八幡「やはり俺の大学生活は間違っている」 (128)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440584030

すいません間違えました。

他のとこで書いてたSSの続きだけど最初から書いていきます。

まだ自分の中で完結させてないので、のんびり書いていきます。

大学生活のアイディア募集してます。

それではどうぞ!

【八幡家】

おっす、おら八幡!
高校卒業して一人暮らししてるだ!
一人暮らしだから気が楽だぜ!
家でもボッチだぜ!

八幡「はぁ……」

心の中でテンションを上げてみたけど、やはり現実は悲しいものである。
家を出るなんて俺から言うと思うか?言うわけないだろ。
養ってもらう気しかなかったんだぞ。

親に追い出されてボロアパートで1人暮らしが始まってしまった。
それなりに家事は自分で出来るから良いものの、めんどくさい気持ちはどうしようもない。

小町も「少しは顔出すよ!」とは言ってはいたが、少しってどれ位少しなんだろうか。
俺が実家に帰る頻度の方が多いのではないだろうか。

だが始まってしまったものは仕方が無い。
ここで割り切れるところが、高校生と大学生の違いだ。
まぁ、明日が入学式だからまだ大学生ではないんだけどね。

プルルルルル

そんな事を思いながら明日の入学式の用意をしていた時、俺の携帯に電話がかかってきた。

八幡「もしもし」


小町『あっ、お兄ちゃん!一人暮らしは慣れた?』


八幡「まだ大学生活も始まってないのに慣れるも何もないでしょ」


小町『ふーん。まぁ、いいや!ところで今日はご飯どうするの?』


八幡「まだ考えてない。何にしよ
ガチャ
小町「小町はオムライスがいい!」


その声は俺の家の扉が開くと同時に聞こえてきた。
そこには小町がニヤニヤしながら立っていた。
ああ、家の前まで来てたんですね。

八幡「何しに来たんだ?」

理由なんてなくてもいいけどね。
小町ちゃんが来てくれるのに理由なんていらない!


小町「小町が来るのに理由がいる?あえて言うならお兄ちゃんに会いにだよ。今の小町的にポイント高い!」


八幡「高い高い。最後の一言が無ければ、八幡的にもポイント高かったんだけどな」

ああ、1人暮らしをしてからか、小町とのこんな些細なやり取りが、懐かしく感じてしまう。

まぁ、なんだ。親が共働きだし俺も一人暮らしを始めたんだ、自然と小町も一人になるのだろう。

今まで飯を食べる時は俺と一緒だったんだから、高二になるとはいえ少し淋しいところがあるのだろう。
仕方ない、早く飯の準備でもしてやろうか。

八幡「今から作るから少し待っとけ」


小町「小町も手伝おうか?」


八幡「大丈夫だ。そこら辺に座っとけ」


小町「ソファも座椅子もないじゃん……」


そんな呆れたような顔で言われても……。
仕方ないじゃないですか。
金もそんなに持ってないから、家具とか揃えれないんですよ。
僕もしかして、バイトしないとダメなのかなぁ。

そんな事を考えながら、作り終わったオムライスに、ケチャップで名前を書いてやった。

×××

電車を乗り終え、暗い道を二人で歩いて帰っていた。
外は風が冷たかった。


小町「お兄ちゃんも明日から大学生かー。大学でもどうせ友達とか全然出来ないんだろうな」


小町の方が冷たいんだけど。
何この子?なんでそんな事行言っちゃうの?
お兄ちゃん大学生活始まる前からマイナススタートだよ。

でも小町の言うことは間違っていない。
大学なんて年中酒飲んだり騒いだりしてる奴らなのだろう。
ほら、もう仲良く出来る気しない。
普通の人とも仲良くなれないんだから、更に難易度を上げないでいただきたい。

八幡「まぁな。友達がいるからいいってもんじゃないぞ。いないならそれだけでメリットもある」


小町「例えば?」


小町は首をくてっと曲げながら聞いてきた。

八幡「まず、喧嘩することにならない。そして、意味不明なテンションに無理して合わせなくてもいい」


小町「確かに合わせたりするのは面倒だったりするかも」


小町は頷きながら聞いていた。

八幡「人に合わせるのとか超気を使うじゃねーか。ただでさえ気を使って、話しかけられないオーラ出してんだから察しろよマジで。」


小町「お兄ちゃんは気を使うところがずれてるよ……」

いやだって、高校の時のガハマさんとか見てたら、本当に大変そうだったじゃないですか。
ならいっそ一人の方が楽だろう。
そう考えていたら、小町が俺の顔を覗き込みながら話し始めた。


小町「でも一人だとデメリットもあるのです!」


小町が人差し指を突き出しながら得意気に言い出した。
今まで一人だったのだから、デメリットなんて知り尽くしている。
私はなんでも知っている。
だが小町が語りだした以上、聞かないわけにはいかないだろう。

八幡「例えば?」


小町「お兄ちゃんが大学休んだ時、ノートを移させてくれる人がいない。複数人での行動の時気を使わせてしまう」


ふむ、まぁそんな事は分かりきっていることだ。
そこで終わりだと思っていたら、小町はさらに続けた。


小町「あと目が腐ってるから不審者に見られがち!」


八幡「ちょっと小町ちゃん?ぼっちの話じゃなかったの?いや俺もぼっちだけど。最後の一言はぼっちと言うより八幡効果が入ってるよ?」

この子なんて事言うのかしら。
生徒会なんかしてるから、一色の腹黒が感染して来たのかしら?
一色に小町が感染して来たら、きっと少しはあざとさが無くなるだろうに。

こんな会話をしていたらいつの間にか実家の前まで着いていた。
妹との楽しい時間は過ぎるのが早いな!

八幡「ならまた明日な」


小町「うん。明日ねお兄ちゃん」


小町はそう言うとバイバーイと言いながら手を振って来た。
俺が歩きだして少し離れたところから振り返っても、まだ手を振っている。
明日早く行ってやるか。

×××

八幡「MAXコーヒー飲みてぇな」

小町を送り終わってからの帰宅中、ふと思った。
口に出したけど。
どうしても今MAXコーヒーを飲まなければいけない気がした。
てか、ただ飲みたいだけなんだけどね。

周りに売ってないかキョロキョロしながら帰っていた。
やべぇ、これ完全に不審者に見られるな。
あやしいものじゃありません!少し目が腐ってるだけの普通の人です!
普通の人は目は腐ってないな。

そんな風に周りを見渡しながら帰っていたら、コンビニがあったので入ってみた。
そして店内を歩くと何やらお菓子コーナーで言い争っている二人組をを見つけた。


結衣「絶対たけのこの里がいいって!」


雪乃「いえ、ここはきのこの山一択よ」


な、なんてくだらねぇことで言い争ってんだ……
これはあれだな。見なかったことにして早く出よう。それがいい。

俺はなるべく最短ルートで飲料コーナーのところまで足を運んだ。
たどり着いた瞬間に俺は衝撃を受けた。

八幡「MAXコーヒーがないだと…」

あまりの衝撃に俺は言葉にしていたらしい。
それが聞こえてしまったのか、俺の方を見る二人組。

結衣「あれ?ヒッキー?」


由比ヶ浜は驚いたような顔をしながら言った。


雪乃「お久しぶりね」


八幡「……おう」


結衣「卒業式ぶりだー。何してるの?」


相変わらず大きな声で元気な奴だ。
夜だから少しは声のトーン落とそうね。

八幡「小町を送って来たから、今から家に帰るとこだったんだよ」

そう説明すると由比ヶ浜は、口をぽかーと開けたままアホみたいな顔をしていた。

八幡「え?何?どした?」


結衣「いやだって小町ちゃんを送って来て、今から家に帰るっておかしくない?兄妹なんだし一緒に住んでるはずじゃん!」


ああ、そういえば一人暮らししたこと言ってなかったな。
俺が説明しようと口を開こうとしたが先に雪ノ下がきりだした。


雪乃「察してあげなさい由比ヶ浜さん。実家から追い出されたのよきっと。家と言うのもきっと橋の下のことよ」


八幡「おい。確かに家を追い出されて橋の下みたいに汚い家に住んでるけどな……あれ?反論のしようがなくね?」

反論しようと思ったけど、正論を言われてることに気づいてしまった。


結衣「へー。一人暮らし始めたんだ」


八幡「まぁな。専業主夫志望として家事は出来るんだけどな。毎日だとさすがにめんどい」

言い終わると、雪ノ下がため息をついていた。


雪乃「あなたまだ専業主夫を目指しているのね」


いや誰でも夢は持っていいじゃないですか……
持っている夢が少しおかしいのだろうけど。

八幡「それで、お前らはこんなところで何してたんだ?たけのこVSきのこでも始める気なの?」


結衣「ヒッキー聞いてたの?盗み聞きだ、きもい!」


聞いてたというか聞こえてきたんだよ。
たぶん店員とか、話聞きながら馬鹿にしてたと思うぞ。
俺だったらするからな。


雪乃「さすが比企谷君ね。盗聴盗撮逃亡は得意だものね」


いやそんないい笑顔で言われても……

八幡「盗聴も盗撮もしてねーよ。大体最後逃げちゃってるしね。完全に盗聴も盗撮も失敗してんじゃねーか」

言い終えると雪ノ下と由比ヶ浜が顔を合わせ笑っていた。
え?俺そんなに変な事言ったか?
……変な事は言ってるな。


結衣「なんかこんなやり取り見るのも久しぶりだ。えへへ」


雪乃「比企谷君が相変わらず捻くれているからよ」


八幡「俺のひん曲がった性格を直すなど可能性はゼロに近いぞ」

どわっはっはー。
どやっと俺には似合わないドヤ顔で言ったやった。

さて、MAXコーヒーも無かった事だしそろそろ帰るか。

八幡「んじゃ俺はそろそろ帰るわ」


結衣「ヒ、ヒッキー!」


コンビニを出ようとしたが由比ヶ浜に止められてしまった。

八幡「どした?」

由比ヶ浜を見たら何やら、モジモジしながら何かを言いたそうにしていた。
お手洗いなら奥の方にあるぞ。


結衣「その…………ヒッキーも一緒にゆきのんの家……行かない?」


八幡「……は?」

いきなり何を言っているのかなこの子は?
僕帰るって言ったじゃない。
アホの子すぎて日本語も分からなくなっちゃったのかな?


結衣「その、明日入学式でしょ?だからゆきのん家でお菓子パーティーするの!よかったら来ない?」


ふむ。入学式の前だから、お菓子パーティーをするのはよく分からんな。
それに前日なら早く寝たいものだ。
雪ノ下もそういうタイプだと思うのだけどな。

雪ノ下を見てみると何とも言えない表情をしていた。
え?何その顔?何を伝えたいの?


雪乃「はぁ。由比ヶ浜さん?そういう事は家主に確認を取るのが先じゃないかしら?」


結衣「そうだった!いいかな?」


雪ノ下「別に構わないわ。比企谷君もそれでいいかしら?


八幡「いや、ちょっと俺は今からアレだから」


結衣「ヒッキー今から帰るって言ってたじゃん!暇って事でしょ?」


くっ、確かにそうだ。墓穴を掘っちまったぜ。
けどこんな時間に女性二人と女性の家に行くなんて……。
なんかこんな言い方したら変な感じになるな。

仕方ない。由比ヶ浜は言い出したら人の話を聞かない子なのだ。
さらに俺の意見など、誰と話しても通らないのが普通なのだ。
なら諦めるのがいいな。

八幡「わかったよ。ならさっさと行こうぜ。」


結衣「うん。なら最後にこのたけのこの里を買って行こう!」


雪乃「きのこの山でしょ由比ヶ浜さん?」


まだそのやり取り続くんですね……。

【雪乃家】

結局俺が、たけのこの里もきのこの山も買って雪ノ下の家まで行った。


雪乃「どうぞ」


結衣「お邪魔しまーす!」


八幡「お邪魔します」

久しぶりに来たが相変わらず広くて綺麗な家だ。
この家に比べると俺ん家なんて……。
考えるのは止めよう。


雪乃「紅茶でいいかしら?」


結衣「うん。ありがと!」


由比ヶ浜の返事の後に俺も無言で頷いた。
さて、お菓子パーティーと言ってもよく分からんな。
いつ帰れるのだろう。
このように、すぐ帰る事を考えるのはぼっちの習性だ。
よかった。まだ安定のぼっちだ。

結衣「ヒッキーって文系だったよね。どこの大学行くの?」


八幡「俺はA大学だよ」


結衣「へー。確かあそこって理系も一緒になったなかったっけ?」


八幡「おっ、よく知ってたな」

由比ヶ浜の言う通り俺の行く大学は、文系理系が同じ敷地内にあるのだ。
理系君とは仲良くできないな。
文系君とも仲良くできないな。


結衣「って事は優美子と姫菜と同じだね」


あいつらも同じ大学なのか。
由比ヶ浜は……うん。

八幡「そうなのか。まぁ、同じだろうが別に関わることはないだろ。高校でもそうだったしな。」


結衣「あたしも同じとこ行けてたらな……」


ちょっと由比ヶ浜さん?
俺が聞かなかったのに自分から言い出しちゃいますか。

由比ヶ浜はうぅーと悲しそうな顔していた。
自分で墓穴掘るなんて、どこのさっきの俺だよ。

八幡「まぁ、なんだ。大学が違うくらいで三浦と海老名さんとの関係が切れるわけじゃないだろ」

そんな分かりきっているような言葉しか出てこなかった。


結衣「……ヒッキーも?」


八幡「あ?」


結衣「ヒッキーとも関係が切れたりしないよね?」


八幡「…………」

どうなのだろうか。俺は今までずっと卒業したら同級生に会う事なんてなかった。
そういう関係になれた人が一人もいないからだ。
だからこれまでの経験から導かれる答えはノーだ。

だが、それでも、今回だけは違うのだろう。
由比ヶ浜ただ一人だけだが、関係を切りたくないと、そう思ってくれているのだ。
そんな事を思われるのは初めてだ。
なら俺の答えは一つだろう。

八幡「当たり前だろ」

俺は素っ気なく言ったがそれでも由比ヶ浜には十分だったらしい。
えへへと笑いながらじぶんのお団子をいじっていた。

雪乃「当たり前でしょ」


振り返ると部屋着に着替えた雪ノ下が、紅茶を持って立っていた。


八幡「当たり前なのか?」


雪乃「あなたがそう言ったのでしょう。それに平塚先生からの依頼もまだ解決していないのだから」


八幡「それってまさか…………」


そう言うと雪ノ下は意地悪そうに微笑んだ。
平塚先生からの雪ノ下への、俺に関しての依頼なんて一つしかないのだ。
それは俺が高校時代奉仕部に入れらてた理由だ。

それが分かると俺は無駄と分かっていながらも反論した。

八幡「それって時効にならないの?」


雪乃「ならないわね」


八幡「ですよねー……」


雪乃「それにもう私たちは……」


その言葉に俺と由比ヶ浜が聞き耳をたてると、雪ノ下はそこで言葉を止めた。


雪乃「いえ。なんでもないわ」


俺と由比ヶ浜は、先の言葉が気になりながらも深くは追求はしなかった。


雪乃「ほら。紅茶冷めるわよ」


結衣「ありがとゆきのん」


そうして由比ヶ浜は紅茶を飲み始めた。
俺は少し冷めるまで待っていると、雪ノ下はこちらを見るなり口を開く。


雪乃「ほら、あなたも」


八幡「いや、俺は
雪乃「猫舌なんだよ。かしら?」


八幡「……分かってんなら聞くんじゃねーよ」

口に運んだ紅茶は熱くはなかったはずなのに、俺の頬は少し赤く染まっていた。
明日から大学生活頑張るか。

今日はここまでで。
一気に投稿できず申し訳ないです。

×××

【八幡家】

早起きは三文の徳と言う言葉があるが、そんなことはない。
早起きしたせいで車にひかれることもあるのだ。ソースは俺。

いやでもあいつらと知り合えたから、徳にはなっていると思う。
おい、そんなことあるじゃねーか。


とにかく俺は入学式だろうが早起きなんてしてやらなかった。てか出来なかった。

今まで変な時間に起きてた癖が抜けず、さっそく寝坊してしまったのだ。
これも昨日帰りが遅かったせいだ。
そしてそれは由比ヶ浜のせいだ。
人のせいにすると気分って安らぐぜ!
嘘。俺のせいだなうん。

とにかく時間がないため顔を洗い歯を磨き、急いでスーツに着替えた。

入学式はスーツなのだ。
スーツを着るとなんだか少しは出来た人間になれた気がする。

朝飯を食べている時間はなく、早々と家を出た。

×××

スーツで自転車に乗りたくもないので今日は電車で行くことにした。

電車に乗ると時間は十一時半。
入学式は十二時からなのでなんとか間に合いそうだ。
ひと息ついたところで椅子に腰をかけた。


?「ひっ」


俺が座ると隣からそんな声が聞こえてきた。
そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか……。

隣に視線をやると知っている人物が座っていた。
川崎沙希。スーツ姿でいるから多分こいつも入学式なのだろう。

なんかスーツ姿の女性はいいな。
さらに川崎くらいスタイルもいいと妙に似合って見える。
まぁ、知らない顔でもないし軽く挨拶くらいはしとくか。

八幡「よう、久しぶりだな。お前も入学式か?」


沙希「そうだけど。あんたも?」


八幡「ああ」

軽い会話をしたらお互い黙り込んだ。
まぁ、俺も川崎も自分から話す方ではないからな。

……沈黙が気まずい。
その後十分ほど電車に揺られていると、川崎がその沈黙を破った。


沙希「あたし、次で降りるから」


そう言って川崎は席を立ったが俺も次で降りるのだ。
なので俺も席を立った。
だがそれが気に食わなかったのか川崎は振り返る。


沙希「何?」


八幡「俺も次で降りんだよ」


沙希「そ」


あれ?てか同じとこで降りて今から入学式ってあれじゃね?
ほぼ確信に近いが念のためだ。
俺は川崎に疑問をぶつけた。

八幡「もしかしてお前もA大学か?」


沙希「そうだけど。お前もって言い方、もしかしてあんたも?」


八幡「ああ」

あれー?これって行き先同じなら、一緒に行くとかそんな事になっちゃうの?
それはさらに気まずくなるのでなるべく避けたい。
そして電車はついてしまった。
さてどうしましょう?


沙希「ならあたし先に行くから」


俺が言葉を返す前に、川崎は早歩きで先に行ってしまった。
きっとあいつも、気まずくなるのを分かっていたから、先に行ってくれたのだろう。
こういう気遣いは素直に喜べる。

それとも何?俺と並んで歩くのが嫌とかそんな理由?
やめて!俺の事を傷つけないで!

いや違う。きっと恥ずかしかったんだろうな。
そう言う事にしてここは手を打とう。
真実は知りたくないよ。
真実は残酷だからね。

そうして一人で歩いているといつの間にか大学まで着いていた。
これから入学式だ。

×××

入学式と言っても、基本話を聞いているだけで終わった。

入学式が終わるとやたら仕切りたがる男が「今からみんなでカラオケ行こうぜー!」とか言ってたけど、用事があると言って断った。
嘘はついてないからいいよな。

校内の外では、学生たちが各グループで集まって話したりしている。
どうやらローカルテレビが撮影に来ているようだ。

それに出たいがために、大きなジェスチャーで目立とうとするグループや、大きな声で話して目立とうとしているグループが目に入る。
大きいことをしているのに人間的に小さいな。

周りを見渡していると川崎がいた。
やはりあいつも一人でいるらしい。
特に話すこともないので帰ろうと足を運びだした。


沙希「…………ちょっと」


意外な事に川崎から話しかけてきた。
てか俺名前覚えられてないのかな?

八幡「どーした?」


沙希「入学式の時…………あたしちょっと寝ちゃっててさ。その……何か大切な事とか言ってなかった?」


八幡「特に無かったと思うぞ。それに俺も寝てたからな。実際よく分からん」


沙希「…………はぁ」


いやあなたも寝てたじゃないですか……。

女子アナ「それでは次はこちらのカップルに話を聞いてみましょう!」


俺らがそんな会話をしていると後ろから話しかけられた。
さっき見かけたローカルテレビのアナウンサーだ。

女子アナとは実際に見てみると可愛いな。
絶対に女子アナとかは顔で選んでるところがあるはずだ。
ソースはフジテレビ。

ん?てか今カップルって?


沙希「ちょっ//カ、カップルって……///」


いや川崎さん?そんなに頬を染めないでくれませんか?
女子アナより可愛いじゃないですか。

そして色々と女子アナに聞かれたけど俺は適当に話していたし、川崎も何やら焦っていたようでグダグダなインタビューになった。
これだけグダグダならテレビで使われる事も無いだろう。
よかった。本当によかった。

×××

昼過ぎでまだ外は明るかった。
大学を後にした俺は総武高校へと向かっていた。

先ほど小町からメールが届いていた。
どうやら生徒会の作業が長引いてまだ帰宅できないらしい。
なので学校まで迎えに来いと言われたのだ。

まったく、兄使いの荒い妹だぜ!
そんなとこもかわいいんだぜ!

そして総武高校が見えてくると女の子らしい人影がこちらに気づき、大きく手を振っていた。

小町め、そんなにお兄ちゃんが来てくれるのを待ち望んでいたのか。
だが、そんな思いは軽々と踏みにじられた。

いろは「せんぱーい!」


手を振っていたのは一色だった。
待っていたのだろうか?
いや、待ち伏せていたのだな。


いろは「先輩遅いですよ!何してたんですか?」


一色はプンプンと頬は膨らませながら言ってきた。

八幡「なんでお前なんだよ……。小町はどうした?」


いろは「そんなガッカリしなくてもいいじゃないですか。小町ちゃんならまだ片付けしてますよ」


八幡「お前も働けよ」


いろは「小町ちゃんにお願いされたんですよ。なので先輩も早く来てください」


八幡「仕方ねぇな」


いろは「嫌に素直ですね?」


当たり前だ。小町を待たせるわけにもいかないしな。
さっさと小町に会わせやがれってんだ!


いろは「……先輩ってスーツ似合いませんね。なんか笑っちゃいそうです」


一色は俺を見ながら笑っていた。
いや、笑ってますやん……。

八幡「俺だって好きでこんな格好するかよ。着慣れてないせいできついし、靴づれは痛いし。大体スーツなんて働く奴だけ着てればいいんだよ」


いろは「はぁ……」


どうやら俺の話なんて聞き流しているようだった。
うーん。なんて返せば正解なのかしら。

その後一色に片付け中の体育館まで連れて行かれた。
勝手に入っていいのだろうか。
まぁ、何かあったら責任は生徒会長様にとってもらおう。

×××

体育館に着くとまだ片付けは進んでいないらしく、椅子やテーブルなど労働系の作業が沢山残っているようだった。

生徒会も手伝いの人もどうやら女性が多いらしい。
きっと面倒くさい事なので最後に残しているのだろう。
でもね君たち、面倒くさい事ほど先に片付けておくべきだと先輩は思うな。

すると小町が、俺と一色のところまでてけてけと走ってきた。


小町「お兄ちゃんやっと来たんだね。いろはさんも連れて来てもらってありがとうございます!」

こいつってなんで年上の人を、先輩じゃなくてさん付けで呼ぶのだろうか?
雪ノ下は雪乃さんで、由比ヶ浜は結衣さんだったはず。
あれかな?お前らなんか私の先輩の器じゃないわよ的なやつなのだろうか。

八幡「にしても、片付け進んでないんだな」

俺が周りを見渡しながらいうと、小町と一色がにししと笑っていた。
あ、これアカンやつや。

八幡「片付け終わったら呼んでくれ。平塚先生のところに挨拶行ってくるから」

取り敢えずこの場を離れようと、それらしい言葉を行って立ち去ろうとしたが、後ろから両手が掴まれた。
右手は小町。左手は一色。


いろは「先輩は椅子の片付けお願いします」


一色は当たり前のように俺に仕事を押し付けてきた。
俺にさせるために肉体労働残してたのかよ……。


小町「後輩の手伝いをするお兄ちゃんポイント高い!」


そんなポイントいらないよー。
小町ポイントカード忘れたからやめてよー。

そんな事を俺が言っても、無駄な抵抗な事は自分が一番分かっている。
それに早く帰りたいし、手伝いくらいしてやるか。

八幡「はぁ。仕方ねぇな。早く終わらすぞ」

そう言うと小町と一色ははーいと、やる気なさそうに返事をした。
この2人のコンビ、俺を困らせる気がする。

×××

【比企谷家】

俺たちが作業を終わらせ、実家に帰る頃には夕方になったいた。


小町「ただいまー!」


小町が元気よく言い、そのまま自室へと向かった。
その後俺の声が続く。

八幡「ただいま」

その後まだ声は続いた。


いろは「おっ邪魔しまーす」


一色はルンルンと当たり前かのように、一緒に俺たちの家へと来ていた。

八幡「で、なんでお前まで俺らについて来てんの?コバンザメなの?」


いろは「わたしは小町ちゃんと遊ぶから来たんですー。先輩には関係ありません!」


一色はそれで俺を説得したつもりらしい。
いや、今から小町は俺の入学祝いで料理とか作ってくれるんだよ?
小町絡みなら関係ありありじゃないか。

一色は帰るつもりなど微塵もないらしい。
一応客という事なのだし茶菓子くらいだしてやるか。
俺は一色をリビングに案内した。

八幡「テレビでも見て待っとけ」

俺はテレビをつけて茶菓子の用意を始めた。
小町も俺のおさがりの、だぼっとした部屋着に着替えて降りてきた。

八幡「小町ー。菓子ってどこにある?」

俺は呼びかけたが小町から返事はない。

八幡「小町ー?」

やはり返事がない。ただのしかばねのようだ。
小町と一色のほうを見てみるとテレビを見てぼーっとしていた。
そんなに面白いテレビでもあってるのか?


いろは「先輩、これ何ですか?」


答えたのは一色だった。
トーンが低く重みのある声だった。

言われて俺もテレビの方に顔を向けるとあら不思議。
なんと、スーツ姿の僕と川崎さんが映っているではないですか。
いや待てよ。なんでだよ。

どうやら今日受けたインタビューが放送されているらしい。
あんなの使っちゃうのかよ。


いろは「先輩大学に入って早々彼女出来たんですねー」


気のせいだろうか。
一色の声にあざとさがなくなっているような。
その横にいる小町は大志くんのお姉さんもありか、などとブツブツ呟いている。

八幡「い、いやっ。これは勘違いだ。このアナウンサーが勝手に言っているだけであって、決して付き合ってなどいない。」

なぜ俺は、言い訳みたいな事をしなければならないのだろう。
誰にも迷惑はかけてないはず……
川崎にはかけてるな。


いろは「まぁ別にいいんですけど」


一色は勘違いだと分かったからか、声にあざとさが戻っていた。
ふむ。やはり一色はそうでなくては。

この話題が終わると小町はパンッと手を叩いた。


小町「それでは小町は今からご飯を作りますね!いろはさん。お兄ちゃんで暇つぶしして下さい」

あれれー?おかしくなーい?
一色と小町が遊ぶのではなかったのかな?
と思ったのだが飯を作って貰う立場なので文句は言えない。

八幡「なら俺は本でも読んでおくから、一色はなんか適当に時間潰しとけ」

そう言って俺が本を読もうと部屋に向かおうとすると、横からひょいっと一色が出てきた。
そして頬を膨らませながらジト目で俺の事を見てくる。

八幡「な、なんだよ…」


いろは「こんなに可愛い後輩が遊びに来ているのに、放置はないんじゃないですかー」


八幡「と言われてもな。する事なんて何もないぞ」

諦めるようにそう言ったのだが、一色はテレビの前のゲーム機を指差した。


いろは「これで勝負です」


八幡「Weeiか。言っておくが俺のリモコン捌きは格が違うぞ」

思っていたより俺がノリノリだったせいか、一色が若干引いていた。

八幡「いやお前がしたいって言ったんでしょうが」


いろは「なんか思ってたよりアレなテンションで、うまく言えないですけど気持ち悪いです」


八幡「うまく言えちゃってるから。言い切ってるからそれ」


いろは「まぁ、取り敢えずしましょうよ先輩」

言われて俺は準備を始めた。
コードを繋げ、テレビのチャンネルをゲーム専用に変える。
さてと、ボコボコにしてやるぜ。

八幡「これでいいか?」

俺はWiiスポーツを取り出した。
一色も頷いたのでさっそく始める事にした。
Wiiスポーツの中でも数種類のゲームがある。


いろは「テニスにしましょう。リベンジです!」


八幡「リベンジ?」

俺ってこいつとテニスした事あっただろうか?
戸塚を差し置いて一色とするわけもない。
ふーむと悩んでいるといつかの事を思い出した。
確かデートコースを考えるみたいなので、こいつと卓球をしたな。

八幡「あーあれか。てかテニスじゃなくてテーブルテニスだろあれは」


いろは「細かい事はいいです。また賭けをしましょう。わたしが勝ったら、小町ちゃんが作ってるご飯を食べて帰りますよ」


ふむ、あの時は昼飯を賭けにした筈だ。一方的だったけど。
一度使われた手は、俺には二度は効かない。
なので今回はちゃんと確認をした。

八幡「俺が勝ったらどうすんだ?」

言うと一色はニコニコしながら答えた。


いろは「わたしと一緒にご飯を食べれる権利をあげます。可愛い後輩とご飯なんてチャンスですよ!」


八幡「それ勝っても負けても変わらねーな」

こいつは夜飯を食べていく気満々なんだろう。
まぁ、親も帰りは遅いし、小町も一色の分も作っているのだろう。
なんだこの賭けは……。
賭けになっていない賭けが成立したところでゲームを始めた。

俺は手首だけでリモコンを動かして操作している。
それに対して一色は体を大きく動かして動いたりしている。
ちょくちょく肘とか当たって痛いからね。
気をつけてくれないかな。

少しラリーが続くと一色が声をあげた。


いろは「おりゃぁぁぁぁ!!」


そう言って俺がボールを返すタイミングに合わせて、一色がスタートボタンを連打し始めた。
おかげで返すタイミングがズレて空振りしてしまった。

八幡「いや卑怯だろ今の」


一色「なんの事ですかー?」

一色は人差し指を頬に当てながらとぼけてませた。
相変わらず卑怯な野郎だぜ。

一色は疲れてきたのか、少し息が荒くなっていて、足元がふらついていた。

八幡「大丈夫か?」


一色「はぁはぁ。敵の心配をするなんて甘いですね。まだ勝負はついてませんよ。あっ」


言い終えると同時に足を絡ませたのか、倒れそうになっていた。
俺は無意識に手を伸ばし支えようとしたが、一色を片腕で抱きかかえるような体制になってしまった。


一色「あ、あの。先輩…?」


一色は顔を少し赤らめていた。
こいつってこんなに可愛かったっけ?

八幡「あ、その、なんだ。すまん」


一色「い、いえ。ありがとうございます………」


なんだよこの空気?
沈黙が続くと、さっきの一色の肌の感触やら匂いやら思い出しそうだ。
一色もだんまりしている。
いつもはもう少し喋るくせにこいつ……。

こんな沈黙の中キッチンの方から視線を感じて、俺と一色はそちらを振り向く。
小町がニヤニヤしながらこちらを見ていた。


小町「ご飯できたけど食べますかー?それともまだ2人で遊んでおきますか?」


八幡「飯にしてくれ。一色もそれでいいだろ?」


一色「あっ、はい。すみませんいただきます」


最初から食べる気しかなかったくせに。
たが、さっきの沈黙も無くなったからよかった。
ナイスだ小町。さすが出来る妹。
だけどそのニヤニヤ顔はやめようね。

×××

晩飯を食べ終わり小町に言われ、一色を家まで送る羽目になってしまった。
まぁ、一色を夜道を一人で帰らせるのも少し心配なので別にいいのだが。


いろは「いやー、小町ちゃんって料理上手だったんですね!美味しかったです」


八幡「当たり前だ。お前も少しは小町を見習えよ」


いろは「勝手にわたしが料理出来ないって決めつけないで下さい!簡単なのなら出来ますよ」


八幡「どうだか」

一色がプンプンと怒りながら言ってきたのは俺は適当に返す。


いろは「信じてないですね。出来るってところ見せてあげます!」


どうやら俺の反応が気に食わなかったのか一色はそう言いだした。

八幡「いや見せてあげるって言われても…………。見せようがないだろが」


いろは「先輩って一人暮らしなんですよね?だから今度作ってあげます」


八幡「……え?」

嫌だ。絶対嫌だ。
俺の聖域(家)を汚されるわけにはいかない。
入り込んでいいのは小町と戸塚だけなのだ。
だって天使だからね!

俺は一色が分かるようにメチャクチャ嫌そうな顔をしてやった。


いろは「嫌そうな顔しないで下さいよ。さすがに傷つきますよ?」


八幡「いやそんな事言われても、嫌なもんは仕方ねぇだろ」


いろは「結局ハッキリ言っちゃうんですね……」


だって雰囲気で分かってくれないなら、ハッキリ言うしかないじゃないか。
だが言葉で言っても分からないのが、一色なのである。


いろは「いつか葉山先輩に手料理をご馳走する事になるかもしれないじゃないですかー。だからその時のために、男の人にわたしの料理の感想とか聞きたいんですよ」


八幡「お前まだ葉山の事諦めてないのかよ。それに料理とかは学校で調理実習とかあるだろ。それでもクラスの男子に食わせとけ」


いろは「調理実習だと作る料理とか決められてるし、数人で作るからわたしの料理とは言えません!」


ふむ。それは一理あるな。
……はっ!説得されてどうするんだ俺!
それでも一色は口を止める事はなかった。


いろは「それにさっきのゲームで一応先輩が勝ってたじゃないですか!なのでわたしとご飯する義務があるんですよ!」


八幡「あれ?権利じゃなかったっけ?義務と権利だと全然違うんだけど?」

権利だったらその権利を使わなければいいだけだ。
義務と言われたらそれはもう、強制参加みたいなものだろう。


いろは「それじゃあ、いつにしましょうか?」


あらあらあら?すでに決定されてしまったのかしら?
一色はニコニコしながら俺の方を見ている。
…………まぁ、仕方ないか。


八幡「あー………なら暇な時連絡する」


いろは「毎日連絡来るのはちょっと面倒くさいんですけど……」


八幡「おい。俺を毎日暇人扱いするんじゃねーよ。暇だけど。だが連絡はしないから安心しろ」

なんだかんだで、料理を作ってもらう事になってしまったな。
雪ノ下みたいなレベルは無理だとしても、由比ヶ浜以上ではあってほしいものだ。

そんな会話をしていたら駅前まで着いていた。


いろは「ここまででいいですよ!先輩も電車乗るんですよね?」


八幡「ああ。そうしてもらうと二度手間にならないから助かる」

俺と一色は電車に乗るのだが方向は逆なのだ。
ここまででいいと言ってくれたのも、俺のためなのだろうか?
だとしたら意外といい奴なのかもしれない。

八幡「じゃあな。気をつけろよ」


いろは「はい!先輩も捕まらないように気をつけてくださいよ」


一色は可愛らしい笑顔を浮かべて一言言った。
こいつ俺が何をすると思っているんだ。
そこで俺と一色は別れた。
まったく。可愛くねぇやつだな。

今日はここまでで!

Weei
うぇーぃ

>>44-45
weeiに気づいてもらえて嬉しい

×××

大学生活も数日が過ぎていた。
俺は相変わらずぼっちなのである。

この大学では必ずサークルには所属しなければならないらしい。
なんでそんな規則あるんだよ。
ぼっちに優しくねぇな。

ぼっちな事もあり、俺はまだサークルには所属していない。
やりたい事が見つかりません!
なんて将来の夢を聞かれた時の反応状態だ。
俺は専業主夫なんだけどね。

サークルの種類も多いのでこれまた決めるのが面倒くさい。
俺が講義が始まる前にうーんと悩んでいたら、隣に座ってくる女性がいた。

三浦優美子。

そう言えば由比ヶ浜がこいつもこの大学だって言っていたな。
で、なんでこいつが隣に座ってんの?


優美子「ヒキオ」


三浦はどうやら俺に用があるらしい。
珍しい事もあるものだ。
大学生活では絶対に関わる事はないものだと思っていたし、三浦もその気のはずだろう。
だって名前覚えられてないレベルだし……。

優美子「聞いてんの?」


八幡「なんだよ?」


優美子「あんたさ、もうサークルとか入ってんの?」


八幡「ちょうど今その事で悩んでいたところだ」

そう返したのだが三浦は不機嫌そうに言ってくる。


優美子「は?そんなことはどーでもいいの。入ってるのか入ってないのか聞いてんだけど」


ふえぇぇぇ。この人怖いよぉぉぉ。
これ以上機嫌を損ねるのも身の危険を感じるので、無駄な事は言わないでおこう。

八幡「まだ入ってない」


優美子「ならあんたもテニスサークル入って」


八幡「……は?」

これはあれか。誘われているのだろうか?獄炎の女王に?俺が?
俺が三浦に誘われる覚えはないんだけどな。

八幡「なんで俺がテニスとしなきゃならねーんだよ。意味がわからないんだが」

俺が説明しろと促すと三浦は話し出した。


優美子「あーしテニスサークルに入ったじゃん?でも人数が少なくてサークル自体がなくなりそうなわけ」


八幡「ほう」


三浦「分かった?」

え?説明終わりなの?
それだけで分かるわけない。
大体それで伝わる人などいるのだろうか?
これは俺より三浦の方が悪いはずだ。

八幡「いや、説明するならきちんとして貰いたいんだけど」

こんな伝わりづらい話でも、聞いてあげる俺って優しいなぁ。
三浦は面倒くさそうに続ける。


優美子「人数足りなくてサークル潰れるから、あんたが入って潰れないようにしてって言ってんの。ヒキオってそう言う人助け的なの好きでしょ。あんな部活してたんだし」


八幡「いや全然好きじゃないんだが。俺は仕事だからしていただけで、個人的には人助けなどしない。むしろ助けられたいまである。それにあの部活は平塚先生に無理矢理入れられただけだしな」


三浦「何?仕事なら出来るけど、あーしが個人的に頼んだらダメなの?」


三浦はムカついているのか、少し早口になっていた。

それにしてもあれだな。
個人的にお願いするとしても、俺にするのが間違っている気がする。

お願いされるの事自体は悪い気分はしないのだが、人助けなどは好んでする事ではない。
決して面倒くさいわけではない。

八幡「いやそんな言い方されてもな。それに海老名さんとか他の友達誘えばいいだろ。お前友達いそうだし」


三浦「姫菜はまんけん?とか言うよく知らないサークルに入っちゃったから無理に誘えないし。友達に言ってもテニスが嫌なのか微妙な反応されるから無理言えないし」


八幡「俺には無理言うのかよ……」


そう言う三浦の顔は横を向いているからよく見えなかったが、曇った表情をしていたのだろう。
それに、ここで俺が話を聞かずに流してもあまり意味はないのだろう。
少しくらい考えてはやるか。

八幡「あー…あれだ。いきなり言われてもあまりピンとこないからな。考えさせてくれ」


三浦「分かった。なら決まったら連絡して」


そして三浦は席を立ち去って行った。
今から講義始まるし、お前の連絡先とか知らないんだけど……。

×××

【八幡家】

家に着くなり、テニスサークルに入るかどうかを考えていた。
テニスなんて体育の授業でしかした事ない上、道具を揃えなければならないからそれなりに金もかかりそうだ。
これは自分で考えたら、すぐにノーと言う答えが出てきちゃうんだな。

なのでここは詳しい人に話を聞くのが一番良いだろう。
さっそくメール……いや、電話にするか。

べ、別に声が聞きたいとかそんなんじゃないんだからね!
そうして俺は携帯を手に取りその相手に電話をかけた。


彩加「もしもし?」


電話の相手は戸塚だ。
まったく。声を聞いただけなのになんでこんなにも幸せになるのだろうか。

八幡「いきなり電話してすまんな。迷惑じゃなかったか?」


彩加「大丈夫だよ。それに、久しぶりに八幡の声聞けて……嬉しい、よ」


なん…だと……。

なんだこの感情は…。
そうか、これが恋か。
俺は無言でそんな事を考えていたせいか、戸塚は困ったようにしていた。


彩加「八幡?大丈夫?」


八幡「あ、ああ。大丈夫だ。それで聞きたい事があるんだが」


彩加「何?僕で答えれる事なら何でも聞いて」


おっと、うっかり好きな奴とかスリーサイズ聞きそうになってしまったぜ。
なんでだろうなぁ?

八幡「テニスって道具揃えたりするの大変なのか?」

意外な質問だったのか戸塚は戸惑ったように答えた。


彩加「テニス?うーん……道具を全部揃えるとなるとそれなりにかかるよ」


八幡「やっぱそうなるか」


彩加「八幡がテニスの事で電話するなんて珍しいね。何かあったの?」


八幡「三浦にテニスのサークルが人数不足で潰れそうだから入って欲しいって言われたんだよ。まだ入るかは決めてないけどな」

本当はもう少し乱暴な言い方だったけどね。
戸塚にそんな事は言えない。
なので簡単に説明した。


彩加「そっか。でも八幡もテニスしてくれたらそっちに戻った時一緒にテニス出来るね!」


戸塚は今県外の大学で寮生活をしている。
戸塚と同室の奴羨ましい。

戸塚とテニスをする事を考えると、意外とあっさりサークルに入ろうと思ってしまった。
だって戸塚と会うための口実できるし。
よし、入ろう。
俺は嬉しすぎる気持ちを抑えた。

八幡「多分入る事になると思うから、帰ってきたらテニスでもなんでも誘ってくれ」


彩加「うん!楽しみが増えて嬉しいよ」


戸塚は元気よく言った。
何故だろう。戸塚が喜ぶと俺も嬉しい気分になるのは…。
そうか、これが恋か。
さっきも確認したなこれ。

八幡「色々教えてくれてありがとな。じゃあな」


戸塚「うん。ばいばい八幡」


名残惜しいが電話を切った。
さて、三浦に連絡しないとな。
だから連絡先知らねーんだよあいつの。
どうやって連絡したものか。

×××

【大学】

結局あの後、由比ヶ浜を通して三浦に入る事を伝えた。
由比ヶ浜に「なんで優美子と同じサークル入るの?」とか聞かれたけど全て三浦に聞けの一点張りで通した。
説明するの面倒くさいしな。

そんなこんなで今日は朝から三浦に呼び出されていた。
サークルについての話だよね?
カツアゲとかじゃないよね?
待ってる間に不安な気持ちになってしまう。
早く来いよあいつ。

などと考えていると門の方から、金髪で髪を揺らしながら入って来ているのが見えた。


優美子「待った?」


八幡「めちゃくちゃ待ったぞ」


優美子「そ。で、サークル入るんだよね?」


三浦は待たせたからと言って、謝罪の言葉も無しに話を続けた。
こいつ社会に出てやっていけるのだろうか?
俺はそんな自信ないので、社会に出る気すらないから大丈夫だ。

八幡「ああ。それでサークルの代表とかに挨拶行った方がいいのか?」


三浦「まだいい。それにあと一人探さないとサークル潰れちゃうし」


八幡「えー……?」

まだ人数足りてねーのかよ。
テニスとか普通にしたがる奴いそうだし、人数足りそうだと思うが。

八幡「お前もしかして呼びたした理由って………」

面倒くさそうな答えが返ってくる事を承知で聞いてみた。
期待に応えるような言葉が返ってきた。


三浦「あーしはあんたを誘ったじゃん?だから次はあんたが誰か誘ってきて」


やはりか。新入生歓迎を新入生がしなければならないのか。
サークル代表何してんだよ……

八幡「そんな事言われてもな。俺友達いないし。誘えたとしても入ってくれる人なんていないぞ」

俺は確信していたから堂々と言い張った。


三浦「あーしも大学入ったばっかりなのに頼まれたし。だからヒキオも頑張れ」


その頑張れは応援しているのではなく、投げやりになっているのが分かるのですが。
まぁ、確かに三浦もまだ知り合いが少ない中で頼まれたのは事実だ。
俺もそれなりに頑張ってみるか。
無理なら諦めよう。

八幡「集まらなくても文句言うなよ?」

俺は無理だった時の保険をかけておく。


三浦「はぁ?そんなん駄目に決まってるじゃん」


なんでだよ……。
もう分からん。人間怖い。三浦怖い。

そのまま三浦は任せたと言って去っていく。
人任せにしやがった。
人と思われてるだけまだマシだ。
ポジティブにならないと、心が折れかけている俺って……。

×××

サークルの勧誘ってよく考えたら、よく考えなくても知らない人に話しかけるんだよな。
ハードル高すぎるだろそれ。
乗り越えれる気しないんだけど。
なので俺は、乗り越えれないならハードルを下げてしまおう大作戦に出た。

まずは知っている顔がいないかを探すことにした。
相手が俺の事を知っているかは分からないけど。

とりあえず大学内を歩き回った。
見事にいない。知ってる奴ゼロ。もう諦めたい。

八幡「休憩するか」

俺は自販機でMAXコーヒーを買い、外のベンチに腰を掛け風に当たっていた。
人が多いのに知り合いに会えないって、やっばり友達いないな俺。
ぼっちなのを再確認しただけな気がする。


?「だーれだ?」


不意に後ろから手で目を隠され、耳元で囁かれた。
それに背中には柔らかい感触。
……なかなかでかいな。
なんてエロオヤジな感想が出てくる。

ってか本当に誰だよ?
新手の嫌がらせ?
嫌がらせなのにされる側も少し幸せになる嫌がらせか?
それ嫌がらせになってないな。

俺があたふたしていると離れてくれた。
くそっ!あと少しくらい幸せな気分を味合わせろよ!
振り返ると幸せな気分が全てなくなるくらいの人物が立っていた。

陽乃「ひゃっはろー!正解はお義姉ちゃんでした」


八幡「誰がお義姉ちゃんですか…」

俺はあからさまにテンションを下げた。
確実に相手に伝わるように。
そんな事もお構い無しに陽乃さんは絡んでくる。


陽乃「比企谷君はこんな所で何しているのかな?」


八幡「まぁ、色々と。そういえば理系の大学じゃなかったんですか?」

陽乃さんは確かに理系だったはずだ。
なのに何故こんな所にいるのだろう?


陽乃「ちゃんと理系だよ。ここの大学文系理系で分かれてるの忘れちゃったのかな?」


八幡「…そうでしたね。てっきりもっとレベルの高い大学に行っているのかと思いましたよ」

別段ここの大学が馬鹿なわけではない。
それでも陽乃さんはもっといい大学に行けたはずだ。


陽乃「色々とね〜。比企谷君はサークル決めたのかな?」


八幡「まぁ、一応。よく分かりませけど」

なんだか陽乃さんに自分の情報を教えるのを自然と嫌がる自分がいる。
なのでサークルを教えるのはやめておこう。


陽乃「何に入ったのかなー?教えて」


陽乃さんは聞き出す気満々だったらしい。
ここで逆らったら後が怖い。

八幡「テニスサークルです」


陽乃「およ?意外だねー。比企谷君がテニスってイメージまったくないけど」


八幡「俺もありませんでした。けどまぁ、成り行きでちょっと」


陽乃「ふーん…」


陽乃さんはその説明だけで全てを理解したかのような態度だった。


陽乃「比企谷君は相変わらずだねぇ。そんなに人助けが好きなのかな?」


やっぱり理解している。
この人何者なのだろうか?

八幡「いや別にそんな事好きじゃありませんよ。大体俺が人を助けるなんて無理ですし」


陽乃「それなら今まで助けを求められた事はないのかな?」


八幡「…………」

つい黙り込んでしまった。
はっきりと言われた事がある。
「いつか私を助けてね」と。

俺は彼女を助けられたのだろうか?
俺と雪ノ下と由比ヶ浜の関係は、高校生活を通して強く結ばれたと思う。
きっと彼女らもそう思っている。

だからこそ。近づき過ぎたからこそ助けれたのかが分からない。
むしろ助けられたのではないかとすら思ってしまう。
駄目だ、今考えても答えが出ない。

八幡「どうでしたかね?覚えてませんよ」

そんな言葉しか出てこなかった。


陽乃「そっか」


陽乃さんは小さく呟いた。


陽乃「ならまたね比企谷君。大学生活を楽しみたまえ」


そう言うと陽乃さんは去っていく。
陽乃さんの考えてる事は、俺にはまったく分からない。
俺の頭をフル回転させても何も分からない。
ただ俺の知っている人の中で一番謎めいた人だという事ははっきりしていた。

×××

陽乃さんと別れた後もサークルの勧誘を続けていた。
まぁ、まだ誰にも話しかけれてはないんだけどね。
時間は昼を過ぎてきたので飯を食べる為に学食に行った。

人が多く座れる場所が少ない。
辺りを見渡して座れるところを探すと空いている席があった。
そこへ向かって歩いて行くとその隣に座っているのは川崎だった。
どうりで誰も座らないはずだ。
あの人怖いもん。

これはちょうどいいかもしれない。

八幡「隣いいか?」

俺が言うと川崎は無言で少しスペースを作った。
座れという事らしい。

八幡「すまんな。座れるところがなくてな」


沙希「……別にいいけど」


意外と話せるものだな。
この流れのまま本題に入るか。


八幡「お前ってもうサークルとか入ったのか?」


沙希「まだだけど。それがどうかしたの?」


八幡「テニスサークル入ってみないか?」


沙希「テニス?」


川崎は不思議そうにしていた。
そりゃそうだ。
いきなりテニスと言われてもピンとこないだろう。
断られる事覚悟で聞いているのだし、断られても仕方ないだろう。


沙希「よく分かんないけど困ってるの?」


八幡「まぁ、少しな」


沙希「そ」


やっぱ無理か。
あんま興味なさそうにしているし、諦める方がいいな。
だけど川崎は予想外の反応をみせた。


沙希「あんたも入ってるんだよね?」


八幡「まぁな。人数不足でサークル潰れそうなんだ」


沙希「あたし道具何も持ってないんだけど……」


ですよねー……。

沙希「それでもいいなら入ってもいいよ」


八幡「えっ?」


沙希「あんたが誘ってきたのに何そんなに驚いてんの?」


いや驚くだろ。
駄目元で聞いてみたんだし、道具も持ってないのに何故こんなにも協力的なのだろうか?

八幡「いいのか?誘ったの俺だけど俺もよく分からんぞ?」


沙希「何それ?馬鹿じゃないの?そんな事言ってあたしの気が変わったらどうするの?」


八幡「いや、助かる。すまんな」


沙希「別に。あんたには借りがあるからね。ここで返しとくよ」


助かった。これで三浦に文句を言われる事もないだろう。
川崎いい奴だな。怖いとか思って申し訳ない気持ちになってしまう。

俺たちが会話をしていると、周りから視線を感じた。
何故か俺と川崎の事を見ている人が数人いるのだ。
本当になんでだ?

八幡「別に借りとかそんなん気にしなくていいんだがな。それじゃ三浦に報告しとくか」

飯も食い終わり席を立とうした。
だが袖の方に違和感がある。
川崎が掴んでいたのだ。


沙希「え?あいつもいんの?」


あー……。
そう言えばこいつ三浦と仲悪かったっけ?
先に言っとくべきだったな。

八幡「そうだけど……やっぱやめとくか?」

川崎はため息をつき、諦めたように口を開いた。


沙希「いや、いいよ。一度は言ったことだしちゃんとやるよ」


騙してはないのに罪悪感があるな。
まぁ、なんとか人数は集まってよかった。

八幡「なら一緒に来てくれないか?一度サークルに顔出さないといけないと思うしな」


沙希「べ、別にいいけど…」


川崎は少しもじもじしていた。
強気な女の子がこんな姿を見せると得した気分になります。

×××

三浦「誘ってきたってそいつの事?」


今日一日の講義が終わり三浦に話に行くと、開幕早々喧嘩腰でつっかかってきた。


川崎「そうだけど。何か文句ある?」


あちゃー。
川崎さんも喧嘩買っちゃいまいしたよ。
同じサークル同士仲良くしようぜ!
なんて事も言えない。
仕方ないよな、俺もこの二人と仲が良いわけではないのだし。


三浦「別にないけど。あんたも勧誘お疲れ様」


八幡「本当に疲れた。だから帰っていいか?」


三浦「駄目に決まってるじゃん。きも」


今のどこに、きもい要素があったのだろうか……。
今から俺と川崎はサークルに入るために、書類やらなんやら提出せねばならない。

はぁ……。
不安な気持ちだらけだが、俺のサークルは決定したのだ。

三浦優美子と川崎沙希。
そして比企谷八幡。
高校生活では考えられなかった三人が同じサークルに入るのだ。

これ絶対上手くいかねぇよな……。

短いけどここまでで!
ラノベ読んだりアニメ見たりしたいことがあって長くかけなくて申し訳ない。

×××

沙希「0-30」

優美子「ヒキオがあーしに勝てるわけないじゃん」ハァハァ


八幡「くそっ。負けるわけにはいかないんだよ。オラッッ!」バン


優美子「スカッドサーブ!?けどコースが甘いよ!」バン


八幡「くっ、追いつけない」

沙希「0-40。マッチポイント」

八幡(このままじゃ負けてしまう…)


優美子「ヒキオにしては頑張ったほうじゃん。さっさと諦めたら?」


八幡(どうしたら勝てるんだ。何か、何か勝てる方法はないのか?)


優美子「早くサーブ打ってくんない?」


八幡「くそっ、なるようになれ!」バン


優美子「これで終わりだよ!」バン


八幡「おらっ」バン

八幡(前に出て一気に決める)ダッ


優美子「後ろが空いてるよ!」ポーン


八幡(くそっ、このままじゃ。このままじゃ……)カッッ

バン コロコロ

優美子「……えっ?」

沙希「……15-40」

優美子「今、何が??」


八幡「You still have lots more to work on…」(まだまだだね)


優美子:沙希「へ?」


八幡「You still have lots more to work on…」(まだまだだね)


優美子「ヒ、ヒキオ?」


八幡「You still have lots more to work on…」(まだまだだね)


沙希「何で英語?何て言ってんの?」


八幡「You still have lots more to work on…」(まだまだだね)


優美子「ゆーすてぃーる…………え?何?」


八幡「You still have lots more……

〜〜〜〜〜

八幡「何回言わせんだよぉぉーーーー!!!!!」

俺は大きな声を上げながら目を覚ますと、布団の中にいた。
どうやら変な夢を見ていたらしい。
いや本当に何なの今の夢?
夢なのに恥ずかしすぎて変な汗かいてきたんだけど……。

これはあれか。
テニスサークルに入ることによって見せられた夢なんだきっと。
なら俺は無我の境地に入れるのでは?

……止めておこう。
材木座と変わらない存在になってしまいそうだしな。

休日だと言うのに目覚めが悪い。
なので二度寝しようと再び布団に入ろうとしたが、俺の携帯がそれを阻止した。

俺に電話なんて誰だ?
戸塚か?小町か?それとも戸塚か?
画面を見ると目覚めがさらに悪くなる。

材木座義輝。

なんでお前なんだよ。
目覚めが悪かった俺はしぶしぶ携帯を取ることを決意しました。

八幡「もしもし?」


材木座『我だ』


八幡「知ってるから。電話出るときにお前の名前が出ちゃってるから」

すると電話越しに鼻水をすする音が聞こえてきた。
汚ねぇ音だしやがる。

八幡「何、風邪引いてんのかお前?」


材木座『違うぞ八幡。我は今感動のあまり泣いておるのだよ』


八幡「はいはい泣いてんのね。で?何で泣いてんだよ?」


材木座『連絡先を登録していてくれた嬉しさのあまり、涙が止まらないのだ』


うっわ、気持ち悪りぃなこいつ。
まぁ、登録されないのは俺もこいつと変わりがないのだが、材木座と一緒と言うのがなんかこう……ムカつくな。

八幡「それでなんか用か?」


材木座『うむ。今回もお主にアイディアを貰おうと思ってな』


八幡「またかよ………。めんどくさい」


材木座『使えるアイディア一つ三千円でどうだ』


八幡「のった」

材木座は高校卒業前にラノベ作家として成功をしたのだ。
これが意外と面白い作品を書いている。

なので大学にも行っておらず、毎日仕事に追われる日々らしい。
そして俺は、アイディアを出す事に少しだけだが協力をしているのだ。
こいつ稼いでるから金払いいいし。

それにテニスサークルに入ったのだから、道具を揃えるのに金は必要だ。

三浦は嫌々言いながら、ラケットとか川崎に貸す事にしたくせに。
なぜ俺はダメなのなろうか。
手汗とか気持ち悪いのかな?

とにかくいいタイミングでこんな話がこいつから電話が来たものだ。


材木座『相変わらずの手のひら返し。そこに痺れる憧れるぅ!!』


社会人になってもこの性格なのは問題だらけだが………。
いや、むしろこんな性格だから成功したのかもしれないな。

八幡「それで、どこに集合すればいいんだ?なるべく動きたくないんだけど」


材木座『ふむぅ。ならば貴様の家でもよかろう』


八幡「……え?」

何こいつ?俺ん家くるの?
戸塚もまだ来たことないのに?
戸塚もまだ来たことないのに!?
戸塚もまだ来たことないのに!!?


材木座『そんなに困ったような声で言われても我の方が困るぞ。なぜなら……』

ピンポーン

俺が嫌そうにしていたらチャイムが鳴った。

八幡「悪い材木座。掛け直す」


材木座『ちょ、八幡?もしもーし?』ブチッ

これでうるさい奴はひとまず排除出来た。
誰か知らないが、ナイスタイミングでの訪問だ。

八幡「どちら様ですか?」

俺がドア越しに言うと言葉が返ってきた。
気持ち悪い言葉が。


材木座「我だ」


八幡「………………」

えぇ〜〜。
何でこいつ俺ん家の前にいるの?


材木座「フハハハハ。先ほどの電話を切られるときの我の演技、凄かったであろう」


いかんいかん。
ご近所さんにこんな知り合いがいるって知さられたら、変な目で見られてしまう。
今でもときどき変質者を見るような目で見られているけど。

ガチャ

八幡「うるさいから早く入れ」

俺はご近所さんに迷惑を掛けないようにと、仕方なく材木座を家に迎え入れた。


材木座「うむ。失礼する」


のっしのっしと材木座が俺の家に上がりこむ。
メタボリックで脂ギッシュな材木座に俺の聖域が汚されていく。
汚れは浄化するためにでも、今度戸塚に来てもらうとするか。


材木座「なかなかに狭い部屋だな」


八幡「うるせーよ。確かに狭いけど、お前がでかいのが狭く感じる一番の理由だ」

ラノベで成功して美味い飯でも食べているのだろうか、一回り大きくなっている気がする。
このお[ピザ]さんめ。

八幡「なんか飲むか?」


材木座「ならば我はカレーでも……て、誰が[ピザ]キャラじゃ!!」


八幡「うわぁ……」

あまりの気持ち悪さに、苦笑いすらも出てこない。
本気で引いてしまうレベルだ。


材木座「む、今のは流石に使えぬか」


自分の作品に取り入れようとしていたのだろうか?
ならばちゃんと教えてやらねばならないな。

八幡「今のメチャクチャよかったな。使ってみる価値ありだ。だから三千円よこせ」


材木座「こ、こ奴!完全に金だけ貰って我を返そうとしてやがるな!!」


おっと、いかんいかん。
本音が飛び出してしまったぜ。
嘘はつけない性分だからな。
はい。今嘘つきました。

×××

材木座が来てから数時間が過ぎた。
色々と話し合いそれなりに使えるアイディアが出たおかげで、材木座は満足そうにして帰っていった。

臨時収入も入ったことだし、テニスに必要そうな物でも見に行ってみるか。

【スポーツ用品店】

テニス用品の所に行くと少し驚いた。
ラケットがやたら多くて何が何やら分からない。
俺は違いを見つけようと色々と見渡した。
うむ…………さっぱり分からん。

戸塚が千葉に戻ってきていれば、これを口実に戸塚とデート出来たのに。
おっと、戸塚は男なのにデートはおかしいな。
戸塚は男だから……まぁ、デートでいいか。

などと他の事を考えた所で、テニス用品の事が理解できるわけも無く、なす術ないのだ。
店員に聞くのもなんかちょっと嫌だし、帰ろうと思った時だった。


優美子「あれ?ヒキオじゃん」


八幡「……三浦か」


優美子「あんたこんなとこで何してんの?」


八幡「あれだ。テニスサークル入るんだから必要なものがいるのかなと思ってな……」


優美子「ふーん」


真面目に答えたのにどうでもいいような態度をとられた。
なら聞くんじゃねーよ。
と思ったが三浦は意外なことを話し出した。


優美子「…………そっか。あんた今どれくらい道具揃ってんの?」


八幡「……え?」


優美子「だからテニス道具どれだけ揃ってんのか聞いてんの」


八幡「あ、まだ何も持ってません」


優美子「なら絶対必要なものだけでも揃えよっか」


八幡「……は?」

え?もしかして協力してくれるの?
何それ、三浦いい人。

優美子「ちなみに所持金いくら?」


八幡「二万だな」

材木座の手伝いで手に入れた金も合わせて十分だと思っていたので堂々と言ったやった。

だがそうでもなかったらしい。


優美子「あんたバカ?全然足りないんだけど」


八幡「え?そうなの?」

すると三浦は説明し始める。


優美子「そんなのラケット代で無くなるし。それか足りないくらい」


八幡「ほう」


優美子「それにガットも張らないといけないからガット代と貼り付け代。グリップも必要。ラケットケースは付いてくるから問題ないね」


八幡「……ほう…………」


優美子「あとテニスウェアにテニスシューズ。半袖だけじゃまだ少し寒いだろうからトレーナーも。ウインドブレーカーは冬になって買えばいいし」


八幡「ほ、ほう…………」


優美子「リストバンドとかそういった小物はいらない。形から入ろうとかそんなことしても変わんないし」


やべぇ。三浦が何を言ってるのか全く分からない。
ウインドブレーカーって何?風でも壊すの?
材木座が喜びそうだな。

俺の理解がついていけてないことに気づいたのか、三浦は一度説明をやめる。


優美子「ま、とにかくお金が足りないってこと」


八幡「マジかよ…………」

絶望的だ。
ここまで金が足りないとなるともうどうしようもない。

優美子「…………バイト紹介しよっか?」


八幡「へ?」


優美子「だからバイト。足りないなら稼ぐしかないっしょ」


多分三浦も自分が誘ったのだから、なんとかしようと考えてくれてるのだろう。

でもなぁ、それは俺が働くってことなんだよな。
俺に対しての対応がなってねぇぜ!

だがこれは三浦の善意による行動だ。
それを正面からハッキリと断るのも気分が悪い。
なので俺はひとまずいろいろ聞き出すことした。

八幡「ちなみにどんなバイトなんだ?」


優美子「日払いのがいいかもね。婚礼のスタッフとかだったらそれなりに時給も高いし、日払いでもらえるところもあるよ」


八幡「え?あれってバイトとかあんの?」


優美子「あるに決まってんじゃん」


八幡「そういうのって俺たちみたいなのがしていいの?もっと大人な人とかじゃないとマズイんじゃ…………」


優美子「大丈夫。あれ意外と高校生とか多いから」


衝撃な事実だ。
それにそれは大丈夫なのだろうか?
高校生にそんなこと俺だったら任せれないな。
ブッチするやつとかいるだろうし。
おい、誰だよ!
すぐにバイトばっくれる俺は!


優美子「なら決定。今度の土日空けといて」


八幡「……は?」

何が!?何が決定したの!?
俺のバイト?
意味がわからん。

やばい、このままだと働くことになってしまう。
何か断る理由はないか!

…………ないな。諦めよう。
金が必要なのは本当のことだし。
ここで諦めが出来る分少しは大人になったのだろうか?
……なんだかダメだろそれはそれで。


優美子「じゃ、また」


そう言うと三浦は帰ったいった。
だからいい加減連絡先くらい教えろよ!
全く土日のこと分からねぇじゃねーか!

……まぁ、俺も教えてくれと言えてないのだから仕方ないか。
はぁ、働くのか…………。
土日が来てほしくないと切実に思いました。

×××

来てほしくない日ほどすぐに来てしまうものだ。
一日一日が過ぎるのを早く感じすでに週末、つまりは三浦に言われた強制バイトの日だ。

どうやら結婚披露宴の配膳のアルバイトらしい。
俺がしてもいいのだろうか…………。

などと考えて周りを見てみたら俺より若そうな人もいた。
あ、本当に高校生とかしてるんだ。

その高校生の騒がしさに負けないほどうるさい奴らもいた。


優美子「結衣、変になってない?」


結衣「大丈夫だよ!あたしとお揃い。ほら沙希も」


沙希「え?あたしは大
結衣「早く早く!ちゃんと髪まとめないとダメなんだよ」


沙希「……お願い」


結衣「うん、任せて!」


女性は髪をまとめないといけないらしいので、由比ヶ浜が三浦と川崎の髪をお団子にまとめていた。

てかなんであなたたちまでいるんでしょうね…………。
知り合いにバイトする姿とかあまり見られたくないのに、一緒にバイトすることになるなんて。

川崎も俺と同じく道具を揃えるために金が必要なのは分かる。
ならガハマさんは本当になんなんでしょうかね。
だがそれ意外にも知った顔はいた。


隼人「まさか比企谷までいるなんてな」


八幡「まぁ、金が必要だからな」

葉山は白シャツの上に黒いベストを着、黒いズボンを履いている。
きっちりとした格好をしていた。
俺も同じ服装の筈なのになぜこんなにも違うものなのだろう。

…………スペックの差だよなぁ。
世の中平等なんてないのだなと思い知らされる。

×××

結婚披露宴が始まり俺、葉山、由比ヶ浜、三浦は配膳を始めた。
葉山とか片手に皿たくさん持って歩いていた。

え?それどうやってんの?
落ちないの?

ってくらいに見てて危なかったのだが、葉山は当たり前かのように仕事をこなしていた。

川崎はバーで働いていた経験があってアルコールの種類が分かることから、ドリンクを担当していた。

俺は自分に割り当てられたテーブルへ配膳に行く。
するとこの幸せの中には似合わない不幸なオーラを漂わせている女性がいた。


静「ちっ、また一人先に幸せになりやがって。…………はぁ、私の幸せはどこかなぁ」


ひ、平塚先生…………。
こんな中に紛れ込んじゃって。

とにかく関わりたくないのでなるべく下を向いていた。
働く人としてどうなんだろうという行動をすぐに出来る俺は、やはり働かない方がいいな。


静「…………比企谷か?」


バレてしまった。
すぐに気づかれた。
無視をする訳にもいかないので返答することにした。

八幡「ども、久しぶりです」


静「まさか…………働いているのか?」


八幡「ええ、まぁ」


静「だ、大丈夫か?頭でも打ったのか?」


八幡「すぐに頭を打ったのか確認するのが少し古いですね」


静「そうか。今から打つ予定か」


そう言う平塚先生は拳を握りしめていた。

いやいや、こんなところで怪我人だそうとしないで下さいよ。
だから結婚出来ないんですよ!

とは口に出して言えないのでとりあえず謝ることにした。

八幡「す、すみません」


静「ったく、相変わらずだな。それより君はなぜアルバイトをしているのだ?」


八幡「まぁ、金が必要だからです」


静「そんなことは分かっている。その理由を聞いているのだよ」


何故そこまで言う必要があるのだろうか?
そう思いはしたが高校のときにお世話になった先生だ。
話してもいいだろう。
そんな隠す内容でもないしな。

八幡「大学のサークルでテニスサークルに入りまして。それで道具揃えるのに必要なんですよ」


静「比企谷がテニス?」


平塚先生は俺がテニスサークルに入ったことに驚いているらしい。

八幡「三浦に言われて入ったんですよ。あと川崎も同じです」


静「……え?ちょ、ちょっと待ってくれ。三浦ってあの三浦か?そして川崎はあの川崎か?」


八幡「それ意外にいないですよ」


静「そ、そうか。比企谷が三浦と川崎とか…………」


どうやら驚いているらしい。
そりゃそうだ。本人も予想外だったのだから。

平塚先生は落ち着きを取り戻し俺に語りかける。


静「まさか大学でも関わりがあるとわな。比企谷も少しは変わったんだろうな」


八幡「……どうですかね」

人は変われない。
これは俺が思っていることだ。

なのでそう簡単に変わったと認める訳にはいかないのだ。


静「まぁいい。それは喜ぶべき変化なのだろうな」


そんなことを言われた俺は返事に困る。
なので軽く悪態をつくことにしてやった。

八幡「ははっ、先生も喜ぶべき変化が早く来るといいですね」

遠回しに結婚できるといいですねと伝えてやった。


静「は、はははは…………。あはははは。はぁ」


どうやら本気で落ち込んでしまったらしい。
あ、そのすみません本当に。


静「ふっ、どうせ君も結婚なんて出来ないんだよバーカ」


八幡「ちょっと、子どもみたいな当たり方するのやめて下さい」


静「そのときはそうだな。君も教師になりたまえ」


八幡「どうゆうことですか……」


静「教師は結婚できない説でも立てようと思ってな…………」


八幡「勝手に結婚できないって決めつけないで下さいよ」


静「ふふ、まぁいい。以前も言った通り君は教師には向いていると思うからな」


八幡「…………はぁ」


優美子「ヒキオちゃんと働け」


どうやら少し話しすぎていたらしい。
紹介しておいて俺が働かなかったら三浦の顔が立たないのだろう。
仕方ない、やるか。

×××

二日間のバイトが終わった。
日払いなのでその日のうちに給料ももらえた。

…………え?こんなにもらえるの?
思っていたより多くてびっくりした。
これなら道具揃えれるかもな。

八幡「ならお疲れ様でした」

バイトが終わり次第すぐに直帰しようとする。
家が恋しいぜ!

だが俺の道を阻むものがここにはいたのだ。


結衣「ヒッキーもう帰っちゃうの?給料入ったんだしみんなでご飯でも食べて行こうよ」


八幡「お前な…………。俺はそんなために働いたんじゃねーんだよ。目的があったからそのことに金を使う」


結衣「えぇー」


由比ヶ浜はどうやら納得していないらしい。
だいたいみんなって誰だよ?
三浦とか葉山だろどうせ。
あ、川崎もかな?

と思ったのだが川崎の姿はどこにも見当たらない。
…………あいつ帰るの早すぎだろ。

弟妹が多くて家事をしなければならないのだろうか?

八幡「とにかくそんなんに金は使わねーよ。じゃあな」


結衣「むー」

優美子「ならあーしが奢ってあげるから来な」


八幡「……なんでそうなる」


優美子「結衣の誘い断る方がおかしいっしょ」


その理屈の方がおかしいっしょ。
とでも言ってやりたいが恐ろしすぎて口にできない。


葉山「一度くらいいいだろ?なんなら俺が払おうか?」


なぜこいつらはこんなにも俺を連行したがるのだ。
自由なんてありゃしないぜ!

押してダメなら諦めろ。
俺のモットーだ。
どうやら俺の意見は通りそうにもないので諦めることにした。

八幡「…………はぁ。自分で出すから大丈夫だよ」


結衣「なら来てくれる?」


八幡「ああ。お前しつこいし」


結衣「むっ、言い方考えてよ!」


八幡「行くなら早く行こうぜ。そして早く解散しよう」


結衣「早く帰ることは諦めてなかった!?」


葉山「なら行くか」


なんでこのメンバーに俺が入ることになったんだ。
普通は海老名さんとか戸部だろ。

考えてる間に葉山たちは俺の先を歩いていた。
…………見失ったから帰っちゃったパターンでも使ってやろうかこの野郎。

×××

【カフェ】

葉山が選んだカフェはなんだかオシャレな雰囲気丸出しだった。
モテる男はやはりこうなのだろう。

俺たちは注文を終え席に着く。
俺の隣には葉山、向かいには由比ヶ浜。
由比ヶ浜の隣には三浦という順に座った。


優美子「二日間お疲れ様」


結衣「おつかれー!」


八幡「そんなテンションの店じゃないだろ」


優美子「ヒキオどうだった?」


八幡「どうだったって何が?」、


優美子「バイトに決まってるっしょ。普通伝わるし」


何でこいつはいつも最初説明不足なのだ。
結局二度言わなきゃいけないことを学ばないのか。
まぁ、俺も三浦の話の流れを学んでないんだけど。

八幡「まぁ、あれだ。…………うん」


優美子「何それ。馬鹿なの?」


八幡「由比ヶ浜の方が馬鹿だけどな」


結衣「ちょっ、今あたし関係なかったじゃん!」


葉山「ははは。比企谷と優美子少し仲良くなったか?」


結衣「…………え」


優美子「隼人何言ってんの?それ絶対ないっしょ」


八幡「ないだろ」

こいつ何言っちゃってんの?
さすがに仲良くはならないだろ。


隼人「同じ大学で同じサークルなら仲良くなるんじゃないか?」


八幡「同じだから仲良くなるわけではないだろ」

その理屈だと同じクラスだと仲良くなるとかと同じだろ。
実際俺はクラスの人と仲良くなってないから絶対的に否定できる。

だが、由比ヶ浜は少し違ったらしい。


結衣「えー!でも奉仕部で三人一緒だったから仲良くなれたじゃん」


八幡「あ…………まぁ、その……それはそれだ」

それは否定できなかった。
確かに雪ノ下と由比ヶ浜とは仲良くなってしまったのだから。

隼人「結衣たちは他人から見ても仲良かったからか。その分二人は寂しさが大きいよな」


………………?
こいつは何を言っているんだ?

俺だけに話が通じてないのか確認するために由比ヶ浜を見ると、由比ヶ浜も理解しているようには見えなかった。

俺と由比ヶ浜が寂しくなる?
なぜ?

俺と由比ヶ浜が無反応の様子を見ると葉山は何かを察したのだろうか。


隼人「…………そっか、まだ聞いてなかったのか」


八幡「何がだよ?」

つい口調が強くなってしまう。


隼人「いや、俺から話すことでもない。本人に直接聞いてみたらどうだ?」


本人とは誰だろうか?
と思ったが話の流れで察しはついた。
きっと雪ノ下のことだろう。

雪ノ下のことなら葉山の方が知っていてもおかしくないからな。
幼馴染で大学まで同じところだから。

由比ヶ浜も理解したからか、携帯を取り出してメールを打ち出す。
たぶん雪ノ下へのメールだろう。

だが、何も知らない側が雪ノ下へ何を言えばいいのだろうか?

八幡「由比ヶ浜、今はやめとけ」

なのでひとまずここは止めることにした。


結衣「…………分かった」


由比ヶ浜も大人しく引き下がってくれた。

微妙な雰囲気になる中誰も話せないでいる。
だがそれをぶち壊わしてこその女王なのだ。


優美子「話終わったならもう帰ろっか」


その一言で俺たちは店を出た。

×××

帰り道、葉山と三浦と別れ、由比ヶ浜と二人で歩いていた。


結衣「……ゆきのん、何かあるのかな?」


八幡「葉山の言い方からすると何かはあるんだろうな。それが何かは分からないが」


結衣「だよね……」


八幡「……あいつから何も言ってこないなら、俺たちが何かしてやることもないだろ」

こんな言葉が出てしまった。
つい、自然と、思ったもいないのに出てしまった。

由比ヶ浜はその言葉に対して冷たいと感じたのか反論してきた。


結衣「でも、そんなのやだな。やっぱりちゃんと力になってあげたい」


八幡「分かってる。さっきのはあれだ。言っただけだ。だから何とかしてみるか」


結衣「うんっ!」


高校生活を通して雪ノ下と由比ヶ浜へ、少し甘くなったなと実感してしまう。
別にいいんだが。

八幡「よし、なら早速なんとかするか。電話だ電話」


結衣「あ、結局していいんだ…………」

俺は未だに雪ノ下の連絡先を知らないので、由比ヶ浜が電話をかける。

プルルルル プルルルル ガチャ

雪乃『もしもし』


結衣「あ、ゆきのん?あたしあたし」


雪乃『由比ヶ浜さんね。どうかしたのかしら?』


俺に聞こえてくるのは由比ヶ浜の声だけだ。
電話相手の声は聞こえない。


結衣「……ねぇ、ゆきのん」


雪乃『何かしら?』


結衣「あたし達に何か隠してるでしょ」


雪乃『…………』


「あたし達」この言葉で俺がいることも理解しただろう。
さぁ、雪ノ下はどうでるのだろうか。


雪乃『別に隠してごとではないわ。ちょうど話そうと思っていたの。電話だと彼には聞こえないだろうし、今から会えるかしら?』


結衣「あ、え?……うん、ちょっと待ってね」


結衣「ヒッキー今から時間ある?ゆきのんに会おうと思うんだけど」


八幡「……まぁ、時間はあるぞ」


結衣「ありがと。あ、ゆきのん大丈夫だよ。今からゆきのん家行ってもいい?」


雪乃『ええ、構わないわ。それでは待っているわ』


どうやら電話は終わったらしい。

八幡「なんだって?」


結衣「なんか思ってたより普通だったよ。それと今からゆきのん家行って話聞くことになった」


八幡「そうか。なら行くか」


結衣「うん!」


そうして俺たちは雪ノ下の家へと足を運んだ。
果たしてどんな話なのだろうか?

……まぁ、考えても分からないから大人しく聞くまで待ってみるか。

×××

【雪乃家】

雪乃「どうぞ」


雪ノ下の家に着いた俺たちに、雪ノ下は紅茶を出された。
入学式の前日を思い返してしまう場面だ。

それを冷めるまで待てずゴクッと飲み干し、早速話題を切り出した。

八幡「で?」


結衣「ヒ、ヒッキー」


俺の態度に由比ヶ浜が少しばかり戸惑いを見せる。

だが雪ノ下は何も隠さず、前振りもなく、俺らの聞く準備もさせず、いきなりその事実を突きつけた。


雪乃「一年間、海外へ留学してくるわ」

………………は?
いきなりのことに俺と由比ヶ浜は何も話せずにいる。
え?留学?


雪乃「来週には日本を旅立つわ」


雪ノ下は決定事項と言わんばかりに話を進めていく。

ようやく思考回路が追いついたのか雪ノ下の言葉に反応することが出来た。

八幡「え?何?留学?」


雪乃「ええ」


雪ノ下は簡潔に答える。


結衣「な、なんで!?なんでゆきのんが行くの!?」


雪乃「私は大学への入学試験主席だったわ。私が通ってる大学は毎年新入生の交換留学制度があるの。そこで一番優秀だと選ばれた私が行くことになったの」


理屈は分かる。
だが何故雪ノ下もそれを了承したのだろうか?


雪乃「比企谷くんは知ってると思うけど私は帰国子女よ。海外経験もあるし適してるとは思うわ。それに今しか学べないこともあると思うし」


八幡「…………それでも葉山とかの方が交流するには適してる人材だろ」


雪乃「それは大学側が判断することだから」


結衣「で、でも!ゆきのんも行きたくないなら断れるんじゃないの!?」


雪乃「別に行きたくないなど思っていないもの」

俺と由比ヶ浜の反論もすぐに正論で返される。
だが、俺にはこの正論を破る術があるのだ。

高校生活のときの雪ノ下との勝負。

『誰が一番人に奉仕できるか、人の悩みを解決できるか』

この勝負で俺はあの雪ノ下に勝ってしまった。
そして俺はまだ雪ノ下へ「何でも言うことを聞いてもらえる権利」を使用していない。
故にここで使えば雪ノ下を止めることは出来る。

……だが、それでいいのだろうか?

俺の思考を遮ったのは雪ノ下だった。


雪乃「話すのが遅くなったことは謝るわ。それでも何故あなたたちがそこまで引き止めようとしているの?」


結衣「何でってそんなの決まってるじゃん!離れたくないからだよ!」


離れたくない。
何故人は親しい人と離れることを拒むのだろう。

俺も由比ヶ浜も無意識の内に雪ノ下を日本へ引き止めようとしている。

残される側は言う。
離れたくないと。

ならば残していく側はどう思っているのだろう?

辛いのは残される側だけか?

そんなことはない。
残していく側も辛いはずだ。

それなのに雪ノ下は行くと言うのだ。
なら、それを送り出すのが残される側の出来ることではないのか?

雪乃「私と離れるのが…………嫌?」


結衣「嫌に決まってるよ!」


雪乃「一年だけよ」


結衣「一年だけでもだよ!」


由比ヶ浜は引き下がらない。
だが、次の一言で雪ノ下は完全に俺たちを制してしまう。


雪乃「…………私たちの関係は一年離れただけで変わってしまうものなの?」


結衣「……………………」


さっきまで強く反対していた由比ヶ浜は黙り込む。
なら俺が返してやるしかない。


八幡「行くんだよな?」


雪乃「ええ。離れていても私たちは繋がっているわ」


八幡「…………馬鹿か」

俺は何に対して馬鹿だと言ったのだろう。

臭すぎるセリフに対してか?
雪ノ下に似合わないセリフに対してか?

分かりきってることを言った雪ノ下対してだろう。


雪乃「…………行ってもいいかしら?」


決定事項で変更できないことなのに、今、このタイミングで俺たちに相談をした。

八幡「ズルいな」


雪乃「そうかもしれないわね」


八幡「……ま、たった一年くらいだしな。行ってくればいいんじゃねーの?」

俺は受け入れた。
残るは由比ヶ浜だけだ。


雪乃「由比ヶ浜さん…………」


結衣「……ゆきのんのバカ」


雪乃「…………ごめんなさい」


結衣「ゆきのんが決めたことだしね。…………うん!分かった!」


雪乃「ありがとう」


こうして雪ノ下の留学を受け入れた。

それから数日が過ぎて雪ノ下の海外行きの日はすぐに来てしまった。

雪ノ下は日本を旅立つときに言った。

『行ってきます』

俺たちは雪ノ下を送り出した。
そしてすぐに一つの後悔をしてしまった事を口に出してしまった。

八幡「さすがに連絡先交換しとけばよかったな」

と。

×××

雪ノ下が日本を旅立っても俺の日常に特別変化があるわけでもなかった。

普段会う事など基本なかったのだならそれも当たり前だ。

だが少しばかりか心には変化があったように感じる。

月は変わり六月へと入っていた。
梅雨なので室内も気分もじめじめする季節だ。

そして俺の部屋の片隅には文句を垂れ流している少女が一人。


小町「おにーちゃーん。じめじめして気持ち悪い。なんとかしてー」


八幡「んな事俺に言われてもな。我慢しろ」

愛しの妹小町である。
今日も今日とてゴロゴロしている干物妹である。
多分そろそろ登場のとき、こまちーんという効果音で出てくるな。


小町「小町梅雨きらーい。雨降ってると濡れるし。学校行くのも嫌になっちゃう」


八幡「分からんでもない。俺も自転車は使えんしな」

軽く相槌を打つかのように俺は答える。

小町「お兄ちゃんってさ、いつまで移動手段自転車のつもりなの?」


八幡「いつまでと言われても。他に無いからしょうがないだろ」


小町「…………そうだ!お兄ちゃん免許。免許だよ!車の免許取ろうよ!そしたら移動するのも楽チンだよ!小町も車で送って行ってもらえるし」


八幡「あれ?実家まで小町を向かいに行き高校まで送って、大学に登校するのって車なのに俺だけ楽じゃなくね?」

どうやら俺に送って行ってもらう気らしい。
そのために免許を取らせる気満々だ

八幡「にしても免許か」

もう18歳なのだし免許を取れる歳ではある。
きっと車に乗り出したら自転車なんて使わないんだろうな。


小町「そうと決まったら取ろうよ!」


八幡「何が決まったんだよ。それに金がない…………」

最近金銭的問題に悩まされる。
あーあ、現実を実感してるな。

どこぞの唯一神に異世界に連れて行ってもらえないだろうか。
そしてゲームだけで全てを決めてもらおう。
十の盟約によって守られるしな。

【一つ】この世界におけるあらゆる友情、努力、勝利を追求する

【二つ】連載はJ金未来杯による勝敗で解決するものもある

【三つ】本誌には、編集長が面白いと判断したもの載せる

【四つ】三に反しない限り、漫画内容は一切を問わない

【五つ】漫画内容は作者が決定権を有する

【六つ】アンケート結果による順位は絶対厳守される

【七つ】作家の集団ボイコットは、バクマンの中だけのものとする

【八つ】連載会議内の打ち切り作品はは、敗北と見なす

【九つ】以上をもって編集長の名のもと絶対不変のルールとする

【十】みんななかよく漫画を読みましょう


おい、これ何英社の十の盟約だよ。

小町「小町がお父さんにお願いしてあげるからさ」


八幡「小町が言ったらすぐに金だしそうだな」


小町「でしょ?だから任せて!小町が何とかするとここに誓うよ!」


八幡「【盟約に誓って】」(アッシェンテ)


小町「あ、あし?…………え?足になってくれるって?」


八幡「言ってねーよ……」

なんていい解釈しやがるこいつ。
てかそうする気しかないくせに。
それでも妹と一緒にいれるならいいとか思うお兄ちゃんなのでした。

×××

小町が車の免許の話をしてから数日が過ぎ、俺は車校に入校することになった。

小町は「これで夏に海行くのも楽だね!」とか言ってた。
つまり俺に夏までに免許を取れということらしい。

夏まで時間がないのだが、サークル自体も緩いので車校に行く時間はある。
なので車校に入って免許取得までスムーズに進んでいる。

そして今から第一段階の学科を受けるので、教室に入り、空いている席に適当に腰掛け、ぼけーっとしていた。


?「あれ?比企谷じゃん」


車校で話しかけることなどなかった。
なんなら大学でもないに近いレベル。

声がした方に視線を向けると中学のときの同級生、折本かおりが立っていた。

折本「へー、比企谷もここに入校してたんだ」


八幡「あー、まぁな。お前もここだったのか」


折本「まぁねー」


そう言いながら折本は当たり前かのように俺の隣に座った。
あらら、何でこんなことになったのかしら。


折本「比企谷いつ頃から入校してたの?」


八幡「先週くらいだな」


折本「にしては結構進んでるね。暇なの?」


八幡「お前が遅いだけだろ」

折本がいつ頃入校していたかは知らないが、口ぶりから察するに遅いのだろう。
暇なの?に関してはその通りなので触れないでおこう。


折本「あ、やば!筆箱忘れてきちゃった。比企谷の貸してくんない?」


八幡「俺そんなに多くペンとか持ってねーぞ」


折本「大丈夫。比企谷が使った後で貸してもらえればいいから」


八幡「それでいいなら別にいいけどよ」

そして学科が始まるとペンを俺が使う、折本が使う。俺が使う折本が使う。
繰り返しでペンを使って行った。

これ完全に効率悪いよな…………。

×××

折本と共に受けた学科が終わった。
なので席を立ち移動しようとしたが、折本がまだ絡んだきた。


折本「比企谷次は学科どれ受けるの?」


八幡「これとこれ受けて今日は帰ろうと思ってる」


折本「乗車しないの?」


八幡「今日は空いてなかったんだよ」


折本「ならあたしも比企谷が受ける学科受けようかな」


………………は?
何でそうなるのですかね?
理由を求めようとしたがその前に折本が話し出した。


折本「あたし結局比企谷といないとペンとかないじゃん?それにあたしも比企谷が受ける学科まだ受けてないから丁度いいし」


八幡「他の人から借りればいいじゃねーかよ」


折本「別に結局借りるなら比企谷からでもいいじゃん。知らない人よりか知ってる人に借りる方が気が楽だし」


八幡「…………確かにそれもそうだな」

どうやら折本に説得されてしまったらしい。
なんだか最近俺の意見がどこでも通らなくなってきつつあるな。
あっ、元からでしたね。てへっ。

×××

折本「あー、終わった!疲れたね」


八幡「そうだな」

今日受ける学科も終わったことだしさっさと帰るか。
と思ったのだがさらに知ってる奴が一人増えてしまった。


玉縄「おや?折本さんに…………あ……か、彼もいたのか?君達も同じ車校だったのか。少しばかりアメージングで驚いたよ」


玉縄。
こんなところで会うとは。
こんなところでなくても、会いたくなかったんだけどね。

俺ははっきり言って全く仲良くないので、ここは折本に任せてしまおう。


折本「…………会長じゃん」


…………おやっ!?折本のようすが…………!
と、進化するかのように少し違和感がある。
何でだ?

高校のときより少しだけだが距離があるような気がする。
この二人の距離感なんてよく知ったことではないが、イベントであったときよりは距離がありそうだ。


玉縄「会長はよしてくれよ。もう違うんだからさ」


折本「それもそうだねー」アハハ


気のせいだろうか?
普通に接しているから特に問題はないよな。
見てる側としてだけどな。


玉縄「ところでもう帰りかい?よかったら今から一緒に晩ご飯でもディナーしないか?」


夜飯を夜飯しちゃう玉縄すげーな。
意識高い系じゃなくてただのバカに見えてきたな。


折本「あー…………。そ、そう!忘れてた!あたし今から比企谷と二人で用事あるんだ!だからごめんね」


八幡「…………え?用事?何かあっ
折本「ほら、比企谷早く。行くよ」


俺の言葉を遮り折本が俺を引っ張っていく。
痛いっ!痛いです!首が痛いから!遺体になるから!!

八幡「お、おう」


玉縄「だったら仕方ないね。今度スケジュールが合えばよろしく頼むよ」


玉縄が何か言っていたが折本の歩くスピードが早くて良く聞き取れなかった。
ちゃんと聞いてても何言ってるかよく分からんから、聞こえなくても問題ないな。

×××

【サイゼ】

八幡「で?何で嘘ついてまで逃げたんだ?」

何でこいつとサイゼに来ることになったのだ。
バカにしてたくせに。

しかしさっきの折本は確実に玉縄を避けての行動だった。
何故なら裂けるチーズばりに、何事も避けてる俺にはすぐ分かる。

特に興味はなかったが巻き込まれた以上、理由を聞く権利くらいあってもいいだろう。


折本「ゴメンっ!何か最近会長がその…………少しばかりしつこい?って感じで。大学もサークルも同じだし。個人的な理由なのに巻き込んでゴメン。比企谷彼女いるのに」


なるほど。
大まかにだが理解はできた。

玉縄は折本のことをどうやら好意的に見てるらしいな。
確かにバレンタインイベントのときそんな雰囲気バリバリ出してたからな。

それに大学も同じとなると大変だろうな。
それにサークルも同じとなるとまた厄介だろう。

だが最後のことだけは理解できなかった。

八幡「…………えっと。大体分かったけど最後のは何だ?彼女?俺に?お前何言っちゃってんの?」


折本「だってテレビで言ってたじゃん」


テレビ?俺がテレビでそんな面白おかしい発言をしたのか?
てかテレビにすら出たことねーよ。

…………………あ。
思い返すと一度だけあった。
大学の入学式のことだったな。
そういえば女子アナが勝手に言っていた。
それにしても女子アナを女子穴って書くと、卑猥感が増して半端ない。

八幡「お前も見てたのかよ。ローカルテレビ見るとかみんな千葉大好きすぎるだろ。何?おやつは毎日落花生なの?」


折本「何それ。まじウケる」


お、おお。
ウケてもらえて光栄です。
ウケたついでに誤解でも解いとくか。
…………いや、解き直しとくか。

八幡「ちなみにあれ彼女じゃねーからな。同じサークル仲間」


折本「ふーん、彼女じゃないんだ。同じサークルなのは知ってるけど」


八幡「え?何で知ってんだ?」


折本「同じ大学なんだし知っててもおかしくないでしょ」


…………え?同じ大学?
こいつもA大学なの?
何それウケる!


折本「それにあたし総武高校のあの子と同じサークルだよ。知らないとは思うけど。相模南って子」


八幡「えー…………」

何それウケない!
さっきから驚くことの連続なんだけど。
それにこいつ友達運ないんじゃないの?


折本「え?知りあい?」


八幡「……同じクラスだったから知ってるぐらいだ。友達とかじゃねーな」

文化祭とか体育祭でいろいろとあったのだけど、それをいちいち言わなくてもいいだろう。

折本と相模が友達?かは分からないが、とにかく同じサークルなのだ。
相模がマイナスイメージ受けるのとかはどうでもいいが、原因が俺となると話は別だ。

相模の話をする必要もないので、さっきの問題について聞いてみるか。

八幡「で、玉縄の件はいいのか?めんどくさいならハッキリと振っちまえば話も早いだろ」

何故か悩み相談に乗ってる風に話してしまった。
だが折本は気にも留めない様子で反応してくれた。


折本「告られたらそうするんだけど告られてはないんだよねー。なのに自分からあたしのこと好きなの?とか言えないじゃん。だから打つ手なし」


あー、言えませんよねー。
それは言わない方がいい。
経験者が教えてやろう。
それはトラウマになるからやておけ。

と、心の中で思っただけなので経験者は教えてやれなかった。
何かいいアイディアはないだろうか。


折本「…………」ジー


そんなことを考えていたら折本からの視線を感じた。

八幡「……え?何?」


折本「比企谷ってそういう風に、他人のこと考えたりしてくれる人だったんだね。別に相談とかしたつもりじゃないのに、どうしたらいいか一緒に…………いや、あたしより考えてくれてるし」


確かに。
何故俺は頼まれてもないのに助けようとしているのだ?

…………そうか。
俺の優しさは自分でも収まりきらねぇぜ!みたいなことだな。

まぁ、絶対に奉仕部の影響なんですけど。
あんなブラック部活しとけばこんな風になるという完成系だな俺は。

折本からしたら今の俺も厄介だろう。
頼んでもねーのに話に入ってくんじゃねーよ的な。

なのでここは一時退散だ。
そして二度と帰っては来ないでおこう。

八幡「あー、すまん。別にそんなつもりなかった。この話は聞かなかったことにしとく」


折本「もう聞いてるから無理でしょ」


こいつ何て当たり前なこと言いやがる!
俺的に「もう触れないからそれでいいよね?」って意味なのだが折本には通じなかったか。

折本「別に会長が嫌いってわけではないんだよね。でも恋愛対象にはならないかな」


八幡「なら好きな奴いるアピールでもしとけ。玉縄とは違うような性格が好きなのって感じ出せばなんとかなるだろ」


折本「あっ、ならそれ比企谷にしよっかな」


八幡「……………………は?」

え?何こいつ?
てか何回こいつに驚かされてんの俺?
俺の驚いてる回数に俺が更に驚く。
何それ永久ループ。
そろそろシュタインズゲート世界線に移動しなければまずい。

八幡「えっと……。何でそうなったんですかね?」


折本「会長と比企谷って全然性格違うでしょ?それにあたしの好きな人が比企谷って思い込ませたら会長近寄ってこなさそうだし。会長比企谷達のこと苦手意識持ってそうだし」


比企谷達、ていうのは雪ノ下や由比ヶ浜も含めてるのだろうな。
ほとんど雪ノ下のせいだが。
俺のせいでもあったな。
巻き添え食らう由比ヶ浜が可哀想だ。

するといつの間にか、折本は更に理由を付け加えていた。


折本「それにこの人ってイメージがあった方が、質問とかされたときにすぐ返答出来そうじゃん」


うーん、何でしょうねこれは。
筋は通ってるようだけど、完全に見落としてるところがあるんだよなこいつ。

仮にも振った相手にそういう役のイメージ付けますかね?

だけど俺に直接被害がないなら別に構わない。
そんなのに構っていたら今までの人生みんなに構いまくりだ。

八幡「別にいいんじゃねーの?俺には関係なさそうだしな。頑張れ」


折本「困ったときは頼るから」


八幡「頼られても力になれるか分からんぞ」


折本「断りはしないんだね。それで十分!」


そして話も終わり俺たちは解散した。
なんだか終始折本のペースだったな。

…………てか玉縄も相模も同じ大学だったのかよ。
実は戸塚もでしたってパターンはないの?ないな。

×××

【大学】

大学でもベストプレイスを見つけた俺は、ときどきそこで昼食をとっている。
もちろん一人で。

学食にも行ったのだがいつもより人が多く混雑していたので、避けるためにベストプレイスへと向かう。

すると視界に少し騒がしい集団が目に入った。
その中に折本、玉縄、相模がいた。
なるほど、あいつらのサークルだろうか。

にしてもテニスサークルの一年の仲良くなさは尋常ではない。
普通だとあんな風に仲良くするものなのだろうか?

その集団を見ていると相模と目が合ってしまった。


相模「…………げっ」


いちいち反応するなよ。
反射的に出たの?お前反射タイプなの?
俺は自分の生き方を貫いているので貫通タイプだな。

相模の視線が気になったのか折本まで俺の方を向いてきた。
別に話すこともないので、俺は大人しくベストプレイスへと足を運び出した。

折本「相模さんって比企谷と知り合いなの?」


相模「え?…………てか折本さんが知り合いだったの?」


折本「まぁねー。同中だったし。比企谷と同じクラスだったんでしょ?」


相模「…………そうだけど。何で知ってるの?」


折本「この前比企谷と話したときに聞いたんだよね」


相模(この様子だと他のことは知らないって感じかな?やっぱ話したりしないんだあいつ)

相模「そ、そうなんだ。同じクラスだっただけで知ってるだけだよ」


折本「比企谷と同じようなこと言ってる。ウケる」


玉縄「…………よし。折本さ
折本「あたしちょっと比企谷と話してくるね」

×××

ベストプレイスに着いた俺はもぐもぐと昼食を食べていた。


折本「あ、いたいた。比企谷ー」


八幡「お前玉縄たちと一緒じゃなかったのかよ?」


折本「一緒だったよ。だから来た」


八幡「そうですか」


折本「てかいつもこんなとこで一人でお昼食べてるの?寂しくない?」


八幡「別にいいだろ」


折本「よいしょっと」


そう言うと折本は俺の隣に座りだした。
こいつ当たり前のように隣に座るよなぁ。


折本「比企谷も食べる?」


そう言うと俺にアンパン、食パン、カレーパンを出してきた。
こいつ狙いすぎだろ。
突っ込んだ方がいいの?


折本「ちょ、少しくらい反応してよ!あたしがスベってるみたいじゃん!」


ああ、狙ってたんだやっぱり。
てかスベってます!スベってますよ!

八幡「俺は自分のがあるから大丈夫だ。てかお前完璧に避け出したよな玉縄のこと」


折本「だって…………。はぁ」


どうやら相当堪えてるらしい。
誰かに言い寄られる側も大変なのだな。
イケメンがそんな悩みを抱えていたらムカつくだけだが。

それにしても、これから毎回玉縄を避けるために俺のところに来られても困る。

上位カーストの三浦や由比ヶ浜。
カーストに属さない雪ノ下や川なんとかさん。

彼女らと関わったからといって、俺自身のカーストは変わらずに最低辺なのだ。
俺といると折本にも迷惑をかけかねない。

なのでこの問題はなるべく早く解決するべきだろう。

八幡「……仕方ねぇな。何か手を打つか」


折本「考えがあるの?」


八幡「そうだな。……………………玉縄とデートしてみるってのはどうだ?」


折本「……え?何でそうなるの?」


いきなり言われても理解できないだろう。
避けているのに近づけと言っているのだから。
だけど俺にも考えがあっての発言だ。

八幡「まぁ、落ち着け。そして聞け。要は玉縄がしつこいのが問題なんだろ?」


折本「うん」


折本は軽く相槌をうちながら話を聞く。
聞く意識があるならこちらも話しやすい。

八幡「そこでだ。一度玉縄を近寄らせ告白させる。そこでお前が振ってやればギブアップして諦めるだろ」

俺のパーフェクト完璧理論だ。
自らの脳内でロジカルシンキングで論理的に考えた結果だ。


折本「どうやって告白させるの?」


八幡「そ、それはあれだ。デートで何かいい雰囲気になって玉縄が何か頑張るみたいな!」


折本「適当だ…………。それに振るためにデートして告白させるってズルいね」


八幡「俺はこんなやり方しか思いつかねーんだよ。無理そうなら諦めろ」


折本「…………仕方ない。その話乗ってあげる」


乗ってやるも何もあなたの問題なんですけどね…………。

八幡「なら後は頑張れよ」


折本「えっ?手伝ってくれないの?」


八幡「えっ?何を手伝えばいいの?」

すでに手伝ったとは思うのだが。
アイディアを出したのだし。


折本「そうだ!ダブルデートにしよう!」


それある!とはならない。
何がどうなったらそうなるのだ。


折本「二人だけだといろいろと不安なんだよあたしは。だから比企谷も誰か誘ってダブルデートってことにしようよ」


八幡「何でそうなるんだ…………」


折本「それに協力者が近くにいた方が不安要素もなくなるじゃん」


八幡「もし。もしもその話を受け入れたしよう。だが残念ながら俺に誘うような相手はいない。よって不可能だ」


折本「仕方ないなぁ。ならあたしが誰か誘っとくよ」


八幡「知らない奴とか無理なんだけど」

なんなら知ってる奴でも無理だ。


折本「大丈夫大丈夫。あたしに任せて!」


もしかして仲なんとかさんでも誘うのだろうか?
玉縄も折本も知っているだろうし。
いや玉縄は知ってるのか分からねぇな。
一応俺も顔見知りではある。

そうなると俺はまた後ろを歩いてるだけの作業になるな。
デートではなく作業だ作業。

それにしても折本が引き下がる様子は微塵もないらしい。
…………はぁ。面倒くさいけど仕方ないか。

八幡「……分かった。なら日にちとか決まったら連絡してくれ」


折本「うん。ならまたね比企谷」


八幡「…………おう」

折本とこんなに話し込むことになるとは思わなかった。
なぜまた折本とダブルデートもどきをしなければならないのだ。

面倒事は避けて通りたいが、そうもいかないらしい。
ならば早めに手を打っておいて悪いことはないだろう。

玉縄が俺の思うよう簡単に動いてくれればいいのだが。
意識高い系VS自意識高い系の再戦だ。

雪ノ下はいないが今回も勝ってやるよ。
…………違うな。
折本を勝たせてやるよ。

短くてキリ悪いかもだけどここまでで!
デートの案とか募集です!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年09月06日 (日) 18:06:34   ID: -_sHJBXb

好きですこういうの!続きはよ!

2 :  SS好きの774さん   2015年09月07日 (月) 07:33:50   ID: FfC22YsX

相模とデートとかマジ勘弁な

3 :  SS好きの774さん   2015年09月08日 (火) 07:24:03   ID: RcWNM5H-

折本と面識のある一色の出番ですな

4 :  SS好きのノラさん   2015年09月11日 (金) 04:07:06   ID: JWSzkSGG

え、てかこれ「作者が書いてます!」とかいうオチじゃないよね?w

5 :  SS好きの774さん   2015年09月12日 (土) 02:03:28   ID: BR3MhfVd

続きが気になりますね~

6 :  SS好きの774さん   2019年03月30日 (土) 22:25:33   ID: U3OuZ-WJ

めぐりとかでよくね?
まだ出てないし。

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom