提督「艦娘達が隠れて何かしているようだ」」 (15)

艦これSSです。

提督「ボディーコミュニケーション」の続きになります。

例によって艦娘はあんまり出てきません。

ご了承下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431764675

提督「最近、艦娘達の態度がなんか素っ気ない」

提督「添い寝を希望する艦娘が減った」

提督「抱っこやおんぶをせがむ艦娘も減った」

提督「ボディーコミュニケーションを取る時間が今まで多かった分、なんか寂しい」

提督「気づくと心の中にポッカリと穴ができた感じがして心が痛い」

提督「晩飯。駆逐艦や軽巡洋艦向けに作ったカレーとかが余る日が出るようになった」

提督「余りは戦艦組や空母組、自分が食べたりするがどうもしっくりこない」

提督「あの子達が美味しい美味しいと言って食べてくれるのが一番嬉しいのだ。料理を作るものとして、家族として」

提督「娘達の心身に何かあったのではないかと心配になる」

提督「俺自身、ここ最近を振り返っても特にひどいことをした覚えはない」

提督「攻略中の海域で何か深海棲艦にされたのだろうか」

提督「だとしたら許せない。攻略の密度を上げるか迷う」

提督「仕事中でも、休日でも、普段通り接して、声を掛け、ふれあいを通して戦場という歪な空気に晒される娘達を癒やす」

提督「心が荒まないように、じんわりと家庭の空気に触れさせる」

提督「いつもと変わらない日常だ」

提督「一体何があったのか…………」

提督「嫌な考えがポツリと浮かぶと止まらなくなる。俺は執務中にもかかわらず頭を掻き毟った」

提督「数人で部屋に集まり、隠れてコソコソ何かをしている艦娘がいる」

提督「休日や勤務時間外は極力家族のように接してはいるが、やはり見られたくないものでもあるのだろうか、ご丁寧にカーテンまで閉めている」

提督「家族のように接するのはやはり間違っているのだろうか」

提督「一度気になって見てみようとしたが、雪風に昼寝の催促をされて出来なかった」

提督「悩んでも仕方がない。もう、気にしないようにする」

提督「ここ数日、体調が優れない」

提督「鳳翔の補助を受けつつ、執務を行う」

提督「書類の中に青葉のレポートがあった。別段目立つことは書いてはなかったが、ここ最近、体調不良になる艦娘が数名いるとのことだ」

提督「今は季節の変わり目でもない。何か良くないことがあるのではないかと心配になってくる」



提督「執務中、席から立って数歩歩くと突然バタリと倒れてしまった」

提督「その場にいた鳳翔と長門が俺を運んでくれたらしい」

提督「明石によると栄養が足りてないとのこと。最近飯がのどを通らなくなっていたせいだ」

提督「2日間の入院と、点滴投与を受けた」

提督「退院した俺は執務を夕方で一度切り上げ、食事を取るため食堂に向かった」



パン!パパンパンパン!!



提督「扉を開けた瞬間、クラッカーと思しき軽い炸裂音が響いた」





「「「「お父さん、お誕生日おめでとう!!」」」」



パチパチパチパチパチ…………



提督「一瞬なんだか分からなかった。絶え間なく続く拍手と賛辞の嵐。たくさんの料理、お菓子、花飾りに紙飾り」

提督「いつもの服装にお手製であろうワンポイントアクセサリーを着けた娘達」

提督「数秒フリーズした俺は我にかえり、万幕を見てやっと気づいた」



【提督おたんじょうびおめでとう!!】

提督「そうか、俺は今日は俺の誕生日だったのか」



提督「その事実に気付き、内装を見てて俺はひとつの事実に至った」

提督「娘達がここ最近素っ気無い態度を取る、飯が余る、隠れてコソコソする」

提督「全てはこの日の為の下準備だったのか、と」

鳳翔「提督、いえ、『貴方』お誕生日おめでとうございます」

提督「鳳翔が近づき、俺に花束を渡してきた」

提督「色とりどりの花がドライ加工され、一つにまとめられている。恐らくはハンドメイドだろう」

提督「受け取った俺は溢れ上がる感情を抑えられず、鳳翔に抱きついて大泣きした」

提督「こんな良い嫁さんがいて、たくさんの娘達に囲まれ、祝福される」

提督「俺のやってきた事は間違っちゃいなかった。正に感謝感激雨あられだ」

提督「事実を知った今、体調はすこぶる良い。ひとしきり泣いた後はプレゼントを受け取った」

提督「駆逐艦組からは三色で折られた星形正二十面体立体折り紙。所々歪なところがあるがとても丁寧に作られていた」

提督「軽巡洋艦組からは新しい万年筆。一目見ただけで分かる。こいつは上等だ」

提督「重巡洋艦・航巡組からは以前から欲しかった基地レーダーのアップグレードパーツ。これで娘達を守る手立てが取りやすくなる」

提督「潜水艦組からはオリョールの海で捕れた新鮮な魚介類。既に半数は調理されてここに並んでいるそうだ」

提督「軽空母・空母組からは俺が腕組みをして立っているミニチュア像が乗ったでっかいケーキをくれた。少し荒いが本人たち曰く5日で仕上げたのこと。無茶しなくてもいいのに。あと、赤城が獣の眼光でケーキをガン見していた」

提督「戦艦組は新しい執務用のチェアをくれた。早速座ってみる。驚くほどしっくり来て寝てしまいそうになる」

提督「やってくる娘達を順繰りに抱きしめ終わった後はパーティーが始まった」

提督「赤城や加賀、大和などの大飯食らいのメンツがが大量に飯をぱくつく」

提督「グビグビとアルコールを飲んで楽しみながら食事をつまみ、どんちゃん騒ぎをする一部の娘達」

提督「ケーキ類の菓子コーナーでは甘い物好きの娘達が争奪戦をやっていた」

提督「皆おしとやかに食べているが、眼光は深海棲艦を狙う時の眼だ」

提督「体調は回復したものの、胃が食事を受け付けない俺は鳳翔お手製の粥を食べ、雰囲気を楽しんでいた」


提督「深夜。パーティーの片付けは全員が手分けして行って素早く終わり、すっかりいつもの静かな食堂に戻った。」

提督「提督室に戻った俺は鳳翔に膝枕をされていた」

提督「俺はまどろみに落ちる中、鳳翔の綺麗な瞳を見つつ囁いた」



提督「『鳳翔、ありがとう』」



鳳翔「こちらこそ、ありがとうございます」



提督「その後は内緒だ。ただひとつ言えることがあるとすれば、『最高の夜であった』という事だけだ」



完!!

感想ありがとうございます。

精神的なダメージを癒やしてくれる存在が居るってのは良いですね。

私もそんな人を見つけたいものです。

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