【三姉妹探偵】マリーダ「姉さん、事件です」【プルズ】 (112)

・機動戦士ガンダム(宇宙世紀)をネタにした二次創作です。

・宇宙世紀の歴史・世界観はほぼ無視のネタSSです。
 SDの「夢のマロン社」「運び屋リガズィ」「嵐を呼ぶ学園祭」的な感じで受け止めていただければと思います。

・そのため、キャラ崩壊傾向やや有り(顕著ではないと思う)。

・特定キャラのネタ扱い有り。

・探偵モノですが、大した推敲もせずノリで書いてます。

以上、ご了承の上、お読みいただければ幸いです。
 


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1433242317




【ナレーション】
人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に一世紀が過ぎようとしていた。

地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。

宇宙世紀0096、ここはごくごく一般的で平和なスペースコロニー、サイド3、通称「ムンゾ」の1バンチ。 

その市街地区にある雑居ビルの一室に「プルズ探偵社」はあった。




プルズ探偵社 リビング


マリーダ「姉さん、事件です」

プルツー「うるさいぞマリーダ。今ゲーム中なんだから静かにしていろ」

プル「どーせまた猫探しとかそんなのでしょ?」

マリーダ「いえ人探しです、姉さん」

プル「人探しぃ?なぁに、家出?」

プルツー「そんなのはティターンズに捜索願でも出せばいい話じゃないか」

マリーダ「いえ、姉さん。どうやら事情があるようです……これを」ピラッ

プル「写真?」

プルツー「こ、これって……まさか!」

マリーダ「はい。ムンゾ公室のザビ家、次期当主継承者のミネバ・ラオ・ザビ様です」

プル「ミネバ様が家出したって言うの?」

マリーダ「そのようです。先ほど教育係だという、奇抜な髪の色をしたミンキーモモのような女性が内密にと相談に来ました」

プルツー「何だよその人?センス悪いな」

プル「プルツーだってあの真っ赤な軍服みたいなのはどうかと思う」

プルツー「なんだと!そういうプルだって、あのピラピラの露出の多い服はひどかったじゃないか!」

プレイ「ふーん、あれは人気あったもんねーだ!」

マリーダ「……姉さん達、ちゃんと聞いてください……」
 


プル  「マリーダは硬いんだからぁ。で、報酬はどれくらいなの?」

マリーダ「それが……」ピラッ

プル  「小切手?」

プルツー「待て、マリーダ……これ桁が……0が三、四、五……」

マリーダ「二百万連邦ドルです、姉さん。しかも、前金で」


プルプルツー「「に、二百万……!」」


マリーダ「しかもこれは手付金で、成功報酬は五倍払うと……」

プル  「五倍……ってことは……えっ、二百が倍で四百でその倍が八百で……」

プルツー「プル、それ計算間違ってるよ」

プル  「えっ」

マリーダ「成功報酬は一千万連邦ドルです、姉さん……」

プル  「いっ、一千万んん!?」

プルツー「(ゴクリ……)」

プル  「それだけあったら、ハーゲンダッツ何個買えるかな?!」

プルツー「何個だなんて安っぽいよ。工場ごと買い上げてしまえばいいさ」

マリーダ「あぁ、いや、プルツー姉さん、工場丸ごとは無理じゃないかな……」

プル  「とにかく!すぐに作戦会議だよ!」

プルツー「そうだな。いつまでもジュドーやジンネマンに金を無心したままと言うわけにいかないからな」

マリーダ「……では、詳しい話を聞いて来ますね」

プル  「よーっろしくぅ!」

プルツー「任せるぞ、マリーダ」

マリーダ「はい」



 



プルズ探偵社 応接室


マリーダ「姉さ……ゴホン。所長が最優先で案件にご協力したいと言っています。お話の続きをお願いしたい」

ミンキーモモ「そうか、よろしく頼む。ミネバ様が行方をくらましたのはアナハイム社のインダストリアル7へ行かれた後だ。何でもご学友とのサークル活動があるとかで出かけられた。もちろん、送迎も監視も付けてはいたが、監視役は花屋に気を取られている隙にミネバ様を見失うという体たらくだ。無論、きつい処分はくだしたが……」

マリーダ「なるほど……身代金など要求はないのですね?」

ミンキーモモ「あぁ、今のところは。どうも最近、ミネバ様には特に親しくされている者がいてな。その者と一緒にインダストリアル7の港付近で目撃されたのを最後に足取りがつかめないのだ。こちらも捜査機関を通じてはいるのだが、内密にとはいえこの広大な地球圏を探すにはとにかく人手が必要だ。そこで、藁にもすがる思いでこちらへ伺った」

マリーダ「なるほど……分かりました。では、インダストリアル7に直接出向いて情報を集めるところから始めてみます」

ミンキーモモ「ふむ、頼むぞ。何かわかり次第、こちらに連絡をしてほしい」スッ

マリーダ「名刺ですね……(ハマーン・カーンと言うのだな……)。はい、分かりました。小さなことでも連絡するようにします」

ハマーン「なるべく早くに探し出してほしい。大事はないと思いたいが……イヤな予感がしているのだ」

マリーダ「イヤな予感……?」

ハマーン「……いや、なに、こちらの話だ。とにかく、内密に手早く頼む」




 





インダストリアル7行きのシャトル内


 プル 「わぁー!見て!ムンゾがあんなに遠くに見える!」

プルツー「うるさいぞ、プル。騒ぐんじゃない」

マリーダ「プルツー姉さんも、ゲームするならイヤホン付けてください。音漏れは他の客に迷惑です」

プルツー「まったく、マリーダは硬いな」

 プル 「あたし、シャトルのビジネスシートなんて初めて!イスも広いしふっかふか!」

マリーダ「いいですか、姉さん達。手付金というのはそもそも仕事のための必要経費であって、贅沢をするためのお金ではありません」

 プル 「えー?いいじゃーん!せっかくのシャトルなんだし!」

プルツー「その割にはこのチケットを取るのに反対しなかったじゃないか」

マリーダ「そ、それは……」

 プル 「『ビジネスシートは機内食のグレードも良いんですよ』って言ってたよね」

マリーダ「そっ……それは……///」

プルツー「確かに、安っぽいエコノミーシートの食事とは比較にもならなかったな」

マリーダ「そ、それは……!…………そうですが……///」

 CA 「お客様。デザートの方はいかがいたしますか?」

 プル 「デザート?!」

プルツー「!」

マリーダ「!!」

CA「はい。ハーゲンダッツとケーキをご用意しt

三姉妹「「「ハーゲンダッツで!」」」
 


 CA 「畏まりました……(ガサゴソ……)……あら?……お客様、大変申し訳ありません。ハーゲンダッツが残り二つだけになっておりました……」


プル  「えーっ?!」

マリーダ「くっ……」

プルツー「……」


 CA 「申し訳ございません。ケーキの方でご了承頂けないでしょうか……?」


プル  「うー、二つしかないんだよね……」

マリーダ「(ハーゲンダッツが食べたい……しかし姉さん達に……いや、でも、それでも……私は……!)」

プルツー「なら、あたしがケーキでいいよ」

プル  「えっ」

マリーダ「なっ……」



 CA 「ご理解いただきありがとうございます……では、こちらになります。後ほどコーヒーもお持ちしますので、ごゆっくりお召し上がりくださいませ」ペコリ


マリーダ「ね、姉さん……本当にケーキで良いんですか……?」

プルツー「ふん、なんだって構わないよ」

プル  「で、でも……プルツーの好きなクッキー&クリームだよ?」

プルツー「うるさいって言ってるだろ!要らないと言ったらいらないんだ!」

マリーダ「で、でも姉さん……そんな半べそで言われても……」

プルツー「泣いてなんているもんか!」

マリーダ「姉さん……私達のためにハーゲンダッツを我慢して……(ジーン)」
 


プル  「もー。プルツーってば……」パカッ グリグリ

マリーダ「姉さん……?」

プル  「ほら、マリーダも蓋にちょっと乗っけて分けてあげようよ」

プルツー「……プル……」

マリーダ「はい、姉さん……!」

プルツー「プル……マリーダ……!」

マリーダ「ほら、プルツー姉さん」

プルツー「ふ、ふんだ!食べろって言うなら食べてやるよ!でもあたしのケーキは分けてやらないんだからな!」

プル  「えぇー!?そんなのズルい!」

マリーダ「えっ、プル姉さん、まさかケーキも食べたいから……」

プルツー「そんなことだろうと思ったよ!本当にあたしのことを想ってくれたマリーダには半分……いや、三分の一食べる権利をやろう」

マリーダ「いいんですか姉さん!」ダキッ

プル  「えー!ズルい!ズールーいー!」ジタバタ ジタバタ

客「ゴホン!君たち、旅行は楽しくするものだが、少しはしゃぎすぎじゃないのかね?」

マリーダ「あ……こ、これは、申し訳ない(はしゃぎすぎた……シュン)」

プル  「ごめんなさーい(なにさ、オールバックオヤジ)」

プルツー「すまない、気をつけるよ(白目ないクセにうるさいオヤジだ)」



  



インダストリアル7


プル  「ふーん、ここがインダストリアルかぁ。小さいコロニーなのにずいぶん栄えてるねー」

プルツー「元は工業コロニーだが、アナハイム社の技術校が出来てからは学園都市のようになったからな」

マリーダ「詳しいですね、姉さん」

プルツー「常識だ。それより、調査のことだ。あたしは港でコロニーを出る便の乗客名簿を調べる。プルとマリーダは市街地区で聞き込みだ」

プル  「オッケー!そういうのは得意だよ!」

マリーダ「了解です、姉さん」

プル  「よーっし!じゃぁ早く行こうマリーダ!ぷーるぷるぷるぷるぷるー!」

マリーダ「ね、姉さん、待って!……くっ……///……ぷ、ぷるぷr……ぷ、ぷる……///」

プルツー「マリーダ、無理しなくていいよ……」

マリーダ「……は、はい、姉さん……///」


  


インダストリアル7 市街地区


プル  「この辺りで聞いてみよっか!お店もいっぱいあるし楽しそう!」

マリーダ「姉さん。ミネバ様失踪の件は内密にとのことです。迂闊にお名前を出すわけにはいきません」

プル  「んーそっかぁ。じゃぁ、なんて聞こう?イチャついてるバカップル見ませんでした?とか?」

マリーダ「それもずいぶんと直接的ですね……怪しい人を見なかったか、と言うのはどうでしょう?」

プル  「それってちょっと曖昧過ぎない?」

マリーダ「しかし、まだミネバ様がどうして失踪されたのかはわかりません。一緒にいた誰かと駆け落ちでもしていれば港の出入港の記録にそれらしい名があるはずです」

プル  「あー!わかった!あたし達は事件かも、って線で探すってことね?」

マリーダ「はい」

プル  「よーし、じゃ聞いて回っちゃお!あ、すみませーーん」

通行人「あん、なんだいお姉さん方は?」

プル  「最近この辺りで怪しい人を見かけませんでしたか?」

通行人「怪しい人……?あぁ、そういや見たなぁ。3日くらい前だったかそこの本屋でブツブツ言ってる妙なのがいたよ。金髪の男でよ、確か、汚名挽回がなんとかって、辞書開いてさぁ」

プル 「それ怪しい!ありがとう、お兄さん!」

通行人「なぁに、いいってことよ」

プル  「汚名挽回っておかしいよね?汚名なら返上、のはずだよ。もしかしてその人がミネバ様を誘拐して……」

マリーダ「いえ、姉さん。汚名挽回は、受けてしまった汚名を挽回して評価を取り戻す、という文章のニュアンスでは言葉としては間違っていないようですよ」

プル  「そうか……!犯人は汚名返上なんて言葉をバカにされて、カッとなってミネバ様を……」

マリーダ「落ち着いてください姉さん。こじつけが過ぎます」

プル  「そうかなぁ……じゃぁ別の人を探す……?あ、見て!あの白衣の人とかきっと技術学校先生かなにかだよ!話を聞いてみよう!」
 


白衣男「ブツブツ……ブツブツ……」

プル  「あのーすみませーん」

白衣男「ええい、ザクはいい!ガンダムを写せ!」

プル  「へっ!?」

マリーダ「プル姉さん、離れて!」グイッ

プル  「わわわ!」

白衣男「大丈夫だ、酸素は足りている……ははは、ガンダムばんざーーい!」

 ブツブツ……スタスタ……ブツブツ……スタスタ……

プル  「な、なに、あの人……?」

マリーダ「分かりませんが……頭は普通ではないでしょうね……」

     「ん?君たちは……」

プルマリ「えっ?!」

     「シャトルにいた子どもたちじゃないか」

マリーダ「(シャトルで叱りつけて来た男か……)」

プル  「あぁーーっ!オールバックの白目なしオヤジ!」

マリーダ「姉さん、声に出てます」

ブライト「白目がないからなんだと言うんだ!」
  


プル「  まぁいいや。おじさん、最近この辺りで怪しい人見なかった?」

ブライト「怪しい人……?君たち、ここで何をしているんだね?」

プル  「何って、人探しだけど?」

ブライト「ふむ……なるほど、民間にも話を下ろしていたか、ハマーンめ……余計なことを……」

マリーダ「?!き、貴様何者だ!?なぜ私達の依頼主を知っている?!」

ブライト「申し遅れたな。私はこういう者だ」身分証提示

プル  「えぇーーー!」

マリーダ「まさか……連邦保安局の特別機動捜査隊、ロンド・ベル!」

プル  「お、おじさん警察だったの!?」

ブライト「ロンド・ベルは保安局だ。警察組織のティターンズではない」

プル  「えぇー?違いがよく分からないよ……」

マリーダ「いいですか姉さん。ロンド・ベルは地球、宇宙に限らず犯罪捜査を行う組織で、ティターンズはコロニー圏を管轄する警察組織なんですよ」

プル  「つまり、おじさんの方がすごいってことだ?!」

ブライト「分かってくれればいいんだ」エヘン

プル  「依頼主を知ってる、ってことは、おじさんもミネb……じゃない、えっと、人探しをしてるの?」

ブライト「その通りだ。正式に捜索願が提出されているからな。この件は我々の管轄下にある。民間人は大人しくしているんだ。捜査の妨げになるようなことがあれば、逮捕と言う手段も取らざるを得ないからな」

プル  「た、逮捕ぉ?!何よ、偉そうに!」

ブライト「確かに伝えたぞ。今度また見かけたときには、相応の覚悟をしておくんだな。では、失礼させてもらう」スタスタスタ……

プル  「なによアイツ!えっらそうに!白目ないクセに!」

マリーダ「姉さん、落ち着いてください!」

プル  「なんだよマリーダ!あのおじさんの味方するつもり!?」

マリーダ「そうではありません!でも、もし仮に私達よりも先にロンド・ベルやティターンズがミネバ様を見つけ出してしまうと……」

プル  「……!そうか!成功報酬のお金、もらえなくなっちゃう!」

マリーダ「はい……!私達のハーゲンダッツ風呂の希望の光も消えてしまいます……!」

プル  「ハーゲンダッツ風呂って……それ、冷たいんじゃなぁい……?」

マリーダ「と、とにかく!一度プルツー姉さんのところに戻ってこのことを伝えましょう!」

プル  「うん、そうだね……急ごう!ぷーるぷるぷるぷるー!」ダダダッ

マリーダ「……ぷ、ぷるぷるぷr………………///」タタタッ


  


インダストリアル7 港


プル  「プルツー!」

プルツー「ん?あぁ、どうしたんだ二人とも?」

マリーダ「プルツー姉さん、それが少々困ったことになりました」

プルツー「困ったこと?」

プル  「ティターンズもロンド・ベルも、ミネバ様を探してるんだって!」

プルツー「……!」

マリーダ「先に姫様を見つけられてしまうと、私達の成功報酬がなくなってしまいます」

プルツー「ちっ……めんどうなことになったね……」

マリーダ「姉さん、何か手掛かりは見つかりましたか?」

プルツー「いや、乗客リストにめぼしい物はないな。偽名を使った可能性も考えて、逐一連邦の住民票データと照らし合わせて見たがどれもハズレだ。そっちはどうだった?」

プル  「街にはおかしな人はいたけど、ミネバ様を見かけたり拐ったりするのを見た人はいなかったよ」

プルツー「そうか……だとするとやはり、ミネバ様が自分の意志で姿を隠したと考える方が自然だな……」

マリーダ「やはり、駆け落ちか何かでしょうか……?」

プルツー「可能性は高いな。依頼主のハマーンとか言う教育係が港近くで目撃情報があったと話したのだろう?そうだとするなら、何らかの形でシャトルを使う必要があったと考えられる」

プル  「監視カメラの映像でも見られるといいんだけどね……」

プルツー「あたし達にそんな権限はないし、そんなことはティターンズやロンド・ベルならやっているだろうさ。やつらの先手を行くには、もっと別の手を考える必要がある……」

マリーダ「別の手、ですか?」

プルツー「この記録を見な」バッ

プル  「輸送カーゴの発送記録……?」
 


マリーダ「まさか……カーゴに隠れて移動を……?!」

プルツー「可能性はあるだろうさ。カーゴには生活物資、宅配の荷物、通販会社ジャブローの小包、荷の種類はいくらでもある。でも、この宇宙空間にそうそう送り出さないカーゴがあるんだ」ペラッ ペラッ

マリーダ「どういうことです、姉さん……?」

プル  「あー!プル、分かっちゃった!」

プルツー「マリーダは世間知らずだからな。まぁ、そこが可愛いのだが」ペラッ ペラッ

マリーダ「せ、世間知らずでも常識は持っている!少なくともプル姉さんよりは……!」

プル  「えぇー!?なによ、マリーダのくせにぃ!」

マリーダ「だっ、だってそうじゃないか!私は、ぷるぷる言いながら走ったりはしない!」

プル  「本当は一緒にやりたいの、あたし知ってるんだからね」

マリーダ「や、やりたくなんてない!///あ、あんな恥ずかしいことをどうして私が……私がっ……///」グヌヌ

プルツー「……まったく…ん?あった、見つけた……!」ペラッ

マリーダ「……?これは……生体移送用のカーゴの記録……?」

プルツー「そうさ。本来は動物園に入れる動物やなんかを移送するためのカーゴだけど……それだけに、カーゴ内の酸素濃度や温度管理も出来るシロモノだ。やりようによっては、ビジネスシートなんかよりもずっと快適だろうね」

マリーダ「姫様達はそのカーゴで……!と、届け先は!?」

プルツー「……トリントン……地球だ」

プルマリ「「ち、地球ぅ?!」」


 


トリントン オーストラリア行政区 地球


プル  「うっわぁぁぁぁ!見て、空が真っ青!」

プルツー「地球か……悪くないね」

マリーダ「でも、姉さん。こんなところでどうやって姫様を探すんです?」

プルツー「とりあえずカーゴの届け先に行ってみるさ。そこに手掛かりの一つくらいはあるだろう」

プル  「あーっ!見て!ソフトクリームだって!オーストラリア名産キゥイ味!あたしちょっと買ってくるね!ぷーるぷるぷるぷるぷるぅー!」

マリーダ「あっ!姉さん、待って!」

プルツー「まったく……これから捜査だって言うのが分かっていないのか、プルのやつ」

マリーダ「プル姉さん!バニラ味はありますか!?」タタタッ

プルツー「マリーダ!」

マリーダ「(ビクッ!)は、はい、姉さん……すみません……すぐにプル姉さんを連れて来ます……」

プルツー「あたしはチョコとバニラのミックスだ!とっとと買ってきな!」

マリーダ「……!は、はい、姉さん////!」タタタッ
 



  店員「マイダァリィ」


空港内のベンチ [(プルツー)(マリーダ)(プル)]


プル  「んん!これ、さっぱりしてて美味しい!」ペロペロ

マリーダ「ところでプルツー姉さん。例のカーゴの届け先は?」ペロペロ

プルツー「ああ、ガーベイエンタープライズ社のオセアニア支社のようだ」

マリーダ「ガーベイ・エンタープライズと言えば、あの太陽光発電で有名な?」

プルツー「そうだ」ペロペロ

マリーダ「どうしてそんなところに姫様が?」ジーッ

プルツー「ガーベイ・エンタープライズの会長の娘は、確か姫様と年頃も近い。友達の家に黙って遊びに来た、程度のことかもしれないな」ペロペロ

マリーダ「ふむ……そんな単純なことでしょうか?」ジーッ

プルツー「考えたって仕方ないだろ。とにかく、行って調べてみるんだよ」ペロペロ

マリーダ「そうですね……ロンド・ベルに見つかる前に、私達が発見しなければ」ジーッ

プルツー「……マリーダ」

マリーダ「はい?」ジーッ

プルツー「一口欲しいのか?」ヒョイ

マリーダ「いいんですか!(ハムッ)んん!おいひい!///」

プル  「あー、もう無くなっちゃった……もう一個買ってもいいかな?」

プルツー「やめときな。すぐにタクシーで発つんだから」

プル  「ちぇー」

マリーダ「姉さん、私のを一口あげます」

プル  「いいの!?」

マリーダ「ひ、一口ですよ?全部じゃありませんよ?」

プル  「マリーダってばやっさしぃ!」ガバッ

マリーダ「わっ!姉さん!急に抱き着くな!」グラリ


ボトッ ペチャ


プル  「あっ……」

プルツー「何やってんだよ」

マリーダ「わ……私のソフトクリームがっ……!」

プル  「ご、ごめーん、マリーダ……」

マリーダ「ね、姉さん……マリーダ・クルス、ここまでです……」ガクガクガク

プル  「マリーダ!?」

マリーダ「プルツー姉さんは、プル姉さんをしっかり鎖に繋ぎ止めてください。でないと、彼女は……」ガクガクガク

プルツー「ソフトクリーム落としたくらいで辞世のセリフを言うんじゃないよ」ペシッ


  


ガーベイ・エンタープライズ オセアニア支社 社屋前


 タク運転手「マイダァリ」ブォォン


プルツー「ここがガーベイ社か」

プル  「なんだかずいぶんと物々しい感じがする」

マリーダ「光……すべてを焼き尽くす、浄化の光……(ブツブツ)」トオイメ

プル  「マ、マリーダ……し、しっかり……」

プルツー「放っておきな。それにしても、確かにずいぶんと警備員が多いな。何かあったのか?」

プル  「あそこの守衛さんに聞いてみよう!」


プル  「あのー、すいませーん」

守衛 「ん、なんだ君たちは?」

プルツー「あたし達は、ムンゾにある探偵社の調査員だ。少し聞きたいことがある」

守衛 「見てわかるだろう。今は取り込んでいる。用があるのなら、出直すんだな」

プルツー「……ミネバ様でもいらっしゃったのか?」

守衛 「な、なぜそれを!?」

プルツー「ふん、やはりか。さぁ、ミネバ様をこちらに渡してもらおうか?」

プル  「あたし達、ムンゾの公室から依頼を受けて、ミネバ様の足取りを追ってるんだ」

守衛 「ムンゾの公室……!?い、いや、待て……それはまずい!」

プルツー「隠したって無駄だよ。生体移送用のカーゴがここに運び込まれた記録を見た。ミネバ様はそれに乗っていたんだろう?」

守衛 「……それは……」


    「どうしたの、カークス?」

守衛=カークス「! ロニお嬢様!」
  


ロニ  「…ん?どちら様でしょう?」

プルツー「ムンゾの探偵社の調査員だ。あんたは?」

ロニ  「私はロニ・ガーベイと言います」

プルツー「あんたがガーベイ社の令嬢様か。あたし達はミネバ様を探している。何か知っているんだろう?」

ロニ  「ど、どうしてそのことを!?」

プル  「生体カーゴでここまで来たんでしょ?」

ロニ  「……分かりました……中へご案内しましょう」


* * *


ガーベイ・エンタープライズ オセアニア支社 応接室


プル  「うっわぁー!すっごく豪華!ソファーもふかふかだよ!」

プルツー「騒ぐんじゃない、プル」

マリーダ「それで。ミネバ様はここにいるのだな?」

プル  「あ、復活したんだね、マリーダ」

ロニ  「……まず初めに、ミネバ殿下はここにはいらっしゃいません」

プルツー「……ワケを聞こうか」

ロニ  「確かに、先週末、ミネバ様とバナージをここへ招待したことには間違いありません。カーゴも私が準備をさせました」

プル  「バナージって?」

ロニ  「ミネバ殿下のご学友です」

プル  「駆け落ちの相手だ!」

マリーダ「姉さん!そんなことを大声で言うものではありませんよ!」
  


ロニ  「駆け落ちなどではありません。ミネバ殿下とバナージは、私の主催するパーティーへいらっしゃったのです」

プルツー「ミネバ様をパーティーに?ガーベイ一族とミネバ様とは交流があったのか?」

ロニ  「6年ほど前になりますが、ミネバ殿下がダカールを訪問されたのをご存じでしょうか?」

プルツー「あぁ、確か、連邦政府のお偉いさんの就任式かなにかだろう?パレードもしていたな」

ロニ  「そうです。その際に、私もダカールに居り、財界のツテで父と共に殿下に謁見しました。その折より、親交を結ばせていただいています」

プルツー「なるほど。で、パーティーに呼ばれたミネバ様とその、バナージってのは今どこにいるんだ?」

ロニ  「それが……一昨日の夕方、何者かによって拉致されてしまったのです」

プルツー「なんだって!?」

ロニ  「パーティーが終わり、帰りの便を待つ間、警備の者が市中をご案内差し上げている際のことでした。背後から殴打され昏倒している間に、お二人は銃のようなもので脅され、乗せられた車で走り去ったと」

プル  「……つまり、誘拐、ってこと?」

ロニ  「おそらく」

プルツー「それは確かに一昨日の出来事なんだな?」

ロニ  「間違いようもありません」

マリーダ「姉さん、ということは、依頼を受けたときにはすでに姫様はさらわれたあとだったと……?」

プルツー「そうなるな。だが、あの女は身代金の要求はなかったと言っているんだろう?もしそれが本当なら、誘拐には何か別の意図があるはずだ」

ロニ  「我が社も調査員を派遣して方々を探しているのですが、めぼしい情報も得られず、苦心しています」

プルツー「……一つ聞くが、ガーベイ社はこのことをどこかに報告しているのか?」

ロニ  「……っ!……いえ、していません……」

プルツー「そうだろう。公になれば、ガーベイ社の信用問題だ。責任は必ず追及されることになるだろうな」ニヤリ

ロニ  「……っ!」ギリリ

マリーダ「ね、姉さん、今はそんな話をしている場合では……」

プルツー「そこで、提案がある」

ロニ  「……? どんな提案でしょう?」
 


プルツー「我が社と契約しろ。情報を全部こっちに寄越して、捜索の資金を用立ててくれ。もし万が一、連邦警察や保安局がミネバ様を発見すればガーベイ社の失態が公になる。だが、あたし達に任せてもらえれば、必ず先にミネバ様を見つけ出してムンゾへと連れ帰ると約束しよう。ガーベイ社が関係したことは内密にしておける。悪い取引じゃないと思うけど?」

プル  「うわぁ……プルツー、顔怖い……」

マリーダ「ね、姉さん……」

ロニ  「……必ず、ですね?」

プルツー「出来もしないのにこんな取引すると思うのか?」

ロニ  「……分かりました……。今、契約書を作らせましょう」

プルツー「話が早くて助かるよ」ニマニマ

プル  「なんか脅かして言うこと聞かせたみたい」

マリーダ「“みたい”ではなく、実際にそうなんですよ姉さん」

プル  「そ、そうなの!?」

プルツー「それで。ガーベイ社の持っている情報は?」

ロニ  「そうですね……先ほども言ったとおり、そう多くはありません。犯人は中肉中背のヨーロッパ系の男で、使っていた車はツィマッド社製だったそうです」

プルツー「マリーダ、メモ」

マリーダ「はい、姉さん」パパッ カキカキ

ロニ  「それから……もうろうとする意識で見た出来事だったので、顔の特徴は分からないそうですが」

プルツー「なんでもいい。今はとにかく、情報がいる」

ロニ  「はい。犯人は、金髪に碧眼の男だったようです」

プル  「金髪に」

プルツー「碧眼の」

マリーダ「男?」
 


 


【ナレーション】
ロニが語ったミネバ誘拐犯、「金髪碧眼の男」。

三姉妹は、その正体を突き止めるべく行動を開始する。

しかし三人はすぐに衝撃の事実に気づくのだった。

三姉妹探偵プルズ、次回

「割といっぱいいた」

君は生き延びることが出来るか……?


つづく。
 


次回書き込みは週末に出来たらいいかなと思っています。

出来たらいいな、ほんとにいいなぁ。

ここまでお読みいただき感謝。
 

レス感謝ですー!

続き投下していきます!
 


【ナレーション】

ジオン公室の次期頭首候補、ミネバが誘拐された。

トリントンの地で得た三姉妹は微かな手がかりを頼りに犯人を追う。

しかし、そこに待ち受けていたのはザビ家をめぐる奇怪な人間模様だった。



第二話
「割といっぱいいた」


 



トリントン市街 レストラン「タムラ」



マリーダ「プルツー姉さんはまたあんなことを言って!もし姫様を先に見つけられなかったらどうするつもりなんですか?」モグモグ

プルツー「大丈夫だ、マリーダ。とりあえず、ガーベイ社がロンド・ベルやティターンズに渡さない情報をあたし達が握っているってことは大きい。あいつらに先を越されると契約が無駄になってしまうからな。それに、駆け落ちなら行く先は雲を掴むような物だが、誘拐となると話は別だ」

プル  「どういうこと?」モグモグ

プルツー「考えてもみろ。犯人はわざわざ警備がついているミネバ様を誘拐したのに身代金の要求がないんだぞ?」

マリーダ「た、確かにそれは妙だとは思うけど…」モグモグ

プルツー「一般人のイタズラ目的なら、わざわざ警備付きの要人を拐うなんてことはしない。犯人は、相手がミネバ様だと分かっていて誘拐したに違いないよ」

プル  「そっかぁ!じゃぁ、犯人はミネバ様かムンゾ公室のザビ家に因縁のある誰かってことだね!?」モグモグ

プルツー「そうだな。それと、何でもミネバ様と一緒に居たバナージとか言う男はビスト財団の御曹司らしいからな。そっちについても一応調べた方が良いかもしれない」

マリーダ「なるほど、姫様かバナージのいずれかが目的だとしても、私怨からの誘拐…!で、でもそうなったら姫様達の身が危ないのでは!?」モグモグ

プルツー「それは否定出来ないね」

マリーダ「では、急いでその金髪碧眼の男と言うやつを特定しましょう!」モグモグ

プルツー「ああ、そうだな。あたしは公室のハマーンに連絡を取って、恨みを持っていそうなやつの情報を仕入れる。マリーダ、あんたは確か、ビスト財団に知り合いがいたな?」

マリーダ「はい、姉さん。地球留学している際にお世話になったアルベルト・ビスト先生のことですね」モグモグ

プルツー「よし、ならマリーダはそっちから情報を引き出してくれ。ビスト財団になら多少事情を伝えても構わない。御曹司が誘拐されている可能性があるんだ。そう派手に動いたりはしないだろう」

マリーダ「了解、姉さん」食ベ終ッテシマッタ……


プル  「あたしは何したらいい?」モグモグ

プルツー「プルはあたし達が情報を集めている間に、現場周辺の聞き込みを頼む。事件を目撃しているか、例の手付金のうちから幾らか握らせて現場が写っていそうな監視カメラの映像もチェックできるといいな」

プル  「うん、オッケー!そう言うのは得意なんだから!」モグモグ

プルツー「よし。それじゃあ、食べ終えたらすぐに掛かるぞ」

マリーダ「あ、あの!姉さん!」

プルツー「どうしたマリーダ?」

マリーダ「その…デザートを追加しても良いでしょうか?」

プルツー「……」

マリーダ「……ダメ、ですよね……」

プルツー「マリーダ」

マリーダ「はい、姉さん」

プルツー「あたしはイチゴパフェだ」

マリーダ「は、はい!姉さん……!////」



トリントン 中心街 ホテル「シャンブロ」の一室

プルツーサイド


 ピッピッピッピッ…ピッピッ……トゥルルルル……トゥルルルル……


 ブツッ


ハマーン『……ハマーン・カーンである。誰だ……?』

プルツー「あたしは、プルズ探偵社の副社長、プルツーだ」

ハマーン『ほう、何か進展があったのだな?』

プルツー「ああ。だが少し面倒なことになっている」

ハマーン『面倒なこと? なんだと言うのだ?』

プルツー「ミネバ様はガーベイ社の令嬢主催のパーティに一友人として参加するために、インダストリアル7からトリントンへ降下したようだ」

ハマーン『トリントン……地球だな?』

プルツー「あぁ、そうだ。そのパーティに一緒に参加したのがバナージ・リンクスと言うビスト財団の御曹司らしい。インダストリアル7で一緒だったっていう友達は、たぶん、こいつのことだ」

ハマーン『ビスト財団の御曹司……なるほど、さすがはミネバ様だ…しかし、それだけで話は終わりではあるまい?』

プルツー「ああ、そうだ。パーティを終えたミネバ様は、空港へ戻る途中に何者かによって拉致されたらしい」

ハマーン『間違いないのだな……?』

プルツー「ああ。一昨日のことらしい。あたし達に依頼したあとで、そっちに身代金の要求はなかったか?」

ハマーン『無論だ』

プルツー「だとすると、やっぱり私怨のセンが有力だろうね…サビ家か、ミネバ様本人を恨んでいそうな人間に心当たりはないか?」

ハマーン『ふむ……いないとは言い切れんな……貴殿らにしてもそうだが、何しろ公王様や長兄のギレン閣下は昔から遊興に過ぎるところがお有りだ』

プルツー「そんな話はいい。目撃情報によると、ミネバ様を拉致したのは金髪碧眼の男のようだ。もし私怨を持っていそうな者の中でその特徴に合うやつがいれば、至急こっちにデータを送信して欲しい」

ハマーン『金髪に碧眼の男だと……?』

プルツー「何か知っているのか?」

ハマーン『……ああ、心当たりが無いわけではない。すぐに情報を精査させてデータを送る。確認したら再度連絡しろ』

プルツー「了解した」

ハマーン『ロンド・ベルやティターンズは何も掴んではいないようだ。あやつらは信用できん。くれぐれも、宜しく頼むぞ』

プルツー「ああ、任せな」



同室 マリーダサイド


 ピッピッピッピッ…ピッピッ……トゥルルルル……トゥルルルル……


 ブツッ


アルベルト「アルベルト・ビストだ」

マリーダ「先生、お久しぶりです、マリーダです」

アルベルト「おぉ!マリーダ!どうしたんだい、突然電話なんてかけて来て」

マリーダ「実は、先生に聞きたいことがあり、電話しました」

アルベルト「私に聞きたいこと? あぁ、わかったぞ。大丈夫、僕はまだ独身だ。心配することはないよ」

マリーダ「いえ、そういうことでもそういう気もありません」

アルベルト「相変わらずキミは照れ屋だな」

マリーダ「……っ! そうではなく、あの、先生。先生は、バナージ・リンクスという少年をご存知ですか?」

アルベルト「あぁ、バナージだね。僕の腹違いの弟だよ」

マリーダ「そうだったのですか……!」

アルベルト「彼がどうかしたのかい?」

マリーダ「実は……バナージがムンゾ公室のミネバ姫様とともに誘拐されたようなのです」

アルベルト「なんだって!?」

マリーダ「そのことで、ビスト財団に犯人からの連絡が入っていないかをお聞きしたいと思い、連絡しました。それ以外の他意はありません」

アルベルト「……昨日、親父とあったけど何も言っていなかったぞ?」

マリーダ「そうですか……しかし、ことがことだけに、もしかするとビスト財団に私怨のある者の犯行かもしれません」

アルベルト「うちの家系に私怨か……ありえない話じゃないね」

マリーダ「私たちは今、その事件についての調査をしています。できたら、ビスト財団を敵視するような者のリストをいただけると助かります」

アルベルト「よし、わかった。すぐにマーサ叔母さんに連絡して情報を集めてもらうよ」

マリーダ「……は、はい、よろしくお願いします」

アルベルト「どうしたんだい、マリーダ? 様子がおかしいぞ?」

マリーダ「いえ、変な電波を受信しそうになっただけです。心配には及びません」

アルベルト「ははーん、さては電話を切るのが寂しくなっt

マリーダ「では、情報の件をよろしくお願いします」

アルベルト「マリーd


 ブツッ ツー ツー ツー ツー


マリーダ「……」

マリーダ「………くぅっ///」

プルツー「なに赤くなってるんだ、マリーダ?」

マリーダ「ね、姉さん!なななななんでもない!」

プルツー「?」



 



プルサイド

トリントン 中心街



プル  「事件があったのは、確かこのあたりのはずだったよね……こういうのは、お店の人とかに聞くのが一番かな……」

 キョロキョロ

プル  「あんまり人通りは多くないみたい。でも、見通しは良いからきっと事件を見た人もいるはずだね!よし、あのお店の人に聞いてみよう!」



[喫茶 エグザム]


 カランコロンカラーン


女店員 「いらっしゃいませ」

プル  「こんにちはー」

男店員 「…………ご注文は?」

プル  「あ、えっと……オレンジジュース!」

男店員 「…………了解した」

プル  「(うぅ、なんだかこの人暗そうだよ?話しかけても大丈夫かなぁ…?)」

男店員 「…………お待たせした」

 オレンジジュース コトリ

プル  「(と、とにかく聞かなきゃ…!)」

プル  「あ、あの!一昨日表の通りで何か騒ぎあったでしょ?」

男店員 「…………?…………さぁ」

プル  「その、えっと……誘拐事件とか、そういうのがあったって聞いたんだけど……」

男店員 「…………心当たりはないな」

プル  「え、そ、そうですか……えと、でもぉ……?」

男店員 「………………申し訳ないが、何も見てはいない」

女店員 「もう、ちょっと、ユウ!」パタパタ

男店員 「……!」
 


女店員 「ごめんなさいね。この人、おしゃべり得意じゃないんです」

プル  「(ほっ)あ、ううん!平気だよ!」

女店員=マリオン「私はマリオン。彼はユウ・カジマ。あなたは、警察の方でしょうか?」

プル  「あたしはプルだよ!ムンゾで調査会社の社長してるんだ!」

マリオン「へぇ、探偵さんなんですね」

プル  「まぁ、あたしは名前だけで、ほとんどは妹達がうまくやってくれてるだけなんだけどね」

マリオン「そうなのですか。それで、何かを調べてらっしゃるんですか?」

プル  「うん、一昨日、表の通りで誘拐があったって聞いて、それを調べてるんだ」

マリオン「誘拐、ですか……そんな話は確かに聞いていませんね……ユウ、何か変わったことがなかった?」

男店員=ユウ  「…………救急車両は見たな」

マリオン「あ、そういえばそうね。一昨日の昼過ぎに、救急車が一台、すぐそこに止まったんですよ」

プル  「(きっとガーベイ社の社員の人のためだ…!)」

プル  「その前くらいに、怪しい人とか、怪しい車を見なかった!?」

マリオン「うーん、見かけてはいませんね……」

ユウ  「…………何もなかったな」

プル  「そっかぁ……おかしいなぁ……銃を使ってたって話だから、ちょっとした騒ぎになってもおかしくはないと思うんだけど……それとも、そうならないようにきちんと準備でもしてたのかなぁ……」
 


プル  「ねぇ、それじゃぁ、ここ一週間くらい、決まった時間に来るお客さんっていなかった?」

マリオン「お客さんですか?……あ、そういえば……!」

プル  「いるの!?」

マリオン「はい。そういえば数日続けていらっしゃったお客様なら」

プル  「どんな人だった!?」

マリオン「マスクとサングラスをつけていて、お顔までは分かりませんでしたが……金色の髪の男性でしたね」

プル  「金髪の男……!」

マリオン「ねぇ、ユウ。あの人、カウンターに座ってたよね?何か見なった?」

ユウ  「ふむ………………………………」

プル  「なんでも良いから教えて!その人が犯人かもしれない!」

ユウ  「……………………………………支払いのときに、チケットが見えた」

プル  「チケット!?」

ユウ  「ああ…………………シャトルのチケットだ……ルウム行きだったな」

プル  「ル、ルウムぅ!?」


 





二時間後

トリントン 中心街 ホテル「シャンブロ」の一室



プル  「ただいまぁ」

プルツー「む、早かったな。何か有力な情報はあったか?」

プル  「うん、それなりに。そっちはどうだった?」

マリーダ「こちらも、ザビ家、ビスト家に関わる疑わしい人を絞り込んだ」

プル  「仕事早ぁい!じゃぁ、さっそく報告会だね!」

プルツー「その前に、プル。その手に持っている箱はなんだ?」

プル  「あ、これね!聞き込みで入った喫茶店のケーキがすごく美味しかったから、二人の分も買ってきたよ!」

マリーダ「ケ、ケーキ!?」ピクン!

プルツー「マリーダ。すぐに紅茶だ」

マリーダ「了解です、姉さん!」パパッ


 コポコポ コポコポ


 



 コポコポ コポコポ


プルツー「じゃぁ、プルの報告から聞こうか。これは美味しいな」モシャモシャ

プル  「美味しいでしょ!?えっと、事件現場の前にあった喫茶店の人の話だと、そこにここ数日連続で来てた金髪の男がいたんだって」モシャモシャ

マリーダ「美味しい…///」モシャモシャ

プルツー「下見をしていた可能性がある、か」モシャモシャ

プル  「うん、顔は隠してて分からなかったみたいだけど、お財布の中にルウム行きのチケットが入ってたって店員さんが言ってたよ」モシャモシャ

マリーダ「本当だ。中にシロップが入っていますね、姉さん」

プルツー「ルウム……?なるほど……もしその男が犯人だとすれば、足取りの手がかりになるな」モシャモシャ

マリーダ「そうですね、この風味が手がかりに……このあっさり感は、隠し味の塩ではありませんか?」

プル  「でしょ!? で、プルツー達の方はどうだったの?」モシャモシャ

マリーダ「やはりそうですよね。ん、これはミントも入っていませんか?」

プルツー「ああ。こっちは、ザビ家とビスト家から送られてきたデータから、身体的特徴を頼りに容疑者を絞った。これがリストだ」モシャモシャ

マリーダ「ザビ家が絞って送ってくれた紅茶なんですか?」

プル  「うぅ、けっこういっぱいいるね」モシャモシャ

マリーダ「ズズズ……ん、この紅茶もよく合う」ズズズ…

プルツー「ああ。だが、まだ大雑把だな。特徴で選び出しただけに過ぎない」モシャモシャ

マリーダ「そうですか?」

プル  「そっか。関係性を整理して、合いそうなやつを探せばいいんだね」モシャモシャ

マリーダ「紅茶にも種類がありますからね…さらに美味しくするためには確かに種類の厳選はしておくべきですね」モシャモシャ
 


プルツー「プルはそっちを頼む。あたしは、この山に手を付けるよ」モシャモシャ

マリーダ「それなら、私はキッチンにあったダージリンというものを調べてみます」スック

プル  「……」

プルツー「……」

プル  「プルツー」

プルツー「なんだ?」

プル  「マリーダのケーキ没収」

プルツー「了解だ」サッ

マリーダ「!! な、何をするんだ姉さん!」

プルツー「あんた今全然話を聞いていなかっただろ!?」

プル  「真剣にやってるんだからマジメにしてよ!」

マリーダ「な、何を言っているんだ、姉さん達!私はちゃんと聞いていたぞ!?」

プルツー「なら、これから何をするか言ってみなよ!」

マリーダ「このケーキに合う紅茶を探すんだろう!?」

プル  「……」

プルツー「……」

マリーダ「……?」

プル  「残念。没収ートです」

マリーダ「なっ……!?」

プルツー「恨むんなら自分の卑しさを恨むんだね」

マリーダ「そんな……! 姉さん!!」ウルルッ

プルツー「そんな顔したって無駄だよ!」

マリーダ「ううぅ……くっ………」ポロポロポロ.....

プル  「あっ」

プルツー「泣いた……」

マリーダ「ごめんなさい、姉さん達……ちゃんと話を聞いてませんでした……」エグエグ

プルツー「まったく……仕方のないやつだ……頼りにしているんだから、頼むぞ」

マリーダ「(コクン)」

プル  「(なにこれかわいい)」
 


プルツー「ほら、じゃあケーキ返すから、このリストをチェックして、動機がありそうなやつをピックアップするんだ。ちゃんとやれるな?」

マリーダ「はい、姉さん!」ムシャムシャ

プル  「立ち直りが早い……!」

プルツー「プルも頼むぞ」

プル  「はぁい」

マリーダ「……」ペラ ペラ

プル  「……」ペラ ペラ

プルツー「……」ペラ ペラ

マリーダ「……ジャン・リュック・デュバル…公用車納品のコンペに負けたツィマッド社の社員……動機としては薄い、か……」ペラ ペラ

プル  「うーん、トーレスは……違うかなぁ……良い人だし」ペラ ペラ

プルツー「ジョニー・ライデン……? 元キシリア様の護衛官……む、木星遠征に参加中か。犯行には及べないな……」ペラ ペラ

マリーダ「……! そうか、この男……!」

プル  「……あ。そっか、そうだった!」ペラ ペラ

プルツー「……む、やはり、この男も、か。これは間違いないな……」ペラ ペラ

マリーダ「姉さん達!この男が犯人に違いない!」

プル  「あたしも見つけた!こいつがきっと犯人だよ!」

プルツー「さすがにあんた達もそう思うか。それなら、犯人は決まりだな。犯人は……」
 


プルツー「シャア・アズナブルだ!」
プル  「グレミーだよね!」
マリーダ「リディ・マーセナス!」

三姉妹「…」

三姉妹「え?」

プルツー「いや、シャアに違いないだろう?!やつの父親はムンゾの前首相で、当時シャアはザビ家の教育係の一人だったのが、突然解雇された挙句に父親もそのことで辞職に追い込まれたんだぞ?」

プル「それならグレミーだって同じだよ!グレミーはミネバ様の従兄のはずなのに今は公室から外されてるんだよ?きっと恨んでるに違いないよ!」

マリーダ「その二人も一理あるが、リディ・マーセナスは連邦議員の息子で、かねてから姫様にしつこく言い寄っていると噂が絶えなかった。状況的に、バナージと姫様が一緒にいるところを見たストーキング中のリディが発作的に犯行に及んだのかも知れない」

三姉妹「……」

プルツー「これは……」

マリーダ「ザビ家かミネバ様を因縁のある金髪碧眼って」

プル「なんか、割りといっぱいいたね…」

三姉妹「……」

プルツー「……よ、よし、急いで三人の動向を調べるぞ!」

マリーダ「わ、わかりました姉さん!」

プルツー「プル、すぐに出発の準備だ!」

プル  「えぇー!?夕飯はぁ!?」

プルツー「今日の夕飯よりも明日のハーゲンダッツ工場!」

マリーダ「いや、姉さん、だからハーゲンダッツ工場は無理なんじゃないかな……」

プルツー「うるさい!マリーダはあたしと動向の調査!」

マリーダ「りょ、了解です!

プル  「はぁい」ゲンナリ




 


【ナレーション】

ついに犯人に目星をつけた三姉妹。

三人の容疑者を調査すべく宇宙中を駆け回る。

はたして、無事にミネバとバナージを救出することができるのか?

三姉妹探偵プルズ、次回

「追跡!三人の容疑者!」

君は、刻の涙を見る……


つづく

 


次回アップ、週明けにでも!
 


タムラって塩足りないの人だっけ?



マリーダのアホの子化が止まらない。末っ子だからってあんまりだwww
原作とのこのギャップにキャタさんのマリーダに対する愛が見てとれるね。お父さん!

あの世界の金髪野郎にはクズが多いのか。ジェリ坊がまともに見えてきたwww

あと小杉さんも乙。ありがとうwww

レス感謝です!

>>43
そうですね、タムラは塩が足りないの人ですw

>>44
マリーダさんがかわいすぎで辛いです…バナージ撫でてましたが、マリーダさんを撫でてあげたいですw
ヘンケン艦長に聞こえる、と言われてから書き手的にもヘンケン艦長にしか思えなくなったので変えてみました!w


では、続きです!
 




【ナレーション】

リディ・マーセナス、グレミー・トト、シャア・アズナブル。

金髪碧眼かつザビ家への因縁深い三人に目星をつけた三人は行動を開始した。

三人がまず向かったのは、同じ地球に住んでいた一人の男の住処であった。



第三話

「追跡!三人の容疑者!」


 


北米行政区 アメリカ ジョージア郊外




 ガサガサ ガサガサガサ

マリーダ「プルツー姉さん、ここがそうなんですか?」ガサッ

プルツー「間違いないよ。ここがマーセナス家の屋敷だ」ガササッ

プル  「草がチクチクして痛いよ」ガサガサ

プルツー「我慢しな」

プル  「でも、犯人候補の一人が地球にいてラッキーだったね」

プルツー「ミネバ様は地球で誘拐されたんだからな。まずは近場の人間を疑うのが当然だ」

プル  「一千万ドルもらったら何買おうかなぁ」

マリーダ「まずはジュドーさんとマスターに借金を返すのが先です、姉さん」

プルツー「シッ!静かに、何か来る!」


 ヒヒーン  パッカパッカ パッカパッカ


マリーダ「あれは……!」

プルツー「リディ・マーセナス……見つけたよ!」

マリーダ「リディ・マーセナス…?」ビクンッ

プル  「あれ? マリーダ、どうしたの?」

マリーダ「あいつは……あいつは……ブツブツ……ブツブツ……」メラメラメラ…

プル  「マリーダ……!? どうしたの?! なんかオーラ出てるよ!?」

プルツー「いいか、プル!作戦通りあんたが出ていって迷子のフリして足止めしろ!その隙にあたしとマリーダで後ろから取り押さえる!」

プル  「え、いや、でも、なんかマリーダの様子が変で……」

マリーダ「…ブツブツ……シィ……ンシィ……」

プルツー「よし、今だ! 行け、プル!」

マリーダ「バンシィィィィィ!!!」クワッ!


プルプルツー「「!?!?」」

 


リディ 「な、なんだ? い、今、声が……」

マリーダ「うおぉぁぁぁぁ!!!」ガサガサガサッ ダダダダッ

プル  「ちょ、マリーダ!?」

リディ 「なんだ……? どこからか……?」


ゥ ォ ァ ア ア ア ア ア゛ア゛ア゛!!!


リディ 「なっ……!?」

マリーダ「喰らえぇぇ!!」ブンッ

リディ 「(ボコォ!) グフっ!?」ドサッ

マリーダ「ふぅー、ふぅー、ふぅー……」

プル  「ちょっとマリーダ! 急にどうしたの!?」

マリーダ「この男は敵……この男は、敵ぃぃぃ!!」

プル  「プルツー!マリーダが違う世界から変な電波広ちゃってるよ!」

プルツー「放っておきな」ガサガサガサ
 


リディ 「くっ…!」

プルツー「あんたがリディ・マーセナスだね? 少し聞きたいことがある」

リディ 「い、いったいなんなんだあんた達は……!?」

プルツー「しがない調査会社の調査員さ。あたし達は今、ある要人の行方を追っている。その操作線上にあんたが浮上したんで、任意の事情聴取をさせてほしい」

リディ 「任意だと…?! これのどこがにn――

プルツー「……マリーダ、やれ」

マリーダ「うおぉぉぉ!(ドガッ ! メキッ! バシッ!)」

プル  「ちょっと、マリーダ! リディさん死んじゃうよ?!」

マリーダ「なぜだ、なぜ私が死んで、私を殺したお前がシレッと改心してめでたしめでたしになっている!? それでも男か! 男ならなぜカツやハサウェイを見習わなかったんだぁぁぁ!」

プル  「あぁ、そういう……」

リディ 「グハッ……!や、やめろ……ヘブッ……!」ヨロヨロ…

プルツー「リディ・マーセナス。任意で話をするか?」

リディ 「だからこれのどこがに――

プルツー「マリーダ、まだ足りないようだ」

リディ 「わ、分かった! 任意でいい! 話せばいいんだろ!?」

プルツー「ふん、最初からそうすればいいんだよ」

プル  「いや、最初からって言うか、最初の一発を問答無用でマリーダが叩きこんだよね……」

プルツー「何か言ったか、プル……?」

プル  「あ、う、ううん、プルなぁんにも言ってないよ!」

プルツー「マリーダ、もう十分だ」

マリーダ「了解、マスター(プスン ヘナヘナ…)」

プルツー「誰がマスターだ、やめろ」
 


リディ 「くっ……それで、俺に何の用だ……?」

プルツー「貴様はミネバ様を知っているな?」

リディ 「あ、あぁ、知っているが……」

プルツー「3日前の昼頃は何をしていた?」

リディ 「み、3日前…?その日は確か、親父の党の公聴会の手伝いでニューヤークにいた……」

プルツー「……嘘ではないな……?」

リディ 「ほ、本当だ、調べて貰えれば分かる。俺は受付と挨拶役を担当していたから、参加者にも大勢会っている」

マリーダ「姉さん、この男が犯人に違いない。拷問に掛けて吐かせよう……」ゴゴゴ……

プルツー「マリーダ、やめな。ニューヤークにいたのでは、飛行機での往復は無理だな。大気圏外へ出る弾道シャトルでも、往復には半日掛かる。こいつはシロだよ」

プル  「なぁんだ、ハズレかぁ」

プルツー「よし、これで地球に用事はないね。すぐにルウムに向かうぞ。ここからならケープカナベラルの打ち上げ港が近いな」

マリーダ「すぐにチケットを手配します、姉さん」

プルツー「ビジネスシートだぞ、マリーダ」

マリーダ「了解」

プル  「よぉし、行こう!急がなくっちゃ!」

リディ 「おい、待て!」

プルツー「なんだよ、あたし達忙しいんだ」

リディ 「お前達はなぜミネバを探している? 彼女に何かあったのか?!」

プル  「あっ、えーっと、それは……」

マリーダ「(プル姉さん、あまり事実を公にするのはまずい……!)」

プル  「(わかってるよ!えっと、なにか言い訳考えないと…!)」

プルツー「(あ、あたしに任せな……)」

プルツー「……か、駆け落ちの噂が出ている。なんでも、バナージとか言うのと一緒らしいな」

マリーダ「(姉さん!それもある意味スキャンダラスでまずいのでは!?)」

プルツー「(ええい、うるさいよ!)」

リディ 「か、駆け落ち……? バナージと……ミネバが……?」

プルツー「そ、そういうことだ。そんなことを公室が許可するはずもないからな。依頼を受けて、あたし達はミネバ様を連れ戻さなきゃならないんだよ。次の容疑者を洗うから、これで失礼するよ」

リディ 「か、け、お、ち……?」

プル  「……?」

リディ 「……ジ………ァジ……ブツブツ…ブツブツ……」

プル  「あれ、リディさんどうしたの……?」

リディ 「バナァァァァァジィィィィ!!!!」

プル  「うわぁっ! プルツー! リディさんおかしくなったよ!」

プルツー「放っておけ。行くぞ、マリーダ」バッ

マリーダ「はい、姉さん!」ダダダッ

プル  「あーん、待ってよ! ぷるぷるぷるぷるーっと!」テテテテ


リディ 「バナァァァァァジィィィィ!!!!」


 




ルウム首都バンチ・ミランダ行き シャトル内


  CA「機内食です、どうぞ」

  CA「コーヒーのお代わりいかがですか?」

  CA「はい、お客様、毛布ですね、すぐにお持ちします」


プルツー「それにしても…ルウムか……」カシャカシャ ピコピコ

マリーダ「どうしたんです、姉さん?」

プルツー「いや、わざわざ地球に降りた翌日に、こうしてインダストリアル7のあるルウムに戻ることになるとは思わなかったな、と思ってね……む、ようやくボスだ」カシャカシャ ピコピコ

マリーダ「確かにそうですね……ですが、収穫はありましたよ」

プル  「うわっ……ちょ、ちょっと見てマリーダ……!」

マリーダ「何ですか、プル姉さん?……なっ……あ、あれは……?!」

プル  「す、すごいね…メニューを見たときにはまさかと思ったけど…」

マリーダ「ね、姉さん、プルツー姉さん、大変です……」ユサユサ

プルツー「なんだ、マリーダ? 今ボス戦で忙しいんだ、あとにしてくれよ」ピコピコ カシャカシャ

マリーダ「でも、その……あの、機内食が……」ユサユサ

プルツー「うん?なんだって言うんだ?」

マリーダ「き、機内食が……コースです……」

プルツー「コース?」

マリーダ「ほら、あれを見てください!」チラッ チラッ ユサユサ

プルツー「あぁ、もう!なんだって言うん、だ、よ…………な、なんだ、あれは……?」

プル  「あたし知ってる!あれ、前菜って言うんでしょ?」

プルツー「まさかコースっていうのは、あの順番に料理が出てくるあれか……?」ソワソワ

プル  「そうだよ!あたしグレミーのところで食べたんだから!」

マリーダ「グレミー・トト……私は短い間しか関わりはありませんでしたが、姉さん達はしばらく一緒にいたんですよね?」
 


プルツー「まぁな。理解のしようによっては兄みたいなもんだよ」ソワソワ

プル  「あたし、グレミーはガミガミ言うからきらーい」

プルツー「そう言うな。グレミーはグレミーなりに、あたし達にも公室然とした立ち振る舞いを身につけて欲しかったんだろうさ」ソワソワ

プル  「でもー!料理の食べ方とか順番とかいちいちうるさいんだよ!美味しいものは美味しく食べるのが一番美味しいに決まってるでしょ」

マリーダ「そう言えば、私も細かな作法について教わった記憶があります。しかし、公室然とした振る舞いがなぜ私達に必要なのですか……?」

プル  「えっ?」

プルツー「マリーダ、それは何かの冗談か?」

マリーダ「えっ……いや、だって、どうして私達がそんな高貴な作法を学ばねばならないというのですか……?」

プル  「マリーダ……嘘でしょ?」

プルツー「いや、待て……そうか、マリーダはずいぶんと小さい頃から私立ガンシェール学園の寮生活だったり地球留学に行ったりしていたからな……その辺りの事情には疎いか」

マリーダ「……?」

プル  「そっかぁ、マリーダはあたしたちとは長いこと離れ離れだったもんね。仕方ないよね」

マリーダ「い、いったいなんだと言うんです、姉さん……?」

プルツー「……あたし達姉妹の父親は、公室の長兄、ギレン・ザビなんだよ」

マリーダ「…………はい?」

プルツー「グレミーに関しては、父親はギレン・ザビだとも現公王のデギン・ザビだとも言われてるらしいが、実際のところは定かではない」

マリーダ「……………いや、そんな……私達が公室の血縁だと言うんですか……?」

プルツー「そうだ。ミネバ様は従姉妹に当たる」

マリーダ「でも……だ、だって母さんは、父親は蒸発したって……」

プル  「そりゃぁ、公室の長兄が未婚の一般市民との間に三つ子作ったなんて言えるわけないもんね」

プルツー「風体こそ難ありだが、その点、ミネバ様のお父上のドズル様は誠実で人柄良い。ミネバ様を次期頭首としているザビ家の判断もあながち間違いではないよ」

プル  「グレミーも女好きでちょっと変態っぽかったもんね。血筋ってこわーい」

プルツー「そう言う関係でもなければ、公室の教育係が内密にあたしたちのところにミネバ様の捜索依頼なんて寄越して来るはずがないだろう……?」

マリーダ「……まさか……私達の出自にそんな秘密が……」

プルツー「まぁ、それはさておき、容疑者の話だ」
 


プル  「そうそう!絶対グレミーが怪しいって!あいつ、あたし達だけじゃなくって、ジュドーの妹とかジュドーの彼女とかにも手を出そうとしてたんだから!」

プルツー「なぜそうもジュドーの周りの女ばかり……いっそ素直にジュドーにアタックすればいいんじゃないか?」

プル  「それは……ジュドグレなのかグレジュドなのかによるかなぁ……って、やめてよそう言うのぉ!」

マリーダ「私達が……公室の血縁……」ブツブツ

プルツー「冗談だ。だが、あたし達自身の事を考えてもグレミーが何かをしでかす可能性は低くはないね」

プル  「でしょ?!」

プルツー「グレミーがザビ家とどういう約束で出自を隠してるのかは分からないが、そういう事とグレミーの趣味の両方を満たすためにはミネバ様はうってつけだった……そう考えるとグレミーは限りなく黒に近いな……」

マリーダ「公室の血縁なのに、どうしてこんなに貧しい暮らしを……」ブツブツ

プル  「うん、だから、次はまずグレミーのところへ行くのが良いと思う」

プルツー「確かになそうだな。グレミーが社長をしているアクシズ移動遊園地もちょうどルウム近くを通る軌道に入る。もしかすると偶然ではないかも知れない」

プル  「うん……ミネバ様はきっとそこにいるよ……!」

マリーダ「姉さん、一つ考えがあります」

プルツー「なんだ、マリーダ?」

マリーダ「姫様達を見つけたら、身柄をこちらで確保し、それを元にザビ家と返還交渉を行い約束以上のお金をせしめる、と言うのはどうでしょう……?」

プルツー「マリーダ……」ハァ…

プル  「マリーダ、それじゃぁあたし達が悪い人になっちゃうよ……」

マリーダ「ですが!どうして私達はこんなに貧乏なんですか!もう少し生活の補償があっても良いはずです!」

プル  「どうして貧乏か、って、そりゃぁ……ねぇ……」

プルツー「あぁ、まぁ、言いにくいけどね……」

マリーダ「な、なんなのです、姉さん達……?貧乏には何か理由が……?」
 


プル  「……」チラッ

プルツー「……」コクン

マリーダ「ね、姉さん達……?」

プルプル「「(あなた)(あんた)の奨学金と留学ローンの返済のせいだよ」」

マリーダ「……!? そ、そんな……まさか……」

プルツー「あんたに気を使わせないようにって黙ってたんだけどね……」

マリーダ「確かに姉妹の中でも私だけ私学に行って、姉さん達は公立のアーガマ高校だったけど……でも、でもどうして……!?」

プル「プルツーと話し合って決めたんだよ。マリーダにはあたし達の自慢の妹だから、マリーダだけでもちゃんとした学校に行って立派になって欲しいね、って…」

マリーダ「ね、姉さん達……!」ウルウル

プルツー「だからって気なんか使うんじゃないよ。あたし達はあんたに幸せでいて欲しいって思うだけなんだからな」

マリーダ「姉さん達……私は、マリーダは、素晴らしい姉さん達の妹で幸せです……!」

プル  「マリーダ……」キュンッ

プルツー「まったく、仕方のないやつ……///」

マリーダ「姉さん達!!」ガバッ

プル  「マリーダ!」ダキッ

プルツー「甘ったれだな、ほんとうに」ダキッ

マリーダ「姉さん達……私は、姉さん達の思いを無駄にはしません……!もっと頑張ります、立派になって見せます……!」エグエグ

プルツー「無理はするな。今のままだって、あんたはもう十分立派だよ(毎月ウン万もゲーム買ったり課金したりしてるなんてとても言えない)」

プル  「そうだよ、マリーダはあたし達の自慢の妹だよ(毎月ウン万もスイーツバイキングとシャングリラへの交通費に使ってるなんて絶対に言えない)」

マリーダ「ありがとう……ありがとう、姉さん達……!(姉さん達大好き……!)」エグエグ



 



アクシズ移動遊園地 正門


マリーダ「ここがアクシズ……どこか懐かしい感じがしますね……」

プルツー「グレミーの屋敷もこの衛星にあるからね。世話になっていたときのことを覚えてるんだろう」

プル  「うぅ、あたしなんだかいやーな気分になってきた……」

マリーダ「確かアクシズは、地球衛星軌道に乗っているんでしたよね?」

プルツー「そんなところだ。コロニー近くを周回しながら客を集めてる。わざわざ近場に出向いてくれる遊園地なんて、地球圏のどこを探しても他にはないだろうね」

マリーダ「なるほど……しかし、どうやってグレミーに会いに行くのです? 社長ともなると警備も厳重では?」

プルツー「心配ない、手は打ってある。ほら、行くよ」

マリーダ「は、はい、姉さん」


  券売嬢「ようこそ、アクシズランドへ!」


プルツー「先日、社長にメールで話をしてアポをもらっているのだが、園の事務室へはどう行けばいい?」

  券売嬢「え? あ、そのえぇっと……アクシズランドの社長はみんな大好きダカランダックですので、今日はショーの予定がギッチリでお話する時間は……」

プルツー「そんな世界観設定の話はどうでもいい。職員入り口なり事務所なりがあるだろう?」

  券売嬢「あ…あっ!な、なるほど、裏方のキャストにご用事ですね!それでしたら、こちらのパスを掛けて、入ってすぐのところにいる魔法使いに伝えて下さいませ!」

プルツー「ふん、まどろっこしいんだよ」フンス

プル  「うわぁ、すっごくドライ……」

マリーダ「アクシズランドは夢と魔法の国なのに……」

プル  「ダカランダックの中に人が入ってるなんて言っちゃうタイプだよね」

マリーダ「ゴットンドッグの中にも入ってるとか言うんでしょうね……」


* * *
 



マリーダ「ランドの中にこんな空間があるのですか……」キョロキョロ

プルツー「そうか、マリーダは来るのは初めてか」

プル  「私たちは昔何度か通ったことがあったよね」

プルツー「そうだな。あの頃はまだ幼かったから、ドキドキしながら通ったものだ」

マリーダ「なるほど、そうだったんですね……あ、ところで姉さん。グレミーにはどんなメールを送ったんですか?」

プルツー「なんてことないよ。経済学部の女学生を気取ってグレミーの経営論についてインタビューしたいって軽い感じで打っただけだ」

マリーダ「軽い感じ……それでよくグレミーは時間を割いてくれましたね」

プルツー「ふん、逆だよ。そう書いておけば、グレミーのことだ。レディーとしてなってない、なんて思って指導しようと思うだろうさ」

マリーダ「確かに……!」

プルツー「そら、あったよ、社長室」

マリーダ「ここに姫様がいるかも知れないんですね……」

プル  「作戦はどうするの?」

プルツー「リディのときと同じだ。プルが気を引いて、あたしとマリーダで取り押さえる」

マリーダ「了解です、姉さん」

プル  「それで大丈夫? プルツー、グレミーに厳しく言いにくいんじゃないの?」

プルツー「……もしものときは、頼むよ」

プル  「うん、まっかせといて!」

プルツー「よし、行くぞ……」

プルマリ「「(ゴクリ……)」」

プルツー「突撃ー!!」

ガタンッ ドタドタ

グレミー「なんだ? 騒々しい!」

プル  「グレミー発見!」
 


グレミー「プル!? プルじゃないか!」

プル  「ふんだ!何よ、白々しくしちゃってさ!」

グレミー「なんだその言葉遣いは!久しぶりに会ったと思えば、私が教えたレディーとしての嗜みを忘れたのか!?」

プル  「そんな知らないよーだ!このマザコン!」

グレミー「マ、マザコン……!?」

プル  「(チャンスだよ、プルツー!)」

マリーダ「姉さん、行きましょう……!? プルツー姉さん……?」

プルツー「くっ……ダ、ダメだ……か、体が言うことを効かない……!」

プル  「ダメみたい……作戦変更!マリーダ、突撃!」

マリーダ「は、はい! プル姉さん!」

グレミー「なんだ、プルツーにトゥエルブも一緒なのか。だが、揃いも揃ってはしたない! 君達はもっとレディーとしての自覚をーー

プル  「でやぁぁぁぁ!」

マリーダ「はあああぁぁ!」

グレミー「!?」


ドゴッ メキッ ドサッ


グレミー「ゲフッ……」ガクガク…

プルツー「グ、グレミー!!」ダダダ
 
グレミー「い、いったいなんの真似だ……?」

プルツー「グレミー、グレミー!しっかり!」ダキッ ウルウル

マリーダ「プル姉さん……プルツー姉さんがおかしい」

プル  「刷り込みって怖いよねぇ……」

グレミー「プルツー……やはりお前は……良い子だな……」

プルツー「グレミー……///」ウルウル

プル  「うえっ、なんか気持ち悪っ……」

マリーダ「姉さん……おいたわしい……」
 


プル  「とにかく、グレミーから聴取しないと……」

マリーダ「プル姉さん、ここは私に任せて下さい」


ツカツカ


マリーダ「グレミー・トト。聞きたいことがある。正直に話すんだ」

グレミー「トゥエルブ、なんて言葉遣いだ!もっと淑女としての自覚を持ちなさい!」

マリーダ「そのような御託を聞いているときではない。姫様をどこへやった?」

グレミー「姫様……? なんのことだ……?」

プルツー「そうだ! グレミーがそんな事を知っているはずないだろう!」クワッ

マリーダ「……」

プル  「……」

マリーダ「……プル姉さん、やりづらいんで、プルツー姉さん退場させてください」

プル  「うん、めんどくさいね。任せて」ガシッ ズルズル

プルツー「や、やめろ! 何するんだ、離せ!」ジタバタ

マリーダ「コホン……し、しらばっくれるな!ザビ家の公女、ミネバ様のことだ!」

グレミー「ミネバ様だと……!? ミネバ様の身に何かあったのか?!」

マリーダ「とぼけるのは大概したらどうだ!? 金髪碧眼男が姫様とご学友を連れ去った調べは付いている!」

グレミー「……!? そうか、私が犯人だと言いたいのだな?」

プルツー「お前! グレミーになんて事を言うんだ!」ジタバタ ジタバタ

プル  「プルツー、帰ってきてよー。ほら事件解決したらシャングリラのジュドーのところに遊びに行こうよ、ね?」ガッシリ ホールド

グレミー「何かの間違いだろう? ママと天地神妙に誓って、このグレミー・トト、ミネバ様にそのような無礼を働きはしない!」

プル  「おえっ」

マリーダ「誓えるのだな…? では聞くが、四日前、お前はどこで何をしていた?」

グレミー「四日前……?その日は、パークの新型アトラクションの完成披露イベント参加していた。新聞社やテレビクルーも大勢来ていたし、インタビューの記事や映像が残っているはずだ」

マリーダ「……!」

グレミー「新型アトラクションはしとやかなレディー向けに、映像作品の世界観を生かして主人公の女の子が一人前のレディーになって行くために、洗練された教育と厳しい習い事に取り組む過程を疑似体験できる素晴らしいものだ!」

マリーダ「正直それはどうでもいい」

プル  「て言うか、その映像作品もアトラクションも、どこの誰に需要があるの……?」

プルツー「このぉぉぉ! 言わせておけばぁぁ……!」ギリギリ
 


マリーダ「しかし……お前は、姫様と同じくザビ家の血縁であるはずだ。しかし、公室に迎え入れられなかった。それに対する恨みもあるだろう?」

グレミー「それについては……最初はあった。だが、すでに和解が成立している」

マリーダ「和解……?」

グレミー「そうだ。私は公室とは関わらないと言う条件で、このアクシズの使用権を譲渡されたのだ。そして、ママの理想とする正しい紳士淑女の世界をより多くの庶民に広めるために、ここアクシズランドを建設したのだ!」

プル  「おえっ」

プルツー「グレミー……流石だな」フンス

プル  「なにが?」イラッ

マリーダ「そうか……怨恨説は、そのような手打ちがなされていたのか……それにアリバイに関しても裏を取ればすぐにはっきりする。アクシズランドは地球では知名度が低いから、私達がトリントンでその情報を手に出来なかったのも頷けるし、イベントがあった頃には私達はインダストリアル7に向かう船の中……情報ラグが最大限に広がってしまったということか……」

グレミー「そんなことよりも、トゥエルブ。ミネバ様が誘拐されたのだな……? 犯人は恐らく、幼い子ども、しかも女の子が好きな変態に違いない……! ミネバ様の身が危ないぞ……!」

プル  「グレミーにだけは言われたくないと思うな、あたし……」

グレミー「こうしては居られない……すぐに人を使って足取りを調べなければ……! そうだ、ママに相談しよう、きっと良い策を考えてくれるはずだ……!」ブツブツ…

プル  「マリーダ、これはグレミーも白だね……気持ち悪いから一発入れて引き上げよう」

マリーダ「了解、姉さん」ブンッ ドゴッ

グレミー「」ゲホッ  ガクッ

プルツー「グ、グレミー!!」ウルウル

プル  「ダメだこれ、完全に変な電波二号を拾っちゃってるよ。マリーダ、脚の方かついで。抱えて連れ出そう」

マリーダ「はい、姉さん」ガッシ

プルツー「何するんだ! やめろ! グレミー、グレミィィィィ!」ジタバタ ジタバタ


 
 


アクシズランド=ミランダ間往復シャトル内


  ゴウン ゴウン ゴウン(エンジン音)


プルツー「……///」

マリーダ「……」

プル  「……」

プルツー「……その、なんだ……///」


  ゴウン ゴウン ゴウン(エンジン音)


プルツー「みっともないところを見せて、すまなかった……///」シュン

マリーダ「いえ、姉さん……誰にでも頭の上がらない相手はいますから……」ナデナデ

プル  「そ、そうだよ、プルツー……き、気にしちゃダメだよ」

マリーダ「そうです。ほら、それより今後の事を考えないといけません」ナデナデ

プル  「うん、残す容疑者はシャア・アズナブルだね」

プルツー「すぅ、はぁぁぁ……よし、落ち着いた……シャア・アズナブル……トリントンの調査では、唯一現在の居場所や動向が掴めなかった男だ」

マリーダ「手掛かりは、ルウム行きのチケットだけ……でも、ルウムにもたくさんのバンチコロニーがあります。もしルウムに潜伏していたとしても、探すには骨が折れますね……」ナデナデ

プル  「困っちゃうね……誰か居所を知っている人が居れば良いんだけど……」

マリーダ「プルツー姉さん、何か当てはあるんですか?」ナデナデ

プルツー「マリーダ、もう撫でてなくて良い、手をどけろ…………ありがとな……///」

マリーダ「(かわいい)」

プル  「(かわいい)」
 


プルツー「……正直、やつばかりは足取りにヒントがない。何しろ、ムンゾを離れてからはあちこちを飛び回っているらしいからな。だが、ルウムの港に行けば、シャトルの利用者記録があるはずだ。係員に金を握らせて、そいつを調べてみるつもりだよ」

マリーダ「そうしている間にも、姫様に危険が迫っているやも知れません。急ぐ必要がありますね……」

プルツー「あぁ、そうだな。シャトルが港に着いたら、すぐに掛かるぞ」

プル  「うん!」

プルツー「了解!」



 


ルウム首都バンチ・ミランダ 宇宙港



マリーダ「ようやく着きましたね、姉さん」

プルツー「あぁ。急いで空港事務所へ向かうよ。時間が惜しい」

プル  「えっとー、事務所は向こうのほうだね。ほら、案内カウンターのあっち側に看板が出てるよ」

プルツー「よし、急ぐぞ」


 ツカツカ カツカツ プルプルプル


マリーダ「しかし……姫様が気がかりだ……」

プルツー「無事を祈るより他にないだろう?」

マリーダ「そうですが……」

プルツー「そう言えば、ミネバ様みガランシェール学園に通われていたのだったな」

マリーダ「はい、姉さん。実は学校ではいろいろとお世話になっていたこともあるんですよ」

プル  「……ね、ねえ、ちょっと……」

プルツー「そうだったのか。あたしらもグレミーのところにいた頃には何度かお会いしたことがある。当時から奔放な少女だったな」

プル  「ねえってば」

マリーダ「そうでしたか……姫様は昔から変わられていないのですね」

プル  「ねえ、聞いてよ!」

プルツー「なんだ、プル、大声を出すな」

マリーダ「どうしたんです、姉さん?」

プル  「あれ! あれ見てよ!」

マリプルツー「「……えっ?」」



[宇宙港交通案内センター]

* * *「いや、そうではない。私はインダストリアル7に用事があるのだ」

 案内嬢「ですから、インダストリアル7へのランチは二時間後になってしまいますので、お時間ないようでしたら一度テキサスコロニーへ出て、そこからインダストリアル7へのランチに乗られる方がお早く到着出来ます」

* * *「ええい、融通は効かんのか?」

 案内嬢「はぁ、えぇと、こちらは空港からのアクセスをご案内している観光局ブースですので……シャトルやランチに関しては各会社さんのカウンターにお問い合わせ頂くしかありませんね……」

* * *「くっ……ならば仕方ない。ハイヤーのランチを使おう。乗り場はどこだ?」

 案内嬢「西棟B区画でございます。ここをまっすぐ行かれて、その先が西棟です」

* * *「了解した。迷惑をかけたな。失礼する」

  



プルツー「あれは……!」

プル  「金髪碧眼にあの喋り方……!」

プルツー「横柄な態度に額の傷……間違いない、シャアだ!」

マリーダ「……あれは……」

プル  「ど、どうしよう? 尾行ける?追いかける?」

プルツー「まどろっこしいんだよ!一気に取り押さえて、白状させちゃうよ!」

プル  「オッケー、突撃!」プルプルプル

プルツー「マリーダも続け!」バッ

マリーダ「ま、待って!姉さん達……その人は……!」


デヤアアアアア!!!


***「ん?」

ドゴォン

***「グハァッ」ドガシャーーン

プルツー「見つけたぞ、シャア・アズナブル!」

プル  「さぁ、大人しくあたし達の質問に答えてもらうんだからね!」

***「ぬぐぐ……なんだね、君達は……?」

プル  「あたし達は!」

プルツー「プルズ探偵事務所の三姉妹探偵だ!」

プル  「シャア・アズナブル! あなたの悪行は全部お見通しだよ!」

***「待ちたまえ、人違いだ! 私はシャア・アズナブルなどではない!」

プルツー「ふん、言い逃れが出来ると思って「人違いです姉さん!」

プル  「えっ?」

プルツー「マリーダ……?」
 


マリーダ「その人はシャア・アズナブルではありません。新進気鋭の陶芸家、フル・フロンタルです」

プル  「フル……」

プルツー「フロンタル……?」

フロンタル「“人の器の創意”たるこの私に、いかなる理由があっての横暴なのだ?!」

プルツー「……ホントだな、なんか色んな意味でちょっと違うね……」

プル  「(マリーダ、創意って何? 総意じゃないの?)」ヒソヒソ

マリーダ「(新しい発想と言う意味です、姉さん。人の器の創意……つまり自分自身が“人類の使う器”の革命者だと言う、彼の決まり文句です)」ヒソヒソ

プル  「(食器くらいでずいぶんと傲慢な言い方だね…)」ヒソヒソ

プルツー「……そ、そうか……人違いだったか。すまないことをした」

フロンタル「そのような言葉だけで済むと思うのか?! 見るがいい! 出展用に制作した私の新作のココがちょっと欠けてしまっている!」

プル  「怒ってるね……まずいなぁ……」

マリーダ「まずいですね、姉さん」

プルツー「いや……その、すまないとしか言い様がない……」


    「なんの騒ぎだ!」


プルズ 「!?」

プル  「げっ」

プルツー「あんたは……」

ブライト「ん、君たちはインダストリアル7の……」

プル  「白目なしのオジサンだ!」

ブライト「白目がないからなんだと言うんだ!」

フロンタル「何者だね、君は?」

ブライト「私は連邦保安局ロンド・ベルの捜査官、ブライト・ノアだ」バッジ ドン

フロンタル「なるほど、保安局か。ちょうど良い。私は今この娘達に理由なき暴行を加えられたのだ」

ブライト「暴行?!」

プル  「ギクリ」

プルツー「それは……その……」

マリーダ「まずい……」
 


ブライト「ふむ、なるほど……この方をシャア・アズナブル氏と見違えて手をあげたのだな?」

プルツー「……?! なぜシャアのことを知っている?!」

ブライト「ロンド・ベルを甘く見てもらっては困る。ガーベイ社でも契約をしたそうじゃないか。そんな事をしなくとも、証人保護プログラムを使えば情報の流出の恐れもないのだがな」

プルツー「ガーベイ社から情報を聞き出したのか……!」

ブライト「これから我々はシャアの逮捕に向かうところだったが……捜査を理由に一般人に手を上げるなどと言う横暴を見過ごすわけにはいかないし、ガーベイ社での捜査妨害の件もある。観念して拘留されるのだな」

プル  「こ、拘留って……そんなことされたら、ミネバ様を探せなくなる……!」

プルツー「ちっ、しくじったね……こうなったら……!」チラッ

プル  「……コクリ」

マリーダ「……コクリ」

プルツー「あ、あぁーー! あそこに本物のシャアが!!!」

ブライト「なに!?」バッ

プル  「今だ!」ドン

ブライト「うわっ!」ドテッ

マリーダ「フロンタルさん、ごめんなさい。これは私達の事務所の連絡先です。謝罪と弁償は必ずしますので、穏便にお願いします」パパッ

プルツー「何やってるんだマリーダ!逃げるよ!」ババッ

マリーダ「はい、姉さん!」ダッ


ダダダ プルプルプル


ブライト「くっ!よくも……! 待て!待つんだ!待ちなさぁい、君たち!」バタバタバタ



 



【ナレーション】

残る容疑者の赤い彗星、シャア・アズナブルの行方を追う三姉妹。

迫りくるロンド・ベルの捜査網を出し抜き、ミネバとバナージを見つけ出すことはできるのか?

辿り着いた先で、三姉妹が見た事件の真相とは……?

三姉妹探偵プルズ、次回

「シャアの帰還」

君は、刻の涙を見る……

 


次回は土日に投下…できたらいいなぁ。
 


【ナレーション】

リディ・マーセナス、グレミー・トトの両名に行った三姉妹は、誘拐犯を残る一人、シャア・アズナブルであると断定する。

シャアの足取りを求めて立ち戻ったルウムの首都バンチ、ミランダでフル・フロンタルとの諍いを咎められた三姉妹にロンド・ベルの手が迫る!


第四話

「シャアの帰還」

 




マリーダ「な、なんとか逃げ切れましたね……」ハァハァ

プルツー「まったく……しつこいやつだったね」ゼイゼイ

プル  「白目がないクセに体力はあったね……」ピラッ パタパタ

マリーダ「しかし、まずいことになりましたね……ロンド・ベルに先を越されてしまいます」

プルツー「やつら、シャアの居所を掴んでいるような口ぶりだった……グズグズしてられない。すぐに港の事務所に戻るぞ」

マリーダ「で、でも、どうやって? もしかしたら、見張りを付けられている可能性もあります……」

プル  「そうだね、見張ってるかもねー」ペラッペラッ パタパタ

プルツー「さもなきゃ、逆にあの男のあとを追うか、だね」

マリーダ「それもかなり危険ですね……穏便にことを運ぶには、やはり事務所へ向かって利用者名簿を見る方が幾分か安全だと思います」

プル  「そうかなぁー」ペラッ パタパタ

プルツー「四の五の言ってる時間が惜しいね。マリーダ、あたしとプルで陽動を掛ける。その隙にあんたが事務所に入って資料に目を通してくるんだ」

マリーダ「しかし、姉さん! 姉さん達にもしものことがあったら……」

プルツー「そうならないように、あたしとプルで行くんだ。あたし達なら髪型も似てるしパッと見で見分けはつかないだろう? やつらを混乱させるには好都合だ」

プル  「おっぱいはプルツーの方が大きいけどね」ペラッ パタパタ

マリーダ「でも、もし捕まったら……?」

プルツー「そのときは、マリーダ。あとはあんたに任せるしかない。なんとかロンド・ベルより先にシャアを見つけ出して、ミネバ様をハマーンのところに連れ帰るんだ」

マリーダ「姉さん……」

プル  「そんなことしなくてもいーんじゃないかなぁ」ペラッ パタパタパタ

プルツー「……」

マリーダ「……」
 


プルツー「プル、あんたさっきから何をやってるんだ?」

プル  「うん? あぁ、このPDAのパスコードを解除しようと思って」

マリーダ「PDA……? それに、どこかで見たことあるマークの入った手帳まで……プル姉さん、そんなもの、いったいどこで……?」

プル  「逃ゲテル最中ニ、拾ッタンダヨ」ペラッ ペラッ

マリーダ「なんて棒読み……」

プルツー「プ、プル……その手帳にあるマークって……ロンド・ベルのエンブレムじゃないのか?」

プル  「エー? アタシ分カンナイ……あ、開いた! なるほど、結婚記念日かぁ。白目ないクセにマメなオジサンだね」

マリーダ「も、もしかして姉さん! あの男を突き飛ばしたときに抜き取ったんですか?!」

プル  「拾ッタンダッテ言ッテルデショ」

マリーダ「だから棒読み……」

プルツー「……で、持ち主を特定できる情報はありそうか? なるべく早くに返してやらないと、困るだろう」

マリーダ「プルツー姉さん!?」

プル  「うん、だから中身を見てみないとねえ」パタパタ

プルツー「きっとメールあたりなら名前が書いてあるに違いない。申し訳ないがメールを確認してみるんだ」

プル  「ウン、ソウダネ」

マリーダ「ふ、二人とも! 他人のメールなんて見てはいけない!」

プルツー「コレハ人助ケダヨ、マリーダ」

プル  「ソウダヨ、落トシ主ハキット困ッテルヨ」

マリーダ「だから白々し過ぎます!」

プル  「……」パタパタ パタパタ

プルツー「どうだ、プル?」

プル  「ウーン、ヨク分カンナイヤ。マリーダ、ハンカチ持ってる?」

マリーダ「は、はい、姉さん」モゾモゾ スッ

プル  「これで指紋を拭き取って……(フキフキ)っと。はい、おしまい」ポイッ

マリーダ「捨てた!?」
 


プルツー「落し物なんかどうでもいい、あたし達はシャアを探さなきゃいけないんだ」

マリーダ「いや、姉さん、落し物っていうか……その……」

プル  「そのことなんだけどさ。あたしの勘では、テキサスコロニーが怪しいと思うんだ」

プルツー「なるほど、プルの勘がそう言うんなら、間違いないな」

マリーダ「いや、勘って言うかそれロンド・ベル捜査情報じゃ……」

プルツー「さっきからうるさいよ、マリーダ。ハーゲンダッツ山盛り食べたいだろう!?」

マリーダ「た、食べたいです!」

プル  「テキサスコロニーには連絡シャトルがあるってさっき陶芸家の人に案内係が言ってたよね」

プルツー「いや、そっちにはロンド・ベルの張り込みがいる可能性がある。ハイヤーを使おう」

プル  「そうだね。ハイヤーなら、確か、西棟のB区画、って言ってたね」

プルツー「よし、それなら向こうだな。行くぞ、二人とも!」ダッ

マリーダ「は、はい、姉さん!」バッ

プル  「うん!」プルプルプル




 


ルウム テキサスコロニー 



プル  「うわぁ……なんだかここ、なーんにもないね……」

マリーダ「テキサスコロニーは観光用レジャーコロニーですからね。自然が豊かなんですよ」

プル  「コロニーの中に自然、ってすごく不自然だけど……」

プルツー「そんなことはどうだって良い。でも、ロンド・ベルのやつらは出し抜いたようだね。あいつらが来る前に、シャアを押さえるよ」

マリーダ「ですが、居場所は分かるんですか……?」

プルツー「プル、あんたの勘では、どこに向かうのが良いって?」

プル  「確か、コロニーの湖畔地区って言うところのカフェ・スワン、ってお店だって書いてあったよ」

マリーダ「姉さん、書いてあったよ、はロンド・ベルの前では口にしないでくださいね……」

プルツー「湖畔地区か、ずいぶんと奥まったところだね……」

マリーダ「タクシーを使いますか?」

プルツー「あぁ、そうしよう」

プル  「あ、見て! あそこにカウボーイクレープっていうのがあるよ!」

マリーダ「あれは……クレープからはみ出んばかりの生クリーム!」

プル  「モリモリのフルーツ!」

マリーダ「チョコレートシロップ!」

プルツー「まったく……急がなければと言っているだろう!」

マリーダ「……そうでしたね、姉さん……」

プルツー「さっさと買って来いって言ってるんだよ! あたしはチョコシロップ多め!」

マリーダ「は、は、はい! 姉さん!」バタバタバタッ



 


テキサスコロニー湖畔地区 カフェ・スワン前 



  タク運転手「マイダァリ」ブォォン



マリーダ「ここがカフェ・スワン……」

プル  「随分と辺鄙なところだね。こんなんでお客さん来るのかな?」

プルツー「ここにシャアがいるとすればおあつらえ向きの隠れ家だ、とも言えるね」

マリーダ「確かに……」

プルツー「まずは中の様子を探るよ」

プル  「うん!」

マリーダ「了解、裏手に回りましょう」


 コソコソ コソコソ


プル  「どう、マリーダ?」ボソボソ

マリーダ「裏口には鍵が掛かっているようです」ボソボソ

プルツー「そこを抑えておきな。あたしが中の様子を見る」コソコソ

プル  「誰かいる?」ボソボソ

プルツー「客がいるな……ひとりだけだ」コソコソ

マリーダ「他に部屋があるかもしれないですね……」ボソボソ

プルツー「よし、作戦を立てるよ」ボソボソ

プル  「この裏口は逃げ道にされるかもしれないから誰か居た方が良いよね」ボソボソ

マリーダ「私が引き受けます。姉さん達が突入したのを見計らって、私もドアを破って入ります」ボソボソ

プルツー「マリーダそれよりもあれを見ろ」ボソボソ

マリーダ「ん……? あれは……エレカですね」ボソボソ

プル  「そうか。こんなところで車に乗られて逃げられたら、追いかけられなくなるね」ボソボソ

プルツー「そうだ。マリーダはあのエレカを無力化してくれ」ボソボソ

マリーダ「了解……タイヤのエアーを抜いておきます」ボソボソ
 


プル  「裏口の見張りは?」ボソボソ

プルツー「プル、あんたがやってくれ」ボソボソ

プル  「突入はプルツーひとり? 大丈夫?」ボソボソ

プルツー「ああ。無理はしないよ。正面か入って騒いで追い立てれば、必ず裏口から逃げ出してくるはずだ。そこを二人掛りで押さえ込んでくれ」ボソボソ

マリーダ「なるほど、本命は私達ということですね」ボソボソ

プル  「さっすがプルツー!」ボソボソ

***「あのぅ」

プルツー「よし。じゃぁ、早速掛かるよ」ボソボソ

プル  「さっさとシャアを捕まえて、ムンゾに帰ろう!」ボソボソ

マリーダ「そして夢に見たハーゲンダッツ風呂……///」ボソボソ

プル  「だから、それ絶対に風邪ひくって」ボソボソ

***「あのぅ……ここで何をなされてるのですか?」

プルズ 「「「!!!?」」」ビクッ

***「大丈夫ですか? 何かお困りのことでも……?」

プルツー「あ、い、いや、その……えぇと……ちょっと調べ物を、だな……」

***「まぁ、そうでしたか。良ければうちのお店に寄って行ってくださいね」

マリーダ「うちのお店……? あ、あなたは……?」

ララァ 「私は、ここの店主でララァ・スンと言います」


 



  カランコロンカラァン


 客  「ん? なんだ、お客さんか。珍しいな」

ララァ 「そんなこと言わないで。せっかくおいでくださったのに。さぁ、どうぞ入って」

プルズ 「「「……」」」スゴスゴ

マリーダ「(姉さん! 姉さん、どうするんですか!)」ボソボソ

プルツー「(慌てるんじゃない! 体良く店に入れたんだ! このまま客のフリをして情報を引き出すよ!)」ボソボソ

マリーダ「(でも姉さん! これでは裏口が素通りです!)」ボソボソ

 客  「あはは、随分とおとなしいお客さんだな」

プル  「あれ……?」

 客  「ん? 君は……!」

プルツー「なんだよ、プル。知り合いか?」

プル  「うん! ジュドーの先輩の人だよ!アムロさん!」

アムロ 「アムロ・レイと言う。確か、よくジュドーと一緒に居た子だな」

プル  「あたし、プルだよ!」

プルツー「あたしはプルツーだ」

マリーダ「マリーダ・クルスです」

ララァ 「ふふふ、知り合いだったのね。アムロ、ご馳走してあげなさいな」

アムロ 「そうだな。さっき出してくれたケーキを出してやってくれよ、ララァ」

プル  「ケーキ!?」ピョンッ

マリーダ「姉さん、どうやらとても優しい良い人のようです///」ニマニマ

プルツー「……そうだね///」ツンデレ

ララァ 「さぁ、座ってください。お飲み物は何がよろしくって?」

プル  「えっと、オレンジジュース!」ギシッ

プルツー「コーヒーを頼むよ」ストン

マリーダ「紅茶をお願いします」チョコン
 


アムロ 「元気そうだな、プル。ジュドーとは最近会っているのか?」

プル  「うん、シャングリラにはよくあそびにいくよ!」

アムロ 「そうか。木星開発公社に入社したって噂を聞いていたが、もうシャングリラに戻ったんだな」

プル  「そうなの! 木星出張のボーナスで、シャングリラに整備工場開いたんだよ!」

アムロ 「整備工場か。彼らしいな」

プル  「アムロさんは、どうしてこんなところに?」

アムロ 「あぁ、俺は、少し……な」

ララァ 「奥さんとケンカするたびにこんな田舎のコロニーまで家出してくるんですよ。はい、召し上がれ」ニコニコ

プル  「わぁ! 美味しそう!」

マリーダ「姉さん! ショートケーキです姉さん!」

アムロ 「意地悪を言うなよ、ララァ」

ララァ 「ふふ、本当のことじゃなくて? それとも、チェーンさんのところにも行っているのかしら?」ニコニコ

アムロ 「やめてくれ。チェーンはただの同僚だよ」

ララァ 「ふふふ、そういうことにしておくわね」ニコニコ

プル  「なになに、なんの話?」モグモグ

プルツー「やめなよ、プル。大人の事情だ」モグモグ

マリーダ「おいひい……///」モグモグ

アムロ 「そういえば、プルはどうしてテキサスなんかに? 君が観光するにしては随分とのんびりした場所だろうに」

プル  「あ、えぇっと、あたし達は……その……」モグモグ チラッ

プルツー「(コクリ)……シャア・アズナブル、という男を探しているんだ」モグモグ

アムロ 「シャアを?」

ララァ 「まぁ」

プルツー「知っているのか?」

アムロ 「もちろんだ。古い仲さ」チラッ

ララァ 「ふふふ、そうね」クスッ
 


プルツー「実は、このテキサスコロニーにいるって情報を掴んでここまで来たんだ。何か知っているなら教えてくれよ」モグモグ

ララァ 「そう。入れ違いになってしまったのね。何日か前にここに来て、小一時間お茶をしてからすぐにインダストリアル7に発ったのよ」ニコニコ

プルツー「インダストリアル7に!?」モグモグ

マリーダ「おいひい///」モグモグ

プル  「ね///」モグモグ

アムロ 「どうしたんだ? やつに何か用事でも……?」

プルツー「……実は、シャア・アズナブルには、ムンゾ公室のミネバ殿下を誘拐した容疑が掛けられているんだ」モグモグ

アムロ 「シャアが、誘拐?」

ララァ 「まぁ、あの人が……?」

プルツー「ここへ来たんだろう? なにかそれらしい話はして行かなかったか?」モグモグ

ララァ 「さぁ……仕事の話はしていたけれど……」

プルツー「なんでもいい、教えてくれよ」モグモグ

ララァ 「確か、今の環境保護団体は辞めて定職に就こうか悩んでいるとか、って……」

アムロ 「やつめ、また性懲りもなく妙な活動に熱をあげて……」

プルツー「ほかには、何かないか?」

ララァ 「そうね……確か、インダストリアル7へは、何か荷物を取りに行く、と言っていたかしら」

プルツー「荷物!?」

マリーダ「姉さん、もしかして……!」

プルツー「あぁ、間違いない。ミネバ様だ……恐らく、トリントンでミネバ様を攫ってから、カーゴか何かを使ってインダストリアル7に運んだんだ。自分は足跡を消すために、わざわざテキサスに寄った……」

マリーダ「ええ、塩ですね……微かに塩を入れることで、生クリームの甘さを上品に引き立たせています……!」モグモグ

プルツー「……」

アムロ 「ふむ……やつは確か、少し前までムンゾ公室の教育係をしていたな。その関係で何か揉めているのか……気になるな。俺もインダストリアル7へ行こう」

プルツー「えっ?」

アムロ 「やつとは古い仲だ。何か妙なことをやっているのなら止めてやるのが俺の役目さ」

プルツー「だ、だけど……」

アムロ 「安心してくれ。俺はこれでも、人を追うことには慣れているんでな」

プルツー「な、慣れている……?」

ララァ 「彼、こう見えて、連邦保安局の特別捜査班なのよ」

プルツー「ロンド・ベルの!?」ガタタッ



 


 テキサスコロニー=インダストリアル7間連絡シャトル内



プル  「(ねぇ、ちょっとプルツー)」ボソボソ

プルツー「(なんだよ)」ボソボソ

プル  「(なんでアムロさんがロンド・ベルだって知ってて一緒に着いてくることになってるの!?)」ボソボソ

プルツー「(だって仕方ないだろ! このアムロって人はオフでミネバ様の件は知らなかったらしいし、ミランダでのことを話したらそれこそ逮捕されるかも知れないんだ!)」ボソボソ

プル  「(だからって、一緒にいたら結局同じでしょ! 契約の話も、ロンド・ベルが一緒じゃどうなるか分からないよ!)」ボソボソ

プルツー「(そんなことはわかってるよ! このアムロって人にシャアを任せて、あたし達はミネバ様を連れてすぐにムンゾに向かえばいいだろ!)ボソボソ

マリーダ「姉さん達、何をこそこそ言っているんですか? ララァさんのお土産の手作りクッキー美味しいですよ」モグモグ
 

  CA「お茶菓子、ジュース、ビール、お土産品などはいかがですかー?」ガラガラ


アムロ 「ははは、ブライトと揉めたそうじゃないか。まぁ、俺がうまくごまかしておくから心配ないよ」

プルツー「な、なんでそのことを!?」

マリーダ「私が説明しました、姉さん」モグモグ

プルツー「マリーダ! あんたどうしてそんな余計なことを……!」

マリーダ「アムロさんはいい人です! 姉さん!」モグモグ

プルツー「ロンド・ベルなんだよこの人は!」

プル  「た、確かに良い人だけど、それとこれとは事情が……!」

アムロ 「大丈夫だ。俺は個人的にシャアを止めに行くだけで、君たちの契約に口を挟むつもりはないよ。あ、すまない、何か甘いものはないか?」


  CA「ハーゲンダッツなどご用意していますが、いかがでしょう?」


アムロ 「あぁ、じゃぁ、それを四つ頼む」


  CA「はい。ご利用ありがとうございます」


アムロ 「ほら、これを食べて少し落ち着くんだ」

プルツー「良い人だ……」

マリーダ「良い人でしょう」

プル  「あたし、この人好き。ジュドーの方がもっと好きだけど」


 


 インダストリアル7 港内



プルツー「ふぅ、まさかインダストリアル7に戻ってくるだなんてね……」

プル  「最初っからここで待ってたら苦労しないで済んだのに」

マリーダ「でも姉さん。地球へ行ったり美味しいものを食べたり、それなりに楽しかったです」

プルツー「旅行してるんじゃないんだよ!」

プル  「そんなこと言って。プルツーだって楽しんでたクセにー」

プルツー「それはっ……まぁ、そうだけど……」

プル  「それよりも……こんなところでアムロさん待ってていいの? いっそ、居なくなっちゃった方がいいんじゃない?」

マリーダ「しかし、アムロさんは今、港の事務所に入港者リストを見に行っているところですよ?」

プル  「だからぁ。アムロさんはロンド・ベルなんでしょ? 一緒にいて、万が一手柄を横取りされたら困るよ!」

マリーダ「アムロさんは良い人です、姉さん」

プル  「もう、プルツーも何とか言ってよ!」

プルツー「……あたしも、あの人を裏切れない気がする……なんとなく……」

プル  「えぇー!? プルツーまで!?」

プルツー「そ、そういうプルだって、好きだって言ってたじゃないか!」

プル  「うー、まぁ、そうだけど……」


アムロ 「待たせたな」スタスタスタ


プルツー「……! どうだった?」

アムロ 「やはり、シャアはこのインダストリアル7入ったようだ。出港記録はなかったから、おそらくはまだここにいる」

プル  「よぉし! ついに追い詰めたよ!」

マリーダ「ですが、インダストリアル7を探すだけでも簡単でないことはこの間体験したばかりです」

プルツー「何か手がかりがいるね……」
 


アムロ 「監視カメラの映像は手に入れられるだろうが、空港から先の足取りが分からないことに変わりはない」

プル  「手がかりかぁ……シャア・アズナブルが行きそうなところってどこだろう?」

アムロ 「ふむ、インダストリアル7にメイド喫茶はあっただろうか……」

プル  「えっ、シャアってそういう人なの!?」

マリーダ「……もしかして……!」

プルツー「なんだ、マリーダ? 何か思いついたのか?」

マリーダ「はい、姉さん。姫様はバナージと一緒に誘拐されたはずなのです」

プルツー「あぁ、例のビスト財団の御曹司だね」

アムロ 「ビスト財団……? なるほど、そうか、シャアめ……!」

プルツー「どういうことなんだ?」

マリーダ「ここインダストリアル7には、ビスト財団の屋敷があります」

プルツー「……そうか! 今までバナージと言うやつはミネバ様と一緒に誘拐されたと思っていたが……」

マリーダ「はい……! ビスト財団がバナージを使ってシャアとともに姫様を誘拐し、ザビ家に対して何らかの圧力をかけようとしているのかも……!」

アムロ 「ビスト財団は巨大な組織だ……アナハイム社もその一部。その上、ザビ家と縁続きにでもなれば、宇宙での独占体制はほぼ決まるようなものだな」

プル  「ま、ま、まさか……ミネバ様を攫って、無理やり既成事実を作っちゃおう、とか、そういうこと……!?」

アムロ 「さぁな……だが、シャアのやることだ。まともであるとは思えない」

プルツー「ビスト財団の屋敷へ急ごう、きっとミネバ様はそこにいる!」



 


 インダストリアル7 ビスト家屋敷

 前庭 植え込みの中



プル  「ここだね」ガサッ

プルツー「あぁ、間違いないね」ガササッ

マリーダ「ここに姫様が……」ガサササッ

アムロ 「君たち、無理はするなよ。いざとなったら、ロンド・ベルの機動隊を呼ぶ」ガササササッ

プルツー「仕方ないね……だが、そのときには捜査資料にあたし達の名前を入れるのを忘れないようにしてくれよ」

アムロ 「分かっている。ザビ家への報告も、君たちあっての成果だと報告しよう」

プルツー「それなら良い」

マリーダ「……それにしても、静かな屋敷ですね……警備の人間の姿もありません」

プル  「そうだね……もう引き払ったあと、とかだったりして……」

プルツー「そのはずはない。これほどの屋敷だ。移転するとなればそれなりの痕跡が残るさ」

アムロ 「しっ! 誰か来るぞ!」ガサッ

プルツー「隠れろっ」ガササッ

マリーダ「はいっ!」ガサササッ

プル  「ひゃっ!」ガササササッ


 パッカパッカ パッカパッカ


プルツー「あれは……馬か?」

マリーダ「おかしいです、姉さん。私はこの状況が初めてではない気がします……」

プル  「そうだね、マーセナス家の屋敷でもおんなじだったね」

プルツー「静かに!来たよ……あ、あれは!」

アムロ 「シャア!」


 パッカパッカ パッカパッカ ブルルーン


シャア 「ふぅ……私もあこぎなことをやっている……」ブツブツ……

アムロ 「シャア!」ガササササッ!

プル  「ア、アムロさん!?」

プルツー「ちょっ……何をやってるんだ!」

マリーダ「遠い記憶の中で似たような体験をしたような……」
 



シヤァァアアアア!!ズダダダダッ


シャア 「ん!? ア、アムロかグハッ!」ドサッ

アムロ 「なんでここにいるんだ!」

シャア 「それはこちらのセリフだ!いきなり何をすrグブハッ!」

アムロ 「俺たちと一緒に戦った男が、なんで地球潰しを!?」

シャア 「えぇい!貴様は何を言っていrガハッ!」


 ドガッ バキッ メコッ


プル  「うーん、変な電波三号はあたしが受信しちゃうのかも、って思ってたけど……」

プルツー「と、とにかく行くよ!」ガサガサ

マリーダ「……デジャブなのか……?」ガササッ


 ダダダダダッ 


シャア 「ま、待てアムロ! 私が何をしたと言うんだ!?」

アムロ 「とぼける気か! 貴様はザビ家のミネバを誘拐し、慰みものにするつもりだろう!?」

シャア 「くっ!私がそのようなマネをすると思うのか!」

アムロ 「するさ! ロリコンめ!」

シャア 「私がロリコンだと!? ふざけるな! それはアムロ、貴様のことだろう!?」

アムロ 「なにぃ!?」

プル  「ちょっとちょっと! アムロさんストップ!」ガシィッ

マリーダ「シャア・アズナブル! 動くな!」カバッ

プルツー「捕まえたよ!」ガシッ

シャア 「む!? なんだ君たちは!?」

プルツー「あたし達はムンゾにある探偵社の人間だ。シャア・アズナブル。ミネバ公女様誘拐の容疑で逮捕する!」

シャア 「私が誘拐だと!? なんの根拠があるというのだ!?」

アムロ 「だからロリコンだからだと言ったろう!」

プル  「えぇぇ……シャア・アズナブルはロリコンだったの……? グレミーと一緒じゃん、おえっ」
 


シャア 「私は断じてロリコンなどではない!」

アムロ 「それなら、クェスのことはどう説明する!?」

シャア 「クェスは一方的に私を慕っていただけだ! 今はもうアウデナー参謀次官のもとへと戻っている!」

アムロ 「なに!?」

シャア 「そもそもアムロ! クェスを連れていたのは元は貴様のほうだったはずだ!」

アムロ 「!?」

シャア 「クェスだけではない! 貴様はかつてユウリ・アジッサと言う少女を保護して育てていたそうじゃないか!」

アムロ 「彼女は親に先立たれたから保護しただけだ! 邪な感情など……!」

プル  「うえぇぇ……アムロさんもそっちなの……?」ゾゾゾ

シャア 「さぁ! 他に私をロリコンと言える要因があるのなら言ってみるがいい!」

アムロ 「くっ……!」

シャア 「ないだろう!? そのようなものは根も葉もない噂に過ぎんのだよ!」

アムロ 「言わせておけば……! 少なくともマザコンでシスコンだろうに!」

シャア 「家族を大切にして何が悪い!」

プル  「あ、そこは認めるんだ……」

プルツー「まぁ、マリーダもシスコンだしね……」

マリーダ「そうだ! 姉さん達を大好きで何が悪い! アムロ・レイ!」ムキー!
 


プル  「と、と、と、とにかく! シャア・アズナブル! ミネバ様の居場所を吐きなよ!」

プルツー「そ、そうだった! ミネバ様はどこだ!?」


  パッカパッカ パッカパッカ

   
    「お呼になりました?」

プルズ 「「「!?!?」」」

シャア 「ええい、離せ! だから知らんと言ったのだ!」ジタバタ

マリーダ「ひ、姫様……?」

ミネバ 「あら、マリーダ! 久しぶりですね!お元気そうで何よりです!」

プル  「ミ、ミ、ミネバ様……ど、どうして? シャアに誘拐されたんじゃなかったの……?」

ミネバ 「誘拐……?」

プルズ「「「……?」」」

ミネバ 「……どういうことですか……?」

プルズ「「「???」」」



 


【ナレーション】

ついに犯人と思われたシャア・アズナブルを確保した三姉妹。

しかし、その目の前に現れたのは、ザビ家公女ミネバその人だった。

そして彼女の口から誘拐事件の真相が、語られる……!


三姉妹探偵プルズ、次回

「ハマーンの照笑」


君は、刻の涙を見る……
 



【ナレーション】

ついに犯人と思われたシャア・アズナブルを確保した三姉妹の目の前に現れたのは、ザビ家公女のミネバその人だった。

誘拐事件の真相が、ついに語られる……!


第五話

「ハマーンの照笑」

 



ビスト家屋敷 応接室 


マリーダ「ガタガタブルブル……」

プル  「マ、マリーダ、大丈夫……?」

マリーダ「姉さん、今すぐここから逃げよう嫌な予感がするここに居てはダメだきっと何か怖いことをされる逃げようさあ逃げよう」ガタガタブルブル

マーサ 「バナージの友達もかなりの器量良しの娘さんだと思っていましたが、そのご友人の方々も皆さんとてもお綺麗ですこと。さあ、どうぞ召し上がってくださいね、オホホホ」

プル  「ほら、マリーダ、美味しそうな焼き菓子出してくれたよ、一緒に食べようよ」

マリーダ「いけません姉さんそれは罠ですきっと何かの罠に違いありません食べたら眠くなって気がついたら変なイスに座らされて頭に電極を付けられてそれで」ガクガクブルブル

プル  「お菓子を前にしても変わらないって……いったい何があったの?」


プルツー「そうだ、ミネバ様はご無事だ。今日はビスト家の屋敷に泊まらせていただいて、明日のシャトルでそっちへ戻る。あぁ、そうだ。ロンド・ベルとティターンズへの捜索願は取り下げておいてくれ。これ以上の面倒があっても厄介なだけだ。頼むぞ。では、ミネバ様に代わる」


 保留~♪


プルツー「ミネバ様。教育係のハマーンがお話をしたいそうです」

ミネバ 「もう、ハマーンってば大げさなんだから……もしもし、ハマーンですか? 私です、ミネバです。嫌ですね、私の声を聞いても分かりませんか? なんなら映像通信に切り替えますか?」

シャア 「まったく……アムロ貴様、この責任は必ず追求するぞ」

アムロ 「まぁ、そう怒るな、シャア。お前が馬に乗っていたら殴りかからずにはいられなかったんだ」

シャア 「どんな理由だ! 私は認めんぞ!」

アムロ 「そう言うな。疑いが晴れて良かったじゃないか」

バナージ「あ、あの、アムロ・レイさん、ですよね?」

アムロ 「そうだが。バナージくん、と言ったな?」

バナージ「はい! アムロさんは確か、0079年のロボットコンペで大会記録を塗り替えた方ですよね!」

アムロ 「へぇ、古い話を知っているんだな。ちょうど君が生まれた頃の話だろうに」

バナージ「俺、今年のコンペで優勝したんですよ! 昔からアムロさんの動かしたロボットを見て憧れて、それでアナハイム社の高専にも進んだんです!」

シャア 「その大会には私も出ていたんだぞ、バナージくん」ヌッ

アムロ 「やめろよ、シャア。みっともないぞ」

マリーダ「ねねねね姉さん今夜はこの屋敷に泊まるとか止めてください帰りましょうせめて街に戻ってホテルを取りましょうここは危険です早く早く早く」ガタガタブルブル

プルツー「せっかく誘ってもらってるんだ。断るのも失礼だろ」

プル  「そうだよぉ、きっと料理も美味しいよ、ね?」

マーサ 「ホホホホ! お世辞がお上手ですこと!」

カーディアス 「ははは、ミネバ様のご友人達は愉快な方々だな!」

サイアム「……ズズズ……茶がうまいのぅ……」
 



ミネバ 「はい、はい。分かっていますよ、ちゃんと10時には床に就きます。歯も磨きますから、大丈夫です。ふふっ、心配性ですね、ハマーンは。ええ、では、おやすみなさい」


 チンッ


ミネバ 「ふぅ……マリーダ、それからマリーダのお姉さま達、この度は大変ご迷惑をおかけしました」

プルツー「まぁ、厄介なことに巻き込まれていなくてなによりだったよ」

プル  「あ、プルツーその口調で行くの? 大丈夫なの?」

ミネバ 「はい、ロニの方にも先ほどメールをしておきました」

プル  「ロニさん、すっごく心配してましたよ、ミネバ様。怒られたりしてない?」

ミネバ 「はい。ただ、『悲しいね……』と意味不明な一文が送られてきたりして、混乱しているようでしたけれど……」

プル  「そ、それは混乱しているね……」

プルツー「それで。いったいぜんたい、どうしてこんなことになっちゃったんだ?」

ミネバ 「それは……その……」

プルツー「なんだよ、ずいぶん歯切れが悪いね」

ミネバ 「実は……私は、シャアを探していたのです」

プルツー「シャアを……?」

ミネバ 「はい。シャアがかつて、公室の教育係として働いてくれていたことはご存知ですか?」

プル  「うん、調べたから知ってるよ」


アムロ 「お前が教育係とは……ザビ家は大丈夫なのか?」

シャア 「これでも私は育ちが良いのだ」


プルツー「だが、シャアは不手際を起こして公室勤務を解雇されたと聞いている。その上、その問題で当時首相だったシャアの父も辞職に追いやられているって話も聞いた」

ミネバ 「いいえ、それは真実ではないのです。むしろシャアは、公室を守るためにあえて汚名を背負って職を辞してくれたのですよ」

プルツー「公室を守るため……?」

ミネバ 「はい……実は、当時シャアの父、ジオン・ダイクンは、とある政治献金問題を抱えていて……そのために……」

シャア 「ミネバ様。真実を話して頂いて結構だ。私にはもう、捨てる物も守る物もありはしないのですから」

ミネバ 「シャア……本当にごめんなさい……」

バナージ「オードリー……」
 


ミネバ 「……当時、ジオン・ダイクンが絡んでいたのは、アナハイム社だったのです……そして、当時ザビ家もまた、アナハイム社との不適切な金銭関係を交わしている状態でした……ツィマッド社など数社が絡むコンペでは、必ずアナハイム社の製品が公室の御用達として選ばれていました。公室が使用している製品ともなれば、商品に泊が付き売れ行きが倍増します。ザビ家は……デギンお祖父様は、その見返りにアナハイム社から莫大な礼金を受けていたのです」

シャア 「……」

ミネバ 「両者の窓口として動いていたのが会長のメラニー・ヒュー・カーバイン氏でした。このことがジオン・ダイクンの政治献金問題が明るみに出れば、いずれはアナハイム社とザビ家の関係も白昼の元に晒されると言う状況を作り出してしまいました。そして実際、ジオン・ダイクンを排そうとする一派がアナハイム社とダイクンとの関係を探り始め、もはやこれまでか、と思っていたその時分に、シャアは職を辞したのです」

アムロ 「まさか……あの噂は……?」

シャア 「……」

ミネバ 「はい……シャアがデギンお祖父様の暗殺を企てた、と言う根も葉もない噂は、シャア自身が世間に流布したのです。現職首相の息子がそのような強行を計画しているとの噂が流れれば、父である首相の求心力も無くなり、敵対政党にしてみれば、それはアナハイム社との関係を調査するよりも手軽で強力な攻撃材料になったのです。結界的にシャアは公室を去り、ダイクンは首相を辞する事となって、問題は解決してしまったのです……」

アムロ 「シャア……貴様ほどの男がどうしてそこまで……」

シャア 「ドズル閣下やキシリア閣下には幼い時分から世話になっていた。その恩を返しただけだ。それ以上でも以下でもない」

プルツー「で、でも、それとビスト家とどういう関係があるんだ?」

ミネバ 「はい……奇しくもシャアの退職は、アナハイム社を救うことにもなったわけです」

プル  「お金の話がうやむやになったからだね」

ミネバ 「はい。その後、ザビ家は内々にデギンお祖父様の家督権を剥奪し、父やその兄弟で合議の上で公室の決定とすることなりました。そして、アナハイム社では……」

マーサ 「私が嫁いだカーバイン家の後取りが社長に就任したのをきっかけに、政治関連の活動や支援を禁じ、社内の浄化を進めたのですよ」

マリーダ「浄化……すべてを焼き尽くす……浄化の光……」ガタガタブルブル

プル  「マリーダ……しっかり……」

ミネバ 「そして、そんなアナハイム社に、シャアを身柄を社員として拾って頂いたのです」

アムロ 「シャア! アナハイム社の社員だったのか!?」

シャア 「そうではないと言った覚えはない」

ミネバ 「しかし、ザビ家としてはシャアに公室の尊厳を守って頂けたことを忘れてはおりません。ほとぼりが冷めた今からでも、再び公室の教育係として勤めてもらえないかと、トリントンに出向していたシャアを訪ね、話し合いの場所としてこのお屋敷をお借りしたのです」

プルツー「なるほど……それは公には出来ない話だね。公室の他のスタッフにだっておいそれと漏らすわけにはいかない。ハマーンに黙って出てきたのも、当然だ」

ミネバ 「……そ、そうですね……」
 
プル  「ガーベイ社の送迎の人を気絶させたのもそのため?」

ミネバ 「はい……外部に漏らすワケには行きませんでしたので……私が後ろから……」

プル  「あれ、ミネバ様がやったんだ……てっきりシャアが殴ったのかと……」

シャア 「私は外での異変を感じてミネバ様を守るために駆けつけたまでだ」

プルツー「そうか……ガーベイ社の社員の犯人が拳銃を持っていたって証言は、脅していたわけじゃなくてミネバ様を守る意図があって……」

ミネバ 「大筋で、これが今回の状況のあらましです。本当にごめんなさい……」

プルツー「まぁ、気にすることはないよ。あたし達は無事にミネバ様をムンゾに連れて帰れればそれで問題ないんだ」

プル  「そうそう!」

アムロ 「少しいいか? では、バナージくんとミネバ公女が一緒に行動していた理由は何なんだ?」

バナージ「そっそれは……///」

ミネバ 「その……///」

バナージ「……」

ミネバ 「ハマーンは、男女交際にもいろいろと厳しくて……だから、こっそり抜け出すのなら一緒に旅行気分で……と///」

プル  「つまり、インダストリアル7からのカーゴの中ではいろいろといろいろだった、ってことだね……」

バナージ「いろいろといろいろでした……///」

ミネバ 「バナージ……そんなこと言わなくっても……///」

プル  「……///」
 


プルツー「……ハァ……そのことも、一応内密にしておこう」

ミネバ 「た、助かります……///」

マリーダ「ガクガクブルブル……ハッ」


―――バナアアアアジィィィィィ!


プル  「ん、どうしたの、マリーダ?」

マリーダ「いや……今どこ遠くから声が聞こえたような……」

プル  「声?」

マリーダ「……いや、何でもありません姉さん。気のせいのようです」

プル  「そ。まぁ、とにかく一見落着、ってことで、今夜はゆっくり過ごさせてもらおうね!」

マリーダ「いやですから姉さんここは危険なのでホテルへ行きましょうダメな私一人でも行きますそれもダメならせめて姉さん寝ないで一緒に起きててくださいお願いしますお願いします」ガクガクブルブル

バナージ「オードリーは…俺の部屋を使ってくれよ///」

ミネバ 「もう、バナージってば///」


―――バナアアアアジィィィィィ!


マリーダ「ハッ!?」

プル  「プルツー、これマリーダまずいかも。また変な電波拾ってる」

プルツー「仕方ないね、ホテルを取るか。スィートルームとか、な」ニタニタ



 


ムンゾ1バンチ港 特別入港エリア ロビー



プルツー「ふぅ、ようやく着いたね……」

マリーダ「姉さん、私はもう一度シャトルに乗りたいです。あれがファーストクラスと言う物なのですね……///」

プルツー「ミネバ様が居なければ自腹だ。諦めろ」

ミネバ 「ふふ、では、また機会があればどこかにご一緒しますか?」

マリーダ「姫様……良いのですか?!」

プルツー「そのときはちゃんとハマーンにも伝えることだね」

ミネバ 「はい、そうですね。あなた方が一緒と言う事なら、ハマーンも反対はしないでしょう、ふふふ……」

プル  「あれ、これあたし達何かの隠れ蓑に使われる気配じゃない? 今日は友達と旅行行って来るねって言って、実は彼氏と旅行に行くパターンじゃない?」

プルツー「知らないよ。それより、もしそうなれば警備と言う名目でまたハマーンと契約出来るね……」ニヤニヤ

マリーダ「プルツー姉さん、顔が怖いです……」


アムロ 「まったく、どうして俺がお前のためにムンゾくんだりまで同行しなきゃならないんだ」

シャア 「えぇい、うるさい。嫌な予感がするのだ……付かず離れず私を見守っているがいい!」

アムロ 「偉そうに……と言うか、何をそんなに怯えている……?」


ミネバサマ---!


シャア 「(ティキーン)」

プルツー「噂をすれば、か。ハマーンだ」

ハマーン「ミネバ様……!」

ミネバ 「ハマーン……ご心配をお掛けしました、申し訳ありません」

ハマーン「ミネバ様……ご無事で何よりです……」ダキッ ギューー

ミネバ 「ハ、ハマーン! やめてください、皆が見ています……///」

ハマーン「なりません! このハマーンが、どれほどミネバ様の御身を心配したと思うのですか……!」ギュー

ミネバ 「ハ、ハマーン……」ウルッ

ハマーン「確かにハマーンめはミネバ様に厳しすぎるところもあったと自覚致しました……それもミネバ様のためを思えばこそでしたが……これでは元も子もありません。これからは心を入れ替え、ミネバ様のご意思を可能な限り尊重致します所存です…」ギュー

ミネバ 「ハマーン……私も勝手が過ぎました……ごめんなさい……ごめんなさい……」ウルウル

プル  「ふふっ、なんだかいい光景だね!」キュンキュン

マリーダ「そうですね、姉さん」ポカポカ

プルツー「そうか? 巧みな教育的指導じゃないのか?」シレッ

プル  「プルツー……感動もなにもないの?」

マリーダ「ダカランダックの中にも人なんか入ってませんよプルツー姉さん……」
 


ハマーン「それで……ミネバ様、今までいったいどこに……?」

ミネバ 「よくぞ聞いてくれました……!」チラッ

ハマーン「……!? シャ、シャア!」

シャア 「……ハ、ハマーン、久しぶりだな……」

ミネバ 「実は、シャアに公室に戻っていただけるようにとお願いにあがったのですよ」

ハマーン「なっ……! なりません、ミネバ様!」

ミネバ 「どうしてですか?」

ハマーン「えと……それは……その……///」

ミネバ 「まだシャアが勝手に行方をくらましたことを怒っているのですか?」

ハマーン「……そ、それは……ドズル閣下から詳しい話をうかがって、納得はしています……」

ミネバ 「それなら、もう何の支障もないのではなくって?」

ハマーン「そ、そうですが……」

ミネバ 「ハマーンももう良い年齢です。この期を逃すと、もうあとが詰まってくるのではなくて?」

ハマーン「……まさか、ミネバ様……このハマーンめのために……?」

ミネバ 「ふふっ、私は公室のことを考えて行動しただけです。ですが、そのことで間接的にでもハマーンが幸せになれるのなら、私も嬉しいです」


プル  「あれ、待って。今のどういうこと? ハマーンさんはシャアが公室をやめた理由を知ってたってこと?」

プルツー「……なるほど……ミネバ様の行動の真意はそんなところにあったのか……本当に、奔放な子だね」

マリーダ「なんです、姉さん達? ハマーンさんが何か……?」

プルツー「いいから黙って見てな」


ツカツカツカ


シャア 「ハマーン……」

ハマーン「シャア……」

アムロ 「……俺はお邪魔だな……」コソコソ

ハマーン「……ザ、ザビ家の為に力を貸せ、シャア!///」

シャア 「ええい! なぜ君はそんな物言いしかできんのだハマーン!」

ハマーン「これはその、あれだ、母親っぽい方が貴様好みだと思ってあえてそうしているのだ!///」

シャア 「母とはもっと包容力のある存在だ! そのような高圧的な物言いでなんとする!」

ハマーン「黙れ俗物! せっかく髪型を貴様の妹に似せ妹っぽく迫ってもなびかなかったから、母親っぽい方向にシフトチェンジしたのだ!」

シャア 「だからその母親像が間違っていると言っている!」
 


プル  「なにこれ、なんなのこの茶番」

プルツー「ふふふ、こういう方が面白いじゃないか……」ニヨニヨ

マリーダ「プルツー姉さんが生き生きしている……!」


ハマーン「そもそもなぜ女の私から言わねばならんのだ! ここここういうのは男の貴様が言うセリフだろう!?」

シャア 「君がもう少ししとやかにならん限り、私がその気になることなどない!」

ハマーン「~~~! な、ならば聞け! ……シャ、シャ、シャア…わ、私の夫になれ! ミネバ様も喜ぶ!」

シャア 「どこが変わったというのだ!」

ハマーン「くっ……ミネバ様……申し訳ありません、ハマーン・カーン、ここまでです……」

マリーダ「ハマーンさんそれ私の……」

ミネバ 「くじけてはなりませんハマーン! シャア、あなたもいつまで片意地を張っているのです! ツインテールでニャンニャン言っていた頃のハマーンはあんなにも可愛かったのに、と申していたではありませんか!」

ハマーン「ミミミミミネバ様/////!!!」

シャア 「お言葉ですがミネバ様、今のハマーンにどれほどの可愛い要素が残っていましょう?」

ミネバ 「まだだ! ハマーンはまだ終わってない! さぁハマーン、あなたの力を証明して見せなさい……!」

ハマーン「くっ……! かくなる上はっ……!///」グググッ

シャア 「……!」

ハマーン「……ゴホン///」

シャア 「……」

ハマーン「……シャアお兄ちゃん、また一緒に働きたいにゃんっ」

シャア 「……」

ハマーン「……///」カァー///

シャア 「……(ブパッ)」

プル  「シャアが鼻血吹いた!」

シャア 「……くっ……当たり所が悪いとこんなものか……!///」

ハマーン「さ、さぁ、どうだシャア! これで満足か!?」

シャア 「えぇい、分かった……! 勤務以外のときは今の言動を心がけることを約束するのなら手を打とう」

ハマーン「……!//////」(歓喜)

プル  「シャアって意外とチョロイんだね……」

マリーダ「まぁ、人それぞれ好みがありますからね、姉さん」

アムロ 「ふふふ、良く分からないが、元のサヤに収まったようだな。しかし、シャア、ナナイのことはいいのか?」

シャア 「……ミシッ」

ハマーン「……」

ミネバ 「……?」

プル  「誰?」

マリーダ「嫌な予感がします……」

プルツー「クックック……面白くなってきたよ!」ニヨニヨニヨニヨ

シャア 「アムロ、貴様余計なことを……!」
 


ハマーン「ナナイ? 誰だそれは?」

アムロ 「あぁ、数年前からシャアが良く会っている女だ。確か、アナハイム社のグラナダ工場に勤務する技術者だったな」

プルツー「社内恋愛ってことだね」

ハマーン「どういうことだシャア……? ザビ家を離れて浮浪している間に女を作ったというのか……?」ゴゴゴゴ

シャア 「……わ、私と君は恋愛関係にあったわけではない……! 転勤先で私が何をしようと勝手だ!」

ハマーン「ではそのナナイとか言う女とは縁を切れるのだな? そうなのだな?」ゴゴゴゴ

シャア 「いや、その……それはだな……!」

ハマーン「ん? どうした、シャア? 貴様ほどの男が歯切れが悪いぞ?」

シャア 「くっ……!」

ハマーン「続きは公邸に帰ってから話そうか、シャア。なんならそのナナイと言う女を呼べ。私が直接話をつけてやろう」

シャア 「ま、待てハマーン! それはダメだ! いろいろといろいろややこしくなる、特に君が!」

ハマーン「御託は見苦しいぞシャア! 少なくとも第一婦人は私だろうが……その女に貴様の妻となる器量があるのか私が見極めてやろう!」

アムロ 「待て、ハマーン! ムンゾは重婚が可能なのか!?」

ハマーン「ムンゾは各宗派の生活権を認めている。各宗派の教義に照らして法体系も整備されているのだ」

アムロ 「なんだと……! シャ、シャア! すぐに俺の移民手続きを踏んでくれ!」

シャア 「私は役人ではない! そんな事、役所に行って頼め!」

ハマーン「さぁ、ミネバ様、行きましょう! シャア、遅れるな!」

ミネバ 「ふふふ、ハマーンったら嬉しそうね」

シャア 「ええい、ハマーン、離せ! 襟首を掴むな伸びる!」

アムロ 「ムンゾに移民すればチェーンとも……ついでにユウリとララァ……いやララァはダメか、いやしかし……」ブツブツブツブツ


 ギャーギャー ワーワー


プル  「……」

マリーダ「……」

プルツー「……」ニヨニヨニヨ

プル  「……えっとぉ……とりあえず、一件落着、ってことでいいよね? ね?」

マリーダ「……そうですね……姉さん……なんだか向こうはこれからまた荒れそうですが……」

プルツー「ふふふ、まぁとにかく明日には大金が手に入るね……! 食べ物に家具にゲームもだ! さぁ、あたし達も事務所にもどるよ! 今夜は前祝いだ!」

プル  「わぁー! やろうやろう!」

マリーダ「チョコレートパフェを頼んでもいいですか姉さん! あ、それとアイスクリームに……ソーダフロートに、それから……それからっ!」


 ワイワイ キャッキャッ



 


 翌日 プルズ探偵事務所 応接室




ハマーン「世話になったな」

プル  「ううん、全然! ミネバ様に何事もなくて良かったよ!」

マリーダ「その後は息災なのですか?」

ハマーン「ミネバ様は健勝だ。一応、シャアも観念した。今日の夕方にはナナイと言う女が公邸に来るがな……」

プル  「そ、そうなんだ……ハ、ハマーンさん、頑張ってね……」

ハマーン「痛み入る」

プルツー「うん、確かに。金額はちゃんとあるね」ニヨニヨニヨ

ハマーン「あぁ、それからこちらもだ」ドン

プルツー「別のアタッシュケース?」

ハマーン「ミネバ様から話をうかがって、ガーベイ社へとも連絡を取った。今回のことは、ザビ家から端を発した物。ガーベイ社に責を負わせるわけにはいかない。ガーベイ社分の報酬も、こちらから出すと約束をしている。収めてくれ」

プルツー「ま、こっちは約束を守ってくれれば問題はないよ」ニヨニヨニヨ

ハマーン「良かった。では、こっちがガーベイ社との契約に関する書類だ。サインを頼む」

プル  「はぁい」サラサラサラ

ハマーン「ふむ、これで完了だな。重ね重ね、世話になった。礼を言う」

プルツー「また何かあったら言いなよ。ミネバ様はあたし達の従妹だし、公室関係の仕事なら、次回からはもっとマケて引き受けるからさ」ニヨニヨ

ハマーン「感謝する。そのときは、また連絡をしよう」

プル  「ミネバ様によろしくね!」

マリーダ「今度は一緒に普通の旅行をしましょう、とお伝えください」

ハマーン「承った。それでは、これで失礼するよ。戻って戦闘準備にかからねばならないのでな」

マリーダ「……ぶ、武運を祈ります……」

ハマーン「祈っていてくれ。では」


 ギィッ パタン

 


プル  「……」

プルツー「……」

マリーダ「……」

プル  「……クスクス」

プルツー「……ククク」

マリーダ「……フフフ」

プル  「あはははは! どうしよう! あたし達大金持ち!」

プルツー「あっはっはっは! さっそくハーゲンダッツを生産している会社の株を買い占めだ!」

マリーダ「えへへへへ、まずはジュドーさんとマスターに借金を返して……それでも、美味しいものがたくさん……!」

プル  「ねえ! これからの捜査の為に車を買おうよ! キュベレイMk.Ⅱってやつが可愛くて好きなんだ!」

プルツー「それはいい考えだな! あたしはクインマンサの方が好きだが」

マリーダ「キュベレイもクインマンサも好きですが、最新のクシャトリヤもなかなか良いですよ」

プル  「えぇー? キュベレイがいいよぅ!」

プルツー「いっそ、ビスト家のあのマーサって人にクチ聞いてもらって、アナハイム社の車を安く手に入れるっていうのもありだね」

マリーダ「いや姉さんそれはやめたほうがいいきっとなにか悪いことが起こるそれは止めよう絶対に止めよう」ブツブツ

プル  「マリーダ、しっかり!」

プルツー「旅行に行く、っていうのもいいかもしれないね」

プル  「行きたい! シャングリラがいいな!」

マリーダ「今回は捜査でゆっくりできませんでしたからね……地球に降りて、ゆっくり温泉に浸かるというのもオツですね」

プル  「温泉!? それがいいよ! お風呂だーい好き!」

プルツー「ふふ、そうだな。早速、宿を調べてみるか」

マリーダ「そうしましょう!」



 ピンポーン

  「プルズ探偵事務所様ぁ、郵便ですぅ」


プルツー「うん? なんだ?」

マリーダ「郵便?」

プル  「あたしが出るよ。マリーダとプルツーは宿と車を調べといてよ!」

プルツー「車もか、まぁ、そうだな。調べておく」

マリーダ「ふふふ、夢が広がりますね、姉さん」
 


 ピンポーン

  「プルズ探偵事務所様ぁ、留守ですかぁ?」


プル  「はいはーい、ただいまー!」プルプルプル


 ギイッ パタン


プルツー「それで、マリーダ。いい場所はありそうか?」

マリーダ「はい姉さん、ここなんかどうでしょう?」

プルツー「ふむ、露天風呂付き客室……いいじゃないか。料理はどうだ?」

マリーダ「料理はこのコースなら……」

プルツー「む、これは美味しそうだな」


 「ナイヨウショウメイ?」

 「ハイ、ウケトリサインヲ ココニオネガイシャス」


プルツー「そっちの旅館はどうなんだ?」

マリーダ「ここですか? ……ここもまた雅ですね」

プルツー「落ち着くのはこっちの宿だな」

マリーダ「迷いますね……どうします?」

プルツー「迷うことなんてないよ。一泊ずつ泊まれば問題ないさ」

マリーダ「そうか! 私達は今、大金持ちなんでしたね!」

プルツー「そうだよ!」


 ギィッ パタン


プルツー「プル、この旅館を見ろ、なかなか良さそうだぞ」

マリーダ「姉さん、郵便はなんだったんですか?」

プル  「……内容証明……?」

プルツー「内容証明? なんだって言うんだ?」

プル  「分かんないよ。シロッコ法律事務所、って書いてある」

マリーダ「シロッコ……グリプスにあるヤリ手の弁護士事務所ですね」

プルツー「大方、うちに金が入ったってのをどこかで聞いて、専属契約でもしないか、ってなことだろう」

マリーダ「なるほど、ありえますね」

プル  「開けてみようか……」ペリペリ ペラッ


マリーダ「……! プルツー姉さん、これを!」

プルツー「これは! もしかして“アッガイの神隠し”の舞台になった旅館のモデルになったっていうあそこか?!」

マリーダ「そうですよ! ここはすごいですね……とても綺麗です!」

プルツー「ここにも泊まるよ! 一番いい部屋を予約するんだ!」

マリーダ「はい、姉さん!」
  


プル  「ちょ、待って! 待って待って!」


プルツー「なんだよ、プル。あんたも見なよこれ。ここはすごいぞ?」

マリーダ「そうですよ姉さん。姉さんもきっと気に入ります」

プル  「そ、そのお金…使っちゃダメ……」

プルツー「……? 何を言ってるんだよあんた?」

マリーダ「どうしたんです?」

プル  「こ、これ……入ってた……」ピラッ

プルツー「なんだって言うんだよ?」

マリーダ「なんです……?」

――――――――――――――――――――――――

  示談提案書


 提案者フル・フロンタル(以下甲)は、×月×日、ルウム首都バンチ、ミランダの港に於いて、事件捜査に携わる被提案者プルズ探偵事務所所員(以下乙)より、犯人と誤認され制圧された。

 その際、甲の所持品である時価一三〇〇万連邦ドル相当の工芸品が損傷し、制圧に係るもみ合いに依って甲本人も軽傷を負っている。

この件に対し、甲は乙に、弁償金一三〇〇万連邦ドルを請求するものである。

 なお、示談に同意の際には甲に対する乙の暴力行為、誤認逮捕の二点に関する慰謝料請求権は放棄するものとする。

乙については、○月○日までに当事務所へ返答をすることとする。

当示談提案書に同意出来ない場合には、当事務所にて条件調整に係る話し合いに応ずる。

期限までに返答がない場合には、民事、刑事の両面から御社を提訴し、法の下に正当な請求権を行使する。


以上


――――――――――――――――――――――――
 


プルツー「こ……これは……」

マリーダ「一三〇〇万ドル……?」

プル  「ハ、ハマーンから幾らもらったっけ……?」

マリーダ「い、一五〇〇万ドルです、姉さん……」

プル  「ほ、ほとんど残らない、ってこと……?」

マリーダ「そ、そうなりますね、姉さん……」

プルツー「……」

プル  「……」

マリーダ「……」

プル  「どうしてこんなことに……」

プルツー「だ、だいたい、プルがあのフルなんとかって男に殴りかかるのがいけないんだよ!」

プル  「えぇー!? あたしのせい!? それならプルツーだって一緒に殴ったじゃない!」

プルツー「う、うるさい! だいたいどうしてあたし達だってバレてるんだよ!」

マリーダ「それは私が連絡先を渡したからです、姉さん」

プル  「マリーダ! なんてことをするんだよ!」

マリーダ「悪いことをしたら謝罪をするのが当然です! 交通事故でもぶつけて逃げたら当て逃げになります!」

プル  「そんなのザビ家に請求させればいいでしょ!」

プルツー「こ、この金は渡さないぞ……!」ガシッ

マリーダ「姉さん、ダメです! 支払わなければ裁判になりますよ!」グイッ

プル  「だったらマリーダが一人で払えばいいでしょ! 連絡先を渡したのはマリーダが悪い!」ムキー

マリーダ「いきなり殴りかかったプル姉さんに言われたくありません! プルツー姉さん、アタッシュケースを渡してください!」フヌッ

プルツー「嫌だ! 渡すもんか! プル、最初に殴ったのはあんたなんだから、あんたが何とかしろ!」ガシッ

プル  「あたしは悪くないよ! あたし達ってバラしたマリーダのせいだよ!」ムキー

マリーダ「だからそれだと完全に暴行になってしまうじゃないですか! プルツー姉さん! いい加減に諦めてください!」グイッ


[挿絵]
http://viploda.net/src/viploda.net_10034.png


プルツー「嫌だ! 誰にも渡すもんかぁぁ!」ガシッ

プル  「マリーダがなんとかしてよ!」ムキー

マリーダ「できるわけないじゃないですか! ほら、プルツー姉さん!」グイッ

プルツー「嫌だ! プルが何とかしろ!」ガシッ

プル  「マリーダが悪い!」ムキー

マリーダ「プルツー姉さん、離して!」グイッ

プルツー「プルが!」ガシッ

プル  「マリーダがっ!!」ムキー

マリーダ「プルツー姉さん!」グイッ


 ギャーギャー ワーワー


 


【ナレーション】

こうして、ムンゾ公女、ミネバ・ザビ失踪事件の幕は閉じた。

示談交渉に応じた三姉妹の手元に残った僅かな金額は、プルやプルツーの先輩であるジュドーと

ガランシェール学園の交響楽団の総監督、マスターこと、マエストロ・スベロア・ジンネマンへの借金返済に当てられた。

しかし、マリーダの奨学金と地球留学費用のローン返済、プルとプルツーの消費グセによる出費はなくなるわけではなく

相変わらずの貧乏生活に頭を悩ませる日々が続くのであった。


姉妹探偵プルズ、次回

「温泉旅館ジャブロー湯けむり殺人事件」


君は、刻の涙を見る…

*  *  * 

プル  「わーい、温泉だ!」

プルツー「ジュドーも一緒だね」

マリーダ「温泉まんじゅう……」ジュルリ
 


以上です!

お付き合いいただきありがとうございました!

今回挿絵は、twitterでお友達になった某氏に頼み込んで描いていただきました。

ふんわりタッチが愛おしいです…ありがとう!



次回予告を入れましたが、いつになるか、どんな内容になるかは未定です。

何か思いついて時間ができた段階でスレ建てしますので、そのときにまたお付き合いください。

重ねて、twitterでも告知いたします。

@catapira_ss

他にもいろいろ書いてますので、トリップで検索してみてくださいませ!

週末にはHTML化依頼出しますのでご意見ご感想レスお待ちしてます!



とても良い。乙。

全裸!貴様程度の男がなんて器の小さい!

さすがキャタピラ、全裸の件がオチの伏線だったとはw
それにしても挿し絵かわいいです!



バカwwwwwほんとバカwww(褒め言葉)
空っぽな器の金髪仮面がラスボスかよwwww
賠償金せしめたら真っ赤でアホみたいにでかい車買うんだろうなあ。本人の器ちっちゃいクセに。

次回もあるなら楽しみにしてますよ。

イラスト、やっぱりそういうイメージになるよなあ。パイロットスーツなんてないはずなのにね。
困り顔のマリーダかわいい

>>106
お付き合いいただき感謝!

>>107
名言ですねwww

>>108
あざっす!w
挿絵、素敵ですよね*^^*

>>109
ラスボスと言えば確かにw
イラスト、不思議とこんなイメージですよねぇ!

次回、お楽しみに!
 

HTML化依頼しましたー!

乙ー よっしゃ間に合ったー

途中CAが出てくるたびにシャアかと思ったのは俺だけなんだろうなあ…

>>111
レス感謝!
間に合って良かった!

スッチーの方が良かっただろうか…w

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