サンタ「サンタさんは死んだんだ」 (21)

サンタ(毎年毎年サンタサンタって馬鹿じゃねえの)

サンタ(お前ら宗教どこよ、無宗教の馬鹿どもがこんな時だけこぞってクリスマス祝ってんじゃねえぞコラ)

サンタ(あーうぜえ、この国じゃサンタの仕事はもう親達がやってくれるし俺いらねえじゃん)

サンタ(楽なぶんやりがいゼロだな、地獄をプレゼントしてやりてえ)

少年「…」

サンタ(なんかすっげえ見てるし…なんだこのガキ…クリスマスに出歩いてんじゃねえぞ)

少年「おじさん、サンタでしょ?」

サンタ「ファーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwww」

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サンタ(何でバレた?このガキ俺のどこを見てサンタだと思ってんだ、髪の毛銀色くらいしか共通点ないしつーか何だったらハゲサンタの方が多いだろ)

少年「ねえ」

サンタ「サンタじゃねえよボケ、ぶち殺されてえか」

「お客さ~ん…子供に向かってそんな言い方は…」

サンタ(うるせえ、サンタはバレたら死ぬんだよ、俺の命に変えられるならガキの心なんざ屁でもねえ)

少年「じゃあお兄さん、僕のサンタになってよ」

サンタ(はいでました、テンプレベタベタ展開、女に言われるならまだしもうんこくせえガキが使う誘い文句じゃねえよ)

少年「僕さ、お母さんにプレゼントしたいものがあるんだけど僕だけじゃ買いに行けないんだ」

「いい子だねえ…さあ君、寒いだろうここに座って座って」

サンタ(隣に来たもうダメだわこれ、え?なんでこのジジイ俺の横に座らせんの?屋台特有の親しさとか求めてないんですけど)

「あったかいミルクだよ、さ、お飲み」

少年「ありがとう、おじさん!」

サンタ(お前ら二人でやればいいじゃん、俺要らないじゃん)

「それで、お母さんに何をあげたいんだい?」

サンタ(はぇ~、それ掘り下げるんだ、俺の横で?馬鹿じゃねえかこのジジイ?お前はトリコ?)

少年「うん、お母さんね、病気なの」

サンタ(はいはい出ましたお涙頂戴のクソ展開、俺がとどめ刺してやろうか)

少年「お母さん、体が弱くて見に行けないけれど、桜が大好きなんだ」

少年「桜は春に咲くんだよね?…だからせめてお花とかあげられたらなぁって」

「…それはそれは…」

サンタ(え?だったら詰んでくりゃいいじゃん、別に買う必要ないじゃん、そのへんの花詰んでいつもありがとうお母さんって言えばいいじゃん)

「…でもねぇ…こう雪が積もってるとなると花は…」

少年「…そうなんだ」

サンタ「…」

サンタ「おいおっちゃん、もう一杯同じのくれよ」

「あ、はいただいま」

少年「…」

サンタ「…」

サンタ「なぁ、少年」

少年「え?」

サンタ「知ってるか?お前の親はきっとそんなこと望んじゃいない」

サンタ「お前のお母さんはな、きっとこう思ってるはずだ」

サンタ「「私は体が弱いけれど、でもあの子が元気なのが一番のプレゼントだわ」ってな」

サンタ「そう、クリスマスを祝うのに特別なもんは要らないんだ、お前の元気な顔を見せてやればいいのさ」

サンタ(うまい、さすが俺口が回る)

少年「いやそんなことは知ってるよ、お母さんはいっつも僕に「あなたが居てくれて嬉しい」って言ってくれるもん、お母さんが望んでるとかじゃなくて僕自身がお母さんを少しでも喜ばせてあげたくて考えてるんだ、例えそれが桜には到底及ばない小さい花だったとしても、僕はお母さんとそれを見られることが一番幸せなんだもん、そもそも存在だけで日頃の感謝が伝わったなら苦労はしないよ、さてはお兄さんモテないでしょ?」

サンタ(死ね)

サンタ「死ね」

「はいお待ち、お兄さん」

サンタ「おう」

少年「…それに、もうあと何回も見られないだろうから」

「…」

サンタ(お涙頂戴展開はいらねーって)

少年「最後くらい、お母さんになにかしてあげたいんだ」

「…お兄さん」

サンタ「俺に手伝えってか?冗談じゃねえ、何かをやるって口に出したんなら自分でやるのが当たり前だろ、他人にやってもらったらなんの意味もねえ」

「…」

サンタ「大体な、お前なんでこんなところにいるんだよ」

サンタ「母ちゃんが長くねえって知ってんだったら会いに行ってやるべきだろ、死ぬ前に少しでもてめえのツラ見せてやんだよ」

「そんな言い方…」

サンタ「けっ」

サンタ(サンタは特定のやつを特別扱いしちゃいけねえ、お前にだけ優しくなんてできねえんだよ)

