【モバマス】輝子「キノコの友達と遊ぶ……フヒ」【コラボ】 (18)

モバマスとまんが日本昔話のコラボSSです。

参考動画:http://www.nicovideo.jp/watch/sm23210856?ref=search_tag_video


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450841332

「輝子ちゃん、この前はごめんね」

大河ドラマの収録を終えて帰ってきた佐久間まゆは

帰ってくるとすぐに机の下にいる星輝子に話しかけた。

彼女は輝子と同じ屋根の下にいる間柄でありながら

己の利己心のために輝子の大切な友人を冷たい輝きを放つ刃にかけて

殺めてしまった悲しい過去がある。その事を彼女は今でも悔いていた。

「お、おかえり……まゆさん。早かったんだね……」

「うん、でね、お土産があるの」

まゆは綺麗にラッピングしたプレゼントを輝子に渡した。

開けると茸の生えた原木があった。

「こ、これは……!」

「ロケ地で見つけたの。輝子ちゃん喜んでくれるかなって」

「健康体のこのツヤ……! 戦乙女のような凛々しさと同居する
 深窓の令嬢の如き不可侵の無垢さ具合……
 菌上界でも有数の美女っ……!」

「(菌上界って何だろう?)喜んでくれてよかった」

「あ、ありがとう……まゆさん……フヒヒ、や、やった……」

まゆからお詫びの品としてもらったキノコを

輝子は机下に群生する仲間たちに笑顔で紹介した。

そのキノコは彼女の甲斐甲斐しい世話によってしゃれにならないくらい増えたので

机の所有者であるプロデューサーから持ち帰ってくれとクレームが出た。

彼女はまゆの茸をまとめて寮に持ち帰ったのだが、その日の晩から不思議な事が起こった。

その日ルームメイトの小梅はホラー映画友達の松永涼の部屋に泊まるという事で

輝子はいつ小梅が帰ってきてもいいように一人寂しくホラー映画を鑑賞していた。

二十三時を過ぎた頃、部屋の電気がふっと消えた。

「うふふふふ……」

輝子は声のした方を振り返った。

いつの間にか黒い着物を着た十六・七くらいの娘が三人、目の前に立っていた。

「輝子ちゃん、一人ぼっちは寂しかろ?」

「おらたちと一緒に遊ぶべぇ?」

「遊ぶべぇ」

こんな夜中に音もなく部屋に入ってくる……普通の人間なら怪しむ所だが

この346プロには幸運の女神やら太陽神やら真冬に段ボール一枚でいるサンタクロースやら

隙あらば他人の体を乗っ取る飛頭蛮もいるので特に怪しさは感じられなかった。

そもそも積極的に友達を作る能力の乏しい輝子にとって

遊ぼうとしてくれる彼女たちは嬉しい存在だ。

一晩中輝子は彼女たちと遊んだ。

彼女たちは輝子たちアイドルと同じで歌が好きなようだった。

おらたちゃ 輝子の部屋がえゝ~

おらたちゃ 輝子の部屋がえゝ~

はぁ そぉれ やんれっ やんれっさ

も~りのお~ぐは まっくらげ~

も~りのお~ぐは まっくらげ~

輝子の部屋さ あそびにいくだ

おらたちゃ 輝子の部屋がえゝ~ 

おらたちゃ 輝子の部屋がえゝえゝえゝ~

あ それ やんれっ やんれっ やんれさよ

それから毎晩、怪しげな娘たちは輝子の部屋に来た。

輝子は眠るのも忘れて彼女たちの歌声を聴き続けた。

彼女たちの歌を聴いていると、何とも言えない良い気持ちになるのだった。

そして気が付いた頃にはいつも夜が明けていて、娘たちの姿はどこにもなかった。

そんな日が十日ほど続き、輝子はただでさえ低いBMIを示す体を

更に弱らせ、とうとうダンスレッスンの最中に倒れてしまった。

「輝子ちゃん、あの子たちと毎晩遊んでいたら体ももたないよ?
今度はね、一緒に美味しい鍋でもつついてみたら、どうかな?」

小梅は輝子に相談されてアドバイスした。

