ルパン三世「今度のお宝は>>3だ」 (166)

ルパン「版権ネタはやーよ、ってな」

次元「誰と話してんだ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440688484

ルパン「なぁ次元よ、エクスカリバーって知ってるか?」

次元「ああ? かのアーサー王が持っていたとされる剣のこったろ。それがどうしたい?」

ルパン「今までエクスカリバーひいてはアーサー王の存在は伝説とされてきたんだ。だがよ、この新聞を見てくれ」

次元「おん? ……ほお」

ルパン「イギリスは湖水地方の山一角。観光客も来ねえポツンとあった一つの湖♪」ベンベン

ルパン「その中央に佇むは……」

ルパン 次元「台座に刺さりしエクスカリバー!」

ルパン「考古学者は見逃せねえ。アーサー王伝説が実際にあったことだと知れたらまた一歩、過去の真実に近づけるんだからなァ」

次元「それを盗みたい、と」

ルパン「そのとぉーり」

次元「どうやって取るつもりだ? 台座……というか岩に刺さってんだろ、それ」

ルパン「そこが問題なんだよなあ」

次元「……まさか、お前」

ルパン「その通り、まだ思いついてないのよ……」

次元「ったく、呆れたぜ」

ルパン「ま、下調べあるのみ、つってな」

――イギリス マーリン湖

ルパン「……」コソコソ

次元「……」ソロソロ

ルパン「……」コソコソ

ルパン「……!」

ルパン(あったぜ次元、あれが台座だ)ヒソヒソ

次元(さすがに警察は動いてないようだな。ま、当たり前か)ヒソヒソ

次元(ふーむ、しっかし見紛うことなき石だな。ただ刺さってるように見えるが……)

ルパン(どれ、ちょっくら抜いてみっか)

次元(あっ、こら!)

ルパン「ふんぎぎぎぎぎ」グイッ

次元(だーから簡単に抜ける訳ねぇって)

ルパン「おれもそう思ったんだがよぉ、もう少しで、なんか……」

次元(でっけえ声出したら人が来ちまうぞ!)ヒソヒソ

ルパン「んぬぐぐぐぐぐぐぐ……」

次元(ほれみろ。今日のところは退いて、道具を持ってくるなりしてな……おい、聞いてんのか)

ルパン「もう少し、もう少しなんだけどおおおおおおお」

次元「おいルパン!」

ルパン「おおおおおおおおおおおおおお!」

スポッ

次元「!?」

ルパン「あら?」

バチッ!

バチッ!

ルパン「うおっ眩しっ」

次元「ライトか!」

「おいルパーン!!」

ルパン「そ、しょの声はァ……」

銭形警部「今日という今日は逃がさァん! お縄につけィ!」

銃を持った男達「「「「ルパン、エクスカリバーをこちらへ引き渡せ」」」」

銭形警部「ルパン!」

銃を持った男「ルパン!」

「「ルパン!」」

次元「どうする?」

ルパン「決まってんだろ?」ニヤ

次元「それもそうだな」ニヤ

「「逃げる!」」

(♪ ルパン三世'80)

おれの名はルパン三世

かの名高き怪盗ルパンの孫だ

アーサー王伝説に登場した剣、エクスカリバーを盗んだはいいがこの剣どーやらいわく付き

初っ端からついてないし、なんだかツキに見放された気分だぜ

なんだかこの剣の話、これだけで終わりそうにないんだよなあ……

(銃声)

次元「奴ら撃って来やがった!」

ルパン「おだやかじゃねえなぁ!」

銃を持った男達「「「ここは通さん!」」」

ルパン「げっ、とおせんぼ」

次元「しょうがねえ! 撃つ!」バババッ

銃を持った男達「「「うわっ!」」」ドサッ

次元「峰打ちだぁ、安心しな」

銭形警部「すいませんなぁ、イギリスの考古学者の皆さんにルパン逮捕の手助けをしてもらうとは」

考古学者「いえ、我々はこのエクスカリバーを奪還したいだけですよ」

銭形警部「まあまあ謙遜なさらず」

考古学者「……」

銭形警部「しかし驚きですな、発見されて一週間クレーン車でも抜けなかったエクスカリバーをまさかルパンが抜いてしまうとは……」

考古学者「あのこそ泥のことです何か仕掛けを施したのでしょう」

銭形警部「ううむ、奴らしい」

考古学者「……」

考古学者「我々アーサー王を調べる研究室一同はインターポールの捜査に全面協力をします」

考古学者「共にエクスカリバーを……いえ、ルパンを捕まえましょう」

銭形警部「ありがたい限りです」

(銃声)

次元「これじゃキリがねえぞ!」

ルパン「ああ、さすがにこの量に2人じゃあ、な……」

銃を持った男達「「「ルパン、エクスカリバーを返せ!」」」

次元「……やべえな」

ブオオオオン…

次元「あの音は……」

ブロロロ…

ルパン「おれの車ァ!」

次元「見ろ! 乗ってるのは……」

キキィッ

五ェ門「乗るか?」

ルパン「っていうかおれの車ァ!」

次元「乗るぞ!」

――車内

ブロロロロロロ…

ルパン「いやぁー助かった助かった」

次元「一時は覚悟したぜ」

ルパン「しかし五ェ門、お前いつイギリスに?」

五ェ門「……旅行でござるよ。ただの、旅行」

ルパン「旅行ぉ?」



次元「ところでよルパン。お前そのエクスカリバー、いつまで握ってんだ?」

ルパン「あ、そね。お宝はアジトに着くまで綺麗にしまって置かなくちゃーな。しまって、しまって~♪ っと……」

ルパン「……あら?」

五ェ門「どうしたのだ?」

ルパン「あのよう……離れねえんだけど」

次元「何が?」

ルパン「エクスカリバーが……おれの手から……離れねえんだよお~!」

「「何ぃっ!?」」

――ルパン達が逃げ去った後…

警官「すいません銭形警部! ルパンは車に乗り逃走! エクスカリバーも盗まれたまま……」

銭形警部「クソぉルパンめぇ……」

銭形警部「……」

銭形警部「ふふふ……ふはははははは!」

銭形警部「がーっはっはっはっはっはっ!」

警官「け、警部、どうかなさったのですか?」

考古学者「我々アーサー王研究室はルパン三世確保の為に罠を仕掛けたのです、予めね」

警官「どのような……」

考古学者「ええ、露出したエクスカリバーの先端に。GPSを埋め込んでおいたのです」

警官「そ、それでは奴らの行き先は! アジトも!」

考古学者「ええ、近いうち暴かれることとなるでしょうな」

銭形警部「がーっはっはっはっはっはっ!! ルパンめ、そろそろ貴様の年貢の納め時よぉ」

銭形警部「がーっはっはっはっはっはっ!」



考古学者「やはり我々の予想通り……奴が王の資格を持つ者か。あの手……欲しい」

――ルパンのアジト

五ェ門「まだ取れんのか?」

ルパン「取れねえんだなあこれが」

次元「ルパンの手、引っ張り過ぎて疲れちまったよオレァ。一休み一休み……」ゴロン

次元「Zzz…」

ルパン「んった~く、人の気も知らないで」



次元「ふわぁ~あ……ん? ルパン、五ェ門は?」

ルパン「どっかいった」

次元「何してんだ?」

ルパン「エクスカリバーの解析作業をちぃーと。片手しか使えなくてつれーのなんの」

次元「で、どうなんだ」タバコスパー

ルパン「ああ……いいお宝だ」

ルパン「柄の部分にはルビー、サファイア、アメジスト、世界中のありとあらゆる宝石を散りばめられてる。デザインも……」

ルパン「それに見ろよ。この刃……綺麗だ。数千年もここに置かれっぱなしだっただろうに錆一つねえ」

ルパン「湖面のように磨かれてるだろ?」

次元「ほお……で、その剣が手にくっついてる理由は分かったのか?」

ルパン「いやなぁーんも」

次元「そうかい」

ルパン「だがよ」

次元「?」

ルパン「この剣、何かおかしいぜ」

次元「どういうこった」

ルパン「台座から案外簡単にすっぽ抜けたこといいよぉ、そこで気付いたんだ」

次元「えい、もったいぶってねえで早く教えろい」

ルパン「この剣の表面。湖面のようにツルツルに見えるが、微妙な凹凸がある。千分の一ミリ単位で削られた跡だ」

次元「お前が引き抜いた時につけた傷なんじゃねぇのか?」

ルパン「いんや、さっきハンマーで叩いて試してみたが傷一本たりとつかねえ。おれぁこの刃、特殊合金製だと見るね」

次元「数千年前に特殊合金があるたぁ思えないが」

ルパン「いやいや、案外ブリテン島はロストテクノロジーの宝庫だったりしちゃったりしちゃうかもしれないぜェ?」

次元「面白ェこと言うじゃあねえか。それで?」

ルパン「エクスカリバーの刃内部から微妙な磁気が検出された。刃表面の微妙な凹凸に、刃内部の磁気、これ何かに似てねえか?」

次元「似てる? んーそうだなぁ、お!」

次元「磁気カードか!」

ルパン「そのとぉ~り!」

ルパン「おれの見立てじゃあ、剣それ自体が一つの鍵になってるんだと思ってる」

次元「へえ」

ルパン「とにかくここで終わりじゃねえ。楽しくなってきたぜ」

ルパン「宝剣エクスカリバーの錠前……探しに行こうじゃないの」

ルパン「次元行くぞ!」

次元「どこに?」

ルパン「いーからいーから」

――ルパンのアジト

銭形警部「ルパァン! 貴様のアジト、この銭形が見つけたぞ!」

考古学者「いないだと!?」

警官「警部! あそこにあるのは!」

考古学者「あれはエクスカリバーに付けておいたGPS!」

銭形警部「……ぬわぁにぃ~?」

警官「手紙が落ちてるぞ」

銭形警部「よこせ!」バシッ

大事なお宝をキズモノにするなんて三流以下だぜ
ルパン三世

次元「ぬ、ぬぬぬぬぬ」グシャグシャ

次元「ルパンめェッ!」

――車内

ルパン「すまねえ次元、お前に運転任しちまってよ」

次元「仕方ないだろ。片手がこんな状態ならこうするしかねえ」

次元「で、どこに行けばいいんだ?」

ルパン「そりゃあ……>>36に決まってるだろ」

次元「>>36?」

次元さん何されたんすか…

>>34
修正

銭形警部「ぬ、ぬぬぬぬぬ」グシャグシャ

銭形警部「ルパンめェッ!」

次元「キャメロットってーとアーサー王の城があった都だろ? しっかしそんな場所、イギリスにないんじゃあねえのか?」

ルパン「ああ、ない。伝説は伝説だ」

ルパン「だが、それの元となったと言われる場所はある!」

ルパン「……コルチェスターだ」

次元「おお」

――コルチェスター

ルパン「イギリス最古の都、コルチェスター。古代ローマ人はブリテン島に来て初めて支配した場所だ」

次元「アーサー王が統治した国、キャメロットとコルチェスター。似てなくもないか……」

がやがや…

ルパン「ん?」

次元「騒がしいな。もう銭形のオヤジに居場所がバレたか? や、違うな」

ひそひそ…

ジロジロ…

ルパン「?」

次元「……あっ、ルパンお前! その手!」

ルパン「ん? あ、ありゃッ!?」

――路地裏

次元「バカやろー! 片手に剣握ったまんま街ん中ほっつき歩く奴がどこにいるんだ!」

ルパン「いやあすまねすまね。けど参ったな、この手じゃ色々不便だ」

ルパン「ご飯も次元ちゃんに食べさせてもらわないとぉ~」

次元「野郎の飯の世話なんざまっぴらだ! 包帯でも巻いとけっ!」ケッ



ルパン「どうだ? どっから見ても片腕骨折したやつにしか見えないんじゃねえかなぁ」

次元「ま、上々だ。そろそろ飯でも喰おうや。腹ぁ減っちまった」

ルパン「おう。じゃ、フォーク役は任せたぜ~」

次元「だからやめろ!」

――イギリス とある湖のほとり

五ェ門「……」

五ェ門(この場所は良い。涼しげな風と草と花の匂い。それに湖を覆い隠すように立つ木々)

五ェ門(これが「もののあはれ」か……)

五ェ門(拙者に一時の安らぎを与えてくれる――)



「……さん」

「おじさん!」

「ねえおじさんってばあ!」

五ェ門「む、せ、拙者か?」

五ェ門(いつの間にやら寝ていたようだ)

女の子「セッシャ? ふふっ、そうだよ! おじさんしかここに居ないじゃない!」

五ェ門「ぬぅ、拙者、拙者がおじさん」ピクピク

女の子「おじさん変なかっこうしてるよね! 外国の人?」

五ェ門「ああ、日本から来た」

女の子「日本? 分かんないや!」

五ェ門「そうか……」ガク

女の子「ねえおじさん。この場所、好き?」

五ェ門「この湖の辺りか? ああ……好きだ。この場所は拙者の血に濡れた心を清めてくれる、気がする」

女の子「ふふふっ、ありがとっ!」

五ェ門「お主を褒めたわけではない」

女の子「えへへ」

女の子「わたしもね、この場所好き。鳥さんやリスさんもよく来るんだよ!」

五ェ門「……ああ、知っている」ニコ…

女の子「それにね、それにね! 秋にはどんぐりがいっぱいいーっぱい――」

ミシミシミシッ!

女の子「きゃあっ!」

五ェ門「大丈夫か!」

女の子「う、うん」

女の子「……」

女の子「最近ね、この辺りの森を壊しに来る人がいるの」

五ェ門「……」

女の子「隣の湖も埋められちゃった……リスさんも鳥さんも木も水も……泣いてるよ」

バキバキバキバキッ!

女の子「この辺りももうすぐ壊されちゃう。そうしたらわたし、わたし……」

五ェ門「させぬよ」

女の子「おじさん……?」

五ェ門「させぬと言っているのだ」

五ェ門「そのために拙者はこの国へ来たのだから……な」

――カフェ

店員「……」ジロジロ

ルパン「あ、お気になさらず~」



次元「だーがあの銭形のとっつぁんもやるもんだ。オレたちが下見に来た時点で待ち伏せしてるたぁ」

ルパン「お互い長い付き合いだからよ、以心伝心しちまうんじゃねーのかなー」コウチャズズ…

次元「んなバカな。はは……」

ルパン「おれたちも年くっちまったのよ」

次元「辛気くせえやめろ」

次元「そういやよ」

ルパン「なんだ?」

次元「お前がエクスカリバー抜いて追いかけられた時、武装した連中がおれらを阻んだだろ?」

ルパン「ああ」

次元「あいつらが持ってた武器、見たか?」

ルパン「ああ、見た。武装許可された警官だってあんな銃持たねえ。それに、この件にスコットランドヤードは噛んでない」

次元「銭形の手前『待て』なんて言ってたがあの撃ち方……殺る気満々って感じだった」

次元「奴らは武装した考古学者かもしれねえなぁ」

ルパン「おれを殺してでもエクスカリバーが欲しいか。ひゃ~おっかねえ連中だこと」

次元「まったくだ。見つかる前にコルチェスターでの作業とやらを終わらしちまおうぜ」

――研究室

考古学者「紅茶を入れました。どうぞ」

銭形警部「あいや、すみません……それにしても、すごい量の書物がありますな」

考古学者「ええ、我々研究室の人間はこうしてイギリス内地至る所のアーサー王伝説またそれにまつわる物語を検証し、伝説が事実であることを証明する活動をしています」

銭形警部「それは素晴らしい。マーリン湖を発見したのもあなた方と聞き驚きました」

考古学者「……ここに一冊の本があります」

銭形警部「ふむ……『泉下の宝物庫』」

考古学者「嘗てアーサー王を導いた魔術師マーリンが記した物です。詩集のように見えますが、私はこれを一つの預言書として読み解きます」

銭形警部「預言書ォ? ……まさかエクスカリバーの刺さった台座を見つけることができたのも――」

考古学者「その通り」

考古学者「『王たる資格持つ者再び現る時、エクスカリバー再び顕現する』、『宝物の剣湧く地、人知らずの湖面なり』という一節があります」

考古学者「これを受け、我々はイギリス内で地図にも乗らないような山をピックアップし、やっとあの湖を見つけたのです」

銭形警部「なんという執念深さ、感服します」

考古学者「考古学者とは得てしてそういうものです。銭形警部、貴方のルパン三世を追うその執念深さと同じですよ」

銭形警部「確かにルパン逮捕はワシのらいふわーくですからなぁ」ポリポリ

考古学者「……何としてでも見つけないと」

銭形警部「奴がエクスカリバーを持ったまま国外に逃亡することはこのワシが許しません。お任せください。必ずルパンの首と共に剣を取り返しますので!」ビシッ!

銭形警部「首まではさすがに取りませんが、たはは……」

考古学者「……」



考古学者「帰ったか?」

研究員「ええ、先ほど」

考古学者「……日本人とはああいうものなのか? 私たちの資料をジロジロジロジロと」

考古学者「あげく――」



銭形警部『ちょっと読んでみてもいいですかな?』

考古学者『え、ええ』

銭形警部『……ふむふむ』

考古学者『何か分かりましたか?』

銭形警部『いえ、ワシ歴史の成績に関しては後ろから数えた方が早いくらいでして……』



考古学者「馬鹿め、にわか者風情がこの詩集を読めるものかよ」

女研究員「先生、夕食をお持ちしました」

考古学者「ああ、そこに置いてくれ」

女研究員「……はい」

考古学者「……」

考古学者「なぁ、サム」

研究員「はい、先生」

考古学者「さっきの女研究員は誰だったかな?」

研究員「解読チームのジーネです。ミフコ・ジーネ」

考古学者「ああ……戦闘班員の増強のせいで人の顔と名前が一致しない。私も年か?」

――研究室 解読班

女研究員「……」カタカタカタ

女研究員「……はぁ」

ガチャ

研究員「ジーネ、一人遅くまで残るのもいいが体を壊すなよ」

女研究員「ええ、ありがと。サムはもう帰るの?」

研究員「ああ、帰る。それとジーネ!」

女研究員「はい」

研究員「週末のディナーの件、考えておいてくれよな!」

研究員「じゃ、俺はこれで」

バタン…

女研究員「……」

女研究員?「イヤよ、先生の金魚のフンになって権力のおこぼれもらいたがる男なんか」

峰不二子「……ふふ」

峰不二子「人生にスリルを求める彼の方がよっぽどステキよ」

不二子(それにしても……ここの研究室、すごい)

不二子(アーサー王伝説が本当に存在していたって証明しちゃうんだもの)

不二子(魔法の時代、ううん違うわ。物語の中で魔法と呼ばれていたものは高性能AIと科学技術によるもの……)

不二子(男たちが魅入られるはずだわ……)

不二子「それにこの本……」

不二子(『泉下の宝物庫』……)

不二子(とある泉の下にはアーサー王の財宝が眠っている)

不二子(エクスカリバーはそれを泉を開く鍵って訳ね)

不二子(『聖なる剣、王たる資格持つ者抜く時。剣の鞘現る』)

不二子(よく分からないわ。何を暗示しているというの? )

不二子(それに『聖なる剣、王たる資格持つ者触れる時、剣は鞘に収まるその時まで主を決して離さない』)

不二子(……ルパンが王の資格を持つものだったなんて。アーサー王伝説に執心なさってる“あの先生”がルパンを恨む気持ちも分かるわね)

不二子(さてと、潜入とはいえ仕事は終わらせなくちゃね)

不二子(最後の一節ね、『アヴァロンへの道は未だ遠く。我見た未来見たくば己が手で探すべし』)

不二子(……アヴァロン。最後の戦いを終えたアーサー王が眠る場所)

不二子(これは「終わり」を指しているのかしら。なら、『アヴァロンへの道は未だ遠く』は……終わりのはまだ来ない……つまり)

不二子「この本には続きがあるってこと?」

「そうだ」

不二子「きゃあっ!?」

ガチャリ

考古学者「そんな化け物が出たみたいに叫ばなくともいいじゃないか、ジーネ」

不二子「せ、先生」

考古学者「君の言うとおりこの預言書はこの本のみを以てして完結ではない」

不二子「その続きは……」

考古学者「まだ見つかってはいないのだよ」

考古学者「その続きが物語なのか詩なのか媒体でさえ分からない」

考古学者「王の資格を持つ者がルパンだと分かった時には落胆したよ。今やアーサー王伝説に一番近い私よりあんなこそ泥がエクスカリバーに選ばれたのだからね」

考古学者「だが、彼らは動き出している。我々の知らない真実に向かって……」

不二子「!」

考古学者「ルパンもただのこそ泥では無いって訳だ」

考古学者「だから私は考えた。彼らはきっと『泉下の宝物庫』の続きを見つけてくれる」

考古学者「それまで私はルパンを生かしておくことを決めたよ」

不二子「生かしておく!? せ、先生? じゃあルパンが『泉下の宝物庫』を見つけたら」

考古学者「ああ。王たる資格は真実を追い求める私だけにある」ニヤ

不二子「……」ゾク…

不二子「なら何故先生はあの日……ルパンが現れた日、あの場所で張り込んでいたんです?」

考古学者「分かっていたからだよ」

考古学者「ルパンが王たる資格を持つ者と元々分かっていたから……」

考古学者「『泉下の宝物庫』にはこんな一節もある」

考古学者「『資格見極めし聖霊。肌の色で王を決めず』」

考古学者「『気高く、欲深く、強く、人望ある者。資格を持つ者なり』」

考古学者「……」

考古学者「これを読んだ時、私は一度エクスカリバーを掴みに行ったよ。私には真実を追い求める気高さ、欲深さ。そして研究室の研究員達が着いてきてくれる人望がある」

考古学者「失敗したよ。エクスカリバーは私を選ばなかった。私には強さが足りなかったのだと思う」

考古学者「……途方にくれた私はその時、彼の存在を思い出したのだよ。だから“おびき寄せた”」

考古学者「私の王たる資格の最後の条件『強さ』を証明する為には、同じく王たる資格を持つルパンが必要だ」

考古学者「私が武装隊を指揮しルパンを倒した時、初めて私の王たる資格が完成する。そんな仮説を立てたんだ」

不二子「……そう、なんですか」

考古学者「この研究室は本来であれば今月解体されるはずだったんだ」

考古学者「政府の連中は私の研究の素晴らしさを分からず資金を援助してくれない」

考古学者「目に見える成果が必要だった」

考古学者「エクスカリバーは研究室を存続させる為に、そして私が伝説を真実に変える為に、王たる資格を得るために必要なものだ。あれは必ず私の手の中に戻す」

不二子(私の手の中、ね。どこまでも強欲な人……)

不二子「でも先生。そんなことをどうしてわたしなんかに話すんで――」

考古学者「余計なことを考えるな」

不二子「っ!」

考古学者「この話は君だから話すことだ」

不二子「それはどういう……」

考古学者「この研究室から、私から逃げられると思うなよ。もちろん外部勢力に情報を流すのもナシだ」

不二子「まさか!」

考古学者「ここにいる限り君は私の所有物。銭形とかいうヘボ刑事、サムや他の研究員と同じ……私の手足となり働いてもらう」

考古学者「今の自分の立場を考えるのだな、ジーネ」

バタン…

不二子「……」

不二子「なぁんだ、わたしもルパンとおんなじってことね」

不二子「水槽の中の魚といっしょ」

不二子「泳がされてる水槽の魚……」

不二子「何だかとっても不本意だわ!」

――コルチェスター山奥

ブロロロ…

キキッ

バタン!

次元「おい、これで終わりなんだろうなあ?」

ルパン「多分、な」

次元「んったく、こんな夜遅くまでコルチェスター中の山道を運転させやがって」

ルパン「やっことがあんのよ、おれの予想が当たってりゃあな」

次元「そう言ってどんぐらいの山を回ったよ!」

ルパン「出世払いしてやっから黙ってみてな」ポチポチ

次元「お前ってやつぁ……で、何やってんだ?」

ルパン「エクスカリバーの解析ついでにケータイをよ、ちょちょっーといじって作ってみたんだ。ほら、電波測機~」

次元「電波測機? 電話塔もないこん山ん中でか?」

ルパン「こん山ん中だからよ。もうちっと奥に行ってみようぜ」ザクザク…

次元「はいはい…」ザクザク…

次元「気味悪ぃ場所だなぁ、帰ろうぜルパン」

ルパン「いんや、もうちっと」



次元「なぁルパン――」

ピピー! ピピー! ピピー!

次元「なんの音だ!?」サッ

ルパン「これこれ」

次元「電波測機の反応した音か……ってなんで電波のないところで測機が反応するんだよ!?」

ルパン「ビンゴだ、次元」

次元「ビンゴ?」

ルパン「このエクスカリバーを作る技術力から見て、この時代には高度な情報処理能力があったと考えられる」

ルパン「その時代、もし高度な電子戦なんてもんが行われていたら……なんて考えた時に作ったのがこの検測機ってーわけ。これなら微弱なノイズで見逃さねえ」

ルパン「ま、半分賭けだったけどよ」

ルパン「どの山でも検測機が反応しなかったんだ。暫定的にここで間違いないだろ」

次元「ここってお前、ここ……どこなんだ?」

ルパン「“ここ”こそがかのキャメロット城だよ」

ルパン「エクスカリバーに関連のある場所といやぁこれよ。手から剣を離す手段もここなら分かるはずだってことで探してたのよ」

次元「こりゃあすげえ……この山一つがキャメロット城だってのか?」

ルパン「この中に埋まっちまってんだか、埋めたんだか知らねえがキャメロット城がそっくり入ってるらしい」

ルパン「っと、決まれば入り口がどこにあるか探さねえと……」

ズズン!

ルパン「地鳴り!?」

「入られよ」

ルパン「ほぁ?」

「王たる資格を持つ者であろう?」

次元「や、山が喋ってやがる!」

「エクスカリバーは王たる資格を持つ者でなければ持てぬ」

ルパン「ははーん、そゆこと」

「となれば、今のキャメロット城の主はそなた。入られよ」

ギギギ…

「その友人も歓迎しよう」

次元「山が崩れて門が……ってーことは?」

ルパン「ちょうどいいフリーパスを持っていたようだ。入ろうぜ次元」

次元「おう!」

――キャメロット城

ルパン「――で、お前さんがキャメロット城の人工知能ってことか」

「さよう。私こそ長い眠りから今覚めた、キャメロット城だ」

次元「なかなか居心地いいぜ。飯もうまいしよ」ガツガツ

ルパン「この剣のことも知ってんだろ?」

「聖剣エクスカリバー。王たる資格持つ者が振るう剣だ」

次元「かはははは、聞いたか? ルパンが王たる資格を持つ者だってよ!」ゲラゲラ

ルパン「えい笑うない」

ルパン「……しっかし、この天下の大泥棒ルパン三世様が王様ね……おい、キャメロット。なんでおれの手にこれがひっついてるか分かるか?」

「知っている。何でも聞け」

「――と、いうことだ」

次元「……分かったか?」

ルパン「大体分かった。言葉が一々詩的で分かりにくいが解読できる」

ルパン「おれが王様で、手にくっ付いた剣を離すにはどこかの泉にある鞘が必要だ」

ルパン「その鞘が『エクスカリバー(鍵)』の錠前になり、そこに剣を収めた時に泉下の宝物庫が開かれる」

ルパン「そこにゃアーサー王が遺した金銀財宝ザックザク!」

ルパン「ってこった」

次元「なるほど。じゃ、ルパンの手の出来物ともおさらばってことか」

ルパン「だけじゃねぇ。後は鞘さえ見つけちまえば金銀財宝は王様のおれのモンになるんだぜ! ぬふふふふ、こりゃあ儲けもんだぁ。聖剣、聖鞘に城一つ、アーサー王の遺産っつーオマケ付き! 最高じゃねぇかあ!」

次元「ふふふふ……」

ルパン「ぐふふ」

「「あーはっはっはっはっはっはっはっ!!」」

ルパン「っと、決まれば泉の場所よ。おういキャメロットよ、その泉ってのはどこにあるんだ?」

「……」

ルパン「キャメロット?」

「教えられぬ」

次元「何ィ?」

ルパン「おいおいキャメロット、そらあどういうこったい?」

「教えられぬものは教えられぬのだ」

次元「なぁルパン、この人工知能何千年も眠ってたからモーロクしちまったんじゃあねえのか?」

ルパン「……いや、奴にも何かあるはずだ」

ルパン「キャメロット、すまねえ。聞き方が悪かった。資料室みたいなところはあるか教えちゃくんねーか?」

「……」

「ある。案内しよう」

ルパン「ありがとよ」

――キャメロット城 図書館

ルパン「すごい書物の量だな。国会図書館なんざ目じゃない」

ルパン「歴史書に神話集、科学化学に工学技術。こりゃ今晩中にゃ読み切れねえわな」

ルパン「へぇ……」ペラ

ルパン「歌う妖精に火を噴く杖……ね。なあキャメロットよ、これはどんな技術を使って作ってたんだ?」

「技術ではない。実在したのだ。この時代に作られた物全ては魔法によって成り立つ」

ルパン「妖精や魔法がァ?」

「今はない」

ルパン「何故?」

「人が信じぬからだ」

ルパン「信じないから魔法や妖精がいなくなったってのか? 精神論でどうこうなる世界観なのかよ」

「ああ。信じぬ者の前に魔法は無く、妖精は無力で不可視の存在となる」

「それ程弱く……脆い存在なのだ」

ルパン「ほぉ……そらあ一代で王国が滅びるわけだ。そんな力、何代にも渡って続くもんじゃあねえ」



ルパン「詩集か」パラ…

ルパン「『愛するそなたを名も無き泉の前で待つ』」

ルパン「『決して離さないで。無くさないように。私は待つ』」

ルパン「『そなた初めて会った湖と、戦の神が眠る場所。繋いだ場所で私は待つ』」

ルパン「っかぁーっ、甘酸っぱい恋の詩! なぁんだか歯の奥が浮いちまいそうな――」

ルパン「お?」

ルパン「んん~?」

ルパン(泉か。『泉下の宝物庫』と関係あんのか)

ルパン(『離さないで』、はエクスカリバーのこと。『無くさないように』は、アーサー王が無くしたエクスカリバーの鞘を暗示してる。次は……)

ルパン(『初めて会った湖』……エクスカリバーが現れた湖。じゃあ『戦の神が眠る場所』ってどこだ?)

ルパン(……)

ルパン(そうか、この城のことを言ってのか!)

ルパン(キャメロットという地名は元々、戦の神『カムロス』の町ってこって付けられたと聞くしな)

ルパン「そこを繋ぐ、と。えーと地図地図……あぁもう片手が塞がってめんどくせえなぁ!」ゴソゴソ

ルパン「さっすが俺様、古文書に潜む暗号を解読してて見事お宝の在処を見つけちまったぜ~」ゲラゲラ

ルパン「キャメロットも人が……いやいや人工知能が悪いなぁ~」ゲラゲラ

「む……」

ルパン「だぁってもったいぶっちゃって王様のおれにお宝の在処を秘密にしちまうなんて……」ゲラゲラ

ルパン「……」スッ

ルパン「何かあるんだろ?」

「……」

「この本の題を見ろ」

ルパン「ん? ……さっき見たぞ、この本のタイトルは『泉下の宝物庫』……ってあら?」

ルパン「タイトルの文字盤が動いてら……」

ルパン「!」

「これがこの本の本当の題だ」

ルパン「『泉下の納骨庫』!」

「王たる資格を持つ者は血の歴史を繰り返す。泉下の宝物庫はアーサー王が王となる前から存在していたものだ」

「宝物庫は王が代わる度に新たな王によって開かれ、財を得た王達は……知らず知らずの間にその力に踊らされ……死んでいった」

「誰がこれを望んだかは知らぬ。ただ、このキャメロット城が目にしてきた物は……文明が滅びゆく様である」

「新たな王よ。宝物庫を開くな。開いた時に……新たな戦いが始まる。長い長い戦いが……」

ルパン「……」

ルパン「そうか、お前は主が死んでいくのを見るのはもう嫌だって言いたかったんだな」

ルパン「だが……」

「ルパン! ルパン!」

次元「ルパン!」

ルパン「次元! どうしたよ」

次元「どうしたもこうしたもねえ! 今城の中を回ってたんだが……外に奴らが――」

ルパン「またつけられてたってのか!?」

ドォンッ!

ルパン「爆発ぅ?」

「侵入者発見! 侵入者発見!」

次元「ルパン上だ!」

ルパン「なんだっつーのよ! ……ってうわあああっ」

武装研究員たち「「「「……」」」」

ルパン「あらー……天井に蜘蛛みたいに人がいーっぱい……」

次元「武装した考古学者連中だ。あいつら爆弾使って山に穴開けて城ん中に入って来たらしい」

ルパン「人の家になんつうことを……」

ルパン「おぅい、蜘蛛さんよォ。ここでぶら下がってねーで降りてきたらどうだぁ?」

武装研究員A「……目的地に侵入成功。これより制圧に入る」

武装研究員たち「「「了解。降下」」」シュルル…

スタッ

次元「特殊部隊みてぇだな。素人のクセにいっちょ前に銃まで持ってよ」

武装研究員B「それはどうかな」ドンッ! ドンッ!

次元「っと、アブねえ」

次元「……中々良い射撃センスをお持ちのようで。ま、オレ程じゃあないけどなっ!」ドガッ!

武装研究員A「怯むな、お前達! 相手はたかだか二人。撃て、撃て!」

ガガガガガッ!

ルパン「何人いんだぁ……おい次元! そっちの部屋に逃げるぞぉ!」

次元「ちっ! お預けされんのは嫌いなんだが!」

――キャメロット城 部屋

ルパン開けろー!

諦めて投降しろー!

早くドアこじ開けるんだ!

次元「まさか簡単に侵入されちまうとはな。どんなセキュリティしてんだ」

ルパン「しゃあねーだろ、ツけられてたんだからよ」

次元「で、どうするよ。袋小路だぞ。流石のオレもいっぺんに百人と相手をする自信はねぇ」

ルパン「おれもだ」ヤレヤレ

ルパン「ま、こゆときゃ年長者に聞くのが一番ってな。キャメロットォ、どっからなら安全に外へ出られる?」

「脱出路を行け。私の制御室へ通ずる道がこの部屋の中には隠されている」

ズズズ…

ルパン「おう、やりぃ!」

次元「まるでインディーだな」

ルパン「行こうぜ。ドアが蹴破られちまう」ダッ…



武装研究員C「ルパンが居ないぞ。どこへ行った!」

武装研究員D「隊長、ルパンがいません!」

武装研究員A「安心しろ。ビート君(武装研究員B)を別ルートへ回した。脱出経路は全て押さえてある」

武装研究員A「ビート君は元イギリス海兵隊特殊部隊のスナイパー。最初の内はどうにかなったようだが、ルパン一味もただではすまないだろう……」

――キャメロット城 制御室

ルパン「スパコンが並んでら。こっからおめーさんは話をしてたんだな?」

キャメロット城コンピュータ(以下コンピュータ)「さよう。さぁ、ここから外へ出る道がある。そこからならお主らが停めている馬に一番近い」

次元「車、な」

ルパン「世話んなったな、キャメロット。ありがとよ」

コンピュータ「行くのか。宝物庫を開けに……」

ルパン「ああ。おれぁもう決めたんだ。このエクスカリバーもキャメロット城も、泉下の宝物庫もおれがぜぇんぶいただく」

コンピューター「……止めても無駄か」

ルパン「あぁ。無駄さ」

コンピューター「そうか……」

次元「行こうぜルパン。追っ手が来ない内に」

ルパン「んだな。じゃ、キャメロット! また――」

バァンッ!

ルパン「キャメロット……?」

コンピュータ「ガ、ガガ……」

武装研究員B「こちらビート。制御室到着。ルパンを発見……ここが先生が言っていた機械要塞、キャメロット城の頭脳、か」

武装研究員B「しかし高度な技術も考え物だな。コンピューターの一角に銃弾一発ぶち込んだだけで……その機能全てに支障が出始める」

コンピュータ「王よ……逃げろ。早く逃げるのだ。ガガ、ガ……」

――キャメロット城 図書館

武装研究員C「電波遮断機解除! 隊長、外部との通信が可能になりました!」

武装研究員D「メインコンピューターの破壊が完了したようです。ビート隊員の居場所を特定しました」

武装研究員E「門の破壊に成功。解析班を突入させます」

武装研究員A「王を守れぬ城か……哀れなものだ」

武装研究員A「待機状態解除! A班は城外へ出てルパンが逃げないよう網を張れ! B班はビート君を援護しルパンを攻撃! C班は先生に連絡しろ!」

「「「了解!」」」

――キャメロット城 制御室

次元「お前ら考古学者の端くれだろ! なんで大事な研究材料をぶっ壊すんだ!」

武装研究員B「この城は一度王たる資格を持つ者を見つけたら、その人間を死ぬまで守り続ける。我々には厄介な存在に他ならない。攻撃される前に破壊するしかなかったんだ」

次元「なにィ?」

ルパン「考古学者の風上にも置けねえ奴……」ギリ…

武装研究員B「先生も許可してくれた。それに……」

次元「あん?」

武装研究員B「俺達の目当ては城なんてチンケなもんじゃない」

次元「目当て?」

武装研究員B「『泉下の宝物庫』の下巻。ルパン、お前程の泥棒ならこれはもう見つけてるだろう?」

ルパン「あ、これぇ?」ヒラヒラ

武装研究員B「そう、それだ。俺の名前はビート。俺達B班の任務はルパンの協力者の殺害及び、『泉下の宝物庫』の下巻の奪取」

武装研究員B「それと個人的に……」

武装研究員B「次元大介、お前を撃ち負かす為にここに来た」

次元「オレェ?」

次元「オレはお前に用なんか無いが」

武装研究員B「あるんだよ、俺にはさァ! 次元大介、アンタみたいな強い男を殺せば俺の名前にも箔が付くって!」ドガガガガガガッ!

ルパン「うわぁっ!?」

次元「お前ホントに考古学者かよ!?」

コンピュータ「ガガ、ガァ……」



武装研究員B「次元出て来い。俺と戦えェッ!」バババババ

次元「はぁ、どうやら野郎、よっぽどオレのことが好きらしい」

ルパン「ヤんのか?」ヌフフ

次元「その趣味ゃねえがご指名なら仕方ねえ。おいルパン、先行ってろ。運転できるな?」

ルパン「ま、できねーこともない」

次元「おい! じゃあ何でオレにずっと運転任せた!?」

ルパン「あっ、お前ハメやがったなぁ!」

次元「ははは騙された! じゃあなルパン。オレも後で行く」

ルパン「イけんのか?」

次元「楽勝よ」

次元「おいキャメロット! 死にかけでもルパンを外に案内することぐらいはできんだろ?」

コンピュータ「ガガ、で、できる、ガガガ……」

次元「さっさと行け! ほーらっ!」

ルパン「わーったよぉ」

――キャメロット城 出口

コンピュータ「ガガ、ガガ、ここが――出、出、出口だ。しかし、外にすぐ見張りが……」

ルパン「キャメロット、心配すんなァ。おれはルパン三世だぜ?」

コンピュータ「行くな、ル、ルパン……」

ルパン「女々しいぜ、機械のクセによ」

コンピュータ「宝物庫を開けば……そこには地獄しかない……ガガ」

ルパン「地獄なら見てきたさ」

ルパン「色ぉんなもん見てきた。そらいっぱい殺したし、女だって泣かせた」

ルパン「でもよ。それがなぜかってーと、そこにゃ盗みたいもんがあったからなんだ」

ルパン「こりゃあ性だな。泥棒の性」

ルパン「だからおれぁやるぜ。も一度言うが止めたって無駄だ。盗むって決めたもんは絶対盗む。分かったら黙って見送ってくれよ」

コンピュータ「ガガ、ガガ……」

ルパン「地獄の道も、戦争の未来も。キャメロット、お前の悲しい想いもおれが盗んでやっから」

ルパン「安心して待ってな」ニターッ

コンピュータ「な、なんて男だ……ガガ。未来をできると言うのか……ガガガガ」

ルパン「泥棒さんにできないことはありませ~ん、ってな。ぬふ」

コンピュータ「ガ……」

コンピュータ「ガガガガガガガガガガガガ!――」

ルパン「お、おい、キャメロット!」

コンピュータ「ガガ……メインデータの破損を確認した。どうやら……私は……ここまでのようだ」

ルパン「……そうか」

コンピュータ「……私は嬉しいぞ。今度こそ王を守って……逝けるのだからな」

ルパン「大した城だよ。お前は……」

コンピュータ「……制御室でまだ次元という男が戦っている……お主は良い仲間を持ったな。アーサー王のようなことは起こらんだろう……」

ルパン「いんや、分からないぜ~あいつはあいつだからな」ヌフフ

コンピュータ「ガガ、ガガ……ガ……」

ルパン「……」

コンピュータ「ル……パ……ン……我が主よ……」

ルパン「お前も今日からおれの仲間だぜ」

コンピュータ「ガガ……ガ」

コンピュータ「『仲間』か……初めて言われた…………嬉しい……な……」

コンピュータ「……」

コンピューター「」

ルパン「キャメロット……」

ルパン「また、な」

>>108
訂正

誤 コンピュータ「な、なんて男だ……ガガ。未来をできると言うのか……ガガガガ」

正 コンピュータ「な、なんて男だ……ガガ。未来を変えることができると言うのか……ガガガガ」

――キャメロット城 外

武装研究員C「ルパンが城から消えたぞ! どこにいる!?」

武装研究員D「外にいるはずだ。探せ!」

武装研究員L「ルパンはあっちに行ったぞ!」

武装研究員C「あっち?」

武装研究員E「あっちは森の奥の方だぞ?」

武装研究員L「あー、じゃあそっち」

武装研究員D「そっちは城の中じゃないか!」

武装研究員C「こいつ手に何か隠してないか?」

武装研究員L「あ、あは、あははは……」

武装研究員L「あーっ! ルパンだぁ~っ! ルパンがあっちに逃げたぞォー!」

武装研究員D「あっちか! 行くぞ!」ダッ

武装研究員C「ああ!」ダッ



武装研究員L「ふぅ、行った行った」バリッ ベリベリッ

ルパン「ほんじゃま、こっからとっととずらかるとしますか」



ブロロロ…

――ルパンの車内

ブロロ…

ルパン「離脱成功~発信機の類も付けられてないようだし後はどこへ行くかだな……」

ルパン「っと、そういや城ん中でとっつぁん見ねかったなぁ。いっと最初に来そうな気がするが……」

ーん…

るぱーん…

ルパン「おっ、来なすった来なすった」

銭形警部「ルパァァアン!!」

ルパン「やっぱそうこなくっちゃ。アクセル全開で行くぜぇ~」

――パトカー内

研究員G「銭形警部、こんな夜遅くにすいません」

銭形警部「いえ、ルパンを逮捕するその日まで、ワシには朝も昼も夜もないのでお気遣いなく!」

銭形警部「しかしルパンにはやられました。まさかかの有名なキャメロット城を見つけてしまうとは……」

銭形警部「長年奴を追いかけてはいますが、常に驚かせられることばかり。年も取っていられませんな、わはは……」

銭形警部「くぉらルパァーン! 停まれと言っとろーがぁ!」バン! バン!

警官「警部! 発砲はさすがにやめてください! 対向車線の車がびっくりしちゃいますから!」

銭形警部「ワシが外すとでも思うのかキサマはーっ!」

警官「ひぃ~」

研究員G「……」

研究員G「我々研究所の人間も正直驚いています。まさかあのルパンに世紀の発見をされようとは……」

銭形警部「いやそうでしょうなあ」

研究員G「警察組織に負けず24時間監視していたのに出し抜かれて……お恥ずかしい」

銭形警部「いや、お言葉ですがあなた方はそれに関して言えばズブの素人。ルパン相手に気を許すことはできないのです」

研究員G「……」

銭形警部「あ、いや! 言い過ぎました。すみません」

研究員G「ええ、大丈夫です」

研究員G「……我々も銭形警部が到着するまで部隊を城へと侵入を試みたのですが」

研究員G「資料は盗まれ、ルパンに施設の殆どを破壊されてしまい……」

研究員G「キャメロット城にあるメインコンピューターは修復不可能な状態にされてしまいました」

銭形警部「む……」

研究員G「国の文化財となろう施設の破壊をするとは……無念です」

銭形警部「むぅ……」

研究員G「どうかなさいましたか、銭形警部」

銭形警部「そこなのですよ」

研究員G「はぁ……?」

銭形警部「いえね、ルパンがキャメロット城の施設を破壊したことです」

研究員G「それが何か?」

銭形警部「ルパンがその……宝になるような物を破壊するようなことがあるのか、と思いましてな」

研究員G「盗っ人なのですからそのようなこともあり得るかと」

銭形警部「いやぁ違う。奴の肩を持つつもりでは無いんですが、奴はもっとこう……」

警官「警部! 警部!」

銭形警部「どうした! 今話してる――」

警官「ルパンを見失いました!」

銭形警部「ぬぁにィ!? ……このバカもん! ワシに運転を代われぇ!」

研究員G「……」

研究員G「チッ」

――銭形警部滞在先

銭形警部「ではワシはここで」

研究員G「ええ。おやすみなさい、銭形警部」

銭形警部「先生によろしく伝えておいてください」

研究員G「分かりました。では――」

銭形警部「それと!」

研究員G「それと?」

銭形警部「……何かあった時は我々警察にすぐにお教えください」

研究員G「……」

銭形警部「捜査協力を願い出たのはワシですが……その単独行動は避けるようにしてください」

研究員G「……分かりました。教授にはそう伝えておきます」

銭形警部「では、おやすみなさい。ふわぁ~あ、やはり若い者には負けますな。もう眠くて眠くて……」スタスタ

研究員G「……」

――キャメロット城 制御室

ドガッ!

武装研究員A「ぎゃぁっ!?」ドサッ

武装研究員C「ひっ、隊長が、隊長がやられたぞぉ!」

武装研究員B「たかが1人に何をてこずってるんだ! だから増援などいらんと言っただろうに!」



次元(あちゃ。また弾切れか。死体が持ってた奴使っても足んねえぞこりゃ)

次元(一時間に百と3人。自己最高スコア更新か?)

武装研究員C「ひぃぃぃぃぃい! 出て来い次元! 死ね! 死ねぇ!」ガガガガ!

次元「うわっと!」ヒョイヒョイ

次元「手先が震えてんだよトーシロが!」バンッ!

武装研究員C「ぎゃぴ」ドサッ

次元(これで百と4人……と)

武装研究員E「撃て撃て!」ガガガガ

武装研究員B「次元、俺と戦えェ!」バババババッ!

次元(増援が来たか? マジかよ……さすがにやべえぞ、これ)

武装研究員B「もう一押しィ!」ドガガガガガ!

次元(うおおお!?)

次元(ちっ、無礼なあんちゃん達だ。銃はバカみてーにバラバラ撃つもんじゃあねェんだぜ?)

武装研究員B「ここがお前の死に場所だ! 死ねェ次元!」ババババ!

次元(こんな薄暗い城の片隅が俺の死に場所ぉ? はんっ、笑わせてくれらあ)

次元「……」

次元「……」ニヤ

次元(バカにすんない! この次元大介様はそんなにヤワじゃ――)

ガタッ!

次元「ねぇっつの!」バッ!

ドカカカカッ!

武装研究員B「!?」

「う、うが……」ピクピク

「助けてください、隊長ぉ……う、うぁ」

「救護班! 救護班!」

「退け! 退けーっ!」

武装研究員B「な、なんだ? 何が起きた!?」

次元「へへ」

武装研究員B「次元大介……貴様、何をしたァァッ!」

次元「知りたいかい、ボーヤ」

武装研究員B「……ッ!」

次元「聞かれなくても教えてやるよ」

次元「お前さんの二丁のグロックはそらひでえ撃ち方だった。あれじゃ銃が泣いちまう」ヘラ

武装研究員B「バカな! 俺の狙いは的確だった――」

次元「違う。そうじゃあねェ」

次元「確かに狙いは悪かなかった。だがな、銃ってのは撃って終わりじゃねーんだ」

次元「銃はな、撃つタイミングってのがある。お前さんは後ろの増援連中に構わずバカスカ撃っていただろ?」

次元「増援連中は前方にいるお前がリロードするタイミングに合わせて撃たなけりゃいけなくなっていたのさ。かわいそうにな」

武装研究員B「……!」

次元「もう気づいたか?」

次元「お前さんがリロードするタイミングと、増援連中が撃つタイミング。ここに隙があった」

次元「俺が撃ったのは一発だけだ。後ろにいた奴に向けて、一発……」

次元「奴が引き金を引くより、俺の撃った弾丸が到着する方が早かった」

次元「撃たれた奴はやっと引き金を引くが撃たれた衝撃と痛みで体が思うように動かねえ」

次元「しかし引き金は引いちまってるもんだから銃からは弾は出る。指を外そうにも突然のことで体をいきませてるからそれはできねぇ」

次元「で、見当違いの方向へ乱射大会」

次元「――これが連鎖に連鎖して、この有り様……ってこった」

武装研究員B「……」

次元「こうベラベラ喋って説明するのはガラじゃあねえんだが、どうしようもねーガキを見るとどうにも軍隊ガッコの教官やってた時の血が戻って来てな」

次元「こうして〝指導〟したくなっちまうんだ」ニヘラ

武装研究員B「……この俺に……指導、だと……っ!」ガタガタ

ワー ワー

次元「っと、この混乱。ズラかるなら今の内だな」

武装研究員B「お、おい待てッ!」

次元「あん? まだ用か?」

武装研究員B「俺とまだ決着がついていない! 逃げるのか!」

次元「勘違いすんなよ。こらぁルパンが逃げるまでの時間稼ぎだ。増援はほぼ全滅、もういいだろ」

次元「それに」

次元「トーシロに毛が生えた程度な腕のお前じゃあやり合う気にもなれねえ」

武装研究員B「なっ」

次元「数で押すのは簡単だがな。そんなこたあ誰にだってできるやり方さあ」

次元「そんなにヤりたきゃ、もっと俺をワクワクさせるようになってからまた来な。ま、無理だろーが」

武装研究員B「黙って聞いていれば……っ!」

次元「まあそうかっかしなさんな。あばよっ」ダッ

武装研究員B「おい! 待――」

武装研究員B「クソっ、逃げ足の早い奴めッ!」

武装研究員B「お前達、次元を追うぞ! 馬鹿やろう! 慌てている場合か! 追え! 追え――」

Trrr~♪

武装研究員B「ん?」

ピッ

武装研究員B「こちらビート。なんだ、ジーネか。デートの件についてなんだが、今はまだ忙しくてな。こっちが片付いたら――」

武装研究員B「なに? 撤退しろだと?」

武装研究員B「先生がそう言ったのか? ……ふん、なら仕方がない」

武装研究員B「……ああ、分かった。すぐ戻る」

ピッ

武装研究員B「……」

武装研究員B「チッ、あの役立たずの考古学者が。ボス気取りか? ナメやがって」ボソ

武装研究員B「おい。撤退だ。研究室に戻るぞ!」

――キャメロット城の片隅

次元「……いちちち」ドサ

次元「くぅ~、あの乱射大会の時に俺としたことが一発かすっちまった」

次元「さすがにこういうのは避けにきぃからなぁ……いてて」

次元「……」

次元(ん? 追っ手の気配が消えた。いや、さっきから城にいた人間の気配がねぇ)

次元(さしずめ撤退命令が出たってとこだろ。これで一安心、だな。車でのんびり帰るとする……)ゴロン

次元(車……)

次元「ああッ! ルパンが乗ってっちまったんじゃねえか!」

次元「この山からホテルまで歩いて帰らなきゃいけないってことかよ!」

次元「おーいルパぁーン!」

次元「戻って来てくれぇ!」

キテクレー

クレー

クレー

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom