姫川友紀「桃の缶詰」 (39)

切った蓋で指切るとめっちゃ痛いしなかなか治らないしそもそも缶詰に血が入っちゃうから他の人には出せないし災難ですよね。
最近は蓋の開け方知らない人も多いらしいですし。

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友紀「三時三時はおやつの時間ー♪ 今日のおやつはなんじゃらほい!」

友紀「…………あれ?」

友紀「空っぽ……。プロデューサー!!」

P「うるせーなー……。なんだよ?」

友紀「おやつの戸棚になんにも入ってないよ!」

P「あー、補充してなかったか。我慢しな」

友紀「やだー! なんか甘いのたーべーたーいー!」

P「指でもしゃぶってな」

友紀「うーん……。なんか、なんかないかなぁ……」

友紀「いつもここにちひろさんが隠してるおやつが……」

友紀「ん? なんか紙が……」

『仏の顔も3度まで』

友紀「え、何このメモ? こわっ……」

友紀「うーん…、あと何かありそうな場所……。あっ!」

友紀「車輪の付いてる椅子だけど、これがないと届かないしー」

友紀「よいしょ! うわ、すごい揺れる……」

友紀「んで、ここの高い所の戸に……、あった! 桃の缶詰みーっけ! ん……?」

友紀「あめ…、あとの月? 何このお酒、誰が隠してるやつだろ……」

友紀「まいっか! よーし、食べるぞ……」グラッ

友紀「きゃあぁぁーー!?」ドスン!

P「な、なんだ今の!?」

友紀「うわぁぁーん! 背中うったぁー!」

P「何やってるんだ、ばか」ベシッ

友紀「いだっ! ちょっとくらい心配してよー!?」

P「まったく、それもしもの時の缶詰だろ? 今食うなよ」

友紀「ふーんだ! おやつ用意してくれてないプロデューサーが悪いんだもんね」プイッ

P「お前今いくつだよ……」


友紀「さーて、缶切りは……。あっちにあったかなー?」

薫「ただいまー!」

友紀「おー薫ちゃん! おかえりー」

薫「あ! 友紀ちゃん缶詰持ってるー! いいないいなー!」

友紀「薫ちゃんも一緒に食べる? ちょうどおやつの時間だしね」

薫「うんっ! 貸して貸して! かおるがあけるね!」

友紀「はい、あたしはお皿とか取ってくるねー」

薫「これ、なんて漢字かな……。『木』に、ちょんちょんが沢山付いた、……変なの!」

薫「この絵は……。あ、ももかな! わぁー、綺麗な絵だなぁー……」

薫「よーし、あけるよー……!」

薫「…………」キョロキョロ

薫「…………?」ツンツン

薫「あれ? 指引っ掛ける所がないよ?」


友紀「もー……、なんで缶切りがプロデューサーの机の引き出しに入ってるのさ……」

友紀「食器の引き出しひっくり返してまで探したのに……」ブツブツ

薫「友紀ちゃぁん……」

友紀「ど、どうしたの薫ちゃん。泣きそうな顔して……」

薫「これ、あけらんないよぉ……」

友紀「……あっ」

友紀(もしかして、缶詰の開け方知らない……?)

薫「シーチキンはね、カリカリってやって、ぱかって出来るんだよ?」

薫「でもこれ、あの学校で集めてるあの所がないよぉ……?」

友紀(あれから車椅子作るんだっけ? あたしも集めたなぁ……)

友紀「……よし」

友紀「えー? あの部分が付いてないのー? どーしよー、あけらんないよー!」モゾモゾ

薫「たいへん! おやつ食べらんないよ!」

友紀「ねー! どうしよー?」

薫「……友紀ちゃん、さっきなにかポッケにいれた?」

友紀「い、いれてない! よっ!」ギクッ

友紀「さ、どうやって開けようか、これ」

薫「うーん……。あ! 横の紙を剥がせば開くかなぁ?」

友紀「え? ラベル剥がすの? ま、まあやってみようか」

薫「……このシール、凄いくっついてるね」カリカリ…

友紀「うん……」カリカリ…

薫「でもでも、これぐらいしっかりくっついてないと、中身出ちゃうよね!」

友紀「うん……」カリカリ…

薫「えいっ! えいっ!」コンッ!コンッ!

