渋谷凛「私が正妻だという風潮」佐久間まゆ「は?」 (78)

※基本的にアイドルたちが適当なことを話すだけの日常系SSですので修羅場などは期待しないで下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434857905

まゆ「いきなり何を言ってるんですかぁ?」

凛「いや、私がプロデューサーの正妻だっていう風潮についての話」

まゆ「まゆの前でそれを言うということは、凛ちゃんはまゆに喧嘩を売っているんですか?」

凛「違うけど……ね、泰葉」

泰葉「なんで私に振るんですか……」

凛「先輩だから頼ってみた」

泰葉「凛さん、未央さんの影響を受けていませんか?」

凛「結構長い付き合いだからね、受けてるかも」

まゆ「そんなことはどうでもいいです。今は凛ちゃんがPさんの正妻なんて意味わからないことを言い始めたということですよ、泰葉ちゃん」

泰葉「私も話に入らされるんですか……たまたまここに居ただけなのに」

凛「それで、私が正妻だという風潮に関してだけど……」

泰葉「まだ言うんですか」

まゆ「本当、まだそんなふざけたことを言ってるなんて……意味がわかりませんよねぇ」

凛「……まゆ、泰葉、何か勘違いしてない? 私はプロデューサーの正妻だっていう『風潮』があるってことについて話したいだけで、私がプロデューサーの正妻だって言いたいわけじゃないよ」

まゆ「いったい何が違うんですかぁ?」

凛「だから、私はプロデューサーの正妻じゃないって言いたいの」

まゆ「……つまり、まゆが正妻だと?」

凛「どうしてそうなるの」

泰葉「……あの、凛さん。つまり、どういうことを言いたいんですか?」

凛「うん。あのね、泰葉。私はプロデューサーの正妻だってよく言われているけれど……私は正妻じゃなくて、隣で歩くパートナー、相棒みたいな感じなんだよ」

泰葉「……それは、正妻ということではないんですか?」

凛「全然違うよ。そういう恋愛感情みたいなものはあんまりなくて、もっと純粋な、アイドルとプロデューサーの間の信頼関係というか……私とプロデューサーはそういうもので繋がっているんだよ。というか、プロデューサーと恋愛関係になりたいとかアイドルとしてダメでしょ」

泰葉「今凛さんはウチの事務所のかなりのアイドルを敵に回したと思いますよ」

まゆ「……」

凛「まゆは何も言ってこないけど?」

泰葉「それは凛さんの言葉が正論だからですね。アイドルはプロデューサーと恋愛関係になってはいけない。当然のことです」

まゆ「で、でも、泰葉ちゃんも凛ちゃんも、少しはPさんのことを好きになったりしているはず……いえ、まゆとしては好きになってほしくはないんですが、Pさんは魅力的な人なので好きになってもおかしくない、どころか好きにならない方がおかしいと思うのですが」

泰葉「もちろん好きですよ。男性として、ではありませんが」

凛「もちろん好きだよ。でも、結婚するのはアイドルを卒業してからかな」

泰葉「えっ……り、凛さん? それ、もう完全にPさんのことを好きな台詞じゃないですか」

凛「アイドルの間はそういう関係にはならないから大丈夫だよ」

泰葉「そういう問題ではないように思えるのですが……」

まゆ「……ふふふ、凛ちゃんがそうやって気を抜いている間に、まゆがPさんをもらっちゃいますよぉ?」

泰葉「それはありえませんね」

凛「うん、ありえないね」

まゆ「えっ……凛ちゃんはそう言うと思ってましたけど、泰葉ちゃんまで否定するんですか?」

泰葉「当然です。Pさんは私と一緒に歩き続けるんです。アイドルとの恋愛なんて、そんな問題を起こすわけないじゃないですか」

凛「というか、まゆだってわかってるでしょ? プロデューサーがそんなことするはずないって」

まゆ「う、うう……」

まゆ(こ、このままでは論破されてしまいます。誰か、誰か――)ハッ

つかさ「」テクテク

まゆ「つ、つかささん! ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど、いいですかぁ?」

つかさ「ん? ……まゆに凛に泰葉? 何? どういう集まり?」

まゆ「そんなことは今どうでもいいんです! つかささん……プロデューサーとの恋愛についてどう思いますか!?」

つかさ「プロなんだからダメに決まってるだろ」

まゆ「はうぅ!」

つかさ「まゆだってわかってんだろ? アタシたちはアイドル。客に夢見せんのが仕事だろ? 少なくともアイドルでいる間は夢を壊すようなことしちゃダメだろ」

まゆ「うぅっ!」

凛(……なんでまゆはつかさに聞いちゃったんだろう)

泰葉(たまたま通りかかったから……でしょうね。でも、つかささんはある意味私よりもプロ意識が高い人なので、ああ返されるのは当然ですね)

つかさ「ん、ごめんな、まゆ。ちょっと急いでるんだわ。この話の続きはまた後で頼む」

まゆ「は、はい……」

つかさ「じゃあな」

テクテクテク

まゆ「……つ、次の人はまゆに賛同してくれるはずです!」

泰葉「どうでしょう……」

凛「難しいんじゃない?」

まゆ「……だ、大丈夫です。次はCoじゃなくてCuかPaの人に聞きます。今までの経験上、Coの人はダメですから」

泰葉(むしろCoの人の方が……いえ、言わないでおきましょう)

みく「」テクテク

まゆ「……みくちゃん!」

みく「ふにゃっ!? ……ま、まゆチャン? どうしたの? そんな大きい声を出すなんて……珍しいにゃ」

まゆ「みくちゃんに聞きたいことがあります。みくちゃんはアイドルとプロデューサーの恋愛ってどうだと思いますか?」

みく「ダメに決まってるにゃ」

まゆ「みくちゃんはCoolだったんですかぁ!?」

みく「違うけど!? どうしてそんな結論になったの!?」


凛(……まあ、みくならそう答えるだろうね)

泰葉(逆によく否定する人ばかりが来ますね……割合としては少ないように思えるのですが)

まゆ「うぅ……みくちゃんの裏切り者!」

みく「……なんかまゆチャンのキャラ違くない? 凛チャン、泰葉チャン、どういうことにゃ?」

凛「ちょっとまゆがぽんこつ化してるだけだから気にしないで」

泰葉「はい。気にしない方がいいです」

まゆ「何がぽんこつですか! まゆにとっては重要なことなんですよ!?」

凛(もうそうやって声を張り上げている時点でダメなような気がするけど)

まゆ「もうみくちゃんは気にしません。……次は、Paです。Paの人なら――」

李衣菜「」テクテク

まゆ「……李衣菜ちゃん!」

凛(ん?)

泰葉(もしかして)

みく(……逃げるタイミングなくなっちゃったにゃ)

李衣菜「ん? まゆちゃん。どうしたの?」

まゆ「質問したいことがありまして……」

李衣菜「あ、ロックについて? それなら――」

まゆ「Pさんのこと、好きですか?」

李衣菜「ブッ……ま、まゆちゃん!? い、いきなり何を言ってるの?」

まゆ「……確かにいきなりでしたね。すみません。でも、まゆは真剣なんです。お願いします、答えて下さい」

李衣菜「……本当に真面目な話みたいだね。えーと、私がPさんのことを好きかどうか、だったっけ。まあ、もちろん好きだよ。……と、当然、恋愛とかそういう意味じゃないけどね?」

まゆ「それじゃあ、李衣菜ちゃんはアイドルとプロデューサーとの恋愛、って、どう思いますか?」

李衣菜「アイドルとプロデューサーとの恋愛? ……うーん、それは、まあ、いいんじゃない?」

まゆ「えっ……で、でも、アイドルがプロデューサーと、ですよ? 本当に、いいんですかぁ?」

李衣菜「んー……確かにまゆちゃんの言う通り、ダメなことなのかもしれないね。私たちはアイドルだし、プロデューサーとだけじゃなくて、恋愛なんてしちゃいけないのかもしれない」

まゆ「……はい」

李衣菜「でもさ、人の気持ちって止められるものじゃないでしょ? 私がロックを好きなことと同じで、人を好きになるのって、禁止されたからって止められることじゃないと思うんだ。だから……そうだね、私の答えは、『禁止されたからって私の思いは止められない!』みたいな感じかな。そういうのって、なんかロックだと思うし、ね」エヘヘ

まゆ「李衣菜ちゃん……」

李衣菜「……ちょっとクサかったかな。ごめん、今の、忘れて? こうやって真面目に語っちゃうのってロックじゃなかったかも――」

まゆ「感動しました! 李衣菜ちゃんはとてもロックです。ありがとうございました」

李衣菜「え? ……そ、そう? ならいいんだけど……ちょっと照れるね」

まゆ「いえ、本当にロックでした。とっても情熱的で、心に響きました」

李衣菜「ちょ、ちょっと、褒めすぎだって。そんなに褒めても何も出ない――」


まゆ「さすがPaですね!」

李衣菜「ん?」


凛「」プッ

泰葉「」プルプル

みく(ちょっと李衣菜チャンがかわいそうだにゃあ……良いこと言ってたのに)

李衣菜「……まゆちゃん? 私、PaじゃなくてCoなんだけど……」

まゆ「……え? 『ウッヒョー!』とか言ってるのにですか?」

李衣菜「」


凛「ちょ……まゆ……やめたげて……」プルプル

泰葉「」プルプル ←笑いを堪えるのに必死で何も言えない

みく(かわいそうだけどまゆちゃんの気持ちもわかるにゃあ)

李衣菜「……う、うん。『ウッヒョー』とか言ってるけど、Coなんだ」

まゆ「でもCoって『Cool』のCoじゃないんですか? Coolな人が『ウッヒョー』……言いますか?」

李衣菜「う……言わ、ない、かも」


凛「……認めちゃった……認めちゃったよ李衣菜……」プルプル

泰葉「」バンバンバン ←笑いを堪えるためにソファを叩いている

みく(李衣菜チャン、自分を曲げちゃったみたいだにゃあ……でもみくもあんな風に言われると曲げちゃうような気がするにゃ)

李衣菜「で、でも……でも、私、Coolだもん!」

まゆ「……Pさんのミスですかね」

李衣菜「Pさんはそんなミスしないもん!」

まゆ「確かにPさんは滅多にミスなんてしませんが、絶対にしないということはありませんよ」

李衣菜「しないもん! こんな重要なことでPさんがミスなんてするはずないもん! 私はCoolだもん!」


凛「『もん』って……『もん』って……」プルプル

泰葉「……李衣菜さん、本当、ロックです……」ゼェゼェ

みく(泰葉ちゃんのそれは煽りなのかにゃ?)

まゆ「Coolならそこまで大声で否定しないと思いますけど」

李衣菜「だって否定しなかったらPaって決めつけるでしょ!?」

まゆ「そうですね」

李衣菜「じゃあどうすれば私をCoolだって認めてくれるの?」

まゆ「……普段の行動を改めたら、ですかね」

李衣菜「そこまで私ってCoolからかけ離れた行動してる?」

まゆ「はい」

李衣菜「そこまで!?」


凛「フフッ、即答……フフッ。即答、即答って……」プルプル

泰葉「確かに……確かにCoolとは思えない行動してますけど……」プルプル

みく(李衣菜チャンは李衣菜チャンでまあまあCoolなところは……Coolなところ……李衣菜チャンにCoolなところ……?)

まゆ「……逆にどこにCoolの要素があるんですか?」

李衣菜「う、うぅ……ろ、ロックはCoolだもん!」

まゆ「夏樹さんはPaじゃないですか。つまりロックはPaなんじゃないですか?」

李衣菜「うっ……で、でも、それを言ったら私以外にもCoolっぽくないアイドルは居るじゃん!」

まゆ「誰ですかぁ?」

李衣菜「蘭子ちゃんとか!」

まゆ「? 蘭子ちゃんはCuじゃないですか」

李衣菜「えっ」


凛「蘭子……蘭子、Cuだったんだ……」プルプル

泰葉「っ……っ……」 ←笑ってる

みく(蘭子ちゃん自分の居ないところで勝手にCuにされててかわいそうにゃ)

李衣菜「いや……蘭子ちゃんはCoでしょ?」

まゆ「あんなかわいい子がCuじゃないわけがないですよ。確かにステージではカッコイイですけど、普段あれだけCuteな子がCoolなわけがないでしょう?」

李衣菜「え……そ、そうだったっけ……?」

まゆ「はい。間違いありません」


みく「いや間違ってるけどね」

凛「っ! ……みく……いきなりの真面目ツッコミやめて……」プルプル

泰葉「フフッ……フフフフフッ」プルプル

みく(……まゆチャンも割りとアレだけど、この二人もかなりキャラ崩壊してるにゃあ)

李衣菜「あれ……あれ? いや、でも……え?」

まゆ「信じられないんですか? それなら調べてみてください。事務所のページにもきちんと書いてあるはずですから」フンス

李衣菜「うん……」スマホイジリイジリ

まゆ「ふふん。すぐにわかりますよ。これでまゆが正しいってことが――」

李衣菜「あの、まゆちゃん」

まゆ「はい、どうですか? まゆの言った通り、蘭子ちゃんは」

李衣菜「Coなんだけど」

まゆ「……」

李衣菜「……」

まゆ「……ちひろさんのミスですね」

李衣菜「絶対違うよ!? というかサイトの運営してるのちひろさんじゃないでしょ!?」


凛「まゆ……フフッ、まゆ……往生際悪い……」プルプル

泰葉「~!」バタバタバタ ←ソファに顔を埋めてバタ足のような動きをしている

みく(一瞬信じかけてた李衣菜チャンも結構だけどにゃあ……)

まゆ「……で、でも、李衣菜ちゃんはPaです。ですよね、凛ちゃん!」

凛「んっ……あ、うん……そうだね……」プルプル

李衣菜「凛ちゃんまで!?」

みく(適当に答えてるにゃあ……)

李衣菜「じゃ、じゃあ、泰葉ちゃん!」

泰葉「……そうですね、李衣菜さんはCoだと思います」

李衣菜「!!!」

みく(さすが泰葉チャンは回復早いにゃ。というか李衣菜チャン、自分がCoって言われただけで嬉しそう過ぎでしょ)

李衣菜「ふふーん! 泰葉ちゃんのお墨付きがもらえればこれはもう確実だね! ウチでいちばん芸歴が長い泰葉ちゃんが言ったんだからね!」

まゆ「……でも、泰葉ちゃん。李衣菜ちゃんのどこがCoolなんですかぁ?」

泰葉「喋らなければCoolなように見えます」

李衣菜「え」


凛「プッ……フフッ、泰葉、それ……それ中身はCoolゼロって言ってるようなものじゃん……」

みく(凛チャンはもうすっかりツボに入ったままだにゃあ……)

まゆ「……確かに喋らなければCoolに見えますね」

泰葉「でしょう?」

李衣菜「……あの、その、私が望んでるのは、そういうのじゃなくて……」

まゆ「李衣菜ちゃん、ごめんなさい。まゆが間違ってました。李衣菜ちゃんはCoolです。喋りさえしなければ」

李衣菜「う、ううっ……わ、私は喋ってもCoolなんだからぁー!」タッタッタッ

みく「あっ、李衣菜チャン……夏樹チャンに『この後李衣菜チャンが泣きついてくると思う』って連絡しておいた方がいいかにゃあ」

まゆ「行っちゃいましたね、李衣菜ちゃん……いったいどうしたんでしょう」

みく「いや理由は明らかだと思うにゃ」

泰葉「……でも、李衣菜さん、いいこと言ってましたね」

凛「うん。それは私も思ったよ。李衣菜、いいこと言ってたね」

みく「あんだけ笑ってた人が言っても信じられないにゃ」

まゆ「はい、いいことを言っていました。これで凛ちゃんと泰葉ちゃんもアイドルとプロデューサーとの恋愛に対する認識が変わったんじゃないですか?」

みく「あ、そういう話だったんだ……」

凛「うん、変わったよ。そうしたい人の気持ちはわかった。でも、私はファンを大切にしたい。ファンを裏切ることはしたくない。それも私の思いなの。だから、プロデューサーとアイドルが恋愛することには否定的かな」

泰葉「私も同じです。確かに李衣菜さんの言葉は胸に響きました。……いつかは、あの言葉をそのまま受け入れられるのかもしれません。でも、今の私ではまだ素直に受け入れることはできません。アイドルとプロデューサーは、やっぱり、恋愛しちゃいけないって思います」

まゆ「そうですか……でも、まゆはプロデューサーさんのことをあきらめませんからね」

泰葉「はい。まゆさんはそれでいいと思います」

凛「もちろん、応援はしないよ? 邪魔はするかもしれないけど」

まゆ「泰葉ちゃん、凛ちゃん……ありがとうございます」

凛「邪魔するって言ってるのに感謝するっておかしくない?」

まゆ「そうですね……でも、ありがとうございます」

凛「……うん、どういたしまして」

みく(……なんでいい話みたいになってるんだろう)

泰葉「……なんでいい話みたいになってるんでしょう」

みく「泰葉チャンが言う?」

――

みく「というか、どうしてプロデューサーとアイドルの恋愛について、みたいな話になったの? 流れがよくわからないんだけど」

まゆ「それは凛ちゃんがいきなり自分はPさんの正妻だと呼ばれている……なんてことを言い始めたからですね」

みく「凛チャン、そんなこと言ってたの?」

凛「うん。でも、正妻じゃないよね、って言って、そもそもプロデューサーとアイドルの恋愛なんてダメだ――って流れから、まゆが反発した、って感じかな」

みく「……よくわからないけれどわかったにゃ。でも、今の話だとどうして泰葉チャンがここに居るのかわからないにゃ。みくと同じように巻き込まれただけ?」

泰葉「はい、そうですね。私自身、どうして私がここに居るのか……」

みく「ご愁傷様と言いたいところだけどさっきまでめちゃくちゃ楽しそうにしてたからそんな気分になれないにゃあ」

泰葉「私、楽しそうにしてました?」

みく「うん。あれで楽しくないとか言ったらちょっと泰葉チャンの『楽しい』のハードル高すぎってくらいは楽しそうにしていたにゃ」

泰葉「そうなんだ……私、楽しそうに……。Pさん、私、アイドルになって良かったです。アイドルになって、私は、今、幸せです」

みく「なんでいきなり感動台詞みたいなこと言ってるの? そもそもPチャンここに居ないし」

泰葉「良いシーンでこれを言ったらPさんは泣いてくれると思います」

みく「絶対泣くと思うけど今言う意味ないでしょ」

泰葉「はい」

みく「あっさり認められるとどう突っ込むべきか迷うにゃ」

泰葉「でしょうね」

みく「え? ぜんぶわかってて言ったの? 性格悪くない?」

泰葉「芸能界は華やかなだけの世界ではありませんからね。こういうところも必要なのです」

みく「絶対必要ないにゃ」

まゆ「プッ……漫才みたいなことをされると笑っちゃいます」

凛「うん……みく、面白いね。大阪の人はみんなそうなの?」

みく「大阪人だからってみんな面白いわけじゃないと思うにゃ……」

泰葉「確かに大阪人でも面白くない人は多いですからね。ウチの事務所でもえ」

みく「それ絶対本人の前で言っちゃダメだよ!?」

凛「確かに面白くはないね。えm」

みく「やめてあげて! 凛ちゃんまで言わないで!」

泰葉「かわいいんですけどね……アイドルとしては良いと思うのですが、致命的なまでに面白くない。面と向かっては言えませんが」

みく「面と向かって言ったら泣いちゃうかもしれないから絶対に言わないでよね……」

泰葉「もし言ったら『え? ウチが面白うない? ははは、泰葉はん、それは冗談キツいわ。……ほんまに? ……そっかぁ。面白うないかぁ……ウチ、ずっとスベってたんかぁ……。なんや、ウチ、アホみたいやなぁ。……ははは、ごめんな、泰葉はん。これからは、ウチ、つまらへんこと言わんことにするわ。……ほんま、ごめんなぁ』ってなりそうですね」

みく「やめて! 泰葉チャンの演技力だと本人が言ってるみたいに聞こえるから!」

凛「大丈夫だよ、笑美。確かに笑美はあんまり面白くないけど、ファンの人たちはそういうところも含めて笑美のことを好きなんだと思うよ。私もそうだし」

みく「名前出しちゃったにゃ……」

泰葉「でも、笑美さんもツッコミならできますからね……彼女の言葉を考えても、本来はツッコミの人間なんだと思います。実際、そういう方面では受けていましたし。ボケとしては本当にダメですが」

みく「褒めてるのかけなしているのかわからないにゃあ……」

泰葉「褒めていますよ? そんなことを言ったら、私はみくさんをツッコミが上手いと褒められなくなってしまいます。みくさんだってツッコミは上手いですけどボケをやる時は正直スベってますし。何ならネコキャラアイドルアピールをする時もたまにスベってますからね」

みく「面と向かってそんなことを言われるとは思わなかったにゃ」

泰葉「私とみくさんの仲なら許してくれると思ったので」

みく「なんか複雑だにゃあ」

凛「みく……泰葉に信頼されてるんだね。ちょっと羨ましいかも」

まゆ「みくちゃん、いいですね。泰葉ちゃんにそこまで言わせるなんて」

みく「羨ましがってるところ悪いけれどそんなに良いものじゃないよ?」

みく「というか、すっかり話が逸れちゃたけど、正妻、正妻の話だよ。凛チャンはどうしてそういう話をし始めたの?」

凛「最近、私が正妻だってことで色々と言われるようになったでしょ? ほら、ドラマもあったし」

みく「あー……あのドラマね。確かに、それで色々と言われているような気はするにゃ」

まゆ「まゆはそもそも出番が少ないですけどねぇ」

泰葉「そもそも私は出てませんが」

まゆ「あっ……ご、ごめんなさい」

泰葉「いいですよ。2クール目には漫画の方の『NGs』みたいに凛さんたちの先輩役として出演するので」

みく「でもドラマの方では先輩役は完全に美嘉チャ……何でもないにゃ」

みく「……というか、凛チャン。正妻だって言うけど……ドラマの方だったら、それ、Pチャンじゃなくて武内チャンじゃないかにゃ?」

凛「それが、最近はドラマの方だけじゃなくて、『本当に凛ちゃんはプロデューサーの正妻なのでは?』なんて風潮もあってね」

泰葉「あー……だから、ですか」

まゆ「? 何か心当りでもあるんですか?」

泰葉「最近、昔から仕事でお世話になっているスタッフさんからそういうことを聞かれたりするんです。凛ちゃんは大人気アイドルですからね。やっぱり噂になってるみたいです」

みく「そういうのだと武内チャンとの方が噂になりそうだけど」

泰葉「武内さんの普段の顔を知っているスタッフさんがそんなことを言うとでも?」

みく「……確かに。武内チャンのことを実際に知っていると、そういうことは考えられないもんね」

凛「でも、ドラマを見た人はそう思わないで、そんなことを言ったりする。……そもそも、私としてはドラマだけを見たら私と武内さん、良くて父親と娘みたいな感じだと思うんだけどね。あるいは教師と生徒? 少なくとも『正妻』ではないと思うな」

まゆ「父親と娘って……確かにそう見えないこともないですけど、武内さんの年齢って」

みく「その話はやめるにゃ」

凛「でも、どうしてかそういう話があったりした。……まあ、私は出番が多かったし、武内さんとの絡みも多かったからね。それが原因でそういう話になったのかも。……でも、たとえそうだとしても、私とプロデューサーが、という発想にはならないと思うんだけど……」

泰葉「……それに関しては、色々な誤解が積み重なって、かもしれませんね。たぶん、ドラマが始まる前からそういう噂自体はあったんだと思います。Pさんと凛さんは仲が良いでしょう? たとえ二人の間にそういった感情がなかったとしても、仲の良い男女を見て、そう思われてしまうこともあるのかもしれません」

みく「ということは、この風潮はスタッフさん発、なのかにゃ?」

泰葉「そうかもしれません。少なくとも、現場を知っている人ではないか、と……」

まゆ「……泰葉ちゃんの言っていることはわかります。でも、それだと、凛ちゃん以外のアイドルにそういう噂がないことに説明がつかないような気がしますけど」

泰葉「はい。たぶん、他のアイドルに関しても多少はそういう噂があるんだと思いますよ? ただ、凛さんの場合はドラマという起爆剤があった。だから、『そういう話』が好きな人たちが騒ぎ立てた……とそういった感じではないでしょうか」

まゆ「そういうこと、ですか……どうやったら、この噂は消えるんですかね」

泰葉「自然消滅を待つしかない、と思います。凛さんには悪いですけど……」

凛「……ううん、いいよ、泰葉。ありがとう。そりゃあ、そういう風潮がなくなればいいとは思うけれど、なくならないんだったらそれでいいよ。アイドルとしてはどうかと思うし、私は否定し続けるけれど、私は聞いてほしかっただけだから。今は、ただ、こうして聞いてくれたってだけで満足だよ」

まゆ「凛ちゃん……そうだったんですね。凛ちゃんは、ただ……。それなのに、まゆ、勝手に騒いじゃって……ごめんなさい」

凛「べつにいいよ。こっちこそ、変なことを言って戸惑わせちゃってごめんね。……泰葉とみくも、巻き込んじゃってごめんね。でも、聞いてくれて、ちょっとは心が軽くなったよ。ありがとう」

泰葉「いえ、構いませんよ。私も凛さんにはお世話になっていますから。この程度なら、いつでも聞きます」

みく「みくもべつにいいよ。困っているならいつでもみくを頼ってほしいにゃ」

凛「二人とも……うん、ありがとう。私、こんな仲間に恵まれて、本当に良かったよ」

泰葉「凛さん……いえ、どういたしまして」

みく「凛チャン……みくも、凛ちゃんたちと一緒で幸せだよ」

凛「……そろそろ、行こうか。ずっとここで話しているのも何だし、ね」

まゆ「……はい。そうですね。行きましょう」

泰葉「私たちがみんな同じ場所に行くわけではないですけど」

みく「みくはそもそも通りがかりだしね。みくは今からレッスンの予定だけど、3人は?」

凛「私とまゆは仕事、かな。プロデューサー待ち」

泰葉「私はレッスンです。でも、時間があったのでちょっと話していた、というところですね」

みく「そうなんだ。じゃあ、泰葉チャン、一緒に行こっか」

泰葉「はい」

みく「それじゃ、凛チャン、まゆチャン、また明日ね」

凛「うん、また明日」

泰葉「また明日、ですね」

まゆ「また明日、よろしくお願いします」

ドア「バタン」

――レッスン場

みく(……結局良い話っぽくなったけれど、なにか忘れているような気がするにゃ。なんだったっけ……)キガエキガエ

みく(まあ、たぶん、そこまで重要なことじゃないにゃ。今からレッスンなんだから、頭を切り替えないと)キガエオワリ

みく(さて、行くにゃ!)

李衣菜「私はCoolですよね!? そうですよね!?」

トレーナー「は、はい……李衣菜ちゃんはCoolですけど……」

李衣菜「どこが! どこがCoolなんですか!?」

トレーナー「え……ろ、ロックなところ?」

李衣菜「ロックはPaなんですよ! それ以外でお願いします!」

トレーナー「えっ……」

李衣菜「さぁ! お願いします! トレーナーさんなら、トレーナーさんならわかりますよね!?」

トレーナー「……」

李衣菜「……」

トレーナー「……その、ぴ、Pさんに聞けばわかるんじゃないかしら」メソラシ

李衣菜「……や」

トレーナー「……や?」

李衣菜「やっぱり私、Coolじゃないんだぁー!」タッタッタ

トレーナー「ちょっ、李衣菜ちゃーん!?」

みく「……」

みく「……」スマホトリダシ

みく「……」スマホポチポチ

みく「……あ、夏樹チャン? ちょっと今から李衣菜チャンがそっちに行って李衣菜チャンのどこがCoolなのかって聞かれると思うから、答えを考えておいて欲しいにゃ。……え? いや、どうしてそんなことになったかは知らないよ? 本当本当。嘘じゃないよ。……うん、それじゃ、お願いね」

みく「……ふぅ」

みく(……これで、忘れていることはないよね)


――

???「……クシュッ。ん? なんやろ? もしかしてウチのことを誰か噂してるんかな? 『笑美ちゃんはやっぱり面白い』……とか? へへっ、もっと頑張らなあかんな!」

???「煩わしい太陽ね」

???「おっ、蘭子はん。ちょうどええとこに来たわ。ちょっと見てもらいたいネタがあってな……」

???「おぉ! 世界に笑みの花咲かせし者の新術か! ……ククク、我が瞳も期待に疼いているわ!」

???「いつも通り何言っとるかようわからんけど……まあ、楽しみにしてくれてるってことやな! じゃあいくで――」


おわりん

李衣菜Pと蘭子Pと笑美Pにはごめんなさい。
李衣菜はかわいいし蘭子はかわいいし笑美はかわいいと思います。

読んで下さりありがとうございました。

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