女騎士「黒パン固ぇwww」 2本目 (464)

下記の2レス目。けして黒パンツではない。

女騎士「黒パン固ぇwww」
女騎士「黒パン固ぇwww」 - SSまとめ速報
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>>1

黒パンツスレ乙

スレ立て乙!

女騎士「メイド、いるか?」

メイド「どうしたんですか?」

いつもの様子とは違う女騎士の様子を見て、怪訝そうにメイドは彼女を見る。

女騎士「あまり良くない情報を仕入れてな。お前には王都に戻ってもらう」

言葉数は少ないが、女騎士は急いでいる様子を感じ、メイドも身体をこわばらせる。

メイド「どうしてです?」

女騎士「それをここで話したくはない。手配はしているから、荷物が出たらすぐに発つぞ」

メイド「…わかりました」

納得はできないが、女騎士が自分を悪いように扱ったことはない。仕方なく、そこまで多くはない手荷物をまとめて。

メイド「行きましょう」

女騎士「あぁ」

そのまま、無言で歩く女騎士の後ろを、メイドはついて行った。

揺られる場所の中、女騎士のほかに旅人の装いをした男が二人、場所中に乗っている。しばらくして、がたんと大きく揺れ、宗教都市ディルムンの門を馬車は出た。

女騎士「ここまで出れば、一応は問題ないか」

メイド「どうされたのですか?」

女騎士「あの都市では昔、奇跡が効果を発揮しない時代があったらしい。そして、それを聖イマキルペセの高位の僧が、犠牲になって食い止めた」

メイド「それって…」

今の事態に、酷似した事件。

女騎士「民はそのことを知る者いないかもしれないが、聖イマキルペセの従者達は知っている可能性があった。もし、そのためにお前を犠牲にするという発想が出ても、おかしくなかったからな」

メイド「……、今時そんな古臭い考え」

女騎士「宗教にある意味依存している連中が、古臭い考えをしない方がどうかしてるだろう」

メイド「…、そうですね」

あらゆる技術が、発展している今でさえ、聖女(まじょ)として扱い続ける人間達。聖なる人間としてあえて祭り上げ、生贄にしないという保証は、どこにもなかった。

女騎士「私は王都までの道のりを警護する時間は取れない。この者達がお前の警護に当たる」

メイド「そうですか、よろしくお願いいたします」

その言葉に、同道している二人が、コクリと頷いた。

女騎士「兄様の配下の者達だ。信頼していいぞ」

メイド「……、それはいいのですがね」

遠ざかっていく宗教都市ディルムンを見ながら、どこか上の空でメイドは答えた。

女騎士「まぁ、あまりお前を関わらせるべきではない、事件だったな」

メイド「それはどちらにしても、解決してから言ってください」

女騎士「そうだな」

あくまで、これはメイドを守るためであり、事件解決のためのものではない。私心で、勝手な行動をしたことではあるが、それを咎める者は、ここにはいない。

女騎士「次に着く街でお別れだ。屋敷を頼む」

メイド「…えぇ」

だからこそ、メイドは申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。

>>6の訂正

×揺られる場所の中、女騎士のほかに旅人の装いをした男が二人、場所中に乗っている。しばらくして、がたんと大きく揺れ、宗教都市ディルムンの門を馬車は出た。

○揺られる場所のなか、女騎士のほかに旅人の装いをした男が二人、場所の中に乗っている。しばらくして、がたんと大きく揺れ、宗教都市ディルムンの門を馬車は出た。

その後、最寄りの街について、メイドと護衛だけが降り、女騎士は早く戻るよう指示し、場所を走らせていった。

メイドは護衛の案内の元、これまた女騎士が手配していた宿の一室に今日は泊まっている。

メイド「ご迷惑おかけします」

「お気になさらないでくださいな」

護衛、にしては穏和な顔つきをした女性が、同室で待機し、外はその相棒と思われる男性が、警戒に当たっている。

メイド「このような身分で、護衛をつけられているだけでも過ぎた身です」

「それを聞いたら、聖騎士様はお怒りになられますでしょうね」

と諭すように笑う。

>>10の訂正

×その後、最寄りの街について、メイドと護衛だけが降り、女騎士は早く戻るよう指示し、場所を走らせていった。

○その後、最寄りの街について、メイドと護衛だけが降り、女騎士は早く戻るよう指示し、馬車を走らせていった。

メイド「…そうですね」

女騎士はそういう発言を嫌う。自分の出生を、彼女は隠さない。そうするのは、自分が営々と気付いたことも否定する、その意識があるからだ。

だから、社交辞令ならともかく、親しい者がそういうことを言うのも、とても嫌っていた。

「私(わたくし)も外にいるあの人も兄(しっせいかん)様に限らず大将軍様にもお世話になった身、その方達が寵愛する方の、大切な人をお守りするのは、誉れですよ」

にこやかに、それでいて誇らしげに、女性は話す。

メイド「女騎士様と、お話しされたことはあるのですか?」

「兄(しっせいかん)様の頼みで仕事をこなした時に、何度かお顔は合わせているだけではありますけれど、兄様からは聖騎士様のお話はよく聞きます」

今回もお話しできる機会がなかったのが、残念ですと、少し寂しそうにしていた。

メイド「そうでしたか」

「ふふ。そうですね、何にしても気になされないことです」

メイド「そうします」

そういってから、窓の外をメイドは眺めた。本当にこのまま、戻っていいのかと自問自答が続いていた。

女騎士が宗教都市ディルムンに戻ったのは、ちょうど夜すぎだった。いつものように都市の中は人影はない。

女騎士「……何か分かったか?」

月明りで影になった建物の間から、人が現れる。例の公園であった密偵だった。

密偵「そうですね、聖イマキルペセの内部がきな臭くなってきやした」

女騎士「というと?」

密偵「最近、聖イマキルペセで、次期の聖王を決める時期がきてやす。しかし、現聖王は次期の聖王を聖イマキルペセの司教だけではなく、修道士達も全体で決めるという案を出してます」

それを聞いて、女騎士は少し思案した後。

女騎士「どう考えてもまとまるとは思えんぞ」

密偵「同意見ですね」

つまり、そこから考えられる現聖王の意図は。

>>15の訂正

×密偵「最近、聖イマキルペセで、次期の聖王を決める時期がきてやす。しかし、現聖王は次期の聖王を聖イマキルペセの司教だけではなく、修道士達も全体で決めるという案を出してます」

○密偵「最近、聖イマキルペセで、次期の聖王を決める時期がきてやす。しかし、現聖王は次期の聖王を聖イマキルペセの司教だけではなく、修道士達も含めて全体で決めるという案を出してます」

女騎士「聖王の座の延命処置、ということか」

密偵「そう考えるのが妥当で」

司教だけで決めるのでさえも、足の引っ張り合いが横行し、なかなか聖王が決まらないという話すらあるのに、修道士達にも決定権を分配するということは、実力だけでは聖王足りえない人物が、修道士を買収して収集がつかない可能性すらある。

密偵「もう、メイドさんを帰されたのでご存じでしょうが、以前にもこの地域、奇跡が使えなくなっています」

女騎士「そのようだな」

密偵「メイドさんも生贄に値する存在ですが、この状況を利用するなら、メイドさんよりも…」

女騎士「…なるほど、それは確かに、きな臭いな」

つまりは、もっとも高位な僧にあたる、聖王を生贄となれば、少なくとも無意味な延命処置の案はなくなる。

密偵「もちろん、そんな事情がなければ、メイドさんが、という塩梅になったでしょう」

女騎士「その時は聖イマキルペセは私が潰す」

密偵「おぉ、怖い怖い」

大げさそうに言っているが、内心密偵も女騎士の実力を影に生きる者として重々に知っている。簡単ではないが、できなくはないそういう評価だ。

女騎士「しかし、問題なのはたまたまこの状況が起きたから利用しているのか、それとも、そのために起こしたのか、だな」

密偵「どうでしょうな。今まで私の聖イマキルペセのメンツでひた隠しにしてたと思ったんですが…、それさえもその意図を隠すためのものなのでは、調べるとそんな気がしてなりやせんな」

女騎士「…たく、めんどくせぇ」

思わず、騎士としての態度ではなく、女騎士個人として、愚痴がこぼれた。

密偵「そりゃあ、聖騎士様からすりゃあ、面倒な件でしょうさ」

女騎士「…、まぁいい。問題はどっちか、というのが重要だ。どちらにせよ、私が閲覧できるところでは、その奇跡が使えない。使っても効果がない理由については、記されていなかった。司教クラスの人間なら、大体の書物は閲覧可能だろうし、そこに理由が書いてるあるかもしれない。対象は絞れてきた上で、追う道も見つかったんだ。悪いことではない」

密偵「…(ほう)」

密偵の知っている女騎士の情報と、目の前の情報はある点が違っていた。あまり考えがなく、本能で行動するタイプそう言われていたが、目の前にいる人物はどちらかというと理知的だった。

密偵「…(自分の手で探し、確認し、そして考えてこその情報。いつも通りだな)」

人づての情報は意図がある、しかし、自分で調べつくした情報に意図はない。だからこそ検討できる材料を洗いつくし、考えることで真実にたどり着ける。彼がこの仕事をして、身に染みたことだ。

女騎士「より深く調査を頼む。できれば、奇跡が使えなかった理由も含めてな」

密偵「畏まりました。それでは、これで」

すっとまた建物の影に姿が消え、少しして気配が消えた。女騎士は、気配が消えたのを受けて、宿へと戻っていくのだった。

今日はここまで

>>18の訂正

×密偵「どうでしょうな。今まで私の聖イマキルペセのメンツでひた隠しにしてたと思ったんですが…、それさえもその意図を隠すためのものなのでは、調べるとそんな気がしてなりやせんな」


○密偵「どうでしょうな。今まで私も聖イマキルペセのメンツでひた隠しにしてたと思ったんですが…、それさえもその意図を隠すためのものなのでは、調べるとそんな気がしてなりやせんな」

翌朝、女騎士は大教会へと向かう。いつも通りの様子が見えたと思った後、大教会中に響く怒声が聞こえてきた。その発生源に目をやると、司教が血走った目で同じ正装をした相手に、怒鳴りつけているところだった。

司教「この緊急時にそんな話をしにきたか!」

「そんな話だと?」

司教「しかもこんな面前の前で…、何を考えておる!」

今にも食って掛かるとも思える状態に、女騎士はゆっくりと近づいて両者の間に入る。

女騎士「こんな朝方から何の騒ぎです?」

司教「女騎士…、ふん、なんでもないわ!」

床を叩きつけるかのように、怒りを露わにしたまま、司教はそのまま奥の部屋へと消えていく。

「まったく…」

女騎士「突如間に入ってしまい、申し訳ない」

「気にするな。こちらも、その心遣いに感謝しよう」

言葉こそ丁寧ではあるが、司教に属する傲慢さが見え、女騎士は心中で舌打ちをする。

女騎士「ありがとうございます」

「…、貴殿が噂の女騎士か。このことで派遣されたのか?」

女騎士「えぇ、王都よりの命(めい)が下されました」

「このような事態、隠せるものではないから、当然か」

何か考えるようなそぶりをした後。

「この事態、我々としても解決したいのは同じ。何かわかったら頼むぞ」

女騎士「は!」

「私はロドマという。何かあれば私に話せ、やつはこの件で冷静な考えを失っているようだからな」

女騎士「承知いたしました」

ロドマ「では、これにて失礼する」

去っていくロドマの姿を見守りながら。

女騎士「(何も知らない、という態度ではなかったな)」

この事態についてなんらかの理由を知っている。そんな雰囲気をロドマから受けた。例の生贄事件についてだろうと当ては思いつくものの。

女騎士「(司教がそんな話と言っていたのは、それを実行するつもりなのか。それとも単に期日が迫る聖王に関しての話か)」

情報がない以上堂々巡りの思考ではあるものの。

女騎士「(なんにしても、理由があってここにきている。しばらくはあいつの身辺を洗うか)」

そう考えた女騎士の行動は早く、そのまま大教会を飛び出していった。後に残されたのは、相変わらず怪我人や病人の看護を続ける修道士達の姿だった。

とりあえずここまで。仕事の忙しさやら体調の悪さやらで更新遅くなり申し訳ない。


体には気を付けてな

>>27
ありがとう

また今日も更新しようとして寝落ちてたよ。

明日、てか今日は書くよ…。二度寝します

女騎士「司教内でもそこそこの発言力の持ち主だな」

ロドマの情報は比較的早く集まった。聖イマキルペセでの実力があり、人望は厚い人物だが、重要な宗教施設や教会などの選任の際、すぐに辞退し、争いの調停役も力不足と断り、活躍できる機会を自ら手放している。

女騎士「目立ってなんぼの奴らの中じゃ、異端だよな」

実績を示すことが、聖王に近づく最も簡単な方法だ。その機会を与え続けられたことから実力者であることは伺えるが、そのせいで立場上は司教内では末席にいる。

しかし、実力者には変わりはなく、数年に一度行われる司教の選任に常時選ばれるほどの人物。

女騎士「(そして現聖王の信頼も厚い)」

実力があることと、その行いで形式上の末席とはいえ、立場は立場。下手な発言をすれば、上の立場の司教から良くて嫌がらせ、悪くて失脚を狙われるが、聖王の信頼という加護をも持つ。

もしロドマが聖王の座を望めば、容易になることは想像に難くない。

女騎士「が、現に聖王の選任についても即座辞退。わけわかんねぇやつだな」

聖王、それは王と名乗るだけあり、聖イマキルペセの全権を掌握することになる。多数の国で信仰される宗教だけに、その権力は下手な小国など、太刀打ちできないものだ。

それだけに、欲まみれな司教であれば、更なる高みであり、頂であるその座を、それこそ喉から手が出るほど欲する。

女騎士「(その意味では、ロドマは無欲っつーことになるか)」

聖王が提案した、聖王選任方法改案も、もしかしたらロドマに継がせたいがゆえの延命措置。そんな風にも女騎士は思えてきていた。

現段階はロドマが辞退したことにより、ここの大教会を預かるあの司教が今一番聖王に近いといわれている。

女騎士「もしこの二人のうち……」

二人のうち、例の生贄の伝承を利用するならどちらか。

単純にいけば、聖王になりたいのはこの場合司教だろう。しかし、あの口論の様子を見るに、言い出したのはロドマの様子だった。彼が聖王になりたい、というならこんな回りくどい方法は必要ない。

女騎士「公の前で話し出すぐらいだ。もしかしたら、本当の意味でくだらない話だった…?」

そこまで考えて、女騎士は頭をかきむしり。

女騎士「ダメだ、検討がつかねぇ」

奇跡の効果がない、人々の生命力の欠如、そして聖王選任問題。これらは、確実に関連がある、女騎士にはその確信があった。

女騎士「全てを結ぶ情報が足りねぇな」

座っていた椅子から立ち上がり、何か飲み物はないか部屋を出ようとした時、扉がノックされた。

仕方なくどうぞと女騎士が声をかけると、入ってきたのは医者だった。

今日はここまで。寝落ちしなくてすんだぜ

おつおつ

今の話は素が出まくりだな、乙

>>36
静かにフラストレーション溜まってるから仕方ない

医者「ふむ、疲れた顔をしておる」

女騎士「いつも通りだぞ?」

医者「やれやれ、これだから体力バカは」

皮肉をいいながら、医者は女騎士に対面する形で椅子に座る。

医者「ほれ、以前渡した栄養剤じゃよ。使者をやって回収したんじゃ」

女騎士「別にいらないぞ?」

医者「生命力が欠如する現象が発生する場所に居るなら、大なり小なりお前さんも影響は受ける。あって損は無かろう」

女騎士「…、わかった。言い分はもっともだからな」

使うことはないだろうと思いながら、女騎士は栄養剤を受け取り、懐にしまった。

医者「患者達にこれを使おうと思ってな。身体の活性化を促す作用があるから、ここの連中に効くじゃろ」

女騎士「かなり強力なんじゃなかったか」

医者「もちろん希釈して使うわい。そのまま使えるのはあんただけじゃ」

女騎士「そうか……。このためにきたのか?」

医者の不器用な優しさは、女騎士も理解している。だから、そう聞いたのだが。

医者「いや、これはついでじゃよ。お前さん、ロドマを調べてるんじゃろ」

そう、真剣な表情で聞いてきた。

女騎士「どうしてそれを聞く?」

医者「そうじゃな、仲違いしたとはいえ、友人に嫌疑がかかれば気になるじゃろ?」

女騎士「知り合いなのか」

医者「……、古いな。それこそ、あいつがお前さんぐらいの頃合いに会った」

懐かしむような、どこか寂しさを感じているような、顔に刻まれた皺が、その表情をうやむやにする。

医者「熱心な修道士じゃった。人々を正しく導き、そして癒すことに力を注いでいた」

女騎士「まさかだが…」

医者「ふん、まさか儂も修道士だったのか、じゃろ。そのまさかじゃよ」

医療で宗教に喧嘩を売った人間、それが元々は修道士だったことに、女騎士は皮肉さを覚えた。

とりあえずここまでかな

おつ





はよ

傲慢

>>42
まぁまぁ、そうそう焦らせんで。まったりいこう

>>43
更新速度についてかな。まぁ、今はどうしても安定できないから気長にどうぞ

医者「儂が修道長をやっていた頃じゃ、ほかの地域からそれぞれ、あの大教会の司教とロドマが赴任してきた」

女騎士「部下の間柄か」

医者「形式上のものじゃがな。儂がそういうのを苦手で、全員平等にしていたつもりじゃよ。それに、当時取り仕切っていた司教が目配りに長けておったから、儂が上の立場として何かした記憶はない」

いつもの気難しい表情ではなく、記憶を一枚一枚本を開くような、懐かしい表情を医者は浮かべていた。

医者「ロドマは先ほど言ったとおり、生真面目で熱心な修道士。司教はどちらかと言えば野心的じゃったが、教えを正しく民に教え導くことを優先しておったから、どちらも良い修道士ではあったな」

女騎士「ふむ、二人の仲はどうだったんだ?」

医者「良好な方じゃった。それなりに話もしていたようじゃし。ただ、積極的に一緒にいたわけでもない。恐らくロドマじゃろうな、あいつは親しさに、限界、いや距離があるタイプじゃったから」

女騎士「なるほどな」

ただ、そうなると気になることが、女騎士には出来てしまう。

女騎士「ロドマは人と距離を置くと言ったな?」

医者「そうじゃ」

女騎士「もし、ロドマが何らかの計画を進めるとしたら、自分ですべてやりきるか?」

医者「そうじゃろうな。少なくとも、自身でやらなければならないことは、けして人には任せん」

断定的な言い方が、ドマを見た時に女騎士が感じた印象と合致した。

女騎士「(なら何故司教に話をしにきた?)」

ロドマは不要なことはしないだろう。少なくとも、司教の力を借りる必要があり、この事態を承知で話にきた、そう考えられる。

おつ
最近忙しいのかな

>>51
すまんのう。仕事の忙しさが引かなくて、更新安定しそうにない。決算月とか死ねばいいのに。
(あと寝落ち)

近く2連休あるから、その時にでも10レスぐらい進められれば、いいな

だが、司教はそれを下らないことと断じて、食ってかからんばかり態度だった。ロドマという人物からして、下らない用件はないだろう。つまり、受け入れがたい話だった可能性は高い。

女騎士「藪医者、お前は」

医者「二人のあのやりとりか、治療で忙しく動き回っていたが、あのバカの声量だ。聞こえぬ訳はない」

女騎士「だから気にしたわけか」

医者「二人の様子を見て、飛び出した後、それとなく聞くとロドマについて尋ねていた。なんて聞かされれば当然じゃろう」

まったくと言った後、医者はブツブツと文句を言いながら、懐から羊毛紙を取り出して机においた。

乙!

乙打ったらちょうど更新始まった!連レスすまぬ

出された羊毛紙には、投影石が写されており、そこには。

女騎士「若い時の藪医者達三人と……、この女性は?」

そこには修道士時代の医者、司教、ロドマが写っており、真ん中に優しい微笑みをたたえた女性がいる。

医者「……、名はアメリア。当時いた教会の司教じゃよ」

女騎士「この方は今?」

少しの沈黙の後。

医者「病で亡くなった。当時、いや今でも精霊魔術で治療できない、不治の病に冒された」

女騎士「そうか…」

医者「そして、それが儂を医師としての道を歩ませたことでもある」

医者「彼女が倒れ、診断した時、教会の修道士達総動員で、精霊魔術を施した」

女騎士「だが」

それ以上の言葉を女騎士は続けなかった。それこそ聞くまでもないわかりきったことなのだから。

医者「あぁ、彼女はやつれて死んでいった。恨み言一つ言わず、ただただ皆に感謝の気持ちを伝えて、眠るようにな」

女騎士「それで、お前はどうして?」

医者「気付いた、というべきじゃろうな。この世には魔導だけで救えないことがある。つまり、救いたければ魔導以外の新たな方法を見つけるしかないと」

女騎士「その結果が、医療か」

そうじゃと、医者は頷く。

医者「幸い薬学に関する知識もあり、学ぶ資料自体が教会にあったからのう。最初のうちは知ることに苦労しなかった」

女騎士「徐々に聖イマキルペセ内から圧力がかかったか?」

医者「教会としては神聖ではない方法で、人々を治療し始めたのじゃからな。覚悟もしておったが…」

目を閉じ、またしばしの沈黙の後。

医者「司教とロドマが、このやり方で対立した時は、少々悲しかった」

女騎士「理解してもらえると」

医者「どこか思っていた。アメリアのことで、この道を選んだ儂を理解してくれるとな」

しかし、そうなると女騎士には気になることがあった。

女騎士「だが、二人もどちらかというと袂を分かつ様子だがな」

医者「二人もそれぞれ、意見が割れていた。司教は自身の教会内権力が足りなかったこととし、ロドマは違う精霊魔術を施すべきだったとした。もちろん、折り合いがつくわけもなく、お互いはお互いの方法で力を付け、今の立場になったと、儂は思っておるよ」

女騎士「なるほど…」

ロドマが司教の末席に甘んじているのではなく、望んでいるそう理解できた。

司教の立場でも、末席の者だと教会を持つことはない。だが、彼はアメリアの件で新たな魔導を探究すべく活動を優先していると考えられる。ならば、動き回りやすく、そしてある一定の権力を有する末席の司教という立場は、彼には都合が良かったのだろう。

女騎士「もしかして、アメリアさんと同じ病を治療する魔導を、見つけた?」

医者「可能性はあるんじゃが、司教の立場がげせん。いや、権力に取り憑かれ、昔のことなど忘れたのかもしれんが…」

>>60の訂正

×医者「可能性はあるんじゃが、司教の立場がげせん。いや、権力に取り憑かれ、昔のことなど忘れたのかもしれんが…」
○医者「可能性はあるんじゃが、司教の態度がげせん。いや、権力に取り憑かれ、昔のことなど忘れたのかもしれんが…」

女騎士「そうかもしれないが…、司教はそこまでの色ぼけではない。私が見てきた中では、だがな」

医者「ふん、言いよる……。もしそのことで怒鳴ったとするなら、ヤツなりにアメリアのことは、区切りをつけたのかもしれんな」

医者は何かに気づいたような素振りをし、皮肉そうに笑った後。

医者「となると、ヤツからすれば儂も過去に捕らわれた人間の一人、という訳だな」

女騎士「そうかもしれないな」

医者「……、そうじゃな。儂もどこかで、彼女を拘っているのかもしれん」

医者「(アメリア……)」

医者には亡き彼女の姿が、いつも見えるような気がしていた。いつもの優しい微笑みが、自分を責めている気がしてならず、夢で見る度にうなされる。

情けないと、医者は思うが、親しく、そして敬愛する者が、自分の力足らずで死なれたとなれば、トラウマにならない人間はいるのだろうか。

女騎士「貴重な情報をありがとう。助かったよ」

医者「あぁ、とりあえず二人には問題なかろう。まぁ、儂がそう願ってるだけじゃが」

椅子から立ち上がり、医者は扉のノブに手を置いた後。

医者「今の状況が、アメリアの時と似ていてたまらんよ。司教も、ロドマもきっとそうじゃろう」

女騎士「……苦労をかける」

医者「なに、このためにこの道を歩んだとするなら、その甲斐はあった訳じゃ。では寝る」

女騎士は去る医者に声をかけないまま、見送った。

>>54-55
まぁ、気にしないで。



というわけでいったんここまで、そこそこ進んだかな?

おつカレー

すまん
あげちまった

>>65-66
キニスルナ!

少しずつ、この事態について紐解けていっている。女騎士はそう考えていた。だからこそ、次の段階に行動を起こさなければならない。

女騎士「(魔導が効果を発揮しないそのものについて調べないと)」

根本的な問題となっているその部分について、類似する事例がなかったか、方々に調査を依頼し、女騎士自身もここで以前に同様にあった魔導が切かなかった件を調べていた。

女騎士「ふぅ、ダメか」

大教会で、大衆には目の触れない場所に保管されていたその歴史を、知る者はほとんどいなかった。

女騎士「(そもそも、奇跡が起こせなくなったことを、生贄とはいえ、それで再度起こせる事態があったなら、聖イマキルペセの奴らはデカデカと誇らしげに開示しそうなものだが)」

神に怒りを買った、というのが聖イマキルペセとしてはダメなのか。それとも開示するには当たらない情報だったのか。どちらにしても、権威主義の聖イマキルペセとしては、珍しいことになる。

女騎士「(それとも、開示できない理由でもあった。自分としてはこちらがスッキリするな)」

開示できない理由、そこに今回の事態を解決する糸口がある。そう考えていた。

女騎士「というわけで、その僧とやらが生贄された場所を来てみたが」

そこは何か儀式の時におかれたと思われる台座があるぐらいで、雑草が生い茂り、聖イマキルペセにとっては神聖な儀式が行われた場所とは思えない。

女騎士「(一部しか知らないとはいえ、記録に残っている場所は、管理はしているはずなんだがな)」

もちろん目の前にある光景は、そういった様子はまったくない。そんなことがあったことを、風化によって忘れ去られるのを待ち望んでいるかのような、そんな気分にさせる光景だ。

聖イマキルペセにとっては、奇跡は絶対的な存在だ。神が許してくれた、絶対的な力。それだけに、奇跡が使えないということ自体は、神の怒りに触れた。という表現は彼らにはもっともだろう。しかし、問題なのは。

女騎士「なぜ、神の怒りに触れるようなことになったのか、だな」

その名残のようなものでも見つかればとは思っていたが、管理されていないのでは、わかりようもない。

密偵「やはりここでやしたか」

まるでこの場所にお参りにでもきたかのような足取りで、今度に自然に現れた。

女騎士「一足先にな」

密偵「やれやれ、密偵という立場が形無しですな」

女騎士「そうでもない。まだ何か掴んでいるのだろう?」

密偵「さようで」

どこか感慨ぶかけに密偵は周囲を見渡した後。

密偵「あのロドマや司教を追われているのは知っておりましたが、とりあえず耳に入れたほうがいいと思われる情報がありやす」

女騎士「なんだ?」

密偵「当時精霊魔術を持っても治療できなかったアメリアという司教は、ご存知で?」

女騎士「あぁ、ここに連れてきた医者から聞いたぞ」

そうでしたかと、つぶやくように言って、間をおいた後。

密偵「どうやら、女騎士様のお父様。つまり大将軍に深い縁のあった方のようですな」

一陣の風が、二人の間を流れていった。

女騎士「お義父様…に?」

密偵「大将軍が今の地位を築いたといえる、今はなきエルダイス国との大戦争の折、アメリアが大将軍の部隊に従軍していたそうです」

女騎士「…救護班か」

密偵「えぇ、大いに貢献したそうです。大将軍も何度かお世話になったとのことで」

女騎士はその大戦争についてはあまり知らない。大将軍がそのことをあまり触れてほしくなさそうにしていたというのが、理由だ。

女騎士「今回の件、お義父様に関わりはあるのか?」

密偵「さぁ、そこまでは。しかし、ないと言い切るのどうかと思いやすが」

女騎士「何かあるのか?」

密偵「大将軍の部隊の中でも、アメリアは中心核の一人のようでした。大将軍もそれなりに親しくしていたようで」

まだ、アメリアの件がこの事態に関わっているとは決まってはいない。だから、情報として留めておくべきだが、敬愛する者の話だけに、女騎士は内心動揺していた。

女騎士「そうか、ありがとう」

その言葉をだけで、女騎士には精一杯だった。

密偵「あとは、奇跡、魔道の件ですね。上級司教用の蔵書に忍び込んできたようですが、どうもそもそも奇跡が起きなくなったのは、聖イマキルペセ自身が問題だったようで」

女騎士「神にでも喧嘩売ったか?」

密偵「その通りで」

女騎士「は?」

冗談が肯定され、思わず素っ頓狂な声を女騎士はあげてしまった。

密偵「正確に言えば、神を名乗った人間を、教えを混乱させるものとして、発展途上のディルムンから追い払ったようです」

女騎士「あぁ、なるほどな」

密偵「そいつは、去り際に貴様らのもっとも大事なものを奪うと言い残し、そして奇跡は行使できなくなった」

女騎士「しかし…、今回はそういうことはないのだろう?」

えぇ、と密偵はうなづいた後。

密偵「聖イマキルペセでそれに近いトラブルがあった、そういう情報はありませんな」

女騎士「だが、もしその神を名乗る人物が起こした事態なら」

密偵「人為的な線が高いでしょう。それにもし、その方法を書かれた魔術書があると仮定した場合」

女騎士「発見したものが高位な魔導使いなら、できるだろうな。言い換えれば、そういうことが実行できるという証明か…」

そして、それに関する記録が聖イマキルペセ内で留められているというのも、納得がいく。それは大規模に魔導を使えなくする術があると公言するのと同じで、聖イマキルペセの核心を狙われることに他ならない。

精霊魔術は聖なる方法を持って人々を治癒するのが目的の魔術。今回の奇跡が行使できない件は、術後の効果が元に戻ってしまうというものだ。そのため、魔術師が行使する攻撃のための魔術は、致死に至らせれば関係ないだろう。死人が生き返ることはないのだから。だが、治癒が目的の精霊魔術はそうはいかない。

女騎士「なるほど、情報を開示したがらない訳か」

密偵「そうでしょうな」

女騎士「…その神、追えるか?」

密偵「お約束はできませんが」

女騎士「頼む」

にっと笑って頷いた後、密偵はそのまま参拝を終えたように去っていった。

とりあえずここまで。

女騎士「騒がしいな」

生贄の祭壇から戻ってくると、観光名所になっている公園が騒がしかった。何かのトラブルかと思った女騎士は、その騒ぎの元に近づいていく。

「神は我々を見捨てたんだ!」

若い男が集まった民に対して、そう告げた。

「だからこそ精霊魔術では、我々は救ってはいただけなくなってしまった。しかし、それはなぜか!」

女騎士はその演説を木陰のそばから様子を伺っていた。

「これは全て拝金主義者の聖イマキルペセが、神に怒りを買った証明にほかならない!」

女騎士としては、この若い男が何者かなのか探るため、演説は止めないでいた。

「皆の者聞け! ここにある像は、霊験あらたかな神像で、持てば魔導の効果を得られる!」

あまりそうは考えられないが、もし、この事態をこのために生み出していたとすれば、そこから犯人を割り出すこともできる。女騎士がそう考えて近付こうとした時だった。

面白い

>>78
ありがとう。


繁忙期で残業が日増しになって、本気で更新が安定せん。せめて三日に一度は少し更新したいんだけど。

いつになると落ち着くか予測がつくなら、それがいつか言ってもらえると嬉しいし、それまでは仕事に専念できるからいいと思うよ

「貴方は何をふざけてるのですか?」

フードを深くかぶった人物が、その若い男に対して静かに言い放った。

「何だお前は」

「私は神は嫌いですが、この状況を利用し、信仰心を歪ませる輩も、嫌いですよ」

そう言って、若い男が並べていた神像の一つを軽く蹴り飛ばす。

「第一、こんなものを持って魔導の効果が通常通りに戻るなら、とっくの昔に聖イマキルペセの方々が、そこそこの寄付の受付とともに人々に配ってるでしょう」

「お前、なんなんだよ!」

「何者でもないですけど。わかりやすく言うなら、貴方にムカついてるだけです」

女騎士「いさかいはそこまでにしてもらおうか」

まさしく食って掛かろうとするフードの人物を抑えながら、若い男の前に女騎士が立つ。

女騎士「貴様のうたい文句を聞かせてもらった。もし、それが真実であるなら、是非民に分けてもらいたいものだが、そうでないのであれば、少々付き合ってもらうことになるが、よろしいか?」

「…んだよ!」

目の前にいるのが最上位の騎士であることには気づかなかったが、このままでは立場が悪い状況に気づいて、若い男は早足で逃げ出していった。

女騎士「……戻れといったはずだぞ、メイド」

メイド「一度は戻りましたよ」

女騎士の視線の先にあるのは、メイドに護衛としてつけた者達が、少し罰が悪そうに苦笑いしている表情がだった。

>>80
上司に繁忙期終わったら落ち着きますかねと聞いたら、新しいの始まるからわかんねいわれてげんなりしてるんよなぁ。

まぁ、さすがに来月は今月みたいな忙しさはないとは思うんだけども。

おつかれさま
一読者としては、ご自身のペースで楽しく書いてもらえると嬉しいな

あー、やっぱメイド戻ってきたか
トラブルの元だな

>>83
楽しんでいるけれど、やっぱりガラケだけだと今の状況だと時間がね…

まぁ、のびのびとはやるだろうけども


>>84
まぁ、このままだと医者さんしか目立たないから多少はね?

女騎士「メイドの気持ちもわかるが、今は素直に帰ってくれ」

メイド「嫌です」

女騎士「はぁ、この頑固者」

メイド「従者は主(あるじ)に似るものですよ」

まったくと呟きながら、深く背もたれに女騎士は寄りかかった。

女騎士「まだ何かを特定したわけではないんだ、多方面からメイドを守るのは、現実的じゃない」

メイド「でも、そもそも私がターゲットになるかは、わかりませんよね?」

女騎士「ああ言えばこういう…」

メイドが言うことは間違いではない。状況からこの異常事態を解決するのに、生贄にするのは聖王の方が確率は高いだろう。

しかし、何かの拍子で状況が変われば、そうとは限らなくなる。それを女騎士は恐れている。

もちろん女騎士の胸の内をメイドも理解はしているが、心が納得しない。半端に関わり、身が危険と知ってしっぽを巻いて逃げる。そうすることが、どこか醜くメイドは思えてしまったからだ。

メイド「本当に私が危ないとなれば、その時はちゃんと帰りますよ」

女騎士「はぁ、それがわかってからじゃ遅いんだぞ」

メイド「大丈夫ですよ。女騎士様には負けますが、私もしぶとい方ですから」

女騎士「……護衛の者からは一切離れるなよ。もし、単独で行動したら、嫌でも帰ってもらう」

メイド「わかりました」

女騎士は頭を痛めながらも、メイドもそうそう勝手にしないだろうと判断している。

今はメイドが戻ってきた事実を知られないように、手筈を進めておく必要があるなと、女騎士は考えていた。

女騎士「近々聖王様がいらっしゃる、と?」

司教「この状況を確認のためにな」

メイドが戻ってから数日後、司教に呼び出された女騎士は、聖王がこの地にやってくることを知らされた。

女騎士「なるほど。しかし、なぜそれを私にお教えいただけるのですか」

司教「ふん。残念ながらここで警護に当たれる者はおらん。貴様ぐらいしか聖王の警護を任せられる者がおらんだけだ」

女騎士「お言葉ですが、私はその任にそぐわないのでは?」

司教「ほう、気に食わないか」

もちろん女騎士は気に食わない。その意図は不確かではあるが、わかることが一つある。

女騎士「滅相もありません。聖王様はいつまでご滞在されるのでしょうか」

司教「わからん。どのような気まぐれかは知らんが、この状況を見たい。それしかおっしゃられておらんでな」

つまり、この状況を解決しようとする王都の勢力を、縛り付けておきたいということだ。

女騎士「くそったれ」

夜、例の公園で女騎士は感情も隠さずに漏らす。

警護の件、女騎士の立場であっても、それを断る、という選択肢自体がもちろんない。自身に関わる問題だけなら関係はないが、王都の騎士であること、大将軍の家筋の者ということ、それらを悪化させることはいらない緊張感をもたらし、最終的に民を苦しめる結末が待つ。

女騎士「(動かせるのはあくまで密偵だけだ。下手に応援を呼ぶわけにもいかない)」

まだ、数日の猶予がある。その間に自分の代替を用意しなければならない。それも内密の内に。

密偵「厄介な事態になりましたね」

女騎士「さすがに早いな」

密偵「予想できた事態でございやしょう」

女騎士「まぁな」

だからこそ、密偵を呼び寄せてはいたのだが、強行に動きを封じに来るのはあまり想定していなかったのは事実。

女騎士「例の神はたどり着けたか」

密偵「なにせ古い話ですからね。途中で足取りは消えておりやした」

女騎士「……その線は八方塞か」

残された時間はあまりないにも関わらず、追える道が閉ざされることに、女騎士の落胆は隠しようがなかった。

密偵「そう気を落とさず、面白い話がないわけではありません」

女騎士「なんだ?」

密偵「どうやら、その神は流れ着いた村で男児を授かったようです。その後、理由はわかりませんがまた村を離れ、そこから消息が途絶えておりやす」

女騎士「……血筋か」

聖イマキルペセに恨みを持つ者の血を引く一族達。聖イマキルペセも、昔から一大勢力を築いていたわけではない。だから、当時のいさかいの時も、聖イマキルペセを信仰しない地域がざらにあっただろう。

女騎士「もしその事を伝え、脈々と意思を受け継いでいたら、その家系ということもありうるか?」

密偵「かもしれませんな。問題はその家系の者達も、男の跡を追うように村から姿を消しているということでやすがね」

女騎士「一番考えられる状況を統合するとしよう。1、聖王選任問題。2、奇跡の無効化。3、過去にあった同様の奇跡無効化事件。これらをまとめて考えるのであれば、聖王の延命処置対策に対し、聖王になりたい者、そして聖イマキルペセに恨み、今回の場合その神がらみに関わる者。その恐らく二人がなんらかの形で接触し共謀、どちらかがこの事態を起こせる魔術を行使する。しばらくこの事態について隠匿し続け、抜き差しならない状況になったところで王都に情報を漏らす。そうすれば聖王が来るように仕向けられる。予測できるのは滞在中、生贄により事態が収束という情報を流布し、聖王を亡き者とするように進める計画。と考えるとまだ腑に落ちるな」

密偵「そして、それで聖王になった者の弱みを握ることができる恨みある者が、更に聖イマキルペセ崩壊に歩を進めさせる策を講じている」

女騎士「神の家系からは追えなくなったが、聖王になりたい者から黒幕をあぶりだせる可能性は十分にある」

この考えは、もちろん憶測の域は出ない。しかし、不確定に入る情報を統合すれば、この結論になっても、不思議なことではない。

女騎士「時間はない。見落としがあることは考えられるが、その線で追ってくれ」

密偵「わかりました」

女騎士「ただ、もう1つ考えられることも追ってほしい」

密偵「司教とロドマ、でやすね」

女騎士「二人の家系を追っても遅くはない。何もそれぞれが独立しているとは限らないからな」

聖イマキルペセを崩壊させるために、あえて入信するという方法もある。内部で力を持ち、そして崩壊させるというのも、手としてはまだ手っ取り早い方ではあるのだから。

密偵「そういえば、神と名乗る存在が追い出された理由も確認しやした」

女騎士「それを早く言え。それで、なんだ」

密偵「聖イマキルペセといえば、精霊魔術を売りにした宗教団体です。どうやら、その神は一人でここの民を治癒する魔導を使えたようで」

女騎士「……聖女(まじょ)の家系ということか」

聖女は女に偏ってその力を持つことが多いものの、男でもその力を持ちえる場合はある。そしてもし、そうあればますますメイドの立場が危うい。これを知った聖イマキルペセの連中が、メイドを敵として祭り上げる場合も、十分にありえる。

女騎士「あいつが言うことを聞くとは思えんしな」

これと決めたことは、かたくなに突き進もうとする。一度返して戻ってきた以上、メイドが素直に帰ることは女騎士は想像できなかった。

密偵「メイドさんでやすね。その点は私も重々留意しましょう」

女騎士「すまないな」

密偵「なぁに。雇い主の利益を守るのも仕事です」

女騎士「そう言ってくれると助かる」

自分が離れてしまわなければならない、それが不安に拍車をかける中、密偵の言葉は少しだけ気分を和らげた。

密偵「それに、野良で治癒魔導を施せる者はいないわけじゃありやせん。すぐそこに考えを紐付けることができるヤツがいるとするなら」

女騎士「なるほど」

密偵「相手も、我々が探りを入れ続けてることは、大なり小なり気づいてるでやしょう。それこそ、そいつにとって、すべてが整った時以外は、下手に動きはしないかと」

ここまでのお膳立てを整えるような相手だ。愚かな仲間よりはその点は信用はできるだろうと、密偵は踏んでいる。

女騎士「ここいらで解散といこう。うまくやれるか?」

密偵「どちらの意味ででやすかな?」

女騎士「両方、だな」

密偵「へへ、逃げるのは特技ですよ。それじゃ、これで」

そのまま闇に溶けていくように、密偵は姿を消す。

女騎士「(さて、私は別に逃げる必要はないな)」

ここのところ、街中に衛兵以外の気配がなかったにもかかわらず、妙な気配を感じるようになり。

女騎士「(私を尾行〈つ〉けるようになったからな)」

言い換えれば、不確かな闇の中ではあるが、ある程度は目的の方向に進めている証明でもある。

女騎士「(あとは、いつ襲ってくれるか、か)」

いつもの様子で、女騎士は宿に向かうその日も、その気配はまとわりつくだけで、何もしてこなかった。

とりあえずここまで。休みに一気に進めるスタンスになるやも。


個人的にはそっちの方がまとめて読めるから変にもやもやしなくて嬉しいな

乙!

メイドの黒パンツを祭り上げよう

>>98
ふむ。この作品も1スレ分の流れがあるから、今後のために見直しとかしてると、どうしても更新が重くなるのよねぇ。

>>99


>>100
メイド「……、まぁ、持ってますけどね」

女騎士「いう必要はあるのか?」

メイド「そういう需要というやつでしょう」

女騎士「よくわからんなぁ」

メイド「わかってくれていたら、私が口うるさくいう必要もないのですけどね」

女騎士「?」

密偵「……厳重だな」

大教会の一室に密偵は忍び込んでいた。聖イマキルペセ内でもごく一部の人間しか立ち入ることができない、いわば聖域。施されてた魔導を回避しながら、影のように侵入している。

密偵「(関係のない情報は見ないようにしなければな)」

場所が場所なだけに、ここにある情報はものによっては身に危険が及ぶ。だから、余分な情報まで知る必要はない。無知は時に救いでもあるのだから。

密偵「(今回の件に関係ありそうなものは…)」

一冊一冊に特殊な魔導を施されている。それを解除しながら調べるにはあまりにも時間は少ない。

密偵「(ふむ、内部も見えないか厄介だな)」

その魔導は、内部を透視する魔術もはじき、閲覧できないようになっていた。

密偵「(仕方ない。事前に調べたものが間違ってなければいいが、解除して確認しよう)」

持ってきていた解除用の宝石を静かに開放して、手に取った書物の内容を魔術で頭の中に刷り込んでいく。

密偵「(これではないな)」

少し落胆しながら、解除を施した宝石に封じ込めた魔導を棚に入れなおした書物にかけなおす。

密偵「(神を名乗る人間には、気になることがあるからな)」

そもそも神を名乗る人間が、なぜ、宗教都市ディルムンに訪れたのか。当時のディルムンは、聖イマキルペセが力を持ち、他の宗教を弾圧し始めていた。つまり、その敵対する宗教の人間だった可能性が十分に考えられる。

もちろん流れ者の魔導士が、聖イマキルペセから見捨てられた者達を治癒する魔導を行い、それが目に付いた連中から、追い出されたということも考えられる。

密偵「(しかし、そもそも民に治癒を施さなければいけない事態が発生していたということだ)」

その部分は本当に情報がない。戦争や紛争があったというわけではない。だが、記録された情報を統合すると。

密偵「(明らかに、戦いによる負傷の記録だ)」

この土地で起きていた。魔導を施せない以上の事態だったのか。まだそれを解決する糸口は、見つからない。

密偵「…!」

わずかな殺気を感じ、横に飛び跳ねる。先ほどまで密偵がいた真ん前の本棚は、魔導で保護されている書物以外は斜めに綺麗な太刀筋がつく。

密偵「(こいつは…)」

姿は見えない。いや、姿はある。月明かりでわずかに映し出されるその姿は。

密偵「(召還魔獣、しかし)」

この仕事が長い密偵ですらも知らないそれは、張りぼてのような影だった。形はあるが、それはうぞうぞと蠢いて変わり、一定の形を持たない。そして、光を嫌うように、本当の影に紛れ込んでいく。

密偵「(狙いは明らかに俺自身)」

今手に持っていた書物を戻すのを諦め、懐にしまう。そうすると、気配がそれに反応したように感じられた。

密偵「(命を狙われると同時に、命を保障するものになったか)」

そう思いながら、こうも感じていた。

密偵「お前ら、俺みたいだな」

忠誠を尽くす相手以外には、自分が誰であるか知られてはいけない。いくつもの顔を持つ、錯綜する情報のような自分。不形態なこの敵に、そんな親近感が沸いていた。

剣を振るう残像のような攻撃が、一斉に密偵を襲う。残像は密偵を通り過ぎ、背後の本棚、カーペット、椅子やテーブルも通り過ぎた後、傷跡を残した。

密偵「危ない危ない」

得意とする――自身ではイミテーション――と呼んでいる残像の魔術を使い、攻撃を避けた後、すばやく窓枠まで密偵は駆け寄っていた。

密偵「生憎戦闘は苦手なんだ。じゃあな」

そのまま、窓枠に施された魔導も解除して、密偵はあえて高い音を立てるために体当たりして、そのまま下へと落下していった。

騒ぎを聞きつけた司教や修道士達が駆けつけてきた時には、何かの戦いの痕跡と内側から破られた窓だけが残されていて、そこにいたはずの影達は、夜の闇にすべて消えた後だった。

司教「……片付けておけ」

そのことに怒鳴りつけるわけでもなく、それだけ言い残した司教は修道士に片づけを任せ、部屋へと戻っていった。

ここまで。書いてて、トリックだけわかってる古畑任三郎を書いてる気分になってきた。

乙!

メイドおかえり!

>>107


>>108
メイド「むしろ帰ってこないと私の目立つ場所がありません」

女騎士「そうなのか?」

メイド「女騎士様とは絡みのある存在ですが、基本屋敷の仕事をしてるので出て回れませんからね」

女騎士「そんなことを言うと、私は方々に歩き回るから、そこで出る者達もそこの回が終わったらないぞ?」

メイド「そういっていろんな方がまた出てますけどね。コルサカの方は出てませんけど」

女騎士「そうだな」

女騎士「襲撃事件があったと伺いましたが」

司教「ふん、警備の者は何をしておったのか。情けない」

翌朝、その話を聞きに来た女騎士には、密偵がかかわっているという確信はあった。だが、建前の行動も必要であったため、内心しぶしぶながら、司教に話を聞いていた。

女騎士「しかし、このまま何も解決せずに聖王様をお迎えしてもよろしいのですか?」

司教「貴様一人では手に余るか、その称号も廃れたものだな」

女騎士「皮肉をおっしゃられている場合ですか。この大教会に、得体の知れない者が侵入を許したというのは、事実ではありませんか。私としても、頼りにならない者しかいないとなれば、これほど頼りない状況はございませんよ」

司教「……、貴様も言うな。聖王が来られるまでに時間はないが、こちら側でも腕に覚えがある者を招集する。問題はあるまい」

そういう言葉の中に、それでも問題は解決しない。という意思を女騎士は感じ取った。

女騎士「善処はいたします」

司教「善処では困るのだぞ」

女騎士「その通りです、しかしこの言葉の他に申し上げられるものもございません」

司教「……、この事件もこちらで追う」

いつものいかつい表情が、やや曇りを帯びている。司教自身も、相当に参っている証拠だろうと、女騎士は思った。

女騎士「1つ、お伺いしますが」

司教「なんだ」

女騎士「司教様は、このことについて、何かお心当たりはないのですか?」

その言葉に、周囲の空気が静まるような感覚が覆う。

司教「私が犯人だというのか、馬鹿馬鹿しい」

女騎士「僭越ながら、今回の事件現場を拝見させてもらいました。状況を見る限り、あのような切り傷が残る武器はありません。魔導、あるいは魔獣そういった類が疑われます」

司教「…、聞こう」

女騎士「では、続けさせていただきます。現場に残っていたのは、その切り傷しかない状況となります。戦った形跡であれば、通常ある程度は異なった2種類の傷跡が周囲に残りますが、今回はそうではない。もちろん、あんな場所で魔導の練習をする人間はいないでしょうから、戦闘があったと考えるのが自然。そして、相手は戦う意思がなく逃げたと仮定するなら、この場合、あの場所に侵入者用のトラップの魔導があったと考えるのが、自然ではありませんか?」

その言葉に、司教は間を置いて。

司教「そういった類はない。あそこは侵入する者を弾く魔導と、書物を守る魔導だけだ。それに最近まで誰もあそこには踏み入れておらん」

女騎士「最近、ですか」

司教「精霊魔術が利かぬ件に、私を含めた何人かの司教も立ち入っている。一番最後だと、お前も会ったロドマだな」

女騎士「そうでしたか」

つまり、何かを仕掛ける準備ができたのは、わずかな人間にしかいないということになる。

女騎士「では私はこれで。私は引き続き王都の命(めい)である精霊魔術の件を追わせていただきます」

司教「ふん、好きにしろ」

深々と礼をしてから、女騎士は応接間から出る。考えているのは当然、この襲撃の件だ。何があったのかは、状況から侵入者と判断できる密偵から聞けるだろう。

女騎士「(しかし、いろいろな事態や情報が錯綜しすぎて、頭が混乱してきたな)」

もしかしたら、この事件さえも追っている事件の目くらましのために起こされたものとさえ思えてくる。確定された情報は一切なく、どこに向かっても同じ場所を歩かされるような錯覚も、女騎士は覚えてきていた。

「ふむ、そなたは」

背後から、おそらく自分に対してと思える言葉が聞こえ、女騎士は振り返ると、そこにはロドマの姿があった。

女騎士「これは、お会いできて光栄でございます」

ロドマ「世辞は好まん。大教会の襲撃の件か?」

女騎士「はい。度重なる問題に、どこから手をつけていいものか、見当がつきません」

ロドマ「どこぞの鼠が潜り込んだのだろう。が、潜り込んだ鼠に何が捕らえようとしたのかが、この場合は問題か」

そう、それが問題であり、誰も、状況もそれを答えることはない。

ロドマ「こんなところで立ち話もあれだな、歩きながら話そうではないか」

女騎士「畏まりました」

横を通り過ぎたロドマの斜め後ろを、女騎士はついて歩く。

ロドマ「そなたの考えは、ほぼ同じか?」

女騎士「はい。拝見させていただいた場所は、聖イマキルペセの人間でも、立場ある者しか立ち入れない場所ですからね。侵入者がどうやって、というのも当然ございますが、司教様のお話を伺うに誰かを攻撃する魔導は施されていなかったとのことですから。となると、別に侵入者がいたのか、それとも侵入者に対して攻撃を行う魔導が施されていたと考えるのが、矛盾はないかと」

ロドマ「概ねその考えに同意する。まぁ、ありえんが目立ちがり屋が、あの場所で一人暴れて逃げるというのもないだろう。残念ながら、あの場所の情報を無断で知るのは、重罪は免れんからな。まずないと切り捨てていい」

重い言葉だ。冗談ではなく、そうなると断定していいほどの事態になる。この場所に限らず、教えを広げる各宗教の隠匿された情報は神秘であり、それを無断で触れる者は神の怒りに触れるのと同意なのだから。たとえ、それを執行するのは、その隠匿された情報で利を得る人間達であっても、変わらない。

女騎士「襲撃の件で絞るなら、一番早道なのは、襲われた侵入者を拿捕することですかな」

ロドマ「そうなるな。頼めるか?」

女騎士「司教様はいい顔をされないでしょう。それに、重要さでいくと魔導の効果のない件のほうが重大です。その上、大教会の潜入方法など、部外者には知られたくはないでしょう?」

ロドマ「ふふ、言うとおりだな。ついででよい、何か情報があれば、教えてくれ」

畏まりましたと返事をしたあたりで、ちょうど大教会の中庭にたどり着く。

ロドマ「ここでお別れだな。頼りにしているぞ」

女騎士「は!」

敬礼して、すばやい足取りで女騎士は大教会の外へと向かい、その姿を見ていたロドマが。

ロドマ「……、どう動くのか、楽しみではあるか」

そう呟いて、あてがわれた自室へと戻っていった。

ここまで、さぁ、どう動いていくことになるかねぇ?

「謎はさらに深まった」キリッ

>>115
むしろ謎しかない?

メイド「そうですか」

「いつの間にか怪我してたのよ。こんな状況だから、皆注意しているのに…」

メイド「心中お察しします。聖イマキルペセとしても全力を尽くします」

「頼みます。貴方にも神のご加護を」

そう言われて、情報を集めていたメイドは、被害にあい死んだ身内の者に深く頭を下げた。

メイド「やっぱり、切り傷で死んでいる人のほうが多いですね」

「そのようです」

メイド「女騎士様の資料では多くは病死とされていましたが、もしかすると大教会に搬送する前に亡くなられているのでしょうか」

「その可能性が高いのではないかと思います」

聖女(まじょ)が活動しているという噂が流れないよう、メイドは女騎士の指示の元、護衛とともに都市の人間に聖イマキルペセの人間として情報を集めていた。

メイド「病死という資料自体も改ざんされている可能性はありますね」

「彼らが渡してきた情報ですからね。考えられますよ」

メイド「……、これだけいろいろな情報が錯綜してるのも、見栄と嘘のせいですか」

理解できない、そういう様子でメイドは首を振った。

メイド「次はこの方の家に向かいましょう」

「少し休まれてはいかがでしょうか。食事もとられておりませんよ」

メイド「私がこの事に関わるといったのです。休んでいる暇はありません」

そう言って歩き出そうとしたメイドは、ふらついて家の壁に寄りかかる。

「大丈夫ですか?」

メイド「こういう時は、女騎士様の体力が羨ましく思えますね」

「それでなくても、生命力が落ちる現象も同時に起きているのです。少しお休みしましょう」

メイド「……、申し訳ありません。貴女の立場も考えていませんでした」

護衛はメイドを守るために、女騎士が配属させた者。そのメイドに何かあった場合のことを考え、素直に謝った。護衛も、気にすることはないというような態度で。

「いえ。メイドさんのお気持ちもわかります」

メイド「そういってもらえると助かります。近くに休めるところがあればいいのですが」

「観光名所になっている大きな公園があるはずです。そこで休みましょう」

メイド「わかりました」

少し重い体を引きずるように、メイドは護衛の案内の下、その公園へと向かった。

メイド「ふぅ」

公園のベンチに座り、疲れを取る。とはいえ、ここのところ重労働をして向かえた朝のように、体のけだるさはついて回っている。自身の生命力がわずかずつ削り取られているのは間違いない。

メイド「……誰もいませんね」

「ここのところそうですね。あの詐欺まがいの演説をした者がいた頃は、まだちらほらと人の姿が見えておりましたのに」

メイド「そういえば、先ほどあった方も、私よりもやつれたような表情をしていました。家族を喪ったせい、というには極端な気はします」

そこまで言って、気になることがメイドは出てきた。

メイド「聖イマキルペセの人間は、ここまで弱った人間が出たという話は、ありませんよね?」

「えぇ、そういえば」

メイド「なぜ、今まで気づかなかったのでしょう。大教会に仕える人間もこの都市に住まう人間、生命力の欠如が見られてもおかしくはないはずなのに」

「…、この件は聖イマキルペセの主導で?」

だが、メイドはそのことは首を振り。

メイド「聖イマキルペセ全体ではないでしょう。きっと、内部の誰かの仕業です」

「問題はそんな大それたことを、誰がするのですか?」

メイド「それはわかりません。でも、わかることは1つだけあります」

「それはいったい?」

見当もつかない。そういう様子の護衛にメイドはこう言い切った。

メイド「くだらない恨みです。それで、皆に八つ当たりにしてるだけに決まってます」

女騎士「(聖王が来るのは明後日か)」

具体的な対策を打てないままに、期日だけが迫ってくる。猶予は明日まで、それ以降は自由に動くことすらできない。苦悩している女騎士がいる部屋をノックする音に対して「入れ」と声で反応を返すと、入ってきたのはメイドにつけている護衛の一人だった。

「夜分に恐れ入ります。報告したいことがございます」

女騎士「そうか、そこにかけるといい」

護衛は「失礼します」と断った上で、対面する形で椅子に座った。

女騎士「何があった?」

「メイド様の生命力がかなり削られているご様子です。お戻しになられたほうがよいかと存じます」

女騎士「そう言って聞く奴ならな。何度もふらつくようになったなら、悪いがお前の独断で帰してくれてかまわん」

「畏まりました。不躾ですが、女騎士様は大丈夫なのですか?」

そう言われて、自分の体調を探るように目を閉じて、しばらくした後。

女騎士「いつもと変わらぬ。体力、この場合は生命力か。それには自信があるからな」

「そうですか、護衛の者も何人か不調を感じるようになっているようです。この都市、実質戦地と変わりはなさそうです」

女騎士「そうだな。魔導士連中とやりあう場合は、いかに相手の策を逆手に取れるかが勝負だが、こうも姿を消し、その上身内にも情報を伏せられているとなると、先手先手を取られてしまう。苦しい戦いだ……。貴様は大丈夫か?」

「えぇ、女騎士様ほどではありませんが、体力には自信がございます」

そう言った護衛に、女騎士は笑って返すと、護衛もつられて微笑んだ。

女騎士「しかし、失念していたな。魔導が聞かない以外にも、生命力が削られる事態も起きている」

「これはすでにれっきとした戦術魔導の域です。王都に支援を求めるべきでは?」

女騎士「それによって起きる、王都と聖イマキルペセの軋轢を避けるための私なのだ。事実そうすべきなのはわかってはいるのだがな」

「…、これは過ぎたことを申し上げました。

手を軽く出し「良い」といった言葉に続けて。

女騎士「だが、手をこまねくつもりはない。王都にはすでに早馬を出し、事態を報告している」

「となれば」

女騎士「私は報告を出しただけだ。出すな、とは言われていないし、支援を呼ぶ内容でもない」

「そうですか」

その意図を理解した護衛は、わずかに肩の荷が下りたような表情をする。

女騎士「私の活動可能な時間は明日までだ。それ以降、何が起きてもなすがままにしかならん」

「そうですね。それともう一つ報告があります」

女騎士「なんだ」

「資料によると、魔導が効かない件での死者は病死が多いことになっていますが、身内の方々に話を聞く限り、どうも怪我で失血死が圧倒的なようです」

女騎士「そうか」

渡された情報は、やはりある程度内容を操作されていたかと察し、少しだけ女騎士は表情を歪めた。

「メイド様も治癒に当たっている際、それに気づいてお調べしたようです」

女騎士「そうか。見落としていたな。この魔導と思われるもの自体を追っていたから、気が回っていなかった」

「合わせて、聖イマキルペセの人間には生命力の欠如は見受けられないとのことです」

女騎士「そうだろうな」

すでに、聖イマキルペセ内部の人間、あるとすれば部外者が協力者として動いていると当たりをつけている女騎士は驚きはしなかったが。

女騎士「……、私としたことが、もう一つの見落としか」

「なんです?」

女騎士「この都市全域に張られていると思われる、その生命力の欠如の魔導。そして、聖イマキルペセの大半の人間は、大教会内から外に出ることはない」

「一人一人に、何らかの防御魔導が施されていると?」

その答えに、女騎士は首を振り。

女騎士「可能性は限りなくゼロだろう。なぜなら、聖イマキルペセ全体が、今回の件を引き起こした時のメリットはまったくない。やるとしても単独、少数の複数の人間がいいところだ。それに、この件単純に終わらせるにしては手が込みすぎてる。しばらくの間は聖イマキルペセ自体も活動可能にするなら、大教会自体に防衛魔導が施されていると考えていい」

「そうした場合、その防衛魔導はどうするのです?」

女騎士「敵方の解除を阻止する」

「え?」

なぜ、敵方が解除するのかわからず、護衛は疑問の声をあげた。

女騎士「敵方の狙いは、今は聖王である可能性が十分に高い。それにご高齢である以上、生命力がなくなるこの場所に長期間いれば、どうなるか」

「狙いは聖王なのですか…!?」

女騎士「断定はしない。しかし、聖イマキルペセのどの者よりも堪えるだろうな。私が護衛にいようがいまいが、殺すならそれが一番だ」

静かな間が空いてから「更に付け足すなら」と女騎士が前置きした後。

女騎士「話していなかったが、この魔導が効かなかった件は以前も起きていて、高名な僧を生贄とすることで解決した。これが本線だと思っていたが、保険の可能性が出てきたな」

「その僧の代わりを、聖王にさせると?」

女騎士「聖イマキルペセの人間の生命力を奪い、正常な思考ができなくなった段階で、そのことを提示する。当然、皆の意見は聖王の生贄で一致するだろう。修道士の意見も踏まえ、新聖王を決めるといった聖王が、その言葉を覆すことはできない」

「それなら確かに、防御魔導を解除させるわけにはいきませんな」

まだ何らかの策を残している、そんな気はするものの、それでも計画に狂いは生じさせられる可能性は十分にある。女騎士はそう考えた。

女騎士「防御魔導をなんとしても守れ。生命力を広範囲で奪う、その魔導から防御するものだ。おそらく距離があってもはずせる類ではない、そして今まで気づかれなかったほどの高度なもの。必ず誰かがその魔導の起動部分に訪れる」

「かしこまりました。魔導に覚えのあるものを編成して、調べてまいります」

女騎士「あぁ、それと堂々と戻れ。私は見張られている。ここも姉様の宝石で会話は聞けぬようにしたが、接触した者も監視し始めるだろう。だから、お前以外の人間で編成し、その物達は目立たないように動け」

「は!」

指示に従い、護衛は自然に振舞うように外へと出て行くのを見守り。

女騎士「なんとしても、計画にほつれを起こさねばならんな」

何者かに、いいように動かされていることに鬱憤が溜まっている女騎士は、そうつぶやいた。

予定があるのでここまでー

はいよメイド
つ【栄養ドリンク】

>>126
女騎士「医者が作った栄養剤のようなものだろうか…」

メイド「見たこともない表記ですね…」

女騎士「とりあえず好意だ。飲んでおけ」

メイド「………本気ですか?」

女騎士「飲まないのか?」

メイド「……、飲みますよ」グビ

女騎士「………」

メイド「ファイト一発!」

女騎士「!?」

女騎士「聖王様、久方ぶりでございます」

うやうやしく膝をつき、洗礼された法衣を纏う老人に、女騎士はそう挨拶した。

聖王「久しいな。元気にしておられたか」

女騎士「は!」

聖王「そなたには、我々の情けないところを見せているようだな」

女騎士「いえ、このような事態でございますから」

女騎士にとっては儀礼的なやり取りではあるが、聖王と話せる者は限られたものであり、対面できるだけでも誉れに値する。だからこそ、聖イマキルペセに仕える者にとっても、聖騎士は特殊な存在と言える。

聖王「面(おもて)をあげられよ。そのままでは話しづらい」

女騎士「は!」

聖王「……、また一段と経験を積まれたか。洗礼の時はまだまだ小童であったのにな」

女騎士「滅相もございません。まだまだ、連なる聖騎士の中で末席に甘んじております」

その言葉に偽りはない。女騎士に目標である、義父、大将軍の域にはまだまだ達していない。彼女はそう考えている。

聖王「さて、ほかの者は席を空けよ。彼女といろいろと話したい」

「……畏まりました」

その言葉に、従者達は部屋から速やかに去っていく。中には恨めしく女騎士に目をやる者もいたが、そ知らぬ顔で流していた。

聖王「私の警護も厄介払いなのだろう。すまない」

女騎士「もったいないお言葉です」

聖王「はは、否定しないところがそなただな。私に入る情報もどうも湾曲している。詳しく聞かせて欲しい。その前に、信仰(全ては神によって隔離される)」

聖王の魔導により、この空間を盗聴等がされる恐れはなくなり、少しだけ女騎士は姿勢を崩した。

女騎士「聖王様、私からお話をさせていただく前に、貴殿がどこまでお知りになっているのか、お伺いしたい」

聖王「そうだな。従者達がいうには、聖イマキルペセの象徴である、ここ宗教都市ディルムンの信者達が、神の保護を受けることができず、死んでいっている。未曾有の事態であるとな」

女騎士「それをお聞きしたのは、最近でございますか」

聖王「そう聞いたのは、ついこの間。最初は信心不足の者が、精霊魔術の効果が薄く逝去したという内容。その時点で、私が来ることを恐れて、過小に報告したと考えている」

聖王がそうそう嘘をつくような人間ではないことは、女騎士は知っている。その報告も、聖王がここに訪れるタイミングをずらすために、誰かが湾曲させたと、考えた。

女騎士「私もそう考えます。王都へ入った情報も、事態発生から考えるとごくごく最近のことでございますから」

聖王「そうなのだな。私が話せることもこの程度のこと。すまぬが、知っていることを聞かせてもらおう」

深々と礼をした後「畏まりました」の言葉の後で、女騎士は現状について聖王に説明した。

聖王「……、狙いは私か」

女騎士「私が得ている情報をまとめると、そういう結論を出すことも可能です」

聖王「そうか」

女騎士「もちろん、聖王様の警護から外れるために、狂言を申し上げているつもりもございません」

その言葉に、静かに微笑んで「疑ってはいない」という言葉に続き。

聖王「そなたのことは信じている。それでなくてもこのような立場にいる者、側に置く者が信頼に足るか。その目が曇っていないつもりだ」

聖騎士「出すぎたことを申し上げました」

聖王「はは。気にしてなどおらん。しかし、気をもむのは信者や民達だ。彼らが苦しんでいる事態は、断じて許すわけにはいかない」

女騎士はその目に、熱がこもっていくことを感じながら。

聖騎士「しかしながら、この大教会からお出しするわけにはいきません。皮肉にも、この都市でもっとも安全な場所です」

聖王「苦々しい思いだ。しかも、我らが施す精霊魔術も効果がないとなると、目立ったものはここに収容するしかない手立てはない」

聖騎士「それすらも、今回の策を練った者の考えであると思えてなりません」

聖王「そうだろうな。しかし、だからといって大多数の者を都市から出すというのも、あまり現実的な話でもないだろう」

それは、都市の機能を停止させると同時に、聖イマキルペセとして敗北も意味する。隙であるとしても、そうすることはできない。その意図を女騎士は感じられた。

>>130の訂正。明らかに聖王に引きづられたな。

聖王「……、狙いは私か」

女騎士「私が得ている情報をまとめると、そういう結論を出すことも可能です」

聖王「そうか」

女騎士「もちろん、聖王様の警護から外れるために、狂言を申し上げているつもりもございません」

その言葉に、静かに微笑んで「疑ってはいない」という言葉に続き。

聖王「そなたのことは信じている。それでなくてもこのような立場にいる者、側に置く者が信頼に足るか。その目が曇っていないつもりだ」

女騎士「出すぎたことを申し上げました」

聖王「はは。気にしてなどおらん。しかし、気をもむのは信者や民達だ。彼らが苦しんでいる事態は、断じて許すわけにはいかない」

女騎士はその目に、熱がこもっていくことを感じながら。

女騎士「しかしながら、この大教会からお出しするわけにはいきません。皮肉にも、この都市でもっとも安全な場所です」

聖王「苦々しい思いだ。しかも、我らが施す精霊魔術も効果がないとなると、目立ったものはここに収容するしかない手立てはない」

女騎士「それすらも、今回の策を練った者の考えであると思えてなりません」

聖王「そうだろうな。しかし、だからといって大多数の者を都市から出すというのも、あまり現実的な話でもないだろう」

それは、都市の機能を停止させると同時に、聖イマキルペセとして敗北も意味する。隙であるとしても、そうすることはできない。その意図を女騎士は感じられた。

聖王「しかし、今回の件を探り続けていたそなたを、私につけていることを策を練る者はどうするかだな」

女騎士「あらぬ噂を広め、離れさせるか。それとも既にこの話をされると判断し、側に置かせるのが賢明と判断するか。高い確率でどちらかでしょう」

聖王「すでに、結界を張って密談をしているから、離れさせようとはせんか。従者達は私の古くからの付き合い、彼らにまで話がいくのは避けるだろう」

女騎士「えぇ、そうではないかと」

そう考えると、信頼できる部下達とも切り離すために、自分を側に侵せている可能性もある。それができるのは司教ということになるが、そこまで簡単なことではないだろう。

つまり、司教ならこういう行動を起こすだろうと、想定していると思っていい。ここまであらゆる策を練る相手だ。短絡的なことはないと女騎士は判断できる。

女騎士「そうなると、従者の者も側に同行させるべきでしょう。恐らく、司教は治癒に当たるよう指示しているはずです」

聖王「それもそうだろうな。だが、そなたもすでに事は最終段階に入っている。そう思っているのだろう?」

女騎士「は!」

聖王「なら、大元の他はそのまま思ったとおり進ませよう。罠を張る獲物を狩るのと同じだ。捕れると思った瞬間に首根っこを引っ張り、姿を現せるしかない」

それは言い換えれば。

女騎士「聖王様。まさか」

聖王「狙いは私なら、ちょうどいい撒き餌だとは思わないか?」

そういって浮かべた表情は、聖王というよりは、いわば策士としての表情だった。

ここまで。宗教都市ディルムン編も、そろそろ佳境かな?



聖王さんパねえッスww

乙!

乙!

>>134
伊達に聖王じゃないってことだねぇ

>>135-136

メイド「皆さん、どこへ行かれたのですか?」

引き続き街の人間から情報を聞き出しているメイドは、いつもとは違う護衛にそうたずねた。

「女騎士様の指示で、調べ物に行っているようです」

メイド「なるほど、随分と慌しく出て行かれたのはその為ですか」

「えぇ、私はその内容を聞かされていないので、詳しくはわからないのですが」

あの夜、女騎士と話した護衛の人間は、メイドは下手なことを知れば勝手に行動するから、気をつけろという忠告を受け、独断だが防御魔導を調べるために選定した者以外には、内容は詳しく伝えていなかった。

メイド「しかし、今日も一段と人影がありません。まるで、廃墟の中を歩いているようです」

「そうですね…」

メイドも、当然新しい護衛も、その状況に警戒しながら歩き回っていた。何が起きても不思議ではない空気が、宗教都市ディルムンを覆っている。

メイド「……、ダメですね。不在のようです」

「これで5軒目ですね。こうなってくると、家の中で倒れているのではないかという懸念も出てきます」

メイド「…、試しに入ってみますか?」

言葉は確認していたが、答えを待たずにメイドはその家の扉に手をかけ。

メイド「あ、開いてる」

そのまま、扉を開け切った。

メイド「ごめんください」

そういって中をのぞきながら、メイドは声をかけるが、返事はなかった。

メイド「…、不在だとしたら無用心ですね」

「このような状況です、不審者と勘違いされるのは問題なので、戻りましょう」

メイド「そうですね」

その言葉に従い、扉を閉めようとした時だった。メイドの耳に、か細い何かが聞こえてきた。扉を閉める手は止まり、しばらく耳を澄ませた後。

メイド「いけない!」

バンと扉を開き、メイドは家の中に入り込んでいく。

「どうしたのです!?」

メイド「誰かいます!」

そういって、慌てたようにメイドが家の中を探すと、ベッドにまだ年の若い女性が横たわっているのを見つけ、駆け寄った。

メイド「…ひどい」

明らかに誰かが襲ったかのような後、引き裂かれた布団はその部分から血に染まっていき、床にはその血溜りが広がっていた。

「…た、…け」

メイド「護衛さん、止血してください!」

「わかりました!」

布団を引き剥がし、血が流れ出ている右のふとももであることを確認する。

「く、これはひどい」

メイド「この布団を細く裂いて、足の付け根の辺りを縛ってください!」

女性の顔はすでに血の気を失い、今にも事切れそうな状態になっている。

メイド「どうせ、役には立たないでしょうけど…!」

メイドの身体に光が帯びていく。全神経を集中させ、強力な治癒魔法を施す時に現れる。護衛、そして、薄れいく意識の中でそれを見ていた女性は、その神々しさに事態を忘れて息を呑んでいた。

大規模な精霊魔術の時にも起こるその現象を、ただ一人で聖女は行うことができる。その効果はその精霊魔術と当然同等、それ以上であり、だからこそ多くの宗教団体から忌み嫌われ、聖女(まじょ)と呼ばれる。

だが、多くの宗教団体も理解はしているのだ。だからこそ、彼女らを示すときに記載される文字は『聖女』。

メイドが発したその光は、女性の傷口に添えた両手に集まり、目を開くこともできないほど強烈な発光をした後、周囲は元の明るさが戻っていった。

メイド「…一時しのぎです。大教会へ、早く。医者さんがいるから、まだ、間に合うはず」

立ち上がるものの、身体がふらつき、家の壁にメイドは寄りかかる。

「しかし、メイドさんも!」

メイド「私より、この方のほうが、危険です。少し、落ち着けば、歩いていけます。早く…!」

強い意志を持つ目で、反論は許さないとメイドが告げているのを感じ、護衛は女性を背負い上げ。

「すぐ戻ります。どこかで安静にされていてください!」

メイド「頼みます…」

護衛が女性を急いで背負い、走っていくのを見て、安堵した後。ゆっくりと、家の前に出たメイドは。

メイド「ダメ、そうですね」

ゆっくりと地面に倒れこんだ。

とりあえず、ここまで


メイドさんは自分が診ておきますね

乙 俺はよからぬ輩に攫われないように見張ってる


汗かいてるようなんで着替えさせておくわ

>>143-145
女騎士「メイドは人気者と…」

メイド「…何のメモですか」

女騎士「いや何、メイドに相応しいか、相手を記録しているだけだ」

メイド「……、おめがねにかなう方がいるかは疑問ですがね」

女騎士「何か言ったか?」

メイド「何も」

女騎士「?」



本日更新予定でしたが、書こうとしたあたりで親知らずの歯痛が再来で集中できず、今鎮痛剤効いて寝れそうなので寝かせてください orz

お大事に乙!

ほい>>1
つ【妖しい粉】

>>147-148
ありがとう。もう痛くはないので、粉は丁重にご遠慮いたします。

暗がりの中にいると、自分はいつこんな場所から抜け出せるのか。そんな風に密偵は考えて。

密偵「(今更、明かりある場所に戻れるわけもないか)」

情報を探り、けして自身をさらけ出すことはできない立場。すでに公にできない情報は両手には収まらない程度あり、それを知られれば、命はいくらあっても足りない。

密偵「(この本に至ってもそうだしな)」

その気はなかったとはいえ、あの蔵書からの脱出の際に持ってきてしまった代物。だが、襲われた意味はあった内容がそこに記されていた。

密偵「(聖イマキルペセ内で、勢力争いによる内紛があったとはね)」

勢力争い自体は、強大な宗教となった今でも、いやだからこそ行われている。しかし、その争いで混乱や弱体化を招き、それを他の宗教から付け狙われないよう、戦いでの決着は御法度となっている。

その聖イマキルペセ内で、古い時代のものであっても、そういう内紛があったという事実自体が、まさに隠匿すべき内容なのだ。

そしてその内紛による負傷者を治癒していたのが、例の神様と見て間違いない。密偵はその部分に確信を抱いていた。

密偵「(問題はその神様に関わる血筋なんかが、事を起こしそうな容疑者にいなかったということだ)」

しかもそれは、調べられる範囲でという意味もある。聖イマキルペセは、孤児を引き取り、望めば修道士として育てあげる福祉活動も行(おこな)っている。つまり、教会に入信する前の素性不明な者も多数存在する。

あのロドマや、大教会の司教もそれに該当しており、農家の家系で育てられなくなった家族が、教会に預けていった、二人とも同じような内容を育ての司教に聞かされていたようだ。

密偵「(ただ、2人とも自身の家系には興味はなかった様子のようだ。何らかの理由で神様の家系だと知って、聖イマキルペセに報復すると考えるには、少し無理があるか)」

となると、2人のどちらか、あるいは両方が聖イマキルペセに敵対することがあるとすれば、もっと別な理由が考えられることになる。

乙!

>>152

密偵「(考えられるところでいけば、司教アメリアの件か…)」

アメリアが病に伏した時、その教会に属する者達はこの大教会に支援を要請している。その話を聞いた聖王は、自身達の手で解決せよと命(めい)を下している。アメリアを敬愛する修道士の多くは、彼女の死去の後、その命(めい)を理由に神の道から離れていった。

密偵「(二人が残ったのは、明らかに司教アメリアが関わっている)」

司教が権力に固執していった理由も彼女であり、ロドマが高位の司教を辞しているのも、病に関わる魔導を調べて回るためということも調べがついている。

密偵「(だが、だからといって聖イマキルペセそのものを巻き込む必要はあるか? もし、その命(めい)のせいだとするなら、聖王だけ狙えばいいだけのこと)」

彼の中では確信めいたものがある。この件は、この二人のどちらかが仕組んだ事態。そして、だからこそどちらであるか、決めなければいけない。

盗んでしまった書物を開く。そこに描かれているのは。

密偵「遅くても、明後日には悪夢の夜が来る…」

禍々しい月と、その下に横たわる人々の絵だった。

医者「……、儂もだいぶやられてきているようじゃな」

身体の重みを医療を使い誤魔化していたが、宿に戻る生命力も無くなりつつあったため、仕方なく大教会の一室を借りていた。

医者「(アメリアも、このような悲惨な状態で、兵士や人々の治癒に当たっていたのだろうな)」

師であり、そして想い人でもあった人物が、この状況に似た壮絶な現場で懸命に戦っていたことを思うと、この程度で弱音を吐けない。そう医者は感じていた。

医者「(大将軍がアメリアが近しい間柄なのはわかる。このような状況で献身的な治癒を受けさせてもらえるのは、戦う者としてなんと心強いことか)」

懐から出した大将軍がアメリアの方を抱く写真。撮ったのは医者自身で、この時少なからず横恋慕のような気持ちを抱いていたが、大将軍の人柄を知った今では、信頼する仲間に対してのものだったのだと、今更ながら気づかされる。

医者「さて、そろそろいくか。まだまだたくさんの患者を診なければならん」

写真を懐にしまいなおし、医者はゆっくりと部屋を後にした。

「医者殿、今日もよろしくお願いいたします」

医者「昨日処置した人間の様子はどうじゃ?」

「改善の兆しがございません…」

何度も聞かされた言葉に、どこか麻痺した感覚が医者を襲う。どうすれば良くなるのか、当たり前に考えていたことが、今では「そうか」という言葉で塗りつぶされていく。先ほどの決意が揺らぐほど、大教会のホールは惨状と化していた。

医者「(儂がこの調子でどうする)」

自分に活を入れる。それだけまいってきている証拠なのはわかっている。だが、あの時のような無気力を思い出すと、自然と身体に力がみなぎるのが感じられた。

医者「全員の簡易診察を始める、それで重症度の高い者から順に処置を進めるぞ」

「お願いいたします」

きびきびと動き始めた医者につられるように、お付として指名された修道士はその後ろをついていく。

一通りの診察と処置が終わったのは、夕刻を回ろうとしていた頃だ。一息つけるために、医者は水差しの水を口に含み、ゆっくりと飲み干した時、大教会の扉が開け放たれる。冒険者風の装いの男が、町娘を背負い入ってきたのだ。

何事かと数人の修道士がその男に駆け寄ると、事情を聞いたからか、修道士の一人が医者を指して、集団となってこちらに近づいてきた。

「恐れ入ります、応急処置は施しましたが、衰弱が激しいのです」

医者「そこに寝かせろ。やれやれ休む暇もないわい」

口からそんな言葉が漏れるが、一目見て一刻を争う状態を見抜き、すばやく処置の準備を終わらせる。

医者「止血のための布を外せ、これ以上血が通わねば足を取らねばならん」

テキパキとした指示の下、町娘の処置が始まる。傷口の縫合を行い、生命力を向上させるために持ってきていた栄養剤を唇に塗り湿らせる。漏れでた血液の代わりとなる液体を注入し、状態をうかがう。

医者「これで駄目なら、悪いが手遅れじゃな」

「わかりました。すいません、これからまた一人、早急に連れてきますので、準備をしてお待ちいただけますか」

やれやれと思いながら、医者は切羽詰った様子の男に「早く行け」だけ告げる。飛び出していく男を気にせず、そのまま町娘の状態の変化を確認し始めた。

町娘の状態は予断が許されない状態ではあるが、それでもそのままでは死ぬという状況からは脱していた。同じように大教会の扉が開け放たれ、ようやっと来たかと医者が目をやると、視界に映ったのは。

医者「(メイド…!)」

ここを去ったと聞いていた彼女がここになぜいるか、という疑問よりも先に、土気色になった顔を見て、彼女は、町娘よりもひどい状態にあることを認識させられてしまった。

医者「貴様、なぜこやつから連れてこなかった!」

「彼女の意思です! 先ほどの方を連れてくる時はまだ意識があったのですが…!」

医者「この馬鹿娘。自分の生命力を無視して全力で魔法を使いおったな…!」

だからこそ、医者には合点がいくことがある。先ほどの町娘は、当の昔に息絶えているような出血があったと思える傷口だった。しかし、傷口はある程度閉じかかっていたのは、男の施した応急処置だろうと見当をつけていた。

だが、実際には今目の前で気を失っているメイドの治癒魔法だったこと。そしてそれがどれだけの力を持ち、どれだけ自身の体力を消費したのか、容易に想像できた。

医者「貴様ら、精霊魔術を施せ。ぐだぐだするな早急にだ!」

先ほど以上の鬼気迫る表情に、修道士達はそれが忌むべき相手としている聖女と気づけないまま、精霊魔術を行使し始めた。

医者「(こうなっては医療は役に立たん。栄養剤の回復を待つには遅すぎる)」

そして、医者自身も目を閉じ、精神を集中させ。

医者「治癒(人が持ち、人が自覚せぬ、人自身の力よ。かの者に宿り給え)」

自分にとっては古びた魔術を、メイドに施した。

ここまで

はてさて、どんな結末を迎えるやら。

そろそろ頭から煙が出そう

すでに煙が出てるよ。。。
人物が分からなくなってきた orz

メイドと女騎士だけ覚えていればいい
あとはすべてモブだ

>>160-161
毎日一定量更新できればそんなこともないんだろうが、すまぬ。

>>162
メイド「そうでしょうか?」

女騎士「メイドはコルサカ以外は出ているしな」

メイド「今後も出れるかはまったく未知数なのですけどね」

女騎士「そうなのか?」

メイド「そうなのです」

女騎士「メイドが倒れて運ばれただと!?」

その報告を聞いた女騎士は、それを伝えにきた修道士の両肩を掴み。

女騎士「症状はどうなんだ! 命に別状は!?」

そう言いながら、誰から見ても動転した様子で、揺さぶった。

聖王「落ち着かれよ。護衛の任は一時解く、早く行かれるがよい」

女騎士「…申し訳ございません。メイドはどこにいる?」

「ホール側の客室にてお休みされております」

女騎士「そうか、すまなかった」

謝罪を済ませて、飛び出すように部屋を後にする。その様子を知ってか、外で警護する女従者の一人が、中に入ってきた。

「よろしいのですか?」

聖王「離れるといっても長い間のことではない」

「そのことではなく…」

聖王「彼女以上の適任がいるのか?」

その言葉に、女従者は口を閉じる。

聖王「そなたは私の側にいて長いが、そういうことは相変わらずだな」

「あの者の実力は聞き知っていますが、あの取り乱しようでございましたので」

聖王「何、すぐに平静さを取り戻す。そうでなければ困るからな」

報告に来た修道士に戻るよう聖王は指示した後。

聖王「それで賊の裏取りはできそうか」

「いえ。しかし、すでにここにいる者と考えられます」

聖王「聖イマキルペセに、なんであれ真っ向から挑む者だ。手厚く迎えようではないか」

そういって、聖王は親しい者にしか見せない好戦的な笑みを浮かべた。普段は信徒や民に親愛をもって神の教えを施すものではあるが、それだけで聖王となるには足りない。時として、自然界がもたらす不条理さも持ち合わせ、彼にはそれがある。

聖王「これが終われば、久しぶりにあそこへ行きたいものだ」

「聖王様…」

聖王「気にするな。そなたが悪い訳ではないのだからな」

今なら、あの場所に綺麗な花が咲き誇っている。そう思いながら、聖王は、もはや薄れた記憶のとある司教の顔を思い出していた。

女騎士「メイド!」

ドアを開け放ち、室内に飛び込んだ女騎士が見たのは、メイドに精霊魔術を行使する医者の姿だった。医者はその大きな音に動じることもなく、意識を集中させて、メイドに生命力の回復を促していた。

女騎士「メイド…」

静かに眠るメイドの側により、浅はかな考えでこの場所につれてきたことを、懺悔するような仕草でメイドの手を両手で握る。

女騎士「(あたしはバカだ。また、また大切な人を失うような真似を!)」

今更悔いても、起きた事態は変えられない。わかっていても、そうなった時、人は願うことしかできない。

女騎士「(何かいるのなら、メイドが許してくれるなら、この命くれてやるのに…!)」

自分に眠る、人からすれば無尽蔵な生命力を分け与えられるなら、そう思わずに彼女はいられなかった。

医者「………終わったぞ」

当然、そのことに気づいている医者は、そう言って精霊魔術が完了したことを告げた。

女騎士「メイドは…!?」

医者「生命力が戻らなければ、いや、それでも五分五分じゃな。すでにこの場所から動かせる状態でもなく、そしてあまりにも、生命の鼓動が弱い…」

医者が見せる重い表情に、事態の深刻さが色濃く伝わる。女騎士は、いつもの気丈な表情ではなく、今にも崩れ落ちそうな表情を浮かべていた。

医者「お前さんのせいじゃない…。こやつが、分もわきまえずに魔法を行使したせいじゃ」

慰めともとれる言葉は、女騎士の心情を和らげることはない。自身のせいである。そう思ってしまえば彼女は止まれない。

医者「しばらく席をはずそう」

そう言って、医者は他にも周囲にいた修道士に目配せし、全員部屋から出るよう促した。最後に自分が出ようとした時に、振り返り女騎士を見た時に。

医者「(この娘は、あまりにも優しすぎる)」

聖騎士ではない、ただの女の子である女騎士の姿を見て、そう思わずに入られなかった。

女騎士「……、なぁ、メイド。覚えてっかな? お前と初めて会った時、お前は今みたいにすごく、やつれてたっけな」

メイドと出会った頃を、女騎士は淡々と話し始めた。

女騎士「その時、お前なんていったか覚えてるか? 貴方みたいな方が騎士になれるなんて、世も末ですね。だぞ。本当になんだこいつはと思ったぞ」

あった時から、今の調子と変わらなかったことに気づき、女騎士はわずかに微笑む。

女騎士「まぁ、あたしは騎士だからな。そう思って話を聞けば、悪徳商人からうまく逃げ出して、助けを乞うために走りに寄ってきたっていうだろ。正直話半分にしか聞こえなかったぞ」

女騎士の手をとり、引っ張りながらメイドはその場所まで案内していった。言葉とは裏腹に、態度は必死そのものだった。

女騎士「…、あぁ、あれは胸くそがわるかった。奴隷制度は残ってるが、酷使することは禁じられてるってーのに。そいつらは、秘密裏に宝石が眠る鉱山を掘る為の労働力として、どうなったとしても、誰も騒がねぇ奴を休みなしで働かせてやがった」

そして、その奴隷達を休みなしで魔法を施し、メイドが一番あの中で衰弱しかけていた。

女騎士「……、お前を、死なせるものか」

ぎゅっと、女騎士は掴んでいる手をより強く握り締めた。

密偵「…、ここまで必死になったのは、いつ以来かな」

裏路地の壁にもたれかけ、密偵の疲労はピークに達していた。犯人と当たりをつけた相手の情報を探るため、魔導具の補助を借りたとはいえ、度重なる転移魔術の行使は彼の体に悲鳴を上げさせていた。

今彼がいるのは、司教アメリアが眠る土地。そこの教会にもぐりこみ、彼女の遺品となる品を調べて回っていた。修道士に敬愛されていた彼女の私室は、当時のまま丁寧に管理されており、その中に眠る答えを探し当てることができた。

密偵「…、あと少しの踏ん張りだ。いかねぇと」

もうまもなく夜が来る。自身と同じような影が大地を覆っていく。そして、そろそろとあがり始める夜空は、ひとつの現象を告げている。

まもなく、悪夢の夜があがる。赤い月がすべてを語るように昇り始めていた。

密偵「……、だってのに。お前らもか」

影から影が生まれる。あの時襲ってきたそれは、立ちはだかるように密偵の前に姿を現した。

聖王「ほう…」

その赤い月は、聖王の知識にも存在していた。数十年に一度だけ訪れ、神の加護を失い、奇跡を否定される悪夢の夜だ。

「聖王様…!」

聖王「今日がその日だとはな。これでは我々はただの人間と変わらん」

動揺する女従者をよそに、楽しそうに聖王は笑った。

「早く脱出を、このままでは御身が…!」

聖王「今更どこに行こうというのだ。全てのお膳立てが整った今、賓客がそれから帰る。招いてもらって失礼なことであろう?」

従者に運ばせていた荷物を開き、その中から一振りの杖を取り出した。

聖王「奇跡が起こせないのは、力足らずの者に過ぎん。とはいえ、私もこの杖の力を借りねばならんだろうがな」

白の柄の先に、握りこぶし大の青い宝石がはめ込まれており、効果であると同時に力を持つものであると思わせる杖を、聖王は握り締める。

「……」

聖王「行くとしよう。何、女騎士が側にいないのも、その者の策略だろうてな」

扉を開けて、聖王は何かに真似かねるように、大教会のホールへと歩き出した。

聖王と女従者がホールにたどり着くと、多くの修道士達がうめきながら横になる光景が広がっていた。そして、助けを乞いにきた者達は声を上げることもなく、すでに息絶えているようだった。

聖王「さぁ、招かれたぞ。いい加減その姿を見せてみてはどうだ?」

ホールに響く、老人とは思えない声量で聖王は呼びかけに、誰も答えることはなかったが、その代わりに大教会の扉が静かに開かれ、そこから入ってきたのは。

聖王「ロドマ、か」

驚きの様子はなかった、どちらかといえば落胆に近い口調で聖王はその相手を呼んだ。

ロドマ「驚かれないのですね」

聖王「不思議ではない、という答えが正しいかもしれん」

「ロドマ、貴様がこの事態を引き起こしたというのですか!」

ロドマ「えぇ、ちょうどこの事態を引き起こさざる得なかった相手が、二人もいらっしゃいますからね」

その言葉に、聖王はともかくとして、女従者は少しだけ顔を引きつらせた。

聖王「私はわからんでもないが、この者も狙っていたというのか?」

ロドマ「我々が、司教アメリアを救うために直談判した際、その女従者より貴方へ言伝いただくようお願いしたのです」

聖王「ふむ、そうだったな」

当時の記憶は、聖王にとっても浅からぬものだ。だから、そのことは彼も十分に承知していた。

「それがなんだというのです」

ロドマ「……、いえ、貴方が伝えた事もさることながら、やはり私の憎しみは聖王、貴方に向けるべきですね。その腰ぎんちゃくなんぞよりも」

「貴様、聞いていれば…!」

ロドマ「失礼。度合いはあれど貴方も、私にとっての目のごみ、しばしお眠りいただけますかな。信仰(神に反する者へ神の怒りを)」

伸ばされた手のひらから放たれたのは、うねりながら相手を食らう雷撃。女従者も防御障壁を展開しようとするが。

「あああああぁぁぁ!」

悪夢の夜により、己の未熟さを実感をする前に、自身の体が雷撃に飲まれ、痙攣しながらその場に倒れるしかなかった。

聖王「なるほど、次期聖王を任命する推していた者だけある」

ロドマ「邪魔者が来る前に問いましょう。なぜ、貴方は司教アメリアを見捨てたのですか?」

聖王「今回の件に似ているな。どこかで情報が湾曲し、私に届いた時点ではお前達修道士の過剰報告と聞いていた」

ロドマ「だとしても、愛した相手のはずでしょう?」

その言葉に、聖王は言葉を詰まらせる。

ロドマ「そのことを聞かされた私は、貴方なら必ず助けをよこしてくれるだろうと、信じておりました。だが、貴方は程度が低いというだけで、そうはしなかった」

聖王「……、そうだな。偽りの情報とはいえ、大した病状でもないのに、助けをよこすなど、贔屓と見られることもあったが、禁忌を犯してしまったことが知れることを、恐れたのだろう」

ロドマ「それだけであの方は…、いや、母を見殺しにしたのですか!」

大教会の大きな窓ガラスから指す赤い月光は、ロドマを照らし、その憎しみの深さを表しているようだった。

聖王「母…、だと?」

ロドマ「貴方が修道士となる前、そう母を捨て家を飛び出した時、母はすでに私を身ごもっていた!」

杖を力強く床にたたきつけ、更にロドマは言葉を続ける。

ロドマ「貴方と母は婚姻を結んでいなかった。その為に、不貞を働き子を授かった者として村から迫害され、匿って頂いた教会で私を産み落とした後、私も不貞の子として扱われる事を恐れた。そこの司教様に農民が育てられなかった為に、預けられた孤児として育てるようお願いし、母自身も神の道を別の教会で歩み始めた」

聖王は言葉も出なかった。いや、出しようもなかった。うらぶれた自分を保護してくれたアメリアのことは、後ろ髪を引かれるように別れたのだ。当時彼女は他に許婚がおり、流浪者である自分が一緒にいることで立場が悪くなることを恐れた。そして、間違いなく二人は愛し合っており、一度だけの契りの後、そっと家を後にした。

その後、誰とも契りを結ばず、神と共に生きる道を選んだ。そうすることが、唯一の懺悔であること信じていたからだ。

禁忌と言葉にはしているが、本心からはそうは思っていない。あの時の契りは、信仰をも凌駕するものであり、彼の胸の中でいつまでも残り続ける逢瀬の記憶。

それが今、最悪の形となったことを告げていた。

ロドマ「だからこそ、貴方には最悪の形でこの世を去ってもらうと、決めたのです」

今度は杖の上に手をかざし、ロドマは魔術の詠唱を始める。普段どおりの聖王ならば、事前にそれを防衛する魔術を展開し始めていたが、動転していた彼にはその余裕すらなかった。

ロドマ「憎悪(我が母の苦しみを、相手に与えたまえ!)」

本来雷光とは、白く見ようによっては美しい軌道を描きながら落ちる。しかし、ロドマから放たれたそれは、濁った黒が混じりながら、聖王へと落ちていく。

「バカもんがぁ!」

その聖王の前に立ち、雷光を魔術障壁で医者は受け止め。

「貴様は何をしでかしているのか、わかっておるのか!」

そう言って、司教が放たった光の槍がロドマは容易く防ぎきる。

ロドマ「貴様ら…」

司教「ここは、信仰の場所だぞ。個人的感情を持ち込むところではない!」

医者「儂等が愛した司教アメリアが、このようなことを望むと思っておるのか!」

二人は、聖王を守るように、ロドマの前に立ちはだかった。

ロドマ「どけ! 貴様らも母を敬愛していたのだろう! その者はまさしく仇だ!」

医者「アメリアがそうしろというわけなかろう! あの方は、あの方は全てを受け入れておった。だから、儂はあの方のような者を出さぬようこの道を志したんじゃ。復讐など、思ったことはない!」

司教「なぜ、あの時お前をどなりつけたかわかるか。貴様がまだ、アメリアに固執していることに気づいたからだ。私とて、アメリアのような者を救うために、権威を求めておった。だが、違った。権威を持っても、救えぬ者は救えなかった。だから気づいた、救えぬのなら、死の際、穏やかに神の元へ返すのが、正しい教えなのだとな!」

それぞれがぶつかり合う、そしてロドマだけはそれが交じり合うことはない。もはや彼にはその考えが間違っているとしても、今更捻じ曲げられない段階をすでに超えてしまっているのだから。

ロドマ「それならば、もう躊躇はせぬ。貴様らもそいつと同じく、殺してやろう!」

濁った雷光が、三人に迫る。集中力を欠く聖王に代わり、二人が障壁を作り防御するものの。

医者「ぐぅ!」

司教「がは!」

二人は吹き飛ばされ、床に、壁に体がぶつかる。年老いた体には、それだけでも十分すぎる威力を持っていた。

「…てめぇか」

いつの間にか、ゆらりと女騎士がその戦場に招かれたように現れた。

女騎士「医者…、立てるか?」

医者「……、すまぬが、少し時間が要る」

女騎士「メイドのいる部屋に、怪我人がいる。診てやってくれ」

それだけ声をかけると、ロドマに斧を突きつけながら、女騎士は歩み寄り。

女騎士「…、大体のことは知ってる。つっても、あんたの母さんの手記に書かれた内容だけだがな」

ロドマ「母のだと?」

女騎士「内容が内容なだけに、私室の隠し戸棚の中に入ってたらしいがな。だけど、それを知ってもだ」

女騎士は目を閉じ、息をゆっくりと吸い込んで。

女騎士「あたしの友人を死の淵に追いやってもいい、理由にはなんねぇ」

すばやくそして重い斧の一撃がロドマを襲う、すれすれでそれを避けながら、ロドマは女騎士に対して雷撃を放つものの、何の効果もない。

女騎士「…、あたしに魔導は効かねぇ。この夜を選んだことは失敗だったな。準備万端に、あらゆる補助道具を用意したんだろうが、そもそもの魔術の威力が低下しているなら、意味はねぇよ」

ロドマ「…、そうか。ならば私を殺せ。聖騎士が老体を殺すのは、造作もなかろう!」

誘っている、それは女騎士も重々に承知していた。

女騎士「なら、死ねよ!」

そして、その斧の攻撃が行われると、ほぼ同時に。

ロドマ「ゴフッ」

ロドマの胸に、黒い槍が貫かれ、その口から血が吹き出した。

女騎士がそのことの衝撃を受ける前に、黒い槍は引き抜かれ、ロドマが倒れた後ろには影のような何かがいた。

女騎士「(新手の敵? だが、なぜロドマを?)」

疑問を抱きながら、新たなに現れたそれに攻撃を仕掛けたが、一足早く動かれ大教会の窓を破り、その影は去っていった。

ロドマ「……、さぁ、聖、お、う。選択の、じか、んだ」

女騎士「てめぇ、まだ何か企んでやがるのか!」

女騎士が倒れたロドマを掴みあげるが、既に事切れた後だった。何か起きる、そう考えたと同時に足元に魔方陣が現れ、はじけとんだ。

女騎士「ぐぅ…!?」

その瞬間、全身の体から急激に力を奪われるような感覚が襲われた。

女騎士「まさか、防衛魔術の解除条件は…」

それはまさしく、本人の命を絶たれた瞬間に防衛魔術は解除され、それにより生命力を奪う別の魔術の力が本来の力を現しだしたのだ。周囲に活動可能だった者達も、次々に膝をつき立ち上がることもままならない状態。しかも、うめき声を上げていた修道士達も息絶え始めている。

女騎士「メイド…!」

急いで彼女の元に走り出そうとする女騎士の目の前には、傷だらけの密偵の力を借りながら、歩いてくるメイドの姿だった。

メイド「…わかってま、す。私が生贄になれば、皆さんを、助けられます、ね」

女騎士「何をバカなことを言ってんだ! 早くここから脱出するぞ!」

メイド「それでは、皆さん、死んでしま…く」

力なく崩れ落ちるメイドを、女騎士は抱き起こす。

女騎士「せめて、お前だけでも…!」

メイド「だめ、です」

聖王「……、そうだな。それはだめだろう」

女騎士「聖王、何を…!」

睨みつけながら聖王に眼をやると、そこには杖の中に仕込んでいた小さめの剣を首筋にあてがう聖王の姿があった。

聖王「うら若き女性、例えそれが聖女(まじょ)と呼ばれる人間だとしても、寝覚めが悪いものだ」

司教「聖王様、何をされるのですか…!」

聖王「この手の魔導はな、司教。魔術にこめられた魔力と同等のものを放出することで消すことができる。今それができるのは、最近来て活力が充実している自分だけだろう」

司教「なりません! 貴方はまだ健在であらねばならない身!」

なんとか止めようと体に力を入れるも、司教は這いずってしか近づくことしかできない。

聖王「…、それはそなたなら何とかなるだろう。ロドマが亡き今、次の候補であったそなたに、新聖王を委任する」

最期の言葉を残して、首を切った後。

聖王「信仰(我が罪よ。この贖罪をもってわずかばかり償いたまえ。全ての民よ。祝福あれ!)

命を丸ごと使い、全身の魔力を聖王は開放した。

ここまで

ちょっとしばらくこっち書けるか怪しかったので、一気に書けるところまで。
ちょっと足早過ぎたのには反省。

乙!メイドはレギュラー狙っているなww

追い付いた乙

女騎士 草で結構前にやってたわがままでかつゲスい女騎士書いてた人かと思った

竜田揚げのことは忘れるんだ

>>181
メイド「この業界、目立ってなんぼなんですよ!」

女騎士「そういうこと言っていると、この作者、根性ひねてるから出してくれなくなるぞ」

メイド「洗脳するしかありませんね」

女騎士「ずいぶんと積極的だな」

メイド「女騎士様と違って、出番は確実じゃないですから」

女騎士「そんなものか」

メイド「そんなものです」

>>182-183
竜田揚げ…、作品自体わからないや。まぁ、たぶん面白いのかな?

まぁ、ゆるりとおつきあいを。

自体は一応の終息を迎えた。もちろんそれは大団円などではなく、聖イマキルペセと信徒に多大な傷を与えている。聖イマキルペセの象徴であった元聖王の死は当然とし、大教会に仕える司教や修道士、奇跡の効果がない件で援軍に来ていた者達も命を落としたこと。それと合わせて、宗教都市ディルムンに住む信徒達も多く無くなっていった。

今や宗教都市ディルムンは、その華やかさが過去のものであったかのように、かげりを帯びている。神が与えし力、奇跡が戻った今でもなお、それ以上のものを失いながら生き延びた人間達の顔に、笑顔は戻りようもない。

それどころか、亡き家族を応用に禁忌である自殺を行う者も出始め、そのことで女騎士と彼女が早馬で呼んだ騎士達が自殺防止のため、警備に回る必要が出なければいけないほどだった。

この件については、ロドマが反乱を起こしたことも隠匿され、聖イマキルペセが奇跡の復活を成し遂げたと流布された。更に言うならば、元聖王とロドマが親子関係であったという事は、本当にごくごく一部の者しか知らない。事実は、いつも通りに隠蔽されたのだ。

そして、それに合わせるように、一人の女従者が自殺したこともまた、聖イマキルペセとしては相応しくない情報として、伏せられている。

その後のことについて、医者については魔導が解けると同時に素早く治療に回り、多くの人員を救った後、過労で24時間眠った。それからは、大教会で一時期診療を行って、辺境都市ロイデヤへと帰った。

メイドに関しては、あの後また昏睡状態に入り、しばらくの間眠り続けたものの、危険な状態を脱した。しかし、万全な状態とは言えないために、体力が戻るまで療養している。

密偵についてはいつの間にか姿を消していた。女騎士にも接触してくる様子もなく、本当に存在していたのかも、直接会っていた女騎士すらどこか疑わしく思える。だが、それを存在している証明のように、無くなったとされていた書籍が、ひっそりと戻されていた。

そして、大協会の司教については。

女騎士「ご機嫌麗しゅう、聖王様」

聖王「ふん、私が聖王とはな。皮肉な話だ」

女騎士「このような状況での、元聖王よりの任命でございます。お嫌でしたかな?」

聖王「…、あぁ、癪だな。実力で勝ち得たものではない」

現聖王は人から見れば傲慢であり、口が悪い。しかし、それは根底に実力主義の考えがあることからの、プライドと自信がそうさせているに過ぎない。

女騎士「自殺を試みる者の数が大幅に減りました。そろそろ、私も王都へ戻ることといたします」

聖王「…、ふん。助かったといっておこう」

女騎士「恐縮至極にございます」

聖王「……、多くのものを、失いすぎた。我々が迎える局面はこれからだな」

女騎士に聞かせるようでもあり、自身に聞かせるような言葉でもある。女騎士はそう感じで、答えることはなく窓へ向かい、景色を眺める司教に目をやった後。

女騎士「失礼いたします」

聖王「あぁ、ご苦労であった」

女騎士はそのまま、見もしない聖王に対して礼をしてから、室内を出た。

おっ!やっと主人公(仮)の女騎士の出番か?

女友「………」カチーン

男友「やっぱり女友さんは固まったか」

男「だから、目隠ししてた方がいいっていったのにね」カラカラ

女「あの後に仕掛けはなかったけれど、ぶら下がってるたくさんのマネキンは不気味だったね…」

女友「………」カチーン

男「しかし、台車はいい、女友を運ぶのは楽だ」カラカラ

男友「しかし、ここまで固まったりするもんかね」

女「極端といえば極端な気もするけど。どう思う男君?」

男「作者がキャラの属性を安易につけた結果でしょ」

男友「メタいなぁ」

>>189
思いっきり投稿するとこ間違えたー! きにせんといて

お父様のいたずらか…

>>188
メイド「主役じゃないですか?」

女騎士「主役のつもりなんだがなぁ」

メイド「まぁ、主役らしからぬ主役が流行らしいですよ?」

女騎士「そうなのか」

メイド「まぁ、女騎士様はそのままでよいかと思いますがね」

女騎士「?」


>>191
どうやらそのご様子

女騎士「メイド、体の具合はどうだ?」

メイドの療養場所として借りた大教会の一室に、女騎士はそういいながら入る。そこには上半身だけ起こして、ぼんやりと外を眺めるメイドの姿があった。

メイド「気だるいですよ」

女騎士「そう言えるなら、体の調子は戻っているようだな」

嬉しそうに笑いながら、女騎士はベッドに腰掛けた。

女騎士「もう間もなく、ここでの警備の任も解かれる。お前も一緒に戻れそうだな」

メイド「…、そうですか」

女騎士「気に食わないか?」

メイド「まぁ、いろいろと」

メイドが言う気に食わないは、自分の力が及ばず、多くの人を死なせたこと。聖女としてのプライドが、被害の拡大を抑えられなかったことを、傷つけていた。

女騎士「納得できるようなものを、ここではもう得られるとは思わないぞ」

それを女騎士もわかっていて、友人としてそういう言葉をかけた。

女騎士「メイド、体の具合はどうだ?」

メイドの療養場所として借りた大教会の一室に、女騎士はそういいながら入る。そこには上半身だけ起こして、ぼんやりと外を眺めるメイドの姿があった。

メイド「気だるいですよ」

女騎士「そう言えるなら、体の調子は戻っているようだな」

嬉しそうに笑いながら、女騎士はベッドに腰掛けた。

女騎士「もう間もなく、ここでの警備の任も解かれる。お前も一緒に戻れそうだな」

メイド「…、そうですか」

女騎士「気に食わないか?」

メイド「まぁ、いろいろと」

メイドが言う気に食わないは、自分の力が及ばず、多くの人を死なせたこと。聖女としてのプライドが、被害の拡大を抑えられなかったことを、傷つけていた。

女騎士「納得できるようなものを、ここではもう得られるとは思わないぞ」

それを女騎士もわかっていて、友人としてそういう言葉をかけた。

メイド「それは、わかってはいるのです」

女騎士「退屈で考えることしか、できないのはわかる。ただま、とりあえず治してからで、それはいいと思うぞ」

メイド「貴女は必要なければ考えませんからね」

女騎士「むぅ、ひどいことを言う」

少し不貞腐れた女騎士の様子を見て、メイドもクスリと笑う。

メイド「発つとすれば、いつぐらいになりそうですか?」

女騎士「早ければ、1週間程度か。引き継ぎの問題があるからな」

メイド「なるほど、それまでに王都まで移動できる生命力が戻るよう頑張ります。

女騎士「うん、そろそろ時間だから行く」

その言葉に対して「はい」とメイドが答えたのを聞いた後、女騎士は部屋を後にする。

女騎士「(……、しかし、この一件。恐らく解決はしていない)」

そう確信するのは、あの時ロドマを攻撃した影のような存在。

女騎士「(あれはロドマが用意した存在じゃなかった。なら、ロドマを扇動するように仕向けた奴がいる。そいつを捕えてこそ、この件、解決と言えそうだな)」

首謀者には変わりないロドマが死に、今は追う術こそない。だが、そいつがまた何かしでかさないという保証はない。次こそは、見つけ出して捕えなければと、女騎士はそう考えて警備へと戻っていった。

~誰かが聖王に宛てた手紙~

申し訳ありません聖王様。貴方の命を奪ってしまったのは、私のせいでございます。

あの時、貴方にお伝えしたことは、最初で最後の嘘であり、それがこのような事態を招いてしまったのです。

お許しいただきたいとは思いません。貴方を敬い続けた私の心に、恋慕。それも横恋慕が住み着いてしまっていたのです。

貴方があの方を思い続けていることは、重々に承知しておりました。ですが、それが気づけば嘘の言葉を吐かせていたのです。

貴方に数々の教えをいただいた私が、禁忌である自分で死を選ぶことをお許しください。天国へ行く貴方とは対照に、

私は地獄へ向かうべきなのです。

私が多くの人、仲間の命を奪ってしまったのです。あの時、あの嘘が。

すべては、我が罪なのです。

これにて、宗教都市ディルムン編終了です。

少々急いで書いたので、全体的に性急に進んだ気がしますがどうでしょうか。

次は何編というのはまだ骨組なので、少し再開までお時間いただくかもしれません。

ではまた。



楽しみに待ってる

>>189
そのスレも読んでるぞ

>>198
ちろっとだけかくーよ

>>199
なんと殊勝な…

女騎士「海賊ですか?」

姉「えぇ、交易都市アレクリアで大暴れしているらしいわぁ」

女騎士「それで、研究所に必要な材料が届かないというわけですか」

姉「えぇ、このまま待っていても埒があきそうにないから、現場を見に行こうかと思ってぇ」

その言葉を聞いて、女騎士は慌てて姉を止める。

女騎士「お待ちください。姉様。そのようなことをするのは、私の役目です」

姉「でもぉ、今は研究所にいても退屈だもの」

女騎士「姉様に何かあって、では困ります」

姉「そうねぇ…」

その言葉に何か考えるような仕草をした後。

姉「なら、女騎士ちゃんも一緒に来れば問題ないわねぇ」

女騎士「いえ、そういうことではなくてですね」

姉「ほらほら、二人ならすぐ終わるわ。行きましょ」

女騎士「ね、姉様。ちょ、ちょっとお話を」

あたふたする女騎士を、姉は無理やり連れて屋敷の外へと出る。

メイド「まったく、仲がいい姉妹ですね」

それを見ていたメイドは、そういいながら微笑んだ。

交易都市アレクリア、この国で最も大きな貿易港となる都市であり、辺境都市ロイデヤに勝るとも劣らない商売のメッカである。

離れた大陸から運び込まれる希少な鉱石や装飾品、薬草、織物、香辛料といったものが運び込まれ、それらはアレクリアを通して王都を含めた様々な都市に売られていく。

当然、それらの物資は海賊にとっても格好の獲物であり、奪い去られたそれらは、他国に高値で売りさばかれる。そして、その得た収入を持って海賊達はより強固な装備を整え、略奪を繰り返す。

海賊はそこらのゴロツキとは違い、統一された軍隊と言っていい相手だ。命がけの航海により、仲間の団結は強く、海の戦闘に関してはまさしくプロフェッショナル。

そんな相手だけに、商人達も頭を悩ませており、共同出資をして強固な船を研究、砲の改良、私兵を海兵として訓練させたりと、あらゆる手段をとっているが、結局のところはいたちごっこで終わっている。

しかし、ここにきて王営の研究所。姉が率いる研究所のチームが、帆船よりも次世代の船となる、魔導駆動により推進する船の計画に乗り出していた。風に頼ることなく自在に船を操ることができる。それはまさしく、新しい船の時代の到来を告げる計画だった。

そして、その計画が秘密裏に進められていたのだが、噂に戸はつけられないもので、新しい船が作られているという聞きつけたと思われる海賊達が、その進行の妨害のために略奪行為が頻発化しているというのが、目下の現状であった。

女騎士「着きましたね」

姉「そうねぇ」

馬車を降り、高台から交易都市アレクリアを見下ろす。

女騎士「それで、どこに向かわれるのですか?」

姉「えぇ、ここを取り仕切っている商家のルカソンヌのところよぉ」

女騎士「ルカソンヌ、ですか」

姉「何か知ってるのぉ?」

先の辺境都市ロイデヤでの盗賊騒ぎ、そして自身が持つ斧を手配した商家。忘れるような相手ではない。

女騎士「ロイデヤで少し世話になった商家です」

姉「あらぁ、お礼とか何もしてないわぁ」

女騎士「そういうことを気にするような相手では、ないかと」

姉「そうかもねぇ」

ふらりと都市へと歩き出した姉の後ろに、護衛の意味を兼ねて女騎士はついて歩いた。

交易都市アレクリアは、段差上になっている。一番下が荷役、港、造船所といったものがあり、その次の上の段が降ろされた品物をそのまま、あるいは加工したものを販売する商店が連なり、更に次の上の段は民家が多く並ぶ。といいった具合だ。

ただ、明確に商業区や住宅区と分かれているわけではなく、そういったものは混在している。津波などの被害により、復興の際にいろいろなものが作られ、どこか混沌としているのが、明確な区画整理がなされているロイデヤとは違うところだろう。

言い換えるのであれば、この場所の全体が、ロイデヤの市場のようなものだ。いろいろあることを許容できる、そんな強さがアレクリアに存在しているのだ。

姉「ここねぇ」

女騎士「いい立て構えですね」

姉「ここの商人ギルドの盟主さんのお店ですものぉ」

女騎士は、恐らくその盟主はあの商人のことを言っているのだろうなと思った。確か以前海運業の話をしていたなと思い出していたからだ。

「いらっしゃいませ」

入ってきた二人に対して、店員は手慣れた接客態度で応対する。

姉「私(わたくし)、姉と申す者ですが、商人様はいらっしゃいますか?」

「あ、はい。しばしお待ちいただけますでしょうか」

姉の名前を聞き、少し急ぐ様子で店員は商人を呼びに奥へと消えていく。

姉「そう言えばアポイントメント取り忘れてたわねぇ」

女騎士「思いつき、ではありませんよね?」

姉「海賊達が私の研究の邪魔のために、略奪をしているなら、あまり堂々と公言はしづらいからねぇ」

女騎士「それはそうですね」

賊もただ略奪するだけなら三流だ。熟練、あるいは頭が切れる者がリーダーなら、こういった都市に仲間を送り込み、情報を得てから略奪行為を行う者もいる。

それだけに、姉がここに来るのは危険をはらむ事であり、女騎士としても姉がここに来るのは賛同できるものではなかった。

商人「お待たせいたしました」

辺境都市ロイデヤで会った時と変わりない様子で、商人はやってきた。

姉「これは商人様、急にお呼び出しいたしまして申し訳ございません」

商人「いえ、こちらもこそお待たせいたしました」

姉「ごめんなさい。事前に連絡すべきでしょうが、思い立って来たものですから」

言葉をあえて濁し、姉は商人にアイコンタクトで意図を伝える。

商人「畏まりました。ここでは商談とは行けませんから、奥の応接間にてお話しいたしましょう」

姉「そうですわね。私の妹も同席いたしますが、構わないかしら」

商人「何も問題はございませんよ」

姉「良かった。では行きましょうか」

商人の案内に誘導されながら、二人はその後ろについて行く。案内された応接間は、落ち着いた調度品でまとめられており、ゆっくりと話すための雰囲気を作り出していた。

>>185の今更訂正

×自体は一応の終息を迎えた。もちろんそれは大団円などではなく、聖イマキルペセと信徒に多大な傷を与えている。聖イマキルペセの象徴であった元聖王の死は当然とし、大教会に仕える司教や修道士、奇跡の効果がない件で援軍に来ていた者達も命を落としたこと。それと合わせて、宗教都市ディルムンに住む信徒達も多く無くなっていった。

○事態は一応の終息を迎えた。もちろんそれは大団円などではなく、聖イマキルペセと信徒に多大な傷を与えている。聖イマキルペセの象徴であった元聖王の死は当然とし、大教会に仕える司教や修道士、奇跡の効果がない件で援軍に来ていた者達も命を落としたこと。それと合わせて、宗教都市ディルムンに住む信徒達も多く亡くなっていった。


×それどころか、亡き家族を応用に禁忌である自殺を行う者も出始め、そのことで女騎士と彼女が早馬で呼んだ騎士達が自殺防止のため、警備に回る必要が出なければいけないほどだった。

○それどころか、亡き家族を追うように禁忌である自殺を行う者も出始め、そのことで女騎士と彼女が早馬で呼んだ騎士達が自殺防止のため、警備に回る必要が出なければいけないほどだった。

姉「お話をする前に、閉鎖(空間独立、遮断外界)」

商人「ありがとうございます」

姉「単刀直入にお聞きしますわ。どのような状況なのです?」

商人「姉様よりご依頼いただきました、研究用の資材を運んだ船が多く襲われています。我々も手をこまねいているわけではなく、嘘の情報を流して偽の商船を襲わせ、何とか確保をしている状態です」

いつも笑みを浮かべている姉の表情に、その笑みはない。

姉「なるほど、ここのところは以前より少ないですが、物資が搬入されているのはそのおかげですか」

商人「えぇ、しかし、出向直前に荷を移動させたりなど、無理をしております。それに、この手段もいつまで有効であるか、私(わたくし)どももわかりかねるところ」

姉「……、そして商人様。私が聞きたいのは、もう少し深いところ、というのはご理解いただけてるかしらぁ?」

本気になった時の、周りを凍らすその声で、姉は聞きなおした。

商人「……、それはどのような意味でしょうか」

姉「この研究。かなり重い意味を持つことを、商人様がご理解できていないとは思えませんわ」

新しい技術による新しい船の研究。それは、てこずる相手とはいえ、海賊だけの問題ではない。天候の影響を受けず、自走を可能とする船舶。それは、この国がやすやすと他の大陸へ行き来できることであり、そしてそれは何より。

姉「この技術ができることでの、各国の軋轢が起きることは必至。戦争での優位さもさることながら、新たな未開拓地への介入は我々が独占できうる。そんな技術であることを、一介の商人ではない貴方が、理解できていないとは思えませんわねぇ」

商人「……、もちろんここの商人ギルド自体で、この技術の開発に協力することは、今でも反対派がいるのが目下の状況です」

姉「海賊の問題もさることながら、今回、その方達とあらためて会合の場を設けていただきたく、参じましたわ」

あの溌剌とした商人が、言葉を詰まらせる様子に、無表情を貫くも女騎士は緊張を隠せないでいる。

商人「畏まりました。ここの滞在はいつまでになられるのでしょうか」

姉「信頼できる者に研究所を預けてきましたから、可能であればいつまでも」

商人「…、そうですか。それでも、可能な限り早く手配いたしましょう」

姉「よろしくねぇ」

それは、商人に決定権はないと伝えるような、絶対的なやり取りだった。

姉「つき合わせて悪かったわねぇ。女騎士ちゃん」

女騎士「いえ、それはお気になさらないでください。姉様」

二人は商人が手配した、恐らくこの場所で気位が高く、それでいて部屋自体も最上位の寝室で休んでいた。女騎士としては気が休まるようなところではないが、姉が部屋を気に入った様子なのを見て、それならいいかと自分を納得させていた。

姉「でも、やっぱり貴女としては、あのやり取りは気に食わない?」

女騎士「いえ、そんなことはありませんよ」

姉「…、ねぇ、女騎士ちゃん」

女騎士「なんでしょうか?」

真剣な眼差しに、背筋を伸ばして女騎士は聞く体勢を取る。

姉「私も自分が作る技術で、この国のためになると信じてはいるの」

女騎士「はい」

姉「でもね。実際は違う。それに伴って、誰かが犠牲になる。変化は誰しもが受け入れられるものではないから」

姉「今、各国は技術の発展に血道をあげている。私達もそれに遅れるわけにはいかない。なぜなら、それに後れを取れば、もしかしたら隣国が攻めてくるかもしれない。今は、仮初の平和であることに、皆目を背けている。私にはそうとしか見えないの」

女騎士「……」

姉「自己満足かもしれないわ。研究所の主任として席を取るものである以上、常に一番であることが求められ、そして結果を出さなければいけない」

女騎士「僭越ながら」

そう言って、姉の言葉を女騎士はさえぎって。

女騎士「姉様が優しいことは、私は誰よりも知っているつもりです。そして、頭も良い。誤ったことを考えているなんて、私は思いません」

姉「…、ふふ、女騎士ちゃんには敵わないなぁ」

優雅に姉は女騎士に近づき、まるで子をあやす母のように、優しく抱擁した後。

姉「女騎士ちゃんが思う、気高い姉が、こんな迷ったことを言うのは、嫌かしらねぇ?」

女騎士「私は皆様の家族の一員です。なんであれ、受け止めます」

姉「…ありがとう」

本音で言えば、こういう態度を初めて見せた姉に戸惑いつつも、女騎士はこの件、かなり重要なことであると認識した。

姉との夕食を終え、女騎士は1人、交易都市アレクリアを歩き回っていた。装いもいつもの騎士の装束から、冒険者の装いをしている。

女騎士「(あたしなりに、姉様の役にたたねぇと)」

歩き回っている理由は、この都市の内情を探るためのものだ。王都より離れたこの都市は、女騎士もそこまで立ち寄ることはなく、顔見知りになるものはルカソンヌの商人ぐらいのもの。この状況なら、話を聞いて回るのは、その技術を嫌う者がいる以上、騎士としてより流れ者の方がいいだろうと判断したためだ。

女騎士「(さっきの民の話だと、ここがこの都市で一番大きい店のようだな)」

宿屋、そして食事と酒を提供しており、価格帯も大衆向け。ここなら人の行き来も多く、噂がてらの情報をいろいろ仕入れることができる。

女騎士「(そして、その噂に耳を傾けてる輩も見つけられる)」

誰でも行き来できるということは、都市の状況を把握しようとする海賊の一味や、奇妙な話をしている人間がいないか見張っている、商人ギルドの息がかかった人物がいるはず。そこから、今の事態について把握しようと女騎士は考えた。

店の中に入ると、早速人々の活気と酒の匂いが女騎士の体を覆った。大所帯を収容できる店であるためか、給仕達も忙しき動き回り入ってきた女騎士に気づけないでいるようだ。仕方なく、女騎士はカウンターまで歩き、席についた。

女騎士「ホフ酒と、軽いつまみも頼む」

「畏まりました」

手早く出てきたホフ酒で喉を潤し、女騎士は周辺の状況に耳を傾ける。やはり、その多くは海賊による被害の噂だった。

女騎士「(まぁ、姉様の研究の妨害だけじゃなく、他のお宝も欲しいだろうからな)」

今回の件、女騎士として見極めたいのは、海賊と反対派の商人ギルドの人間が裏で繋がっていないのか。ということだ。もしそうであれば、そこから一網打尽にすることも可能だからだ。

もちろん、それぞれがぞれぞれに研究の邪魔をしていることも十分にある。その場合は、女騎士が海賊をつぶせばいいだけであり、商人ギルドの説得は聡明な姉に任せるだけでいい。宗教都市ディルムンの時に比べれば、今回はまだ気楽な方と女騎士は感じていた。

ここまで。

ディルムンに比べればさっぱりした展開だと思う、よ。

乙!
そろそろ脳筋の女騎士に活躍してもらわないとww

wktk

sage忘れ

>>215
メイド「確かに、主だった活躍はされてませんね」

女騎士「騎士なのに戦闘シーンがあまりなかったからな」

メイド「本来、女騎士様は腕っ節な方ですからね」

女騎士「できればすっきりした展開がいいぞ」

メイド「褒めてはないですよ?」

女騎士「むぅ」


>>216-217
まぁ落ち着いて

女騎士「ぷはー」

しかし、思ったよりも見入りになりそうな情報も聞こえなければ、それらしい人物も見当たらない。うまく隠れているのか、それとも見当はずれだったのか。どちらにしても、女騎士の酒杯ばかりが進むだけだ。

女騎士「(これなら姉様と一緒に呑んでいた方がよかったかもしれねぇな)」

回りも夜が更けてきたせいか、ぐでんぐでんに酔っ払う冒険者や、この都市の民ばかりになってきている。もっとも、それ以上の量を飲む女騎士が酔う様子はない。

「強いねぇ、姉ちゃん」

女騎士「あぁ、生まれつき呑めるんだ」

「だったら、俺の酒を注いでくれよ」

女騎士「そうだな。これで勝ったらでどうだ?」

すっと腕を出して、肘をカウンターにつける。

「力比べってか。いいねぇ」

そう言って絡んできた、恐らく力自慢であろう男も、肘をカウンターにつけて、女騎士の手を握る。

女騎士「そこの給仕。悪いが合図を」

「あ、はい。では、スタート!」

言葉と同時に互いの腕に力がこめられ。

「ぐお!」

一瞬のうちに、男の手がカウンターに叩きつけられた。

女騎士「満足したか?」

叩きつけた音が、周りの目を女騎士と男に向けられる。とはいえ、女騎士は気にしないようにまたホフ酒を頼み、つまみを一口つまむ。

「ま、待て。今のはタイミングが悪かったんだ!」

女騎士「言い訳は男の価値を下げるぞ」

「も、もう一回だ!」

女騎士「はー…、親父、ホフ酒はそこに置いといてくれ」

もう一度やらなければ、開放してくれないと判断した男は、ホールの中央にあるテーブルに移動してから。

女騎士「ここでいいだろ。皆の前で、また恥をさらしてねぇならこい」

「へ、なめんなよ!」

安い挑発に乗った男は、対面するようにテーブル前に立つ。

女騎士「が、二度目の挑戦を挑んできたのはてめぇだ。負けたら。そうだな、あたしの支払いはお前がしろ」

「いったな。俺が勝ったらこれから付き合ってもらうぜ?」

女騎士「勝ったら、な」

周りもこれは楽しそうな余興だと集まってくる中、二人は同じようにテーブルに肘をつき、互いの手を握る。

女騎士「ハンデだ。お前の好きなタイミングで始めていいぞ?」

「ほえ面かくんじゃねぇぞ!」

その言葉と同時に、奇襲の意味で男はいきなり腕に力をこめた。

だが、男が感じたのは言うなら、巨木や岩のような感触だった。ピクリとも女騎士の腕を動く様子もなく。

女騎士「まったく、お父様よりも力がないな」

そのまま、また手加減なく男の腕をテーブルに叩きつけ、そしてその勢いで男は無様に床を倒れた。

男「うぅ、畜生」

女騎士「さて、見世物は終わりだ。散れ散れ」

邪魔くさそうに集まった周囲に対して、追い払うように軽く手を振った後、女騎士はすでに置かれていたホフ酒に向かって歩いていき、それを手にとって一息で飲み干した。

女騎士「あぁ、うめぇ」

「すげぇ女だな」

「あの男も、それなりに力自慢って感じだが、見掛け倒しか?」

「それはねぇだろ。あの姉ちゃんが見た目以上にすげぇんだよ」

さっきまでのやり取りを見ていた者達も、大人しく席に戻っていったが、やはり今見た光景について思い思いに話し始める。

女騎士「(いっけね。ちと目立っちまったな)」

顔を知られていないうちに、密偵のように情報を振舞うつもりだったが、これではその意味がない。

女騎士「(かっしいなぁ。この程度で酔っ払うわけねえんだが)」

並べられた酒杯を見ながら、少しだけ女騎士は反省した。

>>220の訂正。

×もう一度やらなければ、開放してくれないと判断した男は、ホールの中央にあるテーブルに移動してから。

○もう一度やらなければ、開放してくれないと判断した女騎士は、ホールの中央にあるテーブルに移動してから。

女騎士「(結局軽い騒ぎ起こして収穫なしか)」

店を出た後、頭を軽くかきながら、これからどうしたものかと考える。とは言っても、すでに夜更けということもあり、今からどこかで情報収集できる場所もない。

女騎士「(素直に宿へ戻るかな)」

これ以上、歩き回ったところで何か起きるわけでもない。酒を飲んだ後だが、目だってしまったこともあり、少し気分を沈ませながら宿への道を歩いていく。

程なく、宿がある段への階段にたどり着き、そこを上がろうとした時だった。

「待てよ姉ちゃん」

聞き覚えのある声が後ろからする。それと一緒に、わずかな殺意も混じっているのを感じて、女騎士は一気に階段を駆け上ってから振り向いた。

そこには、さっきの男と取り巻きらしい人間がいて、そして武装していた。

「さっきの借り、返してもらうぜ」

女騎士「しつけぇ男は嫌われるって、知らねぇのか?」

周囲の様子に気を配りながら、男を見下ろす。

「へ。てめぇら、上玉だ。あんまひどくやるなよ!」

男の号令で一気に取り巻きが駆け上がってくる。武器の類を持ってきていない、女騎士は構えた後。

女騎士「借りるぞ」

背後から襲い掛かってきた男の腹部を殴り、手から零れ落ちた木の棒を落ちる前に掴んだ。

女騎士はそのままその棒を中間を持ち。

女騎士「斧じゃねぇのがしっくりこねぇな」

そうぼやきながら、階段を上りきってきた男達に向かっていく。攻撃を棒でそらしながら、そのまま顎、腹部、喉を強打し、一撃の下に沈黙させていく。

「な、あ」

下で、想定外の状況に狼狽している男をめがけて、そのまま階段を一気に飛び降り。

女騎士「これで仕舞い、っと」

その落下の勢いを利用して、思いっきり棒で顔面を叩きつけると、耐え切れなくなった棒はそのままボキリと折れた。使えなくなってしまったそれを後ろに投げ捨てながら、うずくまる男に近づいていく。

女騎士「で、てめぇら何もんだ?」

「な、何言ってやがる」

女騎士「徒党を組むゴロツキにしちゃあ、いいチームワークだ。戦いに慣れた冒険者っつーには、てめぇらのなりはどうも違う。大方海賊か?」

そのまま、もう一度顔面を蹴り上げて、仰向けに倒れた男の肩に足をのせる。

女騎士「ま、なんだっていいか。そろそろ衛兵もきやがるだろうから、そいつらにお前等は任せるとすっか」

今回、姉の件で暴れている海賊かは、ここの衛兵に吐かせればいい。そう考えた女騎士は手早く男達を縛り上げた後、騒ぎを聞きつけた衛兵に引き渡して宿へと戻っていった。

とりあえずここまで。久しぶりに暴れられるせいか、女騎士の素が出っ放しな気がする。

>>221の訂正

×顔を知られていないうちに、密偵のように情報を振舞うつもりだったが、これではその意味がない。

○顔を知られていないうちに、密偵のように振舞い情報を得るつもりだったが、これではその意味がない。



ID違うはずだけど、ネカフェから出て携帯で読み直してるだけやで。

寝ます。

顔を知られていないうちに
 ↓
思いっきり棒で顔面を叩きつける

これで解決や

乙!
こりゃ間違いなく女騎士筋肉痛だろww
前回何もしてなかったしなぁ

>>227
女騎士「私も一応立場ある人間だからな…」

メイド「なかったらやるんですか?」

女騎士「ぶちのめしてはおく」


>>228
メイド「女騎士様に、筋肉痛とかあるんですか?」

女騎士「昔はあったぞ。幼少の頃、父様にしごかれた時とかな」

メイド「どんな風にしごかれたんです?」

女騎士「百キロの荷物を背負って、登山とかだな」

メイド「え」

女騎士「変か?」

メイド「スパルタだったんだなと」

女騎士「かもしれん」

姉「早速捕り物なんて、女騎士ちゃんも仕事熱心ねぇ」

女騎士「偶然です。あちらから絡んできたので、身を守っただけですよ」

姉「ふふ、でもわざわざ夜の都市を歩き回っていたのは、それが理由でしょう?」

女騎士「都市の内情を探っていたのは、間違いありません。それでたまたま、海賊が襲ってきた。ツイていただけですよ」

翌朝、女騎士を襲った者達は海賊の一味と判明し、都市はその話で持ちきりだった。

騒ぎを聞きつけ、やってきた衛兵には、今後の活動に支障が出るとして、流れの冒険者の活躍した。その形で話をつけている。

姉「まだ、会合の準備は出来そうにないから、女騎士ちゃんは自由にしていていいわ」

女騎士「いえ、場所が場所ですから、姉様の護衛をさせていただきます」

姉「心配いらないわ。この宿から出る予定はないものぉ」

女騎士「この宿なら、そうそう不審な者が入り込んでこないかと思いますが、護衛は必要ではありませんか?」

その言葉を聞いて、イタズラを企む子供のような笑みを姉は浮かべた後。

姉「そうねぇ。じゃあちょっと待ってねぇ」

懐から白紙の魔導書を取り出し、詠唱と同時に開くと一枚だけ紙が抜け出し。

「…あふほ」

まばゆい光の後、そこに現れたのは寝ぼけ眼で黒パンを頬張る助手の姿だった。

姉「十分な給金が出ているはずなのに、また貧乏生活なのかしらぁ?」

助手「またいきなし呼び出したと思ったら、嫌みですかい。は~ん」

女騎士「お久しぶりです。助手殿」

助手「うん、どうも」

黒パンを一気に口へ放り込み、そのまま助手は飲み込む。

助手「それで? 今度はどんな厄介ごとをさせようってんで?」

姉「私の護衛よぉ」

助手「目の前に、適任者が見えますがね?」

姉「女騎士ちゃんは無理やり連れてきただけだからぁ」

自分がやります、とは言いづらい状況で、女騎士は口を挟めないでいた。

助手「つ~か、もしかしなくても、ここ交易都市アレクリアですか」

姉「物わかりが早くて助かるわぁ」

助手「はぁ、またなんでこんな遠いとこに」

本当に嫌そうな言いながら、近くの椅子に助手は腰掛ける。

助手「て~か、帆船の研究はいいんですかい。俺も一応研究手伝わなきゃならんですし?」

姉「今は止めているわ」

助手「……はぁ?」
姉「言葉通りよ?」

何も知らされていない、それがありありと助手の態度から感じとれた。

姉「ここの会合が終わらない限り、再開は有り得ないわね」

助手「皆、知ってるんで?」

姉「えぇ、貴男以外は」

助手「珍しく長期休暇くれると思ったら…」

もはや、何か言うのも馬鹿らしくなったのか、助手は深く背もたれにもたれかかった

軽くここまで

乙!
毎回毎回だから助手は怒っても良いと思う、まぁ勝てないだろうけどww

>>233
とりあえず怒っていいね。うん。

女騎士「追い出されてしまった…」

あの後も2人の話は終わらず、姉が女騎士を部屋から出し、分からず屋さんとまだお話ししなきゃならないからと、閉められてしまった。仕方なく、女騎士は自分用にあてがわれた部屋に戻り、また冒険者風の格好に着替えて外を歩き回っていた。

海賊被害があるとは言え、船乗りや商人、漁師達が慌ただしく港で動き回る姿を見ると、この都市の活気の良さを窺えた。

女騎士「(何にしても、小腹が好いたな)」

今は昼も少し過ぎた頃、すでに昼食は食べたとは言え、いまだに食べ盛りを過ぎていない女騎士には、上品すぎて物足りなかった。

女騎士「よし、こういう時は、地元の連中にうまい飯がありつける場所を聞こう」

姉が言うとおり、女騎士は任務からここには着ていない、しかも護衛は姉を心配しているから、そういっているだけであり、女騎士はこの件かなりフリーな立場と言えた。

女騎士「ご飯~ご飯~♪」

だからこそ、このいろいろと交易がある場所で、弟に有効な物があるのではないか。そんな期待もあって、いつもより女騎士は上機嫌だった。

女騎士「たまんねぇなこの焼き魚」

早速地元の漁師から聞き出した旨い店に訪れ、オススメの食事にかぶりついていた。

「姉ちゃん、ここは初めてかい」

女騎士「店は初めてだが、都市はかなり前に、一度きたかなぐらいだ」

「都市の方さ。そうか、なら勘違いみたいだな」

女騎士「どういう意味だ?」

飯時を外れた時間、店内には女騎士以外に客はおらず、そのせいか店主に女騎士は話しかけられている。

「以前、姉ちゃんに似たヤツがきた気がするんだが、わりと最近のことだからな」

女騎士「そうか。数年は前だから、他人のそら似とかいうやつじゃね~かな」

「そうかもしれんなぁ」

店主は納得したように頷いて。

「それで、ここには何の用で来てるんだ」

女騎士「一緒に来られている姉様の護衛さ、今はフリーで自由に都市を歩かせてもらってる」

「そうかい、まぁ、ゆっくり食べていってよ」

女騎士「そうさせてもらう」

海賊かどうかの探りで、反応を試していたのか。今のやりとりをそう考えた後、女騎士は食事に戻った。

メイドのスカートの丈の長さを是非!


そしてガーターベルト着用を……

>>237
女騎士「メイドのメイド服についてだ」

メイド「スカートの丈は足首まであります。装いは基本近世のものに近く、フリルなんかの華美な装飾はありません」

女騎士「作者のメイド服に関する認識は、あくまで作業着だからな」

メイド「あと、ガーターベルト的なものはつけてます。これもまた作業着的意味合いで、ですね」

女騎士「ただ、作中言及がない限りは、服装なんかは読者の想像に任せているぞ」

メイド「さて、仕事に戻りますね」

女騎士「いってらっしゃい」

女騎士「あ~、おいしかった」

満足そうな表情で、水を飲み干した後彼女はそういった。

「そういや、もしかして姉さんかい。噂の海賊捕まえた冒険者ってのは」

女騎士「あ~、捕まえたって訳じゃないんだよなぁ」

「変な言い方するね」

女騎士「あたしは腕っ節は強いんだけど、戦い自体はからっきしなんだ。店で絡まれて、追いかけてきたのを誤って階段から突き落としたのさ」

わざと言いづらそうな表情をして、彼女は頭をかく。店主なんとなくわかった風に頷いてから。

「なるほどなぁ。いや、姉さんを酒場で見た人が、テーブルを真っ二つにしたとかいろいろ聞いてたもんだからさ」

女騎士「身体が丈夫なのは自慢なんだけどさ。そういうのは全然、強そうな態度は酔ってただけだし、囲まれた時はどうしようかと思ったよ」

「そうかいそうかい。で、抵抗してるうちに衛兵達が助けてくれたわけだ」

おっちゃんが言うとおりだよと答えた後、果実酒を一杯女騎士は頼んだ。

女騎士「しかし、噂ってのは怖いな。いろいろ尾ひれもついてるみてぇだし」

「運も実力のうちと言うからいいじゃないかね?」

女騎士「出来ればやめて欲しいね。あぁ、そうそう。店主、知っていたらでいいんだが、身体にいい薬とかそういったものを扱ってる店はあるか?」

「あるよ。姉さんどっか悪いのかい?」

身内だよ、彼女がそれだけこぼしたそれだけの言葉は、店主に軽口を言わせない重さがあった。

「場所は店を出て、右手の道沿いを歩いていけばいい」

女騎士「ありがとう、これ駄賃だ」

「毎度どうも。良くなるといいな」

女騎士「あたしも、そう願ってる」

彼女は気付いていなかったが、自然と悲壮な表情を店主は見て、気の利いた言葉すら言い出せなくなってしまった。

その後、店主に聞いたとおりに歩き、道歩く人に確認しながら行くと、想像していたより小さな店が見つかった。

その店の中にはいると棚が部屋の壁を覆い、その中も大小のビンに様々な薬草が入ったもので埋め尽くされていた。

効果などは全くわからなかったが、彼女がその薬草を見ていると、奥の方からここの店主らしき人間が出てきた。

「見ない顔だね。それでいて、あなたには薬は必要無さそうだ」

女騎士「身内だよ。昏睡から覚める薬はないか?」

「それだけじゃあダメだね。なぜそうなったか聞かないと調合できない」

そう言われ女騎士は仕方なく、当時の状況を説明した。ここの店主である老婆は、しわくちゃの顔の表情を動かすことなく、淡々と聞いた上で。

「その弟さんにすぐ効く薬は、残念ながら私が知るうちにはない」

女騎士「そうか…」

「そう落胆されるな。改善出来るやもしれない薬は調合できる、ただし値は張るよ」

提示されたのは金5枚だったが、女騎士は惜しげもなく支払った。

ここまで

女騎士ちゃんペロペロ

>>243
女騎士「いきなり舐められたぞ」

メイド「女騎士様が美味しく見えたのでしょうか」

女騎士「まさか、食人の気がある奴なのか」

メイド「…、たぶん違いますけどね」

女騎士「?」

老婆は金貨を受け取ると、早速棚から幾つかの薬草を取りだしてから、カウンターに調合器具を出して作業に取りかかった。

「立つのは疲れるだろう。そこの椅子に腰掛けるといい、暇なら外を出てしばらくして戻れば出来ているよ」

女騎士「ここで待たせてもらう」

「構わないよ」

そこから2人に会話はなかった。薬草をすりつぶす音、混ぜる際に使う水を沸かす音、店の外では港町特有の喧騒がしているにも関わらず、店の中はとても静かで、調合の音しか聞こえない。

その音を聞きながら、この薬が本当に弟に効果があるのか、そんな疑いが女騎士の頭をもたげていた。しかし、疑ったところで他の手段は見つかっていない。可能性があることを試し続けるしかない。そう考えるしか女騎士にはなかった。

いろいろ悩みながら、ジッとその作業を見つめる女騎士を無視するかのように、老婆はただ黙々と薬剤を調合する作業に没頭していた。

調合が終わったのは、女騎士がやや退屈を覚え始めた頃だった。

「終わったよ。もっとも気休めにしかならないかもしれないけどね」

女騎士「目を覚ます可能性は?」

「わからないよ。約束は出来ない。考えられる状態に効果がある、希少な薬草を使ってはいるけれどね」

調合した丸薬は、丁寧な包みに入れられて手渡された。

女騎士「聞き忘れていたが、そなたの名は?」

調合士「調合士、ただの薬屋の婆やだよ」

女騎士「恩に着る。それではまたな」

調合士「または、望まないよ。じゃあね」

店を出てから女騎士が少し振り返ると、また調合士が店の奥に消えていくところだった。あれだけの多種多様な薬草を管理し、個々の効能を把握しているところを見ると、その道の腕利きであることが想像できた。

女騎士「(いつもよりは期待できるかもしれないな)」

もちろん、その腕利きが効果は約束できないといったのだから、やはり厳しいかもしれない。それでも、出来ることがあるという事実が、女騎士の気持ちを幾分楽にさせた。

「女騎士様!」

誰かが呼び止める声がして、彼女が後ろを振り返ると、商人の姿があった。

女騎士「し、悪いが今は騎士ではなく、冒険者の一人として動いている。様は止めてくれ」

商人「そうでしたか」

女騎士「……姉様がキツいことを言ってすまない。だが、あの方なりに真剣なのだとも、わかってほしい」

商人「お気になさらないでください。こちらもその件で内輪もめな状態ですから……、歩きながら話しましょう」

その提案に頷き、女騎士は承認の横について歩く。

女騎士「商人達としては、魅力あることではないのか」

商人「イエスともノーとも言えません。確かに新たな交易路を作れることや、新大陸は魅力です。しかし、それにより富や土地を独占しようと判断した国が、交易に制限を設ける可能性が高い。新たな交易材料があっても、卸す先が失ってしまえば意味はありません」

少しだけ疲れが見える表情で、商人はそう話す。

>>247の訂正

×その提案に頷き、女騎士は承認の横について歩く。

○その提案に頷き、女騎士は商人の横について歩く。


ムギー

女騎士「それでは私は動かない方が両者のためか?」

商人「いえ、海賊自体の被害もけして馬鹿にはなりません。本件に関わりあるなしに限らず、もしご対応いただけるなら、有り難いことです」

女騎士「そうか。姉様の護衛もない今、海賊の件にかかれるからそこは心配いらない」

商人「そうでしたか」

そんなやりとりをしながら、わずかに女騎士は商人に近づき。

女騎士「……、振り向かずに聞いて欲しいが、お前についてきているのは、賊か?」

商人「…、確認しなければ分かりませんが、恐らくそうでしょう」

女騎士「そうか。なら、あれはいつ持ってくればいい?」

商人「可能でしたら、確認後すぐ取引相手に引き渡しをお願いします」

多少の胡散臭さはのこしていたのものの、嘘のやりとりをしながら、賊をどうするか確認しあう。

商人「ではこちらから行きましょう。人通りは少ないですが、近道になります」

女騎士「わかった」

この先で、商人をつけ回す賊を捕らえる、そんな暗黙の了解だった。

商人が言うように入った通りに人気(ひとけ)はなかった。

女騎士「どこで曲がるんだ?」

商人「二つ目の十字路を左に」

女騎士「じゃあ、そこから目的の場所には着くか」

商人「えぇ、もう着きますよ」

まるで前から一緒にいるような様子で、嘘の会話で意志の疎通を図る。

そして少しだけ足早に移動して、指示のあった十字路で左に曲がり、2人はすばやく身を隠すと同時に女騎士が見た男2人組がやってきて周囲を確認し始めた。

「バレていたか」

「遠くはねぇはずだ。どうする?」

このまま追跡するかで2人組が相談している間に。

女騎士「見覚えはある奴らか?」

商人「……、マドラスと呼ばれる商家の奴等ですね」

女騎士「反対派のメンバーか」

商人「えぇ、メンバーどころか率先している内の1人です」

これが海賊相手ならば捕まえるだけで済むが、商人ギルドに関わる相手となれば、話は変わってくる。

商人「大方、こちらの動きを見るための監視でしょうね」

女騎士「やれやれ、商人ギルドの間で本格的な仲間割れな訳か。姉様が直接出張るわけだ」

商人「お恥ずかしい。本来ならそれを制するのが私の役目なのですが」

本当に情けなさないと思っている表情で、商人は頭をかく。

「行こう、恐らくは店に移動したはずだ」

「仕方ねぇな。面(ツラ)は見られてねぇしな」

追跡を決断した2人組は、そのまま通りを出て行った。

女騎士「……、気配も完全に移動したか。出ても問題はない」

商人「しかし参りましたね。何のつもりで監視員を寄越したのか…」

女騎士「あの2人組、そこそこのやり手だ。名のありそうだが、商人殿は知っているか?」

商人「マドラスの中堅と言える2人組ですよ。といっても、言わば荒事担当で表にはあまりでない奴らですが」

敵意、のようなものは女騎士には感じられなかった。商人がいうように、動向を確認するための監視として仕向けてきたと考えるのが、状況として妥当な判断、彼女はそう考えた。

身内とはいえ、商売の動向を探られる訳にはいかない。商人の意向で本店ではなく支店まで、女騎士は護衛をかねて着いていった。

商人「ありがとうございます」

女騎士「気になさらず。出来ることは今はこれぐらいしかありません」

商人「お疲れでしょう。何かお出しできるものがないか確認しますので、しばしお待ちを」

普段はいない支店のため、勝手が分からない部分があるのだろう。ここの管理を任せている者に状況説明等のため、奥へと消えていった。

女騎士「(ここも本店と変わらないぐらい立派だな)」

華美な装飾はないが、建物は大きな作りだ。雑貨をメインにした商品棚がずらりと並び、ここでは見るだけでも楽しめるだろう。そして、何かあった時の番兵が、部屋の隅で目を光らせている。

女騎士「(商品も良質なものだ。そのせいか割高感はあるが、品質で考えればむしろ価格は落としている方だな)」

彼女に分かるのは武具の部類だけだが、そのほかの商品も似たような価格で販売されているのだろうと踏んだ。少なくともここで買い物をすれば、間違ったものは買わずにすむ。そんなところだ。

商人「お待たせいたしました、どうぞ奥へ」

女騎士「すまない」

しばらくの間、武具を見て暇をつぶしていた女騎士に、商人はそう声をかけて、支部にある奥の部屋に案内した。その部屋も、この都市に来た時に本店で入った部屋と似たような作りで、家具の配置なども似たものになっている。

女騎士「反対派はどんな活動をしているんだ?」

商人「研究自体が公に出来るものではないこと、ギルドの者は承知しています。そのため、反対派を集める工作をいくつか行っているようです」

女騎士「話は聞いているが、反対派がそこまで強行的なのは、やはり他国出身者がいるからか?」

ギルドは様々な性質を持つが、商人ギルドはその中でも特殊と言える。国、それも同盟間での交易に一方的なものが発生しないよう調整する役割を担っているため、構成されるメンバーは各国から推薦された者も含まれ、自然と多国籍なギルドとなってしまう。言い換えれば、ある程度そのメンバーが属する国の意向が、運営に反映させようとする場合がままあるのだ。

もちろんギルド内にも法がある。ギルドに加盟しているメンバーの国籍に該当する国家の、機密情報に該当する情報を流布した場合、運が良くて流刑、通常は死罪となる。その上戦争さえも招きかねない行為だ。もちろん、スパイ活動や意図的でないにしても、情報が商人ギルドから洩れたとなれば、ギルド全体及びその商家への責任追及は免れず、考えられる事態は消して軽いものではない。

こういった部分での暗黙の抑止力もあって、商人ギルドが多国籍にメンバーが加入でき、通常、内輪もめがなければ一種の国、宗教といったカテゴリに近い勢力になる。

商人「マドラスは海洋国家です。5つの大小の島々からなる国で、規模自体は我が国よりは小さいのですが、船を操る点では、どの国よりも上手(うわて)になります」

女騎士「となると、今回の研究はそのプライドにも関わるわけだ」

商人「それだけに、賛成派ではマドラスの説得は早々に諦めています」

言葉ではそういったが、最初から説得はできないと思っていたのだろうなと、女騎士は感じた。

もうちょっと改行入れた方が見やすくなると思う
大体一行目の「死罪となる。」辺り、長い行で「行為だ。」
それ以上は目が疲れるか読み手の意図しない改行で読み辛くなる

>>255
ふむ、アドバイスありがとう。参考にしてみる

女騎士「しかし、そのマドラスが、商人殿のルカソンヌ家を見張っているというのは、あまりよいことではないでしょう」

商人「帆船の件以外では、マドラスの商家とは友好関係にあるのですがね…」

考え込む仕草などからしても、商人に心当たりがないことを伺わせた。

女騎士も追跡してきた2人組が、敵意や殺意のようなものを感じられなかったことに、少し引っかかっていた。

追跡するとなれば、その相手の居場所を探る、あるいは暗殺や拉致といったものが主と考えられる。

この場合、居場所を特定しやすい商人に前者は当てはまらず、後者が該当と思われるのだが、その割にそういった気配ではなかったこと。彼女はそこが気になっている。

女騎士「(それとも、今考えたこと以外の、何かが?)」

相手のことを知らない今、考えても仕方ない。ただ、この件については、立ち位置として重要な相手、その名と2人組を女騎士は頭に焼き付けた。

しばらく商人と今回の件について話して、女騎士はまたフリーな状態になった。

今の彼女はこの状態をどうすればいいかわからず、身を余している。海賊の件についてこれと言った話は聞かないし、これなら商船の護衛をした方が早く感じられた。

そうしないのはもちろん、この都市に滞在している姉だ。いくら助手という強力な存在がいるとしても、不用意に離れるわけにはいかない。

女騎士「(もうそろそろ夕暮れか)」

陽が海の向こうに沈んでいく光景、懐かしさと寂しさが混ざり合い、彼女の胸の中を満たす。

いつかどこかで見た気はするが、いろいろな地を巡っている女騎士に、これといったものは浮かんでこなかった。

女騎士「(………、あたしはどこから来たんだろうな)」

農家の捨て子あたりが妥当な線だが、今となっては知りようもないこと。それでも、1人ぼんやりといる時、彼女は自身の出生を考えてしまう。

そしていつも通り、自分を納得できる答えは、見つからなかった。

女騎士「ん?」

陽が沈みきり、視線を下ろすと見慣れた2人、姉と助手の姿があった。

女騎士「(助手殿が、護衛役に就いてもらえることになったようだな)」

これで、完全に自分の役割は無くなったとも言える。やれることがあるのは、海賊退治ぐらいだろう。

その海賊退治も、具体的な賊の情報もなく、わかったとしても小さな離島に作られたアジトであることが多い。

どう考えても、一日そこらで終わるような話ではない。

女騎士「(それなら、マドラスの件を追った方がいいかもしれないな)」

マドラスの商家が賊であるとは考えづらいが、ルカソンヌの商家に対して何かしようとしているのは間違いない。

純粋に帆船の件で妨害工作の為というなら、それ自体は問題はない。もしそこに拉致といったものが含まれるとなれば、騎士として黙っているわけにはいかなくなる。

その目的を探ることが、結果として帆船の件を円滑に進められることに繋がるかもしれない。

そう考えた女騎士は夜になった都市に紛れ、例の2人組を捜すことにした。

姉と触手の姿に見えた
改行してもらっても読み手のアホは直らなかった

>>261
女騎士「姉様、触手とはなんなのですか?」

姉「簡単に言うと、たくさんの手かしら。主に海洋に棲む生物がそういう手になっているものが多いわぁ」

女騎士「そうですか」

姉「ところで何で聞いたのぉ?」

女騎士「とあるものが、姉様と触手が~と言っていたのです」

姉「…そう。少し出かけるわ」

女騎士「?」

マドラスの2人組がルカソンヌの本店に居ないことを確認してから、宿を運営してる店を虱潰しに当たる。

2人組の容姿は、特徴的だった。スキンヘッドで頬に傷痕があり、小柄だが筋骨隆々とした男と、対照的にひょろ長く、茶髪も腰まであり眼帯をした男。

尾行をするには、目立つ容姿の2人組が見つかったのは、5件目の店でだった。

女騎士「そうか」

「呼ぼうか、ねえさん」

女騎士「気にしないでくれ。落とし物が渡してくれればそれでいい」

落とし物と偽って、物を入れた布袋を店主に手渡す。

「そうかい。今時、こんなもの届けるなんて、関心だねぇ」

女騎士「特徴的だったから、覚えちまっただけさ。それに、私にはいらない物しかなかった」

「はっは。なかなかいうね、ねえさん。安心してくれ、ちゃんと渡しとくよ」

ありがとうと礼だけ言って、女騎士は店を出る。後は気配を消して待機し、こちらが2人組を尾行するだけだ。

騒がしい夜特有の喧噪が、波が引くように静かになっていき、街中は夜の静穏に包まれていた。

女騎士は暗がりになる片隅で、2人組がいる宿を偵察していた。

今のところ、怪しい人物が店に入る様子もなく、2人組が出た様子もない。

緊張感は持たせているものの、退屈が眠気を誘い、欠伸がこぼれた。

そんな状態で待ち続けてからしばらく経ってから、動きがあった。例の2人組が店から出てくる。

一定の距離を保ち、女騎士は2人組についていく。2人組もそういった類がついてきていないか警戒しているが、気づく様子はない。

警戒といっても、何かが起きてしているものではなく、普段通りのもののように見えた。

2人組は女騎士に気づく様子もなく、港の荷役がある場所の倉庫らしき建物へと入っていく。

罠の可能性もあることから、別の場所から入り込めないか、女騎士は探した。

入り込む場所は、屋上にある換気用らしい窓にした女騎士はそのまま倉庫の中に潜り込む。そのまま梁を伝っていくと、2人組と女が1人いた。

「それで、首尾はどうなんだい?」

話し方やイントネーション、後は地位はあるのだろうが、なかなか派手な格好をしているのを見て、女は高飛車なタイプだなと判断する。

2人組が商人を尾行していた際、よく知らない冒険者と一緒になりその後姿を消したと告げると、女はイラだった様子で髪をかいて。

「尾行がバレてどうするんだい。たく、そういうことは冴えないねあんた達は」

女騎士としては、普通にしててもそこそこ目立つ2人に、そんな仕事を与えた女が冴えないように思えた。

まだ、具体的な目的の話は見えないが、女の方が立場として上なのは間違いなさそうだ。

「ですが、このこと自体、意味あるんですか?」

長身の男が、たまりかねたように聞き、女の額に青筋が立つ。

「意味があるから、あんたらに任せたのがわからないのかい!」

距離がある位置にいる女騎士でさえも、耳を押さえたくなる声量で怒鳴った。

ただ、何かの取引と言うわけでもなく、今している話はこんな場所でわざわざ密談を交わすようなものでもない。

もちろん尾行は堂々と話すようなことではないが、信用性のある宿の一室を借りるぐらいで済む。

もしかしたら、2人組がこの声量で怒鳴るのを知っているから、その考慮をしたのか。女騎士はそんな気がしてならなかった。

「しかしですね、姐(ねぇ)さん。ルカソンヌの奴らは、腕利きの連中ばかりで」

「ぶっ飛ばされたいのかい?」

もはや、有無は言わせず命令に従えと言わんばかりの態度に、2人組は困り顔で縮こまっている。

「とにかく、今まで通りにやるんだよ!」

バンと女は、前にあるテーブルを叩いてから、2人組の反応を待たずして外に出て行き、残された2人組は、いなくなったのを確認してから盛大なため息を吐いた。

「どうするよ」

「どうもこうもない。今は姐(あね)さんの頭が冷えるのを待つしかない」

だよなぁとスキンヘッドの男は、頭に手を置いて困り切った顔をした。

目的は明確にはならなかったが、2人組があの女の指示で、ルカソンヌの商家を、恐らく探っている。そう当たりをつけた女騎士は、そっと倉庫から抜け出す。

2人組には、今のところ用はない。女の正体がなんであるかを探るため、急いで捜すと夜道を歩いていた。

治安は悪くない方の都市だが、それでも夜更けを、武の心得などがなければ女1人で歩くのは控えるべきだろう。

だというのに、女は堂々と歩いていく。恐れるものはないというのが、態度から表れていた。

何らかの覚えがあるのだろうかと、女騎士は考えを巡らせる。しかし、足使いなどからわかるそれは、やはり戦ったことはない人間のものだった。

しばらく追跡していくと、少しだけ見慣れた通りに入り、そしてある建物に女は入っていった。

女騎士「(……偶然だろうが)」

その建物は、自分と姉が現在泊まっている宿だった。女を宿で見たことはないが、恐らくここに泊まっているのだろう。

女騎士「(マドラスの中堅クラスの2人組を、指示を出せる立場。そして、ハイクラスの宿に泊まっている。やはり商人ギルドのメンバーと考えるのが無難だろうな)」

追跡は止め、宿の者に、女が泊まっている部屋を確認した。その後、女騎士は借りた部屋に戻ってバルコニーへ移動し、それ伝いで聞いた部屋まで移動する。

窓から中を覗くと、女は本が積み重なったデスクの前に座り、ペンをはしらせていた。

乙!
ハイクラスのホテルだと客の情報など絶対に漏らさないのだが、女騎士はお色気で聞き出したのだろうか?

>>269
どちらかというと、聖騎士の威光かな?


PC買いまして、携帯と合わせ技になりそうなので酉つけます。付け忘れしそうだけどね。

注意深く女を観察していると、どうやら手紙を書いているようだ。何かをしたためた紙を、蝋で封をする。

書き仕事だからか、着けていた片眼鏡を外し、デスクに置いた後、体を伸ばし立ち上がる。そして、ゆっくりとバルコニーに近づいてくるのを見て、女騎士は仕方なく柵に捕まる形で外側にぶら下がった。

ぶら下がってから間をおいて、バルコニーの扉が開けられる音がした。衣擦れの音がわずかに、女騎士の耳に届く。

「思い通りになんか、させるもんかい」

怒りなどではなく、意思を持った綺麗な声で女が呟いた。あの倉庫で見た時は、喚き散らしていたヒステリーな女、そんなを女騎士は持っていたものの、その一言で印象が変わった。

女騎士「(意思があるという方が、厄介だけどな)」

何をする気なのかは未だに掴めないが、意思を持った者を曲げさせるのは容易なことではない。少なくとも、例の研究を止めさせるというのが濃厚な今、商人が説得を諦めていた理由が、女騎士にはよくわかった。

女騎士「(下手をすれば、姉様も苦労しかねないな)」

筋が通っていようといまいと、自分がすべきことが見えている人間は、強い。騎士として積んできた経験が、この女が実に面倒で厄介なのだろうなと、想像させた。

もし、研究の妨害による工作行為を画策しているなら、ぶつかり合うことは必至。出来ればそうでなければいいなと、女騎士は淡い期待を抱いた。

女が室内に戻った後、明かりが消され眠りについたのを確認し、女騎士も部屋に帰った。そこまで疲れてはいなかったが、ベッドに横になって軽く眠りにつき、そして朝日と共に彼女は目覚めた。

女騎士「(今日のご飯はなんだろうな~)」

今のところ楽しみといえば、この交易都市アレクリアで取れる新鮮な魚介類を使った料理だ。もちろん、交易として栄えた都市なのは確かだが、元々はそういった漁師達が支えていた都市であり、出される郷土料理はなかなかに美味だった。

女騎士「(ここの宿はご飯がおいしいからな。楽しみだ)」

うきうきした気分でベッドから跳ね起き、そのままストレッチを始める。身体の柔軟さは、動きに重要である。そう将軍から聞かされた女騎士が、その時から欠かさずに行っているものだ。

十分に身体がほぐれ、わずかに熱が帯びて、目がきっちりと覚めてくる。水差しの水をコップに入れ、飲み干しながら、今日は食事の後、女の尾行になるなと女騎士は考えていた。

最近
女騎士ちゃんのペロペロ成分が足りない

人体の稼動部分なんて十数cmしかないのに
その一~二割稼動範囲を増やせるもんな

>>274
女騎士「ペロペロ成分…なんのことだ?」

メイド「まぁ、かわいらしいとかそういうところが薄くなったってことじゃないでしょうか」

女騎士「あたしは可愛いわけでも綺麗な訳でもないからなぁ…」

メイド「…、あまり他の人にそういうことは言わないようにされたほうがよいかと」

女騎士「?」


>>275
女騎士の場合は、なんかあり得ない体の動かし方しそうだけどね。

姉「女騎士ちゃんいる~?」

女騎士「あ、姉様~♪」ダキッ

姉「あらあら。昨日はどうしてたの?」

女騎士「はい、気になる人物がおりましたので、現在内偵中です」

研究を反対しているマドラスについて、大まかな説明を女騎士がすると、姉は少しだけ渋い顔をした。

姉「なるほどねぇ。それで推進派のルカソンヌの商家を探ってるか、何かしでかそうとしてるかもしれない。そう考えてるのねぇ?」

女騎士「最悪を想定するならそうなのですが。どこかはっきりしない連中なのです」

姉「それは、どういう意味かしらぁ?」

女騎士「その二人組に明確な敵意がなかった、というのが少々気になるのです」

拉致なんかを想定していないのなら、ルカソンヌの動向を何かの理由で探っている、というのが女騎士の出している結論だ。

女騎士「そういえば、助手殿はどうされたのです?」

姉「寝てるわねぇ。寝起きが悪いからあの人ぉ」

女騎士「そうでしたか」

そういえばいつも眠そうにしていたなと、女騎士は思い出す。あまり付き合いはないのだが、眠そうな表情が記憶の大半を占める。

姉「だから、女騎士ちゃんを食事に誘いに来たのだけれどぉ」

女騎士「そうでしたか。私もちょうどいただこうとしていたです」

姉「ふふ、良かった。一人の食事は寂しいものぉ」

女騎士「そうですね。では早速食堂に向かいましょう」

女騎士は扉を開けて、姉が出てからその後ろについていく形で、二人で食堂へと向かった。

女騎士のスカッとした活躍見たいのに、前編からずっとどっかの通訳兼料理運びみたいにモヤモヤする展開が続くんだな
スレの方向性一緒なら別に立てた意味が無いんじゃないか?

>>279
まぁ、あれと似てる状態だわなぁ。

違う世界なので、コラボでも何でもないんだけどねぇ。

女騎士「美味しいですね」

姉「そうねぇ」

出された食事を2人で食べる姿は、少しだけ目を引く。貴婦人と騎士という、あまり見ない組み合わせでの食事の光景だった。

姉「それで、女騎士ちゃんが調べてる人は、もしかしてここにいるのぉ?」

女騎士「ご存知でしたか」

姉「マドラスはこの国としても、無視できない相手だからねぇ。それに連なる王家や貴族ぐらいは、記憶しておいてるからねぇ」

女騎士「やっぱり姉様はすごいですね!」

キラキラとした、純粋な表情でそういう女騎士に、姉は少しだけ苦笑した。

姉「お兄様には敵わないわぁ。多分私の倍は覚えているはずでしょうし」

女騎士「羨ましいです。私は覚えるのが苦手ですから…」

姉「それぞれ、得手不得手があるから、仕方ないわぁ」

苦手というより、女騎士は興味のない相手はどうでもいいのが理由だろうなと、姉は思った。

2人は、食後に出されたお茶をすすり、一息つく。

女騎士「姉様は本日どうされるのですか?」

姉「研究の反対派に属する何人かと、お会いするところよぉ」

女騎士「護衛は不要でしょうか」

姉「今のところはねぇ。女騎士ちゃんもせっかくの機会だから、いろいろ見て回ったらぁ? 大陸外の国とも交易がある場所だもの。何か見つかるかもしれないわよぉ」

そう聞いて、女騎士は姉が自分をここに連れてきた理由が、わかったような気がした。

女騎士「そうですね…。ありがとうございます」

姉「ん~? 私は何も、してないわよぉ」

いつも通りの姉の微笑みが、女騎士にこの人には敵わないなと思わせた。

姉と別れた後、調合士からもらった薬を早馬で屋敷宛てに郵送してもらい、更に弟に何か効果がありそうなものを探し、住人にも何か知らないか聞いていく。

住人の多くは、あの調合士の店しか話さず、そこで効く薬草がなければ、港で見つけるしかないだろうとのことで、真っ直ぐと港へ足を運ぶことにした。

港は当然都市の最下段にあるため、吹く風に乗って磯の匂いが強く香る。そして、今日は晴天であるのも手伝って、まさしくこれから冒険に向かうような雰囲気だ。

女騎士「(しかし、どうやって交渉したものかな?)」

必要がある場合を除き、姉の交渉に影響が出ないよう、今はただの一般的な冒険者として振る舞っている。こう言った場所の品物は、直売所以外のところは商人でもない限り交渉できるものではなかった。

「これはひどいね」

「つっても婆さん。こっちも危ない橋渡ってるんだぜ?」

少しもめたようなやり取りが耳に入り、そちらに目をやるとあの調合士が船乗りと荷のやり取りをしているところだった。

調合士「専用の保管庫にいれて運べと、頼んだはずだがね」

「言った通り、その保管庫は海賊の襲撃ん時に壊れちまったんだよ。俺達だってこれを買ってもらわにゃ、路頭に迷うんだよ」

調合士「はぁ。最近はどこに頼んでもこの調子だね。商人ギルドは何をしてるんだか」

「それを言われちまうと……、俺らも弱っちまってるよ、上の連中、何か知らねえがもめてて最近とこまとまってなくてなぁ」

海賊の襲撃という言葉が気になった女騎士は、二人に近づいていく。

女騎士「何かあったのか?」

「ん、あんたぁ誰だい」

調合士「おや、当に薬を持って行っていたのかと思っていたよ」

女騎士「薬は早馬で送った。あまり自由な身ではないから、今のうちにまだいろいろ探してるところ…、で、船乗りさん海賊に襲われたってのは?」

聞いてくれよという言葉に続いたのは、ほとんど口で役立つものはなかった。しかし、一つだけ気になる話が出てくる。

女騎士「悪天候の時にだけ現れる海賊?」

「まるで謀ったみてぇにな。ここいらの海域、そんな荒れる場所じゃねぇんだぜ。悪天候でてんやわんやしてるとこにやってきてよ。荷物とられて難破した船も、あるみてぇだし」

明日は我が身だよと、本気か冗談か読めない口調で船乗りは言う。

女騎士「船乗りさん。今度天候悪くなるのはいつ?」

「そうだなぁ、俺の読みが正しけりゃ2日後ぐらいだな」

女騎士「その頃に、近場に出航する商船はあるか?」

「まさか姉さん。その海賊共をとっちめようってのか」

そのつもりだ、という言葉に船乗りは盛大に笑う。

「いやいや姉さん。屈強な船乗りや傭兵でも手こずってる奴らだぜ? 姉さんのその細腕じゃあ」

女騎士「そんなにいうなら試してみるといい」

スッと差し出される手に、やれやれといった態度で船乗りが握ると、少しの間だが握りつぶされるような圧力が襲ってきた。

「いたた! ね、姉さんすごいな」

女騎士「力だけが自慢でね」

「言って紹介することはできっけど、その船が出るとは限んねぇぜ?」

女騎士「それは構わない。報酬も特にいらんよ」

「それって、姉さんに何の得もねぇと思うけど」

女騎士「胡散臭いだろう? ちょっとした性質(たち)みたいなもんだ」

調合士「この子は実力がある。雇ってみたらどうだね?」

一度も女騎士が戦ったところを見たことのない調合士が、さも当然のように言い切った。

「婆さんの目利きにゃ間違いねぇからな…。あぁ、その前にこの薬草はどうする婆さん?」

女騎士「私が買おう。この婆さんはどうせ買わんだろうしな」

金貨を妥当と思われる分、船乗りに手渡す。

「…姉さんは本当に何者なんで?」

女騎士「あるとこのお抱え冒険者だよ」

静かに笑いかけた女騎士に、船乗りはどう反応すればいいかわからない感じで、とりあえず笑い返した。

船乗りの口利きで、その出航する船の船長と引き合わせてくれることになった。待合として待たされた部屋は、デスクの上に雑然と資料が置かれ、客人を待たせる椅子はギシリと軋んだ。

「おう、あんたかい。海賊どもをとっちめてくれるってのは」

入ってきた船長と思われる男は、値踏みするように女騎士を見る。

女騎士「そうだ」

「力はあるみてぇだけど、そういった場数は?」

女騎士「乗せるための条件というなら、誰か腕利きと相手をさせればいい。なんなら複数でも構わないぞ」

その堂々とした振る舞いに、船長はペテンか本気か判断できなかった。

「ふん。大した自信だ。なら、腕を試させてもらう。自分の口から言ったことだ、問題ねぇな?」

女騎士「二言などない」

その場所に早く案内しろと、むしろ女騎士自身が催促する始末だった。

そういう経緯で、相手をすることになったのは三人。どれも船の上で鍛え上げられたいい体をしていた。

「それで、あんた名前は?」

女騎士「女騎士だ。それで、こいつらの相手をすればいいのか?」

「そういうこった。じゃあ、こいつから」

女騎士「まどろっこしい。三人同時に来い、それでも足りないぐらいだ」

その言葉を侮辱ととった三人は、明らかに女騎士に敵意の表情を向ける。もっとも女騎士は、気にすることもない。

「そうかい。じゃあ、始め!」

それこそ戦いはあっという間だった。先陣を切った男の顎と頬に左足が触れ、その後ろにいた男の腹部に右拳、顎に左肘が触れ、最後の男の首に女騎士の腕が絡まっていた。それは、数秒にも満たないうちに行われた模擬戦闘にもかかわらず、対峙した男達は間違いなく今自分をやられたと、認識させられた。

>>289の訂正

×それこそ戦いはあっという間だった。先陣を切った男の顎と頬に左足が触れ、その後ろにいた男の腹部に右拳、顎に左肘が触れ、最後の男の首に女騎士の腕が絡まっていた。それは、数秒にも満たないうちに行われた模擬戦闘にもかかわらず、対峙した男達は間違いなく今自分をやられたと、認識させられた。

○それこそ戦いはあっという間だった。先陣を切った男の顎と頬に左足が触れ、その後ろにいた男の腹部に右拳、顎に左肘が触れ、最後の男の首に女騎士の腕が絡まっていた。それは、数秒にも満たないうちに行われた模擬戦闘にもかかわらず、対峙した男達は間違いなく今自分はやられたと、認識させられた。

女騎士「で、どうだ? 雇う気は起きたか?」

首を絞める姿勢のまま、女騎士は唖然とする船長に声をかける。

「あ、あぁ。ま、まず何が起きたんだ…?」

「俺達は…やられました…」

「そ、そうか」

男達が、戦々恐々としている状態から、考えられないほど実力があると船長は判断することしかできなかった。

「あんた、本当に無名の冒険者なのかい?」

女騎士「この程度なら、私の知っているところでたくさんいる」

「はは、は。そうかい」

言っている意味が理解できず、船長は乾いた笑いしかできなかった。

女騎士「さてと、戦い慣れているとはいえ、我流だな。そこのお前、まず相手を殴りつける動作が間違ってる。体の型としてはこう動くべきだ」

船長が戸惑っているすきに、女騎士は模擬戦闘をした三人組に、わずかな間で気づけた欠点を指摘し、改善方法をレクチャーする。

女騎士「ざっとこんなものか。もちろん、船上の戦いならお前達の方が熟練者だろうが、こういう体の動かし方があることも知っておいた方がいい」

簡単にだが、改善点を教えられたことに満足した女騎士は微笑む。

女騎士「それでだ船長」

「あ、はい」

女騎士「私としても、雇ってもらえるのかどうかはこの場で決めていただきたい。なければ他所で、そんな仕事がないか聞かなければならないからな」

「いや、雇います! 雇わせてください!」

海賊のスパイなどいろいろ考えていた船長も、今の目の前で起きたことで吹き飛び、どこか強制されるようにそう言ってしまった。

素敵!抱いて!

>>293
メイド「女騎士様、たまにああ言われますよね」

女騎士「…おかげで反応に困る」

メイド「とりあえず、人気があるというのは良いことでしょう」

女騎士「そうだな」



現在帰省中。しばらくは余裕あれば更新な感じです

>>294
あー、おれも寄生虫~。
頑張ってねッ!

>>295
寄生してるのか…


さて本日から社会の歯車になるため帰ります

遊びすぎて身体がグダグダなので、再開は明日からです

船に同行する許可を得て、女騎士はそのことを姉へ報告しに宿に戻る。

女騎士「…なんだ?」

現在の宿はそれこそ客も店側も教養を満たす人間しかいない場所。雑然とした感じはなく、落ち着いた雰囲気が漂うそこが、騒がしかった。

素早く宿に戻ると人だかりができており、店の者に何が起きているか尋ねる。

「商人ギルドの会合がありまして、恐らくその関係かと」

宿の者は慎重に言葉を選んでそう答える。姉が反対派に会うという話を思い出した女騎士は、その中にいないかを確認するため、人垣を縫うようにしてその中心部分に向かった。

だが、その中心部分にいたのは考えているのとは、違う人物しかそこにいなかった。

「はん、だからおたくの国は例の交易路計画から外されるのさね」

「今はそれが関係あるのか!」

例の2人組と会っていた女と、まさしく商人といういでたちの男が中心になって口論をしている。

「さぁ、どうにも見かけない連中がウロウロしてるとなれば、最近ギルドで割を食ったやつを最初に疑うもんだろ?」

「それだけで我々が犯人だと? あの件で大々的に反対してる貴様らの方がよほどだろう!」

女騎士としては、この場を調停するために中に入るべきなのか。少し考えあぐねていた。

とりあえず空気読まずに「黒パン固ぇwww」ってはしゃげば良いと思うよ

>>299
女騎士「実はその台詞、序盤に言った以降は言ってなかったりする」

メイド「食事シーンは多くあるのですが、割といいところでのご飯ですからね」

女騎士「基本的に黒パンは、ざっくりいうと粉精製があまりよろしくない不純物が多いパンのことを指す。下級市民などがよく食べる代物だな」

メイド「そちらの世界では、ライ麦パンが該当ですかね。栄養素の関係は黒パンの方が実はいいということで、評価がまた変わったりしてますね」

女騎士「まぁ、たまにはネタではなくて真面目に解説してみたぞ」

メイド「あぁ、その認識はあったんですか」

女騎士「?」

「皆様、御機嫌よう」

そういいながらその輪の中心に歩いてきたのは、まぎれもなく姉の姿だった。

姉「何があったかと思いましたら、お二人ともこのような場所で口論とは、あまりよろしいことではありませんね」

「ふん、女狐が何のようだい」

姉「ふふ。何にしてもお二人が口にされていたことは、下手に皆様に知られるのはよろしいことではないかと、存じますよ」

そういいながら、姉は周囲に目配せすると、集まっていた人間達は、優雅に去っていく。残っていたのは、女騎士と人垣の後ろにいたであろう助手だけだった。

姉「それではマドラスの女提督様、会談いただける機会を設けていただきありがとうございます」

女提督「それで、今更何を話すことがあるってんだい」

姉「さぁ。お互い、お話をしなければわからないことも多々ございます。ではこちらでご用意したお部屋がございますので、向かいましょう」

反対派と話すから、というよりもかなりビリビリとした威圧感が二人から発せられる。女騎士は眉ひとつ動かさず、それを見ていたが、先ほど女提督と呼ばれていた商人は、先ほどの勇ましさはなく気圧され額から汗を流していた。

女提督「時間はあまり取れないよ」

姉「畏まりました。では向かいましょう」

そう言って、姉はその場所へ向かおうとする前に、顔だけ振り向いて女騎士に微笑んで、それから歩き出していった。

顔だけ180度振り向いて女騎士に微笑んで、それから歩き出していった。

妹キチ怖えよ

>>303-304

それただのホラーや!

>>302の訂正

×反対派と話すから、というよりもかなりビリビリとした威圧感が二人から発せられる。女騎士は眉ひとつ動かさず、それを見ていたが、先ほど女提督と呼ばれていた商人は、先ほどの勇ましさはなく気圧され額から汗を流していた。

○反対派と話すから、というよりもかなりビリビリとした威圧感が二人から発せられる。女騎士は眉ひとつ動かさず、それを見ていたが、先ほど女提督と呼ばれていた女と言い争っていた商人は、先ほどの勇ましさはなく気圧され額から汗を流していた。


女提督なのか、商人なのかっていう誤りやなぁ。

助手「さてと。女騎士、部屋に戻るか」

去っていく二人を見ていた女騎士に、ついて行っていなかった助手がそう声をかけた。

女騎士「助手殿はついていかれなくてよろしいのですか?」

助手「うん? あぁ、あの二人何かと因縁あっからな。渦中に突っ込む必要もあるまい?」

女騎士「因縁というのは?」

助手「それも姉(しゅにん)がいうようにこんな場所で話すのは、野暮ってことで。とりあえず、女騎士の部屋で聞かせる」

女騎士もその言葉に素直に従い、一緒に彼女が止まる部屋に歩いていく。

女騎士「二人が学友、ですか」

助手「そ。あぁ見えて女提督さんは才女、ウチの国に招待されてアカデミーで姉(しゅにん)と主席争いをした人ってわけだ。ただ、専攻が違ったから主席争いは間違いか」

女騎士「なるほど」

助手「詳しくは聞いてねぇが、会った時から犬猿の仲みてぇだぞ?」

いたずらっ子が話しちゃいけないことを聞かせるような笑みで、助手は話を続ける。

助手「その後も何かと因縁が続いてな。最新だと姉(しゅにん)がアドバイザーとして出席した、さっき話に出た交易路計画とか、有名なのは取扱いが危険とされた鉱石の輸出入禁止の案とか、顔を合わせると都度二人の舌戦という具合だな」

女騎士「私にはついていけない世界です」

俺もだと、わかりやすく面倒くさそうに両手を上げた。

女騎士「そんな関係であるとするなら、マドラスは説得しようとするだけ、時間の無駄のような気もします」

助手「あぁ、内に殴り合いたいわだかまりは互いにあるだろうけど、私情で動かないから意味はあるとは思う。と願う」

女騎士「二人きりの場合、歯止めがきかないということは…?」

助手「それは大丈夫じゃねぇかな。表だって戦闘(ケンカ)しあったってのは聞いたことはない」

なんというか、足元に危険物が転がっているような心境に、女騎士はなってしまった。

助手「そいや、お前さんも何かと動いてるんだろ?」

えぇと答えた後、話に聞いた海賊とその条件に合う船に傭兵として乗り込むことになったことを、女騎士は彼に伝えた。

乙!

>>310

助手「相変わらず無茶するね。しかし、悪天候を得意とする海賊か」

女騎士「何か覚えがあるのですか?」

助手「いいや。しかし、海賊とはいえ悪天候時を襲うのは危険が大きいだろ?」

女騎士「えぇ、私もそう思います」

いくら海に慣れた者だとしても、気分のように変わる海模様に、すべて適応できる船乗りも船も存在するとは、女騎士には思えなかった。

助手「女騎士はどう思う。俺としては少し匂う話だぞ」

女騎士「それを調べるための、密偵のような仕事ですから」

助手「密偵は相手を壊滅するようなことはしないけどな。もしかしたら、今回のことに絡んでるやつかもしれない、出来れば生け捕りにしてほしい」

女騎士「畏まりました」

助手「しかし、久しぶりにゆっくり会話できる機会があったと思ったら、その丁寧な話し方なのは寂しいな」

女騎士「申し訳ありません。ただ、やはり、立場というものがございます」

助手「昔、よく、遊んだな。姉(しゅにん)の後ろにいて、俺達についてきてたっけか」

女騎士「そうでしたね。あなたたちを困らせていたと思います」

姉と助手は、簡単に言うと幼馴染の間柄だった。何かと会う機会が多く、いつの間にかよく遊ぶようになっていた。そして、養子として大将軍の屋敷にやってきた女騎士は、姉にくっつく形で幼少期をよく3人で過ごした。

助手「困らせてたかな? そこらはあんまりよく覚えてない」

女騎士「そういってくれると助かります」

助手「しっかし、今でもお前さんが聖騎士やってるなんて、目の前にいても不思議で仕方ないわ」

実力が伴わないとか、そういうことではなく、可憐だった幼少期だけを覚えている彼には、女騎士がそういう立場になっているとは、想像ができるものでなかった。

乙!!

可憐だった少女時代kwsk
絵で!画で!jpgで!!

昔は可憐で今は豪傑
ラピュタのドーラみたいなもんか

>>314
!!

>>315
描けたら苦労せんわい!

>>316
うんまぁ、似たようなもんです。多分

女騎士「はい。今の時点でも歴代の聖騎士様達には、遠く及びません」

助手「あ~、そういうこと言いたいんじゃなくてな。ガキの頃一緒にいた時の記憶が強いからさ、まさにあの子がこんな風になるなんてというか」

女騎士「そうでしたか」

言葉にはしなかったが、助手はその歴代の聖騎士の中でも、1、2を争う実力があると、助手は思っている。

助手「(あの大将軍に勝るとも劣らない。そう言われているほどだからな)」

年を召したとはいえ、大将軍は大戦時に聖騎士の始まりであるグェンティンという騎士の生まれ変わりとさえ言われる活躍を見せた。女騎士も当然、その大将軍に迫る実力があると周囲は考えている以上、聖騎士の中で末席にいるような存在ではなかった。

そう思えるだけに、やはり助手の中で色濃く残っている子供のころの記憶が、強く違和感を感じさせる原因になってしまっている。

助手「そうだ。海賊の件、油断するな。いくらお前さんとはいえ、不慣れな海上戦になるんだ。心しておけよ?」

女騎士「はい。揺れる船の上ですからね」

助手「まぁ、揺れに逆らおうとしないほうが、うまくやれるだろ。もっとも、こんなアドバイスは、俺より場数踏んだお前にゃ、不要か」

女騎士「もったいないお言葉です」

それに社交辞令はなく、揺れに影響されないよう、どう動くか考えていた彼女には、揺れを利用することは思いついていなかった。

助手「おっと、そろそろ話も終わるな。俺はそろそろ行くわ」

女騎士「はい、お気をつけて」

彼女が敬礼をすると、苦笑いしながら軽い敬礼を助手は返し、そのまま部屋を出ていった。

その後、会談が終わった姉に、海賊の件(不機嫌そうだったので早めに切り上げた)を話して、女騎士は再度都市に出た。

理由はその悪天候を得意とする海賊を調査するためだ。最初から海賊としてやっていく、というのは山賊とは違ってできるものではない。船や海図、そして略奪する相手の情報、それらがなければ彼らはやっていくのは難しい。

つまり、元々は商家や軍隊といった、船にかかわることができる。あるいは手にすることができる人間だったのであれば、それを知る者は当然いる。今回の場合であれば悪天候を得意とした船乗り達はいなかったか、という部分で相手に迫れる可能性がある。

女騎士「(もっとも、他国の海賊を装った連中、という部分もあり得る)」

安定した国際情勢を乱す行為だが、国の指示で動いている海賊がいることもまた、事実だ。

港に向かうと、すでに例の審査の話が出回っていたのか、船乗り達は快く考えられることを話してくれた。

「前、難破しそうな嵐の中を普通にやってきた商船あったよな」

「あー。どこの国だったっけなー。でもいたな」

「考えてみりゃあ、あんな芸当できる奴らはそうそういねぇ。そいつらが海賊に落ちちまったってのか?」

「あの腕ならどこでもやってけるだろうになぁ」

思いつくままに船乗り達は話す。それらしい情報は商家の連中ということだけだったが、それでも調べる対象を絞れたことには変わりない。女騎士は船乗り達に礼を言い、港を後にした。

揺れを利用する
  \  __|  /

   _ (m) _ピコーン
      |ミ|
     ('A`)    体技:酔拳

     ノヽノヽ
       くく

>>322
神様と英雄にケンカを売ろう。

最近どこかの商家が落ちぶれなかったか、耳の早いであろう酒場の店主に聞いて回る。商人ギルドの伝手もあるにはあったが、あくまで今は一介の冒険者というスタンスだから、そういうことで目立った動きは避けたい。

「あ、あんたが噂の冒険者さんかい?」

女騎士「噂? どんな噂があるんだ?」

「屈強な船乗りを片手でひねったり、海賊を大立ち回りで掴まえたとかっての。お前さんでしょ」

女騎士「尾ひれがついてるだけだ。船の用心棒の審査で船乗り相手にして、海賊は酔っぱらって絡んできた相手がそうだったってだけだよ」

そう当人は思っているのだが、考えているよりも目立ってしまっていることのが現状だった。

女騎士「(どうしてこうなるんだかなぁ)」

心の中でぼやきながら、店主と話を始めた。

「どんな時でも荷物を運んできた商家の連中かい?」

女騎士「あぁ、それぐらいしか情報はないんだが、何か知ってないか」

「どんなに船が荒れてようが、荷物を持ってくるっていったら…、そうだな。マドラスみてぇに船で飯食ってる国の奴らなら、出来て不思議じゃねぇけどな?」

女騎士「そうか…。マドラスで最近、有名な商家が潰れたって話は?」

「ないねー。第一マドラスは、国で商売を管理してるからな。マドラス自体が商家そのものみたいなもんだし、どこかだけ潰れるなんてのは考えづらいね」

言い換えれば、マドラスで商船団が離反するようなことがあれば、店主達が知らない訳がない大きな話になるということだった。

女騎士「(となると、マドラスと同じ技量があった連中を探せば、正体も見えるかもしれねぇか)」

女騎士「助かったよマスター、情報料は置いておく」

「いいよ、ここらへんでなら誰でも知ってるような話だからね」

女騎士「じゃあ、何か一杯出してくれ」

「はいよ。少し待っててくれよな」

すぐに別の店に移動してもよかったが、少し喉が渇いたのを思い出して、少しだけこの店に留まることにした。

店内は昼の書き入れ時が過ぎたこともあって、閑散としている。だらだらと世間話をしている人間がまばらにいるぐらいのものだ。

「はい、お待ちどう」

女騎士「どうも」

出されたホフ酒は程よく冷えており、一息で半分ほど飲んだ女騎士の喉を潤してくれた。

酒飲みたくなってきた

「保父酒冷てぇwwwwww」

>>327
女騎士「そういうと>>1は喜ぶぞ」

メイド「五感に訴えるものを書けるのが良い書き物と聞いてから、意識してますからね」

女騎士「だから割合、食事と睡眠のシーンが多かったり」

メイド「訴えるのはいいですが、直接的すぎるのは安直ですよね」

女騎士「言ってやるな」


>>328
女騎士「冷たいホフ酒はいい。がんがん飲める」

メイド「ここの一家は飲みすぎです」

女騎士「メイドは飲めないよな」

メイド「おいしくないですもん」

女騎士「兄様も同じこと言ってたなぁ」


ちと、野暮用で明後日ぐらいまで執筆の時間取れないやも。とりあえずコメ返だけ

飲めないメイドちゃんには俺特製の野菜ジュース(睡眠薬入)をあげよう

>>330
女騎士「友達を拉致しようとは良い度胸だな? お前、こいつを連れていけ、後で直々に尋問する」

ヒィヤッハァァアァァァァァ!!!
女騎士ちゃんから尋問とかなんて御褒美なんだぁぁぉぉぉぁ

>>332
女騎士「といって悦んだ輩がいたのですが…、どうすればよかったのでしょうか」

兄「…なんで俺に聞くんだ?」

女騎士「姉様にお伺いしましたら、そういうのは殿方に聞くべきと進言いただきましたものですから」

兄「……、そいつが特殊としか言えない。お前は詳しく知らなくていいぞ」

女騎士「そうですか…」

ホフ酒を片手に店内の静かな喧騒を眺めていた女騎士は、少しの間でもこうやってのんびりしたのは何時ぐらいだろうと考えていた。

医者に無茶をしすぎだと忠告されても、無理が効く体に甘えてやってきたが、そのうちその無理も効かなくなる時も来るのだろうか。それを考えると、屋敷で眠る弟の眠る姿が目に映った。その状態で残ったホフ酒を飲み干したが、先ほどと打って変わり味気ないものになっていた。

女騎士は店主にもう一度礼を言って店を出る。まだ、目には弟の姿が焼き付いていたが、今は海賊の件を解決するのが先決と、言い聞かせて都市内を歩き回り情報を探り続けた。

そうしている内に、この交易都市アレクリアで迎える何度目かの夕日が見えた。王都で見る夕日も綺麗だが、交易都市アレクリアで見る夕日はそれとは違い、水平線の向こう、海に最後の輝きを与えながら沈んでいくそれは、また別の美しさがあった。

女騎士「(うん? 太陽が一瞬緑色になったような)」

眺めていた夕日が沈む瞬間、緑色になったように彼女は見えた。目の疲れかとこすって周囲を見回すと、見える色彩に何も変化はない。気のせいだったかと首をかしげた。

その動作のおかげか、その先に例のマドラスの配下である二人組が、歩いているのが目に入った。

その一瞬の変色、幻覚系の罠でも張ってあったか?

>>336
ま、それは追々ね

二人組が誰かを追っているという様子はなく、都市の中をどこかに向かって歩いているという様子だった。

女騎士「(情報もある程度は集まったから、とりあえず2人組を追ってみるか)」

人混みの中を、景色の一部分になるよう意識しながら、視線を向けないように女騎士は二人組を追いかける。状況からして女提督とまた接触する場所に向かっているのかと、彼女は予想を立てる。

ただ、その割には二人に警戒した様子はなく、人混みの中を歩いている。誰にも見つからないよう夜の倉庫で話していたことを思うと、女提督に会う予定ではないのかもしれない。

女騎士「(それなりに金はもらっていると思うんだが、そうでもないのか?)」

管理などを含めしっかりしている店はその分、メニューがやや高い設定になりがちだ。言い換えればある程度の妥協をしている店ならそれなりの価格ということになる。

立地なんかを含めて、細かな部分は当然いろいろあるが、今見えている店は少なくともその後者の中でも更に品がいいようには女騎士には見えなかった。

ttp://drazuli.com/upimg/file7584.jpg

>>340
メイド「…いつの間にお店を?」

女騎士「覚えはないぞ?」

メイド「そうでしょうね。女騎士様に経営の手腕があるとは思えません」

女騎士「うむ。体を動かしている方が気楽だ」

>>339の訂正

そして二人組は、少し外れにある外観からしても、あまり品がいいとは言えない店に入っていった。

女騎士「(それなりに金はもらっていると思うんだが、そうでもないのか?)」

管理などを含めしっかりしている店はその分、メニューがやや高い設定になりがちだ。言い換えればある程度の妥協をしている店ならそれなりの価格ということになる。

立地なんかを含めて、細かな部分は当然いろいろあるが、今見えている店は少なくともその後者の中でも更に品がいいようには女騎士には見えなかった。

2人組が入ってから、少しだけ間をおいて店内に入る。飲食店のようだが、薄暗い店内の中には、確実に素性がよろしいとはいい難い客層がだった。市民だとしてもここに来るのは、少なくともスラム街のような貧民に当たる人間であることを想像させた。

女騎士は2人組が視界に入る位置のカウンターに座り、店主に適当な酒とつまみを頼んだ。2人はすでに注文を済ませているのか、雑談している様子が見て取れた。

女騎士「(純粋に食事というところか)」

店主から出された品物に料金を払い、受け取る。あまり質がいいものとは思えない物だが、最低限の味は保証されていた。少し良いものに慣らされた女騎士の舌には、少し受け付けるまでに時間がかかった。

女騎士「(昔はこれよりもひどいものを、食ってきたのにな)」

気付かないうちに馴染んでいた贅沢に対して、落胆とも戸惑いともいえる気分を別に味わいながら、冒険者風とはいえ、この場ではやや身ぎれいともいえる女騎士は浮いているようにも見えたが、貧民でも受け入れる場所だからか、それさえも違和感なく店内の空気に彼女は包みこまれていた。

今日はちょっと酒呑みたい気分だから、更新なしです。といっても、他に比べて安定更新じゃないか。

今のところ、他2作品は2スレもいく予定無いから、それが終わったら3作品にして集中する予定


新作書きたい病が出なければね…

もう一個のスレってあそこかぁ
酉は単なる識別で作品だけで見てるから気が付かなかった

>>345
女騎士「息抜きにホフ酒を煽るといろいろ捗るぞ」

メイド「飲んだくれてないで仕事(執筆)して下さい」

>>346
どこだろう。まぁ、一応酉から追えるでや。

>>347
酒飲んだらもうお仕事終了なんだよなぁ…。そしてメイドが冷たい。

店の中は静かさと喧騒な部分が混ざる。ある一角ではうるさい手前の盛り上がりがあり、ある一角ではただ淡々と食事をする静けさがある。女騎士はその2つが共存している状況が、たまらなく好きだ。なぜかと言われれば彼女はすぐに答えられないものの、きっと孤児だった幼少の頃と似ているからだろう。

静かな路地裏の片隅で、騒がしい表通りを眺めていた、あの頃と。

女騎士「親父、酒追加だ」

彼女自身も懐かしさの理由に検討がついて、忘れるために酒を追加した。とはいえ、彼女が記憶を失うまでの量となると、即座にこの店で用意できるかは怪しいものではある。

2人組の食事は終わったようだが、まだ談笑が続いている。女騎士は意識を集中して聞き取れた会話の内容からは、本当にただの他愛のない会話だった。

女騎士「(ただの食事、か)」

マドラスの中堅、それも荒事専門とあっても常時気を張っているかと言われれば、彼女同様そうではないだろう。

そういう意味では、今の彼らはそう言った状態ではなく、普段の警戒も切れているということだ。だからといって、こんな場所でルカソンヌの商人を見張っていた件を軽々しく話す訳はない。

女騎士「(……、せっかく都合よく尾行してるんだ。何かを掴めるまでは、油断なくいこう)」

そう考えながら、追加して渡された酒を一息で飲み干し、更に追加した。

女騎士「ふぅ~…」

女騎士が飲んだ酒のジョッキが並び、店の中も閑散としてきた頃、2人組はついに店を出ることはなくそのまま酔いつぶれていた。彼女が軽く周りを見渡すと、自分以外大体酔いつぶれた客しかいない状態だった。

「酔いつぶれてないのは久しぶりだな」

暇になったからか、店主はそう言って女騎士に声をかける。

女騎士「あまり酔えない性質(たち)なんだ」

「そりゃかわいそうに。ウチは金さえ払ってもらってくれりゃ、いくらでも出すよ」

それじゃあもう一杯貰おうかと女騎士が言うと、良い顔で店主はあいよと答えた。

それから更に夜が深まるころには、カウンターにジョッキが並び、入ってきた頃と様子が変わらずに店主と談笑している女騎士とそれ以外の酔いつぶれた客だけが残った。

女騎士「ここはいつもこんな感じなのか?」

「そうだな。前払いだから別に寝てていいんだが、朝になったら蹴り起こすだけよ」

女騎士「なんだったら、同じ宿に泊まってるやつがいる。あたしが連れて行こうか?」

「好きにしてくれ。何があっても俺は知らんがね」

店主の了承を得て、チップ代わりの金を置いて2人組のうち長身の男を左脇に、小柄な男を右肩に乗せて店を出て行った。それを見ていた店主は当然、口を開けて声も出せずに見ることしかできなかった。

>>352のとりあえず訂正。

×店主の了承を得て、チップ代わりの金を置いて2人組のうち長身の男を左脇に、小柄な男を右肩に乗せて店を出て行った。それを見ていた店主は当然、口を開けて声も出せずに見ることしかできなかった。

○女騎士は店主の了承を得てチップ代わりの金を置き、2人組のうち長身の男を左脇に、小柄な男を右肩に乗せて店を出て行った。それを見ていた店主は当然、口を開けて声も出せずに見ることしかできなかった。

尾行 → Wお持ち帰り

大胆すぎるだろwwwwww

検討と見当って使い分けない人やたら多いイメージ

確率と確立みたいなもんかね

信じて送り出した強面の二人が
酔い潰れてる所を女の武器(腕力)で誘拐された

なんだこれは……なんなんだ

>>354 >>357
女騎士「そんなに不思議か?」

メイド「女騎士様に聞きたいこととして」

女騎士「なんだ?」

メイド「忍ぶ意味はわかりますか?」

女騎士「わかっているが、てっとり早いと思ったからな」

メイド「それがわかってないというのです」

女騎士「?」


>>355-356
文章書き直すときに、気付かずやっちまったい。まぁ、素で勘違いしてる時もあるけども。


というわけで>>349の訂正。

×彼女自身も懐かしさの理由に検討がついて、忘れるために酒を追加した。とはいえ、彼女が記憶を失うまでの量となると、即座にこの店で用意できるかは怪しいものではある。

○彼女自身も懐かしさの理由に見当がついて、忘れるために酒を追加した。とはいえ、彼女が記憶を失うまでの量となると、即座にこの店で用意できるかは怪しいものではある。

女騎士の性欲で拉致された二人組みの貞操がピンチとな

そのまま2人を担いで、以前確認していた彼らが泊まる宿まで運び、事情を説明してそのまま部屋の中に入る。それぞれを布団の上で寝かせた後、酩酊で眠っているのを確認して室内を簡単に物色する。

女騎士「(まぁ、すぐに見つかるような位置にそういった部類のものは置かないか)」

それに、女騎士が泊まる宿よりもグレードが落ちる。店員の質が悪いということではないが、誰かがひっそり忍び込むこともできるだろう。

ある程度の手練れがそういった部分をおろそかにするとは思えない。とはいえ。

「姐さん、それは、あわわ…ぐぅ」

「姐御ちったぁ話を…むにゃ」

こうまで無防備な寝姿を見せられると、あの尾行していた時の2人には彼女は見えなくなってしまっていた。

「ったぁ、頭が…」

「飲みすぎたぁ…」

しばらく待っていると、2人が目を覚まして体を起こす。当然、女騎士に気付いて慣れた獲物を手に取ろうとするが、部屋の隅に置かれていることに気づく。

女騎士「そう警戒するな。せっかく部屋まで運んでやったんだぞ?」

「その細腕でか?」

女騎士「そう、この細腕でだ。なんならあんたの自慢の筋肉で試してみるか?」

飄々とした女騎士の様子に目的がつかめず、2人は彼女から視線を外せないでいた。

女騎士「さて、このままではらちが明かない。私は女騎士という、お前らは?」

「女騎士…、まさか!」

「知ってんのか?」

「お前は、この国の聖騎士ぐらい把握しておけ!」

それを聞いた筋骨隆々の男は、ポカンとすることしかできなかった。

「しかしよ、口から出まかせってのも」

女騎士「心配なら、ここに訪れている姉様から聞けばいい。私はあの方の義妹だからな」

「…見え見えのハッタリ…、じゃあねぇのか?」

「わずかに覚えている、少なくともこの方が俺達を運んだのは事実だ」

長身の男が身なりを正してから、こう切り出した。

剣士「私の名は剣士、知らぬうちとはいえ、見るに耐えない醜態をさらしましたことを、平にお許しを」

女騎士「酒の場でそんなことを気にしたら呑めない。問題はない」

「あー、なんか堅苦しいぜ」

剣士「いいからお前も名乗れ」

豪快に酒臭いため息を撒き散らしてから。

拳闘士「おりゃあ、拳闘士。まぁ、獲物で斧は使うが、特技は素手だ」

女騎士「そうか」

拳闘士「それで、国の象徴ともいえる聖騎士様が俺らに何のようで?」

女騎士「ルカソンヌの商人を尾行していた件だな」

当然ではあったが、2人が一気に緊張したことを女騎士は感じ取った。

女騎士「現状、商人ギルドでは新しい船舶技術においていざこざが起きているのは聞いている。本来介入すべきことではないが、過ぎた事態が起きようとするなら、未然に防ぐ義務がある」

拳闘士「どうする?」

剣士「どうするもない。いや、むしろ聖騎士様であれば都合がいいじゃないか」

拳闘士「それもそうだな」

考えていたやり取りとは違い、女騎士は内心疑問に思う。

剣士「実は、ルカソンヌの商人様の暗殺計画が出ているのです」

女騎士「なに?」

拳闘士「そんで、俺達はその護衛で尾行しててよ。とはいえ、商人ギルドのその件で対立してる商家同士だってもんだから、表ざたにやるわけにいかなくてな」

剣士「ゆえに、あのような形を。姐さ…、女提督様も可能な限り内密という指示もございましたもので」

あの時、敵意がなかったことに女騎士は合点がいった。

女騎士「しかし、なぜその計画を?」

剣士「女提督様からお教えいただけてないので、お話ししようがないのです。ただ、あの様子からして」

拳闘士「あぁ、間違いねぇ。結構ヤバ目のやつだ。でもなぁ、ルカソンヌの連中もつええ奴らだし、問題ねぇ気も…」

剣士「だが、内部に内通者がいれば…、この警護(こと)自体意味がない」

2人の様子からしても嘘があるようには見えない。

女騎士「(商人ギルドのいさかい、暗殺計画、海賊騒ぎ…、また面倒な組み合わせになろうってのか?)」

何かがうごめいている。この件だけではなく、何か事態を複雑にしようとする存在がいるような気がして、女騎士は仕方なかった。

>>359
メイド「女騎士様はそういうのあるんですか?」

女騎士「う~ん。イマイチわからんが、そうだな」

メイド「なんですか?」

女騎士「父様達になら、いくら抱かれても構わないぞ?」

メイド「ノーコメントで」

女騎士「?」

女騎士ちゃんは親子丼が好きなんだな

体面はともかく血のつながりはないしな

女騎士ちゃんは老け専かー

父様ではなく父様『達』
ここは重要

男「シェイク美味しい?」

幼馴染「あげないよ」ジュルル

男「いやいいんだけど…」

幼馴染「…欲しくないの?」

男「じゃあ、一口頂戴」

幼馴染「いいよー」

男「……うん、美味しい」チュー

幼馴染「シェイクって、思ったより種類がないよね」

男「季節限定の味はいろいろあるけど、常にあるのはそうだね」

幼馴染「でも、そういうのってチャレンジャーな味だから、結局無難な味になっちゃうよ」

男「幼姉の言う通りだね」

>>399は素で投稿するとこ間違えただけだから気にしないでな。

>>399 か、遠いな

ん?安価か?流石に遠いけど協力するか
ksk

おまいらww もう勘弁してやれwww

>>399まで埋めないとメイドちゃんがデレないと聞いて

メイドちゃんが微笑みかけてくれるなら何を懸けてでも協力しよう

>365

>>365-368
親子丼というよりかは、大将軍の家に忠誠というか妄信してるからね。だから、その家の者ならいつでも構わないという感じ

>>371-375
うん、安価でも何でもないから、埋めてもメイドはデレません。そもそもデレるか知りません。


しかし、このSSで誤書き込み多すぎだー。

女騎士「なるほど、理解した。2人には悪いが、うのみにはできない。裏取りができ次第、この件動かさせてもらおう」

拳闘士「そんなに俺達は、信用ねぇかねぇ?」

剣士「いえるのは、その相手を我々が尾行していたという事実は変わらない。通常、良いことではないからな」

拳闘士「あー、体(てい)のいい話かもしんねぇと見えるわけか」

その意味を理解した拳闘士は理解できたように頷く。

女騎士「一番早そうなのは、女提督殿にお会いすることか」

拳闘士「いや、できりゃあ姉御に話は避けてほしい」

剣士「ご存知かと思うが、我々は女提督様の下で動いている身。下手に話すなと言われたことが、あの方に耳に入ると、その、立場が」

立場、とは言っているが、あの夜倉庫で見たあのどやされることを避けたいのだろうなと、女騎士は感じた。

女騎士「なるほど了解した、ならば独自に追わせてもらうことになるが、構わないか?」

剣士「いえ、お願いしたいくらいのものです。よろしくお願いいたします」

拳闘士「しっかし、聖騎士様がついてくれるなんて、百人力じゃねぇか!」

剣士「うむ、こちらも人が足りず、暗殺計画を立てた者を追うのに、人員はいくらいてもいいからな」

ここのところ、そう言った部分でかかった負担が抜けたのか、2人からわずかに弛緩した空気が流れる。

女騎士「そうそう、2人についでに聞きたいことがある」

剣士「なんなりと」

女騎士「最近、悪天候の中でも容易に貨物を運ぶことができた商家が、落ちぶれたという話はないか?」

拳闘士「あーん。似たような話はいろいろあっからなぁ。思い当んのは、ん~」

悩む拳闘士と同様、剣士も同じように心当たりを探すような仕草をしていた。

剣士「申し訳ないのですが、思い当る件はありませんね」

拳闘士「お前がないってなら俺もねーぜ」

女騎士「そうか、つまらないことを聞いた」

拳闘士「あ、聖騎士様もしかして例の海賊についてですかい?」

そうだと彼女が答えると、2人は顔を見合わせた後。

剣士「その件、考えられるのはこの国に敵対している国家の新造船ではないか、という噂があります」

女騎士「興味深い話だ。聞かせてくれ」

剣士「そいつは、この騒動の前からこの周辺を暴れまわっている連中です。同じように、天候の悪い時を狙って襲撃してきていました」

拳闘士「けど、更に悪天候な時でも襲撃してくるようになってよ。元々私掠船みたいな奴らだろって言われてたから、実験がてら暴れてんじゃねぇかって」

もしそれが事実だとすれば、国際事情もある程度懸念しなければいけない事態になる。

女騎士「少々面倒な事態になりそうだな」

拳闘士「噂だけど、本当なら厄介なことにならぁな」

剣士「それだけに、商人ギルドもうかつに手が付けられない状態ですね」

これもまた、女提督の悩みの種なのだろう。2人ともそれ絡みで何かあったのか、少しだけ渋い顔をしている。

女騎士「だがまぁ、それを知らずに一介の冒険者が相手取って捕らえただけなら、大事にはならんだろう」

剣士「今、騎士の恰好をされていないのは、偽装のためですか?」

女騎士「たまたまだ。姉様がこちらに来られるので、護衛としてついてきたが、聖騎士としては来ていない。まぁ、プライベートだ」

拳闘士「プライベートでこういうことに首突っ込む訳ですかい。物好きという噂は本当だったみてえで」

少し、フランクすぎる物言いに剣士は拳闘士の頭をはたく。

拳闘士「間違いは言ってねえだろ」

剣士「そういう問題ではない」

どうしてお前はそう考慮が足りないんだと、剣士は付け足した。

女騎士「私は気にする方ではない。公の場でもないからな」

拳闘士「お、やっぱ聖騎士様は話がわかっていいねぇ。どっかの誰かさんとは大違いだぜ」

剣士「はぁ…。では聖騎士様、ルカソンヌの件どうかご内密に」

女騎士「わかっている。言うまでもないが2人も慎重にな」

対峙した感覚でおおよその2人の実力を理解して、女騎士は言う。

拳闘士「できりゃあ、表だって大暴れしてぇけどなぁ」

女騎士「そうだな、私もそちらの方が性に合う」

拳闘士「俺、聖騎士様といい酒飲めるな、間違いねぇ」

剣士「あんまりこいつを調子にのらせないでいただけると…」

俺は聖騎士様が気に入ったぜという言葉に、また剣士は拳闘士の頭をはたいた。

女騎士「聞きたかった要件はそれだけだ。もし、何かあれば私が止まっている宿に来るといい。店の者にもそう伝えておく」

剣士「お心遣い感謝いたします…。聖騎士様もお気をつけて」

拳闘士「いらねぇ心配だと思うけどなぁ」

女騎士「ははは、そうかもしれんな。それではな」

女騎士はそのまま外に出てから、部屋に残った2人はまだ残っている酒の余韻か。近くにあったベッドや椅子に腰かけた。

拳闘士「ありゃあ、間違いなく俺達よりつええぜ」

剣士「そうだな。聖騎士という称号の凄さを、まざまざ見せつけられた」

女騎士が2人の実力を理解したのとは別に、2人は彼女の実力を理解させられた。

剣士「お前が気に障りそうなことばかり言うから、気が気ではなかったぞ」

拳闘士「わりぃわりぃ、どうも間が怖くてよ。結果いいじゃねぇか、話わかる人ってのはわかって、手ぇ貸してくれんの、間違いねぇだろ」

剣士「……そうだな。噂通り実直な方なようだ」

自分達だけで重要人物を秘密裏に護衛する、そういうプレッシャーを感じ続けていた2人にとって、思ってもいなかった聖騎士の協力は、その理解させられた実力もあって、少しだけ心に平穏を与えている。

>>383の訂正

×女騎士はそのまま外に出てから、部屋に残った2人はまだ残っている酒の余韻か。近くにあったベッドや椅子に腰かけた。

○女騎士がそのまま外に出てから、部屋に残った2人はまだ残っている酒の余韻か。近くにあったベッドや椅子に腰かけた。

さて、申し訳ないのですが、少し明後日まではちょっと筆を止めます。別に何があったと言う訳ではないのですが、
書こうとした時点で、どうにも筆が乗らないというか。まぁ、ざっくりいうとから回ってる感じ。
(筆に乗らないのはこれだけじゃなくて、書いてるもの全般)

と、そんな訳で調子を戻すために少し休憩とさせていただきます。まぁ、この作品は更新遅くなりがちで
あまり影響ないかもですが。コメ返ぐらいはします。

季節の物でも食べよう

>>386
焼き芋食べたい


さて、書かないまでも今までの流れ読み返してたり、設定確認してたりしてましたが、
ぼちぼちと再開しますわ。

まぁ、今日はまだ書かんがの。

メイドちゃんと焼き芋アツアツハフハフしながらいちゃこらしたい

メイド「焼き芋です」ホカホカ

女騎士「うん、うまいな」ハフハフ

メイド「東の方で取れる、甘い芋だそうです」アチチ

女騎士「メイドが味付けしたんじゃないのか?」

メイド「違います。焼いただけですよ」

女騎士「不思議なイモだな…」

メイド「美味しいですね」モグモグ

女騎士「うん」モグモグ

2人組の目的がわかり―もちろん真実かは別として―今後すべきことがまとめやすくなった。そのことに女騎士は少しだけ気分を良くしている。

女騎士「(しかし、そろそろ寝なければならないか)」

すでに眠らず夜が明け、彼女は徹夜状態であるものの、疲れは感じてはいなかった。このまま一日また活動を続けていいかと考えていたもの、近く海賊とやりあうことを思えば、身体についても万全の体制をとるのが重要。そういう結論を下した。

女騎士「(そういえば、姉様にいつ出るか言っていなかったな)」

不機嫌そうな様子で詳しく話せてなかったことを思い出し、眠る前の報告がてらと宿へ戻る。

昼夜逆転状態だと時間的には十分体を休めてても辛いんだよね
夜勤平気な人だと違うのかしら?

>>391
どうなんだろ。夜勤時代はそこまで辛かったことはなかったけど。

姉「そう、海賊狩りにいくのねぇ」

女騎士「はい。早ければ明日には護衛に当たる予定です」

姉「貴方としては、天候が悪くなって賊が来る方が望みかしらねぇ」

女騎士「それが目的で乗船いたしますから」

姉は不機嫌な様子はなく、いつもの穏やかな微笑みをたたえて女騎士を見ている。

女騎士「ただ、何も相談しないまま決めましたことは、申し訳ございません」

姉「あら、何も問題ないわぁ。だって、女騎士ちゃんは自由行動中ですものぉ」

女騎士「そう言っていただけると助かります」

会話の間、例の二人組の話を姉に話すべきかどうか、浮かんでは消え女騎士はどこか心ここにあらずな状態だった。

姉「……何か悩みごとかしらぁ?」

世話をしてきた可愛い妹の、そんな様子を見逃すほど姉は甘い人物ではない。

女騎士「えーと。その…」

姉「私に言えないことがあるなんて、姉さんは悲しいわぁ」

女騎士「あ、いや、言うべきかどうか考えていただけでして」

その言葉に姉は相槌をする訳でもなく、ただいつもの微笑みを女騎士に向ける。それは当然、無言のプレッシャーとなって女騎士を襲い、嫌な汗が噴き出してくる。

女騎士「い、言います。女提督殿がらみなので言うべきか悩んでいたのですが…」

姉「えぇ、それで?」

女騎士「その部下から聞き出したことですが、ルカソンヌの商人殿の命を狙われている、との話を聞きました」

なるほどねぇと言いながら、紅茶をの入ったカップを手に取りすする姉だったが、その声は先ほどの穏やかなものとは違っていた。

姉「それは真実だと、女騎士ちゃんは思ってるの?」

女騎士「いえ、まだそうだと決まった情報はありません。ただ、秘密裏に手練れである2人組を護衛に手配をしているのですから、多少の信憑性はあると思います」

姉「なるほどねぇ。でも、それだけなら私に言いづらいことなのかしらぁ?」

女騎士「その2人組が、出来れば女提督にそのことを問うのは止めてくれと言われたものですから。その、2人がバラしたとあの方が知れば、恐らく詰められるかと思います」

倉庫の出来事を見るに、あれ以上に烈火で女提督は怒るだろう。その姿が、女騎士にはありありと想像できた。

姉「そう。そういうことなら仕方ないわねぇ」

女騎士「あ、姉様に対して隠したかったわけではないのですよ。けっして」

姉「大丈夫よぉ。女騎士ちゃんが優しいというだけの話だものぉ」

いつもの調子に戻る姉の様子を見て、女騎士は嬉しそうに微笑む。

姉「とはいえ、きな臭いことに変わりないわねぇ」

女騎士「そうですね。彼ら以外にも店の者が商人殿の側にいるとはいえ、どのような手段を使ってくるのか。いえ、もとよりその相手は、という状況です」

姉「私も商人様に、そういうことを仕向けそうな相手を探っておくわぁ。もちろん、彼女に気取られない程度にねぇ」

女騎士「はい、よろしくお願いいたします」

やるべきことがはっきりしているだけ、宗教都市ディルムンに比べれば、今回はマシかもしれないなと、ぼんやりと女騎士は思う。あちらの件は、首謀者が死亡で事件を終了したものの、間違いなくそれ以外の存在が、その首謀者ロドマを操る形でいたはずだ。

姉「どうしたのぉ、難しい顔をしてぇ?」

女騎士「あ、申し訳ございません。寝ていませんで、それが原因かもしれません。

姉「そう、じゃあ早くおやすみなさい」

女騎士「はい、そうさせていただきます」

それ以上深く考えるのも、面倒になった女騎士はその言葉に甘えて自分用の部屋に戻る。簡単に眠るための身支度を整えた後、ベッドに飛び込んで軽くあくびをして、瞼を閉じた。

翌朝、女騎士が港につくと船乗り達が慌ただしく荷を積み入れたり、帆の状態を確認したりと、出航の準備を慌ただしく進めているところだった。出航の予定にずれはなく、今日出発で間違いはなさそうだった。

船を眺めていると、彼女がいることに気づいた船乗りが声をかけてきた。今回の船に乗る用心棒かと聞かれ、そうだと答えると船長が船室の船長室で待っていると言伝を受け、船に乗り込んだ。

船乗り達に場所を聞きながら船長室にたどり着き、ノックと共に中に入ると、海図を確認している船長の姿があった。

「あ、女騎士さん! お待ちしてましたよ!」

女騎士「敬称はいらない。所詮雇われだからな」

「いえいえいえ、女騎士さんの力があればこちらも百人力ですからなぁ!」

審査の時とは打って変わっての態度に、内心呆れてはいたものの。

「わしら船乗りとって、海賊は食い扶持つぶし。しかも、取られるだけならまだしも、部下を殺しやがる。それに対応できるってだけ、ありがたいもんでさあ」

その言葉を聞いて、少しだけ納得してしまった女騎士の姿があった。

女騎士「出来れば、航海日程を確認したい」

船長はその質問に答える。近隣の島への荷のやり取りが主らしく、航海期間も短い5日程度ということ。ただ、その近隣に例の悪天候時に現れる海賊も出没しているため、襲ってくる可能性は十分にあるとのこと。

女騎士「船長には悪いが、襲われてそいつらを拿捕できるといいのだが」

「えぇ、えぇ、積み荷と船乗り達に何もなければ、こちらは一向にそうなっても構いませんよ」

女騎士「(さらっと難題を言ったな)」

そればかりは彼女自身約束はできないことだ。自分だけの身、あるいは1人2人なら守れる自信はあるが、大多数でしかも敵も大多数なら、約束は一切できないことだ。

もちろん、可能な範囲は応えるつもりではあるが、船長が自分のことを過度に期待していることは、少し気がかりだった。

女騎士「(船上の戦いは、そう多い経験ではないからな)」

本来の動きはできない可能性がある。早いうちに船の上での身体の動かし方を慣らしておかなければいけないと、彼女は考えた。

反復横飛びで練習しよう

メイドデレタイムきたな

>>399
女騎士「こうだろうか」スッスッスッスッ

メイド「そのようです。1分で何回やるのかを計るみたいですよ」

女騎士「そうなんだな」スッスッスッスッ

メイド「いつまでやってるんですか?」

女騎士「計ってくれてるんじゃないのか?」スッスッスッスッ

メイド「計る必要ないじゃないですか。女騎士様なら」

女騎士「むぅ」ピタッ


>>400
メイド「デレる以前に出番が今回のお話だとなさそうですからね」

女騎士「メイドは出番にうるさいなー」

メイド「女騎士様はその心配がなくていいですよね」

女騎士「うーん。そうか?」

メイド「少しカチンときました」

女騎士「?」

空は相変わらずの曇り空だが、甲板を撫でる潮風は思ったよりも心地よく、女騎士はその感触をしばらくの間味わっていた。船長の指示のもと、船乗り達は向かうべき海路を進むため、慌ただしく動き回っている。

女騎士「船長、あまり船乗り達に邪魔にならない位置はどこだ?」

「それなら俺の後ろにでもいらっしゃればいいですよ」

そうかと言葉を返して、ちょうど船の中央になる位置で女騎士は立ち、船の揺れを感じていた。荒天時のみ襲ってくる海賊どもは、恐らくこれ以上の揺れの時に襲撃をかける。だからこそ、少しでも揺れに慣れておきたかったからだ。

女騎士「……ダメだな」

確かに揺れる、そして、けして規則正しいと言う訳ではない。慣れる、というにはあまりにも付け焼刃だ。

女騎士「船長、お前はどんな風に海に慣れた?」

「海にですかい? いやぁ、最初のうちは船酔いして吐いて役立たずなんて言われたもんでさ」

女騎士「あまり良い記憶ではないか?」

「いや――。思えば懐かしいですな、いつの間にか慣れていたもんでさな」

船長の顔は、今までの見た中の一番いい表情をしている、女騎士はそう思った。その積み重ねが、この人間を作り出していて、それを振り返っている。その表情は、どこか酒の場で昔話をする大将軍の姿と彼女は重ねていた。

「まー、その内慣れまさぁ。海は本当はおおらかなもんですからねぇ」

女騎士「そうか。海とは縁遠いものでな。その道のプロがそういうなら、そうなのだろう」

「へっへ、名うての人間にそう言われるのはこそばゆいもんでさ」

そのうち慣れる、か。そのおおらかという海に身を委ねるために、彼女は目を閉じて、潮風と揺れを味わうことにした。

出航してから船は最初の夜を迎えた。天候はあまり良いとは言えず、荒れ模様ではあったものの、それでも普通の船でも問題なく航行できる範疇と船長は話していた。

与えられた部屋で女騎士は休んでいたが、少し大き目に揺れる船室はあまり心地が良いものではなかった。それに、窓もない閉鎖的な部屋はどこか息苦しさを覚えてしまう。

眠りにつけそうにもなかった彼女は仕方なく船室を出て、また甲板へと向かった。寝付けないのであれば、船員もあまりいない間に、軽く船の上で体を軽く動かしておこうと思ったからだ。

外に出ると、曇り空が広がり、明かりがあるところ以外は暗闇のような状態だ。目が慣れるのはすぐだったが、それでも見ているものがどこかおぼろげに見える。

女騎士「(まぁ、ちょうどいいか)」

慣らすのであれば、悪条件であれば悪条件のほどいい。なにせ、相手は船員ですらひどいという悪条件の元襲ってくる。なら、同条件でも同じように動けるようにする必要があるからだ。

一ヵ月後、フルプレートで八艘飛びを繰り広げる女騎士の姿が

女騎士「(こないなー、慣れてきたから重り増やすか)」

慣れという領域を超越して普通にフィジカル向上してますがな

>>405-406

メイド「やりかねませんね。女騎士様に関しては」

兄「事、身体を動かすことは化け物じみて習得するからな」

メイド「…それで、何か御用でしょうか?」

兄「あぁ、女騎士に用があったんだが、いないようだな」

メイド「てっきり出番がないからこんなとこに出たのかと」

兄「…それはない」

軽くストレッチをしてから、簡単に甲板の上を走り回ってみたり、飛び跳ねてみたりといろいろと動きを試してみる。

女騎士「(なるほど、着地する部分が常に動いている感じか)」

身体を動かした時に感じた違和感を、言葉として表現して認識させながら、徐々に――凡人から見れば急激に――船という足場に慣れていく。

ある程度女騎士としては満足の行く動きができるようになったところで、そこに戦いの動きを織り交ぜていく。重心がぶれてしまうため、力が思ったようには発揮できないことが、彼女には不満だった。

とはいえ、海戦をする相手はアーマープレートと言った金属製の鎧を着た者はまずいない。船から落ちれば重みで沈み、何より身軽な動きが重要視される船上でそんな酔狂な格好をするはずはない。そういうことを考えれば力強い一撃は必要とはされない。

女騎士「(父様ならどうするのかな)」

不慣れな場所で戦うという意識が、師である大将軍のことを考えさせた。

女騎士は運動で火照った体を覚ますため、船の淵まで移動して夜の海原を見ていたが、相変わらず暗闇が覆っていた。潮風が心地よく体を冷やしていく中、ふと何か彼女の視界の中で何かが動いた。

見えるのは漆黒の闇に包まれた海原のはずなのに、何かが動いていると感じられる。その動いている何かがあると思うところを凝視した後。素早くマストの上に設置された見張り台にいる船員に向かって。

女騎士「見張り! 厳重に警戒しろ!」

そう言ってから素早く船室に戻り、使い慣れた武器を回収してから船長室に飛び込んだ。

「あ、女騎士さん。例の奴らですかい!?」

中には数人の船員と船長が、驚いた後にそう聞いてくる。

女騎士「明かりもつけずこちらに接近してくる船が見えた、賊とみていいだろう」

「わかりました。てめぇら、全員たたき起こして来い!」

女騎士「いや、見間違いだと困る。船長も見に来てくれ」

「わかりました。おい、望遠鏡もってこい!」

船長は指示しながら、先に行く女騎士の後についていく。甲板にたどり着くと、女騎士は昼間のように素早く、船が言える位置を指さす。船長もそれに倣い、部下が持ってきた望遠鏡を使って闇の中を見る。

「……間違いねぇ、ありゃあ船だ。こっちに、来てるみてぇだな」

女騎士「そうか、船長指示を頼む。私はこのまま迎撃のために残る」

「頼みます。おめぇら、グースカ寝てたら死ぬぞ! 起こして来い! 見張り! 明かりをさっさと消せ!」

更なる指示を出すために船室の中に入っていく船長が、少しだけ女騎士を振り返ってみた後、裸眼で明かりを消した船を見つけ出した事実に内心驚きを隠せないでいた。

いろいろとひどい>>409の訂正。もうないよね…。

×女騎士は運動で火照った体を覚ますため、船の淵まで移動して夜の海原を見ていたが、相変わらず暗闇が覆っていた。潮風が心地よく体を冷やしていく中、ふと何か彼女の視界の中で何かが動いた。

○女騎士は運動で火照った体を冷ますため、船の淵まで移動して夜の海原を見ていたが、相変わらず暗闇が覆っていた。潮風が心地よく体を冷やしていく中、ふと何か彼女の視界の中で何かが動いた。


×船長は指示しながら、先に行く女騎士の後についていく。甲板にたどり着くと、女騎士は昼間のように素早く、船が言える位置を指さす。船長もそれに倣い、部下が持ってきた望遠鏡を使って闇の中を見る。

○船長は指示しながら、先に行く女騎士の後についていく。甲板にたどり着くと、女騎士は昼間のように素早く、船が見える位置を指さす。船長もそれに倣い、部下が持ってきた望遠鏡を使って闇の中を見る。

下二行の違いがわかんね

>>410 ふと何か彼女の視界の中で何かが

残念、何かが被ってる

 さ>>411
「言える」→「見える」という修正

>>412
メイド「作者が悶えてますね」

女騎士「三つぐらい間違いあった気がしたけど、二つかーと思ってたらしいからな」

メイド「何度か気になって読み直したらしいですが、頭の中で修正されたようです」

女騎士「指摘されなかったら恐らくそのままだったろう。良かったな」

メイド「ふてくされてアンパン食べ始めましたね」


と言う訳で>>409の再訂正

×女騎士は運動で火照った体を覚ますため、船の淵まで移動して夜の海原を見ていたが、相変わらず暗闇が覆っていた。潮風が心地よく体を冷やしていく中、ふと何か彼女の視界の中で何かが動いた。

○女騎士は運動で火照った体を冷ますため、船の淵まで移動して夜の海原を見ていたが、相変わらず暗闇が覆っていた。潮風が心地よく体を冷やしていく中、ふと彼女の視界の中で何かが動いた。

 さ>>411
「言える」→「見える」という修正

>>412
メイド「作者が悶えてますね」

女騎士「三つぐらい間違いあった気がしたけど、二つかーと思ってたらしいからな」

メイド「何度か気になって読み直したらしいですが、頭の中で修正されたようです」

女騎士「指摘されなかったら恐らくそのままだったろう。良かったな」

メイド「ふてくされてアンパン食べ始めましたね」


と言う訳で>>409の再訂正

×女騎士は運動で火照った体を覚ますため、船の淵まで移動して夜の海原を見ていたが、相変わらず暗闇が覆っていた。潮風が心地よく体を冷やしていく中、ふと何か彼女の視界の中で何かが動いた。

○女騎士は運動で火照った体を冷ますため、船の淵まで移動して夜の海原を見ていたが、相変わらず暗闇が覆っていた。潮風が心地よく体を冷やしていく中、ふと彼女の視界の中で何かが動いた。

明かりを消し、警戒状態になったにもかかわらずその船は、今更遅いと言わんばかりにこちらに近づいてくる。少しずつ船の形が大まかにだがわかるようになったが、船の中にいるであろう海賊どもの姿はまだ見えない。

船員達も各々武器を構え、砲を準備していく。海という場所にもまれ、海賊という無法者から身をそして積み荷を守ってきた船員達は、一概に兵士と言っても過言ではない。

女騎士「(ただ、私掠船の可能性があって、海賊などではなく、鍛えられた兵である可能性もある)」

もしそうだった場合、いかに船乗りが海のエキスパートだとしても、そのために鍛えられた相手では分がない。

そんな状態で船長の希望である船員達に問題が起きない方法と言えばと、少し考えを巡らせてから、揺れが強くなった甲板の上を、相手の船が近づいている方向等は反対の端まで歩いていき。

船長「どこいくんですかい!?」

女騎士「乗り換えだ!」

揺れのタイミングに合わせ、一気に相手の船へ向かって走り出し、縁が揺れで上がる瞬間、その上に両足で踏み込み、その力を利用して高く跳躍しながら、女騎士は相手の船へと飛び込んでいった。

転がりながら飛び込んできた女騎士に、敵方の船にいる連中は目をやる。今まで乗っていた船に乗り込む用意をしているのを見て、女騎士は船の命でもあるマストの1つを愛用の斧で叩き切る。メキメキと音を立てながら、そのマストは甲板の上に倒れ落ちた。

「てめぇ、なんてことしやがる!」

女騎士「あちらに行かれては困るのでな。緊急処置だ」

たった1人で乗り込まれ自分達を侮られている怒りと、それでいて、マストを叩き切るという荒行を起こす腕力の持ち主であるという恐怖がないまぜになったまま、倒さなければならない相手と判断した海賊達は、女騎士に襲い掛かった。

少しばかり――彼女にとっては――慣らしただけということもあり、思った攻撃ができずにいたものの、生来のセンスと並外れた戦闘経験の多さに物をいわせ、すぐに海賊たちを圧倒させていき。

気付けば、船の上にはのたうち回る海賊の姿しか見えなくなる状態になってしまった。

ファンタジー度にもよるけどマストを一瞬で叩き切るとか化け物だよね

まあこの女騎士だしな

女騎士「マスト固ぇwwwwww」1本目

>>417-419
メイド「えぇ、女騎士様ですから」

女騎士「あたしなんてまだまだだ、父様の逸話の方がすごいからな」

メイド「へぇ、そうなんですか」

女騎士「軽々しく大岩を叩き切ったとか、騎兵隊を単騎で相手取ったなどは聞かせていただいたな」

メイド「正直、貴女も似たようなものですよ」

女騎士「?」

女騎士が乗ってきた船に対して、明かりで隣接するよう指示を出した後、その前に海賊達を乗り込んだ船の中にあったロープなどで縛り上げていく。

まだ隣接できる程度の天候で収まっており、船員達が何人か乗り込んできた。彼らはマストが1つ切り倒された船と、お縄についている海賊の姿を見て、今まで自分たちが苦労してきた相手に、こうもあっさりと討伐したことの2つの驚きで固まった。

女騎士「見てのとおり、大方は拿捕した。ただ、船内にまだ潜んでいるかもしれん。頼むが気を付けてくれ」

その様子を無視しながら、テキパキと彼女は指示を出す。船員達はそれから遅れて、了解してから海賊船の船室内へ潜っていった。

女騎士は、海賊船に飛び移ったのと同じ要領でまた戻り、船長に事の状況を報告した。

「素晴らしい! これでしばらくあいつらに悩まされませんね!」

女騎士「だが、あれが全員とは限らん。詳しいことを聞き出した方がいいだろう。奴らを連行したい」

それを聞いて船長の顔が曇る。海賊の根本解決については船長も同じ意見ではあるのだが、縄で縛っているとはいえ、ただの商戦で牢は用意がない。となると、誰かが見張りをつけなければならないが、船の大きさから予想してもかなりの人数がいることは想像できる。

女騎士「(同様の船長クラスといった立場が上の者を見つけるしかないか)」

受け入れを悩む様子から、やはり難しいと判断した女騎士は、また海賊船に戻らなければいけないことに、少し辟易とした。

>>420 軽々しく大岩を叩き切った

この言い回し、実は王家あたりに伝わるお宝扱いの巨岩だったのに軽率にも破壊してしまった、ということか

きっと聖剣が刺さってたに違いがない

>>424-425
メイド「軽々しいでは、軽率な、の意味合いが強くなりますからね」

女騎士「父様はそんな考慮が足りない人間ではないぞ。あたしの言い方が悪いだけだ」

メイド「でもまぁ、岩を叩き壊す局面が思いつかないんですよね」

女騎士「なんでも、山道で投石による攻撃を受け、その岩が道を塞ぐ形になったのを壊したそうだぞ」

メイド「少しつまらないですね」

女騎士「むぅ。メイドでもちょっとその言い方はやだぞ」

メイド「いえ、すごいのはわかります。ただ」

女騎士「ただ?」

メイド「やっぱり聖剣とか刺さってたら面白そうだなと」

女騎士「…そうか?」

「大人しく投降しやがれ!」

海賊船に戻って船内を探っていると、その怒鳴り声が耳に入り、聞こえたほうに急ぐと少し豪華なドアの前で数人の船員が開けようと四苦八苦しているところだった。

女騎士「変わろう」

「あ、お願いしやす!」

彼女のために船員が素早くドアの前を開ける。女騎士も全員が安全な位置に移動したのを確認してから、ドアを殴り飛ばす。そうすると、ドアは自身の重さや留め金などの抑えがなかったように吹っ飛び、その飛ぶ方向にいた人間を巻き込みながらデスクにぶつかる。

そしてそれを合図にしたように、銃声が聞こえるもドアをぶち破った女騎士はすでにドアの前から姿を消していた。

銃撃を仕掛けた中の海賊が、ドアを吹き飛ばした敵を認識しようと意識を働く前に、痛みのない衝撃に襲われてそのまま暗転の中に意識は沈み込んでいった。

女騎士「それで、船長らしいのはっと」

中にいた海賊がノビているのを確認してから、恐らくいるであろう海賊の船長を探すと、先ほど飛ばした椅子とデスクの間にそこそこ上物の衣類を纏った男が、デスクに突っ伏す形で気絶しているのを確認した。ドアをどけると、ドダンと音をたてながら床に落ちる。

あっという間に終わった戦闘だが、その音のせいか船員達は慎重に頭だけ出して、中を覗き込んでいた。女騎士はそれに気にする様子もなく、海賊の船長と思われる人間を、船まで運んでいくよう船員に指示してから部屋に残る海賊を拘束した。

後は証拠になる航海日誌がないか船長室と思われる室内を、漁る。見つかったのは航海日誌のほかは、数枚の海図、報告書、そして。

女騎士「(おいおい、これは…)」

正式に発行されている、交易許可証の書類だった。

敵国の私略船か自国の外道商船か

>>429
さてどれでしょうか。

姉「女騎士ちゃんは大丈夫かしらねぇ」

話しは本人から聞いているものの、姉は少しだけ落ち着かない気分だった。表面にそれが出ている訳ではないが、彼女を知る者であれば、何となく気持ちを察することはできるような態度を取っており。

助手「大丈夫だろ。あの娘に心配する要素なんてないしな」

古くからの付き合いである助手も、それを見て姉を落ち着かせるためにそう言う。

姉「そうねぇ。ただ、慣れない海戦だろうから、気になってねぇ」

ただ、それだけで人が安心できるのなら、簡単な話はない。

助手「それに、気にしてる場合でもないだろ。お前はお前で仕事があるんだからよ」

だから結局のところ、そのことを考える間を与えないようにするのが、一番手っ取り早い方法だろう。

姉「……、それもそうねぇ」

助手「しかし、ルカソンヌの商人の暗殺計画ね…。にわかに信じづらいが、なくはない話だからな」

姉「貴方もそう思う?」

助手「こういう研究の妨害に適した手段の1つだろ、推進派のリーダーが死ねば、その一派の混乱は避けられないし、状況によってはギルド内での発言力も高めることだって可能な話だ」

うまく事を進めることが出来れば、妨害のほかにギルド内の地位向上も図れる。暗殺の手引きを自分がしたという尻尾さえ掴ませないことに尽力するだけで、リスクと同等のものを得ることは十分できる。

姉「そうだとしたらぁ…、気に食わないわねぇ」

助手「おいおい、本性出すな」

姉「あらぁ。何が本性なのかしらぁ?」

助手「お前の根っこは恐ろしいとこだよ」

姉と親交が深い者であれば、敵と判断した相手に対する徹底的な対応をすることを誰しもが知っている。その為、それを実行に移そうと表面に現れた時の彼女は、言いようのない恐ろしさを感じられる。しかし、助手は例外に当たり、感じたとしてもそのことに躊躇なく口出しする。

もっとも、姉にして見ればそういう部分をさらけ出しても問題ない、信頼に足る相手と判断されていることになるのだが。

姉「私は別に恐ろしくないわぁ、すべきことをしてるだけよぉ?」

助手「お手柔らかにな。それでなくてもあんたら姉妹、やることでけぇんだから」

姉「そうかしらねぇ?」

演技でもなく疑問そうに首をかしげる姉を見て、仕方なく助手は心の中で諦めの言葉を呟いた。

助手「それで、今日は何か予定はないのかよ?」

姉「ルカソンヌの商人様が、ギルドの主要メンバーを集めた会合の調整いただくまでは、しばらくは暇ねぇ」

助手「それなら、俺もこの街観光してえな」

姉「そう、それもいいんじゃないかしらぁ」

実のところ、何度かそう言って街を見て回ろうとしたのだが、ことごとく貴方は助手だからと突っ返していた姉がそういった事もあり、嫌味でいった事が通って助手は素直に驚いた。

助手「え、いいのかよ?」

姉「何も用意できないまま、ここに飛ばされた貴方が楽しめるものは、あるとは思えないからぁ」

助手「見て回るだけでも十分だろ。港町なら見たことねぇ物もごろごろあるだろうしよ」

姉「へぇ、そう」

そう言えば悔しがる助手の姿が見られると期待しただけに、姉の反応は少しそっけないものになってしまい。誰に誤魔化す必要もないにも関わらず、彼女は少しだけ多めに紅茶をすすった。

>彼女は少しだけ多めに紅茶をすすった。

じゅるじゅるじゅる

乙!

>>435
女騎士「姉様はそんな音をたてたりはしないぞ…」

兄「兄弟の中で一番マナーにうるさいからな」

女騎士「はい。自分も叩き込まれました」

兄「怒る訳ではなく、笑顔のまま指導してくるからなぁ」

女騎士「兄様もそうなのですか?」

兄「教えられたわけじゃないが。ちょっとしたミスとかあの怖い笑顔で詰めてきてな」

姉「何が怖いのですか、兄様」

兄「うげ」

助手「しかし、いいのかね?」

右手に持った将軍家の印が入った封書を眺めながら、彼はアレクリアの街を歩いていた。話の後、観光に行くのならルカソンヌの商人に、その封書を渡してほしいと言われ、今は一人だ。

暗殺計画の話が――噂程度のものではある――真実で研究を妨害することが目的なら場合、姉もまたその目標になる可能性は高い。ただ、そうなった姉の暗殺に成功すると、王家直属の貴族を殺めることになり、容易では済まない事態を招くことになる。リスクの方が大きいことを考えれば、現実味は薄いと言っていいだろう。

そういう部分を含めて、ルカソンヌの商人も多忙な日々を送る者であることから、会いに行くよりもこの方が情報を伝えやすいと判断したのか。

助手「いや、ねえな」

まだ、本当かもわからないことを、あの姉が不用意に人へ伝える訳がない。そうなると、全く異なる件での連絡、あるいは物品の依頼書か。封書の中身について想像を膨らませながら、助手は商店へと向かった。

ルカソンヌの商人は、商談のため店を空けていることを店の者から聞き、中で待たせてもらうことになった。店は雑貨類と食堂が複合する施設で、助手は食堂で焙煎豆の茶を頼む。ハーブティーや紅茶が茶として主流のこの国に最近入ってきたもので、香ばしさが強く苦みがあり好みが分かれる飲み物だ。

助手「へぇ、ギルドを仕切る店なだけはある」

一口すすり、その匂いと味を堪能してから、助手は感嘆の意味を含めてそう呟いた。場所によっては匂いもなければ、ただ苦いだけのものもあり、それでいて輸入量も少ないものだから高価。これを知って頼む者とっては、新規の店はギャンブルする感覚に近い。

満足いく茶が出されたことに喜びをかみしめながら、少しだけ幸福な時間を助手は味わっていた。これを飲み終えれば、仕方なくその時間がなくなることをしなければいけないことに、同時に憂鬱になりながら。

店の中には当然いろいろな客がいる。この街の住人、冒険者、衛兵、各地域の商人達。交易都市であるがゆえに、どんな人間が行き来していてもおかしくない。

助手「(悪い話は聞かなくっても、商売という仕事柄、何かしらの恨みは買うだろうからな)」

研究所内の荒事を担当している助手だからこそ、店の中にいる普通を装っている連中が鼻につく。もちろん、この場にいるからと言って、商人暗殺が目的とは限らない。何らかの任務を帯びて、他へ移動する最中であるとか、実は用心棒として紛れている。そんなことも十分考えられる。

助手「(とりあえず、顔だけ覚えて手紙を渡し終わった時にでも…、怪しい奴は説明しておくか)」

それに、どうせ相手も自分は普通じゃないと気づかれている。それなら相手から接触してもらうに越したことはない。残った茶を一気に飲み終え、店に戻ってきたルカソンヌの商人の下へ向かいながら、そういう算段をたてていた。

カルカソンヌが頭に浮んで都市名と誤認しちゃう

俺は都市名を通り越してボードゲームが思い浮かぶ

>>441-442
女騎士「だそうだぞ?」ビシッ

メイド「どこに指さしてるんですか…。この>>1さんはある程度の(自分の中で)関連付けがあればアナグラムしたり、1文字削って使ったりするのが定例ですからね」

女騎士「固有名詞系は割とそのようだな」

メイド「今更訂正とかもできないですし、商人さんはルカソンヌの商人です。はい」

女騎士「ちなみにボードゲームはあるぞ」

役割を終えて助手は当てもなくアレクリアの中を歩き回る。彼はその、当てのないということがどこか好きだった。目的もなく、ただ周りの光景が目に入る。散歩と同じようだが、それ自体歩いて回るということが目的になる。歩くことも目に入る状況もただついでのようでいて、自分をまるで斜め後ろからぼんやりと眺めるような感覚。

ただ、助手にとって残念なのは、本当に当てはないのかと言えば嘘であることだ。ルカソンヌの商人の店を出てから、明らかに何かが自分を尾行(つ)けているのは気配でわかる。だから、簡単に仕掛けてこられない適度な人混みの中をウロウロしている。

追われる感覚からして、敵意はないといっていい範疇。自分に関しての探りだろう。姉の警護として今回側にいるが、相手の目的が商人ギルドである可能性が濃厚な今、自分に関して調査が回っていない可能性は高い。どこの馬の骨か知りたい、それは互いに同じ。

人混みが薄れていき、住宅街の中に入っていく。どこまで相手が自分に興味があるのか、それを計る為だ。人混みが薄れれば、当然それだけ自分の姿を見られやすくなる。住宅街は住んでいる人間とその人間に用がある人以外に、人気(ひとけ)はない。その上、この手の場所では馴染みのない顔は注目を集めてしまう。例えそれが人々の行き来が多い交易都市アレクレアであっても例外ではない。

そういう諸々の目立つ要素が強い場所であってもなお、自分を尾行(つ)けてくるのか。今まで反応がなかった相手が、どういう風に動くのか事実強制するためだ。ここで去るのであれば、今度はこちらが追いかけ、もし接触を計るようなら好都合。助手にしてみればどちらでもよかった。

助手「んな…!?

感じ慣れた魔術の発動による鼓動を感じ、後ろを振り向くと可視化した紫色の刃の風が自分に迫っているところだった。

右端までぎっしり行く事が多くなってきたねぇ
前にもたしか指摘あったと思うけど改行入れたほうが読みやすくなるのでは

>>446
女騎士「>>1としても読みやすさは意識はしているようだが」

メイド「文章として細かく分かれるのも、どうなのかなと考えてるようです」

女騎士「本なんかの縦書きなら違和感はないんだろうけどな」

メイド「書く時になぜか縦書きを意識するからでしょう」

女騎士「ふむ」

助手「防御(――フィールドオープン、――イメージアウトプット、――スタート)」

咄嗟の出来事に、とりあえずの魔法障壁を展開して横に飛ぶ、紫の刃は障壁を通り抜けた後、そのまま家屋の壁や塀を傷つけ消えた。

助手「こんな街中でよぉ…」

刃が人を傷つけてなかったのは幸いだが、戦闘が継続されれば、その内被害が出るのは目に見えている。だが、見えたのは刃だけで、肝心の相手の姿を彼は捉えられなかった。

助手「だああ、めんどくせぇ」

そうしたところで何の解決はできないものの、苛立ちが言葉について出る。

助手「偵察(――スピリットサーチ、――イメージインストール、――スタート」

周囲の人間の気配を感知する魔術を展開し、不審な動きをする気配があれば、そいつを犯人として追跡する為だ。

助手「(見てねぇなら、見なくてもいい方法で対処すんだけっと)」

気配はすぐに感知することができた。素早く住宅街の中を移動している。

助手「この辺の地理勘あり、と」

迷いない移動と、この都市の特徴を掴んだルートがそう告げていた。そして、もう1つ告げていることがある。

助手「(人の気配が、少なくなってきてるな)」

相手は逃げてなどおらず、自分と同じように、誘い込もうとしていることだ。助手も、それを理解したうえで追跡を続ける。

助手無双で片が付くのか
背骨を抜かれた助手の無残な屍が晒し者にされるのか

>>450
女騎士「そういえば、助手殿の戦闘シーンは描かれていなかったな」

メイド「ちなみにそこまでお付き合いがないのでよく知らないのですが、強いのですか?」

女騎士「強いはずだぞ」

メイド「なんではずなんですか」

女騎士「あたしは魔導がほとんど効かないからな…。それだけだと判断できない」

メイド「なるほど」

たどり着いたのは廃倉庫群だった。主要な港部分にそういう場所はないが、少し外れの、言うなら区画整理が入っていないところでは、いくつかそういう区画が交易都市アレクリアに存在してしまっている状況だ。

助手「探査の魔術、弾いたか」

感知していた気配が捉えられなくなり、その状態で目の前に廃倉庫群の入り口が見えている。このまま侵入したところで、相手の方から奇襲されることは目に見えている。

助手「だからと言って、おめおめ戻ったら主任に何言われるやら」

面倒くさそうに頭を軽く掻いてから、入り口から中に入っていった。

中はやはり人の手が入っていないこともあって、瓦礫や雑草がそのままになっている。再開発の予定が立たなければ、都市の中にありながらここは朽ちるのを待つだけなのだろう。

助手「(さってと)」

使ってきた魔導からすると、恐らくはそのまま風に関するものが得意だと考えられた。風の特色としては、目に映らないことだ。暗殺者でも、風の魔導は好んで使われる。

しかし、当然デメリットはある。術者の周囲に大きな大気の動きが発生する為、事前に相手が風を得意とわかれば、その部分に注意すれば攻撃をそうそう受けずに済む。

そういう意味では、今回の相手に腑に落ちない部分として、わざわざ視覚可能な風で攻撃をしてきたことだ。風の魔導を得意とする者は、それを隠すために別の種類魔導を1~2種類ほどある程度できる範囲まで習得する。

言うなら、最初から使うのは確実に殺せるという確信があった時に風の魔導をつかうことになるのだが、相手の行動からして助手が死んだという想定とは思えない動きだった。

ちょうどよく広く開けた場所の中央に立つ。相手からすれば丸見えの位置だが、見通しがいいということは、自分にとっても相手を見つけやすいということだ。

相手がどんな動きをするのか、把握しておきたい助手はただ静かに待つ。

大気の揺らぎを感じた後、あの紫の刃が飛んでくる。先ほどは咄嗟のことで完ぺきではない魔法障壁だったが、今度は対応した魔術を発動し、その刃を相殺する。

攻撃はまばらで、相手の姿も見えない。防ぐのが容易であっても、相手を見つけられていなければ攻撃のしようがない。ただ、はっきりとわかることは1つある。

相手に殺そうという意思が、ないということだ。

魔導師同士の戦いは、基本的に一度防がれた魔導を放つ意味はない。姉のように膨その魔導の本質を変質させるか、更に強力な魔力を込めるかだ。

前者はできる魔導士が限られていて、後者はダメージを与えられる可能性は高いが、自分の消耗も激しく何より対応する障壁によって、通常より効果が薄れてしまう。

そう言ったデメリットから考えると、同じ魔導しか使わないというのは、何かを狙っている可能性がある。例えば裏で、より強力な魔導の用意をしている。とか。今の場合ならそれが一番に可能性はある。

ただ、助手としては、自分を殺そうという殺意が、ないような気がしてならなかった。表現するのなら、今の状態に対する、違和感があるからだろう。

助手「偵察(――テクニカルサーチ、――イメージインストール、――スタート)」

その違和感を払しょくしたいという気持ちもあり、助手はより強度の高い探査の魔術を発動させた。

乙!

助手「(おーっと?)」

発動した探査の魔術で相手の位置は把握できた。位置は助手の正面、やや左斜めの廃屋の一階だ。

助手「(――アタックイメージ、――デュエルインストール、――スタート)」

伸ばした右手から、槍を模した液体が飛び出す。そして液体は廃屋の壊れた窓から中に入り、その位置に向かって突撃した。

だが、探査により相手が避けたのを感じ取って、更に2発、槍の液体を射出して相手に迫り、追い詰めていく。

助手「(さてと)」

更に槍の液体の速度を加速させ、探査している相手を襲わせる。

堪えられなくなった相手は、槍の液体の動きに翻弄されるがまま、1階の窓から飛び出す。

助手が相手の姿が見える位置に誘導して、水の魔術を使った。相手も誘導されていることは理解していて、着地したと同時に今までいた助手がいた場所に魔導を放とうとして、動きが止まる。

その隙を見逃さず、相手の死角へ移動していた助手は首筋にナイフをあてがう。

助手「わりぃけど、このフード外すぞ」

出てきた相手はフード付きのローブで顔が見えず、そう言いながら被っているフードを脱がした。

「…もー、今回は勝てると思ったのにー」

殺し合いをしているとは思えないほど、間の抜けたことをいいながら、相手はそんなセリフをこぼす。

助手「え、魔術師?」

魔術師「久しぶりだねー」

そこには、やや幼い少女のような顔立ちで、長い金髪の髪を2つに分けて束ねた、助手の同期生である魔術師の姿があった。

魔術師「それにしても、ここまで積極的なら、やられて正解だったよー」

今の状態は、助手が魔術師が下手に動かないよう、背後から密着して抑えながら、首筋にナイフをそわせている。

助手「だー! お前だと知ってたらこうしてねえよ!」

魔術師「あー、残念だなー」

助手「前もいったけど、俺は男にゃ興味ないんだよ!」

魔術師「ははははは、僕も君以外の男には興味ないかなー」

そういう問題じゃねぇ、という助手の叫びに対して、魔術師はケラケラと笑った。

こっちの更新はまだなんだな

さて、いろいろ考えた結果ですが。このSSについては、この中途半端な状態を重々承知の上、いったん閉めさせていただきたいと思います。

言い訳はありますが、簡単に言うなら自分のキャパ不足と、この更新状況で満足がいくものをかける気がしないからです。

時間に余裕ができて、このSSみたいに長期化として重いものも手が出せる状況になりましたら、再開したいと考えています。

この先の展開、というよりは、どんな結末を女騎士が迎えるかは書き始めて数日で頭の中で描けてはいるので、速度的には早くできればいいな。

奇特なら楽しみにされている方には申し訳ございませんが、平に、ご容赦を。

一本目から読んでたけどせめてこのエピソード分の結末までは読みたかったな残念だ
みんな魅力的なキャラばかりだし展開も好きだから
時間が取れるようになっていつか再開されるのを待ってる乙でした

こっちもなのか…
乙!

仕方ないねー
ではメイドさんはウチでゆっくりとおくつろぎ頂きたく

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