友紀「い、痛くない……?」

薫「いたい……」

友紀「や、やめようか。女の子だしね……」

薫「うん。赤くなっちゃった……」

友紀(さて、そろそろなにかヒントをあげようかなー?)

友紀「これさ、なにか道具を使って開けるんじゃない?」

薫「道具……? あ、ハサミとか!」

友紀「うんうん! 試してみようか!」

薫「ハサミ!」

友紀「切れないよー」

薫「コンパス!」

友紀「3.14!」

薫「ステープラー!」

友紀「え! なにそれ!?」

薫「リコーダーに付いてるなんか穴の空いた棒!」

友紀「あれ中を掃除する奴だって」

珠美「ただいま戻りましたー」

薫「たまちゃん!」

友紀「珠ちゃん!」

珠美「うぇっ? な、なんですか……?」

薫「ねー、たまちゃん。これが開かないの……」

珠美「お、缶詰! いいですなぁ……。珠美は缶詰と言えば鯖の煮付け缶を白ご飯と一緒に……」

友紀「いいねぇ……。鰹フレークの缶詰もビールのアテにして、くいっと……」

薫「そんなことより、たまちゃん。これあけられるー?」

珠美「ええ、開けられます。えーっと、缶切りは……」

友紀「……珠ちゃんはねー、剣の達人だから、スパーンッ! って斬ってくれるよ!」

薫「剣でー? すごーい!」

珠美「ゆ、友紀殿!?」

友紀「いーや、珠ちゃんならもう刀なんていらないね。手をこう、シュッ! ってやるだけで斬ってくれるよ!」

珠美「手刀!? な、さっきから何を言っているのですか!」

薫「わぁー……! たまちゃん、やってやってー!」

珠美(うう……。子供の無邪気に輝く視線が突き刺さる……)

珠美「……で、できるかどうかわかりませんからな!」

友紀(あ、簡単に乗せられた)

珠美「はぁー……!」

薫「集中してる……。すごいなぁ……!」

珠美「すぅー……!」

友紀「…………」

珠美「ーーーーッ!」

珠美「てぇああぁぁぁぁーーッ!!」シュッ

コンッ

コロコロコロ…

珠美「ぅぅ……、いた、痛い……」

友紀「大丈夫ー?」

薫「あちゃー。やっぱりだめだったねー……」

珠美(やっぱり!?)

友紀「珠ちゃんでもダメとなると、結構強い道具が必要だね」

珠美「そもそも缶切りを使えばすむ話じゃ……」

薫「うーん……。じゃあ、トンカチかなぁ?」

珠美「い、いや、それは止めといた方が……」

ガチャ

P「ほら、なんかこっちでおやつ食べるらしいからさ。混ざっておいで」

芳乃「ほー……、わたくし、甘露はきんつばが良いのでしてー」

友紀「おー! 芳乃ちゃんいらっしゃい! 桃缶食べる?」

芳乃「桃……、よいですねー」

P「というか、まだ開けてなかったのか」

友紀「プロデューサー、かもんかもん」

P「なんだなんだ?」

友紀「あのね、薫ちゃん缶詰の開け方知らないみたい」

P「え? ほんと?」

友紀「ほら、最近缶ジュースみたいにプシュッて開ける奴が多いから」

P「確かに、缶切り使う機会なんて滅多になくなったよなぁ……」

友紀「で、あたしのポッケに缶切りが入ってるわけだけど……」

P「なんで隠してんだよ……」

友紀「……なんでだったっけ」

P「ほら、寄越せ」

友紀「ひゃわっ!? ちょ、どこに手ぇ突っ込んでるのさ!?」

P「ほら、これ使いな」

薫「あ、せんせぇ。……これ、なぁに?」

P「缶切り、缶詰を開けるやつ」

薫「……どう使うの?」

P「はい。とりあえず自分が思うように使ってみな」

薫「うぅん……? ここが尖ってるね?」

友紀「うん! そうそう!」

薫「……えいっ!えいっ!」ガンッ!ガンッ!

