八幡「シスコンぼっちと」美嘉「シスコンアイドル★」 (127)

いつもお世話になっております。346プロダクション所属のプロデューサー、比企谷八幡です。
弊社のアイドルをよろしくお願い致します。

・・・まずい、最初に思いついた挨拶がすでに社畜と化している。
どうしてこうなった・・・。

卯月「プロデューサーさん、お仕事の時間ですよ!」

未央「なーにブツブツいってんのー?」

凛「気持ち悪いよ?」

はぁ、また仕事か・・・。
てか気持ち悪いってなんだよ。泣いちゃうぞ?

と、そこで一人の少女が近づいて声をかけてきた。

美嘉「ほら、いくよ、プロデューサー★」

八幡「ん、わかった。卯月、未央、凛・・・美嘉。準備できてるか?」

卯月「はい♪」

未央「ばっちしだよっ!」

凛「うん、大丈夫」

美嘉「もっちろん。それじゃあプロデューサー、今日もヨロシクね★」

八幡「おう、それじゃあいくか・・・」


これは、一人のぼっちがなぜかアイドルのプロデューサーになるという、ちょっとしたお話である。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442530339

とある休日、俺はマイエンジェルで世界の妹である小町と買い物ついでに散歩をしていた。

小町「お兄ちゃんとお出かけするのも久しぶりだねー」

八幡「そうだな、俺はお前以外とは誰とも出かける気はないが」

小町「ごみいちゃんはあいかわらずだなー。でも小町と一緒に出掛けてくれるのは小町的にポイント高いよ!」

八幡「はいはい。高い高い」

とかなんとかだべりつつ歩いていると、公園にさしかかった。
なんか人が多いな・・・。これは撤退だな。

八幡「小町ー、そろそろ帰るか」

小町「お兄ちゃん、あの人だかりなんだろーね。いってみよっか!」

といって俺の手を引いて走り出した。

ちょっと、お兄ちゃんの話たまには聞いてくんない?
手をつなぐのは八幡的にポイント高いが、人ごみにいくのはぼっちにはつらい・・・。
ほんとに人ごみって言い得て妙だよね。人がゴミのようだ。

小町「なんか撮影してるねー」

八幡「そうみたいだなー・・・」


ワイワイ
ガヤガヤ
ワー、チョーカワイイ!
ホントイケテルヨネー!
フム、ティントキタ

なんかギャルっぽい娘の撮影をしているみたいだ。
ギャラリーも多く、女子力(笑)が高そうな娘である。
なんかいるだけでリア充オーラに蝕まれそうだ・・・。

小町「もっと近くで見てみよー、お兄ちゃん!」

八幡「えぇ・・・」

仕方なく小町のあとをついてとぼとぼ近づいていった。
ちょうど休憩にはいるところらしい。

「はーい、ちょっと休憩ねー。」

「わかりましたー★」

小町「ん、あれって城ヶ崎美嘉ちゃん?」

八幡「知ってんのか小町」

小町「ちょー有名だよ!雑誌で今人気のカリスマJK読者モデル!」

八幡「ふーん」

ああ、いつもお前が見てる偏差値30くらいの雑誌のやつね。
それにしても読モか、まあぼっちとは一生関わりあいにはならなさそう人種だな。


ふと見てみると、件の城ヶ崎美嘉が顔のよく似た金髪の女の子と楽しそうにしゃべっている。
なんかイメージと違ったその姿を、ついしばらく眺めてしまった。
あんな顔もするんだな・・・。

八幡「小町、そろそろ帰るぞ」

小町「りょーかーい。はぁ、美嘉ちゃんかわいかったなー」

八幡「俺的には小町のほうが8万倍可愛いがな」

小町「はいはい、ありがとありがと」

やっと帰れるぜ!、とウキウキしながら
意気揚々と帰路に就こうとしていると、なんか目の前に知らないおっさんが立っていた。

???「キミ、ちょっといいかい?」

八幡「・・・えっ?」




美嘉「あれ、あの人たち・・・。」

莉嘉「お姉ちゃん、どうかした?」

美嘉「いや、なんでもないよ★」

美嘉「それより、どうだった?さっきのアタシ?」

莉嘉「ちょーすごかったよ!、さすがお姉ちゃんだねー☆」

美嘉「まあねー★」

さっきの人たち、なんかすごく楽しそうだったな・・・

あの休みから1週間ほど経過。俺はなぜか東京のとあるビルの前にいる。
346プロダクション。
数多くのアイドルが所属している、有名な会社である。

ビルを前にして、俺は圧倒されていた。

八幡「もう帰ろっかな・・・」

なんでこんなことになったんだろうな・・・





八幡「346プロダクション、社長?」

公園で話しかけられた人から受け取った名刺には、「346プロダクション 代表取締役社長」と書かれてあった。

社長「ああ、ちょっとキミに用があってね」

八幡「・・・なんすか?」

社長「キミ、アイドルのプロデューサーに興味はないかね?」

八幡「え」

社長「キミをプロデューサーとしてスカウトしたい!」

なんだこの人・・・。
すげぇ怖えぇ。とりあえず断っとくか・・・。怪しさ8万倍だし。
それ俺か。

八幡「いや、俺ちょっとあれなんで、しつr」

小町「すごいよお兄ちゃん、アイドルのプロデューサーなんて!やろうよ!」

八幡「」

社長「まあ見たところ学生のようだし、ご両親とか学校とか色々相談するところもあるだろう、気が向いたら連絡してくれたまえ」

小町「はい、わかりました!必ず連絡します!」

あれ、俺の意思は?ねえ、俺の意思は?

小町曰く、「アイドルのプロデューサーなんて小町的にポイントカンストだよ!」とのことらしい。
その小町の熱心な説得によりあっさり両親は陥落、学校も休学ということになった。

ちなみに俺には拒否権は存在しなかった。なんかもう慣れたな。この扱い。
で、その手続きをしていざ!初出社である。

出社、いやな言葉だ・・・。
・・・これで俺も社畜の仲間入りだな。
社畜って漢字、変換したら一発で出るようになったし。

八幡「うし、行くか」

行かないと小町に嫌われるしな。

一度気合いを入れなおし、おそるおそるビルへ足を踏み入れた。



社長「おー、比企谷くん、来たか。待っていたよ!」

ビルの受付の方にしどろもどろになりながら何とか事情を説明することに成功し、
俺は社長と再び対面することになった。

八幡「アイドルとか詳しくはありませんし、プロデューサーとかも何していいかわかりませんが、よろしくお願いします」

社長「なーに、すぐに慣れるさ。キミならできるよ!」

暗に仕事ができないアピールをしたのだが、あっさり返されてしまった。
くっ、社長、なかなかいいスルースキル持ってますね。
俺がスルー(される)スキル持ちなのが原因かも知れんが。

社長「じゃあとりあえず、キミのサポートをしてくれる人を紹介しようか。おーい、ちょっと来てくれるかー」

???「なんですか、社長」

社長「彼が今日からプロデューサーになる、比企谷八幡くんだ。比企谷くん、こっちはうちで事務員をしている千川ちひろくんだ」

ちひろ「あぁ、あなたが。千川ちひろといいます、よろしくお願いしますね♪」

社長「ところで、彼女はまだかね?」

ちひろ「もうすぐ来ると思いますよ」

社長「それじゃあ、あとはキミに任せよう、比企谷くん、頑張ってくれたまえ!」

八幡「あ、はい」

ひととおりまくし立てて社長は去っていってしまった・・・。

とりあえずこの千川ちひろさんって人に仕事を聞かなきゃいけないんだな。
なんかコミュ力高そうだな・・・。美人だし。

ちひろ「そういえば比企谷くん、契約の件って聞いてますよね?」

八幡「あ、はい、とりあえず半年働いて、って件ですよね?」

ちひろ「そうです。まぁ、比企谷君は学生みたいですし、いきなりずっと働くというわけにもいきませんからね」

そうなのである。このプロデューサー業、契約は半年、そのあとは双方の合意により続けるか決められることになっている。
この契約があったため、俺はなんとかやる気になれた。
ゴメンね小町、俺半年でクビになっちゃう♪


ちひろ「まあそれはおいおい考えるとして、比企谷くんには今日は担当するアイドルと会うところからですね」

八幡「え、いきなり担当アイドルとかつくんですか?」

ちひろ「はい、まあ社長も言った通り、まずは慣れろです」

マジか。しばらくは研修とかで過ごすのかと思ってた・・・。
その間にさりげなく使えないアピールして、フェードアウトとか考えてたのに・・・。
いきなり担当アイドルを紹介されるとか、すげぇ緊張してきた・・・。

八幡「あの、千川さん」

ちひろ「ちひろでいいですよ。どうしました?」

八幡「・・・ちひろさん、そのアイドルってどんな娘なんすかね?」

ちひろ「うーん、その娘も比企谷くんと同じく最近社長がスカウトしてきたんですよね。」

八幡「そうなんですか?」

ちひろ「ええ、年も同じみたいですし、新人同士仲良くしてくださいね♪」

うわぁ、年も同じなのか・・・。むしろ緊張するなぁ。
年が離れていればまだ話しやすかったのになぁ。

べ、べつにロリコンってわけじゃないんだからね!




そのアイドルは数日前から来ているらしく、今日もそろそろくるらしい。

???「おはようございまーす★」

ちひろ「あ、きましたよ。おはようございます、美嘉ちゃん♪」

美嘉「あ、ちひろさん、おはようございます★」

あれ、こいつは確か・・・。

美嘉「あれ?」

ちひろ「美嘉ちゃん、紹介しますね、彼が美嘉ちゃんのプロデューサー、比企谷八幡くんです!」

ちひろ「比企谷くん、彼女が担当するアイドルの城ヶ崎美嘉ちゃんですよ♪」


奇しくも彼女は、俺がスカウトされたときに公園で撮影をしていた城ヶ崎美嘉であった。
こんなリア充(笑)オーラあふれる女の子が?
やべぇ、手汗がでてきた。

と、とりあえず、挨拶くらいしないと・・・。

八幡「ど、どもっす。比企谷八幡です」

恥ずかしがり屋でシャイボーイの俺は、しどろもどろになりながら、なんとか挨拶をすませる。
・・・さあ、どうくる。

「チェンジで」とか言われたら泣くな、全俺が。

城ヶ崎はしばらくキョトンとした顔で俺をみていた。
やっぱり俺がイヤだったの?ごめんね?文句は社長に言ってね?
俺に文句言ったらひきこもっちゃうからね?

しかし、以外にもそうでもなかったらしい。

美嘉「へー、キミがアタシのプロデューサーなんだ。これからよろしくね★」

美嘉は、笑顔で答えてくれた。

さすがトップカースト、底辺ぼっちにも笑顔で応じてくれる。

八幡「まだ入ったばっかりで色々迷惑かけるかも知れんが、よろしく頼む」

美嘉「アタシも新人だからねー、一緒にガンバろ?」

八幡「おう」

とりあえずトラウマ回避できたみたいだ・・・。

城ヶ崎美嘉。

読モとして有名だったが、社長にスカウトされてアイドルになったらしい。
その城ヶ崎と、現在絶賛ふたりきり中である。

ちひろさんが「まずは美嘉ちゃんとお話しして交流を深めてください♪」といわれてこの状況になっている。

まずは、今決まっている城ヶ崎のレッスンや仕事についていって、慣れてから本格的にプロデュース業をやってもらうとのことだが・・・。

八幡「・・・」

何話せばいいの?っていうか話していいの?というか帰っていい?
前の席に座ってるのになんかいい匂いがするし、とっても緊張しちゃう。

こんな時、巷のリア充(笑)ならなんて言うんだろうな。
「その服、キミにとても似合ってるね、すごく可愛いよ」とか?
・・・言えるかボケ!ぼっちなめんな!!!

