南条光「ゴホウビ?」 (40)


レストラン

モバP(以下P)「ああ。光はいつも頑張りすぎてるくらいだから、たまには労いたくってな」

光「そんな、褒めすぎだぞP。……へへっ」

P「前から凄かったのに、最近は凄い追い込みだぞ?」

光「次の音番、Pには楽しみにしてて欲しいからなんだ!」

P「そう言ってもらえると、局に足繁く営業かけた甲斐があるなぁ」

光「それもこれも、Pのお陰だ。テーレビー、そしていつかは特ソーン♪」パタパタ♪

P「こらこら。外で足パタは無しだし、まず目先のLIVEだろ?」

光「あ、ごめん……。はしたなかったな……」シュン……

P「コロコロ表情変わって、本当忙しい奴だなぁ」

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P「で、本当に欲しい物とか無いのか?」

光「その言葉が一番のゴホウビだよ。ありがとっ!」ニコッ

P「おいおい、無いってことはないだろ?」

光「欲しい物、……かぁ」



光(……あのソフビ。プレミアついてるから普通だと五万くらいするんだけど、あのお店なら三万円……高い、しかし安い、が高い……)

光(そんな掘り出し物は、リメイク映画の公開の頃になったら、きっと捌けてしまうだろう)

光(でも、流石にあれをねだるのは常識知らずすぎるよな。それに)ムムム

光「欲しい物は自分で買いたい主義なんだ。だから、いいや!」

光(ヒーローとして、そして何時か独立する日の為に、頼り過ぎはいけないのだ!)


P「む、むぅ。まあとにかく、今日はお疲れさま」

光「Pもお疲れさま! これアタシのぶんな」スッ

P「千円札? ……いや、俺に奢らせてくれよ。些細な額なんだし」

光「払えるから払いたい!」

P「まぁまぁ。ここは俺の顔をたてると思ってくれ」

光「そんな、貸し借りって」

P「水くさいなぁ、光は」ナデナデワシャワシャ

光「わっ、何だ?」


P「人一倍の頑張り屋を労いたいんだよ。キャンディはおまけな」スッ

光「んっ、リンゴ味!」コロコロ♪

P「甘い物はストレスを和らげるし、リラックスにいいんだ」

光「確かに美味しいけど……そのさ、これ気に入ってるの?」

P「どういうことだ? 飴は確かに好きだが」

光「そっちじゃなくって。ありすちゃんとかにもよくこうしてるから、気に入ってるのかなって」

P「頑張り屋の頭は撫でたくなるだろ?」

光「そういうもんかぁ」

P「光はどうなんだ?」

光「どうだろ?」

P「んっ、そうか」

光(頭撫でられるというか、誉められるのは嫌じゃないけど、人目があるしなぁ)

光(……大人の手って、やっぱりゴツゴツしてるものなんだな)

店員(お会計まだですか)


………………
…………
……

後日

ウォォォォォーーッ!!! アンコール! アンコール! ……

LIVE後:楽屋

ありす「はぁっ、はぁっ。成功、ですよね」

光「へへっ、友情の勝利だな! グータッチ!」コンッ

ありす「もう……ふふ」コンッ

P「二人ともお疲れ。よくがんばったな!」

ありす「あ、来てくれてたんですね」

P「晴れ舞台なんだから、当たり前だろ?」

光「ドリンクがあったらくれるか? それと、次のスケジュールを教えてくれる?」

ありす「可愛く歌えるようにとか、いろいろ工夫したんだけど、気付きました?」ズイッ

P「わ、待った待った。ありすからでいいか?」

光「うん、どうぞどうぞ!」

ありす「あっ……こほん。Pさんからは見えましたか。変な顔だったりとか、してませんよね?」


P「とっても可愛かった。歌にも脂が乗ってきてるし、本当に良かったぞ!」

ありす「そうですか。ありがとうございます」

ありす(……言って貰っちゃった。可愛いんだって、言って貰っちゃった……えへへ……)

