神崎蘭子「フィリア学院?」 桜小路ルナ「346プロダクション、か」 (61)

モバマス(アニメ)×月に寄りそう乙女の作法(ルナ様ルート終了後)
のんびり進行
誰得クロスですがまあ気にしない

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442148236

武内P「神崎さんの新しい衣装のデザインを、フィリア学院の生徒の方に担当していただくことになりました」

未央「フィリア学院っていうと……去年できた服飾の専門学校だよね?」

卯月「コンクールですごい成績を収めた人達も通っているそうです。去年は女の子の生徒だけだったらしいですけど、今年から男女共学になったって聞きました」

凛「そんな学校あったんだ。蘭子は知ってた?」

蘭子「む……我が魔導書には記されていないようね」

未央「一度校舎見たら忘れないと思うよー。さすが芸術の学校! って感じだった」

みく「でも、どうして蘭子チャンの衣装を生徒の子に任せることになったの?」

李衣菜「確かに。学生ってことは、まだいろいろ修行中なんじゃないの? だったらプロに任せたほうが」

武内P「……実は、この案は今西部長から提示されたものでして」

未央「部長さんから?」

武内P「はい。部長のお知り合いに、独特の感性を持った芸術家の卵がいるそうです。それが、今回衣装のデザインを依頼した女生徒の方なんです」

武内P「舞踏会をより魅力あるものにするため、若いデザイナーの力を借りてみてはどうか――部長はそうおっしゃっていました」

みく「常務に対抗するための新戦力ってことかにゃ?」

武内P「対抗、というのは微妙ですが……概ね、その通りです」

蘭子「私の新たな形態を生み出す者……フフフ、魂が呼応しているわ」

武内P「近日中に事務所を訪れる予定です。その時に、会えるかと思います」

蘭子「うむ! かの者もまた、『瞳』を持ちしモノであることを願うぞ」

李衣菜「私達と年近いだろうし、どんな子なのか気になるね」

同日 夜


小倉朝日「346プロダクション、ですか?」

桜小路ルナ「そこに所属するアイドルの、ライブで使用する衣装のデザインを依頼された」

ルナ「近いうちに直接プロダクションに足を運ぶ予定だから、欲しいアイドルのサインがあれば考えておくといい」

朝日「わかりました。しかし、私はアイドルにはあまり詳しくないもので……」

花之宮瑞穂「最近はアイドルがブームだから、テレビとかにも可愛い子がたくさん出ているわ」

ユルシュール・フルール・ジャンメール「わたくしも何度か見たことがありますわ。確かにビジュアルはなかなかのものでしたが、それでもこのわたくしには及びませんわね。オーッホッホ!」