と悶々としていると、美嘉が話しかけてきた。

美嘉「ねえ、プロデューサー、ちょっと聞いていい?」

八幡「な、何だ?」

あぶねぇ、なんとか返せたぜ・・・。こんなギャルっぽい娘と話すだけでガンガンライフポイントが削り取られていくようだ・・・。


美嘉「この前の休日さ、プロデューサー○○公園にいなかった?」

八幡「あ、あぁ?確かにいたが・・・。そういやお前あそこで撮影してたっけ?」

美嘉「うん、やっぱりそうだったんだー。あの時ちらっと見えてなんとなく覚えてたんだよねー★」

マジか。こんなリア充(笑)モデルに覚えられていただなんて、突き詰めれば俺もリア充ってことか。
違うか。違うな。

八幡「あの時お前はアイドルじゃなかったんだろ?どうして今アイドルやってんだ?」

美嘉「あの撮影の日に社長にスカウトされてねー、それで楽しそうかなーって思って」

八幡「そうか、お前もあの日にスカウトされたのか、偶然だな」

美嘉「じゃあプロデューサーもなんだー。偶然だね★」

八幡「まあ俺と同じ日ってだけで城ヶ崎もなんか不幸だな」

その日は社長も暑さでまいっておかしくなってたかもしれないし。

美嘉「・・・美嘉でいいよ」

八幡「へ?」

美嘉「城ヶ崎って呼びにくいでしょ?これから一緒に活動するんだし、美嘉でいいよ★」

ちひろさんに続き、こいつもか。
まあ仕方ない。これも仕事だ。

八幡「わかった、み、美嘉・・・」

ちひろさんの場合はある程度年が離れていたせいか、そんなに緊張しなかったが、
そこはやっぱり同い年。すっげぇ緊張した。
多少どもったが、これが八幡の限界であります!

美嘉「うん、これからヨロシクね★」

ふぅ、今日は疲れるなぁ・・・。もう俺のメンタルはボロボロだよ・・・。

美嘉「ところでさ、プロデューサーはなんでプロデューサーやろうって思ったの?」

また美嘉から話しかけられる俺。会話のキャッチボールなどではなく、防戦一方だ。
まあ実際にキャッチボールとかしたことないからわかんないけどね。

八幡「いや、俺はやる気はなかったんだけどな」

美嘉「そうだよねー。こういっちゃなんだけどなんかプロデューサーとかやりそうな感じしないし」

まぁそうだよな。誰が見てもそう思うよな。
俺自身そう思うし。

八幡「でも、小町が勝手に決めてな、どうしようもなかった」

美嘉「へー、って小町?誰それ?」

八幡「ああ、妹だ。世界一可愛い」

美嘉「は?」

八幡「え?」



なんか不穏なオーラをまとい始めた美嘉。俺変なこと言ったっけ?

美嘉「・・・ちょっとプロデューサー。今何て言った?」

八幡「え、妹?」

美嘉「その妹が何だって?」

八幡「世界一可愛い」

即答した。小町が世界一可愛い妹なのは世界の常識だからな!

美嘉「・・・」

八幡「・・・あの、み、美嘉さん?」

美嘉「・・・」

美嘉「はーっ!?何言ってんのー!?」

八幡「え」

美嘉「世界一可愛いのはアタシの莉嘉でしょ!?常識じゃない?」


何言ってんだコイツ。てか莉嘉って誰だよ・・・。

八幡「よくわからんが、莉嘉って誰だ?」

美嘉「アタシの妹!世界一可愛いの★」

・・・・・
・・・・
・・・

こいつは何を抜かしとるんだ。

俺はポケットから携帯を取り出し、数多く保存してある妹の写真からとっておきを見せてやった。

八幡「お前の勘違いを治すために、特別に妹の写真をみせてやる」

美嘉「くっ。確かに可愛い!でもちょっと待って!」

そう言って美嘉も同じように携帯を取り出し、写真を見せてきた。
あの撮影の日に見た、金髪の子が笑顔で写っている。

あぁ、あの時しゃべってたあの娘は妹だったのか。

しかし、これだけは譲れない。絶対に負けられない戦いがそこにはある!

八幡「確かにお前に似て可愛いな。だが世界一は小町だ。これは譲れん!」

美嘉「っ!世界一はアタシの莉嘉!」

八幡「うっせぇこのシスコン!」

美嘉「なによこのシスコン!」

ワーワーギャーギャー

ちひろ「なんか仲よさそうですねぇ♪」

こうして、俺のプロデューサー業は始まった。
どうなることやら・・・。

まずはここまでですー。

連休中にまったり更新する予定でしたが、
諸事情により連休中に更新できなくなりました・・・。

なので、これから最後まで終わらせます!
せっかくの振休、コピペ祭りです!


担当アイドルが決まり、本格的に仕事をすることになった。
といっても、まずは美嘉の付き添いをするだけなんだが・・・。

まぁ、仕事だし、担当アイドルがどんなもんか観察でもしますかね。


-------レッスンにて

トレーナー「城ヶ崎。まだトレーニングを始めて間もないがいい感じだな。その調子で頑張れよ」

美嘉「はいっ。ありがとうございます★」

八幡「・・・」

まだデビューは決まってないが、将来のデビューに向けて基本的なダンスレッスンやボイストレーニングをしている。
が、素人目に見ても・・・。

こいつ、才能ありそうだな。





美嘉「プロデューサー、どう?結構いいカンジだったでしょ★」

八幡「・・・そうだな。まぁいいんじゃねえの」

美嘉「わーテキトー」

うーん、将来的には歌って踊れるアイドルにはなれそうだなぁ。
俺いらないなぁ。




-------ラジオにて

今日は美嘉がラジオに出演することになっている。
346プロダクションが放送している、新人アイドルを紹介していくラジオだ。

司会「いやー、美嘉ちゃんすごいねー。なんか新人とは思えないねー」

美嘉「はい、ありがとうございます★」

こいつしゃべりもいけんのかよ。
とてもはじめてとは思えねぇ。
俺だと絶対どもったうえで、「フヒ」とか変な声出しちゃったりしそうなのに。

でも、なんか違和感を感じるな・・・。
気のせいかな。

・・・・・
・・・・
・・・

美嘉「プロデューサー、どう?はじめてにしてはよかったでしょ★」

八幡「・・・ええ、良かったと思います」

美嘉「なんでそんな口調なの?」

とりあえずしゃべりも問題なし。
あれ、やっぱり俺何もしてなくね?




-------雑誌の取材にて

ラジオと同様に、346プロダクション関連の出版社による
アイドル雑誌のインタビューを受けている。

新人は、まずはこの雑誌に取り上げることになっているらしい。
まぁ、仕事が来るっていうのは楽でいいですよね。

インタビュアー「美嘉さんはアイドルやる前から読者モデルでも有名だったんですねー」

美嘉「はい!読モのときのようにみんなに応援してもらえたら嬉しいな~と思います★」

インタビュアー「なるほどー」

まあラジオでしゃべれたんだし雑誌のインタビューとか楽勝だろうな。

相変わらずそつなくこなしている。
うん、そつなく。

どう見ても、誰が見ても悪くない。本当に。

・・・しかし、これでいいんだろうか・・・。

・・・・・
・・・・
・・・

美嘉「ラジオより楽だったねー、読モ時代でもインタビューとか受けてたし★」

八幡「・・・おまえ、なんでもできんだな」

美嘉「そうかなー?読モ時代にいろいろやってたから多少はなれてるかなー」

八幡「ふーん」




今日も仕事が終わり、美嘉と事務所に帰ってきた。
美嘉は元気いっぱいに、俺は疲れた声で挨拶をする。
俺何にもしてないのにな。

美嘉「ただいま帰りましたー★」

八幡「お疲れ様です・・・」

ちひろ「あ、美嘉ちゃん、比企谷くん!お疲れ様です♪今日はどうでしたか?」

美嘉「うん、いい感じでしたよ~」

八幡「・・・まあまあじゃないっすかね」

美嘉「何よ、プロデューサー、まあまあって!もっと素直にほめれないの?」

八幡「ひねくれててすいませんねぇ」

美嘉「まあ明日こそ素直にほめさせてあげるよ★アイドルになってはじめての撮影だし!」

ちひろ「そうでしたね、明日は撮影でしたね。まあ美嘉ちゃんなら慣れてそうだし問題なさそうですね♪」

八幡「・・・まぁ、ほどほどに頑張れよ」

美嘉「うん!じゃあ莉嘉も待ってるしそろそろ帰るねー。お疲れ様~★」

ちひろ「お疲れ様です」

八幡「お疲れさん」

八幡「・・・」




ちひろ「あれ、比企谷くんはまだ帰らないんですか?」

八幡「ちょっとこれまでのあいつの様子をまとめておこうかなと思って」

ちひろ「特に問題はなかったんでしょう?」

八幡「ええ、特に問題はなかったですね。」

確かに、問題はなかった。レッスンはともかく、ラジオも、今日の雑誌のインタビューも。
及第点はあげられるだろう。

だが・・・。






ちひろ「なにか心配なことでもあるんですか?」

八幡「いえ、なんでしょうね。なんとなく・・・」

ちひろ「まあ私より比企谷くんのほうが美嘉ちゃんのことちゃんと見てますし、美嘉ちゃんが困ってたら助けてあげてくださいね♪」

八幡「・・・善処します」

俺がこれまでやってきたのは、あいつの活動をみていただけ。
特に特別なスキルも、特別な知識もあるわけではない。

そんな俺に、何か出来るのだろうか・・・。

ちひろ「それにしても比企谷くんは真面目ですね、率先して残業なんかするなんて」


なん・・・だと・・・。

この将来の夢☆★専業主夫★☆でおなじみの比企谷八幡が、無意識のうちに残業までしてるだと・・・。
これが両親から受け継いだ社畜スキルか。お兄ちゃんスキルのように解除できないんだな。
でも、実際はなんにもしてないんだけどね♪

・・・なにもしないですめばそれが一番だけどな。


八幡「たでーまー」

小町「お兄ちゃんおかえりー。ごはんできてるよー」

八幡「おう、サンキュ」

家に帰ると、マイエンジェル小町がいつものように手料理を作って待っててくれていた。
ちなみに、美嘉にいつも妹が手料理作ってくれてんだぜーっていったら
美嘉のやつ「ぐぬぬ」って顔してたな。ざまーみろ。





小町「今日はどうだったー?」

八幡「まあ、よかったんじゃね?俺なんもしてないけど」

小町「何もしてないって・・・。それにしてもお兄ちゃんが美嘉ちゃんのプロデューサーになるなんてねー」

八幡「ほんと、何でこうなったんだろうな」

小町「この前のラジオも聞いたけど、美嘉ちゃんって可愛い声してるよねー♪」

八幡「そうかい」

小町「そうなの!毎日会えるなんて、お兄ちゃんがうらやましいなー」

八幡「・・・ところで、ラジオで美嘉が言ったことで印象に残った事とかあったか?」

小町「え、うーん、声が可愛いな~って思っただけで、内容まで覚えてないや」

八幡「・・・ふーん」



翌日。

美嘉「さー、今日もはりきっていくよー★」

こいつをはじめて見かけたあの日のように、今日もよく晴れていた。

今日はアイドルとしてはじめての撮影だ。
美嘉は、これまでよりもより自信満々な様子だった。

今日も俺いらないかな・・・。
でも、給料もらってるし、すみっこで観察だけしておこっと。


ほどなくして、撮影が開始された。

美嘉はよく似合った衣装をきて、とてもご機嫌で撮影に臨んでいる。
ふむ、やっぱり俺の思いすごしかな。

・・・・・
・・・・
・・・

カメラマン「うーん、美嘉ちゃん、ちょっとポーズ変えてみようか?」

美嘉「こ、こうですか?」

カメラマン「なんか違うな~」

美嘉「じゃあこれではどうですか?」

カメラマン「うーん・・・」

最初こそ上手くいってる感じだったが、なんか雲行きが怪しくなってきたな。
どことはいわんが、これまでも感じたように俺もなんとなく違和感を持っていた。

カメラマン「美嘉ちゃん、ちょっと休憩しよっか」

美嘉「はーい、わかりました・・・」

あまり上手くいかなかったらしく、一旦休憩となった。
美嘉は、とぼとぼとこっちにやってくる。





八幡「おう、お疲れさん」

美嘉「うーん、なんか上手くいかないねー・・・」

目に見えてしょんぼりしている美嘉。これまでの仕事がうまくいっていて、
一番自信があった撮影がうまくいかないから、当然かもしれん。

八幡「まあ見てたが、あんまりいい感じじゃなさそうだな」

美嘉「うーん、そうなんだよね・・・いつもならカメラマンさんがこう撮りたいっていうのがなんとなくわかるんだけど・・・」

八幡「・・・」

いつも、か。アイドルとしての撮影はこれが初めて。となると、その「いつも」とは読モ時代のことだろうな。





・・・なるほど。

八幡「そういうことか」

美嘉「え?」

八幡「美嘉、今お前いつもと違う、カメラマンさんがどう撮りたいかわからない、といったな」

美嘉「う、うん」

八幡「いつもと違うのは当たり前だ。これはアイドルとしての初めての撮影だからな」

美嘉「え、どういうこと?」

八幡「読モとアイドルは違うって言ってんだよ」




読モ、特にこいつの場合は、ターゲットは女子学生になるだろう。
だが、こいつもいまやアイドル。

カメラマンが撮りたいのは必然的に・・・。

八幡「お前はアイドルなんだから、カメラマンさんとしては男性目線で撮りたいだろうよ」

美嘉「・・・」

八幡「アイドルのファンにも女の子もいるだろうが、大多数は男だからな」

美嘉は、ようやく理解したらしく、すごく真剣に悩みだした。

美嘉「プロデューサー、アタシそんなの考えたことないからわかんないよ・・・どうしたらいい?」

八幡「・・・」

美嘉「どうしたら、男の子に受けるような、カメラマンさんが撮りたいような写真がとれるかな?」




八幡「なあ、美嘉」

美嘉「え、何?」

八幡「お前はどんなアイドルになりたいんだ?」

美嘉「・・・え、うーん、よくわかんないけど・・・」

八幡「ちょっと考えてみろ」

美嘉は、またしばらく考えてたようだが、しばらくして顔をあげてこう言った。

美嘉「はっきりとはしてないけど、みんなが、莉嘉が自慢できるような可愛い、かっこいいアイドルになりたいな」

八幡「じゃあ、そのままその気持ちを出せばいい」

美嘉「え、え。でも、莉嘉に自慢できても、男の子の受けとかは良くないんじゃ・・・」

八幡「そんなのどうだっていい。妹が自慢できるようなアイドルになりたいんだろ?じゃあそれが「城ヶ崎美嘉」がなりたいアイドルだ。人の目なんて気にすんな」

美嘉「・・・」

しばらく黙っていたが、やがて心を決めたようにすっきりとした顔をしてこっちを見た。

美嘉「わかった!プロデューサー、やってみる!カメラマンさんに怒られたらゴメンね★」

八幡「怒られるくらい一緒に怒られてやるさ。それくらいやんないと給料泥棒になっちまう」

美嘉「うん★」




カメラマン「美嘉ちゃん、そろそろ再開しよっかー」

美嘉「はーい!じゃ、プロデューサー、行ってくるね★」

八幡「おう」

・・・・・
・・・・
・・・

それから美嘉がとったポーズは、とても男受けするようなアイドルとは程遠い、ギャルギャルしたものばかりであった。
最初はカメラマンさんも困惑していたようだが、次第に写真を撮る熱もテンポも上がっていった。

カメラマン「いいねー美嘉ちゃん!こんな娘見たことないよ!」

美嘉「へへ、ありがとうございまーす★」

あいつは、人に合わせて、人の望むようなことを演じるのが得意だったのだろう。
特に女子向けに。

なので、ラジオでも雑誌でもある意味「模範的」な結果ばかりを出していた。
だが、そこには「アイドル」城ヶ崎美嘉としての個性はなかった。

それが、俺が感じた違和感の正体であり、ラジオでは小町の印象にも残らなかったんだろう。
だが、これで何とかうまくいきそうだな。

八幡「ふう、やれやれ・・・」

違和感が解消され、俺はほっと一息をついた。



カメラマン「はーいオッケー!美嘉ちゃんお疲れさまー!次もまた頼むよ!」

美嘉「はーい、お疲れさまでーす★」

さっきとは別人のように生き生きとした顔をして、俺のところに戻ってきた。

美嘉「ただいまー、プロデューサー★」

八幡「お疲れさん、今日は良かったな」

美嘉「お、プロデューサーが素直にほめた!明日は雨かなー」

憎まれ口をたたくくらいになったから、もう大丈夫そうだな。
と、いきなり真面目な顔になった美嘉が、

美嘉「ありがとね、プロデューサー」

八幡「い、いきなりどうした」

美嘉「アタシ、アイドルも読モも、なんとなく相手に合わせてればいいかなーと思ってた。でもそれだけじゃダメなんだね」

八幡「まあ、それでもやれることはやれるんだろうが、トップアイドルになるとかなるとやっぱり「自分」らしさがないといかんのかもな、知らんけど」

美嘉「なにそれー、でもわかったよ。これからはいつでも「城ヶ崎美嘉」でいるよ★」




ニッコリと満面の笑みで言う美嘉。やべぇ。なんか知らんがすげぇドキドキしてきた。
この空気を回避するには、どうする!

そうだ!こういうときこそ!あの話題だ!

八幡「しっかしなりたいアイドルが妹が自慢できるようなアイドルって、ほんとシスコンだな」

美嘉「なによー、プロデューサーだってシスコンじゃない!」

八幡「何度も言ってるだろ、俺の妹は世界一可愛いからシスコンになるのは仕方ないんだよ」

美嘉「ほんと怒るよ!世界一はアタシの莉嘉だって!」

さすがシスコン、まんまと策にはまりやがった。
まあ、ほんとの意味での「城ヶ崎美嘉」は実はこの姿なのかもな。

これで人気が出るのかは知らんけど。




美嘉「あ、プロデューサー、ちょっとこっち来てー★」

といって近づいて美嘉は俺の手を握って引っ張ってきた。

近い近いいい匂い近い!
手汗とかかいてないよね?

美嘉「ほら、いっくよー★」

八幡「え?」

カシャ

美嘉「はい、ツーショット写真取れた。ありがと、プロデューサー★」

・・・やっぱりこいつのほうが上手のようだ。



美嘉「へへ、プロデューサーと写真とっちゃった★」

美嘉「そうだ!莉嘉にも送ろう!」

美嘉「はい、送信っと」

・・・・・
・・・・
・・・

美嘉「ん?莉嘉からかな?んーと・・・」



美嘉「~~~~ちょっと莉嘉のやつ、なにいってんの!!!」




莉嘉『お姉ちゃん、ついにカレシとのツーショット?お似合いだねー☆』




今日も元気に楽しく仕事だ!
・・・楽しくねぇよ。

仕事を始めて約3ヵ月、やっと仕事にも慣れてきた。
最近は、仕事終わりの小町の手料理が一番の楽しみになってきている。

うわ、俺完全にリーマンじゃん。社畜じゃん。
ん、待てよ、ということは小町は奥さん?

ないな、俺は千葉のあの方とは違うんだ。そんな未来は待っていない。
ただ、世界一可愛い妹の料理が楽しみなだけだ。




八幡「おはようございまーす・・・」

美嘉「あ、プロデューサー、おっはよー★」

ちひろ「比企谷くん、おはようございます♪」

会社に着くと、もう担当アイドルの美嘉もちひろさんも来ていた。
2人とも楽しそうだな。仕事の何が楽しいのか俺にも教えてくれんかね。知りたくないけど。

八幡「しっかし美嘉、おまえ来るの早いな、今日はレッスンだけじゃなかったか?」

美嘉「あれー?プロデューサーには言ってなかったんですか?ちひろさん」

ちひろ「比企谷くんは他の作業とかもありますんで、美嘉ちゃんよりは早く来ると思ってたんで」

ん、どういうことだ?何かあんのか?

ちひろ「じゃあもうちょっとしたらお二人にお伝えしたいことがありますので、会議室に来てくださいね♪」

美嘉「ハーイ★」

八幡「わかりました」




やべぇ、新しい仕事かな・・・。それともあまりに仕事してないからクビとか?
どっちも有りうるな。できれば後者が・・・

美嘉「なんだろーねー、楽しみだねー、プロデューサー?」

いや、そんなこともないか。

笑顔で話しかけてくる美嘉。その顔は本当に楽しそうだ。
こんな顔されたら、辞めたいとか思わなくなっちゃうな。

八幡「さぁな」




ちひろ「お待たせしました」

2人で会議室に待機すること数分、ちひろさんがやってきた。
なんか資料を持ってるっぽい。まあ会議だから当たり前か。

少なくとも解雇通知とかではなさそうだな。

ちひろ「最近美嘉ちゃんすごい評価されてますよ。あの雑誌の写真から、なんか話題になっちゃって♪」

美嘉「へへへ★」

あの雑誌での撮影以後、美嘉の仕事っぷりははたから見ている俺から見てもいいものだった。
今では、一度受けた仕事は2度、3度と繰り返し打診され、最近では新規での仕事もいくつか来ている。

そのため、俺は営業回りとかよりも美嘉のスケジュール管理でいっぱいいっぱいだ。
あれ、俺プロデューサーの仕事してなくね?

ちひろ「比企谷くんも社長が評価してましたよ。「彼に美嘉くんを任せてよかった」って♪」

八幡「・・・ありがとうございます」

俺、特になんもしてねぇけどな。
美嘉が自分で頑張った結果だ。




八幡「それで、話というのは?」

仕事が溜まってるし、レッスンには付き添いたいんで、話を聞いてみることにした。

ちひろ「そうでしたね、それでは・・・」

八幡、美嘉「・・・」

ちひろ「まず、美嘉ちゃんのライブデビューが決まりました!」

美嘉「えっ、ホントに!?」

八幡「そうですか」

すっごく驚いた様子の美嘉だが、俺はたいして驚かなかった。

ちひろ「あれ、比企谷くんリアクション薄いですねー、いつもそうですが」

美嘉「ホントホント、薄ーい反応。嬉しくないの?」

リアクション薄いって・・・いつものことだろうが。
と2人が俺をじっと見ている。

はっ、もしかして俺の頭皮を見てるのか?薄いってそういうこのなのか??
ハ、ハゲちゃうわ!違うよね?



八幡「いや、正直ちょっと遅いかなと思ったんで」

美嘉「え?」

八幡「他のアイドルでも、結構早くにデビューしてる娘もいるし、それなりに結果を出してる美嘉はもっと早くてもと思いまして」

そう、このプロダクションはライブの出演は結構早い事が多い。
それらを1度させてからそこから競争、って感じなのだ。

ちひろ「さっすが比企谷くん、よく見てますね。でも、ある意味「予定通り」ですよ♪」

八幡「は?」

ちひろ「実は、美嘉ちゃんも他の娘と同じように早くにデビューさせる予定はあったんですが、社長が「しばらく彼に任せてから決めよう」とおっしゃいまして」

八幡「ということは、俺が原因で美嘉のデビューが遅れたと?」

美嘉「・・・プロデューサー・・・」

ちひろ「違いますよ。社長は美嘉ちゃんについては成長ぶりを先に見たかったんだと思いますよ、比企谷くんもね。社長、2人のこと特別扱いですからねー」

ほんとはいけないんですけどね。というちひろさん。
まぁ、ここはいいほうに受け取っておこう。

美嘉「アタシも、プロデューサーがアタシの担当で良かったよ★」

八幡「あんがとよ」

美嘉に笑顔で言われて、なんか救われた気がした。




八幡「で、デビューはいつになるんですかね?」

ちひろ「3ヵ月後の346プロの定期ライブです♪」

八幡「なるほど」

美嘉「3ヵ月後かー。楽しみだなー★」

八幡「ということは、これからライブに向けてのレッスンとなりますね」

ちひろ「はい、といっても美嘉ちゃんはこれまで基礎レッスンはやってますし、現在の仕事は継続しながら、ってなりますね♪」

なるほど、他のアイドルはデビューしてから仕事なんで基本デビューまではレッスンメインだが、
美嘉は先にそれなりに仕事をしてたのもデビューが遅れた原因か。



八幡「お話しはわかりました。その方向でスケジューリングします」

美嘉「どんな歌なのかなー。楽しみー★」

まあ自分の担当アイドルがデビューか。なんか仕事がうまくいった高揚感みたいなもんがあるな。
みんなこんな気持ちが楽しくて仕事してんのかなぁ。
と、柄にもないことを考えてしまった。

で、話もすんだことだし、美嘉と俺は席を立とうとすると・・・

ちひろ「2人とも、特に比企谷くん!まだ話終わってないですよ!」

とちひろさんに呼び止められてしまった。




えー、まだ話あるのかよー。
早く仕事したいよー。いや、したくはないけど仕事しないと帰れないからさー。

ちひろ「今までは美嘉ちゃんメインの話でしたが、これからは比企谷くんメインのお話になります」

美嘉「じゃあ、アタシは席外したほうがいい?」

ちひろ「いや、いいですよ。美嘉ちゃんに関係がないってわけではないんで♪」

俺メインで美嘉にも関係がある?なんだろう・・・。
なんか嫌な予感がするぞ。また仕事が増えるみたいな・・・。

ちひろ「ちょっと待っててくださいね。今呼んできますから♪」

といって席を立ちドアのところまでいくちひろさん。それを俺たちはぼーっとして見ていた。
な、何が起こるんだろう・・・。



美嘉「プロデューサーがメインの話か、なんだろうね?」

美嘉は、なんか期待を込めてまってるみたいだ。
なに、俺の仕事が増えるのそんなに楽しいの?