サンタ「つうかそもそもなんで俺が手伝うことになってんの?」

「…」

少年「…そっか、ごめんね、もう無茶言わない」

サンタ「そうそうそれでいい、家に帰って飯でも作ってやんな」

少年「僕一人で探しに行く、おじさん、ホットミルクありがと!」チャリン

「…別にお代なんて要らないのになあ」

サンタ「おっさんやたらあのガキに肩入れするんだな」

「私にも同じくらいの子供がいましたからね…」

サンタ「へえ」

「もうこの世にはいないですが」

サンタ「はあ、だからあんた重ねちまうってわけだ、自分の死んだ子供とあのガキを」

サンタ「それがあんたの特別扱いする理由ってやつね、殊勝なことで」

「今夜は冷えますね」

「もう一杯いかがです?お代はただでいいですよ」

サンタ「要らねーなー、お代よりめんどくせえ事頼まれそうだからよ」

「…そうですか」

サンタ「あーあー、せっかくのクリスマス
に湿気た気分になっちまったよ!」

サンタ「ちょっとあのガキ追いかけてしばいてくるわ!じゃな!」ダッ

「あっ…」

サンタ(死ね死ね死ね死ね死ね、マジでほんとなんで俺なんだよ、さみぃぃぃぃぃ…!)

サンタ(サンタは人に見られてはいけない、特別扱いしてはいけない、知られてはいけない)

サンタ(それが俺たちサンタの絶対的なルール)

サンタ(どれか一つでも破るとサンタは霧のように消え去っちまう、理由も原理もない、なぜならサンタだから)

サンタ(サンタは秘密を守るもの、そして夢を与えるものだから)

サンタ(この国みたいに発展した裕福な国だとそもそもサンタは必要ない)

サンタ(もっともサンタという認識はみんなが持っている、というかむしろ持っていないと俺は死ぬ)

サンタ(つまり知られなくても知られても死ぬ、絶妙なバランスの上で俺の存在は成り立ってる)

少年「…」ガリガリ

サンタ「…見つけた」

少年「何?別にお兄さんには何も頼んでないんだけれど」ガリガリ

サンタ「お前なんで子供らしくしねーの?普通のガキだったらとっくに家に帰って食って寝る時間なんだけど」

少年「だからさっきも言ったじゃん、お母さんにあげたいって」

サンタ「ガキが背伸びするもんじゃねえよ」

少年「お母さんが死んだら僕一人だよ?背伸びでも何でもして大人にならないといけないじゃない」

サンタ「大人ね…そんなにいいもんじゃねえと思うがな」

少年「何が言いたいの?」

サンタ「お前さー、マジで花なんかで母ちゃんが喜ぶと思ってんの?」

少年「…は?」

サンタ「そんなすぐに枯れちまうもん別に喜ばねえって分かってんだろ」

少年「…うるさいな」

サンタ「そもそもお前本当に花渡したいのかよ」

少年「うるさいな!」

少年「何も知らないくせに…!」

サンタ「いやこの際俺がお前の事情を知ってる知ってないはどうでもいい」

サンタ「お前本当に花…」

少年「生きて欲しいよっ!!!」

少年「もっともっともっと僕のそばにいて欲しい!」

少年「でもそれが叶わないからっ!!!」

少年「僕はっ!…僕は…!!」

サンタ(俺のじいちゃんも父ちゃんも皆身バレして死んだ)

サンタ(サンタは認識される限り無限の命を持つのにそれでも死んだ)

サンタ(何してんだよって思ったけど、多分わかった、つまりこういう事だったんだな)

サンタ「なぁうんこマン、それが答えだろうんこマン、おいうんこマン、お前は母ちゃんに生きて欲しかったんだろうんこマン」

少年「…」

サンタ「今からサンタ界ぶっ潰しに行くけどいく?」

少年「…」

少年「えっ?」

サンタ「動け!俺のスピリットギガ!!!」ブロロロロロロロロ

少年「なにこれ!?なにこれ!?」

サンタ「ソリ」

少年「バイクだけど!」

サンタ「亜音速透明機能型付プロテクトバリアモード搭載ソリ型バイク」

少年「バイクじゃん!!!」

サンタ「へぇぇぇぇぇい…!天国よりよっぽど気持ちいい場所に連れてってやるぜ…!!」ブオオオオオオオン!!!

