【ダンまち】魔王たちはベル・クラネルに期待する【魔界戦記ディスガイア5】 (66)

これは『ダンジョンに出会いを求めるのはまちがっているだろうか?(ダンまち)』と『魔界戦記ディスガイア5』とのクロスです。

魔界戦記ディスガイア5は本編後の話となります

またディスガイア勢が能力的に基本無双します。

地の文があります

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429294032





【Ep0:魔王と兎】



 月が照らす迷宮都市オラリオ。
 キリアはリーゼロッタと共に運営している食事処「超魔亭」へと帰途についていた。
 近々あるオラリオの一大イベント「怪物際」。その主祭神であるガネーシャから「何か催しをしてくれ」と頼まれた帰りである。

(催してくれと言われてもな)

 今まで何度か「怪物際」は経験はしているが、盛り上げるための催しと言われても直ぐにピンとはこない。

「――……っ!!」

 キリアが考え事をしている真横を、白髪の少年が涙を流しながら走り抜けていった。
 向かっていく方向からしてダンジョンに向かうのだろうとキリアは察した。
 ただ顔つきがあまりにも危うい感じであった

(少し気になるな。ゴルディオンの真似をするつもりはないが――。とりあえず追いかけてみるか)

(……見たところ駆け出しの冒険者。Lv.1。それでソロで6階層まで駆け下ってくるとはな)

 見つからないように気配を消してキリアは少年に後を追っていた。
 何を切羽詰まっているのか、モンスターを倒した時に出現する魔石をとらずひたすらモンスターを倒しながら降りていく少年。

(ん。あれは)

 壁に亀裂が入りモンスターが生まれる。
 ウォーシャドウ。
 6階層に出現するモンスターでは随一で新米の冒険者では手に負えない相手である。
 だが、少年は巧みに身体を動かしてウォーシャドウを撃退した。
 しかしそれだけでは終わらない。
 次々と壁に亀裂が入りウォーシャドウや他のモンスターを生み出していく。

「辿りつきたい場所が、あるんだ……ッ。こんなところで、躓いなんか、いられないんだッッ!!?」

 吠え、少年は駆け出してモンスターと対峙する。

「ハァ……、ハァハッ――」
(まさか駆け出しの冒険者があれほどのモンスターに囲まれ、それでいて全てを倒すとはな)

 少年は更にモンスターを倒すため場所を移動しようとする。が、身体がふらつき、真っ直ぐに歩けていない。
 先ほどの戦闘により受けたダメージと疲労は確実に少年を蝕んでいる。
 少し歩いた先で少年は膝をついて倒れた。
 キリアは物陰から少年の下へと近づき、状態を確かめる。

「ダメージはそれほど深くない。倒れたのは疲労が原因か」

 このまま放置する訳にはいかない。
 キリアは少年を背中に背負うと、時空を超魔亭へと繋げてこの場を後にした。

「あ……れ、ここ、は?」
「あっ。目が覚めたのね。キリア、目を覚ましたわよ」
「そうか」

 少年は起き上がる。

「……確かダンジョンに潜って、それから」
「ダメージと疲労で倒れたのをキリアが背負ってここまで運んできたのよ」
「あ、ありがとうございます……っ」

 少年は何度も厨房にいめキリアに頭を上げる

「気にするな。――よし出来たぞ」

 キリアは厨房からスープが入った皿を持ってきて少年の前に置いた。
 スープからは美味しそうな匂いが漂い、少年は喉を鳴らした。

「万年樹の根本をベースとした千年龍の卵で作ったスープだ。疲労回復や体力回復もできる」
「いただいていいんですか……?」
「ああ」
「いただきます」

 スプーンを持ち手に持ちスープを掬い口元に運ぶ。

「――!! すごく美味しいです」
「そうか」
「キリアって料理を褒められると嬉しそうな顔をするのね」

「スープありがとうございました」
「別に構わない。それよりも一度ファミリアに帰ったほうがよくないか?」
「え?」

 壁に掛けている時計を見た後に外を見るともう朝日が照りつけている

「あ」
「持っていた武器と防具だ。早く帰ってファミリアを安心させてやれ」
「あ、ありがとうございます!!」

 少年は防具を受け取ると慌てて外に出て自分のファミリアへ向けて走りだした。
 そんな少年の背中を見送りながらリーゼはキリアへ問いかける。

「ねぇキリア。彼に「アイテム界」と「キャラ界」を薦めなくて良かったの?」
「まだLv.1には早過ぎる。せめてLv.2にならないと安心して潜らせれない。それに……」
「それに?」
「いや、もし強さを求めるのならまた来るだろう。彼女もそうだった」
「そうね。あ、店の仕込みをしないと」

 リーゼは厨房へと向って行った。

(……見世物はあまり好きじゃないが、「フィリア際」の催し物をする為にもためしに聞いてみるか)

 キリアはポケットから通信機器を取り出すとある人物へと電話をかけた。




【Ep0:魔王と兎】 ―― 終

                     to be continued



今回はここまでになります




【Ep1:怪物際-モンスフィリス-】



 迷宮都市オラリオにある円型の闘技場。

「魔王玉!」

 ラハールは魔力の塊をキリアに向けて幾つも放つ。
 向かってくる魔力の塊を静かにキリアは見据える。

「魔奥義・氷刻のアルマ」

 使用者の魔力が高ければ時間すらも止めてしまうキリアが持つ魔奥義の一つ。
 ラハールが放った魔王玉は、氷刻のアルマの影響を受けて空中で停止。それをキリアはラハールに向けて跳ね返した。
 魔王玉は放たれた軌道の逆を辿りラハールに命中し爆発が起きる。
 煙が晴れ、ラハールが姿を現したが、身体にはダメージの一つも受けている様子はない。

「ふん。オレ様の技でオレ様を倒せると思わないことだ!」

 ラハールの手に魔力が集まり炎へと変換される。
 同じくキリアの手にも魔力が集まり氷結へと変換される。

「獄炎ナックル!」
「超魔流 虎口破裂拳!!」

「エキシビジョンマッチ、魔王vs.魔王の対決でした。続きましては――」

 会場にアナウンスが響き渡る。
 魔王vs.魔王と言っても本来の力の1から2割ほどの力しか出していない準備運動のようなものである。
 事実、キリアは魔奥義・暴逆のレベリオや超魔流の奥義も使用しておらず、ラハールも魔王としての技は一切使用していない。

「お兄ちゃん。お疲れー。せっかく人間界に来たんだから、遊んで帰ろう」
「ええい、分かったからマフラーを引っ張るな!」

 ラハールは妹のシシリーに引っ張られて街へと出て行った。

「エトナはどうするんだ?」
「あたし? シシリーちゃんじゃないけど、この時代の人間界って初めてなのよねー。美味しいスイーツがあるかもしれないから、適当にぶらつくわ」
「そうか。ラハールに今日のお礼に、超魔亭でささやかなご馳走をすると伝えておいてくれ」
「オーケー。ついでに美味しいデザートも楽しみにしておくわ」

 そう言ってエトナも外へと出て行った。


(超魔亭でラハール達に振る舞う料理を作り始めるのはもう少し後でいいだろう。今からどうするか)

>>16
1.ラハールとシシリーの様子を見てくる
2.エトナの様子を見る
3.街を散策する

今日はここまでです

すみません。
安価が遠かったみたいですね。
次からは直ぐ下にします




(久しぶりの祭だ。少し街を見て回ろう)

街は祭りということもあり何時もよりか賑やかだ。
露天からは掛け声が飛び、行き交う人々は露天や商店で買い物をしている。

(人間界……と言うよりは、この街で過ごすようになってから何年か経つが、この賑わいは年々増していくな)

 そろそろ闘技場の方でメインイベントが開催される時間だ。
 念の為にと闘技場の方へ歩みを進めていると、ギルド職員が慌ただしく動いており、一人の職員がコチラへと近づいてきた

「あ、貴方はキリアさん、でしたっけ?」
「そうだが……。何かあったのか」
「実は祭りのために捕獲されていたモンスターが一部檻から脱走。この辺り一帯に散らばったみたいなのです。[ガネーシャ・ファミリア]のメンバーと連携して対応に当たっているのですが、人手不足で……」
「分かった。微力だが手を貸そう」
「ありがとうございます!」

 キリアは高い建物に瞬時に駆け上がり街中を索敵した。

(動いているのは[ガネーシャ・ファミリア]と……、[ロキ・ファミリア]の面々か)

 レベル5の冒険者である「剣姫」アイズ・ヴァレンシュタイン、ヒュリテ姉妹が動いているのが分かる。
 逃げ出したモンスターのレベルを考えると、二つのファミリアに任せておけば大事には至らないだろうとキリアが考えていると、不穏な魔力を感じた。
 一瞬、地面が地震のように揺れ動き、地面から植物を象ったモンスターが出現する。
 そのモンスターの出現を発見した[ロキ・ファミリア]の面子は、颯爽とモンスターの下へと行く。

(一連の事といい、人間に対して神が与えるこの街特有の「神難」か?)