柳ヶ瀬湊「ていうか珍しいね? ルナがそんなに嫌そうな顔見せずに外出するなんて」

ルナ「依頼主の男性とは昔からの知り合いなんだ。気さくで面倒見のいい人だから、私もある程度は信頼を置いている」

朝日「ルナ様が、男性に信頼を……」

ルナ「ああ、心配しなくてもその男性は50代だ。私が浮気するようなことはないぞ」

朝日「そ、そんな心配はしていませんっ」

ルナ「そうか?」

朝日「当然です。ルナ様は誠実で純潔なお方ですから。私はルナ様が隠れて浮気をするなどといったことは考えたこともありません」

ルナ「……フフ、君は相変わらず人を褒めるのが上手だな。可愛いやつめ」

朝日「ありがとうございます。お優しいルナ様」


湊「あちゃー。また二人だけの空間ができあがっちゃってるよ」

ユルシュール「こういうのを、日本語では……『ナカがいっぱい』と言うのでしたわね」

瑞穂「正しくは、お腹いっぱい、ね」

数日後


今西部長「やあ。よく来てくれたね、桜小路くん」

ルナ「お久しぶりです」

部長「また背が伸びたんじゃないかい?」

ルナ「……それは、ちびっこい私への嫌味ですか」ジトー

部長「いやいや、そういうわけじゃない。単純に前に会った時より大きくなったと思っただけだよ」

ルナ「まあ、同年代の者より伸び幅が小さいだけで、身長が伸びたことは事実ですが」

部長「気を悪くしないでもらえるとありがたいね。……ところで、そこにいる彼女は」

ルナ「従者の小倉です。しばらく前から雇っています」

部長「ほう、そうかね。いや、とても可愛らしい子だと思って、つい尋ねてしまった」

部長「君の従者でなければ、すぐにでもアイドルにならないかと声をかけていたところだよ」

ルナ「……ほう? それはそれは、きっと小倉も光栄でしょう。なんなら本当にアイドルにしてしまっても」


朝日「~~っ!」ブンブン

部長「……ものすごい勢いで首を横に振っているようだけど」

ルナ「照れているだけです」ニヤ

ルナ「しかし、かまわなかったのですか? 職場に私の友人を連れてきて」

部長「学生の君に仕事を頼むんだ。そのくらいのことならまったく問題ないよ」

ルナ「ありがとうございます。彼女達もアイドルというものに興味があったらしく、喜んでいました」

部長「今は千川くんに案内を任せているから……そろそろシンデレラプロジェクトの部屋に着くころじゃないかな」

ルナ「確か、今回の衣装を着る女性もそこに所属しているんでしたか」

部長「神崎くんには、彼女のプロデューサーと一緒に別室に来るよう伝えてある。君もあとでそこに向かってほしい」

ルナ「はい」

退出後


ルナ「よかったじゃないか、朝日。君はどうやらアイドルとしてやっていけるだけの風貌があるらしい」

朝日「その話はおやめいただけないでしょうか」

ルナ「瑞穂あたりに話せば、本気でデビューに向けて動き始めるかもしれないな」

朝日「お許しください……アイドルが性別詐称なんてシャレになりません」

ルナ「それがだな。確か最近そういった事例が本当にあったようで――」

朝日「と、ところでルナ様! この後お会いになる神崎さんという方についてはご存知なのでしょうか!」

ルナ「露骨に話題を逸らして来たな……まあ、今回はこのくらいで許しておいてやろう」

ルナ「君の質問に対する答えだが、ノーだ。彼女のライブの映像なども見ようと思えば見られたが、見ていない」

朝日「それは、どうしてでしょうか」

ルナ「ライブの衣装を見てしまうと、どうしてもその衣装のイメージと彼女自身のイメージが混ざりやすくなってしまうからな。今回の衣装は私がデザインするのだから、できるだけ余分なイメージは頭に残したくない」

ルナ「だから、これから直接この眼で、ありのままの彼女を見ることにする」

朝日「なるほど。ルナ様らしい良いお考えだと思います」

ルナ「ん。では行こう。神崎蘭子の待つ部屋へ」

今日はここまでです

これは俺得スレ。
パリから帰国後なのか違うのかでお優しい衣遠兄さまのキャラが違ってくるんだが、どっちなの。

レス多くてびっくり。期待に応えられるようガンバリマス
とりあえずあと1時間くらいしたら続き投稿します

>>15
ルナ様ルート終了後の、ヒロイン達が2年生の9月~10月ごろを想定しています
よって衣遠兄様はもうデレています
ルナアフターアフターを参考にするとりそなはこの時期パリにひとりで行ってるっぽいです
なので遊星たちはまだパリのみんなとは会っていません

同時刻 シンデレラプロジェクトの部屋


凛「スイスって言うと……エーデルワイス?」

ユルシュール「その通りですわ。我が祖国を象徴する美しさを持った花、それがエーデルワイスなのですわ」

凛「確かに、きれいな花だよね」

ユルシュール「凛は話がわかる人ですわね。私と同じく犬を飼っているようですし、気が合うのかもしれませんわ」

ユルシュール「わたくしのモトカレと凛のハナコ、いつか挨拶をさせたいですわ」

凛「も、元カレ?」

ユルシュール「わたくしの飼い犬の名前ですわ」

凛(なんで犬にモトカレなんて名前つけてるんだろう……)

瑞穂「わあ、おいしそうなマカロン!」

かな子「よかったら、食べますか?」

瑞穂「いいんですか?」

かな子「もちろん♪」

瑞穂「では喜んで……あっ、でも最近少しカロリー摂取を控えようかと考えていて」

かな子「少しくらいなら、おいしいから大丈夫ですよ。無理をしすぎると身体にも悪いですし」

瑞穂「……ですよね。おいしいから大丈夫ですよね♪」

みりあ「すごーい! じゃあ本当にお嬢様なんだ!」

湊「えへへ。ていっても、私は他の子達に比べるといろいろ格が足りないっていうか」

莉嘉「いーじゃんカクなんて。アタシ達から見たらどっちも同じだよ☆」

湊「そ、そうかな」

湊「よーし、気分がいいからお姉さんが一緒に遊んであげよう!」

みりあ「わーい!」

莉嘉「やったね!」

CPの部屋とは別の部屋


コンコン


ルナ「失礼します」

武内P「はじめまして、桜小路さん。私は、神崎蘭子さんのプロデューサーを務めている者です」

ルナ「はじめまして。桜小路ルナです」

朝日(この大きな男の人がプロデューサーかぁ。すると、彼の背後にいる女の子が――)

