男「アシダカさん、おはよ」軍曹「うむ」 (95)



男「今日は涼しいね、アシダカさん」

軍曹「うむ」

男「食事は済ませたの?」

軍曹「一応」

男「そっか」


男「とりあえずタンスの影から出てきてよ 」

軍曹「黙れ//// 」コソッ

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男「アシダカさんアシダカさん」

軍曹「どうした二等兵、腹でも減ったのか」

男「いえ、あれ」スッ

軍曹「む」



ゴキブリ「じょうじ」



軍曹「食事の時間なのは私だったか」

男「あの筋肉ダルマ早くやっつけて」


軍曹「バリッ…パリパリグチャグチャ」モグモグ

男「早いねさすが」

軍曹「当たり前だろう」

男「えと、このあと俺…バイトなんすけどね?」

軍曹「うむ」


男「タンスの影から出てきてよ」

軍曹「だ、黙れ//// ちゃんと着いてってやるから早く行け////」


男「ふむふむ」テクテク

< カサカサッ

< シュタタンッ!

男「…… 」テクテク

幼馴染「あ、おはよう…」

男「おはようツノゼミちゃん」

幼「えへへ…今からバイト?」

男「まぁね」


軍曹「ムスッ」コソッ


ゴキブリ「じょう……」シュバァッッ

男「!!?」


< カサカサカサカサッ……バッ!

軍曹「おっとさせんぞ?」ガッシィッ

ゴキブリ「じょ・・ギィッ・・・!?」


男「ナイスアシダカさん」

幼「かっこいいねぇ」

< パリパリグチャグチャ……

男「おはようございまーす」

店長「遅いよー、君っていつも時間にルーズだよねー」

男「店長が速いんですよ」

店長「まぁハヤブサだしね」

男「それに僕はほら、かなり特殊だし……」

店長「まぁねぇ……」チラッ


軍曹「…パリパリ」モグモグ


店長「なんでゴキブリに狙われてるんだかねぇ…」

男「むしろお国はなんでそんな俺の体質がわかったんすかね」

店長「さぁ」

男「あ、とりあえず検品してきますね」

店長「あいよー」


バイト「お疲れ様でーす、隼店長ぉ! 今夜俺と交尾しません!?」

店長「セクハラで訴えられるのと上空からダイブするのどっちが良い?オニヤンマ君」


バイト「いやーあいたたた」

男「大丈夫?」

バイト「羽根を翼で切り落とすとかやることなす事パネェ」

男「痛そう…」

バイト「ところで、先輩今夜空いてる?」

男「なんで?」

バイト「合コンするんで、出来れば来て欲しいなーと」

男「んー、ゴキブリ出たらどうしよ」



バイト「オオスズメバチの美少女来るから大丈夫」



男「安定の安心感だね」



男「なので合コン行きたいんです」

軍曹「駄目に決まってるだろ消毒するぞ」

男「……えっ」

軍曹「冗談…だ」コソッ

男「あー、とりあえず駄目かな?」

軍曹「私の任務は貴様の護衛だ、二等兵」

男「うーん……カマキリちゃんは?」


軍曹「なぜ私にはちゃんを付けない」


軍曹「曹長は駄目だ、護衛に向いてる性格でも能力でもない」

男「でもアシダカさん、合コン苦手なんだよね」

軍曹「に、苦手ではないぞ? 私程にもなると軽く睨み付けただけで悪い虫は逃げていくものだ」

男「それのどこに合コン特化能力があるんですかね」

軍曹「黙れ…私は別に他の男など今さら……」コソッ


男「なんでドンドン棚の後ろに隠れちゃうの…」


軍曹「……軍人やってます、アシダカグモって言います…26歳です」

チャラ男「うぇーいっ!! 可愛いー♪ 軍人とかやべぇじゃーん!」

チャラ男2「マジかっけぇ…」

バイト「ふーっきん!ふーっきん!ふーっきん!」


軍曹「…」ビキィッ


男「アシダカさん落ち着いて! 額に青筋出てる!引き吊ってる!!」

軍曹(と、とりあえずスマイル…スマイルだ)



