少年「お父さん、お父さん! 魔王がいるよ!」 (43)

ある霧の濃い夜、幼い息子を胸に抱え、馬を走らせる父親の姿があった。



パカラッ! パカラッ!



少年「お父さん、お父さん!」

父「どうしたんだい、坊や?」

少年「魔王がいるよ!」

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魔王『フフフフ……。これはこれは、可愛い坊やを見つけたぞ……』





少年「魔王が! 魔王がいるよぉ!」

父「ハハハ、なにを言ってるんだい。あれはただの霧だよ」

魔王『坊や、私と一緒に遊ぼうじゃないか。楽しい場所に連れていってあげよう……』





少年「お父さん! 魔王がしゃべってるよ! 恐ろしい声だよ!」

父「大丈夫、あれは枯れ葉のざわめきさ」

魔王『ほらご覧、私の娘もいるよ。坊やに美しい舞いを披露したがっているよ』

魔王娘『オホホホホ……』





少年「うわぁぁぁ! 魔王の娘だ! お父さん、魔王の娘もいるよぉ!」

父「あれは枯れた柳の木だよ。魔王の娘なんかじゃないんだよ」

少年「ホントだよ! 魔王がいるんだよぉ! 怖いよぉぉぉ!」





魔王『なんと可愛らしい悲鳴だ。こうなれば、力ずくで連れていくことにしよう』

少年「お父さん、お父さぁん! 魔王が、魔王がぁぁぁ!」





魔王『無駄だよ、坊や』

魔王『君のお父さんは私に気づくことができないんだよ……さぁ、おいで……』

少年「覇ァッ!!!」



ドゴォッ!!!



魔王『ぶっ!?』

魔王『な、なんだと……!? 人間の子供がこれほどの打撃を……!?』



少年「お父さん、ごめん……ぼく、やっと分かったよ」

少年「お父さんは魔王に気づいてないんじゃない……気づかないふりをしてるだけ……」

少年「お父さんはこう言いたいんだよね」

少年「“魔王くらい自力で倒せないと、一人前の男になれない”って!」



父「……」ニヤッ

少年「来いよ、魔王! 一対一だ!」ビシッ

魔王『ふ、ふざけるなよ……! このクソガキが!』

魔王『可愛いから連れ去ろうと思ったが、もういい! 肉体ごと滅してくれるわァ!』

魔王『キエェアアアアアアッ!!!』

少年(お父さんから伝授された奥義……今こそ使わせてもらうよ!)キッ

少年「蹴ゥッ!!!」



ドドドドドドドドドドッ!!!



魔王『ぐごあぁぁぁっ……!』







父(敵の腰回りに蹴りの連打を浴びせ、まるでベルトを巻いたような傷を残す奥義――)

父(その名も“蹴(しゅう)ベルト”)

父(初めて使うにしては、上出来の威力だ……見事!)

魔王『ガ、ガハッ……! バカな……魔界の王である私が、こんな子供に……!』

魔王娘『……』

魔王『おおお……む、娘よ……私の傷を回復してくれえ……』

魔王娘『イヤよ』

魔王『え……』

魔王娘『負け犬はとっとと魔界に消えなさいな、このショタコン親父。キモイのよ』シッシッ

魔王『!!!』ガーン



魔王『ウギャアァァァァァ……』ボシュゥゥゥゥゥ…

サァァァ……



少年「霧が晴れていく……」

少年「お父さん……ぼく魔王に勝ったよ!」

父「よくやったな、坊や」

父「だが、まだまだ甘い。私なら最初の一撃で魔王を仕留めていただろうからね」

少年「ちぇっ、お父さんには敵わないや」

魔王娘「あ、あのっ……」

少年「あっ、魔王の娘! どうしたの?」

少年(霧の中じゃよく分からなかったけど、あらためて見るとこの子すごく可愛いな……)

魔王娘「今のあなたの戦いぶりを見て、惚れちゃいました……」

魔王娘「あたしと……お友達になって下さい!」

少年「う、うん……ぼくでよかったら!」

魔王娘「キャーッ! 嬉しいっ!」

父「これはこれは、とんだ戦利品だな」

父「ところで、君のお母さんも美人なのかい?」

魔王娘「はい、魔界一の美人ですよ! あのショタコンクソ親父にはもったいないくらい!」

父「そりゃあいい! ぜひ今度、紹介してくれないか!」

魔王娘「いいですよ!」

少年「!」

少年「お、お父さん……お父さん……!」ガタガタ…

父「――ん?」

少年「お母さんがいるよぉ!」

父「ハハハ、まさか……こんなところにいるわけないよ」クルッ



母「あぁ~……なぁ~……たぁ~……?」



父「ヒエエエッ!!?」

母「君のお母さんも美人? 紹介してくれ? 今のは一体どういうことかしら?」ゴゴゴ…

父「ちっ、違うんだ! 落ち着くんだ! 話を聞いて――」



ウギャァァァァァ……!



少年「あの二人はほっといて、この馬に乗ってどこか遊びに行こっか!」

魔王娘「うん!」

馬「ヒヒィ~~~~~ン!」







<おわり>

蹴辺流屠 (しゅうべると)

その発祥は中国漢代に遡る
摩・櫻(まおう)によって発案され蹴りを主体とする拳法であり、流れるような動きで辺りの敵を屠ることから蹴辺流屠と呼ばれるようになった
なお、かのフランツシューベルトの名前の由来はここから来ているのは有名な話である

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