島村卯月「ぴにゃあああああ!!」(114)

未央「おはよー」

凛「おはよ」

未央「あれ、しまむーはまだ?」

凛「うん。卯月がこんなに時間ギリギリになるなんて珍しいよね」

未央「大丈夫かな。打ち合わせまでに間に合えばいいけど」

「大変ですー! 未央ちゃん凛ちゃーん!」ドタドタ

凛「この声は……?」

未央「しまむーの声だ」

ぴにゃこら太「大変なんですー!」バーン!

卯月「ぴにゃああああああ!」バーン!

凛「おっと、これは私の目がおかしいのかな。それとも耳かな」

未央「頭がおかしくなった可能性もあるね」

ぴにゃこら太「見ての通り大変なんですよ!」

卯月「ぴにゃにゃあ!」

凛「あーこれは本当に大変だ。病院行くかな」

未央「私も付き合うよ。眼科かな。それとも精神科かな」

ぴにゃこら太「現実を直視して下さいよ」

卯月「ぴにゃぴにゃ!」

未央「向き合いたくない現実だなあ」

凛「えーと、一応確認しておくね。卯月、返事して」

ぴにゃこら太「はい」

凛「ぴにゃこら太は?」

卯月「ぴにゃ」

未央「これはあれかな。いわゆるあれ」

凛「ボディチェーンジ! ってやつだね」

卯月「ぴにゃ」

ぴにゃこら太「入れ替わっちゃったんですよ。私とぴにゃが」

未央「サソリも真っ青な現実だ」

凛「なんでこうなったの? なにか原因に心当たりは?」

ぴにゃこら太「それがさっぱり……」

未央「ぴにゃに心当たりは?」

卯月「ぴにゃぴにゃ」

未央「そっかー。分かんないかあ」

凛「言葉分かるの?」

未央「いや全く」

ぴにゃこら太「こっちは真剣なんですよ未央ちゃん」

未央「だって真剣に考えたら頭がおかしくなりそうなんだもん」

ぴにゃこら太「私だってこんな状況でもう狂う一歩手前ですよ」

凛「真面目に考えないとダメ? このままぴにゃこら太として生きていく気はない?」

ぴにゃこら太「そんな事態になったら、私は凛ちゃんの大事な仕事がある日を狙って中央線に飛び込みますからね」

凛「今のうちに車移動メインにする事をプロデューサーに相談しとくか……」

未央「とにかく原因を追求してみようよ」

凛「そうだね。卯月とぴにゃがお互い頭を打ち付けたとか」

ぴにゃこら太「無いですね」

未央「ぴにゃと一緒に階段を転げ落ちたとか」

ぴにゃこら太「それも無いですね」

卯月「ぴにゃ」

凛「ぴにゃこら太とまぐわったとか」

ぴにゃこら太「何をどうしたらこの生き物とまぐわう事になるんですか」

未央「そうだよ。せめて同衾とか一夜を共にするとか言いなよ」

ぴにゃこら太「そういう事じゃないです」

卯月「ぴにゃ……」

凛「でも原因が分からない以上対処のしようがないね」

ぴにゃこら太「そうなんですよねえ……」

未央「気付いたのはどこでだったの?」

ぴにゃこら太「昨日の夜は普通に家で寝てて……朝気付いたらこの姿でテレビ局の倉庫にいました」

凛「ぴにゃの巣はテレビ局の倉庫なの?」

ぴにゃこら太「多分着ぐるみ置き場的な」

未央「おーっとストップ。ぴにゃは着ぐるみとかじゃないから。こういう生き物だから」

凛「という事は、ぴにゃこら太は卯月の家で目覚めたのかな?」

卯月「ぴにゃにゃ!」

未央「正解っぽいね」

凛「で、ぴにゃも慌てて着替えてここまで来たと」

ぴにゃこら太「まさか私の家族にぴにゃぴにゃ言うところ見られてませんよね?」

卯月「ぴ、ぴにゃ」

ぴにゃこら太「目を合わせなさい」

卯月「ぴにゃあ……」

ぴにゃこら太「ああどうしよう……ママにおかしくなったと思われる……」

凛「実際おかしくなってるんだけどね」

未央「あ、それよりこの後の打ち合わせどうする?」

ぴにゃこら太「はっ! そうですよ! どうしましょう!?」

凛「雑誌の取材だよね。卯月がこの状態じゃ……」

卯月「ぴにゃあ」

未央「困ったなあ」

とりあえず今回ここまで

ぴにゃこら太「私はこんなんですし、そっちの私は中身がぴにゃですから、ぴにゃぴにゃ鳴く事しか出来ませんし……」

凛「流石にこれを人前には出せないよね」

卯月「ぴにゃ……」

ぴにゃこら太「こうなったら私がぴにゃこら太の着ぐるみを着ているという設定で出るしか」

凛「それは無理があるよ……だって今の卯月はなんか生臭いし……」

ぴにゃこら太「生臭い!?」

未央「ああ……確かになんか生々しい肉体だよね……ほら、触ると暖かいもん」

凛「生物感が物凄いんだよね。呼吸もしてるし瞬きもするし」

ぴにゃこら太「元からこんなものじゃありませんでしたか?」

凛「ないよ。今のぴにゃは明らかに有機生命体だもん」

未央「しまむーが中に入った事によって何だか肉感が出てるよね」

凛「気持ち悪さが五割増しだよ」

ぴにゃこら太「うーん言われてみれば確かに……」

卯月「ぴにゃにゃあ……」

未央「あ、ぴにゃが傷付いてる」

凛「その、大丈夫だよ。普段のぴにゃこら太はそんなに気持ち悪くないから」

卯月「ぴにゃ……」

ぴにゃこら太「意味なしフォローですよそれ」

未央「とかやってる間にそろそろ時間だよ」

ぴにゃこら太「ああっ! 何一つ解決してないのに!」

凛「ぴにゃこら太に何とか喋らせてみようか」

未央「そうだね。とりあえず『頑張ります』だけ言えればなんとかなるから」

ぴにゃこら太「普段の私ってそこまで語彙無いですか?」

未央「はい、いくよぴにゃ。『頑張ります』の『が』から。はい言ってみて」

卯月「ぴにゃ……ぴぉ……にゃ……ぉご……えぅあ……」ベシャベシャ

凛「なんだこの地獄絵図は」

ぴにゃこら太「やめましょうこれ。自分がよだれをダラダラ垂れ流しながら呻いてるシーンは見るに耐えません」

未央「うんダメだねこりゃ。これじゃただの廃人になった島村卯月だ。はいぴにゃ。よだれ拭こうね」フキフキ

卯月「ぴにゃにゃ……」

凛「せめて入れ替わった相手がみくだったら良かったのにね」

ぴにゃこら太「多分『にゃあ』とは言えますからね」

未央「いくらみくにゃんでも『にゃあ』以外喋れなかったら問題だよ」

ぴにゃこら太「あれ? 私は『頑張ります』さえ言えればなんとかなる扱いなのに?」

凛「握手会でヤバいファンに絡まれたトラウマで人前では一生喋れなくなったって事にしとく?」

ぴにゃこら太「今後のアイドル活動に支障が出ますって」

未央「でもレコーディングは大丈夫じゃん」

ぴにゃこら太「ライブはどうするんですか」

凛「口パクでいいんじゃない? ダンスはぴにゃにしてもらってさ」

卯月「ぴにゃ!」グッ

ぴにゃこら太「なにやる気になってんだお前は」

未央「しまむー、その姿で凄むとマジで怖いからやめて」

凛「よし。私にいい考えがあるよ」

未央「ほんとかいしぶりん!」

ぴにゃこら太「お願いしますよ凛ちゃん!」

卯月「ぴにゃぴにゃ!」

~雑誌取材打ち合わせ~

記者「えーと、ニュージェネレーションズの皆さんどうも。今日は撮影の打ち合わせなんですけど……」

凛「はい」

未央「よろしくお願いします」

卯月『よろしくお願いします』

ぴにゃこら太「」ズモモモ

記者「あの……島村さんの後ろの方は?」

凛「え? なんですか?」

未央「私達には何も見えませんけど」

卯月『気のせいじゃないですか?』

記者「いえ……なんだか島村さんの声もその後ろの方から聞こえるような」

凛「お疲れなんじゃないですか? 私達にはなんの事だかさっぱり」

記者「え、いやでも明らかに緑のブサイクな生き物が」

卯月「ぴにゃ!」

記者「え!?」

凛「ふんっ!」ドゴォ!

卯月「びにゃっ!?」

凛「喋っちゃダメでしょ」ヒソヒソ

卯月「ぴ、ぴにゃ……」ヒソヒソ

ぴにゃこら太「殴っちゃダメですよ凛ちゃん! 私の身体なんですから!」ヒソヒソ

記者「あの、今島村さんが」

未央「え、なんの事ですか?」

記者「『ぴにゃ』って鳴いたと思ったら渋谷さんに殴られたような……」

未央「嫌だなあそんな事あるわけないじゃないですか。さあ時間無くなっちゃいますし、お話を進めましょう」

記者「そ、そうですか……」

凛「ね? ぴにゃを無いもの扱いにして、後ろから卯月がアフレコする作戦成功でしょ?」ヒソヒソ

未央「成功というか、哀れなものを見る目で見られてる気がするんだけど」ヒソヒソ

ぴにゃこら太「大丈夫なんですかこれ本当に」ヒソヒソ

凛「記者さん以外の全員が『無い』と言えば、それは無いものなんだよ。ぴにゃは口パクだけしっかりね」ヒソヒソ

卯月「ぴにゃあ……」ヒソヒソ

未央「白いものでも全員が黒と言えば黒となる……か」ヒソヒソ

今回ここまでである
卯月声とへご声が同じ声帯から発せられているとはとても思えないね

~打ち合わせ終了~

記者「……ではひと通り打ち合わせも終わりましたので、次回の本番よろしくお願いします」

未央「はい」

凛「ありがとうございました」

卯月『本番もよろしくお願いします』

記者「はい……それでは私はこれで」ガチャ

記者「……」チラッ

ぴにゃこら太「」ズモモモ

記者「失礼します……」バタン

未央「ふー。何とか乗り切ったね」

ぴにゃこら太「誤魔化しきれたでしょうか」

凛「大丈夫でしょ。仮にあの記者さんがこの事を他人に話しても、頭がおかしくなったと思われるだけだよ」

卯月「ぴにゃ」

凛「ぴにゃが喋れれば問題なかったんだけどね」

未央「声帯はしまむーのはずなのに、何故喋ることが出来ないんだろうか」

ぴにゃこら太「確かに。私も何でぴにゃの声帯で喋ることが出来ているのか謎ですね」

凛「しかもちゃんと卯月の声だしね」

未央「ぴにゃの方はしまむーの身体なのにいつも通りのダミ声だし」

卯月「ぴにゃ?」

未央「うーん。しまむーと同じ喉からこのダミ声が出ているとはとても思えない」

凛「謎だねえ」

ぴにゃこら太「謎ですねえ」

卯月「ぴにゃあ」

未央「人体の不思議だ」

卯月「ぴにゃ……」モゾモゾ

未央「どうしたのぴにゃ。急にクネクネして」

卯月「ぴにゃにゃあ……」

凛「あ、もしかしてトイレ行きたいんじゃ?」

卯月「ぴにゃ……」コクコク

ぴにゃこら太「ええっ!? どうしましょう!」

凛「どうするも何も……行ってもらうしかないんじゃないの?」

未央「それしかないよねえ」

ぴにゃこら太「私の身体なんですよ!? 中身はぴにゃなんですよ!?」

未央「いやー、仕方ないでしょ」

凛「そんな大したことじゃないでしょ? 履いてるもん下ろして、座って、溜まったもの放出して、拭いて、また履く。それだけだよ」

ぴにゃこら太「そんな! いや、せめてぴにゃに目隠しさせて私が一緒にトイレに入りますよ!」

未央「そんな図体じゃ無理だよ。とてもトイレの個室には入れないって」

凛「それにもし他の人に目隠しした卯月とぴにゃこら太が一緒にトイレに入るとこ見られたらどうするのさ」

未央「完全にしまむーとぴにゃがトイレでまぐわってたとかいう噂が立つね」

凛「目隠ししてトイレで獣姦かあ。倒錯のし過ぎでもはや真っ当に直立してるね」

ぴにゃこら太「いやあああああああああああ!!」

未央「お、今のしまむーの叫び声はぴにゃっぽかったよ」

凛「身体がぴにゃだから精神もそっちに引きずられて来たのかな」

ぴにゃこら太「困りますよ! 具体的に何がとは言えませんけど、とにかく困ります!」

未央「そう言われてもこればっかりはねえ」

凛「このままだとぴにゃが漏らすハメになるよ? 身体は卯月だけど」

ぴにゃこら太「それも困ります!」

未央「しまむーだって自分の失禁シーンなんて拝みたくないでしょ?」

ぴにゃこら太「そりゃそうですけど!」

凛「ほら。そろそろヤバイよ」

卯月「ぴにゃああああ……!」ググググ

ぴにゃこら太「うぐぐぐぐ……! せめて凛ちゃんと未央ちゃんが一緒に行って下さい!」

未央「三人で一個の個室にギッチギチに詰まれってか」

凛「ニュージェネレーションズに妙な噂が立っちゃうよ」

ぴにゃこら太「じゃあ未央ちゃん! お願いします!」

未央「え? なんで私?」

ぴにゃこら太「今ぴにゃの隣に立ってるからです! 急いで! ハリー!」

未央「えー……何で友達の排尿シーンを間近で観察せにゃならんのか……」

卯月「ぴ……にゃあ……」ギリギリギリ

ぴにゃこら太「急いで下さい! 早くしないと私のStar!!からShine!!が出ちゃいます!」

未央「仕方ないなあ……ほら行こうぴにゃ。トイレはあっちだよ」

卯月「ぴにゃにゃ……!」

凛「尿意ー尿意ー止まーらなーいー 尿意ー尿意ー止まーれなーいからー」

未央「さーあー同じ便器でー かーなでーようー」

未央・凛「「Don't Stop 尿意ー」」

ぴにゃこら太「GOIN'!!!の最低な替え歌歌ってねえでさっさと行けやあ!!!」

未央「はいはい」

ジャバー

卯月「ぴにゃああ……」スッキリ

ぴにゃこら太「うう……もうお嫁に行けない……」

今回ここまでよ
デレステ林檎版配信はよ

凛「ぴにゃが卯月の身体で排尿したぐらいで大げさな」

ぴにゃこら太「他人事だと思って……」

