男「切り裂きジャックです。」女「はい?」(62)

男「切り裂きジャックです。」

女「ロンドンで女の人ばかりを狙った殺人鬼の切り裂きジャックですか?」

男「はい。」

女「それがどうしたんですか?」

男「私は切り裂きジャックです。」

女「えっ。」

男「えっ。」

女「馬鹿……なんですか……?」

男「失礼な。」

女「いや、だって。」

男「ナイフだってありますよ。」

女「ちゃんと手入れされてますね。」

男「勿論。」

女「それで、その……」

男「はい?」

女「そのナイフで私をざくーっ!っと?」

男「ざくーっ!っと。」

女「ざくーっ!っと……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「逃げた方が良いんですか?」

男「ご自由に。」

女「えー……」

男「ちょっと私も初めてですからよくわからないんですよ。」

女「あっ、そうなんですか。」

男「はい。」

女「何を用意してこられたんですか?」

男「ナイフとロープとバンダナです。」

女「バンダナ?」

男「バンダナ。」

女「何に使うんですか?」

男「顔を隠すんですよ。」

女「じゃあ今も着けないと。」

男「あっ、そうか。」

女「馬鹿……なんですか……?」

男「失礼な。」

女「いや、でも……」

男「まぁ、そろそろ。」

女「そろそろ?」

男「そろそろざくーっ!っと。」

女「そろそろざくーっ!っと……」

男「……」

女「……」

男「緊張しますね。」

女「しますね。」

男「……」

女「……あの。」

男「はい?」

女「落ち着いてから切り裂きジャックする為にもお茶でもしませんか?」

男「それは良い考えですね。」

女「それじゃあ行きましょう。」

男「お金ありませんよ。」

女「一杯くらいなら払いますよ。」

男「ありがとうございます。」

女「いえいえ。」

男「ホットコーヒーお願いします。」

女「私はアイスミルクをお願いします。」

男「冷たいものを飲むんですか。」

女「ホットミルクは苦手なんですよ。」

男「へぇ、珍しいですね。」

女「そうですか? 温めるとちょっと牛乳のにおいが強くなるんですよ。」

男「あっ、ここ。モーニングが付いてくるらしいですよ。」

女「トーストとゆで卵ですね。」

男「良い雰囲気のお店ですね。」

女「ですね。」

女「……なんで切り裂きジャックを始めたんですか?」

男「なんでですかね。」

男「強いて言うなら寂しいからですね。」

女「寂しい?」

男「そう、寂しい。」

女「寂しい……」

男「あ、来ましたよ。」

女「本当ですね。わぁ、美味しそう。」

男「一昨日の夜から何も食べてないんですよ。」

女「一昨日?」

男「一昨日。」

女「またどうして?」

男「家出したんです。」

女「家出ですか。」

男「……うん。美味しい。」

女「はむはむ。美味しいですね。」

男「ゆで卵は剥くのが大変です。」

女「そうですね。でも、一気に向けると快感ですよね。」

男「分かります分かります。」

女「お塩、取ってください。」

男「はい。」

女「ありがとうございます。」

男「君はえっと。」

女「私は女です。あなたは?」

男「男です。」

女「男さんですか。宜しく。」

男「女だんですね。宜しく。」

女「はむはむ。」

男「女さんは社会人ですか? 今は平日のお昼ですし、休憩中とか?」

女「男さんこそ……って家出中でしたね。」

男「はい。」

女「私は学生ですよ。サボり魔です。」

男「そうなんですか。私も学生ですよ。」

女「同じですね。」

男「そうですね。」

女「はむはむ。」

男「何年生ですか?」

女「二年生です。」

男「私も二年生です。」

女「勉強難しいですよね。」

男「そうですね。」

女「……」

男「……」

男「その袋は何を買ったんですか?」

女「……」

女「えっと……」

男「いや、無理に言わなくても良いですよ。」

女「ごめんなさい。」

男「いえいえ。」

女「はむはむ。」

男「女さんはこの辺りに住んでるんですか?」

