゆっくりとその瞼を閉じた。

博士は死んでしまったのだ。

男は、倒れた老人を、納得したような表情で見ていた。

涙は、不思議と流れない。

老人もとても安らかな表情をしている。

男は老人の遺体を土に埋めると、その場を立ち去った。

しかし、そんな男に人形が話しかけた。

人形「博士が死亡した模様です」

人形「もし蘇りの薬とかがあったら飲ませてやってください」

男「あ、そうか」

あの時にもらった生き返りの毒薬が残っていることを、男は思い出した。

男は地中深く埋めた老人の遺体を掘り起こすと、薬を飲ませた。

すると、地面に横たわっていた老人は、

ゆっくりと瞼を開け、フガフガァ・・・と話し始めた。

男「博士、生き返ったのか?」

博士「ああ・・・ワシは男君に殺されたのか・・・」

男「それはもう過去の話だろ。行くぞ」

その時だった。

謎の人影が空中を何度も往復し、

男の衣服を切り刻んだのだった。

男「誰だ!」

博士「お、お前は!」

勇者「久しぶりだな。男と泥棒ジジイ」

博士・男「勇者!」

勇者「さあ男よ、お前も剣を持て」

男「一体どういうことだ?」

勇者「お前、ここがどこだか分かってるのか?」

男「森だろ?」

勇者「ここは俺の修行場なんだ」

勇者「丁度今、人を切る特訓をしていたところだ」

勇者「あれを見ろ」

男「人型のマト?」

勇者「と思うだろう。ところがあれは本物の人体だ」

勇者「この墓場から、毎日一体ずつ掘り起こしてはマトにしているんだ」

男「そうなのか・・・」チラ

博士「あれ、ワシ、いつの間にこんな泥まみれに・・・」

勇者「それにしても、いいところに来たな」

勇者「お前たちを切らせてくれ」

勇者「一度、生きた人間で修行をしてみたかったんだ」

男「・・・だってよ、博士」

博士「ま、まさか冗談だよね」

勇者「俺は本気だ。剣もこの通り研ぎたてだ」

博士「ホァァアァ・・・」ジョロジョロ

勇者「まずは男から切って、その後でジジイをなぶり殺してやる」

博士「男・・・あとは頼んだぞ」

男がハンマーで殴ろうとすると、

勇者は地面を転がって避け、

男の背後に回り、背中を切りつけた。

さらに、股間に全力で蹴りを入れた。

男「ぐあああっ!」

しかし、博士はこの間に勇者の後方に移動していた。

博士は自らの小便によって作られた地面の泥で団子を作る。

そしてそれを、勇者のパンツの中に突っ込んだ。

勇者「えっ!?」

博士「男君!今勇者は動きが鈍くなっている!攻撃しろ!」

男は、勇者の股間に向けてビームを発射した。

勇者「そんな物は防げる!」

勇者はビームを剣で跳ね返し、男の股間に命中させた。

男の股間から火が上がる。

男「アチイイイイイ!」

博士「小便を漏らせ!」

男「そうか・・・」ジョロジョロ

勇者「お前らさっきから小便漏らしてるだけじゃねえか!」

博士「お前だってウンコ漏らしたみたいになってるぞ!」

勇者の尻には、パンツに泥を入れられたことにより、

茶色いシミができていた。

勇者「こ、これはウンコじゃない!」

博士「わー、勇者がウンコ漏らしたぞー」

勇者「うるさい!」

勇者はそう言うと、ズボンとパンツを脱ぎ始めた。

勇者「攻撃するなよ!絶対に攻撃するなよ!」

男「今だあああ!」ドカッドカッ

勇者「うあぁ!やめろー!」

男「よっ、と」ケン

勇者「ちょっ!」ガクッ

男「死ね!」ドカドカドカッ

博士「今じゃ!勇者のケツにビームを注入じゃ!」

男は、パンツを脱いだ勇者のケツにハンマーを差込み、ビームを放った。

勇者「ギヤアアアアアッ!」

ビームは勇者の腸から口に到達し、完全に体を通り抜けた。

勇者「襲ってすまなかった」

男「勇者、一つ聞きたいことがあるんだけど」

男「俺達は今、町のことについて書かれた石版を探しているんだ」

男「この森でそういう物を見かけなかったか?」

勇者「石版は無いけど、額?というか枠ならあるぞ」つ回

男「まさかの枠だと!」

勇者「墓を掘っていたら見つけたんだ。いるならやるよ」

博士「おお!これでまた一歩財宝に近付いたぞ!」

勇者「おい。勝手に何を手に入れようとしてんだ」

男「勇者も欲しいか?」

勇者「そりゃまあ」

男「よし、それなら俺らと友と4人で宝を分けよう」

勇者「よし!」

博士(ワシの取り分がどんどん減っていく・・・)

