女「私、イケメンさんのセフレなの」 (155)


男「へー」

女「好きなんだけどね」

男「それでいいの?」

女「……………」

男「そうだね」

女「良くないよ。良くない…」

男「そっか」



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女友1「うん、知ってる」

男「まわりはなんもいわねぇの?」

女友1「いちいち言わないわよ。デリケートな話題だし。
    実際イケメンくんモテるからねー」

男「そうなんだ。俺、もっと硬派な人だと思ってたんだけど」

女友1「硬派?本気で言ってんの?見た目からして軟派な人じゃん」


…そうだけど。
容姿に自信があるってのは、結構な武器だと思う。
あの人の、人を見つめる目には自信が漲ってる。
纏う雰囲気もそれだけで違ってくる。

元がいいもんだから、本当にずるいと思う。

…自分の容姿は、自意識抜きに、そう卑下したもんではないけど。
なにも硬派な人だなんて本気で思ってたわけじゃない。
容姿の優れた彼が、格下の男たちを、…気遣う気持ちがあって欲しかった。

…そんな、甘えだった。

書き溜めです。
のんびり投下します。





女友1「実際女だけじゃないしね」

男「遊んでんだなーイケメンさん」

女友1「アタシもヤった事あるよ。女は、アタシの次の日じゃなかったかな」

………はぁ?

男「……………っ、」

男「うっわ、まじかよ。女友1は、イケメンさんと付き合いたいの?」

女友1「べつにー?てか、あの人彼女いるじゃん」

男「あーそうだったね。プリクラ見たけど、美人だった」




女友1「そういうんじゃないんだよねー。この前、みんなで終電逃して、ラブホ泊まったじゃん?
    男が3人だったからアタシがイケメンくんと泊まったんだけど、その時ヤられたの。
    別に1回限りだよ。その後別にどうもないし」

男「…女友1が本命彼女じゃないとか、贅沢だよな、はは」

女友1「なに?喧嘩売ってる?」

男「いや…女友1可愛いじゃん。イケメンさんの彼女も可愛いけど、女友1も負けてないと思う」

女友1「…いいけど。どうでもいいし」

女友1「女がなんであんたに話したのか知らないけど
    進行形って事だよね。誰かに話して楽になりたかっただけじゃない?
    あの子の性格的に、誰でも良かったんだと思うよ。他意はないと思う。
    …だから、あんたがなにかする必要はないよ。ほっときな」

男「…そうだな。俺も、そう思う」

女友1「あんたには酷だけどね」

男「なにがだよ。マジで、関係ないんだろ?なんもしないよ。平気」

女友1「………」




――――――――――――――――
―――――――――――
――――――


女「あ、男」

男「よう」

女「や、楽しんでる?」

俺と女は大学のインカレサークルで知り合った。
…サークルっつっても具体的な活動内容はなにもしてないけど。
どこぞのインカレサークルがレイプ事件を起こしたことで
大学側から活動を自粛してほしい、という通達があったのは2ヶ月ほど前の事だ。




男「最近はこういう飲み会もろくにできないからな」

女「世知辛いよねー。イケメンさんは、プライベートで
  他校の子と飲みに行ったりしてるみたいだけどね」

男「………そうか。あの人、元気だな」

女「うん、元気だね。彼女さんとはどうなんだろ?」

男「……………さぁな」

彼女ね。彼女。
イケメンさんは実際いい人だ。
細かい気配りもできるし、気取らない心の豊かさもある。
男女別け隔てなく接するし、…顔もいいし、背も高い。
およそ欠点ってのが見当たらないタイプだあれは。

女「………ね、私とあの人の事」

ああ。
やっぱその話になるのね。

男「誰にも言ってないよ」




嘘をついた。
なんでだろね。
こういう話題では、誠実にはなかなかなれないもんだね。

女「そ。よかった」

女「私、あの人の事好きなんだ。彼女になりたい。
  あの人の側にいたい」

男「…でも、あの人彼女いるんだろ?他校にだけど」

女「知ってる。…知ってるけど」

女「イケメンさんが、こう言ってた。
  彼女は凄くいい女だけど
  私は彼女に無いものを持ってるって。
  あの人の彼女だって完璧な女じゃないから
  そういう足りないところを、私は埋めれるって」

女「それでもいいんだ。私は、あの人が好きだから」

男「一途なんだね」

女「そーだよ。一途だからね、私は」




イケメン「おう、なんの話してんの?」

男「あ、イケメンさん。ちっす」

女「……っ、飲んでますかー?」

イケメン「俺酒よえーからさ、あんま飲んでないよ。
     おう男ー、お前も酒弱いらしーな」

男「ちょっと飲んだだけでへろへろですよ。
  向こうは盛り上がってるっぽいっすね」

ワー!イッキ!イッキ!
オラ!!イッキハキンシダッツッタロ!!!

イケメン「大丈夫だよ。アレ、ウーロンだから。
     騒ぎになったら、ほら。今うるさいし」

男「でも、イッキなんてしなくても、空いたピッチャーの数凄いっすよ」

イケメン「はは、まぁな。女ちゃんは…向こう行かねぇの?」

女「いいけどー、私強いよー?」

イケメン「おう、行け行け。あいつら、全員潰してやれ」




さり気なく促す、細くて長い、イケメンさんの腕。
男である事を意識させるように、決して下心があるように思えないように
さり気なく腰に回される腕。
…まるで自分が女だと、思い出させるような。

腕が触れた時、女の顔が少し赤くなったような気がした。




イケメン「お前さ、彼女いるんだっけ」

男「いや、大学入る時別れました」グビ

イケメン「いや、俺知ってるぞ。
     お前、前ウチにいた女と付き合ってたろ?」

男「…よく知ってますね」

イケメン「そりゃ、俺らん中じゃ有名だったからよ?お前も手がはえーな、って思ってた」

男「でもあいつとも別れましたよ」

イケメン「なんで?」グビ


男「あいつ、俺に黙って、フーゾクでバイトしてたんすよ」ピンポーン

イケメン「あー…そりゃ。あ、生ひとつ。お前は?」

男「俺も生で」

イケメン「…ま、飲んで忘れるべ」

男「いや、気遣ってくれなくて大丈夫っす。
  別に気にしてないし」

イケメン「そっか。意外にドライなんだな」

男「ドライっていうか…寂しかったからなんとなく、って感じだったし」




イケメン「お前もやるねぇ」グビ

男「一回の時でしたし。環境変わって、そん時結構可愛い、元カノとたまたま仲良くなって」

イケメン「あいつ大学やめちまったよな」

男「奨学金、パチで使っちまって、学費払えなくなったらしいっす」

イケメン「うっわ………んで?彼女作る気ねーの?」

男「…しばらくいっす。インカレ禁止になって、内輪しか出会いないし」

イケメン「でも、連絡先くらい残ってんだろ。プライベートで誘えばいいじゃん。
     何人か紹介するか?」

男「それ、全員イケメンさんのお古だったりしませんよね?」

イケメン「そんなわけねーじゃん!俺、マジもてねぇんだよ。彼女いるし」






うぜぇ。知ってんだよ。
お前が他校の女食いまくってんのは。






イケメン「女友2いるじゃん」

男「ああ、うちの。痩せりゃ可愛いっすよね、あいつ」

イケメン「今でも結構可愛いと思うぞ。
     性格きついけどな。
     最近、あいつ彼氏と別れたって」

男「あ、聞きました。実はセフレだったって」グビ

イケメン「そーそー。それでな、あいつ意外とガード硬いんだよ。
     根は真面目なんだろな」

男「…なんすか?」

イケメン「いや、根は真面目って、お前もじゃん。
     どうかなって」

男「あいつ確か、女の親友ですよね」

イケメン「そーだな。ずっと一緒だな、あいつら」

男「…俺、マジで、しばらく彼女いいっすよ」

イケメン「そっか。興味本位で言っただけだよ。
     お前ほんとに飲まねーのな。
     飲もうぜ。ほら向こう行こう」

男「すいません、明日授業なんで」

イケメン「ま、いーけどよ」


――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

男「タコパ?」

女友2「うん」

男「いいけどどこで?」

女友2「アタシ、最近一人暮らし始めたから」

男「へー。いいじゃん、誰呼ぶの?」

女友2「えーと、友と、友2」

男「お前んち、汚そうだよな。どうしよっかな」

女友2「はぁ!?引っ越したてだし、汚くないよ。
    あ、あと女ね。当然」

男「…まぁ、いいけど。
  いつすんの?」

女友2「ほんと?よかった。明後日だよ」

男「お前んちどこだっけ…」

女友2「えっとね、○○駅の…」



――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

友「かんぱーい!」

「「「かんぱーーい!!!」」」

いやー、なかなか広いじゃん!!
家賃高めにしたんだよー
家具まだなんもねぇけどな!
もー!これから買うし!
そっち焼けてるんじゃない??
もらいっ!あふ、あふあふ
熱いに決まってんじゃん!あははは!!