少年「あっちょ…!…うぇええええ…!」

サンタ「本日雪に混じりゲロ!!!ひゃっほおおおおおおお!!!」

サンタ「そもそもサンタの世界ってのはな、お前がいる世界があるからこそ成り立ってる」

サンタ「なぜなら俺たちはお前達の認識から生まれた幻想だから」

少年「…」

サンタ「そして、サンタは知られたら生きられねえ、つまりサンタ界にお前を連れていくってことはサンタ界をぶっ潰すってことだ」

サンタ「俺はテロリストみたいなもんだ」

少年「…そうまでして、何をしたいの…?」

サンタ「??母ちゃんの病気治したいんじゃねえの?」

少年「そっ…それはそうだけど…」

サンタ「あのさあ、ガキはガキらしくガキっぽくガキの願いをいえばいいんだよ」

サンタ「何謙虚になってんだ、ブチ殺すぞ」

少年「ごっ…ごめんなさい…」

「フォッ!?問題児がバイクで突っ込んできたぞい!」

少年「あの人たちもバイクって言ってるんだけど」

サンタ「まぁソリ改造したからな」

「止まれ!止まらぬか!」

サンタ「おい死にてえのかァ!?轢き殺される前にそこをどけぇぇえええ!!」

「くっ…この問題児…!?…あれは…人間の子…!?」

「ま、まずい…!!私達はあと一日で、死、死んで…!」

サンタ「おらおらおらおら!!この兵器が目に入んねぇのか!!」

少年「兵器…」

少年「お、お兄さん!!も、もういいよ!やめようよ!僕こんなことしてまで…!!」

サンタ「いいんだよ!どうせサンタなんて誰も信じやしねえ!必要なんてねえんだ!」

サンタ「いいか!?サンタってのは口実だ!クリスマスも全部全部口実なんだよ!」

サンタ「あいつと仲良くなりたい!あいつとヤリてえ!そんな口実ばっかなんだよ!」

サンタ「でももうそんな口実は要らねえ!なぜならこの国はもうそんなもん必要としねえくらいに幸せだから!」

サンタ「俺たちサンタはもう必要ねえ!お前は母ちゃんと居て幸せか!?」

少年「…うんっ…」

サンタ「ならそれでいいじゃねえか!おらおら!!どけよ老いぼれ共が!!!」

サンタ「うんざりだ!もううんざりだ!サンタサンタって言いながら何もしねえ老いぼれ共が!」

サンタ「配る相手もいねえ!かと言って本物の人間らしい生活もできねえ!生き飽きるほど生きる!!」

サンタ「サンタさんは死んだんだ!!!」

サンタ「邪魔なんだよてめぇら…!!!サンタなんて皆死んじまえや!!!」

少年「えぇ…」

サンタ「どけおら!長に合わせろオラァァァァァ!」

サンタ「ここがサンタ長の城だ」

少年「…ごめん…僕もうキャパオーバーなんだけど」

サンタ「安心しろ、サンタ長は火を噴く」

少年「絶対オーバーするじゃん…」

サンタ「おいジジイ、開けろ!引導渡しに来てやったぞ!!」

サンタ長「…」

少年「…あれ何してるの?」

サンタ「多分お前を見ないように目をつぶってる、意味無いけどな」

サンタ長「…そいつを近付けるな!死んでしまう!」

サンタ「ファーーーーーーwwwwwwwwそれが子供に対して使う言葉すか?つうか俺たちその子供にプレゼント配るんですけど?」

サンタ長「最近は配ってない!」

サンタ「それが問題なんだよなあ!!!オラァ!」

少年「ぐえっ」

サンタ長「うおおおおおおおおお!!」

サンタ長「な、なんなのだ!私に何を…」

サンタ「そいつの母ちゃんの寿命伸ばしてやってくれや、出来んだろ」

サンタ長「出来るわけないだろ!」

サンタ長「よしんば出来たとしてももうお前のせいで死が決定している私がやるとでも思っているのか!」

サンタ「サンタの認識があればまたいつかサンタは復活できる、それにまたサンタでなくても別の形で生まれ変わるかもしれない」

サンタ「だけどここであんたが何もしないってんなら、サンタに生まれても人間に生まれてもどの場所にどんな理由で何をしてようとも必ず追いかけて大恥かかせにいくからよろしく」

サンタ長「死ねえええ!!!」

サンタ長「…」

サンタ長「はぁ…もういいわ…」

サンタ長「…少年…色々あったようだが…その、疲れたな?」

少年「…うん…まぁ、はい」

サンタ長「まぁ、頃合だとは思っていたんだよ、サンタという文明にも」

サンタ長「もう誰もサンタに願うものは居なくなった、それでいい、この飽幸の国にサンタはもういらん」

サンタ長「…だから私達も、拗ねていたのかもしれんな」

サンタ長「…お前は何が欲しい?」

少年「…」

少年「お母さんともっと、一緒に過ごしたいです」

サンタ長「…ん」

サンタ長「聖夜の奇跡というやつだ、特別扱いでもなんでもなく、単にお前さんが母親のためを思っていたら偶然、お前さんの母親病気が治る、そういう奇跡」

サンタ長「お前さんは喜んでやればいい、ただの偶然を母親と二人で」

サンタ「…サンタ長…」

サンタ長「お前は死ね」

少年「…あの…その、なんてお礼を言ったらいいか」

サンタ「礼の言い方も知らねえのか最近のガキは」

少年「あっ、ありがとうございます!」

サンタ「それでいいんだよ」

少年「この御恩、絶対忘れませんから!絶対!絶対!」

サンタ(まぁ忘れるのは俺たちの方なんですけどね、さぁ、どうしたもんか)

サンタ(いざ死ぬとなると怖さより虚無感がついてまわる、俺の人生、何を成し遂げたんだろうな)

サンタ「…ん?」

サンタ「…あぁ、いや、そうか」



母親の少年「おかえり」

少年「ただいま!!」



サンタ「最後は悪くなかったな」

サンタ長「お前は極悪だけどな」

サンタ「じゃあまた逢う日まで、じいさん」

サンタ長「死ね」

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