北条加蓮「菜々ちゃん、ちょっと学校の宿題を教えてよ」 (115)

――事務所――

安部菜々「ただいうっさみーん♪」

北条加蓮「あ、おかえり菜々ちゃん。そうだ、ちょうどいいタイミングっ」

菜々「ほほう。ナナになにか用でも?」

加蓮「うん。今ちょうど学校の宿題をやっててさ。なんか難しいんだよねー、これ。手伝ってくれない?」

菜々「え゛?」


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加蓮「長期ロケで学校を空けてたせいかな。勉強が急に難しくなってね。宿題を出さないと先生がうるさくてさー」

菜々「た、大変ですよね! 宿題は大切ですからね!」

加蓮「モバP(以下「P」)さんに教えてって頼んでも、学校の宿題は自分でしろって言うんだよ? ひどいと思わない?」

菜々「そ、それはひどいですねぇ、アハハ」

加蓮「ってことで、教えてくれない?」

菜々「え、ええーっと……その、それはちょっと困るっていうか、…………高校の内容とかもう覚えていないっていうか(ボソッ)」

加蓮「……あっ。分かった!」

菜々「(ぎくっ!)」

加蓮「そっか。菜々ちゃんも実は宿題に困ってたんだね」ニヤニヤ

菜々「……………………」

菜々「そ、そうなんですよぉ~。やっぱりアイドルやってると、ね? 疎かになってしまうっていうか……」

加蓮「ふふっ。ダメだよ菜々ちゃん。学生だったら、最低限、赤点くらいは回避できてないと。Pさんに叱られちゃうよ?」

菜々「そ、そうですね、アハハハ……」

加蓮「親もうるさいしさぁ。あ、でもうちは成績が多少悪くてもアイドルやめろとか言わないだけマシなのかな?」

加蓮「……たぶん、言っても無駄だって思われてるんだろうけど」

菜々「加蓮ちゃんのアイドルにかける情熱は、きっと親御さんも分かってるんだと思いますよ!」

加蓮「だといいけどね。でも菜々ちゃんでダメならどうしよっかな……凛も奈緒も今日はいないし、宿題、明日までなんだよね……」

高森藍子「こんにちはっ♪」


加蓮「ん、藍子。こんにちは」

菜々「こんにちうっさみーん♪ 藍子ちゃん、それお土産ですか?」

藍子「はいっ。街外れに静かな森カフェがあって、そこのロールケーキがすっごく美味しくて!」

菜々「いいですね! みんなで食べちゃいましょう!」

藍子「はいっ」

加蓮「ねえねえ藍子。ちょっといい?」

藍子「……?」

加蓮「えっとさ、宿題が難しくて。教えてくれない?」

藍子「いいですけど、私もそんなに上手くは――」

加蓮「菜々ちゃんは役に立たないっぽいし、Pさんは薄情だし、凛も奈緒もいないし、もう藍子しか頼れる人がいないんだ」

加蓮「……? え、なんかおかしいとこあった?」

藍子「え、だって、菜々さんって……」チラッ

菜々「あ、あは、あはははは……」

加蓮「変な藍子」クスッ


加蓮「同じ高校生なんだから、教えてって頼んでもいいじゃん」


藍子「………………………………え?」

1行抜かしていました……失礼。

>>7 の最後に、

藍子「あはは…………え? 菜々さん?」

を入れてくださいませ。

加蓮「あ、分かった。藍子も宿題は自分でやらないと意味がないって言うんだ。いーよいーよ、1人で唸ってるもん」

藍子「………………えっと、あの、加蓮ちゃん……?」

加蓮「たまにちらちらって見て罪悪感を傷めつけてやるんだっ」ノートヒラキ

藍子「…………え、ええ?」

加蓮「はぁ……いっそ答えでもつけてくれればいいのになぁ……」カキカキ

加蓮「めんどくさーい……」


こそこそ・・・

藍子(あ、あのっ、菜々さん。もしかして、加蓮ちゃんって)

菜々(…………み、みたいですねぇ)アハハ

藍子(……なんだか、すごく意外ですっ)

菜々(正直、ナナもびっくりしてますよ。とうの昔に見抜かれてるものかと)

藍子(どうするんですか?)

菜々(え、ええと……お口チャックの方向で!)シーッ

藍子(はいっ)シーッ

加蓮「……ん? どしたの藍子。なんか私の頭についてる?」

藍子「いいえ。宿題、見せてください。私に分かるところがあったら教えますから♪」

加蓮「お、ラッキー♪ 今度、お礼にポテトでも奢るね」

藍子「お礼なんていいですよ。あっ、それなら今度、一緒にカフェに行きませんか? 最近、静かで落ち着くカフェを見つけたんです!」

加蓮「また見つけたんだ。藍子はもうカフェマスターだね」

藍子「ふふっ♪」

加蓮「しょうがない、ちょっと財布を軽くしちゃおっかな。そうだ、菜々ちゃんも一緒にどう? たまには女子会なんて」

菜々「い、いいですねぇ!」

藍子(女"子"会……? ……いっ、いえいえっ)ブンブンッ

加蓮「そういえば菜々ちゃんの制服姿とかって見たことないなぁ」

菜々(ぎくっ!)

加蓮「学校帰りにみんなでカフェに行くとか、ちょっぴり憧れてたんだ……ほら、アイドルが忙しいから、クラスメイトとはどうしても時間が合わなくて」

藍子「い、いいですね……」アハハ

菜々「そ、そうですね!」アハハ

加蓮「っと、今はそれより宿題だ。藍子、教えて教えて」

藍子「あ、はいっ。えっと、この問題はたぶんこの公式を使って――」

加蓮「あー、それかー。この前に習ったばっかりのヤツだ……お、解けた!」

藍子「やりましたねっ」

加蓮「ふふっ。そうだ、菜々ちゃんも藍子に教えてもらったら? 勉強、苦手なんでしょ」

菜々「え゛」

藍子「……えと……」

加蓮「って、あ、無理か」

菜々(ぎくっ!)

加蓮「菜々ちゃんは17歳だから高校2年か3年だよね。1年の藍子じゃ難しっか」

菜々「ほっ……」

加蓮「そういえば菜々ちゃんって何年生なの? 聞いたことなかったな」

菜々「ぎくっ!」

藍子「あ、あの、加蓮ちゃん……」

加蓮「もしかして3年生? あっ、でもどっちにしても私から見たら先輩か。菜々先輩って呼んだ方がいい? 今までずっとちゃん付けしちゃってたけど」

菜々「な、ナナはそういう上下関係とかはそんなにこだわっていないので、今まで通りでいいですよ?」

加蓮「そっか。よかった。こんなに話せる学生仲間って、なんだかいいよねっ」ニコッ

加蓮「ほら、私って……その、昔から入院と退院を繰り返してばっかりだから、学校でなかなか友達ができなくて……」

加蓮「でも今は、こうして藍子がいて、菜々ちゃんがいる。私、すっごく幸せだよっ!」パアーッ

菜々「はうっ」グサッ

藍子「そ、そうですね、ヨカッタデスネ……」ヒキツリエガオ

加蓮「……? 2人ともどしたの?」

菜々「(どうしましょう藍子ちゃん、ナナ今めちゃくちゃ胸が痛いんですけど!)」

藍子「(……胸……?)」

菜々「(ギャアア! こっちもこっちでマズイことになってるーっ!)」アワワ

加蓮「あ……そっか。そういうことか」

菜々「!」

加蓮「ふふっ。ごめんね。暗い話をしちゃって。こんなこと言われたら困っちゃうよね」

菜々「い……いや、その……」

藍子「か、加蓮ちゃんがお話ししたいなら、私はいつだって聞きますからっ」

加蓮「ありがと、藍子。で、結局、菜々ちゃんって何年生? もし3年生ってなったら受験とかあるよね。大学進学したりするのかな」

菜々「え、ええとですね、それは」

加蓮「大学生の菜々ちゃんかー。あはっ、なんだか菜々ちゃんって感じがしないね。菜々さんって感じ」

菜々(そりゃそうでしょうねぇ!)

藍子「……あ、あはは、ほら、加蓮ちゃん。菜々さんはウサミン星に住んでいるんですから、地球の高校とは違うんですよ♪」

菜々(ナイスです藍子ちゃん!)

加蓮「………………」

加蓮「………………いや、あの、藍子?」

加蓮「確かに私は藍子よりちょおっと世間知らずかもしれないっていうか、子供の時にやる遊びをやってないかもしれないけどさ」

加蓮「菜々ちゃんのウサミン星っていうのがネタなのは、その……いくら私でも分かるよ……?」

菜々「え゛」

藍子「え!?」

加蓮「あーっ、何その意外な顔!? 菜々ちゃんの出身地はホントにウサミン星です、なんて、それを私が信じてたとでも思ってるの!?」

藍子「え、え!?」

加蓮「ひっどいなぁ……。あ、でも安心してね。クリスマスメモリーズでLIVEする時なんかは、ちゃんとそういう設定でやり通すから」ニコッ

菜々「は、はぁ、ありがとうございます加蓮ちゃん……」

加蓮「これでも演技には自信があるんだ」

藍子「…………(あの、これ、どういうことでしょうか)」チラッ

菜々「…………(そんなのナナが知りたいですよぉ!)」ウガー!

藍子「…………(演技に自信があるって言ってるのに、菜々さんの、その……それ……には気付いていない、の……?)」ハテ?

菜々「…………(ま、まあ、加蓮ちゃんだって完璧じゃありませんし)」ニガワライ

加蓮「ねえ藍子。この問題はどうやって解くの?」

藍子「あ、はい! ええと、この問題は――」


藍子(……まあ、これでいい、のかな……?)



ひとまずはここまで。また本日中に再開する予定です。

再開します。

<メイドカフェ編>


――街中――

北条加蓮「それでその時に凛がね――」

高森藍子「あはっ。凛ちゃんはいつもカッコイイですね――」

加蓮「私だってかっこよさじゃ負けてないんだけどなぁ。あ、でもどっちかっていうと今は可愛い衣装の方がいいかも」

藍子「加蓮ちゃんなら、似合う衣装をすぐに見つけられますよ♪」

加蓮「そうかな。これでも悩む方なんだ……可愛さって言えばキュートグループだよね。卯月……は、まあ相談相手としては頼りにならないか」

藍子「卯月ちゃんも、未央ちゃんや美嘉ちゃんからいろいろ教えてもらってますよね」

加蓮「他にキュートグループって言えば……あっ、そうだ、菜々ちゃんがいるね」

藍子「菜々さんは――」

加蓮「って、菜々ちゃんはメイド服が多いなぁ。ああいうのって聞いたらメイド服ばっかり薦めてくるのかな。ほら、いつかのメガネ部みたいな」

藍子「め、メガネ部って……」

加蓮「や、さすがにメガキチって言うのはちょっと気が引けた」

藍子「あはは……あっ、見てください加蓮ちゃん。あんなところにメイドさんがいますよっ」

加蓮「ホントだ。最近はこういう街でも見かけるようになったよね」

藍子「最近、よくテレビで見ますよね。こういう……オタクっぽいの? とか」

加蓮「藍子もやってみたら? アイドルじゃん」

藍子「私は……あはは、ちょっぴり恥ずかしいかも」

加蓮「えー」

藍子「……あれ?」

加蓮「ん、メイドやるきっかけを思い出した?」

藍子「違いますよっ。あのメイドさんって、菜々さんじゃないですか?」

加蓮「え?」


安部菜々「みみみん、みみみん、う~さみんっ♪ みみみん、みみみん――」


加蓮「あ、菜々ちゃんだ」

藍子「メルヘンデビューを口ずさんでますね……」

加蓮「街中でメルヘンデビューを口ずさむメイドさん……」

藍子「菜々さんですねっ。おーいっ、菜々さーんっ!」

菜々「ミミンっ!? おおっと、加蓮ちゃんに藍子ちゃん! 奇遇ですねぇ」

加蓮「ふふっ、こんにちは、菜々ちゃん。メイド服で何してるの? 営業?」

菜々「いやあ、昔お世話になっていたメイド喫茶からちょっとヘルプを頼まれちゃいまして」

藍子「あ、ちょっ――」

加蓮「昔……?」

菜々「アイドルを目指して早何十年、しかし現実はそう甘くはありません……やっぱりお金は必要ですから」

菜々「そんな時、あのメイドカフェにはどれほど世話になったか」

藍子「わっ、わっ……」

加蓮「……??」

菜々「――ハッ!」

菜々「い、いやあ、その、ええと……」

加蓮「あ、そっか……」

菜々「その、これはですね!?」

加蓮「菜々ちゃんも、ちいさい頃からアイドルを目指してたんだね。ふふっ、私とおんなじだ」

菜々「……え」

藍子「へ?」

加蓮「あ、でも私は努力とか下積みとか大っ嫌いだったから、菜々ちゃんみたいに頑張ってきたって胸は張れないけどね」

藍子「胸……じゃなくて、ええと、加蓮ちゃん?」

加蓮「そうだ。菜々ちゃん、そのメイドカフェに連れてってよ」

菜々「い、いやあ、その、ナナは」

加蓮「ねっ? お願い!」

菜々「……わ、分かりましたよもうっ!」

――メイドカフェ――

『お帰りなさいませ、お嬢様っ!』

加蓮「わー……ホントにテレビの通りだ」

藍子「私、メイドカフェって初めて来ました……」

加蓮「私もだよ。わっ、同じメイドでも服がちょっと違うんだね。あっちのメイドさん、可愛い~」

菜々「そこを見抜くとはさすが加蓮ちゃんですね! ととっ、ナナは準備をしてきますので!」ササッ

加蓮「頑張ってね~」

加蓮「そっか。ここが菜々ちゃんがずっとお世話になってたメイドカフェか……うん、なんだかいい場所みたいに見えてきたっ」

藍子「え、ええと、加蓮ちゃん? あの、何か疑問に思ったりはしないんですか?」

加蓮「ん? 何が?」

藍子「だってその……じ、17歳なのに"昔から"って、ほら……」

加蓮「……? 昔からやってるんでしょ。凄いことじゃん」

加蓮「私なんてアルバイトもやったことないし、アイドルに憧れてたって言っても、何かやりだしたのってPさんに拾ってもらってからなんだよね」

加蓮「菜々ちゃんを見てると、なんだか自分が恥ずかしくなってくるよ」

藍子「あ、そういう感じでいくんですね……」

加蓮「それとも何? 藍子、そうやって私を落ち込ませたかった?」

藍子「え、や、ちっ、違います違いますっ」

加蓮「ふふっ」

菜々「お待たせしましたっ、加蓮ちゃん、藍子ちゃん! ナナ特製のオムレツですよ!」

加蓮「お、ありが……って、私ら注文してないよ?」

菜々「いやあ、おふたりにはいつも世話になってますからね!」

加蓮「……あ、分かった。最初にサービスをさせておいて常連客を作ろうって魂胆だね」

菜々「なんでそんなひねくれたこと言うんですかね!?」

藍子(……そんな風に先読みっぽく考えられるのに、菜々さんのアレには気がついていないんですよね……)アハハ

加蓮「ふふん。甘い、甘いよ菜々ちゃん。私とてグルメロケなんてもう両手両足じゃ足りないくらいやってるんだよ、たかがメイドカフェのオムレツくらいで、」

藍子「はいっ、加蓮ちゃん。あ~ん♪」

加蓮「んぐっ」

加蓮「……」モグモグ

加蓮「……」ゴクン

藍子「美味しいですか?」

加蓮「……藍子、今度から週一でここに通おう」

菜々「いつでもお待ちしてますよっ、ミミンっ♪」

加蓮「『ナナ特製』ってことは、これ、菜々ちゃんが作った物なんだ」

菜々「メイドカフェも長いですからね、やっぱり慣れる物なんですよ……ハッ!」

菜々「ま、まあ長いっていってもナナはJKですしそうです高校に入った頃からなんですけど!」

加蓮「……? そりゃ菜々ちゃんはJKでしょ。だって17歳だし」

菜々「……………………あ、はい、そうですね」

加蓮「ん~~~、おいしいっ。これだけ美味しいなら料理番組とかで優勝できちゃうんじゃない?」

菜々「そ、そうですねぇ、今度Pさんにお願いしてみましょうか、はい」

加蓮「こういう時に高校生って肩書が役に立つよね。ちょっとズルだけど、高校生ってだけで見られ方が変わるもん」

菜々「で、ですねぇ…………アハハ……………………」

加蓮「私は逆にそういうのが嫌なんだけどね。ほら、子供ってだけで気遣われるのはちょっと」

加蓮「っと……ん? 何ぽかんとしてんの? 藍子も食べたら? ほら、あーんっ」

藍子「あ、あーんっ……」

藍子「あ、ホントに美味しい……! 私の分も、注文しちゃおっかな……」

菜々「そんなに喜んでもらえるとは……ナナ感激ですよ! 何年もメイドカフェに努めていた甲斐もあったって物です!」

加蓮「え? 何年も?」

菜々「あっ!」

藍子「な、菜々さん……」

加蓮「もしかして……」

菜々「」ビクッ

加蓮「中学生の頃からいたとか?」

藍子「え」

加蓮「それとも小学生? うわっ、なんかちょっぴり犯罪っぽく……って、小学生のアイドルもたくさんいるっけ」

菜々「おお、同じみたいな物でしょ? その、実はここの店長はナナの親戚の方でして昔から良くしてもらってて」

加蓮「そういえばアイドルになる前にお世話になってたって言ってたね。ふふっ、菜々ちゃんはいい人に恵まれてるんだ」

菜々「で、ですねぇ~。ここの店長とか、Pさんとか、世話になった方はもういっぱいですよ」

加蓮「ん~? 菜々ちゃん、誰かさんのことを忘れてないかな?」

菜々「キャハっ☆ これはナナとしたことが。加蓮ちゃんに藍子ちゃんと出会えたことも、ナナとっても嬉しいですよ! この歳になってこんなに仲良くなれる子ができるとは――」

加蓮「この歳……?」

菜々「げえっ!」

藍子(……菜々さん、もうわざとやっていませんか?)

加蓮「あー……あれかな。私ら――」

菜々「……!」ビクッ

加蓮「どうもずっとこの事務所にいて、感覚が麻痺ってるのかな。周りから見たら私もイロモノ?」

菜々「ほっ……ってそれどういうことですかね!? ナナがイロモノとでも?」

加蓮「……いや、ウサミン星から来たって時点で電波って思われてもおかしくないと思うんだけど」

菜々「そ、それは、ええと……」

藍子(……"永遠の"17歳はいいんですね、加蓮ちゃん……あっ、オムレツおいしい♪)

<アサヒでスーパーなドライ編>



――事務所の食堂――

北条加蓮「お腹すいた~。何かある、かな……」

安部菜々「…………」

加蓮「…………」

菜々「…………」

< テーブルの上にずらっと並ぶアサヒでスーパーでドライな350ml

加蓮「え……? これって……お酒?」

菜々「……………………」アセダラダラ

加蓮「…………」

菜々「…………」

菜々(な、なんでですか、なんでですか!? 今日はもう誰も戻ってこないってPさんが! あの生温かい視線を我慢して、外で問題を起こす大人組が多いからしばらく外で飲むなと言われ、耐え難きを耐え、やっとありつけたというのに!)

加蓮「菜々ちゃん」

菜々「!」ビクッ

加蓮「……菜々ちゃんがそんな人だとは思わなかったな」

菜々「う、ぅ…………」

加蓮「そっか。ううん、私はあんまりうるさく言うつもりはないけど……ちょっと、がっかりしたかも」

菜々「う、う、ぐ……!」

加蓮「もう――」


加蓮「お酒はハタチを過ぎてから、だよ?」


菜々「」ガクーン

加蓮「あ、これ、お父さんがよく飲んでるヤツだ。こっそり一口だけもらったんだけど、さすがにキツすぎたな。炭酸とは違うんだよねー」

菜々「」ヨロヨロ...

加蓮「うん……アイドルやってると、なんだか自分が大人っぽくなった気持ちになるよね」

加蓮「私もよくなるんだ。それに……自分を大人だって思ったら、それだけで……なんだか、Pさんとの距離が近づいた気がして」

加蓮「でも、やっぱり私は16歳なんだよね」

菜々(ナナは大人なんですけどね! 物理的に!)

加蓮「ふふっ。私、決めてるんだ。20歳になる誕生日にPさんとお酒を飲むんだ。そこで――」

加蓮「……ううんっ、なんでもないっ」

菜々(あと誕生日に何をするつもりなんですかねぇ!? なんでほっぺたを真っ赤っ赤にしてるんですかね!?)

加蓮「うーん……ねね、菜々ちゃん。えっと……あはは、その、一口だけ、いい?」

菜々「へ」

加蓮「一口だけでいいから!」

菜々「は、はあ………………大人としてはここは止めるべきなんでしょうねぇ(小声)」

加蓮「?」

菜々「い、いえっなんでも! あー、ゴホン。一口だけですよ? 子供が飲む物じゃないですからね」

加蓮「くすっ、変なの。菜々ちゃんだって17歳なのに」

菜々「うぐ」グサッ

加蓮「ん……げほっごほっ! う、う……やっぱり無理!」

菜々「あらら、こんなに噴きだしちゃって。慣れないうちは苦労しますよねー、ナナもハタチになった時に初めて呑んだ時にはつい吐き出しそうに」

加蓮「……ハタチになった時……?」

菜々「あっ」

加蓮「…………」

菜々「…………」

加蓮「…………」

菜々「…………って、お母さんが言っていたんですよ! それで、ほら、嘘だぁって思って呑んでみたら意外と美味しくてですね! ついハマってしまったっていうか……」

加蓮「……」

菜々「……で、です、ね……?」アセダラダラ

加蓮「そっか。あはっ、なんだか気持ちは分かるかも。大人って嘘つきばっかりだもんね」

加蓮「自分の都合の良いことばっかり押し付けて、子供の目ばっかり塞いで」

加蓮「もしかしたらお酒はハタチからなんていうのも、大人が押し付けてるルールなのかもね。自分たちで独占する為に」

菜々(なんなんですかねその考え方!?)

菜々(ナナが言うのもなんですがちょっと加蓮ちゃんのことが心配になってきましたよぉ!?)

加蓮「でもお酒は私には早いかな……。やっぱり、20歳になるまで待とっ」

菜々「そそ、そうですね、それがいいと思いますよ!」

加蓮「……自分は飲み慣れてるくせに」ボソッ

菜々「うぐ」

菜々「い、いやあ、大人でも飲み慣れていない人とかいますよ? ナナもよく一緒に行くんですけれど美優ちゃんなんかは見た目通りすぐ潰れてしまって――」

加蓮「え? 大人の人たちと一緒に行くの?」

菜々「あっ」

菜々「…………ってPさんが言ってました!」

加蓮「えー、なにそれ」

菜々(さすがに苦しかったですかね……!?)

加蓮「ずるーい。私も行きたいのに」

菜々(でっすよねー!)

加蓮「ぐぬぬ、4年かー……」

菜々「ま、まあまあ、子供は子供だからできることってあるんですよ、きっと、ね?」

加蓮「まあそうだけど……やっぱり私は子供扱いはされたくないな。人の倍は生きてる……なんて言うつもりはないけど、これでも精神年齢は同年代に負けてないつもりなんだよ?」

菜々「それはやっぱり、昔のことがあってですかね……?」

加蓮「うん。これだけは菜々ちゃんにも負けてない」

加蓮「私だったら、パートナーとしてPさんの隣に並べるって思ってるのに」

加蓮「……いつまで経っても子供扱いなんだよ。どうしたらいいんだろうね」

菜々「む、難しいですねぇ……」

菜々(言えない。Pさんにたまに呑みに誘われることなんて言えない……!)

菜々(ホントにPさんがヤバイ時に愚痴をよく聞いてあげてるとか言えない……!)

< ぐぅ~

菜々「え?」

加蓮「あ。……あはは、私、お腹が空いちゃってね……恥ずかしいな……ね、何か食べる物ある?」

菜々「冷蔵庫に作りおきのチャーハンがあったと思いますよ」

加蓮「食べていいのかな? ……ま、いっか♪ チャーハンチャーハン♪」

菜々「…………」

菜々「…………」チビチビ

菜々(む、胸がズキズキしてお酒の味が分からない……!)

<免許証編>



――事務所――

北条加蓮「~~~♪ ~~~~♪」

加蓮「Pさん遅いなぁ。ミーティングって言ったのあっちなのに」

加蓮「もー。大切な大切なアイドルを待たせるなんて許せないよねっ。何をねだってやろっか」

加蓮「ん……あれ、Pさんの机、うわっ、汚っ」

加蓮「ちゃんと整理すればいいのに………………何か面白い物ないかな」ウズウズ

加蓮「…………ん?」

< 免許証

加蓮「なにこれ? ……なんか、見たことがあるような、ないような……えっと、確かお母さんが……」

加蓮「あっ、そうだ、あれだ。免許証。ってここに書いてあるし」

加蓮「ここに置いてるってことはPさん歩いて出てるのか、な……?」

<免許証 名前「安部 菜々」

加蓮「…………うん?」

……。

…………。

安部菜々「ただいうっさみーん♪」

加蓮「あ、お帰り菜々ちゃん。Pさん見なかった?」

菜々「Pさんですか? うーん、見てませんねぇ。ウサミンレーダー的には、ビビっ、あっちにいるみたいですよ!」

加蓮「は、はあ……。菜々ちゃん。これ、忘れ物してたよ」

菜々「おおっとこれはこれは。ありがとうございます加蓮、ぢゃ?!」

つ免許証

菜々「……………………」アセダクダク

加蓮「ん? これ、菜々ちゃんのだよね? だってほらここに、安部菜々って」

菜々「……………………」アセダラダラ

加蓮「ぷぷっ……ちょ、ちょっと。住所が『千葉県』になってるよ?」

加蓮「もう、ウサミン星から来たって言いはるなら、こういうのはちゃんと隠さないと」

菜々「……………………ソウデスネ」タキミタイナアセ

加蓮「……あれ? 車の免許って18歳から取れるんじゃなかったっけ?」

菜々「……!!!」アセノミズタマリ

加蓮「菜々ちゃんって17歳だよね。あれ……?」

菜々「あ、あのぅ、それはですね、えーっと、アメリカが、じゃなくてウサミン星が」

加蓮「……??」

菜々「…………」

加蓮「…………」

菜々「…………あの――実は、ナナは、」

加蓮「あ。そういえば先生が言ってたっけ。免許を取ろうとする人が多くて、言い聞かせるのが大変だって」

菜々「ホントはにじゅ――へ?」

加蓮「3年生の話だったかな? でも2年生に悪い影響があるから注意するんだって言ってたよ」

菜々「へ、へぇ…………。加蓮ちゃんは、あー、よく、学校の? 先生と、お話を? なー、なんだか想像できませんねぇ」

加蓮「あのね、ほら、私ってアイドルやってて学校もたびたび空けがちになっちゃうから、どうしてもそんなに友達がいなくて――」

加蓮「変に気を遣ってくる先生がいるんだ。よく保健室で一緒にお昼ごはんを食べてる」

加蓮「ウザいけど、ま、Pさんの過保護よりマシだって思ったらね」

菜々「…………」

加蓮「…………きいてる?」

菜々「はっ。あ、ああ、Pさんですね! ナナもよく体を気遣われるんですよねぇ、年だからって――」

加蓮「年?」

菜々「ハッ! えーと、ほら、その、Pさんって過保護ですよねーっ!」

加蓮「過保護だよね、ホントに。もう体は大丈夫だって言ってるのに!」

加蓮「あ、そうだ。私、あんまり免許のこと知らないけど、17歳でも取る方法があるのかな?」

加蓮「なんか17歳の人が教習所に行くのがどうこうって、先生が言ってたし……なんだっけ、スケジュールがどうこうって」

菜々「へ、へえ、そうなんですかぁ……」


※教習所への入学は18歳の誕生日前(=17歳)でも可能ですが、仮免試験以降は18歳からです


加蓮「あれ? でも菜々さん、自動車の学校……教習所? だっけ。教習所になんて通ってたっけ? ってかそんな暇あったの?」

菜々「あー、えと、その」

菜々「(アイドルになる前に取った……とか、もうこれ言えませんよねぇ……)」

菜々「あー……ゴホン! 加蓮ちゃんはご存知ないかもしれませんけど、免許って実は教習所に通わなくても取れるんですよ!」

加蓮「え、そうなの?」

菜々「はい! 飛び入りとかってよく言うんですけど、警察官の人に同乗してもらって道路を走るんです」

菜々「これに合格したら、もうそれだけで免許が取れるんですよ!」


※当然ですが18歳以上で受験可能です


菜々(……まあメチャクチャ厳しいらしいですけど。ナナも1回やってみましたが落ちましたし)

加蓮「へぇー……そっか。それならアイドルの合間でも取れるね」

加蓮「……」

加蓮「…………いやいや待とうよ。菜々ちゃん、なんで普通に地球で免許取った話してんの? ウサミン星出身の設定はどこに行ったのよ」

菜々「ハッ!」

加蓮「もー……駄目だよ? 今は事務所だからいいけど……」

菜々(もう1つ隠し事をしてるんですがねぇっ!)

加蓮「でもなんで免許なんて持ってるの? 送り迎えならPさんがやってくれるのに」

菜々「そ、それはほら、Pさんの負担をちょっとでも……ですね」

加蓮「なにそれズルいっ。私だってPさんの役に立ちたいのに!」

菜々「まあまあ。加蓮ちゃんはまだまだ、Pさんに迷惑をかけるくらいがいいんですよ? 大人は子供に迷惑をかけられるのが仕事ですからね!」

加蓮「むぅ……なにそれ。菜々ちゃん、お母さんみたい」

菜々「」グサッ

加蓮「Pさん、よく車の運転しながら、この時間で他の仕事ができればいいのにってよく言うから……私が17歳になったら、私が運転してあげるんだっ」

加蓮「Pさんがもっと楽になるようにさ。あわよくば、その時間で私の仕事をもっと増やしてもらうとか……」

菜々「うああぁぁぁ……」

菜々(…………Pさんごめんなさい、誤解を解く役は任せます! ナナには無理です!)

高森藍子「こんにちはっ、加蓮ちゃん、菜々さん!」


菜々「あぁ、藍子ちゃん……」

藍子「……? なんだかお疲れですね、菜々さん……えっと、うっさみーん♪」

菜々「うっさみーん……」

藍子「……レッスン上がりですか?」

菜々「いぇ……まぁ……まだレッスンの方がマシだったっていうか……」

加蓮「あ、こんにちは、藍子。今日はお土産ないの?」

藍子「くすっ……ごめんなさい、今日は寄っていないんです。また今度、買ってきますね?」

加蓮「楽しみに待ってるね。そうだ、私からも何か持ってこよっかな」

藍子「……とか言って加蓮ちゃん、激辛ラーメンとか激辛肉まんとか持ってきますよね、いっつも……」

加蓮「? 美味しいじゃん」

藍子「私は辛いのより甘い方が……」

加蓮「ちぇ。辛いのとにらめっこする藍子が見たいのに」

藍子「私を困らせる為だったんですか……!?」

加蓮「ね、それより聞いてよ藍子。菜々ちゃんがやらかしたんだよ」

藍子「菜々さんが……? また、何か自爆しちゃったんですか?」

菜々「」グサッ

菜々(ええそうですね! ええ! でも藍子ちゃんもうちょっと言い方ってありませんかねぇ!?)

加蓮「自爆? ああ、ウサミン星の?」

藍子「………………はいっ、そうですね♪」

菜々(藍子ちゃんだってだいぶ演技の才能があるんじゃないですかね!?)

加蓮「まあ、自爆って言えば自爆なのかな?」

加蓮「これ、免許証」

藍子「ああ……………………免許証!?」

菜々「や、そのー、Pさんの机の上にあったそうで、アハハハ……」

藍子「ちょっ……そ、そんなことしたらさすがに加蓮ちゃんだってっ、」

加蓮「ここ見て。住所が『千葉県』だって。ぷくくっ……ウサミン星の出身なのに本籍が千葉県……ぷくくくっ」

藍子「…………………………………………」チラ

菜々「ええ、まあ、気持ちは分かりますけど」

加蓮「はい、菜々ちゃん」テワタシ

菜々「どうも……」

加蓮「この事務所にはウサミン星を信じている子もいっぱいいるんだからね? 気をつけなきゃ」

菜々「ソウデスネ、ハイ」

菜々(いやまあ確かに17歳ってことを信じてくれる人よりは少ないでしょうけどもぉ!)

加蓮「ん~~~」ノビ

加蓮「あ、そうだ。藍子、Pさん見てない? ミーティングの予定なのにどこほっつき歩いてんだろ……」

藍子「さ、さあ……」



ひとまずはここまで。あとはシリアスらしきエピローグを投下して終了となります。
30分~1時間ほどお待ちください。



それでは、再開しましょう。

――事務所 夜遅く――

安部菜々(もうそろそろ限界です)

菜々(胃が痛いです)

菜々(なんですかあの加蓮ちゃんは! なんでこう的確にナナをエグっていくんですかね!?)

菜々(もう我慢なりません)

菜々(こんなことは藍子ちゃんの1件だけで終わらせようと思ったのですが――)

菜々(ナナは今日――)


菜々(自分が大人だってことを、加蓮ちゃんに明かします!!)

<隠し事編>




菜々(ってことで今は事務所です。外はもうすっかり暗いですねぇ)

菜々(メールで加蓮ちゃんを呼び出しました。大切な話があると)

菜々(こういう時に顔文字絵文字もなく、理由を聞くこともなく、すぐ行くと返信してくれる加蓮ちゃんが、ナナは好きです)

菜々(だからこそ――)


菜々(もう嘘をつき続けるのは限界なんです!)

菜々(……それに、まあ、その? ナナも人間ですからね、いえウサミン星人ですが)

菜々(その、加蓮ちゃんがナナのことを"知って"くれれば)

菜々(もしナナがまたやらかした時に、強力な味方になるのではないかと)

菜々(ええ。加蓮ちゃんはナナの100倍は頭が回るでしょうし、演技力も凄まじいですからね)

菜々(そういう……打算的、というのでしょうか。そういう面もありますよ?)


菜々(でももちろん、最大の理由は「嘘をつくのが辛いから」ですからね!)

北条加蓮「ハァ、ハァ、お、お待たせ……っ。ごめんね、待たせた?」

菜々「いえいえ、それほど待って……って加蓮ちゃん!? まさか走って来たんですか!?」

加蓮「だって、大切な話だって……ゲホッ……ね? のんびり歩いてくる訳にいかないじゃん」

加蓮「お父さんもお母さんも出てたから、車、使えないし……」

菜々「そんなっ――ゲホゲホ言いながら走らなくても、ナナちょっとくらい待てましたよ!?」

加蓮「やだよ……もう。私がそんなに、ユニット仲間を軽く見る女だと思う?」

菜々「……!」

菜々(ええ。今になって後悔していますとも)

菜々(最初に言っておけばよかったと)


加蓮「それで……ご、ごめん、ちょっと座らせて」

菜々「ああっ、そうですね! どうぞどうぞ座ってください! あっ、今お水を持ってきますから!」タタッ

加蓮「気を遣わなくていーよー!」

菜々「ナナはメイドですからー!」タタッ

菜々「ととっ。はい、加蓮ちゃん」

加蓮「ありがと……ごくごく……それで、大切な話って何? アイドルに関係することだよね」

菜々「…………」

加蓮「ユニットのこと? LIVEのこと? …………もしかして、何かあった、とか……?」

菜々「……………………」

菜々「実はですね」

加蓮「うん」

菜々「ナナは――」




『そっか。よかった。こんなに話せる学生仲間って、なんだかいいよねっ』ニコッ

『ほら、私って……その、昔から入院と退院を繰り返してばっかりだから、学校でなかなか友達ができなくて……』

『でも今は、こうして藍子がいて、菜々ちゃんがいる。私、すっごく幸せだよっ!』パアーッ



菜々(…………)

加蓮「……菜々ちゃんは?」

菜々「――加蓮ちゃん。1つ、質問をしてもいいですか?」

加蓮「ん? うん、何?」

菜々「ナナは――ナナはある隠し事をしています。加蓮ちゃんに」

加蓮「うん」

菜々「話してないことがあるんです」

加蓮「うん」

菜々「いえ、加蓮ちゃんのことが嫌いだとか、仲間はずれにしたいだとか。決してそうじゃありませんよ?」

菜々「もしナナが、ナナの判断で、それを隠していたいって思ったとします」

菜々「加蓮ちゃんは、どう思いますか?」

加蓮「んー……」


菜々(……思うところはいろいろありますよ? ええ、いろいろありますとも)

菜々(ただ、断言させてください。断じて、自分が加蓮ちゃんに17歳と見られるのが嬉しいから、ではありません)

菜々(自分の為に、ではありません)

菜々(あんな笑顔を見てしまったら……思い出したら、言えない物ですねぇ。キャハっ……)


加蓮「よく分かんないけど、隠し事とか話してないことなら、私にもいっぱいあるよ?」

菜々「…………へ?」

加蓮「いやだって、私のことなんて菜々ちゃんにほとんど話してないし。昔、入院してたことがあるってことくらいしか知らないんじゃないの?」

菜々「それは――――そう、かもしれないですねぇ」

加蓮「いっぱいあるよ? ちっちゃい頃に約束した相手が死んで私も約束を果たしてないこととか」

加蓮「中学時代に1人の先生を辞職まで追い込んだこととか、Pさんと会った時に腐れきってたこととか」

加蓮「藍子にブチ切れたことがあるとか」

加蓮「凛や奈緒に喧嘩を売ったことがあるとか――」

加蓮「言ってないことなら、いっぱいあるよ?」

菜々「え、いやあの、ちょっと今なんかいっぱい来すぎてナナ目がぐるぐるしているんですが」

加蓮「それだってある意味、隠し事じゃん。そういうのぜんぶ言わないとダメぇ? ぜんぶ言わないと一緒にLIVEできない?」

菜々「いやぁ……」

加蓮「そんな関係、私はやだよ?」

菜々「…………」

加蓮「……あ、一応は言っとくけど、後ろめたい隠し事はしてないつもりだよ。ただ、言わない方がいいかなぁって思うことを言ってないだけで」

菜々「……………………」

加蓮「…………ダメ? ダメなら、その……ぜんぶ、ここで話すけど。私のこと」

菜々「……………………」




菜々(決めました)


菜々「加蓮ちゃん」

加蓮「……ん」

菜々「ナナ、実は晩ご飯をまだ食べてなくて。美味しい居酒屋があるんですが、ご一緒にどうですか?」

加蓮「え、居酒屋? 待って待って、ああいうところって子供だけじゃ入れないんじゃないの?」

菜々「それがですね。……ゴホン。実は! Pさんが先に行って待ってくれてるんですよ!」

菜々「大人同伴ならオッケーですからね。もちろんお酒とかはNGですけど」

菜々「ほら、加蓮ちゃん、前にPさんに大人扱いされたいって言ってたじゃないですか」

菜々「居酒屋で一緒にご飯を食べたら、ちょっとはそういう風に扱われるかもって」

菜々「大切な話っていうのも、実はそれなんです!」

加蓮「…………」

加蓮「ふふっ」

加蓮「そっか。……分かった。騙されてあげるね」

菜々「ほっ……」

菜々「って、え!?」

加蓮「え? 大切な話がそれだなんて、絶対有り得ないでしょ? でも騙されてあげる♪」

菜々「……あの、いちおー聞いておきますけど……」

菜々「加蓮ちゃん、まさかぜんぶ分かっててナナで遊んでいるとかじゃないです……よね?」

加蓮「え? うん、だからホントは何か別の話があったんでしょ?」

加蓮「でも言いたくないか言えなくなったから、そうやって誤魔化そうって……そういうことじゃないの?」

菜々「……」

加蓮「?」

菜々「…………」

菜々「実はそうなんですよねー! もう、加蓮ちゃんは鋭いですねぇ! ナナ参っちゃいますよ!」

加蓮「ふふっ、でしょ? これでも大人の隠し事を見抜くのは得意なんだっ♪」

菜々「あは、あはははは……」


菜々(……一応、ナナも"大人"なんですけどねえ……!)

菜々(あ、いえ、決して思ってませんよ? 加蓮ちゃんって意外とアh)

菜々(思ってませんからね! そういう陰湿キャラはナナの領分じゃないんで! キャハッ☆)

加蓮「じゃ、行こっか。あ……居酒屋ってこんな格好で行っていいのかな。大人の場所だから、もうちょっとこう、きちっとした格好の方が……」

菜々「いやいや、そーいうんでいいんですよ。大人だってよくだらしない格好で行ってますからね! 無礼講です、無礼講!」

加蓮「そうなの? 菜々ちゃんが言うなら間違いないね。じゃ、もうこのまま行っちゃおっと」

菜々「ええ! Pさんが待ってますよ!」


菜々(…………ええと、これでいいんでしょうか?)

菜々(なんだか、またズキズキと胸が痛み始めましたが……)

加蓮「ねえねえ聞いてよ菜々ちゃん。今日さ、学校で合唱部に誘われたんだ。アイドルやってるなら歌もうまいだろって」

加蓮「ね、ひどい話だと思わない? 歌だけでアイドルがやっていけるって思ってるのかな」

加蓮「でも……部活も悪くないのかもね。今はアイドルの方が大切だけど、そうやって学生をやっていくのも、憧れるな」

加蓮「あはっ。菜々ちゃんと一緒の学校だったら、どれくらい楽しいのかな――」

菜々(……決めました)

菜々(加蓮ちゃんの笑顔の為なら、胸の痛みの1つや2つくらい、我慢してやろうと)

菜々(17歳だって言い張ろう、って!)

菜々(なんたって、ナナはアイドルですからね!)

おしまい。クリスマスメモリーズばんざーい!!



「あの場にユッコがいたから(菜々さんが17歳と言い張ることに協力している)」
「あの時はまだそこまで仲良くなかったから」
「ユッコのサイキックパワーが漏れ出したから」
「年齢を偽っている菜々さんへの小さな不満」

まあ……いろいろと思いつきはしますが、その中で最も有り得ない可能性を追求してみた結果。
天然ってこわい、ってお話になりましたとさ。

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