男「最強の武道を思いついたぞ! その名も“水道”!」(18)

友「水道……!?」

男「そう、その名の通り水の力で戦う武道だ!」ニヤ…

男「ほら、人体の10%だか100%は水でできているっていうだろ?」

友「ずいぶん曖昧だな……」

友(俺の記憶が確かなら、60%とか70%だったような)

友「ようするに、あれか? 漫画でよく出てくる“発勁”的な技を使う武道なんだろ?」

友「人体を水が入った袋と見立てることで、体の内部にダメージを与えるみたいな」

男「全然ちがう!」

友「え、ちがうの」

男「“水道”では、水そのものを武器とする!」

男「たとえば、ここに水が入ったバケツがある!」チャプン…

友「うん」

男「この水をこうやって……手で相手にひっかける!」バシャバシャッ

友「うわっ、なにすんだ!」

男「このようにして、敵にダメージを与えることができるのだ!」

友「俺、全然ダメージないけど……」

男「さらに……こう!」ザバァッ

男「……」ビッショリ…

男「水もしたたるいい男になれる!」ビショビショ…

男「ほら、風呂上がりに鏡に映った自分を見ると、イケメンに見えるっていうだろ?」

友「はぁ……」

友「一時期話題になった、アイスバケツチャレンジを思い出したよ」

男「さらに、このように蛇口のある場所でなら、“水道”は無敵になる!」

男「なぜなら――」キュッキュッ

男「ほれほれほれええええっ!」ブシャァァァァァッ

友「バ、バカッ! ふざけんなっ!」

男「武器となる水が無限にあるからだああああああっ!」ブシャァァァァァッ

友「やめろ、このバカ!」ボカッ

男「あだぁっ!」

友「ったく……お前のせいで、俺までずぶ濡れじゃねえか。水もったいないし」キュッキュッ

男「他にも蛇口の近くにはホースが必ずある!」

友「必ずではないと思うけど……」

男「それをこのように振り回せば、強力な武器になる!」ヒュンヒュンヒュンッ

友「ひいっ! あっぶねえ!」

男「うわっ!?」グルグルグルッ

男「か、からまっちゃった……助けて……」

友「なにやってんだか……」

男「あぁ、苦しかった……」ゲホッゲホッ

友「じゃあ、こっちから質問させてもらうけど……」

友「もし近くに水も蛇口もなかったら、どうするんだ? どうやって戦うんだ?」

友「いっとくけど、剣道やってる奴って竹刀なくてもそれなりに戦えるっていうぜ?」

男「ふっふっふ、もちろん“水道”に弱点はない!」

男「近くに水がなければ、自分の水を使えばいいじゃない!」

友「自分の水? ……ま、まさか!」

男「そう!」

男「これとか!」ペッペッ

友「うわっ! きたねっ!」

男「さらには、これえっ!」ズルッ ポロン…

男「ふははははは、どうだぁっ!」ジョボボボボ…

友「やめろ、バカ! かかったら絶交だからな!」スタタタッ

男「あぁぁ~、スッキリした……」ブルブルッ

男「ちなみに、最初にやったのは“上水道”という技で」

男「ズボンを下ろしてからやったのは“下水道”という技だ」

男「上段と下段に対応しているわけだ」

男「ストリートファイターに出てくるサガットのタイガーショットみたいなもんだな!」

友(ツバと小便と一緒にされちゃ、サガットもいい迷惑だろう……)

男「他にも……」ウルッ

男「嘘泣きして、敵を騙したり……」シクシク…

男「汗を大量に出して、ダメージがあるフリをしたり……」ダラダラ…

男「鼻水をいっぱい出して……」ダラーン…

男「敵を捕獲することもできる」ジュルルッ

友「できねえって」

男「しかも、鼻水って、程よくしょっぱくてとろろの味に似て――」ジュルッ

友「やめてやめてやめて! とろろ食えなくなるからぁっ! 俺の好物だからぁぁぁっ!」

男「――ってところだ」

男「俺はこれから“水道”の道場を開く! 師範になる!」

男「そして、“水道”を柔道や剣道に並ぶ、いやそれ以上の武道にしてみせる!」

友「はぁ……」

男「もし、開いたら、真っ先に入門させてやるからな!」

男「なんなら、ダチ特典でいきなり初段からスタートさせてやってもいいぜ」

男「それじゃあな!」タタタッ

友(その前に、水道局に怒られたり、警察に逮捕されなきゃいいけど……)

数日後――

男「よう!」

友「お、おう」

友(よかった……逮捕されてなかった)

男「いやぁ、なんかお前とすっげー久々に会った気がするよ」

友「……俺はそうでもないけどな」

友「ところでさ……こないだ話してた武道ってどうなったんだ?」

男「ブドウ?」

友「ほら、水を使う“水道”とかいう武道だよ」

男「水道? なにそれ?」

友「おいおいおい、しらばっくれるなよ。たかだか数日前のことじゃんか」

男「数日前?」

男「俺、ここ一週間ぐらい、すっげー風邪ひいててさ」

男「熱40℃以上出ちゃって、頭ぼんやりしてて、全然覚えてないんだよ」

男「もしかして、ぼんやりしたまま夢遊病みたいな感じになってたかも」

男「あっ、なんか俺、変なことしちゃったか?」

友「いや……」

友(なるほど、風邪ひいてたのか……)

友(そりゃあ、汗はかくし、鼻水は出るし、わけ分からんこと思いつくわけだ……)

友「ハーックション!」

男「!」

男「おい、大丈夫か? もしかして俺がうつしちゃったか?」

友「ああ……うつっちゃったみたいだ……」

友「でも、なんだか……新しい武道を思いつきそうな予感がする……」ニヤ…







おわり

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