同じ部屋にいながら彼女に何ら影響がないのは

普段から幽鬼の類と親しんでいるからだろうと思われる。

輝子は早速今夜のために鍋の買い出しに出かけようとした。

しかし、小梅はとりあえず安静にしているように

輝子を説得し、自分が買い出しに出かけていった。

途中で彼女は、大原みちる、橘ありす、椎名法子、浅利七海、柊志乃、槙原志保たち

346プロの同僚たちと合流し、鍋の具材を買いに行った。

――その夜。

輝子は買い出しの品を鍋に入れてぐつぐつと煮込んで待っていた。

果たしてその晩も、娘たち三人はいつの間にか輝子の前に姿を現した。

「や、やあ……今日はう、歌の前に鍋でも、どうだい?
 お、美味しいから……た、食べようよ、ふひ……」

「……」

娘たちは顔色一つ変えず鍋の中を覗き見た。

賢明な読者諸兄ならお気づきの事と思うが、彼女たちは茸の化け物で

昔、婆さんを憑り殺そうとした事があった。

その時、婆さんは法覚坊という坊さんの入れ知恵によって

茄子入りの鍋を作り、茄子が毒となる彼女たちは退治された。

それからやっと幾年も時が経って復活したが既に時代は大きく変わっていた。

山は少なくなり、もう誰も住んではいなかった。

諦めて山奥にて空しく繁殖していた彼女たちを拾い、持ち帰ったのが佐久間まゆだった。

ここに辿り着いた彼女たちは無慈悲にも、この何の罪もない

さびしがり屋な茸好き美少女を憑り殺し、己の養分にしようと目論んでいたのだ。

「……」

「……。……」

「……。……。……」

娘たちは鍋を見つめている。出汁の中に酒の臭いがする。

魚のアラ、木苺の他は見た事のない具材だった。

あの甘い香りを放つ雪の溶けたような白い物はなんだろうか。

あの茶色のふんわりした様々な形の環はなんだろうか。

鍋の中にポコポコと浮かんでいる蜂蜜をまぶした分厚く四角い物はなんだろうか。

とにかく茄子が入ってなければ害にはならないだろうと思った娘たちは

輝子に差し出された椀を口に運んで、一口食べた。

「……ッッ!」

「……ッッッッ! ……ッッッッ!!!!」

「!!!!!!!!!!!!!」

一口食べた娘たちはぎょっとした表情になり突如全身に痙攣を起こした。

ほどなくして薄暗い部屋は目映い光に包まれた。

輝子もまた、その光の中で気を失ってしまった。

「……。……うーん……」

どのくらい経ったか、気がついてみるともう娘たちの姿はなかった。

目覚めた輝子は鍋を挟んだ向こう側に伏せた椀が三個あるのを見つけた。

椀の中を覗くと、そこにはまゆの取ってきたあのキノコが転がっていた。

「美味し過ぎた感動で全身が震えたんだね!」

「それはきっと、輝子ちゃんの温かいおもてなしが通じたんだよ」

鍋のためにとっておきのパフェを買った志保は、胸を反らしてこう言った。

隣にいた法子も復刻したクラシックドーナツの美味しさには自信があったし

みちるもこの間食べて美味しかったハニートーストを食べてもらえてご満悦の様子だ。

それからというもの、そのキノコが化けて出てくる事はなくなったという。

輝子はあの後体調を回復し以前と同じようにライブで観客たちを沸かしていたが

折角できたあの友達が来なくなって少し寂しそうにしていた。

も~りのお~ぐは まっくらげ~

も~りのお~ぐは まっくらげ~

輝子の部屋さ あそびにいくだ

おらたちゃ 輝子の部屋がえゝ~

だども あいどるじむしょの みし~ろぷろに知~らせ~たら

おらの命はたんまらねぇ おらの命はたんまらねぇ

あいどるじむしょの みし~ろぷろに知らせたらあゝあゝあゝ~

おらの命はたんまらねぇ おらの命はたんまらねぇ~

以上、おもてなしの温かさが一人の少女の命を救う話でした

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