未央「でもほら。男と入れ替わったわけでもなし、所詮ぴにゃだよ?」

凛「そうそう。そういう事だよ」

ぴにゃこら太「そう……ですね。そうですよね。たかがぴにゃですもんね」

卯月「ぴにゃ……」ガーン

凛「そうだ。お返しに卯月もぴにゃの身体で排泄してくれば?」

未央「ああ、事務所のど真ん中とかでやってきなよ」

卯月「ぴにゃ!?」

ぴにゃこら太「うーん、でもこの身体になってから不思議と睡眠欲も食欲も排泄欲も無いんですよね」

未央「なにそれこわい」

凛「性欲も?」

ぴにゃこら太「性欲もですね」

未央「何を聞いてんだよ。そして何平然と答えてんだよ」

凛「ぴにゃは普段何を摂取してるの?」

卯月「ぴにゃにゃにゃ。ぴにゃにゃぴにゃ」

未央「わからん」

ぴにゃこら太「知らなくていい事だと思いますよ」

凛「そうだね」

未央「じゃあ今後の事について話そうか」

ぴにゃこら太「私が元に戻れる方法を探すんですね」

未央「いや、今後の仕事の方向性を探っていこうと思う」

凛「とりあえずニュージェネレーションズは島村卯月脱退の方向で進めてこうか」

未央「ぴにゃぴにゃしか鳴けないアイドルはもういらないからね」

凛「で、卯月はぴにゃこら太として生きていってもらって」

未央「生存欲求が無いわけだから、もうこれからは何もしなくていいってことだよ」

凛「杏が聞いたらほんとに羨ましがるよ。やったね卯月」

ぴにゃこら太「戻れない前提で話すのやめてもらっていいですか?」

未央「でも今すぐ元に戻るっていうのは難しそうだし」

凛「しばらくはお互いこのままでいることになりそうだよ?」

ぴにゃこら太「そんなあ……!」

卯月「ぴにゃ……!」

未央「あるのかもわからない解決策をウンウン悩むよりは、とりあえずこの状況を凌ぐ方法を模索した方がいいよ」

ぴにゃこら太「ありますよ! 解決策絶対ありますって!」

凛「世の中得てして、あるものより無いもののほうが多いもんなんだよ」

ぴにゃこら太「嫌ですって! ぴにゃだって戻りたいですよね!?」

卯月「……」

ぴにゃこら太「おい」

卯月「ぴ、ぴにゃ!」

未央「おやおや? 『このままでも悪くないかな』みたいな感じだぞ?」

凛「下克上の発生だ」

ぴにゃこら太「ダメですって! そいつは私の身体だ! 絶対に渡さんぞ!」

未央「なんか主人公とかヒロインの身体乗っ取ろうとする系の悪役みたいなこと言い出した」

凛「とりあえず私達はフォロー出来るように常に卯月と一緒にいるようにするから」

未央「しまむーは一人でぴにゃとして活動してね」

ぴにゃこら太「えー……怪しまれないようにぴにゃらしく出来るでしょうか……?」

凛「大丈夫でしょ。適当にぴにゃーぴにゃーって鳴いてバタバタしてれば良いんだよ」

ぴにゃこら太「そんな雑な」

未央「それでいいのぴにゃ」

卯月「ぴにゃ」コクコク

ぴにゃこら太「良いんだ」

凛「えーと、とりあえず私達はこの後レッスンの予定だけど、ぴにゃはどうなってるのかな」

卯月「ぴにゃにゃぴにゃ」

未央「めんどくせえから筆談させよう」

ぴにゃこら太「ああ、なんでそれ最初にやらなかったんでしょうね」

凛「ぴにゃって文字書けるのかな」

卯月「ぴにゃにゃ……」カキカキ

卯月「『テレビ局内をウロウロする』」

未央「書けるんだ」

ぴにゃこら太「しかもなかなか達筆ですね」

凛「いや、そもそもテレビ局内をウロウロってなに」

未央「不審者もいいところだよね」

卯月「ぴにゃ 『宣伝活動』」

ぴにゃこら太「あー、ぴにゃがマスコットの番組がありましたっけ」

凛「ああ、それの宣伝活動ってことね」

未央「テレビ局内で宣伝やってどうすんだ」

凛「じゃあ行こうか」

ぴにゃこら太「あ、その前にお母さんに連絡させてください」

未央「永久の別れの言葉?」

ぴにゃこら太「んな訳あるか。この状態じゃ帰れませんから、今日は友達の家に泊まるって言うんですよ」

凛「ちなみに誰の家に泊まるつもりなの?」

ぴにゃこら太「凛ちゃんの家です」

凛「やだよ」

ぴにゃこら太「いいじゃないですか! 凛ちゃんの家花屋さんなんですから珍しい植物だと思って置いてくださいよ!」

凛「そんなおぞましいもん置いてる花屋はない」

未央「しまむーはテレビ局の倉庫に詰まってればいいじゃん」

ぴにゃこら太「分かりました……じゃあ私の身体だけでも置いて下さい」

未央「置くっていう言い方やめようよ」

卯月「ぴにゃ」

凛「うーん……でもぴにゃぴにゃしか言えない卯月を家に連れて行くと説明が面倒だからなあ……」

ぴにゃこら太「お願いしますよ凛ちゃん! 身体だけ! 私の身体だけでいいんです! 身体だけの関係でいいんです凛ちゃん!」

凛「おい」

ぴにゃこら太「身体だけ! 私との関係は身体だけでいいんです! 私それでも満足ですから! お願いだから凛ちゃんのところに置かせて下さい!」

凛「分かったからでかい声で言うな!!」

未央「しまむー順調におかしくなってきたな」

卯月「ぴにゃ……」

ぴにゃこら太「じゃあ電話するんで、かけてもらっていいですか」

未央「ああ。その腕じゃ何も出来ないよね」

ぴにゃこら太「落ち着いて考えたら何も出来ないんですよねこの身体」

凛「えー、090の……」

prrrrr

ぴにゃこら太「あ、もしもし? ママ? うん、うん。今日は友達の家に泊まるから。うん」

凛「じゃ、私達ぴにゃ連れてレッスン行ってくるから」