女「はい、すぐそこに。」

男「えっと、確かしちもく町でしたか?」

女「読み方が違いますよ。」

男「そうなんですか。ずっとしちもく町か、ななもく町かと。」

女「七目町ですよ。ななめ町。」

男「へぇ。あぁ、最近あのあたりにホビーショップできましたよね。」

女「できましたね。大きいですよね。」

男「ゲームやアニメに漫画。エアガンとか釣道具とか。他にもカードとか携帯とかフィギュアとかポスターとか。」

女「まだ行ったことないから行ってみたいです。」

男「……行きませんか?」

女「……行きますか?」

男「広いですね。」

女「広いですね。」

男「女さんはホビーショップとかで何を見るんですか?」

女「漫画ですかね。」

男「へぇ、何読むんですか?」

女「ジョジョ。」

男「えっ。」

女「えっ。」

男「マニアックですね。」

女「そうですか?」

男「そうです。」

女「じゃあ、逆に男さんは何を読むんですか?」

男「ドラえもん。」

女「えっ。」

男「えっ。」

女「……子供っぽいですね。」

男「まだ子供ですから。」

女「そうですね。」

男「あっ、ak47がありますよ。」

女「……女の子とのデートでエアガン見るとか度胸有りますね。」

男「え?」

女「なんでもないです。」

男「女さんは何か見たいものないの?」

女「うーん……」

男「m9か、でもエアガン。電動ガンはないのかな。」

女「あっちにあるクレーンゲームのぬいぐるみが気になり……聞いてますか?」

男「え? うん、行こう。」

女「むーっ!」

男「?」

女「何でもないですっ!」

男「そ、そう。」

女「ふんっ!」

男「いっぱいありますね。」

女「そうですね。あっ、あのしょぼん人形可愛いですよ。」

男「どれですか?」

女「あれです。あれあれ。」

男「しょぼん人形よりごるぁ人形の方が俺は好きです。」

女「じゃあ両方取れば良いじゃないですか。」

男「……お金ないです。」

女「あっ、そうか。」

男「ごめんなさい……」

女「良いですよ。でも、私もそんなに使えないし、ウィンドウショッピングですかね。」

男「じゃあ見て回りましょう。」

女「荷物だけ預けて良いですか?」

男「良いですよ。」

女「じゃあちょっと待っててくださいね。」

男「はい。」

女「すぐ戻ってきますから!」

男「おかえりなさい。」

女「ただいま帰りました。」

男「さて、何見ますか?」

女「そうだなぁ。ビリヤード台見に行きませんか?」

男「また格好良いものを見たがりますね。」

女「一回ビリヤードやってみたいんです。」

男「それならゲームセンターの横にありましたよ。」

女「ほ、本当ですか!」

男「一セット十五分百円です。」

女「高いのか安いのか。」

男「俺も分かりませんよ。」

女「お金少ないですし、やめます?」

男「いや、百円なら多分ありますよ。」

女「え?」

男「ポケットの中に。」

女「おぉ、遊べますね。」

男「そうですね。八百八十二円あります。」

女「よし、入れてください。二セットやりましょう。」

男「入れました!」

女「……」

男「……」

女「……ビリヤードってどうやるんですか?」

男「……奇遇ですね。俺も知りません。」

女「馬鹿じゃないですかー!」

男「そろそろ終わりですね。」

女「無駄に二百円使っちゃいましたね。」

男「俺は結構出来ましたけど。」

女「う、うるさいです。」

男「最初白いボールを穴に直接落とした時は笑っちゃいました。」

女「むーっ!意地悪!」

男「さて、次は何処行きますか?」

女「そうですね……」

男「ペットショップがありますよ?」

女「動物は苦手です。」

男「女の子なのに珍しい。」

女「よく言われます。」

男「まぁ、俺も苦手なんですけど。」

女「一緒ですね。」

男「じゃあ、フィギュアとか見ませんか?」

女「フィギュアですか。あんまり見ないから期待します。」

男「ようじょ! ようじょ!!」

女「きもいです。」

男「ジョークですよ。引かないでください。」

女「bl! bl!!」

男「きもい。」

女「そうなるでしょう? 分かってくれましたか?」

男「女さんは俺の逞しい腹筋を見て逞しい妄想をしてるんですねー!」

女「男さんも私のつるぺたを視姦してるじゃないですかー!」

男「見てください。」

女「凄い出来ですね。」

男「そして安い。」

女「買っても損はないんじゃないですか? 買えませんけど。」

男「でも中古は嫌だな。」

女「どうしてですか?」

男「色々と……」

女「?」

書く時間を間違えたのか、時期を間違えたのか、時代を間違えたのか。

それとも書く物を間違えたのか。

男「おっ。」

女「?」

男「このフィギュア格好良い。」

女「これは確か、何のアニメだったかな。」

男「ほら、あれだよ。あの。」

女「主人公が密輸商人でドンパチやる奴ですよね。」

男「そうそう。」

女「タイトルって中々思い出せないよね。」

男「フィギュアもそろそろ飽きたな。」

女「次どこ行きます?」

男「本屋かアニメショップにでも行きましょう。」

女「さっきのフィギュアのタイトルも思い出せるかもしれませんしね。」

男「そうですね。」

女「小説とかも読むんですか?」

男「読みますよ。女さんは?」

女「ライトノベルなら……」

男「本屋も結構広いですね。」

女「そうですね。」

男「最近コンビニで売ってる厨二な本三つが欲しくて堪らないんですよ。」

女「分かります分かります。武器の奴はいらないですけどね。」

男「でもあれ高いんですよね。」

女「あれだけのボリュームなら安い方なんじゃないんですか?」

男「そうなんですかね……」

女「そうなんですよ。」

男「お、十巻にして挿絵が変わったライトノベルがある。」

女「驚きましたね。」

男「俺は読んでませんけどね。」

女「私も読んでませんけどね。」

男「……」

女「……」

男「じゃあ、何読んでるんですか?」

女「半額弁当に誇りを賭けて奪い合うライトノベル……?」

男「自称、友達が少ない聴覚障害を装った主人公のライトノベルじゃないか。」

女「普通に面白いと思いますけどね。」

男「うん。俺も読んでました。」

女「ました。」

男「最近、ライトノベル買ってないんだ。」

女「へぇ、そうなんですか。」

男「かさばるから。」

女「あぁ。」

男「基本ライトノベルは表紙ですよね。」

女「まぁ、そうですね。」

男「これとか良い絵ですよね。」

女「それは好みの問題ですよ。私はそれ好きじゃないですもん。」

男「そうなんですか?」

女「うん。」

男「これは?」

女「それは好き。」

男「もうお昼ですね。何か食べましょう。」

女「じゃあ、あそこのピザでも食べましょう。」

男「ピザ屋なんてあるんだ。珍しい。」

女「じゃあ、私はお財布取ってきますね。預けちゃったんで。」

男「ほいほい。」

女「先に頼んで置いてください。トマトとピーマンがなくて、チーズが乗ってると最高です。」

男「分かりました。」

女「それじゃ、お願いします。」

男「おかえりなさい。」

女「ただいま帰りました。」

男「荷物全部持ってきたんですか。」

女「……」

女「はい、あんまり長くいられませんから。」

男「そうなんですか。」

男「それは残念です。」

女「まぁ、食べましょう!」

男「……チーズが伸びる。」

女「伸びますね。」

男「……うん。美味い!」

女「ファーストフードの出来立ての美味しさは異常ですからね。」

男「うんうん。」

女「ポテトの出来立てじゃない状態も異常ですけどね。」

男「……うん。」

女「はむはむ。」

男「トマトとピーマンはアレルギーなんですか?」

女「いえ、嫌いなだけです。」

男「そうなんですか。美味しいのに。」

女「男さんは嫌いなものないんですか。」

男「納豆が嫌いかな。」

女「えぇ。美味しいのに。」

男「いや、味は好きなんだけどにおいが……」

女「あぁ、それは分かります。」

男「ツナコーンチーズピザ……」

女「野菜の要素は一切ないですね。」

男「コーンって一応野菜じゃない?」

女「いや、知りませんけど。」

男「飲み物はお金がなかったから買わなかったけど。」

女「買ってきましょうか?」

男「俺は大丈夫。水があるし。」

女「じゃあ私もいらないです。」

男「御馳走様でした。」

女「御馳走様でした。」

男「次は何処に行きますか?」

女「……」

女「そろそろ私は帰ろうかな。」

男「そうなんですか?」

男「じゃあ、送りますよ。」

女「駅まで宜しく頼みます!」

男「ここの駅ですか。」

女「そう。」

男「でも家はこの辺りなんじゃないんですか?」

女「えっ? あ、あぁ、ちょっと用事で。」

男「あぁ、そうなんですか。」

女「……」

男「……」

女「……あの。」

男「切り裂きジャックです。」

女「……え?」

男「俺はあなたをざくーっ!っと刺し殺します。」

女「……何を言って。」

男「……」

男「自殺する気でしょう?」

女「!」

女「ど、どうして……」

男「その袋に入ってるのは便箋と封筒。そしてボールペン。」

女「な、なんで知ってるの……」

男「レシートが落ちましたから。」

女「……」

男「遺書ですか。」

女「……」

男「……」

男「一緒に死にませんか……?」

女「え……?」

女「何を言って……」

男「俺は切り裂きジャックとして女の人を殺した後、死のうと思っていました。」

女「……」

男「一人で死ぬのは寂しいんです。」

女「だから寂しいのが理由、なんですか……」

男「はい。」

女「でも……」

男「?」

女「今日、遊んでてその。私はあなたに生きててほしいです……」

男「そんなの俺も同じです。あなたに生きててほしい……」

女「……」

男「でも生きられないから自殺を決めたんでしょう?」

女「……」

男「電車に身投げするのはやめましょう。人に迷惑が掛かりますし。」

女「……」

男「俺が痛くないように殺します。睡眠薬もありますし。」

女「……」

男「駄目ですか?」

女「……」

男「……」

女「……良いよ。」

男「……」

女「でも私の話を聞いて。」

男「?」

女「短い間だったけど、男と遊んで楽しかった。」

男「……」

女「それで、辛い事もあったし今日限りの楽しい事なんかじゃ上書きできないけど。」

女「でも、男がずっと一緒にいてくれるなら。」

男「……」

男「……」

女「男となら生きていけるかもしれない……って……」

男「それは短い間だから、お互いの悪いところが分からないだけですよ。」

女「それは……」

男「知れば嫌になるかもしれない。」

女「……」

男「今日あなたが俺と遊んだのも、死のうと思っていたからでしょう?」

女「……」

男「ただの幻想ですよ。」

女「……そうね。そんな事で生きていけるわけないよね。」

男「……」

女「……」

男「じゃあこの睡眠薬を飲んでください。」

女「……うん。」

男「効くまでに時間がかかりますからその間に山まで行きましょう。」

女「……」

男「……」

女「……」

男「着きましたよ。」

女「う……」

男「あ、眠たくなってきましたか?」

女「うん……」

男「じゃあ、横に……え?」

女「手、繋いでて……私も寂しいから……」

男「……はい。」

女「ありがと……」


女「私……」

女「男の事、好き……かも……」

男「……俺もですよ。」

男「お休みなさい……!」


 本日、七目町の山奥で若い男女の死体が発見されました。
争った形跡がない事から警察は情死として捜査を進めています。

少女「ほぇー」

少女「お母さん! お家の近くだよ、怖いね!!」

少女「うん! あの山だって!!」

少女「あ、お父さんお早う!」

少女「お仕事頑張ってね!」

少女「うん。」

少女「わかった! お利口にしてる!!」

少女「行ってらっしゃい!」

女「行ってらっしゃい、あなた。」

男「行ってきます。」

the end

閲覧支援超感謝。
短い時間で書き上げたから雑でスマソ。それじゃあ、乙。

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