チャラ男「どうもー、キリギリスっす」

バイト「オニヤンマのオニヤンです」キリッ


ツインテ「医大に通ってます、大雀蜂と申します」ペコリ

ギャル「カッタイよスズメちゃん…こういうのは軽く自己紹介してからノリで楽しむものなんだからさー」

ツインテ「私は元々気乗りはしませんので…」


軍曹(……大雀蜂か、ほんの数十年前までは我が国と戦争していたというのに)

軍曹(今ではこのような場に現れる程に親しくなったか…)フムフム

男(あ…アシダカさんいないと思ったらテーブルの下で頷いてた)



チャラ男2「ちなみに俺がバッタですー」

ギャル2「宜しくねー、ウチはショウジョウバエだよん」


バイト「こんなもんかな、後はほら…先輩が自己紹介してっ!」

男「え? あぁ……まだそこの人が自己紹介してないよ?」

ギャル「あれっ、ごめんねー! 私がハサミムシだよ!」


軍曹(そういえば軍の下っ端にクワガタがいたな…アイツは中々力強い方だった)パリパリモグモグ

ゴキブリ「ギィィィ・・・!!」ビクンビクン



ギャル「……なんか、ワイルドだね」

バイト「先輩のお友達ってみーんな個性的だかんね」

チャラ男「あの細長いスラッとした脚に挟まれてぇ」

チャラ男2「そんでもっていつもとは違う優しい目で見てもらいながらカプッてされてぇぇぇぇ」


ツインテ「……」

男「あはは…」

ツインテ「お友達は食事中ですし、お隣宜しくて?」

男「え? ぁ、どうぞ…」キョドキョド


< バリィィィンッッ!!

< 「うわっ、なんでゴキブリがこんなに突撃してきてんの!?」

< 「先輩の体質らしいんだよね、迷惑な体質だよホント」

< 「うわやべぇコイツめっちゃ棍棒振り回してくる!!」


ツインテ「……騒がしい人達ですこと」

男「明らかに僕のせいだよね」



軍曹「おい、二等兵」

男「アシダカさん、お水いりますか」

軍曹「出来ればコーラのゼロを…いやそれより、もう帰った方が良いぞ貴様」

男「何でなの ?」

軍曹「あちこちに潜んでたゴキブリどもがここに集結しつつある」

男「ああ……」


ツインテ「なんでテーブルの下にいるんですか…?」


チャラ男2「だぁ…いてて、一発殴られた」ヒリヒリ

ギャル「さすが強いねー、バッタくん」

バイト「俺とか羽根が治るまでは雑魚だよ雑魚…くそぅ、可愛い子に格好いいとこ見せたかった」

チャラ男「つかそこの茶髪はどんな能力の種族なん? ゴキブリ寄ってくるとか……」


男「いや、あんま大したことないっていうか」

ツインテ「危ない!!」ガッ

男「グフォ!?」


< ゴシカァンッ!!

ゴキブリ「じょうじ」ムキッ

ツインテ「……危ないじゃないですか、この脳筋…」

男「アシダカさん!こっち! なんかすっごいムキムキなのいる!!」


軍曹「取り込み中だ二等兵ッ!!」メキメキメキメキ
ゴキブリ「ギィィィィッッ」


ツインテ「……見たところ、紐付きではなさそうですね…」

ツインテ「ならば私がお相手しましょう、この大雀蜂の毒針でね」ミシッ

ゴキブリ「じょうじ・・・」ムキッ


バイト「マジやべぇ、焼き鳥頼んだのになにこれ酷い」

店員「ゴキブリはちゃんと駆除して下さいねー」

チャラ男「店員さんもうちょい応援してくんねぇの!?」

店員「だって私は天道虫だし」

バイト「こんにゃろ捕食すんぞ……」


ゴキブリ「じょうじ」カサカサ

ゴキブリ「じょうじょう……」カサカサ


男「うわぁ……筋肉まみれだぁ」


ツインテ「…ゼェ…ゼェ……強かった、互いの命運を分けたのが飛行能力でなければ私がやられていた…」

< ビクンビクン


軍曹「ふむ、さすがは大雀蜂の令嬢といった所か…その若さでよくもまぁ…」

男「アシダカさんも若いじゃないですか」

軍曹「…黙れ///」

ツインテ「………いつの間にかタンスの後ろにいる…」ゾクッ


軍曹「さて、一段落したなら帰った方が良いぞ? 貴様の匂いは格別だからな」

男「……」

バイト「えぇー、先輩帰っちゃうのかぁ…」

チャラ男「いーじゃん、そいついると合コンどころじゃねえし」

チャラ男2「迷惑にも程がある…よく考えてみろよ、だってゴキブリが寄ってくるんだぜ?」

チャラ男「うん、お前は誰に語りかけてんのかな」


ギャル「帰っちゃうのー?」

ギャル2「まだ名前も聞いてなかったのにねー」

チャラ男「しゃあねえよ」


男「……あはは、それじゃ僕はこれで…」

ツインテ「私も帰るわね、つかれちゃった」

ギャル「え、うそ」

ツインテ「このあとの料金は私が奢るわ、久しぶりに楽しかったもの」

ツインテ「……合コンの収穫もあったしね」

男「??」


軍曹「軍人でもない君に護衛の手伝いなど、すまないな」

ツインテ「構いません、母国でもテラフォーマーはよく出ていましたから」

軍曹「…む? テラフォーマー?」

ツインテ「ゴキブリの呼称です、母国では数千年前のデータや資料が幾つか発見されてるのです」

軍曹「初耳だ……君はもしかしてご両親の中にそういう機密情報を扱う人がいるのか」

ツインテ「どうでしょう? それを軽々しく言える立場ではないのは認めます」


男(なんでそんな凄いお嬢様が合コンに……)


男「ふぅ…ただいまー」

軍曹「ふぅはこっちだ、まったくよくそれで私が任務に就くまで生きてこられたな」ジタバタ

男「えー? 」

軍曹「大方、温和な貴様の事だから逃げ回っていたのかもしれないが」ジタバタ

軍曹「これから先も私がいるんだ、大船に乗ったつもりでいるがいいさ」ジタバタ

男「アシダカさん……」


男「とりあえず時計の裏に隠れようと無茶しないでください」


男「それにしても、久しぶりの合コンだったのになぁ…」

軍曹「仕方あるまい」

男「アシダカさんは今まで、合コンしたことは?」

軍曹「…ッ」コソッ

男「(あ、隠れた)…ええと、ないんだね」


軍曹「私は……その、目が怖いとか、本能的に恐れられやすいから…」


男(こんな性格なのに蜘蛛族だもんね!)



< 大雀蜂家 >


ツインテ「ただいま」ガチャ

ツインテ「今日は中々の収穫日だったわクマ! 合コンって素晴らしいのね!」

ツインテ「………?」


< シーン


ツインテ「クマ? いないの?」

ツインテ「!」ピタッ

ツインテ(この匂い……ゴキブリ、それも数体分の体液…)

ツインテ(なぜこの私の家で…? クマが撃退してるの?)


< ガチャ

ツインテ(……匂いはこっちの調理室の方から… )

ツインテ(!!)ビクッ


ゴキブリ「…」グチャッ…


ツインテ(肩から胸の辺りまで裂かれてる…クマの怪力ね)

ツインテ(この様子ならもう片付けたのかしら)ガチャ


クマバチ「ッ!?」

ツインテ「あらクマ、やっぱりもう片付けて……」

クマバチ「お逃げ下さいお嬢様ぁぁぁ!!」


< ズドン!! ズドン!! ズドン!!

クマバチ「…かッ……ゴハッ…」ドサッ


ツインテ「……え?」


大雀蜂ゴキ「……じょうじじ」



男「アシダカさん」

軍曹「……」

男「お願いだから起きて…アシダカさん……ッ」

軍曹「……」

男「こんな…まさか、くっ……アシダカさん起きて…っ」




男「添い寝のついでに僕を抱き枕にしないでアシダカさん…!!」ギリッ


男「もう…おはようアシダカさん」

軍曹「むぅ」モゾモゾ

男「なんで僕の枕元に寝てるんですかね」

軍曹「……」パチッ

男「あ、起きた 」


< シュバッッッ

男「消えた!??」


軍曹「……//// 」コソッ

男(そんな速度で何故に押し入れに……)


男「今日は今日で大学行ってきます」

軍曹「うむ」カサカサ

男「相変わらず僕より遠いね」

軍曹「基本的に護衛だからな」

男「もうちょっと近くでも良いんじゃ?」

軍曹「それだと…ほら」コソッ

男「?」


軍曹「貴様を食べるような目で見てるように思われないか心配でな……」


男(補食されるのか僕は)


幼「あ、おはよう」

男「おはよツノゼミちゃん」

幼「今日は護衛してくれてる軍人さんは…?」

男「いるよ、なんでかさっきから姿は見えないんだけどね 」


軍曹(くっ…二等兵め/// なにが『僕はアシダカさんに美味しく頂いて貰えるような男じゃない』だ)

軍曹(………良い男なのは認めてやるさ)コソコソッ


男(アシダカさんの匂いはするんだよね、多分あの辺の木に潜んでるのかな)

幼(そう言えば『はちくん』って何の蜂の種族なんだろ? 軍人さんの姿は見えないのにいつも察知してるし)


ゴキブリ「……」ヒュッ


幼「あ……」

男「さてと、そろそろ急ぐ? お互い時間に厳しい教授が相手だと大変だね」

幼「いや、後ろ…!」


< ヒュガッ!!

男「後ろがどうかした?」

幼「ぅ、ううん何でもない…」

幼(慣れないなぁ…私)



軍曹(大人しくしろ)ガブッッッ

ゴキブリ「~~~~~ッッ!!!」ビクンビクン


バイト「んぉ、おはざーっす先輩」

男「おはようオニヤンマ君」

バイト「相変わらず美人さんが隣にいて羨ましーっすねー」

幼「ぇ、ええっ?」

男「ツノゼミちゃん綺麗だもんね」


幼「ぁぅぅぅ……」カァアアアッ‥メキメキ

バイト「照れるとなんかすげぇツノ出す癖さえなきゃ完璧だわ」


軍曹(……ふむ、もう大学に着いたか)バリバリモグモグ

軍曹(後は私がゴキブリを駆除するまでもないな、大学ならゴキブリを駆除し慣れた輩も大勢いるだろう)

軍曹(二等兵のカリキュラムが終えるまで、しばらくの間どこかで暇を潰すか)

< Prrrrッ!Prrrrッ!

軍曹(?)スチャッ

軍曹「こちらアシダカ軍曹だ、司令部か?」



軍曹「………なに?」



男(あれ? アシダカさんがどこかへ慌てて行った?)ピクッ

幼「どうしたの?」

男「ううん…なんでもないよ」

幼「そーぉ?」

男「うん」


< 「お、おいこれ見ろよ!」

< 「なにこれ、中継?」

< 「やべぇだろこれ……確か経済学部のギャルの友達じゃなかったっけ」

< 「なんで大雀蜂なのに…」


< ザワザワ…ザワザワ……


男「?」

幼「どうしたんだろ…みんな携帯見てる」



男「ごめん、僕も見せてくれる?」


ヘラクレスオオカブト「んー? ああ、これだよ…ゴキブリ達に大使館が占拠されたんだって」

< 「こちらご覧ください! 大使館の周囲には火器を装備したゴキブリ達が取り囲んでいます!」

< 「政府からの情報では、ゴキブリ達は大使館内に居た警備兵を全員殺害」

< 「さらに、先程判明しました情報によりますと大使館奥の『大雀蜂大統領』の別荘で知られる建物も占拠されたようです!!」


男「ゴキブリ達が…?」

オオカブト「らしいな、大雀蜂族の大使館を占拠するなんて…どんなゴキブリだ」

クワガタ「それよりうちの国はどうすんだろうなこれ」

オオカブト「殲滅するだろ、あんな原人共」

クワガタ「だよなー、うちの国はゴキブリ対策チームの『アシダカグモ隊』がいるもんな」


男(アシダカグモ……もしかしてこれの為にアシダカさん…?)

幼「君の護衛してくれてる軍人さんもこれの為に行くのかな」

男「分かんないけど…多分」

幼「なら安心だね、あの人強いもん」

男「うん……」


男(……何だろう、この、嫌な感じ…)



< 大雀蜂家…改め『大雀蜂大使館』前 >


軍曹「…まさか、大雀蜂大統領の令嬢とはな……あの娘が」

曹長「合コンで会ったんだっけ? なにそのスキャンダル」

軍曹「えぇい変な事を考えるなカマキリ曹長!」

曹長「ふふん、特ダネよねー?」


補佐「アシダカ軍曹殿! 政府からの報告です!」

軍曹「アシダカ補佐、それはやはり我々の出番と考えて良いのだな」

補佐「はっ! 政府はやはり今回も我々ゴキブリ対策チームを潜入させる事にしたようです!」


曹長「さてと、何分持つかしらね? ゴキブリ共は」

軍曹「30分も持つまい、武装したゴキブリ如きなら何度も駆逐してきた私だ」

曹長「さすが軍曹さんね、期待してるわ今回も」

軍曹「伍長! 敵の数は!?」


伍長「はっ! 恐らく50から70体、そのうちの過半数が銃火器を使用しています!」

曹長「銃はほぼ全てが旧式散弾銃…それだけあれば至近距離で発砲されたりしたら…」


伍長「そのまま蜂の巣にされますね」



軍曹「場所が場所なだけに面白くないぞ伍長!!」ベチーンッ

伍長「申し訳ありません軍曹ォッ!!」ガッシャーンッ


軍曹「火器は所詮奴等が拾ったような旧世代の兵器だ」

軍曹「我々の機動力、そして経験ならば乗り越えられぬ敵ではない」

補佐「直ぐに他の隊員達に準備させます!」

軍曹「一分で準備させろ、私達の恐ろしさをゴキブリ共に叩き込んでやる」


軍曹(さて…二等兵に格好の悪いところは見せられないな)


< 大使館内『地下研究室』>


ツインテ(ん…ぅ……)

ツインテ(!!)パチッ

< ジャララッ

ツインテ(鎖…? 私、拘束されてる…!?)


ゴキブリ「じょうじ」

ゴキブリ「じょうじ…じょうじ…」

紐ゴキ「……」


ツインテ(紐付き……高度な戦闘能力を有した個体がいる…?)

ツインテ(その他にもゴキブリが…彼等は私を生かしておいてどうするというの……)

紐ゴキ「…!」チラッ

ツインテ(こっちを見た……!)


紐ゴキ「じょうじょ…じょう」

ツインテ(………)

< ガシャッ

ツインテ「え?」チラッ


警備兵「ぅ…う……」ボロッ

ゴキブリ「じょうじ!」

ゴキブリ「……」コクン

警備兵「……へ?」

< ゴシャァッ!!

ツインテ(……ひ…っ…!!) ビクッ


ツインテ(こ、殺した…? 何故……)

ゴキブリ「じょうじ」スタスタ

ツインテ「……」ドキドキ

紐ゴキ「じょうじ!」

ゴキブリ「じょうじょう」


< ガチャッ!

ゴキブリ「じょうじ! じょうじょッ!」


紐ゴキ「……じょうじ」ダキュッダキュッ

紐ゴキ「じょうじょう、じょうじじ」


ツインテ(……テラフォーマーが慌ててる? 何か起きたのかしら)


< バババババババ

< 『こちらはバグズ報道です! 現在、遂に特殊対策チームが大使館への突撃を決行しようとしています!!』

< 『11人のアシダカ族の兵士を従えて先頭を歩くのは、鬼軍曹と名高い【アシダカ軍曹】です!!』


男「アシダカさん…!」

オオカブト「知り合いか? 」

幼「うん、はちくんの同棲してるお友達なの」

男「あはは…そんな感じかな」


軍曹「伍長、この作戦で大丈夫だと思うか」

伍長「我々らしいじゃないですか、正面突破だなんて」

軍曹「ふむ、どう思う? 」

補佐「さぁ? やはり我々らしいとは思いますよ」


補佐「ほら、それに部下達はウズウズしてますよ? 早くゴキブリ共を殺したいってね」


軍曹「……ふ、久しぶりの掃討任務だな」

軍曹「全員、私の合図と同時に配置につけ……奴らを駆逐する」ミシッ



……頭上から響き渡るヘリの轟音が辺りの報道陣が出す雑音を掻き消しながら。

その中で『軍』が建てたテントの中から、12人の灰色で彩られたスーツを来た者達が歩み出る。

ある者は背にバックパックを、ある者はスタミナをいち早く回復出来る様に、それぞれが役割を持っている。

それらは個人が複数人をサポートする為にあり、そしてもしもの際には後方支援をも行える様になっていた。

では、『支援』ではない役割を持つのは誰なのか。


軍曹(まずは正面玄関付近にいるゴキブリ共の制圧か……)ミシッ…ミシッ…


一人だけだ。

『敵に向かい、それらへの切り込みを入れる』役割…即ち先手を取るべく必殺の初撃を加えるのは……。


軍曹「ゴキブリを計四体、後方に送る…いつもの作戦通りで行くぞ」


直後に大使館まである50m程度の距離を一瞬で縮め、大使館屋根に立っていたゴキブリの元へ跳躍した。

彼女、『アシダカグモ』がゴキブリ達を最初に仕留めるのだ。



ゴキブリ「ッ……!」ガシャッ

凄まじい速度で駆け抜けるアシダカグモの脚力にいち速く気づく者。


ゴキブリ「じょうじ…ッ」バッッ

距離を取ろうと照準を合わせながら下がる者。

アシダカ軍曹が数秒の間に大使館へと接近した時には、まるでそれを歓迎するかのように。



━━━━━━━━ ガガガガガガガガガッッッッッ!!!!!!



弾幕。

本来ならばセミオートとはいえ連射の間は長く、アシダカグモの動体視力と予知能力で避けられる。

しかし、その『避けられる穴』を意図的に塞ぐようにゴキブリ達は僅か一瞬で弾幕を張ったのだ。

体長150cm級の『黄金虫』を肉塊に変えるだけの破壊力を持った散弾。

それらの鉛色のカーテンを前にし、尚も灰色の一閃はゴキブリ達の元へと近づく。



軍曹「………シュパンッ」ビッッ


フッ、と灰色の髪が風に流れ、浮き上がるように彼女の足元が地を離れる。


ゴキブリ(………!)


……余談だが、アシダカグモという種には糸を駆使した戦術が使えない。

より正確には、糸を使うよりも脚力だけで獲物を狩れる故に、『たった一本の糸を頼る』機会がない。


軍曹(その程度の ━━━━ )

古代の彼女達の先祖は命綱として常に垂らしていたらしいが、
基本的にはそれらを活用した事はないのが殆どである。


軍曹( ━━━━陳腐な弾幕で"狩られる"私ではないッ!! )


……ならば。

もしも、長きに渡る進化の過程で、『命綱』を必要とすべき時が幾度となく来ていたら。

故に、自身の糸の、『命綱』が余りにも脆いことに気づいたとしたら。




ゴキブリ「ッ……!!」ヒュッ

ゴキブリ「じょうじょッ」バッッ


焦るゴキブリ達の見たものは、灰色の女が瞬時に大使館の玄関へと高速移動した姿だった。

ゴキブリ(……?)ピクッ

彼等は既に何人かのアシダカグモという種族と衝突した事がある。

故に、『本来ならば有り得ない』可能性を見落とし、そしてまさに今…彼等は迂闊にもそれに近づいている。


一人のゴキブリが立ち止まる。


先程のアシダカグモが高速移動した際に見えた銀光、あれは何なのか。

ゴキブリ(・・・)

違う。

"あの銀光に沿って高速移動した"のだ。


ゴキブリ「じッ…じょうじ……!!」


呼び止める、だが遅い。

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