珠美「あ、ちょ、ちょっと危ない……」

芳乃「ふむ、わたくしに貸してくださいませー」

薫「よしのちゃん、できるー?」

芳乃「この形を見るにー、この部分を引っ掛けてー」

友紀「おお……!」

芳乃「押す、のでしてー?」ググッ

P「おしい……」

友紀「押してダメならー?」

芳乃「引こうぞー」グッ

珠美「おお! これなら……!」

芳乃「……ん?」グッ グッ

P「……!」

友紀「……!」

珠美「…………?」

芳乃「あかないのでしてー」

友紀「いや、使い方はあってるよ?」

薫「えー? じゃあなんでー?」

P「もっと力を込めないと」

芳乃「これが全力でしてー……」

P「ええー……」

(……あれ? 引いて切る時って左手で使ってる時だけだったっけ……? よしのん右効きだし……)


友紀「ほらプロデューサー、開けてあげたら?」

友紀「はいはい……。ほら、芳乃、貸してごらん」

芳乃「むー……。でも、どうにかわたくしの力をしるしてー……」グッグッ

友紀「ふむ、じゃあここは……。ゴニョゴニョ……」

芳乃「ほーほー……。なるほど……」

友紀「いけー! よしのんの魅力パワーで、いけー!」

珠美(あ、ネタバレ……)

P(どんな手でくるのやら……)


友紀「ほらプロデューサー、開けてあげたら?」

友紀「はいはい……。ほら、芳乃、貸してごらん」

芳乃「むー……。でも、どうにかわたくしの力をしるしてー……」グッグッ

友紀「ふむ、じゃあここは……。ゴニョゴニョ……」

芳乃「ほーほー……。なるほど……」

友紀「いけー! よしのんの魅力パワーで、いけー!」

珠美(あ、ネタバレ……)

P(どんな手でくるのやら……)

芳乃「ねーねー、そなたー」

P「お、おう」

スッ…

芳乃「あけてー?」

P「」キュンッ
珠美「」キュンキュンッ

友紀(うまい! 両手で持った缶詰を突き出して、小首を傾げながら幼く振舞う……!プロデューサーに開けてっておねだりするように指示しただけなのに、こうも自分のものにするとは……!)

薫「わぁー! よしのちゃん! いまの、とーっても可愛かったよ!」

P「よ、よし! じゃあ俺に任せてみろな!」

P「……で、芳乃は右利きだろ? 左手で持つ時は引いて切るけど、危ないからちゃんと利き手で持とうな?」

芳乃「ふむ、そなたの仰ることはもっともでー」

友紀「プロデューサー左利きだったっけ?」

P「いや、右利きだけど……。さて、ほら、開いたぞ」

薫「やったー! やっとおやつだねー!」

P「ついでにもう一個開けてみんなで食うか! 友紀、取ってきてくれ」

友紀「りょーかい!」

P「缶詰は中に入ってるシロップも美味いよなー……。飲み過ぎたら絶対病気になるけど」

珠美「珠美はシロップ多めでお願いしますぞ!」

P「あいよ、つゆだくね」

珠美「言いかた……」

芳乃「そなたー、もう少し欲しいのでしてー」

薫「かおるも! かおるも!」

P「はいはい。やっぱ女の子は甘いの好きだなあ」

P「あ、友紀ー。今度は気を付け……」

ドスンッ!

P「ろ、って……。言わんこっちゃない……」

< うわあぁぁぁん……! 頭打ったあぁぁ……!

薫「んー! 甘くて美味しい!」

珠美「この濃い甘さに、普段の疲れが吹き飛ぶようで……」

芳乃「んむ……。甘露は乙女の燃料ぞー」

P「さ、俺も食うぞー。何年振りだろうなぁ、フルーツの缶詰食うの!」

< 誰か心配してよぉー! うわあぁーーん!




お付き合いありがとうございました。

さっきも言ったけど、右利きの人は押して使うんだったね……。一つ賢くなりました。
またネタが浮かべば、いつか。



ちなみに作者は右利きです。

すいません。今更ながらミスを発見。

>>10>>11の間が抜けていました。
あの間に


薫「やっと剥がれたぁ! ……あれ?」

友紀「あちゃー、ハズレだったね?」

薫「えー? 違ったのー……?」

友紀「うーん……。じゃあ、どうやって開けるのかなぁ?」

薫「……叩いてみよう!」

友紀「わ、ワイルド……」


があります。
失礼いたしました。

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