ぴにゃこら太「変な事しないように注意して下さいね」

未央「風邪で喉やられたって事でマスクさせとくから」

凛「喋らないようにはさせとくからさ」

ぴにゃこら太「お願いしますよ! ほんとですからね!」

凛「わかったわかった」

ぴにゃこら太「もし何かあったら私のそっくりさんって事にしてくださいよ! 絶対ですよ!」

未央「はいはい」

ぴにゃこら太「トイレはどっちかが付いて行ってくださいよ! あともし大の方だったら」

未央「はよ行け!」

卯月「ぴにゃあ」

今回ここまで
林檎のデレステまだなの……?

~テレビ局~

ぴにゃこら太「うーん……なるべく知ってる人に会わないようにしなきゃですね……」テクテク

ぴにゃこら太「あ、あと子供にも注意ですね……奴らは遠慮なく着ぐるみ的なものをボコる術に長けた生き物ですし……」

莉嘉「あー! ぴにゃこら太だー!」

みりあ「ぴにゃだー!」

ぴにゃこら太(げぇーっ! よりによって加減を知らないお子様共に出会ってしまいました!)

莉嘉「ぴにゃこら太、どこ行くの?」

みりあ「一緒にあそぼーよ!」

ぴにゃこら太「ぴ、ぴにゃにゃ」ブンブン

みりあ「そっかー。忙しいんだね」

莉嘉「そうなんだ。それなら仕方ないねえ」

ぴにゃこら太「ぴにゃぴにゃ」

ぴにゃこら太(た、助かったあ……莉嘉ちゃんとみりあちゃんには悪いですけど、このまま退散して……)

莉嘉「じゃあいつものアレだけやっていーい?」

みりあ「あ! みりあもやりたーい!」

ぴにゃこら太(『いつものアレ』……? なんでしょう……分からないけど、それだけやって人目のつかない所に……!)

ぴにゃこら太「ぴにゃあ!」

莉嘉「やったー!」スチャッ

みりあ「わーい!」スチャッ

ぴにゃこら太(編み棒? それで何を?)

莉嘉「じゃあやるよー☆」

ぴにゃこら太「ぴ、ぴにゃ!」

ぴにゃこら太(こうなったらどんと来いです!)

莉嘉「ぐさぁー!!」ゾブッ

ぴにゃこら太「ぅぐうっ」ブシュァ

莉嘉「えっ」

みりあ「えっ」

ぴにゃこら太(こ、このガキ、腹に編み棒突き刺してきやがりました……!)

莉嘉「あれ……編み棒が刺さった……?」

みりあ「それに今なんか呻いたような……」

ぴにゃこら太(反射的に呻いてしまいました……このままじゃバレちゃう……)

ぴにゃこら太「ぴ……ぴにゃあ……」

莉嘉「気のせいだったのかな……」

みりあ「でもいつもなら編み棒をボインって跳ね返すのに……あれ? 莉嘉ちゃんその編み棒に付いてるの……」

莉嘉「え? なにこれ……緑色の……血?」

みりあ「なにそれ気持ち悪い……」

莉嘉「うわあ……みりあちゃん、次どうぞ……」

みりあ「え、やだ。みりあはやらない」

ぴにゃこら太(今です!)

ぴにゃこら太「ぴにゃにゃー!!」ダダダッ

莉嘉「あ、逃げた」

みりあ「なんだったんだろう……」

ぴにゃこら太「はぁー……はぁー……血、血が……」

ぴにゃこら太「あれ、出てない……? もう治ってる」

ぴにゃこら太「ほんとなんなんでしょうこの身体……怖い……」

ぴにゃこら太「しかしぴにゃはいつもあんな事されてるんですかね……ぴにゃも大変なんだなあ……」

ぴにゃこら太「というかあのガキ共躊躇いなく腹に編み棒突き刺してくるってなんなんですか……どんな教育されてるんですか……」

ぴにゃこら太「凛ちゃんと未央ちゃんは上手くやってくれてるでしょうか……」

~レッスンルーム~

凛「いい? 喋っちゃダメだからね」

卯月「ぴにゃ!」

未央「返事だけはいいんだけどなあ」

凛「打ち合わせの時も喋りくさったからね」

卯月「ぴにゃにゃ!」

未央「頼むよほんとに」

凛「あ、トレーナーさん来たよ」

ベテラントレーナー「おはよう」

凛「おはようございます」

未央「おはようございます」

ベテトレ「島村、そのマスクはどうしたんだ」

未央「風邪です」

ベテトレ「大丈夫なのか?」

凛「ちょっと喉をやられて声が出ないだけなんで大丈夫です。ね? 卯月」

卯月「……」コクコク

ベテトレ「そうか。ならいいが」

未央「はい。時々『ぴにゃ』って言うかもしれないですけどお気になさらずに」

ベテトレ「気にするわ。なんだそれは」

凛「風邪の影響で『ぴにゃ』としか言えない喉になったんです」

ベテトレ「そうか……特殊な喉の潰し方をしたな……」

未央「じゃあレッスン始めましょう」

ベテトレ「よし。まずは柔軟から」

凛「はい」

卯月「ぴにゃ」

ベテトレ「ほんとに『ぴにゃ』って言うのか……」

凛「すいませんちょっと柔軟待っててください」

未央「少しあっちで相談してくるんで」

ベテトレ「あ、ああ」

凛「お前喋んなよっつったべや」

卯月「ぴにゃ……」

未央「しぶりん、ヤンキーみたいな口調になってる」

凛「お前私が『喋んな』つったら『はい』っつったよな? な?」

卯月「ぴにゃにゃ……」

未央「怖い怖い」

凛「なんか私違うこと言ってる? ねえ? 喋んなつったら喋ったらダメなの。いい?」

卯月「ぴにゃぴにゃ!」

凛「お願いだからねマジで」

未央「お願いぴにゃこら太」

卯月「ぴにゃ」

凛「よし」

未央「相談終わりました」

ベテトレ「そうか」

今回ここまで
林檎デレステ来たぞやったね。でもまゆがまだ来てない

~またテレビ局~

拓海「おー、ぴにゃじゃねえか! ちょうどいいや。新調したこの木刀の具合試させてくれよ」

ぴにゃこら太(何言ってんでしょうかこのちょろおっぱい)