朝日(……あれ? あの人の容姿、ルナと……)


武内P「神崎さん。こちらの方が、今回の衣装のデザインを担当してくださる桜小路ルナさんです」

蘭子「………」ジーー

武内P「……神崎さん?」

蘭子「っ! は、はいっ」

朝日(神崎さんの反応が遅れた理由は、おそらくルナの容姿を凝視していたから、だと思う)

朝日(ルナの白すぎる素肌や紅い瞳、そして銀の髪は、初見の人にとっては奇異なものに映ることが多い)

朝日(もちろん、僕は彼女のそれらすべてが美しく、愛おしいと思っているけれど)

蘭子「クク、我が名は……じゃなかった。は、はじめましてっ。神崎蘭子、です」

ルナ「よろしくお願いします」

蘭子「はいっ……お願いします」

ルナ「プロデューサー殿。早速ですが、彼女を少しお借りしても?」

武内P「かまいません。私はこの後席を外しますが……神崎さん、よろしいでしょうか」

蘭子「う、うむ。独りでも闇の力は発揮されん」

ルナ「……闇の力?」

武内P「それでは、失礼します」

バタン


ルナ「………」

蘭子「………」

朝日「………(なんだか空気が重い)」


ルナ「朝日」

朝日「はい、なんでしょうか」

ルナ「神崎さんの緊張をほぐすために君がなんとかしろ。ほら、マンチェスター仕込みのジョークとか、なにかあるだろ」

朝日「ええっ!? わ、私がですか?」

ルナ「無茶振りに応えてこそ私のメイドだ」

朝日「そんな……」

蘭子「……?」キョトン

朝日(た、確かにこのまま話が進まないのは互いにとって良くないことのはず)

朝日(ここは僕が、場を和ませられるような一言を……)

朝日「………」


朝日「や、やる気マンゴスチンですっ!」

蘭子「………」

ルナ「………」

ルナ「おい、まさか今ので終わりじゃないだろうな」ジロリ

朝日「申し訳ありません……」シュン

ルナ「アホか君は。そんなくだらない言葉遊びで笑いがとれるわけが」


蘭子「ふふっ……マンゴスチン……ぷっ」

朝日(ウケてる!?)

ルナ「奇跡だ……世の中わからないことだらけだな」

朝日「ええと……お二人の年齢はさほど離れていないようですし、少しフランクな口調を心がけてみるのはいかがでしょうか」

ルナ「それが君のもうひとつの策か。まあさっきのよりはマシだな」

ルナ「さて、神崎さん。潤滑なコミュニケーションのため、堅苦しい言葉遣いはなしにしようと思う。いいだろうか」

蘭子「は、はい。大丈夫、です」

ルナ「では早速。衣装のデザインをするにあたって、あなたのことをよく知っておこうと考えているんだが……」

蘭子「あ、あのっ!」

ルナ「ん?」

蘭子「その……あなたの……えっと」

朝日(神崎さんの言葉はしどろもどろだったけれど、僕もルナも彼女の言いたいことはなんとなく理解できた)

ルナ「私の外見のことなら、これは生まれつきのものだ」

蘭子「あ……そうなんだ」

ルナ「そういう君も、私と髪や瞳の色が似ているが」

蘭子「私のは、カラコンとかで作ってるだけだから……その、かっこいいと思って」

ルナ「……かっこいい、か」

蘭子「あっ……ごめんなさい」

ルナ「なぜ謝る? ……ああ、そうか。『苦労することも多いというのに、軽い気持ちでアルビノの外見を真似るな』とでも私が考えていると思ったのか」

ルナ「だとしたらそれは勘違いだ。私はそんなことで目くじらを立てるほど器量の狭い人間じゃない」

ルナ「むしろ、そうだな。どちらかと言えば、気分はいい。この見てくれに関して『かっこいい』と言われたのは初めてだからな」フフ

蘭子「そうなの?」

ルナ「ああ。大概敬遠される容姿だからな。そこにいるメイドは、以前情熱的な言葉をぶつけてきたこともあるが」

朝日「ルナ様が美しいのは事実ですから」ニッコリ

ルナ「人がからかっているというのに、臆面もなくそう答えられるところには呆れを通り越して感心するぞ」

蘭子「……そっちの人は、本物のメイドさん?」

ルナ「もちろんだ。小倉朝日という」

朝日「はじめまして、神崎様」ペコリ

蘭子「さ、様っ!? は、はじめまして」

蘭子(きれいな人……すごく女子力高そう)

ルナ「ところで神崎さん。そこの机に置いてあるスケッチブックは」

蘭子「!?」シュバッ

朝日(ものすごい速さで隠した!)

ルナ「………」

ルナ「私の勘違いなら謝るが、ひょっとして、衣装のデザインか何かを描いた絵があるんじゃないのか」

ルナ「意味もなくこの部屋にそれが持ち込まれているわけではないようだからな。君の反応を見る限りは」

蘭子「………上手な絵じゃないから」

ルナ「上手い下手は今はさほど関係ないだろう。それを課題として提出するわけでもないんだから」

ルナ「私は単純に、私のデザインした衣装を着る人間がどのような希望を持っているのか知りたいだけだ」

朝日「神崎様。ルナ様は他の方の絵を笑うようなお方ではありません(たまにイタズラはするけど)」

蘭子「………じゃあ、これ」スッ

ルナ「ありがとう」

ルナ「………」

蘭子「………」ドキドキ

ルナ「……なんだ。あれほど恥ずかしがっていた割には、全然下手じゃないじゃないか」

蘭子「ほ、本当?」

ルナ「ああ、本当だ。もちろん、本格的なデザインとして見れば修正すべき点はいくつか……いや、かなりあるが」

ルナ「本職ではない人間が描いた絵としては、十分にうまい」

ルナ「神崎さん、そこにいる私の従者に見せてもかまわないだろうか」

蘭子「うん」

ルナ「ということだ。朝日、君も見るといい」

朝日「それでは、拝見させていただきます」

朝日「……わあ、これは華やかな衣装ですね! 神崎様の想いの勢いが伝わってくるような絵です」

朝日「このあえて歪さを残した翼などから考えると、イメージとしては悪魔といったところでしょうか」

蘭子「えっと……近いんだけど、正確に言うと悪魔じゃなくて魔王」

朝日「魔王、ですか?」

蘭子「無垢なる天使の心は漆黒に染まり、堕ちた魂は祝祭を迎えて魔王へと覚醒する」

蘭子「禁忌の姿、闇をも統べる高貴なる波動……それが魔王ブリュンヒルデ」

朝日「………?」

ルナ「………??」

ルナ「朝日、朝日(小声)」チョンチョン

ルナ「翻訳」

朝日「えっ? ええっとですね……つまり、なんだかすごく強そう?」

蘭子「むぅ……どうやら言霊がうまく刻まれないようね」プクー

ルナ「朝日、どうやら違うようだぞ」

朝日「も、申し訳ありません」

蘭子「闇の言葉を紡ぐ選ばれし詩人になるためには、『瞳』を持つことが必要よ」

朝日「瞳ですか? ええと、多分何かの比喩表現だから……」アタフタ

ルナ「なるほど。これが君のフランクな口調というものか……なんだったかな。中二病というやつか」




30分後


ガチャ

武内P「皆さん、話し合いのほうはいかがでしょうか――」


蘭子「闇に飲まれよ!」

朝日「や、闇に飲まれよ!」

ルナ「朝日。左腕の突き出す角度が微妙にずれているぞ」←優雅に紅茶を飲みながら

蘭子「そ、そこまで正確にしなくても」

朝日「いえ、これも神崎様を理解するための訓練です。私は必ずあなたの言霊を受け取るにふさわしい『瞳』を手にしてみせます!」

ルナ「止めても無駄だよ、蘭子。朝日は愚直で頑固だから一度こだわりだすと徹底的にやるまで気が済まないタイプだ」

蘭子(私だってポーズは結構ノリで決めてるのに……)


武内P「……どのような状況なのでしょうか」

ルナ「コミュニケーションの一環です。絆を育むレッスンです」

武内P「はあ……わかりました」

夕方


ルナ「では、我々はこれで失礼します」

ルナ「蘭子さんと話し合った内容をもとに、早速デザインに取りかかるつもりです」

武内P「よろしくお願いいたします」

ルナ「はい。蘭子、また会おう」

蘭子「闇に飲まれよ!(お疲れ様です!)」

ルナ「ああ。やみのま」

朝日「闇に飲まれよ、です」


ガチャ、バタン


武内P「神崎さん。どうでしたか、桜小路さんとお話しになって」

蘭子「高貴なる魂、我が心を魅了する……(とっても気品があって、かっこいい人でした!)」

武内P「そうですか。それは、よかったですね」

蘭子「うむ!」

その日の夜


瑞穂「それじゃあ、その神崎さんって子とお友達になったのね」

ルナ「お友達かどうかは知らんが、連絡先は交換した」

ユルシュール「珍しいこともあるものですわね。ルナが初対面の相手と友人になるなんて」

ルナ「だから友達かどうかは知らんと」

湊「ねえ朝日。その子と話してる時のルナ、どんな感じだった?」

朝日「かっこいいと言われてとてもうれしそうでした」

ルナ「朝日、後で私の部屋に来い」

朝日(しまった。お気に障ることを言ってしまった)

今日はここまでです
ちょろっと熊本弁出したけどやっぱり難しいですね

後日、346プロにて


ルナ「蘭子さんの希望を取り入れながら仕上げたデザインがこちらです」

ルナ「テーマは『傷ついた悪姫』。美しさと妖しさ、それと少しばかりの禍々しさを意識しました」

武内P「これは……素晴らしいデザインですね」

蘭子「おお……!」キラキラ

蘭子「私のグリモワールが姿を変え、より高位な存在へと昇華を果たした!」

ルナ「光栄です」

朝日(ここ最近、ルナはよく神崎さんとメールのやりとりを行っていた。アトリエにこもって絵を何枚も描いた後、細部について彼女の意見を尋ねる)

朝日(だから、このデザインはルナと神崎さんの二人で作り上げたものなんだ)

朝日(それはルナにとって初めてのことであり、本人も良い経験になったと語っていた)

武内P「ありがとうございました。このデザインをもとに、神崎さんの衣装を製作させていただきます」

蘭子「ククク……覚醒の時は近い!」

ルナ(……これだけ元気に喜ばれると、描いた側も気分がいい)


ガタッ


朝日「? 扉の外から物音が……」


未央「ちょ、みくにゃん押さないでっ」

みく「みくじゃないにゃ! 後ろのふたりが」

みりあ「どうなってるのー?」

莉嘉「蘭子ちゃんの衣装できたのー?」


武内P「……すみません。私の担当しているアイドルです」

ルナ「どうやら、仲間の衣装の製作進行が気になったようですね」

みりあ「お姉ちゃんが、湊お姉ちゃんが言ってたルナさん?」

ルナ「あ、ああ。そうだが」

みりあ「赤城みりあです! あのね、この前湊お姉ちゃんにいーっぱい遊んでもらったの!」

莉嘉「湊ちゃんって運動神経いいんだね! 一緒に木登りしたんだけど、競争で負けちゃった」

ルナ「そうか……湊と」チラッ

朝日(ルナがこちらにアイコンタクト。君が相手をしろ、のサインだ)

朝日(おしゃべりが大好きな子ども達の相手は、確かにルナにとっては苦手分野かな。ここは僕が受け持とう)


朝日「湊様は身体を動かすのがお好きですからね。朝のランニングを日課にしているくらいです」

みりあ「そうなんだ。……えっと、お姉ちゃん、誰?」

朝日「ルナ様のメイドの小倉朝日と申します」

莉嘉「メイドさんなんだ! アタシ本物を見るの初めてかも☆」

未央「ウサミンは……メイド服着て働いてるだけだからちょっと違うか」

みく「さすが、お嬢様のメイドだけあってなんだか気品?みたいなのが感じられるにゃ」

朝日「ありがとうございます」ニコニコ

未央「ねえねえ、一緒にアイドルやってみない? なんつって」

朝日「お断りさせていただきます」

未央「真顔で即答!?」

武内P「………」←スカウトしてみようかと少しだけ考えていた

みく「とにかく、これで舞踏会への準備がまたひとつ整ったにゃ」

蘭子「私の新たなる形態の力、とくと見せてあげるわ」

ルナ「確か、冬に君達のグループで大きなライブを行うのだったな」

蘭子「ええ。集いし星が、新たな物語を世界に刻む……至上の宴となろうぞ」

蘭子「……いや。なろうぞ、ではなく、そうしなければならない、か」

ルナ「……その舞踏会に、強い想いを賭けているんだな」

蘭子「その通り!」バッ!

