【艦これ】提督「失った物、手に入れた物」 (146)

・独自世界観
・ガバガバ戦闘シーン
・安価要素

などがあります、その点留意して頂ければ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1422376682



【夢―1】



『…………』

青年は、海を眺めていた。

南国の穏やかな碧い海を。

暖かな風が吹き、小さな波だけが寄せる浜辺から。

その髪を揺らす夜風が運ぶは、嗅ぎ慣れた潮の香り。

日が高ければさぞかし良い南国の砂浜としての体を成すであろう場所。

しかし青年の目には、かような呑気な場所にそぐわぬ剣呑さがあった。

『……決戦、か』

『いよいよ以って、って感じですかねぇ』

見つめる先は、暗闇の奥にある水平線のそのまた向こう。

真っ白な帝国海軍第二種軍装に身を包んだ彼。

その眼光は、闇夜に輝く刀のそれ。



眉目は凡そ秀麗と言って差し支えない、すれ違った10人に半分、とまで言うのは流石に誇張かもしれないけれど。

まあ、1人くらいは振り向いてくれるであろう容姿。

そんな青年、普段は好色も好色といった程に女の尻ばかり追い掛けていたりするが――

とりあえず、その顔も今は真剣な双眸の下に隠れて。

海を睨む目は、ひたすらに鋭かった。

真白な制服が、膨れ上がった闇の中でぽっかりと浮き。

聞こえるのは、波が押し寄せる音と虫の声。

ここが激戦地の最前線であるということなど、誰が信じようか。

それ程に、静かな夜だった。

『…………誰だ』

だからこそ、砂浜を踏み締める音は、余計に大きく響いた。

腰の軍刀に手を掛けて、青年が振り向く。

『……って、何だ、脅かすなよ』

が、彼は影の正体を見た瞬間に、目を細めた。




キャラ安価、多分重要なポジション 直下



影―北上は、やっと見つけたと溜息を吐く。

『……灯りも持たずに、夜の散歩ー?』

『夜目は効く方でね』

『呆れた、転けても知らないよ』

諫めるような声だった。

けれど、怒ってはいない。

悪戯を叱るような、甘い声。

『何してたの?』

『海を見てた』

『海』

少女が復唱する。

そして視線を彼と同じ方へとやって。

『まっくら』

こんなものを見て何が面白いのかわからない、と眉を顰めた。



『ほら、明日はあの向こうの方にいるだろ…って、思ってた』

『…ああ、なるほど、うんうん』

それで珍しくそんなに真剣なのか、と少女は合点がいったらしい。

『死ぬかもしれない』

『…それは、いつだってそうじゃん?』

何も明日に限ったことじゃないよ―言って、隣に並んだ。

青年は視線に込めた真剣さはそのままに、少女の肩に手を回す。

全くこの男、別に意識しての行動ではなく自然な動きでこんな事をするのだから恐ろしい。

少女はそれを特に嫌がることもなく、むしろ彼の方へと身を寄せる。

すっぽりと青年の腕に収まった少女は、満足そうに息を吐いた。

『……だけど、明日はどれだけの規模の戦闘になるか』

『…大丈夫でしょ、今回もさー、たぶん』

『………死ぬかもしれない』

前の言葉を、繰り返して。

普段はどこか軽く物を言う青年も、今回ばかりは真剣だった。

知ってか知らずか、肩を抱く手に力が籠ったと見え、少女が痛いよ、と顔を歪めた。



『……どしたのさ、ほんと』

『怖いんだ』

『めずらし、初めてじゃない、そんな事言うの』

『……終わりが、見えてきたからかもしれん』

『終わりって…戦い?』

『……ああ、そうさ』

挟んだのは、溜息一つ。

『…そろそろ終わるんだって実感してきたら、段々と怖くなってきた』

『……そっか』

少女は、軽い微笑みを湛えて言葉を受ける。

弱音を吐く子供を安心させる、母親の如く。

『大丈夫だよ、だーいじょうぶ』

青年も少女も、それに意味が無いことくらいは承知していたのだろうけれど。

その言葉に、青年の目から、少しだけ曇りが取れた。

それを見て取って、うん、と少女は頷いて、続ける。

『それよりも、終わった後の事を考えたらいいじゃん』

『終わった…後?』

『そ、後』

肩に抱かれた少女が、くるりと身を翻す。

その勢いでもって手を押し退け、青年の前へ躍り出た。



『どーやって生きるかっ』

『……後、ねぇ………後なんて…考えたこともなかったな』

呆れたように、青年は笑う。

それは少女の脳天気さに対してか、はたまた彼の弱さに対してか。

『……生き残れるのかね』

『そりゃー無理でしょ、多分死ぬさっ』

『おーい…』

転じて頭を抱えた青年に、少女が一歩を詰めた。

白い二つのシルエットは、ちょんと押してやれば触れてしまう程の距離。

『でも、戦いを生きて抜ける事考えるのは、タダだから』

『死ぬこと心配するよか、よーっぽど生産的だ、違う?』

変わらぬ微笑みに、青年は降参だ、と両手を挙げた。



『へいへい、そうだな、その通りだ』

『わかればよろしい』

言って、少女がご褒美代わりとでも、距離を詰める。

互いの唇が触れ合って、軽い音がした。

一瞬緩みかけた頬と、腰に回しかけた手を抑えて、青年は首を振る。

その様子を、彼女は楽しそうに見守っていた。

『…じゃあ、私も一つ質問、てか、半分弱音、弱音返し』

『おう、何でも言ってみ』

そこで初めて彼女は眉を下げた。

少し言葉を躊躇って、ややあって意を決したか、口を開く。

『深海棲艦とさ、艦娘の違いって何?』

『…………』

その質問は、少女にとってどういう意味があったのか。

青年が答えられないで黙っていると。

『…なんてね』

少女は誤魔化すように、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

『……味方か、敵か…そんだけだろ』

そんな彼女に対して青年が絞り出せた言葉は、それだけだった。



『…そっか』

『……そんなもんかぁ』

『…そんなもんさ』

二人は再び並んで、海を見た。

無言が流れて、静かな夜が戻ってくる。

だが、それもすぐに遮られた。

砂浜を踏み締める足音、それも一つや二つではない。

複数人が、あーだこーだと姦しく言い合いながら青年達の方へと向かっていた。




登場艦娘、先着4人



『北上さーん!しれーかーん!なーにやってんのー!』

長い髪を後ろで束ねた少女―清霜。

咎めるというか、拗ねた声。

それは青年ではなく、その隣の少女へと向けられていた。

『見つけたら教えてって言ったのにー』

『…あっはは、ごめん、ちょいと独り占め』

笑う彼女に、質問をした少女はちぇ、と唇を尖らせた。

便乗する如く、声が被さる。

『そうです、いっつも司令官の近くにいるのに、ずるいですっ』

桜色の髪を揺らして、体全体で怒りを表現したつもりなのか、両手をぶんぶんと振っている少女―春雨。

『…そ、そうですよっ、北上さん』

二人の意見に遠慮がちに覆い被さるのは、この中にあっても一等幼さを感じさせる少女―朝潮。

『…司令が貴女を信頼しているのは、承知しておりますが…』

先の三人よりは落ち着いた口調ながらも、北上を責める半眼は鋭い―秋月。

合わせて4人、小さな影が、振り返った先に立っていた。



さて、そんな彼女らを尻目に、この青年先程までの眼光はどこへやら。

もう頭の中は美少女たちが自分を取り合って争うというシチュエーションへの満足感でいっぱいであった。

その証拠に、だらしなく緩みきった頬。

というかそもそも明らかに年齢層というか見た目というか諸々に問題が有りそうなのだが、それでいいのか。

多分この状態で発せられる声など、あへとかうへとかそんな物だけだろう。

そこに抜身の刀の面影は完全に無く、もはやただの好色男。

言い争っていた少女らも、それを見つけて気勢を削がれた、と溜息。

『あっは、やっぱ大物だ、提督』

『しれーかんさー、緊張感無いよねー』

『司令官ったら……』

『…あ、朝潮はあまり気にしてはおりませんが…あの、流石にその笑顔は、…』

『司令…』

『…はっは』

青年は笑う。

彼の不安は、いつの間にか消えていた。

何とも単純な男ではあるが、なるほど古来より男なんてこんな物かもしれない。



『うんうん、…まーあれだ、お前ら見たら元気出てきた』

ぐっ、と背伸び。

なんか色々台無し感はあるが、青年も少女たちも特には気にしていない様子。

恐ろしいことだが、もしかしていつもこんな物なのかもしれない。

繰り返すが、ここは激戦地の最前線。

『よし、全艦叩き起こしとけ、機関に火ィ入れとけってな、日の出には出る』

『あいさ、提督』

『清霜、艦の状態』

『だいたい良好、たまに小破の娘がいるくらいだよ』

『秋月、妖精は?』

『…問題ありません、揃っています』

『春雨、空母と戦艦はまだ戦えそうか?』

『はい、問題ありません』

『…うん』

『で…朝潮』

『は、はいっ!』

『可愛いな』

『……は?…え、いえ、はい…えぇ、えっ!?』

『…い、いえあの嬉しいのですがなぜいきなり今なのでしょうか、いえ勿論嫌だとかそういう気持ちは無くって、えと…』

『……てーいとく』

『…悪かったって』

4人の目、計8つの光に諌められて、流石の青年も肩を竦めた。



『さって、それじゃあ――』

と、言いかけたところで、青年が膝から地面に崩れた。

『…あれ?』

不思議そうに自らの体を見る彼と、ああ、と顔を曇らせる少女達。

それはややあって、一様に申し訳無さそうな顔となった。

『……ごめんね、提督』

『………北上?』

『……さっき、ちょちょーっと細工しちゃった、てへ』

何だそれは、と声を上げようとして、それすらも覚束ない事に気付く。

もはや、膝で身体を支えることもできなくなって、頭から柔らかな砂浜に倒れた。

『…皆で話し合ったんだ、もう、提督まで巻き込む事は無いよねって』

『…ごめんなさい、司令官』

『………ごめんね、しれーかん』

『申し訳ありません、司令官』

『………司令』

薄れていく視界、消えていく少女達の声。

謝罪の声が、遠くで響いた。

その中には、確かに嗚咽が混じっていた。



なぜ謝る?

なぜこんな事をする?

なぜ――

沢山の疑問符が、青年の頭で浮かんでは消えていく。

『…守―た――さ、提―を』

『…提―だけ――、死な―で―ほし――て――』

視界は、闇。

その先に海は無い。

どこまでも、暗い闇。

その闇に、全てが溶け出していった。

疑問も、不安も、想いも。

何もかもが、溶け出して。

そして遂に、青年は目を閉じた。

初期艦安価 といっても多分増えることは無い
先着5人




【Chapter1-1】


「……くそっ、くそっ、くそっ!」

帝国海軍新鋭駆逐艦「松」の艦橋は、大騒ぎに包まれていた。

中でも最も取り乱していたのは、艦橋の中心、帝国海軍第13艦隊司令官としての任を請け負う青年。

空母2隻を中核とする彼ら第13艦隊の任務は、対深海棲艦大規模反攻作戦に先駆けての先制攻撃の一翼を担うことであった。

それは面白いくらいに上手く行って敵艦隊に大打撃を与え、後は攻撃隊の帰還と同時に帰投するだけという段になった。

だが―主戦場から大きく離れた場所で待機していたというのに、第13艦隊は運悪く深海の航空隊と出くわしてしまう。

「こんな糞みたいな部隊で、こんな糞みたいな戦場で、俺は死ぬのか!」

この不条理を叫ぶ青年、今回もそうだが中々どうして毎度毎度廻りが悪い。

海大では常に首席クラスという程のエリートだったこの男、勿論それに見合った出世街道を進む筈だった。

が、卒業間近に慣れない女遊びなどに腰を浮かしたのが運の尽き、当然そんなものを上手く隠す術を知らぬ彼、簡単に事態は露見して。

しかも、その手を出した相手がさる華族様の情婦だったというのだから笑うしかない。

比喩でなく首が飛ぶレベルの失態を犯した彼がどうして艦隊司令官などになれたかというと、とどのつまりそれはこの第13艦隊であったからである。

というのも帝国海軍の艦隊、正式には13は抜け番となっており、12の次は14艦隊と記録されている。

だがまあ、そんな所には裏の事情が付き物で。

例に漏れず、秘密裏に存在する第13艦隊は、大本営、というより海軍省の直属という特殊な命令系統の下にあった。



と、ここまでならなんだか特殊部隊のようで格好がつくが。

問題は、第13艦隊がほぼ「懲罰部隊」に近いということである。

搭乗員から船員、整備員に至るまで問題児、または超問題児の寄せ集め。

個性が過ぎて他の部隊で扱い切れなくなった者などはまだまだまとも、犯罪者やら精神疾患患者やらその他諸々何でもござれの姥捨て山。

使えなくなった人間は一処に集めておく、これもまた人の知恵か。

そんなゴミ溜めもゴミ溜め、任務は使い走りから汚れ仕事まで。

過去、命令で味方への攻撃を行った事も一度や二度ではない。

今回は流石に大規模反抗作戦ということで普通の艦隊のような任務をとってはいるが、完全に単独行動。

万が一攻撃を受けても背中を任せられる者は誰もいない、というかまさに現在その状況。

その上もし第13艦隊の攻撃機が深海棲艦を仕留めてもその栄誉は政治的やらいろんな理由で他の誰かの元へゆく。

つまり此処の提督という任務、これ即ちどうかすればいっそ一思いに殺してくれた方がいくらか楽、とはエリート精神叩き折られた他ならぬ青年の言で。

いやはや良かろうならば殺してやる、と応えたのは深海棲艦といったところか。



さて――戦況に戻って。

そんなゴミ溜め、第13艦隊には勿体無い事に空母が2隻もいて、そう易易と彼らに攻撃を許しはしない。

そして直掩の戦闘機部隊はまさに獅子奮迅、八面六臂の大活躍。

けれど、四方八方に飛び回る空中で、全くの隙が出来ない時間など無い。

またその上第13艦隊、前述した様に酷い有様の搭乗員。

皆それなりに練度こそ高いものの、連携という言葉を知らないのだ。

これだと見つけた獲物へ我先に殺到し、ともすれば空中激突すらしかねないほどに個。

隊という単位での行動など糞食らえ、そんな意識が底にある。

流石のはみ出し者共、だけれどそんな彼らも自分が死ぬのはごめんと見えて。

後方の我が家、「瑞鳳」「葛城」には一機の敵機も近付けまいと指揮軒昂。

高い練度を存分に発揮して、深海側の艦載機は次々届かず落ちていく。

だが一方、前方旗艦の「松」になど注意を払う者はなく。

いくら敵が空母へと集中攻撃を掛けるとはいえ、隙だらけの他の艦を見逃してくれる程優しくはなく。

結果として、第13艦隊旗艦「松」を取り巻く状況は最悪となっていた。



しかし元を辿るのならば、物分かりの悪い船員共に指示をするのが面倒臭いから間の伸びきった単縦陣で戦闘に望み。

艦娘に乗るのが嫌だからわざわざ通常艦「松」を旗艦にして意地の如く突出した、そんな青年の責任も大きい。

「…お、おい、状況、状況を…おい!」

両舷より迫り来る雷撃。

直上より迫り来る爆撃。

「な、なぁ、嘘だろ、こんな、こんなところでさ、こんな――!」

どれも、一発として避けられるものではない。

青年は、最後まで奇跡を希い――――――轟音。

「松」は、巨大な水柱を何本か上げ大きく傾き、止めとばかりに落とされた250kg爆弾が艦橋へ。

どれほど希おうと、そんな都合の良い奇跡が起きるはずもなく、新鋭駆逐艦はその乗員と共に海の底への片道切符を押し付けられた。


―同時、4000m後方、第13艦隊僚艦「大和」にて。


提督「……ん、……あ?」

頭に鈍痛、それに尚悪いのは音。

四方八方からぐわんぐわんやら何やらよくわからない音がしている。

そして眼前には、綺麗な女性。

大和「…やっと起きましたか?」

提督「…どこだここ、やけにうるさいが…」

大和「戦場ですよ」

提督「は…戦場?」

阿呆のように、周りを見回す。

それは戦艦の艦橋であるようで、船員が目まぐるしく動き回っているのが目についた。

大和「…どうせなら、暇な時に目を覚ましてくれれば良かったものを…」

提督「……いや、悪かった、そんで一体、何で俺はここに?」

大和「それは、此方の質問です」

提督「…へ?」

大和「貴方は一体何者ですか、漂流者の士官さん」

提督「……漂流者?」

大和「…はい、貴方、短艇に乗ってぷかぷかとそれはそれは気持ち良さそうに漂っていましたよ」

提督「……はぁ?…あのなぁ、俺は……」

提督「俺は………」

大和「……?」

俺は――

一体、何をしていたのだろうか。

というかそもそも、俺は誰だろう。

頭全体に靄がかかったように、その記憶を思い起こすことがままならない。



提督「……誰だ、俺?」

大和「…・………」

女性の表情は、明らかな呆れ。

そして、奥に僅かな苛立ちが見えた。

といっても、そんな視線を向けられたって、こっちはこっちで真剣なのである。

そりゃあ確かに馬鹿の言ではあったけれど、そこまで冷たい視線を向けなくても。

とりあえず世界観書くまで行こうと思ったが開始時間が遅すぎた
ちゃんと安価取ったもんで、殺しはせんです
また今度



提督「………」

さて、とにかくどう説明したものかと考えて。

だけどよく考えると説明することがそもそも無い。

記憶が無い事を証明するとか、難易度高すぎるぞ。

その思考を遮ったのは、見慣れない機器から流れるぶつ切りの音声だった。

『大和さん!「松」、直撃弾多数!大破炎上しています!』

大和「五月雨…提督は?」

『……連絡、取れません!』

その慌てた声と対照的な、落ち着き払った目の前の女性の声。

流石に、少し違和感を覚えた。



提督「……なあ」

大和「はい?」

提督「……いや、結構危ないんじゃないのか、今」

大和「……まあ…そう、でしょうかね、少なくとも、指揮官は亡くなったようですが」

大和「後方の空母に貼っ付いてる艦は平気でしょうけれど、此方は危険といえばその通りです」

事も無げに言う女性に、思わず閉口してしまった。

とんだ艦に拾われてしまったものである。

頭を抱え、そこで初めて視線を顔以外に移すと、目に入ったのは大きな膨らみ。

張り裂けんばかりに出っ張った双丘は、俺の目を留めるに十分な破壊力を持っていた。

提督「…………おぉ」

大和「…どこを見ているのですか?」

提督「……ああいや、うん…」

すぐに飛んでくる視線。

全く全く、こんな物をぶら下げて歩くとは大和撫子の風上にも置けぬ。

とりあえず責任転嫁してみたものの此方を責める視線は消えず、なんとも参った。

ので、今度は話題逸し。



提督「…何でそんなに冷静なんだ?」

大和「…冷静というか、諦観というか」

大和「特に、思うことがないだけですよ」

提督「………そりゃあ何とも、寂しいな」

大和「記憶が無いよりはマシだと思いますが」

提督「……手厳しい」

にっこり笑顔を作った女性に、こりゃ敵わんと両手を挙げる。

艦橋の外では依然様々な音が響いているというのに、二人揃って呑気なものだ。

或いは、この女性の諦観に、自分まで引っ張られたのかもしれない。



大和「…さて、それでは」

提督「ん?」

大和「指揮官がいなくなってしまったもので、指揮を委任してもよろしいでしょうか、漂流者の士官さん?」

提督「………いや、無理だろ」

物凄いさらっと言われ、思わず少し呆けてしまった。

艦隊の指揮の委任―それも戦闘中いきなりなど、どう考えても不可能である。

そんな考えを見透かしてか無視してか、相変わらずの笑い顔で女性は続ける。

大和「どうせ誰が指揮しても変わりはしませんので、形だけでも」

提督「……」

うわ正直な子―思いつつ、促されるままに艦橋の中心へ。

そこには、やはり先程の機器のように見慣れない計器やらなんやらが並んでいた。



提督「…なんだこれ?」

大和「最新型のレーダー、ですね…米英の共同開発で……えすじー?とか、ぴーぴーあい?とか、凄いやつだって言ってましたけど」

何しろ横文字には弱くって、と頬を掻く彼女。

大和「とにかく帝国海軍のへっぽことは一味も二味も違うって言ってましたよ、故提督が」

提督「…そうなのか」

素晴らしい信頼関係が伺えて、ちょっと流石に亡くなってしまったという彼が可哀想になった。

とりあえず心の中で敬礼し画面を見れば、なるほど確かにこれは凄い、この艦艇であろう影の全周にまるっと他艦艇が表示されており、陣形まですぐにわかる。

記憶は無い筈なのに、凄い、と思えるのは何とも不思議な体験であった。

というか―どうにも奇妙なのは、記憶の抜け落ちが酷く限定的であることだ。

海戦についてだとか、兵装についてだとかは簡単に思い出せるのに、自分という存在に関しての記憶に触れることが出来ない。

この艦隊が酷い陣を組んでいるのが一目で分かるのも、その奇妙で器用な記憶喪失のお陰なのだろう。



提督「……単縦陣?」

大和「らしいですね、一応」

有り体に言って、物凄くジグザグしていた。

しかも艦同士の距離がバラバラ。

余程練度が高い艦隊らしく、流石にこれには溜息を吐くしかない。

大和「…それで、ええと…後方2隻は空母です、付随する護衛艦は『舞風』『睦月』『平戸』…直掩機が防空を担当しておりますが、前方に目を向けてくれる優しい搭乗員はいません」

提督「……そ、そりゃまたなんで」

大和「そういう物だからです、としか…ええと、肝心の此方はと言いますと…観測員、状況は?」

伝声管に女性が声を吹き込む。

ごほんごほんと何度か咳払いがあってから、しわがれた声が伝わってきた。




『あー…前から―最前方「松」は既に轟沈、その後ろ「竹」は炎上中、「五月雨」は何とか応戦してまさァ』

『攻撃機6、爆撃機4は依然健在、ですが両方弾切れンようですね、退避していきます、新手も来る気配はナシ』

『どうも後方の航空隊が頑張ってるらしいですねェ、いや、重畳重畳、不意打ちにも関わらず被害は駆逐2に留められた、大勝利ですなァ、はっはっは!』

先程の様子を見るに沈んだのは旗艦じゃなかったのか、と思わず突っ込みたくなるが我慢。

その言の通り、艦橋から上空を見れば、帝国の航空機に追い立てられるようにして離脱していく敵航空隊。

ひとまずはこれで戦闘は終わりらしい。

大和「ご苦労様――と、まあ、お聞きになりましたか、助かったみたいですよ?」

提督「………戦闘も終わったみたいだし、もっかい海に流してくれないかな?」

大和「いえいえ、そうご遠慮なさらず」

命は助かったけれど、多分ここでお世話になっていたら遠からず死ぬ気がする。

それは記憶を失って尚、脳かどっかの原始的な部分が鳴らした警鐘だったのだろう。

今度は良い人に拾われたい、そんな思いを抱いて眼前の女性を見る。



提督「………」

大和「…というか、ですね、大和としましては、これでも士官さんを心配しているのです」

提督「へ?」

大和「記憶が無い、とのことですので…ご存知でないかも知れませんが、本日は対深海棲艦大規模反攻作戦―Y作戦が実施されました」

言って、彼女は目の前の机に海図を広げた。

そこにとん、と指を置いて、おそらく今回の作戦針路なのであろう箇所へと、指を滑らせる。

細くて綺麗な、そう、まさに白魚のよう、という言葉が似合う指だった。

この恐ろしいまでの肌のきめ細やかなのには思わず異性、いや同性であっても溜息を漏らしてしまうのでは――

大和「……聞いてますか?」

提督「ああ、うん、うん…作戦ね、作戦」



我ながら、余計なことを考える頭である。

記憶を失う前はどんな人間だったのか、ちょっと想像すると中々ぞっとしない。

そうして頭を掻く俺に構わず、女性は続ける。

大和「この作戦の主目的はサイパン島の奪回、ひいては、長らく劣勢を喫していた太平洋方面の戦局打開」

大和「帝国海軍の艦娘艦隊を主力とし、欧州、米大陸の脅威から脱した英、米、伊、独、仏といった主要国家も参加しています」

提督「………凄い規模だねぇ」

大和「……」

いやぁ、そりゃ世界中の国家の共同作戦ってことかぁ、なんてぽけーっと考える俺を、大丈夫かこいつといった視線が射抜く。

…そうなるに至った経緯も何も理解できていないし、そもそも覚えていないのだから仕方ないだろう。



大和「…まぁ、とにかく超大規模な戦闘が行われ――ています、現在進行形で」

提督「え、参加しなくていいのかい?」

大和「我が艦隊はサイパンより出立した敵艦隊の漸減邀撃――即ち、敵が主戦場に辿り着くまでに戦力を削ることですので、もう状況は完了しています」

大和「その攻撃隊が成功の電を送ってきた、その後に敵航空隊に察知され、先のような戦闘になったのです」

提督「…なるほど」

大和「先程、本艦隊の航空機が接敵したとの情報が入って参りましたので、現在戦闘中、というわけです」

提督「…理解したよ」

…にしても、いくら自分達の役目を終えたといえ、こうまで戦況を他人事のように語るものなのか。

それとも、これも彼女の言う諦念―なのだろうか。

考えても答えの出ない問題など思考の容量を割くだけ無駄だと頭を振って、質問を続ける。



提督「で、その肝心の俺への心配ってのは?」

大和「はい、別に大和と致しましてはこのまま士官さんを大本営の方に引き渡すのは抵抗はありません」

大和「というより、それが自然でしょう」

提督「…まあ、そうだな」

大和「…ですが…士官さんは、それではマズいのでは?」

提督「どうしてさ」

証明の役に立つものを全く身に付けていないってこたぁ無いだろうし、とりあえず上の方で身元を照会してもらえば俺の素性も割れるだろうに。

その考えを彼女は読みきっているのだろうて、俺の口を制して言う。

大和「…わかりませんか?貴方は艦隊戦が出来るくらいの知識はある、ということは元は最低でも艦長クラスの士官さんだったのでしょう」

大和「生憎、階級章がないようなので厳密にはわかりませんが――まあ、駆逐艦長なんかの少佐クラス、でしょうか、あくまで見た目の年齢的にですがね」

大和「勿論、この作戦にも参加する手筈だったはずです」

提督「うん」

ははぁ、なるほど、なんかそれっぽい。

見事な推理力だと感心はしたが、どこもおかしくないと感じた。

しかしなぜこの女性、え、まだ言いたいことに気付かないんですか、みたいな眼でこっち見てるんだろう。



大和「…つまり…作戦の前に脱走した士官、という可能性が一番高いのですよ」

提督「……………」

そして、さっきまで呑気にうんとか言ってた自分を恥じることになった。

…なるほど、言われてみれば。

大規模な作戦の前に艦隊から逃げ出した士官―という構図が、それが真実かどうかはともかくとして、全くもって当てはまる。

それは非常に説得力のある推測であり、要するに記憶をなくす前の俺がそんな事を企む不届き者であったのならば――

大和「…大本営に引き渡して良いですか?」

提督「……勘弁してください」

最高に素敵な結果が待っている、という事は容易に想像できたので、とにかく頭を下げた。

大和「だから言ったじゃないですか」

ふふ、と笑う女性。

思わず口笛を鳴らしたくなってしまう程に上品な笑み。

それに一瞬懸念事が飛びかけて、慌てて頬を軽く二三叩いた。



提督「ごほん、……そ、それで…心配してくれるってことは、助けてくれるのか?」

先よりも言葉に媚びが浮いたのも、無理からぬこと。

情けないとは思うけれども、流石にこのまま突き出されちゃあたまったもんじゃない。

大和「ええ、はい」

提督「ほ、本当か!?で、でも…どうやって…」

大和「ですから」

相変わらずの上品な笑み。

それは、今の状況では唯一俺に垂らされた蜘蛛の糸。

目の前の女性が、まるで菩薩か何かのように見えた。

大和「この艦隊の指揮を委任したい、と言ったでしょう?」

大和「そうすれば適当に身分など詐称してあげることも可能ですし、別に故提督さんの身分をそっくりそのまま引き継いだって構いません」

提督「……そんな事が…?」

大和「はい、何分、指揮官が誰だとか、どこから来たとか――『そんな細かいこと』には拘らない艦隊ですので」

提督「そ、そりゃあんた、出来るなら一番良いけどさ…」

大和「大丈夫ですよ、必要なのは貴方の意思だけです」

一層、笑顔の輝きが増して。

勿論の事、俺はその提案に一も二も無く頷いた。

先に鳴り響いた警鐘など、既に何処かへすっ飛んでしまっていた事は、言うまでも無い。

ああ――だけど。

この蜘蛛の糸が繋がる先が楽園ではなくて。

文字通り蜘蛛の巣だというのだから、笑えない。

まだそれを知る由もない俺は、呑気にこれからの生活に思いを馳せて。

この選択が間違いであったと気付くのは、もう少し先だったのであった。



【Chapter1-1 end】

何でID追われてるんですかね…つーかバレるの早すぎィ

【システム説明】

進行としては~週、といった風に進めていきます
その週に1回、行動安価
選択可能なのは以下の3つ
A.交流(現在の艦娘とコミュニケーションを取り、信頼度を上げていきます)
B.夢(遙か沈んだ記憶の断片。凡そ時系列は出会い~決戦前、まで)
C.メインストーリー(そのまま。前回ストーリーから3週経てば選択可能。5週選ばれなかったら次の週は強制選択)


A.交流


五月雨     **0/200(普通)
舞風      **0/200(普通)
大和      **0/200(普通)
睦月      **0/200(普通)
瑞鳳      **0/200(普通)


コミュ中に選択肢を選び、コンマを取って信頼度を上げましょう
200に達すれば次の状態へ、状態の変化は以下の通り
(普通→信頼→好意→恋慕→盲信→狂愛)
※ただし、恋慕からは好感度変化無し交流が選択可


B.夢


北上   *0/10
清霜   *0/10
朝潮   *0/10
春雨   *0/10
秋月   *0/10


※10/10で選ばれた場合は小話となります


C.メインストーリー(3週後から選択可能)


【Chapter1-2 糸の先は、第13艦隊】

とりあえず第1週の行動安価を取って終わり


【第1週】


>>+2


A.交流


五月雨     **0/200(普通)
舞風      **0/200(普通)
大和      **0/200(普通)
睦月      **0/200(普通)
瑞鳳      **0/200(普通)


B.夢


北上   *0/10
清霜   *0/10
朝潮   *0/10
春雨   *0/10
秋月   *0/10


次のストーリーまでの秘書艦>>+3(週初め、ちょっとした会話イベント)



提督「…………はぁ」

……鎮守府の中を、とぼとぼと歩く俺。

なんてことはない、一処にとどまっていると頭がおかしくなりそうだからだ。

第13艦隊に与えられた、宿毛湾泊地。

それはこの艦隊の規模に比べればかなり立派なものと言えた。

当然なんでこんな物をくれるのかという疑問は抱いたが、まぁその時はさして気にはしていなかった。

何せ、鎮守府の設備が良いことを憂う理由などどこにもない。

ボロけりゃ文句の一つも出るが、立派だからと文句を言う奴はそりゃ阿呆だ。

そして、ありがたいことにその疑問は帰投してすぐに解消させられることとなった。



湾内に艦を停泊させ、さてそれでは俺の新たな人生の出発点へと意気揚々、目の前に聳える立派な建物めがけて第一歩。

しかしその肩は俺を拾った―大和と名乗る―女性の手でがっしりと掴まれて、45度程視点を変更させられ。

そこに見えるはやはり立派に――生い茂る森。

何の冗談だと振り返れば、後から降りてくる第13艦隊の面々はそちらへ向かってだらだらと。

ははあこりゃきっと訓練か、さすがは規律厳しい帝国海軍、なんて楽観視をしていた俺はきっと正真正銘の馬鹿。

森に作られた道を10分程歩き、やっとこさまた海が見えた所。

一体何十年前に建てられたのだという建物へ、ぞろぞろ続く兵士たち。

後ろの女性に目配せすれば、心配するなと笑顔を見せて。

なんだこいつは兵舎かおっかねぇ、と安堵の息を吐いたも束の間。

彼女が指差す建物は、そのボロ屋より少し先へ行ったところ。

なるほどそこには『非常用司令施設』など書かれた此方もボロい建物。

ところどころのガラスがヒビが入っているように見えるのは、果たして目の錯覚だったろうか。



だけれど今は非常時には見えないぞ、というのに大和は俺をグイグイそこへ引っ張って。

その最上階―といっても3階であるが―の司令室なんて場所へと投げ入れられて。

そして、遂に俺も気付いたのであった。

この場所こそが、俺達のホーム。

つまり本拠地であると。

第7艦隊が使用する宿毛湾。

その背後に隠れるように存在する俺達は、名義上は第7艦隊の分遣艦隊という事になっているらしく。

艦艇施設は宿毛湾の物を利用させて頂いているものの、住む場所の面倒まで見てはくれぬと言うのが現状で。

止めとばかりにそもそも第13艦隊など正式には存在せぬ、特殊部隊といえば聞こえがいいただの懲罰部隊であるから目立つ場所では暮らせぬのだと大和は語り。

これからよろしくと差し出されたあの白魚のような綺麗な手の感触も、一切俺を昂ぶらせることはなかった。



――というのが5日程前で、今俺は宿毛湾の本施設をうろついていた。

あんな場所にいられるか、俺は素晴らしい施設へ戻るぞ―とでも言えれば良かろうが、現状これはただの散歩。

どうせあそこにいたってやることなんか無いし、手持ち無沙汰な状態であそこにいると気が狂いそうになる。

兵舎に顔を出してみれば、鬱病の者が廊下でぐたり、アル中の者が玄関でぐたり。

ならばせめてと大和やその他艦娘に会って少しでも癒やしをと求めてみるも、皆計ったように不在。

故に、俺はこんな場所を歩いていたのであった。

提督「あっはっは」

笑ってみる。

すれ違った下士官に、何だこいつと視線を投げられる。

提督「…………あっはっは」

笑ってみる。

この下士官と立場を交換できたら、どれだけ楽だろうか。



これも全ては記憶を無くしたせいだ、と以前の俺を恨んでみるも、そんな事に意味はなく。

むしろ記憶があったらあったで脱走兵としてどちらにせよ第13艦隊への配属なんて展開もあったのでは、などと思えば中々救いがない。

対深海棲艦への反攻作戦は大成功と帝国どころか世界中で喜ばれているというのに、俺の気持ちは暗いまま。

なんたってなんで深海棲艦が悪いのかすらわかっていない、そしてこいつはおいそれとその辺の人間に質問できるもんじゃない。

人類なら知っていて当然―と大和が言うまでの知識を聞くなど、記憶が無いと一瞬でバレる。

そんな彼女は今度教えると言ったきり、あれから会いもしていない。

なんでも艦娘―意のままに軍艦を操船出来る少女達、と同じような物らしいが、此方の艦娘についての知識だけは俺の中にあるのだからそれもまた気持ち悪い。

どうせなら全てすっぱり忘れてくれよと思うものの、都合はそこまで良くはなく。

さてさてそんな恨み節、向ける先無く呟いていれば、いつの間にやら鋼の音。

どうにも歩いている内、乾ドックまでやって来ていたらしい。



提督「……整備中か」

どうせやることなどありはしない、ならば船でも見ていこうかと見張りの海兵を尋ねると、構いませんよと二つ返事。

格好だけでも偉そうなのは得である。…俺は宿毛湾に対する権力など何も持っていないというのに。

しかし、もし身分など聞かれた時の事を何も考えていなかったのに思い当たって、我ながら多少閉口した。

まあ入れたのだからそれなら良かろう、そう考えを切り替えて。

熱気溢れるドックに入り、それがすぐに目についた。

睦月「…で、ですから、あのぅ、む、睦月に出来ることは、ありませんか…?」

「さっきからねぇって言ってんだろ、艦娘の嬢ちゃん」

睦月「で、でも!でも、睦月の整備をしてくださっているのに…」

「だから!邪魔だっつってんだ!」

睦月「……あぅ、あ…ご、ごめんなさい…」

「そこにいられるとよ、気が散るんだよ、さっさと出てけ!」

睦月「………で、でも…睦月の整備…だし…」

「手が進まねぇって言ってんだろうが!」

萎縮する少女に、恫喝する整備員。

ありゃあ――この前挨拶した、うちの艦隊の睦月じゃないか。



提督「……どうした、問題か?」

「…あん?…って、は、い、いえ、そういう訳では!」

のっぴきならぬ事情でもあるのか、と近寄れば、すぐに姿勢を正す整備員。

なんでこんな所にこんな格好の奴がいるのか疑問を浮かべているようだったが、流石の反応速度だ。

本日二度目の服装の威厳に感謝しつつ、とにかく何があったかを聞いてみた。

「…いえ、まぁこの嬢…艦娘の整備をしているのですが」

提督「ああ、そのようだ」

「そいつを…こいつがどうしても手伝いたいと言って聞かなくて」

提督「……そうなのか?」

睦月「………ぁい」

舌っ足らずで声量も足らずな返答が、俯いた少女から聞こえてくる。

…なるほど、そういう訳であったか。



提督「それはすまなかった、この子は私の管轄下だ、以後、言い聞かせておく」

「は、…感謝いたします」

睦月「…ぇ、と…あの…提督、さん…?」

提督「行くぞ睦月、あまり邪魔をするんじゃない」

睦月「……………」

こくりと、睦月が頷く。

整備員はどこか安堵したように息を吐いて、元の作業へと戻っていった。

そんな彼に背中を向けて、また出口へ。

一人増えた同行者に見張りの海兵は一瞬だけ目を丸くしたが、それが艦娘であろうという合点がいったらしく、すぐに表情を苦笑に変えた。

大方俺がこいつを連れ戻しに来たのだと用件を勘違いでもしたのだろう。

まあ、結果的にはその通りになってしまったが。



睦月「……あのぅ?」

工廠を出て人通りも少ない場所まで歩いてきたところ、先程からずっと何かを言いたそうにしていた睦月が声を出す。

睦月「…な、何で止めたんですか?」

怯えと恐れと、媚びが透けて見える声と態度。

此方の顔色をこれでもかと窺うような視線。

…ああ、この調子で話をされてたんじゃ整備員も苛立つことだろう。

最初の挨拶の時は――放心してて、あんまり記憶にないが、その時もこの様子だったのだろうか。

提督「……整備は整備員の仕事だろ?」

つい言葉に角張りが出たのも、その口調のせいか。

本来ならば気にせず優しくしてやるべきなのだろうが、どうにも、こういう娘を見ると、訳もなく腹からふつふつと沸き立つものがある。

艦娘なら誇り高くあれ―とでも言っていたのだろうか、昔の俺は。



睦月「…で、ですけど…睦月にも出来る事を…」

提督「いいんだよ、それが仕事なんだから、任せておけば」

睦月「………」

納得出来ない、という表情。

一つ溜息を挟んで、言う。

提督「…あいつらは、皆自分の仕事に自信を持ってる、少なくとも、お前が頼んでいた相手はな」

睦月「………ぁい」

舌っ足らずな声、返事くらいまともにしやがれと言いたくなる気持ちを抑えて続ける。

提督「……だけどよ、お前が手伝いたいって言い出すのはつまり、お前自身が整備の腕を信頼してないって言ってるようなもんだろう」

睦月「…え…?ち、違うよ、睦月はそんな…」

提督「お前がどう思ってるかは知らんが、向こうはそう受け取っていたんじゃないか」

睦月「………」

艦船の整備をする者が、その艦船本人から整備を手伝うと言われる。

まあ言葉にするとなんとも不思議な話ではあるが、そりゃまるでお前に任せるのは不安だと言われたようなもの。

整備に長く従事してきたのなら尚の事、良い思いはしないだろう。



睦月「…でも、睦月は、…出来る事、無いかな、って、思ったのです」

提督「……そうか、なら、他のことを考えることだ」

俺の顔色を窺う視線。

途絶え途絶えの舌っ足らずな声。

はっきり言って、不愉快だと感じた。

睦月「…だ、だって…睦月は…むのーだから」

睦月「……ここに来てからも、戦闘、全然できなくて」

睦月「……こ、この前も、何も出来なくって…」

睦月「ま、前の提督さんも、…睦月のこと、むのーって、言ってて、使えないって」

睦月「だ、だから…睦月、やれること、考えて…」

言い訳のつもり、なのだろうか。

此処で、そうか、頑張ったな、とでも言ってやれれば俺もいい大人なのだろうが。

どうにもそれに先立って腹が立つ。

単純にこういう態度が気に入らないというのもあるが――

ああ―その理由は視線だ。

媚びている、明らかに媚びている。

怒らないでと媚びている。間違ってないよねと媚びている。

なるほど、そりゃまたこんな場所に飛ばされるわけだ、ここは艦娘までこんななのか。

…………。


>>+2(選択肢によってコンマ*0.5、*1.0、*1.5で好感度上昇、自由は此方で上がり幅を判断します、内容によって*0.5~*2.0まで)


A.…不愉快だから、その目をやめろ。

B.…怯えないでくれ、怒りはしないから。

C.…そうか、まあ、迷惑のかからんようにな。

D.自由

D.出来る事を一緒に探していこう(*1.5)


提督「…そんならまあ、せめて出来る事を一緒に探していこう」

これは即ち、勝手に変なことをするな何かする前に俺に相談しろといった次第である。

少なくとも俺としては、そういう気持ちを込めて彼女にそう言った。

睦月「…い、一緒…、ですか?」

提督「ああ、またあんな事をされちゃあ敵わん」

顔色を窺う視線を、彼女はもう一度俺にぶつけている。

どういう真意か―などと、読み取りでもしているのだろうか。

提督「……どうした?」

睦月「う、ううん…なんでも…ない、です」

提督「ならいいが」

しかし、どうにも良いことなど起きやしない。

こんな場所への配属に加えて、こんな艦娘の相手とは。

刺々しいであろう今の精神状況が、自分でもわかる。

……はぁ、…少し、邪険にしすぎただろうか。



ふと思ったのは、そんな事。

提督「……睦月、帰るぞ」

睦月「ぁ、ぁいっ」

提督「…それから、返事はちゃんとしろ」

睦月「…ぁ、は、はいっ」

何にせよ、この場所から逃げ出すことは難しい。

逃げた先が銃口の向こうなど、もっとごめんだ。

…ならばせめて、状況を打開することを考えねばならんだろう。

………こんな艦娘、か。

…その言葉が自然に出るってことは、比較対象がいたのだろう。

無くしてしまった、記憶の中に。

そんな事を思って、今更、過去の無い自分に不安になった。


睦月→  127/200(普通)



【第2週】


五月雨「…………」

提督「…五月雨ぇ……」

五月雨「…ご、ごめんなさいっ!」

秘書官ならぬ秘書艦、というか。

せっかくの華なのに、使わないのは勿体無いので。

というかこんな場所に女の子成分なしとか耐えられないので。

比較的扱い易そう、かつ穏やかそうだった五月雨に身の回りの世話をお願いした。

ちなみに大和に頼んだら即断られた。彼女ならば目の保養にも申し分ないというのに。

…睦月は…あの態度と接し続けるのは、疲れる。

…それで、それはともかく…その、なんだ。

今試しにコーヒー入れてくれって頼んだら、しょっぱかった。

提督「……今度からはしっかり入れてくれ」

五月雨「は、はいっ、一生懸命がんばりますっ!」

そう言って頭を下げる五月雨に、やっぱりこの子はいい子だなと思い、許してやろうと笑顔になって。

………後日。

今度は三温糖のつもりで腐った砂糖を入れてきたので、もう飲み物は自分で入れることにした。



>>+2


A.交流


五月雨     **0/200(普通)
舞風      **0/200(普通)
大和      **0/200(普通)
睦月      127/200(普通)
瑞鳳      **0/200(普通)


B.夢


北上   *0/10
清霜   *0/10
朝潮   *0/10
春雨   *0/10
秋月   *0/10

>>31の後任がこの提督なんじゃねーの
つまり>>31で出てきたのはモブ提督では

時系列としては冒頭が拾われる前日、その次の日に反攻作戦 夢は単なる回想、本人は見たことを覚えてないけど、みたいな
いろいろわかりにくくてごめんなさい
また今度

>>98
はい、主人公は元エリート提督がどっぽんしてる間大和の艦橋で寝てました
名前が無いのが悪いよー



嗚呼、今日も今日とて俺は地獄の釜の中。

第13艦隊の施設、非常用司令部の3階で溜息を吐く。

最近どうにも溜息ばかり、逃げていく幸せも既に無くなってしまった事だろう。

五月雨「……ふぁ…ぁふ」

やることもなく、余程暇なのであろう。

隣に控えた五月雨などは、呑気に欠伸をかましていた。

提督「五月雨」

五月雨「え!?あ、い、いえ!寝てません、寝てませんよ!?」

提督「………」

素直で良い子だ、尤もそれが美徳とは限りやしないが。

もう少し良く育った女性ならば俺だって垣間の時間に手を出すことを考えるが、こいつは流石に範囲外。

いくらなんでも、年端の行かぬ少女に手を出す畜生にはなりたかない。



提督「…出かけてくる」

五月雨「ど、どちらにですか?」

提督「…気が向いた場所に、もう執務は終わりにするから好きにしていい」

五月雨「は、はいっ、わかりましたっ」

出かける宛などあるはずもない。

ただぼーっと、本能の動くままに身を任せるだけ。

となると向かうのはいつも艦娘舎だったりするのだが、そりゃつまり俺の本能がそんな物だというのだろうか。

そんな考えを振り払うよう、非常用司令部を出てからいつもと逆の方向へ。

何か好色男のような本能に逆らう為、半ば意地になって足を向けたは兵舎。

台風でも来たら吹っ飛ばされるんじゃなかろうかというボロい作りの宿泊施設。



そのロビーというには余りにも古めかしい入り口に足を踏み入れると、迎えてくれたのは意外な人物。

いつもなら鬱病だかアル中だか薬物中毒だかの兵士が転がっているものが、なんと今日は女の子。

睦月「……ん……しょ、んしょ…」

右手に雑巾左手に箒、側に立て掛けたその他諸々掃除用具。

掃除などという言葉とは久しく無縁であろう兵舎を甲斐甲斐しくも清掃する睦月の姿だった。

提督「……何をしてる?」

睦月「あ、…て、提督さん」

いつのまに艦娘は清掃員になったのか、頭に浮かんだのはそんな考え。

しかし俺の頭の中など彼女には知る由もなく、どこか誇らしげな笑顔を浮かべる。



睦月「お掃除を、していたのです」

提督「……見りゃわかる」

返す言葉は、思わずどこか不機嫌に。

それに睦月は不安を覚えたらしく、またあの媚び混じりの視線を送る。

睦月「…ぇ…とぉ…お、怒っていますか?」

提督「そうだな、愉快じゃあない」

睦月「む、睦月…ぉ、お仕事…して、ます」

言い訳の如く並べた言葉。

そいつが俺を更に苛立たせる。

こいつは自分の立場を―艦娘という立場をわかっているのか。



提督「それはお前が考えてやったことか?」

睦月「…ぇ…あの、えっと、…その」

詰問すれば、更に怯えた様子の睦月。

これじゃあいつまで経ったって話が進まない。

もういっそこのまま放置してやろうか、と思った時、横槍に。

「若旦那、そいつは俺が頼んだんでさァ」

しわがれ声に振り向けば、そこにいたのはあの時の大和の観測員。

声で判断は出来たけれど、顔を見たのは初めてだ。

右足の膝から下が無い彼は、杖をついて此方へゆっくりと歩いてくる。



提督「……何故だ?」

「何故って、そりゃァ、嬢ちゃんに仕事が欲しいと言われたからねェ」

くっくっと可笑しそうに笑う声。

それに睦月はこくこくと頷く。

此処に至っても、まだ状況は理解していないようだ。

提督「艦娘は雑用でも下働きでもない、こんな仕事を頼むな」

「へェ、そいつはまさにその通り、いやァ、すんませんねェ」

反省など皆無、まさにそんな様子で頭を下げて、元来た方向に去っていく。

…本当に、内部から完全に腐っているような場所だ。

それを見送ってから、今度は睦月に目をやった。



提督「睦月」

睦月「………ぁい」

返事はやはり舌足らず。

一々苛々させてくれる奴だ。

提督「仮にも艦娘というのなら、あんな仕事を受けるな」

睦月「……でも、睦月、役に…」

提督「戦闘で役に立てるように努力しろ」

睦月「ぁぅ……」

ばっさり切り捨ててやれば、両手の掃除用具を取り落とす程に落ち込む。

なんなんだ本当に、こんなのが本当に艦娘として試験を抜けて配備されたのか。



提督「というか、言ったろう、何かやるなら俺も考えてやると」

睦月「………提督さん、忙しそう、だったから」

提督「……お前にはそう見えたのか?」

睦月「……ぁい」

執務室の机で積まれない書類を夢想するか、気を紛らわせるために散歩をするくらいしかしてないというのに。

わざわざこいつはそんな事に気を遣ったというのか。

そう思えば、呆れよりも先にこいつの心の中への心配が先に出た。

提督「………はぁ」

睦月「…………っ」

溜息に、睦月が息を呑む。

……この前もそうだが、苛立ちをぶつけすぎただろうか。

此処に連れて来られたのはこの子のせいじゃないのに、やたらと冷たく当たった自分。

少し冷静になると、途端に自分がやたらと大人げないような気持ちになった。



多分、彼女がこうなってしまったのは…元からの性格というより、外部からの干渉の方が大きいのだろう。

媚びた視線と怯えた態度が示すは、つまり虐げられる事に慣れているということ。

無能だ、邪魔だと言われ続け。

彼女は誰かに怒られないようにと、役に立ちたいと必死になって、そういう風に生きるしかなかったのだろう。

あくまで想像でしか無いが、そこまで的外れって訳でもない筈だ。

提督「…………」

睦月「……ぁ、の…?」

しかしこういう時、どういう対応をしたものか。

これが良い女性なら不思議といくらでも口説く言葉が湧いてきそうな物だが、こんな小さな子となると。

………………。


>>+2(詳細は>>88参照)


A.……言い過ぎた、悪かったな。

B.……とにかく、気を付けろ。

C.……頭を撫でてやる。

D.自由。

3週後メインに進むのと5週後メインに進むのって何か違いあるのかな

C.……頭を撫でてやる。(*1.5)


提督「………あー……」

……どうしよう。

…何をすればいいのかわからん。

多分記憶を無くす前も俺は子供の相手とか絶対苦手だったと思う。

睦月「…………」

しゅんとひたすらに俯く睦月。

先程までならそんな態度に更なる苛つきを覚えたかもしれないが、一度意識してしまうとどうにもバツが悪い。

なんつーかまるで俺がいじめているみたいで。

提督「……そ、その、睦月」

睦月「……?」

優しい声をあげようとして、変に上ずった声が出る。

ごほごほと細かい咳払いを挟んで、続けた。



提督「あー…なんだ、なぁ、まぁ、さ」

睦月「…ぁ、ぁい」

提督「そんなに怯えなくて、いい」

睦月「……ぇ?」

ぽんぽん、と。

ものすっごい不器用なんだろうと自分でも感じる手付きで、睦月の頭に手を置く。

潮風に晒され、ろくに手入れもされていない髪は少し固くて、余計に手付きがぎこちなくなった。

睦月「……提督、さん?」

提督「…俺も、その、慣れない場所に来て、少し気が立ってた」

提督「…睦月を叱ろうとか、睦月が嫌いだとか、そういう気持ちは、無いからさ」

安心してほしい、そう伝えるように出す、優しい声。

多分、優しい声になっている筈だ、ちゃんと。

睦月「…………」

提督「えー…そういう、訳で…」



睦月「……提督、さんは」

整理してから喋ってみろという程に纏まらない言葉を並べていたらば、初めて睦月がそこで口を開いた。

俯いた顔を少し上げて、視線からはほんの少しだけ媚びる色が取れていた。

睦月「…ぁの、優しい、ね」

提督「……どこがだ、さっきまでお前に散々苛々をぶつけてたぞ」

睦月「…そ、そんなこと、ないです、だって、理由」

提督「…理由?」

睦月「睦月が、ダメな所、ちゃんと言ってくれた、から」

睦月「直す、ね、…ちゃんと、戦って役に、立てるようになって…、あと、提督さんに、先に、相談するね」

言葉はどこか変だし。

途絶え途絶えで、舌足らずな声は変わらない。

だけど今度は、不思議と苛立つことは無かった。

睦月「…だから、…ぇと、これからも、お願いします」

提督「…ん」

ぺこりと、地面に届くほどに頭を下げて。

なんだか、艦娘はかくありきなんて考えていた自分がアホらしくなるほどに、毒気を抜かれた。

なんとも大人げない自分に溜息を吐いたら、また睦月が萎縮して。

その後もう一回頭を撫でる羽目になったりして。

ああ、やっぱり今日も厄日だった。




睦月→  **0/200(信頼)

>>115 特に変わりません


【第3週】



五月雨「……提督は、どうしてここに来たんですか?」

提督「…ん?…ああ…」

記憶が無いことは、大和しか知らない。

というのも、それを言いふらすことに意味は無いだろうと彼女が言って、俺もそれに同意したからである。

提督「……脱走して、捕まった」

五月雨「……そう…なんですか?そういう風には、見えないですけど」

提督「……ま、色々あるんだ、五月雨だってそうだろ?」

五月雨「…あ、あはは…私は…別に」






>>+2


A.交流


五月雨     **0/200(普通)
舞風      **0/200(普通)
大和      **0/200(普通)
睦月      **0/300(信頼)
瑞鳳      **0/200(普通)


B.夢


北上   *0/10
清霜   *0/10
朝潮   *0/10
春雨   *0/10
秋月   *0/10

また今度


【秋月―1・出会い】


『……失礼します』

『どうぞ』

控え目なノックの後に開く扉。

立て付けの悪いそれが、ギッ、と鳴らした大きな音は、狭い執務室に大きく響いた。

『秋月型一番艦、秋月と申します、今日付けで此方に着任となりました、よろしくお願い致します』

その奥から現れた黒髪の少女は入るなり綺麗に敬礼をし、淀みなく言った。

机越し、彼女の前に座る青年はそんな彼女を暫く眺め。

『……3番目、だな』

『…は?』

『いや、執務室に来た順番だ』

『…順番…?』

とりあえず楽にしてくれと言って、木製の安っぽい椅子に身を投げだした。

少女は、不思議そうにそんな彼を見ていた。

その視線を受け流しながら、一つ息を吐いて、彼は続ける。



『…お前の前に来た子は、随分と小さかった』

『……はぁ』

返したのは、生返事。

瞳には、言いたいことがわからないと、そんな困惑を浮かべている。

『その前に来た子は…まあ、お前くらいの年頃か、脳天気そうだった』

ありゃ大物だ、と笑う。

どこか乾いた声だった。

『…あの』

『……なぜ、君らのような子なんだろうな』

青年が言った。

それは少女に向けてというよりも、独り言の如き含みを持っていた。

少女は、その言葉に露骨に顔を顰めた。



『……子供扱いなど、なさらないで下さい』

『秋月は、兵器であり、一人の兵士です』

『そのような扱いをされても、不快なだけです』

『……そうかい』

青年は秋月から視線を外した。

まるで、もう見ていられないとでも、そんな風に。

『………なあ、秋月』

『はっ』

『…こりゃただの質問だから、強制力は無い、答えたくなければ、答えなくていい』

『……質問、ですか?』

今度は何だというのだ、明らかな面倒さを持って少女は言葉を返す。

青年は、目を天井に向けたまま言う。



『ああ…お前、此処に来たのは志願か?それとも命令か?』

『………それを聞くことに何か意味が?』

『だから、ただの質問だと言ったろう』

『……志願、です』

『…そうか、てっきり訓練過程の成績を買われて強制されたと思ってたが』

つまらなそうに、机に投げ出していた書類の一つ、訓練過程の成績に関するものを拾い上げる。

『この任務は、帝国の行末を左右する大事な任務です』

『是が非にでも参加したいと思う事は、何か間違っていますか?』

『……………そうだな』

直立のまま動かない影。

受け答えには相変わらず、欠片の淀みもない。

青年はそんな少女を見、思わず頭を抱えたくなるような気持ちを抱いて。

結局、向けた視線をもう一度逸らした。



『質問はそれだけでしょうか?』

『………ああ、これからよろしく』

『はい、此方こそよろしくお願い致します』

綺麗な回れ右で踵を返し、執務室を去っていく少女。

彼女がドアを静かに閉めてから、一人になった部屋で青年は呟いた。

『こんな状況になってまで、無理しやがる』

『だから、子供は嫌いなんだ』

『…あいつらみたいなのを守りたいと思って、軍人志したのによ』

『……なーんで、こんな時代になっちまうかねぇ』



ままならねぇ、と目の前の机を叩く。

机上の文具立てが倒れ、中身が幾つかばら撒かれた。

それすらも全く意に介さずに、彼は思案を続ける。

彼には彼なりに、思うことがあるらしい。

『次に来るのは…せめて、もちっと出るとこ出てる女であってほしいもんだ』

これは彼としては、女性を戦わせるにしてもせめて子供じゃない方が良い、と言いたかったのだが。

なんとも、一つの発言で色々と台無しにしていく男であった。



秋月→  *1/10



【第4週】


提督「なあ、五月雨や」

五月雨「はい、何ですか?」

提督「大和の部屋って、鍵掛かってるじゃん?」

五月雨「そうですね、それがどうしたんです?」

提督「合鍵とか持ってない?」

五月雨「……何に使う気ですか」モッテマセンヨ

提督「…こんな場所に無理矢理連れて来られたんだし、俺もたまには良い目みてもいいんじゃないかなってさ」

五月雨「…………」

提督「……ダメ?」

五月雨「……なんだか、提督が此処に来た理由がわかったような気がします」

提督「…どうしてだよ」



>>+2


A.交流


五月雨     **0/200(普通)
舞風      **0/200(普通)
大和      **0/200(普通)
睦月      **0/300(信頼)
瑞鳳      **0/200(普通)


B.夢


北上   *0/10
清霜   *0/10
朝潮   *0/10
春雨   *0/10
秋月   *1/10

確かに50回は多すぎる、思いつきの糞システムってはっきりわかんだね
なんか考えとく、また

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