光「交代して大丈夫?」

ありす「すみません、もう少しだけ。Pさん次第ですぐ終わりますから」

光「了解!」

P「俺次第って、何の話だ?」

ありす「何だって、……言わせないで下さい」

P「だから何が?」

ありす「Pさんは私の努力を認めてくれたんですよね」

P「ああ」

ありす「だから、その、えっと……」

P「えっと?」





ありす「……ごほうび、ください」ボソッ


P「ほい、よしきたっ」ワシャワシャナデナデ

ありす「……っ、ふわぁ……それと、その、今度一緒に……」ゾクゾクッ

P「ゲームだろ? レベル上げはやってるし、作戦も建てたんだ。次こそは負けないからな?」

ありす「あ、はい、……、ありがとう、ございますっ……」

光「嬉しいんだ?」

ありす「みっ、見ないでください!」

光「ふわふわーんってなってるし」

ありす「なってなっかいましっ」

P「噛んだ?」

ありす「噛んで! ……ないもん……」

光「P、アタシの用事は後でいいや」スタッ

P「いいのか?」

光「急な用事じゃないしな!」

ありす「あの、もっとこっちいいですか……?」

P「こうか? それともこう?」

ありす「えへへ……♪」

光(ずいぶん楽しそうだなぁ)


………………
…………
……

光sスマホ:SNS

   今どうしてる?:]>P

光<[:ありすちゃんと反省会中だ

   LINEだとそっけないな:]>P

光<[:そう? メッセージは短くわかりやすく、って習ったけど

   口うるさいが、簡潔であればいいもんじゃないぞ。
   絵文字を使えとは言わないが…:]>P

   というか、Twitterまでこんな調子じゃないよな?:]>P

光<[:見てる人はアタシや事務所の情報が知りたいんだし、簡潔な方がいいかなって。字数制限もあるし

   それは違う。楽しくTwitterしてる光を見たいんだ:]>P

光<[:なるほど。だけど、どうすればいいんだろう。!や?を使いまくるとか?

   ・・ゃ☆をイ吏ッτ愛想良<U∋ぅTょ:]>P

光<[:回線が不安定だな。文字化けしてるから、送り直してくれる?

  そうじゃない。
  でもまぁ、いつも話してるみたいに書いてくれ:]>P

光<[:了解。じゃなくて、了解ッ! って感じ?

   そうそう。
   簡潔すぎると会話が途切れてもったいないしな:]>P

光<[:何がだ

   簡潔:]>P

光<[:あ、ごめん。で、何がもったいないんだ?

   何って、折角光と話せるんだから、長く楽しみたくてな:]>P

光<[:楽しい?

   当たり前だ。
   だからプロデューサーやってるんだろ?:]>P

光<[:ありがとう!

   その調子。
   そうそう、歌番の収録後、何か予定あるか?:]>P

光<[:以前伝えた予定と変わりないぞ

   なら良かった。
   遊園地の予約をとったんだ。
   一緒に行かないか?:]>P

光<[:おお、それは嬉しいな。ありすちゃんも連れてね?

   当然。
   ヒーローショーもあるから楽しみにしててくれ!:]>P

光<[:やたーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

   やかましいっ!!!!!!!!:]>P

光<[:ごめんなさい!!!

   まぁとにかく、精進するのと同じくらい養生してくれ。
   ほんの少しでも悪いところがるなら、すぐに連絡すること。
   おやすみ:]>P

光<[:おやすみなさい!


レストラン:『反省会会場』

光(心配しすぎだぞ、P。嬉しいけど、悪いことをしたなぁ)

光(……いかん。悪いことをして嬉しいなんて。いけないなぁ……こういうのは)ブンブン

ありす「ずいぶんメールしてましたね」

光「こんなに長くするなんて、始めてかもなぁ。ごめん、長引いちゃって」

ありす「大丈夫です。何話してたかは、確認しますからね」

光「ん? ……あ、グループ会話で話しちゃった?」

ありす「とても心配されてるみたいですね。遊園地、楽しみにしてますから」スッスッ

光「たは……」


ありす「さて、そろそろ解散しましょうか」

光「お疲れさまっ!」

ありす「お疲れさまでした。……その、楽屋ではありがとうございます」

光「何がだ?」

ありす「Pさんとの時間、譲ってくれたじゃないですか」

光「お礼言われるようなことじゃないのに」

ありす「私が言いたいから言うんです。何かお礼したいんですけど、必要なことってあります?」

光「うーん、無いかなぁ」

ありす「その、何でも言って下さい」

光(……ありすちゃんは撫でられるのが相当楽しいみたいだし、いいよね?)

光「じゃあさ、ちょっと頭貸してくれる?」

ありす「頭ですか?」

光「で、こう」サワサワナデナデ

ありす「えっ」


光「ずいぶん楽しそうだったから、試してみたくって。イヤになったら言ってくれ」

ありす「誰彼構わずされて嬉しいものじゃないですよ、これ」

光「そういうものか?」

ありす「そういうものです。……撫で方丁寧ですね。髪が乱れません」

光「ありがと。確かにPの撫で方って、ちょっぴり雑だよなぁ」

ありす「……光さんも撫でられたんですか?」ムッ

光「あ、ああ。でもどうかした?」

ありす「別に。何でもないです」ムスー

光(何でもなくないよなコレ)

光「それにしても、結構楽しいなぁ。Pも熱中するわけだ。でも」

ありす「どうかしました?」

光「撫でられる方は、楽しいの?」

ありす「……光さんって、口が堅い方ですよね」

光「絶対に口外しないから!」

ありす「わかりました。……楽しい、とは違います。なんだかこうぽかぽかして、背筋がゾクッとして、頭が何だかフワフワしちゃうんです」

光「風邪か?」

ありす「そんなのじゃないです。……いや、そうなの、かな……」

光「どっちだ?」

ありす「後者です。私、病気かもしれません」

光「な、なんてこった……。大事が起きたら、すぐに呼んでね?」

ありす「大丈夫ですよ、たぶん」

光「心配だなぁ……治す方法は無いのか?」

ありす「Pさんが協力してくれれば……」

光「Pなら治せるのか?」

ありす「……今の無しです」プイッ

光「ええっ!?」


………………
…………
……

後日

事務所:事務室

光「P、そろそろ時間だぞ」

P「そうだな。ちょっと待っててくれ、すぐ食べるから」

光「何分くらいだ? 時間次第で、雑誌読んでるから」

P「十秒でいい!」キュポジューッ

光「またウィダーか? 手早く食えて便利だけどさ」

P「急ぎだろ?」

光「そうだけど、いつもはおにぎりとか、もっと沢山買ってるだろ。節約してるのか?」

P「ンッッ! ……いや、ダイエット中でな?」

光「……へぇ、大変そうだな。協力できる範囲でアタシも手伝うぞ!」


P「は、ははっ、光は頼もしいな。ところで、何を読む予定だったんだ?」アセアセ

光「Pは特撮興味無いだろ。読んでて楽しくないかもよ?」

P「いや、最近興味が出てきてな」

光「……ホント?」

P「嘘つく理由は無いだろ?」





光「……ずっとさ、Pは興味ないって思ってたんだ」ワナワナ

P「ゑ?」

光「バレンタインの日、水爆怪獣でドン引きさせちゃったから違うと諦めてたけど……そっか、Pも同志だったんだ……ふ、ふふっ、ふふふふふ……!」

P「いや突然よくわからない怪獣の話なんてされたら誰だって……ってかもしもーし?」

光「後で雑誌貸す! それと、今度オススメ持ってくる!」ダッ

P「ストップっ! 今は無理だ!」

光「うっ、そうなの?」


P「ちょっと用が立て込んでてな。それと、今の光に観る時間あるのか?」

光「そ、それもそうだな……むむむ……」

P「まぁ、今度楽しみにしてるからさ。で、今の話を聞くに、雑誌の内容はやっぱり特撮絡みか?」

光「うん! 最近のリメイクの流れに乗る作品になるんだけど、制作情報の続報が入ってて、企画プロデューサーさんのインタビューがあって、今後の展開次第ではシリーズ化どころか青年向け特撮としてブランド化を━━━!!」ペラペラペラペラーッ

P「ネタバレはやめてくれ! はい飴っ」スッ

光「すっ、すまない……今日のは……メロン味!」コロコロ♪

P「? レモン味のはずなんだが」

光「な、何だってぇ!?」

ちひろ「いいから行きなさいよ!」


………………
…………
……

レッスンルーム

光(……ダイエットって言うのは、たぶん嘘だ。Pに必要だとは思えない)

ありす「で、ここでカメラがちょうど光さんの前にくるから、こちらの手引書を参考に、……投げキッスでもして貰いましょうか」

光(だとするなら、節約でもしてるんだろうか。何のために? 何か買いたい物でもあるのか? ありすちゃんのご褒美とか?)

ありす「なんて、冗談です。……光さん?」

光(いやまさか、Pは既に三万のソフビに気付いてる? そんな、Pが敵になる、とでも?)

光(それはイヤだ……けど、一つの物を取り合える様になれたの、ちょっといいかも……!)

ありす「あの、光さん」

光(しかしだ。真実を聞けば一発だろうけど……いやそれより、どうにかアタシから労ってあげられないだろうか)

ありす「光さん」

光(食べる時間が減ってるのも事実だし、簡単に食べられる料理とか、作ってあげられたらな……いやしかしアタシの方だって時間が……)

ありす「光さん!」パンッ

光「うぇい!?」ビクンッ


ありす「あの、私の話聞いてます?」

光「ごめんごめん。投げキッス、だよな?」

ありす「それには限りませんけど。……光さん」

光「何だ?」

ありす「何か悩み事でもあるんですか」

光「えっ?」

ありす「図星ですか……ごっこ遊びが好きなくせに、光さんは大根過ぎます」

光「ど、どうしてわかったの?」

ありす「ぼうっとしてることが最近増えましたから。顔を見れば一瞬でわかります」

光「まるで裕子さんのサイキックだな!」

ありす「滅相無いです。……私が関わっていい問題ですか?」

光「手伝ってくれるのか?」

ありす「内容次第だけど……光さんが悪いこと考えてるはず無いですから」

光「……そうだな。実はさ━━━」


………………
…………
……

女子寮:食堂


ありす「簡単に作れて栄養が採れる物なら、やはりイチゴ料理です」

光「言うと思った!」

ありす「それ以外に、適当な食材があるとでも?」

光「旬がずれてるかなーって」

ありす「フルーツならビタミンも採れますよ?」

光「まぁそうだけど……軽食でイチゴだろ?」

ありす「サンドイッチとか、色々あるじゃないですか。最近はイチゴババロアおにぎり何てのもありますし」

光「ゲテモノか?」

ありす「美味しかったですよ」

光「食べたの!?」

ありす「イチゴ大福の方が美味しいです」フフン

光「あ、そっか。米とイチゴだもんな」

ありす「ところで、光さんって料理出来るんですか?」

光「か、家庭科実習で作った経験なら、ある……」シュン

ありす「原理原則はわかってるんですね。アレンジの経験は?」

光「無いな。教科書通りが一番美味しいんじゃないのか?」

ありす「自分の舌に合う物を作るのが一番です。今度教えてあげます」

光「えへへ、サンキュ! あと、チョコぐらいなら作れるぞ!」

ありす「……?」

光「どうかした?」

ありす「いえ。何だか意外だな、って思って」


光「そうか? 水爆怪獣の供養に作ってたから、チョコぐらいなら作れるぞ」ナムナム

ありす「前言は撤回します。なら、イチゴとチョコの合わせ技でいきましょう」

光「おおっ。コンボってことか!」

ありす「そんなところです。部屋から材料取ってくるんで、光さんはホワイトチョコの湯煎を始めて下さい」

光「了解! でも、ホワイトチョコなのか?」

ありす「私に考えがあります。信じて下さい」

光「わかった!」


………………
…………
……

後日

収録当日:TV局:撮影スタジオ

ありす「あの、ちょっといいですか?」

P「もうそろそろだろ。スタンばってくれよ」

ありす「いえ、その前にこれを」スッ

P「これは……チョコ?」ビリリ

ありす「ドライイチゴをホワイトチョコで包んだお菓子です。甘い物は疲れに効くから、これ食べて養生してください」

P「これは凄いな……ありがとう、ありす!」

ありす「いえ、お礼は光さんにも言ってあげて下さい」

P「光も作ったのか?」

ありす「綺麗な卵型にするのに、凄い執念でした。お陰様で、三七で三払ったけど、それでも出費が散々です」

ありす(……何で私に渡させたんだろう。光さんの提案なんだから、光さんが渡すのが筋なのに)

ありす(恥ずかしいのかな。いや、光さんに限ってそれはないか)

P「大変だったんだな……ところで、その光は?」

ありす「あそこです」






光「…………」ポケー……


P「腑抜けてる? ……んじゃ無さそうだな」

ありす「聴いてるばかりで、心ここにあらずというか、帰って来ないんです」

P「本番になったら戻ってくるだろ、こういう状態なら」

ありす「そうなんですか?」

P「まぁ、そろそろ戻した方がいいよな。おーい」ペチペチ

光「んー……」

光「……あ、二人ともどうしたんだ?」

P「よし、戻ってきた」

ありす「ぼーっとしてて、心配だったんです」

光「む、それはごめんな」

ありす「まだ起き切ってないですね……」

P「光にとっても、流石にプレッシャーだったんだな。不安が勝っちゃったんだろう」

ありす「不安?」

光「うーん、そうかも。成功させたいって気持ちが強くなると、比例してドキドキしてくるっていうか!」

ありす「あ、わかります」

光「そうなの?」

ありす「私に限らず、皆そうだと思いますよ」

光「それも……そう、だよな……!」

P「何時もの光なら、この程度どうってことないと思うんだが……」

ありす「それだけ、特別ってことなんです」フフン


P「まぁ最悪失敗したって、俺がいるから安心してくれよ? リラックスリラックス」

ありす「今は言わないで下さい。ここで緊張の糸が切れすぎたら、それこそ失敗しちゃいますから」

光「そうだよP。全てを得るか地獄に堕ちるかのギリギリの緊張感の中にいるからこそ、最高のパフォーマンスがやれるんだ……!」

ありす「光さんは追い込み過ぎです」

光「ええっ」

P「遠慮が無いなぁ」

ありす「遠慮してたら話聞いてくれないってわかりましたから。これからは攻めで行きます」

光「ご、ごめんなさい……何でもするから許して?」

ありす「そうですね。じゃあ、結果出してくれたら許してあげます」

光「モチだ!」

P「ならば出征祝いとして、甘いものでも食べてくか」スッ

ありす「私たちが作ったものです、それ」

光「まぁまぁ。そういえば皆で一緒に何か食べるのって、初めてだな!」

ありす「確かに……タイミングが合いませんでしたしね」

P「じゃあこれが終わったら、三人で何かを食べに行くか?」

ありす「何処でもいいんですか?」

P「うーん……最近物入りでさ、あまり高いのは容赦して欲しいな」

ありす「それなら、いつものレストランに行きたいです。量があるから頼めなかったけど、パフェの評判が良いらしくって」

P「オーケー。光は?」

光「二人の行きたいところが良いな!」

ありす「じゃあ光さんもパフェ、手伝って下さいね?」

光「うん。楽しみにしてる!」

P「ではお手を拝借、成功を祈ってチョコを一粒……」


「「いただきます!」」


光「うーん、もう少し砂糖足しても良かったかなぁ?」コロコロ

ありす「作ったときには十分だって言ってたじゃないですか」サクッ

P「俺には甘すぎるくらいだが……って、もう時間が!」

ありす「こういう急ぎの時に一口で食べられるように作ってるから大丈夫━━━ひゃっ!」

光「ありすちゃんは口より手が先だ。行くぞっ、スーパーお仕事タイムだ!」

ありす「あわっ、先走らないで下さい!」

タッタッタッタッ……

P「なんだかんだリラックス出来た、のか?」


………………
…………
……

ありす「━━━ご静聴、ありがとうございました!」

光「応援、ありがとーっ!」

ワァァアアアーッ!

司会「いやー、すてきなステージを、二人ともどうもねッ!」

ありす「お褒めにあずかり光栄です!」ペコリ

光「ふ、ふ、へへ……まだ熱気が抜けないや!」

司会「視聴者のみんなも同じ気持ちだろうなぁ。さっきの投げキッス、光ちゃんの乙女な一面が観れた感じで、ビックリだよッ!」

光「へへっ、ありがとうございます!」ビシュ

司会「それにしてもさ、誰かに向けて送った投げキッスだったりするんじゃないの〜?」ツンツン

ありす「そういう聞き方、やめてください……!」

光「そっ、そんな……アタシは誰か一人の為にそんなことをしてた、のか?」

司会「いや聞き返されても困るかなぁ?」

光「くっ、だとしたらヒーロー失格だ……アタシはヒーローじゃない……? 心臓に向かう折れた針、巨大な不発弾……アタシは、アタシは……?」ワナワナ

ありす「誰もそこまで言ってません。あと、光さんはサイズ的にせいぜい対人地雷です」

司会「君もでしょ。なんて言うか、アイデンティティクライシスさせてごめんね?」

ありす「いえ、ここまで酷くはないけど、普段からこんなのですから。……ここ、削ってくれます?」

司会「Dさん、美味しいから入れといて!」

\ドッ/

司会「とにかく、知恵と勇気の若々しいデュエット、ありがとうございました! みなさま、盛大な拍手を!」

ワー! ワー! カワイー! パチパチパチパチ!

ありす「また会う日を楽しみにしてて下さい。私はします! ほら、行きますよ」タッタッタッタッ

光「ああ! 今後ともよろしく━━━んぅっ!?」タッタッタッタッフラッ

司会「おおっと!?」

ありす「急いで転んだら意味ないですよ。掴んであげます」キュッ

光「いてて……ありがと!」タッタッタッタッ

司会「いやー回るビデオから、二人に熱い視線突き刺さってましたね! さて次紹介しますのは、下僕の血潮で濡れた肩、地獄のアイドルと人の言う、吸血ユニットことレ━━━」


テレビ局:楽屋

光「…………」ウツラウツラ

ありす「美味しいとは言って貰ったけど、今後は無しですからね」

光「うう。最近謝ってばっかりだな……」

ありす「……結果出たし、楽しかったから許してあげます」

光「ホント?」

ありす「嘘付く理由、無いですよ。光さんと歌うの、楽しいですから」

光「……次、取り戻すっ!」

ありす「ふふっ。期待してますから」スッ

光「その手は?」

ありす「しないんですか? グータッチ」

光「お、そうだな。じゃあ、せーのっ!」

ありす「えい」

スカッ

ありす「……えっ?」

光「あれ……あれっ……」フラッ

ストン

コンコン

P「ありすー、光ー。そろそろ撤退したいんだが、準備すんだかー?」

ありす「Pさん、助けてください」

P「どうした?」

ありす「……光さんが寝ちゃいました。私にもたれ掛かってます」

ありす「それと、とっても熱いです……!」

光「……」ウゥゥ……


………………
…………
……

翌日

女子寮:ひかルーム

光「……んっ……」パチッ

ありす「目が覚めましたか」

光「ここは、アタシの部屋?」

ありす「はい。倒れた光さんを担ぐの、大変でした」

光「そんな、倒れただなんて……もしかして、収録の直後から?」

ありす「今の今まで、ぐっすりでした。ほぼ丸一日ですよ」

光「ありがとう。自己管理がなってないな……」

ありす「こういう時はお互い様です。誰だって風邪くらいひきますから」

光「え、風邪ひいてたのか?」

ありす「やっぱり気付いてなかったんですね。自分の体のことなのに」

光「悪いところがあるとは、思ってなかったんだけどなぁ」

ありす「味覚がちょっと変わってたとか、ぼーっとすることが増えたとか、私たちが気付くべきでした。光さんはもっと自分の身体に興味を持つべきです」


光「う、うん。今後そうするね」

ありす「とにかく、今日は大人しくしてください。絶対です」

光「わかった。ありがとね、連絡に看病とかさ!」

ありす「そのお礼、あとでPさんにも言ってあげて下さい」

光「心配させちゃったから?」

ありす「救急車だ自衛隊だと大慌てだったし、泥のように寝てた光さんにさっきまでずっと付きっきりでしたから。今頭に乗ってるアイスノンはPさんが用意したものです」

光「そうなのか……Pがそこまで……へへ……」ニヘェ

ありす「……私、もう行きますね」ムッ

光「何処へだ?」

ありす「何処だっていいじゃないですか」

光「ええっ!?」

ありす「とにかく、ここにバスケットとか差し入れ置いときますから。暇な時に見て下さい」

光「あ、うん。ありすちゃんも気をつけてね!!」

ありす「光さんこそ、お大事に。では」バタン


廊下

ありす「…………」スタスタスタスタ

ありす「…………」……ピタッ



ありす「……こういうことでいちいちささくれ立ってるから、私って子供なんだ……」

ありす「……私にも、してくれる、のかな」

ありす「なら、もっと積極的じゃなきゃ、だよね」


ひかルーム

光(Pに大事にして貰ったと知って、どうしてかポカポカと暖かい。迷惑をかけたのに、悪いことをしてるのに、何だかとっても嬉しい。何故か、それはわからない)

光「……いけない気持ちが続くんだから、アタシはとんでもない悪党なのかもしれない……」ズーン

光「……ま、そうならそうで、やり直して取り戻そう! バスケットの中身を見て休んで、リベンジに備えるんだ!」ゴソゴソ

光「麗奈からは見舞いの手紙……ふむふむ、冷蔵庫にカレー味アイスなんて入れてくれたのか。冷たくて気持ちよさそうだ」

光「というか、見舞いのフルーツは全部イチゴなのか……いや、コイツでビタミン接種だ!」モキュモキュ

光「……すっぱあまいっ!」


光「ん、バスケットの下の方に……箱? しかもラッピングされてる?」ガサゴソ

光「カード付きか。なになに、『遊園地に行ったときに渡す予定だったが、仕方ないからこのタイミングで渡す。体を大事にって言ったのに…気付かなくて本当に本当にすまなかった… byP』か」

光「アタシが行けないから、お流れになったんだよな。埋め合わせはしないとな……」

光「……Pからのプレゼントか」



光「━━━そいやっ!」ビリッ








ソフビ「やぁ」

光「うそ……だろ……まさか、これを買うためにPは節約を……?」

光「冷静に考えると、Pがアタシの知ってる店を、知ってるとは限らない……まさかのまさか、プレミア付きを、そのまま……!?」

光「何でアタシの欲しいものがわかった、リサーチされた? 晶葉あたりが打ち上げてそうな衛星で監視されてる!?」キョロキョロ

光「……アタシ、気付いてもらえたくらい、見て貰ってた! うぉぉぉぉぉぉぉぉーーっ!!」ドドンッフラッ

バタン

光「……ひんけつ……」グエー


………………
…………
……

一ヶ月後

事務所

光(体調は復活した。以降、やりすぎないようPがつきっきりになってくれたりとか、些細なことでもすぐメッセージをやり取りするようにとか、色々体制も変わった。お陰様で、万事が上手く行ってる)

光(それとは関係無いけど、最近Pがいっぱい構ってくれるようになった。もっと甘えていいよと言わんばかりの態度に、最初は面食らったけど、慣れてきた)

光(……もしかしたら、Pはずっと変わらず、甘えていいよと言っていたのかもしれない。一人でがんばろうとして気付いてなかったり、真にPと接することが出来てなかった、だけかもだ)

光(まぁとにかく、アタシ自身も周囲の環境も、ぜんぶいい方向に動いてた。……ただ一つを除いては、だけど)


光「なぁP」

P「どうした?」

光「その、今日も頑張ってさ、いや今日じゃなくても頑張んなきゃだけど、えっと」モジモジ

P「確かに前回のラジオは、お悩み相談の返し方にキレがあったな」

光「うん! 結局自分でやるしかない問題だろうけど、でも、突き放すばかりじゃいけないなって思うと、色々提案が浮かんで……」

P「誰よりも親身になって、考えてあげたんだな」

光「考えてあげたんじゃない! アタシにとっても、きっと他人ごとじゃないからだ!」

P「ン、そうなのか。まぁとにかくよく頑張りました!」

光「ありがとう! ……で、その、頑張りついでにさ……?」

P「ついでに? ……ああはいはい。強めのハグですよ、っと」ギュー……

光「んっ……!」スリスリ

光(アタシは、いつぞやのありすちゃんと同じ状況におちいってた)

光(もっと、もっとぎゅうってして、褒めて、もっと褒めて、って。胸が万力で締められるように、とは少し違うけど、何かが詰まったように息苦しい。なのに、それを正そうとは思えない)

P「……膝の上、座るか?」

光「いやそれは流石に……ぅぅ……」

P「……ちょうどクッションがあるとはかどりそうなんだけどなー」ボソッ

光「な、なら仕方ないよな! うん、そういうことだ、うんっ!」イソイソ

P「光は耳がいいな」

光「歌ってるからな! ほら座って!」

P「そういう意味じゃ無いんだがなー」



ありす「━━何、してるんですか?」ジロッ

光「いっ、……何時から見てた!?」


ありす「奇特な光景だったから、つい最初から……ってそれより、膝の上ってどういうことですか?」

P「別に、やましいことをするつもりはないぞ?」

ありす「なら、私でもいいですよね」

光「えっ?」

ありす「言い方を変えましょうか。私、積極的にPさんのお膝に座りたいです。仕方なしにクッションをしようとしてる光さんにとって悪い提案じゃないと思うんですけど……どうですか?」

P「何時になく積極的だな……」

ありす「いけないですか?」

光「そ、……そう、だ、な。じゃあアタシ、走り込みにでも行ってくるねっ」タッ

P「光っ!」

ありす「お腹が空いたら帰ってきますよ」

P「家出少年か?」

ありす「それとPさん。嫌がってる子を無理矢理座らせようとするのは、セクハラだから絶対ダメです」イソイソストン

P「それはそうだが……」

P(光の顔はノーと言ってなかったんだよな。ありすから見たらダメだったんだろうか)

P(とにかく、あとで埋め合わせしないとな。……パフェにリトライでもするか?)


河川敷

光「━━━ぜーっ、はぁーっ! 走ったー……!」ゴロッ

光「あー、草くさい……水欲しい……自販機探さないと……」

光(……また、これだ。自分から譲ったはずなのに、どうしてか羨ましくなって、強く後悔をする)

光(後悔するくらいならしなきゃいいのに、やっちゃう)

光(……待て。譲るって何だ? 何時からPがアタシの物ってことになった? アタシはPを独り占めにしたいのか?)

光「……アタシ、まだ風邪治ってないのかな?」

光「何だって相談してくれと言ってくれたのはPだ。ホウレンソウが足りなくて起こした失敗は、もう繰り返さないぞ!」スッ

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