幼女「ふぇぇ……」男「うへへへ。泣いても誰も来ないぜぇ」 (855)

幼女「おじさん、誰ぇ?」

男「おじさんはねぇ、キミのことが大好きなんだよ?だからさ、こうして連れてきたんだよ」


幼女「でもさ、これっていけないことなんじゃないの?」

男「そんなことないよ。おじさんは、純粋にキミを……」

幼女「でも、これって未成年者略取・誘拐の罪になるんじゃない?」

男「へ?」

幼女「仮にここで私を好きにしても、おじさんは社会的に抹殺されるよね?今の世の中、顔なんてすぐにネットで出回るし、ろくな就職なんて出来ないだろうし。そもそも、仮に就職しても私や家族への慰謝料で大半は飛ぶけどね」

男「ええと……」

幼女「つまり、おじさんの人生は、私の手にかかってるってことよね?おじさんを生かすも殺すも、私次第なのよ?」クスクス

男「」

そうだね

(・ω・)つビデオカメラ

幼女(45才)

逆レイプですねわかります

童貞の妄想乙
実際にレイプした事がある俺から言わせると
泣くだけでそんな事言ってる余裕ねえよwwwwww


あ、これ妄想で書いてるだけだから通報してもムダだよwwww

男「ご、ごめんなさい……」

幼女「あら、謝罪の言葉程度で終われると思ってるの?おじさんは、もう既遂なのよ?あとは私が警察署に駆け込むだけなのよ?」

男「くっ……」

幼女「さあ、どうするの?おじさん??」クスクス 

男「……なんでも、します。だから……許してください……」

幼女「アハハハ……!分かってるじゃない!それでいいのよ、それで!アハハハ……!」

>>6
つまりお前は童貞か。
童貞乙

>>6
おけ、通報した

この幼女少なくとも2周目だろうな

>>7
ん?

男「……それで、何をすれば?」

幼女「そうねぇ……。まずは、私の家に電話して貰おうかしら」

男「家に?なんて言えばいいんだ?」

幼女「……」

男「……?」

幼女「……まだ、自分の立場が分かってないのかしら?敬語くらい使いなさい!!」

男「ヒィィ!す、すみません!」

幼女「ふん。まあいいわ。……簡単なことよ。私を、誘拐したって言えばいいのよ」

男「ゆ、誘拐!?」

幼女「なにを驚いているの?」

男「だ、だって誘拐って……」

幼女「なによ。現に、今してるじゃない」

男「そ、それはそうですけど……。電話したら、もう後に引けなくなるじゃないですか」

幼女「ああ、それなら大丈夫よ。ちゃんと考えてるから」

男「ほ、ほんとですか?」

幼女「疑い深いわね……。もういいわ。私がかけるから」スッ――

男「スマホ、持ってたんすか……」

幼女「当然よ。今の世の中、幼稚園で持ってても不思議じゃないわ」ピッピッピッ…

プルルルル……プルルルル……ガチャ

母『もしもし?』

幼女「……」

母『もしもし?どうしたの?』

幼女「マ、ママ?ちょっと話が……」

母『だからどうしたのよ。ママ、まだちょっと仕事中で……』

幼女「ヒィ!ご、ごめんなさい!言うから叩かないで!」

母『――ッ!?どうしたの!?ねえ!?』

幼女「……む、娘は預かった。返して欲しければ、言うとおりにしろ」

母『なッ!?』

幼女「指示は追って連絡する。なお、お前の家の様子は仲間が見ている。もし警察に連絡すれば、娘とは二度と会えないものと思え」

母『ちょっと!言わされているの!?大丈夫なの!?』

娘「娘を思うなら、下手なことをするな。……ママ!助け――」ガチャ

男「……」

幼女「ふぅ……こんなもんでいいでしょ」

男「マジでしやがった……」

幼女「私の演技もなかなかでしょ?」クスクス

男「やべえよ。マジでやべえよ……」

幼女「今さら何ビビってるのよ。ほら、行くわよ」

男「行くって……どこへ?」

幼女「どっかよ。まあ警察には連絡しないとは思うけど、仮にされたときに逆探知されたら面倒だし。携帯の電源は切るわよ。後の連絡は、公衆電話からね。もちろん、防犯カメラの心配がないところで」

男「……」

幼女「ほら、行くわよ」スタスタ…… 

男「お、おい!待てって……!」スタスタ……

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

男「……なあ」

幼女「何よ」

男「電車なんて乗って、どこ行くんだよ。おまけに、あんなに大金引き出して……。てか、なんでキャッシュカードなんて持ってんだよ」

幼女「敬語くらい使いなさいって言ったでしょ?……お金を下ろしたから遠くに行くのよ。履歴にのこるし

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

男「……なあ」

幼女「何よ」

男「電車なんて乗って、どこ行くんだよ。おまけに、あんなに大金引き出して……。てか、なんでキャッシュカードなんて持ってんだよ」

幼女「敬語くらい使いなさいって言ったでしょ?……お金を下ろしたから遠くに行くのよ。履歴に残るし」

男「だったら下ろさなきゃ良かっただろ?」

幼女「バカね。これからの旅費、あんたなんかに出せるわけないでしょ?カード使ったらバレちゃうし、基本は現金払いなのよ?」

男「……クレジットカードも持ってるんかい」

幼女「当然よ」

男(え?何者?)

こいつ幼女じゃねぇなw

男「とりあえず、海に来たのはいいけれど……」

幼女「……」

男「こんなところに来て……」

幼女「……」

男「なんんんもないんだけどさ……」

幼女「……海だあああ!」ダッ――!!

男「!?」

幼女「水気持ちい!アハハハ…!」

男「……あんなにはしゃぎやがって……。子供かよ……」

男「……」

男「……」

男「……子供だけど」

幼女「ああ楽しい!」

男「……おい。こんなことしてる場合か?」

幼女「別にいいじゃない。こんな短時間に居場所なんてわかるわけないし。山と海しかない片田舎よ?当分は安全よ」

男「はぁぁ……なんでこんなことに……」

幼女「あんたが私をさらったからでしょ?」 

男「どっちかって言うと、今は俺がさらわれてるけどな……」

幼女「……ところで、あんた仕事は?してないの?」

男「……してたけど、もう辞めた」

幼女「は?なんでよ」

男「俺に合わなかったんだよ。したくもないことを毎日毎日してさ。なんか、どうでもよくなったんだよ」

幼女「……で、私をさらった、ってこと?」

男「ああ」

幼女「ふ~ん……」

男「お前こそ、なんでこんなことしてんだよ」

幼女「私?」

男「そうそう。なんでこんな大それたことしたんだよ」

幼女「う~ん……退屈だったから」

男「退屈?毎日遊んで、幼稚園行ってるんだろ?」

幼女「ああ、私幼稚園なんて行ってないわよ」

男「は?じゃあ保育園?」

幼女「ううん。自宅学習してる。この前、高校課程終わったとこ」

男「こ、高校!?嘘だろ……」

幼女「ほんとよ。なんなら、なんか解いてあげるわよ。微分積分?正弦定理?なんでも出していいわよ?」

男「い、いや……いいけど……」

ロリババァかな?

幼女「今の世の中学力が全てじゃない?だから、小さい頃からたくさん勉強させられてたんだよね」

男(いや、今も小さいんだけど……)

幼女「最初は家庭教師付けてたんだけど、あの人達って参考書通りにしかしないのよね。だから断って、自分で勉強してるの」

男「……お父さんとお母さんは、何も言わないのか?」

幼女「別に。パパもママも、毎日仕事忙しいし。たまに出かけるけど、いつも途中で呼び出されて仕事。ただ、勉強してたら褒めて来るのよね。よく出来たね、凄いねって……」

男「だからしてるのか?」

幼女「そんなわけじゃないわよ。ただ、私の居場所ってそこしかないのよね。私の価値も。私が勉強することで、パパとママのステータスになるのよ。自分の子供は天才だって、仕事の人に自慢できるでしょ?」

男「……」

おもしろい

~幼女自宅~
父「そうか……娘が……」

母「そうよ!早く警察に……!」

父「落ち着け。警察に通報したところで、居場所なんて分からん。それよりも……おい」

???「はい……」

母「こ、この人は?」

父「私の会社のものでな。少々、“小汚い”仕事を専門でしている者だ」

???「……」

父「……娘を連れ戻せ」

???「分かりました。犯人は、いかがいたしますか?」

父「決まっている。目には目を、だ……」

???「コクリ……」ガチャ……

母「だ、大丈夫なの?」

父「ああ。何も心配する必要はない。何も、な……」

~数時間後~

男「……で?今日はどこに泊まるんだ?」

幼女「そうねぇ……」

男「もう日も落ちてきたし。今から宿探しても見つからないぞ?」

幼女「……仕方ないわね。今日は野宿しましょ」 

男「結局かよ……」

幼女「いいじゃない。今日は雨も降らないし」

男「別にいいけどな。それより、早く山に身を――」

男「――ッ!?」

幼女「……どうしたの?」

男「しっ!誰かにつけられてる……」

幼女「えっ!?」

面白い

見てるぞ

ぼっちの索敵スキルはすごいからな

>>14
娘がいきなり現れてビックリした

男「身を屈ませろ」

幼女「う、うん……」スッ――

男「……」

幼女「な、なんで分かるの?」

男「静かにしてろ」

幼女「……」

男(一人……二人……。二人だけか……こんなに早く嗅ぎつけられるとはな。ほんと、この子、何者なんだろうな……)

幼女「ど、どうするの?」

男「……逃げても無駄だろうな。それなら、方法は一つだ……」

面白いな

続き期待。
>>1飽きちゃったか

男「……」スクッ……

幼女「――ッ!?ちょ、ちょっと!」

男「……いるんだろ?出て来いよ」

ザッ――

スーツ男A「……よく分かったな」

スーツ男B「しかし、どういうつもりだ?」

男「どうせ隠れても無駄だろ。それより、一応聞いておくけど……用件はなんだ?」

スーツ男A「聞くまでもないだろ……」スッ―

スーツ男B「お嬢様を、返して貰おうか……」スッ―

男「……お前の親父さん、警察より面倒な奴らに連絡したみたいだな……」

幼女「パ、パパが……」

男「……」

男(辺りは木々に囲まれている。俺一人逃げようと思えば逃げられるが……)

幼女「て」

んが

誘拐犯なのに幼女を助けようとする姿勇ましい

男「……」

男(辺りは木々に囲まれている。俺一人逃げようと思えば逃げられるが……)

幼女「……」ブルブル……

男(……ったく。本当なら、すぐにでもこいつを押し付けてさっさとサヨナラしたいんだけどな……)

スーツ男A「……」ダッ――

スーツ男B「……」ダッ――

幼女「――ッ!?き、来たよ!」

男「……」

スーツ男A「脇見するとはな!」ブオン!!

幼女「……ッ!」






――バキィッ!!

スーツ男A「あぐっ――!」ドサァッ!!

スーツ男B「――ッ!?な、なに!?」

男「……」

幼女「……え?え?な、何をしたの?」

誘拐犯つおい

ロリコンのくせに強いな

続きはよ

ゆったり待つ。

スーツ男B「な、何をした!?」

男「……別に。ただ単に、殴ってきたから殴り返しただけだけど」

スーツ男B「チィッ!」スチャッ――

幼女「じゅ、銃!?」

男「……そこまでするかね、普通」

スーツ男B「フフフ……!調子に乗るからだ……!」

幼女「に、逃げておじさん!」

男「……」

スーツ男B「死ねぇ!!」

――ターーーーーン!!

幼女「――ッ!」

男「……」

スーツ男B「……な、なんだ…と……」バタッ

男「急所は外しておいたからな。死にはしない。ただ、早めに病院行けよ」

幼女「お、おじさん……?」

スーツ男B「ま、まさか……なぜお前が銃を……それに……俺よりも早い、だと……?」

男「銃は慣れてんだよ。職業柄、な……」

男「……」スタスタ……

幼女「……」スタスタ……

男「……」スタスタ……

幼女「……ねえ」

男「なんだよ」

幼女「どうして銃なんて持ってるの?」

男「……仕事柄、いつも持ってるんだよ」

幼女「仕事って……まさか、警察?」

男「ハハハ。警察は常に持ってるわけじゃねえよ。ドラマの見すぎだ」

幼女「じゃあ、なんでよ……」

男「……まあ、仕事にも色々あるんだよ。色々……」

幼女「……」

意味深

やだこのニートかっこいい…///

~幼女自宅~
父「なに!?やられただと!?」

スーツ男C「は、はい!お嬢様を連れ戻しに行った2名とも、負傷しまして……!」

母「そ、そんな……!」

父「……なんたることだ……!」

???「――それも、仕方ないでしょうね……」

父「――ッ!?だ、誰だ!」

???「開いてたもんで、勝手に入らせてもらったよ。……それより、あなたのお嬢さんを連れた男のことなんだけど……」

父「――ッ!?し、知ってるのか!?」

???「知ってるも何も、こちとらずっと探していた身でね。ようやく足を掴めたと思ったら、なんだか面倒なことになってて何が何やら……」

母「あ、あなたは……いったい……」

???「……挨拶が遅れたな。俺は、FBIの者だ。その男を追っている。俺達が、お嬢さんを連れ戻してあげますよ……」

期待

~山中~

男「……」

幼女「……」

男「……寝ないのか?」

幼女「……確か、仕事辞めたって言ってたわよね。どうして?」

男「言ったろ?合わなかったからって」

幼女「それだけ?」

男「……」

幼女「……」

つい見てしまう

男「……寝るまでの間、ちょっとした小話をしようか」

幼女「そんなのはいいからさ……」

男「まあ聞けって。……あるところに、一人の男がいたんだよ。そいつは、とても人に言えないようなことを生業にしてたんだ」

幼女「……人に言えないようなこと?」

男「ああ。暗殺、誘拐、買収、恐喝……頼まれればなんでもやる、とても汚い仕事だ」

幼女「……」

男「ある日、男は仕事を受けたんだ。某企業と対立関係にある企業の重役を、闇に葬るって仕事だ」

幼女「それって……」

男「男にとっては日常茶飯事のことだった。ちょうど前の仕事も終わったばかりだったから、男はそれを引き受けた」

幼女「……」

男「その日の夜、目標の家を突き止めた男は、そいつの家に言った。懐に、銃を忍ばせてな。家にはそいつしかいないはずだった。だからこそ、やりやすかった」

幼女「……」

男「そして男は、仕事を達成した。……その時だった。家の奥から、目標の子供が出てきたんだ。まだ小さい、ちょうどお前くらいの男の子がな」

幼女「……その人は、どうしたの?」

男「もちろん、その子に顔を見られてしまった以上、始末するしかなかった。だから男は、銃口をその子に向けたんだ」

幼女「……それで?」

男「……でも、男は引き金を引けなかった。変わり果てた父親の姿に泣きじゃくるその子を、撃てなかったんだ」

幼女「……」

立場が逆転しつつあるな

はよsage

誤爆

男「結局、男はその場から逃げ出した。もちろん、そんな小さな子供に見られたくらいなら仕事には支障なかったが……。男は、その子の顔が忘れられなかったんだよ。見慣れた景色の、ほんの一コマのはずの、その子の顔が、な……」

幼女「……それで?」

男「男は、それ以降仕事を受けることはなかった。事実上の引退だな。……ま、つまんない話だけどな」

幼女「……でも、その人はなんで忘れられなかったの?」

男「……きっとさ、気付いたんだよ。自分の人生のためにしてた仕事だけど、その手で消した人にもそいつの人生があったってことに。今さら取り返しもつかないはずなのに、誰かに許して欲しかったのかもな」

幼女「……じゃあ質問を変えるわね。おじさんは、どうして私をさらったの?」

男「……似たようなもんだ。俺はキミに、許して欲しかったんだと思う。汚れのない純粋さに、少しでも浄化させて欲しかったんだ。たぶんな」

幼女「……」

だとしてもうへへへはないだろw

幼女「……ふん。その男もバカよね。それまでのことなんて、何をしても消えるはずなんてないのに」

男「ああ。まったくだ。本当に、大バカ中の大バカ野郎だよ」

幼女「……」

男「……ほら、もう寝ろよ」

幼女「う、うん……」

男「……」

幼女「……」

男「……」

幼女「……」

男「……」

幼女「……私はさ」

男「?」

幼女「おじさんのこと、許してあげるわよ……」

男「……ありがと」

あげとく

~幼女自宅~
ガヤガヤ……

FBI「よーし!その機材はそこに運べ!それはここだ!」

「分かりました!」

ガヤガヤ……

父「こ、こんなに機材を……」

FBI「まあ、相手が相手ですしね」

母「あ、あの、娘といる男は、いったい……」

FBI「……詳しくは言えない。ただ、裏社会では既に生きる伝説になってる凄腕の仕事人……とだけ言っておきましょうか」

父「そ、そんな奴と、娘はいるのか……」

FBI「ええ、まあ。だが、確か引退したという噂があったんですがね。いやいや、最初聞いた時は何かの間違いかと思いましたよ。あいつが、こんなに簡単に足を出すなんてね」

父「……」

FBI「もちろん、娘さんは出来る限り無事取り戻します。……ですが、万が一ですが、相手も抵抗した場合は、激しい銃撃戦になるかもしれません」

母「そ、そんな……」

FBI「すみませんね。ですが、こちらも命がけなんですよ。相手も我々も、生死を問わず、ですよ……」

スレタイからこの流れを誰が予測できただろうか

~山中~
男「おい。起きろ」

幼女「……う、うーん……。もう朝?」

男「寝過ぎだ。もう昼前だぞ」

幼女「……ちょっと」

男「なんだよ」

幼女「なんで、私を背負ってるの?」

男「そりゃ、寝てたからな」

幼女「スケベ!変態!ド変態!」バタバタ

男「お、おい!背中で暴れるな!」

幼女「降ろして!降ーろーしーて!」バタバタ

男「分かったから!暴れんな……うおっ!」グラッ

幼女「キャアッ!」

……バタン

見てるゾ

幼女「……もう、痛かったじゃない」

男「お前が暴れるからだろ?……それより、ほら」

幼女「ん?あそこは、街?」

男「ああ」

幼女「あんなとこで、何するの?」

男「……」

幼女「ねえ……ねえって」

男「お前は……家に帰れ」

幼女「…………え?」

>幼女「スケベ!変態!ド変態!」バタバタ

何を今更www

幼女「え?……な、なんで?」

男「決まってるだろ。お前はまだ子供なんだよ。親御さんが心配してる」

幼女「で、でも……」

男「あの街に行って助けを求めれば、すぐに家に帰れるだろ」

幼女「ちょ、ちょっと待って……」

男「じゃ、俺は行くからな」スタスタ……

幼女「――待ってってば!!」

ピタッ……

男「……なんだよ」

幼女「……」

男「お前は家に帰れるんだぞ?これ以上、俺といる理由なんてないだろ」

幼女「……たくない……」

男「……え?」

幼女「――私!帰りたくないの!」

男「……お前……」

お?

幼女「あんな家に帰っても……誰もいないし……。いくら勉強しても、いい子にしてても、パパもママも、いつも仕事優先……」

男「……」

幼女「初めてなの!初めて、おじさんが私のこと大好きだって言ったの!誰からも愛されてない私を、おじさんは大好きだって言ったの……!」

男「……」

幼女「嬉しかった……変態だって分かってたけど、私嬉しかった……。だから、私はおじさんとここまで来たの……。私を好きだって言ったおじさんに、付いてきたの……」

男「……」

幼女「ひぐっ……ひぐっ……」

男「……そう、か……」

幼女「……」

名作

男「……分かったよ。なら、一緒に行こうか」

幼女「……」コクリ

男「……」

幼女「……」

男「……その前にさ、ちょっと待っててくれ」

幼女「……置いてく気?」

男「違うって。小便だ」

幼女「…………最っっっ低」

男「生理現象だ。仕方ないだろ」

幼女「もう……早くしてよね」

男「ああ」

スタスタ……

男「……」

男「……」

男「……さて……」

~幼女自宅~
プルルル……

父「――っ!?娘から!?」

FBI「来たか――!!」

父「どど、どうすれば……!」

FBI「落ち着いて。落ち着いて、ゆっくり話を伸ばしてください。冷静に……」

父「は、はい……!」

プルルル……プルルル……ガチャ

父「……も、もしもし?」

男『……初めまして、でいいのか?あの子の、父親か?』

父「あ、ああ!私が父だ!お、お前は……!」

男『ああそうさ。俺が、あんたの娘をさらった』

父「――ッ!」

父「む、娘は……どうした……!」

男『……』

父「おい!なんとか言え!」

FBI「お父さん、落ち着いて……」ヒソヒソ

男『……ククク。あんたの娘、元気だよ』

父「ほ、本当か!?」

男『ああ。実に、“いい声”で泣いていたよ。ククク……』

母「――ッ!?ああ……」バタッ

父「き、貴っっ様ぁぁ!!娘に、何をした!!」

男『ククク…』

父「殺してやる!殺してやる!!」

FBI「落ち着いてください。ただの挑発ですよ」ヒソヒソ

父「落ち着いてられるか!!」

男『……そこにいるんだろ?FBIの犬ども』

FBI「――ッ!」

男『そいつじゃ話にならない。変われ』

FBI「……」

FBI「……初めまして、仕事人さん」

男『ああ。初めまして』

FBI「まさか、こうして直に話を出来るなんてな。意外に若いんだな」

男『あんたもな。……それより、今から指定する場所に、金を持ってきて貰おうか』

FBI「……いくらだ?」

男『日本円で、30億』

FBI「……ずいぶん、ふっかけたものだな」

男『その父親なら、出せるだろ。もちろん、これからの生活は苦しくなるだろうが……。それは、俺の知ったことではない』

FBI「……とりあえず、場所を聞こうか」

男『○△県の、××山西側麓。耳そろえて用意しろよ』ガチャ――

ツー……ツー……

FBI「……」

父「くそっ……!くそっ……!」

母「……」

FBI「……どういうことだ……?」

父「……え?」

FBI「あいつが自分から尻尾を掴ませるなんて……あり得ない……」

父「ありえないも何も!現に身代金を要求してるじゃないか!」

FBI「それは……そうだが……」

父「私もそこへ行く!直接、あの男の顔を拝んでやる!!」

母「わ、わたしも」

母「わ、私も行きます……!娘のところへ……!」

FBI「……何を言っても、無駄なようですね……。分かりました。あなた方の身は、私達が必ず守ります」

父「私らはいい!……娘を……娘を、必ず救い出してくれ……!!」

FBI「はい……」

先がすごい気になる

~山中~
スタスタ……

男「……待たせたな」

幼女「遅かったじゃない。何してたの?」

男「大したことじゃない。クソだ」

幼女「ほんっっっと!最っっっっ低!!」

男「うるせえな。ほら、行くぞ」

幼女「行くって……どこへ……?」

男「頂上付近。とりあえず、人気がないところで今日は過ごす」

幼女「う、うん……」

スタスタ……

男「……」

男(あと、数時間ってところか……急ぐか……)

スタスタ……

やっと追いついた

~数時間後~

ガヤガヤ……

FBI「俺と来る奴は防弾チョッキ、ヘルメットの着装を忘れるな!狙撃班は後方300メートルの距離を保て!持ち物は持ちすぎるなよ!いざという時に走れなくなるぞ!」

「了解!!」

FBI「急げ!遅れるなよ!」

ガヤガヤ……

父「……」

母「……」

FBI「あなた方も、防弾チョッキの着装を……」

父「は、はい……」

FBI「……」

FBI(いよいよか……。ようやく、この時が来たな……)

FBI「――出発!!」

すいみませーん、まーだ時間かかりそうですかね?

黙って待とうぜ。急かされると書く気無くすと思うから

>>79
黙ってろ厨房

~山頂~

男「――ッ!」

幼女「どうしたの?」

男「来たか……」

幼女「来たって……警察!?」

男「いや……もっと質が悪い連中だ。俺の、客だ」

幼女「ど、どうするの?」

男「数は多いが……まあ、ある程度は減るだろうな」

幼女「?」

ふむ

追い付いた…
ゆったりでいい、焦らないで書いてほしい

男のかっこいい詐欺SS(歓喜)

~山中~
スタスタ……

FBI「……」

FBI(……おかしい。ここまで、あの仕事人が何もしてこないとは……)

スタスタ…………カチッ

FBI「……ん?」

――ヒュンヒュンヒュンヒュン……ドドドドド!!

「――ッ!?き、木が落ちてくるぞ!!」

FBI「な、なにっ!?」

ドドドドド……!!

「う、うわあああ!!」

「ひいいい!!」

ドドドドド…!!

FBI「と、トラップだ!岩の影に隠れろ!!」

ドドドドド…!!

「うわあああ!」

「退避いい!!」

FBI「なんたる姑息な手を……!!」

~山頂~

ウワアアア……!!
ヒイイイ……!!

幼女「……なんか、下から阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえてくるんだけど……」

男「う~ん……予想以上にトラップが上手くいったみたいだな」

幼女「トラップって……いつの間に」

男「ついさっきだよ」

幼女「抜け目ないと言うか用意がいいと言うか……」

男「どっちでもいいだろ。ほら、お前はここに隠れてろ。相手も全員のびるわけじゃないんだからな」

幼女「う、うん……」コソコソ……

かっこええな

FBI「はぁ……はぁ……くそっ!残ったのは俺達だけか!」

父「ど、どうなってるんだ!?」

母「これも、犯人の仕業なの!?」

FBI「そうらしい……。だが、あなた方が無事でよかった」

FBI(本当に、よかった……)

FBI「……ともかく、上を目指しましょう」

父「ああ!分かった!」

母「ええ!」

スタスタ……

FBI(……もうすぐだ……)

面白い

最初のヘタレは何だったんだ

~山頂~
FBI「ここが、山頂か……」

父「わ、私だ!娘はどこだ!」

母「き、聞こえてるの!?私もいます!」

幼女(パパ……!ママ……!)

スタスタ……

男「……遅かったじゃないか」

父「――ッ!お、お前が……!?」

男「ああ。あんたの娘をさらった、犯人だよ」

母「娘は……娘はどこ?」

男「安心しろ。安全なところにいる」

FBI「……こうして顔を合わせるのは、初めてだな」

男「ああ。俺としては、見たくなかったけどな……」

FBI「そうか?俺は会いたかったがな。それにしても、裏社会であれだけ名が売れていたお前が、こんなちんけな犯罪を犯すとはな……。おまけに、こんなに簡単に顔を見せるとは……」

男「……俺の、勝手だろ?」

FBI「ハハハ。違いない……」

男「そんなことより、さっさと商談に移ろうや。……金は、持ってきたか?」

父「あ、ああ!この山の麓にちゃんと置いてある!嘘じゃない!」

男「そうか……。あんたの金、尽きたんじゃねえか?」

父「……」

母「……」

幼女(……)

男「これからの生活、苦しくなるな……」

父「……それがどうした!」

幼女(――ッ!)

父「娘が無事に帰るなら、そんな金いくらでもくれてやる!」

母「あの子以上に大切なものなんてないわ!だから……娘を返して……!」

男「……そう、か……」

幼女(パパ……ママ……!)

ええ奴や、、

超展開

胸熱ですね 胸熱ーーーッ!

男「……ちょっと待ってろ」スタスタ……

幼女「……」

男「……だとよ」

幼女「……うん……」

男「なんだよお前。ちゃんと愛されてるじゃねえか。親父さんにも、お袋さんにも。何が居場所がないだ。ちゃんとあるじゃねえか。お前だけの居場所がよ」

幼女「うん……うん……!」ポロポロ

男「……ほら、帰ってやれよ。お前の大好きな、お前のことを心から思う両親のところにさ……」

幼女「……うん!」ダッ――!!

タタタ……!!

タタタ……!!

幼女「パパ!ママ!」

父「お、おお!!」

母「無事だったのね!」

男「……フッ」スタスタ……

幼女「パパ!ママ!ごめんなさい!私……私……!」




FBI「――やっと出てきたか……」

男「――ッ!?」

ターーーーン!!

父「うぐっ!?」バタッ

母「……あ、あなた?――あなた……!?」

FBI「うるさい」

ターーーーン!!!

母「うっ……!」バタッ

幼女「……え?」

え、、、?

FBIてめぇえー!

幼女「……パ、パパ?ママ?」

父「……」

母「……」

幼女「……いや……いやああああ!!」

FBI「……たく。手間取らせやがって……」

男「……お前……!!なぜだ!?なぜ撃った!!」

FBI「……」

男「答えろ!!」

――ターーーーン!!!
バシュン――!!

男「――ッ!?」

FBI「……今のは警告だ。それ以上動くと、次は頭を撃ち抜くぞ?」

男(くそっ!狙撃班か……!)

幼女「うわあああん……!!パパああ!ママああ!」

幼女…うっ

FBI「……さて、ようやく俺も仕事を終えそうだ。感謝するぞ、仕事人……」

男「くっ……!仕事ってなんだ!?何が狙いだ!?」

FBI「……まあ、どうせお前は処刑台行きだしな。いいだろう。冥途の土産に話してやるよ」

男「……」

FBI「俺達の狙いは、お前なんかじゃねえんだよ。その子だ……」

幼女「……え?」

男「なん……だと……?」

FBI「おそらく、その子自身も知らないだろうがな。その子は、普通の人間じゃない。この世界初の、人造人間なんだよ」

男「なっ――!?」

幼女「――ッ!?」

FBI「この夫婦は、その子の開発者だった。秘密裏
その子を開発し、誕生させたんだ。そして、自分の子供として育てたんだよ」

幼女「……う、嘘……」

FBI「真実だ。並外れた知識が、その証拠だ」

男「……嘘だろ……」

ファーwww

幼女「そ、そんな……」

父「……うぅ……娘よ……」

幼女「――ッ!?パ、パパ!?」

FBI「……ちっ。まだ生きてたか……」

幼女「パパ!しっかりして!」

父「……い、今、この男が話したのは……事実だ……」

幼女「そ、そんな……」

父「わ、私達は……子供が欲しかった……。子宝に恵まれず……それでも欲しかった……。そして……お前を生み出した……」

男「……」

幼女「……」

父「だ、だが、一つだけ分かってほしい……。私達は……間違いなく、お前を愛していた……こ、心から……」

幼女「パパ……!」

父「む、娘よ……強く、生きろ……生き…ろ……」ガクッ

幼女「……パ……パパあああ!!」

泣いた

男「……その子を、どうするつもりだ?」

FBI「決まってる。本国へ持ち帰り、研究するんだよ」

男「……研究、だと?」

FBI「ああ。何せ、世界初の人造人間だ。研究を進めれば、本国はたちまちこの世界で不動の地位を確立出来る。軍事、商業……全てを牛耳ることが出来るんだよ」

男「……その子をバラバラにするつもりか?」

FBI「ああ。かまいやしない。なにせ、そいつは化け物だからな」

幼女「……」

男「……黙れ」

FBI「なんだ?怒ってるのか?化け物を化け物と言って何が悪い。まあ、そいつでも本国の為に死ねるんだ。いちおう、感謝はしてるよ」

男「黙れよ!!」スチャッ

FBI「……ほう。銃を向けるか……。だが、どうするつもりだ?今まさに、お前はスナイパーの標的になってるんだぞ?」

男「……」

FBI「……終わりだ。お前も、その子も、な……」

流れが…読めない…

超展開杉ワロタ

男「……それは、どうかな……!!」

タタターーーーーン!!!

FBI「――ッ!?」


……シィーーーン……

男「……」

FBI「……フフフ……外れたな。この距離で外すとは……お前も落ちたもの――」

男「――外れてねえよ。狙い通りだ」

FBI「……何?」

男「……」

FBI「……ふん。強がりを……。もう終わりにするか。――狙撃班。合図と共に撃て」

男「……」

FBI「――撃て!!」





シィーーーン……

FBI「……な、なんだと?」

男「どうした?自慢の狙撃班で、撃たないのか?」

FBI「そ、狙撃班!どうした!応答しろ!」

シィーーーン……

FBI「……ま、まさか……!お前……!」

男「ああ。さっき俺が狙ったのは、お前じゃない。――スナイパー達だ」

FBI「――ッ!?」

追いついたぞえ

FBI「ば、バカな……!どれだけ離れてると思ってる!?それに、狙撃班の居場所なんて……!」

男「お前らの敗因は、一つ。最初の狙撃で、俺を撃たなかったことだ。放たれた弾道から計算すれば、狙撃班の位置なんてすぐに分かる」

FBI「バ、バカな……!よしんば分かったとして、これだけの暗闇の中、ただの銃で狙えるはずは……!」

男「……俺を、誰だと思ってるんだ?伊達にこの仕事はしてねえんだよ」

FBI「……っ!!ば、化け物め……!」スチャッ

男「サヨナラだ。クソ野郎……!」スチャッ

――ターーーーーーーンッッ!!

男「……」

FBI「……」

男「……」

FBI「……が……はっ……」バタッ

男「……」

FBI「……こ、これで終わったと思うなよ……」

男「……」

FBI「その娘は……既に世界中が知っている存在だ……。裏社会から……国家から……常に狙われる存在なんだ……」

男「……」

FBI「お、お前ごとき小物に……その娘を守れるかな……ハ、ハハ……ハハハ……!」

ターーーーーン!!

FBI「おぶっ――!」ガクッ

男「……品のねえ断末魔だな。黙ってろよ」

ほむ 

ふむ

男「……大丈夫か?」

幼女「……」

男「……」

幼女「……パパも、ママも……」

男「……ん?」

幼女「私のこと……本当の子供のように思ってくれてたのかな……」

男「……違うな。本当の子供のように、じゃない。本当の子供だったんだよ。お前は……」

幼女「――ッ!う、うん……!」ポロポロ

男「これから……どうするんだ?」

幼女「うん……分からない……」

男「……だったら、俺と来いよ」

幼女「……え?」

男「お前の親父さん達の意思は、俺が引き継ぐ。俺がお前を守る。絶対に……」

幼女「……本当?」

男「ああ。約束する」

幼女「……うん」

~数十分後~

男「……最後の挨拶、ちゃんと出来たか?」

幼女「うん……」

男「じゃあ、行くか……」

幼女「うん……」

スタスタ……

男「……」

幼女「……おじさんさ、物凄く射撃が上手いんだね……」

男「まあな。それしか能がないんだよ」

幼女「他には、特技とかないの?」

男「うう~ん……。あやとり、かな。今度教えてやるよ」

幼女「うん。……最後にさ、名前教えてよ。おじさんの、本当の名前……」

男「……俺の名前は、のび太。野比、のび太だ……」

幼女「……変な名前」

男「ほっとけ。ほら、行くぞ」

幼女「うん……!」

スタスタ……







終わりでいい?
続きあったほうがいい?

>>117
IDいい感じだな

おまいの好きなようにすればええんやで

最後ワロタ
続くなら待つ

のび太わろたwww書いてくれるなら嬉しい

じゃ書く
ノープランだから勢いだけで書くけど
セリフだけって難しいね

幼女はリルルかなにかかな?

ドラえもんや他の奴らも気になる

支援

とりあえず今は続きを期待しようあげ

まさかののび太かよ乙

最後のあやとりでまさかとは思ったがやっぱのび太か
次回作も期待したいおもろかった乙

SS支援

……の前に既に終わってた。サイカノ期待

 季節は、秋へと移り変わる。先日まで緑色に染まっていた街路樹は、深い紅で彩られていた。しかし風が街を吹き抜ければ、葉達はたちまち枝を離れ、空を舞う。
 鮮やかさと儚さ……それらを同時に感じ取れるこの季節は、どこか感慨深い。

「のび太。早く来てよ」

 リルルは、急かすように歩きながら振り返ってきた。

「そう急ぐこともないだろ」

「もう……。のび太はいっつもそう。のんびりし過ぎ」

 少しだけ不機嫌そうに口を膨らませ、彼女は再び前を見る。しかしふいに空を見上げれば、そこには風に乗る紅葉が。
 その光景に、彼女は笑った。

「……見て。躍ってるみたい」

「……ああ。そうだな」

 そして俺達は、落ち葉の絨毯を歩いていった。

 リルルは、さっきまでの不機嫌さはどこへやら。上機嫌に歩いていた。

「のび太ー! 遅いよー!」

 天真爛漫と言うべきか。しかしながら、一つだけもの申そうか。

「……リルル。その、“のび太”って言い方止めてくれないか?」

「え? なんで?」

「なんでって……。俺さ、お前より遙かに年上なんだけど。呼び捨てってどうよ」

「ん? 何がいけないの?」

 彼女は大きな目で俺を見てきた。どうやら、本気で何も思わないらしい。

「……いや、もういいよ」

「……なんで疲れた顔してるのよ」

「だから、もういいって」

「変なのび太。それより、これからどうするの?」

「ちょっと、知り合いのところに行く」

「……知り合いって?」

 リルルは、少しだけ不安そうな表情を見せる。

「昔からの知り合いなんだよ。大丈夫だ」

「……そ」

 俺達は、とある人物の元へと向かっていた。
 心から信頼出来る、その人のところへ……。

あれ、ガチになってる

>>131
こっちの方が書きやすい
セリフだけはキツかった(´・ω・`)

描写が変わっただと!

しえん

乗っ取りかと思ってたよ

wktk

 その街の一角には、とある商店があった。
 外見はかなり年季が入り、コンクリートの壁にはところどころヒビがある。

「……おい。いるか?」

 店の中へ、声をかける。後ろにいたリルルは、店の看板を見上げていた。

「……ここ、なに?」

「言ったろ? 知り合いのとこって」

「ふーん……」

 リルルは、改めて看板をマジマジと見つめる。すると奥から、野太い男の声が聞こえてきた。

「……いらっしゃーい」

「……相変わらず、不機嫌そうだな」

「――ッ!? その声は……!」

 俺の声を聞いた瞬間、慌ただしい足音が近付いてきた。 
 その時、リルルが看板の屋号を口にした。

「……剛田、商店……」

 それと同時に、店主が顔を出す。

「……やっぱり、のび太か……!」

「ジャイアン……久しぶり」

 ジャイアンは、あの頃と変わらない笑顔を俺に見せていた。

うまいなー

射撃の腕は伏線だったのか…支援

たてかべ和也さん亡くなったんだよな……

男がのび太ならスレタイの男ものび太?

凄すぎる>>1に出会ってしまった…

良スレ発見

SS支援

…ともったけど支援とかしなくてもフツーに読者多くてワロタ

「……そうか……。そんなことが……」

 ジャイアンに、これまでの経緯を話す。彼は小難しい顔を浮かべ、リルルに視線を送った。

「それにしても久しぶりだな。……風の噂じゃ、仕事は辞めたとか聞いたが?」

「ああ。色々あってな」

「そうか……。ま、その方がいいだろ。お前に裏社会なんて似合わないもんな」

 ジャイアンは顔を綻ばせながらそう話す。どこか安心したようにも見える。
 しかしすぐに、表情を険しくさせた。

「……で? “ここ”に来たからには、何かあるんだろ?」

 これが彼の仕事の顔だ。眼光鋭く、心の内側まで見抜くかのようだ。
 彼の前に、前置きなんていらないだろう。

「……武器がいる。この子を守るための武器が……」

「……」

 ジャイアンは再びリルルを見つめ、視線を戻した。

「……わかった。付いてこい」

「……リルル。少しここで待ってろ」

「うん。分かった」

 そして俺とジャイアンは、店の奥へと向かった。

 そこは店の地下。周囲は白いコンクリートに囲まれ、少しカビ臭い。灯りは天井に吊された電球だけであり、室内は薄暗く、時折影が動かしていた。

「……ここも、久々だな……」

「まあ、のび太が最後に来たのは1年以上前だしな……」

 ジャイアンは奥の木箱の中を漁りながら、背中越しに声をかける。 

「ええと……確かここに……あった」

 そしてジャイアンは、一本の銃を取り出す。

「これは……」

 見慣れない銃だった。フレームは銀色に輝き、銃把は赤い。自動式ではあるが、サイズが通常の銃よりも大きい。
 銃をくまなく見てみるが、どこにもメーカーの刻印はなかった。

「……これ、どこの銃だ?」

「フフフ……」

 ジャイアンは自慢げに笑みを浮かべる。

「それはな、この俺が自ら設計、作製した、世界で一つの銃……剛田スペシャルだ!」

「剛田……スペシャル……」

「ああ。装填弾は通常よりニ割ほど多い。夜間でも正確に狙えるように、赤外線ライト付。サイレンサーもワンタッチ。おまけに特殊素材を使ったことで、丈夫でありながらも軽量化されているんだ」

「……凄いな」

 名前はアレだが。

剛田スペシャルすげええええええ

かっこええぇぇぇぇ

「それと、これも持ってけ」

 ジャイアンは、大きめのスポーツバッグを目の前に置いた。バッグは膨らみ、見るからに中に色々詰まっているようだった。

「これは……」

「中に弾や装備が入ってる。これでしばらくは持つだろ」

「そうか……。すまないな。これ、全部でいくらだ?」

 するとジャイアンは、照れくさそうに鼻もとを指でかいた。

「……金ならいらないって」

「え? でも……」

「いいんだよ。お前の元気そうな顔も見れたことだし。強いて言えば、それが支払いの代わりかな」

「そういうわけにもいかないだろ。これ、けっこうするだろ?」

「だからいいって。人の好意は、素直に受けとけ。俺に失礼だぞ」

「ジャイアン……」

 そしてジャイアンは、俺の肩を叩いた。

「……すまないな、のび太。俺には、これくらいしか出来ない。でももし何か困ったことがあるなら、いつでも来いよ。お前は、俺の心の友だからな」

 ジャイアンは、優しく微笑みかける。彼の優しさに、色んなものが込み上げてきた。言葉ではうまく言い表せない、感謝や懐かしさ……そういった、とても暖かいものだった。

このジャイアンは映画版

ジャイアンやべぇぇーーー

ジャイアンイケメンすぎ!

 それからしばらくして、俺とリルルは剛田商店を後にした。

「……あの人、見た目は怖そうだけど、いい人だね」

 後ろを振り返りながら、リルルは言う。

「ああ。すげえいい奴だよ」

「のび太も“知り合い”ってしか言わなかったし、どんな人かと思ったよ。もっと言い方あったんじゃない?」

「それは……」

 リルルの方に視線を向ければ、彼女は俺の目をじっと見つめていた。

(……そうだな。なんで素直に言わなかったんだろうな)

 正直に言えば、こそばゆかったこともある。久々に会うこともあり、素直にそれを言えなかった。
 ……だが、それももうやめよう。そんな遠慮なんてあいつに失礼だ。それに、俺の本心とも違う。自分の心を誤魔化す必要なんてないんだ。
 だってあいつは――

「――俺の、心からの親友だ」

「……うん!」

 リルルは、笑顔を浮かべて頷く。
 俺の中にまとわりついていた重荷のような感触も、どこか軽くなった気がした。

 夕暮れ時。窓の外からは虫たちの鳴き声が響く。それに合わせるかのように草木は風に揺れ、心地よい涼しさが体を通り抜けていく。空は黄昏色に染まり、夜の色に変わり始めていた。
 この日俺達は、街の片隅にある宿に泊まっていた。素泊まりではあるが、なかなか経済的な金額だ。

「……この旅館、ちょっとボロすぎない?」

 リルルは不満そうにぼやく。

「贅沢言うな。節約はするに越したことはないんだぞ?」

「でもさぁ……」

 こいつは、どんだけ裕福な暮らしをしていたのやら。世間一般常識というのを、俺が教えないといけないのか……。

「リルル。あのなぁ――」

 その時、何かの音が僅かに聞こえた。とても聞き慣れた音。何かが床を擦るような、微かな音――。

「――ッ!? リルル伏せろ!」

「え? ――キャッ!」

 リルルに覆い被さり床に伏せる。その刹那、入口から轟音が響き渡った。

「きゃあああ!」

「……!」

 轟音は断続的に響き、それと共にドアには無数の穴が開く。そして横殴りの雨ように、弾丸が室内に降り注いだ。

「な、なにが起こったの!?」

 体の下からリルルが叫ぶ。何が起こったのか――そんなものは決まっている。

「客が来たんだよ! 呼んでもねえ客がよ!」

 銃弾の雨は、依然として止まることはなかった。

「のび太! どうするの!?」

「くそっ――!」

 懐から卓球程度の球体を取り出す。

「それなに!?」

「いいもんだよ!」

(ジャイアン――信じてるぜ!!)

 それを既に原形すらとどめていないドアの足元へと投げる。球体は二度ほどバウンドし廊下へと転がった。
 その直後、激しいスパーク音が廊下に響いた。

「うわあああ!!」
「ぎゃあああ!!」

 男の悲鳴が、スパーク音に混じる。そして一瞬銃撃が納まった。

(今だ――!)

 すぐさま立ち上がり、リルルを抱える。

「跳ぶぞリルル!!」

「跳ぶって! まさか――!」

 リルルが何かを叫ぶ前に、窓から勢いよく飛び出した。

「ここ! 三階だよおおお!?」

 リルルの絶叫と共に、俺達の体は宙を舞った。 

ここまでドラエモンが出てこないとなると…

 地上へと落ちる。その途中、枝の群れが体を包む。へし折る音を鳴らしながら、落下速度は僅かに弱まった。

「くっ――!」

 最後に太めの枝を片手で掴む。だが勢いに押され、惜しくも離れてしまった。そのまま体を反転させ、背中から地面と衝突した。

「……効いたぁ……」

 全身に痛みが走る。息も途切れ途切れだ。体中生傷だらけにはなったが、何とか軽傷で済んだらしい。

「……リルル……無事か?」

 俺の上で体を丸めていたリルルは、疲れたような顔を見せた。

「し、死ぬかと思った……」

「生きてるだ! 走るぞ!」

「あ! 待ってよ!」

 旅館の裏は雑木林となっていた。光も通らず、常闇が広がる。
 俺とリルルは、闇に紛れるように林へと駆け出していった。

 しばらく林の中を走ったところで、とある大木を見つけた。見れば袂には穴が空いており、ちょうどリルルくらいなら入れそうだ。

「この中に隠れてろ」

「う、うん……!」

 リルルは屈みながら根の間に身を寄せる。

「いいか? そっから動くなよ?」

「わかったけど……のび太はどうするの?」

「決まってるだろ……」

 腰元に下げていた銃を取り出し、弾を装填する。
 銀色のフレームに赤い銃把……その名も、剛田スペシャル。

(……まったく、締まらない名前だな)

 だがその獲物はとても軽く、手に吸い付くようたった。
 
「……客は、もてなさないとな!」

 リルルを残し、俺は再び夜の中へと走りだした。

ワクワク

さん

「探せ! 林のどこかにいるはずだ!」

 遠くから、男の声が聞こえてきた。足音からすれば、敵の数は八人ほどか。

(少し多いが……どうとでもなる数だ……)

 見れば四人が周囲をライトで照らしていた。

(この暗闇の中でライト……自分から標的になってくれるとはな。素人かよ)

 こちらとしては狙い安く、実に助かる。

(まずは、存分に混乱してもらおうか……!)

 サイレンサーを装着させた銃を構え、四発撃ち出す。弾は正確にライトを撃ち抜き、辺りを再び漆黒に染める。

「――ッ!? 何が起こった!」

「て、敵の銃撃です!」

「バカな! これだけの木々の中で正確に……! しかも、四つ同時だと!?」

「うあああ! て、手があああ!」

「わ、私も……負傷しました……!」

 どうやら、二人が負傷したようだ。急所は外したから、死ぬことはないだろう。

(上々だな。それにしても……)

 銃を撃った時、衝撃が殆どなかった。銃身が大きく狙いやすいが、軽く疲れにくい。剛田スペシャル……締まらない名前だが、そんじょそこらの銃とは比べものにならないくらいだ。

(……サンキュ。ジャイアン)

のび太「ドラえもんが消えて、もう10年か……」

これの人?

「な、何も見えません!」

「敵は……敵はどこだ!」

「落ち着け! 陣形を崩すな!」

 指揮官らしき男が檄を飛ばすが、もはや統率など取れてはいなかった。

(……終わらせるか)

 ゆっくりと銃口を声の方へと向ける。声の聞こえる方向、物音、木々の間に見える微かな影……それらの散らばる情報を集め、敵の全身像を脳裏に浮かべた。

(敵は六人……)

 引き金に、指をかける。そして、連続して引く。

(一人……)

「うわっ!?」

(二人……)

「あうっ!」

(三人……)

「うぐっ!?」

(四人……)

「うっ!?」

(五人……)

「ぐあっ!」

 引き金を引く度に、短い呻き声が聞こえてきた。どうやら、全て命中したようだ。そして……。

「どうした! 撃たれたのか!?」

 残された男の、慌てる声が響く。先ほどの指揮官らしき男だ。

(どうやら、当たってたようだな)

 指揮官だけは残すつもりだった。あいつには、聞くべきことがあったからだ。
 銃を下げ、歩き出す。そして、指揮官へと近づいていった。

しえん

「くそっ! くそくそくそっ! ――くそおお!」

 残された男は、苦し紛れに銃を乱射する。だがそんな銃弾が、そうそう当たるはずもなかった。
 一発だけ弾を放ち、男の銃を弾き飛ばす。

「うっ――!?」

 手が痺れたのか、男は右手を抑え体を丸めた。

「――動くな」

「――ッ!?」

 銃を構え、男の前に姿を出す。その時、月の灯りが差し込み、俺と男の姿を映し出した。
 
「……お前が……」

「ああ。お前らが殺そうとした奴だよ」

「こんな……若造に……!」

 突然男は腰元からナイフを取り出す。そして俺に刃先を向け突進してきた。

「……甘い」

 だがその刃が届くことはない。素早く身を翻し初撃を躱す。そして銃を持たない左手で男の右手を掴み強く捻った。

「ぐっ!」

 男の右手を背後に曲げて関節を固める。手首、肘、肩の三カ所を固められた男は、膝を地につけたまま動けなくなった。
 そして改めて、俺の膝元の位置にある男の後頭部に、銃口を当てた。

「……お前に、聞きたいことがある」

「……な、なんだ……!?」

 男は痛みに顔を歪ませていた。それでも強い口調を保つのは、男の意地なのかもしれない。

「派手に撃ちまくりやがって……。今頃、街は騒然となってるだろうよ」

「……」

「あんだけ目立つことするなんて、普通の奴らじゃないよな。たが俺の知る限り、国家の犬とも裏社会の連中ともやり方が違う」

「……」

「……お前らいったい、何者だ?」

「……フフ……フフフ……」

 男は、意味深にほくそ笑んでいた。

続きはよ

wktk

待ちきれなくて死にそうだ

支援

支援

SS保守

書きためをのんびり待とうか

支援

ほしゅ

書き溜めしてないんで鈍足すみません
仕事終わったんで今から書きます

今北産業

>>176
ジャイアンと
のび太が
イケメン

>>177 読むわw

神SS

「……我らの目的は、下郎の民である貴様ごときでは到底理解出来まい」

「……なに?」

「全ては、三界併合のためよ……フフフ……」

 全く何を言ってるのか理解出来ない。だがそれでも、男は笑う。もはや敗北した身でありながら、勝ち誇るかのように笑っていた。

「お前……狂ってるのか?」

「……いや、正常なのは、むしろ俺の方かもな……!」

 すると男は、固められた腕をもろともせず振り返る。男の右腕からは筋が切れ、骨が折れる音が響いた。

「なっ――!?」

「ガアアアア……!」

 激しい痛みを感じながらも、男は鋭いナイフ俺に向けた。般若の如きその形相は、人からかけ離れていた。

「チィッ……!」

 やむを得ず、引き金を引く。
 サイレンサー越しの銃声は、辺りに静寂を取り戻させた。

ほう

「――あ! のび太!」

 戻ってきた俺に、リルルは駆け寄ってきた。

「リルル、無事か?」

「うん! のび太は?」

「ああ。無事だ」

 胸を撫で下ろしたリルルは、俺が歩いて来た方向に視線を送った。

「……あの人達は?」

「安心しろ。丁重に帰って貰ったよ」

「そう……」

「……」

「これから、どうするの?」

「……それなんだが……」

 一つ、気になることがあった。それが何なのか、今の俺には見当も付かなかった。
 ……だからこそ、俺には行くべきところがあった。

「……行くぞリルル」

「え? どこに?」

「ちょっと、やぼ用だよ」

保守

ほしゅ

早くつずきを

さいごがのびただったのはざんねんだな

欲しい

保守

SSしえん

4円

SSほ

 そこから少し離れたところに、その街はあった。道中刺客の襲撃に備えてはいたが、とりあえずはなかった。敢えて人目の付かない山道や海岸線沿いを通ったことで、相手の方に情報が回らなかったのかもしれない。
 なにぶん奴らは場所を選ばず、時を選ばず襲撃してくる。その点に関しては、国家や裏社会の奴らよりも数倍面倒な相手と言えるだろう。
 長旅でリルルもずいぶん疲れたようだが、それでも時折笑顔で俺に話しかけてきていた。
 自分が狙われているというのに、健気な子だ。

 街は中々の都会だ。高層ビルが建ちならび、摩天楼の隙間では人や乗り物が激しく往来している。
 そのビル街の中にある、一際大きな商業ビルの下に、俺達はいた。

「……確かここだな」

「大きいビル……。ここに何があるの?」

「何かがあるんじゃない。いるんだよ」

「いるって……誰が?」

「まあ、友達だ」

「友達……」

 そして俺とリルルは、ビルの中へと入っていった。

SS支援
ここは.netと違って落ちないから無理せんでなー

スマホ時間かかる
ちょっとパソコンで打つから、酉付けとく

test

じゃあ打ってく

全然おkですよー
納得いくようにしてください

いままでも強制sageにならないよう支援してるから安心せー

 受付で話を通し、俺達はエレベーターで上へと向かう。

「うわぁ……凄い景色……」

 エレベーターはガラス張りとなっており、街を一望できるようになっていた。眼下では遥か先まで建物が建ち並び、豆粒のような人の影が動き回る。
 なかなかの絶景だった。リルルは声を漏らし、その景色を堪能する。コイツはとても幼児とは思えないところが多いが、こういうところを見ると歳相応と言えるのかもしれない。

 やがてエレベーターは、ビルの最上階に辿り着いた。ドアが開けば、そこには幅員の広い通路があり、部屋はその奥の一室だけ。通路は清掃は行き届きレッドカーペットが引かれていた。その場だけ、どこかの宮殿のようにも思える。
 そして扉は大きな木製の両開きドアであり、重々しく閉じていた。

「ここにいる友達って……何者なの?」

 扉を見上げたリルルは、圧倒されながら呟く。

「まあ、一応社長だしな」

「社長……。のび太とは全く縁がなさそうだけど」

 何気に失礼だが、まあよしとしよう。

 その扉に、ノックをする。

「――どうぞ」

 中からの声を聞き、ゆっくりとドアを開ける。扉は重量感のある音を響かせながら、室内を露わにした。
 光が窓から降り注ぎ、奥には大きな木製の机が。そしてそこには、一人の男が座っていた。手を机の上で組み、優しい眼差しで俺達を見つめる男が。 
 そしてその男性は立ち上がり、口を開いた。

「よく来たな、のび太……」

「ああ。久しぶりだな、スネ夫……」

 

 スネ夫とも数年ぶりの再会ではあったが、呑気に昔話をしてる時間はない。さっそく本題に入ることにした。

「……スネ夫、いきなりで悪いんだが――」

「――ああ、分かってるからいいよ」

 そう話すとスネ夫は、俺の方へと歩み寄ってきた。

「……知ってるのか?」

 するとスネ夫は、笑みを浮かべた。

「伊達に企業争いに勝ち残ってないよ。情報収集は基本中の基本だぜ? ……こっち来いよ」

 そしてスネ夫は、室内にある本棚の前に立った。その中の一冊の本を横に動かすと、本棚は扉のように開いた。

「これは……」

「僕の“とっておき”……のび太に見せてやるよ」

みてる

SSしえん

支援

しおん

スネ夫スペシャル

まだか・・・・・・・・

 本棚の奥には、もう一つ別の部屋があった。だがその部屋の様子は、一風変わっていた。
 壁一面にモニターが備え付けられ、そこでは周辺各国、主要経済国のニュースが流れていた。さらには中央の机の上にはパソコン機器も。だがそのモニターも各企業の株価や収支がリアルタイムに流れていた。

「ここは……」

「僕の仕事部屋兼プライベートルームだよ。こうやって色々な情報を集めて、企業方針を決めていくんだ」

「へえ……なかなかの機材ね……」

 リルルもまた、感心するように部屋を眺めていた。

 ふと、スネ夫は俺に小声で話しかけて来た。

「……その子が、例の子か?」

「……ああ」

「そうか……普通の子にしか見えないんだけどな……」

「どういう話を聞いたんだ?」

「あくまでも、僕も話を又聞きしただけなんだけどね。“歩く国家予算”、“新たな人類の可能性”、“悪魔の子”……呼び方は様々だね」

「……リルル」

「ん?」

「悪いが、席を外してくれないか?」

「ええ? またー?」

 リルルは不満そうにしていたが、俺の表情に何かを察したのかもしれない。それ以上何も言うことなく執務室へと戻って行った。

 残された俺とスネ夫は、部屋のソファーに座った。

「それにしても、また面倒なことに巻き込まれたな、のび太」

「スネ夫はどこまで知ってるんだ?」

「だいたいのことはな。実際のところ、水面下じゃかなり大事になってるからさ。自然と耳に入ってくるんだよ」

「大事?」

「ああそうさ。のび太がどこまで想像しているかは知らないけど、彼女は色々な組織、国家が狙っているんだよ」

「そりゃそうだ」

「おいおい、そんな単純な話じゃないんだぞ? それこそ、彼女の存在は色んなパワーバランスを崩しかねないんだよ。それまで弱小だった国を、世界有数の経済国にすらさせるレベルなんだよ。喉から手が出る程欲しがってるのは、どこも一緒なんだよ」

「だが、今のところ終始狙われてるわけじゃないぞ?」

「ああ。彼女が貴重過ぎるからこその結果だね。彼女が欲しくてたまらない。だけど、表立って動けば対抗勢力、国家に存在を消されかねないんだよ。奪われるくらいなら先に潰す……そんなとこだね」

「出る杭は打たれる……か」

「まあね。それが国家間なら、場合によっては戦争の火種になりかねない。だから欲しくてもろくに動けず、絶秒なバランスで膠着状態にあるんだ」

「……」

 にも関わらず、奴らは襲撃してきた。しかも、あれだけ目立つ方法で。
 俺の中の謎が、更に深まって行った。

SSしえん

話がおおごとになりすぎててワロタ
ふぇぇ……とか呑気なこと言ってた幼女はどこいったんじゃwww

>>211
これが思い付きと勢いのたまものよ
自分でもびっくりしとります

イッチ神過ぎる

「……スネ夫、今の状況で人目も気にせず襲ってくる集団ってどう思う?」

 俺の問いに、スネ夫は笑みを浮かべた。

「ありえないね。今の緊張状態なんて、どれだけの下位組織だろうが知っている。よほどのバカか、自殺企図者かのどっちかだろ」

「――なら、“既に狙ってきた組織がいる”って言ったら……どう思う?」

 それを聞いた瞬間、スネ夫の表情が凍り付いた。

「……まさか、襲撃があったのか?」

「ああ。つい先日な。しかも、町中でだ」

「……嘘だろ……」

 スネ夫は絶句した。ロジカルな思考を持つ彼にとって、それは絶対にない“目”だったのだろう。

「それで、だ……。スネ夫、“三界併合”って言葉……何か知らないか?」

「さ、三界併合?」

「ああ。そいつらが言ってた言葉だ」

「いや、聞いたこともないけど……ちょっと待ってろ」

 スネ夫は慌ててパソコンの前に移り、キーボードを叩き始めた。

「ええと……三界併合三界併合……これか?」

 一度強くエンターキーを叩けば、正面モニターに画面が映し出された。

「……どうやら、宗教団体の基本理念みたいだね……」

 キーボードを叩きながら、スネ夫は呟く。

「宗教団体?」

「ああ。……ただ、資料がかなり古くて詳しくは載っていないみたいだ」

「なんとか調べたいんだが……」

「……それなら、おあつらえ向きな奴がいる」

 そう言うと、スネ夫は何かをメモ帳に書き始めた。

「誰だ?」

「出木杉だよ」

「……出木杉?」

「ああ。あいつは今、大学の准教授をしていてな。専門は考古学だが、宗教学にも精通しているんだよ。あいつなら、何か分かるかもしれない」

「そうか……」

 そしてスネ夫は、メモを渡してきた。そこには大学の名前が書いてあり、連絡先まで記載されていた。

「大した力になれなくてすまないな、のび太」

「いや、十分だ。ありがとう、スネ夫」

まさかの出木杉…

おもしろい

 執務室に戻った俺達は、リルルを交えて食事をした。さすがは一流企業の社長といったところか、次々と運ばれてくる豪華な料理の数々に、リルルも上機嫌になっていた。
 そして、別れの時間が訪れた。

「……ま、お前のことだ。色々うまくやるだろ」

 スネ夫は微笑みながらそう語る。

「だといいけどな。ありがとうな。食事までご馳走になって」

「それはいいて。……と、それよりのび太」

「ん?」

「――しずかちゃんとは、最近会ってないのか?」

「―――」

 久しぶりに、その名を耳にした気がした。

「……しずか?」

 スネ夫の話に、リルルは首を傾げた。

「……その反応を見る限り、ろくに連絡もとってないみたいだな……」

 俺の反応を見たスネ夫は、呆れるように首を振る。

「……こっちも忙しいんだよ」

「なんだよそれ。だいたいお前なぁ――」

「――時間を取らせたな。じゃあな。……行くぞリルル」

「え? あ、うん……」

「あ! おい!」

 スネ夫の話を最後まで聞くことなく、俺達は扉を開け廊下へ向かう。

「たまには顔くらいだしてやれよな! のび太!」

 背後からスネ夫の声が聞こえた。それに手を上げ応えた俺は、スネ夫のビルを後にした。

しずかちゃんってことは、アニメ版だな

しずかちゃんいるのに最初に幼女に手を出そうとしてたのか

虹規制入ったらいずれこーゆー一次も規制されるんやろなぁ

「……」

「……」

 町中を歩いていく。しかしながら、さっきまでとは雰囲気が違っていた。
 美味しい料理にご満悦だったはずのリルルが、黙り込んでしまってる。しかも俺の二歩ほど前を歩き、俺の方を一切見ようとしない。見るからに、不機嫌といった様子だった。

「……リルル」

「……何よ」

 リルルは背中越しに返事をした。

「別にいいんだけどさ……なんか怒ってね?」

「……別に」

「そうか……」

 ……やはり怒っているようだ。しかし、理由が分からない。特に思い当たることもないし……。
 自分の中で心当たりがないかを確認していると、リルルがようやく自分から口を開いた。

「……私も、別にどうでもいいんだけどさ……」

「ん?」

「しずかって……誰?」

 リルルは、ぴたりと足を止めた。

しえん

「ええと……」

「さっき社長さんが言ってたでしょ! しずかって!」

 煮え切らない俺の態度にしびれを切らしたのか、リルルは振り返り叫ぶように聞いてきた。

「ああ……。しずかは、学生の時の知り合いだよ。大人になってもたまに会ってたんだけど……」

「……今は?」

「……さあね。どこで何をしているのやら……」

「……ふーん」

 何か考えるようなジェスチャーをした後、リルルはおそるおそる口を開いた。

「……付き合ってたの?」

「誰が?」

「のび太と……そのしずかって人」

「……まさか。ただの幼馴染みだよ」

「……そう。そうなんだ……」

 ここでようやく、リルルの顔が穏やかになった

「――ほらのび太! ぐずぐずしてないでさっさと行こ!」

 そしてリルルは歩き出す。あっけにとられる俺を置いて。

「なんなんだよ……」

「のび太ー! 早くー!」

 離れたところから、リルルは手を振っていた。

「分かってるよ」

 少し足早にリルルの元へと行く。そして俺達は横並びに歩く。
 リルルは、微笑んでいた。

「――連絡もらってから、僕なりに調べてみたんだよ」

 出来杉は資料を持ち出し、パラパラとめくり始めた。
 ここは、国内有数の国立大学の研究室。出来杉の職場だ。彼は白衣を羽織り、いかにも研究者といった風貌になっていた。

「――連絡もらってから、僕なりに調べてみたんだよ」

 出来杉は資料を持ち出し、パラパラとめくり始めた。
 ここは、国内有数の国立大学の研究室。出来杉の職場だ。彼は白衣を羽織り、いかにも研究者といった風貌になっていた。
 再会の挨拶もそこそこに、話題は事前に連絡していた件の教団のこととなっていた。

「どうやら、古くは明治時代から存在する地下組織みたいだね」

「地下組織?」

「人目につかず、秘密裏に活動をする組織のことだよ。資料は少なかったけど、なんとか特定出来たよ」

 そして出来杉は、俺に資料を見せた。

「……明治時代初期、文明開化の流れの中で色々な文化がこの国に流れ込んできたんだけど、その時に異国の宗教も合わせて広まったんだ。この宗教も、そのうちの一つだよ」

「そんなに前から……だが、これほど資料が少ないのは?」

「さっき言ったけど、地下組織だからじゃないかな。おそらくこの組織は、他の組織に比べて秘匿性、閉鎖性が高いんだと思う。こういった亜流の宗教は、自分達の組織を守るためにそういった傾向になりやすいんだ」

「……それで、三界併合ってのは?」

「うん。どうやらその組織の、最終目標みたいなんだよ。その宗教は、地、空、海の三つ要素が世界を形成してて、それら三つを一つに……つまりは併合することで、新たな世界が生まれると考えているみたいなんだ」

「一つの、世界……。それとリルルに、何の関係が?」

「それは分からない。ただ、状況的に彼女の存在が、彼らにとって何かしらのファクターなんだろうね」

「結局真相は謎のままか……。その組織の名前は?」

「具体的な呼び名はないみたい。名前は、彼らにとって重要ではないからね。ただ、資料にはこう書かれているよ。三つの世界……トライエスタードって……」

「トライエスタード……なんか、三流小説に出てきそうな名前だな」

「たぶん、便宜上そう呼んでるだけだと思う」

「そうか……」

 

よくまあ思いつくよな

支援

「野比くん、これからどうするんだい?」

「これから?」

「野比くん達を狙った組織――トライエスタードの詳細は分からないんだ。つまりこれから、君たちは得体の知れない、幽霊のような相手に狙われるんだよ?」

「……」

「僕には詳しい事情なんて分からない。だけど、キミ一人が太刀打ち出来る相手なんかじゃないのかもしれない。出来ることなら、国に助けを求めた方が賢明だと思う」

 出来杉の意見はもっともだった。確かに正体を掴めない相手ほど、やりにくい奴はいない。
 でも、それでも……。

「……何が幽霊だよ。幽霊は、弾丸なんて撃ち込んで来ないさ。間違いなく、実在するんだよ」

「野比くん……」

「世話かけたな。ありがとう」

「うん……。もし何か分かったら、また連絡するよ」

「ああ。助かる」

 そして俺は、研究室を出た。

「……」

 助けなんて、どこにも求めることは出来ない。それこそ、保護という大義名分を与えるだけだ。結局リルルは、捕らえられる。

「あ、のび太。もういいの?」

 廊下で待っていたリルルは、俺の方へ駆け寄ってきた。

「リルル……」

「ん? ……ふぇぇ」

 思わず、頭を撫でてしまった。

「な、なに? どうしたの?」

 リルルは顔を赤くしながら、慌てていた。

「……いや、なんでもない。行くぞ」

「あ! ちょっと待ってよ!」

 そして俺達は、大学を出た。

 この子は、必ず俺が守るんだ。何があっても……。
 そう、自分に言い聞かせた。

 その日の夜。街外れの森の中で、俺とリルルは野宿をしていた。
 リルルは眠り、目の前の焚き火の明かりが彼女の安らかな寝顔を俺に見せる。
 こうして見ると、本当にただの子供にしか見えない。だがそれでも彼女は、この年にして過酷な道を歩いている。両親の死、生まれながらに追われる身……。
 もしかしたら、俺は同情をしているのかもしれない。……いや、それは卑怯な言い方だろう。俺が彼女を守りたいのは――。

「――来たか」

 暗闇の向こうから、人の気配を感じた。こんな夜中に、しかもこんな森の中に来る人間だ。おそらくは、トライエスタードの奴だろう。
 だがそれは、以前とは違っていた。気配は一人。他に連れはいないようだ。その人物は、急ぐわけでも隠れるわけでもなく、静寂の中に足音を響かせ、ゆっくりと近づいていた。
 やがて焚き火の明かりが、その人物の姿を映し出した。

「……夜分遅く、失礼しますね」

「お前は……」

 一瞬、呆気に取られた。その人物は、神父服姿だった。だがどう見ても、ただの優男にしか見えない。

「……一応聞いておくが、人違いじゃないのか?」

 すると男は、優しく微笑んだ。

「人ならざる人……その娘を、渡してもらいましょうか」

「やはり刺客か……!」

 立ち上がる俺に、男は優しく声をかける。

「そんなに騒がないで下さい。その子が、起きてしまいますよ」

 一度視線をリルルに移す。彼女は、何も知らずに眠っていた。

「こちらへ……大丈夫。他の者は連れてきていません。あなたが相手では、ただの足手まといですし」

 そして男は、森の奥へと向かう。

(逃げても無駄だろうな……)

 どういうわけか知らないが、男は本当に一人のようだ。よほど腕に自信があるのか……。いずれにしても、下手に動かない方が良さそうだ。
 用心のためリルルの周りにトラップを仕掛け、俺は男の元へと向かった。

「さて……二人きりになりましたが……」

「……」

「私も、いちおう確認しておきますね。正直、あなたは何も関係ありませんし、ここで立ち去っても私は追いません。出来れば手荒なことはしたくありません。引いてくれませんか?」

 まるで最早勝負は付いたような物言いに、少し心がざわついた。

「……いいのかよ。俺はお前の仲間を撃ったんだぞ?」

「ああ、先日の件ですね。別に恨んではいませんよ。私も、教祖様も。あれはこちらから仕掛けたこと。身を守るのは当然でしょうし」

「……」

「話を戻しましょうか……。どうしますか? 引きますか? それとも、死にますか?」

 その問いに、銃を構え答える。

「引くと思うか?」

 俺の言葉に、辺りは瞬時に緊張感に包まれた。それまで何も感じなかった男からは、凄まじい殺気を感じる。なるほど、伊達に一人で来てはいないようだ。
 男は首を左右に振り、至極残念そうな表情を浮かべていた。

「……仕方ありませんねぇ。――死んで下さい……!!」

 男は、一気に駆け出した。

 男は走りながら懐から何かを取り出す。そして俺の方へと投げつけて来た。

「くっ――!」

 上体を逸らし躱すと、背後の木に何かが突き刺さる。それは小型ナイフだった。

「――よそ見は感心しませんねぇ」

「――ッ!」

 一瞬視線をナイフに向けた瞬間、男は俺の目の前まで迫っていた。そして彼の手には刃物が。
 横に跳べば鋭く突いたナイフが服を掠る。男に向けて2、3発発砲するが、男は大木の影に隠れ命中しない。

(動きが速い。それにあのナイフ術……。厄介だな)

 やはり男は手練であるようだ。だがそれ以上に、俺を刺すことになんら躊躇がない。俺と、同類なのだろう。

(見た目で油断するとはな……。俺も鈍ったのかもな)

 自分の不甲斐なさに、思わず失笑がこぼれた。

あげ

 俺もまた木の影に身を潜める。様子をうかがい、敵の出方を見ていた。

(さて……どう来るか……)

 お互い飛び道具を使う以上、下手に動けない。僅かな隙を付き、一撃で決める。……それが定石だった。
 だが男は、意外な行動を取る。それまで隠れていた男は飛び出し、俺の方へとナイフを投げてきた。しかも一本や二本ではない。さしずめマシンガンのように、連続で投てきする。
 ナイフはそこら中の木々に当たり、突き刺さる。

(何をしてるんだ……?)

 ここまでナイフを投げれば、いずれ尽きるはず。もし手持ちがなくなれば、それは敗北を意味する。

「……さて、準備は整いましたよ」

 しばらくしてナイフの雨がやみ、男が呟いた。

「準備?」
 
「まあ、時期に分かりますよ」

 そう言うと、男は無防備に歩き始めた。影から様子を見れば、両手は下がり構えすら取っていない。まるでいつでも撃てと言わんばかりに、男は悠然と歩いていた。

(挑発か? ……なら、撃ってやるよ!)

 早く勝負が付くなら、それに越したことはない。銃口を男に向けるべく、木の陰から飛び出す。
 ――その瞬間、頬に痛みが走った。

「――ッ!? なんだ!?」

 頬からは生暖かい血が流れ、赤い雫が滴る。この痛みには覚えがある。刃物で切られた痛みだ。
 何が起こったのか一瞬分からなかった。だが目を凝らしてみると、空中で頬から流れた血が何かを伝っていた。
 それはピアノ線のような、限りなく細い線であった。

「それはね、特殊合金で出来た金属の糸なんだよ。触れれば肉を裂き、骨を断つ。キミの周囲を、よく見てごらん?」

「――ッ! まさか――!?」

 改めて周囲を見渡す。すると俺の周りには、僅かな星の光を鈍く反射させる、数え切れないほどの糸が張り巡らされていた。

(しまった――!)

「キミはもう逃れられないよ。……さて、そろそろ死んでもらおうかな」 

イッチすごすぎ

しずかちゃん登場しないの?

 男はゆっくりと歩いてくる。一発撃ちさえすれば終わるが、こちらは身動きが取れない。触れただけで頬が裂傷するその糸は、目を凝らしてもわずかに何本見える程度。どこにどれだけあるのかも掴めない。
 八方ふさがりとまではいかないが、状況はかなり悪い。

(くそ……! 鈍りすぎだろ!)

 自分に怒りを覚えた。しかしその間も、男はこちらへ向かってくる。その男の手には、鋭い刃。

(どうする……考えろ……)

 必死に脳を回転させ、対策を練る。

(しかし、こう暗かったら糸が見えない。見えない以上、身動きが……)

 その時、何かが頭の中に描かれた。

「……不様だね」

 ふと、男は呟く。

「……あ?」

「キミのことは、以前から耳にしていたんだよ。絶対の殺し屋。生きる伝説……。それが、まさかこんなにあっさり終わるなんてね……。正直、幻滅したよ」

「……そうかよ。だが、どうだろうな。がっかりするには、早いかもよ……!」

 地面に向けた銃口から、弾を連続で発射する。銃声は何重にもこだまし、辺りに響き渡る。

「……何かと思えば、悪あがきか……」

 男の落胆する声が、銃声の間に聞こえた。その声を無視し、俺は撃ち続けた。
 銃身は熱を帯びる。そしていつの間にか、辺りには鼻につく硝煙の香りが漂い始めた。それはやがて雲のように厚くなり、周囲を白く染める――。

「――ッ! そういうことか!」

 男は何かに気付き、突如走り始める。一度視線だけで周囲を確認した俺は、銃口を男に向けた。

「――あばよ、神父様」

 そして引き金は引かれ、最後の銃弾が硝煙の雲を突き破った――。 

>>238
さあ……
わかりましぇん

これは新聞小説として毎日1レスずつ連載してもいいレベル

なんで煙が上がると「そういうことか!」なの?

 男が張った糸は多かった。だがその中でも、まるでトンネルのように通れるルートがあった。男はあれだけ乱射していながらも、冷静に通路を作っていた。
 やはり、かなりの手練だったようだ。

 まずは銃で、木に刺さったナイフを弾き落としていく。全てのナイフがなくなった後、男の方へと向かう。
 男は虫の息だった。目も開かず、口からは血が溢れていた。

「……聞こえているか?」

「……」

 男は、頬を僅かにつり上げた。

「最後、うまくいってよかった。お前は強いよ」

「……糸の鮮明化に……硝煙とは、な……」
 
 男は、安らかに笑っていた。最期を、感じているのかもしれない。

「……最後に、何か言いたいことはないか?」

「……我らが、神……間もなく……この地に……」

 そして、男は息絶えた。

「……お前の神は、お前を救ったのか……?」

 その問いに、誰も答えることはなかった。

>>242
煙出る

暗闇に隠れてた糸が見える

自由に動ける

ごめん、イメージだけで書いたから、実際どうか分かんない(´・ω・`)

いやいや、普通に情景わかるよ
赤外線をタバコの煙で探すようなもんだろ
スネークの十八番だ

 後始末をし、リルルの元へと戻って行った。すると、先程まで寝ていた彼女は目を覚まし、膝を抱え座っていた。

「……どこ行ってたの?」

「……別に」

 ことさらに怖がらせることもないだろう。彼女の問いに、敢えて淡泊に答える。だが彼女は、険しい表情のまま俺を見ていた。

「……さっきからさ、ずっと銃声が聞こえていたんだけど」

「ああ、どっかでバカが撃ち合ってたんだろ」

「……そのおバカさん、ケガしてないかな……」

「ま、無事だろ。たぶんな」

 そして静寂が流れる。森は眠り、遠くから微かにフクロウの鳴き声が聞こえるだけだった。

「――あのさ」

 しばらく黙り込んでいたリルルは、ふいに口を開いた。

「なんで、私を守ってくれるの?」

「……さあね。俺にも分からないな」

「……そう」

 リルルは、残念そうに表情を落とした。

いつまでもまってる

おせえ...

ドラえもん温存中

髪スレ

おもしれえ


すごい

「……ところでさ」

 ふと、リルルが顔を上げる。

「ん?」

「前にのび太が話してた、“とある男”のことなんだけど……。その人、なんでそんな危険な仕事をしていたの?」

「……聞いても面白くはないぞ?」

「いいの。私が聞きたいだけだから」

「そうか……。そいつはさ、もともと日の当たる人生を送っていたんだよ。とある知り合いの助けもあって、最低の人生から脱却して、ようやく人並み程度の人生を送れるようになったんだよ」

「知り合い?」

「言っても信じないだろうから詳しくは言わないけどな。ちょっと変わった青い奴だよ」

「青い奴?」

「まあ、それはいいじゃねえか。……で、なんとか大人になって就職したんだけどな。そっからは、全然だった。元々不器用な奴でさ。いっつも怒られてばっかりだったんだよ」

「その人が? ……想像できない」

「まあ、人生色々あるんだよ。で、結局その会社クビになってな。そっからなんとか再就職しようとしたけど、てんでダメだった。で、困った挙句探し出したのが、けっこうきな臭い仕事場でな。非合法なことまでやってたんだ」

「犯罪?」

「まあな。そこで、男の人生は変わったんだ。そいつさ、元々かなり銃の腕があったんだよ。それが上司に知れて、そっからは糞みたいなもんだよ。汚い仕事ばかりやらされて、逃げ出そうにも逃げ出せない……地獄みたいな生活だったんだ」

「……」

「毎晩寝る時に、罪の意識が一斉に襲ってくるんだ。その度に布団の中にくるまって、ブルってたよ。でもな、人は慣れるもんなんだよ。どれだけ糞みたいな仕事でも、男は次第に慣れていったんだ。……いや、そうせざるを得なかったんだよ。じゃないと、気が狂いそうだったんだよ」

「……その人、なんか可哀想だね。もし違う仕事に出会ってたんなら、もっと違った人生になってたのかもね……」

「どうだろうな。結局飯を食うには働かなきゃならない。でも、まともな仕事は出来やしない。だったら、唯一の長所を頼るしかない。……結局は、そこに落ち着いていたと思う」

きたあああああああ!
ドラっぽいのもチラッときたあああああああ!

これは別の時間軸のお話か

青い奴www

「……」

「笑えないか? 他の人の助けで最低な人生から抜け出したと思ったら、ちょっとしたことでそれ以下の人生になっちまったんだぜ? ……ホント、最悪だよ……」

 リルルは、何も言わずに俺の話を聞いていた。
 本来なら人に話すようなことではなかったが、俺の口は止まらなかった。もしかしたら、俺はずっと、誰かに聞いてほしかったのかもしれない。糞みたいな人生の愚痴を、誰かに話したかったのかもしれない。
 同情してほしいとは思わない。人に愚痴って、何かが変わるとも思わない。それでも、俺は話し続けた。

ようじょに大の大人が愚痴るなんて
本当に駄目なやつだなあ

追い付いたああああああ!

支援

楽しい

まだ続いててくれて嬉しい

久しぶりに来たら大分進んでた。
支援。

ゆっくりだけど面白いから待てる。

「――少し、話し過ぎたな。こんな話、誰にもしたことないんだけどな。ただの大人の戯言だ。忘れてくれ」

「……」

 リルルは、相変わらず黙っていた。だが彼女の大きな瞳は、ぶれることなく俺を見据えていた。その目を見ていると、俺も視線を外せなくなってしまった。

「私はさ、その人のことよく知らないんだけど……」

 ふいに、リルルは口を開く。

「その人は、きっと探してるんだと思う。本当の自分の居場所を。自分でもどこにあるのか分からなくなった、本当の自分でいれる場所を」

「……どうなんだろうな」

「でもさ、その人なら、きっと出来るよ」

「え?」

「だってその人は、優しいから……」

「優しい?」

「うん。とっても口が悪くて、とっても不器用だけど……その人は、優しい。だからきっと、いつか見つけることが出来ると思うよ。その人なら……」

「リルル……」

 そして再び沈黙が訪れた。でもそれは暖かくて、柔らかい。
 その空気に包まれたまま、夜を明かした。

支援

 翌朝早く、山を後にした。行く当てもなかったが、とりあえず街を目指す。食料の補給、物品の補充……やることは山積みだ。

「……眠たいよ」

 リルルは眠たそうに目を擦っていた。

「夜更かしするからだ。まだ子供なんだから、早く寝ろよ」

「もう……子供扱いしないでよ」

(……いやほんとに子供だろうに……)

 そんな俺の心の声などつゆ知らず、リルルはふて腐れたように俺の前を歩く。

 街に着いた俺は、街を散策する。道の両脇には出店が並び、そこに並べられた食べ物に、リルルは目を輝かせていた。

「……」

 ……まただ。この町に来てから、どうも視線を感じる。誰かに見られているような……。だが奇妙なことに、その視線の先はリルルではなかった。俺だ。
 このまま町中でドンパチされたんじゃたまったもんじゃない。
 敵の狙いは分からないが、あえておびき寄せることにした。

「……リルル。先にホテルに帰っていろ」

「え? なんで?」

「ちょっと闇市に行って、弾の補充をするんだよ。お前は連れていけない」

「ぶー……。わかったよ……」

 不満そうにしながらも、リルルはホテルへと向かう。やはり視線は彼女には向いていない。これなら、特に心配する必要もないだろう。

(さて、鬼が出るか蛇が出るか……)

 そして俺は、正体不明の視線を連れて、街の裏通りへと向かった。

すごいなあ

 表通りの混雑と反比例するように、裏通りは静かだった。
 人の往来もまばらだ。道路にも闇商人が胡散臭い部品だか道具だかを売ってる程度で、建ち並ぶ土壁の古くさい建物の間には、酔っぱらいや家無しがぐったりと座り込んでいた。

「……そろそろ出て来いよ」

 しばらく歩いたところで、立ち止まり背後からの視線に向けて声をかけた。
 すると建物の影から、ロングマントを肩から羽織った男二人が、姿を現す。その姿は対照的だった。一人は上背もありがたいがいい。もう一人はとても小さく、見る限り痩せている。
 それでも二人からは、明らかな殺気が滲み出ていた。

「……野比、のび太だな?」

 大男は、野太い声で聞いてきた。

「ああ。そうだが――」

 そう答えた瞬間、大男はマントを脱ぎ去った。全身に甲冑のようなものを装着し、頭部は分厚いヘルメットを被る。そしてその手には、巨大な機関銃。

「――ッ!?」

「我らが神のため、消えてもらう――!」

 大男は躊躇することなく、機関銃を放ってきた――。
 

このかっこいいのがのび太だっていうんだから作者すごい

追いついた

支援

 横っ跳びし建物の影に隠れる。大男は依然激しい銃撃を止めない。土壁は削れひびが入る。突然のことに他の街人はある者は腰を抜かしながら、ある者は身を伏せながらその場を離れていた。

「くそっ! 見境無しかよ!」

 時刻はまだ昼過ぎ。日中にも関わらず大男は機関銃を乱射する。
 銃撃の中、ふと気づく。先ほど大男の隣にいた小男の姿がない。

「奴は――!?」 

 周囲を素早く確認する。すると頭上から何かの気配を感じた。見上げると、そこには建物の壁の間を左右に跳びながら俺目がけ向かう小男の姿が。そして彼の両手には、短いナイフがあった。

「ちっ――!」

 後方に跳ぶや、小男はナイフを地面に突き立てる。だが小男は攻撃の手を緩めない。すぐさま俺の方へ跳躍し、左右のナイフを振りかざす。
 腹部、足、腕、首――ナイフは執拗に俺の体を狙う。後方に下がりながら刃を躱し、小男に銃口を向け発砲する。だが小男は跳躍で躱し、再び壁の間を飛び回りながら上へと登った。

「ちょこまかと――!」

 逃がすまいと銃口を小男に向けた。その時、大男が建物の影から現れ機関銃を向ける。

「――ッ!」

 すぐに銃口を大男に向け直し発砲。だが弾は分厚い甲冑に弾かれた。

「マジかよ――!」

 大男の放射が始まる直前、真横にあったガラス窓へと飛び込む。ガラスが砕ける音が響いた直後、再び大男の砲撃が始まった。 

 飛び込んだ部屋は空き家のようだった。窓の外では横殴りの銃弾が乱射されていた。

「くそ! あの凸凹コンビ――!」

 この間に弾倉を付け替え装填する。その刹那、窓から小男が飛び込んで来た。

「――ッ!」

 すぐに銃口を向けたが小男は銃をナイフで弾き落とす。

「チィッ――!」

 一度小男から距離を取る。すると小男は、ニヤリと笑った。

「銃がなけりゃ、お前など相手じゃない……」

 小男はナイフを向け駆け出す。

「死ねええええ!!」

 小男は、右手の刃を俺の腹部へと向ける。

「――甘ぇ」

 突いてきた刃を躱し、右手で小男の右手首を掴む。そして左手で、思い切り小男の肘関節を逆側に押し込む。小男の右腕からは、鈍い音が響いた。

「ぐあああ――!?」

 小男は右腕を抑えながら絶叫し、床を転げ回る。額に脂汗を滲ませ、苦悶の表情で叫ぶ。

「……銃だけで渡り歩けるほど、“あっちの業界”は楽じゃないんだよ」

「……ぐ…ぐがぁぁ……!」

 声なき声を上げた小男は、脱力した右腕をぶらつかせ特攻をかける。だがその刃を受けてやるわけにはいかない。小男がナイフを向ける瞬間に、小男の水月を蹴り込む。

「うっ……!」

 小男の呼吸は一時的に止まり、動きは鈍る。その間に小男の残る左手を掴み後ろに回る。そして背後から、奪い取ったナイフで男の首を切り裂いた。
 小男は、首から血を吹き出し、膝から崩れ落ちる。そして、二度と起き上がることはなかった。  

「……さて」

 血の池地獄に沈む小男を抱える。そして窓から放り投げた。
 ――その瞬間、窓の外で再び機関銃の乱射が始まる。大男が、俺が飛び出したと思い撃ったのだろう。

「――ッ!? 違う!?」

 大男の動揺の声が聞こえた。その瞬間を狙い窓から身を乗り出す。そして大男の機関銃を持つ指めがけ、銃弾を放った。弾は的確に大男の指に当たる。

「ぐぅぅ……!」

 男は呻き、機関銃を手放し手を抑える。機関銃は重々しい音を鳴らし、土煙を舞い上げ地面に落ちた。

「……その手じゃ、機関銃は掴めないだろ」

 銃口を向けたまま、大男へと歩み寄る。

「貴様……狙って撃ったのか? 篭手の隙間の指を……?」

「まあな。まともに撃っても、その装甲に弾かれるだろうし」

「……なるほど。大した腕だ……」

 大男は、諦めたように笑みを浮かべた。

「……お前、トライエスタードの奴か?」

「……」

 大男は何も答えない。ただひたすらに、力強い目を俺に向けていた。

「……一つだけ答えろ。なぜ俺の名前を知っている」

「……なに?」

「悪いが、俺は前の仕事じゃ本名なんて名乗ったことはない。素性も分からない闇のスイーパー……それが、俺だ」

「……」

「だがお前は、俺の名前を口にした。FBIだって知らなかった、俺の名前をだ。なぜ知っている」

「……フフ……フフフ……」

 大男は含み笑いをする。そして、勝ち誇るかのように口を開いた。

「それは、自分で考えるんだな……。だが履き違えるなよ。我らは、既に貴様を知っている。知っているんだ。それを忘れるなよ。――あの世でな」

「――ッ!?」

 男の言葉の直後、その場を駆け出す。走りながら男の方を見ると、男の手にはスイッチのようなものがあった。そしてそいつは、笑っていた。
 出来るだけ距離を取り、その先にあった階段の下へと飛び込んだ。

 ――その直後、大男の鎧は爆発した。
 衝撃波が円状に広がり直近の建物は吹き飛ぶ。なおも爆風は窓を割りながら、人々を焼きながら広がっていった。

「……!」

 階段の下で身を屈めながら熱い爆風に耐える。そして辺りが落ち着きを取り戻した後、体を起こした。
 パラパラと土の欠片が空から降る。建物は崩れ、泣き叫ぶ声も聞こえる。
 そしてそれを引き起こした大男は、消えていた。自らの体や装備などの証跡を、一切残すことなく。

「……」

 俺は、その光景を見つめていた。俺の目に映るのは、巻き添えとなった人々の姿。心の奥が悲鳴を上げる。そして、激しい痛みを放っていた。

 それから、リルルを連れてすぐに街を離れた。迂闊に長居をすれば、いずれ当局が俺を連れて行くだろう。そうなればややこしいことになるのは明白。出来るだけ、遠くへと歩いた。

「……また、襲ってきたの?」

 リルルは不安そうに聞いてきた。
 
「ああ。だが、もう大丈夫だ……」 

「そう……」 
 
 一つだけはっきりした。教団は、俺を狙っている。おそらくはリルルを捕まえることの、一番の障害から除去しようとしているのだろう。
 それにしても、襲撃が多すぎる。教団も、なりふり構わなくなっている。

(後手に回れば不利か……)

 そう考えていると、俺の携帯がなり始めた。
 ディスプレイを見ると、そこには出来杉の名前が。

(……出来杉?)

 何か用件だろうか……。とりあえず、電話に出た。
 
「……もしもし。出来杉か?」

『あ! 野比くん!? 今大丈夫かい!?』

 出来杉はやけに慌てていた。声も大きく、興奮気味だった。

「ああ。……で? どうした?」

『う、うん! 実はね、あれから、教団のことを調べていたんだ! そしたら、分かったよ! 彼らのアジトが!』 

「……!」

しおり

わくわく

「本当か?」

『うん! 古い資料に、彼らの本拠地が書いてあったんだよ!』

「古い資料か……。今でもそこが拠点なのか?」

『たぶん間違いないと思う。こういう地下組織は、新たな拠点を作らないからね。新しく作ると目立つし、こういった組織はその拠点を神格化させるからね。拠点が変わるとは思えないよ』

「そう、か……」

 なんというご都合主義だろうか。こちらも攻めに転じようと思った矢先にこれとは。
 だが、これはチャンスだろう。このままじわりと追い詰められる前に、先手を打てる。

「……分かった。詳しい話はそっちで聞く」

『うん! 待ってるから!』

 電話を切り、空を見上げる。

「……何かあったの?」

 リルルは状況が掴めず、俺の顔をうかがっていた。

「……ああ。運が向いてきたみたいだ」

「……?」

 まだよく分からないリルル。俺達は、出来杉の元へと急いだ。決着をつけるために。

これは罠ですわぁ…

「……ここが、彼らの拠点だよ」

 大学の構内の研究室で、出来杉は地図上の一点を指さす。

「以外と近いな……。しかも、岬とはな」

「でも、確かにここなら人もほとんど来ないだろうから、彼らにとって好都合だろうね」

「そうだな……。とにかく、助かった。ありがとう、出来杉」

「いいんだよ。……でも、君の友達一人としての僕としては、止めたいところだね」

「え?」

「乗り込むんだろ? 彼らのところに」

「……ああ」

「相手は、場所も選ばすに襲ってくる連中だよ? 他の人なんて気にもせず、自爆までするような連中だよ? ……もしかしたら、死ぬかもしれないんだよ?」

「……分かってる。だからこそ、ここで終わらせるんだよ」

「……」

 出来杉は、諦めたように大きく息を吐いた。

「……分かった。もう何も言わないよ」

「すまないな、出来杉」

「いいんだよ。……友達じゃないか」

「……ああ。そうだな」

しえん

「――あ! のび太!」

 廊下で待っていたリルルは、駆け寄ってきた。

「……リルル。ちょっとここで待っててくれないか?」

「……え?」

「今から、敵の本拠地を叩きに行く。もちろん危険も伴う。お前は連れて行けない」

「で、でも……」

「大丈夫だ。お前のことは出来杉に任せるからよ」

「……のび太は……」

 リルルは、小声で聞いてきた。

「え?」

「のび太は……帰ってくるよね?」

 彼女の目には、薄らと涙が浮かんでいた。とても不安そうに、儚い目を俺に向けていた。
 だから俺は、笑顔を見せた。

「……当たり前だろ。心配してくれてるのか?」

「そ、そんなんじゃないから!」

 リルルは慌てて視線を逸らす。そんなリルルの頭に、手を置いた。

「……だから、ちょっと待っててくれよ。ちゃんと帰ってくるから」

「……じゃあ、約束して」

 リルルは、右の小指を出してきた。それが意味することを、瞬時に理解した。

「……ああ。約束だ」

 俺の小指を、リルルの小指に絡める。そしてリルルは、ようやく笑顔を見せてくれた。目にいっぱいの涙を溜めたまま。
 張り詰めていた心が、少しだけ解けた気がした。

支援 つM4

 その場所は、街から離れた岬であった。海風は強い風にふかれ荒れ、空は厚い雲で覆われていた。
 その岬の先端に、建物はあった。木造のそれは、教会だった。しかし長年海風に晒されたせいか、壁の木は腐食し、ところどころ穴が空いている。とても人がいるようには見えない。

(だからこその、アジトってか?)

 腰に下げた銃を手に取り、弾を装填する。そして、表の扉をゆっくりと開けた。

「……」

 教会の中は、やはり荒れていた。机はぼろぼろで列が乱れていた。椅子は無造作に放置され、壁際には雑草が伸びる。
 どう見ても、しばらく誰も訪れていないように思えた。

(……ガセネタ、掴まされたか……) 

 半ば諦めた気味に、教会の中を歩いた。やはり、隠し通路などの類もない。

(ガセネタならまだいい。もし罠なら――)

 そう思った、その時だった。
 コツ……コツ……と、入り口の方からブーツの足音が聞こえてきた。一定のリズムで、迷う素振りすらなく。

(くそ……やはり罠か……)

 入り口の方に体を向けた。そこには、一人の男がいた。大きな黒いシルクハットを被り、顔はよく見えない。体も長身ではあるが、黒いマントを羽織っている。そしてその口元は、機械仕掛けのマスクで塞がれていた。
 その男は教会の入り口に立ったまま、動かなかった。何も言わず、その場に居続けた。

「まさかとは思うが、巡礼者か?」

 男は、首を左右に振る。

「お前も、教団の奴か?」

 再び男は、首を左右に振る。

「だったら、雇われたのか?」

 男は、ようやく首を縦に振った。

「そうか……。ヒットマンか……」

 すると男は、籠もった声で呟いた。

「恨みは、ない……。興味も、ない……。だが……殺させてもらう……」

 そして男は、再び俺の方へと歩き始めた。

「……止まれ。撃つぞ」

 男に銃口を向ける。だが男は、歩みを止めなかった。しかし、急ぐこともない。ゆっくりと、確実に距離を縮めてきていた。

「チッ……。悪く思うなよ」

 歩く男に向けて、一発弾丸を放つ。
 しかし男の体はゆらりと揺れ、弾丸は男の横を通過した。

「――ッ!?」

 続けて2、3発引き金を引く。だがやはり男の体に触れることはない。男は、銃声をものともせずただ歩き続けた。

「躱したのか……?」

 狙いが外れたとは考えられない。だが、ふらつく男の体を捉えることが出来ない。まるで奇妙な術にかかったような気分だった。
 すると男は呟いた。

「……銃口の向き……」

「……あ?」

「指の動き……視線……呼吸……体のバランス……殺気……それを見れば、避けるなど容易い……」

「……マジかよ」

 得体の知れない男の雰囲気に、背中を嫌な汗が伝う。近付かせてはダメだ――本能が、そう叫ぶ。

「――これなら、どうだ!」

 その場から駆け出し、男の周囲を走り回る。その中で、幾度となく引き金を引き続けた。だがやはり男には当たらない。まるで蜃気楼に向けて撃っているかのように、弾は男の先の壁に穴を空けるだけだった。

「……止まれ」

 男はそう呟き、マントの中から右腕を出す。そして掌をかざした。

(なんのつもりだ?) 

 ――その瞬間、男の腕から何かが伸びる。それは猛烈な勢いで俺に迫る。

「なっ!?」

 咄嗟に足を止め、体を逸らし躱す。それはワイヤーであり、先端にはかぎ爪があった。かぎ爪は俺の体に触れることなく、奥の支柱に引っかかった。
 一瞬、視線がかぎ爪に向いた。そして視線を男に戻すと、男は既に俺の目の前まで迫っていた。

「――ッ!?」

 男は体を捻り、鞭のように足を振り抜く。躱すには遅すぎる。男の蹴撃を腕で受けた。

「ぐっ――ッ!」

 凄まじい衝撃に、体はあっさりと宙を舞う。すると男はもう片方の手をかざし、もう一つのかぎ爪を伸ばしてきた。
 かぎ爪は俺の右足を捉え牙を食い込ませる。激しい痛みが足を襲う。痛みに耐えていると、男はそのままワイヤーを手元へ戻し始めた。
 体は男の方へと引っ張られる。そして出迎えるように放たれた男の蹴りが俺の腹部に突き刺さった。

「がはっ――!」

 骨は軋み、後方へと吹き飛ばされる。そしてそのまま壁に衝突する。腐った壁は耐えきれず粉砕し、体は屋外へと放られた。

 口の中に、嘔吐物と血の香りが漂う。体中に力が入らず、上体を起こすので精一杯だった。
 虚ろな目で男の方を見る。男は伸びたワイヤーをしゅるりと手元へ戻していた。

(手に仕込んでいたのか……! 油断した……!)

 震える銃口を男に向ける。だがいくら撃てども、やはり男には当たらない。
 男は歩きながら、腰元にあった両刃の剣を抜いた。そして俺の元へと走り始めた。

「くっ……!」

 近づけさせまいと当たらぬ弾丸を放つ。そして男は跳躍し、剣を突き降ろした。

「――ッ!」 

 最後の力を振り絞り体を転がす。だが一歩遅く、剣は左肩に突き刺さった。

「があっ!?」

 するりと冷たい金属が肩の中へと入る。そして瞬く間に肩は熱を帯びだし、痛みと共に生暖かい感触が肩を中心に体中に広がっていった。

のび太あああ!

 男はゆっくりと剣を引き抜く。その刃には血で染まり、赤い雫がぽたぽたと落ちていた。
 何とか反撃の糸口を探す。だが頭にもやがかかり、働かない。四肢には力も入らず、もはや意識を保つのがやっとだった。

「……終わりか」

 男は冷淡に言い捨て、俺の首を掴む。

「が……は……」

 呼吸が苦しい。だが一切の抵抗どころか、手足を僅かに動かすことしか出来ない。
 男は首を掴んだまま、俺の体を引きずる。そして、岬の先の崖際に立った。そのまま俺を片手で持ち、崖の先へと持っていく。

「……ここまでもったのは、お前が初めてだ」

 男は、ようやく話らしい話をする。

「褒美に、最後の言葉を聞こうか……」

 首を捻りながら、男は俺の言葉を待っていた。

「…………てやる……」

「……?」

「……いつか……お前の額に……風穴を空けてやる……」

「……それは無理だ」

 そして男は、手を離した。体はその手を離れ、重力に身を任せる。
 全ての光景がスローモーションに見えた。無表情な男の顔、黒い雲、崖の岩肌……全てがコマ送りのように感じた。

(……リルル……)

 最後に彼女の姿を思い浮かべる。その中の彼女は、膝を抱え泣いていた。

(泣くなよ……リルル……)

 そして冷たい水飛沫を最後に、俺の世界は真っ黒に染まった……。

え!?

うわああああん。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。 ・゚

セーブをしてタイトル画面に戻る
セーブをせずにタイトル画面に戻る

 漆黒の空間を漂う。手足の感覚もなくて、何も見えない。もしかしたら、これが死なのかもしれない。
 その中で脳裏を過ぎるのは、これまでの日々。糞みたいな毎日。撃って、撃って、撃って撃って、撃ち続けた日々。人の人生を、終わらせ続けた日々。

 ――どうしてそんなことを?――

 誰かの言葉が、頭に響く。

(さあね……。気付いたら、このざまだよ)

 ――でも、したくなかったんでしょ?――

(最初はな。でも、生きるためだと割り切ってたよ。……いや、思い込もうとしてたのかもな)

 ――キミは、本当は優しいんだよ。あのまま続けていたら、きっと壊れてたよ?――

(どうだろうな。もうとっくに、壊れてるかもよ)

 ――それは違う。キミは、まだ壊れてないよ。罪滅ぼしだとしても、あの子を守ろうとしてたじゃない――

(でも、守り切れなかったよ……。情けないことにな)

 ――大丈夫だよ。まだ間に合うよ。あの子が、待ってるよ――

(……リルルが?)

 ――そうだよ。だから目を覚まして。のび太くん……――

(――ッ!? あ、あんたは――)

「ドラえ……!」

 飛び起きると同時に、体中を痛みが走った。顔をしかめながら、周囲を見渡す。灯りのない、薄暗い部屋。いつの間にかベッドに横たわり、体は包帯だらけだった。

「……ここは……」

「――気が付いた?」

 ふと、横から声がかかる。そのには、一人の女性が座っていた。長い髪を二つに束ね、シルクのローブを着ていた。
 ……そして俺は、その人物を知っていた。

「……し、しずか……?」

「……久しぶりね、のび太さん……」

 彼女は、聖母のように、優しく微笑んでいた。

しずかちゃんキタコレ!

待ってましたあああ!

ktkr

 自分の目を疑った。だが何度見ても、やはり彼女だった。

「どうして、君がここに……」

「あら。私がいちゃいけないのかしら?」

「いや、そういうわけじゃ……。でも、何で俺はこんなところに――」

「――僕が運んだんだよ」

 気が付くと、入り口にはスネ夫の姿があった。

「す、スネ夫が……? どうして……」

「お前が海を漂流してるのを、僕の会社の船が見つけたんだよ。たまたまな。死にかけてたけど、僕の自慢の主治医の手で、こうして九死に一生得たってわけ」

「そうか……」

 どうやら、命を拾ったようだ。一度大きく息を吐く。
 ――その時、思い出した。

「――ッ! あれから何日経った!?」

「え?」

「俺が救助されてから、何日経った!?」

「ふ、二日だけど……」

「二日……二日も!? リルルは!?」

「……」

 二人は、押し黙った。

「おい! リルルは!?」

「――分からねえよ」

「――ッ!?」

 俺の声を聞いてからか、ジャイアンが部屋に入ってきた。

仲間が集まってきてたな
ますます目が離せなくなってきた

「ジャイアンまで……いや、それより! 分からないってどういうことだ!?」

 ジャイアンは表情を暗くし、続けた。

「……そのままの意味だよ。出来杉の研究室は、荒らされていたんだ。そんで、そこには誰もいなかった。やられたのか、さらわれたのか……。どちらにしてと、足取りは掴めないままだ」

「そんな……! リルル……!」

 痛む体に鞭を打ち、ベッドから飛び起きる。

「のび太さん! そんな体じゃ無理よ!」

「そんなこと気にしてる場合かよ! リルルを助けなゃ……!」

「おいのび太!」

 制止するしずかとスネ夫を振り切り、扉へと駆け出した。

「――待て」

 だがここで、ジャイアンが立ち塞がる。

「どけよジャイアン! 早く行かないと、リルルが――!」

「――バッカ野郎!!」

 ジャイアンは怒鳴り声をあげ、思い切り俺の顔を殴る。まともに拳を受けた俺は吹き飛び、床に這いつくばった。

「そんな状態で、行ってどうなるんだよ! 俺の鈍った拳すら躱せない今のお前が、リルルを助け出せると思ってるのか!?」

「そ、それは……!」

 そしてジャイアンは、表情を穏やかにさせた。

「……一度落ち着け、のび太。リルルを助けるためにも、頭を冷やせ。じゃないと、出来ることも出来なくなるぞ」

「……」

 確かに、ジャイアンの言うとおりだった。頭を熱くし、無謀に走るところだった。

「……すまない。ジャイアン、スネ夫、しずか……」

 みんなは、微笑んでいた。

出木杉が黒幕なのか?

>>303
そういうのやめろ

個人的には推測なしで純粋に次の展開を楽しみたい

別に当たってても軌道修正するからいい
思い付きの良さだねぇ

おいついたー続きお願いします

のびハザみたいにドラえもん黒幕展開か?

変えれるのがすごいと思う。才能

期待

機体

期待

機体

期待

機体

気体

鍛代

ああああぁぁぁぁ! >>1 の家が!!!   〈     . ’      ’、   ′ ’   . ・
                           〈     、′・. ’   ;   ’、 ’、′‘ .・”
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YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY´     ’、′  ’、  (;;ノ;; (′‘ ・. ’、′”;

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ああああぁぁぁぁ! >>318 の家が!!!   〈     . ’      ’、   ′ ’   . ・
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                          〈       ’、′・  ’、.・”;  ”  ’、
YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY´     ’、′  ’、  (;;ノ;; (′‘ ・. ’、′”;

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::::::: |.    i'"   ";        

おう荒れてんな

 その場所は、スネ夫の別荘だった。寝室の他にキッチン、ダイニングもある。本来なら専用のスタッフがいるそうだが、今日は俺達だけだった。
 食事をとった後、ダイニングでテーブルを囲む。

「……しかし、まさかのび太がここまでやられるとはな……」

 ジャイアンはサンドイッチを頬張りながら呟く。

「俺も驚いたよ。あれほどの手練れがいたとはな」

「――それはそうだよ」

 スネ夫は口を開く。

「のび太をやった相手……あれは、ゴーストって呼ばれる男なんだよ」

「ゴースト?」

「ああ。裏社会じゃ有名……というより、都市伝説のように語られる暗殺者だよ」

「暗殺者……」

「依頼すれば確実に相手を暗殺し、誰も姿を見たことはない……いや、見た相手は存在を消されるから、誰も姿を知らないだけなんだろうな。とにかく、どこの誰かも分からないどころか、姿形すら分からない。――つまり、ゴーストだ」

「そんな奴だったとは……」

「のび太は運が良かったんだよ。というより、初めてじゃないか? ゴースト相手に生き残った奴は」

「……まあ、死にかけてるから世話無いけどな」

 話を聞いていたジャイアンは、神妙な顔で腕を組んでいた。

「……しかし、そんな奴が向こう側にいるなんてな。状況はかなり悪いな」

「うん。正直言って、最悪だよね」

 二人は、表情を暗くしていた。

「……関係ねえよ」

「え?」

「状況が悪かろうが、相手が最悪だろうが、俺はリルルを絶対に助ける。ただそれだけだ」

「……のび太」

「……ああ。そうだな」

 二人は、力強く頷いた。
 一方しずかは、何も言わずに俺を見ていた。時折表情を落としながら、揺れる瞳を向けていた。

支援

あげ

「とにかく、まずはリルルの居場所だ。それが分からない限り、どうすることも出来ないし」

「フフフ。それなら大丈夫だ、のび太」

 スネ夫は意味深に笑う。

「どういうことだ?」

「これを見ろ、これを」

 そう言うと、スネ夫は一つの機械を取り出した。片手サイズのそれにはモニターがあり、発信音が響く。そのモニターに映っていたのは地図だった。そして、特定のポイントが点滅していた。

「それは?」

「リルルの居場所だよ。彼女の発信機が、居場所を教えてくれる」

「発信機? いつの間に……」

「前に僕のビルに来た時だよ。あの時、彼女の服に発信機を付けていたんだ。考えたくはなかったけど、こういういざという時のためにね」

「こうなることを見越していたのか?」

「見越してたわけじゃない。ただ、最悪の事態が起こった時の備えをするのが僕の主義でね。もしもの時の被害は最小限にして、勝負をする。……ま、企業戦略の基本だね」

「スネ夫……! お前やるじゃねえか!」

 ジャイアンはスネ夫の背中をばしばし叩いて笑う。スネ夫は痛そうにしながらも、誇らしげだった。

まってました

「リルルの居場所が分かるなら、急ごうと思う。連中がどうしてリルルを追っていたのかは分からない。だけど、あまり時間もかけてられない」

「……だったら、装備がいるよな!」

 そう言うとジャイアンは、奥からアタッシュケースを三つ取り出した。それを開ければ、中には多くの装備が入っていた。

「うわぁ、凄い……!」

 スネ夫も思わず声を出す。

「ジャイアン、これ……」

「ああ。仲間業者を片っ端から回って集めたんだよ。軍用の装備もあるぜ」

「ジャイアン……助かるよ!」

「へへ。いいってことよ。……それと……」

 そしてジャイアンは、更に銃を一丁取り出す。

「これは……剛田スペシャル?」

「それの、改良版だ。“ちょっとした機能”を付け加えたんだよ。名付けて、剛田スペシャル“改”だ!」

「……」

 相変わらずのネーミングセンスはさておき、見た目はこれまでとはさほど変わらない。強いて言えば、一回り大きくなった程度か……。

「どんな機能を付けたんだ?」

「それは後から説明してやるよ。とりあえず、今は休めよ」

「……ああ。そうだな」

 ジャイアンとスネ夫は、優しく俺を見つめる。姿形は大人になっても、二人は二人のままだった。変わらぬ友の心に触れて、胸の奥が暖かくなった。

 深夜。みんなは眠り、別荘にはジャイアンのいびきが響き渡る。

「……まったく、休めとはよく言ったものだよ」

 あまりの轟音に目を覚ました俺は、一人外へと涼みに出る。
 空は晴れ、雲はない。辺りに集落がないためか、やけに星々の光がはっきり見えていた。一つ一つは弱々しくも、隣やその隣の星達と共に煌めき、小さな光の粒の群れは一つの巨大な絵画を作り出していた。
 決してロマンチストではないが、その壮大な光景に、思わず心を奪われてしまった。
 そしてしばらく、何をするわけでもなく、ただ空を眺めていた。

「――……のび太さん……」

 ふと、後ろから声がかかる。振り返ると、そこには、表情を暗くしたしずかがいた。

あいえん

間違えた 支援

面白いしえん

あいえん

「……やあ。眠れないのか?」

「う、うん……。のび太さんも?」

「まあな。あのいびきが、ちょっとな」

 しずかは少しだけ笑う。だが、すぐに表情を落とした。

「……ねえ、どうしても行くの?」

 しずかは、おそるおそる聞いてきた。

「……ああ」

「でも、のび太さんが死んでしまうかもしれないのよ?」

「……俺さ、これまで、死に場所を探してたんだよ」

「え?」

「糞みたいな人生の終止符を、どっかでつけたかったんだ。俺が生きていても、死しかもたらさない。こんな人間なんて、どっかで死んだ方がいいって思ってたんだよ。
 いや、正確には、たぶん心はとっくに死んでたんだろうな。ただだらだらと、この世をさまよってたんだよ。
 ……そんな時に出会ったのが、リルルなんだよ」

「……」

「あいつは、俺の過去を知ったんだ。それでも怖がることなく、俺を許すと言った。そして、自分の帰れる場所を見つけることが出来ると言ったんだ。
 それが嬉しくて、とっても嬉しくてさ。あいつはさ、俺を見つけてくれたんだよ。俺の心を拾ってくれたんだよ。
 だから、俺は守りたいんだ。リルルを。俺を救ったあいつを守ることで、俺は人でいられるんだよ」

「……」

 しずかは、俺の話をただ聞いていた。
 しずかに、感謝したい。彼女のおかげで、俺は改めて自分と向き合えた気がした。改めて、リルルを助けたいと思えた。
 同情なんかじゃない。本当の理由が見えた気がした。

「……それでも、私はのび太さんに生きてて欲しい!」

 それまで口を閉ざしていたしずかは、突然声を上げた。

「過去のことがどうあれ、私はのび太さんに生きてて欲しい! 一緒にいて欲しい! 私の隣で、優しく微笑んでいてほしい! 
 ……だって……だって私! のび太さんが――!」

「――ごめん、しずかちゃん」

「――ッ!」

 彼女の言葉を、遮る。それ以上彼女に言わせないために、自分の言葉を塗り重ねた。

「ダメなんだよ、俺じゃ。俺の手はね、もう汚れてるんだよ。色んな人の血を、体中に浴びてるんだよ。そんな俺となんていちゃいけない。いちゃいけないんだよ、しずかちゃん」

「で、でも……!」

「しずかちゃん、君は昔のままだ。優しくて、綺麗で、暖かい。君の傍にいれたら、俺はきっと幸せになれる。
 でも、俺は幸せにはなれないんだ。他人の人生を握り潰して来た俺は、幸せになっちゃダメなんだよ。
 君を抱き締めるには、少しばかり汚れすぎてるんだよ、しずかちゃん……」

「のび太さん……」

「君の気持ちは嬉しいよ。だけど、君は君の幸せを探すんだ。俺みたいな化け物なんて待っちゃいけない。君は、幸せになれるんだ。なるべきなんだ。
 ……だから、ごめん。しずかちゃん……」

「……うぅ……うぅ……うわあああ……!」

 しずかは、その場で泣き崩れた。彼女の涙に染まる声は、辺りに響き渡る。その姿に、声に、胸が潰れそうになる。それでも、彼女を受け入れることは出来ない。大切だからこそ、こうしたかった。

 一度空を見上げる。
 さっきまではっきり見えていた空は、やけに霞んでいた。そして星々は、朧気に、儚い光を放っていた。

のび太かっけー

見てるぞよ

 翌朝、装備を整えた俺は、ブーツの靴ひもを強く結んだ。

「あんまり無理すんなよ。まだ体は本調子じゃないんだからな」

 スネ夫は、心配そうに声をかけてきた。

「分かってるよ。ほどほどにするさ」

 続けてジャイアンが口を開く。

「……本当に一人で行くのか? 俺達でも、力になれるかもしれないぞ?」

「いや、いいんだよ。向こうじゃたぶん、弾丸の雨だろうし。俺一人の方が動きやすい」

「そうか……」

 どこか煮え切らない表情をするジャイアン。気持ちは嬉しいが、彼を巻き込みたくない。もちろんスネ夫も、しずかも。俺の事情で、無闇に大切な人を失いたくなかった。

「のび太さん……」

 しずかは、祈るように両手を握っていた。

「しずか……」

「……のび太さん。あなたが何を思っていても、私は待ってるから。ずっと、待ってるから」

「……ああ。必ず帰ってくるさ。リルルと一緒に」

 持ち物の確認をした後、立ち上がる。そして、みんなに声をかける。

「大丈夫。俺は死なないからさ。――行ってくる」

 そして、歩き出す。

「のび太ー!」

「帰ってこないと、ぶっ飛ばすからな!」

「のび太さん!」

 三人の声に手を振り答える。そして、前を向いた。

(待ってろリルル。必ず……必ず助けるからな!)

 気持ちを新たにした俺は、その場所を目指した。リルルが待つ、教団の拠点へ。力強く、足を踏み出しながら……。

>>1も無理すんなよ

支援

SSしえん

あいえん

間違えた 支援

ここで1を振り返ってみましょう

幼女「おじさん、誰ぇ?」

男「おじさんはねぇ、キミのことが大好きなんだよ?だからさ、こうして連れてきたんだよ」


幼女「でもさ、これっていけないことなんじゃないの?」

男「そんなことないよ。おじさんは、純粋にキミを……」

幼女「でも、これって未成年者略取・誘拐の罪になるんじゃない?」

男「へ?」

幼女「仮にここで私を好きにしても、おじさんは社会的に抹殺されるよね?今の世の中、顔なんてすぐにネットで出回るし、ろくな就職なんて出来ないだろうし。そもそも、仮に就職しても私や家族への慰謝料で大半は飛ぶけどね」

男「ええと……」

幼女「つまり、おじさんの人生は、私の手にかかってるってことよね?おじさんを生かすも殺すも、私次第なのよ?」クスクス

男「」



のびたとリルルの妹変わりようにワロタ

>>344
クソワロタwwww
まさかこうなるとは、俺も想像出来なかったwwww

>>344

ほしゅ

支援

あげ

 レーダーを頼りに向かった先は、県境にある深い山の中だった。
 木々は隙間なく生い茂り、腰元まで伸びた雑草が視界が悪い。しかし地面には多くの枯れ枝が落ちていて、辺りの静けさもあり、踏み折れば音は遠くまで響き人が訪れたことを知らせるだろう。
 なるほど、天然の要塞と言えるのかもしれない。

(あそこか……)

 茂みに身を潜め、その方向を見つめる。
 岩肌に入り口のような穴が空いており、その前には覆面姿の男が二人。片手は懐に入れており、おそらくは銃があるのだろう。
 
(さて……)

 どうするか考える。中の構造や教団の具体的な人数が分からない以上、下手に動くのは無謀だろう。

(……あれを使ってみるか)

 着ていたコートの中から、機械の球体を取り出す。そしてそれを男達に向け放り投げた。

「――ッ!? な、なんだ!?」

 男達は足元に転がる球体に、身構える。そして首を傾げながら、観察していた。
 ――その瞬間、球体から煙が吹き出る。

「――ッ!? け、煙が……」

 その言葉を最後に、男達はその場に倒れ込む。それはジャイアンから受け取ったものだった。セットした時間後、睡眠ガスを吹き出す構造になっている。

「即効性か……。助かるな」

 眠る男達を木にくくり付け、猿ぐつわをする。これなら目が覚めた後も、しばらく身動きが取れないだろう。

「……よし。行くか」

 そして俺は、空洞の中へと向かった。

待ってた

支援

しえん!

SSスレ支援

支援

支援ってレスするな

支援

チョンマゲ

あいえん

間違えた 支援

つ①①①①

ゆっくりがんばれ

ばかじゃね?
幼女誘拐おっさんが理性あるわけねーだろ
つまんえよ

すまんな
仕事が忙しく更新遅い

てか、今後の流れだが、二つ案がある

一つはこのまま終わる
一つは思いつくまま書き続ける

後者の場合、薄ら考えてるけど、話がトンデモナイ方向に飛んでいくと思う

どっちにしようか悩み中

後者に一票

前者

おれは後者

後者がいいな
1の好きなようにやればええんやで

後者がいいな
1のペースでいいから最後まで読みたいわ

後者がいいけど1のやりたい方にしてほしい

後者かな

でも>>1が終わらせたいなら前者でも全然OK

 空洞の中は通路が奥まで伸びていた。洞窟……というより、洞窟を改造したのかもしれない。どこか壁も人工的のように感じる。
 通路の両端には等間隔にランプが灯され、光は揺れ動きながら奥へといざなう。誘われているのだろうか。この先にあるのは、地獄か天国か……。

(どっちだっていい。この先に、リルルが待ってるんだ)

 足音を殺しながら、慎重に進んでいく。

 しばらく歩いたところで、一つの扉に辿り着いた。鉄製の、巨大な両扉だった。
 音がしないように、接続部分に油を吹きかける。そして、ゆっくりと扉を開ける。

「……これは……」

 扉の向こうは階段となっており、その下には広い空間があった。その光景に息を飲んだ。
 入り口は深い山の中。入り口は洞窟。だがその奥にあったのは、巨大な基地だった。
 白壁のドーム型や長方形型の建物が建ち並ぶ。建物の隙間には、小さく動くものが。おそらくは、見回りの教団員だろう。

「この奥に……リルルが……」

 僅かに動揺した心を静め、俺は階段を降りていった。

 敷地内には予想以上に見回りの者がうろついていた。下手な行動をすれば、おそらくは波のように押し寄せてくるだろう。準備はしたとは言え、大軍で攻められては勝ち目はない。建物の影、暗い裏道を使いながら、少しずつ進んでいく。
 焦りはないとは言えない。だがそれでも慎重に動けるのは、これまでの経験の賜物なのかもしれない。

(まったく。まさかこんなところであの日々が役にたつとはな……)

 毛嫌いしていた日々。そのおかげでリルルを助けることが出来る。まるで喜劇のようだ。
 ふと、警戒中の男二人が立ち話をしているのを見つけた。距離を詰め、耳を傾ける。

「――おい。警戒を怠るなよ。儀式まで間もなくだ。今邪魔されるのはまずい」

「分かってるよ。俺達の神のため、中央棟には絶対に近付けさせない」

(中央棟? そこにリルルがいるのか……)

 ついてる。ここに来て、リルルの居場所が分かったのは大きい。
 だが、儀式とはいったいなんなのか……。こいつらが言う神のためってのは、どういうことなのか……。

(……いや、今はいい。とにかく、リルルのところへ行こう)

 心に引っかかる何かを見ないようにし、教団の目をかいくぐり、中央棟へと向かった。

意見ありがとう
このまま勢いで書かせてもらう
話が明後日の方向にぶっ飛ぶけど、気にしないでね
深く考えてないから

 中央棟は、敷地内の最深部にあった。巨大な筒状の建造物であり、窓には灯りが見える。
 リルルがここにいるのは間違いないだろう。その証拠に、警備の数が他の建物の比ではない。建物を囲むように、等間隔で男達は立ち周囲を見渡していた。おまけに時折無線を入れて、異常の有無を確認するなど、力の入れようが半端ではない。
 この建物のどこにいるかは分からない。だが、こういう趣味の悪い輩だ。おそらくは、最上階に教祖がいるだろう。まるで自分が神にでもなったかのように、下を見下ろしながら。そしてそこには、リルルも……。

(とは言え、どうするか……)

 入り口は一つしかないようだ。この警備の目をかいくぐりそこから中に侵入するのは、透明人間でもない限り無理だ。
 しばらく観察をする。その時、気付いた。確かに警備の者は周囲を見渡している。だが、誰もが頭上には視線を向けていなかった。まさか、空を飛んでくるとは思いもしていないのだろう。
 突くなら、そこしかない。

(……それなら……)

 ジャイアンから渡された装備が役にたつ。 
 一度その場を離れ、中央棟向かいの建物へと向かった。

数日ぶりに見たら凄いことになってる・・・
支援

 向かいの建物は警備が薄く、楽に中へと入ることが出来た。プロなら警備対象の周辺建物まで目を配るものなのだが……そこはやはり素人教団員。穴がないように見えても、その実穴だらけだ。
 屋上へと上がり、目の前の中央棟に正対する。そして腰元のポーチから道具を取り出す。吸盤のようなものが付いた手袋と、装着式の靴底。素早く装着し、腰を落とす。

「――行くぞ……!」

 建物に向かい跳ぶ。その瞬間、靴底から一瞬ジェット噴射のように突風が吹いた。そして大きく跳躍した俺は、瞬く間に中央棟の壁へと迫る。
 ぶつかる刹那壁に手を付くと、手袋の吸盤は壁に吸いついた。

(なかなかいいな、この靴底。1回こっきりってのが難点だが……)

 そのまま壁伝いに窓へと向かう。下の様子を見てみるが、どうやら気付かれていないようだ。
 窓へとたどり着き、センサーがないのを確認した後にガラスカッターで窓ガラスに穴を空ける。
 そして俺は、中央棟へと侵入した。

 中央棟の中は異様な雰囲気だった。外の警備の多さからは想像出来ないほど静かであり、人の気配がない。気を付けているにも関わらず、やけに足音が大きく感じた。それでも慎重に、しかし確実に上へと向かう。
 やがて階段は終わり、一つの扉にたどり着いた。やはりここにも警備はいない。それがやけに気になったが、今さら引き返すわけにもいかない。
 一度深呼吸をした後、扉を開けた。
 中は広い空間になっていた。おそらくこの階は、この部屋しかないのだろう。
 それにしても暗い。灯りは一つもなく、窓の外の僅かな光だけが朧気に揺れていた。

(……これは……)

 すると突然、後ろの扉に上から鉄格子が降りてきた。扉は閉ざされ、見るからに開きそうにない。

「くそ……やはり罠か……」

 そう呟いた瞬間、それまで漆黒に包まれていた部屋に灯りが点けられる。そして視界がクリアになると、部屋の奥には銃を構えた多数の男達がいた。数は推定数十人といったところか。男達は銃口を俺に向け、引き金に指をかけていた。

「――やはり、来ましたね……」

 団員達の奥から、男の声が響いた。
 そして男達の間を通り、その人物は前に出る。大きく派手な衣装を身にまとい、顔には仮面。その人物が誰なのか、すぐに分かった。

「……お前が、教祖か?」

 仮面の男は、小さく頷く。

「いかにも。私が、トライエスタードの教祖だ。初めまして、少女の騎士さん」

「へっ。騎士って柄じゃねえけどな。……それより、その話し方、もういいんじゃねえか?」

「……なに?」

「腹割って話そうぜ。教祖様……いや、出来杉よ」

「……」

 僅かに沈黙した後、教祖は徐に仮面を脱ぎ捨てた。金属の軽い音を室内に響かせ、仮面は壁際まで滑る。

 そして目の前で、出来杉がその素顔を見せていた。 

あいえん

間違えた 支援

「……さすがだね、野比くん。いつから気が付いていたんだい?」

「ここに来るまでの間さ。最初はまさかとは思ったよ。だが、そう考えるとこれまでのことが全部説明出来る。襲撃してきた奴が俺の名前を知っていたことも、頻繁に襲撃してきたことも」

「ほう……」

「決め手になったのは、お前の言葉だ。“敵は自爆するような奴”……お前、そう言ったよな? 確かニュースだと、ただの“爆発”としか言っていなかったにも関わらず、だ。爆発がどういったものかまで知っていた理由は、ただ一つ。お前が、教団側の奴だからだよ」

「……」

「だが、気付くのが遅かったことには悔やんだな。もっと早く分かっていれば、お前にリルルを預けたりしなかったんだけどな。
 ……それより出来杉。どうしてだ? なぜお前がこんなことを?」

「……」

 出来杉は口を閉ざしていた。ただ冷たい視線を俺に向ける。
 そして、ようやく話し始めた。

「……キミは、この世界をどう思う?」

「え?」

「僕はね、この世界は狂ってると思うんだよ。歴史を振り返れば振り返るほど、その歪みが見えてくるんだ。
 ……こんな世界、ない方がいい。そう思ったのは、10年前さ」

「……」

「そんなとき、僕はこの教団と出会ったんだ。僕らの神に、全てを捧げてきたんだ。そして、今や教祖だ。僕らの願いはただ一つ。神の降臨だ。そのためには、どうしても彼女が――リルルが必要だったんだよ」  
「リルルが?」

「“人ならざる人を以て、神は降りたる。されば世界は一つとなり、全ての罪は浄化される”……。古い言い伝えだよ。言い伝えは、今この時を予言してたんだ。彼女が現れた時、僕は喜びに震えたよ。
 彼女はね、依り代なんだ。神の器になれるんだ。光栄なことだと思わないか?」


「……どこが光栄なんだよ。そんな糞くだらない妄想で、リルルを殺すのかよ……!」

「誤解しないでほしいな。彼女は死なない。神の中で、永遠に生き続けるんだよ」

「御託はたくさんだ! リルルを、返しやがれ!」

 出来杉に銃を向ける。すると男達もまた、一斉に狙いを定め始めた。
 出来杉は、にやりと笑う。

「残念だけど、それは無理だね。それに、この状況で何をしようと言うんだい? 形勢逆転でもすると?」

「……チッ!」

 自分の中で、激情と冷静さが混ざり合う。確かに出来杉の言うとおりだった。どうあがいても、勝ち目はない――。本能が、そう叫んでいた。

「……ゲームオーバーだよ、野比くん。サヨナラ。勇敢な騎士くん」

 そして出来杉は、一斉射撃の合図のため、右手をゆっくりと上げた。

 銃を構える男達の間に、殺気が広がる。今か今かと合図を待っているのだろう。
 周囲を見渡すが、身を隠せそうなものは何もない。特攻をかけるにしても距離が離れすぎており、たちまち蜂の巣だろう。

(くそっ! ここまで来て!)

 何か方法を探す。だが答えは変わらない。勝てる確率は、0。
 最後に勝利の笑みを浮かべた出来杉は、口を開いた。

「……全員、撃――」

 ――その時だ。突然側面の壁が、激しい爆音と共に吹き飛んだ。

「うわあああ!」

「……!」

 教団員も俺も、突如巻き起こる爆風に吹き飛ばされる。そして室内には粉塵が巻き起こり、壁の破片がぱらぱらと雨のように降っていた。

「な、なんだ……?」

 体を起こすが、未だ視界は悪い。その中で、声が聞こえてきた。

「のび太ー!」

「生きてるかー!?」

 聞き慣れた声だった。まさかとは思ったが、そいつらは、粉塵の中から姿を出した。

「ジャ、ジャイアン!? スネ夫!?」

 俺の顔を見て安心したのか、二人は笑顔を見せていた。

「ど、どうしてお前らがここに!?」

「話は後だ! まずは……!」

 ジャイアンは背負っていたバッグから、何かを取り出す。そしてボタンを押すと、それはたちまち風船のように膨らんだ。
 それは壁のように横に広がり、俺達の姿を隠す。

「う、撃て撃て!」

 粉塵の中、奥から数多くの銃弾が放たれる。だが弾丸は壁に阻まれ、次々と床に転がる。

「携帯式の防弾壁だ! マシンガンだろうがマグナムだろうが通さねえ優れもんだ!」

 ジャイアンは身を伏せながら自慢気に語る。

「なんで来たんだよ! あんだけ危険だって言っただろ!?」

 俺の声に、二人は再び笑みを浮かべた。

「バカヤロウ! お前ばっかり、かっこつけさせるかってんだよ!」

「そうだぞ! のび太のくせに生意気なんだよ!」

 話しながら、ジャイアンとスネ夫は敵に向け銃を放つ。敵側も防弾用の壁を持ち出していて、いつしか室内は激しい銃撃戦となっていた。

「ここは俺達に任せろ! 武器ならたっぷり持ってきたから大丈夫だ!」

「僕らが援護する! のび太は奥の扉に走れ!」

「お前ら……」

「のび太! ぜってーリルルを助けろ! 誰のためでもない、お前のためによ!」

「それで、絶対帰って来いよ! しずかちゃんを泣かせたら、ただじゃおかないからな!」

 二人の言葉に、目の奥が熱くなった。そして心の奥に張り付いていた恐怖は、影も形もなく消え去っていた。

「……ありがとう! 二人とも!」

 そして防弾壁を飛び出し、奥へと駆け出す。向かいの男達は銃を向ける。だがジャイアン達の牽制射撃の前に、すぐに引っ込む。

「やらせないよ!」

「のび太ー! 走れ走れ!」

「ああ! 分かってるよ!」

 走りながら出来るだけ敵を撃つ。少しでもジャイアン達の負担を軽くするために。懐から手榴弾を取り出し、敵の防弾壁の奥へと投げる。激しい爆発で敵数人が吹き飛び、道は開けた。
 半壊のドアを通り抜けたところで、足元に再び手榴弾を転がす。それが爆発するや壁は崩れ、入り口は完全に塞がれた。
 そして俺は上へと駆け上がる。下から聞こえる銃撃音は、徐々に小さくなっていった。

「はあ……はあ……!」

 息を切らしつつ階段を駆け上がる。そしてたどり着いた上の階は、下の階とは光景が違っていた。
 何かの機械が大量に置かれ、配管が蜘蛛の巣のように部屋中に伸びる。視界は悪く、どこかカビ臭い。そして機械音は重く響き、その中には下の銃声が混じっていた。

「――まさか、本当に生きていたとはね……」

 ふと、声が響いた。忘れもしない、あの声が。そして奥から、ふらりと人影が現れる。黒い大きなハット帽、黒いマント、機械仕掛けのマスク。冷徹な視線の奥には、深い闇。そう、その人物こそ――。

「――……ゴースト……!」

「よもや、私が仕事で失敗するなんてねぇ。屈辱だねぇ。ショックだねぇ」

 ゴーストは相変わらず、ふらふらと左右に体を揺らしていた。

「……まあ、今から殺すから、別にいいけどねぇ」

「……そうかよ」

 俺はゴーストに、銃口を向ける。

「あんとき、俺にトドメを刺さなかったこと……。後悔させてやるよ」

「……どうだろうねぇ。変わらないと思うけどねぇ」

「今度は負けねえ……! 絶対だ!」

 そしてゴーストは駆け出す。俺もまた奴に向け、引き金を引いた――。

「クソッ――!」

 距離を取りながら連続で弾丸を放つ。だが奴には当たらない。まるで予め弾道を知っているかのように、全ての弾を避けていた。

「全部避けるなんてよ! お前やっぱおかしいぞ!」

 そしてゴーストは大きく跳躍する。宙に浮く奴の体に銃口を向ける。だが奴は左にかぎ爪を伸ばし、空中で水平移動をした。

「チッ!」

 通常では考えられない動きで宙を飛ぶゴースト。奴は徐々に距離を詰め、最後に一気に俺の目の前に降り立った。
 そして握る二つの刃を交互に振り抜く。閃きのような斬撃を躱していると、奴は体を反転させた。

「――ッ!」

 慌てて手を構えれば、鋭い蹴りを腕に浴びた。衝撃は体中に響き後ろに吹き飛ぶ。
 すぐに起き上がるが、奴は再び距離を詰めていた。

「速い――!」

 ゴーストは足を鞭のようにしならせ、浴びせ蹴りを繰り出す。なんとか防御したものの、俺は再び吹き飛ばされた。
 またもや駆け出そうとするゴーストの足元に弾を放ち、素早く起き上がる。

(チクショウ……やっぱ強え……)

 ここまでの攻防で、奴の強さを改めて実感した。奴は依然として、ふらふらと体を揺らす。

「……仕方ねえな」

「……」

「お前に見せてやるよ。剛田スペシャル改の、本当の力ってやつをよ……!」

あいえん

>誰のためでもない、お前のためによ!
エヴァ思い出した。

支援

 銃の弾倉を入れ替え、側面にあるレバーを引く。すると銃からは、ゆっくりと弾を装填する音が流れ始めた。
 カシン……カシン……と、一発一発を噛み締めるように、銃は弾を飲み込んでいく。

「……何をしてるんだ?」

 ゴーストは首を捻りながら訊ねる。

「さあね。その目で確かめるんだな」

「……戯言か……」

 そしてゴーストは駆け出す。銃を一旦ホルダーに収め、身構える。

「銃を手放すのか?」

「俺の勝手だろ!」

 ゴーストは不思議そうにしながらも、ナイフを振り抜く。体を屈め躱すが目の前には奴の足が迫る。腕で蹴りを受けると体はふわりと宙に浮いた。その間にゴーストは飛びあがり、体を回転させる。

「同じ手を……!」

 空中で体を捻るや俺の腹部目がけ放たれたゴーストの蹴りが空を切った。だがゴーストはすぐに追撃に移る。かぎ爪を上へと伸ばし上昇。天井を踏み台にし俺目がけ飛び込んで来た。
 そして三度蹴りをガード越しに叩きこまれ、俺は壁際まで吹き飛ぶ。

「くっ……!」

 背中を強打し、呼吸もままならない。それでも意識を懸命に保ち、ゴーストに視線を送る。

(もう少しか……時間がかかるのが難点だな……)

 銃の装填音を気にかけながら、ゴーストの動きを見る。奴は、体を左右に揺らしていた。

こののび太はメガネかけてない間違いない

あげ

あいえん

6

支援 - Shien -

SSしえん

あいえん

あいえん

まだかな?

支援

4円

風邪でもひいてんのかなぁ

まあゆっくり待とうや

ごめん
仕事が殺人的忙しさだったから更新できなかった
ゆるりと再開します

「君は、本当に変わった人だ……」

 体を揺らすゴーストは呟く。その声には、半ば呆れるような感情が見えた。

「……なに?」

「あれだけ自信を持っていた銃を使わず、かと言って捨てることもなく、ただの鉄の玩具を握り締めて逃げ回る……無様だねぇ。実に無様だ」

「……」

「そんな君は、見たくはないね。これだけ私を楽しませてくれたんだ……せめて、最後は苦しむことのないように、終わらせてあげるよ」

 ゴーストは、両手の刃を構え直した。……と、その直後。銃から鳴り続けていた装填音は、止まった。
 準備がようやく終わったことに、俺は思わず笑みを浮かべる。

「……何がおかしい?」

 ゴーストは、不思議そうに首を捻る。

「いや……ようやく準備が出来たもんだから、つい、な……」

「準備?」

「ああ、そうさ……」

 そして俺は、銃口をゴーストに向ける。

「――言ったはずだ。お前に、風穴を空けてやるってよ……!」

おお

「……フハハハハ!」

 突如、ゴーストは笑い出す。声高らかに、表情を隠すことなく。

「何をするかと思えば、結局はそれか! 当たらない弾を私に撃つ! それが、準備だと!?」

「……」

「いやいや、君はつくづく面白い。……だが、そろそろ飽きた。サヨナラだ……」

 言葉を吐き捨てたゴーストは、一気に駆け出す。その目には確かな殺意が。俺の体を切り裂くために、ゴーストは刃を向ける。

「――ああ、そうだな」

 銃把にあるレバーを引く。すると銃口には切れ目が入り、四つに開く。――それはまるで、蕾が花開く姿に似ていた。

「――ッ!?」

「サヨナラだ。亡霊……!」

 トリガーを引けば、開かれた銃口から一斉に銃声が響く。それは幾重にも重ねられた銃弾の波。波は瞬時に前方へと広がり、ゴーストの体を通り抜ける。

「……!」

 全身に銃弾を浴びるゴースト。その圧倒的な被弾数は到底避けられるものではなかった。彼は天を仰いだまま、全身から血を吹き出した。

「フラワーバレット……ってところかな。銃口を開き、あらかじめ装填していた特殊弾数十発を前方一帯に撒き散らす……。ショットガンと原理は似ているが、その範囲は比べ物にならない。いくらお前でも、躱しきれるものじゃねえよ」

 俺の言葉に、ゴーストは僅かに笑った気がした。そして二本の凶刃は床に落ち、ゴーストは膝から崩れ落ちるように倒れた。無数の、風穴を空けて……。

「――俺の勝ちだ。ゴースト……!」

 天井の僅かな光を受けた刃は、鈍い光を放っていた。

待ってました!
ゆるりでいいから完走よろしく!!

ゆっくりでいいですぜ
まってますぜ

神杉

SSしえん

 銃をホルダーに収め、大きく息を吐いた。

「……なんとかなったな」

(ジャイアン、サンキュ……)

 生きているであろう彼に向かい、心の中で謝辞を送る。
 ふと、倒れて動かないゴーストを見た。まるで人形のように、無表情目標を始末する殺し屋。だがそこにいたのは、安らかな顔で眠るように横たわる一人の男だった。もしかしたら、こいつはこうなることを願っていたのかもしれない。

(俺も、こうなっていたかもしれないな……)
 
 ゴーストを見ていると、どうしても他人事とは思えなかった。
 数えきれない屍の上を歩き続ける中で、人として大切な何かを見失っていたのかもしれない。
 それは、少し前の俺と同じだ。なんのために生きているのかすらも分からなくなっていた。人なのか、獣なのか……いや、ただの化物だったのだろう。言われるがままに数多くの命を不条理に奪うだけの、血も心もない醜い化物だったのだろう。
 ――それを救ってくれたのが、紛れもない、リルル……。

(……待ってろよ、リルル。今行くからな……!)

 沸き起こる熱い感情を胸の奥に押し込め、その場を駆け出す。
 目指すは最上階。無意識に、前に出す足は強く床を踏み締めていた。

 階段を跳ぶように駆け上がる。どれだけ登ったかも分からない。ただひたすら、走り続けた。
 やがて大きな扉が迫ってきた。鍵がかかっているかは分からない。だが蹴り破るのすらも煩わしい。

「邪魔だ――!」

 銃を手に取り、もう一つの手で手榴弾を握りピンを口で引き抜く。そして投げれば、爆風が頑丈な扉を吹き飛ばした。

「リルルー!」

 舞い上がる煙の中に飛び込み、入った室内を確認することなく銃を構える。銃口を前に向けたまま、素早く周囲を見渡した。

「……これは……」

 その異様な光景に、思わず構えを解く。壁は灰色の鋼鉄。部屋の両端には巨大なボンベや機械が並び、奥には歩道橋のようなものが。最深部には、球体のゲージ。ゲージの中は仄かに光を放つ薄緑色の液体で満たされていた。
 そしてゲージの中に、何かが見えた。目を閉じ、ゲージ中央に力なく浮かぶそれは、まだ年端もいかない小さな少女―――。

「リルル!?」

「――遅かったね。野比くん……」

 リルルの元へと駆け出そうとすると、男の声が室内に響いた。聞き馴染みのある声。その声の主は、機械の陰から姿を現した。

「……出木杉……!」

「色々予定外だったよ。大金をはたいて雇ったゴーストが、よもや敗れるとはね。キミには驚かされてばかりだよ」

 出木杉は涼しい顔をしたまま、俺の前へと歩み出た。

「……姿が見えなくなったと思ったら、こんなところにいたのかよ。どうでもいいが出木杉、そこをどけ」

「断る……って言うことくらい分かってるだろ?」

「ああ。出来れば言って欲しくなかったけどな」

 出木杉は、手を口元にあてがいながらくすくすと笑っていた。
 その姿を見て、俺は一つの確信を持った。これまで幾度となく感じていた違和感。それが、確かなものとなった。

「……一つ、聞いてもいいか?」

「ん? なんだい?」

「お前、俺が……俺達が知ってる出木杉じゃねえな? お前は誰だ?」

「……なに?」

「ずっと違和感があったんだよ。うまくは言えないけど、どこか出木杉と違う違和感が。ガキん時からの付き合いだからわかるのかもしれないが、お前は俺の知ってる出木杉じゃない。姿はどれだけ似ていても、俺の記憶の中の出木杉とは似ても似使わない」

「……」

「もう一度聞くぞ。――お前は、誰だ?」

「……ふふ」

 出木杉――いや、出木杉に瓜二つのその男は、不気味に微笑んでいた。

まさかの展開

おお

「まさか、それに気付くとは思わなかったよ。さすがだね、野比のび太……」

 男は、拍手をしながら賛辞を送る。

「やはりお前は、別人――」

「――でも正確には、半分正解半分間違い、だね」

「……どういうことだ?」

「そのまんまの意味だよ。僕は君の知ってる出来杉英才じゃない。でも、出来杉英才に間違いないってことさ」

 そいつは、自慢気にそう話す。正直言ってる意味が全く分からない。追い詰められて狂ったのか……。だが、そんな気配もない。絶対的な自信のもとの発言……そうとしか感じ取れなかった。

「……ごちゃごちゃ訳の分からないことを……。つまり何が言いたいんだよ」

「ふふ。そう焦ることもないだろ? 説明してあげるよ。……まあ、君からすれば、到底信じられないような話だろうけどね」

 そして、そいつは語り始めた。

「野比のび太、君はSF小説は読むかい?」

「……いや。ただ、昔見たマンガでそういう話はあった」

「そうか……。それなら、“並行世界”……というものを、知ってるだろ?」

「……並行世界?」

「そう、並行世界だ。この世界とは別の次元にある世界。人物、時間軸は変わらないが、それぞれ別々の時代を進む世界。別の可能性の世界……」

「おとぎ話かよ」

「まあ、確かに胡散臭い話ではあるね。数多くの書籍で語られてはいるが、いずれもフィクションの中でのことでしかない。空想上の、とても曖昧な世界」

「……話が見えないな。何が言いたいんだよ」

 するとそいつは、声を出して笑った。

「君も案外鈍いな。……いいだろう。単刀直入に言おうか。――僕は、その世界から来たんだよ」

「…………は?」

「だからこそ、僕は出木杉英才であり出木杉英才でもない存在なんだよ。もう一人の本人、と言った方が分かりやすいかな」

「……はん! 何を言い出すかと思えば、クソ面白くもない!」

 戯言を繰り返すそいつに、銃口を向ける。

「そんな夢物語に付き合ってるほど暇じゃないんだよ。さっさとリルルを返しやがれ……! さもなくば――」

「――いいよ。撃ちなよ」

 そいつは、両手を広げて挑発し始めた。

「なに?」

「もとより、君がそう簡単に信じるとは思っていなかったよ。それなら、実際に見せた方が早いだろ? だから、さっさと撃てよ」

 そいつは臆することなく、銃口の先に立ち続けていた。

あいえん

まだかな

支援

あいえん

(何が狙いだ?)

 そいつは逃げることもなく、ただ俺が引き金を引くのを待っていた。不敵な笑みを浮かべたまま。
 死にたがりにも見えない。かと言って、とち狂ったようにも見えない。絶対の自信の元の笑み……そう見えた。
 だとするなら、いったい何を狙っているのだろうか。わざわざ自らを撃たせて、何をすると言うのか。

(ゴーストみたいに避けてみせるのか? そうは思えないが。もしや弾を掴むとでも? バカバカしい……)

 様々な憶測が頭を飛び交う。もしかしたら、それが奴の狙いか……。

「――どうした?」

 ふいに、奴は声を出した。

「撃たないのか? それとも、撃てないのか?」

 にたつきながら、更に俺を煽る。少しだけ、気に障った。

「……死んでも恨むなよ」

 そして俺は、冷たい引き金を引く。銃声と共に鉛玉が放たれ、奴へと向かう。

 ――その瞬間、目を疑う光景が起こった。
 奴の目の前で、放たれた銃弾が静止していた。

「なっ――!?」

 まるで見えない壁に阻まれたかのように、何もない空間で忽然と弾が止まっていた。弾の周囲には水面に雫を落としたかのような波紋が広がる。音もなく弾は勢いを失い、そして、軽い音を響かせながら床に転がった。

「どうだい? 驚いただろ?」

 驚愕する俺に、奴は自慢げに語る。

「これはね、僕の世界にある技術の一つさ。亜空間障壁……人為的に限定的な亜空間を発生させ、あらゆる衝撃を防ぐものさ。僕の世界では割とありふれたものだけど……この世界なら、どれだけの激戦地でも優雅に紅茶を飲めるよ」

出木杉つええ

「う、嘘だろ……そんなもんが、この世に……!?」

「君が驚くのも無理はないよ。この技術は、この世界にはあまりにオーバーテクノロジーだしね。ただ、全て現実だ。嘘でも夢でもない。君の銃弾は、僕には届かない。何発撃とうが、ね」

 奴が言うことに偽りはないだろう。現に俺の本能が叫んでいた。どれだけの武器を使おうが、無駄なことだと。その証拠に、いつの間にか銃口は下を向き、上がろうとしない。

「……クソッ!」

 自分の中に芽生えた恐怖を振り払うように、足を前へと踏み出した。そして猛然と奴の元へと向かう。

「うおおおおおお!」

 銃を握ったまま拳を繰り出す。だが拳もまた、見えない壁に阻まれる。

「……君も諦めが悪いね。無駄だって言っただろ?」

「……うるせえよ……うるせえんだよ! だから諦めろってのか!? そんなこと出来るかよ!」

「その心意気は買いたいものだけど……時間切れだ」

 奴がそう呟いた瞬間、室内に警報音が鳴り響き始めた。

「な、なんだ!?」

「野比のび太。君は実に運がいい。歴史が変わる瞬間に、立ち会うことが出来るんだ」

「なに!?」

 奴は背後の装置を向く。そして高らかに声を上げた。

「その目に刻み込め! ――神の、降臨だ!」

 奴の声と同時、部屋最深部のゲージは光り輝く。更にガラスが割れ、中の水溶液が床へと流れ出た。

(な、何が起きてるんだ……)

 腕を目の前にかざし、眩い光を遮る。そして光が収まった時、改めてゲージに視線を向ける。

 ……そこには、瞳を閉じたまま立つリルルがいた。

 リルルは目を閉じたまま、足を踏み出しゲージの外へと出る。

「り、リルル……?」

 俺が駆け寄ろうとした瞬間だった。突如リルルは目を開けた。

「……!」

 背筋が凍った。そこにいたのは、もはやリルルではなかった。
 瞳は虚ろに濁り、表情はない。そして体全体が、仄かな光を放つ。どこか神々しく、どこか不気味。
 少なくともそこに立つ少女は、俺の知るリルルではなかった。

 動けない俺をしり目に、男はリルルの元へと駆け出し、そして、彼女に跪いた。

「……気分はいかかですか? 我が神……」

 するとリルルは、自らの手足に視線を送り、何かを確認するかのように手足を動かす。

「……ふむ。悪くはない。なかなかの憑代ではないか。大義であったな」

「勿体なき御言葉……」

 男は決して顔を上げようとはしない。完全なる従属と化していた。
 そしてリルルの口調は、まさしく尊大だった。疑うことなく、目の前の男を見下していた。声こそ同じだったが、やはりそこに、俺の知るリルルはいなかった。

「……リルル!」

 湧き上がる絶望を否定するように、俺はリルルを呼ぶ。信じたくなかった。リルルがリルルじゃないなんて、考えたくもなかった。
 リルルは俺に視線を向ける。が、彼女は首をかしげていた。

「……誰だ?」

「……!」

 僅かに残っていた淡い希望は、音を立てて崩れ去った。
 彼女の中に、俺は残ってはいなかった。

すげぇ展開だな

読んでるよ~

面白い

ドラえもんはいずこへ………

>>430奴は死んだ

>>430
そこなんだよねぇ
どうすっぺ

「彼奴は誰だ?」

 リルルは目の前に座る男に尋ねる。

「神の依り代となった少女を守護していた者です」

「なんと、この娘をか。我のために、苦労であった」

「――……ふっっざけんなよ!!」

 激しい怒りを覚えた俺は、リルルに取り憑く何者かに銃を向ける。

「俺が守りたかったのは、お前みたいな神様気取りの化け物じゃないんだよ! さっさとリルルから離れやがれ!」

「ほう……」

 俺の言葉を聞いた瞬間、従者は猛る。

「貴様! 神に向かいなんたる言葉を!」

「何が神だ! ガキの体を借りないと何も出来ないのかよ! 神が誰かにすがってんじゃねえよ!」

「貴様ぁぁああ!」

「――フハハハ……!」

 俺と従者の言葉を遮るように、リルルは笑い声を上げる。そして一歩前に出て、俺に笑みを見せた。


「この我を化け物と言うとはな。お前、なかなか肝が据わっておる」

「……」

「我はお前に興味を持った。褒美をくれてやる」

「なに?」

 そしてリルルは、掌をかざす。

「これぞ、神の力……受け取れ……!」

 リルルの掌に光が集まり始める。それは徐々に激しく輝き始め、視界を白く染める。

「な、なんだ……!?」

 その時、突然俺の体がふわりと宙に浮いた。一瞬何が起こったのか分からず、手足をばたつかせる。

「むぅぅん……!」

 リルルはそのまま手を押しやる。その瞬間、俺の体は勢いよく後方に吹き飛んだ。

「――ッ!?」

 見えない力に体全体を引っ張られる感覚が俺を襲う。そして俺の体は、奥の壁に叩きつけられた。

「がっ――はっ――!」

 鋼鉄の壁は音を立てへこみ、あらゆる骨は軋む。激しい衝撃が背中を中心に体中を走り、呼吸が止まる。
 そして俺は、糸が切れたマリオネットのように、力なく床に崩れ落ちた。

あいえん

あいえん

SS支援

「……素晴らしい」

 朧気な意識の中、従者の声が響く。尊敬と愉悦、そして崇拝……その全てが入り混じるような言葉だった。

「いや、まだ本調子ではない。体との同調が、完全ではないのだろう」

 リルルは自らの手を見つめながら呟く。

「すぐに慣れることでしょう。……それよりも、我が神。そろそろ……」

「……ああ、そうだな」

 何かを促されたリルルは、後ろを振り返る。そして従者は小型の装置を取り出し、スイッチを押した。
 すると目の前の空間に、激しい雷が起こり始めた。室内であるにも関わらず生暖かい風が吹き荒れ、破片や紙、埃を巻き上げる。

(な、なんだ?)

 必死に上半身を起こし、目の前で何が起ころうとしているのかを確認する。
 やがて室内に発生した雷は一カ所に集まり始め、一つの巨大なアーチを形成した。アーチの奥は漆黒の闇。だが、どこか空間が歪んでいるようにも見える。

「では、先に行っているぞ」

 そしてリルルは、臆することなくアーチの中へと進み始めた。
 行かせてはダメだ。引き留めなきゃいけない。
 俺の心が、頭が、本能が、全力でそう叫んでいた。

「……り、リルル……!」 

 追いかけようとするが、体が動かない。全身の激しい痛みが走る。

「待て! リルル! 行くな!」

 絞り出すように声を出す。だが俺の声は吹き荒れる暴風に掻き消され、彼女に届くことはなかった。

「リルルー!!」

 最後の叫びも虚しく、リルルは俺の方を振り向くこともなく、光と闇の門へと消えていった。

「……ちくしょう……」

 表情を落とし、自分の無力さを嘆いた。結局リルルは、見えない“神”に連れていかれてしまった。俺はそれを止めることが出来なかった。こうして床に這いつくばって、リルルが去りゆく姿をただ見つめることしか出来なかった。
 それが、途轍もなく悔しかった。

「……さて、そろそろ僕も行くとするよ」

 従者は顔だけを俺に向け、声をかける。

「……なんでだよ」

「ん?」

「なんでリルルなんだよ。他にもいただろ。なんでリルルを、憑代にしやがったんだよ……」

「ふむ……まあいい。最後に説明してあげるよ」

 そして従者は、改めて俺の方を向く。

「僕の世界とこの世界、二つの世界は並行に時が進んでいるんだ。文化レベルは違えど、そこに住まう人々も共通している。二つの世界に、僕と出木杉英才がいたようにね」

「……」

「だが、彼女だけは違う。あの少女だけが、イレギュラーな存在なんだよ。特異点とも言ってもいい。あの少女だけが、二つの世界で唯一の存在だったんだよ。
 その特殊性ゆえ、肉体と魂は他の者に比べ格段に純度が高い。より純粋な存在こそ、神の肉体にふさわしかった。……だからこそ、彼女以外には考えられなかったんだ」

「……そんなくだらないことで、お前はリルルを巻き込みやがったのかよ」

「くだらないことはないよ。事実、神は降臨した。僕の世界は少々荒れていてね。それをまとめるためには、絶対的存在が必要なんだよ。何者も逆らうことが出来ないような、崇高な存在がね。つまりは、彼女が世界をまとめる。本当の意味での、神になるんだよ」

「……やっぱくだらねえ。世界をまとめる? 子供一人に何をさせようってんだよ」

「子供ではない。あの方は、神なのだ」

 従者は、真っ直ぐに俺を見ていた。揺るぎない確信……奴の目は、それを表していた。

「あ、そうそう。一つ言い忘れていた」

「……あ?」

「この世界の出木杉英才……彼なら、大学の地下に幽閉しているよ。大丈夫。殺しはしてない。別の世界の住民とはいえ、僕と等しい存在だしね」

「……もう一つ教えろ。お前は何をしようとしているんだ?」

「言っただろ? 世界を一つにするんだよ。この世界からでも良かったが……正直、この程度の文明レベルならいつでもまとめれる。面倒事から先に処理するのが、僕のポリシーでね。……さて、もういいだろ」

 するとそいつは、別のスイッチを懐から取り出した。そして、押下する。
 その瞬間、建物の外から激しい爆発音が響いてきた。建物は揺れ、機械は軋みを上げる。

「――ッ!? 何をした!?」

「ここの施設を爆破するんだよ。もう用件は済んだしね」

「他の教団の奴もいるんだぞ!」

「だから? そもそも僕が教団に入ったのは、利用するためだけだからね。オカルト信教の奴らがどうなろうと知ったことではない」

「お前……!」

「お前じゃない。――僕の名前は、デキス。名前まで似てるだろ? まあ、二度と会うことはないだろうから覚えなくてもいいよ。じゃ……」

 そして、従者――デキスもまた、ゲートの奥へと消えていった。

>>408
しえん

あいえん

あいえんってのまじうぜぇ

あいえん

あいえん

あいえん

てか、あいえんって何?

途中で誰かが支援をあいえんって間違えたんじゃなかったかな

あいえん

支援

>>448
AとSを撃ち間違えたんだろう

>>330

 残された俺は、痛む体をなんとか立ち上がらせる。外の爆発は依然として続き、爆音の度に建物が揺れていた。

「くそ……長く持たねえな……」

 爆発の頻度は減ったが、ここは洞窟内の施設。度重なる衝撃で、いつ崩壊してもおかしくはない。

「――のび太ー!」

 ふいに、出入り口のところからジャイアンの声が聞こえて来た。そして土埃の中から、ジャイアンとスネ夫が駆け寄ってきた。

「二人とも! 無事だったのか!」

 俺もまた二人の元へと駆け寄る。

「ああ! 途中で外が爆発してよ! 教団の奴らはみんな逃げちまった!」

「僕らも逃げようよ! このままじゃ生き埋めだよ!」

「そうだな……」

 部屋の奥に目をやる。デキスが作り出したゲートは、徐々に小さくなっていっていた。

「のび太! 急げ!」

 ジャイアン達は走り出し、扉に向かい始めた。

「あ、ああ……!」

 そして俺もまた、入り口の方へと走り出す。その時俺の脳裏に浮かんでいたのは、リルルだった。
 怒ったり泣いたり、笑ったり。いつも俺の名前を呼んで、駆け寄って。最初は恥ずかしくて、何だか妙な気分だった。それでも、悪くはなかった。

(リルル……)

 走りながら後ろを振り返ると、ゲートは更に小さくなっていた。

「ジャイアン! のび太! 早く早く!」

 逸早く出入り口に辿り着いたスネ夫は、手を振って俺達を急かす。続いてジャイアンが出入り口を飛び出した。
 スネ夫は俺が走ってくるのを確認するなり、階段を下りはじめた。

「……」

 徐に立ち止まり、三度後ろを振り返る。あの先の世界に、リルルは連れていかれた。あの先に、リルルがいる……。

(ごめん、ジャイアン、スネ夫……しずか……)

 懐から、残る一つの手榴弾を取り出した。そして、出入り口に向かって投げる。
 数秒後発生した爆発は、ただでさえヒビが入っていた出入り口付近の壁を倒壊させ、落ちた瓦礫で出入り口は完全に防がれた。

「――ッ!? のび太!?」

 それに気付いたのか、ジャイアンの声が瓦礫の向こう側から聞こえた。スネ夫の足音も聞こえる。
 その二人に、俺は声をかける。

「――ごめん、ジャイアン、スネ夫。俺は行けない」

愛円

あいえん

「な、何言ってんだよのび太!」

 スネ夫は動転していた。

「まさか……お前がここを壊したのか!?」

 ジャイアンは何かを察する。

「……お前らはさっさと逃げろ。もうじきこの施設は洞窟もろとも崩壊する」

「んなことは分かってるんだよ! お前も行くんだよのび太!」

「ダメだ。俺は、リルルを追う」

「あ!? リルルはどこだよ!」

「分からない。ただ、その“入口”は、今そこにある。でもここが崩れれば、それもなくなる。そうなる前に、俺は“あっち側”に行く」

「何訳の分からないこと言ってんだよ! ……どうしても行くってんなら、俺も連れてけよ!」

「ええ!? ――もう! 僕も連れてけ!」

「ダメだ。どんなところなのか、俺にも分からないんだ。それ以前に、ちゃんと“そこ”に行けるかも分からない。危険すぎる」

「だったらなおさら! 行かせられるかよ!」

「そうだぞ! のび太のくせに……生意気なんだよ!」

「……出来杉のことだけどさ、あれは偽物だった。本物は大学の地下にいるらしいから、救出頼む」

「お前も一緒に来いよ! だいたい、しずかちゃんはどうするんだよ!」

「……“幸せになって欲しい”。そう、伝えててくれ」

「んなこと……自分で言えよ! バカヤロー!」 
 
 ジャイアンの声は震えていた。スネ夫は声すら出さなくなっていた。

 そんな二人の気持ちが嬉しくて、辛かった。だからこそ、俺は振り払うように踵を返す。

「じゃあな。ジャイアン、スネ夫。絶対助かれよ」

「おいのび太! のび太!」

「のび太-!」

 二人の声を背中に受け、俺は足を踏み出す。そして全力でゲートに向かい走り出した。

(しすが……幸せにな)

 最後の別れを心で告げる。見ればゲートは更に小さくなっていた。
 勢いよく床を蹴り、消えかけるゲートへと飛び込む。
 どうなるかは分からない。この先に何が待っているのか検討も付かない。ただそこには、リルルがいる。それだけは確かだ。
 不安と絶望の色をしたゲートの中。その先にある希望の光を信じて、俺は進む。
 
「――待ってろよリルル! お前は必ず……取り戻す!」

 いつしか俺の世界に繋がるゲートは閉じていた。零れていた明かりも消えたその空間は、闇に沈む。
 どこまでも、黒い闇に……。

のび太格好良えな

とりあえず一区切り
ちょっと休憩

第三部 異世界編 といったところか


ゆっくり休んで

>>461
異世界というより、平行世界編?
あ、でもいちおう異世界か

しかし、始めた当初はここまで話がデカくなるとは思わなかった……

もう思い切ってSF異世界にしちまうかwww
それと、地の文は次から三人称な
一人称には限界がある

 麗らかな日差しが差し込む森。木々の隙間からの木漏れ日は揺れ、鳥達は軽快に歌う。風は緩やかに流れ、葉を擦らせ音を出す。
 そんな森の中を歩く、二人の男がいた。一人は背が高く体格もいい。色黒の肌もさることながら、一際目立つのは顔の下半分を包む髭。
 片やもう一人は、そんな大男とは正反対であった。上背はあまりなく、痩せている。色白で見るからに体力もない。
 二人に共通するのは、白い軍服のみといったところか。もっとも、大男は胸元を開き袖まくりをするなどかなりはだけた着方をして、小男はしっかりと着こなしているあたり、共通しているとは言い難いかもしれないが。
 小柄の男は、細い目を大男に向け息を切らせながら話しかける。

「ねえねえ。こんなところで油売ってていいの? いちおうさ、僕達急いでいる身なんだけど」

 すると大男は、やはり小男とは正反対に、大声で言葉を返す。

「うるせえなぁ! いいんだよ別に! 腹が減っては昼寝は出来ないって言うじゃねえか! 飯の調達くらいでガタガタ言ってんじゃねえよ!」

「それを言うなら、戦は出来ない、でしょ。……もう。休むことばっかじゃないか……」

「なんだよ! 文句あんのかよ!」

 大男は小男の胸ぐらを掴む。

「わぁぁ! 暴力反対!」

 静かな森で騒ぐ二人。その時だった。
 ――ドサリ、と。突然二人の前に、上から何かが落ちてきた。

「うぉっ!?」

 驚いた二人は同時に後ろに跳ね、その物体に視線を送る。
 そして少しの間見つめた後、小男は声を漏らした。

「……これって……人?」

「あ、ああ……そうみたいだな……」

 二人の視線の先にいたのは、傷だらけで気絶する、全身を黒い服で包んだ男だった。 

巨人と脛男か

「――……んん……んん?」

 男は瞼越しに差し込む光で、意識を取り戻した。目を薄開きして見つめた先は、照明がつく天井。
 少し頭がぼやける。今の状況が分からず、数秒間目を開けたまま天井を見つめていた。
 そして突然、脳内にパルスが流れ、少女の顔が浮かび上がる。

「――ッ! リルル!」

 慌てて体を起こせば、全身に痛みが走る。男は顔を歪ませながら、周囲を見渡した。

「……ここ、どこだ?」

 自分が寝ていたのは、ベッドの上。周りには心拍数を測定するような機械があり、液体の入った瓶、医療道具があった。見れば体中に包帯が巻かれている。
 どうやら、どこかの医務室のようだ。

「……俺、どうしてこんなところに……」

 ゆっくりとベッドから立ち上がる。未だ周囲を見渡しながら出入口とおぼしきゲートに向かう。
 しかしそのゲートには扉らしきものはなく、はめ込みガラスのようなものであった。

「……これ、どうやって出るんだ?」

 男が首をかしげながらゲートに手を伸ばした瞬間、目の前にあったガラスは突然消えた。

「――ッ!?」

 男は驚きながらも、おそるおそるゲートを潜る。そして彼が通り抜けるなり、ゲートには再びガラスが現れた。

「……どういう仕組みなんだよ、いったい……」

 見たこともないドアに動揺しながらも、彼は通路を進んだ。

??!
まだ続いてたの凄いね

 通路の壁は白く、ところどころ設置された窓からの光を乱反射させていた。男が壁を触ると、不思議な感触が広がる。鉄でも鋼でもプラスチックでもない、滑らかで硬い、触れたこともない素材だった。
 
(これ……なんなんだよ……)

 戸惑いながらも、彼は奥へと進む。すると奥から、何やら話し声が聞こえてきた。

(誰か来る……?)

 その人物らは雑談をしながら、彼の元に近づく。自分をここまで手厚く手当てをしてくれた人物らだ。悪意はないとは思いつつも、職業病なのか、少し警戒するように構えをとった。

「……お? おお! 目が覚めたか!」

 大男は男に気がつき、駆け寄ってきた。そして一緒にいた小男もまた、大男に続く。

 しかし男はと言うと、彼らの顔を見た瞬間に警戒することすら忘れてしまった。
 目を丸くし、素っ頓狂な声を上げる。

「――ッ!? ジャイアン!? スネ夫!?」

 男――のび太は、見慣れた二人の姿に、驚きを隠しきれなかった。

「……ジャイアン?」

「スネ夫?」

 のび太の言葉に、二人は首をひねる。そんな二人を他所に、のび太は二人に更に声をかけた。

「なんで二人がここにいるんだよ! ……いや、ちょぅと待ってくれ! 二人がいるってことは、ここは俺達の世界なのか!?」

 のび太の言葉に、二人は顔を見合わせた。

「そりゃ、そうだけどよ」

「あんたをここまで運んだのは、僕達なわけだし。僕達がここにいても、何もおかしくはないけど?」

 二人は状況がよく飲み込めない。それはのび太も察するところであった。
 更によく見れば、二人はいつもと様子が違う。ジャイアンは髭をここまで伸ばしてはいなかったし、スネ夫も雰囲気が違う。
 何より二人の態度はどこかよそよそしく、まるで初めてのび太と会ったかのような反応だった。

(……まさか……)

 そこにきて、のび太はようやく状況を把握する。それを確かめるべく、彼は二人に尋ねた。

「……すまない。あんた達の名前、教えてくれないか?」

 再び顔を見合わる二人。そしてのび太の方を向き直し、まずは大男が名乗りを上げる。

「……ジャン。俺は、ジャンってんだ。よろしくな」

 続けて小男が名前を告げる。

「僕はスネ。スネだよ。“すねお”なんて奴は知らないぞ?」

「ジャン……スネ……ってことは……」

 冗談を言っているようには見えない。のび太は、自分の予想が当たっていたことを確信した。

(俺は……来られたのか? もう一つの世界に……)

 のび太は、知らない通路の真ん中で、天井を仰いだ。
 ジャンとスネは、そんな彼の様子に、三度顔を見合わせ首をかしげるのだった。 

平行世界のジャイアンとスネ夫か
ってことはしずかちゃんやのび太も…

あおえん

間違えた あいえん

さいれん

しえん

「――へぇ……。俺達がそんなに似てるのか、のび太の知り合いに……」

 ジャイは関心するようにそう呟く。

「ああ。まあな」

(似てるというか、こっちの世界の本人だしな)

「……でも、のび太が敵じゃなくて良かったよ。もしそうだったらどうしようかと思ってた……」

 スネは胸を撫で下ろしていた。

「……敵?」

 するとジャイは、スネの体を叩きながら豪快に笑う。

「だから言ったじゃねえか! こいつが神界の奴らとは思えないってよ!」

「ゲホゲホ……だって、そんなの分からないじゃん。今回は違ったから良かったものの、もし神界軍なら大変なことになってたよ?」

「いいんだよ! 結果オーライってやつだ!」

「もう……ジャイはいつもそれだ」

 二人を見ていたのび太。彼の頬は、いつの間にか緩んでいた。彼らは、彼らのままだった。例え世界は違えど、それは変わらなかった。
 のび太にとって、それが嬉しかった。
 しかし、のび太には一つ気になることがあった。

「……なあ、神界って――」

「――着いたぜのび太!」

 のび太が言い終える前に、ジャイは大声を出して目の前の扉を示す。

(ジャン……お前って、こっちでもジャイアンなんだな……)

 一度苦笑いを浮かべた後、扉に視線を送った。

「ここは?」

「ふふふ。まあ、まずは見てみろって」

 自慢気に語ったジャイは、入り口横のパネルに手を触れた。すると目の前の扉は開き、中の様子をのび太に見せた。

あおえん

「これは……」

 のび太は目の前の光景に、息を飲んだ。
 その部屋は入口以外は全面ガラスのような、外の景色が見渡せる状態になっていた。そして階段を降りた先には機械のパネルが並び、操縦席のようなものまで見える。
 何よりのび太を驚かせたのは、外の様子だった。地上は遥か下に移り、木々が苔のように見える。雲は左右を流れ、まるで風になったかのような気分だった。

「ここは……ブリッジか?」

「ああそうさ。これが、僕らの艦だよ」

「艦? ……そうか、飛んでいるのか、この艦は……」

「あったり前だろ? どこだと思っていたんだよ!」

 のび太は頬を指でかく。それもそうだろ。まさかここが、空を飛ぶ艦の中とは思ってもいなかったからだ。
 医務室や通路では、揺れは全く感じず、音すらもない。まるで地上の施設のような静けさだった。
 
(これが、この世界の技術か……すげえな……)

「――艦長! 話していた奴、連れてきたぜ!」

 ジャイはブリッジに声を響かせる。

(艦長?)

 その時、のび太はようやく気付く。よく見ればブリッジ中央に、誰かが立っていた。白いロングコートの軍服に、栗色の長い髪。後ろ姿を見る限り、女性のようだった。

「……ご苦労さまでした、ジャイ」

 そして女性は、ゆっくりと振り返った。

「初めまして。私がこの艦を任されている、艦長のシズです。よろしくお願いしますね」

 とても優しく、暖かい声だった。しかしのび太は、シズの言葉など耳に入らなかった。
 再び驚愕する彼は、ぼそりと声を漏らす。

「……しずか……」

「え?」

 そこにいたのは、のび太がよく知る人物――しずかと、瓜二つの女性だった。

戦艦ハルバードみたいなイメージで良いのかな

「……」

 のび太はシズの顔を見つめたまま、動けなくなっていた。まさかここで、もう一人の彼女と出会うとは……。驚きを隠すことなく、のび太は固まる。

「……あの……」

 シズの声に、のび太はようやく我に返る。

「――あ、す、すまない。あまりの光景に、ぼんやりしてたよ」

「そうだったんですか……。艦に乗るのは、初めてですか?」

「いや、似たようなものには乗っていたけど……これほど見事なものは、見たことがなくて、つい……」

「そうですか……。喜んでくれて、良かったです」

 シズは嬉しそうに微笑んでいた。

(……皮肉だな。しずかを巻き込まないようにと距離をとっていたのに、こんなにあっさりとこっちのしずかと出会うとはな……)


「おいのび太。艦長を知っているのか?」

 ジャイは不思議そうに、のび太に聞く。

「いや……知り合いに似てるんだよ」

「また? 君の知り合いって、どうなってるんだよ」

 スネは怪しむように口を開く。それにどう返せばいいのか分からず、のび太は誤魔化すようにわざとらしく笑った。
 そんなのび太に、シズは優しく声をかける。

「あなたが神界の者でないことは、見れば分かります。どこから来たのかは分かりませんが、我々が送りますからご安心下さい」

 どうやらシズは、自分を被災者か何かと勘違いしているらしい。そう感じたのび太は、言葉を選ぶ。

「ええと……それが……」

「艦長! そんなことしてる場合!? 任務はどうするんですか!」

 シズの言葉に、スネは声を上げる。

「スネ。任務を優先させたい気持ちは分かっています。無論、私達の任務の重要性も」

「だったら……!」

「ですが、私達の本質は、戦うことではありません。この世界を平和にすることです。それはつまり、人々を助けること。この者一人すら助けられずに、何を助けられるというのでしょう」

「で、でも……!」

「スネ。止めとけ。こうなった艦長はさ、テコでも動かねえよ。お前だって知ってるだろ?」

 ジャイの言葉に、スネは大きくため息を吐いた。そんな彼に、シズは微笑みかけていた。

(なるほど……頑固なところは、こっちもむこうも同じってことか)

 やはり彼女は、こっちの世界のしずかに違いない。のび太は、一人確信するのだった。

 しかし送ると言っても、そもそものび太はこの世界の者ではない。うまく説明出来そうにない彼は、慌てて仲裁に入る。

「あ、あのさ! 任務の途中なら、そっちを先に片付けろよ!」

「え? ですが……」

「シズの気持ちは嬉しいんだけど、何て言うか、俺、ちょっと事情が複雑なんだよ。だから、その任務ってのを優先させろよ」

「複雑? どんな風に?」

 スネはきょとんとしながら、のび太に聞く。

「ええと……それがうまく説明が――」

 ――その時だった。突然ブリッジ内に、アラーム音が鳴り響いた。

「な、なんだ!?」

「これは……! スネ! モニター監視を!」

「りょ、了解!」

「ジャイ! 舵をセミオートに切り替え! 待機!」

「分かったぜ!」

 ブリッジ内は突如慌ただしくなる。それまでの空気とは全く違い、全員が表情を険しくさせていた。

(どうしたんだよ……)

 一人取り残されたのび太は、わけが分からず全員を見渡す。
 するとスネが、叫びに近い声を上げた。

「か、艦長! 敵影確認!」

「敵影!? 数は!?」

「敵艦ニ隻! 小型機多数! 右舷二時の方向!」

「メインモニターに映して!」

 そしてブリッジ中央の空間に、半透明の画像が浮かび上がる。そこに映っていたのは、黒く禍々しいフォルムの飛空艦がニ隻と、艦の周囲を飛び回る多数の戦闘機だった。

「し、神界軍……」

 シズは、絶望の言葉を漏らす。

「神界軍? こいつらが……」

 誰もが言葉を失うブリッジで、アラーム音だけが鳴り響いていた。

「嘘だろ!? この辺りじゃ戦闘は起こっていないのに、なんでこいつらがいるんだよ!」

 ジャイもまた取り乱し、声を荒げる。

「艦長! 敵部隊、真っ直ぐこっちに来てるよ! 多分捕捉されてる!」

「そ、そんな……! 私達が目標!? ただの物資搬送なのに……!」

 シズもまた、目の前の光景が信じられず顔を凍りつかせる。
 乗組員はパニックに陥っていた。ただ声を上げ、ただモニターを見つめる。統率も取れず、迫る敵に震えるだけだった。
 依然としてアラームは鳴り響く――

「――落ち着けッ!!」

 突然、のび太は怒声を上げた。

「――ッ!?」

 固まっていたシズ達は、一斉にのび太に顔を向ける。

「慌てたって状況は変わらねえぞ! ――スネ! 敵までの距離は!?」

「えぇ!? お、およそ2キロメートル!」

「ジャイ! この艦のフルスロットルで敵から逃げ切れるか!?」

「あ、ああ! 敵艦だけなら何てことはない! ただ小型機は足が速いから追いつかれるぞ!」

「そうか……。シズ! この艦の武装は!?」

「き、機関砲が二基、両翼に一基ずつ……!」

「機関砲か……迎え撃つには厳しいな……」

 のび太は思案に耽る。そんな彼を、三人は見つめていた。この状況化で、冷静に分析をするのび太。そんな彼に、驚きを隠せなかった。
 いったい何者……シズ達の頭には、その言葉が浮かんでいた。

なるほど。これが神スレか

「ジャイ! なんか武器になりそうなのはないのか!? 何でもいい!」

「わ、わかんねえ! ただ搬送中の物資に、もしかしたら何かあるかも……!」

「それはどこにある!?」

「医務室の先だ!」

「分かった!」

 のび太は出入口に走り出す。そして扉を開けた後、シズに声をかけた。

「……落ち着けシズ。お前は、この艦の艦長なんだろ? お前が慌てたら、乗組員は誰を頼ればいいんだ?」

「――ッ!」

「冷静になれ。落ち着いて、頭をフル回転させろ。大丈夫だ。お前なら、絶対やれるからよ!」

「え、ええ……!」

 それまでとは違い、シズの瞳には光が宿っていた。それを見たのび太は、安心したかのように笑みを浮かべる。

「……頼んだぜ、艦長!」

 そしてのび太は、ブリッジを飛び出した。

(……大丈夫。大丈夫……きっとやれる……大丈夫……!)

 心で自分に言い聞かせたシズは、顔を上げ力強く声を出す。

「ジャイ! 敵艦との距離を保ちつつ、機関砲装填の後照準合わせ!」

「お、おう!」

「スネ! 近くの味方機に救援要請! 併せて敵の動きに注視! 細大漏らさず報告!」

「りょ、了解!」

「大丈夫! 私達ならやれる! みんな! 信じてるから!」

「ああ!」
「任せろ!」

 いつしか、ブリッジ内は覇気に満ち溢れていた。

 一方、倉庫にたどり着いたのび太は、山積みとなった物資をあさぐっていた。

「……保存用食料? ……保存用水? ……保存用調味料!? 全部飯ばっかじゃねえかよ!」

 物資搬送と聞いて、あまりあてにはしていなかった。だが当然というか必然というか、探せども出てくるのは武器とはほど遠いものばかり。

「くそ! 物資搬送なら武器くらいあるだろ! どこだよ!」

 ボックスをひっくり返しながら奥へと進む。そして最深部まで行き着くと、そこで何かを見つけた。

「なんだよ、これ……」

 それは明らかに他のボックスよりも大きなものだった。布のようなものを幾重にも巻かれ、止め紐には“贈呈品”なるカードが。

「贈呈品って……部隊の物資に関係あるのかよ……」

 半ば諦めながら、布をほどいていく。そして最後の布をはぎ取ると、出てきたものにのび太は固まる。

「……これが……贈呈品……?」

 出て来たのは、金属製の人型だった。ロボット……その言葉が一番似合うのかもしれない。
 膝を抱える形で鎮座するそれは、全長3メートルくらいか。白いボディにはいたるところに赤い紋様が描かれていた。
 両手の甲には銃口のようなものが。おまけに背中には、剣がニ対。

(これが贈呈品とはね……分かりやすすぎるカモフラージュだこと)

 それでものび太は、頬を吊り上げる。

「……でも、これなら何とかなるかもしれない!」

 しかし、大きいのは大きいが、どう考えても大人が乗り込むには小さすきる。

「これ……もしかして、パワードスーツの類か?」

 だとするなら、やけにごつい気もしていた。これを着込んだとして、ろくに動けるかどうか。
 だがいずれにしても、今はこれに頼るしかない。

「ええと……ボタンか何かないのか?」

 機械の胴部分を触りボタンを探すのび太。そして腹部の角に、何やらレバーらしきものを見つける。

「ええと……これかなっ……と!」

 強めにレバーを引くと、機械人形から何かが作動する音が響き始めた。
 すると機械はおもむろに立ち上がる。頭部は後方へ動き、胸元はドアのように両開きした。

「……なるほど。これに乗り込めばいいんだな?」

 そしてのび太は、機械の足を踏み台にして中へするりと入り、手足を伸ばした。すると開かれていた頭部と腹部は閉じ、彼の体を包み込む。

「…………真っっっ暗なんだけど……」

 入ったのはいいものの、機械はうんともすんとも動かなかった。手足を動かそうとするが、びくともしない。

(……これ、外れかもな)

 半ば諦めかけたその時、突然中に声が響いた。

『――初期設定、開始します』

「……へ?」

『毛細血管パターン……認証。網膜パターン……認証。身体構造……認証』

 次々とアナウンスが流れる。目の前には数々のモニターが現れ、グラフのようなものが多数映し出されていた。

「なんだなんだ? 何が起こってるんだよ……」

『……最終認証。音声パターン……コメントをどうぞ』

「こ、コメント? ……ええと……」

『音声パターン認証。初期設定、終了します』

(えええ……締まらねえなぁ)

 そしてアナウンスが終わるや、突然視界が開け、倉庫内を映しだした。
 機械は立ち上がり、辺りを見渡す。その時に、のび太は気づいた。ついさっきまで微動だにしなかった手足は、まるで自分の手足かのようにスムーズに動く。視線を左右に流しても、モニターは追うように動く。
 それは自分の体そのものだった。パワードスーツ……まさに、その通りのものだった。

しえん

「……こいつは……すげえ……」

 手足を動かして、感触を確かめる。やや視界はいつもより高いが、問題はなさそうだ。
 その時、再び機械から声が響いた。

『――やあ! 君がマスターかい?』

「うおっ!?」

 突然のことに、のび太は思わず声を上げる。

『そんなに驚かなくてもいいのに……。失礼しちゃうよ、まったく……』

 男の子のような声だった。明るくて、どこか間の抜けたような……。初期設定時のアナウンスとは、まったく別の声だった。

「……ええと……ちょっと待てよ……?」

 のび太は、何かを思い出していた。どこかで聞いたことがあるような、懐かしい声だった。
 しばらく頭をひねった後、唐突に思い出した。

「――あああああああ!?」

『うわっ! いきなり大声出さないでよ! びっくりするじゃない!』

「その声……ドラえもん!?」

『ドラえもん? 誰だよ、それ』

「……へ?」

『僕は、サポートシステムの、“D0-LA”。まあ、ドラって呼んでよ』

「ド、ドラ……?」

(……まさか、これがこっちの世界のドラえもん!? ……ドラえもん、お前って奴は……)

 本来なら緊迫した状況のはず。だがのび太の心と体は、すっかり脱力してしまっていた。

まさかのドラえもん登場w

「……」

『ちょっと? もしもーし? 起きてる?』

「……ああ。おかげさまで。眠れやしないよ」

『そう。……それより、さっきから警報音が鳴ってるんだけど……なんなの?』

 ドラの言葉に、のび太はようやく本来の目的を思い出した。

「そ、そうだった! おいドラえもん! このスーツ、戦えるか!?」

『だから! 僕はドラえもんなんて名前じゃないってば!』

「うるせえ! どっちでもいいだろ! どうなんだよ!」

『はぁ……まったくもう……。とんでもない奴がマスターになったもんだよ。……まあ、戦えるよ。だって、そのための“ゴリアテ”だし』

「ゴリアテ?」
 
『このアーマーの名前だよ。正式名称は、汎用戦闘フレームアーマーver.1。通称、“ゴリアテ”だよ』

「汎用戦闘、フレームアーマー……」

『言っとくけど、強いんだからね、僕は。驚いたって知らないよ?』

 ドラは、勝ち誇るかのように鼻息荒く話す。

「いや、もう十分驚いてるよ」

(お前の存在に、な……)

 そしてのび太は、一度強く息を吐いた。

「――ドラ! ちょっと今ピンチなんだよ! 力貸せ!」

『……もう、しょうがないなぁ……!』

 機械人形――ゴリアテの目は、光輝いた。

 一方、ブリッジ。

「――ッ!? 敵部隊の小型機! 集団で飛行開始! 距離詰めてきたよ!」

 スネはモニターを見つめながら、シズに向かい叫ぶ。

「来た……! ジャイ! 迎撃用意!」

「お、おう! 腕が鳴るぜ……!」

 警報音は更に強く鳴り響き、メインモニター上では多数の赤いポイントが迫っていた。

「ジャイ! 十分引き付けて!」

「了解艦長!」

 アラーム音の中、緊張が高まる。シズはモニターを見つめながら、その時を待つ。そして――

「――両翼機関砲、ッてえええ!」

 号令と共に、機関砲から無数の光の弾が放たれる。弾丸は2列の放物線を描きながら、敵の小型機へと向かう。だが小型機は隊列を保ちつつ上昇。弾丸は空を切り、当たることはない。

「うおおおおおお!」

 ジャイはなおも機関砲を撃ち続ける。上方を旋回していた敵部隊は一転、急降下でシズらの艦に向かい始めた。

「敵機接近! マズいよ!」

「分かってるっつうの! 落ちろおオオオ!」

 ジャイは機関砲を上に向ける。弾のいくつかは敵の小型機数機に命中。上空で爆発する。

「ダメだ! 全部は落としきれない!」

「総員! 衝撃に備えて!」

 残る敵部隊からの砲撃。マシンガンのような砲撃は波状に放たれ、艦の上部に命中した。
 細かな爆発が起こり、艦全体は激しく揺れる。

「……!」

「じょ、上部機関損傷! 艦内に火災発生!」

「火災は消火装置で対処! 航空に影響は!?」

「今のところは大丈夫だけど……このままじゃ蜂の巣だよ!」

「くそっ! のび太はまだかよ!」

「……のび太……!」

 シズは祈るように、両手を合わせた。

『――ああ、テステス。聞こえるか?』

「……え?」

 ブリッジに、突如のび太の声が響く。

「の、のび太か?」

『その声はスネか? ちょっとハッチを開けてくれないか?』

「ハッチを? どうして?」

『いいから早くしろ。このままじゃ撃墜だぞ』

「わ、分かりました! スネ! ハッチを開けて!」

「了解艦長!」

 そして艦の底にあるハッチは、音を立てて開かれる。

『サンキュー艦長! これで行ける!』

「行くって……どこにだよ」

『なぁに……。ちょっとした、害虫駆除だよ!』

 開かれたハッチを前に、ゴリアテは立つ。見下ろせば地上は遥か下……その光景に、少しだけ背筋が震えた。

「……おいドラ。これ、本当に飛べるんだろうな?」

『当たり前だよ。ちゃんと飛べるからさ』

「本当か? 嘘だったらタヌキ鍋にしてやるからな」

『た、タヌキ!? 僕はタヌキなんかじゃないよ!』

 ドラは激しく怒る。

(やっぱ、まんまドラえもんだな……)

 そしてのび太は、覚悟を固める。

「……よし! ゴリアテ――出るぞ!」

 ゴリアテは足を踏み込み、勢いよく空中へ飛び出した。
 そして、真っ逆さまに落ち始めた。


「うおおおお!? おいドラ! これ落ちてるぞ!? 落ちてる!」

 手足をばたつかせ慌てるのび太。雲を突き破り、金属の固まりはみるみる地上に急降下する。

『落ち着いて! ブースターを点火させるんだ!』

「どうやってだよ!」

『ゴリアテはマスターだよ! 飛ぶことを想像して!』

「想像!? 想像すればいいのか!?」

『いいから早く! 落ちちゃうよ!』

「分かったよ! ――飛べ! 飛べ飛べ飛べ飛べ飛べ飛べ! 飛べえええ!」

 その刹那、背中部分が青く光、ゴリアテを猛烈な勢いで上昇させた。

「うおおおおおお!?」

『やりすぎだよマスター! このままじゃ成層圏出ちゃうよ!』

「ああ!? じゃあ下だ下! 下に行け!」

 そして今度は、ゴリアテは先程を上回る勢いで急降下し始める。

『だからやりすぎだってえええ!』

「ああもう! うるせええええ!」


「……何やってんだ、あいつ……」

 ジャイは呆然と、モニターを眺めていた。モニター上では、機械の巨体が上下に激しく動き回る。更にのび太とドラのやりとりも、ブリッジ内に筒抜けになっていた。

勿論大山のぶ代で再生してるぞ!最近復帰したらしいな。
ただこのDOLAのキャラはどっちかというとモノクマに近いかもw

 しばらく上下を繰り返したゴリアテは、ようやく一定の箇所にとどまり飛行していた。

「はあ……はあ……いきなり死ぬかと思った……」

 のび太は息を切らし、疲れ果てたように呟く。

『まったく……極端なんだよマスターは。ゴリアテには、イメージフィードバックシステムがあるんだよ? マスターの意思一つで自由に動けるのに』

「そういうことは先に言えよ! ……まあ、もういいけど」

 そしてのび太は、前方に展開する敵部隊に視線を送る。
 敵部隊は旋回を続けていた。

「こっちのむちゃくちゃな動きに、手が出せなかったんだろ。ケガの巧妙とは、このことだな……」

『……全ては、僕の計算のうえでの――』

「嘘つけ! お前だって慌ててただろうが!」

『ああもう! 別にいいでしょ!? それより、どうするの!?』

「ったく……。装備は何がある?」

『両手に亜粒子砲があるよ。それと、背中にはレーザーブレードが二本』

「……それだけか?」

『うん。それだけ』

「……」

『……』

 微妙な空気が、ゴリアテの中に漂う。

『……なにさ。何が言いたいのさ』

「……別に」

『嘘だ! 今絶ッッ対に悪口を思い浮かべてたよね!?』

「うるせえんだよ! ほら! とっとと行くぞ!」

『ああ! 誤魔化した! だいたい君は――!』

 ドラの説教を響かせるゴリアテは、敵部隊へと勢いよく飛び込んでいった。

おう……いつの間にかジャンがジャイになってた
もうジャイでいいわ

気付かなかったwww

あげ

 ゴリアテは空を駆ける。目の前には小型機の部隊。大きさは二メートルくらいか。それまで隊列を組み旋回していた小型機は、突如四方に散る。向かうゴリアテを捕捉したのか、全方位からのび太に迫る。

『来たよマスター!』

「見れば分かる! ドラ! 亜粒子砲ってのは、この手のところにあるレバーみたいなやつを引けばいいのか!?」

『そうだよ! でも気を付けて! 敵の数は多いしこっちは不利だからね!』

 ふと、それまで飛空していたゴリアテは、ホバリングをし停止する。

『――ッ!? 何やってるの!? 止まったらただの的になっちゃうよ!?』

「うるせえ! いいから黙ってろ!」

 のび太はゴリアテ越しに、敵機の動きを探る。前後左右……様々な方角からゴリアテに接近し、その銃口を向けている。

(数は多いが……それほど早くはない。十分対処できる……!)

 そしてゴリアテの背にある青い光は、徐々に強く光り始める。

「おいのび太! 狙われてるぞ! 早く動けよ!」

 艦から様子を見ていたスネは、見かねて声を上げる。だがのび太は、その場から動こうとしなかった。

『ちょ、ちょっとマスター……!』

「黙ってろって!」

 のび太はドラの言葉を遮り、何かのタイミングを計る。

(さっきのゴリアテの速度で、だいたいの最大速度は予想出来た。……なら、たぶん大丈夫だ)

 やがて敵機はゴリアテのすぐ近くまで迫る。そして、敵機は一斉に発砲を開始した。

「――行くぞドラ!」

『え!? ――うわっ!』

 敵機からの砲撃が始まる刹那、ゴリアテは急発進する。先ほどとは比べ物にならない速度でたちまち敵集団との距離を詰めると、そのまま通り過ぎていく。敵集団から放たれた砲弾は、そのまま大地に撃ち込まれた。

「すげえ速度だ!」

 敵集団を見下ろすように機体を反転させたのび太は、興奮気味に声を漏らす。

『当たり前でしょ! ――あ! マスター後ろ――』

 ドラえもんが何かに気付いた瞬間、のび太は後方を素早く振り返り砲弾を撃ち出す。放たれた光る球体は猛烈な勢いで後方に潜む敵機を捉え爆発させた。

「あ? 後ろがどうしたって?」

『……え? い、いや……』

「なんだよ。まあいいや。どんどんいくぞ!」

 そして再び、ゴリアテは飛空する。飛びながら両手から砲弾を放ち続けていた。砲弾は一つ残らず敵機に命中。ハエのように空を飛び回る小型機の群れは、たちまちその数を減らし始めた。

「……す、すげえ……。百発百中だぜ……」

 モニターを見つめるジャイは、その光景に見惚れていた。敵の攻撃を避けるだけにとどまらず、次々と敵機を撃墜していく鋼の巨人。
 機体の性能もさることながら、驚くべきはのび太の射撃能力。息をするように砲撃を敵に命中させるその技術は、これまで見てきたどの兵士よりも圧倒的に上だった。
 そして、シズもまた同様であった。突如現れた同年代の男性は、鬼神の如き動きで敵を圧倒していた。それは味方であるにも関わらず恐ろしさすら感じるほどだった。

「ドラ! 敵機残数は!?」

 敵の砲撃を躱しながら、のび太は状況を把握する。

『残り五機! 凄いよマスター!』

「今からもっと凄いことしてやるよ! 敵艦までの距離!」

『え、ええ!? 距離!? や、約1キロだけど……』

「よし! 突っ込むぞ!」

『ちょ、ちょっとマスター!』

 ドラが静止するよりも前に、ゴリアテは更に速度を上げ、残る小型機を放置して敵艦の一隻に猛進し始めた。

あいえん

幼女「ふぇぇ……」

男「うへへへ。泣いても誰も来ないぜぇ」

>>504しーっ

SS Short Story ×
LS Long Story ○

あいえん

あいえん

>>506
SS Short Story ?
SS souzou Story 〇

 敵艦のブリッジは、混乱していた。

「味方機残数5! ほぼ壊滅状態です!」

 黒い軍服を着た兵士は、モニターを見ながら叫ぶ。報告を受けた指揮官は、指揮台を拳で叩き憤りを露わにする。

「クソッ! よもや新型がこれほどとは!」

 指揮官の胸中にあるのは、後悔の念であった。あとわずかで、あれの起動を阻止出来ていた。それどころか、奪うことすらも可能だったはず。
 だが奴は起動し、挙句小型機部隊は壊滅……。指揮官の悔しさは、並以上だった。

「て、敵機! 本艦に向け飛行!」

「――ッ!? な、なんだと!? 小型機は!?」

「小型機後を追いますが、敵の機動力が上回り追いつけません!」

「――ッ! 全砲門開け! 迎撃しろ! 敵機を近付かせるな!」

 指揮官の指示のもと、戦艦はゴリアテに向け一斉射撃を始めた。

 砲弾の雨を掻い潜り、ゴリアテは敵艦に迫る。避けた砲弾の一部は後方から追う小型機に当たり、爆発を起こしていた。

「敵味方見境なしかよ! 敵艦の指揮官はよほど視野が狭いみたいだな!」

『仕方ないよ! 僕らが接近しているんだ! 母艦を落とされたんじゃ、敗北が決まっちゃうし!』

「ドラ! 敵艦のブリッジの位置は分かるか!?」

『うん! ちょっと待って! ……通信波長を感知! 発信源特定! たぶんそこがブリッジだよ!』

「でかした! 位置は!?」

『敵艦前頭部上方! ただ、亜空間障壁が展開されてる!』

(デキスが見せたやつか……!)

 あの瞬間を思い出したのび太は、更に猛る。

「ドラ! 障壁を敗れるか!?」

『当り前さ! そのためのレーザーブレードだよ!』

「よし!」

 縦横無尽に跳びながら、ゴリアテは背中の剣を抜く。片刃の白い刀身は光を反射させ、直後刃には光が灯る。

『もうすぐ障壁だよ! 距離は――!』

「距離じゃ感覚が掴めねえ! タイミング取りは任せるから、カウントしろ!」

『う、うん!』

 ゴリアテは敵の砲弾を躱し、その中に一筋のトンネルを見つける。そして推進力を最大出力とし、一気に敵艦まで一直線に滑空する。

『速度を維持させて! 障壁までカウント5! 4! 3――!』

 カウントに合わせ、ゴリアテは大きく剣を振りかぶる。

『2! 1! ――今だ!』

「うおおおおおお!」

 合図と共にゴリアテは剣を大きく振り降ろす。斬撃が眼前の障壁と接するや激しい光が辺りを照らす。そして紙を切る音に似た切断音が響くと、障壁は虹色の光と共に消滅した。

『マスター! やったよ!』

「いやまだだ!」

 ゴリアテはそのまま敵艦に張り付き、唯一あるガラス張りの部分に銃口を向けた。

「ドラ! 相手の艦に通信できるか!?」

『う、うん! 出来るよ!』

「だったら音量全開でつなげ!」

「おい! 聞こえるか!?」

 敵艦のブリッジには、のび太の声が響いていた。

「な、なんだこの声は!」

「敵機からの通信です! 強制的にこちらに送り付けています!」

「初めに一つ言っておく! 俺はお前らを撃つことになんら躊躇しない! 下手な動きをしたら、全員あの世行きだぞ!」

 ゴリアテは、更に銃口を近付けた。

「……総員、現状待機。友軍艦にも砲撃中断を送れ」

 敵指揮官は、ブリッジ内の兵士達に告げる。そして、メインモニターに映る巨人に話しかけた。

「……貴殿の活躍、敵ながら敬意を称する。まさか、単身で我が艦を沈黙させるとはな」

「お褒めの言葉、ありがとよ。だが、悠長に話をするつもりはない。二つ答えろ。――お前ら、初めからこのアーマーがあるのを知っていたな?」

「……」

「だんまりかよ。だったら、肯定と取らせてもらう。そしたら、もう一つの質問だ」

「……なんだ?」

「お前ら、神界軍……とか言う連中だよな? だったら、お前らのトップは神を名乗ってるのか?」

「……名乗るのではない。神なのだ」

「そうかよ。……その神って奴は、小さな女の子か?」

「我らが神は、見た目など関係ない。その存在こそが絶対であり、唯一なのだ」

(つまり、その通りってことか。……ってことは、やっぱり……)

 一度表情を落としたのび太は、顔を上げ敵艦に告げる。

「……よし。これからのことだ。まず、もう一隻の戦艦を離脱させろ。それから、この艦の武装を破棄。その後、撤退しろ。いいな?」

「……我らに、選択の余地はない。言うとおりにしよう」

 指揮官は、のび太の提案に承諾する。勝敗が決した瞬間であった。

 敵艦2隻は、ほどなく撤退していった。武装の破棄に思いのほか時間を要したこともあり、辺りは黄昏色に染まる。
 敵艦がレーダーから消えるのを確認した後に、立役者であるゴリアテは帰艦した。

「――のび太!」

 のび太がブリッジに入るなり、ジャイとスネは駆け寄る。ジャイは太い腕をのび太の肩に回し、笑顔を向けた。

「こいつ! おいしいところを全部持っていきやがって!」

あいえん

あいえん

>>509
それ初耳だった

>>517
そりゃそうだろ
適当に言っただけだし

やべぇよ…こんなSSが一ヶ月前からあったのかよ
早く見つけてればよかった…イッチ頑張れよ

 敵艦2隻は、ほどなく撤退していった。武装の破棄に思いのほか時間を要したこともあり、辺りは黄昏色に染まる。
 敵艦がレーダーから消えるのを確認した後に、立役者であるゴリアテは帰艦した。

「――のび太!」

 のび太がブリッジに入るなり、ジャイとスネは駆け寄る。ジャイは太い腕をのび太の肩に回し、笑顔を向けた。

「こいつ! おいしいところを全部持っていきやがって!」

「痛いってジャイ。それに、大半はあの機体のおかげだよ」

「あの機体、物資の中にあったのか?」

「ああ。贈呈品だとよ」

「贈呈品? いったい誰に……」

「さあね。ただ、あの機体のスペックは並じゃない。敵もゴリアテを狙ってたみたいだし」

「ゴリアテ?」

「あの機体の名前だとよ。うるさい“青ダヌキ”が言ってやがった」

「敵が、あの機体を……」

 スネは視線を下に向け、何かを考える。

「――のび太さん」

 ふと、奥からシズの声が聞こえた。彼女は微笑みながら、ゆっくりと近づく。

「あなたのおかげで、我が艦は助かりました。艦長として、お礼を申し上げます。ありがとうございました」

 シズは、深々と頭を下げる。のび太はどこか照れ臭そうに、頬をかいていた。

「よせって。撃墜されてたら危なかったのは、俺も一緒だし。自分のためにしただけだよ」

「だとしても、結果としては我々を救ってくれました。ここはぜひ、言わせてください」

「……まあ、そこまで言うならいいけど」

「はい……!」

 シズは笑みをのび太に見せる。彼女の頬は、仄かに桃色に染まっていた。

「シズ。これからどうするんだ?」

「……とにかく、目的地に急ごうと思います。敵がゴリアテを狙っているのなら、また別の部隊が襲ってこないとも限りませんし。先ほど友軍艦から応答がありました。間もなく合流すると思いますので、その後すぐに向かおうと思います」

「ああ。賢明な判断だと思う。その目的地ってのは?」

「商業都市、ハンデルシオ。その連合軍の拠点基地が、目的地となります」

「ハンデルシオ……」

 のび太には、聞きなれない街の名前だった。ここは並行世界とは言え、全く違う文化、技術が蔓延する世界。彼の知らない都市の名前があったとしても、不思議ではない。

「そこまでは、ここから数日のところです。……そこでですが、のび太さんに一つお願いが……」

「俺に?」

「はい。大変申し訳ないのですが、そこまで共に来てほしいのです。この艦は見ての通り、私達三人しかいません。これから敵の襲撃がないとも限りませんので……その……」

 シズは実に言いにくそうに、語尾を狭めた。先ほどすぐに家まで送り届けると言った手前、それが出来ないことに申し訳なさを感じていた。
 その姿を見たのび太は、やれやれと息を吐く。

「いいよ別に。ついてくよ」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ。まあどのみち、俺の家に送るってのは無理な話だろうし、行く当てもないし」

「どういうことですか?」

「複雑なんだよ。機会があれば、説明するからさ。あとさ、この艦、名前とかあるのか?」

「はい。ありますよ。……私達は、フレイヤと呼んでいます」

「へえ……北欧神話か……」

 するとジャイは、意地悪そうな笑みを浮かべてのび太に耳打ちする。

「……知ってるか? フレイヤってのは、艦長が昔飼ってたペットの名前なんだぜ?」

「ちょ、ちょっとジャイ!」

 シズは顔を真っ赤にしながら、ジャイを止める。

「ハハハハ……!」

 その光景に、のび太は笑った。ブリッジを、柔らかい空気が包み込んでいた。
 そしてフレイヤは、目的地へと向かう。乗組員3名と、同乗者1人を乗せて。
 これから訪れる、激動の日々を知らないままで……。

ゴリアテはごついアイアンマンみたいなものだと思っておけばいいのかな

>>522
うん
そんな感じで
ただ、名前はミスったな
白い機体なのにゴリアテって……

「――見えてきました」

 ブリッジの艦長席から、シズは言う。のび太ら乗組員は顔を上げ、メインモニターを注視する。

「これが……ハンデルシオ……」

 のび太はその都市の光景に、息を飲んだ。
 街の周囲は切り立った崖に囲まれ、その境界には巨大な壁が建てられていた。出入口と呼べるのは壁に作られた門のみであり、ハンデルシオを出入りする飛空艇が数多く飛び交う。
 壁の内側には数多くの建物が立ち並ぶ。そして一際目立つのが、中央にそびえる白い塔。周囲を監視するように立つ塔は、日の光を反射し白く輝いて見えた。

「へえ……これだけの崖に囲まれてたんじゃ、陸路で攻めるのは厳しいな。おまけにあの塔が空域の監視も出来るだろうし。なかなかの要塞都市だな」

「周囲の環境や街の構造から、物資を盗賊や空賊に奪われる心配もありません。ですから、昔から商人達が一同に集まり、大きな商談をしてきたんです」

「なるほど。それが商業都市って名前の由来なんだな」

「はい。私たちが向かうのは、あの中央の塔です。あそこが、拠点基地になります」

 そしてフレイヤは、門を潜る。巨大な壁の内側を目の当たりにしたのび太は、再びその光景に目を奪われる。
 建ち並ぶ建物の隙間では、米粒程度の人々が隙間なく往来する。見れば露店や商店が立ち並び、声こそ聞こえないが見るからに活気に溢れていた。

(……だが、こんな街がもし襲われたら、逆に逃げ場もないな。背水の街ってところか……)

 何にでも物事の“悪い面”を考えてしまうのは、のび太の職業病か。
 シズ達を見れば、永かった航海が終わることに安堵の表情を浮かべていた。そんな彼女達に水を差すこともないだろう。
 頭に浮かんだ一抹の不安を心の奥に押し込め、のび太はその都市の風景をぼんやりと見ていた。

「――なんたる不手際だ!」

 白い塔の一室で、大きな机に座る男は胸元の多くの勲章を揺らしながら、入口付近に立つシズ達を怒鳴りつけた。やっとの思いで辿り着いた拠点で彼女達を待っていたのは、激しい恫喝だった。
 室内には他に数人の者が同席していたが、いずれも表情は暗い。

「秘密裏に開発していたアーマーを無許可で起動させただけでなく、実戦に投入しただと!? もし奪われでもしていたら大変な事態になっていたぞ!」

 こめかみに血管を浮きだたせ、男は叫ぶ。その男こそ、この拠点基地のトップ、提督であった。

「し、しかし提督。お言葉ではありますが――」

「言い訳など聞きたくもない!」

 シズの弁明を、提督は一喝する。

「全ては艦長であるシズ君の責任だ! 後日、然るべき処分が下るだろうが覚悟しておきたまえ!」

「艦長が処分だと!? ふざけんな!」

 あまりの理不尽な物言いに、ジャイは怒りを露わにする。

「なんだね君は! たかが一介の操舵師が何たる口の利き方だ! 場をわきまえろ!」

「な、なんだと!?」

「ジャイ! やめなさい!」

 更に顔を赤くするジャイ、シズは制止する。

「でもよぉ艦長!」

「ジャイ!」

「……! ……フン!」

 シズの目を見たジャイは、それ以上何も言わずにそっぽを向く。そしてシズは、改めて頭を下げた。

「……先ほどの乗組員の無礼、大変申し訳ありませんでした。彼も長旅で疲れていましたので、どうかお許し下さい」

「……まあ、わかればいい。だが、たかだかお使い程度もできんとはな。貴様らにはつくづく呆れるわい」

 提督は煙草をふかしながら、嫌味を呟く。その時のび太は、気が付いた。頭を下げるシズの手は、震えるほど強く握られていた。

「……」

「用件は以上だ! とっととこの部屋から出て――」

「――ハハハハハ……!」

 のび太は笑い出す。突然のことに、室内に居合わせた者は、一斉に彼に視線を向けた。

神スレあげ あいえん

「な、なんだね君は!」

 さすがの提督も、これには動揺した。

「……いや、すみません。話があまりに馬鹿げていたから、つい……」

「ば、馬鹿……!?」

「ちょ、ちょっとのび太さん……!」

 シズは小声で止めようとしたが、聞こえているのか聞こえていないのか、のび太は気にもせず話を続ける。

「こちらの艦は1隻。むろん護衛もなく、ろくな装備もない。片や向こうはばっちり武装した戦艦2隻に小型機が多数。この状況を、あのアーマーを使わずにどうやって切り抜けろって言うんだ?」

「それは……!」

「それなら、仮定の話をしようか。もしあそこで俺がゴリアテを起動しなかったとする。そしたら、どうなっていた? 当然、艦は撃墜。ゴリアテも一緒に燃えるか、最悪奪われてただろうな」

「……!」

 のび太のもっともな言い分に、提督は口をつぐむ。更に追い打ちをかけるように、のび太は続けた。

「そもそも、シズ達は“秘密裏に開発していたアーマー”って存在を知らなかったんだぞ? それはもちろん、カモフラージュだったんだろうけど。
 だが、それほど重要な物品を、なぜこうまで軽々しく運ぼうとしたんだ? 戦局を左右するほどの品物なら、護衛くらいつけるべきだっただろ」

「う、うむ……」

「結局は、端っから戦略ミスなんだよ。相手の裏をかいたつもりが、全部裏目に出てたんじゃ世話ねえよ。シズを処分すれば、当然本隊も知るところになるだろ。そうなったとき、後ろ指をさされて笑われるのは、いったい誰だろうな。下手すりゃ、シズよりも断然重い処罰がくるだろ」

「――ッ!?」

 処罰……その言葉に、提督の表情は凍りついた。

不謹慎ネタだろ 通報 って奴が湧きそうなスレ

 そしてのび太は口調を柔らかくし、“しめ”に入る。

「……それに、今考えるべきは、“なぜ新兵器を起動させたか”じゃなくて、“なぜ敵襲があったのか”、じゃねえの?」

「……どういうことだ?」

「そのまんまの意味だよ。ゴリアテは、これだけ極秘扱いしてた代物なんだよな。見方にまで知らせないくらいだ。だったら、なぜ神界軍の奴らが知っていたのか……それは、さすがのあんたにも分かるだろ?」

 のび太の言葉に、提督は口元に手をあて思案する。そして、気が付いた。

「――……スパイか……」

 提督の呟きに、室内はにわかにざわついた。のび太は笑みを浮かべ、最後に告げる。

「まずは、そっちが先だよな。どう考えても。なんなら、あんたから本隊に連絡すればいい。そうすりゃ、お偉いさんもあんたを評価するだろうよ」

「……そ、そうだな! 至急本隊へ連絡し、調査依頼をせねば!」

「……で? シズの処分は?」

「そんなのはどうでもいい。シズ艦長、並びに乗組員は退室。その後、指示があるまで艦で待機。いいな?」

「りょ、了解!」

 そしてシズ達は、ようやく解放されフレイヤへと帰艦するのだった。

>>528
どの辺が?

>>530
ロリネタだからだろ jk

>>1からどうアクロバットしたらのび太の話にwwww


ちょっと読んでくるwwww

墜落じゃね?

 フレイヤに戻った一行は、ブリーフィングルームにて待機することとなった。

「……やれやれ。一時はどうなることかと思ったよ……」

 スネはネクタイを緩めながら、椅子に座り込む。

「まったくだ。のび太のおかげで何とかなったけどよ……」

「ああ……まあ、ああいう連中の扱いは慣れてるからな。……それより、聞きたいことがある」

 改まり、のび太は表情を引き締める。その顔を見たシズ達は、並々ならぬ何かを感じ取った。

「……はい。なんでしょうか?」

「この世界のこと……教えて欲しい」

「この世界のこと? なんだよ、それ……」

 ジャイをはじめ、シズ、スネは首をかしげる。のび太の言うことの意味が分からない……そんな表情だった。なにしろ彼は、まさにこの世界にいる。目の前に純然と存在する、同じ世界の住民。それなのに、なぜこの世界のことを尋ねるのか理解出来なかった。
 彼女達の表情を見たのび太は、すぐに彼女達の心情を察した。

「わけが分からないとは思うが、俺はこの世界のことを知らないんだよ。……とりあえず、俺の方から話そうか。とても信じられないとは思うがな……」

 そしてのび太は、これまでの経緯を話し始めた。

あいえん あげ

「……これが、これまでの話だ」

 のび太が話し終えると、室内は静寂に包まれた。あまりにも現実離れした内容に、皆一様に言葉が出なかった。平行世界、神の降臨……全てがとても信じられない、まるでお伽話だった。
 だがどうだ。話すのび太には、一切の照れも笑みもない。ただまっすぐシズ達を見つめ、淡々と話していた。信じられない話にも関わらず、その口調には、圧倒的なリアリティーがあった。

「……平行世界……そんなものが……」

 シズは表情を落とす。

「すぐに信じることは難しいと思う。俺だって、最初信じられなかったからな。この世界に来て、ようやく全てが本当だって実感したくらいだ」

 続けて、ジャイが口を開く。

「じゃあよ、そのリルルって子が、神界軍にいるってのか?」

「確信はない。ただ、この前の敵艦の指揮官が話してたニュアンスからすれば、たぶんな。神界軍の一員じゃなくて、奴らが崇拝する神様ってやつになってると思う」

 スネもまた、難しい表情で話を聞いていた。

「神様の降臨……なるほどねぇ。最近になって神界軍の力が桁違いに強くなったのも、そのためなのかも」

「最近になって?」

 すると補足するかのように、シズは話し始めた。

「……今度は、私達の番ですね。この世界のこと、私からお話しします」

「この世界は、元々たくさんの国々がありました。人々はそれぞれの国で生活し、国同士は外交という形で繋がっていました」

「……俺の世界と、同じ形だな」

「ですがその世界は、実に脆いものでした。国と国がにらみ合い、時には争いが起きていました。そして争いは、発達した技術により熾烈を極め、幾つもの国が消えていきました」

「……」

「そんな中、とある人物が立ち上がり、世界の全ての国に宣戦布告をしたんです。その者らは戦艦を駆使し、紛争地を巡り、武力をもって争いを終わらせ始めました。
 ……その者の名こそ、デキス……」

「……奴か……」

「はい。のび太さんの前に現れた人物は、話からすると本人に間違いないでしょう。デキスに賛同する者は日々増え続け、いつしか彼らは、どの国よりも強い軍事力と人員力を手に入れたのです」

「……不安定な世界に絶望した連中が、こぞって味方についたのか」

「おそらく。世界の国々はそれに危機感を覚えました。そしてデキスらに対抗するために、国同士の垣根を越え、世界連合軍を結成したのです。その時を同じくして、デキスらも自分達を“反世界連合軍”と呼称しました。それこそ、現神界軍の前身です」

「ちょっと待ってくれ。話を聞く限り、それこそ数年前のことじゃないのか? たったそれだけで、奴らはそんだけの力を得たってのか?」

「そういうことです。恐るべきは、デキスの才能ですね。彼はその頭脳で、様々な新兵器を開発してきました。それは当時の戦況を一変させるほどのものでした。加えて、世界の状況に反感を覚えていた者は数多く、莫大な資金が彼に渡ったのだと思います」

「話を続けますね。そんな彼らが提唱していたのは、絶対的な神による世界の安定、統治なのです。デキスは人々に訴え続けていました。いずれ世界に神が訪れる。その時こそ、この世界に恒久なる真の平和が訪れる、と」

「……端から聞くと、すげえ胡散臭い話なんだがな」

「……ですが、人々はそれを信じたのです。それほと、当時世界は荒れていたということです」

「……」

「ですが、世界連合軍は反連合軍を押し初めていました。いかに軍事力、人員力があるとはいえ、世界の国々全ての軍力の前には、やはり多勢に無勢でした。デキスらの軍勢は日に日に勢力を弱めはじめ、間もなく勝敗が決すると思われました。ですが……」

 するとここで、スネが口を開く。

「……今から数ヶ月前、突然反連合軍は息を吹き返したんだよ。決め手は、アスクーダの奇跡だね」

「アスクーダの奇跡? なんだそれ?」

「旧アスクーダ国領内で起こった、連合軍と反連合軍の戦いのことだよ。そこで初めて、反連合軍は自分達を“神界軍”だと名乗ったんだ。
 そして、こっからは眉唾ものなんだけど……たった一人の者が、連合軍一師団を壊滅させたんだ」

「……」

「そいつは摩訶不思議な力を使い、武器も使わず生身で連合軍を壊滅させた。それはまさに、奇跡だったそうだよ。その事実に、世界中でくすぶっていた反連合軍支持者が、更に神界軍に加盟したんだよ」

「……その結果、優勢だったはずの戦況は、五分になりました。そして今では、連合軍が押されている状況です……」

「……」

 のび太は、表情を険しくさせたまま目の前の机を見続けていた。彼は、ようやくデキスが言っていたことを理解出来ていた。
 “僕の世界は荒れている”……。あの時、デキスはそう言っていた。劣勢に立たされていた彼に残された手は、神の降臨だったのだろう。だからこそ彼はリルルの奪取にやっけになり、ことを急いでいたのだろう。

(だが、話を聞く限り、デキスがこの世界にリルルを連れてきたのは、数ヶ月前ってことになる。もしかして、ゲートをくぐる時にタイムラグが起こったのか?)

 それでも一つだけ、確信出来ることがあった。リルルが、この世界にいるということだ。

「……あの、のび太さん」

 ふいに、シズはのび太に声をかける。

「ん?」

「この世界のことを知って、のび太さんはどうするんですか?」

「……そうだな。俺は、リルルを追おうと思う。あいつがこの世界にいるのは間違いないみたいだしな」

「そう……ですか……」

 シズは、残念そうに表情を沈めた。

「……まあ、今すぐってわけじゃないけどな。少なくとも、ゴリアテを返すまでは――」

「――それは、無理な話だ」

 突然、ブリーフィングルームに女性の声が響いた。全員が入り口に目をやると、そこには、研究服を着た女性が一人、煙草をふかしながら立っていた。

 女性は断りもなく部屋の中に足音を鳴らし入ってきた。背後でまとめられた長い髪は、彼女の動きに合わせ揺れ動く。

「……あんたは?」

 のび太が尋ねると、女性は空いた椅子にどかりと座った。

「私は、連合軍技術研究局主任、レイメイだ」

「技術研究局……技研の奴が、なんの用?」

 スネは不信感に満ちた視線をレイメイに向ける。彼女は白い息一筋吐き出し、切り出した。

「先ほど、悪いが勝手に艦内のゴリアテを見せてもらったよ」

「ゴリアテを?」

「ああ。のび太……とか言ったな? 結果から言えば、お前をこのまま行かせるわけにはいかなくなった」

 その言葉に、室内の空気は張り詰めた。

「……どういうことだ?」

「お前、ゴリアテを起動させたうえに、乗り回しただろ? ドラが愚痴を言ってたよ。荒すぎるマスターだってな」

「あの野郎……。まあ、使ったのは事実だが……それが?」

「あの機体はな、ちょっと特殊なんだ。敵に奪われた時のために、使用者を限定させるようになっているんだ。初期設定の時に、毛細血管から網膜、音声に至るまで、使用者のあらゆるデータをインプットし、該当者以外には一切使用できなくするんだ」

 そしてのび太は、ようやく気付いた。

「……ちょっと待てよ。ってことは……」

「ああ。ゴリアテを使えるのは、世界中でお前一人だってことだ」

別ののび太が出てきて最強の敵か、最強の味方になるんですね、分かります

あとこれアニメ化か漫画作って欲しい

別ののび太味方になってくださいよなんでもしますから

 某所――。
 その部屋は薄暗く、僅かにランプの灯りが揺れる程度だった。

「……敵の新型の奪取、失敗したようだな」

 部屋の椅子に座するその者は、威圧的に話す。

「申し訳ありません。敵の新型の性能、少々侮っていました」

 椅子の前には、一人の男が跪いていた。その者こそ……。

「デキス……我が出れば簡単に終わることではないのか?」

「それには及びません。あなた様は、我らが神。出来ることなら、人の争いは人の手で決着をつけるべきかと」

「そうか。ならば何も言うまいて。さすれば、どうするつもりだ?」

「……敵の拠点を叩き、脅威となり得る可能性を排除致します。ちょうど、先日開発した“玩具”を、試すいい機会かと……」

「そうか。任せよう」

「はっ。では、指揮はこの私めが――」

「――デキス。僕が行くよ」

 ふと、室内に別の者の声が響いた。その人物を見たデキスは、少し驚いていた。

「……君がそんなことを言うなんてね……。どういう風の吹き回しだい?」

「いや、先日君が言っていた、“面白い奴”ってのに、会いたくなってね。それに、この前作った僕の新型……あれも使ってみたい」

「ああ。あれ、か……」

「だから、僕が行ってくるよ。……我が神、よろしいですか?」

「よい。お前に任せるぞ。――ノビ」

「ありがとうございます。では、さっそく向かいます……」

 そして男――ノビは、部屋を出る。その後ろ姿に、デキスはニヤリと笑みを浮かべた。

(面白くなってきたな。……さて、彼を前に、君はどんな顔を見せるのかな? 野比のび太……)

 フレイヤのブリーフィングルームでは、のび太が席を立ち上がりレイメイに詰め寄っていた。

「なんだよそれ! お前、技術研究局とかいう部署なんだろ!? 登録の解除くらい出来ねえのかよ!」

 だがレイメイは、あくまでも冷静に答える。

「無理だ。そのシステムは、ゴリアテの心臓ともいえる中枢回路に入れてある。だいいち、外部から解除出来るなら敵も出来るということだ。そんなことを出来るようにさせるはずもなかろう」

「なんだよそれ! なんでそんなところばっかり厳重なんだよ! 輸送計画は適当だったくせによ!」

「輸送計画とゴリアテの開発は、取り仕切る部署が全く違う。私らは、私らの仕事をしたまでだ」

「……!」

 レイメイの話に、のび太はようやく彼女の元を離れ席に座る。シズ達はのび太の激昂ぶりに固まっていた。これまで常に冷静だった彼が見せた、初めての激情だった。
 それは、のび太の焦りでもあった。この世界に来て、ようやくリルルの存在を掴めた。一刻も早く向かいたいのが、彼の本音だった。
 だが、自分が去れば、ゴリアテはただのスクラップになる。ゴリアテは連合軍の最後の切り札であり、それ即ち連合軍の敗北を意味すること。それも分かっていた。
 無論、この世界の情勢などのび太には関係ない。それでも連合軍の敗北をよしとしないのは、ひとえに、シズ達の存在があったからだ。敗北者に何が待っているのかなど、彼はよく分かっていた。
 そんな末路を、シズ達にはたどって欲しくはない。世界は違えど、彼女達はのび太にとって特別な存在だからだ。

やっと追いついた

これ、誰か漫画化したら俺買うわ・・・・

敵のノビにかってそして仲間になるのですね、分かります…
てかそうしてください、お願いします

>>547
さあ……
思いつきで書いてるから何とも……

平行世界ならばのび太とノビのDNAとか一緒でゴリアテを奪われる可能性があるな
もしくは新型がドラミちゃんかキッドのようなドラえもんズだったりするのも面白いな

「お前には悪いが、しばらくは大人しくしてろ」

 レイメイは、最後にのび太にそう告げ部屋を後にした。それからミーティングは解散。それぞれ、自室で休むこととなった。
 しかし夜も更けた頃、のび太はフレイヤのブリッジにいた。

「……」

 席に座り、メインモニターから見える外の景色をじっと眺める。のび太はとても眠れる心境ではなかった。ようやくリルルの存在を掴めたにも関わらず、自分はここから動けない。こうしている間にも、リルルは神という得体の知れないものに浸食されているのかもしれない。
 彼に焦るなということの方が、酷なのかもしれない。

「……くそ」

 のび太は、ただ一言そう呟いた。

「――眠れませんか?」

 ふいに、のび太は後ろから誰かに話し掛けられる。振り返るとそこには、シズが立っていた。

「……ああ。まあな」

「そう……ですか……」

 しばらく俯いていたシズは、彼の隣へと歩み寄る。

「隣、座ってもよろしいですか?」

「え? あ、ああ。いいけど……」

「ありがとうございます」

 シズはのび太の隣に腰掛けると、彼と同じく外の景色を眺め始めた。
 

 街の夜景は、のび太の世界とシズの世界も、さほど違いはなかった。強いて言えば、街を包む灯りが、こちらの方がどこか優しく感じるくらいか。
 周囲を壁に覆われていようとも、空ははっきりと見えていた。今日は月がない。その分、数多くの星達は煌めき、懸命に地上を照らす。
 その昔、星の光は旅する者の道標であり、希望だったという。なるほど、この空を見ていると、それも納得出来る。
 ただ美しく、どこか儚く、夜空の小さな光達は揺れるように光を放っていた。

「……綺麗ですね」

 シズは、外を見ながら呟いた。

「ああ。まったくだ」

 のび太も、外を眺めながら言葉を返す。

「のび太さんの世界は、どんなところなんですか?」

「俺の世界? ……んー、どうだろうな。神界軍が生まれる前の世界と、似た感じかな。ただ、ここまでは文明は発達してないよ。だからさ、最初にフレイヤを見たときはすげえ驚いたよ」

「そうですか……」

 シズは、どこか誇らしげだった。

「のび太さん。その、ありがとうございます」

 突然、シズはのび太に礼を言う。

「……なんだよ、やぶから棒に」

「いえ、考えてみれば、先日のお礼をちゃんと言ってませんでしたので」

「先日って、敵の襲撃の時?」

「はい。それもありますが、その、ここまで一緒に来てくれたことと、提督との面会の時のことも」

「それなら別にいいんだよ。シズ達は、よくやってくれてたよ。あのハゲはそれを知らないで好き勝手言ってたからな。それが頭にきただけなんだよ」

「……ですが、私はあの時、我を忘れていました。実を言うと、私もジャイもスネも、あれだけの実戦は初めてだったんです」

「そうなのか?」

「はい。元々私達は後方支援を主として活動していましたので。ですから、フレイヤも武装がほとんどありませんでした」

「へえ……。初めての実戦であれだけ出来たのか。大したもんだよ」

「そうでもありませんよ。私が出来たのは、のび太さんのおかげなんです」

「俺の?」

「はい。のび太さんは、私に言ってくれました。大丈夫だと。その言葉のおかげで、私は頑張れたんです。……ですからのび太さん。本当にありがとうございました」

 シズはのび太の方を向き、微笑みながらそう告げた。星の光が彼女の表情を映し出す。彼女の瞳は揺れ、頬は桃色に染まる。
 その目と表情を見たのび太は、自分の世界のしずかを思い出した。記憶の中の彼女は、いつも同じように微笑んでいた。闇の中をひたすら進むような毎日で、彼女の微笑みだけがのび太の光だった。
 少し照れ臭くなった彼は、そんな顔を見せまいとシズから視線を逸らす。そして強がりを一言……。

「……礼ならいらねえよ」

あいえん

あいえん ノビはのび太にまけてから味方になるんですねわかりますっていうかそうしてくださいおねがいしますなんでもしますから

「……さて、そろそろ休もうか」

 のび太は席から立ち上がり、体を伸ばす。先ほどまで沈んでいた気持ちも、いつの間にか軽くなっていた。

「そうですね……」

 シズはどこか名残惜しそうにのび太に続く。

「――あ、のび太さん。最後に1つだけ聞いてもいいですか?」

 ブリッジを出ようとしたところで、シズはのび太に話しかけた。

「ん? 何を?」

 そして彼女は、少しだけ意地悪そうな顔をする。

「のび太さんの世界にも、私はいたんですよね? のび太さんとその人、どういう関係だったんですか?」

「え゛っ!?」

 予想だにしなかった質問だった。のび太は何も答えられず、好奇心に満ちた視線を向けるシズを、ただ見つめる。
 シズは、なおも迫る。

「教えてくれませんか? のび太さん?」

「ええと……それはだな――」

 ――その時、突如外が明るく輝いた。

「――ッ!?」

 驚きブリッジから光の方を見れば、ハンデルシオの街から巨大な火柱が上がっていた。しかもそれは一つではない。街の至るところで立ち上り、花火のように暗い夜空を照らす。

「あれは――!?」

「爆発か――!?」

 のび太は瞬時に理解する。自分の“一抹の不安”が現実となったことを。

「――シズ! ジャイとスネを呼べ! いつでもフレイヤを出せるように、スタンバイだ!」

「わ、分かりました! のび太さんは!?」

「街へ行く! あそこには、たくさんの人がいるんだ!」

 そしてのび太はブリッジを飛び出す。

「のび太さん! 気を付けて!」

 のび太に返事はなく、彼の通路を足早に駆けていく音だけが響いていた。

 街に降りたのび太が見たものは、地獄のような光景だった。
 建ち並ぶ建物は紅蓮の炎に焼かれ、焦げ臭さが熱風に乗り街中に広がる。至るところから人々の悲鳴や泣き叫ぶ声が響き、道は逃げ惑う人々で埋め尽くされていた。

「くそっ! 夜襲かよ!」

 時刻は深夜。人々が眠りにつき見張りも手薄となる時間。元よりこの街は“襲われる心配のない街”と呼ばれており、誰一人この奇襲を予測することは出来なかった。
 まさに、完璧なる夜襲だった。
 逃げ惑う人々の中には、連合軍の兵の姿まである。ぎりりと奥歯を噛んだのび太は、その兵士の襟元を掴んだ。

「ひぃぃ!」

 兵士は恐怖の悲鳴を上げる。

「お前兵士だろ! なんでお前が逃げてるんだよ!」

「て、敵の正体も分からないんだ! 死にたくない! 死にたくない!」

 兵士はのび太の腕を振り払い走り出す。途中腰に付けていた銃を落とすが、一切気にすることなく走り去っていった。

「くそっ! あれでも兵士かよ! どんだけ平和ぼけしてんだよ!」

 のび太は兵士が落とした銃を拾う。変わった構造だった。サイズはコンパクトで、銃身は短い。弾倉らしきものもなく、メーターのようなものが側面にあるだけだった。

「これ、使えるんだろうな!?」

 見えない誰かに叫んだのび太は、人々の流れに逆らう。奥では依然として、轟音を響かせる爆発が続いていた。

あいえん

続き?続き?
ドラえもん好きの俺にはたまらんwww
ドラえもん登場でゴリアテが手を組むか劇場版の様にいつもの五人の共闘希望!!

「新型はこの街のどこかにある! 探せ!」

 街の奥では、神界軍の兵士が武器を手に流れ込んできていた。そしてその場に辿り着いたのび太は、その数に驚愕する。敵兵士はゆうに数百人を超え、さらに増え続けていた。

「マジかよ! こりゃ俺一人じゃどうにもならねえぞ!」

 だが彼の背後には、逃げ遅れた民間人が走っていた。もしここで引けば、彼らの命がないかもしれない。

「――くそ! やるしかねえか!」

 そしてのび太は、兵士達に銃を向け立ちはだかる。

「武器を捨てろ! こちとら急所外す余裕はねえからな!」

 のび太の姿を見た兵士は、全員がぽかんとしていた。かと思えば、前列の兵士達は笑い始めた。

「たった一人で何をほざく! この数が見え――あぐっ!」

「――ッ! お、おい――うがっ!」

 兵士の話が終えるよりも前に、のび太は引き金を引く。完全に油断していた兵士らは次々と撃たれ倒れていく。

「余裕ねえって言っただろ!」

「う、撃て撃て!」

 残る兵士はようやく我に返り、のび太に向け一斉に銃を撃ち始める。のび太が倒壊した建物の壁に隠れると、たちまち無限とも言える弾丸が撃ち込まれた。

「くそ……! もう少し減らせばよかったな!」

 そう言いながら、のび太は手に持つ銃を見た。反動はほとんどなく、弾丸というよりも光の衝撃派を放つ銃のようだ。だが威力はのび太の世界の銃とは比べ物にならないほど高く、おまけに軽い。

(この世界は、こんな銃が主流なのか? 反則過ぎるだろ……)

 ゲージを一度確認する。まだまだ余裕はある。

(履き違えるなよ……敵を倒すことよりも、時間稼ぎを優先させるんだ……)

 そう自分に言い聞かせたのび太は、一度強く息を吐く。そして前進する敵部隊の前に再び飛び出し、銃口を向けた。

ジャイアン死んじゃイヤん

 瓦礫に隠れつつ、のび太は引き金を引き続ける。射撃は正確に敵兵士を捉え、次々と兵士を地に伏せさせる。

「敵は化物か! これだけの状況で的確に前衛兵を狙撃してくるとは……!」

 のび太の圧倒的な射撃能力には、敵兵士も脱帽していた。だがその数は減る気配はない。それどころか、奥から次々と兵士が現れ、数は増え続けていた。

「クソッ! いったい何人で来てんだよ! きりがねえ!」

 そろそろ潮時かもしれない。彼はそう思い始めていた。だが依然として、背後からは逃げる人々の声が聞こえる。

「……もう少しだけだ! もう少し時間を稼ぐことが出来れば……!」

 のび太が声を漏らした瞬間、彼の背後から銃声が響く。

「――ッ!」

 撃たれた――そう思ったのび太だったが、弾は彼に当たることなく敵の兵士数人が吹き飛ぶ。

「な、なんだ……?」

 のび太が混乱していると、中央塔方向から武器を持った多数の兵士が走り込んで来た。しかしそれは敵ではない。全員、連合軍の制服を身に纏っていた。

「助太刀します!」

 のび太の隣にしゃがみこんだ兵士は、そう叫びながら敵兵士に向け発砲する。

「お、お前ら逃げたんじゃ……!」

「確かに逃げた仲間もいます! ですが、全ての兵士がそうだとは思わないでいただきたい!」

 兵士は勇ましく言い放ち、銃を撃ち続けた。その姿に、のび太の頬は緩む。

「……そいつは悪かったよ! 民衆の避難状況は!?」

「間もなく残る住民全てが飛空艇に乗り込みます! それまで、何としてでも時間を稼ぎましょう!」

「ああ! 分かってるよ!」

 そしてのび太と兵士達は、神界軍に向け撃ち続けた。敵もまたそれに応戦する。
 商業都市の街中では、激しい銃撃戦が展開されていた。

「敵も兵を揃え始めたか……!」

 神界軍の現場指揮官は、膠着する現状に歯ぎしりをする。そして背後の通信兵に指示を行う。

「機獣隊を集めろ! 奴らを黙らせる!」

「了解!」

 通信兵が背負う機械のパネルを操作すると、甲高い信号音が辺りに響き始めた。

「なんだこの音は!?」

「信号か!? いったい誰に……!」

 のび太と連合軍の兵士達は耳を押さえながら周囲を見渡す。――その時だった。

「――ぐああああああ!」

 突然連合軍兵士の悲鳴が響いた。

「どうした!」

「わ、分かりま――うわあああああ!」

 今度はすぐ後ろから、兵士の悲鳴が聞こえる。慌てて振り返るのび太は、その光景を目の当たりにする。
 ――機械の体を持つ巨大な狼が、兵士の腹部を喰い破っていた。

「なっ――!?」

 驚愕しながらものび太は獣に向け銃を放つ。だが獣はたたんと跳躍し、垂直の壁を走り昇り建物の影へと姿を消した。

「あ、あれは……!」

「周囲、囲まれています!」

 他の兵士は辺りを見渡しながら叫ぶ。のび太もまた見渡すと、建物の陰に数多くの機械の獣が潜んでいるのを確認した。
 体長はおよそ2m。全身に毛はないが、鋼で出来た胴体は炎の光を反射させる。その牙は尖り、四肢の爪は鋭い。見るからに攻撃的に、連合軍の兵士を取り囲んでいた。

「機械の獣!? ……そうか、これに乗って、敵はあの壁を登ってきたのか……!」

 戸惑う兵士達に向け、獣は一斉に飛びかかった。

あいえん 神スレ

はよ

大長編ドラえもん
のび太のロリコンパラレルワールド

 のび太に狼の牙が迫る。

「ちっ――!」

 右に跳んだのび太は、躱し際に狼の頭部に銃を放つ。狼は衝撃で吹き飛び、瓦礫と衝突した。だがすぐに起き上がり、なおものび太へと向かう。

「銃が効かない!?」

 躱すのび太の耳には、連合軍兵士の断末魔が響いていた。
 鋼の獣の耐久力は凄まじく、並大抵の武装では歯が立たない。連合軍兵達はみるみる数を減らし始めていた。
 このままでは全滅……そう思った瞬間であった。

『――マスター!!』

「――ッ!?」

 突然空から、ドラの声が響いてきた。のび太が上を見上げるよりも先に、目の前に鋼の巨人が降り立つ。

「ゴリアテ!? どうして!?」

『レイメイ博士がここまで飛ばしてくれたんだよ!』

「レイメイが……何てご都合主義なんだよ! まったく!」

『今はご都合主義でもなんでもいいでしょ!? ほら! 早く!』

「あ、ああ……!」

 のび太は周囲の狼を銃で吹き飛ばしながらゴリアテに乗り込む。のび太を取り込んだ巨人は、目から光を放ち立ち上がった。

「お前達は撤退しろ! ここは、俺が引き受ける!」

 のび太は周囲の兵士に声をかけた。

「す、すまない……!」

 兵達は負傷した者を連れ、塔の方へと走り出す。のび太は横目で彼らを見送り、鋭い視線を前へと向けた。
 彼の前には、多数の機獣が牙を見せ、唸っていた。

「さて、と……ずいぶん好き勝手してくれたな、犬っころ。少し黙っててもらうぜ……!」

 そして狼たちは爪を立てゴリアテへと駆け出す。ゴリアテもまた背中の日本の剣を抜き、鋼の獣を迎え撃つのだった。

日本?二本じゃなくて?

>>567
そうそれ
二本の剣ね

はよおお

はよおおお

そんなに急がせるなよ
1も君みたいに暇じゃないんだからさ

 先頭の狼が勢いよくゴリアテに向け飛びかかる。ゴリアテは右に反転し、躱し際に片手の剣を横一線に振り抜く。光を帯びた剣は鋼の獣を切り裂く。
 銃を弾く獣の装甲に、ゴリアテの出力は通用する。それが分かったのび太には笑みが零れた。

「――次!」

 なおも次々と飛びかかる獣達。ゴリアテは地を蹴り中に跳び出す。そして着地の勢いを乗せた剣を振り抜き一度に二匹の獣を斬り伏せ、さらに獣の群れへと駆け出した。
 狼の牙や爪を紙一重で躱しながら、上下左右に次々と剣を振る。ゴリアテの剣を受けた獣は起き上がることなく、瓦礫の海に機械の残骸が撒き散らされる。
 獣を次々と葬るゴリアテは、まるで演武のように無駄なく流れるような動きだった。

「……!」

 遠巻きにその光景を見ていた神界軍の兵士は、皆一様に言葉を失っていた。
 敵の新型機の性能は、噂程度ではあるが聞いていた。単機で戦闘機を上回る機動力と火力。事実、先に戦闘した戦艦は手も足も出ずに敗走していた。
 だが、実際はどうだ。驚異的なのが機体の性能だけとは到底思えない。幾重にもわたり向けられる牙や爪を難なく躱すだけにとどまらず、獣を葬り続けている。
 そして兵士達は、いつしか悟り始めていた。
 真の脅威は、その操者であると……。

「――き、機獣隊を引かせろ!」

 獣の群れが半数を切ったところで、敵指揮官は声を荒げた。通信兵が慌てて信号を送ると、機械の獣達はゴリアテに背を向け逃走を始める。

「……逃げたか」

 のび太は深追いすることはなかった。彼は知っていた。機獣は陸戦における、切り札であったことを。でなければ、最初から機獣たちに全てを任せていたことだろう。
 敵兵士達を見れば、鋼の巨人に恐れを抱いているのが手に取るように分かる。つまりは、敵部隊にもはや戦意はないということ。

 その段階で、のび太は勝ちを確信した。

 ゴリアテは剣を背中にしまい、銃口を兵達に向けた。

「おい! 神界軍の連中! 死にたくなけりゃ、今すぐ武器を捨て投降――」

『――マスター!』

 突然、ドラが叫んだ。いきなりの大声に、のび太は耳鳴りを覚えた。

「……なんだよドラ! 今大事なところだから黙ってろ!」

 だがドラは引かない。

『こっちだって大事な用件なんだよ! レイメイ博士からの緊急通信が来てるんだよ!』

「あ? レイメイから?」

『いいから繋ぐよ!』

 そして、通信は切り替わる。

「――……のび太か?」

「ああ。なんだよレイメイ」

「そっちの戦況は?」

「あらかた片付いた。で、今から締めなんだよ。用件なら後でするか手っ取り早く頼む」

「わかった。では後者でいこうか。――今すぐ撤退し、フレイヤに帰艦しろ」

 レイメイの言葉を、のび太は理解出来なかった。

「……は!? 何でだよ! もうすぐ終わるってのにか!?」

「詳しい説明をする暇はない。今すぐ戻れ」

「なんだよ! ゴリアテの不具合でもあるのか!? 3分間しか活動できないとかか!?」

「何を言っているのかは分からんが……なんなら、自分で確かめてみるか?」

「……は?」

「そこから上空に出ろ。そして、7時の方角を確認するんだな」

「……」

 わけが分からない。そんなことを思いながら、のび太はしぶしぶ上昇をする。そして指示通り、7時の方向に機体を向けた。

「……ドラ。遠方レーダー展開しろ」

『う、うん……」

 ドラは最大出力で前方にサーチをかける。そして――。

『――ッ!? マ、マスター!』

「……どうかしたのか?」

『前方に敵艦隊確認! 敵艦数……50隻以上!』

「なっ――!? 嘘だろ!?」

『こんな状況で嘘なんてつかないよ! 約30分で戦闘空域に入るよ!』

「……!」

 50隻以上……。その数に、のび太の血は凍った。。以前戦闘したのは、戦艦2隻。つまりは戦艦や戦闘機、戦闘員に至るまで、その時の25倍以上。それは、あまりにも絶望的な数値だった。
 のび太が絶句していると、レイメイは再度通信してきた。

「……分かったかのび太。もはやお前一人……いや、ハンデルシオだけではどうにもならん。我々はこの街を破棄する。今すぐ、フレイヤに戻るんだ」

「―――ッ」

 のび太は何も言い返すことが出来なかった。ただひたすら、彼は暗黒の空を見続けていた。

ゴーストが乗ってたら倒せてたな うん

あいえん

あいえーん

 ハンデルシオの中央塔は、混乱していた。塔内にある飛空艇の発着施設には、住民が波のように押し寄せていた。

「急げ! 間もなく飛空艇を出すぞ!」

 走る住民に、兵士は声をあげる。そしてシズ、ジャイ、スネもまた、人々の誘導に従事していた。

「飛空艇にはまだ余裕があります! 焦らないでください!」

「女子供、爺ちゃん婆ちゃんは優先的に乗れ! 手が空いてる男はケガ人、病人の乗船を手助けしろ!」

「荷物は最低限に! 船が重くなるよ!」

 そんなシズの元に、のび太は駆け寄る。

「シズ!」

「――あ! のび太さん!」

 声に気付いたシズもまた彼に駆け寄る。

「無事だったんですね! よかった……!」

「なんとかな! ゴリアテはフレイヤに入れておいた! 何か手伝うことはあるか!?」

「はい! では――!」

「――ちょっと待った」

 二人の間に割って入ったのは、タバコをふかすレイメイだった。

「提督からの伝言だ。君達は、フレイヤで待機だってさ」

「提督からか?」

「で、ですが! まだ住民の避難が……!」

「それならもう大丈夫だろ。間もなく全員が飛空艇に入り終わる。あとは、他の兵士がしてくれる」

「で、でも……!」

 食い下がるシズに、煙を吐き出しながらレイメイは言う。

「……シズ艦長。これは、提督命令ってやつじゃないのか? 君も軍人だろ。それに従え」

「……」

 未だ納得できないシズだったが、仕方なくジャイたちを呼ぶ。

「ジャイ! スネ! フレイヤに戻ります!」

「分かったぜ!」
「了解!」

「のび太さんも!」

「ああ!」

 するとレイメイは、走るシズたちの後に続いてきた。

「え? レイメイ博士?」

「私も君らの艦に同行する。これも、提督命令ってやつだ」

 ほどなくして、民間人を乗せた飛空艇はハンデルシオを飛び立った。
 住民たちは、飛空艇の中から住み慣れた街に別れを告げる。炎にやかれ、変わり果てた街に。その痛ましい姿に、涙を流す者も少なくなかった。

 シズ達もまた、出発の準備に追われていた。

「メインシステム、メーター各種確認!」

「問題なしだよ!」

「メインエンジン起動! 出力50%のままスタンバイ!」

「了解だぜ艦長!」

 シズらの手際に、レイメイは感心していた。

「いやいや、中々の連携だね」

 そんな彼女に、のび太は呆れるように話しかけた。

「レイメイ。なんだか緊張感がねえな、お前」

「そうでもないぞ? こう見えても慌ててるんだがな」

「どう見たら慌ててんだよ……」

 するとスネは、ブリッジ内に声を響かせた。

「提督より離陸指示! 艦長!」

「フレイヤ、発進……!」

 シズの号令により、フレイヤは塔の外へと跳び出した。

こっちの世界にはゴーストいんのかな?
元の世界では敵でもこっちの世界では仲間になったりすると胸熱だわ

 ハンデルシオ上空では、既に連合軍の艦隊が待機していた。フレイヤも一団に加わり、出発の指示を待つ。
 するとここで、フレイヤに一本の通信が入ってきた。

「艦長。本船から通信が入っています」

「提督から? 繋いで」

 シズの指示で、スネはメインモニターに映像を流す。

「――フレイヤの諸君、聞こえるかね」

「はい。提督、ご用件は……」

 メインモニターに映った提督は、咳を一度した後、話し始めた。

「ああ。すぐに終わる。……現在、我がハンデルシオ駐屯部隊において、君達の艦、フレイヤの武装はあまりにも貧相だ」

「……え?」

「端的に言えば、君達がここにいても足手まといにしかならない。即刻空域から離脱しろ」

 突然の提督の言葉に、ブリッジ内はざわついた。

「て、提督!?」

「君の意見は聞いていないのだよ、シズ艦長。これは命令だ」

「……!」

 シズは、口を噤む。ジャイとスネは共に表情を険しくさせていた。こんな時にまで罵るのか、と。

 だが、のび太だけは違っていた。何かに気付いた、彼は席から立ち上がる。

「――おい! あんた――!」

「ゴリアテの操者。君は口を挟むな。……頼む」

 提督の目は、何かを訴えていた。それを心で感じ取ったのび太は、それ以上何も言うことなく再び席に座る。

「……わかったよ」

「けっこう。では改めて指令だ。フレイヤは直ちにこの空域を離脱。以降、本隊の指揮を受けろ。以上」

「……了解!」

 シズは戸惑いながらも、了承する。最後に提督は、モニター越しにレイメイを見つめた。

「レイメイ博士。君は、フレイヤと共に行動しろ。ゴリアテのメンテナンスをしてやれ」

「……分かりました。提督、お気を付けて」

「うむ。……レイメイ、達者でな」

 そして通信は切断された。

「……くそっ! こんな時にまで何言ってやがんだよ! あのオッサンは!」

 ジャイは座席を叩きながら、愚痴を言う。そんなジャイにのび太は声をかけた。

「……ジャイ。それは違うぞ」

「……え?」

「シズ、提督の最後の頼みだ。今すぐ艦を出発させよう」

「……どういうことですか?」
 
「……提督は、俺達の盾になるつもりなんだよ。死ぬ気だ……」

 ハンデルシオ連合軍の母艦。その指揮官席に、提督はどかりと座り込んだ。

「……お疲れさまです。提督」

 隣に立つ副官は、声をかける。頷いた提督は、小さく口を開いた。

「……わしはまた、嫌われてしまったかね」

「さあ、どうでしょう。少なくとも、あのゴリアテの操者は分かっていたようですが」

「ふん。あやつめ……」

 一度顔を綻ばせた提督は、すぐに表情を引き締める。

「ゴリアテは、連合軍の希望なのだよ。あれが量産されたあかつきには、今の劣勢を跳ね返すことも可能だ」

「分かっています」

 そして提督は、ブリッジ内に声を響かせる。

「……フレイヤを除く全艦に繋げ! 指揮を行う!」

「了解! 通信開きます!」

 メインモニターには、各艦のブリッジが映し出された。それぞれの艦長の顔を見渡した後、提督は立ち上がる。

「……皆も知っての通り、現在、このハンデルシオに敵艦隊が迫っている。その数は圧倒的であり、我が艦隊の勝算は極めて低いだろう」

 提督の敗北宣言とも言える言葉。だが艦長達は動じることはなかった。それは、既に分かっていることであった。

「だが! 我らにはまだやるべきことがある! 戦女神の名を冠する船には、連合軍の希望が乗っている! その光を、消させてはいけない!」

 そして提督は、大きく息を吸い込んだ。

「――これより、フレイヤの撤退を援護する! 我らで、敵を押さえ込む!」

 するとここで、提督は声のトーンを下げる

「……だがこれは、無謀とも言える行動だ。おそらくは、生き残る可能性も低いだろう。これからの防戦は、勇気ではない。本当の勇気とは、別のところにある」

 兵士達は何も言わず、提督の言葉に耳を傾けていた。

「それぞれにそれぞれの人生がある。大切な人、愛すべき人もいることだろう。死ぬわけにはいかない者もいるだろう。勝てぬ戦いから退くことこそ、本当の勇気と呼べるのかもしれん。むざむざ死にに行く者は、ただの馬鹿者だ」

「提督……」

「ここで逃げ出しても、わしは決して責めはしない。それがその者の人生であり、選択でもある。それを咎めることなど、誰にも出来はしない。脱出艇の準備は終わっている。帰りたい場所があるのであれば、今すぐに帰るがいい……」

 艦内に、沈黙が続く。皆一様に表情を落とし、自分を見つめ直していた。どうしたいのか、自問自答を繰り返していた。

「――水くさいですよ! 提督!」

 ふと、兵の一人が口を開く。それに続き、別の兵士も声をあげた。

「俺も気持ちは同じです! 提督!」

「提督ばかりにかっこつけさせませんよ! 俺もお供します!」

「俺もだ!」

「俺も!」

 全ての艦から、兵達の声が響き始めた。絶望的な戦いに臨むというにも関わらず、彼らの士気は一切衰えることはない。

「……」

 兵達の顔を見渡しながら、提督はその声を体全体で聞く。

「……残念でしたな、提督」

 副官は、優しく話しかけた。

「どうやら、我が艦隊には勇気ある者などいないようです。……無論、私もその一人ではありますが」

 提督は、表情を伏せる。そしてそのまま呟いた。

「……馬鹿者どもめが……!」

 彼の目には、薄らと涙が浮かんでいた。心から誇りに思う部下達を前に、感涙は見せたくなどなかった。
 艦内には、いつまでも兵達の勇ましい声が響く。それはまるで、無謀な戦いに自ら進む、愚か者達の歌のようだった。

「――間もなく、ハンデルシオ空域から出ます」

 スネはシズに報告する。彼女は何も言わずに、頷くだけだった。
 あれから、彼らはどうすべきか話をしていた。ジャイは言う。自分たちも戦うべきだ、と。スネは言う。提督が言っていたことは間違いない。自分たちの武装では、標的にかなりえない、と。
 その議論を終わらせたのは、のび太の言葉だった。

“提督は命をかけ、この艦を逃がそうとしている。もしここで残れば、提督の意思は、ハンデルシオ連合軍の意思はどうなる。勇敢と無謀は似ているが全く違う。時に退くことは、目先の勝利よりも遙かに大きな意味を持つこともある”

 そしてシズは、撤退を決定した。

「――ッ!」

 モニターを見ていたスネは、突然立ち上がった。

「どうしました? スネ?」

 シズが話しかけると、スネはうなだれながら報告した。

「……味方艦隊の反応……消失しました……」

「な、なんだと!?」

 それまで黙り込んでいたジャイも、驚きの声を出す。シズは表情を曇らせ、唇を噛み締めた。

「シズ……」

 のび太は彼女に、声をかける。

「……大丈夫です、のび太さん……」

 シズは立ち上がり、ハンデルシオ方向に体を向ける。そして、高らかに号令をかけた。

「……勇敢なる連合軍ハンデルシオ駐屯部隊に……一同、敬礼!」

 シズ、ジャイ、スネは、様々な想いを胸に、敬意を表する。暗い夜空に散りばめられた星は、揺れるように光を放っていた。

て、提督(´;ω;`)

あいえん

提督…

 フレイヤは空を進む。静かな海上を。エンジン音に紛れ、微かな波音が響くだけだった。
 ブリッジには人の姿はない。間もなく夜も明けることもあり、舵はオートに切り替え、それぞれが休みを取っていた。
 しかしながら、ここに一人艦内を歩く者がいた。のび太である。
 どうにも眠れずにいた彼は、こうして気晴らしをしていた。彼の胸中にあるのは、この世界のこと。自分の世界と、同じ時間を行く平行世界。だがその実、情勢は全く違っていた。戦に飲まれ、激流の如き世界はうねる。それは、自分の知ってる世界とはあまりにも違う。
 そのギャップが、彼の眠りを妨げているのかもしれない。

「……ん?」

 ふと、彼は暗く静まり返ったブリーフィングルームに、誰かがいることに気付いた。暗がりではあったが、すっかり目が慣れていたのび太は、その者の名を口にする。

「……レイメイ?」

 窓際に座るレイメイは、のび太の方を振り返った。

「……やあ、君か」

 レイメイは、どこか優しい表情をしていた。

「眠れないのか?」

 のび太はレイメイの隣まで歩み寄り、少し離れた椅子に座る。

「眠れないのか?」

「君こそ。夜の散歩とは、なかなか風流なことをするもんだ」

「眠くなるまでの間だけどな」

「そうか……」

 それから、二人は口を閉ざした。のび太は様子を窺う。昨日までのレイメイとは、どこか雰囲気が違っていた。窓から夜空を見上げる彼女には、儚さのようなものがあった。

「――なあ、レイメイ」

 ふいにのび太は、顔を床に向けたままレイメイに話しかける。

「ん?」

「一つさ、聞いてもいいか?」

「何をだ?」

「提督とは、何かあるのか?」

 急な質問に、レイメイは少し驚く。

「……どうしたんだ、急に」

「最後に提督が、お前に言ってただろ? 達者でなって。あれは、どこか特別な何かを感じたからさ。何もないなら別にいいし、言いたくないなら言わなくてもいい。単純な、俺のしょうもない好奇心だ」

「……なるほど、な。君はなかなか感がいいな」

 レイメイは、少しの間何かを考える。そして、口を開いた。

「――……提督は、私の父なんだ」

「――ッ」

 思いがけない言葉に、のび太はレイメイの顔を見た。

「ええと……その……」

 のび太は次に言う言葉を探す。しかし、うまく言葉が見つからなかった。そんな彼に、レイメイは笑いかける。

「気にする必要はないさ。父も覚悟のうえで、あのようのことをしたんだ。それは、誰のせいでもない」

「……そう、か……」

 そしてレイメイは、話を続けた。

「……父はな、昔から根っからの軍人で、常に上を見ていた。地位をあげるために、あれこれ画策もしていた。地位こそが父のアイデンティティーであり、生きる術だったんだろう」
 
「……」

「小さなころからろくに家にいなかったし、一緒にいた記憶もほとんどない。本当に親子かと疑うこともあったくらいだ。母はいつも父を擁護していたよ。父さんは忙しい人だから、自分たちのために働いているから、ってな。
 でも本当は知ってたんだ。一番寂しいのは母だったことを。だから私は勉学に励んだ。せめて私のことで、母を心配させまいとしていた」

「……おふくろさんは?」

「……5年ほど前に他界した。最後の言葉は、父さんを恨まないで、だったよ」

「そっか……」

「それからすぐのことだった。私は連合軍にスカウトされ、技術研究所に配属となった。そこで、父と再会した。でもそこにあったのは、決して親子の関係じゃない。提督と一技術者の関係だった。もっとも、私もそっちの方が楽だったけどな」

 レイメイの話は止まらなかった。彼女自身、ここまで自分のことを他人に話すのは初めてだった。
 のび太は彼女の目を見たまま、ただ話を聞いていた。

て、提督ーぅ(´;ω;`)

てかタイトル見たらあれがこんな話になるなんて誰も想像しなかったよな

「……まあ、我が父ながら、立派な最期だったと思うよ。我が身をかけてまで、連合軍の未来を守ったんだ。たぶん、母さんも満足してると思う」

 レイメイは、どこか誇らしくそう話した。

「……レイメイ、たぶん少し違う」

 それまで話を聞いていたのび太は、突然そう切り出した。レイメイは顔をのび太に向ける。

「たぶん、だけどな。提督が……親父さんが守りたかったのは、連合軍なんかじゃないと思う。親父さんは、お前と、お前の未来を守りたかったんだよ」

「……え?」

「だからこそ、親父さんはレイメイをフレイヤに乗せたんだ。そして、真っ先に逃がしたんだよ。家族を優先させることは、もしかしたら軍人としては失格かもしれない。でも俺は、そんな親父さんを尊敬する。お前の親父さんは、素晴らしい父だったと思うよ」

「……そう、か……そうだといいな……」

 レイメイは、どこか嬉しそうに表情を伏せた。しかしそれから、彼女は顔を上げることはなかった。

「……すまない、のび太。少し一人にしてくれないか?」

「……ああ。分かった」

 そしてのび太は、ブリーフィングルームを出る。その瞬間、室内からレイメイの声が漏れ始めた。

「……お父さん……お父さん……」

 その声は震え、鼻をすする音が混じる。それを背に受け、のび太は通路の角を曲がった。

「……!」

 するとそこには、シズ達がいた。ジャイは手を軽くあげ挨拶をし、腕を組む。スネは壁際に立ったまま目頭を押さえる。シズは俯き、壁に寄りかかり立っていた。
 のび太は黙ったまま、シズの隣に並ぶ。するとシズは、人知れずのび太の袖もとを握りしめた。
 彼らの耳には、レイメイの父を呼ぶ声が響く。それは途絶えることなく、艦全体が哀しみに暮れる。
 のび太達は、レイメイの声が聞こえなくなるまで、見守るように通路の影で立ち続けていた。

レイメイは俺の嫁

あいえん

あいええん

愛縁

はよ


文才はんぱないな
めちゃくちゃ泣けるわ

こないだから急かしてる奴はなんなんだ

「――ノビ」

 とある施設の通路で、歩くノビにデキスは声をかける。

「……ああ、君か」

「ハンデルシオではご苦労だったな。おかげで、あの商業都市を制圧出来た。流通拠点を押さえたことは戦術的にも大きい」

「あれだけの部隊を用意したんだ。当然だろ? 機獣のデータは?」

「ばっちり取れたよ。もう少し改良しないとな。君こそ、あれのデータは取れたのかい?」

「こっちもばっちりだ。ただ、まだ出力調整に難があるな。馬力が大きすぎてコントロールが難しいよ」
 
「よく言うよ。一人で戦艦を5隻も撃墜したくせに。……それはそうと、どうして敵の新型を見逃したんだい? 君なら、撃墜も可能だっただろうに」

「……」

 デキスはノビの目を見たまま、彼の言葉を待つ。ノビはどこか意味深な視線をデキスに向け、目を逸らした。

「……敵の指揮官の勇敢さに敬意を表したまでさ。あれだけ絶望的な戦力差で、彼らは新型を逃がすために挑んで来たんだ。それで新型を撃墜するのは、無粋ってもんだろ」

「そういうもんか?」

「ああ。そういうもんだよ。それに、別に焦る必要もない。新型は、いつでも破壊できるし」

 するとデキスは、くすりと笑った。

「……まったく。あいかわらず君は、のんびり屋だね」

 そしてノビも、微笑みを返す。

「君こそ。あいかわらずの完璧主義者だ」

 誰もいない通路では、二人の笑い声が響いていた。

 数日後のフレイヤ艦内。その倉庫では、ゴリアテが動いていた。体中にコードが繋がれ、コードはレイメイが操作するパソコン機器に接続される。

「……よし。次は右足を曲げてくれ」

「こうか?」

 ゴリアテは右の足をプラプラと動かす。

「けっこう。次は、左足だ」

 次々と指示を出すレイメイ。のび太は、何気なしに聞いた。

「……なあレイメイ。これ、何してんだ?」

「ゴリアテのメンテナンスだ。関節の動きのデータを取っている」

 パソコンのキーを叩きながら、レイメイは淡々と答える。あの夜に見せた人間臭い彼女はどこへやら。まるで機械のように、ただひたすら仕事をこなしていた。一時のび太は彼女を按じたが、無理をしているようには見えない。こうして働いている方が楽だろうと、そのサポートをしていた。
 ……だが、あの日から変わったこともあった。

「……良好だ。では次はボディーバランスチェックだ。跳べ」

「指示がざっくり過ぎてどうすりゃいいのか分かんねえよ」

「文句を言うな。せっかく操者が乗ってくれてるんだ。まだまだチェックすることは山のようにある」

「ふぃぃ……マジかよ……」

「手伝うと言ったのが、君の運の尽きだったな」

 疲れたように声を漏らすのび太に、レイメイは朗らかに笑う。彼女は、こうして笑顔を見せるようになっていた。

「――のび太さん、レイメイさん。シズです」

 ふと、艦内放送が流れた。

「お話がありますので、ブリッジまで来てください。繰り返します。のび太さん、レイメイさん。ブリッジまで来てください」

「しめた……!」

 放送を聞いたのび太は、ゴリアテから降り倉庫から跳び出した。

「こら、のび太。まだチェックは終わってないぞ?」

「艦長命令だ! お前も来いよ!」

 そしてのび太は、走り去っていった。

「……まったく。しょうがないな」

 レイメイもまた、やれやれと言わんばかりの表情を浮かべながら、ブリッジへと向かって行った。

レイメイのルートキタ━(゚∀゚)━!

「戻ったぞシズ」

 のび太とレイメイは、ブリッジに入る。

「ああ、お忙しいところ、ごめんなさい」

「いや、いいんだよ。むしろ助かった」

「?」

 シズは何のことを言っているのかわからず、首をかしげる。

「それより、話ってなんだ?」

「え? ああ、そうでした。実は、本隊より指令が来たんです」

「本隊から? なんて?」

「はい。暗号化された秘匿メールです。それで、みなさんにも見てもらおうと思いまして。……スネ」

「うん、流すよ」

 スネがパネルを操作すると、メインモニターに映像は写される。

『――やっほー! フレイヤのみんな、元気ー?』

「……は?」

 突然、金髪の若い男が手をひらひらと振りながら明るく話し出した。

『君達がゴリアテを運んでくれるんだってね? いや助かったよ~。あれないと、連合もけっこう厳しいんだよねぇ』

 終始軽い口調で話す男。緊張感の欠片もない。あまりにも場違いな様子に、のび太は呆れかえっていた。

「……誰だよ、この兄ちゃん」

 するとシズは、表情を伏せたまま恥ずかしそうに口を開く。

「……連合軍総司令官、レオン司令です」

「……総司令官? ってことは、連合軍のトップ? 嘘だろ……」

「いえ、本当です。いちおう……」

 固まるフレイヤの船内。そんな空気など気にもしないように、モニター上のレオンは一人騒いでいた。

sえん

あいえん

支援

『……ところで、ハンデルシオの件だが……』

 それまで明るく話していたレオンだったが、突然口調を変えた。

『提督らハンデルシオ駐屯部隊の件は誠に残念だった。彼らが命を賭して君達を逃がしたことは聞いている。多くの尊い仲間を失ったことは、私自身胸が裂ける気持ちだ。彼らの雄姿に、心からの冥福を祈る』

 しばらく黙とうを捧げたレオンは、目を開く。その表情には、先程の緩みは消えていた。

『……次の指令だ。フレイヤはゴリアテ、レイメイ博士を連れ、空中都市ウエンカエルに向かえ。そこでは、現在ゴリアテの後継機とも言える、汎用戦闘スチールアーマーver.2が開発中だ』

「ver.2?」

『その完成には、ゴリアテのデータとレイメイ博士が必要不可欠となる。必ず送り届けてほしい』

 ゴリアテの後継機……その言葉に、ブリッジ内はざわつく。

『指令は以上だ。君達の幸運を祈る』

 そして通信は終了した。

「ゴリアテに、後継機があったのか……」

 のび太は呟く。

「まあ、ゴリアテ自体軍の秘匿事項なところはあったからね。その後継機があっても不思議じゃないよ」

 スネは振り返りながらのび太に言う。

「……でも、あれだけの機体の後継機だ。きっと戦況も大きく動くだろうな」

 ジャイもまた、腕を組みながら期待を膨らませていた。彼らの顔を見渡したシズは、高らかに声を上げる。

「決まりですね。……本艦はこれより、空中都市ウエンカエルに向かいます!」

 彼らを乗せたフレイヤは、速度を上げ海上を進み始める。波は、うねりを上げていた。

 空中都市、ウエンカエル。その名の通り、この街は空に浮かんでいる。正確には、浮かんだ島に都市が建設された、だが。
 島を浮かせる源は、大地の中央に眠る巨大な石。GC(グラビティクリスタル)と呼ばれるそれは、重力を制御できるとされている。このGCこそ、現在のテクノロジーの礎となったものであり、世界中で使用されている軍艦、飛空艇などの動力は、この石を研究、応用して作られている。
 人々の生活を一変させた石。しかしながら、それのおかげで世界中の紛争が加速的に激化とも言える。想像と破壊をもたらしたそれは、神からの贈り物か、はたまた災いの元凶か……。

「……これはまた、すげえ光景だな……」

 宙に浮かぶ都市を目の当たりにしたのび太は、思わず見入ってしまっていた。まるで空想物語に出てくるラピュタ島。のび太は少年のように、窓の外を眺めていた。

「僕も初めて見るけど……噂通り壮大な景色だね」

 スネもまた食い入るようにモニターを見つめていた。

「確かに見た目も素晴らしい都市ですが、軍事上も重要な拠点の一つなんですよ? この街からあらゆる方向に超望遠レーダーを設置しており、常に地上の様子をモニタリングしているんです」

 シズはそう言いながらも、やはり視線を街に向けていた。
 乗組員はいずれも空中都市に目を奪われている。だが、一人何かを考え込む男がいた。ジャイである。

「……」

 俯き、何かを考えるジャイ。その普段とは違う様子に、いち早く気付いたのはのび太だった。

「……ジャイ、どうしたんだ?」

「――え?」

「なんか、小難しい顔してるぞ?」

「そ、そんなことねえって!」

 どこか焦るように、ジャイは笑みを作る。

「本当か? なんか、普段と様子が……」

「大丈夫だって大丈夫! それよりスゲエ街だな! 俺、興奮してきたよ!」

 やはり、どこかわざとらしい。しかしながら、彼が何も言わない以上無理に詮索することもないだろう。そう思ったのび太は、再び窓の外を眺めはじめた。

 フレイヤはウエンカエルの港に降り立つ。艦を降りた一同を待っていたのは、この都市に駐留する連合軍の兵達だった。
 その先頭に立っていたのは、年配の男性であった。白髪と長い白鬚が目立ち、杖を片手に持つ。彼はシズ達に、深々と頭を下げた。

「……お待ちしておりました。フレイヤの御一行殿。この基地の責任者の、ドウエルと申します」

 それにシズは応え、彼女も頭を下げる。

「手厚い歓迎、大変恐縮です。艦長を務める、シズと申します。お見知りおきを……」

「こちらこそ。……して、あの青年が……」

 ふと、ドウエルはのび太に視線を送った。

「……どうも」

 のび太もまた、軽く一礼をする。そんな彼を見たドウエルは、感心するように長い髭を撫でた。

「……ほうほう。ゴリアテの操者の噂は聞いておったが、なかなかどうして、よほどの手練れとお見受けする。こうしている間にも、隙が感じられんとは」

「褒めても何も出ねえよ、爺さん」

「ちょ、ちょっとのび太! 仮にもこの基地の責任者だよ!」

 隣で聞いていたスネは、のび太の耳元で聞こえないように言う。だがドウエルは、笑い声をあげた。

「ほっほっほっ! おまけに肝が据わっておるわい! ……しかしながら、口数は少ないようじゃの。あの子も、少しは見習ってほしいものじゃ」

「あの子?」

「……」

 ジャイは表情を伏せる。その時――。

「――長老。それはちょっとアタシに失礼なんじゃないの?」

 対面する彼らに、右方向から声がかかった。

「……しもたわい。聞かれておったか」

「気付いてて言ったんでしょ? まったく、長老も嫌味なんだから」

 ぶつぶつと文句を言いながら、彼女は歩み寄って行った。
 髪は黒髪で短く、身長は女性にしてはなかなか高い。顔のそばかすが印象的ではあるが、何より目を引いたのはその恰好。細い体のラインが鮮明に分かるほど肌に密着するスーツを着ていた。その姿は、どことなく手首足首まで裾がある競技用水着を彷彿させる。
 彼女は他には目もくれず、のび太の前へと歩み出る。そして、彼の顔をまじまじと眺めはじめた。

「……なんだよ」

 のび太は、不機嫌そうに彼女に聞く。

「……あんたがゴリアテの操者なんでしょ?」

「そうだけど……。だから?」

「……別に。ただ、あんたには一応感謝しとくわ」

「は?」

「あんたがゴリアテを守ってくれたおかげで、アタシの“エリス”が完成するわけだし」

「エリス?」

「ver.2の呼称名よ。アタシが名付けたの」

「アタシのってことは……もしかして、お前が?」

 すると彼女は腕を組み、誇らしげに言い放った。

「――ええ、そうよ。アタシが、汎用戦闘スチールアーマーver.2“エリス”の操者よ。……ただ、その“お前”って呼び方やめてくれない? アタシの名前は、レディよ」

「……操者“予定”、じゃろが。馬鹿者め」

 自信満々のレディに水を差すように、ドウエルはぼやきを入れる。レディはしまったというような顔をし、ドウエルに視線を送った。

「い、いいじゃない! アタシでほぼ確定なんだし!」

「たわけが。お前はまだまだ未熟じゃろうに。……そもそも、なんじゃその“れでぃ”とかいうみょうちくりんな名前は。お前の名前は――」

「――ジャイナ」

 ドウエルの言葉を遮ったのは、ジャイだった。全員が彼の方を見つめる。ことレディに至っては、目を大きく見開いていた。そして彼女は、信じられないものを見たかのように声を漏らした。

「……お、お兄ちゃん……」

「……へ?」

「久しぶりだな、ジャイナ」

 ジャイは顔を綻ばせていた。

「元気にしていたか? ジャイナ」

 ジャイはゆっくりとレディに歩み寄り始める。その瞬間だった。

「――来ないで!」

 レディは声を荒げ、彼を制止する。彼女は、表情を曇らせていた。

「……今更……今更何!? 何なの!? 一番いてほしかった時にいなかったくせに! 逃げ出したくせに! 今更、兄貴面なんてしないでよ!」

 レディはジャイに激しい怒りをぶつける。
 
「ジャイナ……」

 ジャイはそんなレディを見つめる。彼の瞳は、哀しそうに揺れていた。

「ちょ、ちょっと待った!」

 するとここで、のび太が空気を読まずに声を出した。

「……あの、のび太? 今結構シリアスな感じだし、口を挟まない方が……」

 スネはのび太に耳打ちする。だがのび太は、焦るように話し続ける。

「うるせえ! それどころじゃねえんだよこっちは! ――レディ! お前、ジャイの妹なのか!?」

「え? ……ええと、いちおう……」

「……う、嘘だろ……嘘だろ!? あのジャイ子が……レディ!?」

 のび太はその場にへたり込む。彼の知ってるジャイ子とはかけ離れた人物が、この世界のジャイ子だと言う。それが信じられなかった。

「……ねえ。そのジャイ子って、誰?」

「お前のことだよ! とても信じられねえがお前のことなんだよ! マジかよ! 嘘だろ!? 冗談だろ!?」

 のび太はレディの体を上から下まで見回す。スリムなボディに、すっきりとした顔のライン。似ても似つかないその姿。

「……もしや、これはジャイ子の痩せた姿なのか? だとしても、骨格自体が違うが……。いやいやしかし、でも……」

 のび太はひとり言を繰り返していた。フレイヤの一同は訳も分からずお互いの顔を見合う。ここまで動揺する彼は、初めて見たからだ。
 そんな空気などつゆ知らず、のび太は冷や汗をかきながらその場で考え込むのだった。

なんかワロタ

ジャイナwwwwwwwww

あいえん

「……なんか、気が抜けちゃった」

 その後レディはそう呟き、拍子抜けしたように立ち去って行った。ジャイは、辛そうな顔で彼女の背中を見つめていた。
 ジャイとレディに何かあったのは間違いないようだ。しかしながら、複雑な事情のようで、誰一人聞こうとはしなかった。

「――……まあ、色々あるんだろ。無理に詮索する必要もない」

 レイメイは資料を整理しながら、近くで座るのび太に言った。

「うーん……でもなぁ……」

「なんだ? 何か気になるのか?」

「そりゃ気にはなるけど……」

 のび太は、やはりどこか腑に落ちないようだ。
 彼がここまで気にするのは、自分の世界でのジャイアンとジャイ子の関係にあった。あちらでは、二人は仲がよく、ジャイ子も兄であるジャイアンを尊敬していた。
 だがこちらのジャイ子――レディは、あの様子だった。二人に何があったかはわからない。だが、あの二人に不協和音は似合わない。
 そんな感情が、のび太の中にはあった。

「……そんなに気になるなら、聞いてみればいい」

 レイメイは呟く。

「え?」

「ジャイも何か言いたげだったからな。もしかしたら、彼も吐き出したいかもしれない。愚痴の壁役として、聞くのもいいだろう」

「……そうか……そうだな」

 のび太は立ち上がり、部屋を飛び出していった。そんな彼を、レイメイは見送る。

「……やれやれ。とんだ世話好きだな、あいつは……」

 そしてレイメイは、資料の整理を続けた。

 フレイヤの自室で、ジャイはベッドに腰掛け肩を落としていた。部屋の明かりすらも付けず、しきりにため息を吐く。

「……ジャイナ……」

「――らしくねえんじゃねえの?」

 ジャイが顔を上げると、そこには入口に立つのび太がいた。

「……悪かったな。俺でも、ナイーブになるときくるいあるんだよ」

「……入るぞ」

 のび太はそのまま室内の椅子に座る。ジャイは再び顔を下に向け沈んでいた。

「……なあ、ジャイ子――レディと、何があったんだ?」

「え?」

「何か事情があるんだろ? 話せば少しは楽になるかもしれないだろ?」

「……」

 ジャイは少しの間、黙り込む。のび太に話すべきかを考えていた。しかし、このまま黙っていても自分自身気持ちが悪い。
 話せば少しは楽になるかもしれない……のび太のその言葉に、寄りかかることにした。

「もともとあいつとは、仲が良かったんだよ」

 ジャイはおもむろに口を開く。

「父ちゃん、母ちゃん、俺とあいつの4人暮らしでさ。生活は楽じゃなかったけど、それなりに楽しく暮らしてたんだよ。……あの日までは」

「あの日?」

「もう、5年前のことだ。反連合軍が立ち上がって、奴らは俺の国に攻撃を仕掛けてきたんだ。当時は連合軍なんてなくてさ、敵の圧倒的な兵力に、俺達は戦火の中を逃げていたんだ」

「……」

「その時に、流れ弾が目の前で爆発してさ。……父ちゃんと母ちゃんは、そこで死んだ」

「そう、か……」

「俺とジャイナは何とか生き残ったんだけどな。傷が癒えた時に、連合軍の兵の募集を見かけたんだよ。そんで、仇を討つんだって意気込んで、今の状況だ」

「……レディは?」

「施設に預けたんだよ。ジャイナの傷は俺より深かったし、何より精神的なショックが大きかったんだ。いつも唐突に泣き出して、いもしない父ちゃん母ちゃんを探すんだよ。あの時のジャイナは、見ていられなかった。それっきり、ジャイナとは会ってない」

「……それで、今日の再会か……」

「ああ。まあな。ジャイナに言われてさ、気付いたんだよ。親の仇を討つとか大義名分をかざしてはいたけど、本当は違ったんだ。
 ――俺はさ、ジャイナから逃げたんだよ。ジャイナの奥に見えるあの日の炎が恐くて、連合軍という場所に逃げたんだよ。あいつの辛さや苦しみをそばで支えることすらせずに、あいつをほったらかしてさ」

「でも、それは……」

「いやいいんだ。仮に俺が本心から仇を討ちたかったとしても、残されたジャイナはそんな気持ちでいっぱいだったはずだし。俺の理由なんて関係ない。ジャイナを守ってやれなかった。その事実は、一生消えないんだ」

 ジャイは終始表情を伏せていた。まるで贖罪であるかのように、自らの責をのび太に打ち明けた。

「笑っちまうよな。親の仇なんて言いながら、生きてる唯一の家族を誰かに押し付けてさ。俺は何を倒そうとしてたんだろうな。何を守ろうとしてるんだろうな。何を、しようとしてたんだろうな。……もう、わけわかんねえよ……」

「ジャイ……」

 ジャイは自分を責め続けた。底抜けに明るいいつもの彼はどこかへと消え去り、そこにいるのは、後悔に苛まれる一人の兄だった。
 そんな彼に、のび太は静かに話し始めた。
 
「……今はどうするべきか分からないだろうし、俺自身どうした方がいいのかも分からない」

「……」

「でもな、今はそれでも前に進むしかないんじゃないか? レディが分かってくれるかは分からないけど、ここで立ち止まっても、何も変わりはしないだろ」

「でも、俺は……」

「俺もさ、迷う時があるんだよ。どうするべきか分からない時があるんだよ。そんときは、無理やりでも足を前に出すんだ。時間は待っちゃくれないからな。だから少しずつでも、迷いながらでも、今その時を進むんだ。その先に、何かがあるって信じてな」

「のび太……」

「それに、レディはお前の妹だろ? 俺の世界でのお前らってさ、やっぱ時々ケンカしてたんだよな。でも、最後は決まって仲直りをしてたよ。理屈じゃないんだよな、そういうの。それが、家族なんじゃないのか?」

「……」

 ジャイは一度のび太の顔を見つめ、再び視線を下げた。そしてのび太は立ち上がる。

「……ジャイ。前に進めよ。立ち止まるお前は似合わねえからさ」

 そのまま入口の方に向かうのび太。

「……のび太。ありがとよ。少し、楽になった気がする」

 彼の背中に、ジャイは声をかける。のび太は何も言わず背を向けたまま手を振り、部屋を後にした。

のび太がイケメンすぎる

神スレあいえん

今年一番面白いss

ちょい質問
具体的には言わないが、話の流れにAプランとBプランがあるんだが
直感的にどっちがいい?

>>628
どっちかで進めて終わったあとに反対側ってできます?

Bでおねがいしやす

>>629
終わった後に別路線ってのは書かないよ

IDにb入ってるしbで

じゃあBで

あいえん

wktk

てか、もう二ヶ月経つのか
のんびり書きすぎててワロタ

(∩´∀`)∩マダー?

ちなみにここまでssの中の時間はどれくらい建ってるの?

>>638
え……
平行世界編なら……3か月くらい?

はよおお

はよおおおおおお

>>639
なるほどありがとう

1回上げればいいだろ、レス無駄遣いすんな。

 ウエンカエルの技術室。そこには、ゴリアテとよく似た機械の巨人が鎮座していた。
 フォルムはやや丸みがあり、何よりの違いはその色か。白い巨人のゴリアテに対し、このスチールアーマー――エリスは燃えるような赤色だった。

「……へえ、これがゴリアテの後継機か……」

 のび太は巨人を見上げながら声を漏らす。

「後継機と言っても、機体スペックはさほど変わらんよ。大きな違いは、コンセプトくらいだろ」

 エリスの傍でパソコンを打ち込むレイメイは、のび太に言葉を返す。

「コンセプト?」

「ああ。のび太のゴリアテは、近接、遠距離を問わないオールラウンドタイプの機体だ。それに比べエリスは、遠距離、広域攻撃を主としていて、近接攻撃用武装がない」

「砲撃機ってことか?」

「そういうことだ。……そういえばのび太。お前は射撃の方が得意だったな? いっそのこと、エリスに乗り換えてはどうだ?」

 レイメイはのび太の方を見ながら、笑みを浮かべ提案する。

「勘弁しろ。ドラに怒鳴られる」

「ハハハ。冗談だよ」

 そしてレイメイは、再び作業に戻る。室内には、軽快なキーボードを打ち込む音が聞こえていた。

はよ

はよ、はよって急かしすぎ
1だって君らみたいに暇じゃないんだから
毎日更新してくれてんだから、急かすなよ

「……ところでレイメイ。さっきから何をしてるんだ?」

「データの入力だ。ゴリアテの戦闘データ、操者との連携データといった、あらゆるデータをインストールしている」

「それ、しないといけないのか?」

「ああ。いかに優れた機体でも、AIが貧相ならそれはただの鉄屑だ」

「……」

 のび太の頭で、何かが引っかかった。レイメイが言っていることは理解できる。だが、靄がかかったような見えない何かが漠然と頭に浮かんでいた。

「……? のび太、どうしたんだ?」

 考え込むのび太に、レイメイは声をかける。

「……いや、なんでもない」

 頭に浮かんだものの正体は分からない。分からないものを考え続けても仕方がない。そう判断したのび太は、今はエリスの完成を待つことにした。

はよ

追いついた
あいえんー

>>653
スレ無駄に消費すんじゃねーよ

 のび太はウエンカエルの基地を歩きながら、外の景色を眺めていた。
 本当に宙に浮いているのかと思うほど、浮遊感はない。まるで普通の地上のようだった。しかしながら、地上よりも空が近い気がする。どこか息苦しい気もするが、それは偏に、地上を離れたことへの戸惑いの現れなのかもしれない。
 この街の駐屯部隊については、シズから聞いていた。連合軍ウエンカエル駐屯部隊……世界の監視官と呼ばれる部隊。
 保有母艦は3隻。戦艦は100を超えるとも言われている。この規模は本隊に次ぐものであり、それがこの街の重要性を物語る。
 過去に2度天界軍が攻めて来るも、いずれも退けている。軍事戦略の要でもある空中都市。地上の人々を天から見守る彼らは、さしずめ守護神といったところか。

「――ねえ、ちょっと」

 歩くのび太に、声がかかる。振り返ると、そこには彼女がいた。

「……なんだ。ジャイ子か……」

 のび太の言葉にジャイ子……もとい、レディは眉間にしわを寄せた。

「……あのさぁ。その“ジャイ子”って呼び方、本当にやめてくれない? 物凄く不愉快なんだけど……」

「はいはい、悪かったよ。……で? 何か用か?」

 レディは腑に落ちない表情をしながらも、本題を切り出した。

「あんた、確かたまたまゴリアテの操者になったのよね?」 

「ああ。まあな」

「あんたの話は聞いているわ。初起動時に敵艦2隻を退け、商業都市における攻防でも敵地上部隊を封殺。……正直、本当かどうか疑わしくもあるけどね」

「信じるつもりがないなら、それでいいさ。別に自慢するつもりもないし、それが本当かどうかなんてどうでもいい話だ。聞きたいのはそれだけか?」

「まだよ。私さ、気になったらとことん調べるタイプなのよね。……のび太、とか言ったしら。ちょっと着いてきなさい。あんたのこと、見極めてあげる」

あげ

あいえん

>>658 無能

今日はもう無いのだろうか

>>661
すまんね
今から書き始める

>>662
ありがとうございます!

しえん

頼むから頑張ってくれ

そろそろそろ一時間がーたーつー

 のび太が案内されたのは、基地内の訓練施設であった。ドーム型の建物の中は広い空間となっている。土壌を囲むのは観客席。まるで闘技場のような作りだった。

「ここは……」

「色んな催し物をする時にもつかっている、まあ多目的型の訓練場よ。ここでなら、存分に動けると思うわ」

「動ける?」

 のび太が首をかしげていると、建物の壁が開いた。そして搬送車が室内に走り込み、のび太達の前で止まる。
 よく見れば、その荷台にはゴリアテ、エリスが載せられていた。

「……よっ、のび太」

 運転席から顔を出したのは、レイメイだった。

「レイメイ。これはどういうことだ?」

「そんな怖い顔するな。なんてことはない、エリスの起動実験だよ」

「エリスの?」

「ああ。データの入力が終わったんだよ。そこで、だ。ここでちっとばっかし、エリスと模擬戦闘をしてほしい」

 レイメイの言葉に、のび太は口をあんぐりと開ける。

「……は? なんで?」

「データを取るには、実戦が一番なんだよ。とは言え、いきなり敵に突っ込ませるのは危険が伴うからな。それなら、同型のゴリアテと疑似的に戦闘させた方がはるかに安全だ」

「嫌だ。断る」

「つべこべ言うな。これは、決定事項だ」

「なんだよそれ……」

 のび太達のやりとりを見ていたレディは、手を数回叩き視線を自分に向けさせた。

「そろそろいい? エリスを起動させたいんだけど」

「ああ。いつでもどうぞ」

 レイメイはタバコをふかしながら、あっさりとそれを了承した。

やった!

始まってる!

 凄まじく嫌そうな表情を浮かべるのび太を置き去りに、エリスの起動実験が始まる。

『――初期設定、開始します……』

 赤い機体からは、のび太がいつか聞いたアナウンスが流れていた。その中に乗り込むレディは、期待と不安を同時に感じていた。心なしか足が震えている。だが彼女の表情は、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のようだった。

「……ところで、レイメイ」

 ふと、のび太はレイメイに話しかける。
 
「あん?」

「エリスにも、ドラのような自立サポートAIがいるのか?」

「ああ。当然だ。それがどうかしたか?」

 のび太は腕を組み何かを考える。そして、手を顎に当てたまま、おそるおそる呟いた。

「……ドラの兄妹機。ドラの妹……それってさ、もしかしてだけど――」

『――初期設定、完了しました』

 のび太が何かを聞く前に、エリスからアナウンスが流れる。

「……レイメイ。終わったわよ」

 少し緊張がほぐれたのか、レディの口調はゆっくりとなっていた。

「ご苦労さん。乗り心地はどうだ?」

「凄く快適。サポートもいるしね。紹介するわ。エリスの自立サポートAIよ……」

 そして、エリスから響き渡った。

『――初めまして! 私、エリスの自立サポートAIの“D0-LA.M-Ⅱ”! ドラミって呼んでね!』

 その瞬間、のび太は天を仰いだ。

「……やっぱ、そうだよな……」

あげのあげあーげ

まだあったとは!

はよおお

はよおおおおおお

しえんやあいえんならまだしも、まじで無駄にスレ使うやつうざいんだけど
>>1あんまりひどかったらアク禁してくれよ

しえん

「……なんだ? ドラミを知ってるのか?」

「知ってるって言うか、当然というか……」

「?」

「まあ、いいだろ。それより、さっさと模擬戦しようか」

 そしてのび太もまた、ゴリアテに乗り込む。

『やあ、マスター。今日の模擬戦頑張ってね!』

 ドラはのび太に声をかけた。どことなく、いつもより張り切っているようにも見える。

「……なんか、やる気満々だな」

『当然だよ! 兄として、絶対負けられないし……!』

「なるほど、兄としてのプライドってやつか。……それはそうと、その“マスター”って呼び方やめてくれないか?」

『え? なんで?』

「何て言うかな……違和感が凄まじいんだよ。頼むから、名前で呼んでくれ」

『う、うん。じゃあ……のび太くん?』

「そうそれだ! それでいい!」

 のび太は嬉しそうに声を上げる。とても懐かしい呼び声に、彼は喜びを隠しきれなかった。

『ふふふ。変なのび太くん』

 そんな彼に、ドラは微笑むように呟いていた。

 施設の中央には、2体の巨人が向かい合うように立っていた。白い巨人、ゴリアテ。片や赤い巨人、エリス。

「初めに言っておくが……」

 巨人達に、レイメイは話しかける。

「これは、あくまでも起動実験だ。やり過ぎるなよ」

「分かってるわよ!」

 そう言うレディだったが、明らかに声は臨戦体制だった。

「合図と共に開始。データが取れ次第終了とする。……では、いいか?」

 その言葉に、ゴリアテとエリスは同時に構えをとった。そして――。

「――始め」

 号令と共に、ほぼ同時に上空へと飛び立つ。そしてすぐさま、衝突を繰り返し始めた。

「……まあ、こうだろうとは思ったけどな。手加減しろって方が無理だろうな……」

 レイメイは煙を吐き出しながら、ぼんやりと呟いた。

しえん

しえん

幼女スレ発見と思って来てみたらなんだこのSF小説wwwwwwww

あいえん

スレタイからは想像できないストーリーw
期待してます

 空中でエリスは背中のコアユニットを輝かせ、ゴリアテに猛進する。拳を握り締めたエリスはゴリアテの頭部を狙う。だがゴリアテは一足早く身を翻しエリスの背後に回り込んだ。

「ちっ――!」

 横目でゴリアテの動きを確認したレディは、すぐさま体を反転。その勢いを脚に乗せ鞭のようにしならせる。だがゴリアテはそれすらも躱す。そのままゴリアテは上昇する。エリスも追うが、徐々に離されていった。

『レディ! 機動性では勝てないわ! 距離を保って!』

「分かった!」

 エリスは逆推進を働かせ、急停止する。

「お? いい判断だな」

 エリスの動きを見たのび太は呟く。

『関心してる場合じゃないよ! 距離を取らせちゃダメだ!』

 ドラは声を上げた。

「あ? 何でだよ」

『エリスはゴリアテとは違うんだよ! その兵装は広域・遠距離装備で固められてる!』

 二人の会話を知ってか知らずか、レディはドラミに指示をする。

「ドラミ! 多弾頭ランチャー!」

『分かった!』

 するとエリスの両肩は開く。そこには、数多くの小型ミサイルが収納されていた。

「――ッ!? マジかよ!」

 のび太はすぐに加速させ更に距離を取る。と同時に、エリスから無数の弾頭が放たれた。

しえん

はよおお

はよおおおおおおおお

多弾頭噴進砲!これは期待!

 ゴリアテは猛スピードで空を駆ける。それを追うは無数の弾頭。不規則な動きの集団は、ひたすらにゴリアテに迫る。

「ドラ! 何か策は!?」

『避けて!』

「んなもん策なんて呼べるか!」

『仕方ないだろ! 距離を取らせたのはのび太くんだよ!?』

「俺のせいかよ! ああもう! デコイか何かないのかよ!」

『あ! デコイならある!』

「先に言えよ青だぬき!」

『だ、誰がたぬきだよ!』

 不毛な言い争いをしつつ、ゴリアテは両脇からデコイを射出。ミサイル達は標的をデコイに変え、全方位から襲いかかる。
 そして断続的な爆音は響き渡り、上空を爆煙が包み込んだ。

 だが爆煙の中から数発のミサイルが飛び出し、再びゴリアテを狙う。

「全部は無理か!」

 のび太はゴリアテを後ろ向きに飛ばし、銃口をミサイル達に向けた。放たれた弾丸は、残るミサイル達を次々撃ち落としていく。

『の、のび太くん!』

 突然ドラは叫ぶ。

「今度は何だよ!」

『地上からロックされてる! 8時の方角!』

「なに!?」

 のび太がその方角に視線を送ると、そこには巨大なライフル銃を構えたエリスが。銃口をゴリアテに向け、狙撃体制をとっていた。

「本命はこっちかよ!」

 ゴリアテは再び正面を向き、不規則な動きで宙を飛び回る。
 だがエリスの中のレディは、冷静に動きを見ていた。

「気付くのが少し遅かったわね。――サヨナラ」

 そしてエリスは、引き金を引いた。

模擬戦なのにクッソ熱いな
応援してる

はよおお

はよおおおおおおおおおお

700

なんじゃこのスレ

 エリスの銃から弾丸が放たれる。

「――ッ!」

 弾は瞬く間にゴリアテに迫り、空中で爆発を起こす。ゴリアテは爆炎に飲まれ、姿を視認することはできなかった。

「――……よし。終了だ」

 それと同時に、レイメイはエリスに告げる。

「あら。そう……」

 エリスは構えをとき、レイメイに正対する。

「レイメイ。もう少し早く止めて欲しかったわね。あいにくだけど、ver.1なら大破しちゃったから」

 レディは反省の色もなく、当然のように言い放つ。自らの機体が勝っていたと誇示するかのように、彼女は悠々と機体を降りる。

「……なるほど。だが、その心配はしていないから大丈夫だ」

 レイメイは笑みを浮かべながら、レディに返す。するとドラミもまた、機体から声を響かせた。

『レディ。レイメイ博士の言う通りよ。ゴリアテの反応、まだ残ってるわ』

「……え?」

 レディはまさかといった表情を浮かべ、空を見上げる。それを見計らったかのように、煙の中から一つの影が飛び出してきた。その影はそのまま地上へと滑空し、レイメイたちの前に降り立つ。
 白いボディは、眩いばかりに太陽の光を反射させていた。

「ご、ゴリアテ……!?」

 レディが驚愕する中、のび太は機体を降りる。

「……いやまったく。油断してたよ」

『もうのび太くん! 何とかなったからいいものを、危うく壊されるところだったじゃないか!』

「うるせえな……いいだろ別に。こうして無傷で戻ったんだし」

『よくないよ! そもそも君は……!』

 ドラは長々と説教をする。のび太は疲れた表情をしながら、適当に相づちを打っていた。

酉忘れてた

「……なぜのび太が無事だったと思う?」

 二人の様子を唖然としながら見ていたレディに、背後からレイメイの声がかかる。

「え?」

「お前の弾が当たる寸前、のび太は“放たれた弾”に向けて砲撃したんだよ。結果、お前の攻撃はゴリアテを捉える前に爆発したんだ」

「そ、そんな……! そんなこと出来るわけ――!」

『――事実よ、レディ』

 レイメイに続き、ドラミも声を響かせる。

『ゴリアテの射撃は見事だったわ。正確に、ライフルの弾丸を相殺していた。それだけじゃないわ。レディ、この模擬訓練で何か気が付かなかった?』

「……」

 レディは静かに首を横に振る。

『ゴリアテは……お兄ちゃんたちは、一度たりとも私達を攻撃してきていないの。全て、私達の攻撃を防ぐか躱すかだけだったわ』

「――ッ!」

 ドラミの言葉で、レディはようやく気が付いた。

『レディ。残念だけど、今回は私達の負けよ。もしお兄ちゃん達が攻撃をしてきていたら、もし最後に油断したあなたに攻撃を仕掛けてきていたら……大破していたのは、おそらく私達だったわ』

「……!」

 そんなことはない。……レディはすぐにでもそう反論したかった。だが口が開かない。心の奥で、敗北を認めてしまっていた。
 彼女はそれがたまらなく悔しかった。知らずに勝ち誇っていた自分が、恥ずかしくなった。
 そしてそのまま、彼女は踵を返し、競技場を足早に立ち去って行った。

「……ちょっとやり過ぎだったかもな」

 レディの姿が消えたところで、のび太はレイメイ達のところへ歩み寄る。

「……いや、大丈夫だろ。おかげで必要なデータは入手出来た」

『私も良かったと思います。レディは本当はいい子なんだけど、どうも自信過剰な面があったので……。今回の件で、あの子も思うことはあったでしょうから。きっとレディなら、新たな一歩を踏み出せます』

「そうか。そう言ってくれるとこっちも助かるよ。……それにしてもドラミちゃん。君は相変わらず優秀みたいだね」

『相変わらず? ごめんなさい。私のデータが確かなら、あなたとは初対面のはずですが……』

「ああいいんだよ。こっちのことだから。……まったく、どっかの“おっちょこちょいなAI”も見習ってほしいもんだよ」

 するとゴリアテから、不機嫌そうな声が漏れる。

『……のび太くん。それってもしかして、僕のことなの?』

「さあね。どうだろ」

『あ! 今目を逸らした! やっぱり僕のことだね! 今日という今日は許さないから! 徹底的に説教を……!』

 見るからに激怒するドラ。その姿に、のび太とレイメイは笑っていた。心なしか、エリスも笑っているように見えた。

はよおお

はよおおおおおおおお

710

>>710
お前しつこいわ無駄にレスをつけるなや

しえん

vaWがどれだけがんばっても更新の頻度は変わりません

小説になってから読んでないけど支援

 模擬戦の後、レディは基地内の通路で黄昏ていた。窓の淵に両肘をつき、ぼんやりと外を眺める。
 窓の外では、雲が風に流されながら形を変える。その姿が、何かから逃げるようにも見えていた。

「――負けたみたいじゃの」

 気が付けば、レディの隣にはドウエルが立っていた。レディは一度だけ彼に視線を送ると、すぐに外へと戻す。

「……うん。完膚なきまでってやつよ」

「そうか……。どうじゃ? ゴリアテの操者は強かったじゃろ?」

「長老、知ってるの?」

「噂程度じゃ。実はの、お主らの模擬戦闘は見ておっての。いやはや、噂にたがわぬ実力じゃったの」

「……うん。そうだね……」

 レディはどこか上の空だった。
 彼女にとってのエリスは、特別なものだった。両親の仇を討つための手段、仲間、相棒。その操者に選ばれるために、彼女は人よりも数倍の努力を重ねてきた。
 誰にも負けないように、二度と泣かないように。彼女の過剰なまでの自信は、その血の滲むような日々によるものだった。誰よりも訓練したが故に、誰よりも優秀であるという自覚、誇り、自負……。
 その全てに、亀裂が入ってしまっていた。

「……まあ、よかったではないか」

 ふと、ドウエルは口を開く。

「……何がよ」

「負けて、じゃよ」

「負けてよかったわけがないじゃない。しかもその相手が軍の者でもないなんて、泣きっ面に蜂よ……」

しえん

「……ジャイナ。お主の努力は、儂は誰よりも知っておる。もちろんその努力に裏付けされた実力を持っておることもな」

「……」

「だがな。お主にはどうしても足りないものがあったんじゃよ」

「……え?」

「それはの、世の広きを知ることじゃ」

「世の、広き?」

「そうじゃ。お主はこれまで、この空中都市という小さき鳥籠の中だけで生活をしてきた。確かに、お主に勝てる者などこの基地にはおらぬ。だからこそ、お主は心のどこかで、誰よりも優れているという過信を抱いておったのじゃよ」

「そんなこと……」

「本当にか? それなら、なぜあそこでゴリアテの状況を確認しなかったんじゃ?」

「……」

 痛いところを突かれ、レディは黙り込む。

「じゃが、今日の敗北でお主の中のそれも消えたじゃろ。世界は広い。この世には、お主よりも実力がある者など山のようにおる。それを知らぬうちは、どれだけ訓練を積もうとも半人前よ」

「……うん」

「敗北を知らぬものに真の勝利は訪れん。それは時に、心を砕いてくるじゃろう。だがそれを乗り越えてこそ、それまで見えなかったものが見えるようになるもんじゃ。
 舐めた苦渋の味を忘れぬよう心に刻み、さらなる勝利の美酒に酔いしれろ。さすれば、その味もまた格別に美味じゃろうて」

「長老……」

「立ち止まるなよ。お主は儂の誇りじゃ。明日から、もう一度やり直せ」

 ドウエルは朗らかに笑いながら、レディを見ていた。その顔は、レディの中の亀裂を埋める。暖かく、優しく。
 そしてレディもまた、頬を緩ませた。

「……ありがとう、長老……」

「……」

 その様子を、通路の角から見ていたのはのび太であった。あまりに落ち込むようであれば発破をかけてやろう……そう思っていた。
 だが、それも余計な心配だったようだ。そう悟った彼は、静かにその場を立ち去って行った。

しえん

のびた超テライケメン

あげ

はよおお

はよおおおおおおおお

>>1頼むからまじで連投野郎をアク禁してくれ…

しえん

>>723
楽しみにしてくれててありがとう
ただ、あんましやり過ぎたらアレだから、繰り返すなら処置するかもしれないから、次から気を付けてね
ごめんよ

連投してる奴うざい
イッチ楽しみにしてるよ

>>727面白いと思ってんだよ。スルーしろ

>>728
同一犯だよな
あまりに酷い時は言うけどスルーしとくわ

がんば

あいえん

 その日の夜。誰もが寝静まった空中都市は、静かに風の音を響かせていた。雲は薄く張り、月の灯りを遮断する。
 そんな都市の更に上空では、一つ光が一本の筋を空に描いていた。右へ、左へ。上へ、下へ。様々な方角に飛び回るそれは、赤い機体を薄暗い空間にぼんやりと写す。

『……レディ。こんな夜遅くに訓練しなくてもいいんじゃない?』

 赤い機体――エリスから、ドラミの声が響く。

「いいでしょ別に。この時間なら誰も船を飛ばさないし、安全よ」

『努力家なのは認めるけど、無理な訓練は体に毒よ?』

「ただの眠たくなるまでの暇つぶし。夜のフライトみたいなもんよ」

『夜のフライトねえ……。急加速に急ターン、超高速のキューバンエイトにナイフエッジが、そんな悠長なものかしら』

「どう飛ぼうがアタシの勝手でしょ?」

『……もう。素直じゃないんだから……』

 エリスは夜空を飛び回る。そしてしばらくした後、宙で静止した。

「静かね、ドラミ……」

 漂いながら、レディは呟く。

『ええ。そうね』

 ドラミもまた、静かに答えた。

「……ねえドラミ。アタシ、エリスに乗って良かったのかしら」

『……どうしたの? 急にそんなこと聞くなんて』

「アタシさ、エリスに乗れば、無条件で強くなれるって思ってたんだ。連合軍の切り札。連合軍の希望。これに乗りさえすれば、すぐにそれになれるって考えてたんだ」

『……』

「……でも、甘かったわ。今日の敗戦は、アタシの慢心が原因だった。もしこれが戦場なら、エリスは撃墜されてた。
 貴重なこの機体を、ハンデルシオの人達が命を懸けて作り上げたこの機体を、アタシは無駄にするところだった。こんな不甲斐ないアタシが、これに乗ってていいのかなって思ってさ……」

『……その言葉を自分で口にするなら、あなたはきっと大丈夫よ、レディ』

「気休め、ありがとう」

『そんなのじゃないわ。確かに昼間のあなたは油断してたと思う。だけどね、それを驕りと気付いたあなたは、こんなにも自戒の念を抱いている。そんなあなたは、きっと今よりも先に進めるわ。ドウエル様が言ったようにね』

 ドラミの声は、とても柔らかかった。レディの中にあったしこりも、小さくなっていた。


幼女「ふぇぇ……」男「うへへへ。泣いても誰も来ないぜぇ」
1 :名無しさん@おーぷん:2015/06/19(金)11:23:48 ID:C3B(主) ×
幼女「おじさん、誰ぇ?」

男「おじさんはねぇ、キミのことが大好きなんだよ?だからさ、こうして連れてきたんだよ」


幼女「でもさ、これっていけないことなんじゃないの?」

男「そんなことないよ。おじさんは、純粋にキミを……」

幼女「でも、これって未成年者略取・誘拐の罪になるんじゃない?」

男「へ?」

幼女「仮にここで私を好きにしても、おじさんは社会的に抹殺されるよね?今の世の中、顔なんてすぐにネットで出回るし、ろくな就職なんて出来ないだろうし。そもそも、仮に就職しても私や家族への慰謝料で大半は飛ぶけどね」

男「ええと……」

幼女「つまり、おじさんの人生は、私の手にかかってるってことよね?おじさんを生かすも殺すも、私次第なのよ?」クスクス

男「」

 改めて顔を上げたレディは、どこかすっきりした顔を浮かべながらドラミに話しかける。

「……そろそろ帰ろうか、ドラミ。今日はよく眠れそうだし」

『ええ、そうね。帰りましょう』

 そしてエリスは空中都市に体を向け、背中のコアユニットを輝かせ始めた。

「――もう帰るのかい?」

「――ッ!?」

 突如背後から声が響いた。エリスは素早く後ろを振り返る。そこには、巨大な人影が宙に浮かんでいた。

「つれないな……。僕と夜のデートを続けないかい?」

 巨人は優しく、エリスに語り掛ける。巨人の体は機械だった。その色は、夜を写したかのような漆黒。突然の来訪に、ドラミは驚愕する。

『そんな……! レーダーには何も……!』

「君のレーダーは機体がコアエンジンを起動したした際に発生する、GCの波動反応を察知してるからね。波動反応を抑えれば、簡単に無効化出来るんだよ」

 巨人は饒舌に語る。だがレディは、彼の話など聞いてはいなかった。いや、聞く余裕がなかった。目の前の黒い巨人のフォルムに、激しく動揺していた。
 彼女はその機体を見つめたまま、声を漏らす。

「――……黒い、ゴリアテ……?」

 その巨人は、色こそ違えども、フォルムはゴリアテに酷似していた。

「その名前は正確ではないよ。エリスの操者さん」

 黒い機体は、軽い口調でレディに告げる。

「……え?」

「これは、僕が設計した新たなスチールアーマー。ver.extraといったところかな。名前は……そうだな……。“タナトス”にしようかな」

「タナトス……!」

 黒いゴリアテ――タナトスは、絶望の色をその身に宿す。そしてエリスを見下ろす形で空に座していた。

「……さて、エリスの操者。僕と一緒に、来てもらおうか?」

『エリスをどうするつもりなの!?』

 ドラミは声を荒げた。そこでようやくレディは我に返り、身構えた。

「まあ、君がこのまま連合軍の本隊に合流すれば、僕らにとっておもしろくないからね。それは阻止しようと思って」

「あんた……天界軍なの!?」

「う~ん……どうだろ。僕としては天界とか、そんなのはどうでもいいんだよね。ただ、ちょっと縁があるからこっちにいるだけ」

 タナトスはあくまでもひょうひょうとしていた。だがレディ背中には、嫌な汗が流れていた。構えも何もなく、タナトスは両手を下げ空に浮かぶ。一気に攻めれば、勝負が決するかもしれない。
 だがなぜか、手足は鉛のように動かない。目も逸らせない。見えない何かに体の芯を鷲掴みされたかのように、彼女は動けなかった。

「……わけの分からないこと言ってるけど、要するに天界軍側ってことなんでしょ? はっきりしないわね、あんた」

「ああ……それ、昔から言われて来たんだよ。優柔不断だとか、気が長いだとか。まったく、僕はそんなつもりはないんだけどね」

「あんた……舐めてるの?」

「あ! そんなつもりないんだよ! 怒らせてごめんね!」

 レディは距離を測りかねていた。目の前の男が読めない。敵意は感じられないが、かといって味方とも言えない。
 だがここで、タナトスは動く。

「……まあいいや。話は後にするとして、とりあえず一緒に来てくれるかな?」

 そう話すと、タナトスは黒い手をエリスに伸ばし始めた。

『――レディ!』

「分かってる!」

 その刹那、エリスは後方へと離れる。十分に距離を取り、相手の動きを観察する。

『逃げるにしても、相手のスペックが分からないからね! 油断しないで!』

「うん! もし逃げられないようなら……ここで叩く……!」

 離れていくエリスを眺めながら、タナトスは伸ばした手を戻し、ほほをかいた。

「まいったね……。出来れば手荒な真似はしたくなかったけど……仕方ないよね……」

 そしてタナトスもまた、背中のコアユニットを光り輝かせた。

あいえん

しえん

盆休みかな?

ゆっくりでいいから完走よろしく!

一日一回のしえん

あいえん

実家に帰省してました
ゆるりと再開します

待ってました?

こういう待たせる時間にはよおお馬鹿が来る...と思ったら来なかったね。アク禁が怖いんかな。ダッセェのwwwww

>>744
はよはよってのはいらないけど、そういう煽りもいらないと思うんだ

楽しくやってこーや

>>745
ほんとほんと




しえん

「ドラミ! 救援信号!」

『もう送ってるわ!』

「空中都市には近付けさせないわよ! あいつはここで食い止める!」

 エリスは宙を飛びながら、腰元の銃を構える。銃口をタナトスに向けた後、引き金を引く。
 だがエリスの弾丸は見えない障壁に阻まれた。空間は波のように揺れ爆風を遮る。

「亜空間障壁!?」

『実弾は無意味なようね……!』

 エリスはジグザグに飛び回りながら、兵装を変える。

「……じゃあ行こうか、タナトス」

 操者の呟きと共に、タナトスは二つの目から光を放つ。そして背中のコアユニットを更に輝かせ、飛翔する。

『――ッ! レディ! 来たわよ!』

「うん!」

 エリスは背中から別の銃を取り出し構える。先ほどよりも銃身がやや大きい。エネルギー系の弾丸を放つ銃である。
 向かって来る黒い巨人を狙い、エリスは再び発砲を始めた。

あくうかんしょうかべ

今北産業

>>749
男がのび太で
幼女が可愛く
最近、異世界冒険ものとなった

しえん

支援

あいえん

まだー?

打ち切りかな?

あいえん

ま、忙しいんだろ
気長に待とうぜー

支援

あいえーん

支援

まだー?

続きは脳内補完するしかないのかな

いや打ち切りにはなってないと信じる
スレ主は仕事が忙しいのだろう

あいえん!あいえん!

まあこれ書くのが仕事なわけでもないしな
まったり支援

まったりあいえん

支援

支援

あいえん

あいえん

支援


(`・ω・´)ニガサナイ

あいえん

あいえん

支援

あいえん

支援

支援

強制下げか

それでも支援

まああんまり支援しすぎてもスレ埋まりそうだけどな

いったいいつ帰ってくるんだ?

もう戻ってこないのかなぁ

諦めんなよ!

 エリスの銃から光が走る。闇夜を駆け抜けるそれは、蠢く影へと無数に伸びていた。
 タナトスはゆらりとゆれる。蛇行のように左右に揺れ動きなら上昇するタナトス。だが確実に紙一重で光の弾丸を躱しつつエリスに迫っていた。

「当たらない!?」

『レディ! 弾道を読まれてるわ!』

 エリスは後方へ飛びながら、引き金を引き続けた。

「無駄だよ。君のその銃は、威力は高いけど弾速はあまり出せない。対単体だと、躱される可能性が高くなるよ」

 あくまでも冷静に告げるタナトスの操者。その声は、レディの感情を高ぶらせた。

「知ったようなことを――!!」

 方向転換をしながらエリスはなおも弾を放つ。だがタナトスはそれを躱す。不規則な動きを見せる二つの巨像は、徐々にその距離を縮めつつあった。

「無駄無駄。そろそろ、捕まえさせてもらうよ」

 するとタナトスは一際強くコアユニットを光らせる。そして爆発的な加速をし、一気にエリスの眼前へと接近した。

「――ッ!?」

(なんて加速なの!?)

 レディが驚愕すると同時に、タナトスの黒い手はエリスの頭部を鷲掴みにする。

「――いくよ」

 機体を反転させたタナトスは、海面目がけエリスを放り投げた。

あれ?下げになってる?

あ、直った

「くぅっ……!」

 体中にかかる重みに声を漏らしながらも、レディは体勢を整える。そして海面と衝突する刹那ホバリングし、上空を見上げた。
 だがそこに、タナトスの姿はない。

「いない!?」

『――レディ!』

 ドラミが叫ぶや、エリスの背中を衝撃が襲う。

「きゃあああああ!」

 背後からのタナトスの蹴りである。前方に吹き飛ばされたエリスは、海面を切り裂きながらも辛うじて背面に銃口を向ける。だがやはり、タナトスの姿はなかった。

「――ッ!? どこ――!?」

『上よ!』

 ドラミの声にエリスは顔を上げる。そこには、腕を組み宙に浮くタナトスの姿があった。

「……3回、だね」

 タナトスから、声が響く。

「……なんですって?」

「キミが撃墜された回数だよ。僕がその気なら、キミをもう3回も撃墜出来てたよ?」

「……!」

 レディは再び激高する。だが、反論することが出来なかった。タナトスの操者の言う通りであることは、彼女自身よく分かっていた。
 それほどまでに目の前の機体は圧倒的で、絶望的な力を持っている。それを肌で感じていたレディは、悔しさで表情を歪ませることしか出来なかった。

うおおおおかえり!待ってた!

>>790
ごめんね
更新しようと思ってたんだけど、すっかり忘れてた(´・ω・`)

「さて、改めて聞こうか……」

 タナトスは、背中から剣を抜き出す。そして月の光を鈍く写す剣先を、エリスに向けた。

「次は、キミにこの刃を向ける。手を抜くこともしない。遊ぶこともしない。確実に、殺す」

「――ッ!」

 先ほどまでとは全く様子が違う。その声に緩さはなく、体の芯から震えるほどの殺気を帯びていた。無意識に、レディの息が止まる。もはや彼女は、タナトスに呑まれていた。

「僕と付いてくるか……それとも、ここで散るか……。さあ、好きな方を選んでよ」

『……!』

 ドラミすらも声を出せない。レディの心拍数、脳派の乱れ、四肢の震え……全てが異常値を示すこの状況で、下手に声をかけることが出来なかった。
 タナトスは背後に朧月を背負う。そして絶望の色を濃く写す黒いフォルムは、不気味な存在感を出していた。
 タナトスの操者は、更に凄む。

「さあ。どっちにするんだい? 決められないのなら、僕が――」

 その時だった。

「――どっちでもねえよ」

 突然声が響くと同時に、タナトス目がけ亜粒子砲の弾丸が飛ぶ。

「――ッ!」

 タナトスはそれを躱すと一旦後方に下がり、その方向に視線を向けた。
 すると暗闇の奥から凄まじい速度で白い影が現れ、エリスとタナトスの間に降り立った。その白い影を見たドラミは、歓喜の声を上げる。

『ゴ、ゴリアテ――!』

 そのフォルム、白き巨人。闇夜の中で圧倒的な存在感を示す、鋼の機体――ゴリアテ。
 ゴリアテからは、のび太の声が響く。

「第3、第4の選択だ……」

 その姿を見たタナトスの操者は、頬を釣り上げ笑みを浮かべた。

「ここでぶっ壊れるか、それとも尻尾巻いて逃げ出すか……。選ぶのは、お前だよ――!」

 のび太は、ゴリアテ越しにタナトスの姿を見直す。

(しかし、驚いたな……)

 改めて見れば、やはりゴリアテと酷似していた。装備も外見上はさほど変わらないようだ。タナトスは言葉を返すこともなく、ただ浮かぶ。

「……レディ。無事か?」

 視線をタナトスに向けたまま、のび太は後ろにいるエリスに声をかける。

「え、ええ……なんとか……」

 そこでようやく、レディは声を出した。だがその声に力はない。

『ドラミ! 大丈夫!?』

 ドラもまた、エリスの中のドラミに向け声を上げた。

『私は大丈夫よお兄ちゃん。エリスもダメージは受けているけど、致命的な損傷はないわ』

『そ、そっか……よかった……』

「遅れて悪かった。でも、もう大丈夫だ」

 そしてゴリアテは、背中の剣を抜く。

「こいつは……俺に任せろ」

 二対の機体はにらみ合う。その手に刃を持ちながら。
 いつしか雲は風に流され、煌々とした月光が、白と黒の巨人を鮮明に照らし出していた。

「こうして直接顔を合わせるのは、今日が初めてだね……」

 ふと、タナトスの操者は切り出した。

「ああ。そうだな」

「さっきの動きを見る限り、どうやらある程度ゴリアテを使いこなせているみたいだね。安心したよ」

「お褒めに預かり光栄だな。まあ、お前をぶっ潰すくらいには使えているよ」

「ふふふ。デキスから聞いたとおり、キミは面白いね」

 その言葉に、のび太は反応した。

眠気がヒドイから今日は寝ます
お休み

おつおつ ゆっくりおやすみだよぅ

待ってる

いつの間にか続き上がってた

「やっぱ、デキスと繋がっているのか……」

「まあね。これくらい自由にさせてもらってるし、そりゃそうでしょ」

 タナトスの操者はさも当然のように答える。

「……なるほどな。お前の正体、分かった気がする。何となくな……」

「……そう。それは、説明の手間が省けてよかったよ」

「へん、言ってろよ。……とりあえず、お前に聞きたいことはたった一つだ。――リルルは、どこにいる?」

「……」

 のび太の問いに、黒い巨人は沈黙する。

「なんだよ。そんくらい教えてくれてもいいだろ? “俺とお前の仲”じゃねえか」

「……そんなに聞きたいなら、力尽くでも聞いてみたら?」

 そしてタナトスは、剣を構える。

「……言われるまでもねえ。端っから、そのつもりだよ……」

 ゴリアテもまた、剣を構える。
 二人の巨人の間に緊張が走る。それを傍から見守るレディは、息を飲んだ。まるで刃物のように鋭い空気が、彼女にまでプレッシャーを与えていた。

「……」

「……」

 睨み合う双方。しばらく対峙した二機は、ほぼ同時に相手に向け飛び出していった。

泣いても誰も来ないね

お帰りなさいませ!

あいえん

まだ残ってたのか

例え一人でも俺は支援し続ける

俺もいる

俺も

わいも

 二つの刃は火花を散らし交差する。双方すぐに後退するなり、ゴリアテは掌から砲撃を放つ。タナトスは機体の軸をぶらすことなく剣で砲弾を弾き、再び背中のユニットを輝かせた。

『のび太くん! 来るよ!』

「分かってるよ!」

 ドラの声と共に剣を構えれば、瞬く間に距離を詰めて来たタナトスの一太刀はゴリアテの胴体を狙う。ゴリアテがそれを剣で受け往なす。刃を返し逆にタナトスの機体を狙うが、ゴリアテも読んでいた。紙一重で機体を屈ませ躱せば、下手に構えた剣を一気に振り上げる。
 ゴリアテは体を反転。刃が空を切るなり剣を横一字に振り抜く。タナトスは後退しながらそれを躱すが、去り際に剣を振りゴリアテの動きをけん制。詰め寄ることが出来なかったゴリアテは深追いすることはない。タナトスもまた剣を構えれば、状況は再び初めに戻った。

「……」

 一瞬の攻防であった。その一瞬で、レディは息をするのを忘れるほど見入っていた。
 これが噂に聞くゴリアテの……いや、のび太の強さ。体の動きに無駄はなく、勝負感に優れ常に致命の一撃を狙う。
 片やタナトスもまた、そんなゴリアテに勝るとも劣らない。息をするようにゴリアテの攻撃を躱しつつ、逆に攻撃を仕掛ける。

『……レディ。二人の動き、よく見ておきなさい』

 ドラミは、そう呟く。
 二体の動きこそ、アーマー戦闘の完成形とも言えるのかもしれない……。ドラミは、それほどまでに考えていた。
 レディは頷くことすらせず、ただ二体の動きを目に焼き付けていた。

きてたーーーー!!

支援

しえん

支援

支援

支援

あいえん

あいえん

久々に見てみたらきてたw あいえんの作者でございますb

あいえん

あいえん

あげ

あいえん

支援

(まいったな……)

 のび太の顔に、一筋の汗が伝う。思わず頬が緩んでしまうが、それはけっして余裕の表れなのではない。むしろその逆であった。

(まさか、ここまでとはな……)

 タナトスの実力は、ある程度は想像出来ていた。外見上装備はゴリアテと酷似。だとするなら、性能もある程度は変わらない。だが楽観的には考えず、むしろより高性能であると仮定。それから導き出される実力は、ある程度分かっていた。その、“はず”だった。
 だがこうして剣を交えれば、その想像すらも甘いものであったと感じるほど、はるかに上回っていた。
 油断など一切出来ない。一瞬も目を逸らせない。かと言って、容易く攻めることも出来ない。
 もし仮に性能がゴリアテと同じだとしても、これほどまでにやりにくい相手はいない。そんな感情が、彼に皮肉の笑みを浮かべさせていた。

「――正直、驚いたよ」

 ふと、タナトスから声が響く。

「……あ?」

「君の実力は、ある程度は分かってるつもりだったんだけどね。よもや、ここまで出来るとは思いもしなかった」

「……ハハハ。そいつはどーも」

 まるで同じことを考える相手に、乾いた笑いが零れた。

「いやいや、おだててるつもりはないんだよ。本当にそう思ったんだ。君は強いよ、のび太……」

 名を呼ばれ、のび太の眉間は僅かに動く。

「……デキスから聞いたのか?」

「まあね。でもまあ、ある程度は君の名前は検討がついていたけどね。君だってそうだろ?」

「……はん、どうだろうな。それに、お前の名前なんてどうでもいいんだよ、俺は」

「へえ……」

「お前がどういう名前だろうが関係ない。お前が何者だろうがなんでもない。俺はリリルを取り戻す。それを邪魔するなら、叩き潰すだけだ……!」

 そしてゴリアテは、一層強く剣を握る。

「……なるほどね。ずいぶんと勇ましい騎士様だ。ただ、僕も簡単に潰されるつもりはないよ」

 タナトスもまた、剣の切っ先をゴリアテに向け直した。 

おかえりというかまだ続いてて嬉しいというか
あいえん

 闇夜の空に、閃刃が二つ。金属音を響かせ、離れては交差し交差すれば離れる。背を向けることなく、怯むことなく、ただひたすらに必殺の一太刀を浴びせるべく刃を振るう。
 それを見守るレディは、息を呑んでいた。可能であれば援護を行いたい。だがそれを許さぬように、ニ対の巨人は熾烈にぶつかる。
 手を出してはいけない。逆にゴリアテの足を引っ張る。そう、本能が叫んでいた。

「……ドラミ」

『……ん?』

「私、もっと強くなる。一緒にいてくれる?」

 それは心からの声のように聞こえた。己の未熟さを知り、目の前で広がる高みを知り、せめて足元程には届きたいと願う、そんな声に聞こえた。

『……当たり前でしょ? 私もエリスも、あなたの半身よ』

「……ありがとう、ドラミ、エリス……」

 空を見上げながら、レディは呟く。そこでは究極とも言える命のやりとりが繰り広げられていた。だが暗闇に浮かぶそれからの光は、なぜか神秘的に見えていた。

「――クソッ!」

 タナトスの剣を防ぎながら、のび太は声を漏らす。

『のび太くん! 大丈夫!?』

「ああ大丈夫だ! 今のところはな!」

 そう返すのび太だが、その実余裕などない。僅かな隙を狙うが、タナトスは一切の隙も見せない。とは言え、受けに徹すればジリ貧となりいつかは崩される。打開策もないまま、剣を振ることしかできなかった。
 だがそれすらも、いずれ通じなくなる。それも痛いほど分かっていた。故にのび太は、賭に出ることにした。

「チッ……! ドラ! ちょいと無茶するぞ!」

『ええ!? 勝算は!?』

「んなこと分かるかよ! 成功するかしないかのどっちかだよ!」

『ちょっと! そんな適当な!』

「がたがた言うな! いくぞ!」

 ドラの反対を押し切り、のび太はゴリアテのコアユニットを輝かせる。そして最大出力でタナトスに向け飛翔した。

おおーー!!!おかえり!!!!

もう24pvかよ...前は4000近かったのに...。

>>829
最近さぼり過ぎだから致し方なし

すっかりわすれてた…

今週pvリセットあったみたいだし仕方なし

 それまでの機敏な動きとは違い、直線的にタナトスに猛進するゴリアテ。

「やけくそか何か策があるか……」

 迫るゴリアテに、タナトスは剣を構える。

「どちらにしても、君の目算は甘すぎるよ! のび太!」

 タナトスは刃を振り上げ照準をゴリアテの頭部に定める。そして勢いよく振り下ろした。

『のび太くん!』

「――ッ」

 剣が機体に触れるその刹那、ゴリアテは掌を刃にかざす。そして光の弾丸を放った。

「なっ――!?」

 タナトスから驚嘆の声が漏れるや、刃は光に弾き飛ばされ宙を舞う。と同時にタナトスの胴体へ向けゴリアテの剣が走る。

「クッ――!」

 タナトスが上体を逸らせば、刃は胴体を掠める。ばちばちと火花が散る音が響き、たまらずタナトスは後退する。

「逃がすかよ!」

 ゴリアテは更なる一撃を浴びせるべく前進、タナトスを追う。だが宙で回転する剣の柄を掴んだタナトスは、剣先をゴリアテに向け追撃をけん制。勝負を決めたいのび太だったが、警戒態勢となったタナトス相手に無理な追撃は返って危険が生じる。
 やむを得ず、のび太は距離を保ち剣を構え直した。

なんかすげえ

 両巨人は夜の底に沈む空で向かい合う。見れば双方に損傷が見られ、その激しい戦闘の様子が見て取れた。

「……あと少しだったんだけどな……」

 のび太は口惜しそうに呟く。だがここで、ふいにタナトスが構えを解き、力なく剣を下げた。

(なんだ?)

 先ほどとは打って変わり、隙だらけとなったタナトス。だがそのあまりのギャップに、かえってのび太は攻めることが出来ず様子を窺う。
 そしてタナトスから、声が響いた。

「……今日は、ここまでにしようか」

「……あ?」

「機体にかなりの損傷が出てるしね。これ以上は、不利益しかないよ」

 タナトスは胴体に手を当て、そう語る。そこはゴリアテの剣が切り裂いた部分。胴体には亀裂が走り、剥き出しとなったコードは小さく火花を飛ばしていた。

「……それで、俺が逃がすとでも?」

「強がるなよ。君だって分かってるんだろ? 君のその機体、かなりの損傷を受けてるよ」

「……」

 のび太は押し黙る。その指摘は、まさに適格だった。
 タナトスの剣を弾くために手の砲撃を使ったのび太。普通であれば無謀とも言えるその策は見事成功し、事実こうしてタナトスに損傷を与えている。だが、至近距離で爆発に呑まれたタナトスの腕もまた、大きな損傷を受けていた。
 焼け焦げた機械分は外部装甲がひび割れ、タナトスの胴体と同様にスパークする。口にこそ出さないが、剣を握るのもやっとの状態であった。むしろ、休戦の提案に安堵の息を強く漏らしたのは、のび太の方なのかもしれない。
 更にタナトスは続ける。

「僕としても、君はここで潰しておきたかったんだけどね。ただ、君の場合少し怖いんだよ。仮にこのまま追い込んだとしても、最後の悪あがきで何をするか想像もつかない。僕の機体はまだまだ改良する余地もあるし、このまま道連れにされるのは本望じゃないんだよ」

「……」

「……僕の提案、聞き入れてくれるよね?」

 タナトスからの声に、のび太はしばし思案に耽る。

『のび太くん……』

「……チッ」

 ドラの心配そうな声の後、のび太は静かに剣を下げる。

「助かるよ、のび太」

 双方が剣を収め、二つの巨人は向かい合うのみとなった。

「……さて、そろそろ帰らせてもらうよ」

 タナトスはゴリアテに背を向ける。そして背中のコアユニットを、徐々に輝かせ始めた。

「あ、そうそう。君のその機体――ゴリアテも、もっと改良の余地があるからね。もちろん、エリスも……」

「……」

「今でも十分強いんだけど、もっともっと強くならないと、この先辛いんじゃないかなぁって思うんだよ」

「……どういうことだよ」

「さあね。僕にも、詳しいことは分かんないし」

「なんだよそれ……」

「ただ少なくとも言えることは……君が想像しているよりも、この世界はシビアなんだよ」

 語尾に意味深な笑い声を残すタナトス。のび太は、その操者に尋ねる。

「おい、最後に一つだけ答えろよ」

「……なんだい?」

「お前の名前……何て言うんだ?」

「……」

 背を向けていたタナトスは、コアユニットの光を維持したままゴリアテの方を振り返る。

「――……僕の名前は、ノビ。以後、お見知りおきを、もう一人の僕……」

 そして飛び立ったタナトスは、たちまち視界から消えた。レーダーの捕捉範囲からも離れたところで、ドラはようやく声を響かせる。

『……ふぃぃ。危なかったぁ……。まったく! 無茶しちゃだめじゃないか! 相手が何とか撤退してくれたからどうにかなったけど、危うくこっちが壊れるところだったよ!』

「まあ、いいじゃねえか。成功したんだし」

『成功なもんか! こっちの損傷の方が大きかったんだからね!』

「……悪かった。謝るよ」

『え? え? あ、ああ、うん……』

 思いがけないのび太の謝罪に、ドラは面をくらってしまった。のび太は、ゴリアテ越しに夜空を見上げる。

(……あれが、この世界の俺、か……。まったく何してんだよ、もう一人の俺はよ……)

 闇に染まる空では、月が不気味とも言える光を放っていた。

支援

あえいん

間違えた あいえん

支援→あいえん→あえいん

支援

あえいん

間違えた あいえん

あえいん

あえいん

 その後、のび太が呼んだ救援隊によりエリスは収拾された。損傷はあるが、すぐにでも修理が出来るとの報告を受けたレディは、安堵の息を漏らす。
 そして夜が明けた頃、フレイヤのブリーフィングルームにはのび太をはじめ、シズ、ジャイ、スネ、ドウエル、そしてレディが集まっていた。そこでのび太は、昨晩のことを話す。

「そうか……そんなことが……」

 話を聞いたジャイは、表情を落としながら呟く。

「これは、一つのメッセージなのかもしれませんね」

 続いてシズもまた、声を漏らした。

「メッセージ?」

「はい。――我々はいつでも敵機を送ることが出来る。お前達の居場所は分かっている……。そんなメッセージを、私は感じました」

「だとするなら、長居は無用なんじゃないの? 敵が来ちゃうんでしょ?」

 スネは怯えるようにしながら全員を見渡す。

「……でも、これからどうすれば……」

「――……そのことなんじゃが……」

 ふと、ドウエルが口を開いた。

「実はの、今日朝一番に、レオンの坊主から通信が届いていてのぉ」

「レオンの坊主……? レオン司令!?」

 全員の表情は、瞬時に固くなる。

「まったく……。まどろっこしい真似をしよって。話があるなら直接来ればいいものを……あの坊主め……」

 ドウエルはぶつぶつと不満を口にする。

(仮にも司令を坊主扱いとは……。この爺さん、何者なんだよ……)

「まあ、とりあえず見てみるとするかの」

 そしてメインモニターは作動し、映像を映し出した。

『――……あーあー、テステス。テステス。あれ? 映ってる?』

 そこにはレオンの姿が。カメラを叩いているのか、上下に揺れる。

『……司令。もう映ってますよ』

『え? そうなの? ……おっほん』

 わざとらしく咳をし、仕切り直すレオン。

(しまらねえなぁ……)

『……エリスとの合流、ご苦労だったね。先のことは報告で聞いている。ゴリアテの操者の方。エリスの奪取を阻止していただき、重ね重ね礼を言う。君には、勲章の一つくらい授与しようかと考えている』

(……いらねえよ)

『……と言ったところで、報告から聞く君のことだから、たぶん“いらねえよ”なんて言いそうだけどね』

 どうやら見透かされていたようだ。のび太はばつが悪そうに、頬をかく。
 ふとレオンは、表情を引き締めた。

『ともあれ、敵の動きも活発化している。近頃では、ここ本部周辺区域においても、度々敵部隊との戦闘も起こっている。敵戦力は日に日に大きくなっているようであり、正直なところ、ジリ貧状態だ。
 ……事態は、かなり緊迫したものと言えるだろう』

「本部周辺にまで……」

『……そこで、だ。我々連合艦隊は、敵艦隊に向け、総攻撃を行う運びとなった』

 室内は、にわかにざわついた。

懐かしい まだあったのか

>>848
うん
のんびりと、時々さぼりながら進行してる

『現在世界に分散している戦力を一同に終結させ、敵本隊を叩く。永きにわたるこの戦争を、終わらせるつもりだ』

「……」

 シズ達は唖然といった様子であった。のび太はとあうと、一人険しい顔を浮かべ、ただレオンの話を聞いていた。

『……ということで、フレイヤに新たな指令を下す。フレイヤはゴリアテ、エリス、及び両操者を連れ、首都グランツリートへ迎え。以上だ。貴艦の無事を祈る』

 そして通信は終了した。
 その後室内を包んだのは、重い沈黙であった。しばらく黙り込んだところで、ようやくジャイが口を開く。

「……世界中の連合軍を一同に、か……」

 そしてスネが続く。

「本気のようだね。司令は、ここで終わらせるつもりだよ」

 シズは、不安そうに語る。

「でも、世界中の戦力ということは……各主要都市の防衛を、全て放棄するということですね」

「負けた時のことは考えない。防衛を捨て、ただ勝利への攻撃を行う。……まさに、総力戦ね……」

 最後にレディが呟き、再び沈黙へと戻る。
 全員が分かっていた。勝敗がどちらに転ぶにせよ、その一戦こそ、最終決戦であると。後世に語り継がれるであろう、歴史の節目になると。
 その重圧は凄まじいものであった。故に全員が口を閉ざし、俯いていた。

あえいんとかいらねえ

 その中で、のび太は一人思案に耽る。

「……敵の本陣を叩くってことは、もう場所が分かってるのか?」

「え?」

「いや、敵本隊に総攻撃なんだろ? 場所が分かってるのかって思ってな」

 のび太の言葉に、ジャイとスネは顔を見合わせた。

「そりゃそうじゃないの? 分かってなきゃ、攻撃なんて仕掛けないだろうし」

「そうだよな。……のび太、それがどうかしたのか?」

「……いや、なんとなく、な……」

 のび太の脳裏に、何か言いしれぬ棘のようなものがつっかかっていた。

「……まあ、他の主要都市は大丈夫だろうて。少なくとも、鬼の居ぬ間に武力制圧などとはいかぬじゃろう」

 ドウエルは静かに話した。

「長老、どういうこと?」

「簡単なことじゃよ。こちら側の戦力を集めるんじゃ。当然、敵さんにも動きは筒抜けになるじゃろ。そうなれば、他の都市を攻めとる場合ではない。何しろ本丸が落とされては、如何に都市を奪っても無意味になるからの」

「なるほど……。こちらが総力戦を仕掛けるなら、相手も乗らざるを得ない……というわけですね」

「そういうことじゃ。後がないのは、何もこちら側だけじゃないということじゃよ」

(なるほどな。攻撃は最大の防御とはよく言ったもんだ)

 それもまたレオンの狙いなのだろう。そのことが分かった全員は、難しい顔をしながらも自分達の総司令に敬意を抱いていた。

「……ともあれ、私達の目的地は決まりましたね」

 シズは、最後に締める。

「フレイヤはこれより、ゴリアテ、エリスを乗せ、一路首都グランツリートへ向かいます。総員、万事滞りなく準備を」

「了解!」

 全員が表情を引き締め、力強く答えた。

(……敵の本陣への総力戦か。……リルル……お前も、そこにいるのか?)

 のび太は窓の外に目をやる。遥か彼方に揺れる水平線。その先にいるであろう、少女の笑顔を思い描いていた。

あえいん

1のIDがエリスだ!!

あえいん

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