ちひろ「じゃあ、入ってください♪」

???「失礼しますっ♪」

???「こんにちはー!」

???「・・・失礼します」

ちひろさんの後ろから、3人の女の子が入ってきた。
な、なにが起こってるんだ?

ちひろ「紹介します!彼女たちが比企谷くんの新たな担当アイドルです♪」

卯月「プロデューサーさん、よろしくお願いします♪」

未央「プロデューサー、よっろしくねー!」

凛「・・・よろしく」

ファッ!?どういうこと!?


・・・・・
・・・・
・・・

ところ変わって談話室。ここに今俺と美嘉、そして新しく担当になったアイドル3人が集まってる。
俺の隣に美嘉が座り、前に3人が座ってるという感じだ。

八幡「いやー、こういっちゃなんだが美嘉のデビューとかよりよっぽどびっくりだわ」

美嘉「そうだよねー。まさかプロデューサーの担当アイドルが増えるなんてねー、意外と高評価だったんだね★」

そう、ちひろさん曰く社長はなぜか俺のことを高く評価しているらしく、
美嘉と同じタイミングでデビューする3人ユニットを、俺の担当にしたらしい。

まじかよ、美嘉ひとりようやっと慣れてきたと思った矢先に・・・。



と、3人がこっちを見ているのに気づいたので、コホンとわざとらしく咳払いをして、
3人のプロフィールを見ながら話しかけることにした。

八幡「すまん、自己紹介が遅れた。俺がプロデューサーの比企谷八幡だ。よろしく頼む」

美嘉「アタシは城ヶ崎美嘉だよー。美嘉って呼んでね★」

八幡「じゃあ、改めて自己紹介からしてもらっていいか?」

卯月「はい、島村卯月です!よろしくお願いします。これから頑張ります!!」

可愛い笑顔で宣言してくれたのは島村卯月、こいつも俺や美嘉と同い年か。

八幡「えー、島村はどうやってここに?」

卯月「はい、私アイドルになりたくてずっと養成所でレッスンしてたんですけど、そしたらここの人にスカウトされて」

八幡「なるほどなー、なんというか王道だな」

卯月「一生懸命頑張ります!よろしくお願いします♪」

八幡「おう、よろしく」

頑張るのが好きなんだなー。



未央「次は私だね。本田未央です。よろしくおねがいしまっす!」

うわー。元気な娘だなー。

八幡「それじゃ本田はどうy」

未央「346プロのオーディションを受けたら合格しちゃった!やる以上トップを目指すぞー!よろしく!」

八幡「お、おう」

すっげー元気だ。ん、しかし、こいつの出身地・・・。

八幡「お前千葉出身なの?」

未央「うん、そうだよ!あれ、もしかしてプロデューサーも?」

八幡「おう、そうだ」

なるほど、そのパーカーもなかなかいいセンスだと思ってたら、千葉県民かよ。
こいつは出世しそうだな。八幡納得。



凛「じゃあ最後は私かな。渋谷凛、よろしく」

かっこいい感じの娘だなー。というかなんか怖いなー。
なんというか罵詈雑言を浴びせられたりしそうだなー。

まあ、慣れてるけどな!
・・・ん?俺にはそんな経験ないはずだが・・・。

八幡「じゃ、じゃあ渋谷はなんでアイドルに?」

うわっ、どもっちゃった。しかたないじゃない、怖いんだもん。

凛「街を歩いてたらここの人にスカウトされて、ちょっとやってみようかなって思って」

八幡「なるほど、ありがとうございます」

凛「なんで敬語なの?」

八幡「いや、すみまs、すまん」

なるほどなー。完全に偏見だけど、ぱっと見他の2人と違って積極的にアイドルやるとか思ってなかったが、スカウトか。
しっかしよくこんな娘に話しかけられるなー。俺なら完全に事案だな。その前に話しかけれないけど。


八幡「わかった。ところで、3人は今後の予定は聞いてるか?」

俺はさっきまで知らなかったんだけどね♪
まったくこんな大事なこと直前まで黙っておくなんて・・・。ちっひーめ!
先に聞いてたら「いや、そのちょっとアレなんで」とか言ってばっくれたり断ったりとかできたのに。

・・・だから言わなかったのか。あの人、俺の扱い慣れてきたな。
わぁ、理想の上司だなー(棒)。

卯月「はい、私たち3人でユニットを組んでデビューですよね?」

八幡「ああ、そうだ、えーと、ユニット名は「ニュージェネレーションズ」だな」

未央「おお、なんかかっこいい!」

凛「で、3ヵ月後のライブにデビューだっけ?」

八幡「お、おう。そうなる。なんで3人はそれに向けてのレッスンがメインだな。まあ雑誌のインタビューとかはちょいちょい入るだろうが」

美嘉「ライブデビューアタシと同じなんだねー、一緒に頑張ろうね★」

卯月「うわー、美嘉ちゃんと同じ日にデビューなんてうれしいです。頑張ります!」

未央「でも美嘉ちゃん先輩だからな~。じゃあ美嘉ねぇって呼ぶね!」

美嘉「うん、いいよ。実際にリアルでもお姉ちゃんだしね★」

凛「ふーん、ということは弟か妹でもいるんだ?」

すると美嘉はこっちを見てニヤリと笑った後、こう言った。

美嘉「いるよー、妹!世界一可愛い★」

八幡「ちょ、待てよ!」

美嘉「なによー、プロデューサー!可愛い後輩に大事なこと教えてやってるだけじゃん!」

八幡「だからと言って嘘をつくな!一番かわいいのは俺の妹だ!」

ワーワーギャーギャー




卯月・未央・凛「「「2人ともシスコンなんだね・・・」」」



なんか恥ずかしいとこ見られちゃったなぁ。
まあ、いいか。絶対に負けられない戦いがそこにはあるからな!

なんかこの言い方すると、負けてもなんら問題ない気がするが。

八幡「ん、んん。まあこんなんでも美嘉はお前らより先輩だからな。レッスンの日はできるだけ合わせるよ」

卯月「心強いです!」

未央「美嘉ねぇ、よろしく!」

凛「よろしくね」

美嘉「よろしくー★」

こうやって、俺の担当アイドルは4人に増えた。
うーん、この先不安だ・・・。

美嘉「じゃあ早速レッスン行こうか★」

卯月「はいっ!」

未央「おっす!」

凛「うん」

といってさっさと席を立つ4人。
ちょっと美嘉ちゃん?張り切るのはいいけど俺の仕事とらないでね?
いや、とってもいいけどさ、なんか俺いらないみたいじゃん。
・・・置いてかないでよー・・・。




トレーナー「話は聞いている。これからデビューに向けてレッスンを行うから4人とも頑張れよ」

美嘉・卯月・未央・凛「「「「よろしくお願いします!」」」」

美嘉にとってはデビューが決まってはじめての、
島村たち3人は最初のレッスンとなった。

美嘉「~♪~♪」

よし、最初とはいえ3ヵ月早くやってた分美嘉はとりあえず順調だな。
あいつについては今のところ心配はなさそうだ。



他の3人は・・・。
とりあえず現状の体力やスキルについてチェックをするみたいだな。

卯月「えいっ!」

おお、島村はなんか体力的にも体の動きとしても基礎はできてるみたいだな。素人目に見ても。
まあ、これまで養成所にいたらしいから、多少は鍛えていそうだ。

未央「とおっ、あれ?」

本田はまあ、あんなもんか。今まで素人だったんだもんな。
しかし、体力はありそうだな。
鍛えればなんとかなるか。

凛「うん、こんな感じ?」

渋谷は、運動神経やリズム感がありそうだ。ぱっと見一番センスがあるように見える。
スラッとしてる分見栄えがよく見えるな。
あとは、あいつは体力が課題かな。



・・・初日のレッスンが終了し、美嘉以外の3人はさすがにしんどそうだ。
始めてだったから緊張もあったんだろうな。
何もせずに見てる俺も緊張で疲れちゃったし。

美嘉「おつかれー★ 三人とも最初にしてはいい感じじゃない?」

卯月「・・・はい、あ、ありがとうございますぅ」

未央「ふーっ、つっかれたねー」

凛「アイドルになるって大変なんだね・・・」

美嘉「まあ、最初はそんなもんだし、続けてやってればそのうち慣れるよ」

美嘉さん、友達?後輩?ができたのがうれしいのか3人を気にしているようだ。
これはあれだな、生粋のお姉ちゃん気質だな。

しかし、ますます俺いらんな・・・。もう美嘉にプロデューサーもやってもらえばいいんじゃね?



美嘉「プロデューサーもなんか言ったらー?さっきからじーっと見てるだけで、なーんも言わないでさー。不審者みたいだよ?」

凛「ふ、不審者・・・」プルプル

渋谷さん、笑いこらえてるね。そんな不審者に見える?見えるか。

八幡「最初だしこんなもんだろ。なんか困ったら美嘉を頼ればいいしな」

美嘉「こら、仕事丸投げすんな!」

卯月「あはは・・・」

未央「2人とも仲いいねー!」

美嘉「べ、べつにそんなことないし」

八幡「まあ、お疲れさん。しばらくはしんどいだろうが、無理せずやってくれ」

未央「りょーかーい!」

お前は元気だな。これから千葉に帰るのに。千葉に帰るから?

・・・これから大変そうだな。




それから1週間ほど経過し、全員大分レッスンも様になってきた。
美嘉に別の仕事があるときはそっちについていくが、基本的にはレッスンを見ていた。

俺の趣味は人間観察だからな。
度々渋谷に「不審者」とか言われてちょいちょいダメージ受けてたが。
なに、お前それ気にいったの?

美嘉「おっつかれー★ みんなよくなってきたねー!」

相変わらず姉御肌の美嘉が3人に気を使っている。

卯月「はい!美嘉ちゃんほど上手くはいかないけど、頑張ってます!」

未央「美嘉ねぇさすがだねー!私も早くうまくなりたーい!」

凛「美嘉、ほんとすごいね。私、3ヵ月でそんなにうまくなれるかな?」

3人とも美嘉ともすっかり仲良くなったみたいだ。
べ、別に羨ましくなんかないんだからね!



卯月「プロデューサーさん、どうですか?」

未央「そーそー、そろそろ褒めてもいいんじゃなーい」

凛「何も言わないと気持ち悪いよ?」

・・・一応、3人とも俺にも話しかけてくれる。プロデューサーとしては認識されているみたいだ。

八幡「まあ、3人とも上手くなったんじゃね?1週間くらいトレーニングしたみたいだ」

凛「それ、そのままじゃない?」

美嘉「相変わらずテキトーだねー★」

八幡「うるせ。じゃあ俺は事務所に戻るが、お前らは直帰でもいいぞ」

社畜は社畜らしく律儀に帰社することにした。

未央「じゃあ、私たちは帰るねー!お疲れ様!」

卯月・凛「「お疲れ様(です)」」

カエリニフライドチキンタベヨッカ!
ミオチャン、ソレバッカリデスネ
フトルヨ?
ムー、シブリンヒドイ!シマムー、ナントカイッテヨ!
エ、ガ、ガンバリマス!
ワイワイ



・・・3人とも帰りにどっかよって行くみたいだ。
まあ、ユニット組むんだし、仲がいい事に越したことはないか。
しっかしいっつも一緒だな。

八幡「・・・」

美嘉「じゃあアタシも事務所にもどろっかなー★」

八幡「は?お前事務所になんか用事あったっけ?」

美嘉「ううん、アタシはないけど、プロデューサーがなんかちょっと困ってそうだから。相談に乗ってあげるよ★」

マジか・・・。ちょっと気になってた程度なのに、気づかれていたか。
こいつ、俺みたいなぼっちにも気が使えんのか。

美嘉「それなりに付き合い長いからねー、なんとなくわかるよ★」

八幡「はぁ、わかった。ちひろさんあたりに相談しようかと思ってたが、よろしく頼む」

美嘉「オッケー★」


ちひろ「あら?比企谷くん、美嘉ちゃん。おかえりなさい♪」

八幡「お疲れ様です」

美嘉「ただいま帰りましたー★」

ちひろ「あの3人は直帰ですか?」

八幡「はい」

ちひろ「でも、美嘉ちゃんは帰らなかったんですね?」

美嘉「プロデューサーがちひろさんとアタシに相談があるらしいから、戻ってきたんだ」

いや、そんな大したもんじゃないんだが・・・。

ちひろ「比企谷くんが相談?なんですか?」

八幡「・・・じゃあ、2人ともちょっといいですか?」



美嘉「・・・ふーん、なるほどねー」

ちひろ「あの3人がいつも一緒にいるので、1人1人の考えがわからないってことですか?」

八幡「まあそんなとこっすね」

美嘉「でも、それってなにか困るの?3人はユニットなんだし、3人で上手くいってるみたいだしそれでいいんじゃない?」

八幡「それはそうなんだがな。だが、今後あいつらが何かあった時、その原因が全て同じとは限らないからな」

ちひろ「そうですね。デビューまでは3人一緒でも、それからずっと3人とは限りませんし、知っていて損はないと思います」

美嘉「ふーん、そんなもんなんだー」

ちひろ「でも、例えば1人ずつ面談するとか、それくらいの時間はあるんじゃないですか?」

八幡「まあ、それでもいいんですが、あんまり切羽詰まってもないし、面談とか言って変にかしこまられても困るし」

ちひろ「それもそうですねー。しかし比企谷くん、色々考えてるのはいいですがなんかめんどくさいですね♪」

知ってるよ。普通にコミュ力があれば、こんなことで悩んでねぇよ。
コミュ障なめんな。



美嘉「じゃあさ、3人と1人ずつ、どっかに出かけてみれば?」

は?なにいってんだコイツ。さっきコミュ障っていったばっかじゃねえか(心の声で)。

美嘉「3人とも、プロデューサーともっと仲良くなりたいって言ってたし、ちょうどいいじゃん★」

ちひろ「いいかもしれませんね。まだ3人とも本格的にアイドル活動してないですし、一緒にお出かけしても問題なさそうです」

八幡「いや、でも・・・」

え、あいつらと出かける?2人きりで?しかも3回?
いや無理、無理だから。

美嘉「ええーい、うじうじしないの!じゃあ次の3連休ね!今からメールしてみるから!」

え、ウジ虫?カエルとか言われたことはあるけど、ウジ虫は酷いんじゃないですかね・・・。
というか、俺の3連休は?ねえ、俺の休みは?
とか俺がうじうじしてる間に、美嘉はメールを送り終えたらしい。



ピロリン

美嘉「あ、返事来たー★」

さすがにここまで来るとどんな返事が来るのかドキドキしてきた。
なんか、複雑だな。断られるのも傷つくし、かといってOKされても休みがなくなる。

ちひろ「どうだったんですか?」

美嘉「3人ともOKらしいよー。みんなプロデューサーの都合にあわせるって!よかったね。プロデューサー★」

八幡「そうか。まぁ、しゃあないな・・・」

美嘉「しゃあないって何よー!3人とも仲良くしてよね!じゃあ卯月、未央、凛の順で返事しとくからね!」

八幡「いや、俺も連絡先くらい知ってるし、それぐらいするから・・・」

美嘉「はい、送信完了★」

美嘉さん、最近俺の話ますます聞かなくなってきたね。
まあ、いいか。これを機会にちょっと聞いてみるのも悪くないか。
でも、わざわざ連休じゃなくてもよかったんじゃないですかね?

ちひろ「美嘉ちゃんみたいに、3人とももっと仲良くなってくださいね♪」

八幡「・・・善処します」



美嘉「じゃ、3人が恥ずかしくないように、プロデューサーの服買いにいこっか。アタシが見立ててあげる★」

八幡「えぇ・・・」

美嘉「いいじゃん。お給料もらっても使い道ないって言ってたでしょ。アタシにどーんと任せなさい!」

ちひろ「美嘉ちゃん、一応ちょっとは変装していってくださいね?」

美嘉「帽子とメガネくらいはつけますよ!大丈夫です★」

ちひろ「じゃあ問題ないですね♪」

いや、いいんかい。美嘉は多少は有名になったんじゃないんかい。

美嘉「うーん、まずはどこにいこっかなー★」ワクワク



なんか楽しそうだな。
と、ちひろさんが近づいてきて俺に耳打ちしてきた。

ちひろ「美嘉ちゃんもちゃんと気にかけてやってくださいね♪」ボソッ

八幡「はぁ。わかりましたよ。担当アイドルですしね」

美嘉「じゃあいっくよー、プロデューサー★」

ちひろ「はい、いってらっしゃい。比企谷くん、お疲れ様です♪」

八幡「お疲れ様っす・・・」

ホラ、キビキビアルク!
チョッ!ヒッパルナッテ!

ちひろ「・・・ふふ、心配なさそうですね♪」


・・・連休がやってきた。
晴天、お出かけ日和である。
個人的にはひきこもり日和なんだが。

今日は、島村と会う約束になっている。
着ている服は、美嘉に選んでもらったものだ。

なんか恥ずかしいが、美嘉に「着ていかなかったら承知しないからね!」といわれたので
明確な上下関係が出来上がってる俺はもちろん言いなりになっている。




ワイワイ
ガヤガヤ
ユッキノーン!ハヤクハヤクー!
チョットユイガハマサンマッテ!

待ち合わせの場所に10分前くらいに行ってみると、すでに島村は来ているようだ。
ふとこっちを見、笑顔で近づいてきた。

卯月「おはようございます。プロデューサーさん♪」

八幡「おう、せっかくの休日なのに呼びだして悪かったな」

卯月「いえ、楽しみにしてました!」

満面の笑顔で答える島村。しっかしこいつは、天然であざといな。
俺みたいなひねくれ者でも、全く嘘だと思えない。

と、島村は俺の全身を見渡すと、さも面白いものを見たという顔をしている。

八幡「え、え、なんか変?」

卯月「いえ、美嘉ちゃんが言った通りの服装だったんで。似合ってますよ♪」

くそっ、美嘉のやつこいつらに言いふらしてやがったのか。
なんか無性に恥ずかしくなってきた。もう帰ろっかな。



卯月「それじゃ、行きましょう、プロデューサーさん!」

八幡「お、おう」

すごく張り切っている島村に従い、後を大和撫子のごとくついていく。
自分で呼び出しておいて、計画は相手に丸投げである。

八幡「で、まあ昼飯のあとにでも話はするとして、それまでなんか考えてるか?」

卯月「えっと、この前美嘉ちゃんがプロデューサーさんとお洋服を買いに行ったのを楽しそうに話してたんで、とりあえずお買いものに行こうかと」

八幡「ほーん、なんか欲しいもんでもあんのか?」

卯月「いえ、そういうわけではないんですけど・・・。いけませんか?」

八幡「いや、いいんじゃね?適当にぶらついてみるか」

卯月「はい♪」


雑貨屋とかを楽しそうに見て回る島村。そこでふと思いついたことを聞いてみる。

八幡「なあ」

卯月「はい、なんですか?」

八幡「島村って普段どんなことしてんだ?」

卯月「えっと、これといったものはないんですけど・・・。あ、でもお友達とお電話とかはよくしますよ!」

友達と電話?なにそれ、そんな経験ないからどういうものかわかんない。
俺は、未知の恐怖に恐れおののきながら続きを聞いてみる。

八幡「俺はそんなことしたことないからわからんが・・・。よく電話するってそんな話することあるんか?」

卯月「えっと、特にないんですよね。ただ意味もなく話しているというか・・・」

なるほど、教室とかでウェイウェイとか意味の分かんないことをいってるリア充(笑)みたいなもんか。
でも、こいつは愛想もいいし友達とか多そうだな。



卯月「そういうプロデューサーさんはお休みの日とかなにしてるんですか?」

八幡「アニメ見る、ゲームする、本を読む、妹の手料理を食べる、以上」

卯月「あ、あはは・・・」

なんか困り笑いをしている。まあ、多少は引くだろうな。
でも、「キモい」とか言わないだけこいつはやさしい気がする。

そんな話をしながら、なんとなく島村という人間について考えていた。



その後、色々ぶらついた後、昼食を食べ、喫茶店に入った。
意識高い系のオサレな人間がMacbook片手に行くような某チェーン店ではなく、ちょっと古めの喫茶店である。

客もまばらで、静かな読書とかに持ってこいの場所だ。

八幡「それじゃ、ちょっと話を聞かせてもらうぞ」

卯月「よ、よろしくお願いします!」

あからさまに緊張する島村。おい、それじゃせっかくこんなとこまで来た意味がねぇ。

八幡「そんなに緊張すんな。ペッパーくんと話すみたいに気楽な感じで頼む」

まあ俺はあそこまでコミュ力高くないけどね!
会話のキャッチボールできるとか、尊敬しちゃう!

卯月「あはは、そっちのほうが緊張しちゃいますよ」

俺のしょーもないボケでも、多少は緊張は和らいだらしい。



八幡「というか、大したことは聞かんしな。ちょっと、お前が何を思ってアイドルをしてるのか、したいのか聞きたいだけだ」

卯月「何を思って、ですか?」

八幡「ああ、元々どんなアイドルになりたいとかそんなことをな」

卯月「そうですね・・・」

軽い感じで聞いてみても、島村は真剣に考え出す。
それだけ真面目にアイドルのことを考えているんだろう。

八幡「・・・」

俺はコーヒーに砂糖とミルクをどばどば入れながら回答を待つ。

卯月「・・・わからないです」

八幡「え?」

卯月「アイドルにはなりたいってずっと思ってました。でも、どんなアイドルかといわれると、わからないです・・・」

明らかにしょぼくれる島村。俺の質問に答えられなかったことがよっぽど響いたらしい。
そんな大層なことを聞きたかったわけでもないんだけどな。



八幡「悪い、じゃあ質問を変えるわ。お前、今のレッスンは楽しいか?」

卯月「はい!未央ちゃんと凛ちゃんと一緒にレッスンして、美嘉ちゃんに色々教えてもらって、とっても楽しいです!」

八幡「そうか、わかった。じゃあ今ん所はそれでいいわ」

卯月「え、でも私、どんなアイドルになりたいとかないのに・・・」

八幡「最初っからそんな立派な意見もってるやつのほうが珍しいよ。お前はアイドルにあこがれて始めたんだろうが、最初はそんなもんだろう」

それに・・・。

八幡「俺から見てもお前は楽しそうにやってるしな。アイドルをやりながら、やりたいことをおいおい見つけていってもいいだろ」

卯月「プロデューサーさん・・・」

と、島村はしばらくうつむいていたが、弱々しい声で話をしだした。

卯月「私、迷惑じゃないですかね・・・」

八幡「は?」




なんか話が飛んだな・・・。こいつはこいつで色々悩んでんのかな。

卯月「私、これでも養成所で練習してきたんですが、もう未央ちゃんや凛ちゃんは同じくらい、ううん、私以上に上手だし・・・」

あ、なんか弱気モードに入ったな。

卯月「未央ちゃんは明るく元気でリーダーシップがあるし、凛ちゃんはスラっとしてすっごくかっこいいし、私、釣り合ってないんじゃないかって・・・」

傍から見るとそんなでもないがな。ある意味ないものねだりだな。
それに、こいつはこいつの良さがあるだろう。


八幡「まあ確かに本田や渋谷とは違うな。でもそれでいいだろ」

卯月「え?」

八幡「俺が見ている限り、一番笑顔で楽しそうにレッスンしているのはお前だ。それに、あの2人もそんなお前の笑顔に引っ張られてると思うぞ」

卯月「プロデューサーさん・・・」

八幡「それに、お前はあの2人と違ってわがままとか言わないからなー。俺としては非常に助かる」

八幡「あえて言えば、もうちょっとわがまま言ってもいいんだぞ?あの2人にも、美嘉にも、俺にも。なんか気になったことややりたいことがあったら、いつでも聞いてやるよ」

卯月「プロデューサーさん・・・。ありがとうございます♪」

と、満面の笑顔を浮かべる島村。うん、こいつは楽しそうにしてるのが一番いいな。天然であざと可愛い。

八幡「そうだ、お前は落ち込んでる顔は似合わんよ」




卯月「えへへ。プロデューサーさんやっぱりやさしいですね」

八幡「は?俺のどこ見たらそんな感想になんの?」

卯月「今も私を励ましてくれたし、それにプロデューサーさんいないところで美嘉ちゃんいっつもプロデューサーさんの話ばっかりしてますよ!ああ見えて意外とやさしいし頼りになるって!」

マジか。あいつ人のいないとこで好き勝手いってんな。
それに、意外とは余計だっつーの。

八幡「まあ、美嘉の言うとおり頼りになるとは思えんが、俺ができる範囲のことはなんとかするぞ」

卯月「じゃあ、あの、プロデューサーさん、せっかくなんてひとつわがまま聞いてもらっていいですか?」

八幡「え、まあ、言いだしっぺは俺だし、俺でできることなら・・・」

卯月「じゃあ、これからは「卯月」って呼んでください!」

八幡「え、え、なんで?」

卯月「だって美嘉ちゃんは下の名前でよんでてプロデューサーさんとすっごく仲がいいから、うらやましくって・・・。ダメですか?」

しまむらのあざとい上目づかいがさく裂した!はちまんは大ダメージを受けた!
・・・はぁ、まあそれくらいいっか。

八幡「わかったよ、卯月。これでいいか」

卯月「はい!ありがとうございます♪」

俺に名前で呼ばれたくらいで、今日一番の笑顔を見せる島む・・・卯月。
うん、やっぱりこいつが一番アイドル向きな気がしてきた。天然でこんな表情出せるんだからな。




卯月「今日は色々お話し聞いてくれてありがとうございました。とっても楽しかったです♪」

八幡「おう、まあこれからもよろしくな」

卯月「はい、よろしくお願いします!私、もっと頑張ります!」

まーた頑張るのか・・・。ちょっと釘さしとくか。

八幡「あんまり頑張りすぎんでいいぞ。頑張りすぎて無理して体調崩したりしたら元も子もないからな」

卯月「あ、えへへ、そうですね・・・。じゃあ頑張りすぎないよう頑張ります!」

八幡「おい・・・」

卯月「あ、え、あわわ・・・」

自分で何を言ってるのかわからなくなったらしく、目をぐるぐる回す卯月。
こいつ、やっぱ天然だな。

八幡「まあ、それでいいや。じゃあな。今日はありがとな」

卯月「はい、ありがとうございました♪未央ちゃんや凛ちゃんも、よろしくお願いします!」

そうか、あと2人いるのか・・・。
最後に現実を突きつけてくれてありがとう。



翌日。
今日もいい天気だ。引きこもり日和だ。
しかし今日も外出だ・・・。

あ、もちろん服は美嘉のいいなりね。


ワイワイ
ガヤガヤ
キャハハハ
ウェーイウェーイ
クッコレガワカサカ

待ち合わせの場所に時間前に行くと、すでに本田が来ているのが見えた。
卯月といいそんなに俺と出かけるのがうれしいの?勘違いしちゃうよ?




