【ダンガンロンパ×モバマス】卯月「他の事務所で研修……ですか?」 (92)


・このSSはダンガンロンパ×アイドルマスターシンデレラガールズのSSです

・キャラは全員モバマスです

・ダンロン×モバマスのSSは存在します。比較等はしないようお願いします

・メインの登場人物はいわゆる“総選挙51位”のキャラが多く出演します

・ファンタジー・非現実的要素が含まれる場合があります

・グロテスクな描写が含まれる場合があります

・推理等のレベルが酷く低い場合があります


以上のことをご理解・ご了承の上、ご一読ください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1388366468

???日目 Morning


ちひろ「そうそう。このメモに書いてる住所のところにある事務所に行ってもらいたいのよ」

卯月「これですか? どれどれ……?」

卯月「わっ、ここってかなり遠い!? 今から行ってもお昼になっちゃいますよ!」

ちひろ「そうは言われてもね……。上からの指示だし、こればっかりはどうも」

卯月「そんなぁ……」

ちひろ「一応今日の仕事は全部キャンセルしてあるわ。さすがに家から通うのはつらいだろうから、向こうには寮も付いてるし。大丈夫よ」



卯月「泊りがけなんですか!? ……ってそれはそうですよね、研修っていうぐらいですし」

ちひろ「そんなに身構えなくても大丈夫よ。アイドルとしてより高みを目指すためのお勉強みたいなものだし」

卯月「き、聞くだけで気が滅入りそうな内容なんですけど……」

卯月「っと、そうでした。プロデューサーさんは? 今日は私の付き添いだったはずですけど」

ちひろ「……さあ?どこかでまたスカウトにでも勤しんでるんじゃない?」

卯月「えー……」

ちひろ「ともかく、早く準備して! 急がないと間に合わないですよ! さあ、行った行った!」

卯月「え、わ、ちょっと、押さないでくださいよー!」

――――――――――

――――

――
???日目 Daytime


卯月「はー、疲れた。ここでいいのかな」

卯月(にしてもずいぶん遠いところにあるなー。山の中だし、空気がおいしいです)

卯月「よーし! すべてはアイドルとしてさらなるレベルアップのため! 島村卯月、頑張ります!」

卯月(まずはエントランスの方に行って、挨拶しないと)

卯月(受け付けは……なんだか外からじゃあ見えないなぁ。じゃあ早く入って……)


ザッ


卯月(……!?)

卯月(何!? 意識が……)


――

――――

――――――――――

――――――――――

――――

――

1日目 Morning


卯月「ん……んぅ……?」

卯月「はっ!? 私、いつの間に眠って……」

卯月(えぇと、確か、誰かにかなり遠いところにある事務所に研修に行けって言われて…)

卯月(で、事務所の敷地を跨いだところで意識が……。あれ、誰かって誰だろう?)

卯月(ここは、個室? で、私は今ベットの上。今何時だろう?)

卯月(時計は……部屋にはない。携帯は……あれ!?ポケットに無い!? 今日ちゃんと持ってきたはずなのに!?)

卯月(……とりあえず起きなきゃ。ここの職員さんにどういうことなのか尋ねないと……)

卯月「ん……あれ、枕元に手紙?」


【ようこそ当事務所へ!
 
今日からアナタはここでよりアイドルとしての高みを目指すための研修を受けてもらいます!
 
机の上にある部屋のカードキーを取って、朝8時にエントランスに集合してください!

寝起きでぼーっとしてるならドリンク各種がお勧めですよ!今なら10+3本で1000MCのお得な……】


卯月(手紙自体は長いけど、ほぼ全部何かのドリンクの宣伝、かな)

卯月(とりあえず、書いてある通り、エントランスに行ってみよう。もしかしたらもう8時過ぎちゃってるかもしれないし)

卯月(あれ? 手紙が入ってた便箋に、もう一枚小さい紙が……)




【アナタの才能は


 “超アイドル級の平凡”


         です!】



卯月(ちょっと理解が追い付かないけど、ひとまず手紙の指示に従うことに)

卯月(手紙に書かれていた通り、カードキーを取って部屋の外に出てから、エントランスに向かいました)

卯月(個室に無かった窓は廊下にもなく、何故か外側の壁一面に鉄板が打ちつけられていました。外は全く見えません……)

卯月(階段は何故か非常用扉が閉まっていて入ることができず、しかたなくエレベーターを使うことに)

卯月(書かれていた階は、何故か1、Pa、Cu、Coの4つだけ。私がいたフロアはCuでした)

卯月(Pa、Coの階にも行きたかったけど、とりあえずエントランスがあるらしい1のボタンを押して)

卯月(体感的に下に降りて行く感覚を感じながら、かなり長い時間が経った後)

卯月(エレベーターを出て一本道の部屋を行くと、外からではあんまり見えなかったエントランスが見えてきて)

卯月(そこにいたのは、職員さんではなく、様々な格好をした14人の女の人たちでした)



???「あ、またひとり来た」

卯月「あ、えと、おはようございます?」

???「ダメじゃないか、遅刻しちゃ! 8時集合って書いてあっただろ!?」

卯月「ひゃい!? あ、ごめんなさい……」

???「まあまあ、いいじゃない。こんな変な状況じゃ仕方ないわよ」

???「そうだな。状況が呑み込めなくって固まってたのかもしれないしな」

???「うぬぬ……。次からは、遅刻したら許さないからな! ライダーキックでお仕置きするぞ!」

卯月「ご、ごめんなさい! 頑張ります!」

???「さて、と。さすがに15分も遅れてきたお寝坊さんの後にはもう人も来ないだろうし、お互いの自己紹介でもしましょうか」


???「ちょい待ち! なんで自己紹介せんとあかんのん?」

???「どうせこの後研修があるんでしょう? お互いの名前ぐらいは知っておいても損はないと思うけど」

???(ふひひ……最後に来た人もいい乳……ふひひ……)

???「そうよ亜子。私たちは同じアイドルなのよ? これから切磋琢磨していく仲なのに、別にそんなに警戒しなくても……」

???「そんなこと言ってもさーいずみー。なんかこの状況怪し過ぎない?」

???「?? 何がですか?」

???「考えても見てやメイドの格好したお姉さん」

???「敷居を跨いだ途端意識が消えて、いつの間にか個室に寝かされて、意味のない才能みたいなのつけられてやで?」

???「その上外の様子は見えへんし。こんなん疑わんって方が無理な話や」

???「それならやっぱり、この状況について話し合うためにも、お互いの名前ぐらいは知っておいた方が……」

???「む、そう言われたらそうやけど……」

???「決まりね、わかるわ。じゃあ、誰からに自己紹介を……」

???「はい!はい! 一番最初に自己紹介ってロックだから私から!」



李衣菜「私の名前は多田李衣菜! 趣味は音楽鑑賞、好きなものはロック! よろしく!」

→【超アイドル級のロック】多田李衣菜


光「それなら次はアタシだな! 南条光、好きなものは特撮だ!よろしくな!」

→【超アイドル級のヒーロー】南条光


亜子「ほな次はアタシやなー。 土屋亜子! 好きなものはお金! シクヨロ!」

→【超アイドル級の守銭奴】土屋亜子


泉「【超アイドル級のプログラマー】……らしいわ。大石泉よ。よろしく」

→【超アイドル級のプログラマー】大石泉


清良「柳清良よ。ナースからアイドルになったの」

→【超アイドル級のナース】柳清良


卯月(他にも、みんなのまとめ役になってる【超アイドル級のアナウンサー】の川島さんや、一番最初に私に気付いた【超アイドル級のギャル】の城ヶ崎美嘉ちゃん)

卯月(ちょっと残念?な子っぽい【超アイドル級のサイキッカー】の堀裕子ちゃんみたいな個性的な子もいて、話を聞いててすごく面白かったです!)

卯月(ちょっと話しかけにくい人もいるけど……まあこれから仲良くなればいいよね!)


瑞樹「さて、最後はあなたね、お寝坊さん?」

卯月「あ、はい。島村卯月、好きなことは友達と電話でおしゃべりすることです! よろしくお願いします!」

美嘉「ん、卯月だね。よろしくー」

卯月「はい!よろしくね、美嘉ちゃん!」


飛鳥「……能力は?」

卯月「へ?」

飛鳥「だから、君にはどんな才能があるのか、と聞いているんだけれど」

→【超アイドル級の中二病】二宮飛鳥


卯月「えっと……。確か、紙には【超アイドル級の平凡】って書いてたよ?」


飛鳥「ふむ、なるほど、そうか。【超アイドル級の平凡】ねぇ……」

卯月「?」

飛鳥「こんな非日常な状況で【超アイドル級の平凡】……これもなかなか面白いね」

卯月「え、えっと……?」

飛鳥「いや、別にあなたが悪いわけではないんだ。急に変なことを聞いて悪かった、すまないね。じゃあ」スタスタ

卯月(や、やっぱりちょっと話しかけずらいなぁ。飛鳥ちゃんって)

卯月(で、でも悪い子じゃなさそうだし。これから仲良くなれるといいなぁ……なんて)



李衣菜「えー!? なつきちも【超アイドル級のロック】なの!?」

夏樹「誰がなつきちだ誰が。……まあ実際紙にはそう書いてあったんだし、しかたないさ。仲良くやろうぜ?」

李衣菜「うん!」

→【超アイドル級のロック】木村夏樹


愛海「うひひひ! なかなか良いものをお持ちですなぁ!」

ほたる「や、やめてください……胸、揉まないで……!」

→【超アイドル級のマッサージ師】棟方愛海
→【超アイドル級の不幸】白菊ほたる



茄子「そうなんですか……。奈々さんって17歳なのに物知りなんですねっ」

奈々「そ、そうですか? あははははは……」

奈々(……おかしい。今の17歳ってRPGはウィザードリィの世代じゃないの……?)

→【超アイドル級の幸運】鷹富士茄子
→【超アイドル級の???】安倍奈々



瑞樹「さて、お互いの自己紹介が終わってからしばらく経ったわけだけれど」

清良「これからどうしましょうか。集まったところで何かがあるわけでもないし」

泉「もうすぐ9時ね。何もないならとりあえず向こうの食堂で朝ごはんでも……」


???≪ぴーんぽーんぱーんぽーん!≫



李衣菜「!?」ビクッ

夏樹「ん?なんだこのアナウンス?」


???≪アイドルのみなさーん!9時ですよー!至急第一会議室に集合してくださーい!

    繰り返しまーす!アナタタチ、第一会議室に集まってください!研修の始業式を始めますよー!≫


裕子「始業式……?」

美嘉「人をエントランスに集めといて移動させるの? ちょっと、意味わかんないんだけど」



飛鳥「……僕は、先に行かせてもらうよ」スタスタ

光「あ、お前、ちょっと待てって!」タタタタ



菜々「……二人とも、先に行っちゃいましたね」

茄子「とりあえず私たちも行きませんか? 始業式にせよ何にせよ、今の状況を説明してもらわないと」

亜子「せやなー。無駄な時間食わしたんや、捕まえてとっちめたる!」

泉「亜子はその変な関西弁やめなさいよ……」


ザワザワ   ワイワイ


卯月「あ、あの……」

愛海「うひひひひひひひひひひっ」モミモミモミモミ

ほたる「ん……あっ……やぁっ……!」

卯月「み、みんな移動しましたよ! 早く私たちも行きましょう!」

第一会議室


李衣菜「なんか、会議室ってよりは学校の教室っぽいねー」

夏樹「妙だな。教卓っぽいのがあるのに黒板じゃなくてホワイトボードがある」

菜々「学生時代を思い出しますねぇ……」

卯月「? 菜々さんって17歳ですよね?」

菜々「……はっ!?」


飛鳥(嘘をつくにしてももうちょっと頑張れないのか、あの人は)

光「おい、聞いてるのか!? みんなの輪を乱すようなことは……」

飛鳥「……うるさいな。ボクにはボクなりの理念・哲学があるんだ、放っておいてくれないか」

光「なんだと!?」



ほたる「はぁ……はぁ……ん……」

茄子「大丈夫ですか?」

泉「あの愛海って子は清良さんがオシオキしてるからいいとして……あのケンカ、止めたほうがいいかしら?」

亜子「止めるだけ無駄じゃない? 難しいお年頃なんやって、二人とも」

瑞樹「青春ね、わかるわ」


裕子「コホン、見ててくださいよぉー。このスプーンが……」 ミシミシ

裕子「むむむむむ……!」ミシミシ

裕子「ほらっ! 曲がった! これがエスパーです!サイキックです!」

美嘉「……なんかミシミシって音がスプーンが聞こえたんだけど」

清良「まあ、すごいじゃない。さすが【超アイドル級のサイキッカー】ね」

裕子「ふふーん!」

美嘉(それでいいのか、それで)



愛海「」



瑞樹「ところで、放送では始業式って言ってたわよね?」

茄子「はい、そうですね。担当の係さんみたいな人がいるんでしょうか?」

美嘉「の割には、エントランスにもどこにも私たち以外の人はいなかったよね?」

亜子「あのアホみたいに厳重な扉の玄関も気になるし……。あー!もしもーし!誰かおらんのかー!」

泉「ちょっと、大きな声出さないで……」


???「呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃーん!!」ピョン


李衣菜「!?」ビクゥッ

夏樹「? なんだ、あのデフォルメされたぬいぐるみみたいなの」


卯月(亜子ちゃんが大声を出してすぐに、ホワイトボードの裏から何かが飛び出して教卓の上に飛び乗りました)

卯月(で、その何かって言うのが……)



卯月(夏樹ちゃんの言ってた通り、人がデフォルメされたような人形の姿)

卯月(特徴的な黄緑の服を着て、大きな三つ編みの房を右肩に流し、胸元には【チヒロ】の名札)

卯月(なんだろう、どこかで見たことがあるような。気のせいかな?)


???「ウフフフフ!ようこそ当事務所へ! ワタシはここの社長を務めてます、チヒロでーす!よろしくお願いしまーす!」


亜子「……はぁ?」


卯月(声に出したのは亜子ちゃんだけでしたが、他のみんなも同じように頭上に疑問符が浮かんでいるようです)

卯月(「見える……見えるぞ……!」って言ってる裕子ちゃんは置いておいて、とにかく私も意味が分かりませんでした)

卯月(あの人形が校長? というか人形が喋ってる? 人形が動いてる? 私たちを気絶させたのも彼女?)

卯月(疑問は、まるで尽きません。しかし、そんな私たちの心情を知ってか知らないでか)

卯月(チヒロを名乗るお人形さんは、さらに言葉を続けました)



チヒロ「はいはい、注目してくださーい!」

チヒロ「……はい、みなさんがこっちに意識を集中させるのに4秒かかりました。社長は悲しいです……」

チヒロ「とにもかくにも! さっさと! アイドル研修の始業式! 始めますよー!」

チヒロ「ルール、というより決まりは簡単!」

チヒロ「アナタタチ選ばれたアイドルには、より自らのアイドルとしてのレベルを高めるためのお勉強をしてもらいます!」

チヒロ「期限は一生ですよ! 条件付ですけどね、ウフフフフフフフ!」



茄子「えっ……!?」

李衣菜「一生!?ここで!?」

愛海「」

清良「ほら、起きなさい。大事なお話よ」ブスッ

愛海「ッハ!?オハヨウゴザイマス!」

美嘉「!?」


チヒロ「あーあーアナタタチ、静粛に。静粛にー!」


チヒロ「……はい、みなさんが静かになるまで16秒かかりました」

チヒロ「16秒あればどれだけガチャが回せると思ってるんですかっ」

チヒロ「……まあいいでしょう、話を続けますねー」



チヒロ「えーとですね。さっき期限が一生って言ったけど、条件付きとも言いましたよね!」

チヒロ「条件っていうのは極めて簡単! とっても単純! 超明快!」

チヒロ「問題です! その条件っていったいなんでしょうか……?」



チヒロ「……ぶっぶー、時間切れですー。それでは正解の発表!」

チヒロ「なんと! みなさんの中の誰かが、誰か他のアイドルをコロすことです! しかも他の人にばれないようにですよ!」

チヒロ「どうですか?とーっても分かりやすいでしょう? ウフ、ウフフフフフフ」



卯月(チヒロさん……いいえ、ぬいぐるみの形をした鬼はさらに言葉を続けます)

卯月(悪魔、と言っても差し支えないかもしれません)

卯月(ばれないように殺すことができれば、研修が終わって卒業できること)

卯月(一生このままでもいいのならば誰も殺さずにぬくぬくと生きればいい、ということ)

卯月(「詳しくはここに全部書いてありますよ!」と、電子手帳……鬼悪魔チヒロいわくのスケジュール帳を押しつけて、人形は姿を消してしまいました)


卯月(残された私たちの間では、誰も何も言えないまま、なんともいえない空気が流れ始めたんです)



夏樹「……マジ、なのか?」

泉「にわかには信じられないわね」

亜子「呆れてツッコむ間もなかったわー……」

李衣菜「ありえないよねー。そんな……ひ、人殺しをすればここから出られるなんて」

裕子「そ、そうですよね。何かのドッキリですよね、テレビでよくある」

瑞樹「ドッキリしては、妙に物騒なのが気になるわね。……わからないわ」




飛鳥「……いや、案外ホントのことなのかもしれないよ?」



ほたる「ど、どういうことですか?」

清良「……説明、お願いできるかしら?」


飛鳥「もしあの人形が話していたことが本当なんだったら、すべてに合点がいくんだよ」

飛鳥「ここに来た途端に気絶したことも、あの人形は自分のせいだって言ってた」

飛鳥「窓という窓に鉄板が打ちつけられていて、入口が馬鹿みたいに大きく頑丈な扉で塞がれてここから出られないことも」

飛鳥「ボクたちの携帯がなくなっていたことだってそうさ。あのぬいぐるみの言葉を鵜呑みにすれば、今まで分からなかった点と点が線で繋がるんだ。全部ね」



卯月「……? つまり、どういうことですか?」

愛海「回りくどいなぁ。早く結論言いなよー」


飛鳥「急かさないでくれ。……つまり、だ」

飛鳥「ドッキリの可能性も捨てられないけれど、もしかしたらアレが喋って事はすべて事実なのかもしれない」

飛鳥「アレが喋っていたことが全部真実なんだとすれば、ここから出るには……」

ほたる「ほ、他の誰かをばれないように殺さないといけないんですか!?」

菜々「そんなっ!? 菜々はいやですよ!?」

飛鳥「ボクだってそんなことしたくないさ。でもね……フフッ」

光「な、何がおかしいっていうんだ!?」

飛鳥「何がって……。こんなに楽しい状況、他にないじゃないか」

卯月「っ!?」



清良「楽しい? この状況が?」

飛鳥「だってそうだろう? 普通の日常を過ごしていれば、こんなことに巻き込まれるなんてことないじゃないか」

飛鳥「ボクは日常には無い非日常を探すためにアイドルになったんだ。ただでさえ日常からかけ離れた生活を送っていたのに、挙句の果てにこんなことに巻き込まれるなんて!」

飛鳥「自分自身を主人公だなんて思ったことはないけれど、ボクは幸運だ。今までの人生で一番の幸運だよ!」

光「お前! まるで人殺しをゲームみたいに……!」

飛鳥「ゲームだよ、これは」

光「え?」


飛鳥「ゲームだ、って言ったんだ。誰かが人を殺して、誰かが犯人を推理する。これはそういうゲームなんだよ」

美嘉「…………」

飛鳥「ボクもこんなところで死ぬ気は無いしね。ゲームだろうがなんだろうが全力でやらせてもらうよ」

瑞樹「あなた……!」

飛鳥「ボクが異端だって、非難するかい? 構わないよ、そういうのには慣れているからね」

飛鳥「まあとにかく、ボクはこのゲームを降りる気はない。勝たせてもらう。形はどうであれ、ここを脱出して見せるよ」

飛鳥「……二宮飛鳥の名にかけて、ね」



Chapter1


卯月(そう言って、飛鳥ちゃんは第一会議室から出ていきました)

卯月(どこに?と愛海ちゃんが聞いたら、「食堂だよ、なんにせよまずはご飯を食べないとね」と答えて)

卯月(光ちゃんはかなり不本意だったみたいだけど、私たちも飛鳥ちゃんに従って、食堂でご飯を食べることにしました)

卯月(腹が減っては戦もできぬ、ですよね)



茄子「ご飯は、自分たちで作らないといけないみたいですね。調理場もありますし」

清良「料理が出来る人のローテーションで作る方がいいかもしれないわね」

瑞樹「仕方ないわね。当番表はおいおい作るとして、今日はみんなで作っちゃいましょうか」

卯月「私も手伝いますよっ!」

美嘉「材料は馬鹿みたいな量があるね。冷蔵庫に貼ってる紙によると、適宜補充もされるみたい」


ほたる「ほ、包丁もいっぱいありますね……」

飛鳥「凶器には困らない、ってことだね」

菜々「ちょ、冗談でもそんなこと言うのやめてくださいよ!?」

光「……お前なぁ、どうしてそういうこと言うんだよ」

飛鳥「ボクは事実を言っただけだよ。どう使うかは、みんな次第さ」

夏樹「まあ、いいさ。ちゃちゃっと作っちまおうぜ。向こうでご飯を作れない組がお待ちかねだ」



李衣菜「」

愛海「」

裕子「」

亜子「」

泉「……」

泉(この人たちと同じくくりにされるのは、ものすごく抵抗があるんだけど)



1日目 Daytime


夏樹「……さて、朝昼兼用の飯は食ったわけだし、どうする?」

泉「ひとまず、この建物を色々調べてみたらどうかしら? 何か有益な情報が手に入るかもしれない」

瑞樹「そう、ね。ここで話してるだけで何か脱出するための方法が考えられるとは思わないし」

李衣菜「で、でもさ、もし。もしだよ? この建物を調べても何も分からなかったら……」

飛鳥「分からなかったら、それこそ外へ出る手段は他人を殺すこと以外にないってことだね」

ほたる「…………」

美嘉「…………」

光「いい加減にしろって。なんでお前はそう……」

茄子「まあまあ、いいじゃないですか。で、どういう風に分かれて探索しましょう?」

裕子「ど、どういう風……?」

清良「一人一人が分かれて探索したら、もしかしたら誰かが誰かを殺すかもしれないでしょう?」

菜々「つまり、お互いがお互いを、殺さないように監視し合いながら二人一組以上で調べればいいんですよね?」

裕子「おお、なるほど!」



美嘉「えー、それやだなー。なんか信用されてないみたいで」

亜子「でも、わざわざリスクを増やす必要もないやん? アタシは無難な判断やと思うで」

卯月「じゃあ、三人一組はどうですか? ちょうど15人いるし……」

瑞樹「決まりね。それにしましょう。じゃあ組み合わせは適当に……」


飛鳥「……ボクは一人で構わないんだけどな」

光「アタシたちが構うんだよ、ほら、行くぞ。愛海もだ」

愛海「乳が揉めれば! 何でも! 私は一向に構わん!」

光「だからアタシたちが構うんだって!」



卯月(そうして、何か手がかりを見つけるために、私たちはこの建物の調査に乗り出しました)

卯月(私も茄子さん、ほたるちゃんの二人と、この建物をくまなく調べた……つもりです)

卯月(けれど、みんなが集めた情報をまとめてわかったことは)

卯月(①二階へと続く階段はシャッターで閉じられている。開かない。
   ②玄関は無駄にしっかりとした扉で固く閉ざされている。開かない。
   ③玄関のすぐ隣にエレベーターがある。作動しない。
   ④一階にある施設は、エントランス・食堂・第一会議室・トイレ・救護室・ゴミを捨てるダストシュート・レッスンルーム。
   ⑤個室がある階のエレベーターの傍にはウォータークーラーがある)

卯月(これぐらいです。いや、これだけなんです)

卯月(あまりよろしい状況とは言えない中、情報共有をしていた食堂で、私たちはこれからどうするかを思案中でした)

卯月(もちろん、なかなかいい案が浮かぶわけもなく。それぞれが仲のいい人と雑談したり、一人で静かに考えたりで)

卯月(情報交換が終わってからは、ただ無駄に時を浪費するだけの時間になってしまいました)

卯月(……私たちは、これからどうなっちゃうんでしょうか)

――――――――

―――――

――

1日目 Nighttime


光「御馳走様でした!」

李衣菜「おいしかったー!」

瑞樹「ふふっ、お粗末様」

夏樹「だりーな、本当食いっぷりだけは一丁前だなぁ……」

李衣菜「ホント!? それってロック?」

裕子「ロックとは……ちょっと違う気がしますけど」


卯月(夕食も食べ終わって、建物の外は周りはすっかり暗くなった……気がします。外は見えないですけど)

卯月(あの後なあなあな雰囲気になりかけたのを瑞樹さんがぴしっとしめて、とりあえずもう一度探索することに)

卯月(結局何も見つからなかったですけど、探索する前よりはみんなの雰囲気も良くなった気がします)

卯月(鬼悪魔め! 私たちは負けないですよ! 絶対にみんなと一緒にここから脱出して見せます!)



清良「さて。これからどうしましょうか?もう一度虱潰しに調べる?」

泉「ひとまずここは解散、ってことでいいんじゃないでしょうか?」

泉「精神的な疲れもあるでしょうし、まだいまいち状況を呑み込めてない人もいるでしょうから……」チラッ

愛海「?」

ほたる(第一会議室の時の愛海ちゃんはちょっと変だったし……し、仕方ないと言えば仕方ない、のかな?)