おらー!おとこー!のめよー!
いや、俺は酒は…
なにー!私の酒が飲めねーってのー!
…いや、飲む。なんでも持ってこいや!
よっし!のむどーー!!!あははははははははははははははははははははははははh




――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

男「………いってぇえぇええぇ…」

とんでもない頭痛。
昨日なにしてたっけ…

ああ、女友2の新居で、友たちとタコパして…
まさか、酔いつぶれて寝たのか。
二日酔いは初めてだ、いや、今まで飲んでこなかったって意味で。

友も、友2も、…女も、居ない。
酔い潰れているうちに帰ったのか。
女の家は遠い。
あの人、に迎えに来てもらったのだろうか。






女友2「起きた?」

そしてなぜかこいつがいる。
いや、当然か。ここはこいつの家だ。

男「起きたよ。…変な事してねーだろーな」

女友2「ぷっ。寝癖、凄い事になってるよ。
    男が寝てる間にみんな帰ったよ。なかなか起きないから」

男「あー…。うん。わり。潰れた」

女友2「いいよ。酒弱かったよね?
    もー、なんでこんなに飲むんだか」





男「…ムキになったんだよ」

女友2「ふーん。ムキになるタイプじゃなさそうだけど」

男「いや…。そうだな、そんなつもりないんだけどな」

女友2「わかるよ。相手が、女だもんね」

男「…は?」

女友2「好きな人には、いいところ見せたいよね」

男「好きな人…って。誰、が」

女友2「アタシ、知ってるよ。あんたの好きな人」





――――――うるせぇ。

女友2「知ってるよ。ウチ来た時から、ずっと女の事、見てるよね」

――――――そんな、つもりは。

女友2「ウチって、サークルね。
    あんた元カノと付き合ってたじゃん、その時もでしょ。
    …その時はまだ、自分の気持ちに気づいてなかったみたいだけど」

――――――いや、元カノは……俺は本気で

女友2「最初から、ずっとだよね。アタシらはあんたと同期だけど、
    高校の頃から出入りしてたし。
    あんたを迎える立場だった。
    あんた、結構わかりやすいよ。ぶっきらぼうだけど
    女には少しだけ、優しいよね」

男「…なんだってんだよ」

女友2「別に。あと、イケメンさんにも、少し壁作ってるよね、あんた」

男「それがなんなんだ」

女友2「アタシ、知ってるよ。女が、イケメンさんとヤったって。
    あの人の事、ほんとに好きだって」






男「そりゃ、………お前ら仲いいもんな」

女友2「そうだね。
    イケメンさんって、女の扱い上手いよね。
    アタシも声かけられた事あるよ。荷解き手伝ってやる、って」

猿かよ。
節操ねぇな。

女友2「アタシ断った。
    あの人も、女とアタシが仲いいって、知ってるはずだよ」

女友2「だから、女との関係を知ってるってわかってて、アタシ誘ったんだよ。
    でもあの人いい人だよね。あんな人だけど、憎めない。
    友達としてだけど、アタシあの人の事好きだな」

男「…だから、なんだってんだ」

女友2「あんたとあの人じゃ、勝負にならないって話」





男「そっ、…そんな…、事」

――――わかってるんだ。

男「俺に、どうして」

――――そんなことは。

女友2「恋愛って、どうにもならない時期あるよ。
    女は今、イケメンさんしか見えてない」

男「…っ、」

女友2「好きなんでしょ」

男「そう、だよ」

女友2「女の事」

男「………ああ」

女友2「昨日のタコパだって、女、イケメンさん誘おうとしてたよ。
    でも、デートだからって断られた。
    多分、…最初から女遊びしたくてサークル入ったんだと思う。
    デートが彼女とかどうかもわからないよね」

男「それで」

…俺に。

男「諦めさせようって?」




女友2「…違うよ。さっきアタシ、嘘言った。
    あんたがわかりやすいって」

女友2「アタシが気づいたのはね」

女友2「あんたの事、見てたからだよ」





なんだよ。
つまり、それって

女友2「アタシ、あんたの事好き」

何言ってんだ、こいつ。

女友2「アタシ、最近別れたんだ。
    あんたに結構相談してたよね。
    ぶっきらぼうなくせに、あんた優しくて。
    前向けって、言ってくれた。
    しょーじき、あんまり気にしてないんだ。
    あんたに相談してたおかげかな」

ちが、う。
おれは。

女友2「わかってる。
    アタシが女と仲いいから、ポイント稼ごうとしたんだよね。
    糞な彼氏と、なかなか別れないメンヘラのアタシは
    自分の事好きになるわけないと思ってたんだよね」

そんな、つもりじゃ。



女友2「でも、今、アタシ、あんたの事、好き…だよ」





男「…なんで、説教されながら告られてんの?俺」

女友2「…うん。ごめん。
    卑怯だと思う」

男「俺だって、わかってる。女とは付き合えない、って」

女友2「ごめん。……傷抉るような真似して
    つけこもうとしてるわけじゃないんだよ。
    あんた、アタシの事、これっぽっちも好きじゃないよね。
    だから、悔しくて。
    打算で優しくされて、惚れさせられて。
    でも、あんたの事好きになっちゃった」

男「打算とか、そんなんじゃないよ。
  真面目に相談に乗ったし、人として優しくしたつもりだぞ。
  いや…。そりゃ打算はあったけど」

女友2「どうであれ、アタシ、嬉しかった。
    女の代わりにはなれないけど」

女友2「アタシじゃダメ、かな。
    あなたの事好きです。
    付き合って、ください」





男「………


―――俺が好きなのは、女だ。
あまのじゃくで、頭が良くて、ちっちゃくて
プライドが高い癖に依存体質。
目が大きくて八重歯。
猫みたいな顔してる。
モーターつきの風見鶏。気分によって逆らったり流されたり。
ワガママ。でも、無茶は言わない。
そういう色んな意外性が、どれも本当に、俺には魅力的で…―――

  ………」



こいつと付き合ってたら。
女と、疎遠になったりしないかもしれない。

別に好きじゃねーけど。
片思いの相手の親友ってポジは魅力的だ。

…付き合えなくてもいい。

…側に。いられれば。






最低だ。俺って







男「ああ。こちらこそ」

女友2「…ほんと?女の事、忘れられる?」

男「…女が好きなのは、イケメンさんだよ。
  相手がイケメンさんじゃ分が悪いよ。
  女友2の事、これから、頑張って、好きになる」

女友2「………………そう」

男「好きって、言ってくれてありがとう。
  気持ち、嬉しい。
  俺で良かったら、付き合ってください」

女友2「アタシも、嬉しいよ。
    これからよろしくね」



――――――――――――――――
―――――――――――
――――――


俺と女の出会いは、新歓コンパの二次会の時。
一次会で、まだ付き合ってなかった頃の元カノから女の話を聞いた。
家が割と裕福で、お嬢って呼ばれてる。
中学で留学経験があったり、でも浪人中だったり。
二次会で顔を見て驚いた。
…とても、何も期待していない目をしていたから。

適当に元カノと付き合いながら、女と付き合う妄想をした。
気付かなかったけどこれは多分一目惚れなんだと思う。

元カノは半年で飽きてフッた。
フーゾクの話は、渡りに船だった。



それから一度女と飲みに行った事がある。
終電を逃させて、ホテルに誘うつもりだった。
電車の事はうまくいったがホテルには誘えなかった。
卑怯な真似をして、女を汚してしまう気がした。
結局朝までカラオケにいた。




――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

女「あんたたち、うまくいってないんだって?」

男「そんなことねーよ。こないだ、夢の国行ったし」

女「へー。いいなー…」

今日は女と晩飯。酒はなし。
こいつはたまに、俺の事を誘う。
理由は想像ついてるけど。

男「イケメンさんとは、どうなんだ?」

女「いやー、…好きなんだけどね」

男「好きだけじゃどうにもならない事もあるよな」

女「それな。ほらあの人、他にも、いるから…」





男「…お前。知ってたのか」

女「わかるよー。女友2から聞いてない?あの子も誘われたんだよ」

男「聞いてるよ。そっか。女の子って強いな」

女「まぁそんなのどうでもいいんだけどね。
  あ、そうだ。
  こないだありがとね。お願い聞いてくれて」

男「サークル旅行のチケットの事?
  いいよ、どうせ暇だったし。
  ○○線沿線って、俺だけだしな」

女「それでも嬉しいよー。男って優しいよね。
  お願いなんでも聞いてくれて」

男「…別に。
  当然じゃん。人に、優しくするのって」

女「ほんと?…私って、ワガママ言っちゃうんだ。
  自然に口をついて出るんじゃなくて、ワガママ聞いてもらえるのが嬉しいの。
  だから、無理そうな事は、頼まないようにしてる。えへへー。
  そんなかじゃ、男はほんとにお願い聞いてくれるよ。
  それはきっと、男が優しいからだよ」





――――こいつは、馬鹿じゃない。
ギリギリのラインで、人にする「お願い」を調節する。
人に言う事を聞かせ慣れてる。
人の上に立てる逸材、だと思う。
お嬢キャラは、多分そこからきてるんだと思う。

――――みんな、わかってねーけど。



「―――――イケメンさんが、こう言ってた」


そんな、頭のいい彼女が。

「彼女は凄くいい女だけど
 私は彼女に無いものを持ってるって。
 あの人の彼女だって完璧な女じゃないから
 そういう足りないところを、私は埋めれるって―――――」

こんな、陳腐な浮気の口実に騙されているのが。


本当に、腹が立つ。


ちょっときゅーけーします。

期待してる





女「…でねー、…男。聞いてる?」

男「―――ああ、ごめん。なんだった?」

女「もう。だから、こないだ、田舎の穴場レストランの事、話してなかった?」

男「ああ。畜産農家がやってるとこな。
  安くて良い肉が食えるんだけど、県内で電車で2時間はちょっとな」

女「うん。でさ、友くんが家の車借りれるから行かないか?って言ってたの」

男「あ、いいね。車だと1時間くらいらしいぞ」

女「じゃ、計画煮詰めようよ。最近、女友1が友くんと付き合い始めたんだって。
  だから、女友1と、友くんと、男くんだね」

男「んー、5人かあ。友の車って5人乗りだから、狭くなるな」

女「…………」

男「どうした?」

女「あ、ううん。なんでもない。
  日取りとか、また大学で会った時決めよ?
  …私、今日帰るね」





…彼女は。
今晩も、あの人と会うんだろう。
前に二人で飲んだ時はラフな格好をしていたが、
今日はデート着だ。
ふわふわの白いワンピース。
空色のカーディガン。
表情が薄くなければ、本当に可愛いはずだ。

今でも十分可愛いんだけどね。
それが。
俺のために選んだわけじゃないにしても。





男「ああ、了解。
  気をつけてな」

女「うん。男はどうする?」

男「駅まで送るよ。帰って寝る」

女「ううん。今日は駅じゃないの。
  車で迎えに来てもらえるから」

男「車?」

女「うん。お父さんのね。ここお父さんの職場が近いの」

嘘だ。
あの人が使うホテルは、郊外だ。
みんな知ってる。
前にホテルで浮気相手と鉢合わせてから、車の距離のホテルを使うようにしてる事を。





男「そっか。どこで拾ってもらうんだ?」

女「…○○の交差点、だけど…」

男「じゃあ俺もそこで待つよ。
  見送らせてくれ」

女「あ……」

男「なんて、嘘だよ。
  会計しとくから、先行きな」

女「………じゃ」パタパタ

男「………」

彼女もきっと気付いただろう。
父親の嘘に気付かれた事を。
些細な仕返しのつもりだった。
言うべきじゃなかった。
―――これでもし彼女に嫌われたら。

考えるべきじゃない。
叶わぬ恋はするものじゃない。





店を出る気にもなれず、ビールを頼む。
金をもらい忘れた。
財布の中には、諭吉が一人。
足りるだろうが、これは痛い。
次に会うのは週明けだ。


男「土日は家の掃除でもするか。
  つーか、金なさすぎだろ。どこか、金かかるとこ
  行ったっけ…」


ふと、女友2と行った夢の国を思い出す。

…結局最後まで、手も繋げなかった。
女友2も、あまりはしゃげないようでいた。

「いいよ。これからまだ、忘れていってもらうから」

帰り際にそう言われた。

俺は知っている。
女友2は、よく笑う子だ。
俺といる時は。
俺がそうさせているのか。
暗い顔ばかり。

辛く当たったかもしれない。
女を持ち上げて、女友2を傷つける言葉も、つい出てしまう。
腹に一物抱えた交際をするには、
俺はまだ若すぎる。





俺は、あの人のようにはなれない。






女友2からメールが来たような気がする。
無視して一人、ビールを呷る。
女は今、あの人に抱かれているんだろう。
女友2と付き合い始めて、2ヶ月が経った。
忘れて、今の彼女を大事にしていこうと思えるようにもなった。
…女友2と口付けを交わす度に、女の事を考える。
女の厚い唇は、きっと柔らかいんだろう。
細くとも肉感的な身体。
特徴的な香水。
この腕で掻き抱いたら、どんな感触がするんだろう。
それもいずれ忘れる。
好かれなければ意味がない。

―――俺では、あの人に敵わない。

「あんたの事が好き。
 とってもダメな人だけど、あんたの事が好き。
 アタシだって、アタシ一人を見てくれてる人がいい。
 でも、アタシは、女が好きなあんたが好き」

どうしろってんだ。
女の事が好きな、お前の彼氏だ。ほら、注文通りだろ――――?






気付けばビールは3杯目だった。
一人で、大衆イタリアンで、料理を頼まず泥酔する。
酒には強くない。
こんなところを、女に見られたら。
…むしろ、それを望んでいるのかもしれない。
もしも、もしも。
俺が勝手な劣等感に苛まされず。
そんな男より、俺と付き合ってほしい、と伝えられていれば。
まだ少しは望みがあったのかもしれない。

…今のように。
望む事を諦め、望みを失った今の俺のようになっていなければ。
勝手な打算で彼女の親友を苦しめ、耐え切れずに酒に逃げるようになっていなければ。

それならいっそ。

嫌われてしまいたい。

勇気がない。
俺ではあの人、の代わりにはなれない。
女友2を傷つける事もできない。
女と関係を絶つ事もできない。

ああ、泥沼だ。
俺が一人。
沼の底で、もがいて、
身動きが取れずにいる―――――




「…ひどい格好」

ああ。
酒のせいで幻覚が見える。

女「まだいたんだね。
  …お酒弱いんだから。
  …なにしてるの」





男「おん、な…」

女「すいません、水を…」

男「あの人と、いっしょじゃ」

女「……そうだけど、帰ってきちゃった」

男「なん、で、」

女「やっぱり、わかってたんだね。

  迎えに来るのは、イケメンさんだって」

男「………服が、ちがったから
  それは、あの人のためだと思った」

女「ふうん。…男くんは、女たらしだね。
  女の変化に敏感なんだ。あの人みたいだね」

男「ち、がう
  おれが、びんかんなのは」

女「ね。男くん」





女「私の事、好きだよね」






気付かれないようにしていた。
伝わってしまえば、期待に変わってしまう。
だから、絶対に知られたくなかった。

でも、自分から伝えなければ、意識させる事だってできるかもしれない。
そういった打算はお手のものだ。
そんな汚い手段、彼女に似合わない。

俺は、あの人とは、違う―――





男「…違う。
  そんなわけ…」

女「女友2から聞いてるよ。もう、知ってるんだよ」

男「そ、んな…なんで…」

女「私達、親友だから。隠し事はしないの。あはは…
  男、私には特別甘いよね。
  他の人には、俺に指図するなー!って雰囲気出してるのに。
  私の言う事は、聞いてくれる。
  私それに甘えちゃってた。
  知ってて、男に相談してたんだよ。
  …ほんとは、あの人とはもう、ずっと連絡取ってないの。
  今日は、久しぶりに会う約束だった。でも…」

男「俺は、あの人の代わりには」

女「ならないよ。
  でもね、あの人の車に乗ろうとした時ね。

  ―――――できなかったの」


女「男はさ、ずっと私の事好きだったって。
  私、今までろくな恋愛してこなかった。
  私が好きになる人は、みんな他の人を選ぶ。
  昔からずっとそうなんだー。

  …でも、男はずっと優しくて。
  好みとは全然違うけど、男の優しさは、他の人にないものだよ」

男「おれ、は、おまえを」

女「…本当言うとね、イケメンさんと別れ話して、一人で帰って。
  サークルもやめるつもりだった。
  男は女友2の彼氏だし、女友2は本当に男の事好きだし。
  二人が付き合ってからも、私男に甘えてた。
  女友2には男なんてありえないって言ってた。
  言っちゃいけないって、わかってる。
  …でも、でもね」



女「今…、今。あなたが、ひっく、好き」ポロポロ




――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

ブオオオオオ

女友1「なー、女友2はよかったの?」

女「…行けないって。それに、レストランの事は
  男と前から言ってたからさ」

友「ふーん」

男「ここ、遠いな。ほとんど隣県だ」

女「………」キュ

男「………っ」



――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

女友1「おい」

男「…二人は?」

女友1「土産選んでるよ。
    時間もあんまりないだろうし、手短に済ますけど。
    ――――女友2、どうすんだよ」

男「…言ってる意味、わかんね」

女友1「ごまかすんじゃねぇよ。
    車ん中、こそこそ手繋いでたじゃん。
    別れたとか、聞いてないんだけど」

男「やっぱり…目ざといな、お前」

女友1「女も…どうしたんだよ。
    つーか、お前もタイミング悪すぎ。
    でもお前、そんなに馬鹿だったか?
    こそこそするなら徹底的にやれよ」

男「(…バカなのはお前だよ)」

女友1「…ったく、ちゃんとしろよ?
    女友2にはお前が言うんだからな」




――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

女「…ねえ、男」

男「どうした?」

女「…好きよ」

男「…俺もだよ」


――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

女友1には、わざと気付かせた。
口の軽い彼女は、思惑通り女友2に喋ってくれた。


女は、俺と付き合う事を望んでいなかった。

俺は、どうしても女の事が欲しかった。

女友2は良い奴だ。
人の幸せを願える人間だ。



俺は女を手に入れ、女は女友2との友情を失った。






女「ほんとはね」

女「あなたを選ぶつもりなかった」

女「浮気相手にもなるつもり、なかった」

女「でも…」





サークルのメンバーで、イケメンが所属している部活の試合を観に行った。

…カッコ良かった。
とても敵わないと思った。
なにかひとつ、誇れるものを手に入れなければいけないと思った。

あの人を越える事は永遠にできないのかもしれない。
それでも、俺を選んでよかったと思ってもらえる日が来ることを――――


とりあえず終わりです。
実はもうちょっとだけ続くんじゃ。

でもそれはまた明日。

>>35

夜中なのに、レスありがとうございました。

キャラクター


某大学2回生→3回生
取り柄がない事が取り柄。
大学のそばに一人暮らし。
何をやってもそこそこできる器用貧乏。
特定の友人が居ないタイプ。
後天的なペシミストだが、
根は情愛深いタイプでロマンチスト。
女が好き。人生の全てと言っていい。


某大学2回生→3回生
実は一浪。
実家通い。
早生まれで男と同い年。
イケメンがはじめてのひと。
英語が堪能。
なにげにリーダーシップあり。
実はイケメンへの慕情を捨てきれていない。
が、男への愛情は本物。

女友1
某大学2回生→3回生
元ヤン。イケメンと同じテニス部。
背高い。冨永愛似。
男とは小学校での学習塾からの仲だが、
一緒に合格した中高一貫校で突然道を外れた事で
付き合いの割に男とはあまりわかり合えていない。
高校のレベルが高かった事、成績を大きく落とす事がなかった事、学校をサボる事もなかった事が重なり、
男に枠を譲ってもらい評定ギリギリで指定校で進学した。
男に精神的に頼られる事が多い。
底抜けに良い奴。
口が軽い。
友と付き合ってる。
ビッチに思えるけど意外にガード硬い。
イケメンにやり捨てられたのも、浮気が信じられなかったから。
でも元ヤンだけにSEX=愛とはならない、妙に不安定な価値観のヤツ。


女友2
某大学2回生→3回生
女の元親友。
一浪。サークルには女と高校から出入りしていた。
ちょいポチャ。
典型的な努力型。
自己嫌悪の塊。
経験人数一人。
ちょっとメンヘラ。
でも、頑張ってそれを見せないでいる。
話し上手で明るいが、友達で終わるタイプ。
寄ってくるのは陰キャラだけ。


某大学2回生→2回生
あんまり出番なし。
地元ではちょっとした鉄板焼き屋の息子。
素気ない男の感情の動きを読み取れる珍しいヤツ。
女友1は好きだけど先が見えない事に憤りを感じている。
恋愛方面にはノータッチのタイプ。
バイトしすぎで留年した。
父の跡を継ぐ事が夢。

友2
某大学2回生→3回生
工学系。
キャンパス違うためほとんど出番なし。
何を考えてるかわからないタイプ。
多趣味で八方美人のため、
実はイケメンよりもサークル内では人気。
サークル内で浮いた話はひとつもないが、
どうやら彼女は居たり居なかったりらしい。


イケメン
某大学3回生→4回生
眉目秀麗な偉丈夫。
文武両道で成績優秀。
テニスの国体選手だったりする。
趣味はギター。
親に買ってもらったカイエンを乗り回している。
誰にでも別け隔てなく接するタイプ。
陰では女好きだがモテすぎて全然隠れてない。
2回生で日商簿記1級に合格。
将来の夢は会計士。
現在監査法人でインターン中。
基本的になんでもできるので器用貧乏な男の完全な上位互換と言っていい。
そのことも男の激しい嫉妬を買う一因になっている。
酒に弱いのもやっぱり嘘。

某大学
舞台。
郊外にある私立大学。
法科系に強い。

サークル
元々はインカレサークルだったが活動自粛中。
大人数が辞め、メンバーは50人ほど残っている。
現在あまり交流はない。

1時頃から再開します。
後半は脇にもいくらかスポットを当てるので、
プロットでの簡単な人物紹介を貼っておきます。

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女友1「女とはどう?うまくやってる?」

男「…ああ。女友1には、女友2のケアさせちゃって、悪いと思ってる」

女友1「…いいよ。アタシが喋っちゃったからね」

男「いや、結構揉めたけど…時間が解決するんじゃねーかな」

女友1「…黙って、られなかったから。
    女友2、毎晩泣いてる。
    一人で寝れないって。大学終わって、ついあんたんちに足が向くって。
    買い物行っても、あんたの好物ばっかり買っちゃうって。
    あんたが買ってくれた指輪、まだ財布に入れてるって」

男「…悪いと思ってるよ」

女友1「言っても意味ないね。
    いんじゃない。あんたも1年半の片思い実って良かったね」

男「きびしーな。実は、昨日から喧嘩してる」




女友1「は?なんで?」

男「…女が、さ。イケメンさんの話をよくするんだよ」

女友1「なんでだよ。イケメンの事、吹っ切ったんじゃないの?」

男「あいつは、ワガママだから。
  イケメンさんが好きって気持ちも含めて、付き合っていきたいらしい」

そう。
あいつが、女友2が。
女を愛した俺ごと、愛したように。

女友1「なにそれ。ありえね」

男「いいんだよ。俺はどうせ女が好きだし」

女友1「喧嘩してたら意味ねー」

男「ああ、それで、俺がさ。多少イラついて、昨日テレビでさ、不倫の話やってたろ」

女友1「マツコのやつ?」

男「そ。それ見てあいつに、お前なら気持ちわかるんじゃねぇのっつった」

女友1「サイテー」

男「それでアイツ、うち飛び出してった。
  朝までどこ居たかわかんねぇけど…電車、ないだろうし。
  土日だし、それから会ってない」

女友1「いや、探しに行けよ」

男「連絡はしてるよ。ごめんって。
  返事ねーけど」

女友1「…仕方ねーなー。後でアタシから連絡取ってみるわ。
    駄目だと思うけど、もし連絡ついたら、あんたに教える」

男「本当、悪い」

女友1「いいって」




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女「…ありがと。忙しいのに、ごめんね」

イケメン「いいって。仲直りしろよ」

女「…うん」





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女「ねえ、男」

男「どうした?」

女「短期留学、どう思う?夏休みに1ヶ月くらいだと思うけど」

男「…どこへ?」

女「UCDだよ。
  昔留学してたのもカリフォルニアだし、UCDも行った事あるの。
  私、英語って唯一の特技だし。
  選考が通ればだけど…」

男「そっか。行ってきたらいいと思う」

女「行っていいの?…ありがと。お土産、買ってくるね」

男「…いいよ。
  1ヶ月じゃん。すぐだよ」

女「そうだよね。すぐだよね」



男「………………」

ほんとは。

行ってほしくない。

けど。




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――――――

女友2「やっほ」

男「お前、この授業取ってたのか」

女友2「取ってないよ。アタシは今、就活中です。
    2年までで単位充分取ったから、3年4年は週三くらいでいいんだよ」

男「自慢しにきたのかよ…」

女友2「違うよー。よそのイベサーからね、うちも誘われてさぁ。
    最近落ち着いてきたじゃん?
    今度イベントあるよって」

男「あー、いつ?
  暇だからたまにはそういうのもいいよな」

女友2「夏休み始まってから。
    メーリングリストでも良かったけど、今日女友1とご飯だから、ついでにね」

最近、女友2は女友1とよく行動している。
暴走した女友1が俺と女との関係を暴露してからだそうだ。
女友1は、…頼れると思う。
思慮に欠けるところは瑕疵といえばそうだが、
外連味のない性格は得難い友人と言えるだろう。

女友2「だから、さ。女も誘ってさ。
    イケメンさんはインターン中だから、来れないと思うし…」

男「女は多分駄目だよ。
  短期留学の日程とかぶると思う」

女友2「短期留学?」

男「カリフォルニアだって。
  うちの大学に夏季プログラムあるだろ。
  あいつTOEICスコア780だし、選考絶対通るよ」

女友2「そっか…寂しいんじゃない?ラブラブだもんね」

男「大丈夫だよ。1ヶ月くらい。
  バイトでもして過ごすよ」




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女「送ってもらってごめんね。
  男って、意外と運転うまいんだね」

男「毎年里帰りは俺の運転だしな」

女「そういえば、男ってあんまり車出ししないよね。
  運転上手いなら今度から運転してもらおうかな」

男「プライベートでは借りれないんだよ。
  今日は、無理矢理借りてきた。
  エルグランドばっか運転してるから、
  普通の車運転できないかも」

女「あはは、そっか。
  でも、助かった。荷物多いし」

男「…外人と浮気すんなよ」

女「なにー、男だって浮気しちゃ駄目だよ。
  …もし浮気したら」

男「な、なんだよ」

女「死ぬから」

男「………」

女「………」





男「こ、こえーこと言うなよ」

女「へへ、嘘だよ。
  知ってるもん。
  男が私を手放すなんて、ありえないよね」

この手の会話に違和感がある。
女は、俺の気持ちを、深く理解していると思う。
逆はどうなんだろう。
女の事は大切にしているけど。
俺は、大切にされているんだろうか。
プレゼントももらった。
たまにうちに来て、家事をしてくれる。
眠るときは、腕枕をして頭を撫でてもらわないと、眠れないという。





それは全て。
あの人にも、同じ事をしてもらっていたのか。





俺を選ぶつもりはなかったと、彼女は言った。

ではなぜ俺を選んだのか。

女友2が、自分を気にせずに付き合えと言ったからか。






それとも。
あの人を諦めたから、俺を選んだのか。







男「フライトいつ?」

女「11時。朝ごはん食べる?ラウンジ使えるよ」

男「んーコーヒーだけ。
  朝飯、あんまり食べないから」

女「そっか。10時までに集合だからカフェ入ろ?」

男「薬局とか寄らなくていいのか?」

女「大丈夫だよ。向こうで買えばいいし。
  …それにね」

女「ちょっとでも、一緒に居たいから」





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――――――

男「あー…」

友「歌わねえの?」

男「なんか、気力湧かね」

友「じゃあ俺歌うわ。
  寂しいからって、俺振り回していいってわけじゃねぇぞ、おい」

男「うっせーなー。
  お前だって女友1合宿中じゃん。
  寂しくねぇのか?」

友「別に。
  多分いずれ別れるし」

男「は?なんでだよ」

友「だってそうだろ。
  あいつと将来考えられるか?」

男「意外に家庭的だぞアイツ。
  グレてた時も学校には来てたしな」

友「ちゅーとはんぱなグレ方だよな。
  前エッチした時もさあ、

―――おい、どこ舐めてんだよ!!!
   ありえねぇ、変態かよお前!!!!――――

  だってよ。笑えるだろ」

男「あーキメェキメェ!!
  なんでお前とアイツのエロ話聞かされてんだ俺!」





友「そんでさ、アイツさ」

男「なんだよ。エロ話はいいぞ、眠れなくなる」

友「…イケメンさんとも」

男「…。
  知ってたのか」

友「ありえねぇだろ。
  自分から言っといてだぜ?
  それでテニス部の合宿に、行くとか…」

男「ん?なんで?」

友「お前知らねぇのかよ!!
  テニス部ってイケメンさんの棒姉妹だらけなんだぞ。
  ホテルはフロア違いなだけで男女合同だし、
  マネージャーだって…」

男「いや、待てよ」

友「あれだけ顔良いしテニスも全国レベルだし」

男「おい、イケメンさんは」

友「アイツ顔は結構いいだろ。
  ビッチだと思ってたけど、今はそうじゃないってわかるし、
  それで突然惜しくなるなんて、俺、」

男「イケメンさんは合宿行ってねぇぞ」





友「じゃなくて、……は?」

男「あの人スポーツ推薦でもないし、テニス部3年で引退してる。
  なんで知らねぇの?」

友「……知らねぇ。なにそれ」

男「ずいぶん引き留められたらしいけど。
  今、インターン中だし、あの人。
  あの人だったらイッパツで国家試験受かるだろ。
  2回生で簿記1級取った天才だし。
  うちの大学から久しぶりに4大監査法人に就職するヤツ出るかも、って
  騒いでるよ」

友「いや、待て。全然知らねぇぞそんなこと」

男「留年したしな」

友「うるせーな。
  ………あ」

男「なんだよ」

友「いや。…まぁ、いいか。
  俺、アイツと別れようと思ってるって話だけど」

男「ああ。
  どうした?」

友「俺、大学やめるかも」





男「ん…そうか」

友「驚かねーのな」

男「いや、お前ならどこでもやってけそうだし」

友「うち、親父倒れてさ。
  知ってるだろ?うちの親父」

男「ああ。厨房が暑すぎて倒れたんだろ、確か」

友「それもあるけどさ。
  …なんかどうも、身体悪いらしい。
  血圧が全然下がらねーんだって」

男「それってまずいのか?」

友「難病だって、言ってた。
  手術すれば治るけど、負荷がかかりすぎるって。
  営業日も減らしたし、俺仕送りもらってねぇし。
  俺が経営者になって現場は誰かに譲る、って考えてたけど
  留年しちまったしな」

男「…そうか」

友「ほんとはさ。
  俺が継いだ方がいいんだよ。
  実際、そっちのが時間かかるのかもしんねーけど
  俺がバイトしてるホテル、働きながら調理師免許取れるらしいし。
  何より俺が親父の仕事ぶり見てぇんだ」

男「親父には話したのか?」

友「…話した。親父の事より、それがきっかけで、
  大学にいるより、親父の跡を継ぎたいって。
  女友1には…まだ」

男「そうか。応援してるよ。
  なにしてても」





友「………」

男「どうした?」

友「いや、お前ってやっぱ良い奴だわ」

男「なんだいきなり」

友「お前、寂しいんだろ。
  笑い抜きで」

男「………」

友「無理すんなよ。
  女も、お前に会いたがってるよ。
  だから、離れてても大丈夫なんだよ、お前らは」

男「なんだよ。たった1ヶ月だろ」

友「時間は関係ねえよ。
  そういうのは、ほんとーはな。
  時間は、関係ねえんだよ」

男「…何言ってるかわかんねーよ」

友「わかんだろ。
  俺そっち方面疎いけど、
  そーゆーのって、気持ちだと思うぞ」

男「あー…うぜぇよ」

友「はいはい」




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――――――

ズンズン ガヤガヤ

男「どーだ、よその学校のヤツ」

女友2「んー、あんま合わない。
    それよりハコからお酒無くなりそうだよ、やばいって」

男「やっべー。酒被ってるヤツまでいるし。
  これって売り上げどこいくの?」

女友2「聞いてみたけど、全部ハコに行くって。
    ライブとかもやってるし結構クリーンなとこだよ」

男「へー意外だな」

モブ男「イェー!!上がろうぜ、ノリわりーぞ!」

男「さっきまで上がってたって!散々踊ってたじゃん!」

モブ男「あ、そうだっけ!
    君は?さっきからずっとここいんじゃん」

女友2「うっさいなー、アタシ今からバック。
    色々仕事あるから。
    あ、男手伝ってよ」

モブ男「…二人さ」

女友2「ん?」

モブ男「付き合ってんの?」





女友2「あ、この人とはね」

男「はぁ?ちげーよ、ちげー」

女友2「あ、ちが…」

モブ男「さっきからよく一緒にいんじゃん!
    ちげーの?なーんだ」

女友2「ち…ちが…」ポロポロ

男「!?お、おい」

モブ男「な、なに泣いてんだよ」

女友1「はい、どいて。
    男、この子の仕事やっといて。
    わかってんでしょ?」

女友2「……………」ポロポロ

女友1「うん、外行こ。その方がいいって」

男「あ、ああ」



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ズンズン

ほら踊って忘れよーぜ!!!
ああ。行く…わ。
おい、やめとけよ!!!!
うるせー!!ぎゃははは!!!!!!
DJ良すぎだろ!!おい、テキーラもうねえのかよ!!!!

ズンズン

ズンズン

ズンズンズンズン




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ああ。
寂しい。


こんなとき。

あいつの顔でも見たら。

イッパツで元気になるのに。




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道で寝てたら、危ないよ。

男「ああ、おん、な」

ほら、家帰ろ?タクシー呼ぶから

男「なんで、かえって」

なに言ってんの。いいから。
ううん。大丈夫。家わかるのアタシだけだし

男「……………」

任せて。ほら解散。またね。
すいません、○○のバス停までお願いします。
はい。大学近くの




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――――――

ほら、家ついたよ。
着替えれる?吐いちゃう?
吐いた方が楽かも。

男「おん、な」ギュ

ちょ、離し…ん…

男「…寂しい」ギュウ ガタガタ

震えてるの…?
そっか。そんなに寂しかったんだ

男「……………」




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女友2「おはよ。起きた?」

そしてなぜかこいつがいる。

男「…頭いてぇ…」

女友2「自己嫌悪と寂しさでお酒に逃げる癖、やめなよ。
    そもそも弱いんだから」

男「俺、お前に…」

女友2「んー?」

男「…いや。送ってくれたのか」

女友2「なんだ。謝ってくれるのかと」

男「なんでだよ」

女友2「元カレを彼氏と間違えられて、泣いちゃって。
    本人にそんな事ありえない、って感じに否定されて。
    なのに、その張本人がやけ酒して道路で寝てて。
    連れて帰ってきてあげたら彼氏を取られた旅行中の元親友に間違えられて
    抱きしめられた上に朝まで離してくれなかった事に」

男「…は、はあ?」

女友2「………」ジー

男「…マジで?」

女友2「うん。大マジ。あ、お風呂借りるね。
    シャワーも浴びれなかったから。
    男もお風呂入った方がいいよ。
    タバコと汗とお酒で、ひどいよ、今」

男「…あ、ああ。ごめん」

女友2「いいよ。今更」





女友2「………」

カタン

女友2「………」





男「本当、ごめんな」

女友2「いいって。お腹空かない?ご飯でもおごって」

男「腹は…空いてない。寝起き、弱いんだ」

女友2「知ってるよ。じゃ…もう1時だから、晩御飯だね」

男「わかったよ。何食べたい?」

女友2「焼き肉」

男「あいよ」





ジュウー

女友2「最近、女と喧嘩した?」

男「ああ。女友1から聞いたのか」モグモグ

女友2「…うちさ、イケメンさんちの近くだって、話したっけ」

男「イケメンさんちってあのタワーマンションだろ。
  知ってるよ有名だし」

女友2「こないだ、白のカイエン見た」

男「そりゃ通るだろ。インターン、車で行ってんだろ?」

女友2「んーん。深夜にだよ。○月○日」

男「…なんで?」

女友2「喧嘩した日じゃない?」モグモグ

男「………」

確かに、そうだ。
女は、あの日朝までバーに居たと言っていた。

男「それって、何時頃?」

女友2「2時頃。
    イケメンさんの帰り、いつもは9時ぐらい。
    女の子と遊ぶのも、休日以外してないみたいだよ。
    アタシのバイト終わりが8時半で、帰り道毎日見るから、間違いないよ。
    あと、カイエンは、イケメンさんちの反対方向に走ってった」





男「……………」

女友2「…あの子さ、好きになる相手、顔はどうでもいいみたい。
    あの子がイケメンさんの事好きになったのって、自分より何もかもが上だからだよ。
    得意分野の英語だって、イケメンさんの方が上でしょ。
    あと、アタシらと同い年だけど、イケメンさんなんでも知ってるし、
    包容力があって、なんでも話してしまいそうになる」

男「そう、だな。男の俺もそうだ」

女友2「あんたと別れて、あの子と、話した。
    あの子、あんたの事…悔しいけど、本当に好きだと思う。
    イケメンさんの事も、あの子、吹っ切ってると思う。
    でも、あの子がイケメンさんに向ける気持ちは、愛情だけじゃないって事を
    あんたは知っとくべきだと思う」

つまり、なんだ。

男「アイツって意外に友達少ないよな」

女友2「そうだね。アタシとは、もうあんまり顔合わせないけど」

男「じゃあアイツは、俺と喧嘩したら…」





あの人に、相談に乗ってもらうかもしれないって事か。








女友2「まだ決まったわけじゃないよ。
    でも、我ながら悪くない読みだと思う」

男「…なんだよ」

カイエンなんて、そうそう走ってる車じゃない。
コンビニはタワーマンションの前にあるし、
あの人が深夜に車を走らせる事なんて、女絡みだけだ。

女友2「あんたがどうするのかは、自由だけど。
    言わないでおこうと思ったけど…
    たまには意地悪、言わせて」

男「…お前って、嘘つくタイプじゃないしな」

女友2「嘘は嫌いだから。
    あんたは、嘘つきだけど」

男「まちがいねー…」




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夏休みは、バイトをして過ごした。
まわり数人からカテキョの契約を何件か譲ってもらい、
スケジュールを合わせて毎日仕事をした。
人に物を教えるのは、昔から得意だった。

1ヶ月が経ち、女が帰ってきた。
土産は、トリーバーチのウォレットと、免税店で買ったというタグホイヤーだった。
あと、テンガロンハットとか、SFMoMAのグッズとか。
色々もらったから、バイトで貯めた金で、カルティエのペアリングをあげた。
気が早すぎる、と笑ったが、嬉しいと泣いてくれた。

ペアリングという行動はかなり陳腐なものだと思う。
しかし陳腐でも、恋人が自分と同じものを身につけるというのは、それだけで愛が深まる気もする。
そう言ったら、あなたってやっぱりロマンチストね、と笑われた。


薬指のサイズはあの人に聞いた、というのは黙っておいた。








3日後の夜、女が泊まりにきた。
ドレッサーで、化粧水の裏に置かれた指輪を見つけたと彼女が言う。
女友2にあげた指輪だった。
泊めただろう、と詰られた。
浮気したら死ぬって言ったじゃない、と。


必死で弁解した。
必死で引き止めた。
でも彼女は、また深夜に飛び出して行ってしまった。


必死で追いかけたがエレベーターを止められなかった。


タクシーに乗り込む彼女がどこに行くのか、


なんとなくわかる気がした。




ここまでしか書けませんでした。
本当にごめんなさい。
続きはまた明日。

スレを開き直したら、思っていたよりレスがついていて驚きました。
励みになります。
ありがとうございます。

20時ごろから投下します。
色々レスありがとうございます。



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『おーい!あのさ、うちら、○○ってサークルなんだけど…』

『学部は?マジで?一緒じゃん!
 あのさ、要はこれ勧誘なんだけど、
 会費はイベント毎でいいし、アドレスだけ教えてくれたら
 イベントの誘い送るし、新歓は無料でいいぞ!』

『俺、国○経○学科のイケメン、よろしく!
 新歓で待ってるわ!』




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『おう、男君じゃん!
 来てくれたんだな!』

『そりゃ名前覚えるよ、印象的だったからな』

『今日はうちの大学だけだけど、元はインカレだからさ
 他大学の人脈も増やせるしいかがわしい遊びもしてねーから、
 安心して楽しんでけよ、な!』



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『お前現役だろ?一応、未成年は酒は禁止な、わりいな』

『二次会はカラオケ移動するけど来るか?いける?』

『オッケじゃあ名前追加しとくから、楽しんでけよ!
 そういやあの子可愛くね?女友1って名前だっけ…
 高校同期?まじかよお前が誘ったの?彼女か?違う?そっかそっか!』

『うち可愛い子多いだろ?
 俺が去年から頑張ってんだよ、まぁ、浮いた話は程々にしてほしいけどな、はは』

『じゃ、また後でな!』





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『……………おう、女友1ちゃん!来てくれたんだな!そりゃ覚えてるよ、可愛いなーって、ははは……………』





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『バカ!!今年19だって言っとけばいいじゃん!』

『…どうせすぐバレるんじゃん』

『ほらー!肉体年齢は一緒だよ?
 1年間ニートしてたの。えへへー』

『男くん、だっけ?よろしくね?
 私ここ、高校生の時から来てるの。
 イケメンさんが高校の先輩でさ』

『赤外線ある?

 …えへへー。いつでも連絡してね』




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第一印象は、信頼できそうな先輩だった。
2回生ながらスタッフを任され、
人脈も広く、テニス部のエースで、成績も優秀だそうだ。
新入生があの人と話しているところをよく見た。
一人になった新入生を目ざとく見つけてるんだろう。

あの人に引き合わされた元カノと仲良くなって、二次会のカラオケの途中で二人でフケた。
割に可愛い子だった。
その事で、あの人が女性関係に誠実なタイプだと勘違いしてしまった。

後に、あの人は元カノに興味が無いだけだった事を思い知る。

要は女なら誰でもいいわけだ。
特定の個人である必要はなく、
あの人にとっては必要な時その都度用意できる便利グッズのようなもので、
アフターケアも万全。
女性側にも遺恨を残さないし、
彼氏持ちには手を付けない。

もちろん、女もその一人なんだろう。





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自分には、特に苦手分野がなかった。
飛び抜けて得意な事もないが、だいたいの事はそつなくこなせたし、
ろくに鍛錬を積まなくても、特に困らない程度の才能はあった。
これといって飛び抜けた教科もなかったので文理選択もどちらでも良かった。
飛び抜けた成績ではないのでほどほどの大学に進学した。

何かで人より劣っていても、他の分野で代用が効く事が多々あった。
代わりはいくらでもあると思っていた。
だから要領よく生きてきたつもりだし、
このまま要領よく生きていけると思っていた。

…あの人には、何も、勝てなかった。
実力を思い知った。
なにかにプライドを懸けた事がなかった俺は
どう立ち向かえばいいのかわからなかった。


あろうことか顔立ちまでよく似ている。
あの人が列の先頭だとしたら、俺は上位3割くらい、と友に言われた。


…知る度に心に澱が溜まる。
俺は、あの人の出来損ないだ。

酒に逃げる癖がついたのはそれから。

今でもその事気付いてないけど。





――――――――――――――――
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――――――


...prrrrrrr...............



イケメン『おう、珍しいな。どうしたこんな時間に』

男「…いえ。ちょっと、参ってまして」

イケメン『ははは、ほんとに珍しいな。
     今週末から暇になるから、飯でもどーだ?』

男「お疲れ様です。
  どうでした?感触」

イケメン『んーやっぱ、学生にはわからんもんだな。
     ちょこちょこついて回るのが限界だわ』

男「いやいや、イケメンさんならどーせ即戦力でしょう」

イケメン『本当、今日はどうしたんだよ。
     よく言われるけど、お前に言われるとは思わなかったな』

男「……………」

イケメン『わかってるよ。俺に聞きたい事、あんだろ。
     俺のインターンの話題なんて、お前、興味ないだろ。
     探ってんじゃねえよ。言ってみろ』

男「………なら、わかってる、はずだ」






イケメン『居るぞ。代わるか?』

『―――――!?!?!!――――!!――――!!!!』

男「…………ぁっ……」

イケメン『言っとくが、なんもしてねーぞ』

男「…すいません。喧嘩売ってる、つもりないです。
  そっち、今から行っていいすか?」

イケメン『あー』








イケメン『駄目だ』








男「なんでですか。
  寝るつもり、ないでしょ」

イケメン『今は、お前ら会わせらんねーよ』

男「…そんなっ、ことっ!!
  あんたに、関係、ないはずだ」

イケメン『おい。生意気言ってんじゃねぇぞ』

男「……………すいません」

イケメン『お前らは、話すべきだけど、落ち着いてからでいーだろ。
     とにかく今日はうち、泊めるから』

男「……俺はっっっっっ!!!!!!!!!」

男「…これ以上、女を、あんたのところにやりたくない」

イケメン『なんでだよ。先輩の言う事、信じろ』

男「信じられっ、…いえ。すいません。
  でも、イケメンさんちに泊めるのは、やめてください。
  金なら俺、払いますから。ホテルかどっかに…」

イケメン『お前に指図される謂れねーよ。
     じゃあそうするったって、お前信じねーだろ。
     徒労じゃん』

男「…なら、迎えに行きます」

イケメン『お前ら今会ったら別れるって。
     俺、お前らに別れてほしくねーんだ』

男「どの口がっっっっっ!!!!!!そんな事を!!!!!!!!!!」

イケメン『いい加減にしろ。[ピーーー]ぞ』

男「………」

イケメン『お前はいい後輩だよ。
     血が登っても頭のどっかが冷静だ。
     とにかく今日はもう寝ろ、お前ならできんだろ。
     女、手、出さねえから。信じろ』

男「だからっ、、それがっっっ…」





結局、あの人に言い負かされた。
明日中に女から連絡が来る、という約束までもらった。
あの人の世話になるのは腹が立つ。

…あの人は、女に手を出さないと言った。

不思議と、信じられる気がした。
根拠はない。
あの人が、本当に、俺達二人を考えてくれている事は、わかる。
手癖の悪さとは裏腹に、あの人は信頼できる人だ。






…でも。


それも、絶対じゃない。






女「…………ひどいよ。男に、バラすとか」

イケメン「前からそういう約束だっただろ。
     アイツが気付いたら、正直に話すって」

女「でも、でもっ」

イケメン「アイツ、頭いーよ。
     うちじゃ一番にな」

女「………足の速い蟻が居ても、私はどうでもいいと思う。
  本当は私は蟻だから、他の蟻の働きぶりが気になるけど」

イケメン「意味わかんねーわ」

女「…わかってるでしょ。そういうところ、ほんと嫌い」

イケメン「わかんねーよ。
     お前、アイツが本気で浮気したと思ってんの?」

女「…心に体が伴わないって事、あるでしょ。
  あなたにそう、教えられたわ」

イケメン「俺が欲しくないもん、くれようとしてもな。
     ま、いいよ。
     やることやって、寝るか」

女「…エッチはしないから」

イケメン「バカ、勘違いしてんじゃねぇ。
     …もしもし?今大丈夫か?」






――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

..pr.

女友2『はい』

男「…出るの、早いな」

女友2『ちょうど電話してたから』

男「そっか。悪いな」

女友2『ううん、切ったところだよ。
    指輪の事でしょ?』

男「そう、だけど。謝ろうと思って」

女友2『それは…ずるい、よ』

男「ごめん」

女友2『なんで謝る、の。
    意味わかんない』

男「それでもごめん」

女友2『…………やだ』





男「ごめん」

女友2『許さない。絶対許さない。
    アタシがどれだけ傷ついたか。
    …ケチのついた関係の癖に。
    ケチの、ついた、関係の癖に!
    幸せそうにして!!!』

男「ごめん」

女友2『なんなの!?!?!?
    お酒に逃げたいのは、アタシだよ!!!
    女ってだけで、あの子の代わりにしやがって!!
    ダッチワイフでも抱いてろよ!!!!!』





男「ほんとに、ごめん」

女友2『アタシと付き合った理由だってわかってるし!!!!
    女と離れたくなかったからでしょ!!!!!
    アタシが女と仲よかったからでしょ!!!!!!!!』

男「実は、そうだ」

女友2『馬鹿にしてんじゃねぇ!!!
    わかってた!!!
    手も繋いでくれないし!!!!!
    一度も手出してくれなかった!!!!』

男「ごめん、そういう風に、見れなかった」

女友2『あんた寝言で女って言ったよ!!!!
    どこでだって、あんた女を、目で追ってた!!!!
    連絡だっていっつもアタシから!!!
    買い物してても、雑誌読んでても、テレビ見てても、
    アタシより女に似合いそうなものばっかりチェックして!!!!』

男「…そうだったのか。ごめん」

女友2『ふざけんなよ!!!女なんかより!!!』

女友2『あんたのこと!!!!』








女友2『ずっとずっと、大好きだったのに!!!!!』






男「……ありがとう」









女友2『ぐす、ひぐっ…』

男「ごめん」

女友2『…一緒に、いたかった、よぉ…』

男「………ごめん」

女友2『…………』

男「…………」

女友2『…イケメンさんからね』

男「…ああ」

女友2『電話、きた。
    女に話したよ。
    どうしても、許せなくて。
    魔が差して指輪置いちゃった。

    …あんたたちの関係、壊すつもりなかった。
    男が見つければ、いいことだったし。
    ほんとにそうなるなんて思ってなかった』

男「……………俺の、せいだよ」

女友2『…バカ。
    ほんとに、駄目な人』






男「…ごめん」

女友2『これでわかったんじゃない。
    あのね、本当のあの子は、浮気、許せない子だから。
    イケメンさんと関係があった時、あの子、
    自己嫌悪で死にそうだったんだから。
    今のあんたなんかより、ずっと』

男「もっと早く知りたかったよ」

女友2『甘えてんなよ。
    …それでもあの子が、イケメンさんのところに行くのは。
    あんたが、あの人と似てるから。
    本当はあんたから欲しい言葉を、あの人からかけてもらえるから。
    でも仕方ないなんて思わないで。
    あの子が悪いんだから。
    あの子が自己嫌悪で潰れそうだった時、
    あんたが側にいた。
    それはただの偶然だけど、あの子が選んだあんたとあの人が似てるのは偶然じゃない。
    あんたはあの子を許さなくていいけど、
    あの人が必要なくなるように、あんたが頑張ればいいの』

男「…俺、あいつの事、信じるつもりだ。
  あいつが、俺を信じてくれるかは、わからないけど」

女友2『…ほんと、バカ。
    それが、わからないから、みんな辛いんだから―――――』





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―――――――――――
――――――

夢を、見たと思う。
人の姿をした蟻の夢。
人は、同じ姿をした蟻を愛でた。
人は、一人だった。
蟻は人の心も、蟻の心も理解した。
人になりたかった蟻は、人を憎んだ。
気付かずに蟻を踏みつぶす人を憎んだ。


でも蟻は結局蟻のままなわけで。
人になりたくてもなれない、人に似た手足があるだけちょっとだけ優秀な蟻は、
やっぱり蟻と結婚しましたとさ―――――――




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――――――

女「…ごめんね。ただいま――――」




終わりです。

ありがとうございました。

20レスくらいに1日かかった。

疲れた。


底辺サークルの現実って意味でリアルな感じがするSSだったよ

俺も内部でヤリチンが女食い荒らしたせいで内部崩壊したサークルとか、逆にヤリマンが男食い荒らして内部崩壊したサークルとかいくつか知ってるわ

まともなサークルとかだと見境なく手を出したら総スカン食らうんだけど
手を出しても大した問題にならないとことか目ざとく見つけ出すからなあいつら

彼女いるの分かっててイケメンと寝てたのに
いまさら浮気嫌いとか言われても全く説得力無いんだよなぁ
良心の呵責()

>>142
底辺が純愛を夢見たら、って感じで書きました。
女食い荒らしても責められないヤリチンは本当に居る。

>>143
障子、一箇所破れたら、後はどうでもよくなるのと一緒です。
そうしてビッチが出来上がる。
「女」はそうなりそびれたって事でどうかひとつ。

胡散臭い飲みサーとかインカレって始めから女漁るために入る奴とか腐るほどいるからな
大学生の負の側面に踏み込んでる感じで面白かったよ

良かったよ おつかれ


内容が面白かったかどうかはさておき、ありそうな話だな

わぁ、またレスついてる。

>>145

色々問題になるインカレサークルですが、
あんなのたまたま失敗しただけですね。
大学生活の裏側に潜む爛れた世界の氷山の一角です。

>>146

本当にありがとうございました。

>>147

ありそうなのは、>>1の実体験を元に、ジュブナイルっぽくアレンジしてあるからです。
原型ないけどね。


放置するつもりでしたが我慢しきれず検索かけてしまいました。
初めてSS書いたんですが、感想を寄せられると嬉しいもんですね。
胸糞悪くなってもらえるとより嬉しいです。

また書くとしたら今度はいい話にしようと思います。
ありがとうございました。

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