未央「あーっ!プロデューサー、こっちこっちーっ!」

俺を見つけた本田がぶんぶんと手を振って大声で俺に声をかける。
ちょっ、そんなプロデューサーとか大きな声で言わないで!周りの視線が痛い!

八幡「おい、本田!そんな大きな声で呼ぶな!周りの視線が痛い!」

未央「あ、ごめんごめん」

まったく謝る気ねぇな、こいつ。
まあそんな奴だからいいけど。

そんな本田は、昨日の卯月のように俺の格好をジロジロ見てる。
ああ、またか。

未央「さっすが美嘉ねぇ!すごくカッコいいね!服が!」

服かよ・・・。
まあ知ってるからいいけどさ。




未央「じゃあそろそろ行こっか!」

元気いっぱいにそういう本田。もう行くところは決めてるみたいだな。

八幡「おう、ちなみにどこに行くんだ?」

未央「うん、あそこ!」

と本田が指差した先はアミューズメントパーク。

未央「プロデューサー、あそこで勝負だ!」

なるほど、本田らしいな。リア充(笑)の巣窟みたいな場所だ。
俺、溶けてなくなるかもな。


未央「うーん、どれで勝負しよっかなー」キョロキョロ

せわしなく視線を動かす本田。
しっかし、毎日のようにレッスンしているのに、休みでも体を動かすのか。
なんでそんなに元気なの?

未央「あ、これにしよう!」

と本田が決めたのは意外にも卓球。

八幡「まあいいけど、なんで卓球?」

未央「なんかプロデューサーって、卓球似合いそうじゃん♪」

八幡「お、おう、そうか・・・」

なんかリアクションに困る回答であった。
しかし、卓球なら俺のお兄ちゃんスキルで接待プレイも可能だな。



未央「よーし、いくぞー、プロデューサー!」

と威勢のいい声をあげて、思いっきり振りかぶってラケットを振った。
もちろんホームラン。接待プレイなんかできやしねぇ・・・。

未央「あちゃー、失敗失敗!」

ほんっと元気だな。コイツ。

未央「じゃあ、もう一度、えい!」

今度は普通に打ってきた。できるんなら最初からやれよ。

八幡「ほい」

未央「とりゃ!」

やる気のない声と元気な声の応酬で、ラリーが続く。
やっぱこいつは運動神経がいいな。




八幡「はあ、はあ・・・」

未央「プロデューサー、もうへばったのー?」

八幡「そりゃへばるわ、引きこもりの体力舐めんな・・・」

未央「まあいいか、楽しかったし!プロデューサー、もっと運動しないとだめだよー」

八幡「うーい・・・」

まだまだ元気が有り余ってる本田。ホントすげえなこいつ。これくらい体力ないとリア充(笑)にはなれないんだな。
はあ、つっかれた・・・。


その後、なぜか本田と昼飯にラーメンを食べ、昨日のように喫茶店に来ていた。
うぅ、運動のあとにラーメンとか、吐きそう・・・。

未央「ぶーっ、プロデューサーにはショッピングにも付き合ってもらおうと思ってたのに!」

八幡「勘弁してくれ・・・」

机に突っ伏しながら答える俺。

未央「ま、それは今度でいっか。で、プロデューサー、話って何?」

切り替えはえぇな。コイツ。しかも、卯月のときみたいに緊張とかしてないし。

八幡「まあ、そんな大したことはない。ちょっと2人で話してみたかっただけだ」

未央「やだー、プロデューサー口説いてるのー、困るー♪」

八幡「・・・」

未央「・・・ごめんなさい」

八幡「まあ、その、今後俺がプロデュースするうえでな、お前がどんなアイドルになりたいのかなーって」

未央「え、しまむーやしぶりんとド派手にデビューだ!とか?」

八幡「いや、今はそれでいいんだが、将来的に「お前自身は」どんなアイドルになりたいんだ?」

未央「むむむ・・・なるほど」



ようやく黙って考え出した本田。あんまり深くは考えてなかったようだ。

未央「うーん、元気にトップアイドルを目指すって感じかな?」

八幡「うん、ずいぶんざっくりしてんな。お前らしいが」

未央「私らしいってなによ!」

八幡「いいんじゃね。自分のキャラをわかってて、その道を貫くって感じだな」

未央「と、いうと?」

あれ、こいつ自分で言っててわかってない?

八幡「だから、お前のままやかましいくらい元気なアイドルを目指すってことだろ」

未央「やかましいって何!?でもそんな感じかな?」

じゃあいいや。こいつは見た目そのまんまだな。



と、本田はなぜかしょぼーんとしだした。あれ、昨日も見たぞこの光景・・・。

未央「やっぱりうるさいかなー、私・・・」

八幡「いきなりどうした」

未央「いや、私うるさいだけじゃん。しまむーはにこにこ笑顔でかわいいアイドルって感じだし、しぶりんはかっこよくてクールなアイドルって感じだし」

未央「私さわがしくして二人の迷惑になったりするんじゃないかって・・・」

こいつもか。しっかしこいつらはホントに優しいな。相手の心配ばっかりしやがって。

八幡「まあ、お前から騒がしさを取ったら何も残らんしな。バランス取れてていいと思うぞ」

未央「そうかな」

八幡「それに、お前が卯月みたいににこにこ笑ってるだけだったり、渋谷みたいに澄ました顔している姿、想像できるか?」

未央「想像できないなぁ・・・」

八幡「だろ?お前は多少脱線しようと元気にいつもどおりしてればいいんだよ」

八幡「脱線して問題起きたら一緒に土下座位してやるさ。それくらいはプロデューサーとしてやってやる」

未央「土下座って・・・。でもそういってくれてうれしいな!ちゃんと見てくれてたんだね!やっぱ美嘉ねぇの言ったとおりだ!」




まーた美嘉がいらんこと吹聴して回ってんのか。
あいつ、俺のいないところでホント何言ってんの?俺のこと好きなの?

八幡「人間観察が俺の趣味であり特技だからな。特に本田はさわがしいから目につくし」

未央「なにそれ!っていうかなんでしまむーだけ下の名前で呼んでるの?ずるい!私も未央って呼んで!」

八幡「えぇ・・・」

未央「なんかプロデューサー、前々から思ってたけどしまむーには甘いよねー」

だってお前騒がしくて著しくライフが削られるし、渋谷は怖くてライフが削られるし。
消去法で一番ライフが削られない卯月に甘くなるんだよ。



未央「美嘉ねぇに言いつけよっかなー。プロデューサーひいきしてるって」

八幡「未央さんすいませんゆるしてください」

あいつに言うのは勘弁してくれ。今あいつこいつらに対してお姉ちゃんモード全開なんだから、普通に怒られそうだ。
お姉ちゃんモードのあいつが一番怖いんだぞ。シスコンだし。

未央「よっし!特別に許そう!でも、これでしぶりんがどう出るか楽しみだなー!」

八幡「?」

未央「まあこっちの話。じゃあ、これからもよろしくね!プロデューサー♪」

八幡「おう」

ふう、2人目終了。まあこいつは思った通りということで、一安心だな。

未央「一緒にショッピング、忘れないでねー♪」

・・・覚えてたんかよ。




ワイワイ
ガヤガヤ
ロジカルシンキングデロンリテキニ・・・
ソレアルー!

翌日、待ち合わせの場所に行くと、遠目からでも渋谷が待っているのがわかる。
実は、今日が一番緊張してんだよな・・・。

卯月はぽわぽわしてるのであまり緊張しないし、未央は向こうから話しかけてくるので
その相手だけをしてればいい。

しかし、渋谷は自分から積極的に話しかけるわけでもないし、正直話しかけにくい。
いや、俺は誰でも話しかけにくいけどね?

まあ、それを改善するための今日でもあるんだ。
社畜根性をみなぎらせ、俺は渋谷に近づいていった。




凛「あ、プロデューサー、やっと来た」

八幡「あ、いや、遅れてすまん」

凛「いや、遅れてはないけど?」

八幡「あ、その、すまん」

凛「・・・」

あちゃー、なんかつい謝っちゃうぜ。我ながら卑屈だな。

凛「ま、いっか。それじゃ行こっか」

と言って、スタスタ歩いていく渋谷。あれ、怒っちゃった?ゴメンね?
と心の中で謝りながら、渋谷についていった。


渋谷と来たのはとある公園。なんか花とかいっぱい咲いてんな。

凛「・・・」テクテク

八幡「・・・」トボトボ

無言で歩く2人。なんか俺の歩く擬音おかしくね?
すると、渋谷がこっちをちらりと見て、クスッと笑った。

八幡「ん、なんだ?」

「ふーん、いいじゃん。美嘉にちゃんと感謝しなよ?」

まーた服の話か・・・。しっかし、どいつもこいつも美嘉ばっかり褒めやがって・・・。
しかし、美嘉の選んだ服のおかげで話のきっかけがつかめたな。今日ばっかりは感謝しておこう。



八幡「ところで、この公園で何するんだ?」

凛「え?散歩だけど?」

まあ昨日みたいにリア充の巣窟に行くよりはいいが。

八幡「なんか意外だな。もっと騒がしいところが好きなんかと思ってたぞ」

凛「私、実家が花屋だしね。なんか花を見ると落ち着くんだ」

八幡「そういや、プロフィールにもそんなこと書いてあったな・・・」

凛「うん、それにね、いっつもハナコの散歩してるから、こんなところで散歩するのも好きなんだ」

なんかうれしそうに話す渋谷。それはレッスンのときに見られた、ちょっと張りつめた雰囲気ではなかった。
なんだ、こいつもこんな普通に笑うんだな・・・。




八幡「ハナコ?犬でも飼ってんのか?」

凛「うん。とってもかわいいよ?」

と言ってすぐに携帯を取り出し写真を見せる。確かにかわいいな。親バカになるのもうなずける。

八幡「ほーん、かわいいな」

凛「プロデューサーにしては素直に褒めるね。動物にはやさしいんだね」

八幡「動物は言葉をしゃべらないからな。俺でもギリコミュニケーションがとれるんだよ」

凛「ふふ、なにそれ」

しばらく、ハナコの話やうちで飼っているカマクラの話で盛り上がる。
やっぱり、動物は偉大だな。



ちょっとオサレなレストランで昼食を食べた後、これまでと同じように喫茶店に入る。
というか渋谷さん、あんまりごはん食べないんだね。ただでさえ細いんだから、もっと食べないと。

というわけで、喫茶店でもデザートぐらい食わないかと思いそれとなく聞いてみた。

八幡「お前、さっきもあんまり食べてなかったし、なんか甘いもんでも頼むか?」

すると、渋谷はややうつむいて、

凛「男の人と2人で出かけることってなかったから、なんだか緊張しちゃって食欲ないんだよね・・・」アハハ

・・・こいつ、やりおるな。
見事なカウンターパンチを食らった俺が盛大にパニくることになった。

八幡「しょ、しょうか・・・。」

凛「急にどうしたの?気持ち悪いよ?」

うん、そうだね。俺もそう思いました。




凛「それで、プロデューサーの話って?」

八幡「あー、それな・・・」

凛「?」

正直こいつは他の2人とは違って、あんまり聞きたいとも思ってなかった。
あいつらみたいにアイドルになろうと思ってたわけではなく、スカウトされたから入った。

つまり、たぶんなんとなくアイドルになったんだろう。

それに、こいつに関してはとりあえずコミュニケーションがとれるようになるという他の2人よりは
今日の目標のハードルが低かったので正直それが達せられた現在はもう特に聞かなくてもいいかなと思っていた。

まあ、でもせっかくだしな。




八幡「まあ、他の2人にも聞いたんだがな。渋谷、お前はどんなアイドルになりたいんだ?」

凛「そんなこと聞いてたんだ。うーん、でも私、まだアイドルになったばっかりだし、あんまり詳しくもないし、よくわかんないかな」

八幡「まあ、そうだよな」

凛「今は、卯月や未央と、それに美嘉とも一緒にレッスンしているのが楽しいって感じかな。部活っぽい感じ?」

八幡「お前らを見てればそんな感じもするな」

美嘉だけは多少アイドルの経験もあるし、読モの経験もあるからなんといいうかプロ感は漂っているがな。


そこで、ふと真面目な顔になった凛が、俺に聞いてくる。

凛「ねえ、プロデューサー」

八幡「なんだ?」

凛「でもさ、卯月は養成所とかに通ってなりたかった念願のアイドルになって張り切ってやっている」

八幡「そうだな」

凛「未央も、自分からオーディションを受けてアイドルに、とポジティブに頑張っている」

八幡「おう」

凛「でも私はスカウトされてなんとなくアイドルになって、それで部活っぽくて楽しいからやっている。それでいいのかな?」

こいつも根は真面目なんだな。まあ逆に他の2人より薄い動機であれだけ頑張れてるんだから、
ある意味一番真面目だともいえる。



八幡「まあ、いいさ。部活っぽくてもなんでも。楽しんでやれてるんだし、誰も損してないし」

凛「え?でも私だけなんか不純じゃないかな?」

八幡「それを言うなら俺のほうがもっと不純だ。自分の意思ではなく、妹の命令でやってるんだからな」

凛「最初は、でしょ?今は違うんじゃない?」

八幡「うっせ」

痛いところを突いてきやがる。確かに、休日を返上してまでアイドルのことを気にかけるなんて、
3ヵ月前の俺には考えられなかった。

八幡「まあ、俺と一緒にされても嫌だろうが、俺でも多少心境の変化はあったんだ。お前にもあるだろ」

凛「そうかな?」

八幡「俺はお前もレッスンを見ているが、少なくともやる気や頑張りは2人に負けてるとは思わん。今一生懸命やれば、そのうちやりたいことも見えるかもしれんだろ」

凛「・・・ふふ、プロデューサーってホントよく見てるね。美嘉が言った通りだ」

八幡「まあお前を見すぎると不審者呼ばわりされるがな。まあ、卯月や未央、もちろん美嘉も見てるぞ。見るだけでなにもしとらんが」

凛「え?」

八幡「ん?」

凛「・・・」

八幡「渋谷?」




あれ、俺なんかやらかした?渋谷は一瞬キョトンとした後、なんか不機嫌になってきた。

凛「・・・」ムスッ

ほら、なんかムスッとか聞こえるし。
とりあえず土下座か?ジャンピング土下座?フライング土下座?

八幡「あー、なんか気の障ることを言ったのなら謝るが・・・」

凛「名前」

八幡「え?」

凛「私だけ名前じゃない」

あー、そういうことか。未央のやつ、これを面白がってたんだな・・。
こいつもか。なんか今までで一番緊張するな・・・。

八幡「・・・わかったよ、凛。これでいいか?」

凛「うん!これからも私のこともちゃんと見ててね」

八幡「・・・おう」

ふう、何とか噛まずにいえたか。
しっかし、実はこいつが一番子供っぽいのかもな。





凛「じゃあ、甘いものでも食べよっかな。プロデューサーのおごりで。チョコレートケーキがいいかな」

ご機嫌になった凛は、そんなことを言い出した。
俺もちょっと調子に乗ってみるかな。

八幡「あんまり食べると太るぞ」

凛「なんか言った?」ギロリ

八幡「ななな、なんでもありましぇん・・・」

やっぱこえーよ、こいつ・・・。



翌日。
もう当たり前のように仕事に向かうと、すでにちひろさんが来ていた。
この人、ほんと社畜の鏡だな。

八幡「おはようございます・・・」

ちひろ「あ、比企谷くん、おはようございます♪ どうでしたか?」

さっそくかい。まあ、でもちひろさんには相談にのってもらったしな。
報告する義務はあるだろう。

八幡「・・・そうですね・・・」


・・・・・
・・・・
・・・


ちひろ「はーっ、なるほどですねー。まあ、結果的に仲良くなれたようですしよかったじゃないですか」

八幡「まあ、仲が良くなったかは経験がないのでわかりませんが、普通に話せるレベルには進歩しました」

ちひろ「で、比企谷くん的にはアイドルとしてやっていけると思います?」

八幡「まあ、あいつらはあれで個性的ですからね。素の自分を出していけば大丈夫じゃないっすかね」

正直、あいつらは猫を被るとかできんだろう。なら、素の自分で最初からそうすればいい。
美嘉だって今やそうだしな。

美嘉「おっはよー★」

そうこうしていると、美嘉がやってきた。

美嘉「ねえねえ、プロデューサー、どうだった?」

なんかうれしそうに聞いてくる美嘉。うーん、なんか正直に答えるのも癪だなー。

八幡「まあ、普通だった」

美嘉「いや、普通とか意味分かんないから!いいよ、3人に聞くから!」

八幡「おう、そうしてくれ」



そう言って3人が来るのを待つ美嘉。しっかし・・・。

ちひろ「美嘉ちゃん、本当にお姉ちゃんみたいですね」

八幡「そうっすね。でも、あいつも今回が初ライブなんですよね。人の心配してばっかなのもどうかと・・・」

ちひろ「ふふ、やっぱり比企谷くんが一番お兄ちゃんですね♪」

えぇ・・・。妹は小町だけで十分だよ?
お兄ちゃんスキルがオート発動するだけだよ?

卯月・未央・凛「「「おはようございまーす!」」」

美嘉「あ、来た。おっはよー★ ねね、プロデューサー、どうだった?」

未央「それがねー!」

凛「・・・プロデューサー、あんな人だったんだね」

ワイワイ
キャッキャッ

まあ、でも、確かに妹を見るような感覚にはなるな・・・。
今回の件といい、俺無駄に心配しすぎかもな。

ちひろ「がんばってくださいね?お兄ちゃん♪」

いや、俺断じてあなたのお兄ちゃんではないから。



卯月「プロデューサーさん、今のダンスどうでしたか?」

八幡「おう、いい感じだぞ」

未央「プロデューサー、ちょっと見ててねーっ。とりゃ!!」

八幡「おーすごい、そんなこともできるようになったんだなー」

凛「プロデューサー、ちょっといい?ここ、こんな感じかな?」

八幡「ああ、そんなもんじゃね?」

それからというもの、レッスンの際でも事務所にいても、3人は俺にまとわりついてきた。
なんか懐かれたみたいだが、俺、回答雑すぎじゃね?


そんなやり取りをして3人がレッスンに戻った後、今度は美嘉がやってきた。

美嘉「あっはは!プロデューサー、ホント懐かれたねー★」

八幡「そうだな。大変だな」

美嘉「アタシにまで雑な返事しなくていいから!」

やっぱり、雑って気づいた?というか・・・。

八幡「だってよー。俺、ダンスとか歌とか上手くなったとか、そういうのほんとなんとなくしかわからんし」

美嘉「それでも「すっごい良くなったね!可愛いよ!」とか言ってほしいんだよ★」

うわー。俺がそんなうすら寒い歯の浮くようなセリフを言うの?
っていうか・・・。

八幡「俺がそんなこと言っても気持ち悪いだけだろ」

美嘉「そうだね★」

そうなんかい。わかってて言ったんかい。

美嘉「でも、やっぱり褒めてほしいのはほんとじゃないかな」

八幡「そうか。善処するわ。ところで美嘉・・・」

美嘉「ん?」

八幡「・・・お前、最近ずいぶん、その、可愛くなったな。いい感じだぞ。ダンスも歌も」

美嘉「・・・ちょっと!!!いきなり何言ってんの!!!もう練習に戻る!!!」ダッ

行っちまった・・・。

ほーら、俺が褒めると怒るじゃん。
いうの恥ずかしかったんだからね?


美嘉「プロデューサーが、可愛いって・・・」エヘヘ

卯月「美嘉ちゃん、なにかいいことあったんですか?」

未央「なんかにやにやしてるね!」

凛「あんまりにやけてると、プロデューサーみたいに不審者と間違えられるよ?」

美嘉「え、ええ?い、いや、プロデューサーに可愛いと言われたとか全然そんなことないし!」

卯月・未央・凛「「「・・・」」」





卯月「へぇー」
未央「プロデューサーに」
凛「可愛いっていわれたんだ・・・」

卯月・未央・凛「「「・・・」」」ジロリ

>ちひろ「がんばってくださいね?お兄ちゃん♪」
「妹が兄に」ではなく、「母親が一番上の兄に」言ってる感じがした



あれれ、おかしいなー。なーんか俺にらまれてんなー。
怖いなー。かえろっかなー。

八幡「じゃあ、俺そろそろ事務所に戻って仕事するわ。今日は直帰でいいからな」ササッ

卯月「プロデューサーさん♪」
未央「私たちにも!」
凛「何か言うことあるんじゃない?」

八幡「ぐぬぬ・・・」

しかし、まわりこまれてしまった!
はあ、そんなあんなセリフ1日に何度も言えるか。

プロデューサーサン、ワタシハドウナンデスカ!ガンバッテマスヨ!
ホンットミカネェバッカヒイキシテサー!
・・・ミカバッカリホメテサ?ズルイヨ?



美嘉「えへへ、可愛いって・・・」



・・・・・
・・・・
・・・


ライブ当日。

346プロ主催の定期ライブであり、他のアイドルも多数出演するが、
デビュー組は俺の担当アイドルくらいみたいだ。

客の入りは上々。さすがに有名プロダクションのライブである。

しかし、これで半年か。
これの結果次第かな。


???「はぁー、やっとついた☆」

ん、あいつは確か・・・。

八幡「ちょっといいか?」

???「え?あれ、あなたは確か・・・」




卯月「うぅー、やっぱり緊張しますね・・・」

未央「そうだね、練習したことちゃんとできるかなー・・・」

凛「うん・・・」

ちょっとした雑誌の取材などは受けたが、実質的にこれが初の仕事。
これまでのはこのライブの前振りだと言っていい。

それがわかってるのか、かなり緊張しているみたいだ。

順番はニュージェネの3人がやや早く、そのあとで美嘉の出番となっている。



美嘉「だいじょーぶ!みんな頑張ってきたじゃん!絶対成功するよ★」

ここで、美嘉が声をかける。

未央「そうかなー?」

美嘉「そうそう!それに、プロデューサーのあんな目で見られるのに比べたら大したことないじゃん★」

おい、あんな目ってなんだよ。

凛「それもそうだね」

しかも納得しちゃったし。こいつ、俺のこういった話題に食いつき早すぎじゃない?

美嘉「ほら、プロデューサーもなんか言ってよ★」

八幡「ばっかお前、舞台に立ちもしないのに俺のほうがずっと緊張してるっての。あんまり話しかけんな」

卯月「ふふ、プロデューサーさんらしいですね♪」

八幡「・・・まあ、お前らが3ヵ月やってきたことを出し切ればいいさ。それに、これで終わりじゃないからな」

未央「そうだね!これからスタートだ!」

卯月「はい、今日も、これからももっともっと頑張ります!」

凛「そうだね。じゃ、行ってくるね、プロデューサー」

八幡「おう、ほどほどにな」

美嘉「行ってらっしゃーい★」




ふう、なんとかなりそうか。
あいつらはいっても3人だからな。むしろ心配なのは・・・。

美嘉「・・・」

こいつだ。

八幡「おい」

美嘉「え?」

八幡「はぁ、今日くらいあいつらの心配までしなくていいぞ。自分の心配だけしてろ。余裕ないだろ」

美嘉「アハハ、やっぱプロデューサーにはわかるよね・・・。そりゃ緊張するよ」

八幡「緊張しなかったらそっちのほうがおかしいわ」

美嘉「そうだね・・・」

八幡「なあ、今日は来てるんだろ?」

美嘉「え?・・・うん」

八幡「じゃあ、シスコンとしてはかっこ悪いところは見せられないよな?」

美嘉「・・・そうだね。アタシはあの娘が自慢できるかっこいいアイドルになるんだから★」

八幡「そうかい。じゃあ俺は最後列で見てるからな」

美嘉「あれ、プロデューサーは関係者席では見ないの?」

八幡「こういうのは一番後ろで見るって決めてんだよ。今日も、これからもずっとちゃんと見といてやるからな」

美嘉「うん!ずっとちゃんと見ててよね★」



ワーワー
キャーキャー


卯月「ありがとうございます!」

未央「あっりがとー!!!」

凛「ありがとう!」

ニュージェネの3人の出番が終わった。
まあ、上々の出来だろう。

上手くいって嬉しいというより、なんか安堵した気持ちだ。
やべぇ、なんか泣きそうだ・・・。

しかし、これで終わりではない。俺は気を引き締め、美嘉の出番を待った・・・。




美嘉「はあ、ここまで来たらやるしかないか!よし、いくぞ!」

ワーワー
キャーキャー
ミカチャーン!

うう、やっぱすごい人だな。卯月たち、こんな大勢の人の前で歌ったんだね。
アタシにもできるかなぁ。

そういや、プロデューサー・・・。
最後列?どこ?

美嘉「!!」

あれは、プロデューサーと・・・、莉嘉?

そうか、プロデューサー、わざと莉嘉をアタシが見えるところに・・・。

ありがと。アタシ、頑張るよ。
かっこいいところ、見ててね★

美嘉「みんなー!それじゃーいっくよー★」

美嘉「~♪~♪」

ウワアアア!
キャー!
カッコイイ!






八幡「おい、見てみろよ、お前の姉ちゃん、こんだけのファンを沸かせてるんだぜ。かっこいいよな」

莉嘉「うん!さっすがアタシのお姉ちゃん!すっごくかっこいい☆」

さすがはシスコン。妹の前でかっこ悪いところは見せられないか。
・・・よく頑張ったな。かっこいいぞ。お前は。


・・・・・
・・・・
・・・


ワースゴイ!
オイシソウダネー!
コノステーキ、トッテモステキ・・・、フフッ
ワカラナイワ・・・


未央「わー、やっぱり凄いね!」

凛「人も一杯だし、料理もすごいね」

卯月「みんなキラキラしてます!」

打ち上げ会場に、アタシたちは来ていた。
ライブデビューは無事大成功。やっと一息つけそうかな?

未央「あ、あそこにフライドチキンが!しまむー、しぶりん!行くよ!」

卯月「未央ちゃん、ちょっと待ってください!」

凛「未央ってば、ホントそればっかりだね」

3人は、うれしそうに料理のところに駆け寄っていく。
アタシもどこか行こうかなと周りを見渡すと、ある一点が目に留まる。

プロデューサーと莉嘉?なんで一緒にいるの?

・・・ってさっきも一緒にいたか。プロデューサーが入れてくれたんだね★



莉嘉「アタシもお姉ちゃんみたいなアイドルになる!」

八幡「ちょっと、何言ってんのお前?」

莉嘉「ヨロシクね、プロデュー、Pくん☆」

八幡「え、俺がプロデューサーやんの確定?いや、おかしいよね?」

社長「いいじゃないか。それじゃあ比企谷くんに担当してもらおうか」

莉嘉「わーい、やったー☆」

八幡「いやいや、勘弁してください・・・」


いやいや、莉嘉とプロデューサー、仲良しすぎでしょ。
てゆうか莉嘉、なんか本気っぽいけど・・・。

ま、それならそれで面白そうだしいっか★


すると、ふと一人の少女から声をかけられた。


???「あ、美嘉さんですよね?」

美嘉「あ、え、あ・・・、キミは、小町ちゃん?」

小町「はい、小町です!知っててくれてうれしいです!」



小町「はい、兄が「プロデューサーの権限は最大限活用しないとな!」って言ってました!」

美嘉「あはは、ま、いっか。で、小町ちゃん、どうだった?」

小町「はい、すっごくかっこよかったです!美嘉さんが兄の担当アイドルなんて、未だに信じられません!」

美嘉「そっか、ありがと★」

小町「それに、兄がいつも話している美嘉さんとお話しできて、うれしいです!」

美嘉「え、プロデューサー、アタシの話とかしてんの?」

小町「ええ、それはもう毎日のように。「美嘉のやつが~」「美嘉がよ~」っていっつも言ってます!」

美嘉「へ、へえ、そうなんだ。なんか照れるな・・・」

小町「憎まれ口ばっか叩くんですけど、兄は美嘉さんの話する時いっつも楽しそうですよ!」

美嘉「う、うう・・・。ホント恥ずかしい・・・」

小町「・・・あんな楽しそうな兄を見るのは初めてです。これからも兄をよろしくお願いしますね。美嘉さん」

美嘉「うん、もちろん。アタシもプロデューサーと一緒にやってて楽しいからね★」

小町「でも・・・」

美嘉「小町ちゃん?」

小町「小町的には「美嘉さん」より「お義姉ちゃん」って呼びたいなー、なんて♪」

美嘉「え、えぇ~!!!」プシュー!

小町「美嘉さん、そのリアクション小町的にポイント高いですよ!いやーお兄ちゃんも幸せもんだなー♪」




・・・ん?あれは、美嘉と、小町か。
小町のやつ、なーんかよからぬこと言ってそうだな・・・。

しかし・・。

卯月「莉嘉ちゃんかわいいねー!これから一緒に頑張りましょうね♪」

未央「未央お姉さんにどーんとまっかせなさーい!」

凛「莉嘉、よろしくね?」

莉嘉「うん、よっろしくー☆」

・・・。
まずはこっちをどうにかしないと・・・。



・・・・・
・・・・
・・・



美嘉たちがデビューしたライブが終わって数日後。
俺はちひろさんと談話スペースで話をしていた。

ちひろ「いやー。比企谷くんももう半年ですね」

八幡「そうっすね。いや、長かったようであっという間でしたね」

ちひろ「それだけ頑張っていましたからねー。もちろん、これからもよろしくお願いしますね♪」

美嘉たちが結果を出したおかげか、俺の契約は延長となったようだ。
まあ、俺もこれでハイさよならとはいきたくないしな。

しかし、なんか素直にはいよろしくと答えるのもなんかアレだな。
ひねくれ者としては、正直に返すわけにもいかんな。



美嘉「お疲れさまでーす★」

あれ?まだ誰も来てないのかな?


ちひろ「・・・」
八幡「・・・」


プロデューサーとちひろさん?あそこで何話してんだろ?
ちょっと聞いてみよっと★






八幡「いや、でもですね。とりあえず契約も終わりなんですし、少しは考えさせてくれません?」

ちひろ「えーっ。比企谷くん、プロデューサーやめちゃうんですか?」

・・・え?

八幡「まあ俺も学生ですし?将来のことも考えると学業とかにも専念したいですし?」

ちひろ「そうですねー」

うそ・・・。
・・・そんな・・・。

フラフラ・・・
ダダダッ




ちひろ「比企谷くん、もうそれくらいでいいでしょう?」

八幡「そうっすね。ひねくれもんとしてははいわかりましたとは素直に言えないもんで」

いやー。さっすがちひろさん。俺の悪ノリにもちゃんと付き合ってくれる。
最後の「そうですね」なんか後ろに(棒)が見えたぞ。

・・・ん?

あれは、美嘉か?
あんな走って、どこいくんだ?

ちひろ「あれ、美嘉ちゃんですかね?あんな急いでどこに行くんでしょう?」

八幡「俺、ちょっと言ってみますわ」タタッ

ちひろ「はーい」





美嘉は屋上に行ったらしい。
ここの屋上はなかなか広く、ちょっと探したら美嘉はぽつんとたたずんでいた。

こんなところでなーにやってんだか・・・。

八幡「おい、美嘉」

美嘉「!?」ビクッ

俺の声に反応した美嘉。振り向いたその顔には・・・。
涙?

美嘉「・・・」ポロポロ

八幡「お、おい、美嘉、どうした」オロオロ

え、ほんとに何?どうしたの?

美嘉「プロデューサーの・・・・うそつき!!!」

八幡「へっ?」





美嘉「ずっと見てくれるっていったじゃん!!!」

美嘉「それなのに、辞めるって・・・」

八幡「え?」

美嘉「アタシ、プロデューサーと一緒だったからここまで来れた」

美嘉「プロデューサーがいてくれるから、これからもやっていけると思った」

美嘉「ううん、プロデューサーが一緒にいてくれれば、アタシ・・・」

美嘉「でも辞めるって!」

八幡「え、何のこと?」

美嘉「しらばっくれないでよ!聞いたんだからね!さっきのちひろさんとの話!」

八幡「」

美嘉「プロデューサーのうそつき!!!」ウェーン!

ついに大泣きしだした美嘉。やべぇ。何とかしないと!

八幡「すまん美嘉、それはだな・・・」




美嘉「・・・それじゃ、プロデューサーはまだ続けるの」ヒックヒック

八幡「はい」ドゲザ

得意の土下座で平謝りしてなんとか泣きやみそうだ。
ふぅ、これで一安心、か?

美嘉「うん、わかった・・・。また一緒にいてくれるんだね?」ヒック

八幡「あぁ、これからもよろしく頼む」

美嘉「もーう、プロデューサーってば・・・」

泣き顔でほほ笑む美嘉。こいつのこんな顔、これはこれで可愛いな・・・。
って何を考えてるんだ俺は!こんな時に・・・。

八幡「おう、じゃあそろそろもどr」

卯月「あ、いました!プロデューサーさん!」

未央「美嘉ねぇ?ん?泣いてる?」

凛「ちょっとプロデューサー、何したの!!!」



やべぇ。一難去ってまた一難。今度はこいつらか。
完全に俺が悪者扱いだし。まあそうなんだけどね。

こっちにやってくる3人。また土下座かな・・・。凛あたりにハイキックくらう準備くらいはしとかないとな。


美嘉「プロデューサー、逃げるよっ★」グイ!

八幡「え??」

と、美嘉がいきなり俺の手を取って走り出した。




卯月「ちょ、ちょっと!待ってください!」

未央「まてっ!二人とも!逃げるなぁー!」

凛「逃がさないよ!特にプロデューサー!!!」

うわぁぁ、怖いよー。
しかし、俺の手を取って逃げる美嘉は嬉しそうだ。

美嘉「まぁアタシも早とちりしちゃったしね。泣き顔見られて恥ずかしいし。逃げるの手伝ってあげるよ★」

八幡「いや、逃げると逆効果な気がするんだが・・・」



美嘉「それに、さ・・・」

八幡「ん?」

美嘉「たまにはプロデューサーにわがまましたいし。こういうときくらいいいでしょ★」

八幡「お、おう」

こいつも大概ずるいよなぁ。こんな顔されちゃなんも言えん。




美嘉「これからもずっとよろしくね?プロデューサー★」

八幡「おう、まあよろしくな」

美嘉「そういやさ、莉嘉に聞いたんだけど、プロデューサーって莉嘉の担当もするんでしょ?莉嘉になにかあったら承知しないからね!」

八幡「いや、そんな話決まってないから。それに、こんな状況でも妹の話か。相変わらずだな」

すると、美嘉はさっきの泣き顔から一変して、満面の笑顔でこう言った。

美嘉「もっちろん!莉嘉はアタシにとって一番大切だからね!」

美嘉「・・・今のところはね★」

・・・

八幡「そうだな、俺も小町が一番大切だからな」

八幡「今のところは、な」

美嘉「ふふっ」

八幡「ははっ」



マ、マッテクダサイ!
マテッ、コノー!
ニガサナイカラネ!




美嘉「さっすがシスコン★」

八幡「うっせぇシスコン」




おわり

これで完結です。

仕事のストレス解消の為に思いつきで書いたのでとっちらかってしまいました。

俺ガイルは原作派ですが、どっちかというと初期の軽い感じが好きなのでそっちを意識して書いてみました。
デレマスはアニメとか漫画とかを見たくらいのにわかです。キャラ崩壊してたらすいません。

初めてなんで、スレ立て、投下、緊張しました・・・。

えーと、あとはHTML化依頼スレッドに報告ですかね。

読んでくれた皆さん、ありがとうございます。

小町の入れ知恵で莉嘉が「おにいちゃん」呼びするとか期待したのに

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom