八幡「うわっ大雨……」(7)

地の文ありです

駄文ですがお付き合い下さい

金曜日の放課後。冬も佳境に入ったとあってか、廊下側の俺の席は冷え込んでいる。他を圧倒する人口密度の低さを誇るここ成れの果ての特別棟四階は、これまた他を圧倒する静けさと寒気をご提供なさり、暖かいマッカンがますます美味しく味わえる。まあ、マッカンが合わない季節なんて存在しないんだけどね。夜桜にマッカン、海にマッカン、サンマにマッカン、コタツにマッカン、どれもこれも最高のベストショットだ。なんならマッカンと小町とのツーショットを待ち受けにするまである。

とまあ、頭の中でマッカンと小町にたいする愛を再確認していたら、由比ヶ浜がわー、とかひぇー、とか言ってるのに気がついた。この子その内シェー!とか言い出しちゃうんじゃないの。何それ絶対見たくない。
「ねえねえ、ゆきのん外見て~」

「わ、わかった、わかったわ由比ヶ浜さん、わかったからもうちょっと距離をとってもらいたいのだけれど」

「ほら見て見て!」

「……これは大変ね。帰る時気をつけてなくてはいけないわね」

「ねえ、ヒッキーも見てみて!」

「どうどう、落ち着け、それでどうした?雲が綿菓子みたいだったか?」

「子供扱いするなし!」

「で、なんだ?」

「ほら!」

「うおっ」

え…ナニコレ?台風顔負けの大雨が降ってるじゃん…サメが空中を泳いでも全然不思議じゃないんですけど

「凄いね!怖いね!」

「お前絶対楽しんでるだろ、子供か」

「馬鹿にするなし!」

「子供だ」

「断定!?」

すると雪ノ下が良く通る声で言った。

「部活は中断しましょう、ここで待っていても埒が明かないでしょうし、時が経つほど帰宅が困難になると思うもの」

雪ノ下の鶴の一声で俺らは帰り支度を始めた。仁義なき戦いを経て、俺がカギを返すことになった。くそう、超寒い…絶対許さない…

カギを返したあと、俺は愛しのマッカンを購入すべく自販機に立ち寄った。冗談抜きでここ最近インド象が群れで水遊び出来ちゃうくらいマッカン飲んでるわ…血液型MAXとかになってないよね?大丈夫だよね?

暖かいマッカンを少々手の内で弄んでから、待ちきれず一口……

「太陽がいっぱいで、最高の気分だ…」

いけない、マッカンに酔いしれるあまり、ついつい名セリフをパクっちまったぜ。いつ誰かに見られてるかどうか解らないのに…

すると聞きなれた声が

「うわ……先輩うわ…」

見られてましたね

「……げ」

「こっちのセリフです。流石に今のはキモすぎですよ……自分がそう言っているのを想像してみてください」

………うわっ…通報しなきゃ

一色はそんな俺の表情をみてとったのか、得意そうな顔をして、他人のふりをしようかと一瞬考えました、と言った。今度からは本人の前で言うのはやめようね、軽く傷付いちゃったから

「先輩部活はどうしたんですか~?サボり?」

「サボってねえ……ほら、今雨どしゃ降りだろ。だから中止だよ、中止」

「あ、なら都合がいいです。私今日ちょうど傘忘れちゃって~誰か入れて貰おうと思ってたんですよ~」

「え……いや…恥ずかしいから嫌なんですけど」

「は?」

「いや、怖いから、超怖いから」

「いや、私結衣先輩にお願いしようと思ってたんですけど…はっ!なんですか今口説いてましたか正直先輩はいい人とは思いますけど恋愛対象とみるにはカッコ悪すぎですごめんなさい出直してきて下さい」

「あーはいはいそーですねー」

「てか結衣先輩もう帰っちゃいましたか?」

「いや、まだ学校に居ると思うぞ?別れたのついさっきだし」

「ならいいんですけど…」

俺と一色は少し足早に昇降口へ急いだ。昇降口までいくと案の定、由比ヶ浜と雪ノ下が抱き合い、もつれながら歩いていた。いや…歩く時までそうとかドン引きなんですけど

「あ!いろはちゃん、やっはろー」

「こんにちは、一色さん」

「こんにちは、結衣先輩、雪乃先輩。ところで私、傘忘れちゃって、一緒に入る人を探しているんですけど…」
 
「あ、ならあたしいれてあげようか?傘おっきいし!」

「本当ですか?ラッキー!ありがとうございます!」

由比ヶ浜の二つ返事で場が和んだ。一色もずいぶん安心した表情をしている。さてさて…俺も帰りますかね……

………………………

「………」

「………」

「………」

冠水してるわ……昇降口の大部分が水に浸かっちゃってんじゃん…マンホールが噴水と化しちゃってるし、なにこれ?冬ってもうちょっと乾燥してるんじゃないの?俺はまだましだが、駅まで歩く一色とかはどうなるんだ?流石に長距離氷みたいな水に足を漬からせたまま帰るとヤバイと思うんだけど。つーかよく気づかなかったな俺ら……

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