 だとしても、目の前で犠牲者が出るのをただ見ているつもりはキリアにはない。
 キリアも植物型のモンスターの下へと向かった。


 植物型のモンスターに[ロキ・ファミリア]の面々は苦戦を強いられていた。
 どうやら本来持つ武器を祭りのためかアジトに置いてきているのだろう。
 相まって植物の硬さゆえに攻めあぐねているようだ。

(……俺が出て行けば直ぐにどうにか出来るが、少し様子を見てみるか)

 植物型のモンスターの触手がエルフの少女の脇腹に直撃。
 口から吐血して地面へ倒れ、植物型のモンスターが大きく口を空けてエルフの少女へと向かう。
 ヒュリテ姉妹は触手に絡まり身動きがあまりとれない状態。
 キリアは手を出そうとした瞬間。アイズが魔法を使い、素早く移動してモンスターの頸を刎ねた。
 一瞬、安堵した空気になるが、再び地面が揺れて同じ型のモンスターが三体出現した。
 アイズが剣を構えたと同時に剣が砕け散る。
 どうやら耐久度の限界を超えたようだ。



(武器がないと、このモンスターの相手はキツイか……)

 キリアが様子を見ていると傷ついていたエルフの少女が立ち上がり、魔法の詠唱を始める。
 詠唱途中の術者は無防備になる。そのためレフィーヤの前にアイズとヒュリテ姉妹が前衛となり詠唱時間を稼ぐ。
 耐え凌ぎレフィーヤの詠唱が終わり、魔法が放たれる

【ウォン・フィンブルヴェイト】

 絶対零度の氷結魔法。
 その威力は時間すらも凍らせると言う

(まるで俺の魔奥義の一つと同じだな)

 キリアが持つ魔奥義は二つ。
 戦闘力を上昇させる「暴虐のリベリオ」と、対象を凍てつかせ時間すらも停止してしまう「氷刻のアルマ」だ。

(これだから、この街は面白い)


 キリアは木箱の所に隠れている少女の所へと降り立つ

「大丈夫か?」
「う、うん」
「いい子だ。移動するから掴まってくれ」

 少女は頷くとキリアは少女を抱きかかえ、所持している剣……「ドラゴンウォーリア」をアイズへ向けて投げる。
 そのままキリアは少女を連れて安全圏まで移動して、ギルドの女性スタッフに少女を預けた。

「あ、キリアさん。大丈夫だった? モンスターが逃げ出したようだけど」
「ふん。オレ様ほどではないが、コイツも魔王だぞ。逃げ出したモンスター如きに遅れを取るものか」
「……そうだ。この騒ぎで怪我人がいるんだが、シシリー、手を貸してくれないか?」
「うん。いいよ!」

 シシリーは元気よく頷き、キリアはレフィーヤの下へとシシリーを送り届けた。

今日はここまでとなります
【Ep1:怪物際-モンスターフィリス-】はもう少しだけ続きます


「で、貴様はどこの色ボケの仕業だと考えてるんだ」
「唐突だな」

 怪物際が終わりキリアはリーゼと共に、ラハール達にご飯を振る舞った。
 二人の料理はラハール達に大変好評であり、大いに盛り上がった。
 そして一段落した今、キリアは超魔亭の屋根に登り、月を見ながら椀に酒を注ぎ飲んでいる最中である。
 背後から近づいてきたラハールに、キリアは淡々と応える

「一部魔物が魅了されている所を見ると、美の女神、イシュタルかフレイヤだろう。そして影に徹していた事を考えると……」

「フレイヤか」

「ああ。ただの推測でしかないがな」

「……」

 ラハールはキリアの横に座り、椀を差し出した。
 それにキリアは酒を注ぎ足す。

「――それで、そんな事を聞きに来たわけじゃないんだろ」


「貴様はいつまで人間界で燻っているつもりだ」

「……」

「しかも神が大量に降りてきているこの時代で、だ」

 ラハールは酒を飲みながらキリアへと問いかける。

「……俺は英雄の誕生を待っている」

「英雄の誕生だと?」

「ラハールも感じてるだろ。人間界からやってくる勇者や英雄たちの質の低下を」

「ふん」

「俺は、この時代、この場所、この環境下なら、オレ達クラスの魔王に届く者が現れる気がするんだ」

「……オレ様たちに届く奴が現れたとして、貴様はどうするつもりだ」

「――……」

 キリアは酒を飲み干すとそれ以上は言わない。
 それ以上は聞けないと感じたラハールは、椀を置き、立ち上がる。

「精々、神の暇つぶしに振り回されない事だな」

「ああ」



 【Ep1:怪物際-モンスターフィリス-】 ―― 終

                     to be continued


短いですが今日はここまでです。
ベルたちがキリア達と関わるのはレベル2になってからが本番の予定
それまではアイズが主かも



 【Ep2:超魔亭】



「……これ、返さないと」

 【剣姫】の二つ名を持つアイズ・ヴァレンシュタインは、手に持つ剣を見る。
 深紅の刀身を持つ剣。
 数日前「怪物際」で細剣が壊れた際に、どこからか投げられた剣だ。
 それなりの種類の剣を使ったことがあるアイズは、これがかなりの業物であると感じ取っていた。
 質は間違いなくこの都市で最上位クラスの物で、使用している愛剣「デスペレート」とは比べられない。
 アイズは知らないが、これは修羅次元の武器であり、その性能は現世とは比べ物にならない業物である。

「……そいつは」

「知って、るんですか?」

 【ゴブニュ・ファミリア】の主神であるゴブニュは眉を潜める。

「どこで手に入れたんだ」

「……借りていた細剣が壊れた時に、どこからか投げられて」

「と、言う事は超魔亭の奴らの持ち物か」

「チョウマテイ?」

「……詳しいことは、お前の所の主神に聞けばいい」


「超魔亭ぃぃぃぃ。アイズたん。急にどうしたん?」

 【ゴブニュ・ファミリア】の拠点から自分たちの拠点へと帰ってきたアイズは、ロビーにいた主神であるロキに聞いた。

「『怪物際』の時に剣を借りたので、返したくて」

「……あ~。もうそのままでいいんとちゃう?」

 酷く面倒くさいにロキは言った。

「でも」

「ロキ。こうなったこの娘は頑固だ。きちんと説明をしないと」

「はぁ――」

 リヴェリアに促されたロキは、溜息を吐き超魔亭の事を説明を始めた。


 超魔亭。
 それが出来たのは、十五年ほど前のこと。
 ちょうどゼウスとヘラの二神が、ロキ達に追われる形になった時の混乱に乗じた形で出店してきた。

 問題は超魔亭が神々の敵対者である悪魔であり、魔王クラスの猛者であること。
 しかも神々と違ってリミッターも施していないため、力を使い放題。

 それを知った時に、オラリオにいた神々は猛反対をした。
 だが、ギルドを統括する神・ウラノスと幾つかの密約を交わしたらしく反対意見を黙殺される事になる。

 結果として、神々は、超魔亭とは関わらないと言う方針をとった
 下手に行動をとって問題が起きたとしても、武力では超魔亭の面々には今の冒険者達では太刀打ちが出来ず、対抗するには「神の力」を使用することになる。
 しかし「神の力」を使用すると天界へと強制送還。
 故に神々は関わらないと決めたのだ。

 しかし例外的に一部の神たちは、超魔亭と関わりあいを持っている。
 あくまで内密ではあるが。


 説明を訊いたが、アイズの意見は変わらず、ロキは折れた。
 超魔亭にいるキリアの人格を少なからず知っているのも、要因ではあるのだが。
 ちょうど昼時ということもあり、食事をとる名目で、ロキ・ファミリアの面子(フィン、リヴェリア、ヒリュケ姉妹、レフィーヤ)で、赴くことになった

「ここが超魔亭――」

「美味しそうな匂いがしてるねー」

「この匂いはカレーでしょうか?」

「とりあえず入ってみようか」

 フィンを先頭に超魔亭へと入った。

「いらっしゃいませー」

 接客に現れたのは猫耳を生やした少女。

「五名なんだけど、席は開いてるかい?」

「はい。こちらへどうぞ!」

 少女はテーブル席へと案内をした。
 そしてそれぞれから注文を受け取り、厨房へと向って行った

「ロキはなんか色々と言っていたけど、普通の店っぽいね」

「悪魔が営業してるって言ってましたからドキドキしてましたけど、なんだか普通で安心しました」

「まだ分からないよぉ。出てくる料理は悪魔らしいグロい物かもしれないし」


 説明を訊いたが、アイズの意見は変わらず、ロキは折れた。
 超魔亭にいるキリアの人格を少なからず知っているのも、要因ではあるのだが。
 ちょうど昼時ということもあり、食事をとる名目で、ロキ・ファミリアの面子(フィン、リヴェリア、ヒリュケ姉妹、レフィーヤ)で、赴くことになった

「ここが超魔亭――」

「美味しそうな匂いがしてるねー」

「この匂いはカレーでしょうか?」

「とりあえず入ってみようか」

 フィンを先頭に超魔亭へと入った。

「いらっしゃいませー」

 接客に現れたのは猫耳を生やした少女。

「五名なんだけど、席は開いてるかい?」

「はい。こちらへどうぞ!」

 少女はテーブル席へと案内をした。
 そしてそれぞれから注文を受け取り、厨房へと向って行った

「ロキはなんか色々と言っていたけど、普通の店っぽいね」

「悪魔が営業してるって言ってましたからドキドキしてましたけど、なんだか普通で安心しました」

「まだ分からないよぉ。出てくる料理は悪魔らしいグロい物かもしれないし」



 雑談をしていると、五人分のカレーを持った少女がやって来て、テーブルに並べた。

「ご注文は以上でしょうか」

「うん」

「それではごゆっくりどうぞ!」

 面々は食欲を唆る匂いをだすカレーを口へと運ぶ
 そしてこの時は、皆の心が一つになった


(((((美味しい!!)))))


 その旨さに自然とスプーンが進み、あっと言う間に完食となった



「美味しかった」

「だねー。また今度もこようよ。今度はもっと大人数でさ」

「辛くもなく甘くもなく私にはちょうどいい辛さでした」

 それぞれがカレーに満足している中で、アイズはふと腰にかけている剣の存在に気づきやってきた目的を思い出した。
 そして店員である少女を呼んだ

「はい。何か御用でしょうか?」

「あの、この剣を借りたので、返したくて……」

「それキリアさんの「ドラゴンウォーリア」。少しお待ちください」

 少女は厨房へと入って行き、しばらくすると男性と共に出てきた

「キリアさん。あの人が、剣を返したいって」

「分かった。ルチルは、そのまま他のお客さんの事を頼む」

「分かりました」

 猫耳の少女――ルチルは、頷くとキリアに指示されたとおりに接客へと戻る。



「剣、ありがとうございました」

「役に立てたのならいい。…………」

「?」

 キリアはアイズを見て、椅子に座る面々を見た。
 そしてロキ・ファミリアの団長であるフィンに話しかける。

「ロキ・ファミリアに提供したい設備がある」

「設備?」

「ああ。更なる強さを求めるのならやって損はない」

 キリアの言葉に強さを求めるアイズがピクリと反応をした。
 それに気づいたリヴェリアは肩を竦め、フィンはやれやれと言った感じでキリアの言った設備を受けるかは、体験してからだと言った。

「あたし達に提供したい設備ってなんなの?」

「己の存在能力を開放させる【キャラ界】。そしてアイテムを成長させる【アイテム界】の2つだ」

今回はここまで。次回は【アイテム界】編と【キャラ界】編です
キャラ界はこの作品独自の物となります
……スゴロクはssではやりにくいです

ルチルは3rに出てきた猫娘キャラ。
この物語では人間界に怪力のため居場所がなくなりキリアに拾われて超魔亭で働いているという設定です


 日が落ち夜になった頃。
 昼間に来ていたロキ・ファミリアの面々は、もう一度超魔亭へと訪れていた。
 キリアに言われてダンジョンに潜るようの装備でやって来ている。
 確認をしたキリアは、店の一番奥の扉に鍵を差し込み、扉を開く。

「ここは……」

「ミニ魔界だ。俺達は基本ここで住んでいる」

 ミニ魔界には色々な種類の悪魔が生活をしていた。

「あそこにあるのは両替所だ。ヴァリスとヘル、両方に対応している。あっちにあるローゼンクィーン商会で買い物をしたい時に役立ててくれ」

 キリアはとりあえず使うかもしれないローゼンクィーン商会と魔界病院に案内をする。
 そして今回、ロキ・ファミリアの面々を招いた理由である「キャラ界」と「アイテム界」のある場所へとやって来た。

「まずはアイテム界から案内しよう」

「アイテムを成長させる、と、言っていたけどどういうことだい?」

「アイテムのレベルを上げる。レベルを上げることによって武器の性能は上昇する。……これは説明するよりも潜ってみたほうが早いだろう」

 キリアはロキ・ファミリアの面々の武器をひと通り見て、ティオナの持つ大双刃・ウルガに目をつけた


「一先ずソレに潜るか」

「なんでティオナの武器なんだい」

「……職人の嘆きだな」

 キリアの単調とした言葉に、面々はなんとなく察した。
 ロキ・ファミリアのメンバーの中でも、ティオナは「壊し屋」と呼ばれるほど武器の扱いがあまりよろしくなく、早期に壊しやすい。
 そのため日夜、鍛冶職人が壊される度に涙を拭っているのは、周知の事実であり、言われた本人も苦笑いをするしかなかった。

「ただ潜る時は、その武器は使用できない。……今回は特別に武器を貸そう」

「ありがとうー」

 キリアはウルガに似た武器をティオナへと渡す

「初めてだから案内にルチルを付き添わせる。実力は保証する」

「よろしくお願いします!」

「ああ。こちらこそ」

「詳しいことはアイテム界に入ってからルチルに聞くといい」



 アイテム界 ウルガ 第一階層

「狭っ」

「うん。もっと広いかと思ってた」

 ティオナとアイズは感想を漏らした。
 確か広大なダンジョンに潜っている彼女らにすれば、この階層は狭く感じるかもしれない。

「今回はチュートリアル的な物なので、各階層の敵を全部倒してください」

「それだけでいいんですか?」

「はい!」

「それじゃあ行こうか」

 フィンの言葉とともに、それぞれがノートリアスを倒していく。
 流石に歴戦の冒険者達である。瞬く間にこの階層の敵をやっつけた。
 敵が全滅すると、空間は暗転。
 次のステージへと移る。


 戦いを繰り返していき到達したのは第四階層
 しかしこのステージは、他と違っていた。
 地面は光輝き、その上には光っているのと同じ色をした結晶体が置かれている。

「あ、ジオエフェクトです」

「ジオエフェクト?」

「アイテム界特有の現象です。あの結晶体はジオシンボル。霊素の結晶体で、光っている地面――ジオバネルに影響を与えて様々な効果を生むんです。たまに一撃死なんてのもあるので、効果には気をつけて、上手に扱うと戦いはだいぶ有利になります」

「ふぅん。でも、とりあえず壊しちゃえば良くない?」

「あ、待ってください!」

 ルチルが止める間もなくティオナはジオシンボルを破壊した。
 ジオシンボルは壊れ、中に詰まっていた霊素が弾け飛び、ジオパネル全体に衝撃波が襲い、ロキ・ファミリアの面々は少しだがダメージを受けた。

「いたたた」

「地味に痛い」

「ジオシンボルは説明をしましたけど霊素の結晶体なんです。それを壊すと霊素が弾け飛び、ジオパネル全体に衝撃波として襲います」

「えー、それじゃあダメージを受けるの覚悟で破壊しないといけないの?」

「いえ、ジオパネル外からの遠距離攻撃……魔法や弓で攻撃して破壊して衝撃を回避して破壊する手も有ります」

「あ……。そっかー。今度はレフィーヤに破壊してもらお」

「は、はい。頑張ります」

「話はそれぐらいにしておこう。敵が来たようだ」



 その後、調子よく進み10階層目に到着。
 天辺にいるアイテム将軍を倒してインセントタウンへと到着した。

「お疲れ様でした。以上が、アイテム界の基本的な流れです」

「これでウルガのレベルがあがったの?」

「はい。予想だとレベル10ぐらいになってるはずです。」

「一つ聞くけどどこまで潜れるんだい?」

「無限に潜れます。レベル自体は500で終わりますけど、インセントを服従させたり、1万階でも2万階でも大丈夫です」

「ハハ。果てしなく長いね」

「あ、アイテム界は盗賊のクラスの方がいれば大変便利です。ファミリアの方にいなければ、スカウト屋の方で人材のレンタルもできるので、ご利用下さい」

「うん。分かった」

「今回はここまでです。ミニ魔界に戻りますね」

「戻ってきたか」

 ティオナは戻ってくるとアイテム界の渡し人から、ウルガを受け取り、少しだけ振り回す

「おー、なんとなく強化されている気がする」

「10階層程度ならそれほどだろう。更に潜れば確実に実感できるはず」

「ふぅん。よしっ、次の遠征までに強化をしようっと!」

「強化するのもいいけど、その前に修理代金を稼ぎない」

「うっ。わかってるよ」

 姉妹のやりとりが終わり、キリアは「キャラ界」へと移動する。

「アイテム界とは違い、キャラ界は一人で行くことになる。……これも説明するよりも体験してもらった方が早いだろ。誰が行く?」


↓+1
・アイズ・ヴァレンシュタイン
・フィン・ディムナ
・ティオネ・ヒリュテ
・ティオナ・ヒリュテ

今回はここまでとなります

ベートってフェさんとキャラ被ってる気がする。


 キャラ界の体験に志願したのは、アイズだった。
 渡し人は空間の入り口を作り、それにアイズは入っていく。

「……ここは」

 アイズの記憶の底にある心象風景があった。
 どこか懐かしさを感じる場所だ。
 しかし、キャラ界と言う事もあり、敵がどこから来るか分からない以上、アイズは臨戦態勢で辺りを探索する。

『強くなりたい』

「……!」

 声がした。
 剣を声がした方へと構える。
 そこに居たのは、黒いアイズ・ヴァレンシュタイン。

『もっと……もっともっともっと、強く。例え、孤独になってもいい。強く、果てしなく強くなりたい』

「――」

『それが私の願い。ね、私(アイズ・ヴァレンシュタイン)』

「……わた、し?」

『「目覚めよ(テンペスト)」』

「くっ。「目覚めよ(テンペスト)」」

 ここに『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン同士の戦いが開始された。


「……そろそろ始まった頃か」

 キリアはアイズがキャラ界に入ってからしばらく経ち、そう呟いた。

「始まったとは?」

「キャラ界で戦う回数は1回のみ。戦う相手は己自身。己の心の闇を打ち倒すことで、更なる強さを得ることが出来る」

「つまり今アイズが戦っているのは、アイズってこと?」

「そうだ。そして、心の闇は、自分よりもステータスが少し高いが、倒せないってほどじゃない」

「アイズさん……」

 レフィーヤは心配そうにキャラ界の時空を見上げた。

「うーん、アイズが出てくるまで暇だねぇ」

「もう一度アイテム界に入っても入れ違いになる可能性があるからな……。組手でもするか?」

「組手?」

「待ってるだけは暇だろ。俺に勝てたら、魔界の武具を好きなのを持って行っていい」

「マジ?」

「ああ」

「よっし。ティオネもやろうよ」

「はぁ。仕方ないわね」

「ルチルも入れ。久しぶりに稽古をつけてやる」

「は、はい!」

「もしかして三対一でするつもりかい?」

 フィンの言葉に、キリアは頷いた。
 そしてヒュリテ姉妹はそれぞれの武器を手に取り、ルチルも手に武器をはめる。

「――来い」



 一方、キャラ界のアイズはと言うと、苦戦を強いられていた。
 自分と同じ思考、そして1割ほど高いステータス。
 隙もなく、なんとか五分五分で戦う事が、精一杯であった。

(このまま長期戦になると不利になる。……だからといって)

『全力を賭した一撃勝負だと、ステータスが高い私が有利』

(……やりにくい)

 もう何百というほど剣をぶつけあったが、決定的な隙はみつからない。
 逆に考えれば、それはそれで喜んでいい事だが、そして矛盾しているが、隙ができない事が少々妬ました。

(やはり私を倒すには、私を超えるしかない)

 しかしどうすればいいか、まるで検討がつかない。

『《風》。最大出力』

 心の闇は勝負を仕掛けてきた。
 今から放とうとする業は、アイズの必殺技「リル・ラファーガ」
 それの威力を知っているアイズは、同じようにするしかないと覚悟を決めた

「《風》。最大出力」

 同じ業がぶつかりあえばステータスが高い方が勝つ。
 それが分かっていても、アイズにはこれ以外に方法はなかった。


 そして、閃光と、閃光が、ぶつかりあう


「 ――   ぁ    」

 結果はアイズが予想した通りに心の闇が打ち勝った。
 心の闇は、剣を構え一歩一歩アイズへと近寄ってくる。
 なんとか立とうとするが、リル・ラファーガの反動とダメージにより身体が思い通りに動かない。

(負ける)

 やはりアイズ・ヴァレンシュタインはアイズ・ヴァレンシュタインに勝てない。
 つまり今が頂天。限界。
 これ以上、強くは、なれない。



――だから、一人が行かないで、一緒に強くなろう、親友――

――憧れなんです。アイズさんは――

――[ロキ・ファミリア]はアイズのこと大好きだから――


「「目覚めよ(テンペスト)」」

『――!!』

 剣と剣が交差する。
 膝をついたのは心の闇だった。

「……勝っ、た?」

『そういう、強さも、ある』

 心の闇は光の粒子となり、それがアイズへと降り注ぐ。
 同時に空間が歪み、次に辿り着いたのは何人もの自分がいる部屋だった。
 一対一でもあれほど苦戦した。
 これほどの人数と戦えばどうなるか。アイズは戦慄する。

「キャラ界のクリアおめでとう」

「ここは自分の能力を一回だけ伸ばせる場所」

「所有しているスキルや装備適正の数値を伸ばしたり、魔ビリティを習得など色々なことができるよ」

「私は何を伸ばしたい?」

 アイズはココで何が出来るかをひと通り聞き終わり選択した

「私は、――」




「ただいま」

「おかえりなさい! アイズさん」

「どうだった?」

「……大変だったけど、うん、良かった」

「それは良かった」

 アイズの回答にフィンは満足そうに頷いた

「帰ってきたか」

 キリアはアイズへと近寄る。
 アイズがキリアの後ろを見ると、ティオネとティオナ、ルチルが床に倒れている。

「アイズがキャラ界に行っている間、彼が三人と組手をしてくれてたんだよ」

 フィンがアイズに状況を説明した。



「今日はこの辺りでいいだろ」

 キリアはポケットから特殊金属でできた手形を5つほど取り出してそれぞれに渡した。

「俺が居ない時も、これを超魔亭にいる誰かに見せれば、ここへと来れるようにしてある。暇があれば来るといい」

「今度、キャラ界は私が潜ろっと」

「そうね。強くなって絶対に一撃を食らわしてやるわ」

「遠征前に装備のレベルを上げておかないとね」

 そんな雑談をしながらミニ魔界から超魔亭へと戻る

「そうだ。他のファミリアも利用する事もあるが、くれぐれもファミリア同士のトラブルは避けてくれ。……色々と面倒くさい事がある」

「了解した」




 【Ep2:超魔亭】 ―― 終

                     to be continued




今回はここまでです。
次回は久しぶりにベルくんが登場する予定。
時期は本編の三巻ほどになります。


あと4日でソード・オラトリアの四巻が発売されます
表紙はベルくんカッコイイなぁ。
中身はミノタウルスを倒して終わるのか、それとも遠征まで話がすすむのか。
気になります。



 【Ep3:キリアのある日 [1]】



 ギルド。
 迷宮都市オラリオの運営と管理を一手に担う一大組織である。
 主神であるウラノスは、モンスターの大侵攻を防ぐために「祈祷」を捧げ続ける不動の老神だ。
 ウラノスが居座る石造りの祭壇。
 キリアは久方ぶりに足を踏み入れた。

「何用だ、魔王」

「アイズ・ヴァレンシュタイン……いやロキ・ファミリアの面々をキャラ界に入れた。……更なる高みへのキッカケはできただろう。後は本人次第だな」

「それだけか」

「ああ。それだけだ」

 キリアはウラノスにそれだけ報告すると背を向けた。
 ギルド職員の目を盗んでの侵入。
 忍者や盗賊ほどではないが、恩恵を受けていない人間たちの目を?い潜ることはそれほど難しくなかった。



(……相変わらず厄介な神だな。腹の中が読めない。ウラノスに限った話じゃないが)

 背にギルドの塔を向けてキリアは思った。
 超魔亭の方は、リーゼとルチルがいるので人員は足りている。
 たまには街を散策してみようと思っていると、できれば会いたくない神に声をかけられた。

「やあ、キリア。久し振りだねー」

「……道化神(ヘルメス)」

「おいおい。人聞きが悪い。ロキじゃないだからさ」

「俺からすればお前のほうがよほど道化だ」

 気さくな表情と言葉で話しかけてきたのはヘルメス。

「ちょうどいい。良質な酒が手に入ったんだ。一緒に飲まないかい」

「神であるお前が、魔王の俺に酒を誘うのか?」

「ここは人間界だ。そういうのはナシにしようぜ」

「……。分かった」

「それじゃあ、俺のお気に入りの店に案内するよ」



「……お気に入りの店って此処か」

「おいおい、気に入らないのかい?」

「そうは言ってない。下手な場所に案内されるよりは、よほどいい」

 キリアがヘルメスに案内された店は「豊穣の女主人」
 同じ料理店と言う事もあって横の繋がりが超魔亭とも既知の所だ。
 店へ入ると、ヘルメスが店員へと話しかけ、奥へと案内された。
 小さいテーブルに椅子が2つあり、奥の方なので人目につきにくい。
 魔王と神が密談するには、ちょうどいいスペースといえる。
 席に座ったキリアは、ヘルメスに問いかける

「……で、何を聞きたいんだ?」

「おいおい、せっかく店に来たんだ。少しは酒や料理を味わってからで良いだろ」

「心配しなくても、お前たち(カミ)と違って俺たち(アクマ)は素直だ」

「はぁ。――ナイア。混沌魔王ナイア」

「……」

 その名前が出てくるのは、キリアはほぼ予想していたことだ。



「俺も知っている事はほぼない。いや、逆に知っている者を探すほうが難しい」

「そう。それだよ。なんで、誰も混沌魔王ナイアの情報を知らいないのか。実際、その魔王の存在は天界でも何度も議題には上がりはしたけど、対策は打てなくてね」

「奴が持つ魔奥義・無貌のニャルラトホテプ。姿を自由自在に変化させ、変化したモノの能力を十全使用することができる能力だ」

「姿を自由自在、ねぇ」

「そうだ。神にもなれるし、魔王にもなれる。はっきり言って俺も一対一で挑めば相打ちが精々だと覚悟している」

「それがこの街にいるのは間違いないのかい?」

「それは間違いない。数年前から奴特有の禍々しい魔力残滓を感じることがある」

「『怪物際』の時といい、最近、きな臭くなってきたなぁ」

「新種以外は、この街を見下している女神の仕業だろ」

「ははははは」

 ヘルメスは笑いキリアの言葉を濁した。

(……このままヘルメスと付き合うべきか)


↓+1
1.乗りかかった船だ。もう少し付き合う
2.訊きたい事は言っただろう。ヘルメスと別れる

今日はここまでです

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom