男「教科書に載るような人物になりたい」 (28)


男「俺さ……」

男「教科書に載るような人物になりたいんだよな」

友人「へぇ~、そうなんだ」

友人(なんかいきなりとんでもないこと言い出したぞ、こいつ)

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友人「教科書っていっても色々あるけど、どの教科よ? 国語? 理科? 社会?」

男「いや……どれでもいいんだ。とにかく載りたいんだ」

友人「はぁ……」


友人「さすがに教科書はハードル高すぎだろ……」

友人「せめてWikipediaぐらいにしとけば?」

男「あんなもん、誰だって編集できるだろ!」

男「やっぱ載るなら教科書だよ。なにかいい方法ないかなぁ」

友人「だったら、教科ごとに載る方法を検討してみるか」

友人「こういうことを真面目に考えてみるのも案外面白いかもしれないしな」


友人「まず国語からいこう」

友人「小説だの随筆だのを書いて、教科書に採用されれば、当然名前も載る」

友人「お前、そっち方面は自信あるか?」

男「あるある!」

男「実はこないだも、小説を完成させたんだ!」

友人「へぇ、すげえじゃん。なんてタイトル?」


男「『ロリコン☆パラダイス』ってやつ」

友人「…………」

友人「国語は無理だな」

男「へ? なんで?」

友人「夏目漱石や宮沢賢治、太宰治らが書いた超名作たちの中に」

友人「『ロリコン☆パラダイス』が混ざるのはまずいだろ」


男「じゃあ、数学は?」

友人「うーん、数学の教科書って、そもそも人物の名前が載ってた記憶が全くないな」

友人「延々と公式と問題が載ってるようなイメージだ」

友人「教科書によっては、数学に関する雑学コラムとかあってもよさそうだけど」

友人「それこそ、アルキメデスの王冠の逸話ぐらいのことしなきゃ、載らないだろうな」

男「数学はちょっと厳しいか……」


男「理科はどうだろう」

友人「理科なら、物理化学の『○○の法則』だとか『××の実験』だとかで」

友人「歴史上の科学者の名前が載ることがあるな」

男「おおっ!」

男「よっしゃ、それでいこう! 俺もなんか法則を発見しよう!」


友人「まぁ……それこそノーベル賞クラスの発見しなきゃ載らないだろうけどな」

男「うっ……」

友人「頑張れよ。たとえばタイムマシンを発明すれば載るんじゃないか?」

男「やめとくわ……」


友人「となると、次は社会か」

友人「歴史上の偉人になれば、世界史や日本史の教科書には載るだろうけど……」

男「それだ! 俺、歴史上の偉人になるわ!」

男「たとえばさ、総理大臣になれば絶対載るだろ!」


友人「いやぁ、そいつはどうだろ」

男「えっ!」

友人「現代史って入試にも出ないし、スペースも少なくて、結構省かれてるんだよな」

友人「だから、歴代の全総理が記載されてるわけじゃないんだよ」

友人「つまり、総理になるだけじゃダメだ。インパクトあることをしないとな」

友人「ロッキード事件とか、所得倍増計画とかな」

男「総理になっても載るか怪しいなんて、教科書に名を残すのは本当に難しいんだなぁ」


男「よ、よし……次は英語だ」

友人「お前、英語できる?」

男「できる!」

友人「どのくらい?」

男「ハウ、アー、ユー?」

友人「却下」


男「家庭科はどうだ?」

友人「家庭科ねぇ……栄養士にでもなるのか?」

男「ビタミンAは目にいい、くらいしか分からねーや……」

友人「さすがにそれは分からなすぎだろ……」

友人「んじゃ、体育は?」

男「保健体育の知識なら自信ある!」ムフッ

友人「童貞のくせに」ボソッ

男「うるせーよ!」


友人「音楽も厳しいな。お前、音痴だし、楽器もやってないし」

男「なぁに、耳聞こえないフリして、誰かに曲作らせりゃいいんだろ?」

友人「それじゃ教科書じゃなく、新聞や週刊誌に載っちまうよ」

男「じゃあ美術は?」

友人「有名な画家や彫刻家になれば、作者として載るかもしれないけど……」

友人「美術の教科書ってページ数多くないし、競争率は高いだろうな」

男「うーん、そっかぁ……」

男「話は変わるけど、美術の教科書にすげえリアルな生卵の絵が載ってたよな」

友人「あったあった。あれ、すげえよな」


友人「結論。どんな教科書にも名を残すのは難しい」

男「うぐぅ……」

友人「悪いこといわないから、Wikipediaで我慢しとけって」

男「ちくしょう……」



それから彼らは成長し、数十年の歳月が流れた……。


居酒屋にて――



友人「おー、久しぶり!」

男「久しぶり!」

友人「お互いすっかりおっさんになったなぁ!」

男「まったくだ」


男「ところでさ、俺、教科書に載りたいなんていってただろ?」

友人「ん? ああ、いってたな。どうやったら載るか考えたりしたよな。懐かしいなぁ」

男「実はさ、このたび、ついに載ったんだよ!」

友人「え、ホントかよ!? 見せてくれよ!」

男「この教科書さ」サッ


友人「えぇと……どこに載ってるんだ?」パラパラ…

男「ほら、一番最後のページの……発行者の欄」

友人「やるじゃん!」







おしまい

昔、密かに思い描いていた夢(?)をSSにしてみました

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