早苗「あ! ぴにゃ! 私が新しく考えたオリジナルの捕縛術の実験台になってくれない? ちょっと関節がヤバくなるかもだけど」

ぴにゃこら太(何言ってんですかねこの酒乱おっぱい)

雫「あ、ぴにゃこら太さんですー。あのですねー。ここ最近アイドル活動が忙しいので、搾乳技術が衰えてないか、ぴにゃこら太さんで試してみてもいいですかー?」

ぴにゃこら太(何言ってんだこの牛乳おっぱいは。というかPaのおっぱい共はどうなってるんですか)

~またレッスンルーム~

ベテトレ「何やってんだ島村ァ! 遅れてるぞ!」

卯月「ぴにゃあ……」ゼーゼー

凛「容赦ないなあ」

未央「一応風邪設定なのに鬼だね」

ベテトレ「どうした島村ァ! 動きが硬いぞ!」

卯月「ぴ、ぴにゃにゃあ……」ゼーゼー

ベテトレ「お前のやる気はそんなもんか!? タマ落としたか!?」

凛「元々付いてないですよ」

未央「待ってください。しまむーは風邪なんですよ? 加減してくださいよ(ほんとは違うけど)」

ベテトレ「でも私若くて可愛い子をいじめるのが楽しくてアイドルのトレーナーやってる節あるからなあ」

凛「性格ひん曲がってますね」

未央「病人はいたわってくださいババトレさん」

ベテトレ「誰がババトレか。まだ26歳だ。それにまだ上に一人姉がいる」

凛「下に二人も妹がいるってことですよ」

未央「アラサーですよアラサー」

ベテトレ「よーしレッスンの量増やすか」

~そんなこんなで合流~

ぴにゃこら太「大丈夫でしたか?」

凛「鬼のようなレッスンを食らったよ」

未央「反吐に溺れて死ぬかと思った」

卯月「ぴにゃにゃ……」

凛「そっちは?」

ぴにゃこら太「莉嘉ちゃんに編み棒突き刺されました」

未央「なにがあったのそれ」

ぴにゃこら太「こっちが聞きたいですよ」

凛「こっちも大変だったよ。ぴにゃに喋るなって言ったのにぴにゃぴにゃ鳴き出すからさ」

ぴにゃこら太「ええっ!? 大丈夫だったんですか?」

未央「ぴにゃが鳴く度にしぶりんが呼び出して、ドス効かせた声で『喋るな』って釘刺してた」

ぴにゃこら太「完全に私が凛ちゃんにいじめられてる図じゃないですか」

凛「あ、そうか……私のイメージダウンになったら困るなあ……」

ぴにゃこら太「そこなんですか?」

未央「もっと根本的ないじめカッコ悪い的な問題を気にしようよ」

凛「ごめんねぴにゃ」

未央「軽いなあ」

卯月「ぴにゃあ」

ぴにゃこら太「おトイレはどうでした?」

未央「一度だけ私が一緒に行ってきたよ」

ぴにゃこら太「ご迷惑をお掛けしました」

卯月「ぴにゃ」

未央「ほんとだよ。私が変な性癖に目覚めたらしまむーのせいだからね」

ぴにゃこら太「いや、未央ちゃんの性癖までは責任持てませんよ。そこは自己責任でお願いします」

ぴにゃこら太「あ、そういえばぴにゃはレッスンに付いてこられたんですか?」

凛「うん。いつもの3割増くらいの地獄のような特訓に付いてきたんだよ。凄いよぴにゃ」

未央「そうそう。レッスンの成果もあって、ぴにゃが人語を喋れるようになったんだよ」

卯月「ぴにゃ!」

ぴにゃこら太「そういうレッスンではないですよね?」

凛「まぁとにかく見てみてよ。ほらぴにゃ」

卯月「ガンバリマス! ガンバリマス! ガンガンバリマス! ガバリマガンバリ! ガンバリマス!」

ぴにゃこら太「壊れたレコードか何かですか」

凛「でも最初と比べたらすごい進歩でしょ」

卯月「ガンバリマス! ガンババス! ガリマス! ガバマス! ガンバ! ガンバ! ガンガンガンバ!」

未央「ガリマスっていうと登場アイドル全員ガリガリみたいだからやめようよ」

凛「ガバマスだと登場アイドル皆ガバガバみたいだね」

ぴにゃこら太「というか最後ガンバの冒険のOP歌ってましたよね?」

凛「これで歌も大丈夫だね」

ぴにゃこら太「ガンバの冒険の出だししか歌えないアイドルってなんなんですか」

未央「でも見方を変えればガリバーと喋る事も出来るわけだ」

ぴにゃこら太「だからなんだ」

未央「これでしまむーの代わりが出来るね」

ぴにゃこら太「ダメですよ! 私の代わりはいませんってば!」

凛「まぁ冗談はここまでにしておいて、そろそろ卯月とぴにゃを元に戻す方法を探そうか」

未央「そうだね。これ以上しまむーが排泄する度に補助してたら、私の性癖が元に戻れなくなりそうだからね」

ぴにゃこら太「未央ちゃん、今の段階でそっち方面に歪むと将来ご両親の介護とか出来なくなっちゃいますよ」

未央「だって考えてもみてよ。しまむーがトイレでオシッコしながら『ぴにゃ?』ってこっち見上げてくるんだよ?」

凛「あー、ヤバい。それはヤバいね」

ぴにゃこら太「ぎゃああああああああ!!!」

未央「仕上げに拭いてあげる時に声とか出されるともう、もうね」

凛「ちょっとぴにゃ、今度トイレ行きたくなったら私に言ってね」

卯月「ぴにゃ」

ぴにゃこら太「わー! わー! この話やめです! 一刻も早く元に戻る方法を探しましょう!!」

凛「あ、レッスンの間に原因に心当たりがありそうな人達に連絡とったんだけどね」

未央「一応しまむーの事は伏せて聞いたからね」

晶葉『何か妙なことがあると全て私のせいにするのはやめろ』

志希『知らなーい。あたしの薬はあくまで化学の産物であって、そんな訳の分からない作用は無いんだなー。あ、でもそのぴにゃハスハスさせて欲しいかも』

裕子『えっ!? まさかこの前の修行の余波が……! 待ってて下さい! 今サイキックで解除しますからね! ムムムムーン!』

凛「とまぁ、誰も分からなかったよ」

ぴにゃこら太「裕子ちゃんは一応解決しようとしてくれてますけど」

未央「いやー効果ないってわかりきってるでしょ」

今回ここまでよ
デレアニ色々胃痛回だったけど頑張れ。卯月超頑張れ。頑張るのを頑張れ

凛「とりあえず今日はもう帰らない? 寝て起きたら治ってるかもしれないし」

未央「そんな風邪じゃないんだから」

ぴにゃこら太「でも確かに休みたいですね。この身体、疲労感は無いですけど、一日歩き通しで、もう膝が笑ってる気がします」

凛「膝……? え、どこ?」

未央「ぴにゃの膝……?」

ぴにゃこら太「ここですよここ。ホラ見て下さいよ」

凛「いや、ほんとにどこ? 」

未央「ちょっと膝笑わせてみて」

ぴにゃこら太「ここです。ここ」プルプル

凛「あーほんとだ。プルプルしてる。なんだこれ気持ち悪い」

未央「すごいね。うちのお爺ちゃんよりプルプルしてるよ」

ぴにゃこら太「ね?」

卯月「ぴにゃ」プルプル

未央「ぴにゃは別にプルプルさせなくてもいいんだよ」

卯月「ガンバリマス」

凛「大丈夫だよ。もう頑張らなくてもいいんだよ」

未央「辛かったね。よしよし」

ぴにゃこら太「私が病んでるみたいに扱うの、やめましょう?」

凛「この状況は充分病んでるよ」

未央「さあ茶番はここまでにしてそろそろ帰ろうか」

ぴにゃこら太「茶番って言った」

凛「そうだね。行こうかぴにゃ」

卯月「ぴにゃ」

ぴにゃこら太「はい」

凛「ちょっと待った。何普通に卯月まで付いてこようとしてるの?」

ぴにゃこら太「だってテレビ局の倉庫嫌なんですもん」

未央「まあそりゃそうだ」

凛「いやいや、卯月ボディのぴにゃだけならまだしも、流石にぴにゃボディの卯月までは家に連れていけないよ」

ぴにゃこら太「私は別に気にしませんよ? お構いなく」

凛「そりゃお前はな? 私は気にするの」

ぴにゃこら太「でも私には関係ないですし」

未央「私にも関係ないからどうでもいいや」

凛「いい加減にしとけよアンタら」

未央「仕方ないねしまむー。今日は倉庫に詰まっててよ」

ぴにゃこら太「残念です……」

卯月「ぴにゃあ」

凛「じゃあ私がぴにゃ連れて行くから、未央は卯月連れてきなよ」

未央「えー、まあ良いっちゃ良いんだけど……」

ぴにゃこら太「えっ!? 本当ですか未央ちゃん!」

未央「うん。でも、うちには遊びたい盛りの小学生の弟がいるけど……いい?」

ぴにゃこら太「あ、子供はNGです。何されるか分かったもんじゃないので」

凛「子供って着ぐるみ的なものをボコるのが好きな生き物だからね」

卯月「ぴにゃぴにゃ」

未央「じゃあ私は帰るから」

凛「私達も行くよぴにゃ」

卯月「ぴにゃにゃー」

ぴにゃこら太「私の身体、よろしくお願いしますね凛ちゃん」

凛「任せてよ。おはようからおやすみまで、そしてトイレまで見つめるから」

ぴにゃこら太「別にそこは見つめなくても良いんですけどね」

未央「じゃーねー」

凛「じゃ」

卯月「ぴにゃあ」

ぴにゃこら太「はあい」

ぴにゃこら太「……」

~倉庫~

ぴにゃこら太「ふう……」

ぴにゃこら太「この身体、睡眠は必要無いみたいですし、朝まで一人でここにいるのかあ……」

ぴにゃこら太「一人ぼっちでいるのは寂しいなあ……」

ぴにゃこら太「もしこのまま戻れなかったらどうしよう」

ぴにゃこら太「家族にも友達にも、もう私として会えなかったら……嫌だなあ……」

ぴにゃこら太「はっ、いけないいけない。一人だとついネガティブな考えになっちゃう」

ぴにゃこら太「島村卯月……頑張ります……」

ぴにゃこら太「……いや、この状態で何を頑張ればいいん……だ……ろう」

ぴにゃこら太「……あれ……? なんだか……意識……が……遠く……」

ぴにゃこら太「おかしいな……すごく……眠い……これ……まさか……このまま……死……」

……チャン……ヅキチャン……ウヅキチャン……

ぴにゃこら太「声……? 誰……の……」

今回ここまで。デレアニで卯月が大変な事に
でもなんていうかその……下品なんですが……フフ……卯月の泣き顔に興奮しちゃいましてね……

~???~

ウヅキチャン……ウヅキチャン……

卯月「うーん……あと15時間……」

ぴにゃこら太「どれだけ惰眠をむさぼる気なの君は。杏ちゃんじゃないんだから」

卯月「はっ!? ぴにゃ!?」

ぴにゃこら太「気付いた?」

卯月「ここは……? あれ、身体が!」

ぴにゃこら太「うん。ここは精神の世界だからね」

卯月「だからぴにゃも普通に喋れるんですね」

ぴにゃこら太「あー、うん。そうなんだぴにゃ」

卯月「そんないきなり取ってつけたような語尾にしなくても」

ぴにゃこら太「イメージ大事かなって思って」

卯月「急にイメージ付けしても逆に印象薄くなりますよ」

ぴにゃこら太「卯月ちゃんが言うとなんだか説得力があるね」

卯月「どういう意味ですかそれ」

ぴにゃこら太「まぁそれは置いといて、何で僕が会いに来たのかって説明をするね」

卯月「はぁ」

ぴにゃこら太「起きたら元に戻ってるよって話をしにきたの」

卯月「はぁ」

卯月「……はぁ?」

ぴにゃこら太「アイドルが出しちゃいけない声が出てたよ」

卯月「えーと……つまりその……なんですか?」

ぴにゃこら太「治るよ。僕と君との入れ替わり」

卯月「……なんでそんな大事な事さらっと言うんですか」

ぴにゃこら太「重く言っても、さらっと言っても、結果は変わらないよ」

卯月「そういう事じゃないんですよ!」

ぴにゃこら太「ええー……これだから女の子は……」

卯月「いや、そもそも原因はなんなんですか原因は!?」

ぴにゃこら太「原因……原因ねえ」

卯月「な、なんですか……?」

ぴにゃこら太「うーんまあ、原因はあるよ? そりゃあね」

卯月「なんなんですか?」

ぴにゃこら太「原因はねえ、卯月ちゃん。君だよ」

卯月「え、ええー……?」

ぴにゃこら太「大丈夫? 受け入れられてる?」

卯月「いや……まだ受け入れられきれないんですけど……」

ぴにゃこら太「そりゃあそうだよね」

卯月「で、でも……原因が私だなんて言われても全く心当たりが無いんですけど」

ぴにゃこら太「本当に?」ズモモモモ

卯月「近い近い近い」

ぴにゃこら太「本当に心当たりはない?」

卯月「うーん……うーん……」

ぴにゃこら太「三日前。テレビ局」

卯月「三日前……テレビ局……うーん……」

卯月「……あっ」

ぴにゃこら太「思い出した?」

卯月「なんとなく……ですけど」

卯月「あれですよね? お仕事を終えて局の中を歩いてる時の……」ポワワワーン

