凛「念願の福岡に来れたし、早速ラーメンを食べに行くにゃー!」 (29)

花陽「ふふっ、凛ちゃんはラーメン大好きだもんね」

にこ「ちょっと凛、私達は仕事で来てるのよ。その辺りちゃんとわかってるの?」

凛「わかってるよ、にこちゃん! でもお腹ペコペコだと皆に笑顔を届けられないでしょ?」

にこ「ん……まぁ、確かに空腹だと何やるにしてもツラいわね……」

凛「だから、まずは軽く腹ごしらえにラーメンを食べに行くにゃ!」

花陽「ラーメンは軽くというか、だいぶメインな気もするけど……」

凛「気にしたら負けだよかよちん! ああ、楽しみだなぁ本場福岡のラーメン……」じゅるり

凛「凛知ってるよ!福岡のラーメン屋さんでは麺の固さを選べるんだよね」

凛「凛はさっそく通っぽく『ハリガネ』を頼んでみるにゃ!」

海未「あなたは最低です!!」パァン!!

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花陽「海未ちゃんがいきなり凛ちゃんにビンタをっ!?」

にこ「というか、なんでにこりんぱなの仕事なのに海未が福岡に……?」

海未「凛……あなたは正気なのですか……」

凛「……え? ……にゃ?」

海未「福岡のラーメン屋でハリガネを注文する……その意味が本当に解っているのですか!?」

凛「え、で、でも福岡のラーメン好きの人はハリガネを頼むのが通だって、みんな言ってたにゃ!?」

海未「……確かに、福岡の地において麺の硬さは硬ければ硬いほど良い……」

海未「事実は置いておくとして、そういう気風があるのは確かです」

凛「だ、だったら凛がラーメン屋さんでハリガネを頼んでもいい筈にゃ!」

海未「凛……そのような甘い考えでは、この国では死にますよ」

凛「し、死ぬの!?」

花陽「う、海未ちゃん。さすがにそれは言い過ぎじゃあ……」

にこ「そうよ、冗談めかして修羅の国、なんて言われてるけど実際福岡はそんな物騒な場所じゃあ……」

海未「確かに、福岡は良い国です。修羅の国うんぬんは悪いイメージが誇張されたものに過ぎません(一部地域を除く)」

にこ「今なんか最後にぼそっと言わなかったかしら?」

海未「……しかし、御覧なさい。あれが凛が進もうとしている道の末路なのですよ」

~博多市内 某ラーメン屋~

穂乃果「へー、ここが本場福岡のラーメン屋さんかぁー」

穂乃果「えへへ、ちょっとそれっぽい感じで頼んじゃおうっと!」

穂乃果「すみませーん! ラーメンひとつください!」

店員「へっあざァすっ! 硬さはどうしましょうか!」

穂乃果「おお、本当に聞かれるんだ……えーっと、ハリガネで!」

店員「…………」

凛「て、店員さんの目つきが変わったにゃ!?」

凛「なんとか接客スマイルを浮かべているけど、明らかに笑顔が固くなってるにゃ!?」

花陽「そ、それだけじゃないよ! 見て、他のお客さんの様子も!」

にこ「なんなのかしら……明らかに穂乃果を敵意のある視線で見つめてるような……」

凛「か、かよちん!? いま舌打ちが聞こえたにゃ!? 明らかに「チッ!」って聞こえたにゃ!?」

花陽「キ、キノセイジャナイカナァ……?」がくぶる


海未「わかりましたか。アレが一見さんにも関わらずハリガネを頼むような『にわかもん』が通る末路なのです!」

にこ「にわかもん……聞いたことがあるわ……」

花陽「知っているの、にこちゃん!?」

海未「ええ、その通りです。最近ではにわかファンなどと、新参者に対して揶揄するように使われる言葉ですね」

にこ「あれ!? にこの出番じゃないの!?」

海未「ですが元は伝統芸能たる俄(にわか)狂言がその語源と言われ、ここ福岡の地では昔から博多ニワカと呼ばれ古来より親しまれてきました」

海未「博多銘菓『にわかせんべい』なども、この俄狂言に使われる面をモデルにしたものなのです」

にこ「…………」

花陽「あ、そこまでは知らなかったんだね、にこちゃん」

凛「で、でもそれが今の穂乃果ちゃんの状況とどういう関係が……?」

海未「……わかりませんか凛。つまり、福岡に住む者は古来の風習から他地域の人より「にわかもん」に対して厳しいのです!(個人差があります)」

にこ「な、なんですっとぅえー!!??」

凛「そ、そんな……それじゃあ凛は福岡でラーメンを食べれないにゃ……?」

海未「案ずることはありませんよ、凛。ほら、御覧なさい」

花陽「あ、あれは希ちゃん!? 希ちゃんがラーメン屋さんに入っていく!?」

にこ「というか、なんでファンミに出番の無いμ'sメンバーがこんなに福岡にいるのよ……」

~博多市内 某ラーメン屋~

店員「せぇらっしゃっせー!! ご注文はいかぁ致しましょォ!」

希「んー。ほなラーメンで」

店員「麺の硬さぁいかぁしましょォ!」

希「フツーでお願いしまーす」

店員「ご注文受けたぁりましたァ!」

海未「見なさい凛、アレが正解です」

凛「フツー!? フツーでいいのにゃ!?」

海未「ええ、どうしても、というのなら初めてで「カタメ」も許容されますが、基本初めてのお店では「フツー」がベストの注文です」

海未「なぜなら、フツーとは店側が考える最も美味しくラーメンが食べられる硬さなのですから」

花陽「ああ、うん……確かによく考えるとそうだよね……」

凛「で、でも他のお客さんはだいたい「カタメ」で頼んでいるにゃ!?」

海未「それこそが福岡の気風、とでも言うのでしょうが……基本福岡県民は通常よりもやや硬めの麺を好む傾向にあるからです」

海未「ただ気をつけねばならないのは、この中にも少なからず「ファッションカタメ」が居ることも確かです」

にこ「なによ、ファッションカタメって……」

海未「言うなれば「他の人もカタメを頼んでいるから」とか「なんとなくそれっぽいから」とか、そんな理由でカタメを選んでいる客の事です」

海未「別にそれ自体は悪いことではないのですが……その所為でフツーの硬さがやや軽視されてしまうのが難点ですね」

海未「先ほどの凛や穂乃果のように、無駄に硬い麺にしようとするのも、そういった風潮が原因の一端にもなっていますし……」

凛「ううっ……確かに凛も「なんとなくそう聞いたから」って理由でハリガネを頼もうとしたにゃ……」

海未「確かにハリガネなどという硬さは福岡独特の文化ですので、注文してみたくなる気持ちは解らなくもありません」

海未「ただ何事も基本が大事。それは歌やダンスに及ばず、ラーメンにも言える事なのです!」

凛「海未ちゃん……! り、凛が間違ってたにゃ……」

海未「解って頂けたのなら良いのです、凛。それに、ひとつ付け加えるなら……」

花陽「……付け加えるなら?」

海未「…………ハリガネはあんまり美味しくありません…………」

凛「そ、そうなのにゃ?」

海未「食べれなくはないのですが、アレは一部の特殊な嗜好の方向けというか……ぶっちゃけどのラーメン屋でも頼む人はまずいません」

にこ「なんか、話に聞くとその上の段階で「コナオトシ」って硬さもあるって聞くけど……?」

海未「アレはそういうギャグなんじゃないかと私は思っています」

花陽「あ、そうなんだ……」

海未「なにはともあれ、ラーメンは美味しく食べるのが一番」

海未「まずはフツーの硬さでその店の味をゆっくり堪能した後、好みで硬さを調整するのが福岡ラーメンの常道なのです」

凛「海未ちゃん……凛、わかったよ! 目指せ福岡ラーメン全制覇!」

海未「ふふっ、福岡のラーメン店は屋台も含めるとそれこそ星の数ほどありますよ」

海未「けれどその意気やよし。さぁ行きますよ凛、福岡のラーメンが私達を待っています!!」

凛「よぉーっし! いっくにゃー!!」

花陽「え、り、凛ちゃん、ちょっとそんな引っ張らないで……ダ、ダレカタスケテー!?」


にこ「…………あれ? ファンミーティングは?」

終わり


※この物語はフィクションです。実際にハリガネやコナオトシを注文しても店員からやんわり「いや、止めといた方がいいですよ?」的にやんわり断られる事が大半です

※他のお客さんもそこまで他人の注文に注意を払ったりはしません。福岡の人は良い人ばっかとよー

※というか、ハリガネやらコナオトシをそもそもやってない店が大半です。あっても裏メニュー的な扱いなので、滅多にお目にかかることはないかと。

※それでは良い福岡ラーメンライフを

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