光「よーし! じゃあ明日の8時にまたここに集合にしよう! 遅刻は許さないからな!」

飛鳥「はいはい、分かってるって」

裕子「あれ? でも個室に時計って無かったですよね? どうやって時間調べれば……?」

美嘉「スケジュール帳見てないの? 確かこれ時計とタイマーがついてたような……あれ、電源消えてる。なんでだろ」


チヒロ「ウフフフフ! その疑問にはワタシがお答えしましょう!」ヒョコ



美嘉「げ、また出てきた。この人形もどき」

チヒロ「むきー!誰が人形もどきですか!ワタシはこの事務所の社長なんですよー!」プンスカ

菜々「威厳は……ないと思いますけど」

茄子「それより、このスケジュール帳について説明してくれるんですよね?」

亜子「はよ教えーや。アタシらアンタに構ってる暇なんかないねん」

チヒロ「くすん……。ここのアイドルは反抗的ですね、社長は悲しいです」

チヒロ「……まあいいです!気にしない気にしない。サクッと疑問にお答えしますよ!」



チヒロ「このスケジュール帳はですね! ワタシが夜時間になったことを放送するのに合わせて電源が落ちるようになってるのです!」

チヒロ「夜時間の間はウンともスンとも言いません! しかーし!朝時間の始まりのAM6:00になれば使えるようになりますよ!」

チヒロ「さらに言っておくと、夜時間はPM7:00から!AM0:00からは深夜時間になります!」

チヒロ「深夜時間は基本的にすべてのアカリが消えるよ! ご要望があればつけますけどね!」

チヒロ「それではアナタタチ! より健全なアイドル共同生活と、より健全なコロシアイを! ウフ!ウウフフフフ!」ヒョイ



ほたる「い、いきなり出てきてあっという間に消えちゃいましたね……」

夏樹「嵐みたいなやつだな……」


美嘉「ほんっとこっちの都合なんて考えてないだね、あれ。今度出てきたら思いっきり踏みつけてやるんだから!」

茄子「それはやめといたほうが……」

美嘉「? どうして?」

茄子「んー……。【超アイドル級の幸運】の勘、ですかね?」

美嘉「???」



泉「……まああの人形もどきは放っておくとして、私から一つ提案が」

愛海「お、なになにいずみん?」

泉「誰がいずみんか。……えっとですね」

チヒロ「あ! 一つ忘れてました! ごめーんなさーい!」ヒョコ



泉「…………」イラッ

菜々「むむむっ! また出て来ましたね!」

チヒロ「そんなカッカカッカしないでよ! ワタシはただアナタタチの規則正しい生活のために一つ提案をですね……」

瑞樹「御託はいいわ。用件だけ話してちょうだい」


チヒロ「うむむむむ……。いいですよーっと。冷たくドライにやっちゃいますよーだ」

チヒロ「では連絡だけ!皆さんの中から一人、ゴミ当番を決めてもらいます!」

光「ゴミ当番?」

チヒロ「そうです! この事務所のいたるところについてある監視カメラからアナタタチの動向はしっかりチェックしてあります!」

チヒロ「そして誰かは見つけたはずです!ここのエレベーターを降りてすぐのところに大きな箱があるのを!」



飛鳥「監視か。悪趣味だね。仮にでもアイドルの、ひいては個々人の私生活を覗いてさ。それって本当に楽しいかい?」

裕子「そーですよ! しかも、あの監視カメラって個室にもあったじゃないですか! プライバシーの侵害ってレベルじゃないですよ!」

菜々「え゛、裕子ちゃんそれ本当……?」


チヒロ「そこっ! うるさいですよっ! ……いいですか?あれこそがダストシュートです!」

愛海「まああの箱っつーか大きな入れ物のど真ん中に【だすとしゅーと】って汚い文字で書いてたしね。そりゃそうだよ」

チヒロ「もう無視しちゃいますもんね! で、アナタタチの中から一人、みんなの個室から出たゴミを回収する係を任命します!」

チヒロ「任命された係の人にはこのダストシュートの鍵を渡しちゃいますよ!」チャリンチャリン 

チヒロ「ヒトゴロシをした後にここに放り込めば完全犯罪ができちゃったりして! ウフフフフ!」



美嘉「誰が好き好んで殺人なんてするもんですか!」

卯月「そうですよ! 私たちはあなたになんか屈しません!」

茄子「まあまあ、二人とも落ち着いて……。で、そのゴミ当番はどうやって決めるんですか?」

チヒロ「ウフフフフ。よくぞ聞いてくれました! 鷹富士サンはよくぞ聞いてくれました!ええホントに!」


チヒロ「出来れば公平を期すためにジャンケンで決めたかったんですが……」

チヒロ「ワタシだって人間です。イラついたりすることはあるんです……この役職はツラいんです……」

チヒロ「と、いうわけでー。ワタシの独断と偏見で勝手に一人決めさせてもらいますよー!」




チヒロ「よし決めた!ゴミ当番は木村さん! アナタです!はい決定!」

夏樹「……はあ? アタシ?」



夏樹「なんでアタシなんだよ?」

チヒロ「だってアナタ!その髪!とんでもない髪型じゃないですか!きっと喜び勇んでヒトゴロシしちゃいますよ!」

夏樹「おいおい、理由って見た目かよ。えらく安直だな」

亜子「髪型だけて……んなアホな……」


チヒロ「まあまあいいじゃないですか! それにほら!ヒトゴロシってロックでしょ? なんか社会に逆らってる感じがして!」

李衣菜「えっ!ヒトゴロシってロックなの!?」

美嘉「ないよ。ないない。それはないって」

飛鳥(この人、ロックってなんなのかが分かっていないのかな?仮にでも【超アイドル級のロック】なのに。不思議だねぇ)



チヒロ「まあとにかく! 木村サンにはこれを受け取ってもらいます!」ポイ

夏樹「っと。……まあ、社長サンから任せられたんじゃあ仕方ないな」チャリン

光「別にあんなやつの指示なんか受けなくてもいいじゃないか!」

夏樹「いや、そうは言ってもだな……」

瑞樹「ずっとゴミを置きっぱなしにするのは見た目的にも衛生的にもよくないでしょうし。ひとまず夏樹ちゃんに任せましょう?」

光「む……むむむむ……」


チヒロ「それじゃあ決まりですね!どういう風にゴミを集めるかはそっちで好きに決めてくれていいですよ!」

チヒロ「ダストシュートに放り込んでくれれば次の日にはキレイサッパリにしちゃいますからね!」

チヒロ「あ、ゴミ係は最初にヒトゴロシが起きるまでずっと木村サンのままですからね! それでは!」ヒョイ

夏樹「はぁ!? おいチヒロ! ちょっと待て!」



夏樹「行っちまった……。ったく、なんてこった。何が楽しくてゴミ当番なんざ……」

泉「……あなた、もしかして本当に……」

夏樹「そんなわけないだろ。たかだかゴミ当番やりたくないからってヒトゴロシしてられるか」

菜々「すいません。多分ここから出られるまでずっとゴミ当番ですけど、お願いしますね?」

夏樹「大丈夫ですって安倍さん。あー、そうだなー……」


夏樹「じゃあ朝起きて食堂かエントランスに集まる時、一緒にゴミを持って下に降りてきてくれ」

夏樹「んで、ダストシュートの前にゴミを置く。全員が集まったのを確認したら、アタシがまとめてゴミを捨てるよ」

瑞樹「わかったわ。みんなもそれでいいわね?」

ハーイ
モンダイナイデスヨ!
ワ、ワカリマシタ……


清良「じゃあ調理当番もさっき決めたローテーションでいいわね? 料理ができない人には洗濯をしてもらいましょうか」

茄子「後は、自分の個室は自分で掃除、みんなが集まってる時に時間があったら他の場所の掃除、ですよね?」

泉「そんなところですね。じゃあ、今日はここで、解散ってことにしましょうか」

亜子「あれ? でもでもいずみー。さっきなんか提案があるって言ってなかったっけ?」



ほたる「あ……」

泉「……素で忘れてたわ、ごめんなさい」


泉「で、さっきはチヒロに邪魔されましたけど、私の提案っていうのは」

泉「午前0時以降……チヒロが言ってた深夜時間の間は、可能な限り外に出ないようにするっていう決まりを作ることです」


裕子「……? それって何か意味あるんですか?」

茄子「一応みんなでそういう規則を儲けておけば、みんなが寝てる間に変なことをしないようにって抑止力になるんじゃ?」

裕子「ほほー! なるほど!」



飛鳥「待ちなよ。それじゃあただの口約束じゃないか。意味があるとは思えないけれど?」

泉「口約束でも十分よ。こういう決まりを作ることに意味があるの」

亜子「それとも……何? あすかは深夜に何か人に言えないことでもする気なん?」

飛鳥「……いや? そんなことはしないさ」


李衣菜「もうそれでいいんじゃない? 私もう覚えることが多すぎて疲れちゃったよ」

美嘉「ヒトゴロシをしない、ってことだけ覚えておけばいいと思うけどねー」


瑞樹「それじゃあ、今度こそホントに解散ね。みんなゆっくり体を休めるのよ」

卯月「分かりました!」

菜々「お疲れ様でーす!」



光「よし!今日も早く寝るぞ!みんなおやすみ!」タタタタッ

飛鳥「…………」スタスタ

愛海「私たちも帰ろっか。ね!ほたるちゃーん!」ワキワキ

ほたる「は、はいぃ……」

清良「ええそうね、早く部屋に戻りましょうか」スッ

愛海「えっちょっまっまだ未遂」プス

愛海「」

前スレから見てくださっている方はありがとうございます。>>1です

とりあえず書いた分は貼りなおしておきました。ちょこちょこ気に入らなかったところを修正したりもしています

タイトルにクロスであることは書いたし、前スレの>>3>>1に持ってきたし、

これで後は何か言われるのは内容だけですよね……ですよね?

では、ちょっと休憩した後に続き書いて行きますねー

1日目 Midnight


卯月(解散となった後、深夜まで食堂に残る組とすぐに部屋に戻る組に分かれました)

卯月(私は後者です。今日のうちに、心の整理をつけておきたかったから)

卯月(同じく部屋に戻る組のほたるちゃんと同じ階で別れた後、部屋に入ると机の上にまた手紙が置いてありました)


【アナタタチの部屋の構造は基本的に同じですが、いくつか違うところがあるので説明しておきますよ!
 
 まず、部屋においてあるものはその部屋のアイドルの【超アイドル級の才能】に基づいたものになっています!

 次に、クローゼットの中に入っている服は基本的にアイドルの衣装です!私服も数着ありますが!

 パジャマも入っていますが、基本的にデザインは一緒です!違うところは色合いぐらいですね!部屋のある階によって色が違いますよ!

 最後に、シャワールームの場所です! Cu階の人は入って右、Coの人は入ってまっすぐ、Paの人は入って左の突き当たりにありますよ!

 それではみなさん! よい夢を! ウフフフフフ!】



卯月(クローゼットを見てみると、私が女子寮に置いていたはずの私服が数着と、アイドルとしての衣装が数着)

卯月(あとは全体的にピンクっぽい色合いのパジャマが入っていました)

卯月(……ちょっとかわいいと思ってしまったのは内緒です)

卯月(目が覚めたときは動揺しててあまり見られなかった部屋をざっくりと見たところ、特に変わったものは見つけられませんでした)

卯月(全身が見られる鏡、普通に充実したコスメ。見た感じではごくごく普通の、アイドルをやってる女子高生の部屋です)

卯月(これも【超アイドル級の平凡】のおかげ、なのかな?)

卯月(他のみんなの部屋には何があるんだろう……?)



卯月(シャワーを軽く浴びた後、歯を磨いてから布団に潜り込んで)

卯月(目を閉じて、明日からのことを思い浮かべます)

卯月(初めて会った人たちばかりだけど、みんなとてもいい人、いい子たちで)

卯月(今日の雰囲気を見る限り、とても誰かが誰かを殺す、なんてことは考えられません)


卯月(…………)

卯月(あの人形……チヒロが出てくる度、私は何度でも声を大にして言ってやるんです)

卯月(私たちは、負けない。あなたの思惑になんか乗らない)

卯月(全員無事にそろって、ここから脱出して見せる、って)

卯月(外に出たら、みんなでライブをやってみせるんだ、って)

卯月(そのためには……明日も……頑張らないと……)

卯月(他のみんなに比べたら全然才能なんてないけど……私だって……)

卯月(…………)


――

――――

――――――――



――――――――

――――

――

2日目 Morning


チヒロ≪ウフフフフ! おっはよーございまーす! 午前六時になりました! 朝ですよー!≫

卯月「ん……」

卯月(……見慣れない天井、あまり聞きたくない声)

卯月(昨日のあれは夢じゃない、ってことなのかな)

卯月(夢だったら、どんなに……)


卯月「……いやいや!ネガティブになっちゃだめです!」

卯月「みんなで揃って、ここを出るんですから!」

卯月(準備して、食堂に向かいましょう! 希望は前に進むんです!)



1F 食堂


卯月「おはようございますっ!」

茄子「あらら、おはようございます」

光「お、今日は遅刻しなかったな! やるじゃないか!」


卯月「はい、頑張りましたよ! ……あれ? 私たち3人だけ?」

光「そうなんだよ。みんな朝起きるのつらいのかな?」

茄子「まあ、まだ8時まで30分ぐらいありますし。お茶でも飲みながらのんびり待ちましょう~♪」

卯月「そう……ですね」


卯月(光ちゃんも茄子さんも……強いな。私なんか表に出さないだけで精一杯なのに)

卯月(私ももっと頑張らないと……あ、このお茶美味しい)



李衣菜「おはよ~……」

裕子「おはようございます……ふわぁ」

夏樹「なんだよだりーな……あー、だりーでいいか。夜更かしでもしたか?」

清良「裕子ちゃんもどうしたの? 部屋に何か変わったものでもあった?」

李衣菜「んー、部屋にロックっぽいのがいっぱいあったから興奮して眠れなくて……」

裕子「私も、超能力に関するものが部屋にあったので……」

亜子「子供やん……」

泉「二人の部屋には何があったの?」


李衣菜「……めちゃくちゃおっきいコンポとか?」

裕子「手品用の用具がいっぱい……」


瑞樹(コンポって……CDは無いのに?わからないわ)

美嘉(手品って。それもう超能力でもなんでもないじゃん……)



菜々「平和ですねぇ……」

ほたる「ですね……本当に」

茄子「あ、そう言えば。お二人の部屋には何が置いてあったんですか?」


菜々「うぇっ!? ……そ、それは言えませんっ!ちょっとお花摘んできますね!」ピュー

ほたる「……大凶のおみくじとか、藁人形とか、不幸の手紙とか……」ズーン


茄子「あ、あららー……。愛海ちゃんは?」

愛海「立体おっぱいマウスパッド」

茄子「えっ」

愛海「立体おっぱいマウスパッド」



茄子「え……えっと……」

愛海「違う……違うの!私は人工的なものはいやなの!あの感触は人では再現できないの!」

愛海「大きさじゃないの!形でもないの!天然よ!生命の暖かみと柔らかさを感じたいの!」

愛海「……あの人形は、そのことを何もわかってなかったんだよ……」

茄子「は、はぁ」

愛海「分かってなかったんだよっっっ!!!」ダンッ!

茄子「ひゃっ!?」ビクッ

愛海「こうなりゃ自棄じゃ! 卯月さんお覚悟!」バッ

卯月「きゃっ、な、なんで私に!?」



飛鳥「……一応、全員集まったみたいだね」

夏樹「みたいだな。じゃ、ゴミ片付けてくるわ」

美嘉「行ってらっしゃーい★」

瑞樹「じゃあ、夏樹ちゃんが戻ってきたら今日の探索開始よ」

泉「一日日を置いて心を落ちつけてますから、また違った発見があるかもしれないですしね」

清良「そうね。じゃあ私は救護室にでも行こうかしら。連れていきたい子もいるし」

愛海「」

瑞樹「わかったわ。じゃあ他の人も、適宜組を作って動いてちょうだい。一人で行きたいなら一人でも構わないわ」

光「え? 昨日みたいに三人一組で動かなくていいのか?」

亜子「昨日解散してから食堂に残る組で別に班作らんでもええかーって決めたんや」

茄子「下手にお互いを縛りながら動くよりはー、ってね」

裕子「へぇ!」

飛鳥「……随分甘いんだね。まあいいや、好都合さ。ボクは一人で行かせてもらうよ」



夏樹「ただいまーっと」

李衣菜「あ、なつきち! 随分早かったね?」

夏樹「ああ、さすがに初日なだけあってゴミは少なかったからな。ささっと片付けてきたよ」

泉「鍵は、ちゃんと閉めたわね?」

夏樹「忘れちゃいないさ。ま、この中にゴミを漁るような奴はいないって信じたいけどな……」

美嘉「朝ごはんも全員食べちゃったし、片付け次第探索開始かな?」

菜々「今日の朝ごはんはナナ担当なので、片付けはナナだけで大丈夫ですよ!」

光「分かった。 よし、じゃあ行こう! 今日こそ何か脱出の手がかりを見つけるんだ!」

みんな「「「「「おー!」」」」」

飛鳥「……………」

――

――――

――――――――――




――――――――

――――

――


卯月(これだけみんなで団結してれば、何か一つぐらい見つけられるよね!)

卯月(見つけられなくても、仲間割れなんてことはないだろうし)

卯月(でも、みんな一気に出ていっちゃったからなんか置いて行かれちゃったな……)ポツン

卯月(誰かと合流して、協力して探そう)

卯月(誰と合流するのがいいかな……?)

>>66
1.亜子・泉
2.茄子・ほたる・夏樹・李衣菜
3.飛鳥

3



卯月(飛鳥ちゃん、かな)

卯月(なんだか斜に構えてるって言うか、みんなと一緒になるのを嫌ってるっていうか)

卯月(でもでも、みんなのことが嫌いってわけじゃなさそうだし)

卯月(今後の為にも、ぜひ仲良くなっておかないと!)

卯月(……あれ? でも飛鳥ちゃんってどこ調べてるんだろ?)

卯月(まずは探さなきゃね)



???階 Cuフロア


飛鳥「ふむ……やっぱりか」

卯月「あ、いた! 飛鳥ちゃんっ!」タタタ

飛鳥「……【超アイドル級の平凡】サンじゃないか。どうしたんだい?」

卯月「えと、飛鳥ちゃんと一緒に何か探してみようかなー……って。ダメ、かな?」

飛鳥「…………」

卯月「…………」

飛鳥「ボク、一人で行かせてもらうって言ったよね?」

卯月「それでも、です」

飛鳥「…………」

飛鳥「……はあ、分かった。二人で何か見つけよう」

卯月「やったっ! ……ところで、何か分かったことがあるのかな?なんか納得してたけど」

飛鳥「…………」

飛鳥「いや、たいしたことじゃないよ。分からないものが分かったって言うよりは、分かってたものに確信が持てた、って感じかな」

卯月「? どういうこと?」



飛鳥「【超アイドル級の平凡】さんもエレベーターに乗ったから分かったと思うけど、1階からここまで来るのに、結構時間がかかるよね?」

卯月「うん、だから朝遅刻しそうになったらちょっとピンチかなって……えへへ」

飛鳥「……まあ話を続けると、1階からここまでにエレベーターに乗る時間が明らかに一つ上の階に上る時間にしては長すぎたから、ちょっとした実験をしてみたんだ」

卯月「実験?」

飛鳥「簡単なことだよ。大きな音や声を出して誰にも気づかれていなければ、このフロアと1階との間には何かしらの空間があるって実験」

卯月「へぇー!」

飛鳥「結果は成功。これで間違いなく、このフロアは2階ではないってことが立証できたんじゃないかな」

卯月「飛鳥ちゃんすごいねー……。あれ、でも下の階に響くぐらい大きな音とか声って……」

飛鳥「エレベーター横のウォータークーラーがあっただろう? あれを勢いよく倒してみたりしてね」

卯月「だ、ダメだよそんなの! 壊れちゃうよ!?」

飛鳥「ちゃんと事前にあの人形もどきに許可はとったさ。ちゃんと修理してくれるって言ってくれてから実行したよ?」

卯月「うーん……。な、ならいいのかな?」

飛鳥「ボクに言われても知らないよ」



飛鳥「ところでさ、【超アイドル級の平凡】さん」

卯月「? 何かな?」

飛鳥「あなたはこの状況について、どう思う?」

卯月「どう、って……」

飛鳥「ありえない、なんて言って一笑に付すかい? それとも、案外このゲームに乗り気だったりして……」

卯月「それは違うよ!」


飛鳥「……どう違うのかな?」

卯月「ありえない……って言えるんだったらそれが一番いいよ。誰も傷つかないもん」

卯月「でも、チヒロが言ってたことは本当……の気がする。ありえないって言うんだったら、この状況こそありえないし」

卯月「でも、ゲームに乗るなんて……ヒトゴロシをするなんて絶対ダメ。私たち、アイドルだもん」

飛鳥「アイドルだったら、人を殺しちゃあ駄目なのかな? それとも、一般人だとしたら、殺してもいいと?」

卯月「それも違うよ。……私が言いたいのは、そうじゃないの」



卯月「だって、人を殺すことができるような人が、アイドルなんてできるわけないから」

飛鳥「…………」

卯月「昨日初めて会った人ばかりだけど、断言できる。みんな、私なんかよりずっとすごいアイドルだって」

卯月「しかも、みんなすごいい人たちだよね? アイドルだからって絶対に気取らない、本当に心が綺麗な人たちばかりだよ」

卯月「そんな心が綺麗な人がヒトゴロシなんて、絶対にしない。するはずがないよ。これも断言できる」

卯月「私たちは、アイドルだから。みんなで、一人も欠けずに、絶対にここから出る。そして、もう一度ステージに立ってみせる」

卯月「……もちろん、飛鳥ちゃんも一緒だよ?」ニコッ

飛鳥「…………」



飛鳥「なるほど、それがあなたの答えか」

卯月「うん。そうだよ」

飛鳥「…………」

飛鳥「……答えてくれてありがとう。ここから脱出するために、ボクもできる限り手を貸すよ」

卯月「! 本当!?」

飛鳥「ボクは別に、みんなと仲良くしたくないわけじゃないんだ。馴れ合いは好きじゃないけどね」

飛鳥「……ま、これ以上言っても言い訳にしか聞こえないのかもしれないし、やめておくよ」

飛鳥「これからは変に【超アイドル級のヒーロー】さんとも衝突しないようにするさ、安心してくれ」

卯月「ありがと、飛鳥ちゃん!」

飛鳥「構わないさ、もとはボクが悪いんだし……」

飛鳥「さ、ここは粗方調べたけど何もなかったよ、他の階を調べよう」

卯月「うん!」


飛鳥(…………)



卯月(とりあえずCuの階とCoの階の廊下を調べたけど、何もなかったなぁ)

卯月(でも、飛鳥ちゃんと仲良くなれただけでも大きな前進だよね! 私の思いが伝わってよかった!)

卯月(「ちょっと【超アイドル級のヒーロー】さんを探してくるよ、昨日のことも謝らなきゃね」って言ってたから飛鳥ちゃんと別れたけど……)

卯月(また一人になっちゃったな)ポツン

卯月(次はどこと合流しようかな……)

>>73
1.亜子・泉
2.茄子・ほたる・夏樹・李衣菜

ミスった。
>>75でお願いします



???階 Coフロア 泉の個室前


卯月(泉ちゃんと亜子ちゃんはちょっと考えがあるから泉ちゃんの家に行くって言ってたけど……)

コンコン

卯月「泉ちゃーん、亜子ちゃーん、卯月でーす」


ホイホーイ

ガチャ


亜子「ありゃ、ホンマにうづきやん。どないしたん?」

卯月「えっと、二人が何してるのかなーって気になって。あと、何か手伝えることないかなーって」

亜子「ああ、そういうことかいな。 ……らしいでいずみー!入ってもらうー?」


カマワナイワヨー!


亜子「おっけーらしいな。じゃ、どうぞどうぞー」

卯月「はい!お邪魔します!」



泉の個室内


卯月(さすが【超アイドル級のプログラマー】なだけあって、難しそうな機械とかいろんな情報端末が並んでるなぁ)

卯月(うわ、これってMDだよね? 懐かしいなー)


泉「いらっしゃい、卯月」カタカタカタカタカタカタ

卯月(タ、タイピングすごい速い!さすがだよ……)

泉「で、何か手伝えることがないか、だっけ?」カタカタカタカタカタカタ

卯月「うん、何かないかな? なんでもいいんだけど……」

泉「……ないわね」カタカタカタカタカタカタ

亜子「ないわな、そりゃ」

卯月「えっ」

泉「というか、亜子も何もしてないしね。必死に私の部屋からお金になりそうなものを探してるわ」カタカタカタカタカタカタ

亜子「てへっ」コツン

卯月「えっ」



亜子「しゃーないやんうづきー。いずみは今プログラム作ってるんやから」

卯月「プログラム?」

泉「ほら、一応私【超アイドル級のプログラマー】ってことになってるでしょ?」

泉「もしかしたらって思って部屋の中を探したらパソコンが見つかったのよ。ネットは繋がってなかったけど」カタカタカタカタカタカタ

泉「で、あのぬいぐるみを信じるならここも芸能事務所でしょ? それなら、パソコンの一台や二台ぐらいあるんじゃないかって考えたの」カタカタカタカタカタカタカタカタ

亜子「まだパソコンは見つかれへんけど、見つけたときのために役に立つプログラム作っとけば何かと楽なんちゃうんかって考えたらしくてな」

亜子「いずみのプログラムは金取れるレベルやからなぁ……。今でこれなんやから10年後が末恐ろしいで」

卯月「へぇ……なんのプログラムなの?」

泉「簡単に言うとAI、人工知能かな。私の命令に臨機応変に動いてくれる」カタカタカタカタカタカタカタカタ

卯月「……簡単に言っちゃっていいんですか、これ?」ヒソヒソ

亜子「おっそろしいやろ? それが大石泉なんやで」ヒソヒソ

泉「聞こえてるわよ……。よし、出来た」ッターン

亜子「お、出来たか。どれどれー?」



AI≪はぁい! おはようございます?ご主人様ぁ♪≫

卯月「わ、すごい! 喋ったよこの子!」

亜子「……なあ、いずみ」

泉「……言わないで。うかつだったわ」

卯月「? どうしたの二人とも?」

亜子「……この顔のモデルって、さくらやでな?」

泉「みたいね……。どこで間違えたのかしら」

卯月「えぇ!? この子、二人の知り合いなんですか!?」

亜子「いーや、違う違う。知り合いっつーか腐れ縁に顔が似てるだけや」

さくら≪むー! 腐れ縁なんて名前じゃありませぇん! 私にはSakuraって名前がちゃんとあるんでぇす!≫

亜子「膨れっ面見せたら余計アホ面になるでアホ面」

さくら≪ひどい!?≫


卯月「だ、大丈夫なんですか? このAI……」

泉「分からないわ……。 AIとしてのポテンシャルはちゃんと持ってる。はずよ」ハァ

すいません、中途半端で申し訳ないですけど今日はここで終わります

今から大掃除なんて……わけがわからないよ……



卯月(画面の中のピンク色の女の子がいきなり声を出したり、その子が亜子ちゃんと泉ちゃんの知り合いだったりでついていけなくなったので)

卯月(適当にその人工知能……Sakuraちゃんに挨拶だけして、その場を後にしました)

卯月(……AIって何してくれるのかな? ハッキングとか?)

卯月(困ったなぁ、機械のことはさっぱりわからないです。電話は好きですけど)

卯月(それにしても、泉ちゃんたちが3人で盛り上がってるところを抜けて来ちゃったから……)

卯月(また一人になっちゃったなー)ポツン

卯月(仕方ないよね。とりあえず、今度はレッスンルームに行ってみましょう)

卯月(確かあそこには、茄子さんたちがいたはずですし)



1F レッスンルーム


茄子「あ、卯月ちゃん♪」

卯月「はい、島村卯月ですよ! 調子はどうですか?」

夏樹「今のところはさっぱりだな。しかも、レッスンルームって言ってもここダンス専用っぽいし」

李衣菜「レッスンしてくれる人もいないしねー。だから練習しようにもできないんだ」

ほたる「誰か、ダンスが上手い人がみなさんの中にいればいいんですけど……」

卯月「うーん……。ダンス専用のレッスンルーム……?」

卯月(部屋自体は広いんですけど、殺風景な部屋。変わったところと言えば、一面に取り付けられてる鏡……)

卯月「あれって、壊せないんでしょうか。脱出ゲームとかだと、鏡の裏に隠し通路があったりとか……」



夏樹「それは……まずいんじゃないか?」

李衣菜「え? なんで?」

夏樹「いや、なんとなくだけどな。勝手にもの壊してあのぬいぐるみが黙ってるかどうかってのが気になってさ」

ほたる「あ、そのことなんですけど、茄子さんと私で一緒にスケジュール帳の中に……」

茄子「アイドル条例、って言うのがありまして。ここで生活するうえでの決まりみたいなのが書いてたんですよ」

夏樹「へぇ、どれどれ……」ピッピッ


夏樹「……なるほどな。不必要な器物の破損は禁止する、か」

茄子「多分ここでの不必要なって単語はチヒロさんのさじ加減での話なんでしょうし……」

卯月「危ない、ですかね。やっぱり」

夏樹「やるならチヒロに確認はとった方がいいだろうな。ここにも監視カメラはあるわけだし」



卯月(そうこう話をしているうちに夜時間になったので、仕方なく私たちは調査を切り上げて食堂に向かいました)

卯月(今日の食事当番は美嘉ちゃんと清良さんだったので、二人は先に厨房に入っていましたが)

卯月(何人か来ていない人がいたので、残った人で手分けして連れてくることになりました)

卯月(瑞樹さんは救護室にいる愛海ちゃんを、菜々ちゃんは多分泉ちゃんの部屋にいるであろう亜子ちゃんたちを)

卯月(私はひとまず、光ちゃんと飛鳥ちゃんを探すように頼まれて)

卯月(もしかしたら一緒にいるかもしれないと思って、個室に行くためにエレベーターに乗ろうとしたんだけど……)

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