男(結局、死ねなかった) (30)

高層ビルの屋上

男「…」

男(無になりたい)

男(あそこにある電線の一本でさえ、何の価値もないあの灰色の空でさえ)

男(他人を羨ましがるでもなく、怒るでもなく、一切の感情の変化の無い)

男(無になりたい)ヒュオオオ

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実家の自分の部屋

男(結局、[ピーーー]なかった)ボフッ

男(人の目を見て話せない。すぐ恥ずかしくて赤くなる。落ち着きも無い。運動神経も無いし勉強もできない。おまけに無職)

母「男ー、ご飯よー」

男「母の優しさが辛い」トボトボ

テレビ「…と言う事で…との事です」

男「」ボー

テレビ「この事に対しての発言は…」

男(…ん?)

男(何でこのテレビの偉い人達はこんな偉そうにふんぞり返って喋ってるんだ?)

男(そもそも偉い人ってなんだ?)

男(ちょっと首の辺りを切れば無になってしまう人の、何が偉いんだ?)

男(ちょっと脳の回路が違うだけ、物質的なものにすると何でもない事なのに)

男(何で人が人を納めているんだ?)

男(…)

男(…このよく分からない感情の正当性を貫くなら)

男(皆しんで無になる…しかないよな…)

男(…まあいいや…寝よ)スタスタ



鏡の中の男「そうか、つまり、そう考えた訳だね」

男「!!…なんだお前は!」

鏡の中の男「安心してよ。怪しいものじゃない」

男「そういう事を言ってるんじゃない」

鏡の中の男「?。まぁ良いじゃない、何でも。それより今日君が考えていた事、素晴らしい考えだと思うよ。」


男「お…お前…俺の思ってる事が読めるのか!?」

鏡の中の男「簡単さー。君を乗っ取る事だって出来る。」

男「なに!」

鏡の中の男「フフフ」


チュンチュン

男「…夢…?」



男(朝か…)


男「」モグモグ

男(今日もやる事がない…)チラシ見る

男(…ん?これは演説会のチラシか)モグモグ

男(予定日は…今日か)

男(暇だし、行ってみるかな)


A「であるからして…」

男(案の定暇だな…)

男(しかし、やはり可笑しい。何故あそこにいる人は偉そうに教えを説いているんだ?)

男(何なんだろうな…)ファー

男()zzz...


鏡の中の男「あはは、君は本当に面白い人だね〜。良いよ、君の願いを叶えてあげるよ。」

男「これは…また夢か…」

男「なに言ってるんだお前」

鏡の中の男「まぁまぁ、君の言う世界の無ってやつを、一緒に見ようじゃないか?」

男「はあ?」

鏡の中の男「ほら」男の心臓を腕で刺す

男「?…う、うわあああ!」ズブズブ


A「きてください…」

A「起きてください!」ユサユサ

男「」目を開ける

A「あっ、演説終わりましたよ」

男「…」

A「どうかしました?」

男(鏡の中の男)「」ニヤ ガッ

A「ウグッ…」

A「…」

男(鏡の中の男)「あはは」スタスタ


翌日

男「ん…あれ?…俺…」

男「確か演説を聞いてて…」

男「夢…だったのか…?」


コンビニ

店員「いらっしゃいませ…はっ!」目そらし

男(な…何だ?)

客達 「あっあれって… まさか…」 ザワザワ

男「なっ何だ…?」

男「何か分からないけど、悪い人に対して向けられるような目が」

男「俺に対して…?」

男(とにかく出よう)ガー


男(…やはり可笑しい…スマホが壊れたんじゃなきゃ、もしくは俺の頭がおかしくなったか。)

男(俺の記憶では今日の日付は昨日のはずだ…)

警察「ちょっといいかい、君?」

男「えっ?」

警察「少し本署に来てもらえるかな?」

男「え…はい…?」とっさに目を泳がせる

男「!!」


男(何だあの張り紙は…)

男(指名手配!?…しかも…俺!?)

警察「さあ、ちょっと来てもらおうかな」

男「う…う…うわあああ!」パニック コンビニ全力で立ち去る

警察「!?待ちなさ…速い!」


男(何なんだ…これは…)ハアハア

男(今朝から分からない事だらけだ…)

男(と言うか警察から逃げたらまずいよな…)

女A「…何だってー」

女B「えーっ!演説会で殺人事件!?」

女A「それで、それほど計画的でない殺人だったらしくて」

女A「一夜で犯人は割り出せたらしいよ?」


女B「それって、今近くにいるって事だよねー」

女B「こわーい」

男(え…それって…どう言う…?)

男(!?)

男(…人をころした感触が…ある…俺に!)

男「??!?!?!!!?」


男「あはは」ガッ

女A「ウグッ!?」

女A「」ガクッ

女B(助けを…!)

男「あははははあはあは」ガッ

女B「グ…!!」ガクッ

男「あははははあは」


そして…

男(死刑判決か…)

男(当然だろう。人を殺したんだから…)

男(それでも…怖い…)


そして…

死刑場

男「」カンカン

男「」カン

床 パカッ

男「」

男「…」

警備員A「…」


警備員B「なあ、あいつ、初め人を一人殺したらしい。」

警備員B「そして、なんかパニックになって二人殺したんだと」

警備員A「…知ってますよ」

警備員A「それが何か?」

警備員B「ああ、つまりあいつは人一人殺した時点で死刑にきっとなるはずだった」


警備員B「それでもう己の支払えるものは全て支払ったのに」

警備員B「あいつは更に殺した」

警備員B「無マイナス、無より人が支払える代償なんて無いのにな」

警備員A「…」

警備員B「俺たちはこう言う理不尽を許さないためにここに居るんだ」


警備員B「これからもしっかり働こう」

警備員A「…はい!」


そして…

男「…ここは…俺…死んだのか…?」

鏡の中の男「やあ」

男「お前ふざけるなよ!」

男「俺の体で勝手な事しやがって!」

男「どうしてくれるんだ!」

鏡の中の男「へえ、僕があの日君を乗っ取ったって気づいてたんだ?」

鏡の中の男「僕は君の心の代行者」

鏡の中の男「君の望んだ事をしてあげただけだよ」

鏡の中の男「それに殺した数で言えば君の方が上じゃないか」

男「うっ…」

鏡の中の男「…さあ、見てごらんよ。君は望むもの全てを手に入れた。」

鏡の中の男「無、そして世界を認知しないという実質的な世界の滅ぼし」

鏡の中の男「もう他に何がいるんだい?」

鏡の中の男「もう全て忘れてしまおうよ」

鏡の中の男「全て…無いんだから…」

終わり

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