勇者「お、ところで刺身、ご馳走してくれるんだよな?」

男「俺も今思い出したわ」

博士「刺身なんて店で買えばいいじゃろ」

男「俺、魚さばくの上手いんだぜ」

博士「初耳じゃな」

男「石版のパーツも手に入ったことだし帰ろう」

勇者「いや、その前に服を縫い合わせないと」

男の家

男「うおおおおおっ!」シュババッ

勇者「何という手さばきだ」

博士(指を切れ・・・)

男「おっ!」ズルッ

ザクリ

勇者「」

男「―っと危ない!」

勇者「まな板に刺さったのか。ビビったー」

博士(もし飛ぶ方向が違っていたら・・・ガクブル」

男「さあ、出来たぞ」

?「・・・」

?「男は今、家にいるようだ・・・」

?「ここで外に出てくるのを待つか・・・」

ビチャッ

?「?」サワサワ

ネチョッ・・・

?(唾ああああ!)

?(誰かが窓から唾を吐きやがった!)

カーッペ!ビチャビチャ

?(うわ、どんどん吐きやがる!)

?(糞!もうキレたぞ!)

?(家に侵入してやる!)

謎の男は、半開きになっていたトイレの窓から家の中に侵入した。

そして、裏口の鍵を開け、脇の物置部屋に隠れた。

勇者「旨いなこの魚!」

博士「酒が何杯でも飲めそうじゃ!」

勇者「男も酒飲んだらどうだ」

男「いや、俺はいいよ」

博士「男は前に飲みすぎて池に落ちたことがあるんじゃよ」

男「酒に酔うたびにその話するのやめろ!」

勇者「俺ちょっとトイレ行ってくる」ガタ

勇者「トイレはどこにある?」

男「廊下に出て左側」

勇者「廊下に出て・・・どっち側だったっけ」

勇者「こっちか?」グッ

?「!!」オサエル

勇者「開かないぞ」グッグッ

?「!!!!」オサエル

勇者「ん?ここにあるのは裏口?」

勇者「そうか、外か」ガチャ

?(あぶねえええええええ!)

?(今のは男の声じゃなかった。男はあんなカッコつけた声でしゃべらない)

博士「うう・・・ワシもヒクットイレ行きたくなってきた・・・ヒック」ガタ

博士「ウィ~トイレトイレ」グッ

?(またかよ!)オサエル

博士「あれ~、開かないな」グイグイ

ガタガタ

?(開いちゃう!)オサエル

博士「フン!フーン!」グイグイグイ

ガチャ

博士「?」

?「うわあああああああ開けちゃダメえええええええ!」シメル

博士「勇者がまだ入っとるのか」

男「おーい博士、電話だ」

博士「おお、今行く」

?(バカでよかった・・・)

博士「もしもし?」

博士「何?カツラを買えだと?」

博士「ワシはまだハゲとらんぞ!」

博士「おまけで低反発枕?いらんわ!」ガチャン

博士「全く、実物がハゲかどうか確認してからカツラを売れ!」

男「レーザーでハゲさせてやろうか?」

博士「そんな目的で使うならハンマーは没収じゃぞ。そもそもあげたわけでは無いのだからな」

男「そうだっけ?」

勇者「外にもトイレは無いな」

ビュウウウウ

勇者「ううっ!もうダメ、漏れそう!」

勇者「どっかで立ちションしないと!」

勇者「あそこに止まってる車にしよう」

勇者「早く早く!」クネクネ

ジョッ

勇者「フイイイイイッ!」ジョロジョロロー

勇者は、普段そこには止まっていない車に違和感を感じつつも、

流れ出る自らの小便を見つめ、その顔は喜びに満ちていた。

勇者「帰ったぞ」

博士「遅かったじゃないか!トイレトイレっ!」ダーッ

勇者「久し振りに小便ギリギリだったぜ」

男「お前、手洗ってないだろ。チンコの匂いがする」

勇者「分かるのか?」

男「俺は鼻が利くんだ。足下にウンコがあればすぐに気がつく」

勇者「便利な能力だな。俺はうさぎ跳びで歩いてたら両足で踏んだことあるぞ」

男「んな下ネタどうでもいいから手洗ってこい」

博士「今度こそ!」グイ

?(いいかげんにしろよ!)オサエル

博士「なぜ開かんのじゃ!」グイーッ

博士「あれ?」

博士「確か廊下に出て左側と言っていたはず」

博士「ワシが今開けようとしているのは右側のドア!」

博士「ま、間違えた・・・」カアー

?(今日だけで確実に50日は寿命が縮んだ・・・)

?(男はいつになったらトイレに来るんだ?)

?(ずっとこの姿勢はきついぞ・・・)

?(それに廊下に隠れてたんじゃ、他の誰かに見つかってしまう可能性もある)

?(男の寝室に隠れるか。確か2階だったよな)

?(ここが男の部屋かな・・・)

?(このクローゼットの中に隠れよう・・・)

?(男が部屋に入ってきた瞬間に捕まえる・・・)



博士「ハァ~スッキリした~」ガチャ

博士「ワシの膀胱、破裂寸前だった」

勇者「お前の膀胱の話なんか聞きたくない」

男「俺もだ。でさー」

男「お前らいつまで俺の家にいるつもりなの?」

博士「泊めてくれるんじゃろ?」

男「何で!」

博士「ワシ、もう眠い。ここで寝かせてくれ」zzz

勇者「俺はもう帰るよ」

男「博士、寝るなら布団敷くからさ、そこで寝ろよ」

ガチャ

?(来たな・・・)

博士「ここが男君の部屋か」

男「土禁だ。靴脱いで入れ」

博士「ほいほーい」

?(さっきの変な奴がくっついてきた!)

男「布団そこに入ってるから自分で敷け」

博士「はーい」ビキッ

博士「ああああっ!」ガクッ

男「ビックリ腰か」

?(早く出て行ってくれないかな・・・)

博士「じゃあ男君、おやすみー」

男「博士と同じ部屋で寝るなんて落ち着かないな」

博士「ワシも興奮して眠れなさそうじゃよ」

男「何に興奮してんだよ」

男「俺ももう寝ようかな」

博士「・・・zz」

男「寝るの早っ!」

博士「男君のそれを・・・咥えさせて・・・ムニャ」

男「どんな寝言だ」

?(・・・)ガチャ コソコソ

?(二人とも寝てしまったのか・・・)

?(このジジイ邪魔だな。別の部屋に移動させよう)グイ

博士「おおっ!?」

?(起きたー!?)

博士「誰かいたような・・・」

?(やっぱり起きるよね、そりゃ!)

博士「せっかくいいところだったのに、起こしおって」

?(こうなったら最終手段だ。どっちかが夜中にトイレに行ってる隙にやろう)

?(それまで家を物色するか・・・)

?(男の家なんて大した物はなさそうだが、アレだけはどこかにあるはずだ)

?(だって、俺が姿を現した瞬間、その店から立ち去ったのだから・・・)

?(ん?あの扉は・・・)

<男専用物置。俺以外立入禁止!>

?(あの部屋だな)

ガチャ

<ここに指を押し当ててください>

?(二重ドア!しかも指紋認証かよ!)

?(・・・男はすぐそこで寝ているが・・・)

男「くーくー」

?(引きずっていくか・・・)グイ

?(気付いてないな)

ズルズル

男「むにゃむにゃ」

?(タッチっと)ポチ

ガチャン

?(開いた!)

男「すーすー」

?(・・・)

?(中はダンボールだらけだな。まさかこれが全部?)ゴソゴソ

?(おおっ!)

?(こここれは・・・)エロホーン

?(やっぱり買っていたんだな)

男「すやすや」

?(しかしこいつ起きないな・・・)

?(・・・)ユサユサ

男「ふにゃふにゃ」

?(・・・)ガンッ

男「うにゃうにゃ」

?(なるほど。男は一度寝たら数時間は起きない病なんだな)

?(よし、それなら表に引きずり出してやろう)

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