朋「ぶきように恋してる」 (16)

元ネタ

https://youtu.be/hTIHhJzrRm4

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1461259916

「いいよ」

そう、返事が返ってきた。

あたしの、一世一代の告白。

ずっと好きだった、って。

ほかにも、たくさんのことを、無我夢中になって伝えて。

返ってきた返事は、とてもシンプルなものだった。

「……」

「……朋?」

「本当に……?」

「ああ、俺でよかったら付き合おう」

聞き返しても、答えは変わらなかった。

あたしと、付き合ってくれるって。

夢見たいな返事を彼は返してくれた。

「……あたしでいいの?」

「あたしよりもっと可愛い子だっていっぱいいるのに」

「じゃあ、断ったほうがよかったか?」

「いや!」

……素直に嬉しいって言えばいいのに。

わかってても言えなくて、もどかしい。

「俺も、朋に告白されて嬉しかったし、朋が好きなんだ。今更なしにしろって言われても断るからな」

「そんなことしないわよ!」

「そうか、よかった」

「でも……本当に、いいの?」

「だから――」

「あたしとあんたって……ほら、アイドルとプロデューサーの関係じゃない?」

「そうだな」

「なのに……いいの?」

「それがわかってて告白したのは朋だろ?」

「うっ……そうだけど……」

気持ちが抑えられなくて。

爆発しちゃって、こうして告白しちゃって。

……今思い返したら、あたし結構恥ずかしいこと言ってたかも。

「……勿論、バレないようにしなきゃいけないな」

「だから、普通の恋人としてふるまうっていうのはむずかしいだろう」

「そうよね……」

人の口に戸は立てられない。

どんなに秘密にするって言っててもどこかでもれちゃうもの。

だから、ばれないようにしないといけない。

……それは道端で見かける学生のカップルとは違う恋人の形。

あたしが望んだ恋人の形とは――

「――でも、あたし、わかってて告白したんだもん」

「そのくらい大丈夫よ」

「そうか」

「うん、大丈夫」

「みんなにばれないようにがんばるわ!」

……こうして、彼との恋人関係が始まった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


みんなにばれないようにっていうのは難しい。

だって、今までどおりでいないといけないんだもの。

心の距離は近づけたのに、体の距離は昔のままで。

本当に近づけてるのか、近づけてないのかもわからない。

「はぁ……」

家に帰って、ベッドに転がって、思わずため息がこぼれた。

今日もあたしはがんばっていた。

今までどおりを演じるために。

「……せっかく恋人になれたのになぁ」

これじゃあ、本当に恋人になったのかもわからない。

「……」

「今、暇かな?」

携帯を取り出して、彼にメッセージを送ろうかなって考えた。

……考えて、何を送ろうか悩む。

少し寂しかっただけ。

それをただ伝えるのも……恥ずかしい。

だから、別の何かを……って考えて。

『ねぇ、いま暇?』

とだけ送った。

「……」

「……」

「……返ってこないわね」

いくら待っても返事は来ない。

やっぱり忙しかったのかしら?

「……」

「……寝よ」

じぃっと、画面を見るのにも疲れて携帯を放り出してそのままうつぶせに。

胸がぎゅっと絞られるような感覚に耐えながら意識を手放そうとして――

「……あ」

――携帯が鳴る。

勢いよく起き上がって携帯を拾って画面を見ると。

『少し忙しかった』

と返事がきていた。

『あ、ごめん。邪魔だったかしら?』

『朋と話すために急いで終わらせた、大丈夫だ』

「ふふっ……」

思わず笑みがこぼれる

私のために、っていうのがすごく嬉しい

『で、何の用だ?』

『ちょっと話したくて』

『どうした?』

……と、ここで指が止まる。

何の話をしようかなんて考えてなかった。

十秒、二十秒と考えて。

『今日の占いの話なんだけどね』

と、いつもの話を振ることにした。

『今日星座占いで1位だったのよ』

『ほう』

『だからアイスも当たりがでたわ!』

『すごいな』

『今の私はとっても運勢がいい気がするわ。どんなことでも運がいい結果になると思う!』

『よかったな』

『……信じてないわね?』

『信じてる』

『本当?』

『本当』

『よかったわ』

……中身なんてない会話。

話してる相手の顔も見えない、冷たい会話。

だけど、さっきの寂しい気持ちが薄れていく。

……でも、薄れるだけで、やっぱりあたしの心にはまだ残ってて。

それでも、それを伝えることもできず、また別の話題を探して。

『というか、あんたさっきから素っ気無くない?』

『そうか?』

『そうよ』

『すまん』

『いや、別に謝ることじゃないんだけど……』

……ここで会話が止まる。

少し待っても、彼からの返事は来ない。

でも、このまま終わるのもいやだからあたしのなかの話題をまた探し――。

『なぁ、お詫びじゃないんだけどさ』

始める前に、返答が帰ってきた。

なに、と答える前に次の言葉が続く。

『今週の日曜にデートしよう』

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「頼むもの決まったか?」

「んー……これにしよっかな」

「オーケー、じゃあ店員呼ぶな」

二人でファミレス。

彼はいつもの姿。

でもあたしは変装していつもと違う姿。

……ここでもまた、いつもじゃないあたしを演じてる。

「でも、あんたがデートに誘ってくれるとは思わなかったわ。あんなに素っ気無かったのに」

「悪い、ああいうのに慣れてなくて」

「メールとかしないの?」

「まあ、事務的なやりとりとかはちょくちょくするけどな……個人でのやりとりってのはほとんどないな」

「へぇ……」

「……何笑ってるんだよ」

「別に……ふふ」

あたしが特別なんだって嬉しくなった……なんて恥ずかしくていえない。

「そうだな……後は相談にのるくらいか」

「相談?」

「ああ、いろいろとな」

「ふーん……」

「ねぇ、あたしも相談あったらのってくれる?」

「勿論」

「……何かあるのか?」

「ううん、何も」

「ねぇ」

「ん?」

「さっきあんたからもらったこれなんだけどさ」

三日月の形のストラップ。

このファミレスに入る前に行った店であたしに似合うからって買ってくれたもの。

「財布とかにつけていいわよね?」

「勿論。そのために買ったんだから」

「よかった、ふふ」

「……ただ、俺からもらったとかは――」

「――わかってるわ」

それで変に邪推されたら困るってことだろう。

……そうでなくても、彼は私だけをプロデュースしてるってわけじゃない。

だから、私だけひいきするっていうのもできない。

「これはあたしとあんたの秘密だもんね」

笑顔を見せる。

……これをみんなに自慢したいあたしもいる。

そんなあたしはもっと奥にしまって。

「ふふっ、大切にするわ」

「ありがとねっ!」

「どういたしまして」

「この後はどこに行く?」

「午前はあたしの行きたい場所行ってくれたから、今度はあんたの行きたい場所行っていいわよ」

「そうだな……ん?」

彼はポケットから携帯を取り出した。

誰かからのメールかしら?

「……」

「誰から?」

「いや……」

彼は困ったような表情を見せて、しきりに頭をかいている。

……。

「ねぇ、もしかしてお仕事の話?」

「!」

「……図星かしら?」

「ああ、図星だ」

「やっぱり」

「……」

「……」

「行ってきてもいいわよ」

「朋……?」

「あたしとのデートなんていつだってできるじゃない」

「でも……たぶん急ぎの用事なんでしょ?」

「……ああ」

「なら、行かなきゃ」

「……」

「ありがとう、朋」

一言礼を言うと、彼は立ち上がった。

「この埋め合わせは絶対するから」

そう残して、走って出て行ってしまった。

「……はぁ」

一人残ってため息がまたこぼれる。

本当は行ってほしくなかった。

あたしとのデートの方が大切、なんてキザなこと言って残ってほしかった。

このため息は、そんな素直な気持ちが吐き出せなかった自分に呆れるため息だと思う

「でも……本当に急ぎだったのよね」

「料理頼んでたのだってきっと忘れてるでしょうし」

一目散にかけていったのだから、本当に重大な仕事だったんだろう。

……もし、あたしが素直に伝えていたら、彼は残っていてくれただろうか。

あたしと仕事、どっちをとってくれるだろうか。

「……主婦みたいね、これ」

あたしの好きになった彼はそういう人だから。

そこであたしなんて答えをだしたらむしろ怒ったと思う。

……。

……本当に怒れた?

「あーあ……せっかくのデートだったのに」

心に浮かんだ変な疑問を打ち消すように声を出した。

……出したら出したで、なんだか憂鬱な気分に。

「午前はすっごく楽しかったのになぁ」

きっと午後はもっと楽しくなるんだろうって思ってたところにこれ。

今日ってそんなに運勢悪かったっけ?

「……」

もらったストラップを見つめる。

つっついてみると、ゆらりと揺れた。

その様子をぼんやりと眺めているうちに注文したものが来てしまった。

「……ご飯食べたら帰ろ」

それで……時間がたったころにまたこの前みたくメッセージを送ってみよう。

他愛なくてもいいから……もっといっぱい会話したい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「どう?」

今日のお仕事はセクシー系のお仕事だった。

……あたしってスタイルはそこまでよくないからこういうお仕事全然なかったんだけど。

でも、そんな仕事が転がりこんできちゃったみたいで。

……だから、あたしのメイクもいつもと違って大人っぽいものになっちゃった。

いつもと違うあたしっていうのになれているかしら。

「ああ、可愛いな」

……でも、返ってきたのはいつもと同じ言葉だった。

「そうじゃなくて――」

「――あ、すまん。ちょっと呼ばれたから向こう行ってくる」

どう可愛いかとか、そういうことを行ってほしかったんだけど。

……というか、セクシーになんないといけないのに可愛いってだめじゃない。

「……はぁ」

彼が去った方向を見てため息を吐く。

そっちでは、別のアイドルの子が彼に話しかけてた。

……いっつも明るくて元気な子だ。

スキンシップだってたくさんしてくる。

もちろん、彼にだって。

「……むぅ」

「あたしも……」

ああやって引っ付きたいのに。

お仕事してるときは……二人きりじゃないときはいつものあたしたちでいないといけないから。

いつものあたしは、あんなに触れ合ってないから。

「……だからって」

他の可愛い女の子と話してるのを見るなんて。

「……」

あたしがもっと可愛かったら、あたしだけ見てくれるのかしら?

いや、彼はみんなのプロデューサーなんだから、そんなことないわよね。

……あたしだけのだったらよかったのに、なんて。

「……早く戻ってこないかしら」

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「あら」

事務所に入ると彼がソファに転がって寝てた。

仕事は大丈夫なのかしら?

「……」

起こさないように、なるべく音を立てないで彼に近づく。

結果、すぅすぅと寝息を立てる彼に手で触れられる距離まで来れた。

……ほっぺを指でつついてみる。

1回、2回、3回と何回かつついてみるが、ぜんぜん反応しない。

「……本当に疲れてるのね」

「いつもお疲れ様」

起きたらもう一回この言葉をかけよう。

「……さて」

一度部屋を見渡してみる。

……誰もいない。

もう一度確認しても、誰かが現れる気配はない。

「はぁ……」

一度ため息を吐いて。

「ねぇ、あたしがいつもヤキモチやいてるのって知ってる?」

つぶやく。

「あんたの周りって、みんな可愛い子ばっかじゃない」

「あたしより可愛い子だっていっぱいいるし……」

「いっつも不安なの知ってる?」

……少し待ってみても帰ってくるのは呼吸音だけ。

「せっかく恋人になれたのにね」

「こうやって触れることも……手をつなぐこともあんまりできないのよね」

「あたし、すごい寂しい」

自分でも驚くくらいに言葉がつながっていく。

本人に聞こえてないってだけで、ここまで素直に、まっすぐに言えるのね。

「よく本とかで『信じるのが愛』なんて言葉が出てくるけどさ」

「あたし、まだぜんぜんわかんない」

「そんな心のつながりだけじゃなくて、もっと体で触れ合いたい」

「ぎゅって抱きしめてほしい」

「抱きしめてほしいわ」

「あたしがほかの人と違うんだって」

「そうやって、確かめさせてほしいの」

すっ、と顔を彼の顔の正面に持ってくる。

「……好き」

「あたし、あんたが好き」

「……もっとたくさん言いたいのにね」

「あんたを前にするといえなくなるのよ」

「いろんな気持ちがごちゃごちゃして、マーブル模様になって」

「素直に思いがいえなくて」

「……だから、今だけでも、素直に、まっすぐに言わせて」

「大好き」

「すぐ隣でずっと笑ってたいの」

「……」

「……」

「大好き」

顔をさらに近づけて。

近づけて。

触れて。

「……」

ほんの少しだけそのままでいて……すぐに離れた。

「これが、起きてる時に言えたらいいのにね」

「起きてる時にできたらいいのにね」

「隠れてこそこそとじゃなくて、どうどうと……ね」

「はぁ……」

なんだか、最近ため息を吐く量が多くなってる気がする。

これが恋の病ってやつなのかしら?

「……」

「好きよ」

「あんたもあたしのこと好きでいてくれたらいいな」

「……ん」

「!」

「んぅ……ふぁ……」

「おはよ」

「ん……朋……?」

「ええ……起こした?」

「……いや、ただ目が覚めただけだ」

「そっか、お疲れ様」

さっき言いたかったことのひとつは口に出せた。

「……ねぇ、あんた?」

「ん?」

だから、もしかしたら他のも伝えられるかもと思って、プロデューサーを呼んで。

呼んで。

……。

「ううん、なんでもない」

やっぱり伝えられなかった。

嫉妬やうらやましいって感情も、不安や寂しさの感情も、好きっていう感情も。

全部が全部ごちゃ混ぜになってマーブル模様になって、何も言えなくなっちゃった。

「そうか」

「……っと、もうこんな時間か」

「またお仕事?」

「ああ……ちょっと仮眠を取ってただけだからな」

「少し寝すぎたかもしれないが」

「ちゃんと目覚ましはかけなさいよ」

「いや、かけたつもりだったんだが……」

「しっかりしなさいよ」

なんていつもみたいな会話が続いて。

結局この思いはぜんぜん伝えられなくて。

……やっぱりあたしは、ぶきように恋してるみたい。






おしまい

突発的にふじともに似合うんじゃないかって思いついたので

ポップンで1,2を争うレベルで好きな曲です。達見佐野コンビの新曲はよ

BEMANI*モバマスもっと流行れ


誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。呼んでくださった方ありがとうございました。

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おつ!
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