男「え?もう?」幼馴染「はーい」(103)

幼「もう飲んでまーす」

幼「男ー待ってたよー」

男「幼、ホントにもう飲んでるの?」

幼「20歳の誕生日、おめでとー」

男「ちょ、まだ!まだだよ、幼!」

幼「私はひと足お先にー、ハタチですからねー」

男「まったく幼はー」

男「今日、一緒に飲もうって言ったの、幼でしょ?」

幼「なによー。固いこと言わないでよー」

男「俺がつまみの材料買いに行ってる間に、どれだけ飲んだの?」

幼「ビールくらい飲んでも捕まらないんですー」

男「見かけは小学生なのになー」

幼「む!小学生とは何か!」

男「頑張れば、小人料金でバスに乗れるでしょ?」

幼「そんな犯罪行為に走るほどー」

幼「私は落ちてませんよー」

男「まぁ、犯罪は駄目だよな」

幼「それにー」

男「ん?」

幼「車の免許だって持ってますー」

男「良く足が届くよね」

幼「あははー。ギリギリだけどねー」

男「…30分で350ml缶を3本も空けたのか…」

幼「やっぱりエビスは美味しいなぁ」

男「くそう…」

幼「いいじゃんほらー」

幼「もうほぼ20歳だよ、20歳」

幼「飲んじゃいなよ、男っ!」

男「俺は日本国民として、法律を遵守する!」

幼「固い!頭が固い!」

男「幼、あんまペース上げないでよ?」

幼「どうせ明日から連休だし、いいじゃんかー」

男「時間はあるけど、用意した酒の量には限りがあるからね?」

幼「ふふふー。こんな事もあろうかとー」
ズルズルガサゴソ

男「ん?」

幼「じゃじゃーん!」

男「おぉ?酒瓶?4本も?」

幼「お父さんの書斎から、パクってきたのだー!」

男「えー?それ犯罪だよ?」

幼「んふふー。男と酒盛りするって言ったらー」

幼「好きなの持っていけーって言ってたんだー」

男「じゃあ犯罪じゃないね」

幼「今日はとことん飲むよ!」

男「無茶しないようにね?」

幼「ちょっとくらい無茶した方が面白いよ?」

男「一気飲みとか、駄目だからね?」

幼「あー。あれは駄目だねー」

男「急性アルコール中毒とか…」

幼「あー、違う違う。そんなんじゃなくてー」

男「ん?」

幼「あれは、風情がない!」

男「風情ねぇ?」

幼「酒を楽しむって言う、風情が、全然ない!」

男「30分でビールを1リットルほど飲んだ人が言う事かなー?」

幼「あ、一つだけ、良い一気飲みがあるよ!」

男「ん?」

幼「テ!」

男「て?」

幼「キーーーラッ!」

男「あぁ、ショットグラスでテキーラ飲むやつね?」

幼「あれは、ああ言う作法だから、風情があーる!」

男「…幼が持ってきたお酒の中に、テキーラあるね?」

幼「後で飲もうねー。テ、キーーラッ!」

男「幼、一旦ストップ!」

幼「えー?なんでー?」

男「ちょっと待っててよ。つまみ作っちゃうから」

幼「おー。男の手料理、久しぶりー!」

男「確かに最近作って無かったからねー」

幼「待たせないでよー」

男「ん?お腹空いてる?」

幼「そうでもなーい」

男「空いてるなら、がっつり作るけど?」

幼「軽い奴が良いよ、軽い奴が」

男「あいあいさー」

幼「ビールに合うやつー」

男「あいよー」

男「ちょっと水飲んでてよ、幼」

…3分後…

男「おまたせー」

幼「お?何だーこれはー?」

男「スライスしたトマトに、とろけるチーズをパラパラ」

男「塩・コショウを少々」

男「2分ほど、オーブンで温めました」

男「以上でございます、お嬢様」

幼「へー、これ初めて食べるかも?」

男「自分で食べてみて、美味しかったからさ」

男「ささ、食べてみてよ」

幼「それじゃ、いただきまーす」

男「召し上がれー」

幼「…こ、これは…」

男「これは?」

幼「青酸カリ?」

男「違うからね?そんな物騒な物、幼に食べさせる訳ないでしょ?」

幼「何、これ、すっごく美味しいよ、男」

男「お口に合ってなによりだよ」

幼「これ、何て料理?」

男「さぁ?」

幼「じゃあこれ、創作料理?」

男「まぁ、参考にした料理はあるけどね」

幼「それは何て料理?」

男「カプレーゼって言ってね」

男「モッツァレラチーズとトマト、オリーブオイルと生バジル」

男「本当はそんな材料なんだよ」

幼「へー」

男「でも、モッツァレラチーズはちょっと味が薄くて、好みじゃないし」

男「生バジルとか、近所に売ってないしね」

幼「田舎だもんねー」

男「さてと」

幼「ん?」

男「エビス、最後の1本は俺の分だからね?」

男「残ってる2本のうち、1本は飲んでも良いけど」

男「最後の1本だけは残しておいてよ?」

幼「何、それ?ダチョウ倶楽部?」

男「ん?」

幼「絶対飲むなって、フリなんでしょ?」

男「いや、ホントに飲まないでね?」

幼「わかったわかったー」

幼「それじゃ、こっちの金麦に切り替えるよー」

男「ビール、そろそろ止めたら?」

幼「ぶぶー。金麦はリキュール類でしたー」

幼「ビール風味だよ、ふ・う・み!」

男「まぁ、良いんだけどさ」

男「残りのつまみ、作ってくるからさ」

幼「早くしないと、全部飲んじゃうぞー」

幼「エビス…残り、2本」

男「いやいやいや、エビスは残してよ?」

男「最初に飲むお酒はエビスって決めてたんだからさ」

幼「わかったよー。早く次のおつまみを宜しく~」

男「ぱぱっと作ってくるよ」



男「おーい、幼ー?」

幼「…んぁ?」

男「起きてー」

幼「あぁ、私寝てた?どれくらい?」

幼「今、何時?」

男「そろそろ0時だよ」

幼「あぁー。ちょっと課題やら何やらで疲れてるのさー」

男「計画的にやらないから、そんな事になるんだよ」

幼「計画的にやったけど、疲れてるんだよー」

男「まぁ、親友の為に、場を盛り上げてる幼、カッコ良いよ?」

幼「えへへー、そうかなー?私、褒められると、伸びるタイプですよ?」

男「そこはあまり伸びなくても良いよ」

男「迎えに行くの、結構大変なんだよ?」

幼「かたじけねぇ」

男「かまわんよ?」

幼「ほどほどにするように気をつけるよー」

男「そうしてくれると助かるよ、色々とね」

幼「エビス、4本目、飲み終わったー」

幼「と、同時に、もう美味しいトマトのおつまみがないよ?」

男「まぁ、トマト1個分だしね」

幼「えー、足りないよ、男。もっとあった方が良かったー」

男「この料理は、温かいうちに食べるのが、風情」

男「この後、もう何品か、出てきますゆえ」

男「お嬢様におかれましては、どうかしばしの間、ご辛抱を」

幼「むー。何?その、どこかの毒舌執事みたいなしゃべり方ー」

幼「最近のマイブーム?」

男「この前、ドラマのdvdを幼と一緒に見たでしょ」

幼「あー。そうだったねー」

男「俺も、あんな毒舌吐いてみたいなーと」

幼「さっきのは毒舌じゃないけどね」

男「これから毒舌吐くかもよ?」

幼「そんなの男のキャラじゃないからやめなよー」

男「うん。そうするよ」

幼「ところで、何で最初はエビスって決めてたの?」

男「中学の頃に読んだ小説にね」

男「…いや、違うか。小説の後書きにね」

男「世界一美味しい飲み物って書いてあったからさ」

幼「へぇ。そんな小説がねぇ。今でも持ってる?」

男「そこの棚の奥にあるよー」

幼「今度貸してよ」

男「いいよー」

幼「…あれ?」

男「何?」

幼「ひょっとして、0時過ぎてない?」

男「あ、もう3分くらい過ぎたね」

幼「えー!カウントダウンしたかったー!」

男「まぁまぁ。しょうがないじゃない」

幼「ちぇー、それじゃあ、もう早速乾杯しよう!」

男「幼、次は何飲むの?」

幼「んー」

幼「とりあえず、最初の乾杯は、ビールが良い!」

男「はいよー。んじゃ、最後の2本のエビスで乾杯だね」

男「やっと出番がきたなー、このグラス」

幼「おー?趣味がいいね、男ー」

男「…まぁこれ、ある人からのプレゼントなんですけどね」

幼「あら、奇遇。私が使ってるこのグラスもね」

幼「ある人からのプレゼントなんだよー」

男「へぇ。奇遇だね」

幼「それ、備前焼?」

男「知ってるでしょ」

幼「いいなぁ、そのグラス」

男「同じグラスで今、ビール飲んでるでしょ?」

幼「まぁ、同じ店で買ったもんねぇ」

男「おっと、それじゃそろそろ、ビール注ぎますよー」

幼「泡ね?大事だからね!泡が!」

男「父さんと母さんのお酌してたからね」

男「泡の重要性は、言い聞かされてるよ」

幼「っと、ナイス泡!」

男「それじゃ、俺のも…」

幼「おっと!手酌なんて、関心しませんなぁ!」

幼「さ、さ。どうぞ」

男「おっと、ありがと、幼」

幼「…んっと!ナイス泡!私!」

幼「さ、それじゃ、満を持してのー」

男「うん」

幼「男、二十歳の誕生日、おめでとうっ!」

男「ありがとう」

幼「乾杯っ!」

男「乾杯っ!」

キンッ

ゴクッゴクッ
男「…っぷはー」

幼「ぷはーっ」

幼「どう?人生初のアルコールは?」

男「…うん、美味しいねぇ」

幼「えー。そこは『意外と美味しくない』とかさー」

幼「軽く吹き出しちゃうとかさー」

幼「面白いリアクションないの?」

男「ごめん、本当に普通に美味しいし」

幼「大概の人は、最初のビールは『苦っ!』とか言うものなのになー」

男「まぁ、確かに苦いけど…この喉越し?がイイね」

幼「男、本当に今、初めてビール飲んだの?」

男「初めてだよ。ホントダヨ」

幼「…若干気になるけど、まぁいいか!」

幼「それじゃ、ジャンジャン飲もう!」

男「もう一回、乾杯っ!」

キンッ!