ルナ「そうか。私が力を貸したんだ。成功してもらわなければ困る」

ルナ「だから、頑張れ」

蘭子「……うんっ」

帰り道


ルナ「私達は、学生という身分に守られている」

朝日「守られている、ですか。確かに、そういった面はあるのかもしれません」

ルナ「かもしれないじゃない。間違いなくそうなんだ」

ルナ「フィリア学院という学び舎の中で、我々はいつか飛び立つための準備をしている最中だ」

朝日「神崎さん達の立場と、比較なさっているのですか?」

ルナ「ああ。彼女らはすでにプロだ。あの大男のプロデューサーがフォローしてくれるとはいえ、人気を得るためには自分達の力が必要不可欠」

ルナ「夢を叶えるために、とっくに飛び立っている存在なんだろうと、そう思った」

朝日「立派、ですね」

ルナ「そうだな。私達もその姿勢は見習うべきだ」

ルナ「まあ、さしあたってはクリスマスのフィリコレだな。当然狙うは連覇だ」

朝日「皆様のお力で、最高の衣装を作り上げましょう」

ルナ「その意気だ。当然君の働きには期待している」

朝日「はい! 頑張ります」

その日の夜 346プロ女子寮・蘭子の部屋


蘭子「本当に、私の考えた衣装を着てライブできるんだ……」

蘭子(ルナさんがデザインしてくれたおかげでもっといい感じになったし、今から着るのが楽しみだなぁ)

蘭子(……桜小路ルナさん。クールで堂々としていて、とってもかっこいい人。髪の色も瞳の色も、素敵だと思う)

蘭子(私も、あれくらい自分に自信が持てるようになりたい)

蘭子「……あ、そうだ」

蘭子「今度、絵の描き方を、教えてもらえませんか……っと。送信」メルメル

蘭子(しばらくの間ダンスの振り付けを復習していると、ルナさんからの返事がかえってきた)

ルナ『互いの都合がつく日が見つかれば、私の屋敷に来るといい。もっとも、教師役となれば、私より朝日のほうが適任かもしれないが』

蘭子「やった!」ガッツポーズ

蘭子(勇気を出してお願いしてよかった~……あ、でもルナさんのお家ってすごいお金持ちなんだっけ)

蘭子「普通の格好でお邪魔していいのかな……うーん」



蘭子(結局、どんな服で行けばいいのかとか、そういうことにかなり悩んでしまった)

蘭子(でも、そうやって悩んでいる間も、楽しい気持ちは膨らんでいた)

蘭子「いつか私も、あの人みたいな絵が描きたいな……」

おまけ


【朝日ちゃんの評判】


凛「この前遊びに来たお嬢様達、みんなきれいだったね」

卯月「ですね。なんだか雰囲気からして普通のことは違う感じでした」

未央「でも、お嬢様に負けず劣らず、メイドの朝日ちゃんもすごかったよ」

凛「私達は会ってないんだけど、どんな人だったの?」

みく「背が高くてスタイルが良くて、まさに大和撫子って雰囲気の子だったにゃ」

莉嘉「しゃべり方も丁寧でさー、絶対女子力高そうな感じだった!」

未央「わかるわかる。こう、なんかすべてを受け止めてくれそうな母性を感じるというか」

みりあ「……うーん」

きらり「みりあちゃん、どうかしたにぃ?」

みりあ「なーんか変な感じがするの」

凛「変な感じ?」

みりあ「朝日ちゃんは本当にかわいいんだけど……うーん、やっぱりいいや。よくわかんないし」

莉嘉「えー? そこまで言われると気になるよー」

みりあ「じゃあ言うけど……なんとなく、ほんとに女の子なのかなって」

莉嘉「女の子なのかなって……実は男の子かもってこと?」

未央「それはないでしょ。あの見た目で男の子なはずないって」

みく「見た目から雰囲気、なにからなにまで女の子そのものだったにゃ」

みりあ「……そうだよね。みりあの勘違いだよね!」

莉嘉「そうそう☆」




朝日「はっ!?」

サーシャ「あら、どうかしたの?」

朝日「いえ……今、急に悪寒が走ったというか。でも危ういところで命拾いしたような、そんな感覚が」

サーシャ「ふむ。それはいわゆる美ックスセンスというやつね」

朝日「シックスセンス……でしょうか?」

【蘭子ちゃんの評判】


朝日(あの出会い以降、神崎さんはたまに桜屋敷を訪れるようになった)

朝日(初めて屋敷に足を踏み入れた時の目の輝きようは、それはもうおとぎ話の主人公のようで、なぜか屋敷の主でない僕まで誇らしく感じてしまうほどで)

朝日(それから、彼女はルナ様以外のお嬢様方とも親交を深められ――)



ユルシュール「煩わしい太陽ですわ! 魂の赴くままに行きますわー、オホホホホ」

朝日(ユルシュール様の日本語がさらに混沌めいたものへと化したりもした。さすがにまずいと思ったので湊と一緒に矯正したけれど)

朝日(そんなこんななことがあり、今日も神崎さんはルナを訪ねて桜屋敷にやってきている)

ユルシュール「蘭子は素直でいい子ですわ。少し言葉はわかりにくいですけれど」

湊「ルナが気に入るのもわかるね。なんか妹みたいだし」

ユルシュール「素直で心根がいいという点は、朝日と似ているかもしれませんわね」

瑞穂「そうね。朝日と似て……似て……」

湊「ん? どしたの瑞穂、急に固まって」

瑞穂「……ねえ蘭子さん。あなた、ちゃんと女の子よね?」

蘭子「……?」

瑞穂「本当は男の子だったとか、ないわよね?」

蘭子「??? わ、我が魂は出づる刻より姫としての属性を(れ、れっきとした女の子です)」

朝日「申し訳ございません申し訳ございません私のせいで瑞穂様が疑心暗鬼に」

【登場するだけで場の空気を変える男】


衣遠「………」

蘭子「………」ビクビク

ルナ「お義兄様。あなたが睨みつけているせいで、私の友人が怯えてしまっているわけだが」

衣遠「睨みつけてなどいない。義妹に新しくできた友人とやらを品定めしているだけだ」

ルナ「あなたは眼力が強すぎるんです」

衣遠「生憎とこの顔は生まれつきだ」

蘭子「………」オロオロ

衣遠「しかし、アイドルか」

ルナ「何か文句でも?」

衣遠「いいや。俺も部下や親戚との他愛のない雑談の中で、アイドルに関する話題は耳にしている」

衣遠「その会話の中で、神崎蘭子という名前が出てきたことを思い出した」

衣遠「俺の記憶が正しければ、新進気鋭のアイドルのひとりとして、悪い評価は受けていなかったはずだ」

蘭子「!」

ルナ「ほう。では彼女の才能を認めると」

衣遠「俺は己の目で見たものにしか評価は下さない。もし俺が彼女の才能に言及することがあるなら、それは少なくとも俺自身が彼女のアイドルとしての姿を見てからだ」

ルナ(この男がアイドルのライブ会場にいる光景が想像できない)

蘭子(ペンライト振ってくれるのかな)

【妹、ショックです】


りそな「久しぶりに日本に戻ってきたら桜屋敷に新キャラ追加されてました」

りそな「ゴスロリで年下キャラ。深刻なキャラ被りです。早急な服装チェンジを要求します」

りそな「つかそれに加えて銀髪邪気眼とか設定盛りすぎです」

遊星「変なこと言ってないで、仲良くしたらいいのに」

りそな「妹、アイデンティティが若干クライシスです」

【ああ――】 


遊星「その後の話を、少しだけ」

遊星「冬に入ると、僕やルナ達はフィリコレのための衣装作りに、神崎さんは『舞踏会』の最終準備に追われる毎日」

遊星「それぞれが、それぞれの夢や目標のために全力を尽くした」

遊星「道のりの途中、険しい壁にぶつかることもあったけれど、僕達は若さに任せて走り抜けた」

遊星「その結果がどうなったのかは、ここでは詳しく語らないでおこうと思う」

遊星「でも、ひとつだけ。僕も、ルナも、神崎さんも、他の皆様も……すべてを終えた後、こう思うことができた」



遊星「ああ楽しかった! と」



おしまい

終わりです。お付き合いいただきありがとうございました
本当はもっといろいろ書きたかったけど収拾つかなくなりそうだったから小さくまとめました

普段はモバマスや遊戯王のSSを書いているのですが、つり乙のSSをまったく見かけないので自分で書きました(クロスですが)
ちなみに私はユーシェが一番好きです

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