卯月『今日もお仕事頑張りましたね』

凛『ヘトヘトだよもう』

未央『そこそこ売れてくるようにはなったけど、アイドルってハードだよねえ……』

卯月『あれ? あそこにあるのは……』

凛『うん? どうしたの卯月』

卯月『あれです。あそこ見て下さい』

未央『あれは……ぴにゃこら太?』

凛『ほんとだ。大きなぴにゃこら太が飾ってある』

未央『えーとなになに……『番組開始記念 等身大ぴにゃこら太着ぐるみ』……だってさ』

凛『そもそもぴにゃこら太の等身大ってなに? 架空の生き物でしょあれは』

未央『等身大ガンダムみたいな事じゃないかな』

卯月『番組で使う着ぐるみを飾ってるんですかね?』

未央『そうみたいだね。迫力あるなあ』

凛『なんだかこれだけでひとりでに動き出しそうで怖いよ』

卯月『ほんとに動き出しそうですね……』

未央『あ、そろそろ事務所戻らなきゃいけない時間だよ。行こ?』

凛『うん』

未央『行くよーしまむー』

卯月『あ、はーい』

卯月『……』ジー

ぴにゃこら太『……』

卯月『こうして見ると意外と可愛い見た目してる……のかな?』

卯月『でも本当にひとりでに動き出しそう……動いたら楽しそうだなあ』

卯月『生きてますかー? ぴにゃは元気ですかー?』

ぴにゃこら太『……』

卯月『な、なんちゃって……えへへ』

卯月『あ、この着ぐるみの中に私が入るのもいいかも……ちょっとやってみたいなあ』

未央『おーい! しまむー! はやくー!』

凛『卯月ー! 先に行っちゃうよー!』

卯月『は、はーい! すみませーん!』

卯月『……じゃあまたねぴにゃ。いつか一緒にお仕事出来るといいですね。えへへ』

卯月『凛ちゃーん! 未央ちゃーん! 待ってくださいよー!』タタタッ

ぴにゃこら太『……』

ポワワワーン

卯月「というようなことがありましたけど」

ぴにゃこら太「それだよ」

卯月「いやいやいやいや」

ぴにゃこら太「卯月ちゃんは言いました。僕が動いたら楽しいと」

卯月「言いましたけど」

ぴにゃこら太「私が中に入るのもいいかもとも言いました」

卯月「それも言いましたけど」

ぴにゃこら太「そしたらこうなるよ」

卯月「なりませんよ」

ぴにゃこら太「不思議な事が世の中にはいっぱいあるんだよ」

卯月「いや、だとしてもぴにゃが一人で勝手に動いてくださいよ!」

ぴにゃこら太「まぁ惜しくも多少願いが混ざって、結果として入れ替わる事になったけどね」

卯月「とんだ迷惑なミラクルですね」

ぴにゃこら太「まだ良い方だと思うよ? もし僕と卯月ちゃんが混ざり合って、ぴにゃ村卯月にでもなってたら大変だったよ」

卯月「私の全身に緑の毛が生えることにならなくて良かったです」

ぴにゃこら太「近年そういうのが流行ってるらしいから、需要あるっちゃあるよ。ケモノ属性っていうの?」

卯月「そんなベクトルで普通から外れるのは嫌です」

ぴにゃこら太「あとはそうだなあ……もし僕が存在せずに、卯月ちゃんだけが僕の中に入ってたら……」

卯月「入ってたら……?」

ぴにゃこら太「魂の抜けた卯月ちゃんの身体は腐っていっただろうね」

卯月「迷惑極まりないですね。いや、もしそうなってたら凛ちゃんの家のお花用冷蔵庫に入れてもらえばあるいは……?」

ぴにゃこら太「それ傍から見たら普通に死体遺棄容疑で刑事事件だよ。どれだけ凛ちゃんに迷惑かけるの君は」

今回ここまで
頑張れ島村負けるな島村。今の卯月に必要なのは松岡修造だと思う。それか江頭2:50

卯月「あ、凛ちゃんといえば、今ぴにゃは凛ちゃんの家にいるんですよね?」

ぴにゃこら太「うん」

卯月「どうですか? 特に問題とか無いですか?」

ぴにゃこら太「今のところは大丈夫かな。やたら凛ちゃんが僕と……というか卯月ちゃんの身体とトイレに行きたがるくらいで」

卯月「それ大いなる問題ですよ」

ぴにゃこら太「五分に一度は『ぴにゃ、トイレ行きたくない?』って聞いてくるんだよね」

卯月「そんな頻度で排泄してたら干からびますよ」

ぴにゃこら太「ちなみにあまりにしつこかったから、今一緒にトイレ行ってる所だった」

卯月「私の貞操が危ない! なんでそんなタイミングで精神世界来ちゃったんですか!?」

ぴにゃこら太「いやあ、オシッコしてる最中に『あ、今繋がりそう』って瞬間が来ちゃったんだよね」

卯月「TPOをわきまえろよ精神世界の電波!!」

ぴにゃこら太「さて、伝えるべき事は伝えたし、僕はそろそろ行かなきゃ」

卯月「ま、待ってくださいぴにゃこら太! まだお話したいことがいっぱいあるんです! 行かないで!」

ぴにゃこら太「卯月ちゃん……君のその気持ちは嬉しいよ」

卯月「いえ、そういうんじゃなくて、原因分かってたならなんで最初に教えてくれなかったのかとか」

ぴにゃこら太「ああ、そっち……」

卯月「それ以外になにか?」

ぴにゃこら太「いや別に……原因ね。それ言ったよ?」

卯月「へ?」

ぴにゃこら太「未央ちゃんに『何か心当たりはない?』って聞かれた時に」

卯月「あの時ぴにゃぴにゃ言っただけじゃないですか!!」

ぴにゃこら太「あのぴにゃぴにゃの中に全ての理由が詰まってたんだよ」

卯月「筆談出来るんだからそっちで言ってくれれば良かったのに!」

ぴにゃこら太「『書いて説明して』って言われなかったからなあ」

卯月「マニュアル人間かおのれは!」

ぴにゃこら太「人間じゃないよ」

卯月「そういう事じゃねえんですよ」

ぴにゃこら太「えーと、僕も入れ替わった直後は混乱しててね。なにせ命を授かった直後だった訳だから」

卯月「命を授かったって……ぴにゃは前からグッズとか、マスコットとしてちゃんと存在していたじゃないですか!」

ぴにゃこら太「何言ってるの卯月ちゃん。あれはただのキャラクターとしての僕だよ。グッズが生きてるわけないじゃない。少しは考えてよ」

卯月「まさかこの状況でそんなド正論聞くとは思ってなかったなあ」

ぴにゃこら太「編み棒突き刺されたり、なんか体のいいサンドバッグ扱いされてるのもただの着ぐるみだしね。僕の着ぐるみ、お腹の部分に耐ショック性のある材質が使われてるんだ」