男「…美味しいなぁ」

幼「そう言えば男、つまみが無いよ?」

男「あぁ、次のおつまみ取って来るよ」

幼「あーい、よろしくお願いしまーす」

幼「…」

幼「次のつまみは何だろなー?」

男「これです」

幼「ん?ジャガバター?」

男「そうです。ジャガバターの塩辛のせでーす」

幼「塩辛?」

男「そ。美味しいよ、コレ」

男「さ、さ。どうぞ召し上がれ」

幼「いっただっきまーす」

男「どう?」

幼「本当に美味しいね、コレ」

幼「まぁ、野菜の王様、ジャガイモだからね」

幼「大概の事では不味くならないもんね」

男「王様なんだ?ジャガイモ」

幼「王様だよー」

男「ベタ褒めだね、ジャガイモ」

幼「あ!ちゃんとこのジャガバター塩辛のせ、美味しいよ?」

幼「この塩辛の塩味がジャガイモにピッタリマッチするね」

幼「そして、ビールに合う!美味い!」

男「コレ、簡単だから、幼でも作れるよ」

幼「む。さりげなく、私が料理下手って言ってる?」

男「そんな事ないよ。幼、料理上手いじゃん」

幼「褒めてくれてありがと」

幼「でも、男の方が上手だよね」

男「別に料理人でも何でもないし」

男「どっちが上とか下とか関係ないよ」

幼「…それは勝者のセリフよねー」

男「まぁまぁ。あ、お互いグラス空いたね。次、何飲むの?」

幼「…テキーラ、行っとく?」

男「オッケー。ちょっとショットグラス取ってくるよ」

男「ついでにこのグラス洗ってくる。そっちも貸して」

幼「あいあい。お願いしますねー」

幼「…」

幼「パッパパラッパ・パッパラッパッパ♪」

幼「パッパパラッパ・パッパラッパッパ♪」

幼「パララララッパッパ!」

男「何でテキーラ飲む時って、その曲なの?」

幼「…むー!テキーラ!って言いたかったのに、邪魔された!」

男「ごめんごめん。で、何でその曲なの?」

幼「さぁ?知らないけど」

幼「良い感じの所で『テキーラ!』って叫ぶからじゃない?」

男「はい、グラス」

幼「ありがとー」

男「あと、ライムと塩」

幼「お?わかってるねー」

男「これも父さんに習ったからね」

幼「それじゃ、行ってみますか!」

男「相当キツイんだろうなぁ」

幼「頑張ればボワッと燃える位のアルコール度数だからね!」

男「これは一気に飲むのが風情なんだよね?」

幼「そうだよ。ここは一気だよっ!」

幼「飲む前に、ライムかじるんだよ?」

男「へぇ?父さんは飲んだ後にかじってたけど」

幼「飲む前の方がぜったいおいしーよ!」

男「わかったよ。んじゃ行きますか!」

幼「ライムの爽やかな酸っぱさと、テキーラのアルコールが奇跡の科学反応を…」

男「それじゃ、乾杯っ!」

幼「ちょっ!かっ、かんぱーいっ!」

キンッ

ゴクッ

男「おぉう…喉が…腹の底が焼けるみたいだ」

幼「かーーーー。キくねっ!」

幼「ラテンの乗りだよ、男!」

幼「…踊る?踊っちゃう?」

男「幼、おっさんみたいだよ?」

幼「オヤジくさくてすみませんー」

幼「でも、これ飲むと、テンション上がるよねっ?」

男「おぁ…上がるけど…これは2杯目はナシだなー」

幼「気付けの一杯だよ。あんまり沢山飲む物じゃないよ」

幼「飲み過ぎたら、それはそれは酷い事になるんだよ…」

男「知ってるよ。動けなくなるんだよね?」

男「そんで、次の日、トイレにこもったりするんだよね?」

幼「…」

男「さ、次は何飲む?」

男「またビールにする?」

男「金麦なんで、ビールじゃなくて、ビール風味飲料ですけど」

幼「んー。ビールはもういいかなー」

男「まぁ、幼一人で6本も飲んだもんね」

幼「それもあるけどー」

幼「今日は、コレを男に飲ませたいのだー」

男「…ラプ…ラフ?フロイグ?」

幼「そ、ラフロイグ。シングルモルトのスコッチ・ウイスキーだよ」

男「シングルモルトって何?」

幼「そんな事はあとでネットで調べなさい!」

幼「いいから、氷!あと、この備前焼のグラスとは別にコップを2つ!」

幼「それと、水!」

男「あぁ、チェイサーね?了解」

幼「…」

幼「フフフ。男の感想はどんなかなー?」

男「ほい、おまたせ。ロックで飲むの?」

幼「イェーイ!ロックンロール!」

男「そう言うのは良いから」

男「ほら、ロックで飲むの?」

幼「いやいや、ここはあえての水割りで!」

幼「あ、私が作るから!」

男「じゃあ、お願い」

幼「チェイサーの準備は出来てる?」

男「出来てるよ」

幼「それじゃ、これ、どうぞ」

男「これがウイスキーの匂い…」

幼「…この匂い、どう思う?」

男「うん。ちょっと癖が強い匂いだね」

幼「臭い?」

男「いや、別に?」

幼「…じゃあ、飲んでみようか」

男「あい。それじゃ、乾杯っ!」

幼「乾杯っ!」

キンッ

グビッ
男「んー。美味しいねー」

幼「え?マジで?」

男「何?幼、美味しくないと思ってたの?」

幼「だって、正露丸みたいな臭いじゃん?」

男「俺、別に正露丸の匂い、嫌いじゃないし」

幼「むむー。まさか男が臭いフェチだったとはー」

男「別にフェチじゃないよ」

男「でもこれだったら、ストレートでも飲めそう」

幼「じゃあ、これ、誕生日プレゼント!」

男「え?もらって良いの?」

幼「お父さんが持ってたお酒の中でも」

幼「2番目に高いお酒だったからさ」

男「え?それじゃなおさらまずいんじゃない?」

幼「いいのいいの」

幼「私はあまり好きな匂いじゃないんだよね」

男「でもこれ、おじさんのお酒なんでしょ?」

幼「じゃあ、今度ウチのお父さんと、一緒に飲んであげてよ」

幼「きっと喜ぶからさ」

男「じゃあ、遠慮なく。いただきます」

男「あ、幼、匂い強い物って駄目だっけ?」

幼「んー、別にそんな事ないけど…なんで?」

男「今のラフロイグ、匂いが好きじゃないって言ってたからさ」

男「次のつまみ、ブルーチーズが入ってるんだ」

幼「あぁ、ブルーチーズは大丈夫だよー」

幼「この前、幼友の家でごちそうになった」

幼「私は匂い、気にならなかったよー」

男「良かった。それじゃ取ってくるね」

幼「んー。次はチーズかー」

幼「楽しみー」

男「はいよ。おまたせ」

幼「これ、ハム?」

男「そ。生ハムのチーズ巻きでーす」

幼「生ハムとか、高いんじゃない?」

男「頂き物だから、値段わかんない」

幼「食べていい?食べていい?」

男「どうぞー」

幼「またまたいただきまーす!」

男「どう?」

幼「何、これ?チーズ以外にも何か入ってるね?」

男「ドライフルーツとかナッツとかが入ってるよ」

幼「とってもクリーミーだね?」

男「あぁ、生クリームも入ってるよ」

幼「すっごい美味しいよ、コレ!」

男「口に合って良かったよ」

男「これは母さんから習ったんだ」

幼「お袋の味?」

男「や、ただの酒のアテだけどさ」

男「父さんも母さんも、コレ好きだから」

男「材料、買い置きがあるんだよね」

幼「男、グラス空きそう?」

男「うん、そろそろ飲みきりそう」

幼「んじゃ、私も!」
ゴクッゴクッ

男「ちょ!幼!風情はどこ行ったの?一気飲みは駄目だって!」

幼「だーいじょうぶ。私の水割りは薄ーく作っておいたから」

男「でも一気飲みは駄目だよ?」

幼「ドンマイわたくし!」

男「っと、こっちもグラス空いたよ」

男「もう一杯、ラフロイグ飲みたいなぁ」

幼「ノンノン。ちょっとグラス洗ってきて!」

男「えー。違うやつ飲むって事?」

幼「そうだよー。せっかく持ってきたんだしー」

幼「次はこれ!浪花正宗の究極の技!」

男「究極の技って大きく書いてあるね。日本酒?」

幼「そう!洞爺湖サミットで各国首脳に振舞われたお酒だよ」

幼「ウチに大小2本あって、そのうちの小さい方持ってきたー」

男「それじゃ、お猪口と徳利持ってくるね」

幼「あいあいおー」

幼「えへへー」

幼「今のウチに生ハムチーズ食べちゃおうっと」

幼「何か、今日のつまみはコース料理みたいで」

幼「美味しいけど、量が少ないよ、量が!」

男「わざとだよ、幼」

幼「お?そのお盆にのった物は?」

男「日本酒用の冷酒カラフェってやつ」

男「横に氷を入れるポケットが付いてるから」

男「融けた氷で酒が薄まらないんだよ」

幼「へぇ。洒落た物持ってるねぇ」

男「まx、酒飲み夫婦のこだわりの一部、ですよ」

幼「あと、その皿の上の料理は?」

男「サラミとハムのマリネサラダ」

男「割と日本酒に合うんじゃないかなぁと思って」

幼「それじゃ、お酒の準備よろしく!」

男「はいはいー」

幼「いっただっきまーす!」

男「味はどう?」

幼「美味しい!超美味しいよ!」

男「幼、サラミ好きだもんね」

幼「箸が進む!これはちょっと多めに作ってあるんだね?」

男「うん。これは母さんが作ったマリネ液が沢山あるから」

男「足りなかったら、もっと作れるよ」

幼「ねえ、何で今回のつまみは量が少ないの?」

男「つまみでお腹いっぱいになっちゃって、お酒飲めなくなったら嫌だから」

幼「なるほどねー。ぶっちゃけ、最初のトマトの奴さー」

男「うん」

幼「超美味しかったから、あればあるだけ食べただろうからねー」

男「だから少しづつ作りましたー」

男「この後、あと一品、作ろうか迷ってる」

男「この日本酒次第だなー」

男「ん、だいぶ冷えてきた。それじゃ飲もうか」

幼「んおーう。ささ、一献」

男「幼、ちょっとふらふらしてるよ、大丈夫?」

幼「だーいじょうぶーでーす」

男「おっとっと。ありがと。幼」

男「ではお返しに、どうぞ」

幼「うむ。良き哉、良き哉」

男「それじゃ、またまた乾杯tっ!」

幼「乾杯は良いものだ!乾杯っ!」

キンッ

男「おぉ…これは…」

幼「すごいっしょ?」

男「さっきのラフロイグとは対局にあるね」

幼「匂いとか全然ないよね」

男「味も、無いのかと思いきや、あとからしっかりくるね」

幼「しゅっきりした飲みやすしゃが、日本酒の魅力でしゅっ」

男「幼、だいぶ酔いが回ってきてるね?」

幼「大丈夫であります!隊長!」

男「あんまり大丈夫そうに見えないなぁ」

幼「これは保存が難しいから、開封したら、全部飲む!」

男「まぁ、量はそんなに無いし、行けるだろうけどさ」

幼「つまみも美味しいし、酒も美味い。ここが天国か!」

男「俺の家って天国だったんだ?」

男「天国だったら、後片付けとかしないで済むのかなぁ」

幼「天国でも後片付けはしなきゃ!散らかしっぱなし、良くないよ!」

男「わかってるよ、幼」

男「おっと、盃、空ですね?さ、どうぞ」

幼「ん、ありがと、男」

男「…ほぅっ」

幼「…ほぅっ」

男「マリネ、もう無くなるね」

幼「ほんとだ。早いね無くなるのが」

男「幼がほとんど食べたんだけどね」

幼「あ、究極の技、もうそろそろ空だね」

男「こっちも早いなぁ。まぁほとんど俺が飲んだんだけど」

幼「気に入った?」

男「飲みやす過ぎて、飲みすぎたかも?」

幼「あと1本、とっておきが残っているんだけど…どうする?」

男「レッツゴーでしょ!」

幼「お?男もノってきたね?」

男「だいぶ良い気分だよー」

幼「それじゃ、本日最後の1本はこれ!」

幼「沖縄の泡盛でーす!」

男「それは…ラベルも何もないね?」

幼「これはうちのお父さんの知り合いがね」

幼「沖縄で小規模な酒造会社やってて」

幼「そこからの頂きものなのです」

男「それは本当に俺たちが飲んでいいものなの?」

幼「いいの!好きなの持っていけって言われたんだから!」

男「な、ならいいけど…」

男(後でおじさんに謝りに行こう)

幼「ほら、ワインとかでも年代物ってあるじゃない?」

男「うん」

幼「これ、45年物なんだよ」

男「マジで?」

幼「貴重すぎて、値段つけられないんだって」

男「すっごいねー」

幼「普通、泡盛は水割で飲むんだけど」

幼「これは、ストレートでいけます!」

男「ほうほう」

幼「きっと驚くよ?」

男「じゃ、最後のおつまみ作ってくるよ」

男「3分くらい待ってて」

幼「待ってるよ、男。フォーエバー!」

男「すぐ戻るから、寝ないでよ?」

幼「オッケーオッケー!」

幼「最後のマリネを食べちゃおう」

幼「美味しいなぁ」

幼「…」

幼「マリネ完食!」

幼「おーい、男ー。まだー?」

幼「…」

幼「寝ちゃうぞー?」

幼「あぁ、結構飲んでるなぁ…」

幼「軽く天井が回ってる…」

幼「あぁ、ホントにちょっとだけ寝ちゃおうかなー…」

幼「それにしても…」

幼「好きな人と、お酒飲むのって」

幼「こんなに楽しいんだなぁ」

幼「コンパの1000倍楽しいなぁ」

幼「ふふ。どさくさにまぎれて、男の事、押し倒しちゃおうかなー?」

幼「酔ったフリして…にっひっひ」

男「ちょっと、不穏な事言ってないで、ちゃんと座ってよ」

幼「ひゃあ!」

男「あと、酔ったふりじゃなくて、幼、ちゃんと酔ってるからね?」

幼「えへへー」

男「ほら、これが本日最後の料理でございます」

幼「あ、これってあれだ、あれ。名前なんだっけ?」

男「ゴーヤーチャンプルーでございます」

幼「おー!泡盛なだけに?」

男「もともと作ろうと思って準備してあったんだ」

男「まさか最後に泡盛が出てくるとは思ってなかったよ」

幼「それじゃ、さっそく飲みますか!」

幼「料理が冷める前に!」

男「あ、これ琉球ガラスのグラス。綺麗でしょ?」

幼「お、いいねー、凄くキレイだねー…」

男「それじゃ、飲みますか?」

幼「おっと!ささ、どうぞー」

男「はいはいっと。ありがと」

男「それじゃ、お返しにっ」

幼「おっとっと。どもどもー」

幼「よーし、それじゃ、もう何度目かわかんないけど、乾杯っ!」

男「乾杯っ!」

キンッ

コクッコクッ
男「…これは、凄いねー」

幼「そうでしょうそうでしょう」

男「泡盛独特の匂いがあるのに、味は透き通ってて…」

幼「日本酒と似てるけど、風味が違うでしょ?」

男「うん。これは凄いね」

幼「古酒(クース)だからだよ」

男「古酒?」

幼「安い泡盛はもっと癖が強いんだよ」

幼「元々泡盛はアルコール度数が高めなんだよ」

幼「これだって40度くらいあるんだよ?」

男「え?マジで?これ、そんなに強いお酒なの?」

幼「マジなのれすよ」

幼「安い泡盛なんてストレートでは飲めないよー」

幼「それを壺に入れて、冷暗所で長期間保管する事で」

幼「癖が抜けて、こんな透き通った味になるんだよ」

男「へぇー。幼、良く知ってるねー」

幼「えへへー。まぁ、お父さんの受け売りなんだけどねー」

男「おじさんの受け売り…か」

幼「ゴーヤーチャンプルー美味しいよ」

男「本場の味だよ」

幼「ん?」

男「ウチの母さん、沖縄出身だからね」

幼「なるほど、これが男の家の、お袋の味ね?」

男「あー、これは進む。どんどん進んじゃうなぁ」

幼「気に入ってくれたみたいねー」

男「あ、でもこれ、値段付けられないくらい」

男「高価な物なんでしょ?」

幼「いいから、いいから」

幼「ウチのお父さんからのプレゼントなんだよー」

男「今、適当に考えたでしょ?」

幼「ん?んーあー。そうゆうことにしといてよー」

男「幼、それは演技?本気?」

幼「なにがー?」

男「かなりぐんにゃりしてるよ?」

男「コンパ後の幼になりつつある、ように見える」

幼「んにゃあー。ホントに酔っ払ってるよー」

男「…さっき不穏な事言ってたからなぁ」

幼「あれも、照れ隠しー」

幼「て言うか、もうホントに、あの…ふあぁぁぁ」

男「え?もう?」

幼「はーい」

幼「ギブアップでーすっ」

男「えぇー。ホントに?」

幼「男は酔ってないの?」

男「いや、ちゃんと酔ってるよ」

幼「なのに、そんなれいしえ…れ、冷静なー?」

男「顔に出ないタイプなのかな?」

幼「そーみたいねー」

男「俺、酒強いのかなー」

幼「ザルだよ、ザル」

幼「うふふー」

男「幼、大丈夫?」

幼「えいっ」
ダキッ

男「わわっ?」

幼「ふっふっふー。お酒初心者の男に、良い事を教えてあげよう~」

男「なに?」

幼「こんな時は相手より酔っ払った方が勝ちなのだよー」

男「えー。俺も大概だよ?」

幼「…そう?」

男「そうだよ。初めてお酒飲んだんだからね?」

幼「にひひー。私が男の初めての相手かー」

男「変な言い方だけど、確かにそうだねー」

幼「あぁ、ほんとに飲みすぎたおー」
ガバッ

男「幼?」

幼「ねむいのでーす!」

幼「ほろ酔い加減、良い加減~♪」

幼「もう、ベッドにむかってー!」

幼「アイキャンフラーーーイ!」
バフッ!

男「ちょ、ちょっと幼!」

幼「あー、良き心持ちじゃ…」

男「ホントに寝るの?」

幼「うんー。もうお腹いっぱい、胸いっぱい~」

幼「泊まっても良いよね?」

男「それはいいけどさ」

幼「大丈夫、来る前にお風呂は済ませてきたから」

男「まぁ、格好もジャージだしね」

男「でも、食べてすぐ寝ると身体に悪いよ?」

幼「たまにだからいいじゃんかー」

幼「んにゃー、おとこー…」

男「なに?幼」

幼「はたちのたんじょーびー、おめれとー」

男「ありがと、幼」

幼「…スー」

男「…おーい」

幼「スースー」

男「…ホントに寝ちゃった?」

男「…」

男「それじゃ、ぱぱっと後片付けしちゃおうかな」




男「後片付けオッケー、俺の布団の準備オッケーっと」

男「ふぅ、終わったなー」

男「…いやあ、さっき幼も言ってたけど」

男「好きな人と一緒にお酒飲むのって、楽しいんだなぁ」

幼「…スースー」

男「…ふふっ。可愛い寝顔だなぁ」

男「…酔った勢いで渡すつもりだったけど」

男「まぁ、今日1日は俺の誕生日なんだから」

男「起きてからでいいか」

男「ハッピーバースデー、俺」

男「…約束してた、幼の誕生石がはまってる婚約指輪」

男「幼は喜んでくれるかなぁ」

男「…」

男「さて、俺も寝るかな…」

幼「…スースースー」

男「おやすみ、幼…」








幼「…」

幼「…むー。意気地なしめ…」

幼「こっちは覚悟出来てるってのに!」

幼「ヘタレめ…」

幼「指輪は嬉しいけど…」

幼「ふふふ。目が覚めたら、覚悟してろよ…男!」



男(聞こえてるんだけど…)


おわり

これで終わりです
読んでくれた人、ありがとう

次スレは
友「俺も幼馴染だよな?」男「そうだな」
ってタイトルで立てたいと思ってます

トマトとチーズのおつまみは
本当に手軽に出来て美味しいのでおススメです

では。

今さらだけど…

>>20>>21の間に


男「じゃあ、その計画自体を見直した方がいいよ?」

幼「むー。計画は完璧なはずなのになー」

幼「いつも妨害が発生するんだよ」

男「妨害?」

幼「幼友からの呼び出しとか?」

男「あぁ、コンパね?」

幼「ぶっちゃけ、行きたくないんだけどねー」


っていう会話が入るはずでした。
ホント、今さらだけど。

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