真姫「...別に、期待なんかしてないけど」 (13)


明日はバレンタイン。友達や異性の間でチョコを渡したり交換したりする日

......私からしたら、だから何って話だけど

まず、私はあまり甘いものが好きじゃない。食べることはあるけど滅多には食べない

ましてやチョコなんて、よくある一口チョコをつまむ程度

特にチョコを食べた時に出る喉のムズムズする感じが苦手

でもバレンタインに飛び交うチョコってだいたい手作りで大がかりなものじゃない?例えそれが友チョコや義理チョコだとしても

誰だか知らない人からもらった、あんな多くのチョコなんか1日じゃ食べきれないし、手作りなんて何が入ってるかわかりゃしない

で、次の日には食べた感想聞かれるんでしょ?溜まったもんじゃない

......あと、バレンタインだからって騒ぐ人が嫌い

どうして女子ってみんなああなのかしら。まぁ私も女子なんだけど

私が思いつく限りでは.........そうね、穂乃果とかぴったり当てはまる

でもね、決して貰えないから妬んでるってわけじゃないのよ。決して

私だって中学一年生の頃は、それはもう大量のチョコを貰ったわ

最初はありがたく受け取ってたけど、色々トラブルになってから自分から拒否するようになった

勘違いする男子、妬んだ女子、騒ぐくせに負の感情に陥ってどうするのよ

中学三年生の時にはもう誰も渡してこなかったっけ。近づいてこなかったの間違いか

元々バレンタインの起源は...って話を続けると長くなるから打ち切るけど

とにかく、私はバレンタインに興味が無い

唯一、μ's内でバレンタインにどうするとか話が出てないのが救いね。三年生が忙しいからだろうけど

私にとって2月14日は、少し周りが騒がしいだけの普通の日

......別に、期待なんかしてないけど

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「「ハッピーバレンタイン!!」」

「っ...............」

玄関を出ると聞きなれた、元気いっぱいな声と大人しめな声が重なって聞こえた

今日は約束していなかったはずだけど......

「えへへ...真姫ちゃん、驚いた?」

「あはは!真姫ちゃんビックリして固まってるにゃー!」

そりゃ朝っぱらからいきなり大声出されたら誰だって驚くわよ

「......はぁ、なんでいるのよ」


寝起きが悪かった私は少し悪態ついてしまう

でも浮かれて騒いでる二人は気にしてない様子

「今日はね、バレンタインなんだよ!」

「知ってる。だからなんでいるの」

「凛ちゃんがどうしても真姫ちゃんにサプライズしたいって......」

そういうこと。サプライズにしては刺激的すぎるけど

「ごめんね?嫌だった?」

うっ......そう言われると、いくら不機嫌でも無碍にできないじゃない

「......嫌じゃないわ」

そう言うと凛は満面の、花陽は安堵の笑みを浮かべた


「はい、真姫ちゃん」

三人並んで登校している道中、花陽から小さな可愛らしい袋を手渡された

「あ!凛も凛も〜!」

続いて凛からも、本人からは想像も出来ないほど綺麗にラッピングされた小箱を......半ば押し付けられるように受け取った

「え、これって......」

言うまでも、想像するまでもなく、颯爽と言われた

「うん!バレンタインのチョコだよ!」

今までは見ただけでも嫌悪感があったのに

不思議と、二人からのチョコはすんなりと受け入れられた


「真姫ちゃん?」

その事実に戸惑って顔に出ていたのか、花陽の心配する声が聞こえた

「あ、ありがとっ......」

なんだか色々気恥ずかしくなって辿々しいけど、なんとかお礼を言えた

少し顔も熱い気がする。ほんの少しだけ

「真姫ちゃん照れてるにゃ〜」

はっと気がつくと凛が隣でニヤニヤ笑っていた

「てっ照れてなんかいないわよっ!」

いつもの常套句を口に出してから気づいた

あぁ、また乗せられてしまった...って


「待ちなさい凛っ!」

声を張り上げて追いかける私

「嫌だよー!」

ちょこまかと逃げ回る凛

「あはは......」

そして私たちの喧騒を側で微笑みながら見守る花陽

少し違うけど、いつもと変わらない光景

やっぱりバレンタインは私にとって普通の日

......でも、ちょっとだけ、いい日、かな


「本当にごめんっ!」

私は自分の席について早々、机に額をつけて謝っていた

「き、気にしなくてもいいよ!真姫ちゃん頭上げて!」

一人はあせあせと取り繕ってくれたけど...

「むー.........」

もう一人は不満を全面に押し出していた

「真姫ちゃんのチョコ期待してたのになー」

「り、凛ちゃん...」


いつもなら調子に乗った凛に対しては遠慮なく制裁を下していたけど、こればかりは頭を下げるほかなかった

バレンタインに良い印象をもっていなかった私は当然、人にあげる用のチョコを用意してなどいない

せめて買ったものでもいいからμ's全員には用意すべきだった

だ、だって私チョコを渡すような相手いなかったし......一応、友達はいたのよ?

「あーあ、折角一所懸命にチョコを作ったのになー」

「うぅ...」

これは当分引きずりそうね......

「......凛ちゃん、チョコ作りに失敗したから買ったんじゃ...」

「.........え」


ビクッと凛の体が動いた

「な、何言ってるのかよちん!かよちんの家で一緒にチョコ作りしたじゃん!」

明らかに挙動不審だ。怪しすぎる

「で、でもチョコを溶かした所で『 後は自分で出来る!』って言って家に帰って......んむっ」

「わ、わーわー!」

花陽のおかげでだいたい話の流れは読めた。でも未だに無駄な抵抗を続ける凛

どうりであんなに綺麗にラッピングされてたわけね

哀れみと怒りの感情を混ぜ、ただ冷たく一言

「凛」


「..................はい」

「...っぷはぁ」

凛を花陽から振りほどき、床に正座させた所で再開

「で、その溶かしたチョコを型どろうとしたら失敗して、買って誤魔化そうとした。そうよね、花陽」

「ち、ちがっ...!」

「私は、花陽に、聞いてるの。わかった?」

わかりやすく、はっきりと、笑顔で教えてあげた

「.........にゃあぁ...」

最早凛は涙目になりつつある。でもまだ許してあげない

「...うん、失敗したのは本当。でも誤魔化そうとしてたわけじゃないよ」

「凛ちゃん、真姫ちゃんの為にずーっとチョコ選びに悩んでたから」

「.........そう」

どうやら、嘘じゃないみたい


「凛」

「は、はいっ!」

「......今回のところは見逃してあげるわ」

かなり大目に見て、だけど

「か、かよちーん!」

「よしよし、怖かったね」

凛は花陽に抱きつき、よしよしと頭を撫でられてる

......なんで私が悪いみたいになってるの

まぁもういいけど。一方的に貰っておいて怒りすぎるのも、ね

そんな一部始終に注目が集まらないほど、教室はバレンタイン一色で皆騒ぎあっていた

書き溜め終わり
本当は>>6で完結してたけど付け足してたら間に合わなかった
もう少し続きます

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