卯月「ああ……通りで……」

ぴにゃこら太「子供がしょっちゅう殴りかかってくるからね」

ぴにゃこら太「まあとにかく、凛ちゃんの家で落ち着いて考えていたら色々思い出してきたって感じかな」

卯月「そうだったんですか……」

ぴにゃこら太「そうやって思い出していく内に、君と僕の精神世界のチャンネルを繋ぐことも出来るようになったんだ」

卯月「えらく色々かっ飛ばしましたね」

ぴにゃこら太「元々僕は概念的存在だから、そういうの得意なんだ。今回は君のおかげで肉体を得ることが出来たけど」

卯月「入れ替わっちゃいましたけどね……でも、やっぱり私が言った事が原因でこうなったなんて思えないです……」

ぴにゃこら太「うーん……卯月ちゃんが言った事というよりは……君の笑顔かな」

卯月「笑顔……?」

ぴにゃこら太「あの時、卯月ちゃんは僕に笑いかけてくれたでしょ?」

卯月「ああ、そういえば……」

ぴにゃこら太「あの笑顔があまりにもキラキラしてて、輝いていたから、君の側に行ってみたくなっちゃったんだ」

卯月「ぴにゃ……」

ぴにゃこら太「卯月ちゃんの笑顔は、奇跡を起こせる笑顔なんだよ……個性が無いのを気にしてるみたいだけど、自信を持ってね」スゥゥゥ

卯月「……! ぴにゃ、姿が消えかかって……」

ぴにゃこら太「もう行かなきゃ。さよなら卯月ちゃん。たった一日だけだったけど、卯月ちゃんと凛ちゃんと未央ちゃんで過ごした時間、楽しかったよ」

卯月「待って……待って……ぴにゃ……」

ぴにゃこら太「君の笑顔は命を持っていなかった僕に命をくれたんだ。すごい力を持ってるんだよ。その笑顔なら、きっとトップアイドルになれるよ……」

卯月「ぴにゃ……待ってください……」

ぴにゃこら太「さよなら卯月ちゃん……」

卯月「ま、待って……! まだ、まだもう少しだけお話を……!」

ぴにゃこら太「目が覚めたら君の身体は元通りだよ。凛ちゃんの家で目覚めるはずだ。ああ、僕の身体はただの着ぐるみに戻るから安心してね」

卯月「嫌ですよ、たった一日でお別れなんて……!」

ぴにゃこら太「……元々『生きたぴにゃこら太』なんてのがいる方がおかしいんだよ」

卯月「それはそうですけど……」

ぴにゃこら太「凛ちゃんと未央ちゃんによろしくね。それから……最後に僕から一つだけ」

卯月「な、なんですか……?」

ぴにゃこら太「着ぐるみの中の人ってね……かなりのハードワークなんだよ……」スゥゥゥッ

卯月「最後の一言それ!? 待って! 待ってぴにゃ! ぴにゃああああああああああ!!!」

――――――――――
――――――――
―――――
―――
――


卯月「ぴにゃあああああああ!!!」

凛「どうしたのぴにゃ? 大丈夫だからねー。はーい、シーシー終わったらフキフキしましょうねぴにゃ」

卯月「あっ」

凛「……あっ?」

卯月「……おはようございます。渋谷さん」

凛「……おはようございます。島村さん」

卯月「……戻ったみたいです」

凛「……そうみたいですね」

卯月「……」

凛「……」

凛「あー、その……よかったね。おめでとう」

卯月「あ、はい。ありがとうございます」

凛「……」

卯月「……」

卯月「凛ちゃんの家のおトイレ、広いですね」

凛「そうかな……普通じゃないかなあ……?」

卯月「……」

凛「……」

卯月「それでですね」

凛「うん」

卯月「いい加減私の股間に伸びている手をどけてもらっていいですか?」

凛「あ、うん」

卯月「……」

凛「……」

凛「……」フキ……

卯月「何そっと拭いてるんですか」

凛「いやもう少しだけ……」

卯月「いいから早く手をどけろ目をひっぱたくぞ」

凛「すいません」

~事務所~

未央「おはよー、ってどうしたのしぶりん。その目のアザ。パンダみたいになってるよ」

凛「転んだ」

卯月「転んだんです」

未央「うおっ、ぴにゃが喋れるようになってる!? 何したの? 人間の脳でも食ったの?」

卯月「未央ちゃんこそ何を食べてたらそういう発想が出来るようになるんですか?」

凛「本人だよ。ここにいるのはぴにゃじゃなくて島村卯月さんだよ」

未央「おお。治ったんだ」

卯月「おかげさまで」

未央「うん? という事は……ぴにゃは?」

凛「ああ、それ私もまだ聞いてなかった。どうしたの?」

卯月「ぴにゃは……行っちゃいました」

未央「どこに? 森とか?」

凛「ただの着ぐるみになったって事?」

卯月「しいて言えば概念的な場所というか、数あるぴにゃこら太の可能性の収束点というか、お空の上というか」

凛「なにそれこわい」

卯月「とにかく、きっとまた会えますよ」

未央「ふむん。そういやずっと聞いてなかったけど、なんでただの着ぐるみであるぴにゃと入れ替わる事になったの?」

卯月「それはですね……笑顔の力です」

凛「またなんか『笑顔』って言っとけばいいと思って」

卯月「違いますよ! 笑顔には本当に力があるんです!」

凛「はいはい」

未央「まあ実際しまむーの笑顔見てると元気が出る気がするからね」

卯月「そうでしょうそうでしょう」エヘン

凛「確かに。卯月の笑顔は元気の出るクスリだね。ヤク漬けスマイル」

卯月「それは違う」

未央「じゃあとりあえず、今日もしまむーのスマイルドラッグをキメて、お仕事頑張っていこー!」

卯月「お、おー!」

凛「おー」

卯月(笑顔を絶やさずにいれば……またすぐに会えますよね。ぴにゃ……)

~その後~

未央「なんか最近、中に誰もいないはずのぴにゃの着ぐるみから時々『ガンバリマス』って声が聞こえるって噂になってるんだけど」

凛「巷では『島村卯月の生き霊がとり憑いてる』ってもっぱらの噂だよ」

卯月「迷惑だから処分してもらいましょう。あの着ぐるみ」



おわり

以上で終了
アニメの最終回がもうすぐで楽しみだけど寂しい。武内Pが見れなくなるのが一番寂しい

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom